(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165990
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】基板処理システム、搬送方法、搬送プログラムおよび保持具
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20231110BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20231110BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/302 101G
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023169980
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2022128310の分割
【原出願日】2019-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2018232927
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 雅博
(72)【発明者】
【氏名】豊巻 俊明
(72)【発明者】
【氏名】貝瀬 精一
(72)【発明者】
【氏名】武山 裕紀
(57)【要約】
【課題】真空処理室内の消耗部品の交換時間を短縮することで、基板処理システムの稼働率を向上させる。
【解決手段】基板処理システムは、常圧搬送室と、真空処理室と、一以上のロードロックモジュールと、真空搬送室と、複数の取り付け部と、第1の搬送機構と、第2の搬送機構と、制御部と、を備える。複数の取り付け部は、常圧搬送室に設けられる。複数の取り付け部には、複数の保管部各々を着脱自在に取り付け可能である。制御部は、保管部から常圧搬送室および一以上のロードロックモジュールの一つを介した真空処理室への消耗部品の搬送と、真空処理室から真空搬送室および一以上のロードロックモジュールの他の一つを介した消耗部品の搬送と、を、第1の搬送機構および第2の搬送機構に並行して実行させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常圧雰囲気において、基板および消耗部品が搬送される常圧搬送室と、
基板に対して真空処理が実行される真空処理室と、
前記常圧搬送室と前記真空処理室との間に配置され、搬送される基板および消耗部品が通過する一以上のロードロックモジュールと、
前記真空処理室と前記一以上のロードロックモジュールとの間に配置され、減圧雰囲気において基板および消耗部品が搬送される真空搬送室と、
前記常圧搬送室に設けられ、基板または消耗部品を収容する複数の保管部各々と常圧搬送室との間で搬送される基板または消耗部品が通過可能なポートを有し、前記複数の保管部各々を着脱自在に取り付け可能な複数の取り付け部と、
前記一以上のロードロックモジュールと真空処理室との間で真空搬送室を介して、基板および消耗部品を搬送する第1の搬送機構と、
前記複数の保管部と前記一以上のロードロックモジュールとの間で前記常圧搬送室を介して、基板および消耗部品を搬送する第2の搬送機構と、
前記保管部から前記常圧搬送室および前記一以上のロードロックモジュールの一つを介した前記真空処理室への消耗部品の搬送と、前記真空処理室から前記真空搬送室および前記一以上のロードロックモジュールの他の一つを介した消耗部品の搬送と、を、前記第1の搬送機構および前記第2の搬送機構に並行して実行させる制御部と、
を備える基板処理システム。
【請求項2】
前記複数の取り付け部は、
基板を収容する第1の保管部を取り付け可能な第1の取り付け部と、
消耗部品を収容する第2の保管部を取り付け可能な第2の取り付け部と、
を含む、請求項1に記載の基板処理システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の取り付け部における前記複数の保管部の取り付け状態を表示部に表示させる、請求項2に記載の基板処理システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数の取り付け部のうち前記第1の取り付け部と前記第2の取り付け部とを識別可能に表示部に表示させる、請求項2または3に記載の基板処理システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記真空処理室に配置された消耗部品の交換予約を受け付け、
前記真空搬送室、前記一以上のロードロックモジュールおよび前記常圧搬送室内に、搬送中の基板および消耗部品が存在しないと判定した時に、前記消耗部品の交換を、前記第1の搬送機構および前記第2の搬送機構に実行させる、請求項2から4のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第2の取り付け部に第2の保管部が取り付けられているときに前記交換予約を受け付け、前記第2の取り付け部に第2の保管部が取り付けられていないときに前記交換予約を受け付けない、請求項5に記載の基板処理システム。
【請求項7】
前記制御部は、所定の指示入力があった場合のみ、前記第2の取り付け部への第2の保管部の取り付けを受け付ける、請求項2から6のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項8】
前記第1の保管部内に配置される基板と、前記第2の保管部内に配置される消耗部品と、を検知可能なセンサをさらに備え、
前記制御部は、前記所定の指示入力があった場合、前記センサのパラメータを変更する、請求項7に記載の基板処理システム。
【請求項9】
常圧雰囲気において、基板および消耗部品が搬送される常圧搬送室と、
基板に対して真空処理が実行される真空処理室と、
前記常圧搬送室と前記真空処理室との間に配置され、搬送される基板および消耗部品が通過する一以上のロードロックモジュールと、
前記真空処理室と前記一以上のロードロックモジュールとの間に配置され、減圧雰囲気において基板および消耗部品が搬送される真空搬送室と、
前記常圧搬送室に設けられ、基板または消耗部品を収容する複数の保管部各々と常圧搬送室との間で搬送される基板または消耗部品が通過可能なポートを有し、前記複数の保管部各々を着脱自在に取り付け可能な複数の取り付け部と、
前記一以上のロードロックモジュールと真空処理室との間で真空搬送室を介して、基板および消耗部品を搬送する第1の搬送機構と、
前記複数の保管部と前記一以上のロードロックモジュールとの間で前記常圧搬送室を介して、基板および消耗部品を搬送する第2の搬送機構と、
を備える基板処理装置において、
前記保管部から前記常圧搬送室および前記一以上のロードロックモジュールの一つを介した前記真空処理室への消耗部品の搬送と、前記真空処理室から前記真空搬送室および前記一以上のロードロックモジュールの他の一つを介した消耗部品の搬送と、を、前記第1の搬送機構および前記第2の搬送機構に並行して実行させる搬送工程を含む、搬送方法。
【請求項10】
常圧雰囲気において、基板および消耗部品が搬送される常圧搬送室と、
基板に対して真空処理が実行される真空処理室と、
前記常圧搬送室と前記真空処理室との間に配置され、搬送される基板および消耗部品が通過する一以上のロードロックモジュールと、
前記真空処理室と前記一以上のロードロックモジュールとの間に配置され、減圧雰囲気において基板および消耗部品が搬送される真空搬送室と、
前記常圧搬送室に設けられ、基板または消耗部品を収容する複数の保管部各々と常圧搬送室との間で搬送される基板または消耗部品が通過可能なポートを有し、前記複数の保管部各々を着脱自在に取り付け可能な複数の取り付け部と、
前記一以上のロードロックモジュールと真空処理室との間で真空搬送室を介して、基板および消耗部品を搬送する第1の搬送機構と、
前記複数の保管部と前記一以上のロードロックモジュールとの間で前記常圧搬送室を介して、基板および消耗部品を搬送する第2の搬送機構と、
を備える基板処理装置において、
前記保管部から前記常圧搬送室および前記一以上のロードロックモジュールの一つを介した前記真空処理室への消耗部品の搬送と、前記真空処理室から前記真空搬送室および前記一以上のロードロックモジュールの他の一つを介した消耗部品の搬送と、を、前記第1の搬送機構および前記第2の搬送機構に並行して実行させる制御ステップを、
コンピュータに実行させるための搬送プログラム。
【請求項11】
基板および消耗部品を搬送する搬送機構が備えるアームの先端に設けられ、前記基板および前記消耗部品を保持する保持具であって、
搬送時に前記基板および前記消耗部品の表面と対向する第1表面と、
前記第1表面上に形成され、前記基板を保持する複数の第1保持部と、
前記第1表面上に形成され、前記複数の第1保持部を結ぶ第1円の外側に配置され、前記消耗部品を保持する複数の第2保持部と、
を備え、
前記第2保持部は、前記消耗部品の外径より大きい径を有する第2円上に配置される一方端から前記第2円の径方向内側に向かって前記第1表面に近づく傾斜面を有する
保持具。
【請求項12】
前記第1保持部の前記第1表面からの高さは、前記第2保持部の前記一方端の前記第1表面からの高さよりも高い、請求項11に記載の保持具。
【請求項13】
前記第2保持部の他方端は、前記消耗部品の内径と外径の間に位置する第3円上に配置される、請求項11または12に記載の保持具。
【請求項14】
前記第2保持部の他方端は、前記消耗部品の内径より小さい径の第4円上に配置される、請求項11または12に記載の保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、基板処理システム、搬送方法、搬送プログラムおよび保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
処理室の内部に設けられた載置台に基板を載置してプラズマ処理を行うプラズマ処理装置が知られている。このようなプラズマ処理装置には、プラズマ処理を繰り返し行うことにより徐々に消耗する消耗部品が存在する。
【0003】
消耗部品はたとえば、載置台に載置される基板の外周に設けられるフォーカスリングである。フォーカスリングは、プラズマに曝露されて削られるため、定期的に交換される。
【0004】
たとえば、特許文献1は、処理室を大気開放することなくフォーカスリングを搬出搬入するフォーカスリング交換方法を提案している。また、基板載置台の表面部の状態の確認や当該表面部の交換を行うことによる真空処理の停止時間を短くする技術が提案されている(特許文献2)。また、消耗部品を交換するためのポッドが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-10992号公報
【特許文献2】特開2012-216614号公報
【特許文献3】特開2017-98540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、真空処理室内の消耗部品の交換時間を短縮することで、基板処理システムの稼働率を向上させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様による基板処理システムは、常圧搬送室と、真空処理室と、一以上のロードロックモジュールと、真空搬送室と、複数の取り付け部と、第1の搬送機構と、第2の搬送機構と、制御部と、を備える。常圧搬送室は、常圧雰囲気において、基板および消耗部品が搬送される。真空処理室においては、基板に対して真空処理が実行される。一以上のロードロックモジュールは、常圧搬送室と真空処理室との間に配置され、搬送される基板および消耗部品が通過する。真空搬送室は、真空処理室と一以上のロードロックモジュールとの間に配置され、減圧雰囲気において基板および消耗部品が搬送される。複数の取り付け部は、常圧搬送室に設けられ、基板または消耗部品を収容する複数の保管部各々と常圧搬送室との間で搬送される基板または消耗部品が通過可能なポートを有する。複数の取り付け部には、複数の保管部各々を着脱自在に取り付け可能である。第1の搬送機構は、一以上のロードロックモジュールと真空処理室との間で真空搬送室を介して、基板および消耗部品を搬送する。第2の搬送機構は、複数の保管部と一以上のロードロックモジュールとの間で常圧搬送室を介して、基板および消耗部品を搬送する。制御部は、保管部から常圧搬送室および一以上のロードロックモジュールの一つを介した真空処理室への消耗部品の搬送と、真空処理室から真空搬送室および一以上のロードロックモジュールの他の一つを介した消耗部品の搬送と、を、第1の搬送機構および第2の搬送機構に並行して実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、真空処理室内の消耗部品の交換時間を短縮することで、基板処理システムの稼働率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る基板処理システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る基板処理システムが備えるプロセスモジュールの一例の概略構成図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すサセプタの構成を説明するための斜視図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る消耗部品の搬送処理の流れについて説明するための図である。
【
図5】
図5は、一実施形態の基板処理システムにおける交換タイミング通知の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、一実施形態の基板処理システムにおけるFR用FOUPの設置の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、一実施形態の基板処理システムにおけるFR用FOUPの取り外し処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8A】
図8Aは、一実施形態の基板処理システムにおける交換予約処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8B】
図8Bは、一実施形態の基板処理システムにおける交換予約キャンセル処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、一実施形態の基板処理システムにおける交換処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、一実施形態の基板処理システムにおける交換経路確保処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、一実施形態の基板処理システムにおける交換実行処理について説明するための図である。
【
図12】
図12は、一実施形態の基板処理システムによってフォーカスリングを交換した場合のダウンタイムの短縮効果について説明するための図である。
【
図13A】
図13Aは、一実施形態の基板処理システムにおけるフォーカスリング搬入時の第2リフタピンの動作について説明するための図である。
【
図13B】
図13Bは、一実施形態の基板処理システムにおけるフォーカスリング搬出時の第2リフタピンの動作について説明するための図である。
【
図14A】
図14Aは、一実施形態の基板処理システムが備えるピックの構成の一例を示す概略上面図である。
【
図17】
図17は、一実施形態の基板処理システムにおける第3センサの配置位置について説明するための図である。
【
図18A】
図18Aは、一実施形態のゲートバルブが備えるプレートの概略斜視図である。
【
図18B】
図18Bは、一実施形態のゲートバルブの一部を拡大した概略斜視図である。
【
図18C】
図18Cは、一実施形態のゲートバルブの開口が遮蔽された状態を示す概略斜視図である。
【
図19A】
図19Aは、一実施形態における、搬送中の消耗部品とセンサとの位置関係について説明するための図である。
【
図20A】
図20Aは、搬送中の消耗部品の位置ずれについて説明するための図である。
【
図21】
図21は、4つのセンサを配置した場合の消耗部品とセンサとの位置関係を示す図である。
【
図22】
図22は、消耗部品の位置ずれを算出する手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、開示する実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態は限定的なものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0011】
(実施形態に係る基板処理システムの構成例)
一実施形態に係る基板処理システムは、使用済みの消耗部品を真空処理室から保管部まで搬送し、未使用の消耗部品を保管部から真空処理室まで搬送する。一実施形態においては、使用済みの消耗部品の搬送と未使用の消耗部品の搬送とは並行して実行される。
【0012】
ここで、消耗部品とは、たとえばプラズマ処理を減圧雰囲気中で実行する複数のチャンバ(真空処理室)を有する基板処理システムにおいてプラズマ処理を繰り返し実行することにより消耗し、交換が必要となる部品を指す。消耗部品とはたとえば、チャンバ内の載置台上に配置されるフォーカスリングである。消耗部品は、フォーカスリングの他、ロボットアーム等の装置によりチャンバへの搬入およびチャンバからの搬出が可能な任意の部品を含む。以下の説明では、消耗部品の例としてフォーカスリングを用いて実施形態を説明する。なお、以下の説明において「真空」とは大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態を指す。すなわち、以下の説明において「真空」は、減圧状態または負圧状態を含む。また、以下の説明において「常圧」は大気圧に略等しい圧力を指す。
【0013】
図1は、一実施形態に係る基板処理システム1の概略構成図である。
【0014】
基板処理システム1は、複数のプロセスモジュールPM(PM1~PM8)と、真空搬送室10と、複数のロードロックモジュールLLM(LLM1,LLM2)と、常圧搬送室20と、複数のロードポートLP(LP1~LP5)と、制御装置30と、を備える。
【0015】
なお、
図1の例においては、8つのプロセスモジュールPM1~PM8と、2つのロードロックモジュールLLM1~LLM2と、5つのロードポートLP1~LP5と、を示す。ただし、基板処理システム1が備えるプロセスモジュールPM、ロードロックモジュールLLM、ロードポートLPの数は図示するものに限定されない。以下、特に区別する必要がない場合は、8つのプロセスモジュールPM1~PM8はまとめてプロセスモジュールPMと呼ぶ。同様に、2つのロードロックモジュールLLM1~LLM2はまとめてロードロックモジュールLLMと呼ぶ。また同様に、5つのロードポートLP1~LP5はまとめてロードポートLPと呼ぶ。なお、本実施形態に係る基板処理システム1は、少なくとも2つのロードロックモジュールLLMを備える。
【0016】
プロセスモジュールPMは、減圧雰囲気において被処理対象である半導体基板(以下、ウエハW)の処理を実行する。プロセスモジュールPMは、真空処理室の一例である。プロセスモジュールPMは、たとえば、エッチング、成膜等の処理を実行する。プロセスモジュールPMは、ウエハWを支持する載置台と、当該載置台上にウエハWを囲むように配置されるフォーカスリングFRと、を備える。また、プロセスモジュールPMは、載置台上でウエハWを載置する領域に配置され昇降可能な第1リフタピン(後述、
図2および
図3の172参照)と、載置台上でフォーカスリングFRを載置する領域に配置され昇降可能な第2リフタピン(後述、
図2および
図3の182参照)と、を備える。第1リフタピンが上昇することによりウエハWが載置台から持ち上がる。また、第2リフタピンが上昇することによりフォーカスリングFRが載置台から持ち上がる。プロセスモジュールPM内は、ウエハWの処理中、減圧雰囲気に維持される。
【0017】
プロセスモジュールPMは各々、開閉可能なゲートバルブGVを介して真空搬送室10に接続する。ゲートバルブGVはプロセスモジュールPM内でウエハWの処理が実行されている間、閉じた状態となる。ゲートバルブGVは、プロセスモジュールPMから処理済みのウエハWを搬出する際、および、プロセスモジュールPMに未処理ウエハWを搬入する際に開く。また、ゲートバルブGVは、プロセスモジュールPMからフォーカスリングFRを搬入搬出する際にも開く。プロセスモジュールPMには、所定のガスを供給するための気体供給部および真空引きが可能な排気部が設けられる。プロセスモジュールPMの詳細はさらに後述する。
【0018】
真空搬送室10は、内部が減圧雰囲気に維持可能である。ウエハWは真空搬送室10を介して各プロセスモジュールに搬送される。
図1の例では、真空搬送室10は上面視で略5角形であり、4辺に沿って真空搬送室10の周りを囲んでプロセスモジュールPMが配置される。プロセスモジュールPM内で処理されたウエハWは、真空搬送室10を介して次に処理が行われるプロセスモジュールPMに搬送されうる。全ての処理が終了したウエハWは、真空搬送室10を介してロードロックモジュールLLMに搬送される。真空搬送室10は図示しない気体供給部および真空引きが可能な排気部を備える。
【0019】
また、真空搬送室10には、ウエハWおよびフォーカスリングFR(以下、搬送物とも呼ぶ)を搬送するための第1の搬送機構が配置される。たとえば、
図1に示すVTM(Vacuum Transfer Module)アーム15は第1の搬送機構の一例である。このVTMアーム15は、プロセスモジュールPM1~PM8およびロードロックモジュールLLM1、LLM2の間で搬送物を搬送する。
【0020】
図1に示すVTMアーム15は、第1アーム15aと第2アーム15bとを有する。第1アーム15aおよび第2アーム15bは、基台15c上に取り付けられている。基台15cは、案内レール16a、16b上を真空搬送室10の長手方向にスライド可能である。たとえば、案内レール16a、16bに螺合されるスクリューのモータ駆動により、基台15cは真空搬送室10内を移動する。第1アーム15aおよび第2アーム15bは、基台15c上に旋回可能に固定される。また、第1アーム15aおよび第2アーム15b各々の先端には略U字形状の第1のピック17aと第2のピック17bが回転可能に接続する。
【0021】
なお、VTMアーム15は、第1アーム15aおよび第2アーム15bを伸縮させるためのモータ(図示せず)や、第1アーム15aおよび第2アーム15bを昇降させるためのモータ(図示せず)を備える。
【0022】
また、真空搬送室10は、各プロセスモジュールPMに対応付けて配置される第1センサS1~S16を備える。第1センサS1~S16は2個で1つの組を構成し、1つの組が1つのプロセスモジュールPMに対応する。第1センサS1~S16は各々、対応するプロセスモジュールPMに搬送されるウエハWおよびフォーカスリングFRの位置ずれを検出するためのセンサである。検出位置に基づき、搬送位置を補正する。第1センサS1~S16が検知したウエハWおよびフォーカスリングFRの位置情報は制御装置30に送信される。第1センサS1~S16は各々同一の構成を有するため、代表としてプロセスモジュールPM1前に配置される第1センサS1、S2について説明する。
【0023】
第1センサS1、S2はたとえば、透過型光電センサであり、真空搬送室10の天井側と床側とに各々配置される投光部と受光部とを有する。第1センサS1、S2は各々、真空搬送室10からプロセスモジュールPM1にウエハWおよびフォーカスリングFRを搬送する際の搬送経路上に配置される。たとえば、第1センサS1、S2の投光部と受光部との間を、ウエハWおよびフォーカスリングFRの少なくとも一部が通過する位置に、第1センサS1、S2を配置する。VTMアーム15がウエハWを保持してプロセスモジュールPM1に搬送するときウエハWはセンサS1、S2の投光部の下を通過する。ウエハWの上に位置する投光部が光を射出し、ウエハWの下に位置する受光部が射出された光を受ける。ウエハWが投光部の下を通過していく間は、受光部による受光が停止する。ウエハWが投光部の下を通り過ぎると、受光部による受光が再開する。このため、第1センサS1、S2における受光停止期間の長さに基づき、ウエハWまたはフォーカスリングFRの位置ずれを検知することができる。制御装置30は、第1センサS1、S2から送信される位置情報に基づき、ウエハWの位置すなわちVTMアーム15の位置を補正してウエハWまたはフォーカスリングFRをプロセスモジュールPM1に搬送する。
【0024】
また、真空搬送室10は、各ロードロックモジュールLLMに対応付けて配置される第2センサS17~S18を備える。第2センサS17~S18はそれぞれ、ロードロックモジュールLLM1、LLM2各々と真空搬送室10の搬送経路上に配置される。
図1の例では、一つのロードロックモジュールLLMの前に一つの第2センサを配置する。VTMアーム15は、ロードロックモジュールLLMの前まで搬送物を搬送すると、第2センサS17またはS18が搬送物を検知するまでロードロックモジュールLLMの前で待機する。また、VTMアーム15は、第2センサS17(S18)が搬送物を検知できない場合、制御装置30からの指示に応じて、搬送動作中の第1のピック17a(17b)の先端を水平面内で左右に旋回させて、第2センサS17(S18)が検知可能な位置に搬送物を移動させる。VTMアーム15は、第2センサS17(S18)が搬送物を検知すると、予め定められた搬送先のロードロックモジュールLLMへの搬送を再開する。
【0025】
ロードロックモジュールLLMは、搬送物を載置する台と、ウエハWおよびフォーカスリングFRを昇降する支持ピンと、を備える。支持ピンの構成は、後述するプロセスモジュールPM内の第1リフタピンおよび第2リフタピンの構成と同様であってよい。ロードロックモジュールLLMは、図示しない排気機構たとえば真空ポンプとリーク弁とを備え、ロードロックモジュールLLM内は大気雰囲気と減圧雰囲気とに切り替えることができる。このロードロックモジュールLLMは、プロセスモジュールPMが配置されていない真空搬送室10の一辺に沿って並べて配置される。ロードロックモジュールLLMと真空搬送室10とは、ゲートバルブGVを介して内部が連通可能に構成されている。
【0026】
VTMアーム15は、ロードロックモジュールLLM内の台から支持ピンによって持ち上げられた搬送物を保持し、プロセスモジュールPMの載置台へと搬送する。また、VTMアーム15は、プロセスモジュールPM内で第1リフタピン(172、
図2参照)の上昇により持ち上げられたウエハWを保持し、ロードロックモジュールLLM内の台まで搬送する。また、VTMアーム15は、プロセスモジュールPM内で第2リフタピン(182、
図2参照)の上昇により持ち上げられたフォーカスリングFRを保持し、ロードロックモジュールLLM内の台まで搬送する。
【0027】
ロードロックモジュールLLMは、真空搬送室10に接続される側と反対側において、常圧搬送室20に接続される。ロードロックモジュールLLMと常圧搬送室20との間は、ゲートバルブGVを介してそれぞれの内部が連通可能に構成されている。
【0028】
常圧搬送室20は、常圧雰囲気に維持される。
図1の例では、常圧搬送室20は上面視で略矩形形状である。常圧搬送室20の一方の長辺に複数のロードロックモジュールLLMが並設されている。また、常圧搬送室20の他方の長辺に複数のロードポートLPが並設されている。常圧搬送室20内には、ロードロックモジュールLLMとロードポートLPとの間で搬送物を搬送するための第2の搬送機構が配置される。
図1に示すLM(Loader Module)アーム25は第2の搬送機構の一例である。LMアーム25は、アーム25aを有する。アーム25aは基台25c上に回転可能に固定されている。基台25cは、ロードポートLP3近傍に固定される。アーム25aの先端は略U字形状の第1のピック27aと第2のピック27bが回転可能に接続する。
【0029】
第1のピック27aおよび第2のピック27bの少なくとも一方は、先端にマッピングセンサMS(図示せず)を有する。たとえば、第1のピック27aおよび第2のピック27bそれぞれの略U字の二つの端部にマッピングセンサMSが配置される。後述するFOUP(Front Opening Unified Pod)がロードポートLPに接続されるとFOUPの蓋が開き、マッピングセンサMSがマッピングを実行する。すなわち、マッピングセンサMSはFOUP内のウエハWまたはフォーカスリングFRを検知して検知結果を制御装置30に送信する。なお、ウエハWとフォーカスリングFRとはFOUP収容時の配置間隔や厚さが異なるため、制御装置30は、後述するFOUPの種類(検出対象)に応じてマッピングセンサMSの閾値を切り替える。
【0030】
常圧搬送室20内にはまた、第3センサS20~S27が配置される。第3センサS20~S27は、搬送されるウエハWおよびフォーカスリングFRを検知する。第3センサS20~S23は、ロードロックモジュールLLMと常圧搬送室20との間の搬送物を検知する。第3センサS24~27は、常圧搬送室20とロードポートLPとの間の搬送物を検知する。第3センサS20~S27は、ロードポートLPのドア(後述)とロードロックモジュールLLMとの間のLMアーム25の搬送経路上に設けられる。第3センサS20~S27は2つ一組で、ロードロックモジュールLLM1、LLM2、ロードポートLP2、LP4の前に配置される。第3センサS20~27は、第1センサS1~S16と同様の透過型光電センサであってよい。第3センサS20~27はウエハWおよびフォーカスリングFRの双方を検知可能に構成される。
【0031】
なお、ウエハWまたはフォーカスリングFRの搬送時に、第1センサS1~16、第2センサS17、18、第3センサS20~S27の検知エラーが発生する可能性がある。係る場合は、搬送物がVTMアーム15またはLMアーム25から落下している等の故障の可能性がある。このため、検知エラー発生時は、基板処理システム1は処理を中断する。ただし、検知エラーが発生した場合に直ちに基板処理システム1の処理を中断せず、検知エラーの対象であるVTMアーム15またはLMアーム25のピックの先端を水平方向に移動させて再検知を実行してもよい。再検知の結果、再度検知エラーとなった場合は、基板処理システム1は処理を中断する。再検知の結果、搬送物が検知された場合は、基板処理システム1は処理を続行する。
【0032】
図1の例では、ロードポートLP1~LP5のうち、対応する第3センサが配置されているのはロードポートLP2、LP4のみである。
図1の例では、第3センサは、フォーカスリングFR用FOUPを設置可能なロードポートLPに対応する位置にのみ配置する。別の例では、第3センサを全てのロードポートLPに対応付けて配置してもよい。
【0033】
ロードポートLPは、ウエハWまたはフォーカスリングFRを収容するFOUPを取り付け可能に形成される。FOUPとは、ウエハWまたはフォーカスリングFRを収容可能な容器である。FOUPは開閉可能な蓋を有する。FOUPがロードポートLPに設置されると、FOUPの蓋とロードポートLPのドアとが係合する。そして、FOUPの蓋のラッチが外れFOUPの蓋を開くことができる状態となる。その状態で、ロードポートLPのドアを開くことでドアと共にFOUPの蓋が移動してFOUPが開き、ロードポートLPを介してFOUP内と常圧搬送室20内とが連通する。一実施形態に係るFOUPは、ウエハWを収容可能なウエハ用FOUPと、フォーカスリングFRを収容可能なフォーカスリング(FR)用FOUPとを含む。ウエハ用FOUPは第1の保管部の一例であり、FR用FOUPは第2の保管部の一例である。
【0034】
ウエハ用FOUPは、収容するウエハWの数に応じた棚状の収容部を有する。また、FR用FOUPは、たとえば、基板処理システム1が備えるプロセスモジュールPMの数に応じた数のフォーカスリングFRを収容可能に形成される。たとえば、フォーカスリングFRが配置されるプロセスモジュールPMが8つであれば、FR用FOUPは8個の未使用のフォーカスリングFRと使用済みの8個のフォーカスリングFRとを収容可能であればよい。上方の収容部8段に使用前のフォーカスリングFRを収容し、下方の収容部8段に使用済みのフォーカスリングFRを収容することができる。なお、使用済みのフォーカスリングFRを下方に収容するのは、使用済みのフォーカスリングFRに付着したパーティクルが使用前のフォーカスリングFRに付着することを抑制するためである。なお、上記FOUPに収容可能なウエハWおよびフォーカスリングFRの数は一例であって、任意の数のウエハWおよびフォーカスリングFRを収容するFOUPを構成可能である。
【0035】
ロードポートLPは、ウエハ用FOUPを取り付け可能な第1のロードポートと、FR用FOUPを取り付け可能な第2のロードポートと、を含む。
図1の例において、ロードポートLP1、LP3、LP5は、第1のロードポートである。また、ロードポートLP2、LP4は、第2のロードポートである。第1のロードポートは第1の取り付け部の一例であり、第2のロードポートは第2の取り付け部の一例である。なお、一実施形態の第2のロードポートは、ウエハ用FOUPおよびFR用FOUPのいずれも取り付け可能である。また、FR用FOUPは、フォーカスリングFRの交換時のみ取り付けてもよく、常時取り付けておいてもよい。また、別の例では第2のロードポートは単数であってもよい。
【0036】
ロードポートLPは各々、FOUPのキャリアID(Identifier)を読み取るための読取部(図示せず)を備える。キャリアIDは、各FOUPの種類等を識別するための識別子である。FR用FOUPとウエハ用FOUPとの識別のため、キャリアIDの命名規則は予め基板処理システム1に設定しておくことができる。たとえば、所定の文字列で始まるキャリアIDをFR用FOUPのキャリアIDと認識し、他の所定の文字列で始まるキャリアIDをウエハ用FOUPのキャリアIDと認識するよう設定してよい。たとえば、「FR_」で始まるキャリアIDはFR用FOUP、「W_」で始まるキャリアIDはウエハ用FOUPとして基板処理システム1に設定する。キャリアIDの命名規則はデフォルトで設定してもよく、オペレータが設定してもよい。読取部は、FOUPがロードポートLPに載置されて係止されると、FOUPに付与されているキャリアIDを読み取る。基板処理システム1は、キャリアIDに基づき、各FOUPがウエハ用FOUPであるか、FR用FOUPであるかを識別する。キャリアIDが認証されてFOUPがロードポートLPに接続されると、FOUPの蓋がロードポートのドアと共に開かれ、FOUP内に収容されているウエハWまたはフォーカスリングFRがLMアーム25のマッピングセンサMSによって検知される。
【0037】
常圧搬送室20の一方の短辺には、アライナAUが配置される。アライナAUは、ウエハWを載置する回転載置台と、ウエハWの外周縁部を光学的に検出する光学センサと、を有する。アライナAUは、たとえば、ウエハWのオリエンテーションフラットやノッチ等を検出して、ウエハWの位置合わせを行う。
【0038】
上記のように構成されたプロセスモジュールPM、真空搬送室10、VTMアーム15、ロードロックモジュールLLM、常圧搬送室20、LMアーム25、ロードポートLP、アライナAUは各々、制御装置30と接続され、制御装置30に制御される。
【0039】
制御装置30は、基板処理システム1の各部を制御する情報処理装置である。制御装置30の具体的な構成および機能は特に限定されない。制御装置30は、たとえば、記憶部31、処理部32、入出力インタフェース(IO I/F)33および表示部34を備える。記憶部31はたとえば、ハードディスク、光ディスク、半導体メモリ素子等の任意の記憶装置である。処理部32はたとえば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などのプロセッサである。表示部34は、たとえば液晶画面やタッチパネル等、情報を表示する機能部である。
【0040】
処理部32は、記憶部31に格納されたプログラムやレシピを読み出して実行することにより、入出力インタフェース33を介して基板処理システム1の各部を制御する。また、処理部32は、ロードポートLPに設けられた読取部が読み取ったキャリアIDに基づき、各ロードポートLPに接続されているFOUPの種類を識別し、記憶部31に記憶する。また、処理部32は、マッピングセンサMSが検知したFOUP内のウエハWおよびフォーカスリングFRの情報を受信し、記憶部31に記憶する。また、処理部32は、各プロセスモジュールPMが備えるセンサ(図示せず)等から、当該プロセスモジュールPMで実行中の処理の内容および進行状況等を受信し、記憶部31に記憶する。また、制御装置30は、第2センサおよび第3センサから検知エラーの通知を受信し、再検知または処理中止の処理を実行する。また、制御装置30は、後述する交換タイミング通知処理、FR用FOUP設置処理、FR用FOUP取り外し処理、交換予約処理、交換予約キャンセル処理、交換処理の各々を制御し実行する。
【0041】
(プロセスモジュールPMの構成例)
図2は、一実施形態に係る基板処理システム1が備えるプロセスモジュールPMの一例の概略構成図である。
図2に示すプロセスモジュールPMは、平行平板型のプラズマ処理装置である。
【0042】
プロセスモジュールPMは、たとえば表面が陽極酸化処理(アルマイト処理)されたアルミニウムから成る円筒形状に成形された処理容器を有する処理室102を備える。処理室102は接地されている。処理室102内の底部にはウエハWを載置するための略円柱状の載置台110が設けられている。載置台110はセラミックなどで構成された板状の絶縁体112と、絶縁体112上に設けられた下部電極を構成するサセプタ114とを備える。
【0043】
載置台110はサセプタ114を所定の温度に調整可能なサセプタ温調部117を備える。サセプタ温調部117は、たとえばサセプタ114内に設けられた温度調節媒体室118に温度調節媒体を循環するように構成されている。
【0044】
サセプタ114は、その上側中央部に凸状の基板載置部が形成されており、この基板載置部の上面は基板載置面115となり、その周囲の低い部分の上面はフォーカスリングFRを載置するフォーカスリング載置面116となる。
図2に示すように、基板載置部の上部に静電チャック120を設ける場合は、この静電チャック120の上面が基板載置面115となる。静電チャック120は、絶縁材の間に電極122が介在された構成となっている。静電チャック120は、電極122に接続された図示しない直流電源からたとえば1.5kVの直流電圧が印加される。これによって、ウエハWが静電チャック120に静電吸着される。基板載置部はウエハWの径よりも小径に形成されており、ウエハWを載置したときにウエハWの周縁部が基板載置部から張り出すようになっている。
【0045】
サセプタ114の上端周縁部には、静電チャック120の基板載置面115に載置されたウエハWを囲むようにフォーカスリングFRが配置されている。フォーカスリングFRは、サセプタ114のフォーカスリング載置面116に載置されている。
【0046】
絶縁体112、サセプタ114、静電チャック120には、基板載置面115に載置されたウエハWの裏面に伝熱媒体(たとえばHeガスなどのバックサイドガス)を供給するためのガス通路が形成されている。この伝熱媒体を介してサセプタ114とウエハWとの間の熱伝達がなされ、ウエハWが所定の温度に維持される。
【0047】
サセプタ114の上方には、このサセプタ114に対向するように上部電極130が設けられている。この上部電極130とサセプタ114の間に形成される空間がプラズマ生成空間となる。上部電極130は、絶縁性遮蔽部材131を介して、処理室102の上部に支持されている。
【0048】
上部電極130は、主として電極板132とこれを着脱自在に支持する電極支持体134とによって構成される。電極板132はたとえば石英から成り、電極支持体134はたとえば表面がアルマイト処理されたアルミニウムなどの導電性材料から成る。
【0049】
電極支持体134には処理ガス供給源142からの処理ガスを処理室102内に導入するための処理ガス供給部140が設けられている。処理ガス供給源142は電極支持体134のガス導入口143にガス供給管144を介して接続されている。
【0050】
ガス供給管144には、たとえば
図2に示すように上流側から順にマスフローコントローラ(MFC)146および開閉バルブ148が設けられている。なお、MFCの代わりにFCS(Flow Control System)を設けてもよい。処理ガス供給源142からはエッチングのための処理ガスとして、たとえばC
4F
8ガスのようなフルオロカーボンガス(CxFy)が供給される。
【0051】
処理ガス供給源142は、たとえばプラズマエッチングのためのエッチングガスを供給するようになっている。なお、
図2にはガス供給管144、開閉バルブ148、マスフローコントローラ146、処理ガス供給源142等から成る処理ガス供給系を1つのみ示しているが、プロセスモジュールPMは、複数の処理ガス供給系を備えている。たとえば、CF
4、O
2、N
2、CHF
3等の処理ガスが、それぞれ独立に流量制御され、処理室102内に供給される。
【0052】
電極支持体134には、たとえば略円筒状のガス拡散室135が設けられ、ガス供給管144から導入された処理ガスを均等に拡散させることができる。電極支持体134の底部と電極板132には、ガス拡散室135からの処理ガスを処理室102内に吐出させる多数のガス吐出孔136が形成されている。ガス拡散室135で拡散された処理ガスを多数のガス吐出孔136から均等にプラズマ生成空間に向けて吐出できるようになっている。この点で、上部電極130は処理ガスを供給するためのシャワーヘッドとして機能する。
【0053】
上部電極130は電極支持体134を所定の温度に調整可能な電極支持体温調部137を備える。電極支持体温調部137は、たとえば電極支持体134内に設けられた温度調節媒体室138に温度調節媒体を循環するように構成されている。
【0054】
処理室102の底部には排気管104が接続されており、この排気管104には排気部105が接続されている。排気部105は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを備えており、処理室102内を所定の減圧雰囲気に調整する。また、処理室102の側壁にはウエハWの搬出入口106が設けられ、搬出入口106にはゲートバルブ108(
図1のGVに相当)が設けられている。ウエハWの搬出入を行う際にはゲートバルブ108を開く。そして、図示しない搬送アームなどによって搬出入口106を介してウエハWの搬出入を行う。
【0055】
上部電極130には、第1高周波電源150が接続されており、その給電線には第1整合器152が介挿されている。第1高周波電源150は、50~150MHzの範囲の周波数を有するプラズマ生成用の高周波電力を出力することが可能である。このように高い周波数の電力を上部電極130に印加することにより、処理室102内に好ましい解離状態でかつ高密度のプラズマを形成することができ、より低圧条件下のプラズマ処理が可能となる。第1高周波電源150の出力電力の周波数は、50~80MHzが好ましく、典型的には図示した60MHzまたはその近傍の周波数に調整される。
【0056】
下部電極としてのサセプタ114には、第2高周波電源160が接続されており、その給電線には第2整合器162が介挿されている。この第2高周波電源160は数百kHz~十数MHzの範囲の周波数を有するバイアス用の高周波電力を出力することが可能である。第2高周波電源160の出力電力の周波数は、典型的には2MHzまたは13.56MHz等に調整される。
【0057】
なお、サセプタ114には第1高周波電源150からサセプタ114に流入する高周波電流を濾過するハイパスフィルタ(HPF)164が接続されており、上部電極130には第2高周波電源160から上部電極130に流入する高周波電流を濾過するローパスフィルタ(LPF)154が接続されている。
【0058】
プロセスモジュールPMは、基板処理システム1の制御装置30に接続される。制御装置30は、プロセスモジュールPMの各部を制御する。制御装置30の入出力インタフェース33は、オペレータがプロセスモジュールPMを管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プロセスモジュールPMの稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を含む。
【0059】
また、記憶部31は、プロセスモジュールPMで実行される各種処理を制御装置30の制御にて実現するためのプログラムやプログラムを実行するために必要な処理条件(レシピ)などを記憶する。これらの処理条件は、プロセスモジュールPMの各部を制御する制御パラメータ、設定パラメータなどの複数のパラメータ値をまとめたものである。各処理条件はたとえば処理ガスの流量比、処理室内圧力、高周波電力などのパラメータ値を有する。なお、これらのプログラムや処理条件はハードディスクや半導体メモリに記憶されていてもよく、またCD-ROM、DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で記憶部31の所定位置にセットするようになっていてもよい。
【0060】
制御装置30は、入出力インタフェース33を介した指示等に基づいて所望のプログラム、処理条件を記憶部31から読み出して各部を制御することで、プロセスモジュールPMでの所望の処理を実行する。また、入出力インタフェース33からの操作により処理条件を編集できるようになっている。なお、プロセスモジュールPM毎に別個の制御装置を設けて、各制御装置とホスト装置とが通信することで基板処理システム1全体が制御されるように構成してもよい。
【0061】
(リフタピンと駆動機構の一例)
さらに、プロセスモジュールPMのサセプタ114には、
図3に示すように第1リフタピン172が基板載置面115から昇降自在に設けられるとともに、第2リフタピン182がフォーカスリング載置面116から昇降自在に設けられている。
図3は、
図2に示すサセプタ114の構成を説明するための斜視図である。具体的には
図2に示すように第1リフタピン172は第1駆動機構170によって駆動され、ウエハWを基板載置面115から持ち上げることができる。第2リフタピン182は第2駆動機構180によって駆動され、フォーカスリングFRをフォーカスリング載置面116から持ち上げることができる。
【0062】
第1駆動機構170および第2駆動機構180は、DCモータ、ステッピングモータ、リニアモータ等のモータ、ピエゾアクチュエータ、エア駆動機構等である。第1駆動機構170および第2駆動機構180は、各々、ウエハWの搬送およびフォーカスリングFRの搬送に適合した駆動精度を有する。
【0063】
プロセスモジュールPMのサセプタ114を支持する絶縁体112は環状に形成されており、第1リフタピン172は絶縁体112に囲まれたサセプタ114の下方から鉛直上方に延びて静電チャック120の上面である基板載置面115から昇降自在に設けられる。各第1リフタピン172は、サセプタ114と静電チャック120とを貫通して形成される孔部にそれぞれ挿入され、第1駆動機構170の駆動制御に応じて、
図3に示すように基板載置面115から昇降する。なお、第1駆動機構170は、上部に第1リフタピン172が等間隔に並んで配置される環状のベースに接続され、ベースを介して第1リフタピン172を駆動してもよい。第1リフタピン172の数は3本に限られない。また、第1リフタピン172の位置は、ウエハWの搬出入時にVTMアーム15と干渉しない位置であればよい。
【0064】
第2リフタピン182はサセプタ114の下方から鉛直上方に延びてフォーカスリング載置面116から昇降自在に設けられる。各第2リフタピン182は、サセプタ114の下方からフォーカスリング載置面116まで貫通して形成される孔部にそれぞれ挿入され、第2駆動機構180の駆動制御に応じて、
図3に示すようにフォーカスリング載置面116から昇降する。なお、第2駆動機構180は、上部に第2リフタピン182が等間隔に並んで配置される環状のベースに接続され、ベースを介して第2リフタピン182を駆動してもよい。また、複数の第2駆動機構180が各々一つの第2リフタピン182を駆動するように構成してもよい。第2リフタピン182の数は3本に限られない。第2リフタピン182の位置は、フォーカスリングFRの搬出入時にVTMアーム15と干渉しない位置であればよい。このような第2駆動機構180に接続されるベースは、第1駆動機構170に接続されるベースよりも大きな径で構成し、第1駆動機構170に接続されるベースよりも外側に配置される。これにより、第1駆動機構170および第2駆動機構180は相互に干渉することなく、各々独立して第1リフタピン172および第2リフタピン182を昇降させることができる。
【0065】
このように構成された第1駆動機構170によれば、各第1リフタピン172を上昇させることでウエハWを静電チャック120から持ち上げることができる。また,第2駆動機構180によれば、各第2リフタピン182を上昇させることでフォーカスリングFRをフォーカスリング載置面116から持ち上げることができる。
【0066】
なお、
図2の例では、フォーカスリングFRは一体的に形成しているが、2以上に分割されてよい。たとえば、消耗しやすい内径側を外径側と分離して2つの部材からなる構成としてもよい。この場合、内側フォーカスリングのみを第2リフタピン182で持ち上げて交換する構成としてもよい。
【0067】
(モード設定)
上記の構成を有する本実施形態の基板処理システム1は、以下のモード設定が可能である。
(1)ロードポートLPのアクセスモード
(2)各部のメンテナンスモード
(3)プロセスモジュールPMの処理モード
【0068】
(1)ロードポートLPのアクセスモード
アクセスモードは、ロードポートLPに対するFOUPの自動設置を受け付けるか否かを設定するモードである。アクセスモードとして、マニュアルモードとオートモードの2種類が設定される。マニュアルモード時は、基板処理システム1は、オペレータによる指示入力を条件としてFOUPの設置、取り外しを実行する。オートモード時は、基板処理システム1は、オペレータによる指示入力なしで、FOUPの設置、取り外しを実行する。
【0069】
たとえば、マニュアルモード時は、基板処理システム1は、天井走行式無人搬送車(Overhead Hoist Transfer: OHT)によるFOUPの設置および取り外しを受付けない。他方、基板処理システム1は、マニュアルモード時にオペレータの指示入力があった場合は、無人搬送車(Automated Guided Vehicle: AGV)によるFOUPの設置および取り外しを受け付ける。他方、オートモード時は、基板処理システム1は、オペレータの指示入力なしで、OHTによるFOUPの設置および取り外しを受け付ける。
【0070】
マニュアルモードはオペレータによる監視下でFOUPを設置し、取り外すことが必要である場合に選択される。本実施形態では、FR用FOUPの設置および取り外しは、マニュアルモードが選択されているときのみ実行可能とする。
【0071】
(2)各部のメンテナンスモード
メンテナンスモードは、基板処理システム1の各部の通常処理(製品ウエハWの処理)を停止してメンテナンスを実行する場合に設定される。メンテナンスモードは、協働して動作する一組のモジュールについてまとめて設定することができる。たとえば、常圧搬送室20とロードポートLP1~LP5すべてをまとめて、通常処理モードと、メンテナンスモードのいずれかに設定することができる。
【0072】
通常処理モードに設定されている時は、基板処理システム1の各部は予め設定された処理フローに基づき自動的に動作する。他方、メンテナンスモードに設定されている時は、基板処理システム1の各部は、オペレータの入力に応じて動作する。
【0073】
(3)プロセスモジュールPMの処理モード
プロセスモジュールPMの処理モードとは、製品ウエハWの処理たとえばプラズマ処理の実行を指定するモードである。処理モードとして、プロダクションモードとノンプロダクションモードの二つを設定することができる。プロダクションモードのときは、基板処理システム1は、当該プロセスモジュールPMにおいて製品ウエハWに対してプラズマ処理を行うことができる。他方、ノンプロダクションモードのときは、基板処理システム1は、当該プロセスモジュールPMにおいて製品ウエハWに対してプラズマ処理を実行することができない。本実施形態の基板処理システム1は、消耗部品の交換処理の実行時に、当該消耗部品が配置されているプロセスモジュールPMをノンプロダクションモードに移行させる。当該消耗部品を交換した後に、当該プロセスモジュールPMはプロダクションモードに移行し製品ウエハWのプラズマ処理を再開する。
【0074】
(実施形態に係る搬送処理の流れの一例)
図4は、一実施形態に係る消耗部品の搬送処理の流れについて説明するための図である。
図4においては、左側にオペレータが実行する処理を、右側に基板処理システム1(制御装置30)が実行する処理を示す。ただし、
図4においてオペレータが実行するものとして表示する処理は適宜、基板処理システム1の各部により自動的に実行するように構成してもよい。
【0075】
まず、基板処理システム1は、消耗部品の交換タイミング通知処理を実行する(ステップS21、
図5参照)。たとえば、基板処理システム1は、フォーカスリングFRの交換タイミングか否かを判定する。そして、基板処理システム1は、フォーカスリングFRの交換タイミングであると判定すると、交換タイミングであることを知らせる通知をオペレータに送信する(ステップS22)。たとえば、基板処理システム1は、制御装置30の表示部34に交換タイミングの到来を示す情報を表示する。
【0076】
情報を確認したオペレータは、基板処理システム1のロードポートLPにFR用FOUPが設置済みか否かを確認する。FR用FOUPが設置されていない場合、オペレータはFR用FOUPを設置するための処理を実行する(ステップS23、
図6参照)。
【0077】
基板処理システム1は、FR用FOUPが設置されたことをセンサおよび読取部等によって検知し、記憶部31にFR用FOUPの設置完了を記憶する(ステップS24、
図5参照)。FR用FOUPが設置されると、基板処理システム1は、オペレータに対してフォーカスリングFRの交換予約が可能であることを通知する。たとえば、基板処理システム1は、表示部34上に、交換予約を受け付ける画面を表示する。
【0078】
オペレータは、基板処理システム1に対して所定の入力を実行することで、フォーカスリングFRの交換予約を実行する(ステップS25)。基板処理システム1は、オペレータの入力に応じて、フォーカスリングFRの交換予約が完了した旨を記憶部31に記憶する(ステップS26)。また、基板処理システム1は、フォーカスリングFRの交換予約中であることをオペレータに通知する(ステップS27)。たとえば、基板処理システム1は表示部34上に交換予約中である旨の表示をする。
【0079】
また、基板処理システム1は、交換予約が実行されると、交換タイミングの通知に使用するカウンタをクリア(リセット)する(ステップS28)。カウンタのクリアはオペレータの入力に応じて実行しても(ステップS29)、交換予約が実行されると基板処理システム1が自動的に実行してもよい。
【0080】
また、基板処理システム1は、所定の条件が満足されると、フォーカスリングFRの交換を開始する(ステップS30)。基板処理システム1は、フォーカスリングFRの交換を開始すると、交換中であることをオペレータに通知する(ステップS31)。たとえば、基板処理システム1は、表示部34上に交換中である旨の表示をする。
【0081】
また、基板処理システム1は、フォーカスリングFRの交換が終了すると(ステップS32)、交換が終了したことをオペレータに通知する(ステップS33)。たとえば、基板処理システム1は、表示部34上に表示していた交換中である旨の表示を消去する。
【0082】
オペレータは、FR用FOUPに収容されている未使用のフォーカスリングFRがなくなった場合、FR用FOUPの取り外し処理を実行する(ステップS34)。基板処理システム1は、取り外し処理が実行されたことを検知して、処理を終了する(ステップS35)。これが、基板処理システム1における消耗部品の搬送処理の流れである。なお、
図4に示す処理の流れは一例であって、
図4とは異なる順序で各ステップを実行しても、他の処理を付加的に実行してもよい。
【0083】
(表示画面の一例)
上記のように構成した基板処理システム1の表示部34は、各プロセスモジュールPMの状態等を画面に表示する。表示部34は、たとえばグラフィカルユーザインタフェース(GUI)画面を表示する。オペレータは、表示部34により表示されるGUIを見ながら入力操作を行うことで、各部の処理や消耗部品の交換タイミングを設定できる。
【0084】
表示部34は、ロードポートLP1~LP5のうち、ウエハ用FOUPを取り付け可能なロードポートLP1、LP3、LP5とウエハ用、FR用のいずれのFOUPも取り付け可能なロードポートLP2、LP4とを相互に識別可能な態様で表示する。
【0085】
表示部34はまた、ウエハ用FOUPが接続済みのロードポートLPと、ウエハ用FOUPが未接続のロードポートLPとを識別可能な態様で表示する。表示部34はまた、FR用FOUPが接続済みのロードポートLPと、FR用FOUPが未接続のロードポートLPとを識別可能な態様で表示する。
【0086】
表示部34はまた、ロードポートLPに接続されているウエハ用FOUPに収容されているウエハWの数および収容位置を識別可能に表示する。表示部34はまた、ウエハ用FOUPに収容されているウエハWのうち、処理済みのウエハWの数と未処理のウエハWの数とをそれぞれ識別可能に表示する。表示部34はまた、ロードポートLPに接続されているFR用FOUPに収容されているフォーカスリングFRの数を識別可能に表示する。表示部34はまた、FR用FOUPに収容されているフォーカスリングFRのうち、未使用のフォーカスリングFRの数と、使用済みのフォーカスリングFRの数とをそれぞれ識別可能に表示する。
【0087】
表示部34はまた、プロセスモジュールPMに設定されている各種モード、レシピ等の処理条件を表示する。表示部34は、オペレータの入力に応じて、表示画面を切り替える。オペレータは指示入力により、プロセスモジュールPM毎の個別画面、基板処理システム1全体の状態を表示する全体画面等を切り替えて表示部34に表示させることができる。
【0088】
(交換タイミング通知処理の流れの一例)
次に、
図4に示した各処理の詳細について説明する。まず、交換タイミング通知処理(ステップS21)について説明する。
【0089】
上述したように、実施形態に係る基板処理システム1は、フォーカスリングFRの交換タイミングに到達したか否かを判定する。そして、基板処理システム1は、交換タイミングに到達したと判定すると、交換タイミングに達したことをオペレータに通知する。
【0090】
ここで、基板処理システム1は、予め定められたパラメータに基づき、フォーカスリングFRの交換タイミングが到来したか否かを判定する。そして基板処理システム1は、予め設定したパラメータが閾値に達すると、交換タイミングが到来したと判定する。
【0091】
たとえば、基板処理システム1において、予め制御装置30の記憶部31に、判定のためのパラメータおよび当該パラメータの閾値等、を記憶しておく。パラメータはたとえば、フォーカスリングFRを交換した後にプロセスモジュールPMが実行したプラズマ処理の回数、実行したプラズマ処理の時間の長さ(放電時間)、処理したウエハWの枚数、フォーカスリングFRのプラズマへの暴露時間等である。たとえば、パラメータをフォーカスリングFR交換後のプラズマ処理の実行回数とし、閾値を4000回とすることができる。また、複数種類の消耗部品について各々異なるパラメータおよび閾値を設定してもよい。また、消耗部品の交換だけでなく、クリーニングや部品のリグリースを防止するためのメンテナンス等、他のメンテナンス項目に対応付けて、パラメータと閾値とを設定してもよい。また、複数のプロセスモジュールPMが同一の消耗部品を備える場合、プロセスモジュールPM毎に異なるパラメータおよび閾値を設定してもよい。パラメータおよび閾値は予め基板処理システム1に設定してもよく、オペレータが設定入力してもよい。また、基板処理システム1内ではメンテナンスの実行タイミングの判定を行わずに、外部装置たとえばホスト装置から受信した通知に応じた情報を表示するように基板処理システム1を構成してもよい。
【0092】
図5は、一実施形態の基板処理システム1における交換タイミング通知の流れの一例を示すフローチャートである。まず、オペレータが交換タイミングの判定に用いるパラメータと当該パラメータの閾値を、基板処理システム1に入力する。基板処理システム1は、入力に応じてパラメータと閾値を設定する(ステップS51)。そして、基板処理システム1は、パラメータたとえばウエハWの処理枚数をカウントする。基板処理システム1は、カウント値が設定された閾値に到達したか否かを判定する(ステップS52)。閾値に到達していないと判定した場合(ステップS52、No)、基板処理システム1は、ステップS52の判定を繰り返す。他方、閾値に到達したと判定した場合(ステップS52、Yes)、基板処理システム1は、交換タイミングが到来した旨の通知を送信する(ステップS53)。たとえば、基板処理システム1は、交換タイミングの通知を表示部34に表示する。そして、基板処理システム1は、カウンタをリセットする旨の指示があったか否かを判定する(ステップS54)。リセットする旨の指示がないと判定した場合(ステップS54、No)、基板処理システム1はステップS54の判定を繰り返す。他方、リセットする旨の指示があったと判定した場合(ステップS54、Yes)、基板処理システム1は、カウンタをリセットする(ステップS55)。そして、基板処理システム1は、ステップS52に戻って処理を繰り返す。
【0093】
(FR用FOUP設置処理の流れの一例)
次に、FR用FOUPを設置するための処理(
図4、ステップS23,S24)の流れの一例について説明する。
図6は、一実施形態の基板処理システム1におけるFR用FOUPの設置の流れの一例を示すフローチャートである。
【0094】
上述の通り、実施形態の基板処理システム1は、ウエハ用、FR用いずれのFOUPも設置可能なロードポートLP2、LP4と、ウエハ用FOUPを設置可能なロードポートLP1、LP3、LP5と、を識別可能に表示する。表示部34はたとえば、FR用FOUPを設置可能なロードポートLPと、ウエハ用FOUPを設置可能なロードポートLPとを、異なる色で表示する。
【0095】
まず、オペレータは、基板処理システム1の表示部34が表示する画面上でFR用FOUPを設置する対象ロードポート(たとえばロードポートLP4)を指定する。そしてオペレータは対象ロードポートLP4のアクセスモードをマニュアルモードに設定する(ステップS701)。
【0096】
オペレータがロードポートLP4をマニュアルモードに設定すると、基板処理システム1は、設定されたモードを検知し(ステップS702)、ロードポートLP4に対応付けて記憶部31に記憶されているアクセスモードをマニュアルモードに変更する。
【0097】
オペレータは次に、たとえばAGVを操作して、FR用FOUPを対象ロードポートであるロードポートLP4に載置する(ステップS703)。そして、オペレータは、基板処理システム1に対して、FR用FOUP設置の指示を入力する(ステップS704)。基板処理システム1は、指示入力を検知する(ステップS705)。
【0098】
基板処理システム1は、指示入力を検知すると、まず、FR用FOUPをロードポートLP4に係止する(ステップS706)。FR用FOUPがロードポートLP4に係止されると、ロードポートLP4が備える読取部が、FR用FOUPのキャリアIDを読み取る。読取部が読み取ったキャリアIDは、制御装置30の処理部32に送信され、処理部32は、当該キャリアIDがFR用FOUPのキャリアIDであるか否かを判定し、キャリアIDを認証する(ステップS707)。ロードポートLP4はFR用FOUP用のロードポートであるため、キャリアIDがウエハ用FOUPのキャリアIDである場合は、処理部32は、設置不可の旨をオペレータに通知する。たとえば、処理部32は、表示部34に設置不可の通知を表示させる。他方、読み取ったキャリアIDがFR用FOUPのキャリアIDである場合は、処理部32は、当該キャリアIDを認証する。認証されたキャリアIDは、ロードポートLP4に対応付けて記憶部31に記憶される。また、処理部32は、認証したキャリアIDに応じてマッピングセンサMSの閾値を設定する。
【0099】
キャリアIDが認証されると、基板処理システム1は次に、載置されたFR用FOUPをロードポートLP4に接続する(ステップS708)。FR用FOUPの接続が完了すると、基板処理システム1は、FR用FOUPの蓋を開けてロードポートLP4のドアを開き、FR用FOUP内と常圧搬送室20内とを連通させる(ステップS709)。FR用FOUPの蓋が開くと、マッピングセンサMSは、FR用FOUP内のフォーカスリングFRのマッピングを実行する(ステップS710)。マッピングセンサMSは、FR用FOUP内のフォーカスリングFRの位置と数とを検知する。このとき、マッピングセンサMSは、フォーカスリングFRのサイズに適合したキャリブレーション(較正用の基準値、閾値)に基づき検知を実行する。マッピングセンサMSは、検知したフォーカスリングFRの位置と数とを、制御装置30に通知する。制御装置30は、通知されたフォーカスリングFRの位置と数とを記憶部31に記憶する。そして、制御装置30は、フォーカスリングFRの位置と数とを表示部34に表示させて画面を更新する(ステップS711)。これでFR用FOUP設置処理が完了する。
【0100】
FR用FOUPが設置される際には、表示部34は、設置の各段階に応じて表示画面を更新する。表示部34は、FR用FOUPが未設置のロードポート(第1の状態)と、FR用FOUPが接続済みだがフォーカスリングFRのマッピングが完了していないロードポート(第2の状態)と、を異なる態様で表示する。また、表示部34は、第1の状態および第2の状態のロードポートと、FR用FOUPが接続済みかつフォーカスリングFRのマッピングが完了しているロードポート(第3の状態)と、を異なる態様で表示する。
【0101】
(FR用FOUPの取り外し処理の流れの一例)
次に、FR用FOUPを取り外す時の処理の流れ(
図4、ステップS34、S35)の一例について説明する。
図7は、一実施形態の基板処理システム1におけるFR用FOUP取り外し処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0102】
オペレータは、まず表示画面上で対象ロードポート(たとえばロードポートLP4)を指定する。そして、オペレータは、FR用FOUPの取り外しの指示を入力する(ステップS901)。
【0103】
基板処理システム1は、オペレータからの指示を受け付ける(ステップS902)。指示を受け付けると、基板処理システム1はまず、対象となるFR用FOUPの蓋を閉じる(ステップS903)。そして、基板処理システム1は、当該FR用FOUPとロードポートLP4との接続を解除する(ステップS904)。さらに、基板処理システム1は、当該FR用FOUPの係止を解除する(ステップS905)。係止を解除すると、基板処理システム1は、FR用FOUPの取り外しが完了したことをオペレータに通知する(ステップS906)。たとえば、基板処理システム1は、表示部34に取り外し完了の旨を表示する。オペレータは、基板処理システム1の通知を受けて、AGVを操作してFR用FOUPをロードポートLP4から取り外して搬送する(ステップS907)。オペレータは搬送が完了すると、基板処理システム1に所定の指示入力をする(ステップS908)。基板処理システム1は、オペレータの指示入力を受信すると、FR用FOUPの取り外しが完了した旨を記憶部31に記憶し、画面を更新する(ステップS909)。これでFR用FOUPの取り外しが完了する。
【0104】
なお、表示部34は、FOUPの取り外し処理中(第4の状態)のロードポートLPを、上記第1から第3の状態のいずれとも異なる態様で表示してもよい。
【0105】
(FR用FOUP設置処理の変形例1)
上記説明においては、ロードポートLPの読取部がFR用FOUPのキャリアIDを読み取り、処理部32が認証を行って記憶部31に記憶するものとした。しかし、各FOUPに予めキャリアIDが付与されていない場合もある。そこで、FOUPの設置時にキャリアIDをオペレータが入力できるように基板処理システム1を構成してもよい。
【0106】
たとえば、記憶部31に予めオペレータの入力を受け付けるキャリアID入力画面の情報を記憶する。
図6の処理が開始して、オペレータがFOUP設置の指示を基板処理システム1に入力する(ステップS704)と、基板処理システム1は、ステップS705~S706を実行する。その後、基板処理システム1は、ステップS707において、キャリアIDを読み取るのではなくキャリアID入力画面を表示する。オペレータはキャリアID入力画面において、対象ロードポートLPと、当該対象ロードポートLPへの設置処理中のFOUPのキャリアIDと、を特定する情報を入力する。キャリアID入力画面にキャリアIDが入力された場合、当該キャリアIDがFR用FOUPのIDかウエハ用FOUPのIDかを処理部32が識別する。識別結果は記憶部31に記憶する。このように、
図6の処理中、ステップS707に代えて、キャリアID入力画面の表示と、キャリアIDの入力受付と、キャリアIDの認証とを基板処理システム1が実行する。キャリアIDの入力および認証後の処理は、
図6の処理(ステップS708以降)と同様である。
【0107】
なお、ステップS707において、基板処理システム1がキャリアIDの読み取りに失敗した場合に、キャリアID入力画面を表示するように構成してもよい。
【0108】
(FR用FOUPの設置処理の変形例2)
上記説明においては、基板処理システム1は、キャリアIDによってFR用FOUPとウエハ用FOUPとを識別するものとした。これに限らず、FR用FOUPとウエハ用FOUPを、オペレータの入力に基づいて識別するように基板処理システム1を構成してもよい。
【0109】
たとえば、上記変形例1と同様に、記憶部31に予めオペレータの入力を受け付ける入力画面の情報を記憶する。
図6の処理が開始して、オペレータがFOUP設置の指示を基板処理システムに入力する(ステップS704)と、基板処理システム1は、ステップS705~706を実行する。その後、基板処理システム1は、ステップS707において、キャリアIDを読み取るのではなく入力画面を表示する。変形例2の入力画面は、変形例1とは異なり、オペレータにFOUPの種類を指定させる。オペレータは、入力画面において、ロードポートに設置中のFOUPがウエハ用FOUPかFR用FOUPかを指定する情報を入力する。たとえば、
図6の処理中、ステップS707に代えて、FOUPの種類とキャリアIDとの入力画面の表示と、入力内容の受付と、を基板処理システム1が実行する。その後の処理は、
図6の処理(ステップS708以降)と同様である。
【0110】
変形例2の入力画面は、基板処理システム1がキャリアIDの読み取りに失敗した場合に表示するように構成してもよい。また、変形例2の入力画面は、変形例1のキャリアID入力画面に入力された情報が無効であった場合に表示するように構成してもよい。
【0111】
上記のように構成することで、キャリアIDが付与されていないFOUPが設置された場合や、オペレータが入力を誤った場合も、基板処理システム1はオペレータの注意を喚起して、処理を遅滞させることなく進めることができる。
【0112】
(交換予約処理の流れの一例)
次に、フォーカスリングFRの交換予約処理の流れ(
図4、ステップS25~ステップS27)の一例について説明する。
【0113】
ここで、交換予約とは、交換タイミングが到来しているフォーカスリングFR等の消耗部品の交換を実行するよう基板処理システム1に指示する処理を指す。本実施形態では、消耗部品の交換は、オペレータにより交換予約が実行された場合に基板処理システム1が実行する。ただし、交換タイミングが到来すれば自動的に交換処理を開始するよう基板処理システム1を構成してもよい。この場合は、交換予約処理は省略する。
【0114】
(交換予約処理の実行可能タイミング)
本実施形態では、交換予約処理は、ロードポートLPへのFR用FOUPの設置が完了しているときに可能となる。ロードポートLPにFR用FOUPが設置されていないときは、基板処理システム1は、交換予約処理を実行できない。または、基板処理システム1は、オペレータが交換予約処理を実行しようとした場合、エラー表示を実行する。
【0115】
図8Aは、一実施形態の基板処理システム1における交換予約処理の流れの一例を示すフローチャートである。オペレータはまず、基板処理システム1に対して交換予約画面の表示を要求する指示入力を行う(ステップS1301)。基板処理システム1は、指示入力に応じて交換予約画面を表示する(ステップS1302)。FR用FOUPが未設置の場合は、基板処理システム1はエラー表示を行い処理を終了する。交換予約画面はたとえば、交換タイミングが到来している消耗品と、当該消耗品が配置されているプロセスモジュールPMの一覧と、交換予約の入力ボタンと、を対応付けて表示する。交換予約画面が表示された場合、オペレータは、交換予約画面上で交換予約の入力を実行する(ステップS1303)。たとえば、オペレータは画面上の所定のボタンを押下する。基板処理システム1は、オペレータの入力を受け付けると、交換予約に関する警告画面を表示する(警告表示、ステップS1304)。警告画面は、交換処理を実行するタイミング等を通知する。警告画面上でオペレータが確認入力を実行すると(ステップS1305)、基板処理システム1は交換予約を実行する。すなわち、基板処理システム1は、交換予約対象のプロセスモジュールPMに対応付けて交換予約を記憶部31に記憶する(ステップS1306)。そして、基板処理システム1は、「交換予約中」のメッセージと対象となるプロセスモジュールPMとを対応付けて表示部34に表示させる(ステップS1307)。これで交換予約処理が完了する。
【0116】
図8Bは、一実施形態の基板処理システム1における交換予約キャンセル処理の流れの一例を示すフローチャートである。基板処理システム1は、交換予約が実行された後も、オペレータの入力に応じて交換予約をキャンセルする処理を実行する。
【0117】
オペレータはまず、交換予約キャンセル画面の表示指示を、基板処理システム1に入力する(ステップS1308)。オペレータの入力に応じて、基板処理システム1は交換予約キャンセル画面を表示する(ステップS1309)。交換予約キャンセル画面は、交換予約中のロードポートLPを表示する。また、交換予約キャンセル画面は、ロードポートLPに対応付けて、交換予約キャンセルの入力ボタンを表示する。たとえば、交換予約キャンセル画面は、交換予約中のプロセスモジュールPMと、交換対象の消耗品と、キャンセルボタンとを対応付けて表示する。オペレータは、交換予約キャンセル画面上で、交換予約のキャンセル入力を実行する(ステップS1310)。たとえば、オペレータは、交換予約キャンセル画面上でキャンセルボタンを押下する。基板処理システム1は、オペレータの入力に応じて、対応するプロセスモジュールPMおよび消耗部品に対応付けて記憶されていた交換予約を記憶部31から消去する(ステップS1311)。そして、基板処理システム1は、表示中の「交換予約中」のメッセージを消去する(ステップS1312)。これで交換予約キャンセル処理が完了する。
【0118】
(交換処理の流れの一例)
次に、消耗部品の交換処理(
図4、ステップS30~S33)の流れの一例について説明する。
図9は、一実施形態の基板処理システム1における交換処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0119】
交換予約が記憶部31に記憶されている場合、まず、基板処理システム1は、対象となるプロセスモジュールPMの状態を検知する。対象プロセスモジュールPMにおいて処理が実行されている間は、基板処理システム1は交換処理の実行を待機させる。対象プロセスモジュールPMの処理が終了してアイドル状態へ遷移すると(ステップS1501)、基板処理システム1は対象プロセスモジュールPMのモードをノンプロダクションモードに変更する(ステップS1502)。そして、基板処理システム1は、対象プロセスモジュールPMのモード変更を記憶部31に記憶する(ステップS1503)。基板処理システム1は、表示部34に表示中の「交換予約中」の表示を「交換中」に変更する(ステップS1504)。基板処理システム1は、交換経路を確保するための処理を実行する(ステップS1505)。交換経路を確保するための処理の詳細は
図10を参照して後述する。そして、基板処理システム1は交換を実行する(ステップS1506)。ステップS1506において交換を実行するとき、基板処理システム1は、使用済みのフォーカスリングFRのプロセスモジュールPMからの搬送と、未使用のフォーカスリングFRのFR用FOUPからの搬送を並行して実行する。交換が完了すると、基板処理システム1は、対象プロセスモジュールPMのモードをプロダクションモードに変更する(ステップS1507)。そして、基板処理システム1は、対象プロセスモジュールPMのモード変更を記憶部31に記憶する(ステップS1508)。基板処理システム1は、表示部34に表示していた「交換中」の表示を消去する(ステップS1509)。これで交換処理が終了する。
【0120】
(交換経路を確保するための処理)
基板処理システム1は、フォーカスリングFRの交換を開始する前に、真空搬送室10、ロードロックモジュールLLMおよび常圧搬送室20内の交換経路を確保する(
図9のステップS1505)。
図10は、一実施形態の基板処理システム1における交換経路確保処理の流れを示すフローチャートである。
【0121】
まず、基板処理システム1は、搬送経路上にウエハWが存在するか否かを判定する(ステップS1101)。搬送経路とは、真空搬送室10、ロードロックモジュールLLMおよび常圧搬送室20内を指す。基板処理システム1は、搬送経路上にウエハWまたはフォーカスリングFRがないと判定した場合(ステップS1101、No)、プロセスモジュールPM内で処理中のウエハWがあるか否かを判定する(ステップS1102)。処理中のウエハWがあると判定した場合(ステップS1102、Yes)、基板処理システム1は、当該プロセスモジュールPMでの処理が終了したときに次の工程の開始を待機させるよう処理の割込みを行う(ステップS1103)。たとえば、基板処理システム1は、処理の終了後、交換処理が完了するまで、処理済みのウエハWをプロセスモジュールPM内で待機させる。そして、基板処理システム1はフォーカスリングFRの交換を実行する(ステップS1104)。他方、処理中のウエハWがないと判定した場合(ステップS1102、No)、基板処理システム1はフォーカスリングFRの交換を実行する(ステップS1104)。
【0122】
他方、搬送経路上にウエハWがあると判定した場合(ステップS1101、Yes)、基板処理システム1は、当該ウエハWが処理前のウエハか否かを判定する(ステップS1105)。処理前のウエハであると判定した場合(ステップS1105、Yes)、基板処理システム1は、処理を実行するプロセスモジュールPMに当該ウエハWを搬送する(ステップS1106)。
【0123】
ステップS1105に戻り、処理後のウエハであると判定した場合(ステップS1105、No)、基板処理システム1は、当該ウエハWについての処理がすべて終了しているか否かを判定する(ステップS1107)。すべて終了していると判定した場合(ステップS1107、Yes)、基板処理システム1は、当該ウエハWが収容されていたウエハ用FOUPまで当該ウエハWを戻す(ステップS1108)。他方、全ては終了していないと判定した場合(ステップS1107、No)、基板処理システム1は、当該ウエハを次に処理するプロセスモジュールPMまで搬送する(ステップS1109)。そして、処理を実行してよい。ステップS1106、ステップS1108およびステップS1109の後、処理はステップS1104に進み、基板処理システム1は交換を実行する。
【0124】
なお、
図10の例においては、処理前のウエハWがいったんFOUPから搬出された後は、ウエハ用FOUPに戻さずに搬送先のプロセスモジュールPMに搬送するものとした(ステップS1106参照)。ただし、ウエハ用FOUPに戻した方が処理効率が上がる場合等は、処理前のウエハWはウエハ用FOUPに戻すものとしてもよい。また、処理前のウエハWがプロセスモジュールPMに搬入され、ゲートバルブGVを閉じた後は、フォーカスリングFRの交換中に当該ウエハWの処理をプロセスモジュールPM内で実行してもよい。また、交換経路を確保する処理の時に既にプロセスモジュールPM内でウエハWの処理が実行中の場合は、フォーカスリングFRの交換中も当該処理を継続してよい。すなわち、フォーカスリングFRの搬出入対象の真空処理室(プロセスモジュールPM)におけるフォーカスリングFRの搬出入と、搬出入対象以外の真空処理室におけるウエハWの真空処理とは、並行して実行してよい。
【0125】
また、
図10のステップS1104を開始する前に、サセプタ114(下部電極)の温度が所定温度に到達するまで待機するものとしてもよい。ウエハWのプラズマ処理時にはプロセスモジュールPM内は高温になるため、搬送経路が確保できた場合でも、プロセスモジュールPM内のフォーカスリングFRは高温の場合がある。フォーカスリングFRが高温である場合、フォーカスリングFRをサセプタ114から持ち上げる際に熱膨張により静電チャック120に接触する可能性がある。また、フォーカスリングFRが高温であると、VTMアーム15およびLMアーム25が保持して搬送するときに滑りやすくなる可能性がある。よって、
図10のステップS1104の前に、プロセスモジュールPMの温度が所定温度(常温、たとえば20℃±15℃の範囲内の温度)であるか否かを検知して、所定温度になるまで処理を待機してもよい。
【0126】
(交換実行処理)
図11は、一実施形態の基板処理システム1における交換について説明するための図である。基板処理システム1は、フォーカスリングFRの交換のための経路が確保されると、次に交換を実行する(
図9のステップS1506)。実施形態においては、交換中、基板処理システム1は、使用済みのフォーカスリングFRの搬送と、未使用のフォーカスリングFRの搬送とを並行して実行する。
図11の例では、プロセスモジュールPM1に配置されている使用済みのフォーカスリングFRを、ロードポートLP4に配置されているFR用FOUP内の未使用のフォーカスリングFRと交換する。
【0127】
この場合、基板処理システム1はまず、
図9のステップS1501~S1505を実行して、交換経路を確保する。基板処理システム1は、交換経路が確保されていることを確認すると、一方でVTMアーム15を動作させて、プロセスモジュールPM内のフォーカスリングFRを保持させる。他方、基板処理システム1はLMアーム25を動作させて、FR用FOUP内のフォーカスリングFRを保持させる。そして、基板処理システム1は、使用済みのフォーカスリングFRのVTMアーム15による搬送(
図11、(1))と、未使用のフォーカスリングFRのLMアーム25による搬送(
図11、(2))とを並行して実行する。使用済みのフォーカスリングFRはロードロックモジュールLLM2に搬送される(
図11、(3))。基板処理システム1は、使用済みのフォーカスリングFRが搬送されたロードロックモジュールLLM2を大気開放する。他方、未使用のフォーカスリングFRはロードロックモジュールLLM1に搬送される(
図11、(4))。基板処理システム1は、未使用のフォーカスリングFRが搬送されたロードロックモジュールLLM1の真空引きを実行する。基板処理システム1はさらに、ロードロックモジュールLLM1に載置された未使用のフォーカスリングFRをVTMアーム15に保持させる。他方、基板処理システム1は、ロードロックモジュールLLM2に載置された使用済みのフォーカスリングFRをLMアーム25に保持させる。そして、基板処理システム1は、使用済みのフォーカスリングFRのLMアーム25による搬送(
図11、(5))と、未使用のフォーカスリングFRのVTMアーム15による搬送(
図11、(6))とを並行して実行する。こうして、未使用のフォーカスリングFRはプロセスモジュールPM1内に搬送される。また、使用済みのフォーカスリングFRはFR用FOUP内に搬送される。なお、交換中は、通常の製品ウエハWの搬送は実行しない。
【0128】
図12は、一実施形態の基板処理システム1によってフォーカスリングFRを交換した場合のダウンタイムの短縮効果について説明するための図である。
【0129】
図12は、使用済みのフォーカスリングFRと未使用のフォーカスリングFRとをそれぞれ搬送する場合の所要時間の一例を示す。FR用FOUP内に収容されたフォーカスリングFRをLMアーム25が把持するために要する時間は約25秒である。その後、LMアームがロードロックモジュールLLM内にフォーカスリングFRを配置するまでに要する時間は約25秒である。さらに、ロードロックモジュールLLMのゲートバルブを閉じて真空引きを行うために約10秒間かかる。そして、ロードロックモジュールLLMからVTMアーム15がフォーカスリングFRを把持するまでに約25秒を要する。さらに、VTMアーム15が把持しているフォーカスリングFRをプロセスモジュールPM内に配置するために約25秒かかる。その後、プロセスモジュールPM内に配置されたフォーカスリングFRを支持している第2リフタピン182を下してフォーカスリングFRを定位置に配置し、ゲートバルブGVを閉じるのに約10秒かかる。また、ロードロックモジュールLLMを連続的に動作させるための待機時間として約20秒を要する。このため、フォーカスリングFRをFOUPからプロセスモジュールPMに搬送するために約140秒を要する。
【0130】
他方、使用済みのフォーカスリングFRをプロセスモジュールPMからFOUPに搬送する場合の所要時間は以下のようになる。まず、プロセスモジュールPM内のフォーカスリングFRをVTMアーム15によって把持するまでに約25秒かかる。そして、VTMアーム15は、把持したフォーカスリングFRをロードロックモジュールLLMに配置するまでに約25秒かかる。そして、フォーカスリングFRが配置された状態のロードロックモジュールLLMの減圧雰囲気を大気解放するために約10秒を要する。ロードロックモジュールLLMが大気雰囲気になった後、ロードロックモジュールLLMの常圧搬送室20側のゲートバルブを解放する。そして、ロードロックモジュールLLMからLMアーム25によりフォーカスリングFRを把持するのに約25秒かかる。LMアーム25は、把持したフォーカスリングFRをロードポートLPへと搬送し、FOUP内に配置する。この処理に約25秒かかる。また、ロードロックモジュールLLMを連続的に動作させるための待機時間として約20秒を要する。このため、使用済みのフォーカスリングFRの回収には、約130秒を要することになる。
【0131】
仮に、上記交換処理において、使用済みのフォーカスリングFRの回収処理を実行した後に、未使用のフォーカスリングFRをプロセスモジュールPM内に搬送するとすれば、処理に必要な時間は約140秒+約130秒=約270秒となる。これに対し、本実施形態のように、使用済みのフォーカスリングFRの回収と、未使用のフォーカスリングFRの搬送とを並行して実行した場合、交換処理は約140秒で完了することができる。このため、本実施形態の基板処理システム1は、消耗部品の交換によるダウンタイムを大幅に短縮することができる。
【0132】
また、交換の間も、真空搬送室10内の減圧状態は維持されるため、交換処理の対象プロセスモジュールPM以外のプロセスモジュールPM内では処理を継続することができる。たとえば、プロセスモジュールPM内で実行する処理1回あたりの所要時間が140秒以上であれば、交換処理の対象ではないプロセスモジュールPMにおける処理は停止することなく、消耗部品の交換を実行することができる。また、プロセスモジュールPM内で実行する処理1回あたりの所要時間が140秒未満の場合には、処理済みのウエハWはプロセスモジュールPM内に待機させる。このため、真空搬送室10内に製品ウエハWとフォーカスリングFRが同時に存在して汚染等が発生することを防止できる。
【0133】
(交換処理における搬送時のパラメータ設定)
実施形態に係る基板処理システム1は、ウエハWおよびフォーカスリングFRの搬送時に、各々の大きさおよび形状に応じてVTMアーム15、LMアーム25、第1リフタピン172、第2リフタピン182、支持ピン等の制御態様を変更する。たとえば基板処理システム1は、次のパラメータを変更する。
(1)VTMアーム15およびLMアーム25の駆動速度
(2)プロセスモジュールPM内の第2リフタピン182の駆動速度
【0134】
(1)VTMアーム15およびLMアーム25の駆動速度
基板処理システム1のVTMアーム15およびLMアーム25は、通常の製品ウエハWの処理時はウエハWの搬送に適合するよう調整されている。これに対し、交換中は、VTMアーム15およびLMアーム25を、フォーカスリングFRの搬送に適合するように調整する。このため、交換を開始する前に、基板処理システム1は、VTMアーム15およびLMアーム25の駆動速度を切り替える。
【0135】
たとえば、基板処理システム1は、交換が開始すると(
図9のステップS1506開始時)、VTMアーム15およびLMアーム25の駆動速度を、通常の製品ウエハWの処理時の駆動速度とは異なる速度に切り替える。たとえば、基板処理システム1は、VTMアーム15およびLMアームの駆動速度を、ウエハW搬送時の駆動速度よりも低速に切り替える。これは、フォーカスリングFRはリング形状で保持できる面積が少ないため、ウエハWと比較してVTMアーム15およびLMアーム25上で位置ずれが生じやすいためである。たとえば、基板処理システム1の記憶部31に予め設定可能なVTMアーム15およびLMアーム25の駆動速度を設定しておく。そして、交換処理時と通常の製品ウエハW搬送時とで、駆動速度を切り替えるように基板処理システム1を構成する。また、駆動速度は、オペレータが手動で設定できるようにしてもよい。
【0136】
(2)プロセスモジュールPM内の第2リフタピンの駆動速度
また、基板処理システム1は、プロセスモジュールPM内の第2リフタピン182の駆動速度をフォーカスリングFRに適合するように設定する。たとえば、基板処理システム1は、予め機械学習により第2リフタピン182の駆動速度を学習し記憶する。
図13Aは、一実施形態の基板処理システム1におけるフォーカスリングFR搬入時の第2リフタピン182の動作について説明するための図である。
図13Bは、一実施形態の基板処理システム1におけるフォーカスリングFR搬出時の第2リフタピン182の動作について説明するための図である。
【0137】
基板処理システム1は、各処理を実行する前に、第1、第2リフタピン172、182および支持ピンの機械学習を実行する。そして基板処理システム1はたとえば、プロセスモジュールPM内の第2リフタピン182の最高速度、最低速度、フォーカスリングFRの受け取り時のピンアップディレイを記憶部31に設定し記憶する。
【0138】
フォーカスリングFR搬入時の第2リフタピン182の動作について説明する。第2リフタピン182はサセプタ114内に格納され、フォーカスリングFR搬入時およびフォーカスリングFR搬出時に昇降する。ここで、サセプタ114の上面位置を第1高さH1、フォーカスリングFRがVTMアーム15により搬送されるときの位置を第2高さH2と呼ぶ。
【0139】
また、第1高さH1から第2高さH2までの距離のうち、サセプタ114近傍を範囲R1、搬送位置近傍を範囲R2と呼ぶ(
図13A参照)。ここで近傍とは、垂直方向に所定距離内たとえば0.5mmの範囲内を指す。ここで所定距離は、フォーカスリングFRと第2リフタピン182またはフォーカスリングFRとVTMアーム15とが接する時の衝撃を調節するための距離である。たとえば、
図13Aの例では、範囲R1は、サセプタ114の上面位置から上方向に所定距離内の範囲を指す。ただし、範囲R1は、サセプタ114の上面位置から垂直方向に上下にそれぞれ所定距離内の範囲としてもよい。また、
図13Aの例では、範囲R2は、フォーカスリングFRの搬送高さH2から垂直方向下向きに所定距離内の範囲を指す。ただし、範囲R2は、第2高さH2から垂直方向に上下それぞれ所定距離内の範囲としてもよい。第1高さH1と第2高さH2の間の、範囲R1およびR2以外の範囲を範囲R3と呼ぶ。
【0140】
第2リフタピン182は、搬入出を実行しないときはサセプタ114に収容され、第1高さH1またはH1よりも下方に頂部が位置する。フォーカスリングFRの搬入時には、第2リフタピン182は第2駆動機構180により駆動され、サセプタ114から突出し第2高さH2よりも下方の第3高さH3まで上昇する(
図13A参照)。次に、VTMアーム15がフォーカスリングFRをピック(17aまたは17b)に載置し、第2高さH2に保持してプロセスモジュールPM内に搬入する。VTMアーム15に載置されたフォーカスリングFRがサセプタ114上に到達すると、第2リフタピン182が第2高さH2まで上昇する。このとき、第2リフタピン182は、VTMアーム15が動作を停止しフォーカスリングFRの揺れが収まるまで所定時間待機した後に上昇を開始する。この待機時間をピンアップディレイと呼ぶ。そして、第2リフタピン182は、第2高さH2においてフォーカスリングFRを受理する。受理後、第2リフタピン182は下降し、フォーカスリングFRはサセプタ114上に載置される。
【0141】
基板処理システム1は、フォーカスリングFRの搬入時、第2リフタピン182の駆動速度を、上昇時は範囲R2において範囲R1、R3よりも低速に切り替え、下降時は範囲R1において範囲R2、R3よりも低速に切り替える。これは、第2リフタピン182とフォーカスリングFRとが接触する際の衝撃を押さえフォーカスリングFRへのダメージを防止するためである。
図13Aの例では、範囲R1はサセプタ114の上面より上方としているが、範囲R1をサセプタ114の上面の上下双方向に設定してもよい。また範囲R2も、第2高さH2の上下双方向に設定してもよい。
【0142】
次に、
図13Bを参照し、フォーカスリングFRの搬出時の第2リフタピン182の動作について説明する。
図13Bにおいて、サセプタ114の上面(H1)から垂直方向下向きに所定距離内を範囲R4、第2高さH2から垂直方向上向きに所定距離内を範囲R6とする。また、第2高さH2と第4高さH4の間の範囲中、範囲R6に含まれない部分を範囲R5と呼ぶ。なお、所定距離の値や範囲の設定は上記
図13Aの例と同様である。
【0143】
フォーカスリングFRの搬出時は、第2リフタピン182はまず第1高さH1まで上昇する。そして、フォーカスリングFRに第2リフタピン182の頂部が当接すると、第2リフタピン182はフォーカスリングFRを支持しつつ第4高さH4まで上昇する。第4高さH4は、フォーカスリングFRが搬送される第2高さH2よりも垂直方向に上である。第2リフタピン182がフォーカスリングFRを第4高さH4に保持した状態で、VTMアーム15のピック(17aまたは17b)がプロセスモジュールPM内に進入し、フォーカスリングFRの下方で停止する。このとき、VTMアーム15のピックの高さは第2高さH2である。搬入時と同様、VTMアーム15の揺れが収まるまで所定時間待機した後、第2リフタピン182が下降して、第2リフタピン182上に支持されたフォーカスリングFRをVTMアーム15上が受け取る。VTMアーム15はフォーカスリングFRを保持した状態でプロセスモジュールPM内から真空搬送室10へと移動し、フォーカスリングFRを搬出する。
【0144】
基板処理システム1は、フォーカスリングFRの搬出時、第2リフタピン182の駆動速度を、上昇時は範囲R4において範囲R5、R6よりも低速に切り替え、下降時は範囲R6において範囲R4、R5よりも低速に切り替える。たとえば、基板処理システム1は、第2リフタピンの駆動速度を、上昇時は範囲R4において第1の速度とし、範囲R5、R6および範囲R4、R5、R6以外の範囲で第1の速度より高速の第2の速度とする。また、下降時は、範囲R6において第1の速度とし、範囲R4,R5および範囲R4、R5、R6以外の範囲において第1速度より高速の第2速度とする。
【0145】
すなわち、基板処理システム1は、第2リフタピン182の駆動速度を、第2リフタピン182がフォーカスリングFRに接触する直前から接触するまでの間、低速の第1速度に切り替える。また、基板処理システム1は、第2リフタピン182に支持されたフォーカスリングFRがサセプタ114およびVTMアーム15に接触する直前から載置が完了するまでの間、低速の第1速度に切り替える。フォーカスリングFRが他の部品に接触しない範囲では、基板処理システム1は第2リフタピン182を高速の第2速度で駆動する。
【0146】
このため、基板処理システム1は、予め機械学習により、第2リフタピン182の第1速度、第2速度、待機時間(ピンアップディレイ)を設定し記憶する。たとえば、基板処理システム1は、第1速度および第2速度を、1~15mm/秒の範囲内で設定する。またたとえば、基板処理システム1は、第2リフタピン182の待機時間を0.0~60.0秒の範囲内で設定する。
【0147】
基板処理システム1は、ロードロックモジュールLLM内の支持ピンの駆動速度も、第2リフタピン182と同様に設定することができる。たとえば、支持ピンの駆動速度は、1~1700mm/秒の範囲内で設定することができる。
【0148】
(搬送経路の固定)
本実施形態では上述のように使用済みのフォーカスリングFRと未使用のフォーカスリングFRの搬送を並行して実行する。このため、基板処理システム1は、ロードロックモジュールLLMを少なくとも2つ備える。そして、基板処理システム1は、使用済みのフォーカスリングFRの搬送に一方のロードロックモジュール(たとえばLLM1)を使用し、未使用のフォーカスリングFRの搬送に他方のロードロックモジュール(たとえばLLM2)を使用する。
【0149】
さらに搬送精度を向上させるためには、未使用のフォーカスリングFRを搬送する経路として、VTMアーム15およびLMアーム25のピックを特定してもよい。搬送精度とは、搬送中のフォーカスリングFRの位置の精度および安定度を指す。搬送精度が高ければ、設計上の搬送経路と実際に搬送されるフォーカスリングFRとの位置ずれが小さく、搬送精度が低ければ、設計上の搬送経路と実際に搬送されるフォーカスリングFRとの位置ずれが大きくなる。また、搬送精度が高ければ、搬送ごとのフォーカスリングFRの位置の変動が少なく、搬送精度が低ければ、搬送ごとのフォーカスリングFRの位置の変動が大きくなる。たとえば、基板処理システム1は、未使用のフォーカスリングFRの搬送経路として、VTMアーム15の第1のピック17aと、LMアーム25の第1のピック27aとを指定する。また、基板処理システム1は、未使用のフォーカスリングFRの搬送経路としてロードロックモジュールLLM1を指定する。
【0150】
また、基板処理システム1は、使用済みのフォーカスリングFRの搬送経路として、VTMアーム15の第2のピック17bと、使用LMアーム25の第2のピック27bとを指定する。また、基板処理システム1は、使用済みのフォーカスリングFRの搬送経路としてロードロックモジュールLLM2を指定する。基板処理システム1は、指定した搬送経路を記憶部31に記憶する。
【0151】
たとえば、記憶部31に、未使用のフォーカスリングFRの搬送経路のデフォルト値として、VTMアーム15の第1のピック17a、LMアーム25の第1のピック27a、ロードロックモジュールLLM1を特定する情報を記憶する。また、記憶部31に、使用済みのフォーカスリングFRの搬送経路のデフォルト値として、VTMアーム15の第2のピック17b、LMアームの第2のピック27b、ロードロックモジュールLLM2を特定する情報を記憶する。そして、交換処理時には、基板処理システム1は、記憶部31に記憶された情報に基づき搬送経路を決定する。
【0152】
このように搬送経路を指定しておくことで、基板処理システム1は、搬送ごとに異なる経路を使用できフォーカスリングFRの搬送精度に微細なずれが生じることを抑制できる。たとえば、VTMアーム15の第1のピック17aと第2のピック17bとの各々に位置ずれ等が生じても、未使用のフォーカスリングFRを同じ経路で搬送することで搬送精度の低下を抑制できる。なお、使用済みのフォーカスリングFRについては、搬送精度を精密に制御する必要は低いため、搬送に使用するピックの指定は未使用のフォーカスリングFRを優先して実行する。ただし使用済みのフォーカスリングFRについても搬送経路を指定してもよい。
【0153】
(処理モードの切り替え)
図9の例においては、基板処理システム1は、対象プロセスモジュールPMをノンプロダクションモードに切り替えて交換処理を実行し、交換処理完了後にプロダクションモードに切り替えた。これに限定されず、基板処理システム1は、交換処理後に自動的にプロダクションモードに切り替えず、オペレータの入力に応じてプロダクションモードに切り替えるように構成してもよい。
【0154】
たとえば、交換処理完了後の動作モードをデフォルトで「ノンプロダクションモード」に設定して記憶部31に記憶しておき、自動的に設定が変更されないようにする。このように設定することで、フォーカスリングFR交換後にプロセスモジュールPMの保守作業たとえばシーズニング処理を実行する必要がある場合等に、保守作業の前に自動的にウエハWがプロセスモジュールPMに搬入されることを防止できる。
【0155】
(交換処理の中止)
基板処理システム1が交換処理を開始した後に、VTMアーム15またはLMアーム25からフォーカスリングFRが落下する等して、交換処理が継続できなくなる場合がある。そこで、本実施形態に係る基板処理システム1は、係る状態を検知して交換処理を中止できるように構成してもよい。
【0156】
交換処理の開始後、基板処理システム1の第1センサS1または第2センサS2がフォーカスリングFRを検知できないと、処理部32にその旨を通知する。処理部32は、通知を受信すると、駆動系(VTMアーム15、LMアーム25等)の動作を停止する。処理部32は、動作停止をオペレータに通知する。たとえば、処理部32は、動作停止の通知を表示部34に表示する。
【0157】
オペレータは、動作停止の通知を受けると、プロセスモジュールPM、真空搬送室10、ロードロックモジュールLLM、常圧搬送室20をメンテナンスモードに移行させる。そして、オペレータは、表示部34から指示入力を実行することで基板処理システム1の交換処理を停止させる。このとき、基板処理システム1は、対象プロセスモジュールPMの動作モードをノンプロダクションモード(すなわち製品ウエハWの処理ができない処理モード)のまま維持する。また、交換中のフォーカスリングFRは自動的に移動させず、中止時点の状態のままとする。これは、フォーカスリングFRがどのような状態になっているか不明であるため、オペレータが目視で確認してから復旧できるようにするためである。オペレータは状況確認後、プロセスモジュールPMのチャンバを開けてフォーカスリングFRを設置する等の処理をとる。復旧完了後、オペレータは各処理部をメンテナンスモードから通常処理モードに移行させる。
【0158】
なお、交換処理の中止は、基板処理システム1により異常が検知されたときだけでなく、オペレータ側が任意に実行できるものとしてもよい。たとえば表示部34に交換処理の中止を指示する入力を受け付ける画面を表示させる。そして、オペレータの指示入力に応じて、VTMアーム15、LMアーム25が停止するように基板処理システム1を構成する。VTMアーム15、LMアーム25の動作停止後に、オペレータは、上記動作停止の通知を受けたときと同様の処理を実行する。
【0159】
また、交換予約中または交換処理中に、オペレータが基板処理システム1をメンテナンスモードに移行させてFR用FOUPを取り外したり、FR用FOUP内のフォーカスリングFRを取り出したりした場合も、上記と同様の手順で復旧可能とすることができる。なお、デフォルト設定としては、FR用FOUPの取り外しは、交換処理中は実行できないように基板処理システム1を構成する。
【0160】
(リフタピンのメンテナンス)
基板処理システム1の各部に設けられるフォーカスリングFRの昇降用のリフタピン(第2リフタピン182、支持ピン)は、交換処理が実行されるまでは通常動作することがない。このためリグリース等により、第2リフタピン182および支持ピンが周囲の構造物に固着する可能性がある。そこで、本実施形態の基板処理システム1は、定期的に自動的にメンテナンスを実行することができるように構成してもよい。
【0161】
たとえば、交換タイミングを通知するためのカウンタと同様に、メンテナンスの実行タイミングを判定するためのカウンタを設ける。たとえば、プロセスモジュールPM各々に対応付けて、第2リフタピン182のメンテナンスの実行タイミングを設定する。第2リフタピン182のメンテナンスの実行タイミングとしてはたとえば、ウエハWの処理回数をパラメータとすることができる。たとえば、ウエハWを1000回処理した時点で第2リフタピン182のメンテナンスを実行する。
【0162】
なお、メンテナンスの実行タイミングは任意に設定することができるものとしてもよいし、予め設定されたパラメータからオペレータが選択するものとしてもよい。たとえば、実行タイミングの判定基準として、処理回数(ウエハ処理枚数)またはRF放電時間のいずれかを選択可能としてもよい。ロードロックモジュールLLMの支持ピンのメンテナンスの実行タイミングも同様に設定することができる。
【0163】
メンテナンスの実行タイミングはたとえば、予め設定したパラメータの閾値に到達した後(たとえば1000回処理が実行された後)、直近のロットの処理が終了した時点とする。第2リフタピン182または支持ピンのメンテナンスの場合は、基板処理システム1は、第2リフタピン182または支持ピンを昇降動作させる。なお、本メンテナンス動作のタイミングが他の処理のタイミングと重なった場合は、他の動作を優先させ、当該動作が終了した後に本メンテナンス動作を実行する。
【0164】
(ホストとの通信関係)
なお、上記実施形態で基板処理システム1が独立して処理を実行するものとして記載した処理の一部を他の装置において実行するように構成してもよい。たとえば、基板処理システム1の制御装置30を他の部分とは別個独立の装置として構成してもよい。また、他の装置から基板処理システム1を遠隔制御するように構成してもよい。
【0165】
たとえば、基板処理システム1とは別にホスト(サーバ)を配置する。そして、各プロセスモジュールPMにおけるプラズマ処理はホスト側で制御するようにしてもよい。この場合、基板処理システム1側での交換処理により、プロセスモジュールPMに対するホスト側の制御に対する割込みが発生する。このため、基板処理システム1は、交換処理の実行のためにプロセスモジュールのモード変更を実行する場合、その都度、ホストに通知するように構成する。プロダクションモードの間は、プロセスモジュールPMに対する制御はホスト側が管理し、ノンプロダクションモードの間は、ホスト側は当該プロセスモジュールPMに対する処理を停止するよう制御する。この場合、基板処理システム1を、
図9のステップS1503、S1507において、モード変更をホストに通知するように構成する。
【0166】
(搬送機構が備えるピックの形状例)
上記実施形態において、VTMアーム15が備える第1のピック17a,第2のピック17bおよびLMアーム25が備える第1のピック27a、第2のピック27bは、以下のように構成してもよい。以下、VTMアーム15が備える第1のピック17a,第2のピック17bおよびLMアーム25が備える第1のピック27a、第2のピック27bをまとめてピック50とも呼ぶ。ピック50は、ウエハWおよび消耗部品を搬送する搬送機構が備えるアームの先端に設けられ、ウエハWおよび消耗部品を保持する保持具の一例である。
【0167】
上記実施形態においては、VTMアーム15およびLMアーム25は、ウエハWおよび消耗部品の双方を搬送可能に構成される。以下に、消耗部品としてフォーカスリングFRを搬送する場合のピック50の構成を一例として説明する。
【0168】
図14Aは、一実施形態の基板処理システム1が備えるピック50の構成の一例を示す概略上面図である。
図14Bは、
図14Aに示すピック50の概略正面図である。ピック50は、基部51と、基部51の二つの端部から異なる方向へ延びる第1枝部52と、第2枝部53と、を有する。基部51、第1枝部52および第2枝部53は、ウエハWの中心を中心としウエハWの外径に接する三角形を描いたときに、三角形の3つの頂点がそれぞれ基部51、第1枝部52および第2枝部53の上に位置するよう形成する。なお、ピック50の形状は
図14Aに示す二股形状に限定されない。ピック50は、3以上の枝部を有してもよい。ただし、ピック50の形状はフォーカスリングFRをピック50上に配置したときに、上面視でフォーカスリングFRの内径とピック50との間に隙間が形成される形状とする。
【0169】
ピック50は、ウエハWおよびフォーカスリングFRを保持する側に第1表面55を有する。第1表面55上には、ウエハWを保持するための複数の第1保持部60a~60fが形成されている。以下、複数の第1保持部60a~60fをそれぞれ区別する必要がないときは第1保持部60と総称する。第1保持部60は、基部51、第1枝部52および第2枝部53の各々の上に少なくとも一つ形成される。なお、
図14Aには6つの第1保持部60を示すが、第1保持部60の数は6に限定されず6未満でも6より多くてもよい。また、複数の第1保持部60は、フォーカスリングFRの内径よりも径が小さい第1円C1上に配置される。
【0170】
複数の第1保持部60は、第1表面55から高さh1の位置に上面を有する。複数の第1保持部60の上面の形状は特に限定されない。複数の第1保持部60の上面は、第1表面55と略平行であってもよく、外周が面取りされた半球面状であってもよい。
【0171】
第1表面55上にはさらに、フォーカスリングFRを保持するための複数の第2保持部70a~70dが形成されている。以下、複数の第2保持部70a~70dをそれぞれ区別する必要がないときは第2保持部70と総称する。第2保持部70は、第1保持部60と同様、基部51、第1枝部52、第2枝部53の各々の上に少なくとも一つ形成される。なお、
図14Aには4つの第2保持部70を示すが、第2保持部の数は4に限定されず4未満でも4より多くてもよい。第2保持部70の一方端は、フォーカスリングFRの外径より径が大きく上記第1円C1と略同心の第2円C2上に配置される。また、第2保持部70の他方端は、フォーカスリングFRの内径より大きく外径より小さい径を有する第3円C3上に配置される。ただし、第2保持部70の他方端は、フォーカスリングFRの内径より小さい径の第4円C4上に配置されてもよい。
【0172】
第2保持部70の他方端は第2保持部70の一方端よりも、第1円C1~第4円C4の中心よりに配置される。第2保持部70の一方端は、第1表面55から高さh2の位置に上面を有する。第2保持部70の他方端は、第1表面55から高さh3の位置に上面を有する。高さh1、h2、h3は、少なくともh1>h2>h3の関係を有する。
図14Bに示すように、第2保持部70の上面は一方端から他方端に向けて、すなわち、第1円C1~第4円C4の円周側から中心側に向けて徐々に低くなる傾斜面である。第2保持部70の上面はいずれの位置においても、第1保持部60の上面よりも低い位置にある。
【0173】
図15Aは、
図14Aに示すピック50上にウエハWが保持された状態を示す概略上面図である。
図15Bは、
図15Aに示すピック50とウエハWとを水平方向から見た概略正面図である。
図15Aに示すように、ピック50は、複数の第1保持部60によってウエハWを支え、第1表面55とウエハWとが接触しない状態でウエハWを保持する。また、
図15Bに示すように、ウエハWがピック50上に保持されるとき、第1保持部60の上面よりも低い第2保持部70の上面は、ウエハWに接触しない。
【0174】
図16Aは、
図14Aに示すピック50上にフォーカスリングFRが保持された状態を示す概略上面図である。
図16Bは、
図16Aに示すピック50とフォーカスリングFRとを水平方向から見た概略正面図である。
図16Aに示すように、ピック50は、複数の第2保持部70によってフォーカスリングFRを支え、第1表面55とフォーカスリングFRとが接触しない状態でフォーカスリングFRを保持する。また、
図16Bに示すように、フォーカスリングFRの外周は第2保持部70の傾斜面の中間部において第2保持部70に当接し支持される。フォーカスリングFRはリング状であるため、ピック50上にフォーカスリングFRが保持されるとき、フォーカスリングFR中央の中空部に第1保持部60が位置する。このため、ピック50上にフォーカスリングFRが保持されるとき、フォーカスリングFRと第1保持部60とは接触しない。
【0175】
このように、ピック50上にウエハWを保持するための第1保持部60と、フォーカスリングFRを保持するための第2保持部70とを設けることで、一つのピック50を、ウエハWとフォーカスリングFRの搬送のいずれにも用いることができる。
【0176】
また、第1保持部60の上面位置を、第2保持部70の上面位置よりも高くすることにより、ウエハW搬送時に、ウエハWがピック50の各部に接触して汚染を生じたり破損したりすることを防止できる。また、第2保持部70の上面を外側から内側に向けて低くなる傾斜面とすることで、フォーカスリングFRとピック50との接触面を減少させることができる。このため、搬送中のフォーカスリングFRとピック50との貼りつきを防止できる。また、貼りつきを防止することで、搬送中のフォーカスリングFRの位置ずれや載置時の跳ね上がり等を防止できる。
【0177】
なお、ピック50の移動速度は、ウエハW搬送時よりもフォーカスリングFR搬送時に遅くなるよう設定する。
【0178】
また、第1保持部60、第2保持部70の材質は特に限定されない。第1保持部60、第2保持部70はたとえば、ゴム、セラミック等任意の材料で形成できる。ただし、第2保持部70は、上記のとおり貼りつきを防止する観点からフォーカスリングFRとの摩擦係数が低い材料で製造することが好ましい。
【0179】
なお、第2保持部70は、少なくとも一部がフォーカスリングFRの内径と外径との間に配置されていればよく、具体的な形状は
図14A~
図16Bに示したものに限定されない。たとえばフォーカスリングFRの下面が平らではない場合には、フォーカスリングFRの形状に合わせて第2保持部70の一方端および他方端の位置を調整してもよい。
【0180】
なお、第2保持部70は、ピック50の基部51、第1枝部52、第2枝部53と一体に形成してもよい。また第2保持部70は、ピック50の基部51、第1枝部52、第2枝部53と同材質で形成してもよい。上述のセラミック以外に、チタンや炭化珪素等を使用できる。
【0181】
なお、
図16Aおよび
図16Bに示すフォーカスリングFRは、
図3と異なり、内径側上面に切欠きがない。ただし、ピック50が搬送するフォーカスリングFRの形状は特に限定されず、
図3に示す形状のフォーカスリングFRもピック50により搬送できる。
【0182】
(搬送時の位置ずれ検出)
上述のように、上記実施形態に係る基板処理システム1は、プロセスモジュールPMに搬送されるウエハWおよびフォーカスリングFRの位置ずれを検出するための第1センサS1~S16を備える。また、第1センサは2個で一つの組を構成し、各プロセスモジュールPMのゲートバルブ付近の搬送経路上に配置される。また、常圧搬送室20内の第3センサS20~S27も同様に位置ずれを検出する。次に、第1センサS1~S16、第3センサS20~S27に共通して適用できる位置ずれ検知手法について説明する。以下の説明では、例として、ロードロックモジュールLLM1前に設置された第3センサS20,S21と、ロードポートLP2前に設置された第3センサS24,S25について説明する。
【0183】
図17は、一実施形態の基板処理システムにおける第3センサの配置位置について説明するための図である。
図17は、
図1に示した基板処理システム1の常圧搬送室20を紙面右側から左側に見た断面図である。
【0184】
図17中、左側はロードポートLP2が備える、FOUPを載置する台201である。台201の右側には常圧搬送室20とFOUP内部とを連通させるためのドア202が配置されている。ドア202が下方向に移動しFOUPの蓋を動かすことで、FOUP内部と常圧搬送室20内部とが連通する。常圧搬送室20のロードポートLP2と対向する側にはロードロックモジュールLLM1に接続するゲートバルブGVが配置されている(
図18A~
図18C参照)。ゲートバルブGVは、ロードロックモジュールLLMと常圧搬送室20との間に配置される。ゲートバルブGVは、プレート220と、可動蓋230と、移動機構240と、を備える。
【0185】
図18Aは、一実施形態のゲートバルブGVが備えるプレート220の概略斜視図である。
図18Bは、一実施形態のゲートバルブGVの一部を拡大した概略斜視図である。
図18Cは、一実施形態のゲートバルブGVの開口221が遮蔽された状態を示す概略斜視図である。
【0186】
プレート220はロードロックモジュールLLM1の前に固定される板状の部材である。
図18Aに示すプレート220は、ロードロックモジュールLLM1前に配置されたとき、常圧搬送室20側から見て、上辺、右辺、下辺、左辺を有する略長方形状となっている。ただし、プレート220の形状は特に限定されない。プレート220には、開口221と、上下1対の第1の突起部222と、上下1対の第2の突起部223と、が形成されている。
【0187】
開口221は、ロードロックモジュールLLM1と常圧搬送室20との間で搬入出されるウエハWおよびフォーカスリングFRが通過する空間を画する。
図18Aの例では、開口221は、プレート220の中央よりも上に形成される。開口221は、横幅がフォーカスリングFRの外径よりも大きい略長方形である。開口221の大きさおよび形状は、ピック50上にウエハWおよびフォーカスリングFRを載置して水平方向に搬入出することができれば特に限定されない。
【0188】
第1の突起部222は、プレート220から常圧搬送室20側へ突出する。第1の突起部222は、上突起222aと下突起222bとを有する。上突起222aは、プレート220の上辺に沿って水平方向に突出する板状部材である。上突起222aには、第3センサS20の投光部20pが配置される。下突起222bは、プレート220の下辺に沿って水平方向に突出する板状部材である。下突起222bには、第3センサS20の受光部20rが配置される。なお、投光部20pを下突起222bに、受光部20rを上突起222aに配置してもよい。
【0189】
上突起222aの投光部20pは、垂直方向下方に光を射出する。下突起222bの受光部20rは、投光部20pから射出される光の光路OP1上に配置される。
図18Aの例では、投光部20pと受光部20rとを結ぶ線は垂直方向に沿って延び、開口221によって規定される空間の前を通る。
【0190】
第2の突起部223の形状は、第1の突起部222と同様である。第2の突起部223は、プレート220から常圧搬送室20側へ突出する。第2の突起部223は、上突起223aと下突起223bとを有する。上突起223aは、プレート220の上辺に沿って水平方向に突出する板状部材である。上突起223aには、第3センサS21の投光部21pが配置される。また、下突起223bは、プレート220の下辺に沿って水平方向に突出する板状部材である。下突起223bには、第3センサS21の受光部21rが配置される。
【0191】
上突起223aの投光部21pは、垂直方向下方に光を射出する。下突起223bの受光部21rは、射出された光の光路OP2上に配置される。
図18Aの例では、投光部21pと受光部21rとを結ぶ線は垂直方向に沿って延び、開口221によって規定される空間の前を通る。
【0192】
なお、ゲートバルブGVは、各センサを制御装置30と接続する接続部250を備える(
図18C参照)。接続部250はたとえば、各センサの受光部において検知された信号を制御装置30に送信するためのケーブルである。
【0193】
プレート220の常圧搬送室20側には、可動蓋230が配置される(
図18C参照)。可動蓋230は、移動機構240と接続され、移動機構240から伝達される動力に応じて第1の突起部222および第2の突起部223の上突起222a,223aと下突起222b,223bとの間を上下に移動する。可動蓋230は、可動範囲内の最上部に位置するとき(
図18C参照)開口221を覆い、ロードロックモジュールLLM1と常圧搬送室20との間を閉鎖する。可動範囲内の最下部に位置するとき、可動蓋230は、開口221を開放し、ロードロックモジュールLLM1と常圧搬送室20とを連通させる。可動蓋230の厚みは、上突起222a,223aと下突起222b,223bとの間の光路OP1,OP2に干渉しない厚みである(
図17参照)。
【0194】
図17に戻り、ロードポートLP2側に配置される第3センサS24,S25について説明する。第3センサS24,S25は各々、投光部24p,25pと受光部24r,25rとを備える。
図17に示すように、第3センサS24,S25の投光部24p,25pは、常圧搬送室20の天井側に設けられる。また、第3センサS24、S25の受光部24r,25rは、常圧搬送室20の床側に設けられる。LMアーム25により搬送されるウエハWおよびフォーカスリングFRは、投光部24p,25pから射出され受光部24r,25rが受ける光の光路上を通過する。ウエハWおよびフォーカスリングFRが光路上を通過できれば、第3センサS24,S25の配置位置は特に限定されない。
【0195】
次に、第3センサを用いた位置ずれの検出について説明する。
図19Aは、一実施形態における、搬送中の消耗部品とセンサとの位置関係について説明するための図である。
図19Aは、フォーカスリングFRが矢印Xの方向に沿ってロードロックモジュールLLM1に搬送されていく状態を示す。
図19A中、ロードポートLP2が紙面下方、ロードロックモジュールLLM1は紙面上方に位置するものとする。フォーカスリングFRが搬送経路上を搬送されるとき、設計上、フォーカスリングFRの中心は線L3に沿って移動する。第3センサS20は、光路OP1が線L2上に位置するよう配置されている。また、第3センサS21は、光路OP2が線L4上に位置するよう配置されている。また、第3センサS20,S21は、フォーカスリングFRの進行方向と直交する線分上に配置される。なお、線L2、L4は各々、線L3から等距離の位置に配置される線L3と平行な線分とする。
【0196】
このとき、フォーカスリングFRが正しい位置を搬送されていくと、第3センサS20において検出される検出信号と第3センサS21において検出される検出信号とは、同一波形となる。
図19Bは、
図19Aの例における検知信号の一例を示す図である。フォーカスリングFRが第3センサS20,S21の投光部20p,21pと受光部20r,21rとの間を通過するとき、投光部20p,21pから射出される光がフォーカスリングFRにより遮られる。受光部20r,21rはたとえば、受光しない場合にハイ(High)、受光した場合にロー(Low)の検出信号を出力する。
図19Aの場合、フォーカスリングFRの各部は第3センサS20およびS21を同時に通過する。このため、
図19Bに示すように、第3センサS20,S21から出力される検出信号は、同時にハイとなり、同時にローとなる。
【0197】
他方、フォーカスリングFRに位置ずれが生じているとき、第3センサS20,S21から出力される検出信号は相互に異なる波形を取る。
図20Aは、搬送中の消耗部品の位置ずれについて説明するための図である。
図20Aの例では、フォーカスリングFRの中心は正しい位置(線L3上)から線L2側にずれている。
図20Aの位置のままフォーカスリングFRが矢印X方向に搬送されていくと、フォーカスリングFRの外周は、第3センサS21よりも第3センサS20において先に投光部20pが射出する光を遮る。その後、期間P1(
図20B参照)後に第3センサS21において、フォーカスリングFRが投光部21pが射出する光を遮る。さらにフォーカスリングFRがX方向に進むと、第3センサS21において再び光が遮られ、その後、第3センサS20においても光が遮られる。このため、フォーカスリングFRの中心が正しい位置からずれた状態で搬送された場合に得られる検出信号の波形はたとえば、
図20Bに示す波形となる。制御装置30は、第3センサS20,S21から出力される検出信号の波形のずれに基づき、フォーカスリングFRの位置ずれを検出する。このため、制御装置30は、フォーカスリングFRの位置ずれを補正することができる。
【0198】
上記の例では、ロードロックモジュールLLM1前に配置されるゲートバルブGVの開口221の上下に2つのセンサを配置するものとした。しかし、これに限らず、3以上のセンサを配置してもよい。たとえば、
図21は、4つのセンサを配置した場合の消耗部品とセンサとの位置関係を示す図である。
図21の例では、第3センサS20,S21に加えて、センサS20A,S21Aが配置される。なお、3以上のセンサを配置する場合も、各センサは、開口221の上下に配置される投光部と受光部とを備える。
【0199】
なお、位置ずれの補正においては、各センサが検出したフォーカスリングFRの外径位置、内径位置のいずれか一方を用いてもよく、外径位置と内径位置を両方とも用いてもよい。ただし、ウエハWとフォーカスリングFRとの位置関係を正確に補正する観点からは、内径位置を用いて補正することが好ましい。
【0200】
また、位置ずれの補正は、たとえば、
図22に示すようにフォーカスリングFRの中心の位置を算出して、正しい中心位置との差分だけフォーカスリングFRを移動させることでも実現できる。
図22は、消耗部品の位置ずれを算出する手法を説明するための図である。
図22に示すように、検出信号に基づき、線分L2上のフォーカスリングFRの内径位置を結んだ線分の中心線を引く。また、線分L2と内径位置との交点の一つと、線分L4と内径位置との交点の一つとを結んだ線分の中心線を引く。二つの中心線の交点がフォーカスリングFRの中心である。こうして求めたフォーカスリングFRの中心と、線分L3との距離に基づき、フォーカスリングFRの位置を補正する。
【0201】
なお、2つのセンサを開口221前に配置する場合、2つのセンサの配置間隔は、ピックの幅よりも広く、フォーカスリングFRの内径よりも短い。また、たとえば、4つのセンサを開口221前に配置する場合、最も外側に配置される2つのセンサの配置間隔は、ピックの幅よりも広く、フォーカスリングFRの内径よりも短い。また、上記第1,2,3センサは各々、フォーカスリングFRだけでなくウエハWの位置ずれ補正も行うため、最も外側に配置される2つのセンサの配置間隔はウエハの外径よりも短くする。
【0202】
なお、第1、第2、第3センサは、ウエハWおよびフォーカスリングFRの位置ずれの検出および補正だけでなく、ピックがウエハWまたはフォーカスリングFRを保持しているか否かを検出するためにも使用する。たとえば、ピックがロードロックモジュールLLM前に到達したとき、ピックの先端を左右に動かし第3センサが物体を検出した場合に、ピック上にウエハWまたはフォーカスリングFRが配置されていると判定できる。また、ピックがロードポートLP前に到達したときも、同様の動作によりウエハWまたはフォーカスリングFRの有無を判定できる。
【0203】
なお、ロードポートLP前に配置する第3センサは、ロードポートLPのドア202の開閉に干渉しない位置に配置する。また、第3センサの投光部と受光部とを結ぶ光路上には、ウエハWおよびフォーカスリングFR以外の構造物は配置しない。ロードロックモジュールLLM前に配置する第3センサも同様である。
【0204】
(その他の変形例)
なお、本実施形態では、FR用FOUPの設置の実行および取り外しの完了にオペレータによる指示入力を要件としている。ただし、オペレータによる指示入力は省略できるように基板処理システム1を構成してもよい。
【0205】
また、本実施形態では、各ロードポートLPについて設置可能なFOUPの種類を固定としているが、すべてのロードポートLPにFR用FOUPおよびウエハ用FOUPのいずれでも設置できるように構成してもよい。この場合は、すべてのロードポートLP前に第3センサを設置してもよい。また、マッピングセンサMS、第1~第3センサの種類は特に限定されないが、透過型光電センサ等を用いることができる。
【0206】
また、本実施形態では、制御装置30が表示部34を備えるものとしたが、制御装置30により生成された画面が入出力インタフェース33を介して他の装置に送信され、他の装置において表示されるように構成してもよい。
【0207】
<実施形態の効果>
上記実施形態に係る基板処理システムは、常圧搬送室と、真空処理室と、一以上のロードロックモジュールと、真空搬送室と、複数の取り付け部と、第1の搬送機構と、第2の搬送機構と、制御部と、を備える。常圧搬送室は、常圧雰囲気において、基板および消耗部品が搬送される。真空処理室においては、基板に対して真空処理が実行される。一以上のロードロックモジュールは、常圧搬送室と真空処理室との間に配置され、搬送される基板および消耗部品が通過する。真空搬送室は、真空処理室と一以上のロードロックモジュールとの間に配置され、減圧雰囲気において基板および消耗部品が搬送される。複数の取り付け部は、常圧搬送室に設けられ、基板または消耗部品を収容する複数の保管部各々と常圧搬送室との間で搬送される基板または消耗部品が通過可能なポートを有する。複数の取り付け部には、複数の保管部各々を着脱自在に取り付け可能である。第1の搬送機構は、一以上のロードロックモジュールと真空処理室との間で真空搬送室を介して、基板および消耗部品を搬送する。第2の搬送機構は、複数の保管部と一以上のロードロックモジュールとの間で常圧搬送室を介して、基板および消耗部品を搬送する。制御部は、保管部から常圧搬送室および一以上のロードロックモジュールの一つを介した真空処理室への消耗部品の搬送と、真空処理室から真空搬送室および一以上のロードロックモジュールの他の一つを介した消耗部品の搬送と、を、第1の搬送機構および第2の搬送機構に並行して実行させる。このため、実施形態に係る基板処理システムは、真空処理室内の消耗部品の交換時間を短縮することができる。このため、実施形態によれば、基板処理システムの稼働率を向上させることができる。一つのロードロックモジュールを経由してウエハを搬送する場合は、ロードロックモジュールの大気開放および真空引きを実行する間、搬送処理を待機させねばならない。上記実施形態に係る基板処理システムは、2つのロードロックモジュールを経由して消耗部品を搬送する。また、実施形態に係る基板処理システムは、第1の搬送機構および第2の搬送機構上ならびにロードロックモジュール内にウエハが存在しないときに、交換処理を実行する。このため、本実施形態によれば、2つのロードロックモジュールをそれぞれ搬出と搬入に占有することができ、消耗部品の交換時間を短縮することができる。
【0208】
また、上記実施形態に係る基板処理システムにおいて、複数の取り付け部は、基板を収容する第1の保管部を取り付け可能な第1の取り付け部と、消耗部品を収容する第2の保管部を取り付け可能な第2の取り付け部と、を含む。このため、実施形態に係る基板処理システムは基板の保管部と消耗部品の保管部とを同様に常圧搬送室に取り付けて消耗部品の交換を実行することができる。
【0209】
また、上記実施形態に係る基板処理システムにおいて、制御部は、複数の取り付け部における複数の保管部の取り付け状態を表示部に表示させる。このため、実施形態に係る基板処理システムは、保管部の取り付け状態をオペレータが容易に確認することを可能にできる。
【0210】
また、上記実施形態に係る基板処理システムにおいて、制御部は、複数の取り付け部のうち第1の取り付け部と第2の取り付け部とを識別可能に表示部に表示させる。このため、実施形態に係る基板処理システムによれば、どの位置に消耗部品を収容する第2の保管部を取り付けるべきかをオペレータが容易に確認することができる。
【0211】
また、上記実施形態に係る基板処理システムにおいて、制御部は、真空処理室に配置された消耗部品の交換予約を受け付ける。そして、制御部は、真空搬送室、一以上のロードロックモジュールおよび常圧搬送室内に、搬送中の基板および消耗部品が存在しないと判定した時に、消耗部品の交換を、第1の搬送機構および第2の搬送機構に実行させる。このため、実施形態に係る基板処理システムは、基板の処理を阻害することなく消耗部品の交換を実行することができる。また、基板処理システムは、基板を汚染したり破損したりする心配なく消耗部品の交換を実行することができる。
【0212】
また、上記実施形態に係る基板処理システムにおいて、制御部は、第2の取り付け部に第2の保管部が取り付けられているときに交換予約を受け付け、第2の取り付け部に第2の保管部が取り付けられていないときに交換予約を受け付けない。このため、実施形態に係る基板処理システムは、交換に使用する消耗部品が準備されていないときに交換予約を受け付けることを防止できる。
【0213】
また、上記実施形態に係る基板処理システムにおいて、制御部は、所定の指示入力があった場合のみ、第2の取り付け部への第2の保管部の取り付けを受け付ける。このため、実施形態に係る基板処理システムは、消耗部品を収容する第2の保管部がオペレータが知らないうちに設置されることを防止できる。
【0214】
また、上記実施形態に係る基板処理システムは、第1の保管部内に配置される基板と、第2の保管部内に配置される消耗部品と、を検知可能なセンサをさらに備える。そして、制御部は、所定の指示入力があった場合、センサのパラメータを変更する。このため、基板処理システムは、基板および消耗部品のそれぞれに応じたパラメータで検知を実行することができる。
【0215】
また、上記実施形態に係る基板処理システムにおいて、基板および消耗部品を搬送する搬送機構(第1の搬送機構および第2の搬送機構)が備えるアームの先端には、前記基板および前記消耗部品を保持する保持具が配置される。保持具は第1表面と、複数の第1保持部と、複数の第2保持部と、を備える。第1表面は、搬送時に基板および消耗部品の表面と対向する。複数の第1保持部は、第1表面上に形成され、基板を保持する。複数の第2保持部は、第1表面上に形成され、複数の第1保持部を結ぶ第1円の外側に配置され、消耗部品を保持する。第2保持部は、消耗部品の外径より大きい径を有する第2円上に配置される一方端から第2円の径方向内側に向かって第1表面に近づく傾斜面を有する。このため、第2保持部は、消耗部品との接触面積を抑制し、消耗部品の貼りつきや跳ね上がりを防止できる。また、第2保持部は第1保持部よりも外側に配置されるため、リング状の消耗部品を、第1保持部に接触させずに第2保持部により保持することができる。
【0216】
また、上記保持具において、第1保持部の第1表面からの高さは、第2保持部の一方端の第1表面からの高さよりも高い。このため、第1保持部は、基板を第2保持部に接触させることなく基板を保持できる。このため、実施形態に係る保持具は、基板に付着した物質の保持具への付着を抑制できる。
【0217】
また、上記保持具において、第2保持部の他方端は、消耗部品の内径と外径の間に位置する第3円上に配置されてもよい。また、第2保持部の他方端は、消耗部品の内径より小さい径の第4円上に配置されてもよい。このため、搬送する消耗部品の形状に応じて、第2保持部を構成することができる。
【0218】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0219】
1 基板処理システム
10 真空搬送室
15 VTMアーム(第1の搬送機構)
17a 第1のピック
17b 第2のピック
20 常圧搬送室
25 LMアーム(第2の搬送機構)
27a 第1のピック
27b 第2のピック
30 制御装置
31 記憶部
32 処理部
33 入出力インタフェース
34 表示部
60 第1保持部
70 第2保持部
220 プレート
221 開口
222 第1の突起部
223 第2の突起部
230 可動蓋
240 移動機構
LLM1,LLM2 ロードロックモジュール
LP1~LP5 ロードポート(取り付け部)
MS マッピングセンサ
PM1~PM8 プロセスモジュール(真空処理室)
S1~S16 第1センサ
S17~S18 第2センサ
S20~S27 第3センサ
GV ゲートバルブ