(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165923
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】カマンベールチーズ
(51)【国際特許分類】
A23C 19/068 20060101AFI20231110BHJP
【FI】
A23C19/068
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023166489
(22)【出願日】2023-09-27
(62)【分割の表示】P 2018127856の分割
【原出願日】2018-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 公実子
(72)【発明者】
【氏名】松永 典明
(72)【発明者】
【氏名】城ノ下 兼一
(57)【要約】
【課題】カビによる表面熟成軟質チーズのサイズを変更した場合でも、該サイズの変更前の現行品に対して風味や食感を少なくとも維持することのできる、カビによる表面熟成軟質チーズの製造方法を提供する。
【解決手段】カビによる表面熟成軟質チーズの製造方法において、前記チーズの表面積(cm2)/体積(cm3)比が1.28以上1.60以下となるように、チーズのサイズを調整することを特徴とする、カビによる表面熟成軟質チーズの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カビによる表面熟成軟質チーズの製造方法において、
前記チーズの表面積(cm2)/体積(cm3)比が1.28以上1.60以下となるように、チーズのサイズを調整することを特徴とする、カビによる表面熟成軟質チーズの製造方法。
【請求項2】
前記チーズの表面積(cm2)/体積(cm3)比が1.29以上となるように、チーズのサイズを調整することを特徴とする、請求項1に記載のカビによる表面熟成軟質チーズの製造方法。
【請求項3】
前記チーズの表面積(cm2)/体積(cm3)比が1.58以下となるように、チーズのサイズを調整することを特徴とする、請求項1または2に記載のカビによる表面熟成軟質チーズの製造方法。
【請求項4】
前記チーズの質量が150g以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のカビによる表面熟成軟質チーズの製造方法。
【請求項5】
前記チーズの形状が略円柱状である、請求項1~4のいずれか1項に記載のカビによる表面熟成軟質チーズの製造方法。
【請求項6】
前記チーズの直径が90mm以下である、請求項5に記載のカビによる表面熟成軟質チーズの製造方法。
【請求項7】
前記チーズの厚さが26mm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載のカビによる表面熟成軟質チーズの製造方法。
【請求項8】
質量が150g以下であり、表面積(cm2)/体積(cm3)比が1.28以上1.60以下であることを特徴とする、カビによる表面熟成軟質チーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カビによる表面熟成軟質チーズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の市場において、ナチュラルチーズが定着しつつある。ナチュラルチーズには、熟成の程度により、乳成分の熟成の風味を楽しめる、いわゆる熟成型ナチュラルチーズ、および新鮮な乳風味を味わえる、いわゆる非熟成型ナチュラルチーズに分類することができる。また、ナチュラルチーズには、その硬さから、特別硬質ナチュラルチーズ、硬質ナチュラルチーズ、半硬質ナチュラルチーズ、軟質ナチュラルチーズに分類することができる。このように、ナチュラルチーズには、熟成の程度(有無)や物性(食感)の違いなどにより、多くの種類が存在する。
【0003】
例えば、熟成型ナチュラルチーズには、チェダー、ゴーダ、エダム、エメンタール、パルメザン、ブルー、カマンベール、ブリー、ヌーシャテルなどがある。この熟成型のチーズでは主に、熟成中の酵素反応により風味が形成される。そして、この酵素反応には次のような酵素が関与している。
【0004】
(A-1)生乳に由来する酵素(生乳を殺菌しても残存している耐熱性菌などに由来する酵素)
(A-2)乳酸菌に由来する酵素(ペプチダーゼ、アミノペプチダーゼなど)
(A-3)レンネットに由来する酵素
(A-4)カビなどの乳酸菌以外の微生物に由来する酵素(カビなどを使用したチーズの場合)
【0005】
とくに、カビによる表面熟成軟質チーズの場合には、前記(A-4)のカビなどの微生物に由来する酵素が風味の生成に最も影響することが知られている(特許文献1、2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-221231号公報
【特許文献2】国際公開第2008/047801号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、日本の市場では、ユーザ(消費者)の嗜好、品質管理、物流、原材料コスト等の様々な要因に応じて、市販されている現行品のチーズのサイズを変更させる場合があり、例えばその質量の増加または減少を目的としたサイズの変更等が挙げられる。
しかし本発明者らの検討によれば、とくにカビによる表面熟成軟質チーズの場合、チーズのサイズを変更すると、出来上がった製品の風味や食感が、現行品に対して劣化するという問題点が存在することが見出された。
【0008】
したがって本発明の目的は、カビによる表面熟成軟質チーズにおいて、そのサイズを変更した場合でも、該サイズの変更前の現行品に対して風味や食感を少なくとも維持することのできる、カビによる表面熟成軟質チーズの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、カビによる表面熟成軟質チーズの表面積と体積との関係を特定化することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の通りである。
【0010】
1.カビによる表面熟成軟質チーズの製造方法において、
前記チーズの表面積(cm2)/体積(cm3)比が1.28以上1.60以下となるように、チーズのサイズを調整することを特徴とする、カビによる表面熟成軟質チーズの製造方法。
2.前記チーズの表面積(cm2)/体積(cm3)比が1.29以上となるように、チーズのサイズを調整することを特徴とする、前記1に記載のカビによる表面熟成軟質チーズの製造方法。
3.前記チーズの表面積(cm2)/体積(cm3)比が1.58以下となるように、チーズのサイズを調整することを特徴とする、前記1または2に記載のカビによる表面熟成軟質チーズの製造方法。
4.前記チーズの質量が150g以下である、前記1~3のいずれかに記載のカビによる表面熟成軟質チーズの製造方法。
5.前記チーズの形状が略円柱状である、前記1~4のいずれかに記載のカビによる表面熟成軟質チーズの製造方法。
6.前記チーズの直径が90mm以下である、前記5に記載のカビによる表面熟成軟質チーズの製造方法。
7.前記チーズの厚さが26mm以下である、前記1~6のいずれかに記載のカビによる表面熟成軟質チーズの製造方法。
8.質量が150g以下であり、表面積(cm2)/体積(cm3)比が1.28以上1.60以下であることを特徴とする、カビによる表面熟成軟質チーズ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カビによる表面熟成軟質チーズのサイズを変更する際に、表面積(cm2)/体積(cm3)比が1.28以上1.60以下となるようにチーズのサイズを調整することを特徴としているので、チーズのサイズを変更した場合でも、当該サイズの変更前の現行品に対して風味や食感を少なくとも維持することのできる、カビによる表面熟成軟質チーズの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、略円柱状のチーズを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
なお、本明細書において「現行品」とは、チーズのサイズを変更する際に、サイズの基準とするチーズを意味するものである。本発明は、当該現行品に対して風味や食感を少なくとも維持するよう、表面積(cm2)/体積(cm3)比が特定範囲となるようにチーズのサイズを調整するものである。
【0014】
本発明のカビによる表面熟成軟質チーズの製造方法は、前記チーズの表面積(cm2)/体積(cm3)比が1.28以上1.60以下となるように、前記カビによる表面熟成軟質チーズ(以下、単にチーズと言うことがある)のサイズを調整することを特徴としている。
【0015】
本発明におけるカビによる表面熟成軟質チーズの種類としてはとくに制限されないが、例えばカマンベール、ブリー、ヌーシャテル、ブルソー、カプリス・デ・デュー、及びシュプレム等が挙げられる。
【0016】
本発明のカビによる表面熟成軟質チーズの製造方法の工程はとくに限定されないが、例えば、以下(1)~(6)を含むような工程が挙げられる。
(1)殺菌冷却された生乳に、乳酸菌、及びレンネット等の凝固剤を加え、カード(凝乳)と呼ばれる豆腐状の固体を得る。
(2)前記カードからホエイ(乳清)を排出させる。
(3)前記ホエイを排出したカードを所定形状のモールドに投入し成形する。このモールドの形状は、最終製品の形状およびサイズに影響する。
(4)成形したカードに対し加塩処理、白カビ菌体の噴霧を行い、特定の温湿度の条件下で一次熟成を行う。例えば、一次熟成における温度は5℃~18℃、湿度は80%RH~100%RH、一次熟成時間は3日間~15日間等が挙げられる。
(5)前記一次熟成後、必要に応じて包装を行い、特定の温湿度の条件下で二次熟成を行う。例えば、二次熟成における温度は5℃~18℃、湿度は10%RH~100%RH、二次熟成時間は3日間~15日間等が挙げられる。
(6)前記(1)~(5)工程により、表面に生じたカビにより生成される酵素の作用によって、熟成前には硬かったカードが、その外側から内側に熟成が進行していき、内部が軟らかいチーズとなる。その後は必要に応じて適当なサイズにカットされ、製品としてのカビによる表面熟成軟質チーズが製造される。
なお、前記製造方法では、カードからホエイを排出した後に所定形状のモールドに投入することでカードの成形を行うものであるが、当該成形を行うタイミングはチーズの熟成が完了する前であれば特に制限されない。例えば、生乳からカードを得る最初の段階から、生乳をモールドに投入しておき、その後に生乳に凝固剤を加えることによってカードの成形を行ってもよい。
【0017】
前記のように、本発明では、チーズの表面積(cm2)/体積(cm3)比が1.28以上1.60以下となるようにそのサイズを調整してチーズの製造を行う。本発明の効果をより獲得するために、このチーズのサイズの調整は一次熟成前に行うのが好ましい。例えば、前記(3)工程のモールドの形状および/またはサイズを変更することによって、前記特定範囲の表面積(cm2)/体積(cm3)比を得ることができる。
【0018】
本発明において、前記チーズの表面積(cm2)/体積(cm3)比は、1.29以上が好ましく、1.30以上がより好ましく、1.33以上がさらに好ましく、1.38以上がさらに好ましい。また、前記チーズの表面積(cm2)/体積(cm3)比は、1.58以下が好ましく、1.52以下がより好ましい。
【0019】
前記チーズの表面積(cm2)/体積(cm3)比を前記のように設定することにより、なぜ、チーズの風味や食感を少なくとも維持できるのか、その作用機構について本発明者は以下のように推測している。
カビによる表面熟成軟質チーズは、チーズ表面にカビが生えて熟成されるものであるので、前記チーズの表面積(cm2)/体積(cm3)比を前記のように設定することにより、表面カビがチーズ表面で酵素を産生し、その酵素がチーズ内部に適度に浸透し、風味や食感に影響を及ぼすものと推測される。
【0020】
なお、チーズの発酵や熟成により、うま味、コク、アンモニア臭等の風味や、硬さ、とろけ具合等の食感が変化するが、これらの発酵、熟成に伴う風味や食感のことを熟成感などと称することがある。
【0021】
また、現行品(サイズ変更前のチーズ)の表面積(cm2)/体積(cm3)比と、サイズ変更後のチーズの表面積(cm2)/体積(cm3)比との差は、15%以下に制御されていることが好ましく、10%以下に制御されていることがより好ましく、8%以下に制御されていることがさらに好ましい。
【0022】
カビによる表面熟成軟質チーズの形状は、とくに制限されず、例えば柱状、円錐状、球状等が挙げられる。チーズの一部分のみにカビが極度に密集すると、表面カビがチーズ表面で産生した酵素がチーズ内部で働く際の、酵素量も局在し、その結果、熟成の度合いが不均一となる。この影響を少なくする等の理由から、凹凸のない形状が好ましく、中でも本発明の製造方法を実施した場合に奏される効果が高まるという観点から、
図1に示すような略円柱状の形状であるのが好ましい。
【0023】
本発明のチーズの製造方法においては、例えば現行品の略円柱状のチーズを下記(i)~(vi)等の方法でサイズを変更することにより、チーズのサイズを調整してもよく、当該方法の例としては、次の形態が挙げられる。
(i)チーズの厚さは変更せず、チーズの直径を減少させる(この形態ではチーズの質量は減少する)。
(ii)チーズの厚さは変更せず、チーズの直径を増加させる(この形態ではチーズの質量は増加する)。
(iii)チーズの厚さを減少させ、チーズの直径は変更しない(この形態ではチーズの質量は減少する)。
(iv)チーズの厚さを増加させ、チーズの直径は変更しない(この形態ではチーズの質量は増加する)。
(v)チーズの厚さおよび直径を、例えば現行品と相似形となるように同時に変更する(この形態ではチーズの質量は増加または減少する)。
(vi)チーズの一部を切断して取り除く(この形態ではチーズの質量は減少する)。
図1に本発明における略円柱状のチーズの一実施形態の模式図を示す。チーズ10において直径12とは、円柱軸11に対して垂直な断面における直径を意味し、前記厚さ13とは円柱軸方向の長さを意味する。
【0024】
本発明では、前記(i)、(ii)の形態が好ましく、前記(i)のチーズの厚さは変更せず、チーズの直径を減少させる形態がとくに好ましい。
前記(i)のチーズの厚さは変更せず、チーズの直径を減少させるには、例えば、前記製造方法の(3)工程において、モールドの形状を変更すること、具体的には円柱状のモールドの直径を減少させることにより行うことができる。
【0025】
なお、前記製造方法の(3)工程において、モールドの形状を変更せず(チーズの直径は変更せず)、モールドへのカードの投入量を減少させることにより、最終的に得られるチーズの厚さを減少させる前記(iii)の形態は、モールドを新たに用意せずに既存のモールドで実施できる点で有利ではあるが、本発明者の検討によれば、前記(iii)の形態では、本発明の効果の発現が、前記(i)の形態に比べて減じられることが見出された。これは、チーズ表面で表面カビが酵素を産生し、その酵素がチーズ内部に浸透することによりチーズ内部でチーズの風味(うまみ、アンモニア臭等)や食感等に関わる物性(組織の硬さ、とろけ具合等)に影響を与えることによると推測される。
【0026】
また、前記(i)のチーズの厚さは変更せず、チーズの直径を減少させる形態において、チーズの形状が略円柱状である場合、現行品に対するチーズの直径の減少割合は、例えば1%~10%の減少割合が好ましく、3%~7%の減少割合がさらに好ましい。具体的には、直径を減少させた後のチーズの直径は、例えば90mm以下であり、70mm~90mmが好ましく、70mm~80mmがさらに好ましい。
【0027】
また本発明において、サイズを調整した後のチーズの厚さは、例えば26mm以下であることが好ましく、25mm以下であることがより好ましい。また、15mm以上であることが好ましく、17mm以上であることがより好ましい。
【0028】
なお、本発明において、サイズを調整した後のチーズの質量はチーズの種類に依存して決定されるものであり、とくに制限されないが、本発明の製造方法は、好ましくは150g以下、より好ましくは80g~130gの表面熟成軟質チーズを製造する場合に特に適している。
【0029】
本発明により得られるチーズは、pHが6.3~6.8であることが好ましく、pHが6.4~6.7であることがより好ましい。チーズのpHが前記範囲であることは、チーズに程よい風味や食感(硬さ・とろけ具合)が得られていることを示している。pHの測定方法は実施例にて後述する。
【0030】
本発明により得られるチーズは、硬度が80gf~250gfであることが好ましく、硬度が150gf~200gfであることがより好ましい。さらに好ましくは196gf以下である。チーズの硬度が前記範囲であることは、チーズが良好な硬さ、とろけ具合を有しており、程よい食感(硬さ・とろけ具合)が得られていることを示している。硬度の測定方法は実施例にて後述する。
【0031】
本発明の製造方法を用いることにより、特に、質量が150g以下、表面積(cm2)/体積(cm3)比が1.28以上1.60以下の、風味や食感が良好な、カビによる表面熟成軟質チーズを得ることができる。
【実施例0032】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0033】
実施例1(基準例)
カマンベールチーズの製造方法1
(1)原料乳である生乳を75℃20秒間殺菌後、32℃に冷却し、乳酸菌スターターを添加した。
(2)原料乳のpHが6.4になった時点でレンネットを添加し、凝固させた。
(3)凝固後、カッティング及びホエイ排出を行い、略円柱状の型枠(モールド)を用いて成型し、チーズカードを得た。カッティング及びホエイ排出条件は、チーズカードの水分が54%になるように調整した。なお、型枠の直径及び/またはチーズカードの充填量は、表1に示す直径・厚さ・重量を有するサンプルが得られるよう調整した。
(4)カード製造の翌日、成型されたカードを塩水に浸漬させ、目標塩分1.1%になるように加塩した後に、白カビ希釈液を噴霧した。
(5)一次熟成(12℃、8日間)を行い、その後包装フィルムを用いて包装し、二次熟成(8℃、12日間)を行った。得られたチーズを密閉容器に入れ、中心部が85℃になるように殺菌処理を行った後、5℃で保管した。
【0034】
前記サンプルの直径、厚さ、表面積、体積、質量、pHおよび硬度を測定した。また、サンプルの表面積(cm2)/体積(cm3)比を算出した。さらに官能評価を行った。
【0035】
表面積は、2か所の直径を測定した直径の平均値と2か所の厚さを測定した厚さの平均値から、サンプルの形状を円柱とみなして、下式により算出した。
表面積(cm2)=2×((直径の平均値(cm)×1/2)2×π)+直径の平均値(cm)×π×厚さの平均値(cm)
【0036】
体積は、直径及び厚さの平均値を前記「表面積」と同じ方法で算出し、サンプルの形状を円柱とみなして算出した。
体積(cm3)=π×(直径の平均値(cm)×1/2)2×厚さの平均値(cm)
【0037】
pHは、以下のとおり測定した。
(1)チーズ全体(白カビマット層含む)を、ミキサー等を用いて均一になるまで粉砕・混合した。
(2)粉砕後のチーズ10gに対し、約50℃の温水30gを添加(4倍希釈)し、ホモジナイズし、試料液を得た。
(3)前記の試料液を約25℃まで冷却し、pHメーター(東亜ディーケーケー社製、HM-30G)で測定した。
【0038】
硬度は、以下のとおり測定した。測定は2回行い、その平均値を求めた。
(1)サンプル中心部を直方体状にカットし、10℃で2、3時間保存し、サンプルの温度を調整した。
(2)レオメーター(レオテック社製)を用い、下記の条件でサンプルの硬度(gf)の測定を行った。
RANGE:2k
P.L.:SCALER
S.ADJ(サンプルとプランジャーが接触し負荷がかかってからの距離):3.0mm
T.SPEED(試料台の昇降スピード):15cm/min
プランジャー:直径1cm(円盤型)
【0039】
官能評価は、専門パネル10名で、以下のとおり採点法(絶対評価)により行った。なお、評価項目は、「うまみ・コク」、「アンモニア臭」、「風味」、「食感」、「総合評価」とした。
「風味」とは、「うまみ・コク」、「アンモニア臭」を含む全体の風味を意味し、「食感」とは、硬さ、とろけ具合を含む全体の食感を意味し、「総合評価」とは「うまみ・コク」、「アンモニア臭」、「風味」、「食感」の全体のバランスの評価を意味する。
(評価方法)
1試料ずつ、パネル自身の経験を通して、各項目の評価を行った。
(1)試料1種類につきパネル数(10個)分用意した。
(2)3桁の乱数を定めて試料に割り振り、容器にラベルした。
(3)1種ずつパネルに提示し、各評価項目について以下の基準に基づいて、官能評価を行った。
(4)評価項目ごとにパネル10名の平均点を求めた。
【0040】
官能評価の基準は以下の通りである。各評価項目の平均が3以上であれば、良好であると評価できる。
【0041】
[うまみ・コク]
5:強い
4:やや強い
3:普通
2:やや弱い
1:弱い
【0042】
[アンモニア臭]
5:全く感じない
4:ほとんど感じない
3:わずかに感じるが許容できる
2:やや強く感じる
1:強く感じる
【0043】
[風味]
5:非常に良い
4:良い
3:許容できる
2:悪い(許容不可)
1:非常に悪い(許容不可)
【0044】
[食感]
5:非常に良い/良好な硬さ、とろけ具合
4:良い/ほぼ良好な硬さ、とろけ具合
3:許容できる/やや軟らかくとろけ感が強いが許容・やや硬くとろけ感が弱いが許容
2:悪い(許容不可)/やや軟らかくとろけすぎ(悪い)・やや硬くとろけ感が弱い(悪い)
1:非常に悪い(許容不可)/軟らかすぎてとろけ感がありすぎる(非常に悪い)・硬すぎてとろけ感が弱すぎる(非常に悪い)
【0045】
[総合評価]
5:非常に良い
4:良い
3:許容できる
2:悪い(許容不可)
1:非常に悪い(許容不可)
結果を表1に示す。
【0046】
実施例2~10および比較例1~3
前記サンプルに対し、その直径、厚さ、表面積、体積、重量を表1に示す通りに変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。
結果を表1に示す。
【0047】
実施例11~12
実施例1におけるカマンベールチーズの製造方法1を、下記のカマンベールチーズの製造方法2に変更したこと以外は、実施例1を繰り返した。結果を表1に示す。
カマンベールチーズの製造方法2:
(1)原料乳である生乳を63℃30分間殺菌後、34℃に冷却し、乳酸菌スターター及びレンネットを添加した。
(2)原料乳のpHが6.4になった時点でレンネットを添加し、凝固させた。
(3)凝固後、カッティング及びホエイ排出を行い、略円柱形状の型枠(モールド)を用いて成型し、チーズカードを得た。カッティング及びホエイ排出条件は、チーズカードの水分が51%になるように調整した。なお、型枠の直径及び/またはチーズカードの充填量は、表1に示す直径・厚さ・重量を有するサンプルが得られるよう調整した。
(4)カード製造の翌日、成型されたカードを塩水に浸漬し、目標塩分1.3%になるように加塩した後、白カビ希釈液を噴霧した。
(5)一次熟成(18℃5日間)を行い、その後包装フィルムを用いて包装し、二次熟成(10℃10日間)を行った。得られたチーズを密閉容器に入れ、中心部が85℃になるように殺菌処理を行った後、5℃で保管した。
【0048】
【0049】
表1の結果から、各実施例では、実施例1(基準例)に対してチーズのサイズを変更する場合に、チーズの表面積(cm2)/体積(cm3)比が1.28以上1.60以下となるように、チーズのサイズを調整し、チーズの製造を行っているので、各比較例に比べて、チーズのサイズを変更した場合であっても、風味や食感を少なくとも維持することができることが分かった。