(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165444
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】補助装置
(51)【国際特許分類】
B24B 45/00 20060101AFI20231109BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20231109BHJP
B23Q 3/157 20060101ALI20231109BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
B24B45/00 A
B24B27/06 M
B23Q3/157 A
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076429
(22)【出願日】2022-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】寺師 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】女屋 拓土
(72)【発明者】
【氏名】松岡 伸太郎
【テーマコード(参考)】
3C002
3C034
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C002BB08
3C002DD13
3C002LL08
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB01
3C034BB52
3C034BB66
3C034BB73
3C034CB11
3C034DD10
3C158AA03
3C158AA09
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3C158AB04
3C158AC01
3C158CB03
3C158DA17
5F063AA23
5F063AA28
5F063DD02
5F063DD03
5F063DD06
5F063FF01
5F063FF52
(57)【要約】
【課題】切削ブレードを自動的に交換できる補助装置であって、ユーザーに既に納品した切削装置に後から装着することができる補助装置を提供する。
【解決手段】補助装置2は、切削ブレード保管手段4と、切削ブレード保管手段4から切削ブレードを搬出および搬入する搬出入手段6と、搬出入手段6をY軸方向の作用位置と退避位置とに位置づけるY軸方向位置付け手段8と、搬出入手段6をZ軸方向に移動するZ軸移動手段10と、搬出入手段6をX軸方向に移動して切削装置の切削手段のスピンドルに装着された切削ブレードに作用するX軸移動手段12とを備える。搬出入手段6は、Z軸方向に延びるZ回転軸46と、Z回転軸46に放射状に連結され切削ブレードを吸引保持するブレード保持部48と、固定ナットをスピンドルの先端に形成された雄ネジ228に螺着および螺脱する固定ナット保持部50とを備え、屈曲アーム112の先端にZ回転軸6を介して連結される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを固定ナットで装着した切削手段と、該チャックテーブルをX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、該切削手段をX軸方向と直交するY軸方向に割り出し送りするY軸送り手段と、X軸方向およびY軸方向と直交するZ軸方向に該切削手段を切り込み送りするZ軸送り手段とを備え、該保持面はX軸方向およびY軸方向で規定された切削装置に連結される補助装置であって、
複数の切削ブレードを保管する切削ブレード保管手段と、該切削ブレード保管手段から切削ブレードを搬出および搬入する搬出入手段と、該搬出入手段を該切削ブレード保管手段に対してY軸方向の作用位置と退避位置とに位置づけるY軸方向位置付け手段と、該搬出入手段をZ軸方向に移動するZ軸移動手段と、該搬出入手段をX軸方向に移動して該切削手段のスピンドルに装着された切削ブレードに作用するX軸移動手段と、を少なくとも備え、
該搬出入手段は、Z軸方向に延びるZ回転軸と、該Z回転軸に放射状に連結され切削ブレードを吸引保持するブレード保持部と、該固定ナットを該スピンドルの先端に形成された雄ネジに螺着および螺脱する固定ナット保持部と、を備え、屈曲アームの先端に該Z回転軸を介して連結される補助装置。
【請求項2】
該搬出入手段は該屈曲アームを介して枠体に配設され、該枠体は昇降テーブルに配設されたY軸方向に延びるガイドレールに摺動可能に支持され、該Y軸方向位置付け手段によって該切削ブレード保管手段に対してY軸方向の該作用位置と該退避位置とに位置付けられる請求項1記載の補助装置。
【請求項3】
該屈曲アームは該搬出入手段をX軸方向に進退する請求項1または2記載の補助装置。
【請求項4】
該切削ブレード保管手段は、Y軸方向に延びる回転軸を有する駆動歯車と、該駆動歯車とZ軸方向に離間しY軸方向に延びる回転軸を有する従動歯車と、該駆動歯車と該従動歯車とに巻き掛けられた無限軌道と、該無限軌道に所定の間隔で配設され切削ブレードの中央開口部に挿入され切削ブレードを支持するY軸方向に延びるブレード支持軸と、を含む請求項1記載の補助装置。
【請求項5】
該駆動歯車と該従動歯車とのZ軸方向の間隔が調整できるとともに該無限軌道の長さも調整できる請求項4記載の補助装置。
【請求項6】
該切削ブレード保管手段に保管される切削ブレードは、基台の外周に切り刃が配設されたハブブレードであり、
該ブレード支持軸はハブブレードの中央開口部の内径に対応する外径を備え、該ブレード保持部はハブブレードを保持する請求項4記載の補助装置。
【請求項7】
該切削ブレード保管手段に保管される切削ブレードは、環状に形成された切り刃からなるワッシャーブレードであり、
該ブレード支持軸はワッシャーブレードの中央開口部の内径に対応する外径を備え、
該ブレード保持部は、ワッシャーブレードと、ワッシャーブレードを該切削手段のスピンドルに装着するための装着フランジとを保持する請求項4記載の補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置に連結される補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、切削装置によって個々のデバイスチップに分割され、分割された各デバイスチップは携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
切削装置は、ウエーハを保持する保持面を備えたチャックテーブルと、チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削ブレードを固定ナットで装着した切削手段と、チャックテーブルをX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、切削手段をX軸方向と直交するY軸方向に割り出し送りするY軸送り手段と、X軸方向およびY軸方向と直交するZ軸方向に切削手段を切り込み送りするZ軸送り手段とを備え、保持面はX軸方向およびY軸方向で規定されていて、ウエーハを高精度に個々のデバイスチップに分割することができる。
【0004】
また、本出願人は、切削手段に装着された切削ブレードを自動的に交換できる自動交換装置を提案した(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ユーザーに既に納品した切削装置に後から自動交換装置を装着することが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、切削ブレードを自動的に交換できる補助装置であって、ユーザーに既に納品した切削装置に後から装着することができる補助装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記課題を解決する以下の補助装置が提供される。すなわち、
「被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを固定ナットで装着した切削手段と、該チャックテーブルをX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、該切削手段をX軸方向と直交するY軸方向に割り出し送りするY軸送り手段と、X軸方向およびY軸方向と直交するZ軸方向に該切削手段を切り込み送りするZ軸送り手段とを備え、該保持面はX軸方向およびY軸方向で規定された切削装置に連結される補助装置であって、
複数の切削ブレードを保管する切削ブレード保管手段と、該切削ブレード保管手段から切削ブレードを搬出および搬入する搬出入手段と、該搬出入手段を該切削ブレード保管手段に対してY軸方向の作用位置と退避位置とに位置づけるY軸方向位置付け手段と、該搬出入手段をZ軸方向に移動するZ軸移動手段と、該搬出入手段をX軸方向に移動して該切削手段のスピンドルに装着された切削ブレードに作用するX軸移動手段と、を少なくとも備え、
該搬出入手段は、Z軸方向に延びるZ回転軸と、該Z回転軸に放射状に連結され切削ブレードを吸引保持するブレード保持部と、該固定ナットを該スピンドルの先端に形成された雄ネジに螺着および螺脱する固定ナット保持部と、を備え、屈曲アームの先端に該Z回転軸を介して連結される補助装置」が提供される。
【0009】
好ましくは、該搬出入手段は該屈曲アームを介して枠体に配設され、該枠体は昇降テーブルに配設されたY軸方向に延びるガイドレールに摺動可能に支持され、該Y軸方向位置付け手段によって該切削ブレード保管手段に対してY軸方向の該作用位置と該退避位置とに位置付けられる。該屈曲アームは該搬出入手段をX軸方向に進退するのが好適である。
【0010】
該切削ブレード保管手段は、Y軸方向に延びる回転軸を有する駆動歯車と、該駆動歯車とZ軸方向に離間しY軸方向に延びる回転軸を有する従動歯車と、該駆動歯車と該従動歯車とに巻き掛けられた無限軌道と、該無限軌道に所定の間隔で配設され切削ブレードの中央開口部に挿入され切削ブレードを支持するY軸方向に延びるブレード支持軸と、を含むのが好都合である。該駆動歯車と該従動歯車とのZ軸方向の間隔が調整できるとともに該無限軌道の長さも調整できるのが望ましい。
【0011】
該切削ブレード保管手段に保管される切削ブレードは、基台の外周に切り刃が配設されたハブブレードであり、該ブレード支持軸はハブブレードの中央開口部の内径に対応する外径を備え、該ブレード保持部はハブブレードを保持するのが好ましい。
【0012】
該切削ブレード保管手段に保管される切削ブレードは、環状に形成された切り刃からなるワッシャーブレードであり、該ブレード支持軸はワッシャーブレードの中央開口部の内径に対応する外径を備え、該ブレード保持部は、ワッシャーブレードと、ワッシャーブレードを該切削手段のスピンドルに装着するための装着フランジとを保持してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の補助装置は、
被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを固定ナットで装着した切削手段と、該チャックテーブルをX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、該切削手段をX軸方向と直交するY軸方向に割り出し送りするY軸送り手段と、X軸方向およびY軸方向と直交するZ軸方向に該切削手段を切り込み送りするZ軸送り手段とを備え、該保持面はX軸方向およびY軸方向で規定された切削装置に連結される補助装置であって、
複数の切削ブレードを保管する切削ブレード保管手段と、該切削ブレード保管手段から切削ブレードを搬出および搬入する搬出入手段と、該搬出入手段を該切削ブレード保管手段に対してY軸方向の作用位置と退避位置とに位置づけるY軸方向位置付け手段と、該搬出入手段をZ軸方向に移動するZ軸移動手段と、該搬出入手段をX軸方向に移動して該切削手段のスピンドルに装着された切削ブレードに作用するX軸移動手段と、を少なくとも備え、
該搬出入手段は、Z軸方向に延びるZ回転軸と、該Z回転軸に放射状に連結され切削ブレードを吸引保持するブレード保持部と、該固定ナットを該スピンドルの先端に形成された雄ネジに螺着および螺脱する固定ナット保持部と、を備え、屈曲アームの先端に該Z回転軸を介して連結されるので、ユーザーに既に納品した切削装置に後から装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に従って構成された補助装置の斜視図。
【
図2】
図1に示す切削ブレード保管手段の分解斜視図。
【
図5】ワッシャーブレードを支持するブレード支持軸の斜視図。
【
図7】
図1に示す枠体、昇降テーブルおよびベース架台の分解斜視図。
【
図9】
図1に示す補助装置が連結される切削装置の斜視図。
【
図12】
図11に示すブレードカバーが開放された状態における切削手段の斜視図。
【
図14】ワッシャーブレードが装着される場合の切削手段の分解斜視図。
【
図15】
図1に示す補助装置が
図9に示す切削装置に連結された状態を示す斜視図。
【
図16】
図1に示す補助装置の切削ブレード保管手段と搬出入手段とが対面している状態を示す斜視図。
【
図17】
図16に示す状態から枠体が切削ブレード保管手段に向かって前進した状態を示す斜視図。
【
図18】
図17に示す状態から枠体が後退するとともに、昇降テーブルが上昇した状態を示す斜視図。
【
図19】
図18に示す状態から搬出入手段が切削装置に向かって前進した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に従って構成された補助装置の好適実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(補助装置2)
図1を参照して説明すると、全体を符号2で示す補助装置は、複数の切削ブレードを保管する切削ブレード保管手段4と、切削ブレード保管手段4から切削ブレードを搬出および搬入する搬出入手段6と、搬出入手段6を切削ブレード保管手段4に対してY軸方向の作用位置と退避位置とに位置づけるY軸方向位置付け手段8と、搬出入手段6をZ軸方向に移動するZ軸移動手段10と、搬出入手段6をX軸方向に移動して、切削装置の切削手段のスピンドルに装着された切削ブレードに作用するX軸移動手段12と、を少なくとも備える。
【0017】
X軸方向は、
図1に矢印Xで示す方向であり、Y軸方向は、
図1に矢印Yで示す方向であってX軸方向に直交する方向である。また、Z軸方向は、
図1に矢印Zで示す方向であってX軸方向およびY軸方向に直交する上下方向である。X軸方向およびY軸方向が規定する平面は実質上水平である。
【0018】
(切削ブレード保管手段4)
図2に示すとおり、切削ブレード保管手段4は、Y軸方向に延びる回転軸14を有する駆動歯車16と、駆動歯車16とZ軸方向に離間しY軸方向に延びる回転軸18を有する従動歯車20と、駆動歯車16と従動歯車20とに巻き掛けられた無限軌道22と、無限軌道22に所定の間隔で配設され切削ブレードの中央開口部に挿入され切削ブレードを支持するY軸方向に延びるブレード支持軸24とを含む。
【0019】
(駆動歯車16)
図1および
図2を参照して説明すると、図示の実施形態の切削ブレード保管手段4は、ベース板26(
図1参照。)と、ベース板26の上面から上方に延びる支持壁28と、支持壁28の片面に固定されたモータ30とを含む。
図2に示すとおり、モータ30には、駆動歯車16の回転軸14が連結されており、モータ30は、Y軸方向を軸心として駆動歯車16を回転させるようになっている。
【0020】
(従動歯車20)
図2に示すとおり、従動歯車20は駆動歯車16の上方に配置され、従動歯車20の回転軸18は、Y軸方向を軸心として回転自在かつZ軸方向に昇降自在に支持壁28に支持されている。支持壁28には、従動歯車20をZ軸方向に昇降させる昇降手段(図示していない。)が設けられている。昇降手段は、従動歯車20の回転軸18に連結されZ軸方向に延びるボールねじと、このボールねじを回転させるモータとを有する構成でよい。
【0021】
(無限軌道22)
無限軌道22は、相互に連結された多数のリンク片(符号省略)から構成されており、駆動歯車16と従動歯車20とに巻き掛けられている。無限軌道22は、モータ30によって駆動歯車16が回転するのに応じて回転するようになっている。
【0022】
図示の実施形態の切削ブレード保管手段4においては、昇降手段で従動歯車20のZ軸方向の位置を変えることにより、駆動歯車16と従動歯車20とのZ軸方向の間隔が調整できるようになっている。また、切削ブレード保管手段4においては、無限軌道22のリンク片の数量を適宜増減することにより、無限軌道22の長さも調整できるようになっている。
【0023】
(ブレード支持軸24)
図2に示すとおり、ブレード支持軸24は、所定の間隔をおいて無限軌道22に複数配設されている。また、
図2とともに
図3を参照することによって理解されるとおり、ブレード支持軸24は、無限軌道22に連結された円柱状の基部32と、基部32の端面からY軸方向に延びる円柱状の軸部34とを有する。軸部34の直径は基部32の直径よりも小さい。
【0024】
(ハブブレード36)
図3には、切削ブレード保管手段4に保管される切削ブレードとしてのハブブレード36も示されている。ハブブレード36は、環状の基台38と、基台38の外周に配設された環状の切り刃40とを有する。基台38は、アルミニウム合金等の適宜の金属材料から形成され得る。基台38の中央部には、円形の中央開口部38aが設けられている。切り刃40は、ダイヤモンド等の砥粒と、金属や樹脂等の結合材とから所定の厚み(たとえば10~30μm程度)に形成されており、基台38の外周縁から径方向外側に突出している。
【0025】
図示の実施形態のブレード支持軸24の軸部34は、ハブブレード36の中央開口部38aの内径に対応する外径を備えており、ブレード支持軸24においては、ハブブレード36の中央開口部38aに軸部34が挿入され、複数(たとえば5個)のハブブレード36を軸部34で支持するようになっている。
【0026】
図示の実施形態では、
図2を参照することによって理解されるとおり、複数のブレード支持軸24のうち半数のブレード支持軸24にハブブレード36が支持されている。また、
図3に示すとおり、軸部34の先端側には、軸部34で支持したハブブレード36の飛び出しを防止するための複数のボールプランジャー42が周方向に間隔をおいて装着されている。
【0027】
図4に示すとおり、ブレード支持軸24の各基部32の内部には流路32aが形成されており、各流路32aの一端部に連通する複数の流路22aが無限軌道22に形成されている。各流路32aの他端部は、
図3に示す如く、軸部34よりも径方向外側の基部32の端面において開口している。
【0028】
また、
図2に示すとおり、支持壁28には、駆動歯車16の下方においてY軸方向に突出するエアーノズル44が設けられており、エアーノズル44は、高圧エアー供給手段(図示していない。)に接続されている。図示の実施形態では、無限軌道22の回転に伴うブレード支持軸24の軌道において最下端に位置するブレード支持軸24と、エアーノズル44の先端とが対面している。
【0029】
そして、軸部34の先端側に位置するハブブレード36が搬出された場合に、エアーノズル44から無限軌道22の流路22aを介して、最下端に位置するブレード支持軸24の基部32の流路32aに高圧エアーを供給することにより、軸部34に残されたハブブレード36を軸部34の先端側に押し出すことができるようになっている。ただし、ボールプランジャー42の作用によってハブブレード36が軸部34から落下することはない。
【0030】
(ワッシャーブレード45)
切削ブレード保管手段4に保管される切削ブレードは、上記ハブブレード36に限定されず、
図5に示すワッシャーブレード45であってもよい。ワッシャーブレード45は、環状に形成された切り刃から構成される。ワッシャーブレード45が切削ブレード保管手段4に保管される場合には、ブレード支持軸24の軸部34は、ワッシャーブレード45の中央開口部45aの内径に対応する外径Dに形成される。そして、ワッシャーブレード45の中央開口部45aに軸部34が挿入され、複数枚(たとえば10枚)のワッシャーブレード45が軸部34によって支持される。
【0031】
なお、切削ブレード保管手段4には、ハブブレード36またはワッシャーブレード45のどちらか一方のみが保管されるようになっていてもよく、あるいは、ハブブレード36およびワッシャーブレード45の双方が保管されるようになっていてもよい。
【0032】
(搬出入手段6)
図6を参照して搬出入手段6について説明する。搬出入手段6は、Z軸方向に延びるZ回転軸46と、Z回転軸46に放射状に連結され切削ブレードを吸引保持するブレード保持部48と、固定ナットを切削装置のスピンドルの先端に形成された雄ネジに螺着および螺脱する固定ナット保持部50とを少なくとも備える。
【0033】
図6に示すとおり、図示の実施形態の搬出入手段6は更にケーシング52を備え、ケーシング52は、正六角形状の天板54と、天板54の周縁から垂下する矩形板状の6個の側壁56とを有する。天板54の上面からは上記Z回転軸46が突出している。ケーシング52の内部には、Z回転軸46に連結されたモータ(図示していない。)が収容されている。
【0034】
図示の実施形態では、ケーシング52の6個の側壁56のうち、4個の側壁56にはブレード保持部48が装着され、2個の側壁56には固定ナット保持部50が装着されており、2個の固定ナット保持部50は対向する一対の側壁56に設けられている。
【0035】
(ブレード保持部48)
ブレード保持部48は円筒状に形成されており、ブレード保持部48の端面58には、上記ブレード支持軸24の軸部34および切削装置のスピンドルの先端部を受け入れ可能な円形の中央開口部60と、中央開口部60の周囲に周方向に等間隔をおいて配置された複数個の第一の吸引孔61とが設けられている。
【0036】
また、端面58の外周部には、環状突出部62が設けられている。環状突出部62には、周方向に等間隔をおいて配置された第二の吸引孔63が形成されている。第一・第二の吸引孔61、63は、吸引手段(図示していない。)に接続されている。
【0037】
なお、環状突出部62の内径は、ワッシャーブレード45を支持する軸部34の外径Dよりも若干大きく、環状突出部62は、ワッシャーブレード45を支持する軸部34を受け入れ可能になっている。
【0038】
ブレード保持部48は、切削ブレード保管手段4に保管されているハブブレード36の基台38にブレード保持部48の端面58が接触する位置に位置づけられた状態において、吸引手段によって第一の吸引孔61に吸引力を生成することによりハブブレード36を吸引保持する。
【0039】
また、ブレード保持部48は、ワッシャーブレード45を保持する場合には、吸引手段によって第二の吸引孔63に吸引力を生成して、切削ブレード保管手段4に保管されているワッシャーブレード45を吸引保持する。
【0040】
(固定ナット保持部50)
図6を参照して説明を続けると、固定ナット保持部50は、ケーシング52の側壁56に固定された円筒状のハウジング64と、ハウジング64の内部に回転自在に収容された環状の回転体66と、回転体66を回転させるモータ(図示していない。)とを含む。
【0041】
回転体66には、切削装置のスピンドルの先端部を受け入れ可能な中央開口部68が形成されている。回転体66の端面66aには、複数個の吸引孔70と、複数個のピン72とが交互に周方向に間隔をおいて設けられている。
【0042】
各吸引孔70は、吸引手段(図示していない。)に接続されている。ピン72は、回転体66に内蔵されたバネ(図示していない。)によって回転体66の端面66aから突出する位置(
図6に示す位置)に位置づけられているとともに、回転体66の内部に向かって押されると、バネが収縮して回転体66の内部に収容される。また、ピン72は、固定ナットに形成されたピン孔の位置に対応して配置されている。
【0043】
固定ナット保持部50においては、吸引手段で各吸引孔70に吸引力を生成して固定ナットを吸引保持するとともに、固定ナットに形成されたピン孔にピン72を挿入した状態において、モータによって回転体66を回転させることにより、切削装置のスピンドルにハブブレード36またはワッシャーブレード45を固定するための固定ナットをスピンドルの先端に形成された雄ネジに螺着および螺脱することができるようになっている。
【0044】
なお、固定ナットをスピンドルから螺脱する(取り外す)際に、固定ナット保持部50のピン72の位置と、固定ナットのピン孔の位置とがずれている場合でも、スピンドルに装着されている固定ナットの端面に回転体66の端面66aを位置づけて、ピン72を回転体66の内部に収容した後に、モータによって回転体66を回転させると、ピン72の位置がピン孔の位置に整合したときにバネによってピン72が押し出され、ピン孔にピン72が挿入される。
【0045】
上記のとおりに構成され得る搬出入手段6は、図示の実施形態では
図1に示すとおり、枠体74の内部に配設されている。枠体74は、昇降テーブル76にY軸方向に移動自在に支持され、昇降テーブル76は、ベース架台78にZ軸方向に昇降自在に支持されている。
【0046】
(枠体74)
図1とともに
図7を参照して説明すると、枠体74は、矩形板状の底部80と、底部80の上面四隅から上方に延びる4個の支柱82と、各支柱82の上端に固定された板状の天井部84(
図1参照。)とを含む。底部80の下面には、Y軸方向に延びる溝86aが形成された被ガイド部材86がX軸方向に間隔をおいて一対設けられている。
【0047】
(昇降テーブル76)
昇降テーブル76は、矩形板状の天板88と、天板88の下面四隅から下方に延びる4個の円柱状の脚部90とを含む。天板88の上面には、X軸方向に間隔をおいてY軸方向に延びる一対のガイドレール92が設けられており、一対のガイドレール92は、枠体74の一対の被ガイド部材86の溝86aに摺動自在に嵌合している。
【0048】
(Y軸方向位置付け手段8)
また、昇降テーブル76の天板88の上面には、Y軸方向位置付け手段8が設けられている。Y軸方向位置付け手段8は、一対のガイドレール92間においてY軸方向に延びるボールねじ94と、ボールねじ94を回転させるモータ96とを有する。ボールねじ94のナット部(図示していない。)は、枠体74の底部80の下面に固定されている。
【0049】
Y軸方向位置付け手段8においては、ボールねじ94によりモータ96の回転運動を直線運動に変換して枠体74に伝達し、一対のガイドレール92に沿って枠体74をY軸方向に移動させる。このように、搬出入手段6が配設された枠体74は、昇降テーブル76に配設されたY軸方向に延びるガイドレール92に摺動可能に支持され、Y軸方向位置付け手段8によって切削ブレード保管手段4に対してY軸方向の作用位置と退避位置とに位置付けられるようになっている。
【0050】
上記作用位置は、搬出入手段6のブレード保持部48が切削ブレード保管手段4に接近した位置であって、切削ブレード保管手段4に支持されている切削ブレードをブレード保持部48によって吸引保持可能な位置である。また、上記退避位置は、上記作用位置よりも搬出入手段6のブレード保持部48が切削ブレード保管手段4から離間した位置である。
【0051】
(ベース架台78)
図7に示すとおり、ベース架台78は、フレーム98と、フレーム98の上部に固定された矩形状のベース板100とを含む。ベース板100の四隅には、昇降テーブル76の脚部90が摺動自在に挿入される4個の円形孔102が形成されている。また、ベース板100の中央部には雌ネジ104が形成されている。
【0052】
(Z軸移動手段10)
図7を参照して説明を続けると、昇降テーブル76およびベース架台78には、Z軸移動手段10が連結されている。Z軸移動手段10は、Z軸方向に延びるボールねじ106と、ボールねじ106を回転させるモータ108と、モータ108の上端に固定された連結板110とを含む。ボールねじ106は、ベース板100の雌ネジ104に螺合している。連結板110は、昇降テーブル76の天板88の下面にボルト(図示していない。)等の適宜の連結手段によって固定されている。
【0053】
Z軸移動手段10においては、ボールねじ106によりモータ108の回転運動を直線運動に変換し、ベース架台78に対して昇降テーブル76を昇降させることによって、搬出入手段6が配設された枠体74をZ軸方向に移動させる。
【0054】
(X軸移動手段12)
図8を参照して説明すると、X軸移動手段12は、枠体74に装着された屈曲アーム112と、屈曲アーム112を作動させる第一のモータ114および第二のモータ115とを含む。屈曲アーム112は、スペーサ116を介して枠体74の天井部84の下面に揺動自在に連結された第一のアーム片118と、第一のアーム片118の下面に揺動自在に連結された第二のアーム片120とを有する。
【0055】
スペーサ116は、第一のアーム片118の一端部に配置されている。第一のアーム片118は、スペーサ116側を揺動中心として天井部84に連結されている。また、第一のアーム片118の他端部の上面にもスペーサ122が設けられている。第二のアーム片120は、スペーサ122側を揺動中心として第一のアーム片118に連結されている。
【0056】
第二のアーム片120の先端(スペーサ122とは反対側の端部)には、円形孔(図示していない。)が設けられている。この円形孔には、搬出入手段6のZ回転軸46が挿入され、Z回転軸46は第二のアーム片120に回転不能に固定される。Z回転軸46に連結されている搬出入手段6のモータが駆動すると、第二のアーム片120に対して搬出入手段6のケーシング52が回転し、ブレード保持部48および固定ナット保持部50が任意の向きに位置づけられる。このように、搬出入手段6は、屈曲アーム112の先端にZ回転軸46を介して連結されているとともに、屈曲アーム112を介して枠体74に配設されている。
【0057】
X軸移動手段12においては、第一のモータ114によって、スペーサ116側を揺動中心として第一のアーム片118を揺動させるとともに、第二のモータ115によって、スペーサ122側を揺動中心として第二のアーム片120を揺動させることにより、屈曲アーム112を屈曲または伸長させ、搬出入手段6をX軸方向に移動させるようになっている。
【0058】
次に、
図9ないし
図14を参照して、上述した補助装置2が連結される切削装置170について説明する。
【0059】
(切削装置170)
図9に示すとおり、切削装置170は、被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブル172と、チャックテーブル172に保持された被加工物を切削する切削ブレードを固定ナットで装着した切削手段174と、チャックテーブル172をX軸方向に加工送りするX軸送り手段176と、切削手段174をX軸方向と直交するY軸方向に割り出し送りするY軸送り手段178と、X軸方向およびY軸方向と直交するZ軸方向に切削手段174を切り込み送りするZ軸送り手段180とを備える。
【0060】
(チャックテーブル172)
図9および
図10を参照して説明すると、切削装置170は、基台182(
図9参照。)の上面にX軸方向に移動自在に設けられたX軸可動板184と、X軸可動板184の上面に固定された支柱186と、支柱186の上端に固定されたカバー板188とを備える。カバー板188には、円形開口188aが形成されている。チャックテーブル172は、支柱186の上端に回転自在に搭載され、カバー板188の円形開口188aを通って上方に延びている。チャックテーブル172は、支柱186に内蔵されたモータ(図示していない。)によってZ軸方向を軸心として回転される。
【0061】
図10に示すとおり、チャックテーブル172の上端部分には、吸引手段(図示していない。)に接続された多孔質の円形状の吸着チャック190が配置されている。チャックテーブル172においては、吸引手段で吸着チャック190の上面に吸引力を生成することにより、吸着チャック190の上面に載せられた被加工物を吸引保持するようになっている。
【0062】
このようにチャックテーブル172においては、吸着チャック190の上面が被加工物を保持する保持面となっており、保持面はX軸方向およびY軸方向で規定されるXY平面上に位置づけられている。また、チャックテーブル172の周縁には、周方向に間隔をおいて複数のクランプ192が配置されている。
【0063】
(X軸送り手段176)
図10に示すとおり、X軸送り手段176は、X軸可動板184に連結されX軸方向に延びるボールねじ198と、ボールねじ198を回転させるモータ200とを有する。X軸送り手段176は、ボールねじ198によりモータ200の回転運動を直線運動に変換してX軸可動板184に伝達し、基台182の案内レール182aに沿ってX軸可動板184を移動させるとともに、チャックテーブル172をX軸方向に加工送りする。
【0064】
図9に示すとおり、切削装置170は、チャックテーブル172を跨って配置された門型のフレーム202を含む。フレーム202は、Y軸方向に間隔をおいて基台182の上面から上方に延びる一対の支柱204と、一対の支柱204の上端間に架け渡されY軸方向に延びる梁206とを有する。
【0065】
(切削手段174)
切削手段174は、梁206の片側の側面(
図9において背面側の側面)にY軸方向に間隔をおいて一対設けられている。図示の実施形態の切削装置170においては、切削ブレードが対面するように一対の切削手段174が設けられており、チャックテーブル172に保持された被加工物を一対の切削ブレードによって同時に切削加工を施すことができるようになっている。なお、切削手段174は1個であってもよい。
【0066】
図11に示すとおり、各切削手段174は、Y軸方向に移動自在に梁206の片側の側面に支持される矩形状のY軸可動部材208と、Y軸可動部材208にZ軸方向に昇降自在に支持された断面L字状のZ軸可動部材210と、Z軸可動部材210の下端に固定されたスピンドルハウジング212とを備える。
【0067】
Y軸可動部材208の片側の側面(
図11において手前側の側面)には、Z軸方向に間隔をおいてY軸方向に延びる一対の被案内溝208aが形成され、被案内溝208aは、梁206の片側の側面において上下方向に間隔をおいてY軸方向に延びる一対の案内レール(図示していない。)に摺動自在に連結される。
【0068】
(Y軸送り手段178)
Y軸送り手段178は、梁206の片側の側面においてY軸方向に延びるボールねじ214と、ボールねじ214を回転させるモータ216とを有する。ボールねじ214はY軸可動部材208に連結されている。Y軸送り手段178は、ボールねじ214によりモータ216の回転運動を直線運動に変換してY軸可動部材208に伝達し、梁206の片側の側面に付設された案内レールに沿ってY軸可動部材208をY軸方向に割り出し送りする。
【0069】
Y軸可動部材208の他側の側面(
図11において背面側の側面)には、Y軸方向に間隔をおいてZ軸方向に延びる一対の案内レール(図示していない。)が形成されており、Z軸可動部材210は、Y軸可動部材208の一対の案内レールに摺動自在に連結される一対の被案内溝(図示していない。)を有する。
【0070】
(Z軸送り手段180)
Z軸送り手段180は、Z軸可動部材210に連結されZ軸方向に延びるボールねじ(図示していない。)と、このボールねじを回転させるモータ218とを有する。Z軸送り手段180は、ボールねじによりモータ218の回転運動を直線運動に変換してZ軸可動部材210に伝達し、Y軸可動部材208の案内レールに沿ってZ軸可動部材210をZ軸方向に切り込み送りする。
【0071】
図12を参照して説明すると、スピンドルハウジング212には、Y軸方向を軸心として回転自在に円柱状のスピンドル220が支持されているとともに、スピンドル220を回転させるモータ(図示していない。)が収容されている。スピンドル220の先端には、被加工物を切削する切削ブレードが固定ナット222により着脱自在に固定されている。なお、
図12には、切削ブレードとしてハブブレード36がスピンドル220に固定されている例が示されている。
【0072】
スピンドルハウジング212の先端には、切削ブレードを覆うブレードカバー224が装着されている。ブレードカバー224は、スピンドルハウジング212の先端に固定された第一のカバー部材224aと、第一のカバー部材224aの先端に移動自在に装着された第二のカバー部材224bとを有する。第二のカバー部材224bは、エアシリンダ等の適宜のアクチュエータ(図示していない。)によってX軸方向に移動されるようになっており、切削ブレードの交換時には
図12に示す開放位置に位置づけられ、切削加工時には
図11に示す閉塞位置に位置づけられる。
【0073】
図13に示すとおり、スピンドル220の先端側外周面には、径方向外側に突出する環状のマウントフランジ226が設けられている。マウントフランジ226の先端面の径方向内側部分には環状の凹所226aが形成されており、マウントフランジ226の先端面の外周側部分は、軸方向に突出した環状の受け部226bとなっている。また、マウントフランジ226よりも更に先端側のスピンドル220の外周面には、雄ネジ228が形成されている。
【0074】
そして、切削ブレードとしてハブブレード36がスピンドル220に装着される場合には、ハブブレード36の中央開口部38aがスピンドル220の先端部に嵌合し、スピンドル220の雄ネジ228と固定ナット222とが螺着(締結)されることにより、マウントフランジ226の受け部226bと固定ナット222とにハブブレード36が挟み込まれてスピンドル220の先端に着脱自在に固定される。また、固定ナット222の側面には、搬出入手段6の固定ナット保持部50のピン72が挿入される複数個のピン孔222aが周方向に等間隔をおいて形成されている。
【0075】
また、切削ブレードとしてワッシャーブレード45がスピンドル220に装着される場合には、
図14に示すように、マウントフランジ226の受け部226bと環状の装着フランジ229とでワッシャーブレード45が挟み込まれた状態で、スピンドル220の雄ネジ228と固定ナット222とが螺着(締結)されることにより、ワッシャーブレード45がスピンドル220の先端に着脱自在に固定される。
【0076】
なお、装着フランジ229の裏面には、ワッシャーブレード45の中央開口部45aの内径に対応する外径D(切削ブレード保管手段4の軸部34の外径Dと同一である。)を有する環状の突出部229aが設けられている。そして、ワッシャーブレード45がスピンドル220に固定される際には、ワッシャーブレード45の中央開口部45aが突出部229aに嵌め合わされる。
【0077】
図9に示すとおり、フレーム202の梁206の他側の側面(
図9において手前側の側面)には、チャックテーブル172に保持された被加工物を撮像する一対の撮像手段230がY軸方向に移動自在に装着されているとともに、撮像手段230をY軸方向に移動させる一対の移動手段232が装着されている。
【0078】
移動手段232は、梁206の他側の側面においてY軸方向に延びるボールねじ234と、ボールねじ234を回転させるモータ236とを有する。ボールねじ234は撮像手段230に連結されている。そして、移動手段232は、モータ236の回転運動を直線運動に変換して撮像手段230に伝達し、梁206の他側の側面に付設された案内レール206aに沿って撮像手段230をY軸方向に移動させる。なお、撮像手段230は1個であってもよい。
【0079】
(切削加工)
切削装置170を用いて、ウエーハ等の被加工物に対して切削加工を施す際は、まず、チャックテーブル172に被加工物を吸着させる。次いで、X軸送り手段176でチャックテーブル172を撮像手段230の下方に移動させるとともに、移動手段232で撮像手段230のY軸方向位置を調整する。次いで、撮像手段230で上方から被加工物を撮像して被加工物の切削領域を検出する。
【0080】
次いで、撮像手段230で検出した被加工物の切削領域に基づいて、チャックテーブル172を回転させ、切削手段174の切削ブレードに対する被加工物の切削領域の向きを調整する。次いで、X軸送り手段176でチャックテーブル172をX軸方向に移動させるとともに、Y軸送り手段178でスピンドルハウジング212をY軸方向に移動させ、被加工物の切削領域の上方に一対の切削ブレードを位置づける。
【0081】
次いで、Z軸送り手段180でスピンドルハウジング212を下降させ、高速回転させた切削ブレードの切り刃を被加工物の切削領域に切り込ませるとともに、切削ブレードの切り刃を切り込ませる部分に切削水を供給しながら、チャックテーブル172をX軸方向に加工送りすることによって、被加工物の切削領域に所定の切削加工を施す。Y軸送り手段178でスピンドルハウジング212をY軸方向に割り出し送りしながら、上記切削加工を適宜繰り返し、被加工物の切削領域のすべてに切削加工を施す。切削工程が終了した切削加工済みの被加工物は次工程に搬送される。
【0082】
(切削ブレードの交換)
切削工程を繰り返し実施すると切削ブレードは磨耗し、切削ブレードの磨耗が所定量に達すると切削精度が維持されなくなるため、スピンドル220に装着されている切削ブレードを新たな切削ブレードに交換する必要がある。また、スピンドル220に装着されている切削ブレードの磨耗が所定量に達していない場合でも、前に切削加工を施した被加工物の素材と異なる素材の被加工物に切削加工を施すときは、被加工物の素材に応じた切削ブレードに交換する必要が生じることもある。
【0083】
図示の実施形態では
図15に示すとおり、切削装置170の切削ブレードを自動的に交換できる補助装置2が切削装置170に連結されており、以下、補助装置2を用いてハブブレード36を交換する方法について説明する。
【0084】
図15に示すとおり、補助装置2は、切削装置170のX軸方向奥側に配置されており、ユーザーに既に納品した切削装置170に後から装着することができるようになっている。補助装置2を用いて、切削装置170に装着されている切削ブレードを交換する際は、まず、切削ブレード保管手段4の無限軌道22を回転させ、切削装置170に搬入すべき新たなハブブレード36を支持しているブレード支持軸24を所定位置(たとえば、ブレード支持軸24の軌道における最下端の位置)に位置づける。
【0085】
次いで、
図16に示すとおり、搬出入手段6のZ回転軸46に連結されているモータでケーシング52を回転させ、ブレード保持部48が装着されているケーシング52の側壁56をX軸方向に沿わせ、ブレード保持部48を切削ブレード保管手段4に対面させる。
【0086】
また、X軸移動手段12およびZ軸移動手段10を作動させ、上記所定位置のブレード支持軸24の軸部34をブレード保持部48の中央開口部60(
図6参照。)に挿入することができるように、ブレード保持部48のX軸方向位置およびZ軸方向位置を調整する。
【0087】
次いで、
図17に示すとおり、Y軸方向位置付け手段8によって枠体74をY軸方向に移動させ、ブレード支持軸24に支持されているハブブレード36をブレード保持部48によって保持可能な作用位置に搬出入手段6を位置づける。これによって、上記所定位置のブレード支持軸24の軸部34をブレード保持部48の中央開口部60に挿入するとともに、軸部34の先端側に位置するハブブレード36の端面にブレード保持部48の端面58を接触させる。次いで、ブレード保持部48の第一の吸引孔61に吸引力を生成し、軸部34の先端側に位置するハブブレード36をブレード保持部48で吸引保持する。
【0088】
次いで、Y軸方向位置付け手段8を作動させ、搬出入手段6を切削ブレード保管手段4からY軸方向に離間させて退避位置に位置づける。次いで、搬出入手段6のケーシング52を180°回転させ、ハブブレード36を吸引保持したブレード保持部48の反対側のブレード保持部48を切削ブレード保管手段4に対面させる。
【0089】
次いで、Y軸方向位置付け手段8を作動させ、反対側のブレード保持部48によってブレード支持軸24のハブブレード36を保持可能な作用位置に搬出入手段6を位置づける。次いで、反対側のブレード保持部48の第一の吸引孔61に吸引力を生成し、軸部34の先端側に位置するハブブレード36をブレード保持部48によって吸引保持する。これによって、4個のブレード保持部48のうち対向する一対のブレード保持部48で、新たなハブブレード36を吸引保持した状態となる。
【0090】
次いで、
図18に示すとおり、Y軸方向位置付け手段8によって枠体74をY軸方向に移動させるとともに、Z軸移動手段10で昇降テーブル76をZ軸方向に移動させる。これによって、切削ブレード保管手段4から搬出入手段6を離間させて退避位置に位置づけるとともに、切削装置170に対する搬出入手段6のY軸方向位置およびZ軸方向位置を調整する。位置調整後の搬出入手段6のY軸方向位置は、切削装置170の一対の切削手段174の間であり、位置調整後の搬出入手段6のZ軸方向位置は、チャックテーブル172の保持面よりも上方である。
【0091】
次いで、
図19に示すとおり、X軸移動手段12によって搬出入手段6をX軸方向に移動させ、一対の切削手段174に対する搬出入手段6のX軸方向位置を調整する。具体的には、搬出入手段6の一対のブレード保持部48で吸引保持している新たな一対のハブブレード36の中心のX軸方向位置と、一対の切削手段174に装着されている一対のハブブレード36の中心のX軸方向位置とを整合させる。
【0092】
また、補助装置2のZ軸移動手段10または切削装置170のZ軸送り手段180を作動させ、ブレード保持部48のハブブレード36の中心のZ軸方向位置と、切削手段174のハブブレード36の中心のZ軸方向位置とを整合させる。
【0093】
次いで、搬出入手段6のケーシング52を60°回転させ、一対の固定ナット保持部50を一対の切削手段174のハブブレード36に対面させる。なお、搬出入手段6を前進させる前に、ケーシング52を60°回転させておいてもよい。
【0094】
次いで、一対の切削手段174のそれぞれのブレードカバー224の第二のカバー部材224bを開放位置(
図12参照。)に位置づける。次いで、切削装置170のY軸送り手段178によって切削手段174をY軸方向に移動させ、スピンドル220にハブブレード36を固定している固定ナット222を固定ナット保持部50の回転体66の端面66aに接触させる。そうすると、固定ナット保持部50のピン72が固定ナット222に押されて回転体66の内部に収容されるとともに、スピンドル220の先端が回転体66の中央開口部68に収容される。
【0095】
次いで、固定ナット保持部50のモータで回転体66を回転させると、各ピン72が固定ナット222のピン孔222aと合致したときに、各ピン72がピン孔222aに嵌合し、回転体66の回転運動が各ピン72を介して固定ナット222に伝達され、固定ナット222が緩む。これによって、切削手段174のスピンドル220の雄ネジ228から固定ナット222を螺脱する(取り外す)ことができる。また、固定ナット保持部50の各吸引孔70に吸引力を生成し、取り外した固定ナット222を固定ナット保持部50で吸引保持する。
【0096】
次いで、Y軸送り手段178によって切削手段174を搬出入手段6から離間させるとともに、搬出入手段6のケーシング52を60°回転させ、ハブブレード36を吸引保持していない空のブレード保持部48を切削手段174のハブブレード36に対面させる。
【0097】
次いで、Y軸送り手段178によって切削手段174を搬出入手段6に接近させ、切削手段174のスピンドル220をブレード保持部48の中央開口部60に挿入するとともに、切削手段174のハブブレード36の端面に、空のブレード保持部48の端面58を接触させる。次いで、ブレード保持部48の第一の吸引孔61に吸引力を生成し、切削手段174のハブブレード36をブレード保持部48で吸引保持する。
【0098】
次いで、Y軸送り手段178によって切削手段174を搬出入手段6から離間させるとともに、搬出入手段6のケーシング52を60°回転させ、新たなハブブレード36を吸引保持しているブレード保持部48を切削手段174のスピンドル220に対面させる。
【0099】
次いで、Y軸送り手段178によって切削手段174を搬出入手段6に接近させ、スピンドル220を新たなハブブレード36の中央開口部38aに挿入して、スピンドル220のマウントフランジ226の受け部226bにハブブレード36の端面を接触させる。次いで、ブレード保持部48の吸引力を解除し、ブレード保持部48からスピンドル220に新たなハブブレード36を受け渡す。
【0100】
次いで、Y軸送り手段178によって切削手段174を搬出入手段6から離間させるとともに、搬出入手段6のケーシング52を60°回転させ、取り外した固定ナット222を吸引保持している固定ナット保持部50を切削手段174のスピンドル220に対面させる。
【0101】
次いで、Y軸送り手段178によって切削手段174を搬出入手段6に接近させ、固定ナット保持部50で吸引保持した固定ナット222をスピンドル220の先端部に嵌合させる。次いで、固定ナット222を取り外したときとは逆方向に固定ナット保持部50のモータを作動させて固定ナット222を回転させ、スピンドル220の雄ネジ228に固定ナット222を螺着(締結)させる。
【0102】
これによって、切削手段174に装着すべき新たなハブブレード36をスピンドル220のマウントフランジ226の受け部226bと固定ナット222とで挟み込んでスピンドル220に固定することができる。
【0103】
次いで、固定ナット保持部50の吸引力を解除した後、切削手段174のブレードカバー224の第二のカバー部材224bを閉塞位置に位置づける。なお、上述したとおりの固定ナット222およびハブブレード36の取り外し、取り付けについては、一対の切削手段174に対して同時に行ってもよく、別々に行ってもよい。
【0104】
次いで、搬出入手段6を後退させるとともに、搬出入手段6のケーシング52を60°回転させ、取り外した一対のハブブレード36の一方を切削ブレード保管手段4に対面させる。また、切削ブレード保管手段4の無限軌道22を回転させ、ハブブレード36を支持していない空のブレード支持軸24を所定位置(たとえば、ブレード支持軸24の軌道における最下端の位置)に位置づける。
【0105】
次いで、X軸移動手段12およびZ軸移動手段10を作動させ、ブレード保持部48で吸引保持している一方のハブブレード36の中央開口部38aに上記所定位置のブレード支持軸24の軸部34を挿入することができるように、ブレード保持部48のX軸方向位置およびZ軸方向位置を調整する。
【0106】
次いで、Y軸方向位置付け手段8によって枠体74をY軸方向に移動させ、ブレード保持部48で吸引保持している一方のハブブレード36の中央開口部38aに上記所定位置のブレード支持軸24の軸部34を挿入するとともに、一方のハブブレード36の端面をブレード支持軸24の基部32の端面に接触させる。次いで、ブレード保持部48の吸引力を解除し、取り外した一対のハブブレード36の一方をブレード支持軸24に受け渡す。
【0107】
また、Y軸方向位置付け手段8によって搬出入手段6を切削ブレード保管手段4から離間させるとともに、搬出入手段6のケーシング52を180°回転させ、取り外した一対のハブブレード36の他方を吸引保持している反対側のブレード保持部48を切削ブレード保管手段4に対面させる。
【0108】
次いで、Y軸方向位置付け手段8によって枠体74をY軸方向に移動させ、反対側のブレード保持部48で吸引保持している他方のハブブレード36の中央開口部38aに上記所定位置のブレード支持軸24の軸部34を挿入するとともに、他方のハブブレード36の端面を、ブレード支持軸24に支持されているハブブレード36の端面に接触させる。次いで、ブレード保持部48の吸引力を解除し、取り外した一対のハブブレード36の他方をブレード支持軸24に受け渡す。
【0109】
以上のとおりであり、図示の実施形態の補助装置2においては、ユーザーに既に納品した切削装置170に後から装着して、切削装置170の切削手段174に装着された切削ブレードを交換することができるようになっている。
【0110】
なお、上記の例ではハブブレード36を交換する例について説明したが、図示の実施形態においては、ワッシャーブレード45を交換することもできる。
【0111】
ワッシャーブレード45を交換する際には、交換用の新たなワッシャーブレード45をブレード保持部48によって吸引保持しない状態で、切削装置170の一対の切削手段174間に搬出入手段6を位置づける。次いで、固定ナット保持部50を切削手段174に対面させ、固定ナット保持部50によって切削手段174のスピンドル220から固定ナット222を取り外す。
【0112】
次いで、ブレード保持部48を切削手段174に対面させた後、ブレード保持部48の第一の吸引孔61に吸引力を生成し、ブレード保持部48によって装着フランジ229を吸引保持し、スピンドル220から装着フランジ229を取り外すと共に、第二の吸引孔63に吸引力を生成し、スピンドル220に装着されているワッシャーブレード45をブレード保持部48で保持する。
【0113】
次いで、搬出入手段6を切削ブレード保管手段4に移動させるとともに、装着フランジ229およびワッシャーブレード45を吸引保持しているブレード保持部48を切削ブレード保管手段4に対面させて第二の吸引孔63の吸引力を解除してワッシャーブレード45を切削ブレード保管手段4に保管する。次いで、装着フランジ229を吸引保持しているブレード保持部48の第一の吸引孔61に吸引力を生成し、交換用の新たなワッシャーブレード45をブレード保持部48で吸引保持する。すなわち、同一のブレード保持部48によって、装着フランジ229とともに、交換用の新たなワッシャーブレード45を吸引保持する。
【0114】
次いで、装着フランジ229および新たなワッシャーブレード45を保持しているブレード保持部48を切削手段174に対面させ、装着フランジ229および新たなワッシャーブレード45をスピンドル220に受け渡す。そして、固定ナット保持部50を切削手段174に対面させた後、固定ナット222をスピンドル220の雄ネジ228に螺着する。このように、補助装置2においては、ユーザーに既に納品した切削装置170に後から装着して、切削装置170のワッシャーブレード45を交換可能である。
【符号の説明】
【0115】
2:補助装置
4:切削ブレード保管手段
6:搬出入手段
8:Y軸方向位置付け手段
10:Z軸移動手段
12:X軸移動手段
14:回転軸
16:駆動歯車
18:回転軸
20:従動歯車
22:無限軌道
24:ブレード支持軸
36:ハブブレード(切削ブレード)
38a:中央開口部
45:ワッシャーブレード(切削ブレード)
45a:中央開口部
46:Z回転軸
48:ブレード保持部
50:固定ナット保持部
74:枠体
76:昇降テーブル
92:ガイドレール
112:屈曲アーム
170:切削装置
172:チャックテーブル
174:切削手段
176:X軸送り手段
178:Y軸送り手段
180:Z軸送り手段
220:スピンドル
222:固定ナット
228:雄ネジ(スピンドル)
229:装着フランジ