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特開2023-166174かご構造を有するシルセスキオキサン及びレジスト組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166174
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】かご構造を有するシルセスキオキサン及びレジスト組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/075 20060101AFI20231114BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G03F7/075 511
G03F7/039 601
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077037
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大野 芙美
(72)【発明者】
【氏名】村田 貴朗
(72)【発明者】
【氏名】森 秀晴
(72)【発明者】
【氏名】村田 翔太
【テーマコード(参考)】
2H225
【Fターム(参考)】
2H225AF24P
2H225AF43P
2H225AK02
2H225AN39P
2H225CA12
2H225CB08
2H225CC03
2H225CC15
(57)【要約】
【課題】本発明のかご構造を有するシルセスキオキサンを含むレジスト組成物は、電子線
や極端紫外光(EUV)等の短波長の光源を使用した場合に、ドライエッチング耐性に優
れ、微細なパターンを形成することができる。
【解決手段】下記式1で表されるかご構造を有するシルセスキオキサン。
(RmSiO1.5)m ・・・1
式中、Rmは炭化水素基を示し、mは3~30の整数。RmはRa又は、構造の異なる
Ra、Rbを含み、Raは酸脱離性基を有し、Rbは極端紫外線及び電子線の少なくとも
一方を吸収して2次電子を発生する基を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表されるかご構造を有するシルセスキオキサン。
(RmSiO1.5)m ・・・1
式中、Rmは炭化水素基を示し、mは3~30の整数。
RmはRa又は、構造の異なるRa、Rbを含み、
Raは酸脱離性基を有し、Rbは極端紫外線及び電子線の少なくとも一方を吸収して2
次電子を発生する基を有する。
【請求項2】
前記Raが、さらにアミノ基を含む、請求項1記載のかご構造を有するシルセスキオキ
サン。
【請求項3】
前記Rbが、さらにアミノ基を含む、請求項1記載又は請求項2記載のかご構造を有す
るシルセスキオキサン。
【請求項4】
前記Raと前記Rbの比率が95:5~5:95である、請求項1記載のかご構造を有
するシルセスキオキサン。
【請求項5】
Rmとしてラクトン骨格を有する基Rcを含む、請求項1記載のかご構造を有するシル
セスキオキサン。
【請求項6】
Rmとして、親水性基を有する基Rdを含む、請求項1記載のかご構造を有するシルセ
スキオキサン。
【請求項7】
請求項1に記載のかご構造を有するシルセスキオキサンを含むレジスト組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のレジスト組成物を用いた、パターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かご構造を有するシルセスキオキサン及び、前記シルセスキオキサンを含む
レジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
かご構造を有するシルセスキオキサンは、その硬直なポリシロキサン骨格と、サブナノ
レベルの分子サイズから、高い透明性、耐熱性、表面硬度・耐擦傷性、機械強度等を有し
ており、ハードコート材料、耐熱材料、レジスト材料等の用途が検討されている。
例えば特許文献1には、かご構造を有するシルセスキオキサンを含む、リソグラフィー
用のレジスト組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-120375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の方法では、近年の回路パターンの細線化に伴う、電子線や極
端紫外光(EUV)等の短波長の光源を用いたリソグラフィーへの対応が不十分であった

本発明はこれらの問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]下記式1で表されるかご構造を有するシルセスキオキサン。
(RmSiO1.5)m ・・・1
式中、Rmは炭化水素基を示し、mは3~30の整数。RmはRa又は、構造の異なる
Ra、Rbを含み、Raは酸脱離性基を有し、Rbは極端紫外線及び電子線の少なくとも
一方を吸収して2次電子を発生する基を有する。
[2]前記Raが、さらにアミノ基を含む、[1]記載のかご構造を有するシルセスキオ
キサン。
[3]前記Rbが、さらにアミノ基を含む、[1]又は[2]記載のかご構造を有するシ
ルセスキオキサン。
[4]前記Raと前記Rbの比率が95:5~5:95である、[1]~[3]のいずれ
かに記載のかご構造を有するシルセスキオキサン。
[5]Rmとしてラクトン骨格を有する基Rcを含む、[1]~[4]のいずれかに記載
のかご構造を有するシルセスキオキサン。
[6]Rmとして、親水性基を有する基Rdを含む、[1]~[5]のいずれかに記載の
かご構造を有するシルセスキオキサン。
[7][1]~[6]のいずれかに記載のかご構造を有するシルセスキオキサンを含むレ
ジスト組成物。
[8][7]に記載のレジスト組成物を用いた、パターン形成方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の、かご構造を有するシルセスキオキサンは、異なる物性の官能基を2種類以上
有することにより、種々の用途への展開が可能となる。特に、本発明のかご構造を有する
シルセスキオキサンを含むレジスト組成物は、電子線や極端紫外光(EUV)等の短波長
の光源を使用した場合に、ドライエッチング耐性に優れ、微細なパターンを形成すること
ができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のかご構造を有するシルセスキオキサンは、下記式1で表される。
(RmSiO1.5)m ・・・1
式中、Rmは炭化水素基を示し、mは3~30の整数である。
微細なパターンを形成するために、分子サイズが小さく分子鎖の絡まり合いも弱くする
点から、mは30以下が好ましく、20以下がより好ましい。
【0008】
前記シルセスキオキサン構造は完全かご型シルセスキオキサン構造であっても、不完全
かご型シルセスキオキサン構造であってもよい。例えば完全かご型シルセスキオキサン構
造としては以下の化合物が挙げられる。
【0009】
【化1】
【0010】
(ここで、各頂点は置換基をそれぞれ1個含有する珪素原子であり、各辺はSi-O-S
i結合を表す。)
本発明では、剛直な化学構造を有する有機ケイ素化合物を含むことにより、例えば、ド
ライエッチング耐性に優れたものとなる。
本発明において、前記シルセスキオキサンのRmは、構造の異なるRa、Rbを含み、
Raは酸脱離性基を有し、Rbは、極端紫外線及び電子線の少なくとも一方を吸収して2
次電子を発生する基を有する。
【0011】
前記Raが酸脱離性基を有することにより、パターン形成時の露光により酸を発生する
化合物と併用してレジスト組成物として用いた場合に、レジストパターン形成が可能とな

すなわち、前記レジスト組成物を基板等に塗布してレジスト膜を形成し、前記レジスト
膜に対して選択的に露光すると、露光部では酸が発生し、酸の作用によって酸脱離性基が
脱離し、露光部と未露光部との間でアルカリ(現像液)に対する溶解性の差が生じる。か
かるレジスト膜を現像することでレジストパターンが形成される。
【0012】
なお、「酸脱離性基」とは、酸により開裂する結合を有する基であり、前記結合の開裂
により酸脱離性基の一部または全部が脱離する基である。
Raとしては下記式2で表される構造を含むものが好ましい。
【0013】
【化2】
【0014】
R1~R3はそれぞれ独立にアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル
基またはアルケニル基を表す。
アルキル基は炭素数1~10が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イ
ソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等
が挙げられる。なお、アルキル基中の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子等のヘテロ原
子によって置換されていてもよい。
【0015】
シクロアルキル基は単環形でも、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3~10の
シクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペン
チル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基等が挙げられる。
多環型としては、炭素数6~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチ
ル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピ
ネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アンドロスタニル基等が挙げ
られる。
【0016】
なお、シクロアルキル基中の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によ
って置換されていてもよい。
アリール基は、炭素数6~20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチ
ル基、アントリル基、フルオレニル基等が挙げられる。
アラルキル基は、炭素数7~12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フ
ェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0017】
アルケニル基は、炭素数2~10のアルケニル基が好ましく、例えばビニル基、アリル
基、ブテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
また、R1~R3から選ばれる2つが直鎖あるいは炭化水素鎖で結合する環構造であっ
ても良く、R1~R3から選ばれる2つが結合して形成される環としては、シクロアルキ
ル基(単環もしくは多環)であることが好ましい。例えばシクロペンチル基、シクロヘキ
シル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマ
ンチル基等が挙げられる。
【0018】
更に本発明では、前記Raがアミノ基を有する下記式3で表される構造を含むものが、
容易にかご型シルセスキオキサンを得られる点でより好ましい。
【0019】
【化3】
【0020】
また本発明では、前記Rbが、極端紫外線及び電子線の少なくとも一方を吸収して2次
電子を発生する基を有していることにより、電子線や極端紫外線を用いるレジストとして
使用した場合、効率的に2次電子を発生させ、高感度化が達成される。
なお、「極端紫外線及び電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基」と
しては、スズ、アンチモン、テルル、キセノン、セシウム、バリウム等の金属元素やフッ
素、ヨウ素等のハロゲン元素を含む基が挙げられる。
【0021】
Rbとしては、合成容易性および入手容易性の観点からフッ素原子を含む基が好ましく
、2,2,3,3,-テトラフルオロプロピル基、1H,1H,5H-オクタフルオロペ
ンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチル
基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1H,1H-ペンタデカフルオロ-n-オクチ
ル基、1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル基、1H,1H,2H,2H-ト
リデカフルオロ-n-オクチル基、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル
基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロフェニル
基等を含む基が挙げられる。
【0022】
更に本発明では、前記Rbはアミノ基を有する下記式4で表される構造を含むものが、
容易にかご型シルセスキオキサンを得られる点でより好ましい。
【0023】
【化4】
【0024】
ここでR4は極端紫外線及び電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基
を含む基である。
また本発明では、前記Raと前記Rbの比率は95:5~5:95が好ましく、90:
10~10:90がより好ましい。ここで、Raが5以上であればレジストパターン形成
が容易となる。また、Rbが5以上であれば、露光の際の感度が向上しやすい。
【0025】
更に本発明のかご構造を有するシルセスキオキサンは、Rmとして、ラクトン骨格を有
する基Rcを有していてもよい。
ラクトン環の例としては、4~20員環程度のラクトン環が挙げられる。ラクトン環は
、ラクトン環のみの単環であってもよく、ラクトン環に脂肪族または芳香族の炭素環また
は複素環が縮合した縮合環であってもよい。
【0026】
Rcとしては、基板等への密着性に優れる点から、置換または無置換のδ-バレロラク
トン環、および置換または無置換のγ-ブチロラクトン環からなる群から選ばれる少なく
とも1種が好ましく、無置換のγ-ブチロラクトン環を有する基が特に好ましい。
ラクトン環の具体例としては、β-メチル-δ-バレロラクトン、4,4-ジメチル-
2-メチレン-γ-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、β-メチル-γ-ブチロラク
トン、パントイルラクトン、2,6-ノルボルナンカルボラクトン、4-オキサトリシク
ロ[5.2.1.02,6]デカン-3-オン、4-オキサトリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン-3-オン等が挙げられる。
【0027】
ラクトン骨格を有する基Rcは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて
用いてもよい。
前記シルセスキオキサンがラクトン骨格を有する基Rcを含む場合、その含有量は、全
構成単位に対して5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。また、感度
および解像度の点から、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましい。
【0028】
なお、前記ラクトン骨格を有する基Rcは、酸脱離性基、極端紫外線及び電子線の少な
くとも一方を吸収して2次電子を発生する基を有しないものである。
また、本発明のかご構造を有するシルセスキオキサンは、Rmとして、親水性基を有す
る基Rdを有していてもよい。
「親水性基」とは、-C(CF3)2-OHで表される1価基、ヒドロキシ基、シアノ
基、メトキシ基、カルボキシ基およびアミノ基の少なくとも1種である。
【0029】
前記Rdとしては、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシ
-n-プロピル、4-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシアダマンチル、2-または3-
シアノ-5-ノルボルニル、2-シアノメチル-2-アダマンチル基等が挙げられる。
基板等に対する密着性の点から、3-ヒドロキシアダマンチル、3,5-ジヒドロキシ
アダマンチル、2-または3-シアノ-5-ノルボルニル、2-シアノメチル-2-アダ
マンチル基が好ましい。
【0030】
前記Rdは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、前記Rdは、極端紫外線及び電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生
する基、酸脱離性基、及びラクトン骨格を有しないものである。
かご構造有するシルセスキオキサンが前記Rdを含む場合、その含有量は、レジストパ
ターン矩形性の点から、全構成単位に対して5モル%以上が好ましく、10モル%以上が
より好ましい。また、感度および解像度の点から、30モル%以下が好ましく、25モル
%以下がより好ましい。
【0031】
次に、本発明のかご構造を有するシルセスキオキサンの製造方法の一例を示す。
本発明のかご構造を有するシルセスキオキサン化合物は、Ra、Rbを有するシラン化
合物を公知の方法により加水分解・共縮合することにより得られる。なお、本発明におい
て、加水分解・共縮合とは、2種類以上のシラン化合物と所定量の水および触媒を混合し
、アルコキシシリル基の加水分解と、これに続くシラノール基の縮合反応により、所望の
シルセスキオキサン化合物を製造する一連の反応のことである。
【0032】
Ra、Rbを有するシラン化合物の加水分解・共縮合の触媒としては、塩酸、硫酸、硝
酸およびフッ化水素酸などの無機酸、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエ
チルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリ
メチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、アン
モニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、ベンジルトリメチルアンモ
ニウムクロライドおよびベンジルトリエチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモ
ニウム塩などが好適である。
【0033】
これらの中でも、フッ化水素酸、アンモニウムフルオリドは、かご構造を特異的に生成
するため、特に好ましい。
触媒量は、Ra、Rbを有するシラン化合物の加水分解性アルコキシ基モル数の理論量
合計の0.001~1倍が好ましく、0.005~0.5倍がより好ましい。0.001
倍以上では十分な触媒活性を得ることができる。また、1倍以下ならば、ゲル化を抑制す
ることができる。
【0034】
Ra、Rbを有するシラン化合物の加水分解に使用する水量は、加水分解性アルコキシ
基モル数の理論量合計の0.1~10倍が好ましく、1~3倍がより好ましい。
加水分解・共縮合の反応温度は、0~100℃が好ましく、20~50℃がより好まし
い。0℃以上ならば十分に反応が進行する。100℃以下ならば副反応の誘発やゲル化の
可能性が少ない。
【0035】
加水分解・共縮合時には、有機溶媒を使用することが好ましい。有機溶媒としては、R
a、Rbを有するシラン化合物を溶解できるものであれば特に限定はないが、例えばメチ
ルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケ
トン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1-メトキシ-2-プロパノール、アセトニト
リルなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でも、2種類以上を混合して使用して
もよい。
【0036】
シラン化合物としては、前述したアミノ基を有する下記式3、4で表される構造を含む
ものが、容易にかご型シルセスキオキサンを得られる点でより好ましく、例えば、アミノ
基を含有するシラン化合物と単官能アクリレート化合物とのマイケル付加反応により製造
することができる。
【0037】
【化5】
【0038】
【化6】
【0039】
アミノ基を含有するシラン化合物としては、3-(2-アミノエチル)アミノプロピル
トリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3
-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙
げられ、特に、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキ
シシランが好適である。
【0040】
単官能アクリレート化合物としては、R1~R3にそれぞれ独立にアルキル基、シクロ
アルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルケニル基を有するアクリレート化合物
であり、特に入手容易性の観点から、t-ブチルアクリレート、1-メチルシクロペンチ
ルアクリレート、1-メチルシクロヘキシルアクリレートが好適である。
また、R4に極端紫外線及び電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基
を有するアクリレート化合物は、特に入手容易性の観点から、2,2,3,3,-テトラ
フルオロプロピルアクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルアクリレー
ト、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチルアクリ
レート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、1H,1H-ペンタデカフルオ
ロ-n-オクチルアクリレート、1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシルアクリ
レート、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチルアクリレート、1H
,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、1,1,1,3,3,3
-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ペンタフルオロフェニルアクリレートが好
適である。
【0041】
本付加反応は無溶媒で行ってもよいし、溶媒を用いることもできる。溶媒の具体例とし
ては、メチルアルコール、エチルアルコール、1-プロピルアルコール、2-プロピルア
ルコール、1-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、te
rt-ブチルアルコール、ベンジルアルコール、2-メトキシエチルアルコール、2-エ
トキシエチルアルコール、2-(メトキシメトキシ)エタノール、2-ブトキシエタノー
ル、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール
、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル
、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エ
トキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチ
ルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモ
ノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタ
ノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、4
-ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセ
トフェノン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチ
ルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、テトラヒドロフラン、テ
トラヒドロピラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブ
トキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチル
エーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、グリセリンエーテル、酢酸メチル、
酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸se
c-ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3-メトキシブチルアセテート、2-エ
チルブチルアセテート、2-エチルヘキシルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオ
ン酸エチル、プロピオン酸ブチル、γ-ブチロラクトン、2-メトキシエチルアセテート
、2-エトキシエチルアセテート、2-ブトキシエチルアセテート、2-フェノキシエチ
ルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコ
ールモノブチルエーテルアセテート、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
これらの溶媒は単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。また、その使用
量は適宜、決めればよい。
【0042】
アミノ基を含有するシラン化合物と単官能アクリレート化合物との反応モル比は、未反
応物を少なくできることから、アミノ基を含有するシラン化合物1モルに対して単官能ア
クリレート化合物2~10モルが好ましく、2~5モルがより好ましい。
付加反応の温度は、20~100℃が好ましく、30~80℃がより好ましい。20℃
以上ならば、付加反応を十分進行させることができる。また、100℃以下ならば、アク
リレート化合物の重合を抑制することができる。
【0043】
付加反応の時間は、1~60時間が好ましく、2~48時間がより好ましい。1時間以
上ならば、付加反応を十分進行させることができる。60時間以内ならば、アクリレート
化合物の重合を抑制することができる。
本付加反応は、触媒を用いることができる。触媒としては、マイケル付加反応に使用さ
れるアミン類、アルカリ金属アルコキシドなどの公知のものを用いることができる。
【0044】
本付加反応終了後の精製方法については、生成物の物性、原料、溶剤の有無等を考慮し
て、分液、水洗、蒸留、晶析、濾過等の公知の精製方法を、適宜組み合わせることができ
る。
本発明のレジスト組成物は、かご構造を有するシルセスキオキサンと、溶媒と、活性光
線又は放射線の照射により酸を発生する化合物とを含むことが好ましい。
【0045】
かご構造を有するシルセスキオキサンは1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物(溶剤を除く)に対して、かご構造を有するシルセスキオキサンの含有
量は、特に限定されないが、70~99.9質量%が好ましい。
溶媒としては、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコール
モノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテ
ル(PGME)などが挙げられる。溶媒は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
溶媒の使用量は、形成するレジスト膜の厚みにもよるが、かご構造を有するシルセスキ
オキサン100質量部に対して100~10,000質量部の範囲が好ましい。
パターン形成時の露光により酸を発生する化合物は、化学増幅型レジスト組成物の光酸
発生剤として公知のものが使用できる。
光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化
合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げ
られる。
【0047】
これらは、2種以上を併用してもよい。
前記光酸発生剤の使用量は、かご構造を有するシルセスキオキサン100質量部に対し
て、0.1~20質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。
さらに本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、含窒素化合物、酸化合物(有機カル
ボン酸、リンのオキソ酸またはその誘導体)、界面活性剤、その他のクエンチャー、増感
剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。前記
添加剤は、当該分野で公知のものを使用できる。
【0048】
本発明のパターン形成方法は、本発明のレジスト組成物を基板に塗布し製膜する製膜工
程と、前記レジスト組成物を露光する露光工程と、露光後の前記レジスト組成物を現像す
る現像工程を含む。
【0049】
<製膜工程>
本発明のレジスト組成物を基板に塗布する方法は、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等
の公知の方法を用いることができる。
前記基板としては、シリコンウエハ、SiNウエハ、AINウエハ、アルミニウムで被
覆されたウエハ等が挙げられる。なお、レジスト組成物の密着性、現像後の解像性等を改
善するために、有機系、無機系の反射防止膜を基板上に形成しても良い。
【0050】
本工程で形成する膜の平均厚さは、1nm以上、500nm以下好ましい。前記下限以
下では、レジスト膜としての機能が損なわれ、前記上限以上ではパターン形成・現像後の
パターン倒れなどが発生しやすくなる。
また、必要に応じて塗布後にプリベークを行ってもよい。プリベークの温度は、60℃
以上、140℃以下が好ましい。プリベークの時間は、5秒以上、300秒以下が好まし
い。
【0051】
<露光工程>
前記製膜工程で得られた基板のレジスト層に、所定のパターンを有するマスクを介して
、露光を行う。露光に用いる光源は、紫外線、遠紫外線、EUV、X線、ガンマ線等が挙
げられる。
これらの中で、EUV、電子線が好ましい。
【0052】
<現像工程>
露光後、適宜熱処理(露光後ベーク、PEB)し、レジスト膜に現像液を接触させてレ
ジスト膜の一部を溶解する。ポジ型現像プロセスではアルカリ現像液で露光部を溶解して
除去する。
本発明のかご構造を有するシルセスキオキサンは、露光により発生した酸によって酸脱
離性基の結合が開裂し、露光部のアルカリ現像液への溶解速度が増す。
【0053】
アルカリ現像液としてはアルカリ性水溶液が用いられる。例えば、水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニ
ア水等の無機アルカリ類;エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一アミン類;ジエチ
ルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の第二アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチル
アミン等の第三アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコ
ールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒド
ロキシド等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類;等の水溶
液が挙げられる。
【0054】
現像は、公知の方法で行えばよく、現像液が満たされた槽の中に基板を一定時間浸漬す
る方法、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法、基板表
面に現像液を噴霧する方法、一定速度で回転させている基板上に一定速度でノズルを走査
しながら現像液を吐出する方法等が挙げられる。
現像後、基板を純水等で適宜リンス処理する。このようにして被加工基板上にレジスト
パターンが形成される。
【0055】
レジストパターンが形成された基板は、適宜熱処理(ポストベーク)してレジストを強
化し、レジストのない部分を選択的にドライエッチングする。
ドライエッチング後、レジストを剥離剤によって除去することによって、微細パターン
が形成された基板が得られる。
【実施例0056】
以下実施例により本発明を説明する。本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に
限定されるものではない。なお、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り
重量基準である。
シルセスキオキサン化合物の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は
、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算で求めた。
【0057】
<シラン化合物の合成(A1)>
撹拌子、温度計を備えたフラスコに、3-アミノプロピルトリエトキシシラン1.50
g(6.8mmol)、エタノール3.1mL、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレ
ゾール11mgを加えた。アクリル酸tert-ブチル2.26g(17.6mmol)を
滴下した後、40℃で6.5時間反応させた。さらにアクリル酸tert-ブチル0.8
8g(6.9mmol)を滴下した後、50℃で6時間反応させた。反応終了後、濃縮、減
圧乾燥してシラン化合物(A1、R1~R3=Me基のもの)3.18gを無色液体とし
て収率98%で得た。1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ3.80ppm(
q、6H)、2.71ppm(t、4H)、2.39ppm(t、2H)、2.33pp
m(t、4H)、1.51ppm(m、2H)、1.42ppm(s、18H)、1.2
1ppm(t、8H)、0.57ppm(t、2H)。
【0058】
<シルセスキオキサン化合物の合成>
(合成例1) 撹拌子、温度計を備えたフラスコに、合成例1で合成したシラン化合物(
A1)3.00 g(6.3mmol)、メタノール10mlを加え溶解させ、3.2%フ
ッ化アンモニウム水溶液を0.65g滴下した。室温で5時間攪拌した後、エバポレータ
ーでメタノールを留去した。酢酸エチル10mLを加え、水10mL、続いて水5mLで
洗浄した。得られた有機層を濃縮、減圧乾燥して、シルセスキオキサン(SQ1)2.2
7gを無色粘調液体として収率99%で得た。Mn2200、Mw/Mn1.03であっ
た。H-NMR(400MHz、CDCl3):δ2.70ppm(brt、4H)、
2.38ppm(brt、2H)、2.32ppm(brt、4H)、1.50ppm(
m、2H)、1.42ppm(s、18H)、0.56ppm(brt、2H)。
(合成例2)撹拌子、温度計を備えたフラスコに、合成例1で合成したシラン化合物(A
1)0.53g(1.1mmol)および合成例1にてアクリル酸tert-ブチルをアク
リル酸1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシルに代えて合成したシラン化合物0
.94g(1.1mmol)、アセトン3.6mlを加え溶解させ、3.2%フッ化水素水
溶液を0.12mL滴下した。30℃で24時間攪拌した後、濃縮、減圧乾燥してシルセ
スキオキサン(SQ2)1.15gを無色粘調液体として収率94%で得た。Mn300
0、Mw/Mn1.06であった。1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ4.
33ppm(brt、4H)、2.74ppm(m、8H)、2.43ppm(m、12
H)、2.31ppm(brt、4H)、1.48ppm(m、4H)、1.41ppm
(s、18H)、0.54ppm(brt、4H)。
【0059】
<実施例1>
前記シルセスキオキサン(SQ1)100質量部および光酸発生剤としてトリフェニル
スルホニウムトリフレート4質量部をPGMEA3900質量部に溶解させ均一溶液とし
た後、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過し、レジスト組成物を調製した。
パターン形成基板としてヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコンウエハを用い、
調製したレジスト組成物を、パターン形成基板上にスピンコートし、ホットプレートを用
いて80℃60秒間乾燥して、レジスト層厚50nmのレジスト層含有パターン形成基板
を得た。これをKrF露光装置を用いて露光し、110℃で60秒間保持した後、2.3
8質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間現像を行った。結果を
表1に示す。
【0060】
表1の結果より、露光量増加に伴う膜厚減少が確認できたとにより、光照射により塗膜
の水溶解性を光照射部のみ選択的に変化させることで、所望の精密パターンを基板上に形
成することが可能であることが明らかとなった。合成例2で合成された酸脱離性基として
t-ブチル基、極端紫外線及び電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基
としてフッ素含有基を有するシルセスキオキサン化合物は、極端紫外線及び電子線の照射
部のみを選択的に溶解性を変化させることができると考えられる。
【0061】
【表1】