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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165834
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】ダメージ回復剤、並びに毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20231110BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20231110BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q5/00
A61Q19/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023162142
(22)【出願日】2023-09-26
(62)【分割の表示】P 2020562928の分割
【原出願日】2019-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2018244823
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 善仁
(72)【発明者】
【氏名】橋井 洋子
(57)【要約】
【課題】塩素を原因として生じた毛髪や皮膚のダメージに対する優れた回復作用を有し、かつ安全性の高いダメージ回復剤、並びに毛髪及び/又は皮膚化粧料の提供。
【解決手段】塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージを回復するダメージ回復剤であって、モモ抽出物を含有するダメージ回復剤、並びに塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージを回復するために用いられる毛髪及び/又は皮膚化粧料であって、前記ダメージ回復剤を含有する毛髪及び/又は皮膚化粧料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素を原因として生じた毛髪のダメージを回復するダメージ回復剤であって、
モモの葉部の抽出物を含有し、
前記モモの葉部の抽出物が、1,3-ブチレングリコールと水との混合溶媒による抽出物及びエタノールと水との混合溶媒による抽出物のいずれかであり、
毛髪の表面及び内面の少なくともいずれかの状態の改善作用、毛髪の髪色の改善作用、及び毛髪の摩擦力の改善作用からなる群から選択される少なくとも1種の作用を有することを特徴とするダメージ回復剤。
【請求項2】
塩素を原因として生じた毛髪のダメージを回復するために用いられる毛髪化粧料であって、
請求項1に記載のダメージ回復剤を含有することを特徴とする毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージを回復するダメージ回復剤、並びに塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージを回復するために用いられる毛髪及び/又は皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、入浴に用いられる水道水やプールに用いられる水は、水を衛生的に保つために塩素消毒を行っていることがほとんどであり、残留塩素を含んでいる。このため、入浴やプールなどにより、毛髪や肌が傷んでしまうことがある。具体的には、例えば、毛髪にパサつきやきしみが生じたり、毛髪の色が変化したり、皮膚が荒れたり、角層の水分量が低下したりすることがあり、近年、人体への影響が懸念されている。
【0003】
これまでに、人体への影響を及ぼす前に水に含まれる残留塩素を除去するために、優れた残留塩素除去作用を有する物質の探索が行われ、例えば、モモ抽出物を含有する残留塩素除去剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、人体への影響が生じた後、即ち、塩素を原因として毛髪や皮膚にダメージが生じた後に、これを回復させる作用を有し、安全性の高い素材としては、未だ十分なものが提供されていないのが現状である。
【0005】
したがって、塩素を原因として生じた毛髪や皮膚のダメージ回復作用を有し、安全性の高い素材の速やかな提供が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-177045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、塩素を原因として生じた毛髪や皮膚のダメージに対する優れた回復作用を有し、かつ安全性の高いダメージ回復剤、並びに毛髪及び/又は皮膚化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、モモ抽出物が、塩素を原因として生じた毛髪や皮膚のダメージに対する優れた回復作用を有することを知見した。
【0009】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージを回復するダメージ回復剤であって、
モモ抽出物を含有することを特徴とするダメージ回復剤である。
<2> 塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージを回復するために用いられる毛髪及び/又は皮膚化粧料であって、
前記<1>に記載のダメージ回復剤を含有することを特徴とする毛髪及び/又は皮膚化粧料である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、塩素を原因として生じた毛髪や皮膚のダメージに対する優れた回復作用を有し、かつ安全性の高いダメージ回復剤、並びに毛髪及び/又は皮膚化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(ダメージ回復剤)
本発明のダメージ回復剤は、塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージを回復するダメージ回復剤であって、モモ抽出物を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0012】
前記ダメージ回復剤は、塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージの回復作用を有する。
前記塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージとは、塩素を原因として生じたもの全般をいい、例えば、毛髪の表面及び内部に生じたダメージ、毛髪の髪色の劣化(ツヤ、輝度、鮮やかさの低下)、毛髪の摩擦力の増加、角層の水分量の低下、皮膚の表面に生じたダメージ(皮膚の表面の荒れ)などが挙げられる。
前記塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージの回復とは、塩素を原因として生じた前記ダメージが改善されることをいい、例えば、毛髪の表面及び内部に生じたダメージエリアの減少、低下した毛髪のツヤ、輝度、又は鮮やかさの向上、増加した毛髪の摩擦力の減少、低下した角層の水分量の増加、増加した皮膚表面の粗さの低減などが挙げられる。前記回復の程度としては、少なくともダメージを受けた状態から改善されていればよく、ダメージを受ける前の状態まで戻っていてもよい。
前記塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージの回復作用を確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述する実施例の項目に記載の試験方法などが挙げられる。
【0013】
前記モモ抽出物が含有する、塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージの回復作用を発揮する物質の詳細については不明であるが、前記モモ抽出物がこのような優れた作用を有し、ダメージ回復剤として有用であることは、従来は全く知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。
【0014】
<モモ抽出物>
モモ(学名:Amygdalus persica L.、シノニム:Prunus persica (L.) Batch)は、バラ科モモ属の落葉小高木であり、中国が原産である。前記モモは、食用、観賞用として世界各地において栽培されている。前記モモの種子は「トウニン(桃仁)」と呼ばれ、医薬品に用いられており、前記モモの葉は、皮膚の炎症に効果があるとされている。
【0015】
前記モモ抽出物は、抽出原料として使用する抽出部位から調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0016】
前記モモの抽出部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、果実部、種子部、葉部、樹皮部、花部、根部、これらの部位の混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記モモの抽出部位としては、葉部が好ましい。
【0017】
前記モモの抽出部位の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記抽出部位を乾燥させた後、そのまま又は粗砕機を用い粉砕して溶媒抽出に供する方法などが挙げられる。前記乾燥は、天日で行ってもよいし、通常使用されている乾燥機を用いて行ってもよい。
【0018】
前記モモ抽出物は、植物の抽出に一般に用いられている方法により容易に得ることができる。前記モモ抽出物の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抽出液そのもの、抽出液の希釈液、抽出液の濃縮液、抽出液の乾燥物、これらの粗精製物若しくは精製物などが挙げられる。
【0019】
前記モモの抽出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温又は還流加熱下で、任意の抽出装置を用いて抽出する方法などが挙げられ、より具体的には、抽出溶媒を満たした処理槽に抽出原料である前記モモの前記抽出部位を投入し、必要に応じて適宜攪拌しながら、例えば、30分間~4時間静置して可溶性成分を溶出した後、濾過して抽出残渣を除くことにより抽出液を得る方法などが挙げられる。前記抽出液は、更に、抽出溶媒を留去し、乾燥してもよい。
また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0020】
前記モモの抽出における条件(抽出時間及び抽出温度)、抽出溶媒、及び抽出溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0021】
前記モモの抽出溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、親水性溶媒、又はこれらの混合溶媒などが挙げられる。
【0022】
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水などの他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。なお、前記抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水なども含まれる。前記水は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記親水性溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記混合溶媒における前記水に対する前記親水性溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記低級アルコールを使用する場合は、水10質量部に対して1質量部~90質量部、前記低級脂肪族ケトンを使用する場合は、水10質量部に対して1質量部~40質量部、前記多価アルコールを使用する場合は、水10質量部に対して1質量部~90質量部を混合することが好ましい。
【0025】
前記モモの抽出溶媒の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、室温乃至溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。
【0026】
前記モモの抽出条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、抽出溶媒量としては、抽出原料の5倍量~15倍量(質量比)が好ましく、抽出溶媒として水を用いた場合には、50℃~95℃で1時間~4時間程度で抽出することが好ましく、抽出溶媒として水と親水性有機溶媒との混合溶媒を用いた場合には、40℃~90℃で30分間~4時間程度で抽出することが好ましい。
【0027】
得られた前記モモ抽出物は、前記モモ抽出物の希釈物、濃縮物、乾燥物、粗精製物、精製物などを得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製などの処理を施してもよい。
【0028】
前記モモ抽出物の精製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液-液分配抽出、各種クロマトグラフィー、膜分離などの精製方法が挙げられる。
【0029】
得られた前記モモ抽出物は、そのままでも前記ダメージ回復剤の有効成分として使用することができるが、利用しやすい点で、前記濃縮液、前記乾燥物が好ましい。前記乾燥物を得るに当たって、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリンなどのキャリアーを加えてもよい。
【0030】
前記ダメージ回復剤における前記モモ抽出物の含有量としては、特に制限はなく、前記モモ抽出物の生理活性等によって適宜調整することができる。前記ダメージ回復剤は、前記モモ抽出物のみからなるものであってもよい。
【0031】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、前記ダメージ回復剤の利用形態に応じて適宜選択することができ、例えば、賦形剤、防湿剤、防腐剤、強化剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、甘味料、酸味料、調味料、着色料、香料、美白剤、保湿剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、皮膚栄養剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸加水分解物、コラーゲン、コラーゲン加水分解物、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、アスコルビン酸配糖体、コエンザイムQ10、プロポリス、ローヤルゼリー、ローヤルゼリー蛋白分解物、フコイダン、アロエ粉末、アロエ抽出物、ブルーベリー粉末、ブルーベリー抽出物、イソフラボン、ノニ粉末、ノニ抽出物、ニンニク粉末、ニンニク抽出物、ウコン粉末、ウコン抽出物、キトサン、グルコサミン、クロレラ粉末、クロレラ抽出物、カルニチン、マカ粉末、マカ抽出物、カシス粉末、カシス抽出物、ハナビラタケ粉末、ハナビラタケ抽出物、その他の植物の粉末及び/又は抽出物などが挙げられる。
【0032】
前記ダメージ回復剤における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0033】
<用途>
前記ダメージ回復剤は、塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージに対する優れた回復作用を有し、安全性が高いため、例えば、塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージを回復するために用いられる毛髪及び/又は皮膚化粧料の有効成分として好適に用いることができる。
【0034】
また、前記ダメージ回復剤は、優れた毛髪の表面及び内部の少なくともいずれかの状態の改善作用、優れた毛髪の髪色の改善作用、優れた毛髪の摩擦力の改善作用、優れた角層の水分量改善作用、及び優れた皮膚の表面状態の改善作用の少なくともいずれかを有するので、塩素を原因として生じた毛髪表面及び内部の少なくともいずれかのダメージを改善する毛髪の表面及び内部の少なくともいずれかの状態改善剤、より具体的には、塩素を原因として生じた毛髪表面及び内部の少なくともいずれかのダメージエリアを減少させる毛髪表面及び内部の少なくともいずれかのダメージエリア減少剤;塩素を原因として生じた毛髪の髪色のダメージを改善する毛髪の髪色改善剤、より具体的には、塩素を原因とする低下した毛髪のツヤ、輝度、及び鮮やかさの少なくともいずれかを向上させる毛髪のツヤ、輝度、及び鮮やかさの少なくともいずれかの向上剤;塩素を原因として生じた毛髪の摩擦力の増加を改善する毛髪の摩擦力改善剤、より具体的には、塩素を原因とする増加した毛髪の摩擦力を減少させる毛髪の摩擦力減少剤;塩素を原因として生じた角層の水分量の低下を改善する角層の水分量改善剤、より具体的には、塩素を原因とする低下した角層の水分量を増加させる角層の水分量増加剤;塩素を原因として生じた皮膚表面のダメージを改善する皮膚の表面状態改善剤、より具体的には、塩素を原因として生じた皮膚表面の粗さを低減させる皮膚表面の粗さ低減剤としても好適に用いることができる。
【0035】
更に、前記ダメージ回復剤は、塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージに対する回復作用の作用機構に関する研究のための試薬としても好適に用いることができる。
【0036】
前記ダメージ回復剤の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液剤、錠剤、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、エキス剤などが挙げられる。
【0037】
前記ダメージ回復剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、その作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することもできる。
【0038】
前記ダメージ回復剤の使用量、使用期間等の使用方法としては、特に制限はなく、前記モモ抽出物の生理活性等を考慮して適宜選択することができる。
【0039】
(毛髪及び/又は皮膚化粧料)
本発明の毛髪及び/又は皮膚化粧料は、塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージを回復するために用いられる毛髪及び/又は皮膚化粧料であって、上述した本発明のダメージ回復剤を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0040】
<ダメージ回復剤>
前記ダメージ回復剤は、上述した本発明のダメージ回復剤である。
前記毛髪及び/又は皮膚化粧料における前記ダメージ回復剤の含有量としては、特に制限はなく、化粧料の種類や前記モモ抽出物の生理活性等を考慮して適宜選択することができるが、前記モモ抽出物に換算して、0.0001質量%~20質量%が好ましく、0.0001質量%~10質量%がより好ましい。前記毛髪及び/又は皮膚化粧料は、前記ダメージ回復剤のみからなるものであってもよい。
【0041】
<その他の成分>
前記毛髪及び/又は皮膚化粧料における前記その他の成分としては、特に制限はなく、通常の化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記毛髪及び/又は皮膚化粧料における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0043】
本発明の毛髪及び/又は皮膚化粧料は、日常的に使用することが可能であり、有効成分であるモモ抽出物の働きによって、上記した塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージの回復作用をはじめとする様々な生理活性作用を極めて効果的に発揮させることができる。
【0044】
前記毛髪及び/又は皮膚化粧料の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、軟膏、クリーム、乳液、美容液、ローション、ゲル、ゾル、スプレー、パック、ファンデーション、ボディーソープ、ヘアトニック、ヘアローション、シャンプー、リンス、コンディショナーなどが挙げられる。
【0045】
前記毛髪及び/又は皮膚化粧料は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、その作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することもできる。
【0046】
前記毛髪及び/又は皮膚化粧料の使用量、使用期間等の使用方法としては、特に制限はなく、前記モモ抽出物の生理活性等を考慮して適宜選択することができる。
【0047】
上述したように、本発明のダメージ回復剤、並びに毛髪及び/又は皮膚化粧料は、塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージに対する優れた回復作用を有し、安全性が高いものである。したがって、本発明は、毛髪及び/又は皮膚に塩素を原因とするダメージを有する個体に、前記ダメージ回復剤、並びに毛髪及び/又は皮膚化粧料の少なくともいずれかを投与することを特徴とする、塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージ回復方法にも関する。
【実施例0048】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0049】
(製造例1:ヘアスプレーの製造)
モモ抽出物として、モモ抽出液(山梨県産桃葉抽出液BG30、丸善製薬株式会社製:モモ葉の1,3-ブチレングリコールと水との混合溶媒による抽出物)を用い、常法により、下記組成のヘアスプレーを製造した。
〔組成〕
・ モモ抽出液 ・・・ 1.0質量%
(山梨県産桃葉抽出液BG30)
・ フェノキシエタノール ・・・ 0.4質量%
・ 1,3ブチレングリコール ・・・ 3.0質量%
・ クエン酸 ・・・ 0.01質量%
・ クエン酸ナトリウム ・・・ 0.035質量%
・ 精製水 ・・・ 残量
合計 100質量%
【0050】
(比較製造例1:ヘアスプレーの製造)
前記製造例1において、モモ抽出物を用いなかった以外は同様にして、ヘアスプレーを製造した。
【0051】
(製造例2:乳液の製造)
モモ抽出物として、モモ抽出液(山梨県産桃葉抽出液BG30、丸善製薬株式会社製:モモ葉の1,3-ブチレングリコールと水との混合溶媒による抽出物)を用い、常法により、下記組成の乳液を製造した。
〔組成〕
・ モモ抽出液 ・・・ 1.0質量%
(山梨県産桃葉抽出液BG30)
・ フェノキシエタノール ・・・ 0.4質量%
・ 1,3ブチレングリコール ・・・ 3.0質量%
・ クエン酸 ・・・ 0.01質量%
・ クエン酸ナトリウム ・・・ 0.035質量%
・ 精製水 ・・・ 残量
合計 100質量%
【0052】
(比較製造例2:乳液の製造)
前記製造例2において、モモ抽出物を用いなかった以外は同様にして、乳液を製造した。
【0053】
(試験例1)
週2回以上プールに通う被験者(女性29名(年齢:32歳~57歳、平均年齢46歳))を選定した。なお、前記被験者は、皮膚科医に塩素を原因として生じたダメージが有ると判定された者である。
前記被験者を下記の群に分け、8週間の間、1日あたり2回ヘアスプレーを髪に塗布(1回の塗布量は0.5mL)した。
群1 : 製造例1で製造したヘアスプレーを塗布した群(n=15)
群2 : 比較製造例1で製造したヘアスプレーを塗布した群(以下、「プラセボ群」と称することがある。)(n=14)
【0054】
<毛髪の表面状態の改善作用>
走査型電子顕微鏡(SEM:JSM58010LV、JEOL社製)を用いて、試験開始時、試験開始4週間後、及び試験開始8週間後の被験者の毛髪の表面を観察し、ダメージエリアを測定した。また、下記式(1)により、毛髪の表面状態のダメージの改善率(%)を算出した。結果を表1に示す。
-式(1)-
毛髪の表面状態のダメージ改善率(%)
={(T0-(T4又はT8))/T0}×100
式(1)中、「T0」は試験開始時のダメージエリアの値を表し、「T4又はT8」は試験開始4週間後又は8週間後のダメージエリアの値を表す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1の結果から、モモ抽出物を含むヘアスプレーを塗布した群1では、ダメージエリアの減少効果が認められた。したがって、モモ抽出物は、優れた毛髪の表面状態の改善作用を有することが確認された。
【0057】
<毛髪の髪色改善作用-1>
色彩色差計(CR400、コニカミノルタ社製)を用いて、試験開始時、試験開始4週間後、及び試験開始8週間後の被験者の毛髪のL値を測定した。また、下記式(2)により、毛髪の髪色(ツヤ、輝度)のダメージ改善率(%)を算出した。結果を表2に示す。
-式(2)-
毛髪の髪色(ツヤ、輝度)のダメージ改善率(%)
={((T4又はT8)-T0)/T0}×100
式(2)中、「T0」は試験開始時のL値を表し、「T4又はT8」は試験開始4週間後又は8週間後のL値を表す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2の結果から、モモ抽出物を含むヘアスプレーを塗布した群1では、L値の上昇効果が認められ、髪のツヤ、輝度が向上することが確認された。したがって、モモ抽出物は、優れた毛髪の髪色の改善作用を有することが確認された。
【0060】
<毛髪の髪色改善作用-2>
色彩色差計(CR400、コニカミノルタ社製)を用いて、試験開始時、試験開始4週間後、及び試験開始8週間後の被験者の毛髪のb値を測定した。また、下記式(3)により、毛髪の髪色(鮮やかさ)のダメージ改善率(%)を算出した。結果を表3に示す。
-式(3)-
毛髪の髪色(鮮やかさ)のダメージ改善率(%)
={((T4又はT8)-T0)/T0}×100
式(3)中、「T0」は試験開始時のb値を表し、「T4又はT8」は試験開始4週間後又は8週間後のb値を表す。
【0061】
【表3】
【0062】
表3の結果から、モモ抽出物を含むヘアスプレーを塗布した群1では、b値の上昇効果が認められ、髪の鮮やかさが向上することが確認された。したがって、モモ抽出物は、優れた毛髪の髪色の改善作用を有することが確認された。
【0063】
<毛髪の摩擦力の改善作用-1>
Instron Universal Testing System 5565(Illinois Tool works社製)を用い、試験開始時、及び試験開始4週間後の被験者の毛髪の摩擦力の最大値を測定した。また、下記式(4)により、毛髪の摩擦力(最大値)のダメージ改善率(%)を算出した。結果を表4に示す。
-式(4)-
毛髪の摩擦力(最大値)のダメージ改善率(%)
={(T0-T4)/T0}×100
式(4)中、「T0」は試験開始時の毛髪の摩擦力の最大値を表し、「T4」は試験開始4週間後の毛髪の摩擦力の最大値を表す。
【0064】
【表4】
【0065】
表4の結果から、モモ抽出物を含むヘアスプレーを塗布した群1では、毛髪の摩擦力の最大値の低減効果が認められた。したがって、モモ抽出物は、優れた毛髪の摩擦力の改善作用を有することが確認された。
【0066】
<毛髪の摩擦力の改善作用-2>
Instron Universal Testing System 5565(Illinois Tool works社製)を用い、試験開始時、及び試験開始4週間後の被験者の毛髪の摩擦力の平均値を測定した。また、下記式(5)により、毛髪の摩擦力(平均値)のダメージ改善率(%)を算出した。結果を表5に示す。
-式(5)-
毛髪の摩擦力(平均値)のダメージ改善率(%)
={(T0-T4)/T0}×100
式(5)中、「T0」は試験開始時の毛髪の摩擦力の平均値を表し、「T4」は試験開始4週間後の毛髪の摩擦力の平均値を表す。
【0067】
【表5】
【0068】
表5の結果から、モモ抽出物を含むヘアスプレーを塗布した群1では、毛髪の摩擦力の平均値の低減効果が認められた。したがって、モモ抽出物は、優れた毛髪の摩擦力の改善作用を有することが確認された。
【0069】
(試験例2)
週2回以上プールに通う被験者(女性29名(年齢:32歳~57歳、平均年齢46歳))を選定した。なお、前記被験者は、皮膚科医に塩素を原因として生じたダメージが有ると判定された者である。
前記被験者を下記の群に分け、8週間の間、1日あたり2回乳液を顔に塗布(1回の塗布量は0.5mL)した。
群1 : 製造例2で製造した乳液を塗布した群(n=15)
群2 : 比較製造例2で製造した乳液を塗布した群(以下、「プラセボ群」と称することがある。)(n=14)
【0070】
<角層の水分量改善作用>
コーネオメーター(Corneometer)(CM825、Courage+khazaka electronic GmbH社製)を用いて、試験開始時、及び試験開始8週間後の被験者の皮膚の角層に含まれる水分量を測定した。また、下記式(6)により、角層の水分量のダメージ改善率(%)を算出した。結果を表6に示す。
-式(6)-
角層の水分量のダメージ改善率(%)
={(T8-T0)/T0}×100
式(6)中、「T0」は試験開始時の角層に含まれる水分量を表し、「T8」は試験開始8週間後の角層に含まれる水分量を表す。
【0071】
【表6】
【0072】
表6の結果から、モモ抽出物を含む乳液を塗布した群1では、角層の水分量の上昇効果が認められた。したがって、モモ抽出物は、優れた角層の水分量の改善作用を有することが確認された。
【0073】
<皮膚の表面状態の改善作用>
3次元画像解析システム(PRIMOS Compact5.8、Canfield Scietific社製)を用いて、試験開始時、及び試験開始8週間後の被験者の皮膚の表面を解析し、皮膚表面の算術平均高さ(Sa)を算出した。また、下記式(7)により、皮膚の表面状態のダメージの改善率(%)を算出した。結果を表7に示す。なお、「Sa」は、線の算術平均高さ(Ra)を面に拡張したパラメーターであり、表面の平均面に対して、各点の高さの絶対値の平均を表す。
-式(7)-
皮膚の表面状態のダメージの改善率(%)
={(T0-T8)/T0}×100
式(7)中、「T0」は試験開始時の皮膚表面の算術平均高さ(Sa)を表し、「T8」は試験開始8週間後の皮膚表面の算術平均高さ(Sa)を表す。
【0074】
【表7】
【0075】
表7の結果から、モモ抽出物を含む乳液を塗布した群1では、Sa値の低減が認められた。したがって、モモ抽出物は、優れた皮膚の表面状態の改善作用を有することが確認された。
【0076】
(配合例1)
下記組成の美容液を常法により製造した。
・ モモ抽出液 ・・・ 0.01g
(モモ抽出液(※1)、丸善製薬株式会社製)
(※1:モモ葉のエタノールと水との混合溶媒による抽出物)
・ カミツレエキス ・・・ 0.1g
・ ニンジンエキス ・・・ 0.1g
・ キサンタンガム ・・・ 0.3g
・ ヒドロキシエチルセルロース ・・・ 0.1g
・ カルボキシビニルポリマー ・・・ 0.1g
・ 1,3-ブチレングリコール ・・・ 4.0g
・ グリチルリチン酸ジカリウム ・・・ 0.1g
・ グリセリン ・・・ 2.0g
・ 水酸化カリウム ・・・ 0.25g
・ 香料 ・・・ 0.01g
・ 防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル) ・・・ 0.15g
・ エタノール ・・・ 2.0g
・ 精製水 ・・・ 残部(全量を100gとする)
【0077】
(配合例2)
下記組成のクリームを常法により製造した。
・ モモ抽出液 ・・・ 0.05g
(モモ抽出液LA(※2)、丸善製薬株式会社製)
(※2:モモ葉のエタノールと水との混合溶媒による抽出物)
・ クジンエキス ・・・ 0.1g
・ オウゴンエキス ・・・ 0.1g
・ 流動パラフィン ・・・ 5.0g
・ サラシミツロウ ・・・ 4.0g
・ スクワラン ・・・ 10.0g
・ セタノール ・・・ 3.0g
・ ラノリン ・・・ 2.0g
・ ステアリン酸 ・・・ 1.0g
・ オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) ・・・ 1.5g
・ モノステアリン酸グリセリル ・・・ 3.0g
・ 油溶性甘草エキス ・・・ 0.1g
・ 1,3-ブチレングリコール ・・・ 6.0g
・ パラオキシ安息香酸メチル ・・・ 1.5g
・ 香料 ・・・ 0.1g
・ 精製水 ・・・ 残部(全量を100gとする)
【0078】
(配合例3)
下記組成のクリームを常法により製造した。
・ モモ抽出液 ・・・ 0.2g
(モモ抽出液BG-J(※3)、丸善製薬株式会社製)
(※3:モモ葉の1,3-ブチレングリコールと水との混合溶媒による抽出物)
・ 塩化ステアリルトリメチルアンモニウム ・・・ 1.5g
・ ポリオキシエチレンセチルエーテル ・・・ 1.0g
・ セチルアルコール ・・・ 2.0g
・ オクチルドデカノール ・・・ 1.0g
・ カチオン化セルロース ・・・ 0.5g
・ プロピレングリコール ・・・ 5.0g
・ ムクロジエキス ・・・ 0.2g
・ 黄杞エキス ・・・ 0.5g
・ オウバクエキス ・・・ 0.3g
・ ローズマリーエキス ・・・ 0.5g
・ 香料 ・・・ 3.0g
・ 精製水 ・・・ 残部(全量を100gとする)
【0079】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージを回復するダメージ回復剤であって、
モモ抽出物を含有することを特徴とするダメージ回復剤である。
<2> 毛髪の表面及び内面の少なくともいずれかの状態の改善作用、毛髪の髪色の改善作用、毛髪の摩擦力の改善作用、角層の水分量改善作用、及び皮膚の表面状態の改善作用からなる群から選択される少なくとも1種の作用を有する前記<1>に記載のダメージ回復剤である。
<3> 塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージを回復するために用いられる毛髪及び/又は皮膚化粧料であって、
前記<1>から<2>のいずれかに記載のダメージ回復剤を含有することを特徴とする毛髪及び/又は皮膚化粧料である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージに対する優れた回復作用を有し、かつ安全性の高いダメージ回復剤を提供することができる。前記ダメージ回復剤は、例えば、塩素を原因として生じた毛髪及び/又は皮膚のダメージを回復するために用いられる毛髪及び/又は皮膚化粧料の有効成分として好適に利用することができる。