(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165658
(43)【公開日】2023-11-16
(54)【発明の名称】ウェハ支持装置および成膜処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231109BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20231109BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/31 C
C23C16/458
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023075753
(22)【出願日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】63/338,418
(32)【優先日】2022-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】相田 弘栄
(72)【発明者】
【氏名】森 幸博
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA06
4K030FA03
4K030GA02
4K030GA12
4K030KA45
5F045AA08
5F045AA15
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5F131EB54
5F131EB72
5F131EB78
(57)【要約】
【課題】ウェハ支持装置および成膜処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係るウェハ支持装置は、一方の表面に設けられたウェハ載置面および前記ウェハ載置面内に配置されたリフトピン用貫通孔を有するサセプタと、前記リフトピン用貫通孔に挿入されたリフトピンと、前記サセプタを昇降させる昇降装置と、を有し、前記サセプタの前記ウェハ載置面は凹凸が形成され、前記リフトピン用貫通孔と前記リフトピンとの間に通気路が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の表面に設けられたウェハ載置面および前記ウェハ載置面内に配置されたリフトピン用貫通孔を有するサセプタと、
前記リフトピン用貫通孔に挿入されたリフトピンと、
前記サセプタを昇降させる昇降装置と、を有し、
前記サセプタの前記ウェハ載置面は凹凸が形成され、
前記リフトピン用貫通孔と前記リフトピンとの間に通気路が形成されている、ウェハ支持装置。
【請求項2】
前記リフトピンは、軸部と、前記軸部よりも直径が大きい頭部とを有し、
前記リフトピン用貫通孔は、前記ウェハ載置面側に形成された前記リフトピンの前記頭部よりも直径が大きい頭部挿入部と、段差部を介して前記頭部挿入部と接続し、前記頭部挿入部よりも直径が小さく、前記リフトピンの前記軸部よりも直径が大きい軸部挿入部とを有し、
前記昇降装置により、前記サセプタを下部限界位置に移動させたときは、前記頭部と前記段差部とが分離し、前記昇降装置により、前記サセプタを上部限界位置に移動させたときは、前記頭部と前記段差部とは少なくとも一部に隙間が形成されるように係合する、請求項1に記載のウェハ支持装置。
【請求項3】
前記リフトピンの前記頭部は、前記リフトピン用貫通孔の前記段差部側の面の一部に欠損部を有する、請求項2に記載のウェハ支持装置。
【請求項4】
前記リフトピン用貫通孔は、前記段差部の一部に欠損部を有する、請求項2に記載のウェハ支持装置。
【請求項5】
前記ウェハ載置面は、複数個の突起を有する、請求項1に記載のウェハ支持装置。
【請求項6】
チャンバーと、前記チャンバーの内部に位置する請求項1に記載のウェハ支持装置と、を備える、成膜処理装置。
【請求項7】
一方の表面に設けられたウェハ載置面および前記ウェハ載置面内に配置されたリフトピン用貫通孔を有するサセプタと、
前記リフトピン用貫通孔に挿入されたリフトピンと、
前記サセプタを昇降させる昇降装置と、を有し、
前記サセプタの前記ウェハ載置面は凹凸が形成され、
前記ウェハ載置面内に、前記サセプタを貫通する通気孔が設けられている、ウェハ支持装置。
【請求項8】
チャンバーと、前記チャンバーの内部に位置する請求項7に記載のウェハ支持装置と、を備える、成膜処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハ支持装置および成膜処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CVD装置は、膜成分を含む原料ガスの化学反応によって生成した物質を、被処理基板(例えば、シリコンウェハ)の表面に堆積させることによって薄膜を成膜する成膜処理装置として知られている。CVD装置としては、プラズマCVD装置が広く利用されている。プラズマCVD装置では、原料ガスをプラズマ状態とし、活性な励起分子、ラジカル、イオンを生成させることによって、化学反応を促進させる。プラズマCVD装置は、チャンバー内に、成膜処理対象のウェハを支持するウェハ支持装置が配置されている。このウェハ支持装置の上方には、原料ガスをチャンバーの内部に供給するためのシャワーヘッドが配置されている。そして、シャワーヘッドとウェハ支持装置の間に高周波(RF)の電圧を印加することによってプラズマを発生させる。
【0003】
ウェハ支持装置として、サセプタと、昇降装置と、リフトピンとを有する構成のものが知られている(US2012/0149194)。サセプタは、ウェハが載置されるウェハ載置面を有する。サセプタのウェハ載置面にはリフトピン用貫通孔が設けられて、そのリフトピン用貫通孔にリフトピンが挿入されている。ウェハ載置面に配置されたウェハ表面に薄膜を成膜するときは、昇降装置により、サセプタを上昇させて、リフトピンがウェハ載置面から突出しないようにする。ウェハ表面に薄膜を成膜した後は、昇降装置により、サセプタが降下させて、リフトピンをウェハ載置面から突出させることにより、成膜処理後のウェハをウェハ載置面からリフトピンの頭部に移動させ、成膜処理後のウェハを取り出しやすくする。また、成膜処理時にウェハの裏面に付着するパーティクルの数を低減させるために、サセプタのウェハ載置面に凹凸を形成して、サセプタとウェハとの接触面積を低減させることが行われている(US10854498B2)。
【0004】
サセプタのウェハ載置面には、サセプタとウェハとの接触面積を低減させるために、ウェハ載置面に凹凸を設けることは有効である。しかしながら、ウェハ載置面に凹凸を設けると、プラズマCVD装置のチャンバー内を減圧したときに、ウェハとウェハ載置面との間に気体が残留することがある。ウェハとウェハ載置面との間に気体が残留していると、サセプタのウェハ載置面に配置したウェハが移動(スリップ)する要因となる。例えば、サセプタ昇降時にウェハが移動してウェハの配置場所がずれると、予定されていた位置に成膜を行うことが難しくなるなどの悪影響が生じるおそれがある。また、成膜処理中にウェハが移動すると、ウェハに薄膜を均一に成膜することが困難となるおそれがある。さらに、スリップによるウェハの移動が大きくなりすぎて、ウェハがサセプタからはみ出すと、ウェハをウェハ搬送用ロボットで外部に取り出すことが困難となるおそれがある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様に係るウェハ支持装置は、一方の表面に設けられたウェハ載置面および前記ウェハ載置面内に配置されたリフトピン用貫通孔を有するサセプタと、前記リフトピン用貫通孔に挿入されたリフトピンと、前記サセプタを昇降させる昇降装置と、を有し、前記サセプタの前記ウェハ載置面は凹凸が形成され、前記リフトピン用貫通孔と前記リフトピンとの間に通気路が形成されている。
【0006】
上記のウェハ支持装置において、前記リフトピンは、軸部と、前記軸部よりも直径が大きい頭部とを有し、前記リフトピン用貫通孔は、前記ウェハ載置面側に形成された前記リフトピンの前記頭部よりも直径が大きい頭部挿入部と、段差部を介して前記頭部挿入部と接続し、前記頭部挿入部よりも直径が小さく、前記リフトピンの前記軸部よりも直径が大きい軸部挿入部とを有し、前記昇降装置により、前記サセプタを下部限界位置に移動させたときは、前記頭部と前記段差部とが分離し、前記昇降装置により、前記サセプタを上部限界位置に移動させたときは、前記頭部と前記段差部とは少なくとも一部に隙間が形成されるように係合する構成とされていてもよい。
【0007】
上記のウェハ支持装置において、前記リフトピンの前記頭部は、前記リフトピン用貫通孔の前記段差部側の面の一部に欠損部を有する構成とされていてもよい。
【0008】
上記のウェハ支持装置において、前記リフトピン用貫通孔は、前記段差部の一部に欠損部を有する構成とされていてもよい。
【0009】
上記のウェハ支持装置において、前記ウェハ載置面は、複数個の突起を有する構成とされていてもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る成膜処理装置は、チャンバーと、前記チャンバーの内部に位置する上述の本発明の一態様に係るウェハ支持装置と、を備える。
【0011】
本発明の別の一態様に係るウェハ支持装置は、一方の表面に設けられたウェハ載置面および前記ウェハ載置面内に配置されたリフトピン用貫通孔を有するサセプタと、前記リフトピン用貫通孔に挿入されたリフトピンと、前記サセプタを昇降させる昇降装置と、を有し、前記サセプタの前記ウェハ載置面は凹凸が形成され、前記ウェハ載置面内に、前記サセプタを貫通する通気孔が設けられている。
【0012】
本発明の別の一態様に係る成膜処理装置は、チャンバーと、前記チャンバー)の内部に位置する上述の本発明の別の一態様に係るウェハ支持装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るプラズマCVD装置のチャンバーの一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すチャンバー内にウェハを搬入もしくは搬出するときの形態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係るサセプタの構成の第1の変形例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係るサセプタの構成の第2の変形例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係るサセプタの構成の第3の変形例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係るサセプタの構成の第4の変形例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係るプラズマCVD装置のチャンバーの別の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るプラズマCVD装置の一例を示す断面図である。
図2は、
図1のサセプタの拡大断面図であり、
図3は、
図1のサセプタの平面図であり、
図4は、
図1のVI-VI線断面図である。また、
図5は、
図1に示すチャンバー内にウェハを搬入もしくは搬出するときの形態を示す断面図である。
【0016】
図1~5に示すように、本実施形態のプラズマCVD装置100は、チャンバー10と、チャンバー10のウェハ出入口12を開閉するゲートバルブ20と、ウェハ1を支持するウェハ支持装置30と、チャンバー10の内部に原料ガスを導入するシャワーヘッド70と、を有する。
【0017】
チャンバー10は、略円筒体とされている。チャンバー10は、チャンバー本体11と蓋材19とを有する。チャンバー本体11と蓋材19は金属材料で形成されていてもよい。金属材料としては、例えば、アルミニウムを用いることができる。
【0018】
チャンバー本体11の側部には、ウェハ出入口12が設けられている。ウェハ出入口12の上には、第1絶縁部材17と第2絶縁部材18とが配置されている。第1絶縁部材17及び第2絶縁部材18の材料としては、Al2O3などのセラミック材料を用いることができる。第1絶縁部材17と第2絶縁部材18との間に、シャワーヘッド70が配置されていて、これにより、シャワーヘッド70は、チャンバー10に支持されている。
【0019】
チャンバー本体11の底部には、サセプタ昇降用貫通孔13が設けられている。また、チャンバー本体11の底部には、チャンバー本体11の側部に沿って排ガス用隔壁14が設けられている。排ガス用隔壁14の開口部15から排ガス用隔壁14の内側に流れた排ガスは、排ガス口16を通って外部に排出される。
【0020】
ゲートバルブ20は、扉部21と駆動部22とを有する。ウェハ出入口12は、駆動部22により扉部21を移動させることによって、外部に対して開閉できるようにされている。
【0021】
ウェハ支持装置30は、サセプタ40と、リフトピン50と、昇降装置60と、を有する。サセプタ40は、シャワーヘッド70に対向する表面に設けられたウェハ載置面41およびウェハ載置面41内に配置されたリフトピン用貫通孔44を有する。リフトピン用貫通孔44は、ウェハ載置面41からウェハ載置面41に対向する裏面42に貫通する。リフトピン用貫通孔44は、同心円上に等間隔で3つ形成されている。
【0022】
ウェハ載置面41は、表面に突起43が設けられている。突起43によってウェハ載置面41に凹凸が形成される。これより、サセプタ40とウェハ1との接触面積が低減されている。ウェハ載置面41は、例えば、直径が100mm以上500mmの円形状である。突起43は、例えば、直径が1mm以上5mm以下の範囲内にあって、高さが1μm以上100μm以下の範囲内にあるドーム状であってもよい。ウェハ載置面41の突起43の数は、例えば、10個以上100個以下の範囲内にある。なお、本実施形態では、突起43によってウェハ載置面41に凹凸を形成しているが、ウェハ載置面41をブラスト処理することによって、ウェハ載置面41に凹凸を形成してもよい。
【0023】
サセプタ40は、成膜時において、ヒータとして機能するよう、内部に発熱体を備えていてもよい。サセプタ40は、高熱伝導性材料が形成されていてもよい。高熱伝導性材料の例としては、窒化アルミニウムを挙げることができる。
【0024】
サセプタ40は、支持部材49によって支持されている。支持部材49のサセプタ40側の反対側の端部は、サセプタ昇降用貫通孔13を通って、チャンバー本体11の外部に突出している。サセプタ40と同様に高熱伝導性材料が形成されていてもよい。
【0025】
リフトピン50は、リフトピン用貫通孔44に挿入される。本実施形態では、リフトピン50は、軸部51と、軸部51よりも直径が大きい頭部52とを有する。サセプタ40のリフトピン用貫通孔44は、ウェハ載置面41側に形成された頭部挿入部44aと、段差部44bを介して頭部挿入部44aと接続する軸部挿入部44cを有する。頭部挿入部44aは、リフトピン50の頭部52よりも直径が大きい。軸部挿入部44cは、頭部挿入部44aよりも直径が小さく、リフトピン50の軸部51よりも直径が大きい。リフトピン50の頭部52は、リフトピン用貫通孔44の段差部44b側の面の一部に欠損部53を有する。
【0026】
これにより、リフトピン50の頭部52が頭部挿入部44aに収容されたときに、リフトピン50の頭部52と頭部挿入部44aとの間の隙間と、頭部52の欠損部53と、リフトピン50の軸部51と軸部挿入部44cとの間の隙間とによって、通気路55が形成される(
図2参照)。
【0027】
リフトピンは、金属材料で形成されていてもよい。金属材料としては、例えば、アルミニウムを用いることができる。
【0028】
昇降装置60は、支持部材49のサセプタ40側と反対側の端部に固定されている移動板61と上下方向に伸縮可能な伸縮部62とを有する。伸縮部62を伸ばして移動板61を下降させることによって、支持部材49と共にサセプタも下降する。一方、伸縮部62を縮めて移動板61を上昇させることによって、支持部材49と共にサセプタも上昇する。
【0029】
シャワーヘッド70は、原料ガス管71と接続されている。シャワーヘッド70は、多数の通気孔(不図示)を有している。シャワーヘッド70は、原料ガス管71から供給された原料ガスを、その通気孔を介してサセプタ40のウェハ載置面に配置されたウェハ1に向けて放出する。
【0030】
次に、本実施形態のプラズマCVD装置100を用いた成膜処理方法について説明する。
【0031】
プラズマCVD装置100を用いた成膜処理方法は、例えば、下記の工程を含んでいてもよい。
サセプタ40のウェハ載置面41の上面にウェハ1を載置する搬入工程、
ウェハ1に対してCVD法により成膜処理を行なう成膜工程、
成膜処理後のウェハ1を外部に取り出す搬出工程。
【0032】
搬入工程では、まず、昇降装置60を用いて、
図5に示すように、サセプタ40を下降させる。サセプタ40を下降させると、リフトピン50の頭部52とは反対側の軸部51の端部51aがチャンバー本体11の底面11aと接触する。これにより、リフトピン50は固定される。リフトピン50が固定された状態で、サセプタ40を下降させると、リフトピン50の頭部52とリフトピン用貫通孔44の段差部44bとが分離して、ウェハ1がウェハ載置面41から離脱する。本実施形態において、リフトピン50の頭部52とリフトピン用貫通孔44の段差部44bとが分離するサセプタ40の位置を下部限界位置という。サセプタ40を下部限界位置にまで下降させた状態で、ゲートバルブ20の駆動部22を駆動させて扉部21を移動させて、ウェハ出入口12を外部に開口させる。そして、リフトピン50の頭部52にウェハ1を配置する。次いで、ゲートバルブ20の駆動部22を駆動させて扉部21を移動させて、ウェハ出入口12を閉口させる。そして、昇降装置60を用いて、サセプタ40を上昇させる。サセプタ40を上昇させると、リフトピン50の頭部52が頭部挿入部44aに収容され、リフトピン50の頭部52の一部と、リフトピン用貫通孔44の段差部44bとが接触する。リフトピン50の頭部52とリフトピン用貫通孔44の段差部44bとが接触した状態で、サセプタ40を上昇させると、リフトピン50の軸部51の端部51aがチャンバー本体11の底面11aから離脱し、リフトピン50とリフトピン用貫通孔44との間に通気路55が形成される。さらに、サセプタ40を上昇させて、ウェハ1を成膜処理位置に配置する。本実施形態では、ウェハ1を成膜処理するときのサセプタ40の位置を上部限界位置という。サセプタ40を上部限界位置にまで上昇させた状態で、チャンバー10を減圧する。ウェハ1とウェハ載置面41との間の気体は、通気路55を通ってチャンバー10の内部に排気される。これにより、ウェハ1とウェハ載置面41との間の圧力は、チャンバー10の内圧と同じとなる。
【0033】
成膜工程では、シャワーヘッド70の通気孔から原料ガスをウェハ1に向けて放出させると共に、シャワーヘッド70とサセプタ40のウェハ載置面41との間に高周波(RF)の電圧を印加して、原料ガスをプラズマ状態とする。これにより、活性な励起分子、ラジカル、イオンが生成し、化学反応が促進され、ウェハ1の表面に薄膜が成膜される。
【0034】
搬出工程では、まず、昇降装置60を用いて、サセプタ40を下部限界位置にまで下降させる。これにより、ウェハ1は、ウェハ載置面41からリフトピン50の頭部52に移動する。次いで、ゲートバルブ20の駆動部22を駆動させて扉部21を移動させて、ウェハ出入口12を外部に開口させる。そして、リフトピン50の頭部52に移動したウェハ1を、ウェハ搬送用ロボット(不図示)を用いて外部に搬出する。
【0035】
以上のような構成とされた本実施形態に係るプラズマCVD装置100において、チャンバー10の内部に配置されているウェハ支持装置30は、サセプタ40のリフトピン用貫通孔44とリフトピン50との間に通気路55が形成されている。このため、プラズマCVD装置100のチャンバー10の内部を減圧したときは、ウェハ1とウェハ載置面41との間の気体が通気路55を通って外部に排出させることができる。よって、ウェハ1とウェハ載置面41との間に気体が残留することによって、ウェハ載置面41に配置したウェハ1が移動(スリップ)することが起こりにくくなる。したがって、本実施形態に係るプラズマCVD装置100を用いることによって、ウェハ1の表面に膜厚が均一な薄膜を安定して成膜することができる。
【0036】
本実施形態においては、リフトピン50は、軸部51と頭部52とを有し、リフトピン用貫通孔44は、頭部挿入部44aと、段差部44bを介して頭部挿入部44aと接続する軸部挿入部44cとを有し、リフトピン50の頭部52は、リフトピン用貫通孔44の段差部44b側の面の一部に欠損部53が形成されている。よって、昇降装置60により、サセプタ40を上部限界位置に移動させたときは、頭部52と段差部44bとの間に隙間ができるので、リフトピン用貫通孔44とリフトピン50との間に通気路55が確実に形成される。このため、チャンバー10の内部を減圧することによって、ウェハ1とウェハ載置面41との間にある気体を外部に確実に排出させることができる。また、サセプタ40を下部限界位置に移動させたときは、リフトピン50の頭部52とリフトピン用貫通孔44の段差部44bとが分離するので、ウェハ1をウェハ載置面41から離脱させることができる。
【0037】
これまで本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0038】
本実施形態では、リフトピン50の頭部52に形成された欠損部53によってリフトピン50とリフトピン用貫通孔44との間に通気路55が形成された構成とされているが、これに限定されるものではない。例えば、通気路55の代わりに、ウェハ載置面41内にサセプタ40を貫通する通気孔を設けてもよい。また、リフトピン用貫通孔44の段差部44bの一部に欠損部を形成してもよい。
【0039】
図6は、本発明の一実施形態に係るサセプタの構成の第1の変形例を示す断面図である。
図6に示すサセプタ40aは、ウェハ載置面41内に、ウェハ載置面41から裏面42に向けてサセプタ40aを貫通する通気孔45が形成されている。なお、サセプタ40aでは、リフトピン50の頭部52に欠損部が設けられておらず、リフトピン50とリフトピン用貫通孔44との間には通気路が形成されていない。この他の構成は、上述のサセプタ40と同じであるので、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0040】
サセプタ40aは、通気孔45が形成されているので、チャンバー10の内部を減圧することによって、ウェハ1とウェハ載置面41との間にある気体を外部に確実に排出させることができる。なお、サセプタ40aでは、リフトピン50とリフトピン用貫通孔44との間には通気路が形成されていないが、リフトピン50とリフトピン用貫通孔44との間には通気路を形成していてもよい。
【0041】
図7は、本発明の一実施形態に係るサセプタの構成の第2の変形例を示す断面図である。
図7に示すサセプタ40bは、リフトピン用貫通孔44の段差部44bの一部に欠損部44dが形成されている。この他の構成は、上述のサセプタ40と同じであるので、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0042】
サセプタ40bは、上部限界位置に移動させたときは、頭部52と段差部44bとの間に隙間ができるので、リフトピン用貫通孔44とリフトピン50との間に通気路55が確実に形成される。このため、チャンバー10の内部を減圧することによって、ウェハ1とウェハ載置面41との間にある気体を外部に確実に排出させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、リフトピン50は、軸部51と、軸部51よりも直径が大きい頭部52とを有するが、リフトピン50の形状は、これに限定されるものではない。例えば、リフトピンは、直径が一定の円柱状体であってもよい。
【0044】
図8は、本発明の一実施形態に係るサセプタの構成の第3の変形例を示す断面図である。
図8に示すサセプタ40cでは、リフトピン50aは、直径が一定の円柱状体とされている。リフトピン50aは、リフトピン支持部56によって支持されている。リフトピン支持部56はチャンバー本体11の底面11aに固定されている。また、ウェハ載置面41内に、ウェハ載置面41から裏面42に向けてサセプタ40aを貫通する通気孔45が形成されている。なお、サセプタ40cでは、リフトピン50aとリフトピン用貫通孔44との間に隙間はなく、通気路が形成されていない。この他の構成は、上述のサセプタ40と同じであるので、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0045】
サセプタ40cは、通気孔45が形成されているので、チャンバー10の内部を減圧することによって、ウェハ1とウェハ載置面41との間にある気体を外部に確実に排出させることができる。なお、サセプタ40cでは、リフトピン50aとリフトピン用貫通孔44との間には隙間はなく、通気路が形成されていないが、リフトピン50aとリフトピン用貫通孔44との間には隙間を設けて、通気路を形成してもよい。
【0046】
図9は、本発明の一実施形態に係るサセプタの構成の第4の変形例を示す断面図である。
図9に示すサセプタ40dでは、リフトピン50aは、直径が一定の円柱状体とされている。リフトピン50aは、リフトピン支持部56によって支持されている。リフトピン50aとリフトピン用貫通孔44との間には隙間が設けられていて、この隙間により通気路55が形成されている。この他の構成は、上述のサセプタ40と同じであるので、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0047】
サセプタ40dは、リフトピン50aとリフトピン用貫通孔44との間に通気路55が形成されているので、チャンバー10の内部を減圧することによって、ウェハ1とウェハ載置面41との間にある気体を外部に確実に排出させることができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、チャンバー10の内部に配置されたウェハ支持装置30の個数は1つであったが、ウェハ支持装置30の個数は、これに限定されるものではない。例えば、チャンバー10の内部に配置されるウェハ支持装置の個数は、2個以上であってもよい。
【0049】
図10は、本発明の一実施形態に係るプラズマCVD装置のチャンバーの別の一例を示す断面図である。
【0050】
図10に示す本実施形態のプラズマCVD装置100aは、チャンバー80の内部に2つのウェハ支持装置が配置されている。チャンバー80の内部は、第1ウェハ支持装置30aが配置されている第1領域80aと、第2ウェハ支持装置30bが配置されている第2領域80bに分かれている。なお、第1ウェハ支持装置30aおよび第2ウェハ支持装置30bの構成は、上述のウェハ支持装置30と同じであるので、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0051】
チャンバー80は、チャンバー本体81と蓋材88とを有する。チャンバー本体81と蓋材88は金属材料で形成されていてもよい。金属材料としては、例えば、アルミニウムを用いることができる。
【0052】
チャンバー80内は、中央に配置された隔壁89によって、第1領域80aと第2領域80bに区画されている。第1領域80aと第2領域80bの底部にはそれぞれ、サセプタ昇降用貫通孔82a、82bが設けられている。
【0053】
チャンバー本体81の側部と隔壁89には、突起部83が設けられている。突起部83は、第1領域80aと第2領域80bの上方にそれぞれ、平面視で2つの円形に開口した2つの開口部を形成する。第1領域80aの開口部を形成する突起部83の先端には、第1領域用円環状絶縁部材84aが配置され、第2領域80bの開口部を形成する突起部83の先端には、第2領域用円環状絶縁部材84bが配置されている。
【0054】
第1領域用円環状絶縁部材84a及び第2領域用円環状絶縁部材84bの材料としては、Al2O3などのセラミック材料を用いることができる。突起部83より下方のチャンバー本体81の側部には、ウェハ出入口が設けられている(不図示)。
【0055】
突起部83と第1領域用円環状絶縁部材84aの上には、第1領域用シャワーヘッド支持部材85aが配置され、突起部83と第2領域用円環状絶縁部材84bの上には、第2領域用シャワーヘッド支持部材85bが配置されている。第1領域用シャワーヘッド支持部材85a及び第2領域用シャワーヘッド支持部材85bは、上方より下方の直径が小さい逆円錐形状の開口部を有するリング状の部材である。第1領域用シャワーヘッド支持部材85a及び第2領域用シャワーヘッド支持部材85bの材料としては、例えば、Al2O3などのセラミック材料を用いることができる。
【0056】
第1領域用シャワーヘッド支持部材85a及び第2領域用シャワーヘッド支持部材85bの上部には絶縁部材86が配置されている。絶縁部材86の材料としては、例えば、Al2O3などのセラミック材料を用いることができる。
【0057】
チャンバー本体81の側部には、第1領域用シャワーヘッド支持部材85aを貫通する第1領域用排ガス口87aと、第2領域用シャワーヘッド支持部材85bを貫通する第2領域用排ガス口87bとが設けられている。
【0058】
第1領域用シャワーヘッド70aは、第1領域用シャワーヘッド支持部材85aに支持されている。第1領域用シャワーヘッド70aは、第1原料ガス管71aと接続されている。第2領域用シャワーヘッド70bは、第2領域用シャワーヘッド支持部材85bに支持されている。第2領域用シャワーヘッド70bは、第2原料ガス管71bと接続されている。
【0059】
以上のような構成とされた本実施形態に係るプラズマCVD装置100aは、チャンバー80の内部に、第1ウェハ支持装置30aと第2ウェハ支持装置30bの2つのウェハ支持装置が配置されている。このため、成膜の効率が向上する。また、第1ウェハ支持装置30a及び第2ウェハ支持装置30bはそれぞれ、サセプタ40のリフトピン用貫通孔44とリフトピン50との間に通気路55が形成されている。このため、本実施形態に係るプラズマCVD装置100aを用いることによって、ウェハ1の表面に膜厚が均一な薄膜を安定して成膜することができる。
【0060】
本発明に係る成膜処理装置について、プラズマCVD装置を例に取って説明したが、成膜処理装置はプラズマCVD装置に限定されるものではない。成膜処理装置としては、例えば、サーマルCVD装置、プラズマALD装置、サーマルALD装置であってもよい。
【外国語明細書】