(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166571
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/245 20060101AFI20231114BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231114BHJP
A61K 31/047 20060101ALI20231114BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20231114BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231114BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231114BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20231114BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20231114BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231114BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20231114BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20231114BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231114BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
A61K31/245
A61P29/00
A61K31/047
A61P17/16
A61P43/00 121
A61K9/08
A61K9/06
A61K47/38
A61K47/10
A61K8/34
A61K8/73
A61Q19/00
A61K8/41
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150269
(22)【出願日】2023-09-15
(62)【分割の表示】P 2019115534の分割
【原出願日】2019-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】高根 俊輔
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、フェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水を含む外用組成物において、析出物の生成を抑制できる製剤化技術を提供することである。
【解決手段】外用組成物において、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水に加えて、増粘剤を配合することにより、析出物の生成を抑制できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウフェナマート、イノシトール、セルロース誘導体、1価低級アルコール、及び水を含有する、外用組成物。
【請求項2】
液状又は半固形状である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水を含む外用組成物において析出物の生成を抑制する方法であって、
外用組成物中で、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水と共に、セルロース誘導体を共存させる、析出物の生成抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水を含み、析出物の生成が抑制されている外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウフェナマートは、非ステロイド抗炎症剤であり、皮膚炎、かゆみ、かぶれの抑制、治療する効果が知られており、抗炎症目的で外用組成物に配合して使用されている(例えば、特許文献1参照)。ウフェナマートは、脂溶性成分であるため、外用組成物に配合する場合には、乳化状態にしたり、1価低級アルコールを使用して可溶化したりすることによって製剤化されている。
【0003】
一方、イノシトールは、保湿作用や皮脂改善作用等が知られており、潤いの付与等の目的で外用組成物に配合して使用されている(例えば、特許文献2参照)。イノシトールは、水溶性成分であるため、外用組成物に配合する場合には、水に溶解させることによって製剤化されている。
【0004】
近年、外用組成物の機能性の向上に対する消費者の要望と共に消費者の美容意識が高まっており、皮膚炎等の炎症性皮膚疾患をきれいに治したいというニーズが高まっている。このような消費者ニーズに追従するために、ウフェナマートによる抗炎症作用とイノシトールによる保湿作用の双方を発揮できる外用組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-199709号公報
【特許文献2】特開2010-90040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウフェナマート及びイノシトールは、それぞれ外用組成物に配合できることは知られているが、ウフェナマート及びイノシトールを含む外用組成物の安定性等については、これまで検討されていない。ウフェナマートは脂溶性であるのに対して、イノシトールは水溶性であるがエタノールには殆ど溶解せず、ウフェナマートとは相反する特性がある。そこで、本発明者は、ウフェナマート及びイノシトールを含む外用組成物を開発すべく検討を行ったところ、ウフェナマート及びイノシトールは、それぞれ単独で1価低級アルコール及び水の混合溶媒に対して溶解又は可溶化させると、透明な外観を呈するが、これらの双方を一緒に1価低級アルコール及び水の混合溶媒に対して溶解又は可溶化させると、析出物が生成して白濁した状態になることを知見した。即ち、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水を含む外用組成物では、析出物の生成により白濁して透明な外観にならないという特有の課題が存在することが明らかとなった。このような析出物が生成した状態では、外観性状の悪化を招くだけでなく、ウフェナマート及び/又はイノシトールが十分に溶解又は可溶化された状態になっておらず所望の薬効を十分に発現できないことが懸念される。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水を含む外用組成物において、析出物の生成を抑制できる製剤化技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、外用組成物において、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水に加えて、増粘剤を配合することにより、析出物の生成を抑制できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. ウフェナマート、イノシトール、増粘剤、1価低級アルコール、及び水を含有する、外用組成物。
項2. 増粘剤が、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の外用組成物。
項3. 液状又は半固形状である、項1又は2に記載の外用組成物。
項4. ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水を含む外用組成物において析出物の生成を抑制する方法であって、
外用組成物中で、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水と共に、増粘剤を共存させる、析出物の生成抑制方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の外用組成物によれば、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水を含んでいながらも、これらの成分の共存状態で生じる析出物の生成を抑制できるので、良好な外観を呈することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】試験例1において、析出物の生成の程度の判定基準における評点1、3及び5の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.外用組成物
本発明の外用組成物は、ウフェナマート、イノシトール、増粘剤、1価低級アルコール、及び水を含有することを特徴とする。以下、本発明の外用組成物について詳述する。
【0013】
[ウフェナマート]
本発明の外用組成物は、ウフェナマートを含有する。ウフェナマートは、フルフェナム酸ブチルとも称され、脂溶性の非ステロイド性抗炎症薬として公知の成分である。
【0014】
本発明の外用組成物におけるウフェナマートの含有量については、付与すべき薬効、外用組成物の形態等に応じて適宜設定されるが、例えば0.1~20重量%、好ましくは0.25~10重量%、更に好ましくは0.25~7重量%が挙げられる。
【0015】
[イノシトール]
本発明の外用組成物は、イノシトールを含有する。イノシトールは、1,2,3,4,5,6-シクロヘキサンヘキサオールとも称され、シクロヘキサンの各炭素上の水素原子が1つずつヒドロキシ基に置換した構造を持ち、ビタミン様作用物質として知られている公知の成分である。イノシトールには、ヒドロキシ基の立体配置の組み合わせにより、9種類の立体異性体が存在しており、本発明では、いずれの立体異性体を使用してもよいが、好ましくはmyo-イノシトール(シス-1,2,3,5-トランス-4,6-シクロヘキサンヘキサオール)が挙げられる。
【0016】
本発明の外用組成物におけるイノシトールの含有量については、付与すべき薬効、外用組成物の形態等に応じて適宜設定されるが、例えば0.05~10重量%、好ましくは0.1~10重量%、更に好ましくは0.25~7重量%が挙げられる。
【0017】
本発明の外用組成物において、ウフェナマートに対するイノシトールの比率については、これらの成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、ウフェナマート1重量部当たり、イノシトールが0.0025~100重量部、好ましくは0.01~50重量部、更に好ましくは0.1~30重量部が挙げられる。
【0018】
[増粘剤]
本発明の外用組成物は、増粘剤を含有する。ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水を含む外用組成物では、析出物が生成して白濁した外観になるが、本発明の外用組成物では、これらの成分に加えて増粘剤を含むことにより、析出物の生成を抑制することが可能になる。
【0019】
本発明で使用される増粘剤の種類については、薬学的に許容されることを限度として、特に制限されないが、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸ナトリウムベントナイト、デキストリン脂肪酸エステル等の合成系高分子;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、デキストラン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン等の増粘多糖類等が挙げられる。
【0020】
これらの増粘剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
これらの増粘剤の中でも、析出物の生成をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくは合成系高分子、セルロース誘導体;更に好ましくはポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース;特に好ましくはポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0022】
本発明の外用組成物における増粘剤の含有量については、外用組成物の形態等に応じて適宜設定されるが、例えば0.1~2重量%、好ましくは0.25~1.5重量%、更に好ましくは0.25~1.0重量%が挙げられる。
【0023】
本発明の外用組成物において、ウフェナマート及びイノシトールの総量に対する増粘剤の比率については、これらの成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、ウフェナマート及びイノシトールの総量(ウフェナマートとイノシトールの合計量)1重量部当たり、増粘剤が0.003~13重量部、好ましくは0.01~4.5重量部、更に好ましくは0.1~4.0重量部が挙げられる。
【0024】
[1価低級アルコール及び水]
本発明の外用組成物は、溶媒として1価低級アルコール及び水を含有する。
【0025】
本発明で使用される1価低級アルコールの種類については、特に制限されないが、例えば、炭素数2~6の1価低級アルコール、より具体的には、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール等が挙げられる。これらの1価低級アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの1価低級アルコールの中でも、析出物の生成をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくはエタノールが挙げられる。
【0026】
本発明の外用組成物において、1価低級アルコールと水の比率については、特に制限されないが、例えば、1価低級アルコール1重量部当たり、水が0.1~1.8重量部、好ましくは0.1~1.5重量部、更に好ましくは0.15~1.0重量部が挙げられる。
【0027】
本発明の外用組成物における1価低級アルコールの含有量については、外用組成物の形態等に応じて適宜設定されるが、例えば30~89重量%、好ましくは40~89重量%、更に好ましくは50~85重量%が挙げられる。
【0028】
また、本発明の外用組成物における水の含有量については、外用組成物の形態等に応じて適宜設定されるが、例えば10~55重量%、好ましくは10~50重量%、更に好ましくは10~45重量%が挙げられる。
【0029】
[その他の成分]
本発明の外用組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、通常使用される他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤、多価アルコール、植物油、動物油、鉱物油、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸、高級アルコール、pH調節剤、緩衝剤、可溶化剤、キレート剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、安定化剤、香料、着色料等が挙げられる。本発明の外用組成物において、これらの添加剤を含有させる場合、その含有量については、使用する添加剤の種類等に応じて適宜設定すればよい。
【0030】
本発明の外用組成物は、前述する成分の他に、薬理成分が含まれていてもよい。このような薬理成分としては、例えば、ステロイド剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、ウフェナマート以外の抗炎症剤、イノシトール以外の保湿剤、殺菌剤、抗菌剤、鎮痒剤、皮膚保護剤、血行促進成分、ビタミン類、ムコ多糖類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、本発明の外用組成物において、これらの薬理成分を含有させる場合、その濃度については、使用する薬理成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0031】
[剤型・製剤形態]
本発明の外用組成物の剤型については、経皮適用可能であることを限度として特に制限されず、液状、半固形状(クリーム状、ゲル状、軟膏状、ペースト状)、固形状等のいずれであってもよいが、好ましくは液状又は半固形状が挙げられる。また、本発明の外用組成物は、水中油型乳化製剤、油中水型乳化製剤等の乳化製剤であってもよく、また可溶化型製剤、水性軟膏等の非乳化製剤であってもよい。
【0032】
また、本発明の外用組成物は、皮膚に適用されるものである限り、皮膚外用医薬品(医薬部外品を含む)、化粧料、皮膚洗浄料等のいずれの製剤形態であってもよい。
【0033】
本発明の外用組成物の製剤形態として、具体的には、クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、乳液剤、液剤、パップ剤、貼付剤、リニメント剤、エアゾール剤、水性軟膏剤、パック剤等の皮膚外用医薬品;水性軟膏、クリーム、乳液、化粧水、ローション、パック、ゲル等の化粧料;ボディーシャンプー、ヘアシャンプー、リンス等の皮膚洗浄料等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは皮膚外用医薬品が挙げられる。
【0034】
本発明の外用組成物は、ウフェナマートとイノシトールを含み、抗炎症作用と保湿作用を発揮できるので、皮膚炎、かゆみ、湿疹、かぶれ、おむつかぶれ、ただれ等の炎症性の皮膚症状や疾患の治療等に用途に使用できる。
【0035】
2.析出物の生成抑制方法
本発明は、更に、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水を含む外用組成物において析出物の生成を抑制する方法であって、外用組成物中で、ウフェナマート、イノシトール、1価低級アルコール、及び水と共に、増粘剤を共存させることを特徴とする、析出物の生成抑制方法を提供する。
【0036】
当該方法において、使用する成分の種類や含有量、配合される他の成分の種類や含有量、外用組成物の剤型や製剤形態等については、前記「1.外用組成物」の場合と同様である。
【実施例0037】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
なお、以下に示す試験例及び処方例では、イノシトールとして、myo-イノシトールを使用した。また、以下に示す試験例及び処方例において、ヒドロキシプロピルセルロースは商品名「HPC-H」(日本曹達株式会社)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは商品名「サンジェロースM」(大同化成工業株式会社)、及びポリビニルピロリドンは商品名「グリーシャスK-30」(第一工業製薬株式会社)を使用した。
【0039】
試験例1
表1に示す所定量の各成分を混合し、外用組成物(液剤)を調製した。調製直後に室温に静置して、外観を目視にて観察し、以下の判定基準に従って、析出物の生成の程度を評点化した。
<析出物の生成の程度の判定基準>
1:析出物の著しい生成により完全に白濁して不透明な状態になっている(
図1に示す外観例Aのような状態)。
2:評点1と評点3の中間の状態になっており、析出物の生成によって白濁し、不透明な状態になっている。
3:析出物が少し生じており、半透明な状態になっている(
図1に示す外観例Bのような状態)
4:評点3と評点4の中間の状態になっており、僅かにだけ析出物が生じているが、十分に透明な状態になっている。
5:析出物が生じておらず、完全に透明な状態になっている(
図1に示す外観例Cのような状態)
【0040】
得られた結果を表1に示す。エタノール及び水の混合溶媒中に、ウフェナマート又はイノシトールを単独で配合しても、析出物が生じず透明な外観であったが(参考例1及び2参照)、当該混合溶媒中にウフェナマートとイノシトールの双方を配合すると、析出物が著しく生成して白濁した外観になった(比較例1)。また、可溶化剤や溶解補助剤等として知られているプロピレングリコールやグリセリンを配合しても、析出物の生成を抑制することはできなかった(比較例2及び3)。これに対して、エタノール及び水の混合溶媒中に、ウフェナマート及びイノシトールと共に増粘剤を配合すると、析出物の生成が抑制され、半透明又は透明な外観が実現できた(実施例1~3)。
【0041】
【0042】
処方例
表2に示す組成の外用組成物を調製した。得られた外用組成物を、前記試験例1と同様の方法で析出物の生成の程度を評価したところ、いずれも、析出物の生成を抑制できていた。
【0043】