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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166110
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】装置及び該装置の取り扱い方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/28 20060101AFI20231114BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20231114BHJP
   B23Q 1/58 20060101ALI20231114BHJP
   B23Q 1/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B23Q1/28 C
H01L21/78 F
B23Q1/28 B
B23Q1/58 Z
B23Q1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076907
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 健太呂
【テーマコード(参考)】
3C048
5F063
【Fターム(参考)】
3C048AA03
3C048BB03
3C048BC08
3C048DD01
5F063AA29
5F063CA04
(57)【要約】
【課題】搬送前に可動体を固定する固定部材を介在させる作業、搬送後の該固定部材を外し回収、処分する作業が必要となり、該作業が面倒で煩わしいという問題を解消する装置を提供する。
【解決手段】レール体2b、2bと、レール体2b、2bに移動可能に配設された可動体53と、を含む装置1であって、膨張することによりレール体2b、2bに可動体53を固定するバルーン40と、バルーン40にエアー100を供給するエアー供給部及びバルーン40からエアーを排出するエアー排出部を兼ねる開口部22と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール体と、該レール体に移動可能に配設された可動体と、を含む装置であって、
膨張することにより該レール体に該可動体を固定するバルーンと、該バルーンにエアーを供給するエアー供給部と、該バルーンからエアーを排出するエアー排出部と、
を備えた装置。
【請求項2】
該エアー供給部は、エアーを供給する開口部と、該開口部から該バルーンに連通する連通路と、該連通路に配設された逆止弁と、から構成され、
該エアー排出部は、該開口部から該逆止弁を押圧して該バルーンのエアーを該開口部から排出するエアー抜き器を含む請求項1に記載の装置。
【請求項3】
該エアー抜き器は、吸引源を備える請求項2に記載の装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置の取り扱い方法であって、
該エアー供給部からエアーを供給して該バルーンを膨張させて該レール体に該可動体を固定する固定ステップと、
該装置を設置場所まで移動する移動ステップと、
該設置場所において、該エアー排出部からエアーを排出して該バルーンを収縮させて該可動体の固定を解除する固定解除ステップと、
を含み構成される装置の取り扱い方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール体と、該レール体に移動可能に配設された可動体と、を含む装置及び該装置の取り扱い方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが、分割予定ラインによって区画されて表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
ダイシング装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りするY軸送り手段と、該切削手段をX軸方向及びY軸方向と直交するZ軸方向に切り込み送りするZ軸送り手段と、複数のウエーハを収容したカセットを載置し上下動するカセットテーブルと、カセットから仮受けテーブルまでウエーハを搬出する搬出手段と、該仮受けテーブルから該チャックテーブルまでウエーハを搬送する搬送手段と、を含み構成されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-111628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のダイシング装置を搬送元(例えば製造工場)から貨物トラック等により設置場所まで搬送する際には、X軸送り手段、Y軸送り手段、Z軸送り手段等によりレール体に沿って移動させられる可動体が動かないように固定する必要がある。そのため、搬送前に該可動体を固定する固定部材を介在させる作業を実施すると共に、設置場所に到着した後、該固定部材を外し、該固定部材を回収、又は処分する作業が必要となり、該作業が面倒で煩わしいという問題がある。このような問題は、上記したダイシング装置に限らず、レーザー加工装置や、その他のレール体と該レール体に移動可能に配設された可動体と、を含む装置全般に起こり得る問題である。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、搬送前に可動体を固定する固定部材を介在させる作業を実施すると共に、設置場所に到着した後、該固定部材を外し、該固定部材を回収、又は処分する作業が必要となり、該作業が面倒で煩わしいという問題を解消する装置、及び該装置の取り扱い方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、レール体と、該レール体に移動可能に配設された可動体と、を含む装置であって、膨張することにより該レール体に該可動体を固定するバルーンと、該バルーンにエアーを供給するエアー供給部と、該バルーンからエアーを排出するエアー排出部と、を備えた装置が提供される。
【0008】
該エアー供給部は、エアーを供給する開口部と、該開口部から該バルーンに連通する連通路と、該連通路に配設された逆止弁と、から構成され、該エアー排出部は、該開口部から該逆止弁を押圧して該バルーンのエアーを該開口部から排出するエアー抜き器を含むようにすることが好ましい。また、該エアー抜き器は、吸引源を備えるようにしてもよい。
【0009】
また、本発明によれば、上記した装置の取り扱い方法であって、該エアー供給部からエアーを供給して該バルーンを膨張させて該レール体に該可動体を固定する固定ステップと、該装置を設置場所まで移動する移動ステップと、該設置場所において、該エアー排出部からエアーを排出して該バルーンを収縮させて該可動体の固定を解除する固定解除ステップと、を含み構成される装置の取り扱い方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の装置は、レール体と、該レール体に移動可能に配設された可動体と、を含む装置であって、膨張することにより該レール体に該可動体を固定するバルーンと、該バルーンにエアーを供給するエアー供給部と、該バルーンからエアーを排出するエアー排出部と、を備えていることから、該装置を搬送元から設置場所まで搬送する間、該装置が揺れたり、振動したりしても、可動体がレール体に固定されて動くことが防止可能になり、可動体が動かないように、別途の固定部材を介在する作業、及び設置場所に到着した後に、固定部材を外して固定部材を処分したり回収したりする作業が不要となり、設置作業が面等で煩わしいという問題を解消することが可能になる。
【0011】
また、本発明の装置の取り扱い方法は、該装置の該エアー供給部からエアーを供給して該バルーンを膨張させて該レール体に該可動体を固定する固定ステップと、該装置を設置場所まで移動する移動ステップと、該設置場所において、該エアー排出部からエアーを排出して該バルーンを収縮させて該可動体の固定を解除する固定解除ステップと、を含み構成されることから、該装置を搬送元から設置場所まで搬送する間、該装置が揺れたり、振動したりしても、可動体がレール体に固定されて動くことが防止され、可動体が動かないように、別途の固定部材を介在する作業、及び設置場所に到着した後に、固定部材を外して固定部材を処分したり回収したりする作業が不要となり、設置作業が面等で煩わしいという問題が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ダイシング装置の全体斜視図である。
図2】(a)図1に記載のダイシング装置に装着された第2の可動体の一部が断面とされた正面図、(b)(a)に示す第2の開口部及び逆止弁を拡大して示す断面図である。
図3】(a)本実施形態の固定ステップの実施態様を示す第2の可動体の一部を断面で示す正面図、(b)(a)に示す第2の可動体の第2の開口部及び逆止弁の拡大断面図である。
図4】本実施形態の固定解除ステップの実施態様を示す第2の可動体の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に基づいて構成される装置及び該装置の取り扱い方法に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明の装置に係る実施形態として開示するダイシング装置1の全体斜視図が示されている。ダイシング装置1は、静止基台2上に配設されており、被加工物を保持する保持手段3と、保持手段3に保持された被加工物に切削加工を施す切削手段5と、保持手段3を図中矢印Xで示すX軸方向に加工送りする第1の送り手段6と、切削手段5を該X軸方向と直交する図中矢印Yで示すY軸方向に割り出し送りする第2の送り手段7と、を備えている。
【0015】
静止基台2の上面2cには、X軸方向に沿う一対の第1のレール体2a、2aと、Y軸方向に沿う一対の第2のレール体2b、2bが配設されている。保持手段3は、該第1のレール体2a、2aに移動可能に配設された第1の可動体31と、第1の可動体31の上面31aに固定された円柱部材32と、円柱部材32の上部に固定されたカバー部材33と、カバー部材33の上面に突出し、被加工物を吸引保持するチャックテーブル34と、チャックテーブル34の外周に均等な間隔で複数(本実施形態では4つ)配設され被加工物を支持するフレーム(図示は省略している)を把持するクランプ35と、を備えている。
【0016】
第1の送り手段6は、モータ61とボールスクリュー62とを含む。ボールスクリュー62の一端部にモータ61が配設され、他端部は、基台2の上面2cに配設された軸受部63により回転自在に支持されている。モータ61の回転運動は、ボールスクリュー62を介して第1の可動体31の下面側に配設された図示を省略するナット部材にボールねじ機構により伝達されて直線運動に変換される。これにより、第1の可動体31の下面側の摺動溝31b、31bが摺動自在に係合する第1のレール体2a、2aに沿って第1の可動体31をX軸方向において進退させる。
【0017】
切削手段5は、第2の可動体53によって支持されて、保持手段3がX軸方向において移動する領域のY軸方向に隣接した後方位置に配設されている。切削手段5はスピンドルユニット50を備えている。スピンドルユニット50の先端側には、ブレードカバー52が配設され、スピンドルユニット50によって回転自在に支持された回転スピンドルの先端部に固定された切削ブレード51を保護している。スピンドルユニット50の後端側には図示を省略するサーボモータ等の回転駆動源が収容されており、該サーボモータを回転させることで切削ブレード51を回転させる。また、スピンドルユニット50には、保持手段3に保持される被加工物を撮像し加工すべき領域を検出する撮像手段4が一体的に配設されている。
【0018】
第2の可動体53は、水平壁部53aと、水平壁部53aに立設された垂直壁部53bとを備え、水平壁部53aの下面側に配設されたレール係合部53c、53cが、第2のレール体2b、2bに摺動自在に係合し、第2の送り手段7によって移動可能に構成されている。第2の送り手段7は、サーボモータ71と、基台2上に配設された軸受部73に端部が回転自在に支持されたボールスクリュー72とを備え、サーボモータ71の回転運動を、水平壁部53aの下面側に配設された図示を省略するナット部材に伝達し、ボールねじ機構を介して直線運動に変換し、第2のレール体2b、2bに沿って第2の可動体53をY軸方向において進退させる。
【0019】
第2の可動体53の垂直壁部53bの側面には、矢印Zで示すZ軸方向(上下方向)に沿って支持された一対の第3のレール体54、54が設けられている(一部を破線で示す)。第3のレール体54、54には、スピンドルユニット50を支持する支持部材として機能する第3の可動体55が摺動可能に取り付けられている。上記した垂直壁部53bには、サーボモータ56が配設されており、サーボモータ56の回転を、軸受部に一端部が回転自在に支持された図示を省略するボールスクリューを介して、ボールねじ機構により直線運動に変換し、第3の可動体55に伝達する。サーボモータ56を正転、又は逆転させることにより、第3の可動体55をZ軸方向に進退させる。
【0020】
ダイシング装置1には、図示を省略する制御手段が配設されている。制御手段は、コンピュータにより構成され、制御プログラムに従って演算処理を実行する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース、及び出力インターフェースとを備えている(詳細についての図示は省略する)。該制御手段は、ダイシング装置1の各作動部を制御すると共に、撮像手段4によって撮像された画像に基づき、アライメントを行うことができる。
【0021】
本実施形態のダイシング装置1の第1の可動体31には、膨張することにより第1のレール体2a、2aに第1の可動体31を固定するバルーンが配設され、第2の可動体53の水平壁部53aにも、膨張することにより第2のレール体2b、2bに第2の可動体53を固定するバルーンが配設されている。さらに、第1の可動体31、水平壁部53aのそれぞれに、各バルーンにエアーを供給するエアー供給部と、該バルーンからエアーを排出するエアー排出部とが配設されている。
【0022】
本実施形態では、図1に示す第1の可動体31の上面31aに配設された第1の開口部31c、及び水平壁部53aの上面53dに配設された第2の開口部22のそれぞれが、上記したエアー供給部とエアー排出部とを兼ねている。
【0023】
図2(a)には、上記した第2の可動体53の水平壁部53aの第2の開口部22が形成された領域の一部のみをX軸方向に切った断面とした正面図が示されている。図示のように、該水平壁部53aの下面側には、バルーン40が配設され、上記の第2の開口部22をエアー供給部としてバルーン40にエアーが供給されると共に、第2の開口部22をエアー排出部としてバルーン40からエアーが排出される。さらに、本実施形態では、第2の開口部22は、逆止弁20を備えている。上記した図2(a)と、逆止弁20を含む第2の開口部22が形成された領域を拡大した図2(b)を参照しながら以下に説明する。
【0024】
図2(b)に示すように、第2の開口部22の下方側には、バルーン40に連通する連通路23、逆止弁20が形成されている。逆止弁20は、例えばボール弁タイプの逆止弁である。逆止弁20は、連通路23に形成された弁座24と、該弁座24に当接する金属製の球体からなるボール弁26と、該ボール弁26を閉弁する方向に押圧する圧縮コイルばね27と、圧縮コイルばね27を保持するばね座28aを備え、バルーン40の開口部42を保持する連結部材28と、を備えている。第2の可動体53の水平壁部53aに対してバルーン40を配設する場合は、該水平壁部53aの連通路23に下方側からねじ込むことにより配設する。該バルーン40は、図2(a)に示すように、開口部42、蛇腹部43、及び下面部44を備えるものであり、バルーン40の内部に圧縮空気が導入されず、該内部が大気に開放された場合には、蛇腹部43の作用により収縮し、図2(a)に示すように、下面部44が静止基台2の上面2cから大きく離反した状態になる。
【0025】
なお、上記した実施形態において配設された第2の開口部22は、エアー供給部とエアー排出部とを兼ねているが、本発明はこれに限定されず、水平壁部53aの上面53dに開口部を二つ形成し、一方をエアー供給部とし、他方をエアー排出部としてもよい。
【0026】
また、第1の可動体31の第1の開口部31cにも上記した逆止弁20と同様の逆止弁を配設し、第1の開口部31c及び該逆止弁を介して、上記したバルーン40と同様のバルーンに対してエアーが供給され、該第1の開口部31c及び逆止弁を介して該バルーンからエアーが排出される(詳細な説明は省略する)。
【0027】
本実施形態のダイシング装置1は、概ね上記したとおりであり、上記したダイシング装置1を、搬送元、例えば、ダイシング装置1の組み立て工場から、所望の設置場所(例えば、半導体ウエーハを切削加工する加工工場)に移動して設置する際の本装置の取り扱い方法について説明する。
【0028】
搬送元からダイシング装置1を搬送する前に、第1のレール体2a、2aに第1の可動体31を固定し、第2のレール体2b、2bに第2の可動体53を固定するための固定ステップを実施する。該固定ステップについて、第2のレール体2b、2b及び第2の可動体53を示す図3を参照しながらより具体的に説明する。
【0029】
該固定ステップを実施するに際し、予め第1の可動体31及び第2の可動体53を、所定の固定位置に移動させておく。次いで、搬送元(例えば組み立て工場)において、図3(a)に示すエアー供給装置8を用意する。エアー供給装置8は、高圧のエアー100を噴出する供給ノズル81と、エアー供給路82と、該エアー供給路82上に配設される開閉弁83と、エアー供給路82にエアー100を供給するエアーポンプ84とを備えている。エアー供給装置8を用意したならば、第1の可動体31、及び第2の可動体53を該固定位置に移動させた状態で、開閉弁83を開放すると共に、エアーポンプ84を作動し、エアー供給路82にエアー100を供給する。そして、供給ノズル81を、図3(a)、(b)に示すように、水平壁部53aの第2の開口部22に位置づけて、高圧のエアー100を導入する。これにより、図3(b)に示すように、ボール弁26が弁座24から離れて逆止弁20を開放し、連通路23にエアー100が通過する通路を形成し、バルーン40の内部に該エアー100を導入して、バルーン40を膨張させる。この結果、バルーン40の下面部44が静止基台2の上面2cに当接する。これにより、第2の可動体53は、第2のレール体2b、2bに対して固定される。この手順と同様の手順を、第1の可動体31の上面31a上に形成された第1の開口部31cに対しても実行して、上記したエアー供給装置8の供給ノズル81から、第1の開口部31c、及び図示を省略する逆止弁を介して第1の可動体31の下面に配設されたバルーンにエアー100を供給する。これにより、上記のバルーン40と同様に、該バルーンを膨張させて、静止基台2の上面2cに当接させて、第1のレール体2a、2aに、第1の可動体31を固定する。以上により、固定ステップが完了する。
【0030】
上記のように、固定ステップを実施したならば、該ダイシング装置1を、所望の設置場所まで移動する移動ステップを実施する。該装置移動ステップの詳細は省略するが、貨物トラック等の運送車両に載せる等して設置場所に搬送する。
【0031】
該設置場所にダイシング装置1を搬送したならば、適宜の組み立て作業等を経て以下に説明する固定解除ステップを実施する。
【0032】
固定解除ステップを実行するに際し、本実施形態では、図4に示すエアー抜き器9を使用する。エアー抜き器9は、上下に貫通する通路91を備えると共に該通路91の上端に環状鍔部92を有する中空円筒状の基部93を備えている。該基部93の下端側には、図示の如き下方に向け凹状に切り欠いた複数の切り欠け部94(本実施形態では、均等な間隔で4つ)が形成されている。基部93の直径は、上記した第2の開口部22の直径より若干小さい径で形成されている。上記したエアー抜き器9を用意し、図4に示すように、エアー抜き器9の基部93を第2の開口部22に挿入し、基部93の切り欠け部94側を、ボール弁26に当接して押し下げる。これにより、ボール弁26が弁座24から離れて、逆止弁20が開放され、バルーン40の内部に蓄圧されていた圧縮エアー100が、連通路23を介して、外部に排出される。この結果、バルーン40は、蛇腹部43の作用により収縮して、下面部44が、静止基台2の上面2cから離反し、第2の可動体53の第2のレール体2b、2bへの固定が解除される。これと同様の手順により、第2の開口部22と同一の直径に形成された第1の開口部31cに上記のエアー抜き器9を挿入して、第1の可動体31の下面側に配設された図示を省略するバルーンから圧縮エアー100を排出して収縮させ、第1の可動体31の第1のレール体2a、2aへの固定を解除する。以上により固定解除ステップが完了し、ダイシング装置1を、搬送元、例えば、ダイシング装置1の組み立て工場から、所望の設置場所(例えば、半導体ウエーハを切削加工する加工工場)に搬送して設置するまでの本装置の取り扱い方法が完了する。
【0033】
なお、本発明は、必ずしも上記した形態のエアー抜き器9を使用することに限定されない。例えば、第2の開口部22よりも細い棒状部材により、逆止弁20のボール弁26を押し下げることによっても、逆止弁20を開放することが可能である。
【0034】
上記した本実施形態のダイシング装置1によれば、ダイシング装置1を搬送元から設置場所まで搬送する間、該ダイシング装置1が揺れたり、振動したりしても、第1の可動体31、及び第2の可動体53が第1のレール体2a、2a、及び第2のレール体2b、2bに固定されて動くことが防止可能になる。さらに、各可動体が動かないように、別途の固定部材を介在する作業、及び設置場所に到着した後に、固定部材を外して固定部材を処分したり回収したりする作業が不要となり、設置作業が面等で煩わしいという問題を解消することが可能になる。
【0035】
さらに、上記のダイシング装置1の取り扱い方法を実施することにより、ダイシング装置1を搬送元から設置場所まで搬送する間、該ダイシング装置1が揺れたり、振動したりしても、第1の可動体31、及び第2の可動体53が第1のレール体2a、2a、第2のレール体2b、2bに固定されることから、搬送中に動くことを防止することができ、各可動体が動かないように、別途の固定部材を介在する作業、及び設置場所に到着した後に、固定部材を外して該固定部材を処分したり回収したりする作業が不要となり、設置作業が面等で煩わしいという問題を解消することができる。
【0036】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されない。上記した実施形態のバルーン40は、蛇腹部43を有することで、膨張・収縮するものであったが、本発明のバルーンはこれに限定されず、例えば、蛇腹部43を有しない合成ゴムから形成される風船状のバルーンであってもよい。また、上記した実施形態では、固定解除ステップを実施する際に、エアー抜き器9を別途用意して、バルーン40からエアー100を排出すべく第2の開口部22に挿入するようにしたが、該エアー抜き器9を、予め第2の開口部22に対して装着しておき、エアー排出部の一部として構成するようにしてもよい。
【0037】
また、上記した実施形態では、エアー抜き器9を使用して、エアー抜き器9の通路91からエアー100を排出したが、該エアー抜き器9に対して、図示を省略する吸引源を備えるようにしてもよい。エアー抜き器9に吸引源を配設した場合には、上記の固定解除ステップを実施する際に、該吸引源を作動することで、バルーン40から速やかに且つ十分にエアー100を排出して、確実に固定解除ステップを実施することができる。
【0038】
さらに、上記した実施形態では、第1のレール体2a、2aと第1の可動体31との間、及び第2のレール体2b、2bと第2の可動体53の水平壁部53aとの間に、本発明に基づき構成したバルーンを配設し、該バルーンにエアーを供給するエアー供給部と、該バルーンからエアーを排出するエアー排出部とを設ける例を示したが、上記したダイシング装置1の第3のレール体54、54と第3の可動体55との間にも同様のバルーンを配設すると共に、第3の可動体55に対し、該バルーンにエアーを供給するエアー供給部及び該バルーンからエアーを排出するエアー排出部に相当する開口部を配設し、上記した取り扱い方法の固定ステップ、及び固定解除ステップを実施するようにしてもよい。
【0039】
また、上記した実施形態では、本発明に基づき構成する装置を、ダイシング装置1に適用する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、レーザー加工装置に適用することも可能であり、また、レール体と該レール体に移動可能に配設された可動体と、を含む装置全般に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1:ダイシング装置
2:静止基台
2a:第1のレール体
2b:第2のレール体
2c:上面
3:保持手段
31:第1の可動体
31a:上面
31b:摺動溝
31c:第1の開口部
32:円柱部材
33:カバー部材
34:チャックテーブル
35:クランプ
4:撮像手段
5:切削手段
50:スピンドルユニット
51:切削ブレード
52:ブレードカバー
53:第2の可動体
53a:水平壁部
53b:垂直壁部
53c:レール係合部
53d:上面
54:第3のレール体
55:第3の可動体
56:サーボモータ
6:第1の送り手段
61:モータ
62:ボールスクリュー
63:軸受部
7:第2の送り手段
71:サーボモータ
72:ボールスクリュー
8:エアー供給装置
81:供給ノズル
82:エアー供給路
83:開閉弁
84:エアーポンプ
9:エアー抜き器
91:通路
92:環状鍔部
93:基部
94:切り欠け部
20:逆止弁
22:第2の開口部
23:連通路
24:弁座
25:連通路
26:ボール弁
27:圧縮コイルばね
28:連結部材
40:バルーン
42:開口部
43:蛇腹部
44:下面部
100:エアー
図1
図2
図3
図4