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特開2023-165781基板から単独の粒子を除去するための装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165781
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】基板から単独の粒子を除去するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/82 20120101AFI20231110BHJP
   G03F 1/72 20120101ALI20231110BHJP
   G01N 23/2252 20180101ALI20231110BHJP
   G01N 23/2273 20180101ALI20231110BHJP
   G01N 23/2276 20180101ALI20231110BHJP
   G01N 23/2258 20180101ALI20231110BHJP
   G01N 23/203 20060101ALI20231110BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
G03F1/82
G03F1/72
G01N23/2252
G01N23/2273
G01N23/2276
G01N23/2258
G01N23/203
H01L21/304 648G
H01L21/304 645Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023149911
(22)【出願日】2023-09-15
(62)【分割の表示】P 2021113296の分割
【原出願日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】10 2020 208 568.4
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】クラウス エディンガー
(72)【発明者】
【氏名】イェンス オスター
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン フェリクス ヘルマンス
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ バウアー
(72)【発明者】
【氏名】ティロ シエラフ
(72)【発明者】
【氏名】マクシム コンパニーツ
(57)【要約】
【課題】少なくとも1つの単独の粒子(320)を基板(310、402)から、特に極端紫外線(EUV)フォトリソグラフィ用の光学要素から除去するための装置(300、400)および方法(2000)を提供すること。
【解決手段】装置(300、400)は、(a)少なくとも1つの単独の粒子(320)の材料組成の少なくとも1つの構成物を決定するように設計された分析ユニット(330)と、(b)特定の構成物に調和したガス(370、1470)を少なくとも1つの単独の粒子(320)の環境中で供給するように設計された少なくとも1つのガス噴射システム(360)とを備え、(c)調和ガス(370、1470)は、少なくとも1つの単独の粒子(320)を基板(310)から除去することに寄与する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの単独の粒子(320)を基板(310、402)から、特に極端紫外線(EUV)フォトリソグラフィ用の光学要素から除去するための装置(300、400)であって、
a.前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の材料組成の少なくとも1つの構成物を決定するように設計された分析ユニット(330)と、
b.特定の構成物に調和したガス(370、1470)を前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の環境中で供給するように設計された少なくとも1つのガス噴射システム(360)とを備え、
c.前記調和ガス(370、1470)が、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)を前記基板(310)から除去することに寄与する、装置(300、400)。
【請求項2】
前記分析ユニット(330)が、次の技法、すなわち、エネルギー分散型X線分光法(EDX)、X線光電子分光法(XPS)、オージェ電子分光法(AES)、二次イオン質量分析法(SIMS)、二次中性粒子質量分析(SNMS)、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)、および低速イオン散乱分光法(LEIS)からなる群のなかからの少なくとも1つの要素を利用する、請求項1に記載の装置(300、400)。
【請求項3】
前記分析ユニット(330)が、前記材料組成の前記少なくとも1つの構成物を決定する際に外部入力を考慮に入れるように設計される、請求項1または2に記載の装置(300、400)。
【請求項4】
前記分析ユニット(330)からの測定データを使用して、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の前記材料組成の前記少なくとも1つの構成物を予測するように訓練された機械学習モデルをさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの単独の粒子(320)を、好ましくは前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の除去中に結像するように設計された、少なくとも1つの顕微鏡システム(390)をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項6】
前記調和ガス(370)が前記少なくとも1つの単独の粒子(320)を自発的にエッチングする、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項7】
前記調和ガス(370)が前記少なくとも1つの単独の粒子(320)を、前記基板(310)の自発的エッチング速度の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも30倍であるような、前記基板(310)の自発的エッチング速度よりも高い速度で自発的にエッチングする、請求項6に記載の装置(300、400)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの単独の粒子(320)がスズ(Sn)を含み、前記調和ガス(370、1470)が、少なくとも水素(H2)、少なくとも1つの水素化合物および/または少なくとも塩化ニトロシル(NOCl)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの単独の粒子(320)をエッチングする第1の調和ガス(370、1470)の局所エッチング反応を開始する、および/または材料を前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の上に堆積する第2の調和ガス(1470)の局所堆積反応を開始する、少なくとも1つの粒子ビーム(350)をさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの単独の粒子(320)がスズを含み、前記少なくとも1つの第1の調和ガス(370、1470)が、水素化合物、水素(H2)、ハロゲン化合物、塩素化合物、および塩化ニトロシル(NOCl)からなる群のなかからの少なくとも1つの要素を含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの単独の粒子(320)と相互作用するように設計された少なくとも1つのマイクロマニピュレータユニット(510、610、710)をさらに備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのマイクロマニピュレータユニット(510、610、710)が少なくとも1つのマイクロマニピュレータ(520、620、720、1120)を含み、前記少なくとも1つのマイクロマニピュレータユニット(510、610、710)が、前記少なくとも1つのマイクロマニピュレータ(520、620、720、1120)を加熱するように設計される、請求項11に記載の装置(300、400)。
【請求項13】
前記少なくとも1つのマイクロマニピュレータ(1520)が、少なくとも1つの単独の溶融粒子(320)と合金(1570)を形成する金属または金属合金を含むように設計される、請求項11または12に記載の装置(300、400)。
【請求項14】
前記少なくとも1つのマイクロマニピュレータ(1520)がビスマス(Bi)またはビスマス合金を含み、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の材料組成の少なくとも1つの構成物がスズ(Sn)を含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項15】
前記少なくとも1つのマイクロマニピュレータ(1520)と前記少なくとも1つの単独の粒子(320)との間に、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)中にエレクトロマイグレーションを生じさせる電流の流れを生成するように設計された電圧源をさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項16】
前記少なくとも1つの単独の粒子(320)が、前記基板(310)から除去することに関して不安定である粒子と、2つ以上の粒子破片(1620、1630)を有する粒子と、粒子塊を含む粒子とからなる群のなかからの一要素を含み、前記ガス噴射システム(360)がさらに、前記除去の前に、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の上に材料を堆積する調和ガス(1470)を前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の環境中で供給するように設計される、請求項1~15のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項17】
前記マイクロマニピュレータユニット(510、610、710)が、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の第1の部分を除去するように設計され、前記調和ガス(370、1470)が、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の第2の部分を自発的エッチングおよび/または粒子ビーム誘起エッチングによって除去することに寄与する、請求項11~16のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項18】
前記ガス噴射システム(360)がまた、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の除去後に、前記少なくとも1つの単独の粒子(310)の除去中に生じた基板(310)の損傷を少なくとも部分的に無くす再編成ガスを、前記除去された少なくとも1つの単独の粒子の環境中で供給するようにも設計される、請求項1~17のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項19】
少なくとも1つの単独の粒子(320)を基板(310)から、特に極端紫外線(EUV)フォトリソグラフィ用の光学要素から除去するための方法(2000)であって、
a.前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の材料組成の少なくとも1つの構成物を決定するステップ(2020)と、
b.前記材料組成の特定の構成物に調和したガス(370、1470)を前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の環境中で供給するステップ(2030)とを含み、
c.前記調和ガス(370、1470)が、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)を前記基板(310)から除去することに寄与する、方法(2000)。
【請求項20】
コンピュータプログラムによって実行されると、請求項1~18のいずれかに記載の装置(300、400)に、請求項19に記載の方法ステップを実行することを促す命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2020年7月8日にドイツ特許商標庁に出願されたドイツ優先権出願は、参照によりその全体が本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、少なくとも1つの単独の(微)粒子を基板から、特に、たとえば極端紫外線(EUV:extreme ultraviolet)波長範囲のシステムであるフォトリソグラフィシステムに使用される光学要素から除去するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロエレクトロニクスにおける集積密度が着実に増加する結果として、フォトリソグラフィマスクは、ますます小さくなる構造要素をウェハのフォトレジスト層に結像する(image)必要がある。このことは、ナノインプリントリソグラフィに使用されるテンプレートにも同様に当てはまる。これらの要件を満たすために、露光波長はよりいっそう短い波長にシフトしている。現在、フッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザが露光用に主として使用されており、これらのレーザは193nmの波長で放射する。EUV波長範囲(10nm~15nm)で放射する光源、および対応するEUVマスクに関しての集中的な研究が行われている。ウェハ露光処理の解像力を増大させるために、従来のバイナリフォトリソグラフィマスクのいくつかの変形形態が同時に開発されてきた。その例としては、位相マスクまたは位相シフトマスク、およびマルチ露光用のマスクがある。
【0004】
構造要素の寸法がますます減少しているために、フォトリソグラフィマスク、フォトマスク、または簡単にマスクは、ウェハ上に印刷可能であったり目に見えたりする欠陥をいつも含まずに製作できるとは限らない。フォトリソグラフィマスクの製作は費用がかかるために、欠陥のあるフォトマスクは、ナノインプリントリソグラフィで使用されるテンプレートと同様に、可能な場合にはいつでも修理される。
【0005】
フォトマスクを修理することには、設計の際に想定されていないマスク位置に存在する吸収体パターンの一部を除去することが伴う。さらに、吸収材料が、マスク設計では吸収パターン要素を設けているにもかかわらず吸収材料のないマスク上の位置に堆積される(deposited:積もる)。両方のタイプの修理過程で、細片、破片または粒子が生じる可能性があり、これらは、フォトマスクの透明な、または反射する位置に付着することがあり、また、ウェハ上の結像収差として目に見えることがある。
【0006】
しかし、より重要であるものは、マスクの表面に堆積する、またはより一般的にフォトリソグラフィ露光システムの光学要素または構成要素に堆積する、環境からの土壌粒子である。これらの粒子は、マスク製作中および/またはマスクもしくは光学要素を操作中の洗浄段階で、マスクの表面から基準として除去される。図1は、粒子があるフォトマスクの一部分の上面図を示し、この粒子はマスクのパターン要素上に置かれており、洗浄工程によって除去することができる。さらに、マスクに付着し得る粒子は、製作過程中にマスクを取り扱うことによって、および/またはマスクを操作することによって生じることがある。
【0007】
EUV波長範囲の電磁放射を用いて動作するフォトリソグラフィ露光システムの場合には、さらに2つの難題がある。EUVマスクでは、構造要素を載せるマスクの表面の保護(たとえば、薄膜)が現在はない。その結果、EUVマスクでは、この構造化表面に特に粒子が付着しやすい。第2に、EUV放射源は通常、EUV放射を生成するためにスズプラズマを使用する(たとえば、Oscar O. Versolato: "Physics of laser-driven tin plasma sources of EUV radiation for nanolithography", Plasma Sources Sci. Technol. 28 (2019) 083001, doi: 10/1088/1361-6595/ab302)。ホットプラズマからの粒子は、EUV露光システムの構成要素に堆積する可能性があり、特にシステムの、EUVマスクを含む光学構成要素または要素に堆積する可能性があり、その機能を損なうおそれがある。
【0008】
フォトリソグラフィマスクの構造測定値がますます減少することにより、洗浄工程がいっそう困難になっている(たとえば、T. Shimomura and T. Liang: "50 nm particle removal from EUV mask blank using standard wet clean", Proc. of SPIE Vol.7488, p.74882F-1 - 74882F-8)。さらに、露光波長が減少する結果として、マスクの表面または露光システムの光学要素の表面に吸着したいっそう小さい異物粒子または汚れ粒子が、ウェハの露光処理中に目に見えるようになってきている。図2は、フォトマスクのコンタクト孔に局在する2つの粒子を洗浄工程によってマスクから除去できないマスクの部分の図を示す。
【0009】
ナノマニピュレータまたはマイクロマニピュレータによってナノ粒子の移動を調べるといういくつかの文献を以下に例として引用する:H.H. Pieper: "Morphology and electric potential of pristine and gold covered surfaces with fluorite structure", Thesis,
S. Darwich et al.: "Manipulation of gold colloidal nanoparticles with atomic force microscopy in dynamic mode: influence of particle - substrate chemistry and morphology, and operating conditions", Beilstein J. Nanotechnol., vol.2 (2011), p.85-98; H.H. Pieper et al.: "Morphology and nanostructure of CeO2(111) surfaces of single crystals and Si(111) supported ceria films", Phys. Chemistry Chemical Physics, vol.14, p.15361ff, 2013; E. Gallagher et al.: "EUVL mask repair: expanding options with nanomachining", BACUS, vol.3, no.3 (2013), p.1-8; M. Martin et al.: "Manipulation of Ag nanoparticles utilizing noncontact atomic force microscopy", Appl.Phys.Lett., vol.72, no.11, September 1998, p.1505-1507; P.J. Durston et al.: "Manipulation of passivated gold clusters on graphite with the scanning tunneling microscope", Appl.Phys.Lett., vol.72, no.2, January 1998, p.176-178; R. Requicha: "Nanomanipulation with the atomic force microscope", Nanotechnology Online, ISBN: 9783527628155; C. Baur et al.: "Nanoparticle manipulation by mechanical pushing: underlying phenomena and real-time monitoring", Nanotechnology 9 (1998), p.360-364; J.D. Beard et al.: "An atomic force microscope nanoscalpel for nanolithography and biological applications", Nanotechnology 20 (2009), 445302, p.1-10;米国特許第6812460号。以下の文献では、基板上の粒子の取り上げおよび配置について報告している:J. Xu et al.: "Lifting and sorting of charged Au nanoparticles by electrostatic forces in atomic force microscopy", Small 2010, vol.6, no.19, p.2105-2108; N. Cao et al.: "Interactive micromanipulation of picking and placement of nonconductive microsphere in scanning electron microscope", Micromachines 2017, 8, 257, doi: 10.3390 /mi8080257; C. Baur and R. Stallcup: "Systems and method for picking and placing of nanoscale objects utilizing differences in chemical and physical binding forces", Micromachines 8, p.257 (2017);米国特許第8696818号;特開第2005-084582号;および米国特許第6987277号。
【0010】
粒子の移動、特に個々の粒子を表面から取り上げることは通常、複雑で時間のかかる処理である。さらに、光学要素の表面に接着している粒子を光学要素から完全に除去するのは困難なことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6812460号
【特許文献2】米国特許第8696818号
【特許文献3】特開第2005-084582号
【特許文献4】米国特許第6987277号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Oscar O. Versolato: "Physics of laser-driven tin plasma sources of EUV radiation for nanolithography", Plasma Sources Sci. Technol. 28 (2019) 083001, doi: 10/1088/1361-6595/ab302
【非特許文献2】T. Shimomura and T. Liang: "50 nm particle removal from EUV mask blank using standard wet clean", Proc. of SPIE Vol.7488, p.74882F-1 - 74882F-8
【非特許文献3】H.H. Pieper: "Morphology and electric potential of pristine and gold covered surfaces with fluorite structure", Thesis, University of Osnabruck 2012
【非特許文献4】S. Darwich et al.: "Manipulation of gold colloidal nanoparticles with atomic force microscopy in dynamic mode: influence of particle - substrate chemistry and morphology, and operating conditions", Beilstein J. Nanotechnol., vol.2 (2011), p.85-98
【非特許文献5】H.H. Pieper et al.: "Morphology and nanostructure of CeO2(111) surfaces of single crystals and Si(111) supported ceria films", Phys. Chemistry Chemical Physics, vol.14, p.15361ff, 2013
【非特許文献6】E. Gallagher et al.: "EUVL mask repair: expanding options with nanomachining", BACUS, vol.3, no.3 (2013), p.1-8
【非特許文献7】M. Martin et al.: "Manipulation of Ag nanoparticles utilizing noncontact atomic force microscopy", Appl.Phys.Lett., vol.72, no.11, September 1998, p.1505-1507
【非特許文献8】P.J. Durston et al.: "Manipulation of passivated gold clusters on graphite with the scanning tunneling microscope", Appl.Phys.Lett., vol.72, no.2, January 1998, p.176-178
【非特許文献9】R. Requicha: "Nanomanipulation with the atomic force microscope", Nanotechnology Online, ISBN: 9783527628155
【非特許文献10】C. Baur et al.: "Nanoparticle manipulation by mechanical pushing: underlying phenomena and real-time monitoring", Nanotechnology 9 (1998), p.360-364
【非特許文献11】J.D. Beard et al.: "An atomic force microscope nanoscalpel for nanolithography and biological applications", Nanotechnology 20 (2009), 445302, p.1-10
【非特許文献12】J. Xu et al.: "Lifting and sorting of charged Au nanoparticles by electrostatic forces in atomic force microscopy", Small 2010, vol.6, no.19, p.2105-2108
【非特許文献13】N. Cao et al.: "Interactive micromanipulation of picking and placement of nonconductive microsphere in scanning electron microscope", Micromachines 2017, 8, 257, doi: 10.3390 /mi8080257
【非特許文献14】C. Baur and R. Stallcup: "Systems and method for picking and placing of nanoscale objects utilizing differences in chemical and physical binding forces", Micromachines 8, p.257 (2017)
【発明の概要】
【0013】
したがって、本発明によって対処される課題は、基板からの粒子の除去、特にフォトリソグラフィ用の光学要素からの粒子の除去を改善できるようにする装置および方法を明示することである。
【0014】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、この課題は、請求項1による装置および請求項19による方法によって解決される。1つの実施形態では、少なくとも1つの単独の粒子を基板から、特に極端紫外線(EUV)フォトリソグラフィ用の光学要素から除去するための装置は、(a)少なくとも1つの単独の粒子の材料組成(material composition:材料構成)の少なくとも1つの構成物(constituent:組成物、成分)を決定するように設計された分析ユニットと、(b)特定の構成物に調和した(matched)ガスを少なくとも1つの単独の粒子の環境中で供給するように設計された少なくとも1つのガス噴射システム(gas injection system:ガス注入システム)とを備え、(c)調和ガス(matched gas)は、少なくとも1つの単独の粒子を基板から除去することに寄与する。
【0015】
局所エッチング(local etching)工程を実施することが困難であることのよくある理由は、除去されるべき粒子の材料組成が一般に不明なことである。したがって、局所エッチングおよび/または堆積工程は、除去されるべき粒子に対して部分的にしか調和させることができず、または非常に多くの場合で全く調和させることができない。したがって、局所エッチング工程は時間がかかることが多く、成功しないことがかなり多い。
【0016】
表面に吸着した粒子の材料組成は、処理工程の前に少なくとも部分的に決定されるので、たとえばエッチング工程または蒸着工程などの処理工程を特定の粒子に調和させることができる。粒子に調和した処理工程により、処理工程の間中に粒子の周囲の基板を大きく損傷することなく、粒子をほぼ残留物無しで除去することが可能になる。
【0017】
分析ユニットは、次の技法、すなわち、エネルギー分散型X線分光法(EDX)、X線光電子分光法(XPS)、オージェ電子分光法(AES)、二次イオン質量分析法(SIMS)、二次中性粒子質量分析(SNMS)、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)、および低速イオン散乱分光法(LEIS)からなる群(group:グループ)のなかからの少なくとも1つの要素を利用することができる。
【0018】
分析ユニットは、材料組成の少なくとも1つの構成物を決定する際に外部入力を考慮に入れるように設計することができる。
【0019】
外部入力は、本発明の装置を使用している技術専門家から得られる。外部入力は、代替的に、たとえば、外部の材料データベースから得ることもできる。
【0020】
また、分析ユニットは、調和ガスを決定する際に基板の材料組成を考慮に入れるように設計することができる。分析ユニットはさらに、少なくとも1つの単独の粒子を除去するための調和ガスの曝露量を決定するように設計することもできる。さらに、分析ユニットは、曝露量を決定する際に、除去されるべき粒子を取り囲む基板を考慮に入れるように設計することもできる。
【0021】
装置は、材料データベースを含むこと、および/または材料データベースへのアクセスを可能にするインターフェースを有することができる。材料データベースは、少なくとも1つの単独の粒子の、可能性がある材料のデータを含み得る。
【0022】
装置はまた、分析ユニットからの測定データを使用して、少なくとも1つの単独の粒子の材料組成の少なくとも1つの構成物を予測するように訓練された機械学習モデルを含み得る。さらに、装置は、分析ユニットからの測定データを使用して、少なくとも1つの単独の粒子の材料組成の少なくとも1つの構成物を予測するように設計された予測フィルタを含み得る。
【0023】
分析ユニットからの測定データに基づいて、MLモデルおよび/または予測フィルタは、材料組成の1つまたは複数の構成物を予測することができる。これにより、特定された粒子に特に調和した、ほぼ自動化された処理工程を実施することが可能になる。加えて、粒子の材料組成の決定に関する不確実性も同様に推定することができる。このようにして、粒子に最適な実施可能処理工程を選択することが可能になる。
【0024】
訓練された機械学習モデルは、リカレントニューラルネットワーク(RNN)を含み得る。リカレントニューラルネットワークは、長短期記憶(LSTM)ネットワークを含み得る。
【0025】
MLモデルからの訓練データは、フォトリソグラフィ用の光学要素に生じ得る既知の粒子の材料組成の測定データでもよい。加えて、機械学習モデルの訓練データは、特定の合成材料組成の測定データをさらに含み得る。さらに、補修ツールの操作者が操作中に収集したデータを用いてMLモデルを訓練することも可能である。
【0026】
予測フィルタは、カルマンフィルタ、粒子フィルタ、および有限のインパルス応答を持つローパスフィルタの群のなかからの1つの要素を含み得る。
【0027】
装置は、少なくとも1つの単独の粒子を、好ましくは少なくとも1つの単独の粒子の除去中に結像するように設計された、少なくとも1つの顕微鏡システムをさらに備え得る。
【0028】
顕微鏡システムは、基板上の粒子を識別するために使用することができる。加えて、顕微鏡システムは、粒子の処理工程を監視および/または制御するために使用することもできる。
【0029】
顕微鏡システムは、少なくとも1つの単独の粒子のパラメータを決定するように設計することができる。
【0030】
顕微鏡システムは、少なくとも1つの単独の粒子を結像するためにゼロ質量の粒子を使用することができる。顕微鏡システムは、少なくとも1つの単独の粒子を結像するために、極端紫外線波長範囲の光子を使用することができる。顕微鏡システムは、少なくとも1つの単独の粒子を結像するために、非ゼロ質量の粒子を使用することができる。顕微鏡システムは、少なくとも1つの単独の粒子を結像するために荷電粒子、特に電子および/またはイオンを使用することができる。顕微鏡システムは、少なくとも1つの単独の微粒子を結像するために、非ゼロ質量の電気的に帯電していない粒子、特に原子および/または分子を使用することができる。
【0031】
基板は、フォトリソグラフィマスク、ナノインプリントリソグラフィ用テンプレート、および/またはフォトリソグラフィ露光装置の光学要素を含み得る。フォトリソグラフィマスクは、任意のタイプのフォトマスク、たとえばバイナリマスクまたは位相シフトマスクとすることができる。より具体的には、フォトリソグラフィマスクは、深紫外線(DUV:deep ultraviolet)または極端紫外線(EUV)の波長領域のマスクを含み得る。
【0032】
少なくとも1つの単独の粒子は、任意の所望の形状を有し得る。少なくとも1つの単独の粒子は、約1nm~約100μmの範囲内の直径を有し得る。少なくとも1つの単独の粒子は、任意の所望の方法で基板と相互作用し得る。
【0033】
装置はまた、調和ガスのガス組成を監視するように設計された制御ユニットを含み得る。加えて、制御ユニットは、調和ガスのガス流量を制御するように設計することができる。このようにして、制御ユニットは、除去されるべき粒子の近くにおける特定の曝露量の供給を監視することができる。
【0034】
調和ガスは、少なくとも1つの単独の粒子を自発的にエッチングすることができる。
【0035】
1つの実施例では、ガス噴射システムは、除去されるべき粒子の環境中で粒子を自発的にエッチングする、すなわち外部エネルギーのさらなる供給がなくてもエッチングする、特定された粒子に調和したガスを供給する。
【0036】
調和ガスは、少なくとも1つの単独の粒子を、基板の自発的エッチング速度の少なくとも2倍(by a factor of 2:2の因子で)、好ましくは少なくとも5倍(by a factor of 5:5の因子で)、より好ましくは少なくとも10倍(by a factor of 10:10の因子で)、最も好ましくは少なくとも30倍(by a factor of 30:30の因子で)であるような、基板の自発的エッチング速度よりも高い速度で自発的にエッチングすることができる。
【0037】
エッチング工程の形で実行される粒子の処理工程の場合、粒子を取り囲む基板をエッチング工程でおかす(attack)ことが可能な限り少ないと好都合である。したがって、調和ガスを決定する際に、除去されるべき粒子の環境において、分析ユニットが基板の組成を考慮に入れると有利である。
【0038】
調和ガスは、ルテニウム(Ru)、窒化タンタル(TaN)、二酸化ケイ素(SiO2)およびMoxSiOyzからなる群のなかからの少なくとも1つの要素のエッチング速度を含むことができ、ここで、0≦x≦0.5、0≦y≦2、0≦z≦4/3であり、このエッチング速度は、少なくとも1つの単独の粒子のエッチング速度の2分の1以下(at least by a factor of 2:2の因子で)、好ましくは5分の1以下(at least by a factor of 5:5の因子で)、より好ましくは10分の1以下(at least by a factor of 10:10の因子で)、最も好ましくは30分の1以下(at least by a factor of 30:30の因子で)であるように、少なくとも1つの単独の粒子のエッチング速度よりも小さい。
【0039】
少なくとも1つの単独の粒子は、シリコン(Si)を含むことがあり、調和ガスは、少なくとも1つのハロゲン、特にハロゲン化合物、たとえば二フッ化キセノン(XeF2)を含み得る。少なくとも1つの単独の粒子は、1つまたは複数の有機化合物を含むことがあり、調和ガスは、水蒸気(H2O)を含み得る。少なくとも1つの単独の粒子は、スズ(Sn)を含むことがあり、調和ガスは、少なくとも水素(H2)、少なくとも1つの水素化合物および/または少なくとも塩化ニトロシル(NOCl)を含み得る。
【0040】
主構成物としてスズを有する粒子を自発的にエッチングするために、水蒸気および/または塩化ニトロジルのエッチングガスを使用することが可能である。
【0041】
本発明による装置はさらに、少なくとも1つの単独の粒子をエッチングする第1の調和ガスの局所エッチング反応を開始する、および/または材料を少なくとも1つの単独の粒子の上に堆積する第2の調和ガスの局所堆積反応を開始する、少なくとも1つの粒子ビームを備えることができる。
【0042】
別の実施形態では、装置内の粒子ビームは、たとえば、電子ビーム誘起エッチング(EBIE:electron beam-induced etching)工程および/または電子ビーム誘起堆積(EBID:electron beam-induced deposition)工程を実施することができる。
【0043】
少なくとも1つの単独の粒子はスズを含むことがあり、少なくとも1つの第1の調和ガスは、水素化合物、水素(H2)、ハロゲン化合物、塩素化合物、および塩化ニトロシル(NOCl)からなる群のなかからの少なくとも1つの要素を含み得る。
【0044】
スズを含む粒子はまた、粒子ビーム誘起エッチング工程(particle beam-induced etching operation)によって基板から除去することもでき、ここで、選択されるエッチングガスは、上記リストからの少なくとも1つの要素である。
【0045】
顕微鏡システムの粒子ビームは、装置の粒子ビームおよび分析ユニットの粒子ビームと同一とすることができる。別法として、顕微鏡システム、装置および分析ユニットそれぞれが専用の粒子ビームを使用することも可能である。加えて、3つの装置またはユニットのうちの2つは、1つの共通粒子ビームを使用することができる。
【0046】
分析装置は、少なくとも1つの単独の粒子を処理する前に、少なくとも1つの単独の粒子の環境中で基板上に局所限定保護層を堆積させる調和ガスを決定するように設計することができる。
【0047】
ガス噴射システムはまた、少なくとも1つの単独の粒子の周囲に局所限定保護層を堆積するように設計することもできる。
【0048】
分析ユニットは、金属カルボニル、遷移元素カルボニル、典型元素カルボニル、金属アルコキシド、遷移元素アルコキシド、典型元素アルコキシド、および不飽和芳香族炭化水素を含む群から、局所限定保護層を堆積するための調和ガスを選択することができる。
【0049】
金属カルボニル、遷移元素カルボニルまたは典型元素カルボニルは、クロムヘキサカルボニル(Cr(CO)6)、モリブデンヘキサカルボニル(Mo(CO)6)、タングステンヘキサカルボニル(W(CO)6)、ジコバルトオクタカルボニル(Co2(CO)8)、トリルテニウムドデカカルボニル(Ru3(CO)12)、および鉄ペンタカルボニル(Fe(CO)5)を含み得る。
【0050】
金属アルコキシド、遷移元素アルコキシドまたは典型元素アルコキシドは、テトラエチルオルソシリケート(TEOS、Si(OC254)およびチタンイソプロポキシド(Ti(OCH(CH)324)を含み得る。
【0051】
不飽和芳香族炭化水素は、スチレンを含み得る。
【0052】
ガス噴射システムは、調和ガスのガス流量を断続的に供給するように設計することができ、それにより、少なくとも1つの粒子ビームは、少なくとも1つの単独の粒子を処理および結像するために断続的に使用できるようになる。少なくとも1つの粒子ビームは、少なくとも1つの電子ビームを含み得る。
【0053】
少なくとも1つの単独の粒子は、モリブデン(Mo)を含むことがあり、調和ガスは、二フッ化キセノン(XeF2)を含み得る。少なくとも1つの単独の粒子は、シリコン(Si)および/またはルテニウム(Ru)を含むことがあり、調和ガスは、XeF2および水蒸気(H2O)を含み得る。少なくとも1つの単独の粒子は、1つまたは複数の有機材料および水を含むことがあり、調和ガスはXeF2を含み得る。
【0054】
少なくとも1つの単独の粒子は、スズ(Sn)を含むことがあり、調和ガスは、少なくとも水素(H2)および/または少なくとも1つの水素化合物を含み得る。少なくとも1つの水素化合物は、アンモニア(NH3)、カルバミン酸アンモニウム(H2NCOONH4)および炭酸アンモニウム((NH42CO3)からなる群のなかからの少なくとも1つの要素を含み得る。
【0055】
水素化合物は、局所的な粒子ビーム誘起エッチング工程によって基板からスズ粒子を除去するために使用することができる。
【0056】
装置はまた、少なくとも1つの単独の粒子と相互作用するように設計された少なくとも1つのマイクロマニピュレータユニットを含むこともできる。
【0057】
上述したように、基板上に存在する粒子は、自発的または局所的な誘起エッチング工程によって除去することができる。別法として、移動させることによって基板から粒子を除去することも可能である。
【0058】
顕微鏡システムは、少なくとも1つの単独の粒子が少なくとも1つのマイクロマニピュレータユニットと相互作用している間に、その粒子を結像するように設計することができる。少なくとも1つのマイクロマニピュレータユニットは、ファンデルワールス力、静電力、および化学結合力のうちの少なくとも1つの力によって、少なくとも1つの単独の粒子と相互作用するように設計することができる。
【0059】
本出願に記載された装置の利点は、粒子がマイクロマニピュレータユニットによって処理されている間に粒子を結像できることである。これにより、第1に、困難な処理工程の実施が容易になり、第2に、処理工程中のマイクロマニピュレータユニットによる基板の損傷がほとんど防止される。
【0060】
少なくとも1つのマイクロマニピュレータユニットは、少なくとも1つのL形マイクロマニピュレータ、または1つのトングの形のマイクロマニピュレータを含み得る。
【0061】
装置は、マイクロマニピュレータユニットを少なくとも1つの単独の粒子に対して相対的に移動させるように設計された移動デバイスをさらに含み得る。
【0062】
少なくとも1つのマイクロマニピュレータユニットは、少なくとも1つの単独の粒子を基板上で移動させること、少なくとも1つの単独の粒子を基板上で粉砕すること、および少なくとも1つの単独の粒子を基板から取り上げること、からなる群のなかからの少なくとも1つの要素を実施するように設計することができる。
【0063】
少なくとも1つのマイクロマニピュレータユニットは、少なくとも1つの単独の粒子を固定するように設計された少なくとも2つのマイクロマニピュレータを含み得る。
【0064】
少なくとも1つの粒子ビームは、少なくとも1つの単独の粒子の帯電を誘起するように設計することができる。装置は、少なくとも1つの単独の粒子の帯電を誘起するように設計されたイオン銃(フラッドガン)をさらに含み得る。
【0065】
移動デバイスは、少なくとも1つのマイクロマニピュレータユニットを、少なくとも1つの単独の粒子を除去および/または処理する前に、少なくとも1つの単独の粒子の近くに配置するように設計することができ、それにより、マイクロマニピュレータユニットは、少なくとも1つの単独の粒子を取り囲む基板を、少なくとも1つの単独の粒子の処理のいかなる影響からも少なくとも部分的に保護する。
【0066】
マイクロマニピュレータユニットの1つまたは複数のマイクロマニピュレータを、除去されるべき単独の粒子の近くに巧みに配置することにより、処理工程が粒子の周囲の基板にも影響を及ぼすことを少なくとも部分的に防ぐことが可能である。マイクロマニピュレータユニットを適切に配置することにより、たとえば、処理工程を実施する前に、除去されるべき粒子の周囲に局所限定保護層が配置されるのを防ぐことができる。
【0067】
少なくとも1つのマイクロマニピュレータユニットは、少なくとも1つのマイクロマニピュレータを含むことがあり、この少なくとも1つのマイクロマニピュレータユニットは、少なくとも1つのマイクロマニピュレータを加熱するように設計することができる。
【0068】
マイクロマニピュレータユニットは、少なくとも1つのマイクロマニピュレータを電気的に加熱するように設計することができる。少なくとも1つの粒子ビームは、マイクロマニピュレータユニットの少なくとも1つのマイクロマニピュレータおよび/または少なくとも1つの単独の粒子へのエネルギー堆積によって、少なくとも1つのマイクロマニピュレータおよび/または少なくとも1つの単独の粒子を加熱するように設計することができる。
【0069】
少なくとも1つのマイクロマニピュレータは、少なくとも1つの単独の溶融粒子(molten particulate)と合金(alloy)を形成する金属または金属合金を含むように設計することができる。
【0070】
除去されるべき粒子の材料組成の融点が低く、また、マイクロマニピュレータユニットのマイクロマニピュレータが、除去されるべき粒子の材料と合金を形成できる材料組成を有する場合には、粒子は、マイクロマニピュレータとの合金を形成することによって基板から除去することができる。個々の粒子のサイズとその組成に応じて、マイクロマニピュレータは、粒子の材料を取り込む能力が尽きる前に、複数の粒子を取り込むことができる。
【0071】
少なくとも1つのマイクロマニピュレータは、ビスマス(Bi)、ビスマス合金および/またはビスマスコーティングを含むことがあり、少なくとも1つの単独の粒子の材料組成の少なくとも1つの構成物は、スズ(Sn)を含み得る。
【0072】
除去されるべき粒子をマイクロマニピュレータとの合金にすることは、低融点金属を含む粒子を基板から除去するための別の方法である。
【0073】
ビスマスとスズの合金は、Biが40%、Snが60%~Biが58%、Snが42%の範囲の材料組成を有し得る。
【0074】
少なくとも1つのマイクロマニピュレータは、少なくとも1つの単独の加熱された粒子を取り上げる炭素構造体を含み得る。マイクロマニピュレータの炭素構造体は、少なくとも1つのカーボンナノチューブ(CNT)または少なくとも1つの多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を含み得る。カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブは、少なくとも1つの単独の粒子を濡らす加熱されたカーボンナノチューブおよび/または加熱された多層カーボンナノチューブを含み得る。少なくとも1つの単独の粒子は、スズを含み得る。走査型電子顕微鏡の測定プローブとしてのカーボンナノチューブの製造および使用については論文:Z.W. Xu et al.: "Carbon nanotube AFM probe technology", https://doi.org/10.5772/17350に記載されている。
【0075】
カーボンナノチューブは、電気的にはんだ付けすることができる。したがって、カーボンナノチューブには、金属に対して接着作用がある。したがって、カーボンナノチューブまたは加熱されたカーボンナノチューブは、低融点金属含有粒子、特にスズ含有粒子を毛細管力の作用によって基板表面から取り上げることができる。
【0076】
装置は、少なくとも1つのマイクロマニピュレータと少なくとも1つの単独の粒子との間に、少なくとも1つの単独の粒子中にエレクトロマイグレーション(electromigration)を生じさせる電流の流れを生成するように設計された電圧源を含み得る。
【0077】
電圧源は、電流の極性を調節するように設計することができ、それにより、少なくとも1つの単独の粒子のイオンが、少なくとも1つのマイクロマニピュレータユニットの少なくとも1つのマイクロマニピュレータの方向に移動するようになる。少なくとも1つのマイクロマニピュレータユニットおよび/または少なくとも1つの粒子ビームは、粒子に電流が流れる間に少なくとも1つの単独の粒子をさらに加熱するように設計することができる。
【0078】
装置は、基板との電気的接触を確立するように設計されている、また、電圧源を接続するためのインターフェースも有する、試料ステージをさらに含み得る。
【0079】
装置はまた、少なくとも1つの単独の粒子を油で覆うように設計された噴射システムも含み得る。噴射システムは、粒子の処理の前に、少なくとも1つの単独の粒子を油で覆うように設計することができる。
【0080】
粒子を油で覆うことには2つの利点がある。第1に、油で粒子を覆うと、処理工程の間中に粒子が受ける大気中の酸素の影響を低減することができる。第2に、処理されるべき粒子に油膜が付けられると、粒子に熱が伝達しやすくなる。
【0081】
少なくとも1つの粒子ビームは、少なくとも1つの単独の粒子に調和ガスを供給する前に、少なくとも1つの単独の粒子の静電気帯電を開始するように設計することができ、この場合、調和ガスは粒子上に材料を堆積させる。
【0082】
処理されるべき粒子の静電気帯電により、処理されるべき粒子の上に材料を個別に堆積することが可能になる。除去されるべき材料に材料が堆積すると、その表面積が増加するので、基板から粒子を除去しやすくなる。最も単純な場合では、サイズが増大した粒子は、基板の洗浄工程によって基板から除去することができる。一般に、拡大された粒子は、マイクロマニピュレータユニットの1つまたは複数のマイクロマニピュレータを用いて、比較的簡単に基板の表面を移動させることができる。
【0083】
分析ユニットは、少なくとも1つの単独の粒子上への堆積速度が基板上の2倍、好ましくは5倍、より好ましくは10倍、最も好ましくは30倍であるような、基板上よりも高い堆積速度の調和ガスを選択することができる。さらに、堆積工程またはその走査を誘起する粒子ビームと調和ガスとを位置合わせすることが有利である。
【0084】
少なくとも1つの単独の粒子は、基板から除去することに関して不安定である粒子と、2つ以上の粒子破片(particulate fragments)を有する粒子と、粒子塊(particulate agglomerate)を含む粒子とからなる群のなかからの一要素を含むことがあり、ガス噴射システムはさらに、除去の前に、少なくとも1つの単独の粒子の上に材料を堆積する調和ガスを少なくとも1つの単独の粒子の環境中で供給するように設計することができる。
【0085】
基板から除去されるべき粒子が、不安定である場合、複数の粒子から成る場合、または小さな粒子の局所的な塊から成る場合には、安定化した粒子を全体として基板から除去できるように、この粒子を、処理工程の前に材料を堆積することによって安定化させることが有利である。
【0086】
マイクロマニピュレータユニットは、少なくとも1つの単独の粒子の第1の部分を除去するように設計することができ、調和ガスは、少なくとも1つの単独の粒子の第2の部分を自発的エッチングおよび/または粒子ビーム誘起エッチングによって除去することに寄与することができる。
【0087】
マイクロマニピュレータによって粒子が基板表面から持ち上げられると、粒子の残留物が基板の表面に残ることがある。基板表面に残っている残留物は、第2のステップで、自発的エッチング工程または粒子ビーム誘起エッチング工程によって基板から除去することができる。
【0088】
ガス噴射システムはまた、少なくとも1つの単独の粒子の除去後に、少なくとも1つの単独の粒子の除去中に生じた基板の損傷を少なくとも部分的に無くす再編成ガス(reconstruction gas:再建ガス)を、除去された少なくとも1つの単独の粒子の環境中で供給するように設計することもできる。
【0089】
再編成ガスは、たとえばクロムヘキサカルボニル(Cr(CO)6)である金属カルボニル、テトラエチルオルトシリケート(TEOS、Si(OC254)、および二酸化窒素(NO2)からなる群のなかからの少なくとも1つの要素を含み得る。
【0090】
ガス噴射システムはまた、少なくとも1つの単独の粒子を除去した後に、少なくとも1つの単独の除去された粒子の環境中でパッシベーションガスを供給するように設計することもでき、このパッシベーションガスは、少なくとも1つの単独の粒子に対する処理工程が終了したときに、まだ存在している調和ガスによって基板が損傷することを防止する。
【0091】
パッシベーションガスは、水蒸気(H2O)、二酸化窒素(NO2)、一酸化窒素(NO)、酸素(O2)、ニトロシルクロライド(NOCl)およびTEOSからなる群のなかからの少なくとも1つの要素を含み得る。
【0092】
上で定義された装置の顕微鏡システムを用いて、粒子除去工程の結果として生じた基板の損傷を検査することができる。装置の分析ユニットおよびガス噴射システムを用いて、第1に、損傷を最小化することが可能であり、第2に、下流の修理または再編成ステップで生じた基板の損傷をまさに実質的に無くすことが可能である。
【0093】
1つの実施形態では、少なくとも1つの単独の粒子を基板から、特に極端紫外線(EUV)フォトリソグラフィ用の光学要素から除去するための方法は、(a)少なくとも1つの単独の粒子の材料組成の少なくとも1つの構成物を決定するステップと、(b)材料組成の特定の構成物に調和したガスを少なくとも1つの単独の粒子の環境中で供給するステップとを含み、(c)調和ガスは、少なくとも1つの単独の粒子を基板から除去することに寄与する。
【0094】
少なくとも1つの単独の粒子を除去する方法は、少なくとも第2の1つの単独の粒子の材料組成の少なくとも1つの構成物を決定する前に、少なくとも第1の1つの単独の粒子を除去するために、エッチングガスを用いて粒子ビーム誘起エッチング工程を実施するステップをさらに含み得る。エッチングガスは、二フッ化キセノン(XeF2)を含み得る。加えて、エッチングガスは、たとえば酸素(O2)である添加ガスを含み得る。
【0095】
本発明による方法は、2段階の工程として実施することができる。従来のEBIE工程を実施することによる、第1の処理ステップでは、基板上に存在する粒子の第1の部分が、局所的な粒子ビーム誘起エッチング工程を実施することによって除去される。第2の処理ステップでは、分析ユニットを用いて、粒子の残りの第2の部分の材料組成が少なくとも部分的に決定される。次に、粒子の第2の部分は、1つまたは複数の調和ガスを用いて自発的エッチング工程および/または粒子ビーム誘起エッチング工程を実施することによって、基板から除去される。
【0096】
コンピュータプログラムは命令を含むことができ、この命令がコンピュータプログラムによって実行されると、上記の態様のいずれかによる装置が上の方法の方法ステップを実行する。
【0097】
次に続く、発明を実施するための形態では、本発明の現在好ましい実施例について、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1】洗浄工程によって除去できる単独の粒子があるフォトリソグラフィマスクの上面視の細部を示す図である。
図2】洗浄工程によって除去できない2つの単粒子があるフォトリソグラフィマスクの上面視の細部を示す図である。
図3】基板から単独の粒子を除去するための装置のいくつかの構成要素を提示する図である。
図4a】基板からの1つまたは複数の粒子を処理または除去するために使用できる装置の、いくつかの重要な構成要素の概略的なブロック図の断面図である。
図4b図4aに対して断面平面が90°回転している、図4aの装置の断面図である。
図5】マイクロマニピュレータユニットの第1の実施例の図である。
図6】マイクロマニピュレータユニットの第2の実施例の図である。
図7】マイクロマニピュレータユニットの第3の実施例の図である。
図8】調和ガスを用いた自発的エッチング工程の実施によって粒子を除去する第1の実施例の概略部を提示する図である。
図9】除去されるべき粒子のまわりの局所限定保護層の配置または堆積を示す図である。
図10】基板から粒子を除去した後に、堆積された局所限定保護層を除去することを示す図である。
図11】2つのマイクロマニピュレータによって除去されるべき粒子を囲む、基板の保護部の第1の実施例を示す概略図である。
図12】2つのマイクロマニピュレータによって除去されるべき粒子を囲む、基板の保護部の第2の実施例を示す概略図である。
図13】調和ガスを用いた自発的エッチング工程を実施することによって粒子を除去する第2の実施例を示す図である。
図14】基板から粒子を除去するために調和ガスを用いるEBIE工程の実施例を示す図である。
図15】マイクロマニピュレータを用いる合金形成によって金属含有粒子を除去する実施例を提示する図である。
図16】マイクロマニピュレータによって安定化させた粒子をまとめて基板から取り上げることができるように、不安定な粒子の上に材料を堆積することによって不安定な粒子を安定化させることを示す図である。
図17】粒子ベースによって基板に接合されている粒子の方へマイクロマニピュレータが接近していることを示す図である。
図18】基板から粒子を取り上げ、粒子のベースが粒子残留物として基板に残っていることを示す図である。
図19】調和ガスによってEBIE工程を実施することにより粒子残留物を除去することを示す図である。
図20】基板上の、特にEUV波長範囲用の光学要素上の少なくとも1つの単独の粒子を除去する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0099】
以下で、基板上の少なくとも1つの単独の粒子を除去するための本発明の装置および本発明の方法の現在好ましい実施態様について、詳細に説明する。本発明の装置および本発明の方法は、極端紫外線(EUV)波長範囲用のフォトマスクの例を用いて以下に記述される。しかし、これらの装置および方法は、以下に記載の諸例に限定されない。そうではなく、これらの装置および方法は、任意の種類のフォトマスクを処理するために、またはそのフォトマスクから粒子を除去するために使用することができる。さらに、記載の装置、および対応する方法は、フォトリソグラフィ露光装置の構成要素上に存在する、特に、粒子が存在することによって光学特性が損なわれる光学構成要素上に存在する粒子を処理するために用いることができる。さらに、当業者には容易に分かるように、本発明の装置および本発明の方法は、異なるモードのナノスケールインプリントリソグラフィに使用されるテンプレートから粒子を除去するために同様に利用することができる。
【0100】
図1は、フォトリソグラフィマスク100の細部の上面図を示す。フォトリソグラフィマスク100の細部は、垂直の細片の形の吸収材からなる3つのパターン要素120、130、140が配置されている基板110を提示している。パターン要素のうちの1つの上の、すなわちパターン要素130の上の粒子150の場所を確認することにより、粒子150は、フォトマスク100から洗浄工程によって除去することができる。通常、パターン要素120、130、140は、50nm~200nmの高さを有する。
【0101】
図2は同様に、フォトリソグラフィマスク200の上面視の細部を描写している。図示のマスク200は基板110を有する。2列の合計で6つあるコンタクトホール220が、マスク200の基板110に導入されている。単独の粒子250が、上列の中間コンタクトホール220の実質的に中心の位置に存在する。下列では、単独の粒子260が中間コンタクトホール220の上側縁部で場所が確認されている。通常、コンタクトホール220は、50nm~200nmの範囲内の深さを有する。粒子250も260も、洗浄工程によってマスク200から除去することができない。フォトマスク200の凹部に存在する粒子250、260に加えて、パターン要素120、130、140の縁部に吸着した、また、特にパターン要素の角部に吸着した単独の粒子でさえ、たとえ除去できるとしても、洗浄工程によって、非常な困難を伴ってようやくマスク100、200から除去することができる。次の、フォトマスクから単独の粒子250、260を除去することについての記述は、洗浄工程によってはフォトマスク200から除去できない粒子250、260に関する。
【0102】
図3は、1つまたは複数の粒子320の処理および/または基板310からの除去を可能にする装置300のいくつかの構成要素の図を示す。基板310は、フォトマスク100、200の基板110を含み得る。基板310は、任意の種類のフォトマスク100、200の基板110を含み得る。より具体的には、基板310はEUVマスクを含み得る。しかし、基板310はまた、マスク露光システムの、特にEUV波長範囲用の露光システムの光学構成要素を含むこともある。
【0103】
基板310は、試料台325に配置することができる。図3の湾曲した矢印305で示されるように、試料台325は、1つ、2つまたは3つの軸のまわりに回転可能である。これにより、様々な角度での粒子320の処理が可能になる。加えて、試料台325は、たとえば試料台325の面内で2つの方向に動くことも、3つの空間方向に、すなわち試料台325の面に対してさらに直角に動くこともできる(図3に図示せず)。試料台325は、電気端子を有することができ、この電気端子によって、ある電位を基板310に、または粒子320に加えることができる(図3に図示せず)。
【0104】
図3で、説明のための粒子320は球形を有する。しかし、基板310から除去されるべき粒子320は球形でなくてもよい。そうではなく、粒子320はどんな形であってもよい。粒子320は、約1nm~約100μmの範囲の直径を有し得る。加えて、粒子320は、基板310とどのようにも相互作用し得る。たとえば、粒子320は、粒子320および/または基板310にファンデルワールス力によって、または化学結合もしくは粒子の静電荷によって付着し得る。
【0105】
粒子320は、純金属および/または金属合金を含み得る。粒子320は、酸化物、ハロゲン化合物、窒化物、硫化物、リン化物、塩または有機化合物を含み得る。有機化合物は、炭素化合物、炭素水素化合物、およびフォトレジストを含み得る。
【0106】
装置300は、分析ユニット330を含み得る。分析ユニット330は、粒子ビーム350を生成できる粒子ビーム源335を含むことができ、この粒子ビームは、粒子320の上へ集束粒子ビーム350の形で向けることができる。粒子ビーム350は、可視、紫外線(UV)、遠紫外線(DUV)および/または極端紫外線(EUV)の波長範囲の光子ビームを含み得る。粒子ビーム350は、電子ビーム、イオンビーム、原子ビーム、および/または分子ビームを含み得る。粒子ビーム源335は、粒子320を横切って粒子ビーム350を走査できる走査デバイスをさらに含み得る(図3に図示せず)。分析ユニット330は、粒子320から生じる粒子345を検出できる検出器340を含み得る。粒子345または粒子ビーム345は、粒子320に入射するビーム350により粒子320から放出される微粒子を含み得る。検出器340は、粒子345または粒子ビーム345を分析し、この分析に基づいて、粒子320の最も重要な構成物を決定する。粒子320の最も重要な構成物は通常、その材料組成の最大の百分率を有する粒子の材料組成の構成物である。
【0107】
分析ユニット330は、たとえば、エネルギー分散型X線分光ユニットおよび/または二次イオン質量分析ユニットの形で実施することができる。
【0108】
粒子345または粒子ビーム345は別法として、粒子320によって、または粒子320を取り囲む基板310によって反射される入射粒子ビーム350の粒子を含み得る。粒子ビーム345が粒子ビーム350の反射粒子を圧倒的に含む場合は、粒子ビーム源335と検出器355は、粒子320を結像するために使用できる顕微鏡システム390を形成する。したがって、分析ユニット330は、顕微鏡システム390と組み合わせ可能とすることができる。別法として、装置300は、場合ごとに、スタンドアロン分析ユニット330およびスタンドアロン顕微鏡システム390を有することが可能である。
【0109】
加えて、装置300は、調和ガス370を粒子320の環境中で供給できるガス噴射システム360を含む。ガス噴射システム360は、連結部385を介して制御ユニット380に連結することができる。制御ユニット380は、まず第1に調和ガス370のガス組成を監視することができ、第2に調和ガス370のガス流速を、開ループまたは閉ループ制御のもとで制御することができる。加えて、制御ユニット380は、分かりやすくするために図3では削除されている、分析ユニット330への接続部を含み得る。この接続部を介して、制御ユニットは、粒子320および調和ガス370の組成についての情報を受け取る。加えて、ガス噴射システム360はまた、除去されるべき粒子320の周囲および/または上に保護層を堆積するための再編成ガスおよび/またはガスを供給することもできる。
【0110】
最後に、装置300は、粒子320を処理するように設計されたマイクロマニピュレータユニット395を含む。マイクロマニピュレータユニット395は、図5~7についての文脈で詳細に記述されている。
【0111】
図4aは、基板310からの、たとえばフォトリソグラフィマスク100、200からの、1つまたは複数の粒子320を処理するために使用できる装置400の必須の構成要素の断面図を示す。図4aおよび図4bは、相互に関連しているとして見られたい。図4bは、図4aに対して断面平面が90°回転している、図4aからの装置400の必須の構成要素の断面を提示している。図4aおよび図4bは、図3の装置300の実施例をより詳細に示す。
【0112】
図3についての文脈ですでに論じたように、基板402は、フォトリソグラフィ露光システムの任意の光学構成要素、任意のフォトマスク100、200、またはナノインプリント技法のテンプレートであり得る。しかし、フォトマスクの処理と同様に、装置400はまた、たとえば、アクセスするのが困難な場所に粒子320の形で余分の材料を有する集積回路、微小電子機械システム(MEMS)および/または光集積回路の処理に使用することもできる。
【0113】
図4の説明的な装置400は、原子間力顕微鏡(AFM)の形の2つのマイクロマニピュレータユニット465および475を備える、修正された走査型電子顕微鏡(SEM)401である。電子銃406が電子ビーム409を生成し、このビームは、要素408および412によって、3点支持機構403の形の試料台404に配置された基板402へ集束電子ビーム410として向けられる。
【0114】
試料台404は調整デバイスを有し(図4に図示せず)、このデバイスによって、粒子320(図4に図示せず)がある基板402上の位置は、基板402上の電子ビーム410の入射点の下へ、および/またはAFM 465および475の処理領域の中へ動かすことができる。加えて、試料台404は、電子ビームの焦点410が基板404の表面(同様に図4に図示せず)に静止するように、高さに関して移動させる、すなわちz方向または電子ビーム409のビーム方向に移動させることができる。さらに、試料台404は、温度を設定および制御するための装置を備えることができ(同様に図4に図示せず)、この装置により、基板402を所与の温度にすること、および基板をその温度に保つことが可能になる。
【0115】
図4の装置400は、調和ガス370の局所化学反応を引き起こすためのエネルギー源として電子ビーム409を使用する。この実施形態によれば、調和ガス370は、局所エッチング反応または局所堆積反応を実施することができる。電子ビーム410は、直径が<1nmの小焦点に集束させることができる。加えて、基板402の表面に入射する電子は、その運動エネルギーがたとえ大きなエネルギー範囲にわたって変動しても、基板表面へのいかなる損傷もほとんど引き起こさない。
【0116】
しかし、ここで提示された装置400および方法は、電子ビーム409を使用することに限定されない。そうではなく、基板402の表面の粒子ビーム入射点で調和ガス370の局所化学反応を引き起こすことができる任意の所望の粒子ビームを使用することが可能である。代替の粒子ビームの例には、イオンビーム、原子ビーム、分子ビームおよび/または光子ビームがある。さらに、2つ以上の粒子ビームを並列に使用することも可能である。特に、電子ビーム409と光子ビームをエネルギー源として同時に使用することが可能である(図4には図示されていない)。このことは、装置400が、電子ビーム409を分析ユニット330の一部として使用し、光子ビームを顕微鏡システム390の一部として使用できることを意味する。
【0117】
電子ビーム409および任意選択で光子ビームが、基板402の像、特に1つまたは複数の粒子320の形の余分な材料を含む基板402の領域の像を記録するために使用されてもよい。電子ビーム409はこのように、粒子320の場所を確認し、結像し、分析するために使用することができる。後方散乱電子および/または二次電子を検出するための検出器414は、粒子320の表面輪郭に対応する、および/または基板402もしくは粒子320の組成に対応する信号を供給する。
【0118】
制御ユニット418を用いて基板402の全体にわたり集束電子ビーム410を走査またはラスタ走査することによって、装置400のコンピュータシステム420が基板402または粒子320の像を生成することができる。制御ユニット418は、図4に図示のように、コンピュータシステム420の一部とすることも、別個のユニット(図4に図示せず)として実施することもできる。コンピュータシステム420は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせとして実施されるアルゴリズムを含むことができ、このアルゴリズムにより、検出器414の測定データから像を取り出すことが可能になる。
【0119】
加えて、コンピュータシステム420は、検出器414からの測定データを使用して粒子320の材料組成の基本的な構成物を決定するアルゴリズムを含み得る。さらに、コンピュータシステム420は、検出器414からの測定データを使用して粒子320の材料組成の少なくとも1つの基本的な構成物を予測するように設計された、機械学習モデルおよび/または予測フィルタを含み得る。
【0120】
コンピュータシステム420の画面419は、粒子320の計算された像および/または材料組成を示すことができる。さらに、コンピュータシステム420は、検出器414からの測定データ、計算された像および/または粒子320の組成を記憶することができる。加えて、コンピュータシステム420の制御ユニット418は、電子砲406、ビーム結像要素408、およびビーム形成要素412を制御することができる。制御ユニット418からの制御信号はさらに、調整デバイス(図4には図示せず)を用いて試料台404の動きを開ループまたは閉ループ制御のもとで制御することができる。加えて、制御ユニット418は、マイクロマニピュレータユニット470および480を、特に粒子320に対して動かすことができる。
【0121】
基板402に入射する電子ビーム410は、粒子320および/または粒子320を取り囲む基板402を静電的に帯電させることができる。粒子320の静電気帯電は、粒子320とマイクロマニピュレータユニット470、480の一方または両方との相互作用を助長するために望ましいことがある。粒子320を制御された方法で静電的に帯電させるために、粒子320および/または基板402の表面を低運動エネルギーのイオンで照射するためのイオン銃(フラッドガン)416を使用することが可能である。例として、この目的のために数百eVの運動エネルギーを有するアルゴンイオンを使用することが可能である。
【0122】
試料台404に配置された基板402上の粒子320を処理するために、図4aおよび図4bの説明的な装置400は、8つの異なる処理ガスまたは前駆体ガス用の8つの貯蔵器容器(reservoir vessel)を備える。第1の貯蔵器容器425は、第1のエッチングガス、たとえば二フッ化キセノン(XeF2)および/または塩化ニトロシル(NOCl)を貯蔵する。エッチングガスは、非調和局所エッチング工程(non-matched local etching operation)において1つまたは複数の粒子320を基板402から除去することに使用することができる。
【0123】
第2の貯蔵器容器430は、第1の堆積ガスを貯蔵する。第1の堆積ガスは、たとえば炭素含有堆積ガスを、たとえば金属カルボニルを、例としてタングステンヘキサカルボニル(W(CO)6)を含み得る。第1の堆積ガスは、除去されるべき粒子320の周囲の基板402に局所限定保護層を堆積するために好ましくは利用される。
【0124】
第3の貯蔵器容器435は、第2の堆積ガスを貯蔵する。第2の堆積ガスは、たとえばクロムヘキサカルボニル(Cr(CO)6)である、金属カルボニルを含み得る。第2の堆積ガスは通常、粒子320の上に材料を堆積することによって脆い粒子320を安定化させるために使用される。加えて、第2の堆積ガスは、粒子の上に追加の材料を堆積することによって粒子320の表面積を増大させ、それゆえに、大きくなった粒子が基板402から除去しやすくなるように使用することができる。
【0125】
第4の貯蔵器容器440は、第1の調和ガス、たとえば水素(H2)を、または水蒸気(H2O)と一緒に有機化合物を貯蔵する。第1の調和ガスは、粒子320を取り囲む基板402、または堆積された局所限定保護層を著しくおかさずに、除去されるべき粒子320を自発的にエッチングするように選ばれる。
【0126】
第5の貯蔵器容器445は、第2の調和ガスを貯蔵する。第2の調和ガスは、たとえば、アンモニア(NH3)、カルバミン酸アンモニウム(H2NCOONH4)および/または炭酸アンモニウム((NH42CO3)を含み得る。
【0127】
第6の貯蔵器容器450は、パッシベーションガスを貯蔵する。パッシベーションガスは、金属カルボニルおよび/またはTEOSを含み得る。パッシベーションガスは、粒子320を取り囲む基板402の損傷を最小限にするために、第1および/または第2の調和ガス370に付加することができる。
【0128】
第7の貯蔵器容器455は、再編成ガスを貯蔵する。再編成ガスは、窒素酸化物(NO、NO2)、水蒸気(H2O)、酸素(O2)、クロムヘキサカルボニル(Cr(CO)6)、およびTEOSのガスからなる群のなかからの少なくとも1つの要素を含み得る。再編成ガスは、粒子除去中に生じた基板402の損傷を無くすために、粒子320の領域内の基板402の後処理を可能にする。
【0129】
最後に、第8の貯蔵器容器460は、添加ガスを貯蔵する。添加ガスは、付加酸化剤を含むことができ、たとえば、酸素(O2)、オゾン(O3)、水(H2O)、重水(D2O)、過酸化水素(H22)、一酸化二窒素(N2O)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、硝酸(HNO3)、および他の酸素含有化合物、の群のなかからの一要素を含むことができる。第2の実施形態では、添加ガスは、還元作用を有するガス、たとえば水素(H2)またはアンモニア(NH3)を含む。
【0130】
酸化剤または還元剤の形の添加ガスは、たとえば、粒子320を除去するための第1および/または第2の調和ガスを用いて局所エッチング工程を実施する際に、選択性を向上させるために利用することができる。
【0131】
図4aおよび図4bに描かれた例では、各貯蔵器容器425、430、435、440、445、450、455、460は、対応するガスが単位時間当たりに供給されるレベル、すなわち電子ビーム410の入射点および/または粒子320の位置におけるガス流量を監視または制御するために、それ自体の制御弁426、431、436、441、446、451、456、461を有する。制御弁426、431、436、441、446、451、456、461は、コンピュータシステム420の制御ユニット418によって制御および管理される。したがって、処理サイトで供給されるガスの分圧比を広範囲で調整することが可能である。
【0132】
加えて、説明的な装置400では、各貯蔵器容器425、430、435、440、445、450、455、460は、それ自体のガス噴射システム427、432、437、442、447、452、457、462を有し、このシステムは、粒子320の近くのノズルで終端する。一代替実施形態では(図4に図示せず)、混合管の形のガス噴射システムが、2つ以上の、またはすべての処理ガスを共通流として粒子320の表面に供給するために使用される。
【0133】
図4に図示された例では、弁426、431、436、441、446、451、456、461は、対応する容器425、430、435、440、445、450、455、460の近くに配置される。代替の配置では、制御弁は、対応するノズル(図4に図示せず)の近くに組み込むことができる。図4に示された図とは対照的に、また現在は好ましくない方法では、容器425、430、435、440、445、450、455、460に貯蔵されたガスのうちの1つまたは複数を方向付けしないように装置400の真空チャンバ485の下部に供給することも可能である。この場合には、装置400が、下方反応空間と電子ビーム409を供給するデバイス400の上部との間に、装置400の上部での過度の低真空を防止するための栓(図4に図示せず)を内蔵する必要がある。
【0134】
貯蔵器容器425、430、435、440、445、450、455、460のそれぞれが、それ自体の温度設定要素および制御要素を有することができ、この要素は、対応する貯蔵器容器の冷却と加熱の両方を可能にする。これにより、堆積ガス、エッチングガス、調和ガス、再編成ガスおよび/または添加ガスをそれぞれ最適の温度で貯蔵および供給することが可能になる(図4に図示せず)。さらに、各供給システム427、432、437、442、447、452、457、462は、すべての処理ガスをその最適処理温度で粒子320の入射点に供給するために、それ自体の温度設定要素および温度制御要素(同様に図4に図示せず)を備えることができる。コンピュータシステム420の制御ユニット418は、貯蔵器容器425、430、435、440、445、450、455、460と、ガス噴射システム427、432、437、442、447、452、457、462との両方の温度設定要素および温度制御要素を制御することができる。貯蔵器容器425、430、435、440、445、450、455、460は、ガスシリンダの形で実施することができる。制御弁426、431、436、441、446、451、456、461は、流量調整器として実施することができる。
【0135】
図4の装置400は、真空チャンバ485で必要とされる真空を生成および維持するためのポンプシステム422を備える。制御弁426、431、436、441、446、451、456、461が閉じられると、≦10-7ミリバールの残留ガス圧が装置400の真空チャンバ485内に得られる。ポンプシステム422は、電子ビーム409を供給する装置400の上部用、および基板402と併せて試料台404を含む下部495用の別個のポンプシステムを備え得る。
【0136】
最後に、説明的な装置400は、原子間力顕微鏡(AFM)の形の2つの走査プローブ顕微鏡465および475を有する。AFM 465および475の測定ヘッド467および477は、マイクロマニピュレータユニット470、480に適応させることができる。AFM 465、475の測定ヘッド467および477は、マイクロマニピュレータユニット470、480を少なくとも2つの、好ましくは3つの空間方向に移動させることができ、それゆえに、マイクロマニピュレータユニットの移動装置467、477として機能することができる。AFM 465および475は、コンピュータシステム420の制御ユニット418によって制御される。本発明の方法を実施すると、装置400が2つの走査プローブ顕微鏡465、475を有する必要がない。マイクロマニピュレータユニット470または480が装備された1つの走査プローブ顕微鏡465または475は、粒子320(図4に図示せず)を処理し、および/または基板402から除去するために十分である。
【0137】
図5の略図500は、マイクロマニピュレータユニット510の一例を示す。像の左側部分は、マニピュレータユニット510の側面図を表し、像の右側部分はその上面図を表す。マイクロマニピュレータユニット510は、マイクロマニピュレータユニット510を走査プローブ顕微鏡465、475の測定ヘッド447、467に組み込めるようにする取付部530を備える。マイクロマニピュレータユニット510は、金属、金属化合物、半導体材料および/または複合半導体を含み得る。
【0138】
加えて、マイクロマニピュレータユニット510は、図5に示される例では幅広で平坦な形状を有する、マイクロマニピュレータユニット520を含む。マイクロマニピュレータ520の幅は、1nm~100μmの範囲、特に10nm~100nmの範囲を含み得る。マイクロマニピュレータ520の厚さは、5nm~10μmの範囲に及び得る。現在好ましいとされる厚さは、5nm~500nmの範囲にある。
【0139】
図6の略図600は、マイクロマニピュレータユニット470、480の第2の実施例を提示している。図5と同様に、像の左側部分は、L形マイクロマニピュレータユニット610の側面図を示し、像の右側部分はその上面図を表す。このL形マイクロマニピュレータは、斜めの取付部630およびひしゃく形マイクロマニピュレータ620を含む。取付部630は通常、100nm~10mmの範囲の、特に100nm~10μmの範囲の長さを有する。ひしゃく形マイクロマニピュレータ620の幅は、10nm~10mmの寸法、好ましくは10nm~10μmの寸法を包含する。マイクロマニピュレータ620の厚さは、5nm~10μmの範囲に、特に5nm~500nmの範囲に及ぶ。
【0140】
図7の略図700は、図6のL形マイクロマニピュレータユニット610の修正形態を示す。マイクロマニピュレータ620に加えて、マイクロマニピュレータ720のひしゃくは、切り欠きまたは凹部750を有する。切り欠き750は、5nm~8mmの範囲の、特に5nm~5μmの範囲の寸法を有し得る。ノッチ750は、マイクロマニピュレータ720によって粒子320を基板310から取り上げやすくする。
【0141】
マイクロマニピュレータ520、620、720は、導電性または電気絶縁性とすることができる。マイクロマニピュレータ520、620、720は、粒子320を基板402から、たとえばフォトマスク100、200から、洗浄工程によって除去できるように、基板402上の粒子320をたとえばフォトマスク100、200のパターン要素120、130、140の上へ移動させることができる。加えて、マイクロマニピュレータ520、620、720は、粒子320を粉砕すること、または粒子320を基板402から取り上げることができる。マイクロマニピュレータ520、620、720は、ファンデルワールス力によって、粒子320および/もしくはマイクロマニピュレータ520、620、720の静電荷によって、ならびに/または化学結合によって粒子と相互作用することができる。
【0142】
図8は、基板310から粒子320を除去する第1の実施例を示す。基板310は、図4aおよび図4bの装置400の基板402を含み得る。像800の上部分は、図3の描写に関連してすでに説明した分析ユニット330による、特定された粒子320を分析することについての図を提示している。この目的のために、分析ユニット330は、粒子320に粒子ビーム350を、たとえば電子ビーム350を照射する。粒子320によって反射された二次電子345は、分析ユニット330の検出器340で検出される。分析ユニット330は、二次電子345のエネルギースペクトルを用いて、粒子320の少なくとも基本的な構成物を確認する。すでに上述したように、分析ユニット330は、この目的のために、それに対応して訓練された機械学習モデルおよび/または予測フィルタを使用することができる。別法として、分析ユニット330は、イオンビームを用いて粒子320および/または基板310を走査することができ、検出器340は、粒子から放出された微粒子を分析することができる。
【0143】
分析ユニット330は、確認された組成を用いて、粒子320を自発的にエッチングする調和ガス370を決定する。粒子320の基本的な構成物がケイ素を含む場合、二フッ化キセノン(XeF2)を調和ガス370として使用することが可能である。粒子320がスズ(Sn)をその主構成物として有する場合、水素(H2)または塩化ニトロシル(NOCl)を調和ガス370として使用することが可能である。
【0144】
分析ステップでは、分析ユニット330は、粒子ビーム350を用いて走査することによって、粒子320を取り囲む基板310の組成を同様に確認することができる。調和ガス370を決定する際、分析ユニット330は、粒子320に対する後続のエッチングステップにより周囲の基板310を最小限の程度しか損傷しないように、基板310の材料組成を考慮に入れることができる。しかし、分析ユニット330には基板310の組成が、たとえば材料データベースにアクセスすることによって、すでに分かっていることもあり得る。
【0145】
分析ユニット330が、基板310を著しく損傷せずに粒子320を自発的にエッチングする調和ガス370を見つけられない場合、分析ユニット330は、粒子320に対するエッチング工程の開始の前に、基板310上の粒子320の周囲に局所限定保護層を堆積することを規定することができる。この操作は、図9に概略的に図示されている。この目的のために、分析ユニット330の電子ビーム350は、EBID(電子ビーム誘起堆積)工程を行う。その目的のために必要な堆積ガス970は、好ましくは金属カルボニルであり、第2の貯蔵器容器430に貯蔵される。
【0146】
堆積される局所限定保護層950のサイズおよび厚さは、除去されるべき粒子320のサイズおよび化学組成によって決まる。サイズが100μmの領域にまで及ぶ大きい粒子320では、局所限定保護層950は、ミリメートル範囲に近づく直径に達することがある。堆積されるべき保護層950の厚さは、粒子320の材料組成によって、それゆえに、保護層950が耐えられなければならない自発的エッチング時間によって、導き出される。保護層950の厚さは通常、5nm~1μmの範囲内にある。
【0147】
図8に図示された自発的エッチング工程の第2のステップで(像850の下部に概略的に図示されている)、ガス噴射システム360は、粒子320の場所に特定の調和ガス370を供給し、この調和ガスは、除去されるべき粒子320を自発的にエッチングする。粒子320に対する自発的エッチング工程は、装置300、400の顕微鏡システム390によって観察することができる。顕微鏡システム390は、粒子エッチング工程を結像するために光子ビームの形の粒子ビーム350を使用することができる。エッチング工程は、別法として、分析ユニット330(図8に図示せず)を使用して結像することもできる。加えて、自発的粒子エッチング工程の観察のために顕微鏡システム390または分析ユニット330を使用することも可能である。顕微鏡システム390および/または分析ユニット330からのデータに基づいて、制御ユニット380(図8に図示せず)は、調和ガス370のガス流量を開ループまたは閉ループ制御のもとで制御することができる。より具体的には、調和ガス370のガス流量は、エッチング工程が終了した後に止めることができ、それゆえに、調和ガス370が必要な程度を超えて基板310を損傷しないようにすることが可能である。
【0148】
基板310が、図9に概略的に描かれているように局所限定保護層950を有する場合、この保護層は、粒子320の除去後に第2のエッチングステップで基板310から再び除去される。この工程は、EBIE(電子ビーム誘起エッチング)工程の形で図10に概略的に示されている。この目的のために使用されるエッチングガス1050は、たとえば、第1の貯蔵器容器425に貯蔵されている二フッ化キセノン(XeF2)エッチングガスとすることができる。保護層950に対するエッチング工程は、分析ユニット330および/または顕微鏡システム390を用いてエッチングの進捗を確かめるために、周期的な時間間隔で中止することができる。
【0149】
一代替実施形態では、保護層950は、自発的エッチング工程(図10に図示せず)で基板310から除去することができる。金属カルボニル堆積ガス970をベースに堆積された保護層を自発的にエッチングするには、水(H2O)、酸素(O2)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、二フッ化キセノン(XeF2)、塩化ニトロシル(NOCl)、またはこれらのガスの組み合わせを使用することが可能である。
【0150】
保護層950を付けることの別法として、またはそれに加えて、粒子エッチング工程の間中に基板310を調和ガス370の作用から保護するために、1つまたは複数のマイクロマニピュレータが、除去されるべき粒子320の近くに配置されてもよい。図11は、第1の実施例の概略図を示す。2つのマイクロマニピュレータ1120が、除去されるべき粒子320の近くに配置される。マイクロマニピュレータ1120の取付部は、走査プローブ顕微鏡465、475の測定ヘッド447、467に連結される。測定ヘッド447、467は、マイクロマニピュレータによって移動させることができ、そのように粒子320の近くに配置されなければならない。
【0151】
マイクロマニピュレータ1120は、図5に描かれた平坦ボードマイクロマニピュレータ520の修正物とすることができる。マイクロマニピュレータ520の修正箇所は、取付部530の反対端部の狭い部分である。マイクロマニピュレータ1120の先端1140は、除去されるべき粒子320へ向けてのマイクロマニピュレータ1120の最適な接近を可能にする。図11に提示された例では、2つのマイクロマニピュレータ1120が互いに向かい合っている。マイクロマニピュレータ1120のこの配置は、大部分が1つの方向の基板310の損傷を回避する場合に好適である。しかし、図11に図示された構成に対して、粒子320を囲んで90°回転された2つの別のマイクロマニピュレータ1120(図11に図示せず)を配置することも可能である。必要であれば、基板310の保護のためにマイクロマニピュレータ1120をただ1つだけ使用することもまた、当然ながら可能である(同様に図11に図示せず)。
【0152】
図12は、粒子エッチング工程の間中に基板310を保護する第2の実施例を示す。図12に図示の例では、図6に示されたマイクロマニピュレータタイプ620の2つのひしゃく形マイクロマニピュレータ620が基板310を保護するために使用される。図11についての文脈で上述したように、単一のマイクロマニピュレータ620を使用すること、または好ましくは互いに直角に配置された4つのマイクロマニピュレータ620を使用することが、当然ながら可能である。マイクロマニピュレータ620ではなく、図12に図示の第2の実施例のマイクロマニピュレータ720を使用することもまた可能である。
【0153】
1つまたは複数のマイクロマニピュレータ620、1120によって基板310を保護することは、保護層950を堆積することと比較して適応性が大きい。加えて、この基板保護の方法では、保護層950の堆積および除去のために堆積工程およびエッチング工程を実施することが回避される。
【0154】
図13は、図8に図示された、粒子320を除去するための自発的エッチング工程の修正されたものを提示している。像1300の上部は、図8の像800のその部分と同様に、特定された粒子320の材料組成を分析することを描いている。粒子320の化学組成を分析することに加えて、分析ユニット330および/または顕微鏡システム390を用いて粒子320のサイズを決定することが可能である。
【0155】
ある特定の材料組成の粒子320用に別に調和されたガス370のエッチング速度は、別個の工程で測定しデータベースに記録することができる。特定された粒子320について決定された組成および確認されたパラメータに基づいて、調和ガス370に与えられるべき必要な作用継続時間または曝露量を計算することが可能である。この場合、調和ガス370によって実施された粒子320に対する自発的エッチング工程は、分析ユニット330または顕微鏡システム390による観察無しで実施することができる。自発的エッチング工程は、図13の像1350の下部に概略的に図示されている。
【0156】
別法として、無観察の自発的エッチング工程を所与の期間後に停止して、残っている粒子残留物を分析ユニット330および/または顕微鏡システム390によって結像し、それによって、残っているエッチング時間を推定し、その後、残っている推定時間だけエッチング工程を継続することも可能である。必要であれば、自発的エッチング工程は、残っている粒子残留物を分析するために繰り返し停止し、その後に再び継続することができる。
【0157】
図14は、概略的な形で、EBIE工程による粒子320の除去を提示している。像1400の上部は、図8と同様に、除去されるべき粒子320の化学組成を分析ユニット330によって分析することを示す。分析ユニット330の検出器340による測定データに基づいて、分析ユニットは、粒子320の基本的な構成物を決定する。次に、分析ユニット330は、EBIE工程の実施に適している調和ガス1470を確認する。
【0158】
図8に関連して論じた方法と同様に、分析ユニット330は、粒子320を取り囲む基板310の組成を同じように分析することができ、その組成を、調和ガス1470を決定する際に考慮に入れることができる。たとえば、金属モリブデンは、エッチングガスXeF2でエッチングすることができる。主構成物としてケイ素を有する粒子320の除去に使用される調和ガス1470は、XeF2と水蒸気(H2O)の混合物とすることができる。この調和ガス1470はまた、ルテニウム含有粒子320を除去することもできる。主構成物として有機材料を有する粒子320は同じように、XeF2およびH2Oを含む調和ガス1470でエッチングすることができる。主構成物としてスズ(Sn)を有する粒子320は、EBIE工程で、アンモニア(NH3)、水素(H2)、塩化ニトロシル(NOCl)、カルバミン酸アンモニウム(H2NCOONH4)および/または炭酸アンモニウム((NH42CO3)を含む調和ガス1470を使用して基板310から除去することができる。
【0159】
必要であれば、EBIE工程により基板310をおかすことを防止するパッシベーションガス(passivation gas:不動態化ガス)が調和ガス1470に加えられてもよい。図9について説明したように、除去されるべき粒子320の周囲に局所限定保護層950(図14に図示せず)を付けることもまた可能である。さらに、基板310から除去されるべき粒子320のエッチング中に、基板310の保護のために1つまたは複数のマイクロマニピュレータ620、1120を基板の近くに配置することが可能である。しかし、これらの保護対策は、EBIE工程が粒子ビーム350の入射点の領域に限って集中しており、したがって横方向の制御性が良好であるので、通常は不要である。
【0160】
図14の像1450の下部は、集束電子ビーム350によって局所的に誘起される調和ガス1470を用いたEBIE工程の実施を示す。誘起エッチング工程は、残っている粒子残留物を分析ユニット330および/または顕微鏡システム390によって検査するために、特定の期間後に中止することができる。残っている粒子残留物の像データは、粒子残留物に対する残りのエッチング時間を決定するために用いられる。必要であれば、エッチング結果の分析のためにエッチング工程を中止することが数回繰り返されてもよい。
【0161】
一代替実施形態では(図14に図示せず)、分析ユニット330からの電子ビーム350がEBIE工程を実施するために使用されてもよく、顕微鏡システム390がエッチング工程の進捗を観察するために使用されてもよい。
【0162】
別の実施形態では、図14の像1450の上部に示されている、除去されるべき粒子320に関する分析ステップは省略することができる。代わりに、粒子320は、標準エッチングガスを用いて、たとえばXeF2または塩化ニトロシル(NOCl)を用いて、EBIE工程で基板310から除去することができる。しかし、粒子320または粒子残留物の次の像で、標準エッチング工程が不成功であったことが、または完全には成功しなかったことが分かった場合には、粒子320または粒子残留物がその化学組成に関して分析され、調和ガス1470が確認され、粒子に特定的なエッチング工程が実施され得る。
【0163】
上述の保護対策にもかかわらず、粒子エッチング工程が基板310にも影響を及ぼした場合には、エッチング工程の下流で再編成工程を実施することが可能である。この目的のために、ガス噴射システム360は、損傷領域に再編成ガスを供給する。使用される再編成ガスは、たとえば、金属カルボニルとすること、特に、単独もしくは二酸化窒素(NO2)と一緒のクロムヘキサカルボニル(Cr(CO)6)、および/または、やはり単独もしくは二酸化窒素(NO2)と一緒のTEOSとすることができる。この再編成ガスは、装置400の第7の貯蔵器容器450に貯蔵することができる。再編成ガスは、分析ユニット330からの粒子ビーム350によって局所的に励起され、そうして局所EBID(電子ビーム誘起堆積)工程を開始する。分析ユニット330および/または顕微鏡システム390を使用して、基板310に対する再編成工程を監視することができる。
【0164】
図15は、基板310から粒子320を除去する別の実施例を概略的に図示する。この粒子除去工程は特に、粒子320が低い融点を有し、マイクロマニピュレータ1520と金属合金を形成できる場合に実施することができる。マイクロマニピュレータ1520は、マイクロマニピュレータユニット510、610、710の各マイクロマニピュレータ520、620、720のうちの1つであってもよい。たとえば、マイクロマニピュレータ1520がビスマスまたはビスマスコーティングを含む場合、主構成物としてスズ(Sn)を有する粒子320は、マイクロマニピュレータ1520によって溶解することができる。この工程を起動するには、粒子320を少なくともその融点まで加熱する必要がある。
【0165】
図15の像1550の上部は、除去されるべき粒子320にマイクロマニピュレータ1520を接触させていることを図示している。マイクロマニピュレータ1520は、マイクロマニピュレータ1520に組み込まれたオーム抵抗と、そのオーム抵抗への電圧の印加とによって加熱することができる。粒子除去工程を速めるために、マイクロマニピュレータ1520は、粒子320と接触する前でも加温または加熱することができる。マイクロマニピュレータ1520の先端1510から粒子320への熱伝達により、粒子がその融点まで加熱される。粒子320の融点に達したならば、粒子はマイクロマニピュレータ1520に溶解する。この工程は、図15の像1550の下部に概略的に描かれている。粒子320は、マイクロマニピュレータ1520によって溶解されており、それに対応する金属合金1570をマイクロマニピュレータ1520と形成する。
【0166】
代替の加熱工程では、粒子320およびマイクロマニピュレータ1520は、分析ユニット330からの粒子ビーム350によって、および/または顕微鏡システム390からの光子ビームによって加熱することができる。オーム抵抗による電気加熱と、粒子ビーム350による加熱とを組み合わせたものが、当然ながら同様に実施可能である。
【0167】
別の実施形態では(図15に図示せず)、マイクロマニピュレータ1520は、カーボンナノチューブ(CNT)または多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を含み得る。CNTおよびMWCNTは、電気的にはんだ付けすることができ、それゆえに、金属に対する接着効果を有し、または金属に濡れる。CNTおよびMWCNTは、特に加熱された状態で、主構成物として金属を有する粒子320を取り上げることができる。
【0168】
導電性粒子320を基板310から除去する別の方法は、エレクトロマイグレーション(図15に図示せず)によって粒子320を溶解することである。この目的のために、粒子320を導電性マイクロマニピュレータ1520と接触させる必要がある。この粒子除去モードを実施するためのさらなる必要条件として、基板310から粒子320を通ってマイクロマニピュレータ1520に向かう電流の流れを構築できるように、導電基板310が必要とされる。粒子320を通る閉回路を構築するために、試料台402と、マイクロマニピュレータ1520を支えるマイクロマニピュレータユニットとは、電圧源用の電気端子を有し得る。試料台402の電位は、電気接続手段によって導電性粒子320へ伝達される。装置300、400の一部であり得る電圧源の電気端子は、試料台402の接続手段、マイクロマニピュレータユニットの接続手段、およびマイクロマニピュレータ1520の取付部の接続手段に接続される。
【0169】
エレクトロマイグレーションは、移動する伝導電子から結晶格子中の金属イオンへ運動量が移転する結果として生じる。導電性粒子320をその金属イオンのマイクロマニピュレータ1520への輸送によって溶解させるには、粒子320を通るDC電流を案内するのが好都合である。回路の正極をマイクロマニピュレータ1520に接続する必要もある。その結果、粒子320の金属イオンは、マイクロマニピュレータ1520の方向に移動する。粒子320中の電流密度の増大によるエレクトロマイグレーションの増加があるので、除去されるべき粒子320中の最大電流密度を選択することが有利である。
【0170】
粒子320を加熱することによって粒子320中のエレクトロマイグレーションの作用を助長することもさらに好都合である。加熱は、まず第1に上述のマイクロマニピュレータ1520の加熱と、粒子320への熱移転とによって行うことができる。分析ユニット330からの粒子ビーム350を照射することによって粒子320を加熱することもまた可能である。除去されるべき粒子320を、マイクロマニピュレータ1520からの熱移転と粒子ビーム350の照射との組み合わせによるエレクトロマイグレーションによって加熱することも、当然ながら可能である。
【0171】
図16は、図示の例では緩く結びつけられているだけの2つの部分1620および1630を含む粒子320の除去を提示している。不安定な粒子320は、マイクロマニピュレータ1120を用いて取り上げることによって、基板310から除去されることになる。不安定な粒子320を事前に安定化しなければ、不安定な粒子320は、マイクロマニピュレータ1120によって取り上げられたときに、その2つ以上の構成物1620、1630に分解するリスクがある。2つ以上の構成物1620、1630を区別すること、および個々の破片1620、1630を除去することは、粒子320をまとめて基板310から取り上げることと比較して、粒子除去の複雑さを明らかに増大させるはずである。
【0172】
不安定な粒子320が、マイクロマニピュレータ1120によって移動する際に分解しないようにするために、不安定な粒子320は、粒子1620、1630の各部分を連結する領域の上に特に材料を堆積することによって、第1のステップで安定化される。不安定な粒子320を安定化させるために、装置400の2つの貯蔵器容器430または435の一方に貯蔵された堆積ガス1610が、ガス噴射システム360によって、不安定な粒子320の連結領域に供給される。堆積ガス1610は、たとえばモリブデンヘキサカルボニル(Mo(CO)6)および/またはタングステンヘキサカルボニル(W(CO)6)である、金属カルボニルを含み得る。不安定な粒子320の安定化のために、別法として、炭素に富む炭化水素化合物の、たとえば不飽和芳香族炭化水素、特にスチレンを使用することが可能である。
【0173】
分析ユニット330からの粒子ビーム350は、材料を不安定な粒子320の上に、好ましくは2つの粒子構成物1620と1630を連結する領域の上に堆積する局所EBID工程を堆積ガス1610によって開始する。この堆積工程は、図16の像1600の上部に概略的に図示されている。不安定な粒子320の上への材料の堆積は、顕微鏡システム390によって観察することができる。別法として、堆積工程は、周期的な間隔で中止することができ、分析ユニット330を使用して不安定な粒子320を結像することができる。
【0174】
図16の像1650の下部は、連結領域に堆積された材料1660によって安定化された安定化粒子1670を概略的に提示している。安定化粒子1670は、第2のステップにおいてマイクロマニピュレータ1120によって取り上げることによって、基板310からまとめて除去される。
【0175】
図16に図示の例では、不安定な粒子320は2つの構成物1620および1630を含む。しかし、不安定な粒子320が、互いに緩く結びつけられているだけの3つ以上の構成物(図16に図示せず)を有することもまたあり得る。さらに、像1600の上部についての文脈で上に説明した安定化工程は、粒子の各部分または粒子破片の塊を接合して単独の粒子を生み出すために用いることができ、この単独の粒子は(図16に図示せず)、より容易に扱うことができ、マイクロマニピュレータ1120で取り上げることによって、制御された方法で基板310からまとめて除去することができる。
【0176】
図17~19は、基板310から粒子320を除去するための別の二段階工程を図示する。図17に例として描かれているように、粒子320は、一種の粒子ベース1710によって基板310に連結または融合される。図17に図示のように、マイクロマニピュレータ1120は、粒子320に向けて動く。図18に描かれた第2のステップで、粒子320は、マイクロマニピュレータ1120との機械的な接触によって、基板310から取り上げられたり持ち上げられたりする。この工程では、粒子320の全部は基板310から分離されない。そうではなく、粒子ベース1710と粒子320の間の接合部が破断し、粒子ベース1710が基板310の表面に粒子残留物1810として残る。
【0177】
図19は、粒子320または粒子残留物1810に調和したガス1470を用いてEBIE工程を実施することによって、粒子残留物1810を基板310から除去することを提示している。調和ガス1470を決定することでは、粒子残留物1810の材料組成を確認するために、除去される粒子320(図19には図示せず)の化学組成を分析すること、および/または分析ユニット330を使用することが可能である。必要であれば、図8~14についての文脈で上に論じた修正形態もまた、粒子残留物1810を除去するために使用することができる。
【0178】
最後に、図20の流れ図2000は、少なくとも1つの単独の粒子320を基板310から除去する方法の必須のステップを提示している。基板310は、EUV波長範囲の光学要素および/またはEUVマスクを備えることができる。
【0179】
方法は、ステップ2010で開始する。ステップ2020で、少なくとも1つの粒子320の材料組成の少なくとも1つの構成物が決定される。この目的のために、分析ユニット330を使用することが可能である。
【0180】
ステップ2030で、材料組成の特定の構成物に調和したガス370、1470が、少なくとも1つの単独の粒子320の環境中で供給され、この調和ガス370、1470は、少なくとも1つの単独の粒子320を基板310から除去することに寄与する。調和ガス370、1470は、ガス噴射システム360によって供給することができる。次に、この方法は、ステップ2040で終了する。
【符号の説明】
【0181】
100 フォトリソグラフィマスク
110 基板
120 パターン要素
130 パターン要素
140 パターン要素
150 粒子
200 フォトリソグラフィマスク
220 コンタクトホール
250 粒子
260 粒子
300 装置
305 矢印
310 基板
320 粒子
325 試料台
330 分析ユニット
335 粒子ビーム源
340 検出器
345 粒子
350 粒子ビーム
355 検出器
360 ガス噴射システム
370 調和ガス
380 制御ユニット
385 連結部
390 顕微鏡システム
395 マイクロマニピュレータユニット
400 装置
401 走査型電子顕微鏡(SEM)
402 基板
403 3点支持機構
404 試料台
406 電子砲
408 ビーム結像要素
409 電子ビーム
410 集束電子ビーム
412 ビーム形成要素
414 検出器
416 イオン銃(フラッドガン)
418 制御ユニット
419 画面
420 コンピュータシステム
422 ポンプシステム
425 第1の貯蔵器容器
426 制御弁
427 ガス噴射システム
430 第2の貯蔵器容器
432 ガス噴射システム
435 貯蔵器容器
437 ガス噴射システム
440 貯蔵器容器
441 制御弁
442 ガス噴射システム
445 貯蔵器容器
446 制御弁
447 ガス噴射システム
450 貯蔵器容器
452 ガス噴射システム
457 ガス噴射システム
461 制御弁
462 ガス噴射システム
465 原子間力顕微鏡(AFM)の形の走査プローブ顕微鏡
467 測定ヘッド
470 マイクロマニピュレータユニット
475 原子間力顕微鏡(AFM)の形の走査プローブ顕微鏡
477 測定ヘッド
480 マイクロマニピュレータユニット
485 真空チャンバ
500 略図
510 マイクロマニピュレータユニット
520 マイクロマニピュレータユニット
530 取付部
600 略図
610 L形マイクロマニピュレータユニット
620 ひしゃく形マイクロマニピュレータ
630 取付部
700 略図
710 マイクロマニピュレータユニット
720 マイクロマニピュレータ
750 切り欠きまたは凹部
800 像
850 像
950 局所限定保護層
970 金属カルボニル堆積ガス
1120 マイクロマニピュレータ
1140 先端
1300 像
1350 像
1400 像
1450 像
1470 調和ガス
1500 像
1520 マイクロマニピュレータ
1550 像
1570 金属合金
1600 像
1610 堆積ガス
1620 粒子構成物
1630 粒子構成物
1650 像
1660 材料
1670 安定化粒子
1710 粒子ベース
1810 粒子残留物
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2023-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの単独の粒子(320)を基板(310、402)から、特に極端紫外線(EUV)フォトリソグラフィ用の光学要素から除去するための装置(300、400)であって、
a.複数のガスを貯蔵するように構成された複数の貯蔵器容器(425、430、435、440、445、450、455、460)であって、各貯蔵器容器(425、430、435、440、445、450、455、460)は、それぞれ対応するガスを貯蔵するように構成され、異なるガスは、異なる構成物を含む2つ以上の材料組成の群から選択される異なる対応する材料組成に調和する複数の貯蔵器容器(425、430、435、440、445、450、455、460)と、
b.前記対応する材料組成のデータを含む材料データベースと、
c.前記材料データベースから取り出された前記対応する材料組成のデータを考慮して、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の材料組成の少なくとも1つの構成物を決定し、決定された前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の材料組成の少なくとも1つの構成物に調和するガス(370、1470)を前記複数のガスから決定するように設計され、さらに、真空チャンバ(320)内で前記少なくとも1つの単独の粒子(320)と相互作用するように設計された分析ユニット(330)と、
d.決定された前記構成物に調和したガス(370、1470)を前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の環境中で供給するように設計された少なくとも1つのガス噴射システム(360)とを備え、
e.前記調和ガス(370、1470)が、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)を前記基板(310)から除去することに寄与する、装置(300、400)。
【請求項2】
前記分析ユニット(330)が、次の技法、すなわち、エネルギー分散型X線分光法(EDX)、X線光電子分光法(XPS)、オージェ電子分光法(AES)、二次イオン質量分析法(SIMS)、二次中性粒子質量分析(SNMS)、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)、および低速イオン散乱分光法(LEIS)からなる群のなかからの少なくとも1つの要素を利用する、請求項1に記載の装置(300、400)。
【請求項3】
前記分析ユニット(330)が、前記材料組成の前記少なくとも1つの構成物を決定する際に外部入力を考慮に入れるように設計される、請求項1または2に記載の装置(300、400)。
【請求項4】
前記分析ユニット(330)からの測定データを使用して、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の前記材料組成の前記少なくとも1つの構成物を予測するように訓練された機械学習モデルをさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの単独の粒子(320)を、好ましくは前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の除去中に結像するように設計された、少なくとも1つの顕微鏡システム(390)をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項6】
前記調和ガス(370)が前記少なくとも1つの単独の粒子(320)を自発的にエッチングする、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項7】
前記調和ガス(370)が前記少なくとも1つの単独の粒子(320)を、前記基板(310)の自発的エッチング速度の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも30倍であるような、前記基板(310)の自発的エッチング速度よりも高い速度で自発的にエッチングする、請求項6に記載の装置(300、400)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの単独の粒子(320)がスズ(Sn)を含み、前記調和ガス(370、1470)が、少なくとも水素(H2)、少なくとも1つの水素化合物および/または少なくとも塩化ニトロシル(NOCl)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの単独の粒子(320)をエッチングする第1の調和ガス(370、1470)の局所エッチング反応を開始する、および/または材料を前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の上に堆積する第2の調和ガス(1470)の局所堆積反応を開始する、少なくとも1つの粒子ビーム(350)をさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの単独の粒子(320)がスズを含み、前記少なくとも1つの第1の調和ガス(370、1470)が、水素化合物、水素(H2)、ハロゲン化合物、塩素化合物、および塩化ニトロシル(NOCl)からなる群のなかからの少なくとも1つの要素を含む、請求項9に記載の装置(300、400)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの単独の粒子(320)と相互作用するように設計された少なくとも1つのマイクロマニピュレータユニット(510、610、710)をさらに備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのマイクロマニピュレータユニット(510、610、710)が少なくとも1つのマイクロマニピュレータ(520、620、720、1120)を含み、前記少なくとも1つのマイクロマニピュレータユニット(510、610、710)が、前記少なくとも1つのマイクロマニピュレータ(520、620、720、1120)を加熱するように設計される、請求項11に記載の装置(300、400)。
【請求項13】
前記少なくとも1つのマイクロマニピュレータ(1520)が、少なくとも1つの単独の溶融粒子(320)と合金(1570)を形成する金属または金属合金を含むように設計される、請求項11または12に記載の装置(300、400)。
【請求項14】
前記少なくとも1つのマイクロマニピュレータ(1520)がビスマス(Bi)またはビスマス合金を含み、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の材料組成の少なくとも1つの構成物がスズ(Sn)を含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項15】
前記少なくとも1つのマイクロマニピュレータ(1520)と前記少なくとも1つの単独の粒子(320)との間に、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)中にエレクトロマイグレーションを生じさせる電流の流れを生成するように設計された電圧源をさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項16】
前記少なくとも1つの単独の粒子(320)が、前記基板(310)から除去することに関して不安定である粒子と、2つ以上の粒子破片(1620、1630)を有する粒子と、粒子塊を含む粒子とからなる群のなかからの一要素を含み、前記ガス噴射システム(360)がさらに、前記除去の前に、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の上に材料を堆積する調和ガス(1470)を前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の環境中で供給するように設計される、請求項1~15のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項17】
前記マイクロマニピュレータユニット(510、610、710)が、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の第1の部分を除去するように設計され、前記調和ガス(370、1470)が、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の第2の部分を自発的エッチングおよび/または粒子ビーム誘起エッチングによって除去することに寄与する、請求項11~16のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項18】
前記ガス噴射システム(360)がまた、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の除去後に、前記少なくとも1つの単独の粒子(310)の除去中に生じた基板(310)の損傷を少なくとも部分的に無くす再編成ガスを、前記除去された少なくとも1つの単独の粒子の環境中で供給するようにも設計される、請求項1~17のいずれか1項に記載の装置(300、400)。
【請求項19】
少なくとも1つの単独の粒子(320)を基板(310)から、特に極端紫外線(EUV)フォトリソグラフィ用の光学要素から除去するための方法(2000)であって、
a.複数のガスを貯蔵するように構成された複数の貯蔵器容器(425、430、435、440、445、450、455、460)であって、各貯蔵器容器(425、430、435、440、445、450、455、460)は、それぞれ対応するガスを貯蔵するように構成され、異なるガスは、異なる構成物を含む異なる対応する材料組成に調和する複数の貯蔵器容器(425、430、435、440、445、450、455、460)を準備するステップと、
b.真空チャンバ(320)内で前記少なくとも1つの単独の粒子(320)と相互作用する分析ユニットによって、材料データベースから取り出された前記対応する材料組成のデータを考慮して、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の材料組成の少なくとも1つの構成物を決定するステップ(2020)と、
c.決定された前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の材料組成の少なくとも1つの構成物に調和するガス(370、1470)を前記複数のガスから決定するステップと、
d.前記材料組成の決定された前記構成物に調和したガス(370、1470)を前記少なくとも1つの単独の粒子(320)の環境中で供給するステップ(2030)とを含み、
e.前記調和ガス(370、1470)が、前記少なくとも1つの単独の粒子(320)を前記基板(310)から除去することに寄与する、方法(2000)。
【請求項20】
コンピュータプログラムによって実行されると、請求項1~18のいずれかに記載の装置(300、400)に、請求項19に記載の方法ステップを実行することを促す命令を含む、コンピュータプログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
ナノマニピュレータまたはマイクロマニピュレータによってナノ粒子の移動を調べるといういくつかの文献を以下に例として引用する:H.H. Pieper: "Morphology and electric potential of pristine and gold covered surfaces with fluorite structure", Thesis,
S. Darwich et al.: "Manipulation of gold colloidal nanoparticles with atomic force microscopy in dynamic mode: influence of particle - substrate chemistry and morphology, and operating conditions", Beilstein J. Nanotechnol., vol.2 (2011), p.85-98; H.H. Pieper et al.: "Morphology and nanostructure of CeO2(111) surfaces of single crystals and Si(111) supported ceria films", Phys. Chemistry Chemical Physics, vol.14, p.15361ff, 2013; E. Gallagher et al.: "EUVL mask repair: expanding options with nanomachining", BACUS, vol.3, no.3 (2013), p.1-8; M. Martin et al.: "Manipulation of Ag nanoparticles utilizing noncontact atomic force microscopy", Appl.Phys.Lett., vol.72, no.11, September 1998, p.1505-1507; P.J. Durston et al.: "Manipulation of passivated gold clusters on graphite with the scanning tunneling microscope", Appl.Phys.Lett., vol.72, no.2, January 1998, p.176-178; R. Requicha: "Nanomanipulation with the atomic force microscope", Nanotechnology Online, ISBN: 9783527628155; C. Baur et al.: "Nanoparticle manipulation by mechanical pushing: underlying phenomena and real-time monitoring", Nanotechnology 9 (1998), p.360-364; J.D. Beard et al.: "An atomic force microscope nanoscalpel for nanolithography and biological applications", Nanotechnology 20 (2009), 445302, p.1-10;米国特許第6812460号。以下の文献では、基板上の粒子の取り上げおよび配置について報告している:J. Xu et al.: "Lifting and sorting of charged Au nanoparticles by electrostatic forces in atomic force microscopy", Small 2010, vol.6, no.19, p.2105-2108; N. Cao et al.: "Interactive micromanipulation of picking and placement of nonconductive microsphere in scanning electron microscope", Micromachines 2017, 8, 257, doi: 10.3390 /mi8080257;米国特許第8696818号;特開第2005-084582号;および米国特許第6987277号。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
【非特許文献1】Oscar O. Versolato: "Physics of laser-driven tin plasma sources of EUV radiation for nanolithography", Plasma Sources Sci. Technol. 28 (2019) 083001, doi: 10/1088/1361-6595/ab302
【非特許文献2】T. Shimomura and T. Liang: "50 nm particle removal from EUV mask blank using standard wet clean", Proc. of SPIE Vol.7488, p.74882F-1 - 74882F-8
【非特許文献3】H.H. Pieper: "Morphology and electric potential of pristine and gold covered surfaces with fluorite structure", Thesis, University of Osnabruck 2012
【非特許文献4】S. Darwich et al.: "Manipulation of gold colloidal nanoparticles with atomic force microscopy in dynamic mode: influence of particle - substrate chemistry and morphology, and operating conditions", Beilstein J. Nanotechnol., vol.2 (2011), p.85-98
【非特許文献5】H.H. Pieper et al.: "Morphology and nanostructure of CeO2(111) surfaces of single crystals and Si(111) supported ceria films", Phys. Chemistry Chemical Physics, vol.14, p.15361ff, 2013
【非特許文献6】E. Gallagher et al.: "EUVL mask repair: expanding options with nanomachining", BACUS, vol.3, no.3 (2013), p.1-8
【非特許文献7】M. Martin et al.: "Manipulation of Ag nanoparticles utilizing noncontact atomic force microscopy", Appl.Phys.Lett., vol.72, no.11, September 1998, p.1505-1507
【非特許文献8】P.J. Durston et al.: "Manipulation of passivated gold clusters on graphite with the scanning tunneling microscope", Appl.Phys.Lett., vol.72, no.2, January 1998, p.176-178
【非特許文献9】R. Requicha: "Nanomanipulation with the atomic force microscope", Nanotechnology Online, ISBN: 9783527628155
【非特許文献10】C. Baur et al.: "Nanoparticle manipulation by mechanical pushing: underlying phenomena and real-time monitoring", Nanotechnology 9 (1998), p.360-364
【非特許文献11】J.D. Beard et al.: "An atomic force microscope nanoscalpel for nanolithography and biological applications", Nanotechnology 20 (2009), 445302, p.1-10
【非特許文献12】J. Xu et al.: "Lifting and sorting of charged Au nanoparticles by electrostatic forces in atomic force microscopy", Small 2010, vol.6, no.19, p.2105-2108
【非特許文献13】N. Cao et al.: "Interactive micromanipulation of picking and placement of nonconductive microsphere in scanning electron microscope", Micromachines 2017, 8, 257, doi: 10.3390 /mi8080257
【外国語明細書】