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特開2023-165624走査要素およびこの走査要素を備えた誘導式位置測定機構
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  • 特開-走査要素およびこの走査要素を備えた誘導式位置測定機構 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165624
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】走査要素およびこの走査要素を備えた誘導式位置測定機構
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
G01D5/245 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023065840
(22)【出願日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】22171709
(32)【優先日】2022-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】オリバー-ミヒャエル・セル
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ホイマン
(72)【発明者】
【氏名】マルク・オリバー・ティーマン
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA43
2F077AA46
2F077NN02
2F077NN09
2F077NN11
2F077QQ07
2F077TT06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】誘導式位置測定機構用の、比較的正確に働き、コンパクトで、かつ安価に製造可能な走査要素を提供すること。
【解決手段】本発明は、測定方向Uに沿った位置を測定するための、多層のプリント基板を含む走査要素に関する。プリント基板は、第1の受信導体路1.111を含む第1の受信トラックを有する。プリント基板はこれに加え、第1の導体列1.141および第2の導体列1.142を含む接続導線を有し、接続導線は第1の受信トラックを横切る。第1の導体列1.141および第2の導体列1.142は、接続導線の少なくとも1つの第1の区間S1内では、第1の導体列1.141が第2の導体列1.142に対して正の測定方向U+にずれて配置されるように、および接続導線の少なくとも1つの第2の区間内では、第2の導体列1.142が第1の導体列1.141に対して正の測定方向U+にずれて配置されるように走る。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定方向(U)に沿った位置を測定するための誘導式位置測定機構用の、プリント基板(1.1;1.1’)を含む走査要素(1;1’)であって、前記プリント基板(1.1;1.1’)が、
- 第1の層(A)および第2の層(B)を有し、
- 第1の受信導体路(1.111)を含む第1の受信トラック(1.11)を有し、かつ
- 第1の導体列(1.131;1.131’、1.141)および第2の導体列(1.132;1.132’、1.142)を含む接続導線(1.13;1.13’、1.14)を有し、前記接続導線(1.13;1.13’、1.14)が前記第1の受信トラック(1.11)を横切り、前記プリント基板(1.1;1.1’)がさらに、
a)第2の受信導体路(1.121)を含む第2の受信トラック(1.12)を有し、前記第1の導体列(1.131;1.131’)が一つの箇所で前記第2の受信導体路(1.121)と、および前記第2の導体列(1.132;1.132’)が別の箇所で前記第2の受信導体路(1.121)と電気的に結合されており、または
b)第1の励磁導体路(1.18)を有し、前記第1の導体列(1.141)が一つの箇所で前記第1の励磁導体路(1.18)と、および前記第2の導体列(1.142)が別の箇所で前記第1の励磁導体路(1.18)と電気的に結合されており、
前記第1の導体列(1.131;1.131’、1.141)および前記第2の導体列(1.132;1.132’、1.142)が、
- 前記接続導線(1.13;1.13’、1.14)の少なくとも1つの第1の区間(S1;S1’)内では、前記第1の導体列(1.131;1.131’、1.141)が前記第2の導体列(1.132;1.132’、1.142)に対して正の測定方向(U+)にずれて配置されるように、および
- 前記接続導線(1.13;1.13’、1.14)の少なくとも1つの第2の区間(S2;S2’)内では、前記第2の導体列(1.132;1.132’、1.142)が前記第1の導体列(1.131;1.131’、1.141)に対して正の測定方向(U+)にずれて配置されるように走る、走査要素(1;1’)。
【請求項2】
前記第1の受信導体路(1.111)が、前記第1の区間(S1;S1’)および/または前記第2の区間(S2;S2’)内では部分的に、前記第1の導体列(1.131;1.131’、1.141)および/または前記第2の導体列(1.132;1.132’、1.142)に平行に走る、請求項1に記載の走査要素(1;1’)。
【請求項3】
前記接続導線(1.13;1.13’、1.14)の少なくとも1つの第3の区間(S3)内では、前記第1の層(A)内の前記第1の導体列(1.131;1.131’、1.141)と前記第2の層(B)内の前記第2の導体列(1.132;1.132’、1.142)とが重なり合って走るように配置されている、請求項1または2に記載の走査要素(1;1’)。
【請求項4】
前記第1の区間(S1;S1’)および/または前記第2の区間(S2;S2’)内で、前記第1の導体列(1.131;1.131’、1.141)と前記第2の導体列(1.132;1.132’、1.142)とが部分的に平行に走る、請求項1から3のいずれか一項に記載の走査要素(1;1’)。
【請求項5】
前記第1の受信導体路(1.111)が、前記平行に走る第1と第2の導体列(1.131、1.141、1.132、1.142)の間で、前記導体列(1.131、1.141;1.132、1.142)と同じ層(A、B)内を走る、請求項4に記載の走査要素(1)。
【請求項6】
前記第1の導体列(1.131;1.131’、1.141)の軌道も前記第2の導体列(1.132;1.132’、1.142)の軌道も、前記第1の区間(S1;S1’)および/または前記第2の区間(S2;S2’)内で、前記第1の層(A)から前記第2の層(B)に移る、請求項1から5のいずれか一項に記載の走査要素(1;1’)。
【請求項7】
前記第1の区間(S1;S1’)内では部分区間に沿って、
- 前記第1の導体列(1.131;1.131’、1.141)が前記第1の層(A)内を走り、かつ
- 前記第1の受信導体路(1.111)も前記第1の層(A)内を走り、
前記部分区間内では前記第1の導体列(1.131;1.131’、1.141)が前記第1の受信導体路(1.111)に平行に走る、請求項1から6のいずれか一項に記載の走査要素(1;1’)。
【請求項8】
前記第1の受信トラック(1.11)が、前記第1の区間(S1;S1’)内では前記第2の層(B)内を走るさらなる第1の受信導体路(1.111)を含み、前記第1の導体列(1.131;1.131’、1.141)が前記部分区間内で、前記さらなる第1の受信導体路(1.111)を横切っている、請求項7に記載の走査要素(1;1’)。
【請求項9】
前記プリント基板(1.1;1.1’)が正確に2つの層(A、B)を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の走査要素(1;1’)。
【請求項10】
前記プリント基板(1.1;1.1’)が、
a)第2の受信導体路(1.121)を含む第2の受信トラック(1.12)を有し、前記第1の導体列(1.131;1.131’)が、前記第1の層(A)内の一つの箇所で前記第2の受信導体路(1.121)と電気的に結合されており、かつ前記第2の導体列(1.132;1.132’)が、前記第2の層(B)内の別の箇所で前記第2の受信導体路(1.121)と電気的に結合されており、または
b)第1の励磁導体路(1.18)を有し、前記第1の導体列(1.141)が、前記第1の層(A)内の一つの箇所で前記第1の励磁導体路(1.18)と電気的に結合されており、かつ前記第2の導体列(1.142)が、前記第2の層(B)内の別の箇所で前記第1の励磁導体路(1.18)と電気的に結合されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の走査要素(1;1’)。
【請求項11】
前記走査要素(1;1’)が土台(1.3)を有し、前記土台(1.3)上に前記プリント基板(1.1;1.1’)が配置されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の走査要素(1;1’)。
【請求項12】
前記土台(1.3)が金属素材からなる、請求項11に記載の走査要素(1;1’)。
【請求項13】
前記第1の受信トラック(1.11)および前記第2の受信トラック(1.12)が、軸(R)の周りで湾曲して配置されており、前記第1の受信トラック(1.11)が、前記軸(R)に対して前記第2の受信トラック(1.12)より径方向外側に配置されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の走査要素(1;1’)。
【請求項14】
前記第1の受信トラック(1.11)が、隙間なく360°にわたって前記軸(R)の周りを一周するように配置されている、請求項13に記載の走査要素(1;1’)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の走査要素(1;1’)およびスケール要素(2)を含む誘導式位置測定機構であって、前記スケール要素(2)が前記プリント基板(1.1;1.1’)に対し、前記測定方向(U)に直交に方向づけられている方向に離隔して配置されている、誘導式位置測定機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スケール要素に対する相対的な走査要素の位置を決定するための請求項1に基づく誘導式位置測定機構用の走査要素およびこのような走査要素を備えた位置測定機構に関する。
【0002】
誘導式位置測定機構は、例えば互いに対して相対的に回転可能な機械部分の角度位置を決定するための角度測定機器として使用される。誘導式位置測定機構ではしばしば、励磁トラックおよび受信トラックが例えば導体路の形態で、共通のたいていは多層のプリント基板上に施されており、このプリント基板は、例えば角度測定機器の固定子と固定的に結合されている。このプリント基板に対向してスケール要素が存在し、このスケール要素上には目盛構造が施されており、かつスケール要素は角度測定機器の回転子と回転不能に結合されている。励磁導線に、時間と共に交番する励磁電流が印加されると、受信トラック内で、回転子と固定子との間の相対回転中に角度位置に依存する信号が生成される。これらの信号はその後、評価電子機器内でさらに処理される。
【0003】
このような誘導式位置測定機構はしばしば、電気駆動装置のための測定機器として、相応の機械部分の相対運動または相対位置の決定に用いられる。この場合には、後続電子機器の生成された角度位置値が、駆動装置の制御のために、相応のインターフェイス構成を介して供給される。
【0004】
誘導式位置測定機構はさらに、軸に沿った長手方向変位を直接的に測定するためにもしばしば使用される。これに関しては上記の角度測定機器の場合と同じ測定原理が適用され、ただしこの場合、受信トラックおよび目盛構造は直線的な軸に沿って走る。
【背景技術】
【0005】
EP1881299B1から、2つの受信トラックを有し、それぞれの受信トラックの両側から外へと導かれる、位置測定機構が知られている。
本出願人のEP3702737B1では、2つの受信トラックを有し、接続導線が、外側の受信トラックの隙間を通って導かれる誘導式位置測定機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP1881299B1
【特許文献2】EP3702737B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の基礎となる課題は、誘導式位置測定機構用の、比較的正確に働き、コンパクトで、かつ安価に製造可能な走査要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は本発明により、請求項1の特徴によって解決される。
測定方向に沿った位置を測定するための誘導式位置測定機構に適しており、そのために決定されている走査要素は、第1の層および第2の層を有するプリント基板を含む。プリント基板はこれに加え、少なくとも1つの第1の受信導体路を含む第1の受信トラックと、第1の導体列および第2の導体列を含む少なくとも1つの接続導線とを有する。接続導線は第1の受信トラックを横切るまたは横断する。プリント基板はさらに、少なくとも1つの第2の受信導体路を含む第2の受信トラックを有する。第1の導体列は(第1の)箇所で第2の受信導体路と電気的に結合され、かつ第2の導体列は別の(第2の)箇所で第2の受信導体路と電気的に結合されており、これにより、第2の受信導体路によって受信された信号が導体列によって取り出され得る。その代わりにまたは付け加えると、プリント基板は第1の励磁導体路を有し、第1の導体列は(第3の)箇所で第1の励磁導体路と電気的に結合されており、かつ第2の導体列は別の(第4の)箇所で第1の励磁導体路と電気的に結合されており、これにより、第1の導体列および第2の導体列を介して励磁電流が第1の励磁導体路に導入され得る。第1の導体列および第2の導体列は、接続導線の少なくとも1つの第1の区間内では、第1の導体列が第2の導体列に対して正の測定方向にずれて配置されているように、および接続導線の少なくとも1つの第2の区間内では、第2の導体列が第1の導体列に対して正の測定方向にずれて配置されているように走る。
【0009】
測定方向は、直線方向または周方向もしくは接線方向であり得る。正の測定方向として、直線的な測定では例えば左方向(相対変位)をあてることができ、これに従って右方向が負の測定方向と見なされ得る。角度位置の測定では、つまり周方向では、例えば正の測定方向として時計回りの方向での測定方向が、および負の測定方向として反時計回りの方向での測定方向が規定され得る。とりわけ、第1の励磁導体路は周方向に沿ってまたは測定方向に沿って走る。
【0010】
第1の受信トラックおよび第2の受信トラックも、第1の励磁導体路も周方向に沿ってまたは測定方向に沿って走ることが有利である。
本発明のさらなる形態では、第1の導体列が第2の受信導体路と電気的に結合されている(第1の)箇所はプリント基板の第1の層内に、および第2の導体列が第2の受信導体路と電気的に結合されている別の(第2の)箇所は第2の層内に存在する。その代わりにまたは付け加えると、第1の導体列が第1の励磁導体路と電気的に結合されている(第3の)箇所は第1の層内に、および第2の導体列が第1の励磁導体路と電気的に結合されている別の(第4の)箇所は第2の層内に存在する。
【0011】
本発明の有利な形態では、第1の区間内では部分的に、第1の受信導体路と第1または第2の導体列とが、プリント基板の同じ層内を互いに平行に走る。その代わりにまたは付け加えると、第2の区間内では部分的に、第1の受信導体路と第1または第2の導体列とが、プリント基板の同じ層内を互いに平行に走る。
【0012】
接続導線の少なくとも1つの第3の区間内では、第1の層内の第1の導体列と第2の層内の第2の導体列とが重なり合って走るように配置されていることが有利である。この重なり合うという概念は、これらの導体列が、プリント基板に直交する方向に重なり合って平行な軌道で配置されているということである。
【0013】
本発明のさらなる形態では、第1の区間および/または第2の区間内で、第1の導体列と第2の導体列とは部分的に互いに平行に走る。この場合には第1の受信導体路は、とりわけ、平行に走る第1と第2の導体列の間の真ん中で、これらの導体列と同じ層内を走り得る。
【0014】
第1の導体列の軌道および第2の導体列の軌道が、第1の区間および/または第2の区間内で、第1の層から第2の層に移ることが有利である。
本発明の有利な形態では、第1の導体列は、第1の区間内では部分区間に沿って第1の層内を走り、かつ第1の受信導体路もこの領域内では第1の層内を走る。この部分区間内では第1の導体列は第1の受信導体路に平行に走る。任意選択で、第1の受信トラックは、第1の区間内で第2の層内を走るさらなる第1の受信導体路を含み、第1の導体列はこの部分区間内で、このさらなる第1の受信導体路を横切る。
【0015】
プリント基板の層とはここでは、プリント基板技術において通常であるように、導電性の層のことである。プリント基板は、例えばFR4コアを備えた剛性プリント基板として形成されていてもよい。その代わりにプリント基板は、薄いフレキシブルプリント基板または例えばポリアミドフィルムをベースとする導体フィルムとして形成されていてもよい。プリント基板は、1mm未満、有利には500μm未満、とりわけ200μm未満の厚さを有し得る。プリント基板の厚さが小さい場合にまさに、比較的厚い金属土台上にプリント基板が施されている場合が有利であり得る。
【0016】
第1の励磁導体路が励磁電流によって通電され得ることが有利であり、励磁電流は、通常は、時間と共に交番する電流強度を有する(交流電流または混合電流)。励磁電流は、電子部品によって発生させることができ、つまり励磁電流の軌道は電子部品によって成形可能である。電流強度と電圧強度との間に物理的な関連性が存在することにより、もちろん励磁電圧にも同じ考察が行われ得る。電子部品はプリント基板上に取り付けられていてもよい。本発明のさらなる形態では、第1の受信トラックおよび第2の受信トラックによって生成され得る信号が、とりわけ評価回路を構成する電子部品によってさらに処理され得る。
【0017】
つまり電子部品は、様々な電子回路の要素であることができ、すなわち異なる回路に割り当てられていてもよい。例えば特定の電子部品が、励磁電流を発生させるための回路の要素であることができ、またはさらなる電子部品が、信号の評価もしくはさらなる処理のためのさらなる回路の要素であり得る。
【0018】
本発明のさらなる形態では、プリント基板は正確に2つの層を有する。とりわけ、走査要素は土台を有してもよく、この土台上にプリント基板が配置されているかまたは施されている。
【0019】
土台が金属素材から製造されており、とりわけ板金として形成されていることが有利である。例えば土台は軟質磁性素材から製造されていてもよい。
本発明の有利な形態では、第1の受信トラックおよび第2の受信トラックは、軸の周りで湾曲して配置されており、第1の受信トラックは、軸に対して第2の受信トラックより径方向外側に配置されている。このような走査要素は、とりわけ角度位置の決定に用いられる。とりわけ、第1の受信トラックおよび第2の受信トラックは、隙間なく360°にわたって軸の周りを一周するように配置および形成されていてもよい。
【0020】
さらなる一態様に基づき、本発明は、走査要素およびスケール要素を備えた誘導式位置測定機構も含み、このスケール要素はプリント基板に対し、測定方向に直交に方向づけられている方向に離隔して配置されている。
【0021】
本発明の有利な形成形態は従属請求項から読み取られる。
本発明による走査要素のさらなる詳細および利点は、添付の図に基づく2つの例示的実施形態の以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】走査要素の一つの面の俯瞰図である。
図2】スケール要素の一つの面の俯瞰図である。
図3】走査要素の部分断面図である。
図4】接続導線を備えた走査要素の詳細俯瞰図である。
図5】接続導線の一つの詳細俯瞰図である。
図6】別の接続導線の詳細俯瞰図である。
図7】接続導線の詳細の立体俯瞰図である。
図8】第2の例示的実施形態に基づく接続導線を備えた走査要素の詳細俯瞰図である。
図9】第2の例示的実施形態に基づく接続導線の詳細俯瞰図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1および図2に基づき、スケール要素2に対する相対的な角度位置を捕捉するために使用され得る走査要素1を有する位置測定機構を用いて本発明が説明される。スケール要素2は、位置測定機構を組み立てた状態では走査要素1に対して軸Rの周りを相対的に回転可能に配置されている。軸Rは、図1および図2では図平面に直交に方向づけられている。この位置測定機構により、測定方向U(ここでは周方向)における位置、つまり角度位置が決定され得、ここでは、時計回りに方向づけられている正の測定方向U+と、反時計回りに方向づけられている負の測定方向U-とが区別され得る。
【0024】
走査要素1は、図3に基づいて複数の層A、B、ここでは正確に2つの層A、Bを有するプリント基板1.1を含む。紹介している例示的実施形態では、プリント基板1.1は、約100μmの厚さで非常に薄く形成されており、したがってここではまたフィルムと言われ得る。プリント基板1.1は、機械的補強のためにここでは、とりわけ金属素材からなり得る比較的厚い土台1.3上に施されている。この土台1.3上には約50μmの厚さの電気絶縁層1.4が配置されており、電気絶縁層1.4上には第2の層Bが施されている。さらなる約15μm厚の絶縁層1.5が、第2の層Bと第1の層Aとの間に存在する。最後に層A上に絶縁層1.6が存在し、この絶縁層1.6も約15μm厚である。両方の層A、Bはそれぞれ約12μm厚である。絶縁層1.4、1.5、1.6は、紹介される例示的実施形態ではポリイミドからなる。走査要素1は、スケール要素2を走査するために用いられる。
【0025】
プリント基板1.1は、第1の(内側の)励磁導体路1.18および第2の励磁導体路1.19を含む。励磁導体路1.18、1.19は、第1の層Aおよび第2の層B内を走る。
【0026】
角度情報を決定するために、プリント基板1.1上に第1の受信トラック1.11および第2の受信トラック1.12が配置されている。励磁導体路1.18、1.19は、第2の受信トラック1.12または第1の受信トラック1.11を取り囲んでおり、かつ測定方向Uまたは周方向に沿って走る。
【0027】
受信トラック1.11、1.12の各々が、紹介している例示的実施形態では、それぞれ受信導体路1.111、1.121(例えば図4を参照)を含み、受信導体路1.111、1.121は周方向にずれて配置されており、したがってずれに相応して4つの移相した信号をもたらし得る。図では、1つの同じ受信トラック1.11、1.12に属する受信導体路1.111、1.121に1つだけの符号が付されている。したがってつまり、例えば第1の受信トラック1.11のすべての受信導体路1.111に1つだけの符号が付されている。これに加え、第1の受信トラック1.11の第1の受信導体路1.111は、ビアと結合してプリント基板1.1の異なる層A、B内を走り、したがって交点では望ましくない短絡が回避される。同じことが、第2の受信トラック1.12の受信導体路1.121にも当てはまる。厳密に言えば、第1および第2の受信導体路1.111、1.121の各々が、それぞれ2つの平面または層A、Bに割り振られて並んでいる多くの導体片からなるのではあるが、以下ではこのような構造をまとめて、1つの受信導体路1.111、1.121と言う。図4図9では、導体路が第1の層A内だけを走る領域内の導体路は黒く示されている。これに加え、導体路が第2の層B内だけを走る領域内の導体路は黒い境界線によって白く示されている。最後に、導体路が重なり合って第1の層Aおよび第2の層B内を走る領域内の導体路は白黒破線で示されている。
【0028】
受信導体路1.111、1.121は、実質的に正弦波形にまたは正弦波状に形成されている、空間的に周期的な軌道を有する。第1の受信トラック1.11の受信導体路1.111は周期長λ1(図1)を有し、その一方で第2の受信トラック1.12の受信導体路1.121は周期長λ2を有する。紹介される例示的実施形態では、1つの受信トラック1.11、1.12内で隣接する受信導体路1.111、1.121は互いに対し、正弦波周期全体の1/8(周方向または測定方向Uに沿ってπ/4または45°)ずれて配置されている。受信導体路1.111、1.121は、一つには0°および90°の信号、もう一つには45°および135°の信号をもたらすように電気的に接続されている。0°および90°の信号から第1の位置信号を決定でき、45°および135°の信号から第1の位置信号に対して冗長な第2の位置信号が決定され得る。
【0029】
紹介している例示的実施形態では、第2の周期長λ2が第1の周期長λ1より小さい(λ2/λ1=7/8)。
走査要素1は、図1では概略的にしか図示されていない多数の電子チップ1.2を備えた電子回路を有する。電子回路は、紹介している例示的実施形態では、ASICチップも含む。
【0030】
第2の受信トラック1.12によって受信された信号は、電子回路に、とりわけ評価回路として働く領域に導かれなければならない。このためにプリント基板上には4つの接続導線1.13が存在し、接続導線1.13はそれぞれ第1の導体列1.131および第2の導体列1.132を有する。
【0031】
第1の導体列1.131(図5)は、第1の箇所で、例えば第2の受信導体路1.121(図4)の第1の端部で、第2の受信導体路1.121と電気的に結合または接触されている。この第1の箇所は、プリント基板1.1の第1の層A内に存在する。加えて第2の導体列1.132は、別の第2の箇所で、例えば第2の受信導体路1.121の第2の端部で、第2の受信導体路1.121と電気的に結合または接触されている。この別の第2の箇所は、プリント基板1.1の第2の層B内に存在し、紹介している例示的実施形態では、第1の導体列1.131の第1の箇所と第2の導体列1.132の別の第2の箇所が、プリント基板1.1の層構造内で重なり合う。この方式の接触により、受信された信号が、受信導体路1.121の端部で電圧の形態で取り出され得る。
【0032】
プリント基板1.1はこれに加え、第1の励磁導体路1.18に励磁電流を供給し得るように、同様に第1の導体列1.141および第2の導体列1.142を含むさらなる接続導線1.14を有する。第1の導体列1.141は、第3の箇所で、例えば第1の励磁導体路1.18の第1の端部で、第1の励磁導体路1.18と電気的に結合または接触されている。この第3の箇所は、プリント基板1.1の第1の層A内に存在する。加えて第2の導体列1.142は、別の第4の箇所で、例えば第1の励磁導体路1.18の第2の端部で、第1の励磁導体路1.18と電気的に結合または接触されている。この別の第4の箇所は、プリント基板1.1の第2の層B内に存在し、紹介している例示的実施形態では、第1の導体列1.141の第3の箇所と第2の導体列1.142の別の第4の箇所が重なり合う。この構成により、第1の励磁導体路1.18に励磁電流が供給される。
【0033】
プリント基板1.1は、接続導線1.13、1.14が第1の受信トラック1.11を横切るように形成されている。この関連で、第2の受信トラック1.12のための接続導線1.13により、第1の受信トラック1.11を横切る際に受け得るノイズ信号ができるだけ取り込まれないことが重要である。同様に、第1の励磁導体路1.18のための、接続導線1.14を通って流れる励磁電流が、第1の受信トラック1.11内で有意なノイズを引き起こすことが回避されるべきである。
【0034】
それ故に、図5に基づき第1の区間S1内では、第1の導体列1.131が第2の導体列1.132に対して正の測定方向U+にずれて配置されるよう第1の導体列1.131および第2の導体列1.132が走るように、接続導線1.13の軌道が形成されている。加えて接続導線1.13の第2の区間S2内では、第2の導体列1.132が第1の導体列1.131に対して正の測定方向U+にずれて配置されている。紹介している例示的実施形態では、そのうえ接続導線1.13の第3の区間S3内では、第1の層Aおよび第2の層B内の第1の導体列1.131および第2の導体列1.132が重なり合って走るように配置されている。つまり、導体列1.131、1.132はそれぞれ、一部の区間では第1の層A内を、一部の区間では第2の層B内を走る。層A、Bの間を移ることは、第1の導体列1.131の場合はビア1.1311によって、第2の導体列1.132の場合はビア1.1321によって行われる。
【0035】
図6に基づいて、第1の励磁導体路1.18の接続に用いられる接続導線1.14の軌道が解説され得る。ここでも第1の導体列1.141および第2の導体列1.142が、第1の区間S1内では第1の導体列1.141が第2の導体列1.142に対して正の測定方向U+にずれて配置されるように走る。加えて接続導線1.14の第2の区間S2内では、第2の導体列1.142が第1の導体列1.141に対して正の測定方向U+にずれて配置されている。紹介している例示的実施形態では、そのうえ接続導線1.14の第3の区間S3内では、第1の層Aおよび第2の層B内の第1の導体列1.141および第2の導体列1.142が重なり合って走るように配置されている。つまり、第1の導体列1.141と第2の導体列1.142は、プリント基板1.1に直交する方向に重なり合って走るように配置されている。第3の区間S3が全体では、接続導線1.14の長さの最大部分にわたって延びる。
【0036】
第1および第2の導体列1.141、1.142の軌道を立体的に見るために、図7が参照され得る。この図の左側からきて、1つの区間S3内では、最初はプリント基板1.1の第1の層A内の第1の導体列1.141と第2の層B内の第2の導体列1.142とが重なり合って走る。それ自体がノイズの影響を受けにくいこの配置は、その後の軌道では、接続導線1.14が第1の受信トラック1.11を横切らなければならないので維持され得ない。したがって第1および第2の導体列1.141、1.142の軌道が、先ずは両方の層A、B内で、同じ層A、B内の第1の受信導体路1.111に平行な部分区間に沿って導かれているように変えられる。この部分区間内では第1の層A内の第1の導体列1.141が、そこでは第2の層B内を走る第1の受信導体路1.111を横切る。加えて第2の層B内を走る第2の導体列1.142は、そこでは第1の層A内を走る第1の受信導体路1.111を横切る。第1および第2の導体列1.141、1.142は、これらの部分区間内ではビア1.1411、1.1412まで走り、そこでは、第1および第2の導体列1.141、1.142がさらに、プリント基板1.1の第1の層Aから第2の層Bに移っているかまたはその逆である。これに続いて図7ではさらに右側へ走りながら、第1および第2の導体列1.141、1.142が再びそれぞれの第1の受信導体路1.111に平行に方向づけられており、この平行性は、第1および第2の導体列1.141、1.142も走るそれぞれ同じ層A、B内の第1の受信導体路1.111それぞれに対してである。最後に第1および第2の導体列1.141、1.142は再び1つの第3の区間S3に入り、そこでは重なり合って配置されている。
【0037】
図2では、円板状の形状を有するスケール要素2が俯瞰図で示されている。スケール要素2は、図示した例示的実施形態ではエポキシ樹脂から製造されている支持体からなり、この支持体上に2つの目盛トラック2.1、2.2が配置されている。目盛トラック2.1、2.2はリング状に形成されており、かつ軸Rに対して同心円状に、異なる直径で支持体上に配置されている。目盛トラック2.1、2.2は、交互に配置された導電性目盛領域2.11、2.21と非導電性目盛領域2.12、2.22とのそれぞれ周期的なシーケンスから成る目盛構造を含む。導電性目盛領域2.11、2.21の材料として、示した例では銅が支持体上に施された。これに対し非導電性目盛領域2.12、2.22内では支持体がコーティングされなかった。2つの目盛トラック2.1、2.2を有する構成により、スケール要素2の角度位置はアブソリュート方式で決定され得る。スケール要素2の最も外側の目盛トラック2.1は、円周線に沿ってより多数の目盛領域2.11、2.12を有し、したがって目盛領域2.11、2.12により、角度位置の測定に関する最大分解能が達成可能である。
【0038】
組み立てられた状態では、走査要素1とスケール要素2とが軸方向の間隔または空隙をあけて向かい合っており、したがってスケール要素2と走査要素1とが相対的に回転すると、受信導体路1.111、1.121内で、それぞれの角度位置に依存する信号がそれぞれ誘導効果によって生成され得る。相応の信号が形成される前提条件は、励磁導体路1.18、1.19が、それぞれの走査される目盛構造の領域内で、時間と共に交番する電磁励起場を生成することである。図示した例示的実施形態では、励磁導体路1.18、1.19が、平行平面で電流に貫流される複数の単一導体路として形成されている。走査要素1の電子回路は、評価要素としてだけでなく、励磁制御要素としても働き、この励磁制御要素の制御下で励磁電流が発生または生成され、励磁電流はその後、励磁導体路1.18、1.19を貫流する。したがって励磁導体路1.18、1.19は、1つの同じ励磁制御要素によって、接続導線1.14を介して通電される。第1の励磁導体路1.18と第2の励磁導体路1.19は電気的に直列に接続されている。
【0039】
励磁導体路1.18、1.19が通電すると、その周りに管状または円筒形に方向づけられた電磁場が形成される。この生じている電磁場の力線は、励磁導体路1.18、1.19の周りを走り、この力線の方向は、既知のように励磁導体路1.18、1.19内の電流方向に依存する。導電性目盛領域2.11、2.21の領域で渦電流が誘導され、これにより、それぞれ角度位置に依存した場の変調が達成される。これに相応して受信トラック1.11、1.12により、それぞれ相対的な角度位置が測定され得る。受信導体路1.111、1.121はそれらの受信トラック1.11、1.12内で、それぞれ90°移相した信号をもたらすように配置されており、これにより回転方向の決定も行われ得る。受信トラック1.11、1.12によって生成される信号は、評価回路によってさらに処理される。
【0040】
図8および図9に基づいて第2の例示的実施形態が説明される。図8および図9は、第1の導体列1.131’および第2の導体列1.132’を含む接続導線1.13’を示しており、第1の導体列1.131’は一つの箇所で第2の受信導体路1.121と、および第2の導体列1.132’は別の箇所で第2の受信導体路1.121と電気的に結合されている。第2の例示的実施形態に基づく走査要素1’はこれに加え、励磁導体路1.18のためのさらなる接続導線も含み、この接続導線は図には示されていない。
【0041】
第1の導体列1.131’および第2の導体列1.132’は、接続導線1.13’の複数の第1の区間S1’(ここでは3つ)内では、第1の導体列1.131’が第2の導体列1.132’に対して正の測定方向U+にずれて配置されているように走る。紹介している第2の例示的実施形態では、第1の区間S1’は、接続導線1.13’の軌道内で互いに隣接して存在する。同様に、接続導線1.13’の複数の第2の区間S2’内では、第2の導体列1.132’が第1の導体列1.131’に対して正の測定方向U+にずれて配置されており、ここでは第2の区間S2’が互いに隣接して配置されている。これに従い、つまりここでは2つの第1の区間S1’の間に、導体列1.131’、1.132’が重なり合う1つの第3の区間S3’がある。同様に、第2の例示的実施形態では1つの第3の区間S3’が2つの第2の区間S2’の間に存在する。
【0042】
紹介している例示的実施形態に基づく走査要素1;1’により、一方では受信トラック内の隙間が必要ないので、また他方では接続導体路1.13、1.14、1.13’のレイアウトにより測定信号中のノイズが無視できるほど小さいので、位置測定機構の測定精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0043】
1;1’ 走査要素
1.1;1.1’ プリント基板
1.11 第1の受信トラック
1.111 第1の受信導体路
1.12 第2の受信トラック
1.121 第2の受信導体路
1.13;1.13’、1.14 接続導線
1.131;1.131’、1.141 第1の導体列
1.1311;1.1321;1.1411;1.1412 ビア
1.132;1.132’、1.142 第2の導体列
1.18 第1の励磁導体路
1.19 第2の励磁導体路
1.3 土台
1.4; 電気絶縁層
1.5;1.6 絶縁層
2 スケール要素
2.1;2.2 目盛トラック
2.11;2.21 導電性目盛領域
2.12;2.22 と非導電性目盛領域
A 第1の層
B 第2の層
R 軸
S1;S1’ 第1の区間
S2;S2’ 第2の区間
S3 第3の区間
U 測定方向
U+ 正の測定方向
U- 負の測定方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】