(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166553
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】有機膜の堆積
(51)【国際特許分類】
H01L 21/312 20060101AFI20231114BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20231114BHJP
C23C 16/04 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H01L21/312 B
C23C16/455
C23C16/04
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023148142
(22)【出願日】2023-09-13
(62)【分割の表示】P 2022035309の分割
【原出願日】2017-05-26
(31)【優先権主張番号】15/170,769
(32)【優先日】2016-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/486,124
(32)【優先日】2017-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 隆
(72)【発明者】
【氏名】トイス エヴァ イー.
(72)【発明者】
【氏名】スエモリ ヒデミ
(72)【発明者】
【氏名】ポレ ヴィルジャミ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハウッカ スヴィ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ ヴァルン
(72)【発明者】
【氏名】マエス ヤン ヴィレム
(72)【発明者】
【氏名】ロングリエ デルフィン
(72)【発明者】
【氏名】カチェル クルズィスツトフ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】第2の表面よりも基板の第1の表面上への選択的堆積を含む有機薄膜を堆積させ、選択性に依存しない特定の有機膜材料に対するプロセスを提供する。
【解決手段】有機膜を選択的に堆積させるプロセスは、基板の第2の表面よりも基板の1つの表面への選択的堆積を含んで、有機膜を第2の誘電体表面よりも第1の金属性表面上に選択的に堆積させ、異なる層における相対的厚さによって測定された、約50%又は約90%より高い選択性を達成する。選択的に堆積された有機膜は、そのプロセスを完全に選択的にするためのエッチングプロセスを受けてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面と第2の表面とを含む基板上に有機膜を選択的に堆積させるためのプロセスであって、前記プロセスは、
第1の気相前駆物質に前記基板を接触させるステップと、
第2の気相前駆物質に前記基板を接触させるステップと
を含む1つまたはそれ以上の堆積サイクルを含み、前記第1および第2の気相前駆物質に前記基板を接触させるステップは、前記第2の表面よりも前記第1の表面上に選択的に前記有機薄膜を形成する、プロセス。
【請求項2】
所望の厚さの有機薄膜が形成されるまで前記接触させるステップを繰り返すステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第1の表面は金属性表面である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第2の表面は誘電体表面である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記有機膜はポリイミド膜を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記基板が前記第1の気相前駆物質に接触される前に、前記基板が前記第2の気相前駆物質に接触される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第1の気相前駆物質はジアミンを含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記基板が別の異なる前駆物質に接触される前に、前記基板はジアミンを含む前記第1の気相前駆物質に接触される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第1の気相前駆物質は1,6-ジアミノヘキサン(DAH)を含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第2の気相前駆物質は二無水物を含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第2の気相前駆物質はピロメリト酸二無水物(PMDA)を含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記1つまたはそれ以上の堆積サイクルの間、前記基板は約170℃より高い温度にて保持される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項13】
前記有機膜はポリアミド膜を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記第1の気相前駆物質はハロゲンを含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記第1の気相前駆物質はアジポイルクロリド(AC)を含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記第2の気相前駆物質はジアミンを含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項17】
前記第2の気相前駆物質はエチレンジアミンを含む、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記1つまたはそれ以上の堆積サイクルの間、前記基板は約80℃より高い温度にて保持される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項19】
前記有機膜は、約10%より高い選択性によって前記第2の表面よりも前記第1の表面上に堆積される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
前記有機膜は、約50%より高い選択性によって前記第2の表面よりも前記第1の表面上に堆積される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
前記有機膜は、約80%より高い選択性によって前記第2の表面よりも前記第1の表面上に堆積される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項22】
前記第1の表面は金属酸化物、元素金属、または金属性表面を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項23】
前記第1の表面はタングステンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項24】
前記第2の表面はシリコンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項25】
前記第2の表面はSiO2を含む、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記プロセスは原子層堆積(ALD)タイプのプロセスである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項27】
前記基板にエッチングプロセスを受けさせるステップをさらに含み、前記エッチングプロセスは、前記基板の前記第2の表面から実質的にすべての任意の堆積有機膜を除去し、かつ前記基板の前記第1の表面から実質的にすべての前記堆積有機膜を除去しない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項28】
前記エッチングプロセスは、前記基板を水素原子、水素ラジカル、水素プラズマ、またはそれらの組み合わせに露出させるステップを含む、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記エッチングプロセスは、前記基板を酸素原子、酸素ラジカル、酸素プラズマ、またはそれらの組み合わせに露出させるステップを含む、請求項27に記載のプロセス。
【請求項30】
第1の表面と第2の表面とを含む基板上に有機膜を選択的に堆積させるためのプロセスであって、前記プロセスは、第1の気相前駆物質および第2の気相前駆物質に前記基板を交互に逐次接触させるステップを含む1つまたはそれ以上の堆積サイクルを含み、前記有機膜は前記基板の前記第2の表面よりも前記基板の前記第1の表面上に選択的に形成される、プロセス。
【請求項31】
前記第1の表面は金属性表面である、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記第2の表面は誘電体表面である、請求項30に記載のプロセス。
【請求項33】
前記有機膜は、約50%より高い選択性によって前記第2の表面よりも前記第1の表面上に堆積される、請求項30に記載のプロセス。
【請求項34】
基板上にポリアミド膜を堆積させるためのプロセスであって、前記プロセスは、
5またはそれ以下の炭素原子を含む第1の気相前駆物質に前記基板を接触させるステップと、
3またはそれ以下の炭素を含む第2の気相前駆物質に前記基板を接触させるステップと
を含む1つまたはそれ以上の堆積サイクルを含み、前記第1および第2の気相前駆物質に前記基板を接触させるステップは、所望の厚さのポリアミド膜を形成する、プロセス。
【請求項35】
前記プロセスは蒸着プロセスである、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記プロセスは分子層堆積(MLD)プロセスである、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記基板は第1の表面と、第2の異なる表面とを含む、請求項34に記載のプロセス。
【請求項38】
前記ポリアミド膜は前記基板の前記第2の表面よりも前記基板の前記第1の表面上に選択的に形成される、請求項37に記載のプロセス。
【請求項39】
前記第1の気相前駆物質は塩素またはジカルボン酸を含む、請求項34に記載のプロセス。
【請求項40】
前記第1の気相前駆物質はアジポイルクロリド(AC)を含む、請求項37に記載のプロセス。
【請求項41】
前記第2の気相前駆物質はアミンを含む、請求項34に記載のプロセス。
【請求項42】
前記第2の気相前駆物質はエチレンジアミン(EDA)を含む、請求項41に記載のプロセス。
【請求項43】
第1の表面と第2の表面とを含む基板上に有機薄膜を選択的に形成するためのプロセスであって、前記プロセスは、
前記基板の前記第1の表面上および前記基板の前記第2の表面上に有機薄膜を堆積させるステップと、
前記堆積有機薄膜をエッチャントに露出させるステップと
を含み、前記堆積有機薄膜をエッチャントに露出させるステップは、前記基板の前記第2の表面から実質的にすべての前記堆積有機薄膜を除去し、かつ前記基板の前記第1の表面から実質的にすべての前記堆積有機薄膜を除去しない、プロセス。
【請求項44】
前記基板の前記第1の表面上および前記基板の前記第2の表面上に有機膜を堆積させるステップは、前記基板の前記第2の表面よりも前記基板の前記第1の表面上に前記有機薄膜を選択的に堆積させるステップを含む、請求項43に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、本明細書においてその開示の全体が引用により援用される「有機膜の堆積(DEPOSITION OF ORGANIC FILMS)」と題する2016年6月1日に出願された米国特許出願第15/170,769号の一部継続出願である。加えて本出願は、本明細書においてそれらの開示の全体が引用により援用される「有機膜の気相堆積(VAPOR PHASE DEPOSITION OF ORGANIC FILMS)」と題する2016年3月15日に出願された米国特許出願第15/070,594号、および「有機膜の気相堆積(VAPOR PHASE DEPOSITION OF ORGANIC FILMS)」と題する2015年10月9日に出願された米国特許出願第14/879,962号に関するものである。
【0002】
本開示は、第2の表面よりも基板の第1の表面上への選択的堆積を含む、有機薄膜の堆積に関する。加えて、選択性に依存しない特定の有機膜材料に対するプロセスが提供される。
【背景技術】
【0003】
有機薄膜は有益な光学的、熱的、電気的、および機械的特性を有し、エレクトロニクス、医用工学、防御、医薬品、ならびにマイクロテクノロジーおよびナノテクノロジーの産業において広範に使用される。マイクロエレクトロニクスおよびフォトニクス産業におけるポリマーは、他の例の中でも、リソグラフィパターン形成のための光子または電子によって硬化/分解可能なポリマー;ならびにパッケージング、層間誘電体、および柔軟な回路基板のためのポリイミドを含む。非特許文献1。
【0004】
ポリマー薄膜は、たとえばアモルファス炭素膜または層に対する半導体適用における開始点などとして用いられ得る。ポリイミド膜は、熱安定性ならびに機械的応力および化学物質に対する抵抗性を有するために有益である。たとえば、ポリイミド膜は、リソグラフィステップにおいてパターン鮮明度を改善しかつ調整不良を低減するための反射防止層、複数のパターン形成(例、SDDP、SDQP)における層、層間誘電材料に対する絶縁材料、全有機薄膜トランジスタにおけるゲート誘電体、パッケージング適用におけるパッシベーション(passivation)膜、エッチングのプロセスにおけるマスク層などとしても使用できる。同様に、ポリアミドおよびその他の有機膜は、それらの電気的特性および材料特性によって多数の適用に対して有益である。ポリアミド膜は、たとえば集積回路製造における層間誘電材料のための絶縁材料などとして使用されてもよく、紫外線(UV:ultraviolet)硬化によるポリアミドの感光性は、別個のフォトレジストを伴わないパターン形成を可能にする。
【0005】
ポリマー薄膜は、伝統的にスピンコート技術によって製造されてきた。スピンコート法は、回転するディスクを液体材料でコートし、その液体材料を焼結することによって、高機能性ポリマー膜を形成する。しかし、スピン適用膜の適合は、いくつかの理由から制限される。たとえば、基板上に均一な薄層を形成することは、一つには開始液体の粘度のために制御が難しく、加えて硬化後の空隙生成なしに非常に小さいフィーチャ(feature)の間隙(例、金属ラインの間のトレンチまたは間隙)を充填することは困難であり得る。加えて、層の所望の厚さに対して高いトポグラフィにわたるスピンコートは、結果的に不連続で非コンフォーマルな堆積をもたらし得る。半導体チップサイズが縮小し続けるにつれて、より調整可能なモルフォロジー(morphology)を有するより薄くて高強度の膜が必要とされる。
【0006】
近年、たとえば化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition)、蒸着重合(VDP:vapor deposition polymerization)、分子層堆積(MLD:molecular layer deposition)などの気相堆積プロセス、ならびにたとえば原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)および周期的CVD(cyclical CVD)などの逐次堆積プロセスが、ポリマー薄膜の形成に適用されている。CVDにおいては、反応体が基板表面で反応するときに膜が堆積される。反応チャンバ内で、1つまたはそれ以上の反応体のガスが、1つまたはそれ以上の基板に送られる。熱CVD(thermal CVD)においては、高温の基板上で反応体ガスが互いに反応して薄膜を形成し、その成長速度は典型的に温度および供給された反応体の量に影響される。プラズマエンハンストCVD(plasma enhanced CVD、PECVD)においては、1つまたはそれ以上の反応体が遠隔プラズマ発生器内またはインサイチュ(in situ)で活性化されてもよい。CVDは、介在する休止または膜処理を伴って周期的に行われてもよい。ALDにおいても、基板を反応体に周期的に露出させることによって堆積が行われ、サイクルにおいて行われる基板表面と蒸気反応体との自己飽和反応によって膜が構築される。基板またはウェハは気相反応体に交互に繰り返し露出され、基板上に材料の薄膜が形成される。典型的なプロセスにおいて、1つの反応体が自己制限的プロセスにおいて基板上に吸着する。その後パルスにされた異なる反応体が、第1の反応体の吸着された種と反応して、所望の材料の単一分子層のみを形成する。目標の厚さが達成されるまで成長サイクルを繰り返すことによって、より厚い膜が生成される。ALDのプラズマ強化の変形、およびハイブリッドALD/CVDプロセス(例、反応体供給への基板露出のいくらかの重複を伴うもの)も公知である。
【0007】
たとえばエッチングマスクの形成などの多くの適用において、ポリマー膜が形成され、その後基板上でパターン形成される。典型的に、このパターン形成はフォトリソグラフィ技術を用いて達成される。しかし、パターン形成されたポリマー膜と下にある基板フィーチャとを正しく調整させるためには、リソグラフィパターンの正確な配置が必要とされる。しばしば、こうしたパターン形成は調整不良のパターン形成ポリマー膜をもたらす。さらに、リソグラフィパターンの正確な配置の要求によって、こうした技術が用いられるプロセスに複雑さがもたらされ得る。ポリマー膜を堆積させるためのより効率的かつ信頼性の高い技術、およびポリマー膜を下にある基板のフィーチャと調整させて堆積することが必要とされる。下にある基板のフィーチャと調整される金属または金属性化合物を含有する膜に対しても同様の要求が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Norrmanら著、Annu.Rep.Prog.Chem.,Sect.C,2005,101,174-201
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
いくつかの局面において、第1の表面と第2の表面とを含む基板上に有機膜を選択的に堆積させるためのプロセスが提供される。いくつかの実施形態において、このプロセスは、第1の気相前駆物質に基板を接触させるステップと、第2の気相前駆物質に基板を接触させるステップとを含む1つまたはそれ以上の堆積サイクルを含んでもよく、第1および第2の気相前駆物質に基板を接触させるステップは、第2の表面よりも第1の表面上に選択的に有機薄膜を形成する。いくつかの実施形態において、プロセスは、所望の厚さの有機薄膜が形成されるまでこれらの接触させるステップを繰り返すステップをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、第1の表面は金属性表面であってもよい。いくつかの実施形態において、第2の表面は誘電体表面であってもよい。いくつかの実施形態において、有機膜はポリイミド膜を含んでもよい。いくつかの実施形態において、基板が第1の気相前駆物質に接触される前に、基板が第2の気相前駆物質に接触されてもよい。いくつかの実施形態において、第1の気相前駆物質はジアミンを含んでもよい。いくつかの実施形態において、基板が別の異なる前駆物質に接触される前に、基板はジアミンを含む第1の気相前駆物質に接触される。
【0010】
いくつかの実施形態において、第1の気相前駆物質は1,6-ジアミノヘキサン(DAH:1,6-diamnohexane)を含む。いくつかの実施形態において、第2の気相前駆物質は二無水物(dianyhydride)を含む。いくつかの実施形態において、第2の気相前駆物質はピロメリト酸二無水物(PMDA:pyromellitic dianhydride)を含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の堆積サイクルの間、基板は約170℃より高い温度にて保持される。いくつかの実施形態において、有機膜はポリアミド膜を含む。いくつかの実施形態において、第1の気相前駆物質はハロゲンを含む。いくつかの実施形態において、第1の気相前駆物質はアジポイルクロリド(AC:adipoyl chloride)を含む。いくつかの実施形態において、第2の気相前駆物質はジアミンを含む。いくつかの実施形態において、第2の気相前駆物質はエチレンジアミンを含む。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の堆積サイクルの間、基板は約80℃より高い温度にて保持される。いくつかの実施形態において、有機膜は、約10%より高い選択性によって第2の表面よりも第1の表面上に堆積される。いくつかの実施形態において、有機膜は、約50%より高い選択性によって第2の表面よりも第1の表面上に堆積される。いくつかの実施形態において、有機膜は、約80%より高い選択性によって第2の表面よりも第1の表面上に堆積される。いくつかの実施形態において、第1の表面は金属酸化物、元素金属、または金属性表面を含む。いくつかの実施形態において、第1の表面はタングステンを含む。いくつかの実施形態において、第2の表面はシリコンを含む。いくつかの実施形態において、第2の表面はSiO2を含む。いくつかの実施形態において、プロセスは原子層堆積(ALD)タイプのプロセスである。
【0011】
いくつかの実施形態において、プロセスは基板にエッチングプロセスを受けさせるステップをさらに含んでもよく、このエッチングプロセスは、基板の第2の表面から実質的にすべての任意の堆積有機膜を除去し、かつ基板の第1の表面から実質的にすべての堆積有機膜を除去しない。いくつかの実施形態において、エッチングプロセスは基板を水素原子、水素ラジカル、水素プラズマ、またはそれらの組み合わせに露出させるステップを含む。いくつかの実施形態において、エッチングプロセスは基板を酸素原子、酸素ラジカル、酸素プラズマ、またはそれらの組み合わせに露出させるステップを含む。いくつかの実施形態において、エッチングプロセスは、付加的な反応性の種を伴うかまたは伴わない、たとえばArまたはHe種などの希ガス種を含むプラズマに、基板を露出させるステップを含んでもよい。
【0012】
いくつかの局面において、第1の表面と第2の表面とを含む基板上に有機膜を選択的に堆積させるためのプロセスが提供される。いくつかの実施形態において、このプロセスは、第1の気相前駆物質および第2の気相前駆物質に基板を交互に逐次接触させるステップを含む1つまたはそれ以上の堆積サイクルを含んでもよく、有機膜は基板の第2の表面よりも基板の第1の表面上に選択的に形成される。いくつかの実施形態において、第1の表面は金属性表面である。いくつかの実施形態において、第2の表面は誘電体表面である。いくつかの実施形態において、有機膜は、約50%より高い選択性によって第2の表面よりも第1の表面上に堆積される。
【0013】
いくつかの局面において、基板上にポリアミド膜を堆積させるためのプロセスが提供される。いくつかの実施形態において、このプロセスは、5またはそれ以下の炭素原子を含む第1の気相前駆物質に基板を接触させるステップと、3またはそれ以下の炭素を含む第2の気相前駆物質に基板を接触させるステップとを含む1つまたはそれ以上の堆積サイクルを含んでもよく、第1および第2の気相前駆物質に基板を接触させるステップは、所望の厚さのポリアミド膜を形成する。いくつかの実施形態において、このプロセスは蒸着プロセスである。いくつかの実施形態において、このプロセスは分子層堆積(MLD)プロセスである。いくつかの実施形態において、基板は第1の表面と、第2の異なる表面とを含む。いくつかの実施形態において、ポリアミド膜は基板の第2の表面よりも基板の第1の表面上に選択的に形成される。いくつかの実施形態において、第1の気相前駆物質は塩素またはジカルボン酸を含む。いくつかの実施形態において、第1の気相前駆物質はアジポイルクロリド(AC)を含む。いくつかの実施形態において、第2の気相前駆物質はアミンを含む。いくつかの実施形態において、第2の気相前駆物質はエチレンジアミン(EDA:ethylene diamine)を含む。
【0014】
いくつかの局面において、第1の表面と第2の表面とを含む基板上に有機薄膜を選択的に形成するためのプロセスが提供される。いくつかの実施形態において、このプロセスは、基板の第1の表面上および基板の第2の表面上に有機薄膜を堆積させるステップと、堆積有機薄膜をエッチャントに露出させるステップとを含んでもよく、堆積有機薄膜をエッチャントに露出させるステップは、基板の第2の表面から実質的にすべての堆積有機薄膜を除去し、かつ基板の第1の表面から実質的にすべての堆積有機薄膜を除去しない。いくつかの実施形態において、基板の第1の表面上および基板の第2の表面上に有機膜を堆積させるステップは、基板の第2の表面よりも基板の第1の表面上に有機薄膜を選択的に堆積させるステップを含む。
【0015】
いくつかの局面に従うと、第1の表面と第2の表面とを含む基板の第1の表面上にエッチングマスクを形成するためのプロセスが提供される。いくつかの実施形態において、このプロセスは、第1の気相前駆物質に基板を接触させるステップと、第2の気相前駆物質に基板を接触させるステップとを含んでもよく、第1および第2の気相前駆物質に基板を接触させるステップは、第2の表面よりも第1の表面上に選択的に有機膜を形成する。エッチングマスクは、基板の第1の表面上に形成される有機膜を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、接触させるステップは堆積サイクルを含んでもよく、このプロセスは1つまたはそれ以上の堆積サイクルを含んでもよい。いくつかの実施形態において、プロセスは、所望の厚さのエッチングマスクが形成されるまで接触させるステップを繰り返すステップをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、第1の表面は金属性表面である。いくつかの実施形態において、第2の表面は誘電体表面である。いくつかの実施形態において、有機膜はポリイミド膜を含む。いくつかの実施形態において、第1の気相前駆物質はジアミンを含む。いくつかの実施形態において、第1の気相前駆物質は1,6-ジアミノヘキサン(DAH)を含む。いくつかの実施形態において、第2の気相前駆物質は二無水物を含む。いくつかの実施形態において、第2の気相前駆物質はピロメリト酸二無水物(PMDA)を含む。いくつかの実施形態において、プロセスは基板にエッチングプロセスを受けさせるステップをさらに含んでもよく、このエッチングプロセスは、基板の第2の表面から実質的にすべての任意の形成した有機膜を除去し、かつ基板の第1の表面から実質的にすべての形成した有機膜を除去しない。いくつかの実施形態において、エッチングマスクは階調反転プロセスにおいて用いられる。いくつかの実施形態において、エッチングマスクはブロックマスクプロセスにおいて用いるためのブロックマスクを含む。
【0017】
いくつかの局面に従うと、第1の表面と第2の表面とを含む基板の第1の表面上に浸透膜を形成するためのプロセスが提供される。いくつかの実施形態において、プロセスは、第1の気相前駆物質に基板を接触させるステップと、第2の気相前駆物質に基板を接触させるステップとを含む選択的堆積プロセスを行うステップを含み、第1および第2の気相前駆物質に基板を接触させるステップは、第2の表面よりも第1の表面上に有機薄膜を選択的に形成する。選択的に形成された有機膜に浸透プロセスを受けさせて、選択的に形成された有機膜に金属を取り込ませることによって、浸透膜を形成する。
【0018】
いくつかの実施形態において、選択的堆積プロセスの接触させるステップは堆積サイクルを含み、選択的堆積プロセスは1つまたはそれ以上の堆積サイクルを含む。いくつかの実施形態において、金属性材料は金属、金属合金、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、および/またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、浸透プロセスは、選択的に形成した有機膜を、金属を含む第1の反応体および第2の反応体に交互に逐次露出させるステップを含む。いくつかの実施形態において、選択的に形成した有機膜には酸化アルミニウム(Al2O3)が取り込まれる。いくつかの実施形態において、選択的に形成した有機膜には酸化アルミニウム(Al2O3)が取り込まれ、第1の反応体はトリメチルアルミニウム(TMA:trimethylaluminum)を含み、第2の反応体はH2Oを含む。いくつかの実施形態において、選択的に形成した有機膜には二酸化チタン(TiO2)が取り込まれる。いくつかの実施形態において、プロセスは、選択的に形成した有機膜から炭素を除去するアッシングプロセスを、選択的に形成した有機膜に受けさせるステップをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、アッシングプロセスは、選択的に形成した有機膜を酸素原子、酸素ラジカル、酸素プラズマ、またはそれらの組み合わせに露出させるステップを含む。いくつかの実施形態において、浸透膜は、浸透プロセスを受けていない同じ膜と比べてHFエッチングに対する抵抗性が増加している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】有機膜を選択的に堆積させるためのプロセスを一般的に示すフロー図である。
【
図2】有機膜を選択的に堆積させるための原子層堆積(ALD)プロセスを一般的に示すフロー図である。
【
図3】第2の誘電体表面よりも基板の第1の金属性表面上に有機膜を選択的に堆積させるためのプロセスを一般的に示すフロー図である。
【
図4】有機膜に無機材料(inorganic material)を浸透させるためのプロセスを一般的に示すフロー図である。
【
図5】膜から炭素を低減または排除するためのアッシングプロセスを含む、有機膜に無機材料を浸透させるためのプロセスを一般的に示すフロー図である。
【
図6】第2の誘電体表面よりも基板の第1の表面上に選択的に堆積された有機膜を用いて基板上にフィーチャを形成するための例示的階調反転プロセスを一般的に示す、一連の概略的断面図である。
【
図7】
図7Aは、第2の誘電体表面よりも基板の第1の表面上に有機膜を選択的に堆積させることによって形成されたブロックマスクを含む半導体デバイス製造プロセスを一般的に示す、一連の概略的断面図である。
図7Bは、第2の誘電体表面よりも基板の第1の表面上に有機膜を選択的に堆積させることによって形成されたブロックマスクを含む、
図7Aの半導体製造プロセスのステージを一般的に示す一連の平面図である。
【
図8】選択的に堆積したポリイミド膜の厚さを示す、一連の断面の走査型透過電子顕微鏡写真の図である。
【
図9A】1.5nmの天然酸化物表面を有する結晶シリコン基板上に堆積されたポリアミド膜の断面の走査型電子顕微鏡写真の図である。
【
図9B】同じ基板の酸化物表面よりも基板のW表面上に選択的に堆積されたポリアミド膜の断面の走査型電子顕微鏡写真の図である。
【
図10A】同じ基板の酸化ケイ素表面よりも基板のW表面上に選択的に堆積されたポリアミド薄膜の断面の走査型透過電子顕微鏡写真の図である。
【
図10B】エッチングのプロセスを受けた後の、同じ基板の酸化ケイ素表面よりも基板のW表面上に選択的に堆積されたポリアミド薄膜の断面の走査型透過電子顕微鏡写真の図である。
【
図10C】
図10BのW表面および隣接する酸化ケイ素表面の上のポリアミド薄膜の拡大図である。
【
図11A】いくつかの実施形態に従って堆積されたポリアミドサンプル膜に対する、エチレンジアミン(EDA)前駆物質接触時間(秒)の関数としての成長速度(Å/サイクル)を示すプロットの図である。
【
図11B】いくつかの実施形態に従って堆積されたポリアミドサンプル膜に対する、アジポイルクロリド(AC)前駆物質接触時間(秒)の関数としての成長速度(Å/サイクル)を示すプロットの図である。
【
図11C】いくつかの実施形態に従って堆積されたポリアミドサンプル膜に対する、前駆物質除去時間(秒)の関数としての成長速度(Å/サイクル)を示すプロットの図である。
【
図11D】いくつかの実施形態に従って堆積されたポリアミドサンプル膜に対する、堆積温度の関数としての成長速度(Å/サイクル)を示すプロットの図である。
【
図12A】いくつかの実施形態に従って71℃にて堆積されたポリアミド膜に対する、エリプソメーター(ellipsometer)による厚さのマップを示す図である。
【
図12B】いくつかの実施形態に従って50℃にて堆積されたポリアミド膜に対する、エリプソメーターによる厚さのマップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示のいくつかの局面に従うと、第2の表面よりも第1の表面上に有機材料を堆積させるために、選択的堆積が用いられ得る。2つの表面は異なる材料特性を有し得る。いくつかの実施形態において、有機材料は、基板の第2の誘電体表面よりも基板の第1の伝導性(例、金属または金属性)表面上に選択的に堆積される。いくつかの実施形態において、第2の表面は-OH基を含み、たとえば酸化ケイ素ベースの表面などである。いくつかの実施形態において、第2の表面は付加的に-H終端を含んでもよく、たとえばHF浸漬されたSiまたはHF浸漬されたGe表面などであってもよい。こうした実施形態において、目的の表面は-H終端と、-H終端の下の材料との両方を含むと考えられる。いくつかの実施形態において、たとえばポリアミドまたはポリイミドなどの有機材料は、第2の異なる誘電体表面よりも基板の第1の誘電体表面上に選択的に堆積される。いくつかのこうした実施形態において、誘電体は異なる組成を有する(例、シリコン、窒化ケイ素、炭素、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化ゲルマニウム)。他のこうした実施形態において、誘電体は同じ基本組成を有する(例、酸化ケイ素ベースの層)が、形成の態様によって異なる材料特性を有してもよい(例、熱酸化物、天然酸化物、堆積酸化物)。いくつかの実施形態においては、蒸着法が用いられる。いくつかの実施形態においては、周期的蒸着が用いられ、たとえば周期的CVDまたは原子層堆積(ALD)プロセスが用いられる。有機材料の選択的堆積が完了した後、所望の構造を形成するためにさらなる処理が行われ得る。有利には、より少ない有機層を受取るための表面上のパシベーション/ブロッキング剤を伴わずに、および/またはより多くの有機層を受取るための表面上の触媒剤を伴わずに、選択性が達成され得る。
【0021】
一方の表面は金属を含むが、他方の表面は含まない実施形態に対して、別様に示されない限り、本明細書においてある表面が金属表面と呼ばれるとき、それは金属表面または金属性表面であってもよい。いくつかの実施形態において、金属または金属性表面は金属、金属酸化物、および/またはそれらの混合物を含んでもよい。いくつかの実施形態において、金属または金属性表面は、表面酸化を含んでもよい。いくつかの実施形態において、金属または金属性表面の金属または金属性材料は、表面酸化を伴っても伴わなくても、電気伝導性である。いくつかの実施形態において、金属または金属性表面は、1つまたはそれ以上の遷移金属を含む。いくつかの実施形態において、金属または金属性表面はアルミニウムを含む。いくつかの実施形態において、金属または金属性表面はAl、Cu、Co、Ni、W、Nb、Feのうちの1つまたはそれ以上を含む。いくつかの実施形態において、金属性表面は窒化チタンを含む。いくつかの実施形態において、金属または金属性表面は1つまたはそれ以上の貴金属、たとえばRuなどを含む。いくつかの実施形態において、金属または金属性表面は伝導性金属酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物、またはそれらの組み合わせを含む。たとえば、金属または金属性表面はRuOx、NbCx、NbBx、NiOx、CoOx、NbOx、WNCx、TaN、またはTiNのうちの1つまたはそれ以上を含んでもよい。
【0022】
いくつかの実施形態において、金属または金属性表面はZn、Fe、Mn、またはMoを含んでもよい。いくつかの実施形態において、金属または金属性表面は、本明細書に記載される選択的堆積プロセスにおいて使用される第1または第2の前駆物質を受容できるか、またはそれと協調できる任意の表面であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、有機材料は、他の表面よりも金属酸化物表面上に選択的に堆積される。金属酸化物表面は、たとえばWOx、HfOx、TiOx、AlOx、またはZrOx表面などであってもよい。いくつかの実施形態において、金属酸化物表面は、金属性材料の酸化された表面である。いくつかの実施形態において、金属酸化物表面は、たとえばO3、H2O、H2O2、O2、酸素原子、プラズマ、もしくはラジカル、またはそれらの混合物を含む化合物などの酸素化合物を用いて金属性材料の少なくとも表面を酸化することによって作製される。いくつかの実施形態において、金属酸化物表面は、金属性材料の上に形成された天然酸化物である。
【0024】
いくつかの実施形態において、第1の表面は、たとえば不動態化Cu表面などの不動態化金属表面を含んでもよい。すなわち、いくつかの実施形態において、第1の表面は、たとえばベンゾトリアゾール(BTA:benzotriazole)層などの有機パッシベーション層などのパッシベーション層を含む金属表面を含んでもよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、有機材料は、第2のSiO2表面よりも第1の誘電体表面上に選択的に堆積される。いくつかの実施形態において、有機材料は、第2のSiまたはGe表面、たとえばHF浸漬されたSiまたはHF浸漬されたGe表面などよりも第1の誘電体表面上に選択的に堆積される。
【0026】
いくつかの実施形態において、有機材料は、基板の第2の誘電体表面よりも基板の第1の金属または金属性表面上に選択的に堆積される。いくつかの実施形態において、選択的に堆積される有機材料はポリアミド、ポリイミド、またはその他のポリマー材料である。本明細書の記載において、誘電体という用語は、他方の表面、すなわち金属または金属性表面の区別を簡単にするために用いられる。すべての非伝導性表面が誘電体表面ではないことが、当業者には理解されるであろう。たとえば、金属または金属性表面は、電気的に非伝導性であるか、または非常に高い抵抗率を有する酸化金属表面を含んでもよい。本明細書において教示される選択的堆積プロセスは、隣接する誘電体表面上への最小限の堆積を伴いながら、こうした非伝導性金属性表面上に堆積を行い得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、有機材料は、第2のSiO2表面よりも基板の第1の金属酸化物表面上に選択的に堆積される。いくつかの実施形態において、第1の金属酸化物表面は、たとえばWOx、HfOx、TiOx、AlOx、またはZrOx表面などであってもよい。いくつかの実施形態において、有機材料は、第2のSiO2表面よりも第1の誘電体表面上に堆積される。いくつかの実施形態において、第2のSiO2表面は、たとえば天然酸化物、熱酸化物、または化学的酸化物などであってもよい。いくつかの実施形態において、有機材料は、第2のSiまたはGe表面、たとえばHF浸漬されたSiまたはHF浸漬されたGe表面などよりも第1の金属酸化物表面上に選択的に堆積される。
【0028】
いくつかの実施形態において、第1の金属または金属性表面と、第2の誘電体表面とを含む基板が提供される。いくつかの実施形態において、第1の金属酸化物表面を含む基板が提供される。いくつかの実施形態において、第2の表面は-OH基を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第2の表面はSiO2ベースの表面であってもよい。いくつかの実施形態において、第2の表面はSi-O結合を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第2の表面はSiO2ベースの低誘電率(low-k)材料を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第2の表面は約30%より多いか、または約50%より多いSiO2を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第2の表面はGeO2を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第2の表面はGe-O結合を含んでもよい。いくつかの実施形態において、有機材料は、第2のSiまたはGe表面、たとえばHF浸漬されたSiまたはHF浸漬されたGe表面などよりも第1の金属または金属性表面上に選択的に堆積される。
【0029】
特定の実施形態において、第1の表面は二酸化ケイ素表面を含んでもよく、第2の誘電体表面は第2の異なる二酸化ケイ素表面を含んでもよい。たとえばいくつかの実施形態において、第1の表面は自然に、または化学的に成長した二酸化ケイ素表面を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第2の表面は熱的に成長した二酸化ケイ素表面を含んでもよい。他の実施形態において、第1または第2の表面は、堆積された酸化ケイ素層に置き換えられてもよい。したがっていくつかの実施形態において、有機材料は、異なる技術によって形成されたために異なる材料特性を有する第2の二酸化ケイ素表面よりも、基板の第1の二酸化ケイ素表面上に選択的に堆積されてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、基板は、選択的堆積プロセスの前または初めに前処理または洗浄されてもよい。いくつかの実施形態において、基板は、選択的堆積プロセスの前または初めにプラズマ洗浄プロセスを受けてもよい。いくつかの実施形態において、プラズマ洗浄プロセスはイオン衝撃を含まなくてもよいし、比較的少量のイオン衝撃を含んでもよい。たとえばいくつかの実施形態において、基板表面は、選択的堆積プロセスの前または初めにプラズマ、ラジカル、励起種、および/または原子種に露出されてもよい。いくつかの実施形態において、基板表面は、選択的堆積プロセスの前または初めに水素プラズマ、ラジカル、または原子種に露出されてもよい。いくつかの実施形態において、前処理または洗浄プロセスは選択的堆積プロセスと同じ反応チャンバ内で行われてもよいが、いくつかの実施形態において、前処理または洗浄プロセスは別個の反応チャンバ内で行われてもよい。
【0031】
本明細書において「約」という用語は、標準的測定精度内を意味するために使用される。
【0032】
本明細書に記載される方法を用いた選択的堆積は、有利には、第2の誘電体表面への堆積を妨げるための処理なしに、および/または第1の表面(金属性であっても異なる誘電体表面であっても)の堆積を促進する(catalyze)ための処理なしに達成され得る。その結果、いくつかの実施形態において、第2の誘電体表面は、たとえば本明細書に記載される堆積プロセスの化学物質に第2の誘電体表面の実際の頂面が露出されるのを防ぐ自己組織化単分子層(SAM:self-assembled monolayer)などのパッシベーションまたはブロッキング層を含まない。よっていくつかの実施形態においては、ブロッキングまたは触媒剤がなく、第1および第2の表面の両方が堆積反応体に直接露出されるにもかかわらず、選択性が達成される。
【0033】
気相堆積技術は、たとえばポリイミド膜、ポリアミド膜、ポリ尿素膜、ポリウレタン膜、およびポリチオフェン膜などの有機膜およびポリマーに適用され得る。ポリマー膜のCVDは、液体前駆物質の適用に比べてより大きい厚さ制御、機械的柔軟性、コンフォーマル被覆、および生体適合性を生じ得る。ポリマーの逐次堆積処理は、小さい研究スケールのリアクタにおいて高い成長速度を生じ得る。CVDと同様に、逐次堆積プロセスはより大きい厚さ制御、機械的柔軟性、およびコンフォーマリティを生じ得る。本明細書において「逐次堆積」および「周期的堆積」という用語は、反応機構がALD、CVD、MLD、またはそれらのハイブリッドに似ているかどうかにかかわらず、基板が交互または逐次的に異なる前駆物質に露出されるようなプロセスに適用するために使用される。
【0034】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるプロセスはバッチプロセスであってもよく、すなわちそのプロセスが2つまたはそれ以上の基板に対して同時に行われてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるプロセスは2つもしくはそれ以上、5つもしくはそれ以上、10もしくはそれ以上、25もしくはそれ以上、50もしくはそれ以上、または100もしくはそれ以上の基板に対して同時に行われてもよい。いくつかの実施形態において、基板はたとえば半導体またはシリコンウェハなどのウェハを含んでもよい。いくつかの実施形態において、基板は100mmもしくはそれ以上、200mmもしくはそれ以上、または300mmもしくはそれ以上の直径を有してもよい。場合によっては、450mmまたはそれ以上の直径を有する基板が望ましくてもよい。
【0035】
選択性
選択性は、[(第1の表面上の堆積)-(第2の表面上の堆積)]/(第1の表面上の堆積)によって算出されるパーセンテージとして与えられ得る。堆積はさまざまなやり方のいずれかで測定され得る。いくつかの実施形態において、堆積は堆積材料の測定された厚さとして与えられてもよい。いくつかの実施形態において、堆積は堆積された材料の測定された量として与えられてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態において、選択性は約10%より大きく、約50%より大きく、約75%より大きく、約85%より大きく、約90%より大きく、約93%より大きく、約95%より大きく、約98%より大きく、約99%より大きく、または約99.5%よりも大きい。本明細書に記載される実施形態において、堆積の期間または厚さによって選択性が変化し得る。驚くべきことに、本明細書に記載される気相ポリマー膜堆積に対する堆積の期間とともに選択性が増加することが見出された。これに対し、異なる表面上の特異的な核生成に基づく典型的な選択的堆積は、堆積の期間または厚さが大きくなるとともに選択性が減少する傾向がある。
【0037】
いくつかの実施形態において、堆積は第1の表面上のみで起こり、第2の表面上では起こらない。いくつかの実施形態において、基板の第2の表面に対する基板の第1の表面上の堆積は少なくとも約80%選択的であり、これはいくつかの特定の適用に対しては十分に選択的であり得る。いくつかの実施形態において、基板の第2の表面に対する基板の第1の表面上の堆積は少なくとも約50%選択的であり、これはいくつかの特定の適用に対しては十分に選択的であり得る。いくつかの実施形態において、基板の第2の表面に対する基板の第1の表面上の堆積は少なくとも約10%選択的であり、これはいくつかの特定の適用に対しては十分に選択的であり得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、基板の第1の表面上に堆積される有機膜は約50nm未満、約20nm未満、約10nm未満、約5nm未満、約3nm未満、約2nm未満、または約1nm未満の厚さを有してもよく、基板の第1の表面上に堆積される材料の、基板の第2の表面に対する比率は約2:1以上、約20:1以上、約15:1以上、約10:1以上、約5:1以上、約3:1以上、または約2:1以上であってもよい。
【0039】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される選択的堆積プロセスの選択性は、基板の第1および/または第2の表面を構成する材料に依存し得る。たとえば、第1の表面がBTA不動態化Cu表面を含み、第2の表面が天然または化学的二酸化ケイ素表面を含むようないくつかの実施形態において、選択性は約8:1より高いか、または約15:1よりも高くてもよい。第1の表面が金属または金属酸化物を含み、第2の表面が天然または化学的二酸化ケイ素表面を含むようないくつかの実施形態において、選択性は約5:1より高いか、または約10:1よりも高くてもよい。第1の表面が化学的または天然二酸化ケイ素表面を含み、第2の表面が熱的二酸化ケイ素表面を含むようないくつかの実施形態において、選択性は約5:1より高いか、または約10:1よりも高くてもよい。第1の表面が天然または化学的二酸化ケイ素を含み、第2の表面がSi-H終端を含むたとえばHF浸漬されたSi表面などであるようないくつかの実施形態において、選択性は約5:1より高いか、または約10:1よりも高くてもよい。第1の表面がSi-H終端を含むたとえばHF浸漬されたSi表面などであり、第2の表面が熱的二酸化ケイ素を含むようないくつかの実施形態において、選択性は約5:1より高いか、または約10:1よりも高くてもよい。
【0040】
選択的堆積
本明細書に教示される堆積プロセスは、高い成長速度およびスループットを達成でき、かつ高品質の有機薄膜を生成できる。
【0041】
いくつかの実施形態において、第1の表面と第2の表面とを含む基板が提供される。第1および第2の表面は、異なる材料特性を有してもよい。いくつかの実施形態において、第1の表面は金属性表面であってもよく、第2の表面は誘電体表面であってもよい。いくつかの実施形態において、第1の有機反応体が気化されて第1の反応体蒸気を形成する。気化される反応体は、標準的な温度および圧力の条件下(室温および大気圧)では液体または固体であってもよい。いくつかの実施形態において、気化される反応体はたとえばアミン、例としてジアミン、たとえば1,6-ジアミノヘキサン(DAH)などの有機前駆物質、またはたとえば二無水物、例としてピロメリト酸二無水物(PMDA)などの別の有機前駆物質を含む。次いで、基板が第1の反応体蒸気に露出されて、有機膜が堆積される。この方法は付加的なステップを含んでもよいし、繰り返されてもよいが、例示される順序で行われる必要はなく、繰り返されるときには各繰り返しにおいて同じ順序で行われる必要もなく、より複雑な蒸着技術にも容易に広げられ得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、有機膜はポリマーを含む。いくつかの実施形態において、堆積されるポリマーはポリイミドである。いくつかの実施形態において、堆積されるポリマーはポリアミドである。堆積されるポリマーのその他の例は、二量体、三量体、ポリウレタン、ポリチオ尿素、ポリエステル、ポリイミン、その他のポリマー形状、または上記材料の混合物を含む。
【0043】
本明細書に教示される技術は、多様なリアクタ構成において、CVD、VPD、ALD、およびMLDを含む蒸着技術に適用され得る。
【0044】
図1を参照すると、いくつかの実施形態において、ブロック11において第1の表面と第2の表面とを含む基板が提供される。第1および第2の表面は異なる材料特性を有してもよい。いくつかの実施形態において、第1の表面はたとえば金属または金属性表面などの伝導性表面であってもよく、第2の表面は誘電体表面であってもよい。いくつかの実施形態において、第1の表面は誘電体表面であってもよく、第2の表面は第2の異なる誘電体表面であってもよい。いくつかの実施形態において、第1および第2の表面は同じ基本組成を有し得るが、形成の態様が異なることによって異なる材料特性を有してもよい(例、熱酸化物、堆積酸化物、天然酸化物)。
【0045】
いくつかの実施形態において、第1の温度にて第1の前駆物質が気化されて第1の気相前駆物質を形成してもよい。いくつかの実施形態において、第1の前駆物質蒸気は、第2の温度にてガスラインを通じて基板に輸送される。いくつかの実施形態において、第2の輸送温度は第1の気化温度よりも高い。いくつかの実施形態において、ブロック12において、基板は第1の露出期間だけ第1の気相前駆物質または反応体と接触する。いくつかの実施形態において、基板は第1の温度よりも高い第3の温度にて第1の気相前駆物質と接触してもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、第1の前駆物質露出期間は約0.01秒から約60秒、約0.05秒から約30秒、約0.1秒から約10秒、または約0.2秒から約5秒である。最適な露出期間は、特定の状況に基づいて当業者によって容易に決定され得る。バッチリアクタが用いられ得るいくつかの実施形態においては、60秒より長い露出期間が用いられてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、ブロック13において、基板は第2の露出期間だけ第2の気相前駆物質または反応体と接触する。いくつかの実施形態において、第2の前駆物質は第4の温度にて気化されて第2の気相前駆物質を形成してもよい。いくつかの実施形態において、第2の反応体蒸気は、第2の温度にてガスラインを通じて基板に輸送される。いくつかの実施形態において、第5の輸送温度は第1の気化温度よりも高い。いくつかの実施形態において、基板は第4の温度よりも高い第6の温度にて第2の気相前駆物質と接触してもよい。いくつかの実施形態において、第6の温度は、第1の気相前駆物質が基板に接触するときの第3の温度と実質的に同じであってもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、第2の前駆物質露出期間は約0.01秒から約60秒、約0.05秒から約30秒、約0.1秒から約10秒、または約0.2秒から約5秒である。最適な露出期間は、特定の状況に基づいて当業者によって容易に決定され得る。バッチリアクタが用いられ得るいくつかの実施形態においては、60秒より長い露出期間が用いられてもよい。
【0049】
ブロック14において、第2の表面よりも第1の表面上に有機膜が選択的に堆積される。有機膜の選択的堆積は、別個の動作ではなく上述の接触動作12~13の結果であることを、当業者は認識するだろう。いくつかの実施形態において、上述の接触動作すなわちブロック12~13は、堆積サイクルと考えられてもよい。いくつかの実施形態において、所望の厚さの有機膜が選択的に堆積されるまで、堆積サイクルが繰り返されてもよい。こうした選択的堆積サイクルは、基板上に十分な厚さの膜が残されて(ブロック15)堆積が終了される(ブロック16)まで繰り返されてもよい。選択的堆積サイクルは、同じ順序でなくても、各繰り返しにおいて同様に行われなくてもよい付加的な動作を含んでもよく、より複雑な蒸着技術に容易に広げられ得る。たとえば、選択的堆積サイクルは、たとえば各サイクルまたは選択されたサイクルにおける付加的な反応体の(基板に対する)供給および除去などの、付加的な反応体供給プロセスを含んでもよい。図示されていないが、このプロセスはポリマーを形成するために堆積膜を処理するステップ(たとえばUV処理、アニーリングなど)を付加的に含んでもよい。
【0050】
図2を参照すると、いくつかの実施形態において、ブロック21において第1の表面と第2の表面とを含む基板が提供される。第1および第2の表面は異なる材料特性を有してもよい。いくつかの実施形態において、第1の表面はたとえば金属または金属性表面などの伝導性表面であってもよく、第2の表面は誘電体表面であってもよい。いくつかの実施形態において、第1の表面は誘電体表面であってもよく、第2の表面は第2の異なる誘電体表面であってもよい。いくつかの実施形態において、第1および第2の表面は同じ基本組成を有し得るが、形成の態様が異なることによって異なる材料特性を有してもよい(例、熱酸化物、堆積酸化物、天然酸化物)。
【0051】
いくつかの実施形態において、有機膜の選択的蒸着のための逐次堆積法は、ブロック22において、第1の温度にて第1の有機前駆物質を気化して第1の前駆物質蒸気を形成するステップを含む。いくつかの実施形態において、第1の前駆物質蒸気は、第2の温度にてガスラインを通じて基板に輸送される。いくつかの実施形態において、第2の輸送温度は第1の気化温度よりも高い。いくつかの実施形態において、ブロック23において、基板は第1の露出期間だけ気相の第1の前駆物質と接触する。いくつかの実施形態において、第1の前駆物質またはその種は、自己飽和または自己制限する態様で基板上に化学的に吸着する。ガスラインは、第1の前駆物質蒸気を供給源から基板に輸送する任意のコンジット(conduit)であってもよい。いくつかの実施形態において、基板は第1の温度よりも高い第3の温度にて第1の前駆物質蒸気に露出されてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、第1の前駆物質露出期間は約0.01秒から約60秒、約0.05秒から約30秒、約0.1秒から約10秒、または約0.2秒から約5秒である。最適な露出期間は、特定の状況に基づいて当業者によって容易に決定され得る。バッチリアクタが用いられ得るいくつかの実施形態においては、60秒より長い露出期間が用いられてもよい。
【0053】
次いでブロック24において、過剰量の第1の前駆物質蒸気(および任意の揮発性反応副生成物)が基板との接触から除去されてもよい。こうした除去は、たとえばパージング、ポンプダウン、基板を第1の反応物質に露出させていたチャンバまたはゾーンから移動させること、またはそれらの組み合わせなどによって達成され得る。いくつかの実施形態において、第1の前駆物質除去期間、たとえばパージ期間は約0.01秒から約60秒、約0.05秒から約30秒、約0.1秒から約10秒、または約0.2秒から約5秒である。最適な除去期間は、特定の状況に基づいて当業者によって容易に決定され得る。バッチリアクタが用いられ得るいくつかの実施形態においては、60秒より長い除去期間が用いられてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態において、ブロック25において、第2の前駆物質は第4の温度にて気化されて第2の気相前駆物質を形成してもよい。いくつかの実施形態において、第2の反応体蒸気は、第2の温度にてガスラインを通じて基板に輸送される。いくつかの実施形態において、第5の輸送温度は第1の気化温度よりも高い。いくつかの実施形態において、基板は第4の温度よりも高い第6の温度にて第2の気相前駆物質と接触してもよい。いくつかの実施形態において、第6の温度は、第1の気相前駆物質が基板に接触するときの第3の温度と実質的に同じであってもよい。いくつかの実施形態において、ブロック26において、基板は第2の露出期間だけ第2の前駆物質蒸気に露出されてもよい。いくつかの実施形態において、第2の反応体は基板上の第1の反応体の吸着した種と反応してもよい。
【0055】
いくつかの実施形態において、第1の前駆物質露出期間は約0.01秒から約60秒、約0.05秒から約30秒、約0.1秒から約10秒、または約0.2秒から約5秒である。最適な露出期間は、特定の状況に基づいて当業者によって容易に決定され得る。バッチリアクタが用いられ得るいくつかの実施形態においては、60秒より長い露出期間が用いられてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態においては、第1の反応体蒸気と第2の反応体蒸気とが混合しないように、ブロック27において、過剰量の第2の前駆物質蒸気(および任意の揮発性反応副生成物)が基板との接触から除去される。いくつかの実施形態において、有機膜の蒸着プロセスはプラズマおよび/またはラジカルを使用せず、熱蒸着プロセスとみなされ得る。いくつかの実施形態において、第2の前駆物質除去期間、たとえばパージ期間は約0.01秒から約60秒、約0.05秒から約30秒、約0.1秒から約10秒、または約0.2秒から約5秒である。最適な除去期間は、特定の状況に基づいて当業者によって容易に決定され得る。バッチリアクタが用いられ得るいくつかの実施形態においては、60秒より長い除去期間が用いられてもよい。
【0057】
ブロック28において、第2の表面よりも第1の表面上に有機膜が選択的に堆積される。有機膜の選択的堆積は、別個の動作ではなく上述の接触動作の結果であることを、当業者は認識するだろう。いくつかの実施形態において、上述の接触および除去(および/または供給停止)動作すなわちブロック23~27は、堆積サイクルと考えられてもよい。いくつかの実施形態において、所望の厚さの有機膜が選択的に堆積されるまで、堆積サイクルが繰り返されてもよい。こうした選択的堆積サイクルは、基板上に十分な厚さの膜が残されて堆積が終了される(ブロック30)まで繰り返されてもよい(ブロック29)。選択的堆積サイクルは、同じ順序でなくても、各繰り返しにおいて同様に行われなくてもよい付加的な動作を含んでもよく、より複雑な蒸着技術に容易に広げられ得る。たとえば、選択的堆積サイクルは、たとえば各サイクルまたは選択されたサイクルにおける付加的な反応体の供給および除去などの、付加的な反応体供給プロセスを含んでもよい。図示されていないが、このプロセスはポリマーを形成するために堆積膜を処理するステップ(たとえばUV処理、アニーリングなど)を付加的に含んでもよい。
【0058】
図3を参照すると、いくつかの実施形態において、ブロック31において第1の金属または金属性表面と第2の誘電体表面とを含む基板が提供される。いくつかの実施形態において、金属または金属性表面は金属、金属酸化物、および/またはそれらの混合物を含んでもよい。いくつかの実施形態において、金属または金属性表面は表面酸化を含んでもよい。いくつかの実施形態において、金属または金属性表面の、金属または金属性材料は、表面酸化を伴っても伴わなくても、電気伝導性である。いくつかの実施形態において、第1の表面は、たとえば不動態化Cu表面などの不動態化金属表面を含んでもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、第2の誘電体表面は酸化ケイ素を含んでもよい。本明細書において、誘電体という用語は、他方の表面、すなわち金属または金属性表面の区別を簡単にするために用いられる。特定の実施形態に関して別様に示されない限り、この出願の状況における誘電体という用語は、電気的に非伝導性であるか、または非常に高い抵抗率を有するすべての表面を包含するものと理解され得る。いくつかの実施形態において、第2の表面は-OH基を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第2の表面はSiO2ベースの表面であってもよい。いくつかの実施形態において、第2の表面はSi-O結合を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第2の表面はSiO2ベースの低誘電率材料を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第2の表面は約30%より多いか、または約50%より多いSiO2を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第2の表面はGeO2を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第2の表面はGe-OまたはGe-OH結合を含んでもよい。
【0060】
いくつかの実施形態において、第1の温度にて第1の前駆物質が気化されて第1の気相前駆物質を形成してもよい。いくつかの実施形態において、第1の前駆物質蒸気は、第2の温度にてガスラインを通じて基板に輸送される。いくつかの実施形態において、第2の輸送温度は第1の気化温度よりも高い。いくつかの実施形態において、ブロック32において、基板は第1の露出期間だけ第1の気相前駆物質または反応体と接触する。いくつかの実施形態において、基板は第1の温度よりも高い第3の温度にて第1の気相前駆物質と接触してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態において、第1の前駆物質露出期間は約0.01秒から約60秒、約0.05秒から約30秒、約0.1秒から約10秒、または約0.2秒から約5秒である。最適な露出期間は、特定の状況に基づいて当業者によって容易に決定され得る。バッチリアクタが用いられ得るいくつかの実施形態においては、60秒より長い露出期間が用いられてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態において、ブロック33において、基板は第2の露出期間だけ第2の気相前駆物質または反応体と接触する。いくつかの実施形態において、第2の前駆物質は第4の温度にて気化されて第2の気相前駆物質を形成してもよい。いくつかの実施形態において、第2の反応体蒸気は、第2の温度にてガスラインを通じて基板に輸送される。いくつかの実施形態において、第5の輸送温度は第1の気化温度よりも高い。いくつかの実施形態において、基板は第4の温度よりも高い第6の温度にて第2の気相前駆物質と接触してもよい。いくつかの実施形態において、第6の温度は、第1の気相前駆物質が基板に接触するときの第3の温度と実質的に同じであってもよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、第2の前駆物質露出期間は約0.01秒から約60秒、約0.05秒から約30秒、約0.1秒から約10秒、または約0.2秒から約5秒である。最適な露出期間は、特定の状況に基づいて当業者によって容易に決定され得る。バッチリアクタが用いられ得るいくつかの実施形態においては、60秒より長い露出期間が用いられてもよい。
【0064】
ブロック34において、第2の誘電体表面よりも第1の金属性表面上に有機膜が選択的に堆積される。有機膜の選択的堆積は、別個の動作ではなく上述の接触動作の結果であることを、当業者は認識するだろう。いくつかの実施形態において、上述の接触動作すなわちブロック32~33は、堆積サイクルと考えられてもよい。いくつかの実施形態において、第2の誘電体表面よりも基板の第1の金属性表面上に所望の厚さの有機膜が選択的に堆積されるまで、堆積サイクルが繰り返されてもよい。こうした選択的堆積サイクルは、基板の第1の金属性表面上に十分な厚さの膜が残されて(ブロック35)堆積が終了される(ブロック36)まで繰り返されてもよい。選択的堆積サイクルは、同じ順序でなくても、各繰り返しにおいて同様に行われなくてもよい付加的な動作を含んでもよく、より複雑な蒸着技術に容易に広げられ得る。たとえば、選択的堆積サイクルは、たとえば各サイクルまたは選択されたサイクルにおける付加的な反応体の供給および除去などの、付加的な反応体供給プロセスを含んでもよい。図示されていないが、このプロセスはポリマーを形成するために堆積膜を処理するステップ(たとえばUV処理、アニーリングなど)を付加的に含んでもよい。
【0065】
上述のプロセスに対して、さまざまな反応体が用いられ得る。たとえばいくつかの実施形態において、第1の前駆物質または反応体は有機反応体、たとえばジアミン、たとえば1,6-ジアミノヘキサン(DAH)などであるか、2つの反応性基を有する任意のその他のモノマーである。
【0066】
いくつかの実施形態において、第2の反応体または前駆物質も、堆積条件下で第1の反応体の吸着種と反応できる有機反応体である。たとえば、第2の反応体は無水物、たとえばフラン-2,5-ジオン(マレイン酸無水物)などであるか、もしくはより特定的には二無水物、たとえばピロメリト酸二無水物(PMDA)などであるか、または第1の反応体と反応する2つの反応性基を有する任意のその他のモノマーであってもよい。
【0067】
いくつかの実施形態において、基板は、第2の前駆物質と接触する前に第1の前駆物質と接触する。よっていくつかの実施形態において、基板は別の前駆物質と接触する前に、アミン、たとえばジアミン、たとえば1,6-ジアミノヘキサン(DAH)などと接触する。しかしいくつかの実施形態において、基板は、第1の前駆物質と接触する前に第2の前駆物質と接触してもよい。よっていくつかの実施形態において、基板は別の前駆物質と接触する前に、無水物、たとえばフラン-2,5-ジオン(マレイン酸無水物)など、またはより特定的には二無水物、たとえばピロメリト酸二無水物(PMDA)などと接触する。
【0068】
上述のプロセスは、第1の気相前駆物質に基板を接触させるステップによって開始するが、他の実施形態において、プロセスは第2の気相前駆物質に基板を接触させるステップによって開始してもよい。本明細書に記載されるプロセスにおいて、基板を第1の前駆物質および第2の前駆物質と接触させることは交換可能であることを当業者は理解するだろう。
【0069】
いくつかの実施形態において、膜特性を調整するために異なる反応体が用いられてもよい。たとえば、より高い芳香族性および増加したドライエッチング抵抗性を有するより剛性の高い構造を得るために、1,6-ジアミノヘキサンの代わりに4,4’-オキシジアニリンまたは1,4-ジアミノベンゼンを用いてポリイミド膜を堆積させてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、反応体は金属原子を含有しない。いくつかの実施形態において、反応体は半金属原子を含有しない。いくつかの実施形態において、反応体の1つは金属または半金属原子を含む。いくつかの実施形態において、反応体は炭素および水素と、次の元素のうちの1つまたはそれ以上とを含有する。N、O、S、P、またはハロゲン、たとえばClもしくはFなど。いくつかの実施形態において、第1の反応体はたとえばアジポイルクロリド(AC)などを含んでもよい。
【0071】
堆積条件は、選択された反応体によって異なっていてもよく、選択の際に最適化され得る。いくつかの実施形態において、反応温度は約80℃から約250℃の範囲から選択され得る。いくつかの実施形態において、たとえば選択的に堆積される有機膜がポリイミドを含むとき、反応温度は約170℃から約210℃の範囲から選択され得る。いくつかの実施形態において、たとえば選択的に堆積される有機膜がポリアミドを含むとき、反応温度は約80℃から約150℃の範囲から選択され得る。選択的に堆積される有機膜がポリイミドを含むいくつかの実施形態において、反応温度は約160℃、180℃、190℃、200℃、または210℃より高くてもよい。選択的に堆積される有機膜がポリアミドを含むいくつかの実施形態において、反応温度は約80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、または150℃より高くてもよい。
【0072】
いくつかの実施形態において、反応チャンバの圧力は約1mTorrから約1000Torrであってもよい。
【0073】
たとえば、単一ウェハ堆積ツールにおけるPMDAおよびDAHを用いたポリイミドの逐次堆積に対して、基板温度は約150℃から約250℃の範囲、または約170℃から約210℃から選択されてもよく、圧力は約1mTorrから約760Torrの範囲から、より特定的には約100mTorrから約100Torrの間で選択されてもよい。
【0074】
いくつかの実施形態において、選択的に堆積または形成された有機膜は金属原子を含有しない。いくつかの実施形態において、選択的に堆積または形成された有機膜は半金属原子を含有しない。いくつかの実施形態において、選択的に堆積または形成された有機膜は金属または半金属原子を含有する。いくつかの実施形態において、選択的に堆積または形成された有機膜は炭素および水素と、次の元素のうちの1つまたはそれ以上とを含有する。N、O、S、またはP。
【0075】
本明細書に記載される選択的堆積プロセスにおいて使用され得る好適なリアクタの例は、商業的に入手可能なALD機器、たとえばF-120(登録商標)リアクタ、Pulsar(登録商標)リアクタ、たとえばPulsar 3000(登録商標)またはPulsar 2000(登録商標)など、およびAdvance(登録商標)400シリーズリアクタを含み、これらはASMアメリカ社(America、Inc.)、フェニックス(Phoenix)、アリゾナ(Ariz.)およびASMヨーロッパ(Europe)B.V.、アルメレ(Almere)、オランダ(Netherlands)より入手可能である。これらのALDリアクタに加えて、CVDリアクタ、VDPリアクタ、およびMLDリアクタを含む、有機薄膜の成長が可能な多くのその他の種類のリアクタが使用され得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、好適なリアクタはバッチリアクタであってもよく、2つまたはそれ以上の基板を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、基板はたとえばウェハなどを含んでもよい。いくつかの実施形態において、好適なリアクタは2もしくはそれ以上、5もしくはそれ以上、10もしくはそれ以上、25もしくはそれ以上、50もしくはそれ以上、または100もしくはそれ以上の基板を含み得るバッチリアクタであってもよい。いくつかの実施形態において、基板はたとえば半導体またはシリコンウェハなどのウェハを含んでもよい。いくつかの実施形態において、基板は100mmもしくはそれ以上、200mmもしくはそれ以上、または300mmもしくはそれ以上の直径を有してもよい。場合によっては、450mmまたはそれ以上の直径を有する基板が望ましくてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態において、有機膜を選択的に堆積させる基板の第1の表面(例、金属性表面)は、半導体基板または集積回路ワークピース(workpiece)上の構造を含んでもよい。いくつかの実施形態において、基板の第1の表面は1つまたはそれ以上の金属ラインまたはドットを含んでもよい。たとえば、基板の第1の表面はW、Co、またはCuラインを含んでもよく、第2の表面は酸化ケイ素ベースの材料を含んでもよい。すなわちいくつかの実施形態において、基板は少なくとも第1の金属性表面の第1の部分と、第1の金属性表面の第2の部分とを含んでもよく、ここで第1の金属性表面の第1および第2の部分は、第2の誘電体表面によって基板上で分離される。
【0078】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される選択的堆積プロセスの選択性は、有機膜が選択的に堆積される第1の表面の部分の寸法またはピッチに基づいて変化し得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される選択的堆積プロセスの選択性は、第1の表面を含むフィーチャのピッチが増加するにつれて増加してもよい。本明細書においてピッチの増加とは、半導体産業において従来用いられているのと同様に、所与の寸法におけるより多数のフィーチャ、またはフィーチャ間の密度の増加およびより狭い間隔を意味するために用いられる。
【0079】
いくつかの実施形態において、選択的堆積プロセスは基板における所望の選択性を達成でき、ここで第1の表面を含むフィーチャの周期性は約1μm未満、約500nm未満、約250nm未満、または約100nm未満である。いくつかの実施形態において、第1の表面を含むフィーチャの周期性は40nm未満、または20nm未満である。本明細書において用いられる周期性とは、基板上の2つの最も近く繰り返される構造、材料、または表面の間の距離を示す。いくつかの実施形態において、選択的堆積プロセスの選択性は、たとえば前述の基板上の繰り返しパターンに対する周期性など、第1の表面を含む基板の第1の部分と第1の表面を含む基板の第2の部分との間の距離に依存してもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される選択的堆積プロセスの選択性は、第1の材料の部分間の距離が減少するにつれて増加してもよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、選択的堆積プロセスは、第1の表面の第2の部分からある距離をもって分離された第1の表面の第1の部分を含む基板において、所望の選択性を達成できる。いくつかの実施形態において、第1の表面の第1および第2の部分の間の距離が約1μm未満、約500nm未満、約250nm未満、または約100nm未満であるときに、所望の選択性が達成されてもよい。
【0081】
いくつかの実施形態において、選択的堆積プロセスの選択性は、選択的堆積プロセスにおいて行われる成長または堆積サイクル数に関係していてもよい。いくつかの実施形態において、選択的堆積プロセスに対する選択性は、堆積サイクル数とともに増加してもよい。たとえば、各プロセスにおける堆積サイクルの条件が実質的に同じであるとき、250の堆積サイクルを含む選択的堆積プロセスの選択性は、1000堆積サイクルを含む選択的堆積プロセスの選択性よりも低くてもよい。典型的な選択的蒸着プロセスは、厚さまたは堆積期間が大きくなるとともに選択性を失う傾向があるため、これは驚くべきことである。
【0082】
いくつかの実施形態において、選択的堆積プロセスにおける堆積サイクル数の増加によって、プロセスの選択性がそれに対応して増加してもよい。たとえばいくつかの実施形態においては、
図8の実施例から理解されるとおり、堆積サイクル数を2倍にすることによって、2倍の選択性の選択的堆積プロセスがもたらされてもよい。
【0083】
一般的に、本明細書に記載される選択的堆積プロセスに対する堆積または反応温度は、第1および第2の反応体の気化温度以上であるが、いくつかの他の実施形態においては、反応温度が一方または両方の反応体の気化温度よりも低くてもよい。
【0084】
前駆物質
本明細書に記載されるプロセスに従ってポリアミドまたはポリイミド膜を堆積させるために、さまざまな反応体が用いられ得る。たとえばいくつかの実施形態において、第1の前駆物質または反応体はアミン、たとえばジアミンなどである。いくつかの実施形態において、第1の反応体は、たとえば1,6-ジアミノヘキサン(DAH)などであり得る。いくつかの実施形態において、基板は第2の前駆物質と接触する前に第1の前駆物質と接触する。よっていくつかの実施形態において、基板は第2の前駆物質と接触する前に、たとえばジアミンなどのアミンと接触してもよい。
【0085】
いくつかの実施形態において、第2の反応体または前駆物質も、堆積条件下で第1の反応体の吸着種と反応できる有機反応体である。たとえばいくつかの実施形態において、第2の前駆物質または反応体はたとえば無水物、たとえばフラン-2,5-ジオン(マレイン酸無水物)などの有機反応体である。無水物は、たとえばピロメリト酸二無水物(PMDA)などの二無水物であり得る。いくつかの実施形態において、第2の反応体は、第1の反応体と反応する2つの反応性基を有する任意のその他のモノマーであってもよい。
【0086】
いくつかの実施形態において、反応体は金属原子を含有しない。いくつかの実施形態において、反応体は半金属原子を含有しない。いくつかの実施形態において、反応体の1つは金属または半金属原子を含む。いくつかの実施形態において、反応体は炭素および水素と、次の元素のうちの1つまたはそれ以上とを含有する。N、O、S、P、またはハロゲン、たとえばClもしくはFなど。いくつかの実施形態において、第1の反応体はたとえばアジポイルクロリド(AC)などを含んでもよい。
【0087】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される選択的堆積プロセスにおいて用いるための反応体は、次の一般式を有してもよい。
(1) R1(NH2)2
【0088】
ここでR1は、1~5の炭素原子、2~5の炭素原子、2~4の炭素原子、5もしくはそれ以下の炭素原子、4もしくはそれ以下の炭素原子、3もしくはそれ以下の炭素原子、または2の炭素原子を含む脂肪族炭素鎖であってもよい。いくつかの実施形態において、反応体または前駆物質における炭素原子間の結合は単結合、二重結合、三重結合、またはそれらの何らかの組み合わせであってもよい。よっていくつかの実施形態において、反応体は2つのアミノ基を含んでもよい。いくつかの実施形態において、反応体のアミノ基は、脂肪族炭素鎖の一方または両方の末端位置を占めていてもよい。しかしいくつかの実施形態において、反応体のアミノ基は、脂肪族炭素鎖のいずれの末端位置も占めていなくてもよい。いくつかの実施形態において、反応体はジアミンを含んでもよい。いくつかの実施形態において、反応体は1,2-ジアミノエタン(l)、1,3-ジアミノプロパン(l)、1,4-ジアミノブタン(l)、1,5-ジアミノペンタン(l)、1,2-ジアミノプロパン(l)、2,3-ブタンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(l)の群より選択される有機前駆物質を含んでもよい。
【0089】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される選択的堆積プロセスにおいて用いるための反応体は、次の一般式を有してもよい。
(2) R2(COCl)2
【0090】
ここでR2は、1~3の炭素原子、2~3の炭素原子、または3もしくはそれ以下の炭素原子を含む脂肪族炭素鎖であってもよい。いくつかの実施形態において、反応体または前駆物質における炭素原子間の結合は単結合、二重結合、三重結合、またはそれらの何らかの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態において、反応体は塩化物を含んでもよい。いくつかの実施形態において、反応体はジアシル塩化物を含んでもよい。いくつかの実施形態において、反応体はオキサリルクロリド(I)、マロニルクロリド、およびフマリルクロリドの群より選択される有機前駆物質を含んでもよい。
【0091】
いくつかの実施形態において、反応体は1,4-ジイソシアナトブタンまたは1,4-ジイソシアナトベンゼンの群より選択される有機前駆物質を含む。いくつかの実施形態において、反応体はテレフタロイルジクロリド、アルキルジオイルジクロリド、たとえばヘキサンジオイルジクロリド、オクタンジオイルジクロリド、ノナンジオイルジクロリド、デカンジオイルジクロリド、またはテレフタロイルジクロリドなどの群より選択される有機前駆物質を含む。いくつかの実施形態において、反応体は1,4-ジイソチオシアナトベンゼンまたはテレフタルアルデヒドの群より選択される有機前駆物質を含む。いくつかの実施形態において、気化される反応体もジアミン、たとえば1,4-ジアミノベンゼン、デカン-1,10-ジアミン、4-ニトロベンゼン-1,3-ジアミン、4,4’-オキシジアニリン、またはエチレンジアミンなどであってもよい。いくつかの実施形態において、反応体はテレフタル酸ビス(2-ヒドロキシエチル)エステルであってもよい。いくつかの実施形態において、反応体はカルボン酸、たとえばアルキル-、アルケニル-、アルカジエニル-ジカルボン酸またはトリカルボン酸、たとえばエタン二酸、プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、またはプロパン-1,2,3-トリカルボン酸などであってもよい。いくつかの実施形態において、反応体は芳香族カルボン酸またはジカルボン酸、たとえば安息香酸、ベンゼン-1,2-ジカルボン酸、ベンゼン-1,4-ジカルボン酸、またはベンゼン-1,3-ジカルボン酸などであってもよい。いくつかの実施形態において、反応体は炭化水素に結合した1つまたはそれ以上のOH基を含んでもよい。いくつかの実施形態において、反応体はジオール、トリオール、アミノフェノール、たとえば4-アミノフェノール、ベンゼン-1,4-ジオール、またはベンゼン-1,3,5-トリオールなどの群より選択されてもよい。いくつかの実施形態において、反応体は8-キノリノールであってもよい。いくつかの実施形態において、反応体はアルケニルクロロシラン、たとえばアルケニルトリクロロシラン、たとえば7-オクテニルトリクロロシランなどを含んでもよい。
【0092】
いくつかの実施形態において、反応体は約20℃の温度または室温において、約0.5Torr、0.1Torr、0.2Torr、0.5Torr、1Torr、またはそれ以上の蒸気圧を有してもよい。いくつかの実施形態において、反応体は約400℃未満、300℃未満、約250℃未満、約200℃未満、約175℃未満、約150℃未満、または約100℃未満の沸点を有してもよい。
【0093】
ポリアミド堆積
いくつかの実施形態において、本明細書に教示される堆積プロセスは、ポリアミド薄膜の堆積を含んでもよい。いくつかの実施形態において、こうした堆積プロセスは蒸着プロセスを含んでもよい。いくつかの実施形態において、こうした堆積プロセスは分子層堆積(MLD)プロセスを含んでもよい。いくつかの実施形態において、こうした堆積プロセスは選択的堆積プロセスであってもよい。しかしいくつかの実施形態において、こうした堆積プロセスは非選択的堆積プロセスであってもよい。いくつかの実施形態において、第1の有機反応体が気化されて第1の前駆物質蒸気を形成する。気化される反応体は、標準的な温度および圧力の条件下(室温および大気圧)では液体または固体であってもよい。いくつかの実施形態において、気化される第1の反応体は有機前駆物質、たとえばオルガノクロライド、たとえばアジポイルクロリド(AC)などを含む。いくつかの実施形態において、反応体はオキサリルクロリド(I)、マロニルクロリド、およびフマリルクロリドの群より選択される有機前駆物質を含んでもよい。
【0094】
いくつかの実施形態において、第1の温度にて第1の前駆物質が気化されて第1の気相前駆物質を形成してもよい。いくつかの実施形態において、第1の前駆物質蒸気は、第2の温度にてガスラインを通じて基板に輸送される。いくつかの実施形態において、第2の輸送温度は第1の気化温度よりも高い。いくつかの実施形態において、基板は第1の露出期間だけ第1の気相前駆物質または反応体と接触する。いくつかの実施形態において、基板は第1の温度よりも高い第3の温度にて第1の気相前駆物質と接触してもよい。
【0095】
いくつかの実施形態において、第1の前駆物質露出期間は約0.05秒から約5.0秒、約0.1秒から約3秒、または約0.2秒から約1.0秒である。最適な露出期間は、特定の状況に基づいて当業者によって容易に決定され得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、第2の有機反応体が気化されて第2の前駆物質蒸気を形成する。気化される反応体は、標準的な温度および圧力の条件下(室温および大気圧)では液体または固体であってもよい。いくつかの実施形態において、気化される反応体は有機前駆物質、たとえば有機アミン、たとえばエチレンジアミン(EDA)などを含む。いくつかの実施形態において、反応体は1,2-ジアミノエタン(l)、1,3-ジアミノプロパン(l)、1,4-ジアミノブタン(l)、1,5-ジアミノペンタン(l)、1,2-ジアミノプロパン(l)、2,3-ブタンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(l)の群より選択される有機前駆物質を含んでもよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、基板は第2の露出期間だけ第2の気相前駆物質または反応体と接触する。いくつかの実施形態において、第2の前駆物質は第4の温度にて気化されて第2の気相前駆物質を形成してもよい。いくつかの実施形態において、第2の反応体蒸気は、第2の温度にてガスラインを通じて基板に輸送される。いくつかの実施形態において、第5の輸送温度は第1の気化温度よりも高い。いくつかの実施形態において、基板は第4の温度よりも高い第6の温度にて第2の気相前駆物質と接触してもよい。いくつかの実施形態において、第6の温度は、第1の気相前駆物質が基板に接触するときの第3の温度と実質的に同じであってもよい。
【0098】
いくつかの実施形態において、第2の前駆物質露出期間は約0.05秒から約5.0秒、約0.1秒から約3秒、または約0.2秒から約1.0秒である。最適な露出期間は、特定の状況に基づいて当業者によって容易に決定され得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、所望の厚さのポリアミド膜が基板上に堆積される。ポリアミド膜の堆積は、別個の動作ではなく上述の接触動作の結果であることを、当業者は認識するだろう。いくつかの実施形態において、上述の接触動作は堆積サイクルと考えられてもよい。いくつかの実施形態において、所望の厚さの有機膜が選択的に堆積されるまで、堆積サイクルが繰り返されてもよい。こうした堆積サイクルは、基板上に十分な厚さの膜が残されて堆積が終了されるまで繰り返されてもよい。堆積サイクルは、同じ順序でなくても、各繰り返しにおいて同様に行われなくてもよい付加的な動作を含んでもよく、より複雑な蒸着技術に容易に広げられ得る。たとえば、堆積サイクルは、たとえば各サイクルまたは選択されたサイクルにおける付加的な反応体の(基板に対する)供給および除去などの、付加的な反応体供給プロセスを含んでもよい。図示されていないが、このプロセスはポリマーを形成するために堆積膜を処理するステップ(たとえばUV処理、アニーリングなど)を付加的に含んでもよい。
【0100】
その後の処理
いくつかの実施形態においては、たとえば本明細書に記載される選択的堆積プロセスなどの有機膜堆積プロセスの後に、さらなる処理が行われてもよい。たとえばいくつかの実施形態においては、堆積した有機膜の少なくとも一部を除去するために、基板がエッチングプロセスを受けてもよい。いくつかの実施形態において、有機膜の選択的堆積の後のエッチングプロセスは、基板の第1の表面および第2の表面の両方から堆積有機材料を除去してもよい。いくつかの実施形態において、エッチングプロセスは等方性であってもよい。
【0101】
いくつかの実施形態において、エッチングプロセスは、第1および第2の表面から同じ量または厚さの材料を除去してもよい。すなわちいくつかの実施形態において、第1の表面に堆積した有機材料のエッチング速度は、第2の表面に堆積した有機材料のエッチング速度と実質的に類似していてもよい。本明細書に記載される堆積プロセスの選択的性質により、基板の第2の表面に堆積した有機材料の量は、基板の第1の表面に堆積した材料の量よりも実質的に少ないかもしれない。したがって、エッチングプロセスは基板の第2の表面から堆積有機材料を完全に除去してもよく、一方で基板の第1の表面上には堆積有機材料が残っていてもよい。
【0102】
いくつかの実施形態において、エッチングプロセスは当該技術分野において公知のエッチングプロセス、たとえばドライエッチングプロセス、たとえばプラズマエッチングプロセスなどを含んでもよい。いくつかの実施形態において、エッチングプロセスは基板を水素原子、水素ラジカル、水素プラズマ、またはそれらの組み合わせに露出させるステップを含んでもよい。たとえばいくつかの実施形態において、エッチングプロセスは、約10Wから約5000W、約25Wから約2500W、約50Wから約500W、または約100Wから約400Wの電力を用いてH2から生成したプラズマに基板を露出させるステップを含んでもよい。いくつかの実施形態において、エッチングプロセスは、約1Wから約1000W、約10Wから約500W、約20Wから約250W、または約25Wから約100Wの電力を用いて生成したプラズマに基板を露出させるステップを含んでもよい。
【0103】
いくつかの実施形態において、エッチングプロセスは、基板をプラズマに露出させるステップを含んでもよい。いくつかの実施形態において、プラズマはたとえば酸素原子、酸素ラジカル、酸素プラズマ、またはそれらの組み合わせなどの反応性の種を含んでもよい。いくつかの実施形態において、プラズマはたとえば水素原子、水素ラジカル、水素プラズマ、またはそれらの組み合わせなどの反応性の種を含んでもよい。いくつかの実施形態において、プラズマは反応性の種に加えてたとえばArまたはHe種などの希ガス種を含んでもよい。いくつかの実施形態において、プラズマは反応性の種を有さずに希ガス種を含んでもよい。場合によっては、プラズマはたとえば窒素原子、窒素ラジカル、窒素プラズマ、またはそれらの組み合わせなどの他の種を含んでもよい。いくつかの実施形態において、エッチングプロセスは、たとえばO3などの酸素を含むエッチャントに基板を露出させるステップを含んでもよい。いくつかの実施形態において、基板は約30℃から約500℃、または約100℃から約400℃の温度にてエッチャントに露出されてもよい。いくつかの実施形態において、エッチャントは1つの連続的パルスにおいて供給されてもよいし、複数のもっと短いパルスにおいて供給されてもよい。
【0104】
当業者は、基板から所望の量の堆積有機材料を除去するための最適な露出時間、温度、および電力を容易に決定できる。
【0105】
いくつかの実施形態において、たとえば本明細書に記載される選択的に堆積した有機膜などの有機膜のさらなる処理は、有機膜に浸透プロセスを受けさせるステップを含んでもよい。いくつかの実施形態において、浸透プロセスは、有機膜にたとえば金属などの無機材料を挿入、取り込み、または注入してもよい。浸透プロセスは、有機膜に元素金属、複数の金属、金属合金、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、またはそれらの組み合わせを取り込んでもよい。いくつかの実施形態において、逐次浸透合成とも呼ばれる浸透プロセスは、第2の誘電体表面よりも基板の第1の表面上に有機膜を選択的に堆積させるために選択的堆積プロセスを用いた後に行われてもよい。本明細書において、浸透プロセスを受けた有機膜は、浸透有機膜と呼ばれることがある。
【0106】
図4を参照すると、いくつかの実施形態において、ブロック41において第1の表面と第2の表面とを含む基板が提供される。第1および第2の表面は異なる材料特性を有してもよい。いくつかの実施形態において、第1の表面はたとえば金属または金属性表面などの伝導性表面であってもよく、第2の表面は誘電体表面であってもよい。いくつかの実施形態において、第1の表面は誘電体表面であってもよく、第2の表面は第2の異なる誘電体表面であってもよい。いくつかの実施形態において、第1および第2の表面は同じ基本組成を有し得るが、形成の態様が異なることによって異なる材料特性を有してもよい(例、熱酸化物、堆積酸化物、天然酸化物)。
【0107】
いくつかの実施形態において、ブロック42において基板の第2の表面よりも基板の第1の表面上に有機膜が選択的に形成または堆積される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される選択的堆積プロセス、たとえば本明細書に記載される1つまたはそれ以上の堆積サイクルを含む選択的堆積プロセスなどに従って、有機膜が選択的に形成されてもよい。いくつかの実施形態において、選択的に形成された有機膜は、たとえばポリイミド膜などを含んでもよい。
【0108】
いくつかの実施形態において、選択的に形成された有機膜は、ブロック43において選択的に形成された有機膜に無機材料を取り込ませるための浸透プロセスを受ける。いくつかの実施形態において、浸透プロセスは、金属を含む第1の反応体および第2の反応体に、選択的に形成された有機膜を交互および逐次的に接触させるステップを含む1つまたはそれ以上の浸透サイクルを含んでもよい。
【0109】
いくつかの実施形態において、浸透プロセスによって有機膜に取り込まれる材料は金属を含んでもよい。たとえば、浸透材料は金属、複数の金属、金属合金、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物材料、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態において、金属は遷移金属またはポスト遷移金属を含んでもよい。いくつかの実施形態において、金属はアルミニウムまたはチタンを含んでもよい。いくつかの実施形態において、浸透プロセスによって有機膜に取り込まれる材料は、たとえば酸化アルミニウム(Al2O3)または酸化チタン(TiO2)などを含んでもよい。
【0110】
選択的に堆積された有機膜に金属酸化物が浸透されるいくつかの実施形態において、第1の反応体は金属酸化物の金属を含んでもよく、第2の反応体は酸素を含んでもよい。選択的に堆積された有機膜に金属窒化物が浸透されるいくつかの実施形態において、第1の反応体は金属酸化物の金属を含んでもよく、第2の反応体は窒素を含んでもよい。選択的に堆積された有機膜に金属炭化物が浸透されるいくつかの実施形態において、第1の反応体は金属酸化物の金属を含んでもよく、第2の反応体は炭素を含んでもよい。選択的に堆積された有機膜に金属が浸透されるいくつかの実施形態において、第1の反応体は金属を含んでもよい。
【0111】
選択的に堆積された有機膜に酸化アルミニウム(Al2O3)が浸透されるいくつかの実施形態において、第1の反応体はアルミニウムを含んでもよく、第2の反応体は酸素を含んでもよい。たとえば、選択的に堆積された有機膜に酸化アルミニウム(Al2O3)が浸透されるいくつかの実施形態において、第1の反応体はトリメチルアルミニウム(TMA)を含んでもよく、第2の反応体はH2Oを含んでもよい。選択的に堆積された有機膜に二酸化チタン(TiO2)が浸透されるいくつかの実施形態において、第1の反応体はチタンを含んでもよく、第2の反応体は酸素を含んでもよい。
【0112】
いくつかの実施形態において、選択的に堆積された有機膜に金属含有材料を浸透するために用いられる第1および第2の反応体は、当該技術分野において公知であるか、または将来開発される原子層堆積プロセスにおいて金属含有材料を堆積させるために用いられるのと同じ反応体であってもよい。
【0113】
ブロック44において、基板の第1の表面上に浸透有機膜が形成される。浸透有機膜の形成は、別個の動作ではなく上述の動作41~43の結果であることを、当業者は認識するだろう。
【0114】
いくつかの実施形態において、浸透プロセスは、有機膜の特定の特性または複数の特性を改善または向上させてもよい。たとえば、有機膜に浸透プロセスを受けさせるステップは、浸透プロセスを受けていない同じ有機膜よりも特定のエッチャントまたはエッチングプロセスに対する有機膜のエッチング抵抗性を増加させてもよい。いくつかの実施形態において、有機膜に浸透プロセスを受けさせるステップは、浸透プロセスを受けていない同じ有機膜よりも、ハロゲン化物ベースのエッチングプロセス、たとえばCl、Br、またはFベースのプロセス、たとえばHFエッチングなどに対する有機膜のエッチング抵抗性を増加させてもよい。エッチング抵抗性は蒸気、液体、またはリアクティブイオンエッチング(RIE:reactive ion etch)プロセスに対して効果的であってもよい。当業者に理解されるとおり、ハードマスク層はしばしば、エッチング膜内において、より鉛直な側壁を達成するために異方性RIEプロセスを受ける。たとえばいくつかの実施形態において、浸透プロセスを受けた有機膜は、たとえば本明細書に記載されるとおりに選択的に堆積された有機膜などの有機膜のエッチング抵抗性を増加させてもよい。いくつかの実施形態において、有機膜のその他の特性が浸透プロセスによって変えられてもよく、たとえば浸透プロセスは、有機膜の密度、伝導率、抵抗性、および/または硬度を増加させてもよい。
【0115】
図5を参照すると、いくつかの実施形態に従うと、ブロック51において第1の表面と第2の表面とを含む基板が提供される。第1および第2の表面は異なる材料特性を有してもよい。いくつかの実施形態において、第1の表面はたとえば金属または金属性表面などの伝導性表面であってもよく、第2の表面は誘電体表面であってもよい。いくつかの実施形態において、第1の表面は誘電体表面であってもよく、第2の表面は第2の異なる誘電体表面であってもよい。いくつかの実施形態において、第1および第2の表面は同じ基本組成を有し得るが、形成の態様が異なることによって異なる材料特性を有してもよい(例、熱酸化物、堆積酸化物、天然酸化物)。
【0116】
いくつかの実施形態において、ブロック52において基板の第2の表面よりも基板の第1の表面上に有機膜が選択的に形成または堆積される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される選択的堆積プロセス、たとえば本明細書に記載される1つまたはそれ以上の堆積サイクルを含む選択的堆積プロセスなどに従って、有機膜が選択的に形成されてもよい。いくつかの実施形態において、選択的に形成された有機膜は、たとえばポリイミド膜などを含んでもよい。
【0117】
いくつかの実施形態において、選択的に形成された有機膜は、ブロック53において選択的に形成された有機膜に無機材料を取り込ませるための浸透プロセスを受ける。いくつかの実施形態において、浸透プロセスは、金属を含む第1の反応体および第2の反応体に、選択的に形成された有機膜を交互および逐次的に接触させるステップを含む1つまたはそれ以上の浸透サイクルを含んでもよい。
【0118】
ブロック54において、基板の第1の表面上に浸透有機膜が形成される。浸透有機膜の形成は、別個の動作ではなく上述の動作51~53の結果であることを、当業者は認識するだろう。
【0119】
いくつかの実施形態において、浸透有機膜はブロック55において、任意の浸透後プロセスを受けてもよい。いくつかの実施形態において、浸透後プロセスは、膜内の炭素を除去するか、またはその量を実質的に低減するためのアッシングプロセスを含んでもよい。いくつかの実施形態において、アッシングプロセスは、浸透有機膜をプラズマに露出させるステップを含んでもよい。いくつかの実施形態において、プラズマは酸素原子、酸素ラジカル、酸素プラズマ、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態において、プラズマは酸素を含むガス、たとえばO2などから生成されてもよい。
【0120】
いくつかの実施形態において、たとえばアッシングプロセスを受けた浸透選択的堆積有機膜または浸透有機膜などの浸透膜は、
図6および
図7に関して後述するとおり、その有機膜を堆積した基板をその後エッチングするためのハードマスクまたはエッチングマスクとして用いられてもよい。いくつかの実施形態において、たとえば浸透選択的堆積有機膜などの浸透有機膜は、電子デバイスまたは半導体デバイスにおける永久層または機能層として用いられてもよい。たとえば、いくつかの実施形態において、たとえば浸透選択的堆積有機膜などの浸透有機膜は、分離層、接触もしくは電極材料、スペーサ層、チャネル層、または任意のその他の機能層として用いられてもよい。
【0121】
集積
本開示の有機膜は、さまざまな微細加工、ナノ加工、および/または半導体製造の適用に用いられてもよい。たとえば、選択的に堆積されたポリマー膜は、半導体デバイス製造に用いるためのエッチングマスクとして特に有用であり得る。エッチングマスクは、他の範囲がエッチングされている間に、エッチングマスクの下の基板の範囲をエッチャントへの露出から保護するために用いられてもよい。エッチングマスクは、たとえば半導体デバイスの製造中に材料の層をパターン形成するために用いられてもよい。いくつかの実施形態において、有機膜をエッチングマスクの役割をするように選択的に堆積できることによって、多くの微細加工、ナノ加工、および/または半導体製造プロセスの簡略化を可能にできる。さらに、選択的に堆積される有機膜は第2の表面よりも基板の第1の表面上に排他的または優勢に堆積されるため、選択的に堆積される有機膜は基板の第1の表面に対して自己整合されることによって、リソグラフィパターン形成によって典型的に起こる調整不良の問題および基板上のフォトレジスト膜のブランケット形成が排除または低減される。
【0122】
図6は、選択的に堆積されたポリイミド膜をエッチングマスクとして用いて、基板上に1つまたはそれ以上の構造を形成するための階調反転プロセスに対する例示的プロセスのフローを示す。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の構造を形成するための階調反転プロセスは、次のとおりに進行する。
ステージ601において、好適な基板が提供される。
ステージ602において、構造を形成するための材料、たとえば窒化チタンなどの第1の層が基板上に堆積される。この層は、本明細書に開示されるとおりに有機材料を選択的に堆積できる第1の表面の役割をする材料、たとえば金属性材料などであってもよく、1つの実施形態においては窒化チタン(TiN)であり得る。
ステージ603において、第1の層の上に、下にある第1の層よりも選択的にエッチングされ得る第2の層であって、選択的堆積プロセスによる堆積を妨げるための第2の表面を含み得る第2の層、たとえばSiO
2またはその他の誘電体などが堆積される。
次いで、たとえばステージ604におけるフォトレジスト層の堆積、ステージ605におけるフォトレジスト層のパターン形成、ステージ606におけるたとえばエッチングなどによる第2の層へのパターンの移行、およびステージ607におけるあらゆる残余フォトレジスト材料の除去を含むフォトリソグラフィパターン形成プロセスなどによって、第2の層がパターン形成される。
ステージ608において、たとえばポリイミド膜などの有機膜が、第2の層よりも露出した第1の層上に選択的に堆積されることによって、エッチングマスクを形成する。
ステージ609において、第2の層上に存在する有機材料がもしあれば、たとえば等方性エッチングなどによって任意に除去される。
次いでステージ610において、第1の層(例、TiN)および選択的に堆積された有機膜(例、ポリイミド)が基板上に残るようにして、たとえば選択的酸化物エッチングなどによって(例、RIEを含むHFまたはその他のハロゲン化物エッチングによって)第2の層が除去される。
そして、ステージ611において、たとえばHFまたはその他のハロゲン化物エッチングなどによって、たとえば有機膜を完全に除去せずに第1の層を選択的にエッチングすることなどによって、エッチングマスクの下に配されていない第1の層の部分が除去されることによって、所望の構造が形成される。いくつかの実施形態において、有機層がエッチングによって完全に消費されない限り、有機膜の一部またはすべてがエッチングのプロセスによって除去されてもよい。いくつかの実施形態において、浸透有機膜のエッチング速度は、第1の層のエッチング速度とほぼ同じであるか、それより低い。したがって、有機マスクフィーチャの侵食の前に第1の層に反転パターン(例、ピラーまたはその他のアイランドパターン)を移すために、化学的に選択的でない物理的またはスパッタエッチングが用いられてもよい。別の実施形態においては、物理的および化学的エッチング(例、リアクティブイオンエッチング、RIE)の組み合わせが第1の層に反転パターンを移してもよく、そのエッチングに対する化学成分が部分的または完全に選択的であってもよい。RIEおよび物理的エッチングは指向性または異方性であってもよく、等方性エッチングよりも鉛直に近い側壁を生成するために、マスクフィーチャとエッチングによってパターン形成される層のフィーチャとの間により大きい忠実度を生じてもよい。例示される実施形態において、パターンは下にある基板(または介在層)にも延在する。第1の層は最終生成物の一部を形成してもよく、その後有機マスクは除去されてもよい。代替的に、第1の層はハードマスクの役割をしてもよく、下にある基板または介在層(単数または複数)にパターンを移した後に除去されてもよい。
【0123】
いくつかの実施形態において、形成される構造は、第1の層および/または下にある基板(もしくは介在層(単数または複数))を含む材料のピラーを含んでもよい。いくつかの実施形態において、構造は、半導体デバイスにおいて用いるための3次元構造または複数の構造を含んでもよい。いくつかの実施形態において、ステージ608で行われる選択的堆積プロセスは、本明細書に記載される選択的堆積プロセスのいずれかを含んでもよい。
【0124】
上記のとおり、選択的に堆積される有機材料は、ステージ609~611における選択的エッチング、特にステージ609および610の間の酸化物除去に対する抵抗性を増加させるために、金属を浸透されてもよい。
【0125】
図7Aおよび
図7Bは、選択的に堆積されたポリイミド膜をブロックマスクとして用いて、基板上に1つまたはそれ以上の構造を形成するためのブロックマスクプロセスに対する例示的プロセスのフローを示す。一例として、ブロックマスクは、一次マスクパターンの所望の部分または複数の部分が下にある層(単数または複数)に移ることを妨げることによって、一次マスクパターンを修正するために有用であってもよい。たとえば、スペーサプロセスがラインを形成し、これらのラインと、その間の付加的なフィーチャ、たとえば
図7A~7Bに示される2つのラインを接続するブリッジなどとによって形成されるパターンを、基板の下側層に移すことが望ましくてもよい。いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上の構造を形成するためのブロックマスクプロセスは、次のとおりに進行する。
ステージ701において、好適な基板、たとえば低誘電率材料と、窒素フリー反射防止層(NFARL:nitrogen-free antireflection layer)と、上に有機材料を選択的に堆積できる第1の層(例、TiN)と、テトラエチルオルトシリケート(tetraethylorthosilicate)を含むPECVDによって形成された酸化ケイ素層(PETEOS層)と、アモルファスシリコン層とを含む基板などが提供される。
ステージ702において、アモルファスシリコン層にマンドレルがパターン形成または形成される。
ステージ703において、マンドレルの上にたとえば誘電材料などのスペーサ材料がコンフォーマルに堆積され、水平の次元においてマンドレルフィーチャの周りにループを形成する傾向がある(例、平面図)。
ステージ704において、たとえば指向性エッチングプロセスなどによって、水平の表面に堆積されたスペーサ材料が選択的に除去される。
ステージ705において、たとえば選択的エッチングなどによってマンドレルが除去されることによって、スペーサが形成される。
ステージ706において、低誘電率材料を含み得るハードマスクがスペーサおよび基板の上に堆積される。
ステージ707において、たとえばリソグラフィパターン形成などによってハードマスクの表面にマスクパターンが形成されて、ブロックされるべきパターンの領域を露出する。
ステージ708において、たとえばエッチングなどによって、ハードマスクのパターン形成部分および下にあるPETEOS層が除去されることによって、第1の層(例、TiN)の一部分が露出する。
ステージ709において、残りのハードマスク材料が基板から除去される。
ステージ710において、たとえばポリイミド膜などの有機膜が、残りのPETEOS層よりも第1の層(例、TiN)の露出部分に選択的に堆積されることによってブロックマスクを形成する。
ステージ711において、たとえば選択的エッチングなどによって、スペーサまたは有機ブロックマスクの下に配されていない第1の層(例、TiN)の部分を除去することによって、残りのPETEOS層およびブロックマスクによって修正されたパターンが第1の層に移される。
ステージ712において、あらゆる残りのスペーサ材料および有機膜材料が除去されることによって、修正されたパターンの第1の層(例、TiN)が残される。こうしてパターン形成された第1の層は、最終生成物において機能的構造を形成してもよいし(例、金属性ライン)、下にある材料にパターンをさらに移すためのハードマスクの役割をしてもよい。ステージ710~712の平面図を
図7Bに示す。
【0126】
いくつかの実施形態において、選択的に堆積された有機ブロックマスクを用いて膜に矩形のトレンチをエッチングしてもよく、その後そのトレンチに銅または別の伝導性材料が充填されてもよい。いくつかの実施形態において、この構造は、半導体デバイスにおいて用いるための3次元構造または複数の構造を含んでもよい。いくつかの実施形態において、ステージ710にて行われる選択的堆積プロセスは、本明細書に記載される選択的堆積プロセスのいずれかを含んでいてもよい。
【0127】
いくつかの実施形態において、選択的に堆積された有機膜は、その後の選択的堆積プロセス、たとえば誘電材料選択的堆積プロセスなどにおける保護層として用いられてもよい。たとえばいくつかの実施形態において、本明細書に記載されるとおりに有機膜は第2の表面よりも基板の第1の表面上に選択的に堆積されてもよく、次いで誘電材料は有機膜よりも基板の第2の表面上に選択的に堆積されてもよい。
【実施例0128】
実施例1
本明細書に記載される選択的堆積プロセスに従って、いくつかの基板上にサンプルポリイミド薄膜を堆積させた。酸化ケイ素表面と交互になったタングステン(W)フィーチャを有する200mmシリコンウェハを基板として用いた。タングステンフィーチャの幅は250nmであり、約600nmのピッチを有した。PRIクラスタツールと接続したPulsar 3000(登録商標)クロスフローALDリアクタにおいて、ポリイミド堆積プロセスを行った。
【0129】
第1の気相反応体としてDAHと、第2の気相反応体としてPMDAとを用いて、本明細書に記載されるプロセスに従って、サンプルポリイミド膜の第1のバッチを堆積させた。450sccmの流速を有するN2キャリアガスによって、45℃にてDAHの第1の反応体を供給した。DAHパルス時間は5秒であり、DAHパージ(pure)時間は4秒であった。450sccmの流速を有するN2キャリアガスによって、180℃にてPMDAの第2の反応体を反応チャンバに供給した。PMDAパルス時間は11秒であり、PMDAパージ時間は4秒であった。反応または基板の温度は160℃であった。25から100堆積サイクルを用いて、ポリイミド膜を堆積させた。
【0130】
第1のバッチと実質的に類似だが190℃の反応温度を有する条件を用いて、本明細書に記載されるプロセスに従って、サンプルポリイミド膜の第2のバッチを堆積させた。250から1000堆積サイクルを用いて、ポリイミド膜を堆積させた。
【0131】
走査型透過電子顕微鏡法を用いて、ポリイミド膜サンプルの厚さを測定した。ポリイミド膜の第1のバッチは、約4~6Å/サイクルの成長速度で、25堆積サイクルを有するプロセスに対する5nmから、100堆積サイクルを有するプロセスに対する40nmまでの厚さを有することを見出した。基板のW表面に堆積したポリイミドの量は、酸化ケイ素表面に堆積したポリイミドの量と実質的に同じであった。したがって、このレシピに対する160℃の反応温度における堆積は選択的ではなかった。
【0132】
ポリイミド膜の第2のバッチは、W表面において250サイクルを有するプロセスに対する約7nmから1000サイクルを有するプロセスに対する約28nmの範囲の厚さを有することを見出した。酸化ケイ素表面におけるポリイミド膜の厚さは、250サイクルを有するプロセスに対する約4nmから1000サイクルを有するプロセスに対する約6nmの範囲であった。したがって、190℃の反応温度におけるポリイミド堆積は選択的であった。W表面における成長速度は約0.2~1Å/サイクルであった。
図8は、250から1000までの堆積サイクルを用いてSiO
2表面よりもW表面上に選択的に堆積させたポリイミド膜の断面STEM画像を示す。
【0133】
実施例2
酸化ケイ素表面と交互になったパターン形成タングステン(W)フィーチャを有する200mmシリコンウェハの上に、第1のサンプルポリアミド膜を堆積させた。1.5nmの天然酸化物を有する結晶シリコンウェハの上に、第2のサンプルポリアミド膜を堆積させた。第1の気相反応体としてアジポイルクロリド(AC)と、第2の気相反応体としてエチレンジアミン(EDA)とを用いて、本明細書に記載されるプロセスに従ってサンプルを堆積させた。ACの第1の反応体を50℃の温度にて気化し、500sccmのライン流によって65℃の温度にて反応チャンバに供給した。ACのパルスおよびパージ時間は2.5秒であった。約180トルのパルシング圧力を用い、ACを供給するためのコンジットにはラインフィルタを嵌めた。EDの第2の反応体は、1/5秒のパルスおよびパージ時間によって室温にて供給した。約100トルのパルシング圧力を用い、EDを供給するためのコンジットにはラインフィルタを嵌めなかった。基板の温度は95℃であり、このプロセスは1000堆積サイクルを含んだ。
【0134】
結果として得た膜を分光偏光解析法によって特性評価し、x線反射測定によって厚さの検証を行った。1.5nmの天然酸化物を有する結晶シリコン基板上に堆積したポリアミド膜に対する成長速度は約0.5Å/サイクルであることが見出され、3mmエッジ除外を有する300mmマッピングに対する1σ厚さ不均一性は約3%であった。
図9Aに示すとおり、膜は約9nmの厚さを有することを見出した。
【0135】
図9Bに示すとおり、Wパターン形成ウェハの天然酸化物表面にはポリアミドがほとんど堆積していない一方で、Wライン上にはポリアミド材料が明瞭に可視できることを見出した。したがって、Wパターン形成ウェハのポリアミド堆積は選択的であることを見出した。
【0136】
実施例3
第1の気相反応体としてDAHと、第2の気相反応体としてPMDAとを用いて、本明細書に記載されるプロセスに従って、酸化ケイ素表面と交互になったパターン形成タングステン(W)フィーチャを有する200mmシリコンウェハの上に、サンプルポリイミド膜を選択的に堆積させた。450sccmの流速を有するN
2キャリアガスによって、45℃にてDAHの第1の反応体を供給した。DAHパルス時間は5秒であり、DAHパージ時間は4秒であった。450sccmの流速を有するN
2キャリアガスによって、180℃にてPMDAの第2の反応体を反応チャンバに供給した。PMDAパルス時間は11秒であり、PMDAパージ時間は4秒であった。反応温度は190℃であった。1000堆積サイクルを用いてポリイミドサンプル膜を堆積させた。ポリイミドはW表面上に堆積し、その膜厚は約30nmであった。
図10Aに示すとおり、酸化ケイ素表面上には約4nmの実質的に少ない量のポリイミドが堆積した。
【0137】
次いで、サンプルポリイミド膜を300℃の温度にて100Wを用いて生成したH
2プラズマによって40秒間エッチングした。H
2ガスの流速は100sccmであった。
図10B~Cに示すとおり、酸化ケイ素表面からはポリイミドが完全に除去されたのに対し、W表面上には約9nmの厚さを有するポリイミド膜が残った。
【0138】
実施例4
本明細書に記載されるプロセスに従って、サンプルポリアミド(2,6)膜を堆積させた。反応体として、アジポイルクロリド(AC)およびエチレンジアミン(EDA)を用いた。AC反応体を50℃の温度に加熱して気化した。EDA反応体を室温にて気化し、反応体用量を制御するためにニードル弁を用いた。反応体に対するキャリアガスおよびパージガスの両方として、窒素を用いた。キャリアおよびパージガスの流速はどちらも約500sccmであった。約1.5nmの天然酸化物を含む表面を有する300mm結晶シリコンウェハの上にサンプルを堆積させた。各サンプルに対して、200堆積サイクルを行った。エリプソメーターを用いて、堆積した膜の厚さを測定した。
【0139】
71℃の堆積温度にて、EDA接触時間を0秒から3秒の間で変動させてサンプル膜を堆積させた。
図11Aにみられるとおり、EDA接触時間の増加とともにポリアミド膜のサイクル当りの成長速度が増加し、3秒のEDA接触時間に対して約0.5Å/サイクルに達した。
【0140】
同様に、71℃の堆積温度にて、AC接触時間を0秒から5秒の間で変動させてサンプル膜を堆積させた。
図11Bにみられるとおり、AC接触時間の増加とともにポリアミド膜のサイクル当りの成長速度が増加し、5秒のAC接触時間に対して約0.5Å/サイクルに達した。
【0141】
サンプルポリアミド膜に対して、前駆物質および反応副生成物の除去またはパージ時間を同様に変動させた。除去時間を2秒から10秒の間で変動させた。
図11Cにみられるとおり、除去時間の増加とともにサイクル当りの成長速度は減少したが、その影響は比較的小さいことが分かった。
【0142】
加えて、成長速度と堆積温度との関係を調査した。堆積温度を50℃から71℃に変動させてサンプル膜を調製した。
図11Dにみられるとおり、堆積温度の減少とともにサイクル当りの成長速度が増加し、50℃の堆積温度において1.4Å/サイクルの成長速度に達した。
【0143】
図12Aは、71℃にて堆積させたサンプルポリアミド膜に対する厚さマップを示す。
図12Bは、50℃にて堆積させたサンプルポリアミド膜に対する厚さマップを示す。71℃にて堆積させたサンプル膜の1σ不均一性は3.0%であることを見出したのに対し、50℃にて堆積させたサンプル膜の1σ不均一性は2.6%であることを見出した。さらに、不均一性は主にウェハの端縁で生じているため、堆積したサンプル膜はかなり均一であることを見出した。
【0144】
特定の実施形態および実施例を考察したが、請求項の範囲は特定的に開示された実施形態を超えて他の代替的実施形態および/または使用、ならびにそれらの自明の修正および均等物に及ぶことを当業者は理解するだろう。