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特開2023-165778スパッタリングターゲット及び、スパッタリングターゲットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165778
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】スパッタリングターゲット及び、スパッタリングターゲットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20231110BHJP
   C22C 1/04 20230101ALI20231110BHJP
【FI】
C23C14/34 A
C22C1/04 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149595
(22)【出願日】2023-09-14
(62)【分割の表示】P 2022092527の分割
【原出願日】2019-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2018045836
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】杉本 圭次郎
(72)【発明者】
【氏名】村田 周平
(57)【要約】
【課題】主としてモリブデンを含有し、スパッタリング時のパーティクルを有効に低減することができるスパッタリングターゲット及び、スパッタリングターゲットの製造方法を提案する。
【解決手段】スパッタリングターゲットであって、モリブデンの含有量が99.99質量%以上であり、平均結晶粒径が400μm以下であり、0.5kWの投入電力かつ0.5PaのArガス圧の条件の下、1.7kWhrのプレスパッタリングを実施し、4インチ径のシリコン基板上に30nmの膜厚で成膜したとき、前記シリコン基板上に付着する粒子径が0.07μm以上であるパーティクルの個数が、38個未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリングターゲットであって、モリブデンの含有量が99.99質量%以上であり、平均結晶粒径が400μm以下であり、
0.5kWの投入電力かつ0.5PaのArガス圧の条件の下、1.7kWhrのプレスパッタリングを実施し、4インチ径のシリコン基板上に30nmの膜厚で成膜したとき、前記シリコン基板上に付着する粒子径が0.07μm以上であるパーティクルの個数が、38個未満であるスパッタリングターゲット。
【請求項2】
前記パーティクルの個数が、33個以下である請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項3】
モリブデンの含有量が99.999質量%以上である請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項4】
放射線量が0.03cph/cm2以下である請求項1~3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項5】
放射線量が0.02cph/cm2以下である請求項1~3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項6】
平均結晶粒径が200μm以下である請求項1~5のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項7】
前記平均結晶粒径は、ターゲット表面を光学顕微鏡で観察し、それにより得られる組織写真上に、粒子数N≧200になるまで直線を引き、その直線上に存在する粒子数(N≧200)と直線の全長(L)より、L/Nとして算出し、前記平均結晶粒径の測定方法は、JIS G0551に規定された切断法に準拠したものである請求項1~6のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書は、スパッタリングターゲット及び、スパッタリングターゲットの製造方法に関する技術を開示するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIの超高集積化が進む近年は、電極材や配線材料として、電気抵抗率がより低い材料を用いることが検討されている。このような状況下において、高純度のタングステンは、比較的低い抵抗率ならびに、良好な熱的及び化学的安定性等の特性を有することから、電極材や配線材料として使用されるに至っている。
【0003】
ところで、電極材や配線材料を製造するに当っては、スパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法で薄膜を形成することが一般的である。そして、上述した高純度のタングステンを含む電極材や配線材料では、高純度かつ高密度のタングステンで構成されたスパッタリングターゲットが希求されている。
【0004】
この種の技術として、特許文献1及び2には、「タングステン焼結体スパッタリングターゲットであって、タングステンの純度が5N(99.999%)以上であり、タングステンに含有する不純物の炭素が3wtppm以下であることを特徴とするタングステン焼結体スパッタリングターゲット」が提案されている。この「タングステン焼結体スパッタリングターゲット」によれば、「タングステン膜において、安定した電気抵抗値の低減化が可能である」とされている。
【0005】
なお、上記のタングステン製のスパッタリングターゲットに関するものではないが、特許文献3には、「金属モリブデン或いはモリブデン化合物を溶解して含モリブデン水溶液を生成し、該水溶液を精製した後含モリブデン結晶を晶出させ、該結晶を固液分離、洗浄及び乾燥した後に加熱還元することによって高純度モリブデン粉末を調整し、該高純度モリブデン粉末を加圧成形及び焼結した後、エレクトロンビーム溶解して高純度モリブデンインゴットを作成し、そして後該インゴットを塑性加工及び機械加工することを特徴とする、純度が99.999%以上でかつアルカリ金属含有率100ppb以下そして放射性元素含有率10ppb以下であるLSI電極用高純度モリブデンターゲットの製造方法」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5944482号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0023837号明細書
【特許文献3】特開平4-218912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、先述した高純度のタングステン膜では、将来的な更なる低抵抗の要求に対応できない懸念がある。それ故に、タングステンに代わる有望な材料を見出すことが必要である。
これに関して、モリブデン膜は十分に低い電気抵抗値を実現できる可能性があるが、特許文献3に記載された「LSI電極用高純度モリブデンターゲット」では、スパッタリング時にパーティクルの発生率が高く、それにより、材料歩留まりが低下するという問題がある。
【0008】
この明細書は、上述したような問題を解決するため、主としてモリブデンを含有し、スパッタリング時のパーティクルを有効に低減することができるスパッタリングターゲット及び、スパッタリングターゲットの製造方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この明細書で開示するスパッタリングターゲットは、モリブデンの含有量が99.99質量%以上であり、相対密度が98%以上であり、平均結晶粒径が400μm以下であるものである。
また、この明細書で開示するスパッタリングターゲットの製造方法は、上記のスパッタリングターゲットを製造する方法であって、モリブデン粉末を準備する工程と、前記モリブデン粉末に対し、1350℃~1500℃の温度で荷重を作用させてホットプレスを行う工程と、前記ホットプレスにより得られる成形体に対し、1300℃ ~1850℃の温度で熱間等方圧加圧を行う工程とを含むものである。
【発明の効果】
【0010】
上述したスパッタリングターゲット、スパッタリングターゲットの製造方法によれば、主としてモリブデンを含有し、スパッタリング時のパーティクルを有効に低減することができるとともに、そのようなスパッタリングターゲットを有効に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、この明細書で開示する発明の実施の形態について説明する。
この発明の一の実施形態のスパッタリングターゲットは、モリブデンの含有量が99.99質量%以上であり、相対密度が98%以上であり、平均結晶粒径が400μm以下であるものである。これらの構成に加えて、放射線量が0.03cph/cm2以下であることが好ましい。
【0012】
これまでは、高集積のLSI用の電極材や配線材料を製造するには、高純度のタングステン製のスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法が採用されていたが、これにより形成したタングステン膜では、今後さらに進展すると推測される低抵抗化の要求に対応できない可能性があった。
これに対し、発明者は、高融点金属の成膜特性を検討した結果、高融点金属の一つであるモリブデン製の薄膜がタングステン製の薄膜に比して、より低い抵抗値を達成できる可能性があるとの知見を得た。
【0013】
さらに、上述したようなモリブデン製の薄膜を成膜可能なスパッタリングターゲットについて鋭意検討した結果、所定の製造方法で製造された所定のスパッタリングターゲットによれば、より一層低い抵抗値を実現できる可能性があり半導体用途に好適に用いられ得る薄膜を形成できることを見出した。かかるスパッタリングターゲットでは、スパッタリング時のパーティクルの発生率を有効に低減することができ、またそれにより形成した薄膜で構成された電子デバイスの誤作動の発生可能性を減らすことができることが解かった。
このようなスパッタリングターゲット及びその製造方法について以下に詳説する。
【0014】
(組成)
この実施形態のスパッタリングターゲットは、モリブデンを99.99質量%以上で含有し、4N以上の高純度のモリブデンからなるものである。モリブデンの純度が高いと、パーティクルの発生率が有意に低下し、この一方で、モリブデンの純度が低いと、パーティクルが増加する傾向にある。したがって、パーティクル低減の観点から、モリブデンの純度は高ければ高いほど望ましい。この観点より、スパッタリングターゲット中のモリブデンの含有量は、99.999質量%以上(すなわち5N以上)であることが好ましい。
【0015】
上述した純度は、不可分な同族元素を除いたものを意味する。つまり、不可分な同族元素とはタングステンであり、ここでは、検出下限以下の元素及びタングステン以外の全ての金属元素の含有量におけるモリブデンの含有量が占める割合を、純度としている。このようなモリブデンの含有量は、グロー放電質量分析法(GDMS)により測定して算出する。
【0016】
(相対密度)
この発明の実施形態では、スパッタリングターゲットの相対密度は98%以上である。相対密度は高いほどパーティクルが低減されるが、低いとパーティクルの増加を招く傾向がある。この観点から、相対密度は99%以上であることが好ましく、さらには99.5%以上であることが好ましい。
【0017】
スパッタリングターゲットの相対密度は、相対密度=(測定密度/理論密度)×100(%)で表される。ここで、測定密度は、純水を溶媒として用いたアルキメデス法で測定したスパッタリングターゲットの密度であり、理論密度とは、モリブデンの含有量が100%である場合の理論上の密度である。
【0018】
(結晶粒径)
スパッタリングターゲットが含有するモリブデンの結晶粒径は、大きいとパーティクルが増加し、小さいとパーティクルが減少する傾向にある。
それ故に、スパッタリングターゲットのモリブデンの平均結晶粒径は400μm以下とし、好ましくは200μm以下とする。モリブデンの平均結晶粒径が小さすぎることによる不都合はないが、平均結晶粒径は、たとえば15μm以上、典型的には40μm以上になることがある。
【0019】
上記の平均結晶粒径は、ターゲット表面を光学顕微鏡で観察し、それにより得られる組織写真上に、粒子数N≧200になるまで直線を引き、その直線上に存在する粒子数(N≧200)と直線の全長(L)より、L/Nとして算出する。この平均結晶粒径の測定方法は、JIS G0551に規定された切断法に準拠したものである。
【0020】
(放射線量)
スパッタリングターゲットの放射線量は、0.03cph/cm2以下とする。この放射線量が多い場合は、当該スパッタリングターゲットを用いて形成したモリブデンの薄膜を有する電子デバイスの誤作動の発生可能性が高まり、この一方で、放射線量が少ない場合は、そのような電子デバイスの誤作動の発生可能性が低くなる。それ故に、スパッタリングターゲットの放射線量は、0.02cph/cm2以下であることが好ましく、さらに0.01cph/cm2以下であることがより一層好ましい。
【0021】
上記の放射線量は、株式会社住化分析センター製のLACS-4000Mを使用し、P-10ガス(Ar-CH4 10%)、流量100ml/分、測定時間99kr、測定面積203cm3、計数効率80%として測定する。
【0022】
(製造方法)
上述したようなスパッタリングターゲットを製造する方法の一例としては、次に述べるように、所定のモリブデン粉末に対し、ホットプレス(HP)と熱間等方圧加圧(HIP)を組み合わせた粉末冶金法を実施することを挙げることができる。
【0023】
はじめに、原料としてモリブデン粉末を準備する。このモリブデン粉末は、好ましくは、粒径が0.1μm~10μmの範囲内にあり、平均粒径が1μm~5μmで、モリブデンの純度が4N以上のものを用いる。モリブデン粉末の粒径が大きすぎると、低密度となる懸念がある。また粒径が小さすぎると、嵩高くなるため、取扱い難易度があがり、生産性が損なわれる(つまり、嵩高いことにより、ホットプレスなどの型への複数枚充填が難しくなり、1回あたりの生産数が減る)おそれがある。モリブデン粉末の純度が低い場合は、製造するスパッタリングターゲットのモリブデン含有量が低下する。それゆえに、モリブデン粉末は、モリブデンの純度が5N以上であるものを用いることが好ましい。また、製造されるスパッタリングターゲットの放射線量を低減するためにも、5N以上のモリブデン粉末を原料とすることが好ましい。
【0024】
次いで、ホットプレスの工程では、上記のモリブデン粉末を、鋳型その他の所定の型に充填し、これを加熱して所定の温度に維持しながら所定の荷重を作用させる。
ここでは、原料の最高到達温度として、1350℃~1500℃の温度を保持しつつ荷重を作用させる。このときの温度が低いと、スパッタリングターゲットの相対密度を十分に高くすることができず、この一方で、温度が高いと、粗大粒径となってパーティクルが増加する懸念がある。それ故に、ホットプレスの際の温度は、1350℃~1500℃とする。
【0025】
また、上述したような温度に保持する時間は、好ましくは60分~300分とする。保持時間が短すぎる場合は、低密度となることが懸念され、また長すぎる場合は、粗大粒径となる可能性がある。
この際に作用させる荷重の大きさは、150kg/cm2~300kg/cm2とすることが好適であり、特に200kg/cm2~300kg/cm2とすることがより一層好ましい。荷重が小さすぎる場合は、低密度となる可能性が否めない。なお、荷重が大きすぎることによる不都合は特にない。ダイス等の備品が耐えられるのであれば荷重増は高密度化に繋がる。但し、一般には300kg/cm2程度が上限となることが多い。
【0026】
なお、ホットプレス時の加熱に際し、設定温度と実温度の乖離を少なくするため、たとえば、昇温させるときに、800℃~1200℃の温度域に到達したところで、該温度域で30分保持することが好ましい。
【0027】
その後、ホットプレスの工程で得られた成形体に対し、熱間等方圧加圧を行う。それにより、製造されるスパッタリングターゲットをより高密度なものにする。
熱間等方圧加圧の工程では、典型的には、1300℃~1850℃の温度下で、1300kg/cm2~2000kg/cm2の荷重を、60分~300分にわたって作用させる。このような温度、荷重及び時間の条件を満たさない場合は、低密度となる不都合がある。したがって、熱間等方圧加圧の際には、温度を1400℃~1850℃とすること、荷重を1500kg/cm2~1900kg/cm2とすること、時間を60分~300分とすることがそれぞれより一層好ましい。
熱間等方圧加圧で得られた焼結体に対し、必要に応じて、研削その他の形状加工を施して、所定の寸法形状を有するスパッタリングターゲットを製造することができる。
【0028】
このようにして製造されたスパッタリングターゲットでは、スパッタリング時のパーティクルの発生率が低く、また少ない放射線量の故に、それにより形成したモリブデンの薄膜を有する電子デバイスの誤作動の発生の可能性が低いものとなる。
【0029】
この発明は、上述したような各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、実施形態の各構成要素を変更して具体化できる。たとえば、各実施形態が有する複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の態様を構成することができる。また、実施形態が有する全ての構成要素からいくつかの構成要素を削除することも可能である。
【実施例0030】
次に、上述したようなスパッタリングターゲットを実際に試作し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、それに限定されることを意図するものではない。
【0031】
平均粒径が5μmで所定の純度のモリブデン粉末を、カーボンダイスに充填し、所定の温度の下、300kgf/cm2の荷重を作用させて、ホットプレスを行った。これにより得られた成形体に対し、所定の温度で1800kgf/cm2の荷重を作用させる熱間等方圧加圧を行い、焼結体を得た。その後、その焼結体に対して形状加工を施し、直径が164mmで厚みが5mmのスパッタリングターゲットを製造した。
【0032】
実施例1~7、比較例1、2では、表1に示すように、ホットプレス(HP)の最高到達温度、熱間等方圧加圧(HIP)の最高到達温度を変更したことを除き、同様の方法にてスパッタリングターゲットを製造した。比較例3、4では、上述したホットプレス及び熱間等方圧加圧に代えて、ホットプレスで成形した後に熱間圧延を行って、スパッタリングターゲットを製造した。この熱間圧延について、比較例3では1200℃の温度で5回、また比較例4では1200℃の温度で6回にわたってロール間を通過させて、それぞれ10mmの厚みまで圧延し、その後の形状加工で上記の寸法に仕上げた。
【0033】
上述したようにして製造した各スパッタリングターゲットについて、先述した測定方法に従い、純度、平均結晶粒径(粒径)、相対密度(密度)、放射線量を測定した。それらの結果を表1に示す。なお、純度の測定に関し、モリブデンの含有量は、Thermo Fisher社製のELEMENT GDを用いてグロー放電質量分析法(GDMS)により測定し、また、炭素濃度についてはLECO社製の炭素分析装置(CSLS600)を用い、酸素濃度についてはLECO社製の酸素・窒素同時分析装置(TC-600)を用いて、それぞれ不活性ガス溶融法にて測定した。
表1に示す純度は、スパッタリングターゲットのモリブデンの純度(質量%)を意味する。なお、スパッタリングターゲットの純度は、原料のモリブデン粉末の純度とほぼ同程度であった。
【0034】
また、上述した各スパッタリングターゲットを用いて、Arガスを充満させた雰囲気下で、シリコン基板上にスパッタリングを行い、モリブデン膜を形成した。具体的には、スパッタリングターゲットを、マグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ製C-3010スパッタリングシステム)に取り付け、スパッタリングを行った。スパッタリングの条件は、投入電力0.5kW、Arガス圧0.5Paとし、1.7kWhrのプレスパッタリングを実施した後、4インチ径のシリコン基板上に30nmの膜厚で成膜した。そして基板上へ付着した粒子径が0.07μm以上のパーティクルの個数を表面異物検査装置(Candela CS920、KLA-Tencor社製)で測定した。その結果も表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例1~7では、所定の条件のホットプレス及び熱間等方圧加圧で製造したことにより、高純度で相対密度が高く、かつ平均結晶粒径が小さいスパッタリングターゲットが得られた。そして、それによって、スパッタリング時のパーティクルを有効に低減することができた。
【0037】
一方、比較例1は、ホットプレスの温度が低かったことに起因して、相対密度が低くなった。比較例2は、原料のモリブデン粉末の純度が低かったことによりスパッタリングターゲットの純度が低くなった。比較例3は、純度が低く、しかも熱間等方圧加圧ではなく圧延で製造したことから、平均結晶粒径が大きくなった。なお、比較例2、3は、原料のモリブデン粉末の影響より、放射線量が多くなった。
【0038】
比較例4は、熱間等方圧加圧ではなく圧延で製造したことにより、平均結晶粒径が大きくなった。
これにより、いずれの比較例1~4も、パーティクルが増加した。
【0039】
なお、本発明は以下の発明も包含するものである。
[1]
スパッタリングターゲットであって、モリブデンの含有量が99.999質量%以上であり、相対密度が98%以上であり、平均結晶粒径が45μm以下であり、放射線量が0.03cph/cm2以下であるスパッタリングターゲット。
[2]
放射線量が0.02cph/cm2以下である[1]に記載のスパッタリングターゲット。
[3]
相対密度が99%以上である[1]又は[2]に記載のスパッタリングターゲット。
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載のスパッタリングターゲットを製造する方法であって、
モリブデン粉末を準備する工程と、前記モリブデン粉末に対し、1350℃~1500℃の温度で荷重を作用させてホットプレスを行う工程と、前記ホットプレスにより得られる成形体に対し、1300℃~1850℃の温度で熱間等方圧加圧を行う工程とを含む、スパッタリングターゲットの製造方法。
[5]
前記ホットプレスを行う工程で、前記モリブデン粉末に作用させる荷重を、200kg/cm2~300kg/cm2とする、[4]に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
[6]
前記ホットプレスを、60分~300分にわたって行う、[4]又は[5]に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
[7]
前記熱間等方圧加圧を行う工程で、前記成形体に作用させる荷重を、1300kg/cm2~2000kg/cm2とする、[4]~[6]のいずれかに記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
[8]
前記熱間等方圧加圧を、60分~300分にわたって行う、[4]~[7]のいずれかに記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
[9]
前記モリブデン粉末を準備する工程で、純度が5N以上で平均粒径が1μm~5μmであるモリブデン粉末を準備する、[4]~[8]のいずれかに記載のスパッタリングターゲットの製造方法。