(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166416
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】トランジスタのヒ素拡散プロファイルエンジニアリング
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20231114BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20231114BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H01L29/78 301P
H01L21/31 B
H01L29/78 301X
H01L21/205
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023132803
(22)【出願日】2023-08-17
(62)【分割の表示】P 2022505425の分割
【原出願日】2020-07-01
(31)【優先権主張番号】62/881,710
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リウ, パトリシア エム.
(72)【発明者】
【氏名】チャン, フローラ フォン-ソン
(72)【発明者】
【氏名】イェー, ジーユエン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ソース/ドレインエクステンションの形成方法を提供する。
【解決手段】フィン型電界効果トランジスタ(FinFET)100の形成は、半導体フィン121の第1の部分上にゲート電極構造130及びゲートスペーサ133を形成し、側壁及び底部を露出させるために、半導体フィン121の第2の部分404を除去し、側壁及び底部にヒ化シリコン(Si:As)層を形成し、Si:As層にソース/ドレイン領域を形成する。Si:As層の堆積及びソース/ドレイン領域の形成中に、ヒ素ドーパントは、Si:As層からゲートスペーサの下方に位置する半導体フィンの第3の部分406に拡散し、第3の部分はドープされたソース/ドレインエクステンション領域となる。Si:As層を利用することで、ソース/ドレインエクステンション領域のドーピングが制御され、チャネル領域へのドーパントの拡散が抑えられる一方で、接触抵抗が低減する。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタであって、
チャネル領域上に配置されたゲート電極構造と、
前記チャネル領域に隣接して配置されたヒ素がドープされたソース/ドレインエクステンション領域と、
前記ソース/ドレインエクステンション領域に配置されたヒ素がドープされたシリコン層と、
前記ヒ素がドープされたシリコン層に配置されたソース/ドレイン領域と
を備える、トランジスタ。
【請求項2】
前記ゲート電極構造は、ゲート電極層、ゲート誘電体層、及びゲートスペーサを含む、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項3】
前記ゲートスペーサは、前記ソース/ドレインエクステンション領域上に配置される、請求項2に記載のトランジスタ。
【請求項4】
前記ソース/ドレインエクステンション領域は、第1のドーパント濃度を有する第1のドープされた半導体材料を含む、請求項3に記載のトランジスタ。
【請求項5】
前記ソース/ドレイン領域は、前記第1のドーパント濃度よりも高い第2のドーパント濃度を有する第2のドープされた半導体材料を含む、請求項4に記載のトランジスタ。
【請求項6】
前記第1のドープされた半導体材料のドーパントは、前記第2のドープされた半導体材料のドーパントと同じである、請求項5に記載のトランジスタ。
【請求項7】
前記第1のドープされた半導体材料のドーパントは、前記第2のドープされた半導体材料のドーパントとは異なる、請求項5に記載のトランジスタ。
【請求項8】
トランジスタの形成方法であって、
側壁及び底部を露出させるために、半導体フィンの第1の部分を除去することであって、前記半導体フィンの第2の部分はゲート電極構造の下方に配置されている、半導体フィンの第1の部分を除去することと、
エピタキシャル堆積プロセスにより、前記側壁及び前記底部にヒ素がドープされたシリコン層を形成することと、
前記半導体フィンの第2の部分にヒ素をドープしながら、前記ヒ素がドープされたシリコン層にソース/ドレイン領域を形成することと
を含む方法。
【請求項9】
前記半導体フィンの第1の部分の除去は、異方性エッチングプロセスによって行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記エピタキシャル堆積プロセス中のチャンバ圧力が、約1Torrから約600Torrの範囲である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記エピタキシャル堆積プロセス中の堆積温度が、約500℃から約700℃の範囲である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エピタキシャル堆積プロセス中に、シリコン含有前駆体及びヒ素含有前駆体をプロセスチャンバに流すことを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
選択的エピタキシャル堆積プロセスを達成するために、前記エピタキシャル堆積プロセス中に前記プロセスチャンバにエッチング液を流すことを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ヒ素がドープされたシリコン層の形成中及び/又は前記ソース/ドレイン領域の形成中に、前記半導体フィンの第2の部分をドープすることを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の部分が、約1E17原子/cm3から約2E20原子/cm3の範囲のドーパント濃度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
複数の命令を記憶している非一過性コンピュータ可読記憶媒体であって、前記複数の命令は、
側壁及び底部を露出させるために、半導体フィンの第1の部分を除去するプロセスであって、前記半導体フィンの第2の部分はゲート電極構造の下方に配置されている、半導体フィンの第1の部分を除去するプロセスと、
エピタキシャル堆積プロセスにより、前記側壁及び前記底部にヒ素がドープされたシリコン層を形成するプロセスと、
前記半導体フィンの第2の部分にヒ素をドープしながら、前記ヒ素がドープされたシリコン層にソース/ドレイン領域を形成するプロセスと
を実行するように、処理システムの構成要素を制御する命令を含む、非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
前記半導体フィンの第1の部分の除去は、異方性エッチングプロセスによって行われる、請求項16に記載の非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
前記エピタキシャル堆積プロセス中のチャンバ圧力が、約1Torrから約600Torrの範囲である、請求項16に記載の非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
前記エピタキシャル堆積プロセス中の堆積温度が、約500℃から約700℃の範囲である、請求項18に記載の非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
前記ヒ素がドープされたシリコン層の形成中及び/又は前記ソース/ドレイン領域の形成中に前記半導体フィンの第2の部分をドープすることを更に含む、請求項19に記載の非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示の実施形態は、概して、トランジスタの形成方法に関し、より具体的には、ソース/ドレインエクステンションの形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
[0002]トランジスタは、ほとんどの集積回路の主要な構成要素である。トランジスタの駆動電流、つまり速度はトランジスタのゲート幅に比例するため、一般に高速なトランジスタには大きなゲート幅が必要となる。そのため、トランジスタのサイズと速度はトレードオフの関係にあり、最大限の駆動電流と最小限のサイズを有するトランジスタという相反する目標に取り組むために、フィン型電界効果トランジスタ(FinFET)が開発された。FinFETは、トランジスタの設置面積を大幅に増加させることなくトランジスタのサイズを大きくできるフィン型のチャネル領域で特徴づけられ、現在、多くの集積回路に適用されている。しかしながら、FinFETにはまだ幾つかの欠点がある。
【0003】
[0003]例えば、nチャネル型金属酸化膜半導体(nMOS)デバイスでは、リンが高濃度にドープされた(doped)シリコン(Si:P)領域からチャネルへのリン原子の強い拡散が、小型のFinFETでは懸念される。したがって、リン原子の濃度が高いほど接触抵抗が非常に低くなり、FinFETのソース及びドレイン領域の抵抗率が有益に低減し得るが、ソース/ドレインエクステンションからチャネルにリン原子が拡散するリスクが、特に寸法の小さいFinFETでは大幅に増加することになる。
【0004】
[0004]そのため、改良されたトランジスタの形成方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
[0005]本開示の実施形態は、概して、トランジスタの形成方法に関し、より具体的には、ソース/ドレインエクステンションの形成方法に関するものである。一実施形態では、トランジスタは、チャネル領域上に配置されたゲート電極構造と、チャネル領域に隣接して配置されたヒ素がドープされたソース/ドレインエクステンション領域と、ソース/ドレインエクステンション領域に配置されたヒ素がドープされたシリコン層と、ヒ素がドープされたシリコン層に配置されたソース/ドレイン領域とを含む。
【0006】
[0006]別の実施形態では、トランジスタの形成方法は、側壁及び底部を露出させるために、半導体フィンの第1の部分を除去することであって、半導体フィンの第2の部分はゲート電極構造の下方に配置されている、半導体フィンの第1の部分を除去することを含む。本方法は更に、選択的エピタキシャル堆積プロセスにより、側壁及び底部にヒ素がドープされたシリコン層を形成することと、半導体フィンの第2の部分にヒ素をドープしながら、ヒ素がドープされたシリコン層にソース/ドレイン領域を形成することとを含む。
【0007】
[0007]別の実施形態では、複数の命令を記憶している非一過性コンピュータ可読記憶媒体であって、複数の命令は、側壁及び底部を露出させるために、半導体フィンの第1の部分を除去するプロセスであって、半導体フィンの第2の部分はゲート電極構造の下方に配置されている、半導体フィンの第1の部分を除去するプロセスを実行するために処理システムの構成要素を制御する命令を含む。本プロセスは更に、選択的エピタキシャル堆積プロセスにより、側壁及び底部にヒ素がドープされたシリコン層を形成することと、半導体フィンの第2の部分にヒ素をドープしながら、ヒ素がドープされたシリコン層にソース/ドレイン領域を形成することとを含む。
【0008】
[0008]上述した本開示の特徴を詳細に理解できるように、一部が添付の図面に例示されている実施形態を参照しながら、上記に要約した本開示をより具体的に説明する。しかし、添付の図面は例示的な実施形態を単に示すものであり、したがって、本開示の範囲を限定するものと見なすべきではなく、他の等しく有効な実施形態も許容しうることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係るFinFETの概略斜視図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る
図1のFinFETの概略断面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る、
図1のFinFETを形成するためのプロセスのフロー図である。
【
図4A】本開示の実施形態に係る、
図3のプロセスの様々な段階に対応する半導体デバイスの概略断面図である。
【
図4B】本開示の実施形態に係る、
図3のプロセスの様々な段階に対応する半導体デバイスの概略断面図である。
【
図4C】本開示の実施形態に係る、
図3のプロセスの様々な段階に対応する半導体デバイスの概略断面図である。
【
図4D】本開示の実施形態に係る、
図3のプロセスの様々な段階に対応する半導体デバイスの概略断面図である。
【
図5】
図3のプロセスを実行するのに適したマルチチャンバ処理システムの一例の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0014]理解を容易にするために、可能な限り、図面に共通の同一要素を示すのに同一の参照番号を使用している。一実施形態の要素及び特徴は、更に詳述することなく、他の実施形態に有益に組み込まれ得ると考えられる。
【0011】
[0015]本開示の実施形態は、ソース/ドレインエクステンションの形成方法に関するものである。一実施形態では、nMOSデバイスの形成方法は、半導体フィンの第1の部分上にゲート電極及びゲートスペーサを形成することと、側壁及び底部を露出させるために、半導体フィンの第2の部分を除去することと、側壁及び底部にヒ素がドープされたシリコン(Si:As)層を形成することと、Si:As層にソース/ドレイン領域を形成することとを含む。Si:As層の堆積及びソース/ドレイン領域の形成中に、ヒ素ドーパントはSi:As層からゲートスペーサの下方に位置する半導体フィンの第3の部分に拡散し、第3の部分はドープされたソース/ドレインエクステンション領域となる。Si:As層を利用することで、ソース/ドレインエクステンション領域のドーピングが制御され、チャネル領域へのドーパントの拡散が抑えられる一方で、接触抵抗が低減する。
【0012】
[0016]
図1は、本開示の実施形態に係るFinFET100の概略斜視図である。FinFET100は、半導体基板101と、半導体基板101に配置された絶縁領域102と、半導体基板101から延びる半導体フィン121と、絶縁領域102及び半導体フィン121に配置されたゲート電極構造130とを含む。半導体フィン121の上部は、FinFET100のソースコンタクト(図示せず)に露出して電気的に結合し、半導体フィン121の他の上部は、FinFET100のドレインコンタクト(図示せず)に露出して電気的に結合し、半導体フィン121の中央部はFinFET100のチャネル領域を含む。ゲート電極構造130は、FinFET100のゲートとして機能する。
【0013】
[0017]半導体基板101は、バルクシリコン(Si)基板、バルクゲルマニウム(Ge)基板、バルクシリコンゲルマニウム(SiGe)基板等であってよい。シャロートレンチアイソレーション(STI)と代替的に呼ばれる絶縁領域102は、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、又はそれらの複数の層等の1又は複数の誘電体材料を含み得る。絶縁領域102は、高密度プラズマ(HDP)、流動性化学気相堆積(FCVD)等によって形成され得る。
【0014】
[0018]半導体フィン121の側壁には、フィンスペーサ(明瞭化のため図示せず)が配置され得る。半導体フィン121は、半導体基板101から形成され得る、又は半導体基板101に堆積される様々な半導体材料から形成され得る。後者の場合、様々な半導体材料は、シリコンゲルマニウム、III-V族化合物半導体材料等を含み得る。
【0015】
[0019]ゲート電極構造130は、ゲート電極層131と、ゲート誘電体層132と、ゲートスペーサ133と、マスク層136とを含む。幾つかの実施形態では、ゲート電極層131は、ポリシリコン層又はポリシリコン層で覆われた金属層を含む。他の実施形態では、ゲート電極層131は、金属窒化物(窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)及び窒化モリブデン(MoNx)等)、金属炭化物(炭化タンタル(TaC)及び炭化ハフニウム(HfC)等)、金属窒化炭化物(TaCN等)、金属酸化物(酸化モリブデン(MoOx)等)、金属酸窒化物(酸窒化モリブデン(MoOxNy)等)、金属ケイ化物(ニッケルケイ化物等)、及びそれらの組み合わせから選択される材料を含む。また、ゲート電極層131は、ポリシリコン層で覆われた金属層であってもよい。
【0016】
[0020]ゲート誘電体層132は、酸化ケイ素(SiOx)を含んでいてよく、この酸化ケイ素は、半導体フィン121の熱酸化によって形成され得る。他の実施形態では、ゲート誘電体層132は、堆積プロセスによって形成される。ゲート誘電体層132を形成するのに適した材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化物、HfO2、HfZrOx、HfSiOx、HfTiOx、HfAlOx等の金属酸化物、及びそれらの組み合わせと多層を含む。ゲートスペーサ133は、ゲート電極層131の側壁に形成され、各ゲートスペーサ133は、図示したように、窒化物部分134及び/又は酸化物部分135を含む。幾つかの実施形態では、マスク層136は、図示したようにゲート電極層131に形成され、窒化ケイ素を含み得る。
【0017】
[0021]
図2は、本開示の実施形態に係るFinFET100の概略断面図である。
図2に示す断面図は、
図1におけるA-A断面で切り取ったものである。
図2に示すように、FinFET100は、ソース及びドレイン領域201、Si:As層204、ソース及びドレインエクステンション領域202、及びチャネル領域205を有する半導体フィン121を含む。
【0018】
[0022]ソース及びドレイン領域201は、n型ドーパント、例えばリン(P)又はヒ素(As)等のドーパントを比較的高い濃度で含む。例えば、幾つかの実施形態では、ソース及びドレイン領域201におけるn型ドーパントの濃度は、5E21原子/cm3ほどの高さであってよい。ソース及びドレイン領域201は、任意の適切な方法によって製造され得る。一実施形態では、ソース及びドレイン領域201は、エピタキシャル堆積プロセスを使用した半導体層のインシトゥドーピングによって形成される。別の実施形態では、ソース及びドレイン領域は、最初に半導体層を堆積させ、次に堆積した半導体層にドープすることによって形成される。
【0019】
[0023]各ソース/ドレイン領域201は、Si:As層204に配置される。Si:As層204は、約1nmから約10nmの範囲の厚さを有する。Si:As層204は、エピタキシャル堆積プロセス等の任意の適切な方法によって堆積され得る。ソース及びドレインエクステンション領域202は、Asでドープされる。幾つかの実施形態では、ソース及びドレインエクステンション領域202は、ゲートスペーサ133の幅133Aと実質的に同じ厚さ202Aで形成される。
【0020】
[0024]現代のFinFETデバイスに関連する小さい形状寸法では、ほぼチャネル領域205とソース/ドレイン領域201との間の距離であるゲートスペーサ133の幅133Aは、わずか数ナノメートルであり得る。従来は、まず、ドープされていないソース及びドレインエクステンション領域が除去され、ドープされたソース及びドレインエクステンション領域がチャネル領域の両側で形成される。ドープされたソース及びドレインエクステンション領域の形成中に、ドーパントがチャネル領域に拡散し得る。あるいは、任意のドーピング方法によってドープされていないソース及びドレインエクステンション領域にドープすることも、チャネル領域へのドーパントの拡散につながり得る。
【0021】
[0025]チャネル領域205へのドーパント拡散のリスクなしにドープされたソース及びドレインエクステンション領域202を形成するために、Si:As層204が利用される。Si:As層204の堆積及びソース及びドレイン領域201の堆積中、As原子はSi:As層204からソース及びドレインエクステンション領域202に拡散する。Si:As層204からのAs原子の拡散は、Si:As層204の過剰な点欠陥(point defect)の量を制御することにより、制御することができる。Si:As層204を約500℃から約700℃等の低い温度と、約50オングストローム/分から約500オングストローム/分等の高い堆積速度で堆積させることで、堆積されたSi:As層204は点欠陥リッチとなる。ソース及びドレイン領域201の堆積中、約500℃から約700℃等の堆積温度は、Si:As層204内の点欠陥フラックスにより、ソース及びドレインエクステンション領域202へのAs原子の拡散を増加させる。ソース及びドレイン領域201の堆積の終了間際には、Si:As層204の過剰な点欠陥がSi:As層204とソース/ドレインエクステンション領域202との接合面に移動し、Si:As層204からソース/ドレインエクステンション領域202へのAs原子の拡散が停止する。したがって、Si:As層204の過剰な点欠陥の量が、As原子の拡散深さを制御することになる。すなわち、ソース及びドレイン領域201の堆積中に、Si:As層204、ソース及びドレイン領域201並びにチャンバ環境に露出した表面において、過剰な点欠陥が激減し、これにより、As原子がSi:As層204からソース/ドレインエクステンション層202に更に拡散することが阻止される。幾つかの実施形態では、ソース及びドレイン領域201を堆積させる前に、Si:As層204に熱処理プロセスを実行することによって、Si:As層204からソース及びドレインエクステンション層202へのAs原子の拡散を制御することが可能である。熱処理プロセスは、スパイクアニールプロセスであってよい。
【0022】
[0026]
図3は、本開示の実施形態に係る、nMOS FinFETを形成するためのプロセス300のフロー図である。
図4A~
図4Dは、本開示の実施形態に係るプロセス300の様々な段階に対応する半導体デバイスの概略断面図である。プロセス300は、n型ドープされたソース/ドレインエクステンション領域を形成するように例示したが、プロセス300は、基板に他の構造を形成するためにも採用され得る。プロセス300は、
図4Aに示すように、ゲート電極構造130及びゲートスペーサ133が半導体フィン121に形成される工程302で開始する。ゲート電極構造130及びゲートスペーサ133は、半導体フィン121の第1の部分402に配置され、半導体フィンの第2の部分404が露出する。半導体フィン121の第1の部分402は、ゲート電極構造130の下方に配置されたチャネル領域205と、ゲートスペーサ133の下方に配置された第3の部分406とを含む。
【0023】
[0027]工程304において、
図4Bに示すように、半導体フィン121の第2の部分404を除去するためのエッチングプロセスが実行される。エッチングプロセスは、異方性エッチングプロセスであってよい。異方性エッチングプロセスは、例えば、ゲート電極構造130及びゲートスペーサ133がマスクされる間の深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)プロセスであってよい。エッチングプロセスは、半導体フィンの第3の部分406の側壁401及び底部403を露出させる。底部403は、半導体基板101の表面であってよい。
【0024】
[0028]工程306において、
図4Cに示すように、Si:As層204が側壁401及び底部403に堆積される。Si:As層204は、約1nmから約10nmの範囲の厚さを有し得る。Si:As層204は、選択的エピタキシャル堆積プロセス等のエピタキシャル堆積プロセスによって堆積され得る。例えば、Si:As層204は、Si等の半導体材料から作製される側壁401及び底部403に堆積され、Si:As層204は、誘電体材料から作製されるゲートスペーサ133及びマスク層136には堆積されない。堆積プロセスは、約1Torrから約600Torr、例えば約10Torrから約20Torrの範囲のチャンバ圧力、及び約500℃から約700℃、例えば約600℃から約625℃の範囲の堆積温度(基板の温度)で実行され得る。シリコン含有前駆体及びヒ素含有前駆体がプロセスチャンバに流される。シリコン含有前駆体は、シラン、ジシラン、ジクロロシラン(DCS)、トリクロロシラン(TCS)、又は任意の適切なシリコン含有前駆体であってよい。シリコン含有前駆体は、2つ以上のシリコン含有ガスを含み得る。シリコン含有前駆体は、約1sccmから約1000sccm、例えば、1sccmから約500sccm、又は10sccmから約1000sccmの範囲の流量を有し得る。ヒ素含有前駆体は、アルシン、ターシャリーブチルアルシン(TBA)、又は任意の適切なヒ素含有前駆体であってよい。ヒ素含有前駆体は、2つ以上のヒ素含有ガスを含み得る。ヒ素含有前駆体は、約0.1sccmから約100sccmの範囲の流量を有し得る。幾つかの実施形態では、窒素ガス又は水素ガス等のキャリアガスが、シリコン含有前駆体及びヒ素含有前駆体と共に流され得る。幾つかの実施形態では、Si:As堆積の選択性が向上するように選択的エッチバックを実行するために、シリコン含有前駆体及びヒ素含有前駆体と共にエッチング液が流され得る。エッチング液の例としては、塩酸が挙げられる。
【0025】
[0029]Si:As層204における過剰な点欠陥の量は、前駆体の分圧、前駆体の比率、処理温度、及び/又は層厚等の処理条件を変えることによって制御することができる。Si:As層204における過剰な点欠陥の量により、半導体フィン121の第3の部分406へのAs原子の拡散が制御され得る。Si:As層204の堆積中、As原子は、半導体フィン121の第3の部分406に拡散される。
【0026】
[0030]工程308において、
図4Dに示すように、Si:As層204にソース及びドレイン領域201が形成される。ソース及びドレイン領域201は、リンがドープされたシリコン等のドープされた半導体材料であってよい。ソース及びドレイン領域201は、エピタキシャル堆積プロセス等の任意の適切な方法によって形成され得る。ソース及びドレイン領域201の堆積中、Si:As層204内のAs原子は、半導体フィン121の第3の部分406に拡散し続け、
図4Dに示すように、半導体フィン121のドープされた第3の部分406は、ソース及びドレインエクステンション領域202となる。ソース及びドレインエクステンション領域202は、ソース及びドレイン領域201と比較して、低いドーパント濃度を有する。例えば、各ソース/ドレインエクステンション領域202は、約1E17原子/cm
3から約2E20原子/cm
3の範囲のドーパント濃度を有する。ソース及びドレイン領域201のドーパントは、ソース及びドレインエクステンション領域202のドーパントと同じであってよい、又は異なっていてよい。一実施形態では、ソース及びドレイン領域201内のドーパントはリンであり、ソース及びドレインエクステンション領域202内のドーパントはヒ素である。
【0027】
[0031]本明細書に提供される教示に従って好適に改変され得る処理システムの例としては、カリフォルニア州サンタクララに位置するアプライドマテリアルズ社から市販されるENDURA(登録商標)、PRODUCER(登録商標)又はCENTURA(登録商標)統合処理システム又は他の好適な処理システムが挙げられる。他の処理システム(他の製造業者からのものを含む)が、本明細書に記載の態様から利益を得るように適合され得ると考えられる。
図5は、本開示の実施形態に係る、
図3に示す方法300を完了させるために使用され得るマルチチャンバ処理システム500の一例を示す概略上面図である。
図5に示すように、複数のプロセスチャンバ502は、第1の移送チャンバ504に結合される。第1の移送チャンバ504はまた、第1の対のパススルーチャンバ506に結合される。第1の移送チャンバ504は、パススルーチャンバ506とプロセスチャンバ502との間で基板を移送するための、中央に配置された移送ロボット(図示せず)を有する。パススルーチャンバ506は、プロセスチャンバ514及びプロセスチャンバ516に結合された第2の移送チャンバ510に結合される。第2の移送チャンバ510は、一組のロードロックチャンバ512とプロセスチャンバ514又はプロセスチャンバ516との間で基板を移送するための、中央に配置された移送ロボット(図示せず)を有する。第2の移送チャンバ510には、ロードロックチャンバ512によってファクトリインターフェース520が接続される。ファクトリインターフェース520は、ロードロックチャンバ512の反対側の1又は複数のポッド530に結合される。ポッド530は、典型的には、クリーンルームからアクセス可能な前方開口型統一ポッド(FOUP)である。
【0028】
[0032]工程中、基板はまずプロセスチャンバ514に移送され、その中で工程302が実行されうる。次に、基板は、プロセスチャンバ516に移送され、その中で工程304が実行される。次に、基板は1又は複数のプロセスチャンバ502に移送され、その中で工程306及び308が実行され得る。工程302、304、306、及び308は全て、同じ処理システム500内で実行されるため、基板が様々なチャンバに移送される際に真空が破られず、汚染の可能性が減少し、堆積したエピタキシャル膜の品質が改善される。
【0029】
[0033]幾つかの実施形態では、工程304は、処理システム500の一部ではないエッチングチャンバで実行される。
【0030】
[0034]処理システム500又はその構成要素を制御するために、処理システム500にシステムコントローラ580が結合される。例えば、システムコントローラ580は、処理システム500のチャンバ502、504、506、510、512、514、516の直接制御を用いて、又はチャンバ502、504、506、510、512、514、516に関連するコントローラを制御することによって、処理システム500の工程を制御し得る。工程において、システムコントローラ580は、処理システム500の性能を調整するために、それぞれのチャンバからのデータ収集及びフィードバックを可能にする。
【0031】
[0035]システムコントローラ580は、概して、中央処理装置(CPU)582、メモリ584、及び支援回路586を含む。CPU582は、産業環境で使用可能な任意の形態の汎用プロセッサの1つであってよい。メモリ584、非一過性コンピュータ可読媒体、又は機械可読記憶装置は、CPU582によってアクセス可能であり、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、フロッピーディスク、ハードディスク、又はローカルもしくはリモートの他の任意の形態のデジタルストレージ等のメモリのうちの1又は複数であってよい。支援回路586は、CPU582に結合され、キャッシュ、クロック回路、入出力サブシステム、電源等を含み得る。システムコントローラ580は、メモリ584に記憶された方法300を実行するように構成される。本開示で開示される様々な実施形態は、概して、メモリ584(又は特定のプロセスチャンバのメモリ)に記憶されたコンピュータ命令コードを、例えばコンピュータプログラム製品又はソフトウェアルーチンとして実行することにより、CPU582の制御下で実装され得る。すなわち、コンピュータプログラム製品は、メモリ584(又は非一過性コンピュータ可読媒体又は機械可読記憶装置)に有形に具現化される。コンピュータ命令コードがCPU582によって実行されると、CPU582は、様々な実施形態に係る工程を実行するようにチャンバを制御する。
【0032】
[0036]ソース及びドレイン領域とソース及びドレインエクステンション領域の間にSi:As層を利用することで、ソース及びドレインエクステンション領域のドーピングが制御される。その結果、As原子がチャネル領域へ拡散することがない。更に、ソース及びドレインエクステンションリセス、ソース及びドレインエクステンション再成長等のプロセスを省略することができる。
【0033】
[0037]前述の内容は本開示の実施形態を対象としているが、以下の特許請求の範囲によって決定されるその基本的な範囲から逸脱することなく、本開示の他のさらなる実施形態を考案することが可能である。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタであって、
基板と、
前記基板上に配置された半導体フィンであって、
ソース領域、ドレイン領域、及び前記ソース領域と前記ドレイン領域の間に配置されたチャネル領域、及び
前記ソース領域と前記ドレイン領域の間、及び前記ドレイン領域と前記基板の間に配置された第1のヒ素がドープされたシリコン層
を備えた半導体フィンと、
前記半導体フィンの前記チャネル領域の上に配置されたゲート電極構造と
を備える、トランジスタ。
【請求項2】
前記ゲート電極構造は、ゲート電極層、ゲート誘電体層、及びゲートスペーサを含む、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項3】
前記ゲートスペーサは、前記ソース領域及び前記ドレイン領域の上に配置される、請求項2に記載のトランジスタ。
【請求項4】
前記ソース領域及び前記ドレイン領域は、ヒ素以外のドーパントを含む、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項5】
前記ソース領域及び前記ドレイン領域は、リンがドープされている、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項6】
前記ソース領域及び前記ドレイン領域は、前記ソース領域と前記チャネル領域の間、及び前記ドレイン領域と前記チャネル領域の間に配置される、請求項4に記載のトランジスタ。
【請求項7】
前記第1のヒ素がドープされたシリコン層と前記ソース領域の間、及び前記第1のヒ素がドープされたシリコン層と前記ドレイン領域の間に配置された第2のヒ素がドープされたシリコン層を更に備え、当該第2のヒ素がドープされたシリコン層のドーパント濃度が、前記ソース領域と前記ドレイン領域のそれぞれのドーパント濃度の少なくとも1/10より低い、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項8】
トランジスタの形成方法であって、
半導体材料のフィン型構造の側壁及び底部の上にヒ素がドープされたシリコン層を形成することであって、
前記フィン型構造が、チャネル領域、及び当該チャネル領域と前記ヒ素がドープされたシリコン層の間の外側部分を含み、
前記ヒ素がドープされたシリコン層が堆積プロセスにより形成され、且つ
ゲート電極構造が、前記フィン型構造の上に配置される、
ヒ素がドープされたシリコン層を形成することと、
前記フィン型構造の前記外側部分にヒ素をドープしながら、前記ヒ素がドープされたシリコン層の上にソース/ドレイン領域を形成することと
を含む、方法。
【請求項9】
前記堆積プロセス中のチャンバ圧力が、1Torrから600Torrの範囲である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記堆積プロセス中の温度が、500℃から700℃の範囲である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記堆積プロセス中に、シリコン含有前駆体及びヒ素含有前駆体をプロセスチャンバに流すことを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
選択的堆積プロセスを達成するために、前記堆積プロセス中にプロセスチャンバにエッチング液を流すことを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記ヒ素がドープされたシリコン層の形成中に、前記フィン型構造の前記外側部分をドープすることを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記フィン型構造の前記外側部分が、1E17原子/cm3から2E20原子/cm3の範囲のドーパント濃度を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記フィン型構造の前記外側部分のドーパント濃度が、前記ソース/ドレイン領域のドーパント濃度の少なくとも1/10より低い、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記ソース/ドレイン領域を形成する前に、前記ヒ素がドープされたシリコン層に熱処理プロセスを実行することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記熱処理プロセスが、スパイクアニールプロセスである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
複数の命令を記憶している非一過性コンピュータ可読記憶媒体であって、前記複数の命令は、
半導体材料のフィン型構造の側壁及び底部の上にヒ素がドープされたシリコン層を形成することであって、
前記フィン型構造が、チャネル領域、及び当該チャネル領域と前記ヒ素がドープされたシリコン層の間の外側部分を含み、
前記ヒ素がドープされたシリコン層が堆積プロセスにより形成され、且つ
ゲート電極構造が、前記フィン型構造の上に配置される、
ヒ素がドープされたシリコン層を形成することと、
前記フィン型構造の前記外側部分にヒ素をドープしながら、前記ヒ素がドープされたシリコン層の上にソース/ドレイン領域を形成することと
を実行するように、処理システムの構成要素を制御する命令を含む、非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
前記複数の命令が更に、前記堆積プロセス中のチャンバ圧力を1Torrから600Torrに維持するように前記処理システムの構成要素を制御するための命令を含む、請求項18に記載の非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
前記複数の命令が更に、前記堆積プロセス中の温度を500℃から700℃に維持するように前記処理システムの構成要素を制御するための命令を含む、請求項18に記載の非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
【外国語明細書】