IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小林製薬株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166032
(43)【公開日】2023-11-17
(54)【発明の名称】固形製剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20231110BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20231110BHJP
   A23L 29/262 20160101ALI20231110BHJP
   A23L 7/104 20160101ALI20231110BHJP
   A23L 31/00 20160101ALI20231110BHJP
   A23L 33/00 20160101ALI20231110BHJP
【FI】
A23L5/00 K
A23L29/00
A23L29/262
A23L7/104
A23L5/00 A
A23L31/00
A23L33/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171672
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2022075204の分割
【原出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】荻山 大輝
(72)【発明者】
【氏名】森 健太郎
(57)【要約】
【課題】本発明は紅麹及び/又はその加工物を含む固形製剤でありながら、変色が抑制された固形製剤を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)紅麹及び/又はその加工物を含む固形製剤の変色を抑制する方法であって、前記固形製剤において、前記(A)成分と共に、(B)セルロース及びその誘導体、乳タンパク質、オリゴ糖、糖アルコール、食用加工油脂、増粘多糖類、並びにステアリン酸カルシウムからなる群より選択される添加剤を配合することで、紅麹及び/又はその加工物を含む固形製剤の変色を抑制できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)2重量%以上の紅麹及び/又はその加工物と、(B)ヒドロキシプロピルメチルセルロースとを含有する、固形製剤(但し、紅麹以外の麹を含むものを除く)。
【請求項2】
前記(B)成分の含有量が0.1重量%以上である、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
前記(A)成分1重量部に対する前記(B)成分の含有量が0.05~7重量部である、請求項1又は2に記載の固形製剤。
【請求項4】
(A)2重量%以上の紅麹及び/又はその加工物を含む固形製剤の変色を抑制する方法であって、前記固形製剤(但し、紅麹以外の麹を含むものを除く)において、前記(A)成分と共に、(B)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合する、変色抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紅麹及び/又はその加工物を含む固形製剤でありながら、変色が抑制された固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
紅麹は、穀類に紅麹菌を植菌して発酵させた麹であり、中国等で古くから食品材料又は醸造材料として利用されてきた。また、紅麹に含まれるモナコリンKがコレステロール改善作用を発現する(非特許文献1,2)ことが報告されており、紅麹は機能性素材としてサプリメントなどの製剤に配合されて利用されている。
【0003】
紅麹を配合した製剤について、その安全性及び機能性を向上させるための改良研究がされている。例えば、毒性物質シトリニンを共産生しない紅麹を産生する技術(特許文献1)、モナコリンK含量が多い紅麹を生産する技術(特許文献2)、及び紅麹から高濃度のモナコリンKを含むエキスを得る技術(特許文献3)等が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】発酵工学 第64巻 第6号 1986年発行
【非特許文献2】日本臨床栄養学会誌 第22巻 第3号 2000年発行
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07-274978号公報
【特許文献2】特開2000-106835号公報
【特許文献3】特開2002-27996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紅麹は体内で易溶性であるため、固形製剤として製剤化されるのが一般的である。しかしながら、紅麹を含む固形製剤は製剤安定性が悪く、光及び/又は熱に対して変色を起こしやすい。
【0007】
そこで、本発明の目的は、紅麹及び/又はその加工物を含む固形製剤でありながら、変色が抑制された固形製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討を行ったところ、紅麹及び/又はその加工物を含む固形製剤に所定の添加剤を配合することで、当該固形製剤の変色が抑制されることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)紅麹及び/又はその加工物と、(B)セルロース及びその誘導体、乳タンパク質及びその消化物、オリゴ糖、糖アルコール、食用加工油脂、増粘多糖類、並びにステアリン酸カルシウムからなる群より選択される添加剤とを含有する、固形製剤。
項2. 前記(A)成分の配合量が2重量%以上である、項1に記載の固形製剤。
項3. (A)紅麹及び/又はその加工物を含む固形製剤の変色を抑制する方法であって、前記固形製剤において、前記(A)成分と共に、(B)セルロース及びその誘導体、乳タンパク質、オリゴ糖、糖アルコール、食用加工油脂、増粘多糖類、並びにステアリン酸カルシウムからなる群より選択される添加剤を配合する、変色抑制方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、紅麹及び/又はその加工物を含む固形製剤でありながら、変色が抑制された固形製剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.固形製剤
本発明の固形製剤は、(A)紅麹及び/又はその加工物(以下において、「(A)成分」とも表記する。)と、(B)セルロース及びその誘導体、乳タンパク質及びその消化物、オリゴ糖、糖アルコール、食用加工油脂、増粘多糖類、並びにステアリン酸カルシウムからなる群より選択される添加剤(以下において、「(B)成分」又は「所定の添加剤」とも表記する。)とを含有することを特徴とする。本発明の固形製剤は、変色が抑制されている。以下、本発明の固形製剤について詳述する。
【0012】
(A)紅麹及び/又はその加工物
本発明の固形製剤は、(A)成分として紅麹及び/又はその加工物を含有する。紅麹は、穀類に紅麹菌を付着させ、発酵させた麹である。
【0013】
本発明で使用される紅麹の製造に使用される紅麹菌は、ベニコウジカビ科(Monascaceae)に属する糸状菌であればよい。ベニコウジカビ科に属する糸状菌としては、例えば、モナスカス属(Monascus)、及びバシペトスポラ属(Basipetospora)に属する糸状菌が挙げられ、好ましくはモナスカス属(Monascus)が挙げられる。
【0014】
モナスカス属に属する糸状菌としては、例えば、モナスカス・ピローサス(M. pilosus)、モナスカス・パープレウス(M. purpureus)、モナスカス・プビゲレス(M. pubigerus)、モナスカス・アンカ(M. anka)、モナスカス・セロルベセンス(M. serorubescens)、モナスカス・ルベルス(M. rubellus)、モナスカス・カオリアング(M. kaoliang)、モナスカス・ルビギノサス(M. rubiginosus)、モナスカス・メイジャー(M. major)、モナスカス・ルバー(M. ruber)、モナスカス・パキシイ(M. paxii)、モナスカス・フリギノサス(M. fuliginosus)、モナスカス・ビトレウス(M. vitreus)、モナスカス・バルケリ(M. barkeri)、モナスカス・エスピー(Monascus sp.)、これらの変種又は変異株が挙げられる。本発明で使用される紅麹は、1種の紅麹菌を使用して製造されたものであってもよく、2種以上の紅麹菌を組み合わせて製造されたものであってもよい。これらの紅麹菌の中でも、好ましくはモナスカス・ピローサスが挙げられる。
【0015】
本発明で使用される紅麹の原料として使用される穀類の種類については、可食性があり、紅麹菌による発酵が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、白米や玄米等の米類;小麦、大麦、ライ麦、燕麦等の麦類、大豆(白大豆、黒大豆、青大豆等)、これらの脱脂大豆、これらの胚軸等の豆類等が挙げられる。本発明で使用される紅麹は、1種の穀類を使用して製造されたものであってもよく、2種以上の穀類を組み合わせて製造されたものであってもよい。これらの穀類の中でも、好ましくは米類、より好ましくは白米が挙げられる。
【0016】
紅麹は、紅麹菌及び穀類を用いて、慣用の方法によって製造することができる。具体的には、蒸煮(炊き上げ、蒸し上げ)された穀類に紅麹菌を接種し、20~40℃程度の好気的条件で静置培養することによって紅麹を製造することができる。また、原料として使用される穀類は、必要に応じて、蒸煮前又は蒸煮後に細切又は粉砕処理に供していてもよい。
【0017】
本発明では、発酵後の紅麹をそのまま使用してもよく、また、発酵後の紅麹を、加熱、乾燥、破砕、粉砕、磨砕、抽出等の内1種以上の処理に供された紅麹の加工物を使用してもよい。
【0018】
紅麹の加工物としては、具体的には、乾燥紅麹、乾燥紅麹の粉末物、乾燥紅麹の細粒物、紅麹エキス末等の乾燥物;紅麹のペースト;紅麹エキス(濃縮エキスを含む)等が挙げられる。これらの紅麹の加工物の中でも、好ましくは乾燥物、より好ましくは乾燥紅麹の粉末物、乾燥紅麹の細粒物、更に好ましくは乾燥紅麹の粉末物が挙げられる。また、紅麹の加工物に含まれる紅麹菌及び酵素は、生菌又は活性を維持した状態であってもよく、また、加熱処理等により失活されていてもよい。
【0019】
紅麹の加工物は、商業的に入手したものを使用することもできる。例えば、乾燥米紅麹の粉末物は、商品名「V.紅麹3P-D」、「V.紅麹3P-D20」(いずれも小林バリューサポート株式会社製)として販売されており、本発明ではこれらの市販品を使用することができる。
【0020】
本発明の固形製剤において、(A)成分の含有量としては、例えば2重量%以上が挙げられ、より具体的には、5~30重量%、好ましくは10~20重量%が挙げられる。
或いは、本発明の固形製剤における(A)成分の含有量は、例えば40~99重量%又は45~95重量%であってもよい。
【0021】
(B)所定の添加剤
本発明の固形製剤は、(B)成分として、セルロース及びその誘導体、乳タンパク質及びその消化物、オリゴ糖、糖アルコール、食用加工油脂、増粘多糖類、並びにステアリン酸カルシウムからなる群より選択される添加剤を含む。これらの所定の添加剤を含むことにより、(A)成分を含む固形製剤の変色が抑制される。
【0022】
セルロース及びその誘導体
セルロースとしては、固形製剤における賦形剤としての役割を担うものであれば限定されるものではなく、日本薬局方に記載の種々のセルロースを使用することができる。また食品添加物として使用されるものを使用することもできる。セルロースの形態も特に問わず、例えば、結晶セルロース(微結晶セルロースを含む)を用いることもできる。また当該セルロースは、例えば結晶セルロース・カルメロースナトリウム(結晶セルロースとカルメロースナトリウムの混合物)等のように、他成分との混合物の形態で使用されてもよい。
【0023】
セルロースの誘導体としては、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルエチルセルロース等のセルロースのアルキル誘導体;ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のヒドロキシプロピル誘導体;カルボキシメチルセルロース(CMC、カルメロース)、及びそのカルシウム塩(カルメロースカルシウム)、カリウム塩(カルメロースカリウム)、ナトリウム塩(カルメロースナトリウム)等が挙げられる。
【0024】
これらのセルロース及びその誘導体は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらのセルロース及びその誘導体の中でも、変色抑制効果をより一層向上させる観点から、好ましくは結晶セルロース、セルロースのヒドロキシプロピル誘導体が挙げられる。
【0025】
乳タンパク質及びその消化物
乳タンパク質としては、乳に由来するタンパク質であれば特に限定されない。乳の由来生物としても特に限定されないため、乳としては、牛乳、ヤギ乳等が挙げられる。乳タンパク質の具体例としては、乳清タンパク質及びカゼインが挙げられる。
【0026】
乳タンパク質の消化物としては、上記の乳タンパク質をエンド型プロテアーゼで消化したものであれば特に限定されない。エンド型プロテアーゼとしては、例えば、ブロメライン、パパイン、アルカラーゼ、トリプシン等が挙げられる。乳タンパク質の消化物の加水分解率(加水分解率(%)は、(ホルモール態窒素量/全窒素量)×100により導出される。)としては特に限定されないが、例えば5~10%が挙げられる。
【0027】
これらの乳タンパク質及びその消化物は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
オリゴ糖
オリゴ糖としては、単糖の結合数2~20のものであれば特に限定されない。オリゴ糖の具体例としては、スクロース、ラクトース 、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、直鎖オリゴ糖、分岐オリゴ糖、ラフィノース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、ビートオリゴ糖、寒天オリゴ糖(アガロオリゴ糖)、シアリルオリゴ糖、パラチノースオリゴ糖、キシロオリゴ糖、イヌロオリゴ糖、カップリングシュガー、ニゲロオリゴ糖、パノースオリゴ糖、セロオリゴ糖、ペクチンオリゴ糖、レバンオリゴ糖、マンノオリゴ糖、環状オリゴ糖(シクロデキストリン)、ガラクトシルラクトース等が挙げられる。
【0029】
これらのオリゴ糖は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらのオリゴ糖の中でも、変色抑制効果をより一層向上させる観点から、好ましくはアガロオリゴ糖及び環状オリゴ糖が挙げられる。
【0030】
糖アルコール
糖アルコールとしては特に限定されないが、例えば、還元澱粉糖、還元麦芽糖等が挙げられる。
【0031】
これらの糖アルコールは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの糖アルコールの中でも、変色抑制効果をより一層向上させる観点から、好ましくは還元麦芽糖が挙げられる。
【0032】
食用加工油脂
食用加工油脂は、硬化油であれば特に限定されない。硬化油は、油脂に水素添加する方法により製造された、常温で固形の食用加工油脂である。このような食用加工油脂の材料となる油脂としては、植物性油脂及び動物性油脂を問わない。植物性油脂としては、大豆油、菜種油、パーム油、ヤシ油、パーム核油等が挙げられ、動物性油脂としては、鯨油、魚油、牛脂、豚脂等が挙げられる。
【0033】
これらの食用加工油脂は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの食用加工油脂の中でも、変色抑制効果をより一層向上させる観点から、好ましくは水添菜種油が挙げられる。
【0034】
増粘多糖類
増粘多糖類としては特に限定されないが、例えば、アラビアガム、キサンタンガム、カラギナン(例えば、カッパ型カラギナン、イオタ型カラギナン、ラムダ型カラギナン等)、ガラクトマンナン(例えば、ローカストビーンガム、タラガム、グァガム等)、アルギン酸類(例えば、アルギン酸、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム等)、アルギン酸エステル(例えば、アルギン酸プロピレングリコール等)等)、ペクチン(例えば、ローメトキシル(LM)ペクチン、ハイメトキシル(HM)ペクチン)、ジェランガム(例えば、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム等)、寒天、ゼラチン、タマリンドシードガム、グルコマンナン、ウェランガム、サイリウムシードガム、カラヤガム、カードラン、プルラン、澱粉、ファーセレラン等が挙げられる。
【0035】
これらの増粘多糖類は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの増粘多糖類の中でも、変色抑制効果をより一層向上させる観点から、好ましくはアラビアガム、ジェランガム、プルランが挙げられる。
【0036】
ステアリン酸カルシウム
ステアリン酸カルシウムとしては、好ましくは食品添加物公定書に収載されているものを用いることができる。
【0037】
本発明の固形製剤において、(B)成分の含有量としては、総量で、例えば0.1重量%以上が挙げられ、好ましくは1~70重量%、より好ましくは1.5~60重量%が、更に好ましくは10~50重量%が挙げられる。
【0038】
本発明の固形製剤において、(A)成分と(B)成分との比率については、各成分の上記の含有量に応じて定まるが、変色抑制効果をより一層向上させる観点から、(A)成分1重量部に対する(B)成分の含有量として、好ましくは0.05~7重量部、より好ましくは0.1~5重量部、さらに好ましくは0.2~4重量部、一層好ましくは0.5~3重量部が挙げられる。
【0039】
その他の成分
本発明の固形製剤は、前記(A)成分及び(B)成分の他に、必要に応じて、他の栄養成分及び/又は薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分及び薬理成分としては、飲食品及び/又は医薬品に使用可能なものであれば特に制限されないが、例えば、ビタミン、ミネラル、糖質(上記(B)成分以外)、脂肪酸、香料、調味剤、植物エキス(上記(A)成分以外)、抗酸化剤(上記(A)成分以外)等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する栄養成分及び/又は薬理成分の種類並びに経口組成物の用途等に応じて適宜設定される。
【0040】
更に、本発明の固形製剤は、所望の製剤形態に調製するために、必要に応じて、基剤及び/又は添加剤等が含まれていてもよい。このような基剤及び添加剤としては、食品及び/又は医薬品に使用可能なものであれば特に制限されないが、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等(いずれも上記(B)成分以外)が挙げられる。これらの成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する基剤及び/又は添加剤の種類並びに固形製剤の用途等に応じて適宜設定される。
【0041】
剤型・製剤形態
本発明の固形製剤の剤型については特に限定されないが、例えば、顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤(ハードカプセル剤)等が挙げられる。本発明の固形製剤は変色抑制効果に優れているため、カプセル剤である場合の好適な例として、透光性のカプセルに収容されたカプセル剤が挙げられる。
【0042】
本発明の固形製剤は、適宜、任意の容器に収容されることができる。本発明の固形製剤は変色抑制効果に優れているため、容器の好適な例として、透光性の容器、及び開閉自在な個包装でない容器(つまり、容器の開閉により、収容した固形製剤が不可避的に容器の外環境に高頻度で晒される形態のもの)が挙げられる。
【0043】
本発明の固形製剤の形態として、具体的には、飲食品及び内服用医薬品(内服用の医薬部外品を含む)が挙げられる。
【0044】
本発明の固形製剤を食品の製剤形態にする場合、前記(A)成分及び(B)成分を、そのままで又は他の食品素材や添加成分と組み合わせて所望の形態に調製すればよい。このような食品としては、一般の食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性表示食品、病者用食品等が挙げられる。これらの飲食品の形態として、特に制限されないが、具体的には顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤等のサプリメント等が挙げられる。
【0045】
本発明の固形製剤を内服用の医薬品の製剤形態にする場合、前記(A)成分及び(B)成分を、そのままで又は他の添加成分と組み合わせて所望の形態に調製すればよい。このような内服用の医薬品としては、具体的には、顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤等が挙げられる。
【0046】
2.変色抑制方法
上述のとおり、(B)成分は、(A)成分を含む固形製剤の変色を抑制できる。より具体的には、(B)成分は、(A)成分を含む固形製剤の、熱及び光の少なくともいずれかによる変色に対する抑制能を有する。従って、本発明は、さらに、(A)紅麹及び/又はその加工物を含む固形製剤の変色を抑制する方法であって、前記固形製剤において、前記(A)成分と共に、(B)セルロース及びその誘導体、乳タンパク質、オリゴ糖、糖アルコール、食用加工油脂、増粘多糖類、並びにステアリン酸カルシウムからなる群より選択される添加剤を配合する変色抑制方法も提供する。
【0047】
本発明の変色抑制方法において、使用する成分の種類、使用量等の詳細については、前記「1.固形製剤」の欄に示す通りである。
【実施例0048】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
試験例
表1及び表2に示す組成の固形製剤を調製した。各表に示した(A)成分及び(B)成分の詳細は次の通りである。
【0050】
(A)成分
紅麹:乾燥米紅麹の粉末物(商品名「3P-D20」、小林バリューサポート株式会社製、この乾燥米紅麹の粉末物は、モナスカス・ピローサスで白米を発酵させた紅麹の乾燥粉末物であり、加熱処理により紅麹菌及び酵素は失活した状態になっている。)
【0051】
(B)成分
HPMC:メトローズ60SH-4001、信越化学工業株式会社
HPC:NISSO HPC(HPC-SSL)、日本曹達株式会社
結晶セルロース:結晶セルロースFD-302、旭化成株式会社
乳清タンパク質:Wheyco W81 Instant、日本新薬株式会社
アガロオリゴ糖:シオノギアガオリゴ、シオノギヘルスケア株式会社
還元麦芽糖:アマルティMR-51、三菱商事ライフサイエンス株式会社
硬化菜種油:ラブリワックスー102、川研ファインケミカル株式会社
アラビアガム:Instantgum、Nexira
プルラン:食品添加物プルラン、株式会社林原
ステアリン酸Ca:オーラブライトCA-66、日油株式会社
炭酸Ca:ホタテ末、株式会社エヌ・シー・コーポレーション
【0052】
各成分を袋に入れてよく混合させ、100メッシュのふるいにかけた。再度、袋に入れて混合することで、固形製剤(散剤)を得た。得られた固形製剤について、以下の変色抑制試験を行った。
【0053】
<変色抑制試験>
固形製剤30gを、10gずつの3つの試験群(コントロール、温度試験群、及び光試験群)に分けた。コントロールについては、透明の袋(株式会社セイニチ、ユニパック[E-4])に入れた後、さらにアルミの外袋(株式会社セイニチ、ラミジップ[AL-18])に入れてヒートシールした状態で、4℃に1週間保管した。温度試験群については、上記の透明の袋に入れ、さらに上記のアルミの外袋に入れて、ヒートシールした状態で、40℃で1週間保管した。光試験群については、上記の透明の袋に固形製剤を入れて均一に伸ばし、1週間(2022年3月18日~2022年3月25日、大阪府茨木市)太陽光が当たる場所で保管した。
【0054】
各試験群について、色差計を用い、コントロールと温度試験群とにおける色の変化量(ΔE(温度))及びコントロールと光試験群とにおける色の変化量(ΔE(光))を測定することで、色の変化を定量的に確認した。結果を表1及び表2に示す。
【0055】
【表1】


【0056】
【表2】

【0057】
表1に示される通り、(A)成分からなる固形製剤は熱による変色が確認された(比較例1)一方で、(A)成分からなる固形製剤に(B)成分を配合することで、固形製剤の熱による変色が抑制された(各実施例)。また、(B)成分からなる固形製剤では熱による変色の程度が(A)からなる固形製剤に比べて大きいもの、同程度のもの、ある程度小さいものが認められたが(各参考例)、それらの程度に鑑みても、各実施例による熱による変色抑制効果は顕著であった。なお、(B)成分と同様に固形製剤において賦形剤として用いられる炭酸カルシウムを用いた場合には熱による変色抑制効果が見られず顕著に悪化した(比較例11-1)ことに鑑みると、各実施例で確認された熱による変色に対する抑制効果は、(B)成分を配合することによる特有の効果であると認められる。
【0058】
表2に示される通り、(A)成分からなる固形製剤は光による変色が確認された(比較例1)一方で、(A)成分からなる固形製剤に(B)成分を配合することで、固形製剤の光による変色が抑制された(各実施例)。また、(B)成分からなる固形製剤では光による変色の程度が(A)からなる固形製剤に比べて大きいもの、同程度のもの、ある程度小さいものが認められたが(各参考例)、それらの程度に鑑みても、各実施例による光による変色抑制効果は顕著であった。なお、(B)成分と同様に固形製剤において賦形剤として用いられる炭酸カルシウムを用いた場合には光による変色抑制効果が見られず顕著に悪化した(比較例11-1)ことに鑑みると、各実施例で確認された光による変色に対する抑制効果は、(B)成分を配合することによる特有の効果であると認められる。