(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166413
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】着色樹脂組成物、膜、カラーフィルタ、固体撮像素子、及び、画像表示装置
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20231114BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231114BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20231114BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20231114BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20231114BHJP
G03F 7/037 20060101ALI20231114BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20231114BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C08L79/08 Z
C08K3/013
C08G73/10
G03F7/004 505
G03F7/027 514
G03F7/037
G02B5/20 101
G02B5/22
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132497
(22)【出願日】2023-08-16
(62)【分割の表示】P 2021535338の分割
【原出願日】2020-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2019139391
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】牧野 雅臣
(72)【発明者】
【氏名】川島 敬史
(57)【要約】 (修正有)
【課題】膜を製造した後の工程のプロセスウインドウの拡大を図ることができる新規な着色樹脂組成物、膜、カラーフィルタ、固体撮像素子及び画像表示装置を提供する。
【解決手段】着色樹脂組成物は、樹脂、色材、及び、溶剤を含み、樹脂が式(1-1)又は式(1-2)で表される繰返し単位を含むポリイミド又はポリイミド前駆体であり、色材の含有量が、組成物の全固形分に対して30質量%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂、
色材、及び、
溶剤を含み、
前記樹脂が下記式(1-1)又は下記式(1-2)で表される繰返し単位を含むポリイミド又はポリイミド前駆体であり、
前記色材の含有量が、組成物の全固形分に対して30質量%以上である
着色樹脂組成物;
【化1】
式(1-1)中、R
11は炭素数6~14の芳香族炭化水素基を表し、R
12はR
11における芳香族炭化水素基の置換基である1価の置換基を表し、R
12は下記R
1a又はR
1bであり、nは1以上nA以下の整数を表し、nAはR
11における芳香族炭化水素基の最大置換数であり、R
13は下記式(I-1)~(I-28)のいずれかを表す;
式(1-2)中、R
21は炭素数6~14の芳香族炭化水素基を表し、R
22はR
21における芳香族炭化水素基の置換基である1価の置換基を表し、R
22は下記R
1a又はR
1bであり、mは1以上mA以下の整数を表し、mAはR
21における芳香族炭化水素基の最大置換数であり、R
23は下記式(I-1)~(I-28)のいずれかを表し、R
24はそれぞれ独立に、1価の置換基を表す。
R
1a:下記式(A-1)で表される基
R
1b:下記式(B-1)で表される基
【化2】
式(A-1)中、L
a1は単結合、又は、na+1価の炭化水素基を表し、A
a1はそれぞれ独立に、カルボキシ基、リン酸基、又は、スルホンアミド基を表し、naは1以上の整数を表し、*はR
11との結合部位を表す。
【化3】
式(B-1)中、L
b1は下記式(B-2)で表される基を表し、A
b1はそれぞれ独立に、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を表し、nbは1を表し、*はR
11との結合部位を表す。
【化4】
式(B-2)中、Xは-O-を表し、L
b2は、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素環基、又は、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素環基、-O-、-C(=O)-、-S(=O)
2-、-C(=O)O-、-C(=O)S-、-C(=O)NR
N-、-OC(=O)NR
N-、-SC(=O)NR
N-、-NR
NC(=O)NR
N-、及び、-CH
2CH(OH)CH
2-よりなる群から選ばれた少なくとも2つの結合により表される基を表し、R
Nは水素原子又は炭化水素基を表す。
【化5】
式(I-1)~(I-28)中、X
1~X
3は、単結合又は2価の連結基を表し、Lは-CH=CH-又は-CH
2-を表し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
1及びR
2は結合して環構造を形成してもよく、*は他の構造との結合部位を表す。
【請求項2】
前記樹脂が、式(1-1)で表される繰返し単位であって、式(1-1)中のR12が、前記R1aである繰返し単位1-1a、並びに、式(1-2)で表される繰返し単位であって、式(1-2)中のR22が前記R1aである繰返し単位1-2aよりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を含む、請求項1に記載の着色樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂が、式(1-1)で表される繰返し単位であって、式(1-1)中のR12が、前記R1bである繰返し単位1ー1b、並びに、式(1-2)で表される繰返し単位であって、式(1-2)中のR22が前記R1bである繰返し単位1-2bよりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を含む、請求項1又は2に記載の着色樹脂組成物。
【請求項4】
前記R24が、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルホンアミド基、及び、ヒドロキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸基を含む基、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を含む基、又は、炭素数12以上の基である、請求項1~3のいずれか1以降に記載の着色樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂として、下記樹脂1及び下記樹脂2を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の着色樹脂組成物;
樹脂1:カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、及び、スルホンアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸基、並びに、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を含む樹脂;
樹脂2:カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、及び、スルホンアミド基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸基、並びに、炭素数12以上の基を含む樹脂。
【請求項6】
前記色材が有彩色色材、及び、近赤外線吸収色材から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の着色樹脂組成物。
【請求項7】
前記色材が、有彩色色材及び近赤外線吸収色材を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の着色樹脂組成物。
【請求項8】
前記色材が、黒色色材を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の着色樹脂組成物。
【請求項9】
光重合開始剤を更に含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の着色樹脂組成物。
【請求項10】
光重合開始剤がオキシム開始剤である、請求項9に記載の着色樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の着色樹脂組成物から得られる膜。
【請求項12】
請求項11に記載の膜を含むカラーフィルタ。
【請求項13】
請求項11に記載の膜を含む固体撮像素子。
【請求項14】
請求項11に記載の膜を含む画像表示装置。
【請求項15】
下記式(1-1)又は下記式(1-2)で表される繰返し単位を含むポリイミド又はポリイミド前駆体;
【化6】
式(1-1)中、R
11は炭素数6~14の芳香族炭化水素基を表し、R
12はR
11における芳香族炭化水素基の置換基である1価の置換基を表し、R
12は下記R
1a又はR
1bであり、nは1以上nA以下の整数を表し、nAはR
11における芳香族炭化水素基の最大置換数であり、R
13は下記式(I-1)~(I-28)のいずれかを表す;
式(1-2)中、R
21は炭素数6~14の芳香族炭化水素基を表し、R
22はR
21における芳香族炭化水素基の置換基である1価の置換基を表し、R
22は下記R
1a又はR
1bであり、mは1以上mA以下の整数を表し、mAはR
21における芳香族炭化水素基の最大置換数であり、R
23は下記式(I-1)~(I-28)のいずれかを表し、R
24はそれぞれ独立に、1価の置換基を表す。
R
1a:下記式(A-1)で表される基
R
1b:下記式(B-1)で表される基
【化7】
式(A-1)中、L
a1は単結合、又は、na+1価の炭化水素基を表し、A
a1はそれぞれ独立に、カルボキシ基、リン酸基、又は、スルホンアミド基を表し、naは1以上の整数を表し、*はR
11との結合部位を表す。
【化8】
式(B-1)中、L
b1は下記式(B-2)で表される基を表し、A
b1はそれぞれ独立に、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を表し、nbは1を表し、*はR
11との結合部位を表す。
【化9】
式(B-2)中、Xは-O-を表し、L
b2は、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素環基、又は、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素環基、-O-、-C(=O)-、-S(=O)
2-、-C(=O)O-、-C(=O)S-、-C(=O)NR
N-、-OC(=O)NR
N-、-SC(=O)NR
N-、-NR
NC(=O)NR
N-、及び、-CH
2CH(OH)CH
2-よりなる群から選ばれた少なくとも2つの結合により表される基を表し、R
Nは水素原子又は炭化水素基を表す。
【化10】
式(I-1)~(I-28)中、X
1~X
3は、単結合又は2価の連結基を表し、Lは-CH=CH-又は-CH
2-を表し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
1及びR
2は結合して環構造を形成してもよく、*は他の構造との結合部位を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色樹脂組成物、膜、カラーフィルタ、固体撮像素子、及び、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話等の普及から、電荷結合素子(CCD)イメージセンサなどの固体撮像素子の需要が大きく伸びている。固体撮像素子には、カラーフィルタなどの顔料を含む膜が用いられている。カラーフィルタなどの顔料を含む膜は、色材と樹脂と溶剤とを含む着色樹脂組成物などを用いて製造されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ネガ型感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜を具備する表示装置であって、上記ネガ型感光性樹脂組成物が、(A1)第1の樹脂、(A2)第2の樹脂、(C)光重合開始剤及び(D)着色剤を含み、上記(A1)第1の樹脂が、(A1-1)ポリイミド及び/又は(A1-2)ポリベンゾオキサゾールであって、上記(A2)第2の樹脂が、(A2-1)ポリイミド前駆体、(A2-2)ポリベンゾオキサゾール前駆体、(A2-3)ポリシロキサン、(A2-4)カルド系樹脂、及び(A2-5)アクリル樹脂から選ばれる一種類以上であって、上記(A1)第1の樹脂及び上記(A2)第2の樹脂の合計100質量%に占める、上記(A1)第1の樹脂の含有比率が、25~90質量%の範囲内であって、上記硬化膜の膜厚1μm当たりの光学濃度が、0.3~5.0の範囲内であって、上記硬化膜が硬化パターンを含み、上記硬化パターンの断面における傾斜辺のテーパー角が、1~60°の範囲内である、表示装置が記載されている。
特許文献2には、(A)特定の構造単位と、特定の構造単位におけるカルボキシ基がアミド基又はエステル基に置換された構造単位を有するポリイミド前駆体誘導体、(B)着色材及び(C)有機溶剤を含有する着色樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-045865号公報
【特許文献2】特開2017-186530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固体撮像素子の製造プロセスにおいて、近年では、色材と樹脂と溶剤とを含む着色樹脂組成物を用いてカラーフィルタなどの膜を形成したのち、高温(例えば300℃以上)の加熱処理を要する工程に供することも検討されている。
【0006】
よって、本発明は、膜を製造した後の工程のプロセスウインドウの拡大を図ることができる新規な着色樹脂組成物、膜、カラーフィルタ、固体撮像素子及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の代表的な実施態様の例を以下に示す。
<1> 樹脂、
色材、及び、
溶剤を含み、
上記樹脂が下記式(1-1)又は下記式(1-2)で表される繰返し単位を含むポリイミド又はポリイミド前駆体であり、
上記色材の含有量が、組成物の全固形分に対して30質量%以上である
着色樹脂組成物;
【化1】
式(1-1)中、R
11は炭素数6~14の芳香族炭化水素基を表し、R
12はR
11における芳香族炭化水素基の置換基である1価の置換基を表し、nは0以上nA以下の整数を表し、nAはR
11における芳香族炭化水素基の最大置換数であり、R
13は4価の有機基を表す;
式(1-2)中、R
21は炭素数6~14の芳香族炭化水素基を表し、R
22はR
21における芳香族炭化水素基の置換基である1価の置換基を表し、mは0以上mA以下の整数を表し、mAはR
21における芳香族炭化水素基の最大置換数であり、R
23は4価の有機基を表し、R
24はそれぞれ独立に、1価の置換基を表す。
<2> 上記樹脂が、式(1-1)で表される繰返し単位であって、式(1-1)中のR
12が、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルホンアミド基、及び、ヒドロキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸基を含む基R
1aである繰返し単位1-1a、並びに、式(1-2)で表される繰返し単位であって、式(1-2)中のR
22が上記R
1aである繰返し単位1-2aよりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を含む、<1>に記載の着色樹脂組成物。
<3> 上記樹脂が、式(1-1)で表される繰返し単位であって、式(1-1)中のR
12が、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を含む基R
1bである繰返し単位1ー1b、並びに、式(1-2)で表される繰返し単位であって、式(1-2)中のR
22が上記R
1bである繰返し単位1-2bよりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を含む、<1>又は<2>に記載の着色樹脂組成物。
<4> 上記樹脂が、式(1-1)で表される繰返し単位であって、式(1-1)中のR
12が炭素数12以上の基R
1cである繰返し単位1-1c、及び、式(1-2)で表される繰返し単位であって、式(1-2)中のR
22が上記R
1cである繰返し単位1-2cよりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の着色樹脂組成物。
<5> 上記R
1cが、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する繰返し単位、(メタ)アクリルアミド化合物に由来する繰返し単位、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位、及び、ポリエステル構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む、<4>に記載の着色樹脂組成物。
<6> 上記R
13及びR
23が、脂環式構造を含む基であるか、又は、フッ素原子及び芳香環構造を含む基である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の着色樹脂組成物。
<7> 上記R
24が、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルホンアミド基、及び、ヒドロキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸基を含む基、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を含む基、又は、炭素数12以上の基である、<1>~<6>のいずれか1以降に記載の着色樹脂組成物。
<8> 上記樹脂の酸価が、20~150mgKOH/gである、<1>~<7>のいずれか1つに記載の着色樹脂組成物。
<9> 上記樹脂のC=C価が0.1mmol/g~3mmol/gである、<1>~<8>のいずれか1つに記載の着色樹脂組成物。
<10> 上記樹脂の重量平均分子量が5,000~20,000である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の着色樹脂組成物。
<11> 上記樹脂として、下記樹脂1及び下記樹脂2を含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載の着色樹脂組成物;
樹脂1:カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルホンアミド基、及び、ヒドロキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸基、並びに、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を含む樹脂;
樹脂2:カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルホンアミド基、及び、ヒドロキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸性基、並びに、炭素数12以上の基を含む樹脂。
<12> 上記色材が有機顔料である、<1>~<11>のいずれか1つに記載の着色樹脂組成物。
<13> 上記色材が有彩色色材、及び、近赤外線吸収色材から選ばれる少なくとも1種を含む、<1>から12のいずれか1つに記載の着色樹脂組成物。
<14> 上記色材が、有彩色色材及び近赤外線吸収色材を含む、<1>~<13>のいずれか1つに記載の着色樹脂組成物。
<15> 上記色材が、黒色色材を含む、<1>~<14>のいずれか1つに記載の着色樹脂組成物。
<16> 上記色材が、赤色色材、黄色色材、青色色材及び紫色色材よりなる群から選ばれた少なくとも1種の色材を含む、<1>~<15>のいずれか1つに記載の着色樹脂組成物。
<17> 光重合開始剤を更に含む、<1>~<16>のいずれか1つに記載の着色樹脂組成物。
<18> 光重合開始剤がオキシム開始剤である、<17>に記載の着色樹脂組成物。
<19> 上記溶剤が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、酢酸ブチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、3-メトキシブタノール、メチルイソブチルケトン、及び、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルよりなる群から選ばれた少なくとも1種の溶剤を含む、<1>~<18>のいずれか1つに記載の着色樹脂組成物。
<20> フォトリソグラフィ法でのパターン形成用である、<1>~<19>のいずれか1つに記載の着色樹脂組成物。
<21> 固体撮像素子用である、<1>~<20>のいずれか1つに記載の着色樹脂組成物。
<22> <1>~<21>のいずれか1つに記載の着色樹脂組成物から得られる膜。
<23> <22>に記載の膜を含むカラーフィルタ。
<24> <22>に記載の膜を含む固体撮像素子。
<25> <22>に記載の膜を含む画像表示装置。
<26> 下記式(2-1)又は下記式(2-2)で表される繰返し単位を含む、ポリイミド又はポリイミド前駆体;
【化2】
式(2-1)中、R
11は炭素数6~14の芳香族炭化水素基を表し、L
1は下記式(L-1)、下記式(L-2)又は下記式(L-3)で表される基を表し、P
1は分子量が1,000~10,000であり、かつ、酸基及び塩基性基を有しない分子鎖を表し、n1は1又は2であり、R
14はR
11における芳香族炭化水素基の置換基である1価の置換基を表し、m1は0以上nA1以下の整数を表し、nA1はR
11における芳香族炭化水素基の最大置換数からn1を減算した数であり、R
13は4価の有機基を表す;
式(2-2)中、R
21は炭素数6~14の芳香族炭化水素基を表し、L
2は下記式(L-1)、下記式(L-2)又は下記式(L-3)で表される基を表し、P
2は分子量が1,000~10,000であり、かつ、酸基及び塩基性基を有しない分子鎖を表し、n2は1又は2であり、R
25はR
21における芳香族炭化水素基の置換基である1価の置換基を表し、m2は0以上nA2以下の整数を表し、nA2はR
21における芳香族炭化水素基の最大置換数からn2を減算した数であり、R
23は4価の有機基を表し、R
24はそれぞれ独立に、1価の置換基を表す;
【化3】
式(L-1)、式(L-2)又は式(L-3)中、X
1は-O-又は-NR
N-を表し、L
3は単結合、又は、-O-、-NR
N-、-S-、-C(=O)-、-NR
N(C=O)O-、-CH
2-CH(OH)-CH
2-、炭化水素基、若しくは、これらを2以上組み合わせた基を表し、*はR
11又はR
21との結合部位を表し、●はP
1又はP
2との結合部位を表し、R
Nは水素原子又は炭化水素基を表す。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、膜を製造した後の工程のプロセスウインドウの拡大を図ることができる新規な着色樹脂組成物、膜、カラーフィルタ、固体撮像素子及び画像表示装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の主要な実施形態について説明する。しかしながら、本発明は、明示した実施形態に限られるものではない。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線又は放射線が挙げられる。
本明細書において、(メタ)アリル基は、アリル及びメタリルの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの双方、又は、いずれかを表す。
本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により測定したポリスチレン換算値である。
本明細書において、近赤外線とは、波長700~2500nmの光をいう。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において「工程」との語は独立した工程だけを指すのではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0010】
(着色樹脂組成物)
本発明の着色樹脂組成物は、樹脂、色材、及び、溶剤を含み、
上記樹脂が下記式(1-1)又は下記式(1-2)で表される繰返し単位を含むポリイミド又はポリイミド前駆体であり、
上記色材の含有量が、組成物の全固形分に対して30質量%以上である。
以下、上記ポリイミド又はポリイミド前駆体を合わせて「特定樹脂」ともいう。
【化4】
式(1-1)中、R
11は炭素数6~14の芳香族炭化水素基を表し、R
12はR
11における芳香族炭化水素基の置換基である1価の置換基を表し、nは0以上nA以下の整数を表し、nAはR
11における芳香族炭化水素基の最大置換数であり、R
13は4価の有機基を表す;
式(1-2)中、R
21は下記式(R-1)で表される基を表し、R
22はR
21における芳香族炭化水素基の置換基である1価の置換基を表し、mは0以上mA以下の整数を表し、mAはR
21における芳香族炭化水素基の最大置換数であり、R
23は4価の有機基を表し、R
24はそれぞれ独立に、1価の置換基を表す。
【0011】
本発明の着色樹脂組成物は、高濃度(30質量%以上)の色材、樹脂、及び、溶剤を含有する。
本発明者らは、鋭意検討した結果、このような高濃度の色材、樹脂、及び溶剤を含む着色樹脂組成物において、樹脂として、従来から使用されているアクリル樹脂を用いると、高温(例えば300℃以上)の加熱処理を要する工程に供された場合に、得られる組成物膜の膜収縮率が高くなる、得られる組成物膜上に形成された他の膜(例えば、無機膜)にクラックが発生するなど、膜を製造した後の工程のプロセスウインドウが狭くなることを見出した。
これは、高温によりアクリル樹脂が分解するためであると推測される。
そこで本発明者らは、鋭意検討した結果、樹脂として式(1-1)又は式(1-2)で表される繰返し単位を含むポリイミド又はポリイミド前駆体を用いることにより、上述のクラックの発生等が抑制され、膜を製造した後の工程のプロセスウインドウを広げることができることを見出した。
上記効果が得られるメカニズムは定かではないが、上記特定の繰返し単位を含むポリイミド又はポリイミド前駆体を含む着色樹脂組成物により得られる膜は、高温の加熱処理を要する工程においても上記樹脂の分解が抑制されると考えられる。そのため、上記膜の加熱による収縮が抑制され、クラックが発生しにくいなど、着色樹脂組成物を用いて膜を製造した後の工程における加熱温度の適用範囲をより高温(例えば、300℃以上)まで拡大することができ、膜を製造した後の工程のプロセスウインドウを広げることが可能であると推測される。
【0012】
本発明の着色樹脂組成物を用いて、200℃で30分間加熱して厚さ0.60μmの膜を形成した際に、上記膜を窒素雰囲気下にて300℃で5時間加熱処理した後の膜の厚さは、加熱処理前の膜の厚さの70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
また、上記膜を窒素雰囲気下にて350℃で5時間加熱処理した後の膜の厚さは、加熱処理前の膜の厚さの70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
また、上記膜を窒素雰囲気下にて400℃で5時間加熱処理した後の膜の厚さは、加熱処理前の膜の厚さの70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
上記物性は、用いる特定樹脂、又は、その他の樹脂の種類や含有量を調整する等の方法により達成することができる。
【0013】
また、本発明の着色樹脂組成物を用いて、200℃で30分間加熱して厚さ0.60μmの膜を形成した際に、上記膜を窒素雰囲気下にて300℃で5時間加熱処理したときに、加熱処理後の膜の下記式(1)で表される吸光度の変化率ΔAは、50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましく、40%以下であることが更に好ましく、35%以下であることが特に好ましい。
ΔA(%)=|100-(A2/A1)×100| ・・・(1)
ΔAは、加熱処理後の膜の吸光度の変化率であり、
A1は、加熱処理前の膜の波長400~1100nmの範囲における吸光度の最大値であり、
A2は、加熱処理後の膜の吸光度であって、加熱処理前の膜の波長400~1100nmの範囲における吸光度の最大値を示す波長での吸光度である。
上記物性は、用いる特定樹脂、又は、その他の樹脂の種類や含有量を調整する等の方法により達成することができる。
【0014】
また、本発明の着色樹脂組成物を用い、200℃で30分加熱して厚さ0.60μmの膜を形成した際に、上記膜の波長400~1100nmの範囲における吸光度の最大値を示す波長λ1と、上記膜を窒素雰囲気下にて、300℃で5時間熱処理した後の膜の吸光度の最大値を示す波長λ2との差の絶対値は、50nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることが更に好ましい。
上記物性は、用いる特定樹脂、又は、その他の樹脂の種類や含有量を調整する等の方法により達成することができる。
【0015】
また、本発明の着色樹脂組成物を用い、200℃で30分加熱して厚さ0.60μmの膜を形成した際に、上記膜を窒素雰囲気下にて300℃で5時間加熱処理したとき、加熱処理後の膜の波長400~1100nmの範囲における吸光度の変化率ΔAλの最大値が30%以下であることが好ましく、27%以下であることがより好ましく、25%以下であることが更に好ましい。なお、吸光度の変化率は、下記式(2)から算出される値である。
ΔAλ=|100-(A2λ/A1λ)×100| ・・・(2)
ΔAλは、加熱処理後の膜の波長λにおける吸光度の変化率であり、
A1λは、加熱処理前の膜の波長λにおける吸光度であり、
A2λは、加熱処理後の膜の波長λにおける吸光度である。
上記物性は、用いる特定樹脂、又は、その他の樹脂の種類や含有量を調整する等の方法により達成することができる。
【0016】
また、本発明の着色樹脂組成物は、ガラス基板に塗布し100℃で120秒加熱して膜厚0.6μmの膜を形成した際に、上記膜の、波長400nmにおける透過率が80%以上となる組成物であることが好ましい。また、上記膜は、波長450nmにおける透過率が90%以上であることが好ましい。より好ましくは、上記膜は、波長400nmにおける透過率が90%以上であり、かつ、波長450nmにおける透過率が95%以上である態様である。
【0017】
本発明の着色樹脂組成物は、カラーフィルタ、近赤外線透過フィルタ、近赤外線カットフィルタ、ブラックマトリクス、遮光膜などに用いることができる。
【0018】
カラーフィルタとしては、特定の波長の光を透過させる着色画素を有するフィルタが挙げられ、赤色画素、青色画素、緑色画素、黄色画素、シアン色画素及びマゼンタ色画素から選ばれる少なくとも1種の着色画素を有するフィルタであることが好ましい。カラーフィルタは、有彩色色材を含む着色樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0019】
近赤外線カットフィルタとしては、極大吸収波長を波長700~1800nmの範囲に有するフィルタが挙げられる。近赤外線カットフィルタは、極大吸収波長を波長700~1300nmの範囲に有するフィルタであることが好ましく、波長700~1100nmの範囲に有するフィルタであることがより好ましい。また、近赤外線カットフィルタの波長400~650nmの全範囲での透過率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、波長700~1800nmの範囲の少なくとも1点での透過率は20%以下であることが好ましい。また、近赤外線カットフィルタの極大吸収波長における吸光度Amaxと、波長550nmにおける吸光度A550との比である吸光度Amax/吸光度A550は、20~500であることが好ましく、50~500であることがより好ましく、70~450であることが更に好ましく、100~400であることが特に好ましい。近赤外線カットフィルタは、近赤外線吸収色材を含む着色樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0020】
近赤外線透過フィルタは、近赤外線の少なくとも一部を透過させるフィルタである。近赤外線透過フィルタは、可視光と近赤外線のいずれも透過させるフィルタ(透明膜)であってもよく、可視光の少なくとも一部を遮光し、近赤外線の少なくとも一部を透過させるフィルタであってもよい。近赤外線透過フィルタとしては、波長400~640nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1100~1300nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である分光特性を満たしているフィルタなどが好ましく挙げられる。近赤外線透過フィルタは、以下の(1)~(4)のいずれかの分光特性を満たしているフィルタであることが好ましい。
(1):波長400~640nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長800~1300nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であるフィルタ。
(2):波長400~750nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長900~1300nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であるフィルタ。
(3):波長400~830nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1000~1300nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であるフィルタ。
(4):波長400~950nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1100~1300nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であるフィルタ。
【0021】
本発明の着色樹脂組成物は、カラーフィルタ用の着色樹脂組成物として好ましく用いることができる。具体的には、カラーフィルタの画素形成用の着色樹脂組成物として好ましく用いることができ、カラーフィルタの赤色又は青色の画素形成用の着色樹脂組成物としてより好ましく用いることができる。また、本発明の着色樹脂組成物は、固体撮像素子に用いられるカラーフィルタの画素形成用の着色樹脂組成物として好ましく用いることができる。
【0022】
本発明の着色樹脂組成物は、ガラス基板に塗布し100℃で120秒加熱して膜厚0.6μmの膜を形成した際に、上記膜は、波長400~1100nmの透過率の最大値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上)で、最小値が30%以下(好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは15%以下)であることが好ましい。上記の分光特性を満たす膜を形成できる着色樹脂組成物は、カラーフィルタ、近赤外線透過フィルタ又は近赤外線カットフィルタ形成用の着色樹脂組成物として特に好ましく用いることができる。
【0023】
また、本発明の着色樹脂組成物は、フォトリソグラフィ法でのパターン形成用の着色樹脂組成物であることも好ましい。この態様によれば、微細なサイズの画素を容易に形成することができる。このため、固体撮像素子に用いられるカラーフィルタの画素形成用の着色樹脂組成物として特に好ましく用いることができる。例えば、重合性基を有する成分(例えば、重合性基を有する樹脂や重合性化合物)と、光重合開始剤とを含有する着色樹脂組成物は、フォトリソグラフィ法でのパターン形成用の着色樹脂組成物として好ましく用いることができる。フォトリソグラフィ法でのパターン形成用の着色樹脂組成物は、更にアルカリ可溶性樹脂(例えば、後述する樹脂1、又は、後述するアルカリ現像性樹脂)を含むことも好ましい。
【0024】
以下、本発明の着色樹脂組成物に用いられる各成分について説明する。
【0025】
<色材>
本発明の着色樹脂組成物は、色材を含有する。色材としては白色色材、黒色色材、有彩色色材、近赤外線吸収色材が挙げられる。なお、本発明において、白色色材は純白色のみならず、白に近い明るい灰色(例えば灰白色、薄灰色など)の色材を含む。
また、色材は、有彩色色材、黒色色材、及び近赤外線吸収色材よりなる群から選ばれる少なくとも1種の色材を含むことが好ましく、有彩色色材及び近赤外線吸収色材よりなる群から選ばれる少なくとも1種の色材を含むことがより好ましく、有彩色色材を含むことが更に好ましく、赤色色材、黄色色材、青色色材及び紫色色材よりなる群から選ばれた少なくとも1種の色材を含むことが更に好ましい。
また、色材は、黒色色材を含むことも好ましい。
【0026】
また、色材は、有彩色色材及び近赤外線吸収色材を含むことが好ましく、2種以上の有彩色色材と近赤外線吸収色材とを含むことがより好ましい。
また、色材は、黒色色材と近赤外線吸収色材とを含むことも好ましい。
これらの態様によれば、本発明の着色樹脂組成物を、近赤外線透過フィルタ形成用の着色樹脂組成物として好ましく用いることができる。
これらの色材の組み合わせについては、特開2013-77009号公報、特開2014-130338号公報、国際公開第2015/166779号等を参照できる。
【0027】
色材としては染料及び顔料が挙げられ、耐熱性の観点からは顔料であることが好ましい。また、顔料は、無機顔料、有機顔料のいずれでもよいが、カラーバリエーションの多さ、分散の容易性、安全性等の観点から有機顔料であることが好ましい。また、顔料は、有彩色顔料及び近赤外線吸収顔料から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、有彩色顔料を含むことがより好ましい。
【0028】
また、顔料は、フタロシアニン顔料、ジオキサジン顔料、キナクリドン顔料、アントラキノン顔料、ペリレン顔料、アゾ顔料、ジケトピロロピロール顔料、ピロロピロール顔料、イソインドリン顔料及びキノフタロン顔料から選ばれる少なくとも1種を含むものであることが好ましく、フタロシアニン顔料、ジケトピロロピロール顔料及びピロロピロール顔料から選ばれる少なくとも1種を含むものであることがより好ましく、フタロシアニン顔料又はジケトピロロピロール顔料を含むものであることが更に好ましい。また、高温(例えば300℃以上)に加熱した後も分光特性が変動しにくい膜を形成しやすいという理由からフタロシアニン顔料は、中心金属を持たないフタロシアニン顔料や、中心金属として、銅又は亜鉛を有するフタロシアニン顔料が好ましい。
【0029】
また、着色樹脂組成物に含まれる色材は、高温(例えば300℃以上)に加熱した後も分光特性が変動しにくい膜を形成しやすいという理由から赤色顔料、黄色顔料、青色顔料及び赤外線吸収顔料から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、赤色顔料及び青色顔料から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、青色顔料を含むことが更に好ましい。
【0030】
着色樹脂組成物に含まれる色材は、以下に示す条件1を示す顔料Aを含むことが好ましい。このような特性を有する色材を用いることで、高温(例えば300℃以上)に加熱した後も分光特性が変動しにくい膜を形成することができる。着色樹脂組成物に含まれる顔料全量中における顔料Aの割合は、20~100質量%であることが好ましく、30~100質量%であることがより好ましく、40~100質量%であることが更に好ましい。
【0031】
条件1)
顔料Aを6質量%と、樹脂B-5を10質量%と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを84質量%含む組成物を用いて、200℃で30分加熱して厚さ0.60μmの膜を形成した際に、上記膜を窒素雰囲気下にて300℃で5時間加熱処理したとき、加熱処理後の膜の下記式(10)で表される吸光度の変化率ΔA10が50%以下である;
ΔA10=|100-(A12/A11)×100| ・・・(10)
ΔA10は、加熱処理後の膜の吸光度の変化率であり、
A11は、加熱処理前の膜の波長400~1100nmの範囲における吸光度の最大値であり、
A12は、加熱処理後の膜の吸光度であって、加熱処理前の膜の波長400~1100nmの範囲における吸光度の最大値を示す波長での吸光度である;
樹脂B-5は、下記構造の樹脂であって、主鎖に付記した数値はモル比であり、重量平均分子量は11000であり、酸価は32mgKOH/gである。
【化5】
【0032】
上記の条件1を満たす顔料Aとしては、C.I.Pigment Red 254、C.I.Pigment Red 264、Pigment Red 272、Pigment Red 122、Pigment Red 177、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:4、C.I.Pigment Blue 15:6、C.I.Pigment Blue 16などが挙げられる。
【0033】
顔料の平均一次粒子径は、1~200nmが好ましい。下限は5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。上限は、180nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。顔料の平均一次粒子径が上記範囲であれば、着色樹脂組成物中における顔料の分散安定性が良好である。なお、本発明において、顔料の一次粒子径は、顔料の一次粒子を透過型電子顕微鏡により観察し、得られた写真から求めることができる。具体的には、顔料の一次粒子の投影面積を求め、それに対応する円相当径を顔料の一次粒子径として算出する。また、本発明における平均一次粒子径は、400個の顔料の一次粒子についての一次粒子径の算術平均値とする。また、顔料の一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
【0034】
〔有彩色色材〕
有彩色色材としては、波長400~700nmの範囲に極大吸収波長を有する色材が挙げられる。例えば、黄色色材、オレンジ色色材、赤色色材、緑色色材、紫色色材、青色色材などが挙げれる。耐熱性の観点から有彩色色材は、顔料(有彩色顔料)であることが好ましく、赤色顔料、黄色顔料、及び青色顔料がより好ましく、赤色顔料及び青色顔料が更に好ましい。有彩色顔料の具体例としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
【0035】
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214,215,228,231,232(メチン系),233(キノリン系),234(アミノケトン系),235(アミノケトン系),236(アミノケトン系)等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279,294(キサンテン系、Organo Ultramarine、Bluish Red),295(モノアゾ系),296(ジアゾ系)、297(アミノケトン系)等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59,62,63,64(フタロシアニン系),65(フタロシアニン系),66(フタロシアニン系)等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42,60(トリアリールメタン系),61(キサンテン系)等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,29,60,64,66,79,80,87(モノアゾ系),88(メチン系)等(以上、青色顔料)。
【0036】
これらの有彩色顔料のうち、高温(例えば300℃以上)に加熱した後も分光特性が変動しにくい膜を形成しやすいという理由から赤色顔料としては、C.I.Pigment Red 254、C.I.Pigment Red 264、Pigment Red 272、Pigment Red 122、Pigment Red 177が好ましい。また、青色顔料としては、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:4、C.I.Pigment Blue 15:6、C.I.Pigment Blue 16が好ましい。
【0037】
また、緑色色材として、1分子中のハロゲン原子数が平均10~14個であり、臭素原子数が平均8~12個であり、塩素原子数が平均2~5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/118720号に記載の化合物が挙げられる。また、緑色顔料として中国特許出願公開第106909027号明細書に記載の化合物、国際公開第2012/102395号に記載のリン酸エステルを配位子として有するフタロシアニン化合物、特開2019-008014号公報に記載のフタロシアニン化合物及び特開2018-180023号公報に記載のフタロシアニン化合物、特開2019-038958号公報に記載の化合物などを用いることもできる。
【0038】
また、青色色材として、リン原子を有するアルミニウムフタロシアニン化合物を用いることもできる。具体例としては、特開2012-247591号公報の段落番号0022~0030、特開2011-157478号公報の段落番号0047に記載の化合物が挙げられる。
【0039】
また、黄色色材として、特開2017-201003号公報に記載の化合物、特開2017-197719号公報に記載の化合物、特開2017-171912号公報の段落番号0011~0062、0137~0276に記載の化合物、特開2017-171913号公報の段落番号0010~0062、0138~0295に記載の化合物、特開2017-171914号公報の段落番号0011~0062、0139~0190に記載の化合物、特開2017-171915号公報の段落番号0010~0065、0142~0222に記載の化合物、特開2013-054339号公報の段落番号0011~0034に記載のキノフタロン化合物、特開2014-026228号公報の段落番号0013~0058に記載のキノフタロン化合物、特開2018-062644号公報に記載のイソインドリン化合物、特開2018-203798号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2018-062578号公報に記載のキノフタロン化合物、特許第6432077号公報に記載のキノフタロン化合物、特許第6432076号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2018-155881号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2018-111757号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2018-040835号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2017-197640号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2016-145282号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2014-085565号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2014-021139号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2013-209614号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2013-209435号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2013-181015号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2013-061622号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2013-054339号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2013-032486号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2012-226110号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2008-074987号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2008-081565号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2008-074986号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2008-074985号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2008-050420号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2008-031281号公報に記載のキノフタロン化合物、特公昭48-032765号公報に記載のキノフタロン化合物、特開2019-008014号公報に記載のキノフタロン化合物、下記式(QP1)で表される化合物、下記式(QP2)で表される化合物を用いることもできる。
【化6】
【0040】
式(QP1)中、X
1~X
16は各々独立に水素原子又はハロゲン原子を表し、Z
1は炭素数1~3のアルキレン基を表す。式(QP1)で表される化合物の具体例としては、特許第6443711号公報の段落番号0016に記載されている化合物が挙げられる。
【化7】
【0041】
式(QP2)中、Y1~Y3は、それぞれ独立にハロゲン原子を示す。n、mは0~6の整数、pは0~5の整数を表す。(n+m)は1以上である。式(QP2)で表される化合物の具体例としては、特許6432077号公報の段落番号0047~0048に記載されている化合物が挙げられる。
【0042】
赤色色材として、特開2017-201384号公報に記載の構造中に少なくとも1つ臭素原子が置換したジケトピロロピロール化合物、特許第6248838号の段落番号0016~0022に記載のジケトピロロピロール化合物、国際公開第2012/102399号に記載のジケトピロロピロール化合物、国際公開第2012/117965号に記載のジケトピロロピロール化合物、特開2012-229344号公報に記載のナフトールアゾ化合物、特許第6516119号に記載の化合物、特許第6525101号に記載の化合物などを用いることもできる。また、赤色顔料として、芳香族環に対して、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子が結合した基が導入された芳香族環基がジケトピロロピロール骨格に結合した構造を有する化合物を用いることもできる。このような化合物としては、式(DPP1)で表される化合物であることが好ましく、式(DPP2)で表される化合物であることがより好ましい。
【化8】
【0043】
上記式中、R11及びR13はそれぞれ独立して置換基を表し、R12及びR14はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、n11及びn13はそれぞれ独立して0~4の整数を表し、X12及びX14はそれぞれ独立して酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、X12が酸素原子又は硫黄原子の場合は、m12は1を表し、X12が窒素原子の場合は、m12は2を表し、X14が酸素原子又は硫黄原子の場合は、m14は1を表し、X14が窒素原子の場合は、m14は2を表す。R11及びR13が表す置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、スルホキシド基、スルホ基などが好ましい具体例として挙げられる。
【0044】
有彩色染料としては、ピラゾールアゾ化合物、アニリノアゾ化合物、トリアリールメタン化合物、アントラキノン化合物、アントラピリドン化合物、ベンジリデン化合物、オキソノール化合物、ピラゾロトリアゾールアゾ化合物、ピリドンアゾ化合物、シアニン化合物、フェノチアジン化合物、ピロロピラゾールアゾメチン化合物、キサンテン化合物、フタロシアニン化合物、ベンゾピラン化合物、インジゴ化合物、ピロメテン化合物が挙げられる。
【0045】
有彩色色材は、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、有彩色色材は、2種以上組み合わせて用いる場合、2種以上の有彩色色材の組み合わせで黒色を形成していてもよい。そのような組み合わせとしては、例えば以下の(1)~(7)の態様が挙げられる。着色樹脂組成物中に有彩色色材を2種以上含み、かつ、2種以上の有彩色色材の組み合わせで黒色を呈している場合においては、本発明の着色樹脂組成物は、近赤外線透過フィルタとして好ましく用いることができる。
(1)赤色色材と青色色材とを含有する態様。
(2)赤色色材と青色色材と黄色色材とを含有する態様。
(3)赤色色材と青色色材と黄色色材と紫色色材とを含有する態様。
(4)赤色色材と青色色材と黄色色材と紫色色材と緑色色材とを含有する態様。
(5)赤色色材と青色色材と黄色色材と緑色色材とを含有する態様。
(6)赤色色材と青色色材と緑色色材とを含有する態様。
(7)黄色色材と紫色色材とを含有する態様。
【0046】
〔白色色材〕
白色色材としては、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、中空樹脂粒子、硫化亜鉛などの無機顔料(白色顔料)が挙げられる。白色顔料は、チタン原子を有する粒子が好ましく、酸化チタンがより好ましい。また、白色顔料は、波長589nmの光に対する屈折率が2.10以上の粒子であることが好ましい。前述の屈折率は、2.10~3.00であることが好ましく、2.50~2.75であることがより好ましい。
【0047】
また、白色顔料は「酸化チタン 物性と応用技術 清野学著 13~45ページ 1991年6月25日発行、技報堂出版発行」に記載の酸化チタンを用いることもできる。
【0048】
白色顔料は、単一の無機物からなるものだけでなく、他の素材と複合させた粒子を用いてもよい。例えば、内部に空孔や他の素材を有する粒子、コア粒子に無機粒子を多数付着させた粒子、ポリマー粒子からなるコア粒子と無機ナノ微粒子からなるシェル層とからなるコア及びシェル複合粒子を用いることが好ましい。上記ポリマー粒子からなるコア粒子と無機ナノ微粒子からなるシェル層とからなるコア及びシェル複合粒子としては、例えば、特開2015-047520号公報の段落番号0012~0042の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0049】
白色顔料は、中空無機粒子を用いることもできる。中空無機粒子とは、内部に空洞を有する構造の無機粒子であり、外殻に包囲された空洞を有する無機粒子のことを言う。中空無機粒子としては、特開2011-075786号公報、国際公開第2013/061621号、特開2015-164881号公報などに記載された中空無機粒子が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0050】
〔黒色色材〕
黒色色材としては特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、カーボンブラック、チタンブラック、グラファイト等の無機顔料(黒色顔料)が挙げられ、カーボンブラック、チタンブラックが好ましく、チタンブラックがより好ましい。チタンブラックとは、チタン原子を含有する黒色粒子であり、低次酸化チタンや酸窒化チタンが好ましい。チタンブラックは、分散性向上、凝集性抑制などの目的で必要に応じ、表面を修飾することが可能である。例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、又は、酸化ジルコニウムでチタンブラックの表面を被覆することが可能である。また、特開2007-302836号公報に表されるような撥水性物質での処理も可能である。黒色顔料として、カラーインデックス(C.I.)Pigment Black 1,7等が挙げられる。チタンブラックは、個々の粒子の一次粒子径及び平均一次粒子径のいずれもが小さいことが好ましい。具体的には、平均一次粒子径が10~45nmであることが好ましい。チタンブラックは、分散物として用いることもできる。例えば、チタンブラック粒子とシリカ粒子とを含み、分散物中のSi原子とTi原子との含有比が0.20~0.50の範囲に調整した分散物などが挙げられる。上記分散物については、特開2012-169556号公報の段落0020~0105の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。チタンブラックの市販品の例としては、チタンブラック10S、12S、13R、13M、13M-C、13R-N、13M-T(商品名:三菱マテリアル(株)製)、ティラック(Tilack)D(商品名:赤穂化成(株)製)などが挙げられる。
【0051】
また、黒色色材として、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物などの有機黒色色材を用いることもできる。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010-534726号公報、特表2012-515233号公報、特表2012-515234号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。ペリレン化合物としては、特開2017-226821号公報の段落番号0016~0020に記載の化合物、C.I.Pigment Black 31、32などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平01-170601号公報、特開平02-034664号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。
【0052】
本発明の組成物に用いられる色材は、上述した黒色色材のみであってもよく、有彩色色材を更に含むものであってもよい。この態様によれば、可視領域の遮光性の高い膜を形成できる組成物が得られやすい。色材として黒色色材と有彩色色材とを併用する場合、両者の質量比は、黒色色材:有彩色色材=100:10~300であることが好ましく、100:20~200であることがより好ましい。また、上記黒色色剤としては黒色顔料を用いることが好ましく、上記有彩色色剤としては有彩色顔料を用いることが好ましい。
【0053】
有彩色色材としては、赤色色材、緑色色材、青色色材、黄色色材、紫色色材及びオレンジ色色材が挙げられる。
有彩色色材としては、有彩色顔料が好ましく、有彩色顔料としては、赤色顔料、緑色顔料、青色顔料、黄色顔料、紫色顔料及びオレンジ色顔料が挙げられる。
また、有彩色顔料としては、無機顔料又は有機‐無機顔料に、有機発色団を置換した材料を用いることもできる。無機顔料や有機‐無機顔料を有機発色団で置換することで、色相設計をしやすくできる。顔料Aには、赤色顔料、青色顔料及び黄色顔料から選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましく用いられ、青色顔料及び黄色顔料から選ばれる少なくとも1種を含むものがより好ましく用いられ、青色顔料を含むものが更に好ましく用いられる。この態様によれば、可視領域の遮光性に優れた膜を形成しやすい。また、青色顔料を用いることで、耐光性に優れた膜を形成できる。また、黄色顔料を用いることで、得られる膜の可視透過率の均一化を図ることができる。
【0054】
青色顔料は、耐光性に優れた膜を形成しやすいという理由からフタロシアニン化合物であることが好ましい。また、青色顔料は、カラーインデックス(C.I.)ピグメントブルー1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,29,60,64,66,79,80,87(モノアゾ系),88(メチン/ポリメチン系)が挙げられ、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:6及びC.I.ピグメントブルー16から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、C.I.ピグメントブルー15:6であることがより好ましい。
【0055】
また、青色顔料として、リン原子を有するアルミニウムフタロシアニン化合物を用いることもできる。このような化合物としては、配位子がリン酸エステルであるアルミニウムフタロシアニン化合物などが挙げられる。リン原子を有するアルミニウムフタロシアニン化合物の具体例としては、特開2012-247591号公報の段落0022~0030、特開2011-157478号公報の段落0047に記載の化合物が挙げられる。
【0056】
黄色顔料としては、アゾ化合物、キノフタロン化合物、イソインドリノン化合物、イソインドリン化合物、アントラキノン化合物等が挙げられ、イソインドリン化合物であることが好ましい。また、黄色顔料は、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214,231,232(メチン/ポリメチン系)等が挙げられる。
【0057】
また、黄色顔料として、特開2017-201003号公報に記載されている顔料、特開2017-197719号公報に記載されている顔料を用いることができる。また、黄色顔料として、下記式(I)で表されるアゾ化合物及びその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、2種以上の金属イオンと、メラミン化合物とを含む金属アゾ顔料を用いることもできる。
【化9】
式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、-OH又は-NR
5R
6であり、R
3及びR
4はそれぞれ独立して、=O又は=NR
7であり、R
5~R
7はそれぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。R
5~R
7が表すアルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐及び環状のいずれであってもよく、直鎖又は分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基及びアミノ基が好ましい。
【0058】
上記の金属アゾ顔料については、特開2017-171912号公報の段落番号0011~0062、0137~0276、特開2017-171913号公報の段落番号0010~0062、0138~0295、特開2017-171914号公報の段落番号0011~0062、0139~0190、特開2017-171915号公報の段落番号0010~0065、0142~0222の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0059】
赤色顔料としては、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、アゾ化合物、キナクリドン化合物などが挙げられ、ジケトピロロピロール化合物が好ましい。また、赤色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279,294(キサンテン系、Organo Ultramarine、Bluish Red)等が挙げられる。
【0060】
また、赤色顔料として、特開2017-201384号公報に記載の構造中に少なくとも1つ臭素原子が置換したジケトピロロピロール系顔料、特許第6248838号の段落番号0016~0022に記載のジケトピロロピロール系顔料などを用いることもできる。また、赤色顔料として、芳香族環に酸素原子、硫黄原子又は窒素原子が結合した基が導入された芳香族環基がジケトピロロピロール骨格に結合した構造を有する化合物を用いることもできる。
【0061】
オレンジ色顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等が挙げられる。紫色顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット1,19,23,27,32,37,42,60(トリアリルメタン系),61(キサンテン系)等が挙げられる。緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7,10,36,37,58,59,62,63等が挙げられる。また、緑色顔料として、1分子中のハロゲン原子数が平均10~14個であり、臭素原子が平均8~12個であり、塩素原子が平均2~5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いることもできる。具体例としては、国際公開2015/118720号に記載の化合物が挙げられる。
【0062】
有機黒色色材と有彩色色材の好ましい組み合わせとしては、例えば以下が挙げられる。
(A-1)有機黒色色材と青色色材とを含有する態様。
(A-2)有機黒色色材と青色色材と黄色色材とを含有する態様。
(A-3)有機黒色色材と青色色材と黄色色材と赤色色材とを含有する態様。
(A-4)有機黒色色材と青色色材と黄色色材と紫色色材とを含有する態様。
【0063】
上記(A-1)の態様において、有機黒色色材と青色色材との質量比は、有機黒色色材:青色色材=100:1~70であることが好ましく、100:5~60であることがより好ましく、100:10~50であることが更に好ましい。
上記(A-2)の態様において、有機黒色色材と青色色材と黄色色材の質量比は、有機黒色色材:青色色材:黄色色材=100:10~90:10~90であることが好ましく、100:15~85:15~80であることがより好ましく、100:20~80:20~70であることが更に好ましい。
上記(A-3)の態様において、有機黒色色材と青色色材と黄色色材と赤色色材との質量比は、有機黒色色材:青色色材:黄色色材:赤色色材=100:20~150:1~60:10~100であることが好ましく、100:30~130:5~50:20~90であることがより好ましく、100:40~120:10~40:30~80であることが更に好ましい。
上記(A-4)の態様において、有機黒色色材と青色色材と黄色色材と紫色色材との質量比は、有機黒色色材:青色色材:黄色色材:紫色色材=100:20~150:1~60:10~100であることが好ましく、100:30~130:5~50:20~90であることがより好ましく、100:40~120:10~40:30~80であることが更に好ましい。
【0064】
本発明の組成物に用いられる色材は、波長700nmを超え800nm以下の範囲に極大吸収波長を有する色材を用いることもできる。このような色材は近赤外線吸収顔料として用いられる。色材としてこのような分光特性を有する顔料を含むものを用いることで、得られる膜について透過させる光の波長をより長波長側にシフトさせることができる。波長700nmを超え800nm以下の範囲に極大吸収波長を有する顔料は、波長500nmにおける吸光度A1と極大吸収波長における吸光度A2との比率A1/A2が、0.08以下であるものが好ましく、0.04以下であるものがより好ましい。
【0065】
波長700nmを超え800nm以下の範囲に極大吸収波長を有する顔料としては、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、メロシアニン化合物、クロコニウム化合物、オキソノール化合物、イミニウム化合物、ジチオール化合物、トリアリールメタン化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、アントラキノン化合物、ジベンゾフラノン化合物等が挙げられる。
【0066】
色材の含有量は、本発明の組成物の全固形分中10~60質量%であることが好ましい。下限は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
【0067】
また、色材中における上述した有機黒色色材の含有量は10質量%以上であり、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることがより一層好ましく、60質量%以上であることが更に一層好ましい。従来の組成物は、有機黒色色材の含有量が多くなるに伴い配管チューブ内の汚染が生じやすい傾向にあったが、本発明の組成物は、有機黒色色材の含有量を高めても配管チューブ内の汚染を生じにくくできるので、有機黒色色材の含有量が多いほど本発明の効果が顕著に奏される。
【0068】
また、色材中における有機黒色色材としてのラクタム系顔料の含有量は10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることがより一層好ましく、40質量%以上であることが更に一層好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。
【0069】
また、上述した有機黒色色材の含有量は、本発明の組成物の全固形分中5~70質量%であることが好ましい。下限は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。上限は65質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
【0070】
〔近赤外線吸収色材〕
近赤外線吸収色材は、顔料であることが好ましく、有機顔料であることがより好ましい。また、近赤外線吸収色材は、波長700nmを超え1400nm以下の範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。また、近赤外線吸収色材の極大吸収波長は、1200nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることがより好ましく、950nm以下であることが更に好ましい。また、近赤外線吸収色材は、波長550nmにおける吸光度A550と極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA550/Amaxが0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましく、0.03以下であることが更に好ましく、0.02以下であることが特に好ましい。下限は、特に限定はないが、例えば、0.0001以上とすることができ、0.0005以上とすることもできる。上述の吸光度の比が上記範囲であれば、可視光透明性及び近赤外線遮蔽性に優れた近赤外線吸収色材とすることができる。なお、本発明において、近赤外線吸収色材の極大吸収波長及び各波長における吸光度の値は、近赤外線吸収色材を含む着色樹脂組成物を用いて形成した膜の吸収スペクトルから求めた値である。
【0071】
近赤外線吸収色材としては、特に限定はないが、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、メロシアニン化合物、クロコニウム化合物、オキソノール化合物、イミニウム化合物、ジチオール化合物、トリアリールメタン化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、アントラキノン化合物、ジベンゾフラノン化合物、ジチオレン金属錯体等が挙げられる。ピロロピロール化合物としては、特開2009-263614号公報の段落番号0016~0058に記載の化合物、特開2011-068731号公報の段落番号0037~0052に記載の化合物、国際公開第2015/166873号の段落番号0010~0033に記載の化合物などが挙げられる。スクアリリウム化合物としては、特開2011-208101号公報の段落番号0044~0049に記載の化合物、特許第6065169号公報の段落番号0060~0061に記載の化合物、国際公開第2016/181987号の段落番号0040に記載の化合物、特開2015-176046号公報に記載の化合物、国際公開第2016/190162号の段落番号0072に記載の化合物、特開2016-074649号公報の段落番号0196~0228に記載の化合物、特開2017-067963号公報の段落番号0124に記載の化合物、国際公開第2017/135359号に記載の化合物、特開2017-114956号公報に記載の化合物、特許6197940号公報に記載の化合物、国際公開第2016/120166号に記載の化合物などが挙げられる。シアニン化合物としては、特開2009-108267号公報の段落番号0044~0045に記載の化合物、特開2002-194040号公報の段落番号0026~0030に記載の化合物、特開2015-172004号公報に記載の化合物、特開2015-172102号公報に記載の化合物、特開2008-088426号公報に記載の化合物、国際公開第2016/190162号の段落番号0090に記載の化合物、特開2017-031394号公報に記載の化合物などが挙げられる。クロコニウム化合物としては、特開2017-082029号公報に記載の化合物が挙げられる。イミニウム化合物としては、例えば、特表2008-528706号公報に記載の化合物、特開2012-012399号公報に記載の化合物、特開2007-092060号公報に記載の化合物、国際公開第2018/043564号の段落番号0048~0063に記載の化合物が挙げられる。フタロシアニン化合物としては、特開2012-077153号公報の段落番号0093に記載の化合物、特開2006-343631号公報に記載のオキシチタニウムフタロシアニン、特開2013-195480号公報の段落番号0013~0029に記載の化合物、特許第6081771号公報に記載のバナジウムフタロシアニン化合物が挙げられる。ナフタロシアニン化合物としては、特開2012-077153号公報の段落番号0093に記載の化合物が挙げられる。ジチオレン金属錯体としては、特許第5733804号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0072】
近赤外線吸収色材としては、また、特開2017-197437号公報に記載のスクアリリウム化合物、特開2017-025311号公報に記載のスクアリリウム化合物、国際公開第2016/154782号に記載のスクアリリウム化合物、特許第5884953号公報に記載のスクアリリウム化合物、特許第6036689号公報に記載のスクアリリウム化合物、特許第5810604号公報に記載のスクアリリウム化合物、国際公開第2017/213047号の段落番号0090~0107に記載のスクアリリウム化合物、特開2018-054760号公報の段落番号0019~0075に記載のピロール環含有化合物、特開2018-040955号公報の段落番号0078~0082に記載のピロール環含有化合物、特開2018-002773号公報の段落番号0043~0069に記載のピロール環含有化合物、特開2018-041047号公報の段落番号0024~0086に記載のアミドα位に芳香環を有するスクアリリウム化合物、特開2017-179131号公報に記載のアミド連結型スクアリリウム化合物、特開2017-141215号公報に記載のピロールビス型スクアリリウム骨格又はクロコニウム骨格を有する化合物、特開2017-082029号公報に記載されたジヒドロカルバゾールビス型のスクアリリウム化合物、特開2017-068120号公報の段落番号0027~0114に記載の非対称型の化合物、特開2017-067963号公報に記載されたピロール環含有化合物(カルバゾール型)、特許第6251530号公報に記載されたフタロシアニン化合物、特開2013-77009号公報、特開2014-130338号公報、国際公開第2015/166779号に記載の色剤、又は、これらの文献に記載の色剤の組み合わせなどを用いることもできる。
【0073】
着色樹脂組成物の全固形分中における色材の含有量は30質量%以上であり、30~90質量%であることが好ましく、30~80質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることが更に好ましい。
また、着色樹脂組成物の全固形分中における顔料の含有量は30質量%以上であることが好ましく、30~90質量%であることが好ましく、30~80質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることが更に好ましい。
また、色材中における染料の含有量は50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。
また、本発明の着色樹脂組成物は、得られる膜を高温に加熱した際の膜厚変化をより効果的に抑制しやすいという理由から染料を実質的に含有しないことも好ましい。本発明の着色樹脂組成物が染料を実質的に含まない場合、本発明の着色樹脂組成物の全固形分中における染料の含有量が0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0074】
<特定樹脂>
本発明の着色樹脂組成物は、式(1-1)又は式(1-2)で表される繰返し単位を含むポリイミド又はポリイミド前駆体(特定樹脂)を含む。
【0075】
〔式(1-1)〕
-R11-
式(1-1)中、R11は炭素数6~14の芳香族炭化水素基を表し、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、又は、フルオレン環からそれぞれ水素原子をn+2個除いた基が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環からそれぞれ水素原子をn+2個除いた基がより好ましく、ベンゼン環から水素原子をn+2個除いた基が更に好ましい。
【0076】
-R12-
式(1-1)中、R12はR11における芳香族炭化水素基の置換基である1価の置換基であり、下記R1a~R1dのいずれかであることが好ましい。
また、R12のうち、少なくとも1つがR1a~R1cのいずれかであることが好ましい。
R1a:カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルホンアミド基、及び、ヒドロキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸基を含む基
R1b:(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を含む基
R1c:炭素数12以上の基
R1d:上記R1a、R1b、R1c以外の置換基
また、着色樹脂組成物の透明性及び硬化性の観点からは、R12はフェノール性ヒドロキシ基を有しないことが好ましい。
【0077】
<<R
1a>>
R
1aは、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルホンアミド基、及び、ヒドロキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸基を含む基であり、カルボキシ基を含む基であることが好ましい。
本明細書において、スルホンアミド基とは、-S(=O)
2-NR
S1
2又はR
S2-S(=O)
2-NR
S3-で表される基をいう。上記R
S1はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表し、R
S1の少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、R
S1の両方が水素原子であることがより好ましい。上記R
S2は1価の置換基を表し、炭化水素基であることが好ましい。上記R
S3は水素原子又は炭化水素基を表し、水素原子であることが好ましい。
R
1aは、下記式(A-1)で表される基であることが好ましい。
【化10】
式(A-1)中、L
a1は単結合又はna+1価の連結基を表し、A
a1はそれぞれ独立に、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルホンアミド基、又は、ヒドロキシ基を表し、naは1以上の整数を表し、*はR
11との結合部位を表す。
式(A-1)中、L
a1は単結合、又は、na+1価の炭化水素基が好ましい。na+1価の炭化水素基としては、na+1価の脂肪族飽和炭化水素基、na+1価の芳香族炭化水素基、又は、脂肪族飽和炭化水素基と芳香族炭化水素基の結合により表されるna+1価の脂肪族炭化水素基が好ましく、単結合、又は、na+1価の脂肪族飽和炭化水素基がより好ましい。
本明細書において、特段の記載がない限り、「アルキル基」又は「脂肪族炭化水素基」の記載には、直鎖状、分岐鎖状、又は、環状構造を有するアルキル基又は脂肪族炭化水素基の全てが含まれるものとする。
上記na+1価の脂肪族飽和炭化水素基としては、炭素数2~50の脂肪族飽和炭化水素からna+1個の水素原子を除いた基が好ましく、炭素数2~30の脂肪族飽和炭化水素からna+1個の水素原子を除いた基がより好ましく、炭素数2~10の脂肪族飽和炭化水素からna+1個の水素原子を除いた基が更に好ましい。
上記na+1価の芳香族炭化水素基としては、炭素数6~20の芳香族炭化水素からna+1個の水素原子を除いた基が好ましく、ベンゼン、ナフタレン又はアントラセンからna+1個の水素原子を除いた基がより好ましく、ベンゼンからna+1個の水素原子を除いた基が更に好ましい。
式(A-1)中、A
a1はカルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルホンアミド基、又は、ヒドロキシ基を表し、樹脂の透明性及び組成物の硬化性の観点からは、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、又は、スルホンアミド基であることが好ましく、カルボキシ基が好ましい。
式(A-1)中、A
a1がヒドロキシ基である場合には、上記ヒドロキシ基はフェノール性ヒドロキシ基であることが好ましい。すなわち、A
a1がヒドロキシ基である場合、L
a1は単結合であるか、又は、L
a1におけるA
a1との結合部位は芳香族炭化水素構造であることが好ましい。
式(A-1)中、naは1以上の整数を表し、1~10の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。
これらの中でも、式(A-1)において、L
a1が単結合であり、かつ、naが1である態様が好ましく、L
a1が単結合であり、naが1であり、かつ、A
a1がカルボキシ基である態様がより好ましい。
【0078】
<<R
1b>>
R
1bは、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を含む基であり、後述する重合性化合物との反応性の観点からは、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、及び、マレイミド基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を含む基であることが好ましく、(メタ)アクリロキシ基を含む基であることがより好ましい。
また、本明細書において、芳香族ビニル基とは、芳香環に置換基を有してもよいビニル基が直接結合した基をいい、ビニルフェニル基、ビニルナフチル基、ビニルチエニル基、ビニルピリジル基、ビニルイミダゾリル基等が挙げられ、ビニルフェニル基が好ましい。
R
1bは、下記式(B-1)で表される基であることが好ましい。
【化11】
式(B-1)中、L
b1は単結合又はnb+1価の連結基を表し、A
b1はそれぞれ独立に、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を表し、nbは1以上の整数を表し、*はR
11との結合部位を表す。
式(B-1)中、L
b1は単結合又はnb+1価の連結基を表し、nb+1価の連結基が好ましい。上記nb+1価の連結基としては、-O-、-S-、-C(=O)-、-S(=O)
2-、P(=O)、-NR
N-、-N<、-CH
2-CH(OH)-CH
2-、脂肪族飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は、これらを2以上結合した基であることが好ましく、下記式(B-2)~式(B-7)で表される基であることがより好ましい。R
Nは水素原子又は炭化水素基を表し、水素原子、アルキル基又は芳香族炭化水素基が好ましく、水素原子又はアルキル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【化12】
式(B-2)~(B-7)中、Xは-O-又は-NR
N-を表し、L
b2、L
b3、L
b4、L
b5、L
b6及びL
b7はそれぞれ独立に、2価の連結基を表し、R
b1は水素原子又は置換基を表し、R
b2は水素原子又は置換基を表し、*はR
11との結合部位を表し、#は式(B-1)におけるA
b1との結合部位を表し、b41は1又は2であり、b42は0又は1であり、b41+b42は2であり、b51は1又は2であり、b52は0又は1であり、b51+b52は2である。また、R
Nは上述の通りである。
【0079】
式(B-2)~(B-7)中、Lb2、Lb3、Lb4、Lb5、Lb6、Lb7はそれぞれ、2価の連結基を表し、アルキレン基、2価の芳香族炭化水素環基、又は、アルキレン基、2価の芳香族炭化水素環基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)2-、-C(=O)O-、-C(=O)S-、-C(=O)NRN-、-OC(=O)NRN-、-SC(=O)NRN-、-NRNC(=O)NRN-、及び、-CH2CH(OH)CH2-、よりなる群から選ばれた少なくとも2つの結合により表される基であることが好ましい。RNは上述の通りである。
本明細書において、単に-C(=O)NRN-、-OC(=O)NRN-、-NRNC(=O)NRN-と記載した場合、構造中におけるこれらの結合の向きは特に限定されないものとする。
上記アルキレン基としては、炭素数1~20のアルキレン基が好ましく、炭素数2~10のアルキレン基がより好ましい。
上記2価の芳香族炭化水素環基としては、炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素環基がより好ましく、フェニレン基が更に好ましい。
【0080】
式(B-4)中、Rb1は水素原子又は置換基を表し、水素原子又は炭化水素基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0081】
式(B-5)中、Rb2は水素原子又は置換基を表し、水素原子又は炭化水素基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0082】
式(B-4)中、b41は1又は2であり、1であることが好ましい。
式(B-4)中、b42は0又は1であり、1であることが好ましい。
式(B-5)中、b51は1又は2であり、1であることが好ましい。
式(B-5)中、b52は0又は1であり、1であることが好ましい。
【0083】
これらの中でも、L
b1は下記式(B-7)で表される基であることが好ましい。
【化13】
式(B-7)中、L
B7はそれぞれ独立に、2価の連結基を表し、nは0以上の整数を表し、*はR11との結合部位を表し、#は式(B-1)におけるA
b1との結合部位を表す。
式(B-7)中、L
B7はそれぞれ独立に、アルキレン基、2価の芳香族炭化水素環基、-C(=O)NR
N-、-OC(=O)NR
N-、-NR
NC(=O)NR
N-、又はこれらを2以上結合した基を表し、アルキレン基が好ましい。R
Nは上述の通りである。
式(B-7)中、nは0以上の整数を表し、0~20の整数であることが好ましく、0~10の整数であることがより好ましく、0、1又は2であることが更に好ましく、0又は1であることが特に好ましい。
【0084】
Ab1はそれぞれ独立に、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を表し、後述する重合性化合物との反応性の観点からは、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、及び、マレイミド基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基であることが好ましく、(メタ)アクリロキシ基であることがより好ましい。
【0085】
nbは1以上の整数を表し、1~10の整数であることが好ましく1~4の整数であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。
【0086】
<<R1c>>
R1cは、炭素数12以上の基であり、上記R1a及び上記R1bに該当しない基である。
R1cは、分子量が1,000以上であり、かつ、酸基及び塩基性基を有しない分子鎖であることが好ましい。
またR1cは、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する繰返し単位、(メタ)アクリルアミド化合物に由来する繰返し単位、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位、及び、ポリエステル構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、又は、(メタ)アクリル酸アリールエステル化合物が好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物がより好ましい。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物におけるアルキル基としては、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
上記(メタ)アクリル酸アリールエステル化合物におけるアリール基としては、炭素数6~20のアリール基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。
上記(メタ)アクリルアミド化合物としては、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド化合物、N-モノアルキルアクリルアミド化合物、N-モノアリールアクリルアミド化合物、N-アルキル-N-アリール(メタ)アクリルアミド化合物、又は、N,N-ジアリール(メタ)アクリルアミド化合物が好ましく、ジアルキル(メタ)アクリルアミド化合物がより好ましい。
上記N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド化合物、N-モノアルキルアクリルアミド化合物、又は、N-アルキル-N-アリール(メタ)アクリルアミド化合物におけるアルキル基としては、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
上記N-モノアリールアクリルアミド化合物、又は、N,N-ジアリール(メタ)アクリルアミド化合物におけるアリール基としては、炭素数6~20のアリール基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。
上記芳香族ビニル化合物としては、芳香族炭化水素環にビニル基が直接結合した化合物、又は、芳香族複素環にビニル基が直接結合した化合物が好ましく、芳香族炭化水素環にビニル基が直接結合した化合物がより好ましく、スチレン化合物がより好ましい。
上記芳香族炭化水素環としては、炭素数6~20の芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
上記芳香族複素環としては、環員数5~20の芳香族炭化水素環が好ましく、チオフェン環、イミダゾール環、ピリジン環がより好ましい。
上記スチレン化合物としては、スチレン、αメチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、スチレンが好ましい。
【0087】
R
1cは、下記式(C-1)又は下記式(C-2)で表される基であることが好ましい。
【化14】
式(C-1)及び式(C-2)中、L
c1は単結合、又は、2価の連結基を表し、Polymerはポリマー鎖を表し、L
c2は単結合、又は、2価の連結基を表し、L
c3はアルキレン基又は2価の芳香族炭化水素基を表し、mは1以上の整数を表し、R
c1はアルキル基又は1価の芳香族炭化水素基を表し、*はR
11との結合部位を表す。
【0088】
式(C-1)中、L
C1は炭化水素基、-O-、-S-、-C(=O)-、-S(=O)
2-、P(=O)、-NR
N-、-N<、若しくは、これらを2以上結合した基であることが好ましい。
また、式(C-1)中、L
C1は単結合、又は、下記式(C-3)~式(C-8)のいずれかで表される基が好ましい。
【化15】
式(C-3)~(C-8)中、L
c4、L
c5、L
c6、L
c7、L
c8、及び、L
c9はそれぞれ独立に、2価の連結基を表し、R
c2は水素原子又は置換基を表し、R
c3は水素原子又は置換基を表し、*はR
11との結合部位を表し、#は式(C-1)における硫黄原子との結合部位を表し、c41は1又は2であり、c42は0又は1であり、c41+c42は2であり、c51は1又は2であり、c52は0又は1であり、c51+c52は2である。
式(C-3)~式(C-8)中、L
c4、L
c5、L
c6、L
c7、L
c8、及び、L
c9はそれぞれ独立に、アルキレン基、2価の芳香族炭化水素環基、又は、アルキレン基、2価の芳香族炭化水素環基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)
2-、-C(=O)O-、-C(=O)NR
N-、-OC(=O)NR
N-、-NR
NC(=O)NR
N-、及び、-CH
2CH(OH)CH
2-よりなる群から選ばれた少なくとも2つの結合により表される基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。R
Nは上述の通りである。
上記アルキレン基としては、炭素数1~20のアルキレン基が好ましく、炭素数2~10のアルキレン基がより好ましい。
上記2価の芳香族炭化水素環基としては、炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素環基がより好ましく、フェニレン基が更に好ましい。
【0089】
式(C-5)中、Rc2は水素原子又は置換基を表し、水素原子又は炭化水素基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0090】
式(C-6)中、Rc3は水素原子又は置換基を表し、水素原子又は炭化水素基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0091】
式(C-5)中、c41は1又は2であり、1であることが好ましい。
式(C-5)中、c42は0又は1であり、1であることが好ましい。
式(C-6)中、c51は1又は2であり、1であることが好ましい。
式(C-6)中、c52は0又は1であり、1であることが好ましい。
【0092】
これらの中でも、LC1は単結合、式(C-3)で表される基又は式(C-7)で表される基であることが好ましく、式(C-3)で表される基であることがより好ましい。
【0093】
式(C-1)中、Polymerは(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する繰返し単位、(メタ)アクリルアミド化合物に由来する繰返し単位、及び、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位、よりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を含むポリマー鎖であることが好ましい。
また、Polymerは分子量が1,000以上であり、かつ、酸基及び塩基性基を有しない分子鎖であることが好ましい。
式(C-1)における(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する繰返し単位、(メタ)アクリルアミド化合物に由来する繰返し単位、及び、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位の含有量は、上記ポリマー鎖に含まれる繰返し単位の全モル数に対し、70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが更に好ましい。上記含有量の上限は特に限定されず、100モル%以下であればよい。
【0094】
式(C-2)中、Lc2は、Lc1における説明において、「式(C-1)における硫黄原子との結合部位」を「式(C-2)におけるLc3との結合部位」と読み替える以外はLc1と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0095】
式(C-2)中、Lc3はアルキレン基、又は、2価の芳香族炭化水素基を表し、アルキレン基が好ましい。
上記アルキレン基としては、炭素数2~20のアルキレン基が好ましく、炭素数2~10のアルキレン基がより好ましい。
上記2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基が好ましい。
【0096】
式(C-2)中、mは1以上の整数を表し、2~50の整数であることが好ましく、2~30の整数であることがより好ましい。
式(C-2)中、RC1はアルキル基又は1価の芳香族炭化水素基を表し、アルキル基がより好ましい。
上記アルキル基としては、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。
上記1価の芳香族炭化水素基としては、フェニル基が好ましい。
【0097】
<<R1d>>
R1dは、上記R1a、上記R1b及び上記R1cに該当しない置換基である。
R1dとしては、炭素数1~10のアルキル基、又は、炭素数6~10の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
R11がR1dを有することにより、例えば、溶剤への溶解性等を調整することが可能である。
【0098】
-ジアミン化合物-
また、R
12により置換されたR
11は、ジアミン化合物により誘導される構造であることが好ましい。
ジアミン化合物としては、例えば、下記化合物が挙げられる。
【化16】
【化17】
例えば、これらの化合物を後述する4価のカルボン酸化合物と反応させることにより、式(1-1)又は式(1-2)に記載の繰返し単位を有するポリイミド又はポリイミド前駆体を合成することが可能である。
また、例えば、これらの化合物における、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、チオール基等に対して、エステル化等の反応を行うことにより、上述のR
12として記載した置換基を導入することができる。
これらの中でも、ジアミン化合物としては、3,5-ジアミノ安息香酸が好ましい。
【0099】
-R13-
R13は4価の有機基を表し、脂環式構造又は芳香環構造を含むことが好ましく、樹脂の透明性の観点からは、脂環式構造、又は、フッ素原子及び芳香環構造を含む基であることがより好ましく、脂環式構造を含む基であることが更に好ましい。
また、着色樹脂組成物の透明性及び硬化性の観点からは、R13が芳香環構造を含む場合、R13はフェノール性ヒドロキシ基を有しないことが好ましい。
【0100】
<<脂環式構造を含む基>>
脂環式構造を含む基における脂環式構造としては、飽和脂環式構造であってもよいが、不飽和脂環式構造であることが好ましい。
上記脂環式構造における環員数は、4~20であることが好ましく、6~10であることがより好ましい。
また、上記脂環式構造は、単環構造、縮合環構造、架橋環構造、スピロ環構造のいずれでもよいが、単環構造又は架橋環構造であることが好ましい。
脂環式構造を含む基は、下記式(D-1)~式(D-3)で表される基であることが好ましい。
【0101】
【化18】
式(D-1)~式(D-3)中、Cyはそれぞれ独立に、脂環式構造を表し、R
d1は直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基を表し、X
d1は単結合又は2価の連結基を表し、*
1~*
4はそれぞれ、他の構造との結合部位を表す。
【0102】
式(D-1)~式(D-3)中、Cyが表す脂環式構造の好ましい態様は、上述の脂環式構造の好ましい態様と同様である。
式(D-1)中、*1と*2、*3と*4は、脂環式構造Cyにおける隣接位に存在することが好ましい。
本明細書において、ある結合部位と、別の結合部位とが環式構造における隣接位に存在するとは、ある結合部位が存在する上記環式構造における環員と、別の結合部位が存在する上記環式構造における環員とが、環式構造において隣接する環員であることをいう。例えば、環式構造がベンゼン環構造である場合、隣接位とはオルト位のことである。
式(D-2)中、Rd1は直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基を表し、脂肪族飽和炭化水素基であることが好ましい。
上記脂肪族炭化水素基の炭素数は、2~10であることが好ましく、2~4であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
式(D-2)中、*3と*4は、脂肪族炭化水素基Rd1における、隣接する炭素原子に1つずつ存在することが好ましい。
式(D-2)中、*3と*4は、脂環式構造Cyにおける隣接位に存在することが好ましい。
式(D-3)中、Xd1は単結合又は2価の連結基を表し、単結合、又は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)2-、-NHC(=O)-、若しくは、これらを2以上組み合わせた基であることが好ましく、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、-O-、-C(=O)-、-S-、又は、-S(=O)2-から選択される基であることがより好ましく、-CH2-、-O-、-S-、-S(=O)2-、-C(CF3)2-、又は、-C(CH3)2-であることが更に好ましい。
【0103】
<<フッ素原子及び芳香環構造を含む基>>
フッ素原子及び芳香環構造を含む基における芳香環構造としては、炭素数6~30の芳香環構造が好ましく、炭素数6~20の芳香環構造がより好ましく、ベンゼン環構造がより好ましい。また、上記芳香環構造としては、芳香族複素環構造であってもよいが、芳香族炭化水素環構造が好ましい。
フッ素原子及び芳香環構造を含む基は、2以上の上記芳香環構造が単結合又は連結基により連結された構造であってもよい。上記連結基としては、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)2-、-NHC(=O)-、若しくは、これらを2以上組み合わせた基であることが好ましく、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、-O-、-C(=O)-、-S-、又は、-S(=O)2-から選択される基であることがより好ましく、-CH2-、-O-、-S-、-S(=O)2-、-C(CF3)2-、又は、-C(CH3)2-であることが更に好ましく、-C(CF3)2-が特に好ましい。
フッ素原子は、芳香環構造に直接結合していてもよいが、フッ化アルキル基として含まれることが好ましく、フッ化アルキル基として上述の連結基に含まれることがより好ましい。好ましいフッ化アルキル基としては、-CxF2x+1で表される基が挙げられる。上記xは1以上の整数であり、1~10の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましく、1又は2が更に好ましく、1が特に好ましい。
フッ素原子及び芳香環構造を含む基としては、下記式(E-1)で表される構造が好ましい。
【0104】
【化19】
式(E-1)中、Arはそれぞれ独立に芳香環構造を表し、X
e1はフッ素原子を含む2価の連結基を表し、*
1~*
4はそれぞれ、他の構造との結合部位を表す。
式(E-1)中のArは、上述のフッ素原子及び芳香環構造を含む基における芳香環構造と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(E-1)中のX
e1は、フッ素原子で置換された炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、フッ素原子で置換された炭素数1~5のアルキレン基がより好ましく、-C(CF
3)
2-、-C(CF
3)(C
2F
5)-又は-C(C
2F
5)
2-が更に好ましく、-C(CF
3)
2-が特に好ましい。
式(D-1)中、*
1と*
2、*
3と*
4は、芳香環構造Arにおける隣接位に存在することが好ましい。
【0105】
<<その他の4価の連結基>>
R13は、上述した脂環式構造、又は、フッ素原子及び芳香環構造を含む基以外の、その他の4価の連結基であってもよい。
その他の4価の連結基としては、脂環式構造を有しない脂肪族炭化水素基を含む基、又は、芳香環構造を含み、フッ素原子を含まない基等が挙げられる。
上記脂環式構造を有しない脂肪族炭化水素基を含む基における飽和脂肪族炭化水素基としては、炭素数2~20の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数2~10の脂肪族炭化水素基がより好ましい。また、上記脂肪族炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
脂環式構造を有しない脂肪族炭化水素基を含む基は、2以上の上記脂肪族炭化水素基が単結合又は連結基により連結された構造であってもよい。上記連結基としては、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)2-、-NHC(=O)-、若しくは、これらを2以上組み合わせた基であることが好ましく、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、-O-、-C(=O)-、-S-、又は、-S(=O)2-から選択される基であることがより好ましい。
上記芳香環構造を含み、フッ素原子を含まない基における芳香環構造としては、炭素数6~30の芳香環構造が好ましく、炭素数6~20の芳香環構造がより好ましく、ベンゼン環構造がより好ましい。また、上記芳香環構造としては、芳香族複素環構造であってもよいが、芳香族炭化水素環構造が好ましい。
芳香環構造を含み、フッ素原子を含まない基は、2以上の上記芳香環構造が単結合又は連結基により連結された構造であってもよい。上記連結基としては、フッ素原子で置換されていない炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)2-、-NHC(=O)-、若しくは、これらを2以上組み合わせた基であることが好ましく、フッ素原子で置換されていない炭素数1~3のアルキレン基、-O-、-C(=O)-、-S-、又は、-S(=O)2-から選択される基であることがより好ましい。
【0106】
また、R
13は、下記式(I-1)~式(I-28)のいずれかで表される構造であることが好ましい。
【化20】
式(I-1)~(I-28)中、X
1~X
3は、単結合又は2価の連結基を表し、Lは-CH=CH-又は-CH
2-を表し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
1及びR
2は結合して環構造を形成してもよく、*は他の構造との結合部位を表す。
式(I-1)~(I-28)中、X
1~X
3は、単結合又は2価の連結基を表し、単結合、又は、-C(Rx)
2-(Rxは水素原子又は置換基を示す。Rxが置換基の場合、互いに連結して環を形成してもよい)、-O-、-S(=O)
2-、-C(=O)、-S-、-NR
N-、フェニレン基、又はこれらの組み合わせが好ましく、単結合又は-C(Rx)
2-がより好ましい。Rxが置換基を示すとき、その具体例としては、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基が挙げられる。
式(I-1)~(I-28)中、Lは-CH=CH-又は-CH
2-を表し、-CH=CH-が好ましい。
式(I-1)~(I-28)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表すことが好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0107】
これらの中でも、R
13は、下記式(I-29)~式(I-32)で表される基であることが好ましく、(I-30)~式(I-32)で表される基であることがより好ましく、(I-31)又は式(I-32)で表される基であることが更に好ましい。
【化21】
【0108】
R13は4価のカルボン酸から誘導される構造であることが好ましい。
上記4価のカルボン酸としては、上述の式(I-1)~(I-31)において、*をカルボキシ基に置き換えた化合物が挙げられる。また、上記化合物において、カルボキシ基のうち少なくとも2つが無水物化していてもよいし、カルボキシ基が他の化合物と塩を形成していてもよいし、カルボキシ基が他の構造とエステルを形成していてもよいし、ハロゲン化されてカルボン酸ハライド(例えば、カルボン酸クロリド)となっていてもよい。
【0109】
〔式(1-2)〕
-R21、R22、m、R23-
式(1-2)中、R21、R22、m及びR23はそれぞれ、式(1-1)におけるR11、R12、n及びR13と同義であり、好ましい態様も同様である。
上記R12の説明における「R11」の記載は、R22においては「R21」に読み替えるものとする。
【0110】
-R24-
式(1-2)中、R24はそれぞれ独立に、1価の置換基であり、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルホンアミド基、及び、ヒドロキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸基を含む基R2a、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を含む基R2b、又は、炭素数12以上の基R2cであることが好ましい。また、R24は、上記R2a、R2b、R2c以外の置換基R2dであってもよい。
【0111】
<<R
2a>>
R
2aは、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルホンアミド基、及び、ヒドロキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸基を含む基であり、ヒドロキシ基又は下記式(A2-1)で表される基であることが好ましく、ヒドロキシ基であることがより好ましい。
【化22】
式(A2-1)中、X
a2は-O-又は-NR
N-を表し、L
a2は単結合又はna2+1価の連結基を表し、A
a2はそれぞれ独立に、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルホンアミド基、又は、ヒドロキシ基を表し、na2は1以上の整数を表し、*はR
11との結合部位を表し、*は式(1-2)におけるR
24が結合するカルボニル基との結合部位を表し、R
Nは上述の通りである。
【0112】
式(A2-1)中、Xa2は-O-又は-NRN-を表し、-O-が好ましい。
式(A2-1)中、La2、Aa2、及びna2はそれぞれ、上述の式(A-1)におけるLa1、Aa1、及びnaと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0113】
<<R
2b>>
R
2bは、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を含む基であり、後述する重合性化合物との反応性の観点からは、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、及び、マレイミド基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を含む基であることが好ましく、(メタ)アクリロキシ基を含む基であることがより好ましい。
また、R
2bは下記式(B2-1)で表される基であることが好ましい。
【化23】
式(B2-1)中、X
b2は単結合、-O-又は-NR
N-を表し、L
a2は単結合又はnb2+1価の連結基を表し、A
b2はそれぞれ独立に、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を表し、nb2は1以上の整数を表し、*は式(1-2)におけるR
24が結合するカルボニル基との結合部位を表し、R
Nは上述の通りである。
【0114】
式(B2-1)中、Xb2は単結合、-O-又は-NRN-を表し、-O-が好ましい。
式(B2-1)中、La2は単結合又はnb2+1価の連結基を表し、nb2+1価の連結基が好ましい。上記nb2+1価の連結基としては、アルキレン基、2価の芳香族炭化水素環基、又は、アルキレン基、2価の芳香族炭化水素環基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)2-、-C(=O)O-、-C(=O)NRN-、-OC(=O)NRN-、-NRNC(=O)NRN-、及び、-CH2CH(OH)CH2-、よりなる群から選ばれた少なくとも2つの結合により表される基であることが好ましい。RNは上述の通りである。
上記アルキレン基としては、炭素数1~20のアルキレン基が好ましく、炭素数2~10のアルキレン基がより好ましい。
上記2価の芳香族炭化水素環基としては、炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素環基がより好ましく、フェニレン基が更に好ましい。
【0115】
Ab2はそれぞれ独立に、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を表し、後述する重合性化合物との反応性の観点からは、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、及び、マレイミド基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基であることが好ましく、(メタ)アクリロキシ基であることがより好ましい。
【0116】
nb2は1以上の整数を表し、1~10の整数であることが好ましく1~4の整数であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。
【0117】
<<R2c>>
R2cは、炭素数12以上の基であり、上記R1a及び上記R1bに該当しない基である。
R2cは、分子量が1,000以上であり、かつ、酸基及び塩基性基を有しない分子鎖であることが好ましい。
またR2cは、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する繰返し単位、(メタ)アクリルアミド化合物に由来する繰返し単位、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位、及び、ポリエステル構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。 R2cにおけるこれらの化合物の好ましい態様は、上述のRc1におけるこれらの化合物の好ましい態様と同様である。
【0118】
また、R2cは、下記式(C2-1)又は下記式(C2-2)で表される基であることが好ましい。
【0119】
【化24】
式(C2-1)及び式(C2-2)中、X
c2は-O-又は-NR
N-を表し、L
C21は2価の連結基を表し、Polymerはポリマー鎖を表し、L
c22は単結合又は2価の連結基を表し、L
c23はアルキレン基又は2価の芳香族炭化水素基を表し、mは1以上の整数を表し、R
c21はアルキル基又は1価の芳香族炭化水素基を表し、*は式(1-2)におけるR
24が結合するカルボニル基との結合部位を表し、R
Nは上述の通りである。
【0120】
式(C2-1)及び式(C2-2)中、Xc2は-O-又は-NRN-を表し、-O-が好ましい。
式(C2-1)中、Lc21は2価の連結基を表し、アルキレン基、2価の芳香族炭化水素環基、又は、アルキレン基、2価の芳香族炭化水素環基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)2-、-C(=O)O-、-C(=O)NRN-、-OC(=O)NRN-、-NRNC(=O)NRN-、及び、-CH2CH(OH)CH2-、よりなる群から選ばれた少なくとも2つの結合により表される基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。RNは上述の通りである。
式(C2-1)中、Polymerは式(C-1)におけるPolymerと同義であり、好ましい態様も同様である。
式(C2-2)中、Lc22は単結合又は2価の連結基を表し、2価の連結基であることが好ましい。上記2価の連結基は、上述のLc21における2価の連結基と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(C2-2)中、Lc23、m及びRc21は式(C-2)におけるLc3、m及びRc1とそれぞれ同義であり、好ましい態様も同様である。
【0121】
<<R2d>>
R2dは、上記R2a、上記R2b及び上記R2cに該当しない置換基である。
R2dは、炭素数1~10のアルコキシ基、又は、炭素数6~10のアリールオキシ基が好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基がより好ましい。
【0122】
-n-
nは0以上nA以下の整数を表し、1~3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
nAはR11における芳香族炭化水素基の最大置換数である。
R11の最大置換数とは、R11で表される環員数5~30の芳香族基が有することのできる最大の置換基数をいい、R11がベンゼン環構造である場合、最大置換数は4である。以下、上記内容は最大置換数の記載において同様である。
【0123】
-m-
mは0以上mA以下の整数を表し、1~3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
mAはR21における芳香族炭化水素基の最大置換数である。
【0124】
これらの態様の中でも、式(1-1)又は下記式(1-2)で表される繰返し単位を含むポリイミド又はポリイミド前駆体は、現像性の観点からは、式(1-1)で表される繰返し単位であって、式(1-1)中のR12が、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルホンアミド基、及び、ヒドロキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸基を含む基R1aである繰返し単位1-1a、並びに、式(1-2)で表される繰返し単位であって、式(1-2)中のR22が上記R1aである繰返し単位1-2aよりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を含むことが好ましい。
式(1-1)又は下記式(1-2)で表される繰返し単位を含むポリイミド又はポリイミド前駆体は、パターン形成性の観点からは、式(1-1)で表される繰返し単位であって、式(1-1)中のR12が、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を含む基R1bである繰返し単位1ー1b、並びに、式(1-2)で表される繰返し単位であって、式(1-2)中のR22が上記R1bである繰返し単位1-2bよりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を含むことが好ましい。
式(1-1)又は下記式(1-2)で表される繰返し単位を含むポリイミド又はポリイミド前駆体は、分散保存安定性の観点からは、式(1-1)で表される繰返し単位であって、式(1-1)中のR12が炭素数12以上の基R1cである繰返し単位1-1c、及び、式(1-2)で表される繰返し単位であって、式(1-2)中のR22が上記R1cである繰返し単位1-2cよりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を含むことが好ましい。
【0125】
〔式(2ー1)又は式(2ー2)〕
また、特定樹脂は、下記式(2-1)又は下記式(2-2)で表される繰返し単位を含む、ポリイミド又はポリイミド前駆体であることが好ましい。
式(2-1)で表される繰返し単位は、式(1-1)で表される繰返し単位の好ましい一態様であり、式(2-2)で表される繰返し単位は、式(1-2)で表される繰返し単位の好ましい一態様である。
【化25】
式(2-1)中、R
11は炭素数6~14の芳香族炭化水素基を表し、L
1は下記式(L-1)、下記式(L-2)又は下記式(L-3)で表される基を表し、P
1は分子量が1,000~10,000であり、かつ、酸基及び塩基性基を有しない分子鎖を表し、n1は1又は2であり、R
14はR
11における芳香族炭化水素基の置換基である1価の置換基を表し、m1は0以上nA1以下の整数を表し、nA1はR
11における芳香族炭化水素基の最大置換数からn1を減算した数であり、R
13は4価の有機基を表す;
式(2-2)中、R
21は炭素数6~14の芳香族炭化水素基を表し、L
2は下記式(L-1)、下記式(L-2)又は下記式(L-3)で表される基を表し、P
2は分子量が1,000~10,000であり、かつ、酸基及び塩基性基を有しない分子鎖を表し、n2は1又は2であり、R
25はR
21における芳香族炭化水素基の置換基である1価の置換基を表し、m2は0以上nA2以下の整数を表し、nA2はR
21における芳香族炭化水素基の最大置換数からn2を減算した数であり、R
23は4価の有機基を表し、R
24はそれぞれ独立に、1価の置換基を表す;
【化26】
式(L-1)、式(L-2)又は式(L-3)中、X
1は-O-又は-NR
N-を表し、L
3は単結合、又は、-O-、-NR
N-、-S-、-C(=O)-、-NR
N(C=O)O-、-CH
2-CH(OH)-CH
2-、炭化水素基、若しくは、これらを2以上組み合わせた基を表し、*はR
11又はR
21との結合部位を表し、●はP
1又はP
2との結合部位を表し、R
Nは水素原子又は炭化水素基を表す。
【0126】
-R11、R13、R21、R23及びR24-
式(2-1)及び式(2-2)中、R11、R13、R21、R23及びR24は、それぞれ、式(1-1)又は式(1-2)中のR11、R13、R21、R23及びR24と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0127】
-L
1-
式(2-1)中、L
1は式(L-1)で表される基であることが好ましい。
式(L-1)中、X
1は-O-又は-NR
N-を表し、-O-が好ましい。R
Nは上述の通りである。
式(L-1)~式(L-3)中、L
3は単結合、又は、-O-、-NR
N-、-S-、-C(=O)-、-NR
N(C=O)O-、-CH
2-CH(OH)-CH
2-、炭化水素基、若しくは、これらを2以上組み合わせた基を表し、-O-、-C(=O)-、炭化水素基、若しくは、これらを2以上組み合わせた基、単結合、又は下記式(L-4)で表される基であることが好ましい。
特に、P
1が上述の式(C-1)におけるPolymerで表されるポリマー鎖と同様の基である場合、L
3は式(C-4)で表される基であることが好ましくP
1が上述の式(C-2)であって、L
c2が単結合である基である基である場合、L
3は-O-、-C(=O)-、炭化水素基、若しくは、これらを2以上組み合わせた基、又は単結合であることが好ましい。
上記炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキレン基、又は、炭素数6~20の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数1~20のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~4のアルキレン基が更に好ましい。
【化27】
式(L-4)中、L
4は-O-、-NR
N-、-S-、-C(=O)-、-NR
N(C=O)O-、-CH
2-CH(OH)-CH
2-、炭化水素基、若しくは、これらを2以上組み合わせた基を表し、-O-、-C(=O)-、炭化水素基、若しくは、これらを2以上組み合わせた基が好ましい。
上記炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキレン基、又は、炭素数6~20の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数1~20のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~4のアルキレン基が更に好ましい。
また、式(L-4)中、*は式(L-1)中のX
1、式(L-2)中の硫黄原子又は式(L-3)中の酸素原子との結合部位を表し、●は式(L-1)~式(L-3)中の●と同義である。
【0128】
-P1-
P1は分子量が1,000~10,000であり、かつ、酸基及び塩基性基を有しない分子鎖を表し、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する繰返し単位、(メタ)アクリルアミド化合物に由来する繰返し単位、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位、及び、ポリエステル構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む分子鎖であることが好ましい。
P1におけるこれらの化合物の好ましい態様は、上述のRc1におけるこれらの化合物の好ましい態様と同様である。
【0129】
また、P1は上述の式(C-1)におけるPolymerで表されるポリマー鎖と同様の基、又は、上述の式(C-2)であって、Lc2が単結合である基であることが好ましい。
【0130】
R14は1価の置換基を表し、1価の置換基としては、上述のR1dに該当する基が挙げられる。
【0131】
-n1-
式(2-1)中、n1は1又は2を表し、1であることが好ましい。
【0132】
-m1-
m1は0以上nA1以下の整数を表し、0~3の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0133】
-L2、P2、R25、n2、m2-
式(2-2)中、L2、P2、R25、n2、m2はそれぞれ、式(2-1)中のL1、P1、R14、n1、m1と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0134】
〔他の繰返し単位〕
本発明におけるポリイミド又はポリイミド前駆体は、上述した式(1-1)、式(1-2)、式(2-1)又は式(2-2)以外の、他の繰り返し単位を更に含んでもよい。
他の繰返し単位としては、例えば、下記式(3-1)又は式(3-2)で表される繰返し単位が挙げられる。
【化28】
式(3-1)中、R
31は炭素数6~14の芳香族炭化水素基以外の2価の連結基を表し、R
32は4価の有機基を表す:
式(3-2)中、R
33は炭素数6~14の芳香族炭化水素基以外の2価の連結基を表し、R
34は4価の有機基を表し、R
35はそれぞれ独立に、1価の置換基を表す。
【0135】
式(3-1)中、R31は炭素数6~14の芳香族炭化水素基以外の2価の連結基を表し、脂肪族炭化水素基、又は、2以上の炭化水素基を単結合又は連結基で結合した基が好ましく挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基としては、炭素数2~20の直鎖状のアルキレン基、又は、炭素数3~20の分岐鎖状又は環状のアルキレン基が好ましく、炭素数2~10のアルキレン基、又は、炭素数3~10の分岐鎖状又は環状のアルキレン基がより好ましい。
上記連結基により結合される炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基のいずれであってもよく、炭素数2~20の直鎖状のアルキレン基、又は、炭素数3~20の分岐鎖状又は環状のアルキレン基、炭素数6~30の芳香族基等が挙げられる。
上記連結基としては、-O-、-S-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-C(=O)-、-S(=O)2-、-SiR2-(Rはそれぞれ独立に、炭化水素基を表し、炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基が好ましい。)、ポリシロキサン基(-Si(R)-(O-Si)n-、Rは炭化水素基を表し、炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基が好ましい。nは1以上の整数を表し、1~10が好ましい)等が挙げられる。
式(3-1)中、R31は上述のR1a~R1dに示す置換基を有していてもよい。
【0136】
また、溶剤溶解性の観点から、R
31はフッ素原子及び芳香族基を含む基であることも好ましい。
上記フッ素原子及び芳香族基を含む基としては、2以上の芳香族基を連結基で結合した基であって、上記連結基がフッ素原子を含む連結基である基、又は、2以上の芳香族基を単結合又は連結基で結合した基であって、上記芳香族基がフッ素原子を含む基で置換された基が好ましい。
上記フッ素原子を含む連結基としては、-C(CF
3)
2-、-C(C
2F
5)
2-等が挙げられ、-C(CF
3)
2-が好ましい。
上記フッ素原子を含む基としては、フッ化アルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
R
31がフッ素原子及び芳香族基を含む基である場合、例えば、下記構造の基が好ましい。
【化29】
上記構造中、*はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表す。
【0137】
また、R
31はジアミン化合物により誘導される構造であることが好ましい。
ジアミン化合物としては、例えば、下記化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
また、溶剤溶解性の観点からは、これらの中でも、フッ素原子を有するジアミン化合物が好ましい。
【化30】
【0138】
式(3-1)中、R32は上述の式(1-1)におけるR13と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(3-2)中、R33は上述の式(3-1)におけるR31と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(3-2)中、R34は上述の式(1-2)におけるR23と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(3-2)中、R35は上述の式(1-2)におけるR24と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0139】
〔各繰返し単位の含有量〕
特定樹脂は、式(1-1)で表される繰返し単位、及び、式(3-1)で表される繰返し単位を、特定樹脂の全繰返し単位に対して、合計で50モル%以上含むことが好ましく、80モル%以上含むことがより好ましく、90モル%以上含むことが更に好ましく、95モル%以上含むことが特に好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
また、特定樹脂は、式(1-2)で表される繰返し単位、又は、式(3-2)で表される繰返し単位を含んでもよいが、上記繰返し単位の合計量は、特定樹脂の全繰返し単位に対して、50モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることが更に好ましく、5モル%以下であることが特に好ましく、0モル%であることが最も好ましい。
【0140】
また、特定樹脂は、式(3-1)又は式(3-2)で表される繰返し単位の含有量が、特定樹脂の全繰返し単位に対して、5モル%以下である(好ましくは3モル%以下、より好ましくは1モル%以下、更に好ましくは0モル%以下)態様とすることもできる。
この場合、特定樹脂は、式(1-1)で表される繰返し単位を、特定樹脂の全繰返し単位に対して、合計で50モル%以上含むことが好ましく、80モル%以上含むことがより好ましく、90モル%以上含むことが更に好ましく、95モル%以上含むことが特に好ましく、100モル%であることが最も好ましい。また、この場合の式(1-2)で表される繰返し単位の合計量は、特定樹脂の全繰返し単位に対して、50モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることが更に好ましく、5モル%以下であることが特に好ましく、0モル%であることが最も好ましい。
【0141】
特定樹脂における式(2-1)で表される繰返し単位、及び、式(2-2)で表される繰返し単位の合計含有量は、特定樹脂の全繰返し単位に対して、10~90モル%であることが好ましく、20~80モル%であることがより好ましく、30~70モル%であることが更に好ましい。
【0142】
また、特定樹脂がポリイミド前駆体である場合、特定樹脂は、式(1-2)で表される繰返し単位、及び、式(3ー2)で表される繰返し単位を、特定樹脂の全繰返し単位に対して、合計で50モル%以上含むことが好ましく、80モル%以上含むことがより好ましく、90モル%以上含むことが更に好ましく、95モル%以上含むことが特に好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
また、特定樹脂がポリイミド前駆体である場合、式(3-2)で表される繰返し単位の含有量が、特定樹脂の全繰返し単位に対して、5モル%以下である(好ましくは3モル%以下、より好ましくは1モル%以下、更に好ましくは0モル%以下)態様とすることもできる。
この場合、特定樹脂は、式(1-2)で表される繰返し単位を、特定樹脂の全繰返し単位に対して、合計で50モル%以上含むことが好ましく、80モル%以上含むことがより好ましく、90モル%以上含むことが更に好ましく、95モル%以上含むことが特に好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
【0143】
〔イミド化率〕
特定樹脂のイミド化率(「閉環率」ともいう)は、熱収縮を抑制する観点からは、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
上記イミド化率の上限は特に限定されず、100%以下であればよい。
上記イミド化率は、例えば下記方法により測定される。
アルカリ可溶性ポリイミドの赤外吸収スペクトルを測定し、イミド構造由来の吸収ピークである1377cm-1付近のピーク強度P1を求める。次に、そのアルカリ可溶性ポリイミドを350℃で1時間熱処理した後、再度、赤外吸収スペクトルを測定し、1377cm-1付近のピーク強度P2を求める。得られたピーク強度P1、P2を用い、下記式に基づいて、アルカリ可溶性ポリイミドのイミド化率を求めることができる。
イミド化率(%)=(ピーク強度P1/ピーク強度P2)×100
【0144】
〔酸基〕
アルカリ現像性を向上する観点からは、特定樹脂は、酸基を有することが好ましい。酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルホンアミド基、及び、ヒドロキシ基等が挙げられる。
これらの酸基は、上述のR1a又はR2aとして特定樹脂に導入されることが好ましい。
特定樹脂における酸価は製膜性及びアルカリ現像性の向上の観点からは、0~500mgKOH/gであることが好ましい。
上記酸価の下限は、20mgKOH/g以上であることが好ましく、30mgKOH/g以上であることがより好ましく、50mgKOH/g以上であることが更に好ましい。
上記酸価の上限は、300mgKOH/g以下であることが好ましく、200mgKOH/g以下であることがより好ましく、150mgKOH/g以下であることが更に好ましい。
特定樹脂の酸価は、後述する実施例における測定方法と同様の方法により算出される。
【0145】
〔エチレン性不飽和結合〕
特定樹脂は、エチレン性不飽和結合を有することが好ましい。
また特定樹脂は、エチレン性不飽和結合を有する基を含むことが好ましい。
エチレン性不飽和結合を有する基としては、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、ビニルフェニル基、アリル基等が挙げられ、反応性の観点からはアクリロイルオキシ基が好ましい。
これらのエチレン性不飽和結合を有する基は、上述のR1b又はR2bとして特定樹脂に導入されることが好ましい。
特定樹脂のC=C価は、保存安定性及び硬化性の観点からは、0~5mmol/gであることが好ましい。
上記C=C価の下限は、0.01mmol/g以上であることが好ましく、0.03mmol/g以上であることがより好ましく、0.05mmol/g以上であることが更に好ましく、0.1mmol/g以上であることが特に好ましい。
上記C=C価の上限は、3mmol/g以下であることが好ましく、2mmol/g以下であることがより好ましく、1.5mmol/g以下であることが更に好ましく、1mmol/g以下であることが特に好ましい。
本発明において、特定樹脂のC=C価とは、1gの特定樹脂に含まれるエチレン性不飽和結合の数をいい、後述の実施例における方法により測定される値である。
【0146】
本発明の着色樹脂組成物は、特定樹脂として、下記樹脂1及び下記樹脂2よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましく、下記樹脂1及び下記樹脂2を含むことが好ましい。
樹脂1を含むことにより、着色樹脂組成物の現像性が向上する。
樹脂2を含むことにより、着色樹脂組成物の保存安定性が向上する。
樹脂1:カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルホンアミド基、及び、ヒドロキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸基、並びに、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を含む樹脂
樹脂2:カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルホンアミド基、及び、ヒドロキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸基、並びに、炭素数12以上の基を含む樹脂。
上記樹脂1は、炭素数12以上の基を更に含んでもよい。
上記樹脂2は、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基を更に含んでもよい。
また、上記樹脂2は、式(2-1)又は式(2-2)で表される繰返し単位を含むことが好ましい。
【0147】
上記樹脂1及び上記樹脂2における、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルホンアミド基、及び、ヒドロキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸基は、上記R1a又は上記R2aとして含まれる酸基であることが好ましく、上記R1aとして含まれる酸基であることがより好ましい。
上記樹脂1及び上記樹脂2における、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基、エポキシ基、及び、オキセタニル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の硬化性基は、上記R1b又は上記R2bとして含まれる硬化性基であることが好ましく、上記R1bとして含まれる硬化性基であることがより好ましい。
上記樹脂1及び上記樹脂2における、炭素数12以上の基は、上記R1c又は上記R2cとして含まれる硬化性基であることが好ましく、上記R1cとして含まれる硬化性基であることがより好ましい。
【0148】
樹脂1は、R12がR1aである式(1-1)で表される繰返し単位、又は、R22がR1aであるか、R24がR2aである式(1ー2)で表される繰返し単位と、R12がR1bである式(1-1)、又は、R22がR1bであるか、R24がR2bである式(1ー2)で表される繰返し単位と、を含むことが好ましく、R12がR1aである式(1-1)で表される繰返し単位と、R12がR1bである式(1-1)で表される繰返し単位とを含むことがより好ましい。
また、樹脂1は、R12がR1cである式(1-1)で表される繰返し単位、又は、R22がR1cであるか、R24がR2cである式(1-2)で表される繰返し単位を含んでもよい。
【0149】
樹脂2は、R12がR1aである式(1-1)で表される繰返し単位、又は、R22がR1aであるか、R24がR2aである式(1-2)で表される繰返し単位と、R12がR1cである式(1-1)で表される繰返し単位、又は、R22がR1cであるか、R24がR2cである式(1-2)で表される繰返し単位と、を含むことが好ましく、R12がR1aである式(1-1)で表される繰返し単位と、R12がR1cである式(1-1)で表される繰返し単位とを含むことがより好ましい。
また、樹脂2は、R12がR1bである式(1-1)で表される繰返し単位、又は、R22がR1bであるか、R24がR2bである式(1-2)で表される繰返し単位を含んでもよい。
【0150】
〔分子量〕
特定樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3,000~100,000が好ましく4,000~50,000がより好ましく、5,000~20,000が最も好ましい。
溶剤溶解性とアルカリ溶解性の観点から、上記Mwの上限は100,000以下が好ましく、50,000以下が好ましく20,000以下が最も好ましい。上記Mwの下限は樹脂の製膜性を損なわなければ特に限定されないが、製膜性とラジカル硬化性、顔料分散性の観点からMw3,000以上が好ましく、5,000以上が好ましく、10,000以上がさらに好ましい。
【0151】
〔モル吸光係数〕
特定樹脂の波長400~1100nmにおけるモル吸光係数の最大値は、0~1000 l/(mol・cm)であることが好ましく、0~100 l/(mol・cm)であることがより好ましい。
【0152】
〔耐熱性〕
特定樹脂は、窒素雰囲気下でのTG/DTA(熱質量測定/示差熱測定)による5%質量減少温度が350℃以上が好ましく、400℃以上が好ましく、450℃以上がさらに好ましい。上記5%質量減少温度の上限は、特に限定されず、例えば1,000℃以下であればよい。上記5%質量減少温度は、窒素雰囲気化で特定の温度で5時間静置した時の質量減少率が5%となる温度として、公知のTG/DTA測定方法により求められる。
また、特定樹脂は、窒素雰囲気下で300℃、5時間静置したときの質量減少率が10%以内であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、2%以下であることがさらに好ましい。上記質量減少率の下限は特に限定されず、0%以上であればよい。
上記質量減少率は、窒素雰囲気下で300℃、5時間静置する前後の特定樹脂における質量の減少の割合として算出される値である。
【0153】
〔合成方法〕
特定樹脂の合成方法は、特に限定されず、公知の方法により合成され、例えば、後述する実施例に記載の方法により合成することが可能である。
例えば、上述のジアミン化合物と上述の4価のカルボン酸化合物とを反応させてポリイミド前駆体を得ることができる。また、上記ポリイミド前駆体に対して熱処理又は化学処理(触媒を用いた環化)を行い、ポリイミドを得ることができる。
上記4価のカルボン酸化合物における1つ又は2つのカルボキシ基は、硬化性基、チオール基等を有する構造等とエステル結合又はアミド結合等を形成していてもよい。
また、上記ジアミン化合物として、カルボキシ基、チオール基等の構造を有するジアミン化合物を用いてもよく、上記カルボキシ基は硬化性基、チオール基等を有する構造等とエステル結合又はアミド結合等を形成していてもよい。また、上記ポリイミド又はポリイミド前駆体における、上記ジアミン化合物に存在するチオール基等を連鎖移動剤として、ポリマー鎖を導入することもできる。
【0154】
-縮合剤-
ポリイミドの合成において、イミド化をアミド酸(ポリイミド前駆体)反応溶液中で低温で行うために縮合剤を使うことが好ましい。縮合剤としては、特に限定されず、公知の縮合剤を用いることができるが、例えば無水酢酸及びピリジン、亜リン酸トリフェニル及びピリジン等を用いることができる。
【0155】
-末端封止剤-
ポリイミド又はポリイミド前駆体の合成において、分子量調整のために末端封止剤を用いることが好ましい。末端封止剤としては、特に限定されず、公知の末端封止剤を用いることができるが、モノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、モノカルボン酸塩化物、モノカルボン酸ハライド化合物、又はモノカルボン酸活性エステル等が挙げられ、例えば、1置換の酸無水物又は1置換のアミンを用いることができる。例えばcis-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、フタル酸無水物等を用いることができる。
また、末端封止剤としては、例えば特開2019-101440号公報の段落0034~0036に記載の化合物も使用することもできる。
また、樹脂の末端をヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ酸基、チオール基、ビニル基、エチニル基又はアリル基を有する末端封止剤により封止することで、樹脂のアルカリ溶液に対する溶解速度や得られる硬化膜の機械特性を好ましい範囲に容易に調整することができる。
末端封止剤の使用量は、目的とする特定樹脂の分子量に応じて調整すればよいが、例えば、上述のジアミン化合物と上述の4価のカルボン酸化合物のうち、末端封止剤と結合する化合物の全量に対して1モル%~30モル%、好ましくは2モル%~20モル%、より好ましくは3モル%~10モル%使用することができる。
また、特定樹脂の合成において末端封止剤を用いることにより、特定樹脂の保存安定性、又は、特定樹脂を含む組成物の保存安定性を向上することも可能である。
【0156】
〔具体例〕
以下に特定樹脂の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
下記化学式中、主鎖構造を示す括弧の添字は、各繰返し単位の含有比(モル比)を表し、側鎖構造における括弧の添字は、各構成単位の繰り返し数を表す。各樹脂において、x、y、z、z1、z2のうち、各樹脂に記載があるものの合計値は50である。
下記表中、「酸価」の欄には、特定樹脂の酸価(mgKOH/g)を、「C=C価」の欄には、特定樹脂のC=C価(mmol/g)をそれぞれ記載した。
また、下記化学式中、例えば式(A-22)における「polymer」の記載は、式(A-22)中に記載の硫黄原子にジエチルアクリルアミドに由来の繰返し単位、及び、スチレンに由来の繰返し単位が、括弧の添え字の含有比(モル比)でランダムに結合したポリマー鎖が結合していることを示している。
各具体例において、ポリマーの末端は、上述の末端封止剤により封止されていてもよい。
また、例えば下記式(A-2)で表される樹脂は、x=25、y=25の場合、下記(A-2A)及び下記式(A-2B)で表される繰返し単位を50:50のモル比で含む樹脂である。
【化31】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
〔含有量〕
本発明の着色樹脂組成物における特定樹脂の含有量は、着色樹脂組成物の全固形分に対し、10~95質量%であることが好ましい。下限は、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。上限は、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
本発明の着色樹脂組成物は特定樹脂を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。特定樹脂を2種以上併用する場合、合計量が上記範囲内となることが好ましい。
【0167】
また、本発明の着色樹脂組成物が特定樹脂として上述の樹脂1を含有する場合、樹脂1の含有量は、着色樹脂組成物の全固形分に対し、1~30質量%であることが好ましい。下限は、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。上限は、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0168】
また、本発明の着色樹脂組成物が特定樹脂として上述の樹脂2を含有する場合、樹脂2の含有量は、着色樹脂組成物の全固形分に対し、10~60質量%であることが好ましい。下限は、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。上限は、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
また、本発明の着色樹脂組成物が特定樹脂として上述の樹脂2を含有し、かつ、色材として顔料を含む場合、樹脂2の含有量は、着色樹脂組成物に含まれる顔料の全質量に対し、25~85質量%であることが好ましい。下限は、28質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。上限は、80質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
【0169】
また、本発明において、着色樹脂組成物の全固形分から色材を除いた成分中に、特定樹脂を20質量%以上含むことが好ましく、30質量%以上含むことがより好ましく、40質量%以上含むことが更に好ましい。上限は、100質量%することもでき、90質量%以下とすることもでき、85質量%以下とすることもできる。特定樹脂の含有量が上記範囲であれば、耐熱性に優れた膜を形成しやすく、加熱後の膜収縮などをより抑制しやすい。更には、本発明の着色樹脂組成物を用いて得られる膜の表面に無機膜などを形成した際において、この積層体が高温に晒されても、無機膜にクラックなどが生じることも抑制することもできる。
また、着色樹脂組成物の全固形分中における色材と上述した樹脂Aの合計の含有量は、25~100質量%が好ましい。下限は、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。上限は、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
【0170】
<他の樹脂>
本発明の着色樹脂組成物は、他の樹脂を含んでもよい。
特定樹脂に該当する化合物は、上記他の樹脂には該当しないものとする。
【0171】
他の樹脂としては、例えば、アルカリ現像性を有する樹脂、又は、分散剤としての樹脂等が挙げられる。
ここで、本発明の着色樹脂組成物が他の樹脂を含む場合、例えば下記(1)又は下記(2)に示した態様とすることも好ましい。
(1)上述の樹脂1、及び、分散剤としての樹脂を含む。
(2)アルカリ現像性を有する樹脂、及び、上述の樹脂2を含む。
また、上記(1)における態様において、上述の樹脂2を更に含んでもよいし、上記(2)における態様において、上述の樹脂1を更に含んでもよい。
【0172】
〔アルカリ現像性を有する樹脂〕
アルカリ現像性を有する樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3,000~2,000,000が好ましい。上限は、1,000,000以下がより好ましく、500,000以下がさらに好ましい。下限は、4,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましい。
【0173】
アルカリ現像性を有する樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリイミン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂などが挙げられ、(メタ)アクリル樹脂及びポリイミン樹脂が好ましく、(メタ)アクリル樹脂がより好ましい。また、他の樹脂として、特開2017-206689号公報の段落番号0041~0060に記載の樹脂、特開2018-010856号公報の段落番号0022~0071に記載の樹脂、特開2017-057265号公報に記載の樹脂、特開2017-032685号公報に記載の樹脂、特開2017-075248号公報に記載の樹脂、特開2017-066240号公報に記載の樹脂を用いることもできる。
【0174】
また、アルカリ現像性を有する樹脂としては、酸基を有する樹脂を用いることが好ましい。この態様によれば、着色樹脂組成物の現像性をより向上させることができる。酸基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、活性イミド基、スルホンアミド基などが挙げられ、カルボキシ基が好ましい。酸基を有する樹脂は、例えば、アルカリ可溶性樹脂として用いることができる。
【0175】
酸基を有する樹脂は、側鎖に酸基を有する繰り返し単位を含むことが好ましく、側鎖に酸基を有する繰り返し単位を樹脂の全繰り返し単位中1~70モル%含むことがより好ましい。側鎖に酸基を有する繰り返し単位の含有量の上限は、50モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。側鎖に酸基を有する繰り返し単位の含有量の下限は、2モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることがより好ましい。
【0176】
酸基を有する樹脂の酸価は、200mgKOH/g以下が好ましく、150mgKOH/g以下がより好ましく、120mgKOH/g以下が更に好ましく、100mgKOH/g以下が特に好ましい。また、酸基を有する樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましく、20mgKOH/g以上が更に好ましい。
【0177】
酸基を有する樹脂は、更にエチレン性不飽和結合含有基を有することも好ましい。エチレン性不飽和結合含有基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられ、アリル基及び(メタ)アクリロイル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0178】
エチレン性不飽和結合含有基を有する樹脂は、側鎖にエチレン性不飽和結合含有基を有する繰り返し単位を含むことが好ましく、側鎖にエチレン性不飽和結合含有基を有する繰り返し単位を樹脂の全繰り返し単位中5~80モル%含むことがより好ましい。側鎖にエチレン性不飽和結合含有基を有する繰り返し単位の含有量の上限は、60モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。側鎖にエチレン性不飽和結合含有基を有する繰り返し単位の含有量の下限は、10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましい。
【0179】
アルカリ現像性を有する樹脂は、下記式(ED1)で示される化合物及び/又は下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分に由来する繰り返し単位を含むことも好ましい。
【0180】
【0181】
式(ED1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【化33】
式(ED2)中、Rは、水素原子又は炭素数1~30の有機基を表す。式(ED2)の詳細については、特開2010-168539号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0182】
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013-029760号公報の段落番号0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0183】
アルカリ現像性を有する樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する繰り返し単位を含むことも好ましい。
【化34】
式(X)中、R
1は、水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素数2~10のアルキレン基を表し、R
3は、水素原子又はベンゼン環を含んでもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。nは1~15の整数を表す。
【0184】
酸基を有する樹脂としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表す。
【化35】
【0185】
〔分散剤〕
本発明の着色樹脂組成物は、分散剤としての樹脂を含むこともできる。分散剤は、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシ基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、40~105mgKOH/gが好ましく、50~105mgKOH/gがより好ましく、60~105mgKOH/gがさらに好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基であることが好ましい。
【0186】
分散剤として用いる樹脂は、酸基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0187】
分散剤として用いる樹脂は、グラフト樹脂であることも好ましい。グラフト樹脂としては、特開2012-255128号公報の段落番号0025~0094に記載された樹脂が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0188】
分散剤として用いる樹脂は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むポリイミン系分散剤(ポリイミン樹脂)であることも好ましい。ポリイミン系分散剤としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造を有する主鎖と、原子数40~10000の側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子とは、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。ポリイミン系分散剤としては、特開2012-255128号公報の段落番号0102~0166に記載された樹脂が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0189】
分散剤として用いる樹脂は、コア部に複数個のポリマー鎖が結合した構造の樹脂であることも好ましい。このような樹脂としては、例えばデンドリマー(星型ポリマーを含む)が挙げられる。また、デンドリマーの具体例としては、特開2013-043962号公報の段落番号0196~0209に記載された高分子化合物C-1~C-31などが挙げられる。
【0190】
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、BYKChemie社製のDISPERBYKシリーズ(例えば、DISPERBYK-111、161など)、Lubrizol製のSolsperseシリーズ(例えば、Solsperse 36000など)などが挙げられる。また、特開2014-130338号公報の段落番号0041~0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、分散剤は、特開2018-150498号公報、特開2017-100116号公報、特開2017-100115号公報、特開2016-108520号公報、特開2016-108519号公報、特開2015-232105号公報に記載の化合物を用いてもよい。
【0191】
なお、上記分散剤として説明した樹脂は、分散剤以外の用途で使用することもできる。例えば、バインダーとして用いることもできる。
【0192】
着色樹脂組成物の全固形分中における全樹脂成分の含有量は、10~95質量%が好ましい。下限は、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。上限は、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましい。
また、着色樹脂組成物において、上述した他の樹脂の含有量は、上述した特定樹脂の100質量部に対して230質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましく、150質量部以下であることが更に好ましい。下限は0質量部であってもよく、5質量部以上とすることもでき、10質量部以上とすることもできる。また、着色樹脂組成物は上述した他の樹脂を実質的に含まないことも好ましい。この態様によれば、より耐熱性に優れた膜を形成しやすい。他の樹脂を実質的に含まない場合とは、樹脂組成物の全固形分中における他の樹脂の含有量が0.1質量%以下であることを意味し、0.05質量%以下であることが好ましく、含有しないことがより好ましい。
【0193】
<溶剤>
本発明の着色樹脂組成物は、溶剤を含有する。溶剤としては有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、各成分の溶解性や着色樹脂組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はない。有機溶剤としては、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤などが挙げられる。これらの詳細については、国際公開第2015/166779号の段落番号0223を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤を好ましく用いることもできる。有機溶剤の具体例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジクロロメタン、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ガンマブチロラクトン、3-メトキシブタノール、メチルイソブチルケトン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。ただし有機溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる)。
【0194】
これらの中でも、溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、酢酸ブチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、3-メトキシブタノール、メチルイソブチルケトン、及び、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルよりなる群から選ばれた少なくとも1種の溶剤を含むことが好ましい。
また、本発明において、溶剤は、アミド系溶剤を実質的に含まないことが好ましい。
アミド系溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
アミド系溶剤を実質的に含まないとは、組成物の全質量に対して、アミド系溶剤が1質量%以下であることをいい、0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることが更に好ましい。
【0195】
本発明においては、金属含有量の少ない有機溶剤を用いることが好ましく、有機溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの有機溶剤を用いてもよく、そのような有機溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。有機溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレン又はナイロンが好ましい。
【0196】
有機溶剤は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0197】
有機溶剤中の過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0198】
着色樹脂組成物中における有機溶剤の含有量は、10~95質量%であることが好ましく、20~90質量%であることがより好ましく、30~90質量%であることが更に好ましい。
【0199】
<顔料誘導体>
本発明の着色樹脂組成物は顔料誘導体を含有することができる。顔料誘導体としては、発色団の一部分を、酸基、塩基性基又はフタルイミドメチル基で置換した構造を有する化合物が挙げられる。顔料誘導体を構成する発色団としては、キノリン骨格、ベンゾイミダゾロン骨格、ジケトピロロピロール骨格、アゾ骨格、フタロシアニン骨格、アンスラキノン骨格、キナクリドン骨格、ジオキサジン骨格、ペリノン骨格、ペリレン骨格、チオインジゴ骨格、イソインドリン骨格、イソインドリノン骨格、キノフタロン骨格、スレン骨格、金属錯体系骨格等が挙げられ、キノリン骨格、ベンゾイミダゾロン骨格、ジケトピロロピロール骨格、アゾ骨格、キノフタロン骨格、イソインドリン骨格及びフタロシアニン骨格が好ましく、アゾ骨格及びベンゾイミダゾロン骨格がより好ましい。顔料誘導体が有する酸基としては、スルホ基、カルボキシ基が好ましく、スルホ基がより好ましい。顔料誘導体が有する塩基性基としては、アミノ基が好ましく、三級アミノ基がより好ましい。
【0200】
顔料誘導体としては、可視光透明性に優れた顔料誘導体(以下、透明顔料誘導体ともいう)を用いることもできる。透明顔料誘導体の400~700nmの波長領域におけるモル吸光係数の最大値(εmax)は3000L・mol-1・cm-1以下であることが好ましく、1000L・mol-1・cm-1以下であることがより好ましく、100L・mol-1・cm-1以下であることがさらに好ましい。εmaxの下限は、例えば1L・mol-1・cm-1以上であり、10L・mol-1・cm-1以上でもよい。
【0201】
顔料誘導体の具体例としては、特開昭56-118462号公報、特開昭63-264674号公報、特開平01-217077号公報、特開平03-009961号公報、特開平03-026767号公報、特開平03-153780号公報、特開平03-045662号公報、特開平04-285669号公報、特開平06-145546号公報、特開平06-212088号公報、特開平06-240158号公報、特開平10-030063号公報、特開平10-195326号公報、国際公開第2011/024896号の段落番号0086~0098、国際公開第2012/102399号の段落番号0063~0094、国際公開第2017/038252号の段落番号0082、特開2015-151530号公報の段落番号0171、特開2011-252065号公報の段落番号0162~0183、特開2003-081972号公報、特許第5299151号公報、特開2015-172732号公報、特開2014-199308号公報、特開2014-085562号公報、特開2014-035351号公報、特開2008-081565号公報、特開2019-109512号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0202】
顔料誘導体の含有量は、顔料100質量部に対して1~30質量部が好ましく、3~20質量部が更に好ましい。顔料誘導体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0203】
<重合性化合物>
本発明の着色樹脂組成物は、重合性化合物を含有することができる。重合性化合物は、例えば、エチレン性不飽和結合含有基を有する化合物であることが好ましい。エチレン性不飽和結合含有基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。本発明で用いられる重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。
【0204】
重合性化合物としては、モノマー、プレポリマー、オリゴマーなどの化学的形態のいずれであってもよいが、モノマーが好ましい。重合性化合物の分子量は、100~3000が好ましい。上限は、2000以下がより好ましく、1500以下が更に好ましい。下限は、150以上がより好ましく、250以上が更に好ましい。
【0205】
重合性化合物は、エチレン性不飽和結合含有基を3個以上含む化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和結合含有基を3~15個含む化合物であることがより好ましく、エチレン性不飽和結合含有基を3~6個含む化合物であることが更に好ましい。また、重合性化合物は、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。重合性化合物の具体例としては、特開2009-288705号公報の段落番号0095~0108、特開2013-029760号公報の段落0227、特開2008-292970号公報の段落番号0254~0257、特開2013-253224号公報の段落番号0034~0038、特開2012-208494号公報の段落番号0477、特開2017-048367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報、特開2017-194662号公報に記載されている化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0206】
重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、NKエステルA-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール及び/又はプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)が好ましい。また、重合性化合物としては、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としてはM-460;東亞合成製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステルA-TMMT)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)、RP-1040(日本化薬(株)製)、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)、NKオリゴUA-7200(新中村化学工業(株)製)、8UH-1006、8UH-1012(大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB-A0(共栄社化学(株)製)などを用いることもできる。
【0207】
また、重合性化合物として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート化合物を用いることも好ましい。3官能の(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、アロニックスM-309、M-310、M-321、M-350、M-360、M-313、M-315、M-306、M-305、M-303、M-452、M-450(東亞合成(株)製)、NKエステル A9300、A-GLY-9E、A-GLY-20E、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、A-TMPT、TMPT(新中村化学工業(株)製)、KAYARAD GPO-303、TMPTA、THE-330、TPA-330、PET-30(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0208】
重合性化合物は、酸基を有する化合物を用いることもできる。酸基を有する重合性化合物を用いることで、現像時に未露光部の重合性化合物が除去されやすく、現像残渣の発生を抑制できる。酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。酸基を有する重合性化合物の市販品としては、アロニックスM-305、M-510、M-520、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)等が挙げられる。酸基を有する重合性化合物の好ましい酸価としては、0.1~40mgKOH/gであり、より好ましくは5~30mgKOH/gである。重合性化合物の酸価が0.1mgKOH/g以上であれば、現像液に対する溶解性が良好であり、40mgKOH/g以下であれば、製造や取扱い上、有利である。
【0209】
重合性化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物であることも好ましい態様である。カプロラクトン構造を有する重合性化合物は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120等が挙げられる。
【0210】
重合性化合物は、アルキレンオキシ基を有する重合性化合物を用いることもできる。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物は、エチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基を有する重合性化合物が好ましく、エチレンオキシ基を有する重合性化合物がより好ましく、エチレンオキシ基を4~20個有する3~6官能(メタ)アクリレート化合物がさらに好ましい。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR-494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA-330などが挙げられる。
【0211】
重合性化合物は、フルオレン骨格を有する重合性化合物を用いることもできる。フルオレン骨格を有する重合性化合物の市販品としては、オグソールEA-0200、EA-0300(大阪ガスケミカル(株)製、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートモノマー)などが挙げられる。
【0212】
重合性化合物としては、トルエンなどの環境規制物質を実質的に含まない化合物を用いることも好ましい。このような化合物の市販品としては、KAYARAD DPHA LT、KAYARAD DPEA-12 LT(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0213】
重合性化合物としては、特公昭48-041708号公報、特開昭51-037193号公報、特公平02-032293号公報、特公平02-016765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-049860号公報、特公昭56-017654号公報、特公昭62-039417号公報、特公昭62-039418号公報に記載されたエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物も好適である。また、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平01-105238号公報に記載された分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する重合性化合物を用いることも好ましい。また、重合性化合物は、UA-7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600、LINC-202UA(共栄社化学(株)製)などの市販品を用いることもできる。
【0214】
重合性化合物を含有する場合、着色樹脂組成物の全固形分中における重合性化合物の含有量は0.1~50質量%であることが好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。重合性化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0215】
<光重合開始剤>
本発明の着色樹脂組成物は光重合開始剤を含むことができる。光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する化合物が好ましい。光重合開始剤は光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0216】
光重合開始剤としては、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物、イミダゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ビイミダゾール化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物及び3-アリール置換クマリン化合物であることが好ましく、ビイミダゾール化合物、オキシム化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、及び、アシルホスフィン化合物から選ばれる化合物であることがより好ましく、オキシム化合物であることが更に好ましい。光重合開始剤としては、特開2014-130173号公報の段落0065~0111、特許第6301489号公報に記載された化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0217】
ビイミダゾール化合物としては、2,2-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5-テトラキス(3,4,5-トリメトキシフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、及び2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールなどが挙げられる。α-ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、Omnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127(以上、IGM Resins B.V.社製)、Irgacure 184、Irgacure 1173、Irgacure 2959、Irgacure 127(以上、BASF社製)などが挙げられる。α-アミノケトン化合物の市販品としては、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 369E、Omnirad 379EG(以上、IGM Resins B.V.社製)、Irgacure 907、Irgacure 369、Irgacure 369E、Irgacure 379EG(以上、BASF社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、Omnirad 819、Omnirad TPO(以上、IGM Resins B.V.社製)、Irgacure 819、Irgacure TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0218】
オキシム化合物としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-066385号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2017-019766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物、特開2017-198865号公報に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0038に記載の化合物、国際公開第2013/167515号に記載の化合物などが挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。市販品としては、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02、Irgacure OXE03、Irgacure OXE04(以上、BASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられる。また、オキシム化合物としては、着色性が無い化合物や、透明性が高く変色し難い化合物を用いることも好ましい。市販品としては、アデカアークルズNCI-730、NCI-831、NCI-930(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0219】
光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0220】
また、光重合開始剤として、カルバゾール環の少なくとも1つのベンゼン環がナフタレン環となった骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。そのようなオキシム化合物の具体例としては、国際公開第2013/083505号に記載の化合物が挙げられる。
【0221】
光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。
【0222】
光重合開始剤として、カルバゾール骨格にヒドロキシ基を有する置換基が結合したオキ
シム化合物を用いることもできる。このような光重合開始剤としては国際公開第2019
/088055号に記載された化合物などが挙げられる。
【0223】
光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落番号0031~0047、特開2014-137466号公報の段落番号0008~0012、0070~0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007~0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)が挙げられる。
【0224】
光重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/036910号に記載されるOE-01~OE-75が挙げられる。
【0225】
オキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0226】
【0227】
オキシム化合物は、波長350~500nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、波長360~480nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物の波長365nm又は波長405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、高いことが好ましく、1000~300000であることがより好ましく、2000~300000であることが更に好ましく、5000~200000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチルを用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0228】
光重合開始剤としては、2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤を用いてもよい。そのような光ラジカル重合開始剤を用いることにより、光ラジカル重合開始剤の1分子から2つ以上のラジカルが発生するため、良好な感度が得られる。また、非対称構造の化合物を用いた場合においては、結晶性が低下して溶剤などへの溶解性が向上して、経時で析出しにくくなり、着色樹脂組成物の経時安定性を向上させることができる。2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開第2015/004565号、特表2016-532675号公報の段落番号0407~0412、国際公開第2017/033680号の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)及び化合物(G)、国際公開第2016/034963号に記載されているCmpd1~7、特表2017-523465号公報の段落番号0007に記載されているオキシムエステル類光開始剤、特開2017-167399号公報の段落番号0020~0033に記載されている光開始剤、特開2017-151342号公報の段落番号0017~0026に記載されている光重合開始剤(A)、特許第6469669号に記載されているオキシム化合物などが挙げられる。
【0229】
光重合開始剤を含有する場合、着色樹脂組成物の全固形分中における光重合開始剤の含有量は0.1~30質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。光重合開始剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0230】
<シランカップリング剤>
本発明の着色樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有することができる。本発明において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応及び縮合反応の少なくともいずれかによってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また、加水分解性基以外の官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基、フェニル基などが挙げられ、アミノ基、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基が好ましい。シランカップリング剤の具体例としては、特開2009-288703号公報の段落番号0018~0036に記載の化合物、特開2009-242604号公報の段落番号0056~0066に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0231】
着色樹脂組成物の全固形分中におけるシランカップリング剤の含有量は、0.1~5質量%が好ましい。上限は、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。シランカップリング剤は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0232】
<硬化促進剤>
本発明の着色樹脂組成物は、樹脂や重合性化合物の反応を促進させたり、硬化温度を下げる目的で、硬化促進剤をさらに含有することができる。硬化促進剤は、メチロール系化合物(例えば特開2015-034963号公報の段落番号0246において、架橋剤として例示されている化合物)、アミン類、ホスホニウム塩、アミジン塩、アミド化合物(以上、例えば特開2013-041165号公報の段落番号0186に記載の硬化剤)、塩基発生剤(例えば、特開2014-055114号公報に記載のイオン性化合物)、シアネート化合物(例えば、特開2012-150180号公報の段落番号0071に記載の化合物)、アルコキシシラン化合物(例えば、特開2011-253054号公報に記載のエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物)、オニウム塩化合物(例えば、特開2015-034963号公報の段落番号0216に酸発生剤として例示されている化合物、特開2009-180949号公報に記載の化合物)などを用いることもできる。
【0233】
本発明の着色樹脂組成物が硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の含有量は、着色樹脂組成物の全固形分中0.3~8.9質量%が好ましく、0.8~6.4質量%がより好ましい。
【0234】
<重合禁止剤>
本発明の着色樹脂組成物は、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)が挙げられる。中でも、p-メトキシフェノールが好ましい。着色樹脂組成物の全固形分中における重合禁止剤の含有量は、0.0001~5質量%が好ましい。
【0235】
<界面活性剤>
本発明の着色樹脂組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、シリコン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができる。界面活性剤については、国際公開第2015/166779号の段落番号0238~0245に記載された界面活性剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0236】
界面活性剤はフッ素系界面活性剤であることが好ましい。着色樹脂組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで液特性(特に、流動性)がより向上し、省液性をより改善することができる。また、厚みムラの小さい膜を形成することもできる。
【0237】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好適であり、より好ましくは5~30質量%であり、特に好ましくは7~25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、着色樹脂組成物中における溶解性も良好である。
【0238】
フッ素系界面活性剤としては、特開2014-041318号公報の段落番号0060~0064(対応する国際公開第2014/017669号の段落番号0060~0064)等に記載の界面活性剤、特開2011-132503号公報の段落番号0117~0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780、EXP、MFS-330(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、AGC(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0239】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基又はフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。このようなフッ素系界面活性剤は、特開2016-216602号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0240】
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。例えば特開2011-089090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化38】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3000~50000であり、例えば、14000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【0241】
また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和結合含有基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落番号0050~0090及び段落番号0289~0295に記載された化合物、例えばDIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落番号0015~0158に記載の化合物を用いることもできる。
【0242】
着色樹脂組成物の全固形分中における界面活性剤の含有量は、0.001質量%~5.0質量%が好ましく、0.005~3.0質量%がより好ましい。界面活性剤は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0243】
<紫外線吸収剤>
本発明の着色樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤は、共役ジエン化合物、アミノジエン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物、インドール化合物、トリアジン化合物などを用いることができる。これらの詳細については、特開2012-208374号公報の段落番号0052~0072、特開2013-068814号公報の段落番号0317~0334、特開2016-162946号公報の段落番号0061~0080の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、UV-503(大東化学(株)製)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としては、ミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)が挙げられる。また、紫外線吸収剤は、特許第6268967号公報の段落番号0049~0059に記載された化合物を用いることもできる。着色樹脂組成物の全固形分中における紫外線吸収剤の含有量は、0.01~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい。紫外線吸収剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0244】
<酸化防止剤>
本発明の着色樹脂組成物は、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。フェノール性ヒドロキシ基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。前述の置換基としては炭素数1~22の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。また、酸化防止剤は、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物も好ましい。また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。着色樹脂組成物の全固形分中における酸化防止剤の含有量は、0.01~20質量%であることが好ましく、0.3~15質量%であることがより好ましい。酸化防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0245】
<その他成分>
本発明の着色樹脂組成物は、必要に応じて、増感剤、フィラー、熱硬化促進剤、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含有してもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012-003225号公報の段落番号0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落番号0237)の記載、特開2008-250074号公報の段落番号0101~0104、0107~0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、着色樹脂組成物は、必要に応じて、潜在酸化防止剤を含有してもよい。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開第2014/021023号、国際公開第2017/030005号、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。また、特開2018-155881号公報に記載されているように、C.I.ピグメントイエロー129を耐候性改良の目的で添加しても良い。
【0246】
本発明の着色樹脂組成物は、得られる膜の屈折率を調整するために金属酸化物を含有させてもよい。金属酸化物としては、TiO2、ZrO2、Al2O3、SiO2等が挙げられる。金属酸化物の一次粒子径は1~100nmが好ましく、3~70nmがより好ましく、5~50nmが更に好ましい。金属酸化物はコア-シェル構造を有していてもよい。また、この場合、コア部は中空状であってもよい。
【0247】
本発明の着色樹脂組成物は、耐光性改良剤を含んでもよい。耐光性改良剤としては、特開2017-198787号公報の段落番号0036~0037に記載の化合物、特開2017-146350号公報の段落番号0029~0034に記載の化合物、特開2017-129774号公報の段落番号0036~0037、0049~0052に記載の化合物、特開2017-129674号公報の段落番号0031~0034、0058~0059に記載の化合物、特開2017-122803号公報の段落番号0036~0037、0051~0054に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0039に記載の化合物、特開2017-186546号公報の段落番号0034~0047に記載の化合物、特開2015-025116号公報の段落番号0019~0041に記載の化合物、特開2012-145604号公報の段落番号0101~0125に記載の化合物、特開2012-103475号公報の段落番号0018~0021に記載の化合物、特開2011-257591号公報の段落番号0015~0018に記載の化合物、特開2011-191483号公報の段落番号0017~0021に記載の化合物、特開2011-145668号公報の段落番号0108~0116に記載の化合物、特開2011-253174号公報の段落番号0103~0153に記載の化合物などが挙げられる。
【0248】
本発明の着色樹脂組成物は、顔料などと結合又は配位していない遊離の金属の含有量が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが更に好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。この態様によれば、顔料分散性の安定化(凝集抑止)、分散性向上に伴う分光特性の向上、硬化性成分の安定化、金属原子・金属イオンの溶出に伴う導電性変動の抑止、表示特性の向上などの効果が期待できる。また、特開2012-153796号公報、特開2000-345085号公報、特開2005-200560号公報、特開平08-043620号公報、特開2004-145078号公報、特開2014-119487号公報、特開2010-083997号公報、特開2017-090930号公報、特開2018-025612号公報、特開2018-025797号公報、特開2017-155228号公報、特開2018-036521号公報などに記載された効果も得られる。上記の遊離の金属の種類としては、Na、K、Ca、Sc、Ti、Mn、Cu、Zn、Fe、Cr、Co、Mg、Al、Sn、Zr、Ga、Ge、Ag、Au、Pt、Cs、Ni、Cd、Pb、Bi等が挙げられる。また、本発明の着色樹脂組成物は、顔料などと結合又は配位していない遊離のハロゲンの含有量が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが更に好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。ハロゲンとしては、F、Cl、Br、I及びそれらの陰イオンが挙げられる。着色樹脂組成物中の遊離の金属やハロゲンの低減方法としては、イオン交換水による洗浄、ろ過、限外ろ過、イオン交換樹脂による精製等の方法が挙げられる。
【0249】
本発明の着色樹脂組成物は、テレフタル酸エステルを実質的に含まないことも好ましい。ここで、「実質的に含まない」とは、テレフタル酸エステルの含有量が、着色樹脂組成物の全量中、1000質量ppb以下であることを意味し、100質量ppb以下であることがより好ましく、ゼロであることが特に好ましい。
【0250】
<収容容器>
本発明の着色樹脂組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や着色樹脂組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。また、容器内壁は、容器内壁からの金属溶出を防ぎ、着色樹脂組成物の保存安定性を高めたり、成分変質を抑制するなど目的で、ガラス製やステンレス製などにすることも好ましい。
【0251】
<着色樹脂組成物の調製方法>
本発明の着色樹脂組成物は、前述の成分を混合して調製できる。着色樹脂組成物の調製に際しては、全成分を同時に有機溶剤に溶解及び/又は分散して着色樹脂組成物を調製してもよいし、必要に応じて、各成分を適宜2つ以上の溶液又は分散液としておいて、使用時(塗布時)にこれらを混合して着色樹脂組成物を調製してもよい。
【0252】
また、着色樹脂組成物の調製に際して、顔料を分散させるプロセスを含むことが好ましい。顔料を分散させるプロセスにおいて、顔料の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、顔料を分散させるプロセス及び分散機は、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015-157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を好適に使用出来る。また顔料を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて粒子の微細化処理を行ってもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015-194521号公報、特開2012-046629号公報の記載を参酌できる。
【0253】
着色樹脂組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、着色樹脂組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)及びナイロンが好ましい。
【0254】
フィルタの孔径は、0.01~7.0μmが好ましく、0.01~3.0μmがより好ましく、0.05~0.5μmが更に好ましい。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物をより確実に除去できる。フィルタの孔径値については、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。フィルタは、日本ポール株式会社(DFA4201NIEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)及び株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタを用いることができる。
【0255】
また、フィルタとしてファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。市販品としては、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)が挙げられる。
【0256】
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
【0257】
(膜)
本発明の膜は、上述した本発明の着色樹脂組成物から得られる膜である。本発明の膜は、カラーフィルタ、近赤外線透過フィルタ、近赤外線カットフィルタ、ブラックマトリクス、遮光膜などに用いることができる。例えば、カラーフィルタの着色層として好ましく用いることができる。
【0258】
本発明の膜の膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。例えば、膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。
【0259】
本発明の膜は、窒素雰囲気下にて300℃で5時間加熱処理した後の膜の厚さが、加熱処理前の膜の厚さの70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
また、上記膜を窒素雰囲気下にて350℃で5時間加熱処理した後の膜の厚さは、加熱処理前の膜の厚さの70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
また、上記膜を窒素雰囲気下にて400℃で5時間加熱処理した後の膜の厚さは、加熱処理前の膜の厚さの70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
【0260】
本発明の膜は、波長400~1100nmの透過率の最大値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上)で、最小値が30%以下(好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは15%以下)であることが好ましい。
【0261】
(膜の製造方法)
本発明の膜は、上述した本発明の着色樹脂組成物を支持体上に塗布する工程を経て製造できる。本発明の膜の製造方法においては、更にパターン(画素)を形成する工程を含むことが好ましい。パターン(画素)の形成方法としては、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法が挙げられ、フォトリソグラフィ法が好ましい。
【0262】
<フォトリソグラフィ法>
まず、フォトリソグラフィ法によりパターンを形成して膜を製造する場合について説明する。フォトリソグラフィ法によるパターン形成は、本発明の着色樹脂組成物を用いて支持体上に着色樹脂組成物層を形成する工程と、着色樹脂組成物層をパターン状に露光する工程と、着色樹脂組成物層の未露光部を現像除去してパターン(画素)を形成する工程と、を含むことが好ましい。必要に応じて、着色樹脂組成物層をベークする工程(プリベーク工程)、及び、現像されたパターン(画素)をベークする工程(ポストベーク工程)を設けてもよい。
【0263】
着色樹脂組成物層を形成する工程では、本発明の着色樹脂組成物を用いて、支持体上に着色樹脂組成物層を形成する。支持体としては、特に限定は無く、用途に応じて適宜選択できる。例えば、ガラス基板、シリコン基板などが挙げられ、シリコン基板であることが好ましい。また、シリコン基板には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、シリコン基板には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。また、シリコン基板には、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層が設けられていてもよい。
【0264】
着色樹脂組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載の方法が挙げられる。また、着色樹脂組成物の塗布方法は、国際公開第2017/030174号、国際公開第2017/018419号に記載された方法を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0265】
支持体上に形成した着色樹脂組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。低温プロセスにより膜を製造する場合は、プリベークを行わなくてもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク時間は、10~300秒が好ましく、40~250秒がより好ましく、80~220秒がさらに好ましい。プリベークは、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0266】
次に、着色樹脂組成物層をパターン状に露光する(露光工程)。例えば、着色樹脂組成物層に対し、ステッパー露光機やスキャナ露光機などを用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン状に露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。
【0267】
露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等が挙げられる。また、波長300nm以下の光(好ましくは波長180~300nmの光)を用いることもできる。波長300nm以下の光としては、KrF線(波長248nm)、ArF線(波長193nm)などが挙げられ、KrF線(波長248nm)が好ましい。また、300nm以上の長波な光源も利用できる。
【0268】
また、露光に際して、光を連続的に照射して露光してもよく、パルス的に照射して露光(パルス露光)してもよい。なお、パルス露光とは、短時間(例えば、ミリ秒レベル以下)のサイクルで光の照射と休止を繰り返して露光する方式の露光方法のことである。パルス露光の場合、パルス幅は、100ナノ秒(ns)以下であることが好ましく、50ナノ秒以下であることがより好ましく、30ナノ秒以下であることが更に好ましい。パルス幅の下限は、特に限定はないが、1フェムト秒(fs)以上とすることができ、10フェムト秒以上とすることもできる。周波数は、1kHz以上であることが好ましく、2kHz以上であることがより好ましく、4kHz以上であることが更に好ましい。周波数の上限は50kHz以下であることが好ましく、20kHz以下であることがより好ましく、10kHz以下であることが更に好ましい。最大瞬間照度は、50000000W/m2以上であることが好ましく、100000000W/m2以上であることがより好ましく、200000000W/m2以上であることが更に好ましい。また、最大瞬間照度の上限は、1000000000W/m2以下であることが好ましく、800000000W/m2以下であることがより好ましく、500000000W/m2以下であることが更に好ましい。なお、パルス幅とは、パルス周期における光が照射されている時間のことである。また、周波数とは、1秒あたりのパルス周期の回数のことである。また、最大瞬間照度とは、パルス周期における光が照射されている時間内での平均照度のことである。また、パルス周期とは、パルス露光における光の照射と休止を1サイクルとする周期のことである。
【0269】
照射量(露光量)は、例えば、0.03~2.5J/cm2が好ましく、0.05~1.0J/cm2がより好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、又は、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、又は、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m2~100000W/m2(例えば、5000W/m2、15000W/m2、又は、35000W/m2)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m2、酸素濃度35体積%で照度20000W/m2などとすることができる。
【0270】
次に、着色樹脂組成物層の未露光部を現像除去してパターン(画素)を形成する。着色樹脂組成物層の未露光部の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の着色樹脂組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。現像液の温度は、例えば、20~30℃が好ましい。現像時間は、20~180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0271】
現像液は、有機溶剤、アルカリ現像液などが挙げられ、アルカリ現像液が好ましく用いられる。アルカリ現像液としては、アルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液(アルカリ現像液)が好ましい。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ剤は、分子量が大きい化合物の方が環境面及び安全面で好ましい。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。また、現像液は、さらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、上述した界面活性剤が挙げられ、ノニオン性界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5~100倍の範囲に設定することができる。また、現像後純水で洗浄(リンス)することも好ましい。また、リンスは、現像後の着色樹脂組成物層が形成された支持体を回転させつつ、現像後の着色樹脂組成物層へリンス液を供給して行うことが好ましい。また、リンス液を吐出させるノズルを支持体の中心部から支持体の周縁部に移動させて行うことも好ましい。この際、ノズルの支持体中心部から周縁部へ移動させるにあたり、ノズルの移動速度を徐々に低下させながら移動させてもよい。このようにしてリンスを行うことで、リンスの面内ばらつきを抑制できる。また、ノズルを支持体中心部から周縁部へ移動させつつ、支持体の回転速度を徐々に低下させても同様の効果が得られる。
【0272】
現像後、乾燥を施した後に追加露光処理や加熱処理(ポストベーク)を行うことが好ましい。追加露光処理やポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の硬化処理である。ポストベークにおける加熱温度は、例えば100~240℃が好ましく、200~240℃がより好ましい。ポストベークは、現像後の膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。追加露光処理を行う場合、露光に用いられる光は、波長400nm以下の光であることが好ましい。また、追加露光処理は、韓国公開特許第10-2017-0122130号公報に記載された方法で行ってもよい。
【0273】
<ドライエッチング法>
ドライエッチング法でのパターン形成は、本発明の着色樹脂組成物を用いて支持体上に着色樹脂組成物層を形成し、この着色樹脂組成物層の全体を硬化させて硬化物層を形成する工程と、この硬化物層上にフォトレジスト層を形成する工程と、フォトレジスト層をパターン状に露光したのち、現像してレジストパターンを形成する工程と、このレジストパターンをマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングする工程と、を含むことが好ましい。フォトレジスト層の形成においては、更にプリベーク処理を施すことが好ましい。特に、フォトレジスト層の形成プロセスとしては、露光後の加熱処理、現像後の加熱処理(ポストベーク処理)を実施する形態が望ましい。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013-064993号公報の段落番号0010~0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0274】
(カラーフィルタ)
本発明のカラーフィルタは、上述した本発明の膜を有する。より好ましくは、カラーフィルタの画素として、本発明の膜を有する。本発明のカラーフィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や画像表示装置などに用いることができる。
【0275】
本発明のカラーフィルタにおいて本発明の膜の膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
【0276】
本発明のカラーフィルタにおいては、画素の幅が0.5~20.0μmであることが好ましい。下限は、1.0μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましい。上限は、15.0μm以下であることが好ましく、10.0μm以下であることがより好ましい。また、画素のヤング率が0.5~20GPaであることが好ましく、2.5~15GPaがより好ましい。
【0277】
本発明のカラーフィルタに含まれる各画素は高い平坦性を有することが好ましい。具体的には、画素の表面粗さRaは、100nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが更に好ましい。下限は規定されないが、例えば0.1nm以上であることが好ましい。画素の表面粗さは、例えばVeeco社製のAFM(原子間力顕微鏡) Dimension3100を用いて測定することができる。また、画素上の水の接触角は適宜好ましい値に設定することができるが、典型的には、50~110°の範囲である。接触角は、例えば接触角計CV-DT・A型(協和界面科学(株)製)を用いて測定できる。また、画素の体積抵抗値は高いことが好ましい。具体的には、画素の体積抵抗値は109Ω・cm以上であることが好ましく、1011Ω・cm以上であることがより好ましい。上限は規定されないが、例えば1014Ω・cm以下であることが好ましい。画素の体積抵抗値は、超高抵抗計5410(アドバンテスト社製)を用いて測定することができる。
【0278】
また、本発明のカラーフィルタにおいては、本発明の膜の表面に保護層が設けられていてもよい。保護層を設けることで、酸素遮断化、低反射化、親疎水化、特定波長の光(紫外線、近赤外線等)の遮蔽等の種々の機能を付与することができる。保護層の厚さとしては、0.01~10μmが好ましく、0.1~5μmがより好ましい。保護層の形成方法としては、有機溶剤に溶解した保護層形成用樹脂組成物を塗布して形成する方法、化学気相蒸着法、成型した樹脂を接着材で貼りつける方法等が挙げられる。保護層を構成する成分としては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アラミド樹脂、ポリアミド樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、セルロース樹脂、Si、C、W、Al2O3、Mo、SiO2、Si2N4などが挙げられ、これらの成分を二種以上含有しても良い。例えば、酸素遮断化を目的とした保護層の場合、保護層はポリオール樹脂と、SiO2と、Si2N4を含むことが好ましい。また、低反射化を目的とした保護層の場合、保護層は(メタ)アクリル樹脂とフッ素樹脂を含むことが好ましい。
【0279】
保護層形成用樹脂組成物を塗布して保護層を形成する場合、保護層形成用樹脂組成物の塗布方法としては、スピンコート法、キャスト法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の公知の方法を用いることができる。保護層形成用樹脂組成物に含まれる有機溶剤は、公知の有機溶剤(例えば、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、シクロペンタノン、乳酸エチル等)を用いることが出来る。保護層を化学気相蒸着法にて形成する場合、化学気相蒸着法としては、公知の化学気相蒸着法(熱化学気相蒸着法、プラズマ化学気相蒸着法、光化学気相蒸着法)を用いることができる。
【0280】
保護層は、必要に応じて、有機・無機微粒子、特定波長の光(例えば、紫外線、近赤外線等)の吸収剤、屈折率調整剤、酸化防止剤、密着剤、界面活性剤等の添加剤を含有しても良い。有機・無機微粒子の例としては、例えば、高分子微粒子(例えば、シリコーン樹脂微粒子、ポリスチレン微粒子、メラミン樹脂微粒子)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アルミニウム、窒化チタン、酸窒化チタン、フッ化マグネシウム、中空シリカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。特定波長の光の吸収剤は公知の吸収剤を用いることができる。これらの添加剤の含有量は適宜調整できるが、保護層の全質量に対して0.1~70質量%が好ましく、1~60質量%がさらに好ましい。
【0281】
また、保護層としては、特開2017-151176号公報の段落番号0073~0092に記載の保護層を用いることもできる。
【0282】
カラーフィルタは、下地層を有していてもよい。下地層は、例えば、上述した本発明の着色樹脂組成物から色材を除いた組成物などを用いて形成することもできる。
下地材の好ましい表面接触角は、ジヨードメタンで測定した際に20~70°であることが好ましく、水で測定した際に30~80°であることが好ましい。
上記表面接触角が上記範囲内であれば、着色樹脂組成物の塗布性と、下地を形成するための組成物の塗布性との両立に優れる。
上記表面接触角を上記範囲内とするためには、界面活性剤の添加などの方法が挙げられる。
【0283】
また、カラーフィルタの緑色画素においては、C.I.ピグメントグリーン7とC.I.ピグメントグリーン36とC.I.ピグメントイエロー139とC.I.ピグメントイエロー185との組み合わせで緑色が形成されていてもよく、C.I.ピグメントグリーン58とC.I.ピグメントイエロー150とC.I.ピグメントイエロー185との組み合わせで緑色が形成されていてもよい。
【0284】
カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各着色画素が埋め込まれた構造を有していてもよい。また、本発明の着色樹脂組成物は国際公開第2019/102887号に記載された画素構成にも好適に使用することができる。
【0285】
(固体撮像素子)
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の膜を有する。本発明の固体撮像素子の構成としては、本発明の膜を備え、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0286】
基板上に、固体撮像素子(CCD(電荷結合素子)イメージセンサ、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサ等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオード及びポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオード及び転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口した遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面及びフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、カラーフィルタを有する構成である。更に、デバイス保護膜上であってカラーフィルタの下(基板に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、カラーフィルタ上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各着色画素が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各着色画素よりも低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012-227478号公報、特開2014-179577号公報、国際公開第2018/043654号、米国特許出願公開第2018/0040656号明細書に記載の装置が挙げられる。本発明の固体撮像素子を備えた撮像装置は、デジタルカメラや、撮像機能を有する電子機器(携帯電話等)の他、車載カメラや監視カメラ用としても用いることができる。
さらに、本発明のカラーフィルタを組み込んだ固体撮像素子は、本発明のカラーフィルタに加え、更に別のカラーフィルタ、赤外線カットフィルタ、有機光電変換膜などを組み込んでもよい。
【0287】
(画像表示装置)
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の膜を有する。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や各画像表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木昭夫著、(株)工業調査会、1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、(株)工業調査会、1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【0288】
(ポリイミド又はポリイミド前駆体)
本発明のポリイミド又はポリイミド前駆体は、上述の式(2-1)又は上述の式(2-2)で表される繰返し単位を含むことが好ましい。
本発明のポリイミド又はポリイミド前駆体は、上述の式(2-1)又は上述の式(2-2)で表される繰返し単位を含むこと以外、本発明のポリイミド又はポリイミド前駆体の好ましい態様は、上述の本発明の着色樹脂組成物におけるポリイミド又はポリイミド前駆体の好ましい態様と同様である。
【0289】
<用途>
本発明のポリイミド又はポリイミド前駆体は、例えば、カラーフィルタの形成用組成物に含まれる樹脂として用いられることが好ましく、固体撮像素子用のカラーフィルタの形成用組成物に含まれる樹脂として用いられることがより好ましい。
その他、公知のポリイミド又はポリイミド前駆体を用いる用途において、公知のポリイミド又はポリイミド前駆体を本発明のポリイミド又はポリイミド前駆体に置き換えて使用することができる。
【実施例0290】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。「部」、「%」は特に述べない限り、質量基準である。
【0291】
<試料の重量平均分子量(Mw)の測定>
試料の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、以下の条件で測定した。
カラムの種類:TOSOH TSKgel Super HZM-Hと、TOSOH TSKgel Super HZ4000と、TOSOH TSKgel Super HZ2000とを連結したカラム
展開溶媒:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流量(サンプル注入量):1.0μL(サンプル濃度:0.1質量%)
装置名:東ソー製 HLC-8220GPC
検出器:RI(屈折率)検出器
検量線ベース樹脂:ポリスチレン樹脂
【0292】
<試料の酸価の測定>
試料の酸価は、固形分1gあたりの酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムの質量を表したものである。試料の酸価は次のようにして測定した。すなわち、測定試料をテトラヒドロフラン/水=9/1(質量比)混合溶媒に溶解し、得られた溶液を、電位差滴定装置(商品名:AT-510、京都電子工業製)を用いて、25℃にて、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定した。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点として、次式により酸価を算出した。
A=56.11×Vs×0.5×f/w
A:酸価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の使用量(mL)
f:0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の力価
w:試料の質量(g)(固形分換算)
【0293】
<試料のC=C価の測定>
アルカリ処理により樹脂からエチレン性不飽和結合部位(例えば、樹脂がアクリロキシ基を有する場合は、アクリル酸)の低分子成分(a)を取り出し、その含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定し、その測定値に基づいて下記式からC=C価を算出した。
具体的には、樹脂0.1gをテトラヒドロフラン/メタノール混合液(50mL/15mL)に溶解させ、4mol/L水酸化ナトリウム水溶液10mLを加え、40℃で2時間反応させた。反応液を4mol/Lメタンスルホン酸水溶液10.2mLで中和し、その後、イオン交換水5mLとメタノール2mLを加えた混合液を100mLメスフラスコに移液し、メタノールでメスアップすることでHPLC測定サンプルを調製し、以下の条件で測定した。なお、低分子成分(a)の含有量は別途作成した低分子成分(a)の検量線から算出し、エチレン性不飽和結合価(C=C価)は下記式より算出した。
【0294】
〔C=C価算出式〕
C=C価(mmol/g)=(低分子成分(a)含有量(ppm)/低分子成分(a)の分子量(g/mol))/(ポリマー液の秤量値(g)×(ポリマー液の固形分濃度(%)/100)×10)
-HPLC測定条件-
測定機器: Agilent-1200(アジレント・テクノロジー(株)製)
カラム: Phenomenex社製 Synergi 4u Polar-RP 80A,250mm×4.60mm(内径)+ガードカラム
カラム温度:40℃
分析時間:15分
流速:1.0mL/min(最大送液圧力:182bar(18.2MPa))
注入量:5μl
検出波長:210nm
溶離液:テトラヒドロフラン(安定剤不含HPLC用)/バッファー溶液(リン酸0.2体積%及びトリエチルアミン0.2体積%を含有するイオン交換水溶液)=55/45(体積%)
なお、本明細書において、体積%は25℃における値である。
【0295】
<合成例1:特定樹脂A-12の合成>
(幹ポリマー(A-12a)の合成)
2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン 20.0gと3,5-ジアミノ安息香酸 38.3gをN-メチルピロリドン 460gに溶解した。これに4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物138.8gとフタル酸無水物5.6g加えて50℃で6時間撹拌した。次に無水酢酸100.4gとピリジン7.1g加えて80℃で2時間撹拌した。得られたポリマー溶液をメタノールに析出させ、得られた粉末をろ取した。ポリマー(A-12a)のMwは25,000、酸価は69mgKOH/gであった。
(枝ポリマー(A-12b)の合成)
メタクリル酸メチル10.0gとメルカプトエタノール1.7gをメチルエチルケトン23gに溶解させた。これにV-601 0.3g加えて75℃で8時間加熱撹拌した。得られたポリマーをヘキサンに析出させ、得られた粉末をろ取した。ポリマー(A-12b)のMwは3,500であった。
(グラフトポリマーの合成)
上記で得られたポリマー(A-12a) 150gとポリマー(A-12b) 8gをN-メチルピロリドン 360gに溶解した。縮合剤として亜リン酸トリフェニル 35gとピリジン 10gを加えて120℃で8時間加熱撹拌した。反応溶液をメタノールに析出させ得られた粉末をろ取した。ポリマー(A-12)のMwは45,800、酸価は35mgKOH/gであった。
本実施例又は比較例で用いた他の特定樹脂については、モノマーの種類及び使用量を適宜変更した以外は、上記A-12と同様の方法により合成した。
本実施例又は比較例で使用した特定樹脂A-1~A-33における、各繰返し単位の含有比(モル比)であるx、y、z、z1、z2の詳細は下記表の通りである。
【0296】
【0297】
<分散液R1~R8、B1~B5、G1~G4、Y1~Y2、I1~I6、Bk1~Bk7>
下記表に記載の原料を混合した混合液をビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)を用いて3時間混合及び分散した後さらに減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2,000MPaの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行った。この分散処理を10回繰り返して各分散液を得た。
【0298】
【0299】
上記表に記載の数値の単位は質量部である。上記表に示した原料のうち、略語で示した原料の詳細は以下の通りである。
〔色材〕
PR264 : C.I.Pigment Red 264(赤色顔料、ジケトピロロピロール顔料)
PR254 : C.I.Pigment Red 254(赤色顔料、ジケトピロロピロール顔料)
PR179 : C.I.Pigment Red 179
PB15:4 : C.I.Pigment Blue 15:4(青色顔料、フタロシアニン顔料)
PB15:6 : C.I.Pigment Blue 15:6(青色顔料、フタロシアニン顔料)
PB16 : C.I.Pigment Blue 16(青色顔料、フタロシアニン顔料)
PG7 : C.I.Pigment Green 7
PG36 : C.I.Pigment Green 36
PY138 : C.I.Pigment Yellow 138
PY215 : C.I.Pigment Yellow 215
PV23 : C.I.Pigment Violet 23
IR色素:下記構造の化合物(近赤外線吸収顔料、構造式中、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表す)
【化39】
IRGAPHORE: Irgaphor Black S 0100 CF(BASF社製、下記構造の化合物、ラクタム系顔料)
【化40】
PBk32: C.I.Pigment Black 32(下記構造の化合物、ペリレン系顔料)
【化41】
誘導体1:下記構造の化合物
【化42】
誘導体2:下記構造の化合物
【化43】
誘導体3:下記構造の化合物
【化44】
【0300】
〔樹脂〕
A-20、A-22、A-26及びA-29:上述の合成例にて合成した樹脂
CA-1:下記構造の樹脂((メタ)アクリル樹脂、主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。重量平均分子量は20,000、酸価は77mgKOH/gである。また、CA-1は式(1-1)~式(1-5)のいずれかで表される繰返し単位をいずれも含有しない樹脂である。)
【化45】
CA-2:DISPERBYK-193(BYK Additives & Instruments製、ノニオン系ポリマー分散剤である。また、CA-2は式(1-1)~式(1-5)のいずれかで表される繰返し単位をいずれも含有しない樹脂である。)
【0301】
〔溶剤〕
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
S-2:プロピレングリコールモノメチルエーテル
S-3:シクロヘキサノン
S-4:シクロペンタノン
【0302】
<樹脂組成物の製造>
各実施例及び比較例において、それぞれ、下記表に記載の原料を混合して着色樹脂組成物又は比較用樹脂組成物を調製した。下記表に記載の添加量の欄の数値の単位は質量部である。「固形分中色材濃度(%)」欄の記載は、組成物の全固形分に対する色材の含有量(質量%)を表す。
【0303】
【0304】
【0305】
上記表に記載の原料のうち、略語で示した原料の詳細は以下の通りである。
【0306】
〔分散液〕
分散液R1~R8、B1~B5、G1~G4、Y1~Y2、I1~I6、Bk1~Bk7:上述した分散液
【0307】
〔樹脂〕
A-1~A-33:上述の合成例にて合成した樹脂
CA-3:下記合成例CA-3により合成した樹脂。CA-3は、式(1-1)又は式(1-2)で表される繰返し単位を含まない樹脂である。
CA-4:下記合成例CA-4により合成した樹脂。CA-4は、式(1-1)又は式(1-2)で表される繰返し単位を含まない樹脂である。
【0308】
-合成例CA-3-
乾燥窒素気流下、三口フラスコに、BAHF(2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)を31.13g(0.085mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して77.3mol%)、SiDA(1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン)を1.24g(0.0050mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して4.5mol%)、末端封止剤として、MAP(3-アミノフェノール)を2.18g(0.020mol;全アミン及びその誘導体に由来する構造単位に対して18.2mol%)、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)を150.00g秤量して溶解させた。ここに、NMP50.00gにODPA(ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物)を31.02g(0.10mol;全カルボン酸及びその誘導体に由来する構造単位に対して100mol%)溶かした溶液を添加し、20℃で1時間撹拌し、次いで50℃で4時間撹拌した。その後、キシレン15gを添加し、水をキシレンとともに共沸しながら、150℃で5時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を水3Lに投入し、析出した固体沈殿をろ過して得た。得られた固体を水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ポリイミド(CA-3)を得た。得られたポリイミド(CA-3)のMwは27,000、酸当量は350g/molであった。酸当量とは、酸性基1mol当たりの樹脂質量をいい、単位はg/molである。
【0309】
-合成例CA-4-
4,4’-ジアミノフェニルエーテル(0.30モル当量)、p-フェニレンジアミン(0.65モル当量)、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(0.05モル当量)、γ-ブチロラクトン850g及びN-メチル-2-ピロリドン850gを仕込み、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(0.9975モル当量)を添加して、80℃で3時間反応させ、ポリアミック酸(ポリマ濃度20質量%)P-1溶液を得た。
上記ポリアミック酸P-1にモノイソシアネート化合物のMOI(昭和電工(株)製)をP-1の全カルボキシ基量の10モル%量添加し、70℃で3時間反応させ、全カルボキシ基中の10%がカルボン酸誘導体となったポリイミド前駆体誘導体CA-4(ポリマ濃度20質量%)溶液を得て、上記CA-4溶液を乾燥してポリイミド前駆体誘導体CA-4を得た。
【0310】
〔重合性化合物〕
D-1:KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)
D-2:NKエステル A-DPH-12E(新中村化学工業(株)製)
D-3:アロニックスM-510(東亞合成(株)製)
【0311】
〔光重合開始剤〕
E-1:IRGACURE 379(アミノアセトフェノン系光ラジカル開始剤(BASF社製))
E-2:IRGACURE OXE01(オキシムエステル系光ラジカル開始剤(BASF社製))
E-3:IRGACURE OXE03(オキシムエステル系光ラジカル開始剤(BASF社製))
【0312】
〔溶剤〕
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
S-3:シクロヘキサノン
【0313】
<評価>
〔露光感度の評価〕
各実施例及び比較例において、それぞれ、着色樹脂組成物又は比較用組成物をシリコンウェハ上にスピンコートで塗布し、ホットプレートを用いて100℃で120秒乾燥(プリベーク)した後に、オーブンを用いて200℃で30分加熱(ポストベーク)して厚さ0.60μmの樹脂組成物層を形成した。
次いで、この樹脂組成物層に対して、一辺1.0μmの正方形状の非マスク部がそれぞれ4mm×3mmの領域に配列されたマスクパターンを介して、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用して波長365nmの光を特定の露光量で照射して露光した。
次いで、露光後の樹脂組成物層が形成されているシリコンウエハを、スピン・シャワー現像機(DW-30型、(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、現像液(CD-2000、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用い、23℃で60秒間パドル現像した。次いで、シリコンウエハを回転数50rpmで回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理を行ない、その後スプレー乾燥してパターン(画素)を形成した。
上記特定の露光量を変化させながら、得られたパターンを観察し、一辺が1.0μmの正方形状のパターンを解像する最小の露光量を決定し、下記評価基準に従い評価した。評価結果は表14に記載した。上記最小の露光量が小さいほど、組成物は露光感度に優れるといえる。
【0314】
-評価基準-
A:上記最小の露光量が100mJ/cm2未満であった。
B:上記最小の露光量が100以上200mJ/cm2未満であった。
C:上記最小の露光量が200以上500mJ/cm2未満であった。
D:上記最小の露光量が500以上1,000mJ/cm2未満であった。
E:上記最小の露光量が1,000mJ/cm2以上であった。
【0315】
〔分散保存安定性の評価〕
各実施例及び比較例において、それぞれ、着色樹脂組成物又は比較用組成物の粘度(mPa・s)を、東機産業(株)製「RE-85L」にて測定した。上記測定後、着色樹脂組成物を45℃、遮光、3日間の条件にて静置し、再度粘度(mPa・s)を測定した。上記静置前後での粘度差(ΔVis)から下記評価基準に従って保存安定性を評価した。評価結果は表14の「分散保存安定性」の欄に記載した。粘度差(ΔVis)の数値が小さいほど、組成物の保存安定性が良好であるといえる。上記粘度測定は、いずれも、温湿度を22±5℃、60±20%に管理した実験室で、組成物の温度を25℃に調整した状態で測定した。
【0316】
-評価基準-
A:ΔVisが0.5mPa・s以下であった。
B:ΔVisが0.5mPa・sを超え、1.0mPa・s以下であった。
C:ΔVisが1.0mPa・sを超え、2.0mPa・s以下であった。
D:ΔVisが2.0mPa・sを超え、2.5mPa・s以下であった。
E:ΔVisが2.5mPa・sを超えた。
【0317】
〔分光変化の評価〕
各実施例及び比較例において、それぞれ、着色樹脂組成物又は比較用組成物をガラス基板上にスピンコートで塗布し、ホットプレートを用いて100℃で120秒乾燥(プリベーク)した後に、オーブンを用いて200℃で30分加熱(ポストベーク)して厚さ0.60μmの膜を製造した。Cary 5000 UV-Vis-NIR 分光光度計(アジレントテクノロジー(株)製)を用いて、得られた膜の波長450nmの透過率Tr1を測定した。次いで、得られた膜を窒素雰囲気下にて300℃で5時間加熱処理した。加熱処理後の膜の波長450nmの透過率Tr2を測定した。
Tr1とTr2の差の絶対値ΔTを算出し、下記評価基準に従って分光変化を評価した。評価結果は、表14の「分光変化」の欄に記載した。ΔTが小さいほど、分光変化が起こりにくく好ましいといえる。上記Tr1及びTr2は、いずれも、温湿度を22±5℃、60±20%に管理した実験室で、基板温度を25℃に温度調整を施した状態で測定した。
【0318】
-評価基準-
A:ΔTが0.1%以下であった。
B:ΔTが0.1%を超え0.5%以下であった。
C:ΔTが0.5%を超え1%以下であった。
D:ΔTが1%を超え5%以下であった。
E:ΔTが5%を超えた。
【0319】
〔膜収縮率の評価〕
各実施例及び比較例において、それぞれ、着色樹脂組成物又は比較用組成物をガラス基板上にスピンコートで塗布し、ホットプレートを用いて100℃で120秒乾燥(プリベーク)した後に、オーブンを用いて200℃で30分加熱(ポストベーク)して厚さ0.60μmの膜を製造した。膜厚は、膜の一部を削ってガラス基板表面を露出し、ガラス基板表面と塗布膜の段差(塗布膜の膜厚)を触針式段差計(DektakXT、BRUKER社製)を用いて測定した。次いで、得られた膜を窒素雰囲気下にて300℃で5時間加熱処理した。加熱処理後の膜の膜厚を同様にして測定し、下記式より膜収縮率を求め、下記評価基準に従って膜収縮率を評価した。評価結果は、表14の「膜収縮率」の欄に記載した。下記T0及びT1は、いずれも、温湿度を22±5℃、60±20%に管理した実験室で、基板温度を25℃に温度調整を施した状態で測定した。膜収縮率が小さいほど、膜収縮が抑制されており、好ましい結果であるといえる。
膜収縮率(%)=(1-(T1/T0))×100
T0:製造直後の膜の膜厚(=0.60μm)
T1:窒素雰囲気下にて300℃で5時間加熱処理した後の膜厚
-評価基準-
A:膜収縮率が1%以下であった。
B:膜収縮率が1%を超え5%以下であった。
C:膜収縮率が5%を超え10%以下であった。
D:膜収縮率が10%を超え30%以下であった。
E:膜収縮率が30%を超えた。
【0320】
〔クラックの評価〕
各実施例及び比較例において、それぞれ、着色樹脂組成物又は比較用組成物をガラス基板上にスピンコートで塗布し、ホットプレートを用いて100℃で120秒乾燥(プリベーク)した後に、オーブンを用いて200℃で30分加熱(ポストベーク)して厚さ0.60μmの膜を製造した。
次いで、得られた膜の表面に、スパッタ法によりSiO2を200nm積層して無機膜を形成した。この無機膜が表面に形成された膜を、窒素雰囲気下にて300℃で5時間加熱処理した。加熱処理後の無機膜の表面を光学顕微鏡で観察し、クラックの1cm2当たりの個数をカウントして、下記評価基準に従ってクラックの有無を評価した。評価結果は表14の「クラック」の欄に記載した。
-評価基準-
A:クラックの1cm2当たりの個数が0個であった。
B:クラックの1cm2当たりの個数が1~10個であった。
C:クラックの1cm2当たりの個数が11~50個であった。
D:クラックの1cm2当たりの個数が51個~100個であった。
E:クラックの1cm2当たりの個数が101個以上であった。
【0321】
【0322】
実施例の着色樹脂組成物を用いた場合、比較例1又は比較例2の比較用組成物を用いた場合と比較して、いずれもクラックの発生が抑制されていた。このため、比較例1及び比較例2の比較用組成物と比較して、膜を製造した後の工程におけるプロセスウインドウの拡大を図ることが可能であるといえる。
【0323】
(実施例100:フォトリソグラフィ法でのパターン形成)
シリコンウエハ上に、実施例9の着色樹脂組成物をスピンコートで塗布し、ホットプレートを用いて100℃で120秒乾燥(プリベーク)した後に、オーブンを用いて200℃で30分加熱(ポストベーク)して厚さ0.60μmの樹脂組成物層を形成した。
次いで、この樹脂組成物層に対して、一辺1.1μmの正方形状の非マスク部が4mm×3mmの領域に配列されたマスクパターンを介して、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用して波長365nmの光を500mJ/cm2の露光量で照射して露光した。
次いで、露光後の樹脂組成物層が形成されているシリコンウエハを、スピン・シャワー現像機(DW-30型、(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、現像液(CD-2000、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用い、23℃で60秒間パドル現像した。次いで、シリコンウエハを回転数50rpmで回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理を行ない、その後スプレー乾燥してパターン(画素)を形成した。
【0324】
作製したパターン付きシリコンウェハを2分割し、一方を窒素雰囲気下にて300℃で5時間加熱処理した(以下、一方を300℃加熱処理前基板、他方を300℃加熱処理後基板とする)。300℃加熱処理前基板、及び、300℃加熱処理後基板に形成されているレジストパターンの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で評価したところ、300℃加熱処理後基板に形成されているレジストパターンの高さは、300℃加熱処理前基板に形成されているレジストパターンの高さの71%であった。