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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166664
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】半導体材料ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/02 20060101AFI20231115BHJP
   C23C 16/448 20060101ALI20231115BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
F17C13/02 301A
C23C16/448
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077307
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕大
【テーマコード(参考)】
3E172
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
3E172AB16
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC10
3E172BD05
3E172DA90
3E172EB02
3E172EB18
3E172KA02
3E172KA03
3E172KA24
4K030AA03
4K030AA16
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA08
4K030BA38
4K030EA01
4K030KA25
4K030KA36
4K030KA39
4K030LA14
5F045AB09
5F045AB14
5F045AC13
5F045AC15
5F045AC16
5F045AC17
5F045EE01
(57)【要約】
【課題】半導体材料ガス生成の原料である液体金属の格納部を取り出すことなく、液体金属の残量の確認が可能な半導体材料ガス供給装置を提供する。
【解決手段】内部空間1zの下部に液体金属Mを収容する第1反応容器1と、内部空間1zに存在する液体金属Mの残量を確認する残量確認機構200と、を備え、残量確認機構200が、内部空間1zに位置する電極201,202と、電極201,202と接続される検電回路203と、を有する、半導体材料ガス供給装置を選択する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体材料ガス生成の原料として液体金属を使用する半導体材料ガス供給装置であって、
内部空間の下部に前記液体金属を収容し、前記内部空間の上部に原料ガスが供給される第1反応容器と、
前記内部空間に存在する前記液体金属の残量を確認する残量確認機構と、を備え、
前記残量確認機構が、
前記内部空間に位置する1以上の電極と、
前記電極と接続される検電回路と、を有する、半導体材料ガス供給装置。
【請求項2】
前記第1反応容器が、少なくとも底部及び側壁を有し、
前記底部及び前記側壁の材質が、導体である、請求項1に記載の半導体材料ガス供給装置。
【請求項3】
前記電極と前記側壁とが、電気的に絶縁されている、請求項2に記載の半導体材料ガス供給装置。
【請求項4】
前記残量確認機構が、2つの電極を有する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の半導体材料ガス供給装置。
【請求項5】
半導体材料ガス生成の原料として液体金属を使用する半導体材料ガス供給装置であって、
内部空間の下部に前記液体金属を収容し、前記内部空間の上部に原料ガスが供給される第1反応容器と、
前記内部空間に存在する前記液体金属の残量を確認する残量確認機構と、を備え、
前記第1反応容器が、少なくとも底部及び側壁を有し、前記底部及び前記側壁の材質が、導体であり、
前記残量確認機構が、
前記側壁に接続される2つの導線と、
2つの前記導線と接続される抵抗測定回路と、を有する、半導体材料ガス供給装置。
【請求項6】
半導体材料ガス生成の原料として液体金属を使用する半導体材料ガス供給装置であって、
内部空間の下部に前記液体金属を収容し、前記内部空間の上部に原料ガスが供給される第1反応容器と、
前記内部空間に存在する前記液体金属の残量を確認する残量確認機構と、を備え、
前記残量確認機構が、
前記第1反応容器の下方に位置する重量測定器を有する、半導体材料ガス供給装置。
【請求項7】
半導体材料ガス生成の原料として液体金属を使用する半導体材料ガス供給装置であって、
内部空間の下部に前記液体金属を収容し、前記内部空間の上部に原料ガスが供給される第1反応容器と、
前記内部空間に存在する前記液体金属の残量を確認する残量確認機構と、を備え、
前記第1反応容器が、蓋部、底部及び側壁を有し、
前記残量確認機構が、
前記第1反応容器の上方に位置する光学式レベルセンサと、
前記蓋部に位置し、レーザ光を透過する窓部と、を有する、半導体材料ガス供給装置。
【請求項8】
前記第1反応容器の下方に位置する第2反応容器をさらに備え、
前記残量確認機構が、
前記第1反応容器の上方に位置する光学式レベルセンサと、
前記蓋部に位置し、レーザ光を透過する窓部と、
前記底部を鉛直方向上下に貫通し、前記レーザ光を透過するトンネル部と、を有する、請求項7に記載の半導体材料ガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体材料ガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代パワーデバイス材料として、GaNやAlN、Ga等のワイドバンドギャップ半導体が注目されている。また、GaAs系半導体は、Siよりも高性能な太陽電池の材料として注目されている。
【0003】
これらの半導体結晶を成膜する方法の一つとして、ハライドまたはハイドライド気相成長法(Halide or Hydride Vapor Phase Epitaxy:HVPE法)が知られている。この方法は、金属ハロゲン化物と、アンモニア等のV族原料、または酸素等のVI族原料を反応させることで半導体結晶を成膜する方法である。HVPE法を用いた半導体結晶の成膜は、成長速度が速く、高純度の膜が生成可能であることから、盛んに研究されている。
【0004】
特許文献1には、内部空間の下部に溶融金属としてガリウムを収容し、内部空間の上部に塩素ガス及び塩化水素ガスの少なくとも一方を原料ガスとして含む混合ガスを供給しながら、原料ガスと溶融金属との気液反応によって生成ガス(一塩化ガリウムガス)を生成し、生成ガスを含む混合ガスを内部空間から排出する気液反応チャンバーを備える半導体材料ガス供給装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/212303号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された半導体材料ガス供給装置では、内部の原料金属(液体Ga)が消費され、ある一定の量以下になった場合に原料金属を補給する必要がある。しかしながら、原料金属を格納する気液反応チャンバーは、加熱器や配管によって周囲が覆われており、内部に残存する原料の量を外部から目視することは困難である。
【0007】
また、原料金属を格納する気液反応チャンバーは、耐腐食性や加工の容易性の観点からグラファイト製のものが好適に用いられる。このように、原料の格納部分がグラファイトのように不透明の部材で構成された場合、装置を分解せずに内部に残存する原料の量を外部から目視することはより困難である。また、残量確認のために原料の格納部分を取り出した場合、半導体材料供給を中断する必要があることに加え、復旧のためには原料の加熱や不純物除去のため純度の高い窒素ガスによる置換が必要となる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、半導体材料ガス生成の原料である液体金属の格納部を取り出すことなく、液体金属の残量の確認が可能な半導体材料ガス供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
[1] 半導体材料ガス生成の原料として液体金属を使用する半導体材料ガス供給装置であって、
内部空間の下部に前記液体金属を収容し、前記内部空間の上部に原料ガスが供給される第1反応容器と、
前記内部空間に存在する前記液体金属の残量を確認する残量確認機構と、を備え、
前記残量確認機構が、
前記内部空間に位置する1以上の電極と、
前記電極と接続される検電回路と、を有する、半導体材料ガス供給装置。
[2] 前記第1反応容器が、少なくとも底部及び側壁を有し、
前記底部及び前記側壁の材質が、導体である、[1]に記載の半導体材料ガス供給装置。
[3] 前記電極と前記側壁とが、電気的に絶縁されている、[2]に記載の半導体材料ガス供給装置。
[4] 前記残量確認機構が、2つの電極を有する、[1]乃至[3]の何れかに記載の半導体材料ガス供給装置。
[5] 半導体材料ガス生成の原料として液体金属を使用する半導体材料ガス供給装置であって、
内部空間の下部に前記液体金属を収容し、前記内部空間の上部に原料ガスが供給される第1反応容器と、
前記内部空間に存在する前記液体金属の残量を確認する残量確認機構と、を備え、
前記第1反応容器が、少なくとも底部及び側壁を有し、前記底部及び前記側壁の材質が、導体であり、
前記残量確認機構が、
前記側壁に接続される2つの導線と、
2つの前記導線と接続される抵抗測定回路と、を有する、半導体材料ガス供給装置。
[6] 半導体材料ガス生成の原料として液体金属を使用する半導体材料ガス供給装置であって、
内部空間の下部に前記液体金属を収容し、前記内部空間の上部に原料ガスが供給される第1反応容器と、
前記内部空間に存在する前記液体金属の残量を確認する残量確認機構と、を備え、
前記残量確認機構が、
前記第1反応容器の下方に位置する重量測定器を有する、半導体材料ガス供給装置。
[7] 半導体材料ガス生成の原料として液体金属を使用する半導体材料ガス供給装置であって、
内部空間の下部に前記液体金属を収容し、前記内部空間の上部に原料ガスが供給される第1反応容器と、
前記内部空間に存在する前記液体金属の残量を確認する残量確認機構と、を備え、
前記第1反応容器が、蓋部、底部及び側壁を有し、
前記残量確認機構が、
前記第1反応容器の上方に位置する光学式レベルセンサと、
前記蓋部に位置し、レーザ光を透過する窓部と、を有する、半導体材料ガス供給装置。
[8] 前記第1反応容器の下方に位置する第2反応容器をさらに備え、
前記残量確認機構が、
前記第1反応容器の上方に位置する光学式レベルセンサと、
前記蓋部に位置し、レーザ光を透過する窓部と、
前記底部を鉛直方向上下に貫通し、前記レーザ光を透過するトンネル部と、を有する、[7]に記載の半導体材料ガス供給装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体材料ガス供給装置は、半導体材料ガス生成の原料である液体金属の格納部を取り出すことなく、液体金属の残量の確認が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を適用した一実施形態である半導体材料ガス供給装置の構成の一例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態である半導体材料ガス供給装置に適用可能な残量確認機構の第1形態を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態である半導体材料ガス供給装置に適用可能な第1形態の残量確認機構の一部を示す拡大断面図である。
図4】本発明の一実施形態である半導体材料ガス供給装置に適用可能な残量確認機構の第1形態の変形例を示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態である半導体材料ガス供給装置に適用可能な残量確認機構の第2形態を模式的に示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態である半導体材料ガス供給装置に適用可能な残量確認機構の第3形態を模式的に示す断面図である。
図7】本発明の一実施形態である半導体材料ガス供給装置に適用可能な残量確認機構の第4形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した一実施形態である半導体材料ガス供給装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0013】
<半導体材料ガス供給装置>
先ず、本発明の一実施形態である半導体材料ガス供給装置の構成について、説明する。
図1に示すように、本実施形態の半導体材料ガス供給装置100は、収納容器13の内部に、第1反応容器1、第2反応容器2、及び第3反応容器3を、この順に鉛直方向上下に積層した構造である。
第1反応容器1、第2反応容器2、及び第3反応容器3には、蓋部、底部及び側壁によって規定される内部空間1z、内部空間2z、及び内部空間3zがそれぞれ存在する。
第2反応容器2の蓋部は、第1反応容器1の底部で代用してもよい。同様に、第3反応容器3の蓋部は第2反応容器2の底部で代用してもよい。このように、一段上の反応容器の底部を一段下の反応容器の蓋部として代用することによって、反応容器の構造をより簡略化できる。この場合、一段上の反応容器の底部と一段下の反応容器の上部とは、内部空間からガスが漏れないように密着することが好ましい。
【0014】
各反応容器は、800℃以上の高温に耐えることから、例えば、石英製又はグラファイト製とすることができるが、後述するように反応容器の側壁内部にガス流路を配設するため、グラファイトが好ましい。
【0015】
収納容器13は、内側に空間を有し、両端が開口した筒状の部材である。
収納容器13の材質としては、800℃以上の高温に耐えることが可能であれば特に限定されるものではなく、例えば、石英製とすることができる。
【0016】
収納容器13の上端には、フランジ部材11が位置し、収納容器13の上端開口を閉塞する。同様に、収納容器13の下端には、フランジ部材12が位置し、収納容器13の下端開口を閉塞する。
フランジ部材12には、後述する第1原料ガス流路6及び第2原料ガス流路7の導入口、並びに材料ガス流路8の導出口が設けられている。
フランジ部材11,12の材質としては、800℃以上の高温に耐えることが可能であれば特に限定されるものではなく、例えば、石英製とすることができる。
【0017】
収納容器13の外側には、収納容器内の反応容器を加熱するための加熱機構18が設置されている。加熱機構18としては、例えば、マントルヒーターを使用できる。前記マントルヒーターは、金属材料と原料ガスとの反応性を高めるため、800℃以上に加熱できるものが好ましく、1000℃以上に加熱できるものがより好ましい。
【0018】
各反応容器の側壁内部にはガス流路が配設されており、原料ガスG1は、キャリアガスとともに、第1原料ガス流路6を通じて最上段の第1反応容器1の内部空間1zの上部に供給される。原料ガスG1は、また、キャリアガスとともに、第2原料ガス流路7を通じて最下段の第3反応容器3の内部空間3zに供給される。
【0019】
第1反応容器1に供給された原料ガスG1の少なくとも一部は内部空間1zの下部に収容された金属材料Mと反応して生成ガスG3を生成する。生成ガスG3は、未反応の原料ガスG1及びキャリアガスとともに、第1生成ガス流路9を通じて、第2反応容器2の内部空間2zの上部に供給される。
【0020】
第2反応容器2に供給された原料ガスG1の少なくとも一部は内部空間2zの下部に収容された金属材料Mと反応して生成ガスG3を生成する。生成ガスG3は、未反応の原料ガスG1及びキャリアガスとともに、第2生成ガス流路10を通じて、第3反応容器3の内部空間3zの上部に供給される。
【0021】
第3反応容器3に供給された生成ガスG3は、第2原料ガス流路7を通じて内部空間3zに供給される原料ガスG1と反応して、半導体材料ガスG2を生成する。生成した半導体材料ガスG2は、材料ガス流路8を通じて、半導体材料ガス供給装置100から導出される。
【0022】
第1原料ガス流路6は、第1反応容器1と、第2反応容器2と、第3反応容器3とを、この順に、鉛直方向上下に積層することによって、第1反応容器1の側壁内部の原料ガス流路と、第2反応容器2の側壁内部の原料ガス流路と、第3反応容器3の側壁内部の原料ガス流路とが接続されることで形成される。
【0023】
第1生成ガス流路9、及び第2生成ガス流路10は、それぞれ、第1反応容器1と第2反応容器2、第2反応容器2と第3反応容器3を鉛直方向上下に積層することによって、形成される。
【0024】
第1反応容器1の上部には、スペーサ部材16を介して断熱材14が配置される。
また、第3反応容器3の下部には、スペーサ部材17を介して断熱材15が配置される。
なお、断熱材15及びスペーサ部材17には、第1原料ガス流路6、第2原料ガス流路7、及び材料ガス流路8が設けられている。
【0025】
断熱材14,15は、各反応容器からの放熱を低減し、金属材料Mと原料ガスG1との反応性が低下しないようにする。
断熱材としては、800℃以上の高温に耐えることから、例えば、アルミナ繊維、発砲石英又は真空断熱ガラスを用いることができ、低コストであることから、アルミナ繊維を用いることが好ましい。
【0026】
第1反応容器1、及び第2反応容器2のそれぞれの内部空間1z、及び内部空間2zの下部には、金属材料Mが収容されている。
金属材料Mは固体金属及び液体金属からなる群から選択される少なくとも1種であり、具体的には、例えば、ガリウム、アルミニウム及びインジウムが挙げられる。金属材料Mとしては、ガリウムが好ましい。
【0027】
原料ガスG1としては、例えば、ハロゲンガス及びハロゲン化水素ガスが挙げられる。
原料ガスG1としては、塩素ガス又は塩化水素ガスが好ましく、塩素ガスがより好ましい。
原料ガスG1と混合するキャリアガスとしては、例えば、窒素ガス、水素ガス、アルゴンガス及びヘリウムガスが挙げられる。前記キャリアガスとしては、窒素ガス、水素ガス、アルゴンガス及びヘリウムガスからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、窒素ガス又はアルゴンガスがより好ましく、空気(大気)から容易に製造でき、安価であることから、窒素ガスがさらに好ましい。
【0028】
次に、本実施形態の半導体材料ガス供給装置100の使用方法(半導体材料ガスの供給方法)について、説明する。
以下の説明では、金属材料Mとしてガリウムを使用し、原料ガスG1として塩素ガスを使用する場合について、説明する。
【0029】
ガリウムと塩素ガスとは、以下に示す2段階の反応により、半導体材料ガスとして三塩化ガリウムを生成する。
2Ga + Cl(g) → 2GaCl(g)
GaCl + Cl(g) → GaCl(g)
【0030】
具体的には、先ず、ガリウムを収容した最上段の第1反応容器に過剰に塩素ガスを導入する。
最上段の第1反応容器1において、ガリウムと塩素ガスとの反応により一塩化ガリウム(GaCl)が生成され、GaCl及び未反応Clはガリウムが収容された下段の第2反応容器2へ流れ込む。
第2反応容器2にはガリウムが収容されているため、上段から流れてきた未反応Clはガリウムと反応し、一塩化ガリウム(GaCl)が生成される。
【0031】
最終的に、最下段の第3反応容器3に大量の一塩化ガリウム(GaCl)が流れ込む。そして、最下段の第3反応容器3に塩素ガスを添加することで、2段階目の一塩化ガリウムと塩素ガスとの反応が起こり、三塩化ガリウム(GaCl)が生成される。
【0032】
本実施形態の半導体材料ガス供給装置100では、ガリウムが収容されている反応容器内で、1段階目の反応(GaCl生成)が起こり、ガリウムが収容されていない反応容器内で2段階目の反応(GaCl生成)を起こす2段階反応方式が採用されている。
【0033】
また、本実施形態の半導体材料ガス供給装置100では、反応容器を複数積層することによって、フットプリントを小さくすることができ、さらに金属原料Mの表面積を容易に稼ぐことができるため、半導体材料ガスG2の大量生成を見込むことができる。
生成した半導体材料ガスG2は、半導体材料ガス供給装置100から導出された後、例えば、半導体製造装置の成膜部に移送され、ウェハーの成膜に使用される。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の半導体材料ガス供給装置100によれば、装置内部に積層される反応容器(一般に「ボート」ともいう。)が鉛直方向上下に直列多段式で設けられている。このため、半導体材料ガスの供給量を増大し、さらに未反応の原料ガスを低減させることが可能である。
【0035】
また、本実施形態の半導体材料ガス供給装置100によれば、反応容器を鉛直方向上下に積層させることで形成される、側壁内部に設けられたガス流路を用いて、反応容器に原料ガスを導入できる。したがって、簡便な方法によりガス流路を形成でき、複雑な溶接を伴う配管類が無いため、低コストで操作性、メンテナンス性の良い反応容器が実現できる。
【0036】
本実施形態の半導体材料ガス供給装置100は、反応容器の内部空間に存在する液体金属Mの残量を確認するため、以下に示す第1~第4形態の残量確認機構のいずれかを備える。
【0037】
(第1形態)
図2に示すように、本実施形態の半導体材料ガス供給装置100に適用可能な第1形態の残量確認機構200は、内部空間1zの下部に液体金属Mを収容する第1反応容器1に位置し、内部空間1zに位置する一対の(2つの)電極201,202と、一対の電極201,202と導線を介して電気的に接続される検電回路203と、を有する。
すなわち、本形態の残量確認機構200は、電極式レベルスイッチである。
【0038】
本形態では、第1反応容器1は、蓋部1A、底部1B及び側壁1Cを有しており、これらの材質が、グラファイト等の導電材料である。
また、側壁1Cの上部の一部には、絶縁部材204が配設されている。絶縁部材204は、側壁1Cの上部に位置する蓋部1Aの荷重により側壁1Cの壁面と密着することで、半導体材料のガスの漏れを最小限となるように抑制する。
【0039】
一対の電極201,202は、それぞれL字状に折り曲げられており、絶縁部材204を貫通するように設けられている。これにより、電極201,202は、基端が第1反応容器1の外側にそれぞれ位置し、先端が、蓋部1A、底部1B及び側壁1Cによって区画される内部空間1zにそれぞれ位置している。
【0040】
電極201,202の材質は、特に限定されるものではないが、生成する半導体材料ガスが塩化物等の腐食性ガスである場合には、耐食性材料を用いることができる。耐食性材料としては、インコネルやハステロイ等の高耐食金属が好ましく、グラファイト等の炭素材料がより好ましい。電極201,201の材質として耐食性材料を使用することで、半導体材料ガスへの不純物混入を低減し、電極の長寿命化が図れる。
【0041】
電極201,202は、導電材料である側壁1Cと干渉しないように、絶縁部材204に設けられた貫通孔に挿通されている。これにより、電極201,202と、側壁1Cとが、電気的に絶縁される。
【0042】
ここで、電極201,202の絶縁部材204への取り付け方法としては、特に限定されない。例えば、図3に示すように、電極201に鍔部(フランジ部)201Aを設け、電極201を絶縁部材204に挿通し、鍔部201Aと絶縁部材204の壁面とを密着させた状態で、絶縁材料からなるビス205によって固定できる。なお、電極202についても同様である。
このように、電極201,202と絶縁部材204とを密着させて固定する構造とすることで、電極201,202と絶縁部材204との隙間からのガス漏れを抑制できる。
【0043】
図2に示すように、電極201,202の基端は、十分に冷却された位置にある検電回路203に導線等を介して電気的にそれぞれ接続されている。一方、電極201,202の先端は、内部空間1zの底部から異なる高さに浮かせた状態で、それぞれ配置されている。これにより、液体金属Mの液面が、電極201,202の一方の先端よりも下回った場合に電極間が絶縁される。このように、本形態の残量確認機構200は、電極201,202間の導電性を検電回路203によって監視することで、液体金属Mの残量を確認することができる。したがって、第1反応容器1への液体金属Mの補給の適切なタイミングを把握することが可能となる。
【0044】
(第1形態の変形例)
図4に示すように、本実施形態の半導体材料ガス供給装置100に適用可能な第1形態の変形例である残量確認機構210は、内部空間1zの下部に液体金属Mを収容する第1反応容器1に位置し、内部空間1zに位置する1つの電極201と、導線206,207と、検電回路203と、を有する。
すなわち、本形態の変形例である残量確認機構210は、電極202を備えない点で残量確認機構200と構成が異なる。したがって、残量確認機構200と共通の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0045】
導線206は、電極201と検電回路203との間に位置する。すなわち、電極201は、導線206を介して検電回路203と電気的に接続されている。
また、導線207は、第1反応容器1の側壁1Cと検電回路203との間に位置する。すなわち、導電性を有する部材で構成される側壁1Cは、導線207を介して検電回路203と電気的に接続されている。
これにより、液体金属Mの液面が、電極201の先端よりも下回った場合に電極201と側壁1Cとが絶縁される。このように、本形態の変形例である残量確認機構210は、電極201と側壁1Cとの間の導電性を検電回路203によって監視することで、液体金属Mの残量を確認することができる。
【0046】
また、本形態の変形例である残量確認機構210によれば、導電性を有する部材で構成された第1反応容器1(側壁1C)自体を一方の電極の代用として使用するため、容器内に挿通する電極を1本削減できる。これにより、残量確認機構210の構造が簡素化され、部品点数の削減や、電極201と絶縁部材204との隙間からのガス漏れをより抑制できる。
【0047】
以上説明したように、第1形態の残量確認機構200,210によれば、電極式レベルスイッチにより、一対の電極201,202間、又は電極201と側壁1Cとの間の導電性を検電回路203によって監視することで、液体金属Mの残量を確認することができる。
【0048】
なお、上述した第1形態の残量確認機構200,210では、電極201,202の形状としてL字状である場合を一例として説明したが、これに限定されない。
【0049】
また、上述した第1形態の残量確認機構200,210では、1本、又は2本の電極を備える場合を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、電極を3本以上備える構成としてもよい。電極を3本以上備える構成とした場合、複数本を異なる長さで配置することで、複数パターンの液面高さを検知可能となる。具体的には、配置した3本の電極のうち、1本のみを短くすることで、液面の上限と下限とを検知することができる。
【0050】
また、上述した第1形態の残量確認機構200では、2本の電極を備え、第1反応容器1(側壁1C)が導電材料で構成される場合に、絶縁部材204を設ける構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、第1反応容器1(側壁1C)が導電材料以外で構成される場合には、絶縁部材204を省略する構成としてもよい。
なお、第1反応容器1(側壁1C)が導電材料で構成される場合に、絶縁部材204を省略する構成としてもよい。この場合においても、理論上、電極201,202間の抵抗値を測定することで、液体金属Mの液面を測定可能である。
【0051】
また、上述した第1形態では、第1反応容器1にのみ、残量確認機構200,210を設ける構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、液体金属Mを収容する第2反応容器2に残量確認機構200,210を設ける構成としてもよいし、液体金属Mを収容するすべての反応容器に設ける構成としてもよい。
すなわち、上述した実施形態の半導体材料ガス供給装置100が3つ以上の反応容器を備える構成である場合、液体金属Mを収容する反応容器のうち、いずれか1つ以上の反応容器に、本形態の残量確認200,210を設ける構成とすればよい。
【0052】
(第2形態)
図5に示すように、本実施形態の半導体材料ガス供給装置100に適用可能な第2形態である残量確認機構300は、導電材料から構成される第1反応容器1(側壁1C)に接続される2つの導線301,302と、2つの導線301,302と接続される抵抗測定回路303と、を有する。
すなわち、本形態の残量確認機構200は、第1反応容器1全体の導電性の変化を利用するものである。
【0053】
ここで、物体の抵抗rは、以下の数式(1)により、算出できる。
【0054】
【数1】
【0055】
上記式(1)中、「ρ」は抵抗率、「l」は物体の長さ、「s」は物体の断面積である。すなわち、物体は断面積が変化することで抵抗が変化する。
【0056】
そこで、本形態の残量確認機構300は、第1反応容器1を導電性材料で構成し、側壁1Cの2か所、好ましくは図5に示すように液体金属Mを挟んで反対側の位置に導線301,302をそれぞれ接続し、抵抗測定回路303によって第1反応容器1の抵抗値を測定する。これにより、第1反応容器1に収容される液体金属Mの量が減少した際に、電流方向に対する液体金属Mの断面積「s」が減少し、容器全体の抵抗値が増加する。
したがって、本形態の残量確認機構300によれば、この抵抗値の増加を監視することで、液体金属Mの残量を確認することができる。したがって、第1反応容器1への液体金属Mの補給の適切なタイミングを把握することが可能となる。
【0057】
以上説明したように、第2形態の残量確認機構300によれば、液体金属Mを含む第1反応容器1全体の抵抗値の増加を監視することで、液体金属Mの残量を確認することができる。
【0058】
また、第2形態の残量確認機構300によれば、第1反応容器1の内部空間1zに電極を配置する必要がないため、側壁1Cに貫通孔を設ける必要がなく、残量確認機構300の構造が簡素化され、第1反応容器1からのガス漏れをより抑制できる。
【0059】
また、上述した第2形態では、第1反応容器1にのみ、残量確認機構300を設ける構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、液体金属Mを収容する第2反応容器2に残量確認機構300を設ける構成としてもよいし、液体金属Mを収容するすべての反応容器に設ける構成としてもよい。
すなわち、上述した実施形態の半導体材料ガス供給装置100が3つ以上の反応容器を備える構成である場合、液体金属Mを収容する反応容器のうち、いずれか1つ以上の反応容器に、本形態の残量確認300を設ける構成とすればよい。
【0060】
(第3形態)
図6に示すように、本実施形態の半導体材料ガス供給装置100に適用可能な第3形態の残量確認機構400は、第1反応容器1の下方に位置する複数の重量センサ(重量測定器)401,401を有する。
すなわち、本形態の残量確認機構400は、重量センサ401を用いる。
【0061】
重量センサ(重量測定器)401,401は、第1~第3反応容器1~3の下方であって、スペーサ部材17の直下に位置し、周方向に間隔を空けて配置されている。
このように、本形態の残量確認機構400によれば、重量センサ401,401を断熱材15によって第1~第3反応器1~3と熱的に遮蔽されたスペーサ部材17の直下に配置することで、液体金属Mを収容する第1~第3反応器1~3を重量センサ401,401の耐熱温度以上に加熱する場合においても好適に使用できる。
【0062】
また、本形態の残量確認機構400によれば、重量センサ401,401を収納容器13の内側の空間に配置するため、半導体材料ガス供給装置100全体の重量を測定することなく、重量変化の検出精度が向上する。
【0063】
本実施形態の半導体材料ガス供給装置100では、原料が消費されることで、消費された分はガスとして第1~第3反応器1~3の外部へと導出されるため、第1~第3反応器1~3の重量は減少する。
したがって、本形態の残量確認機構400によれば、複数の重量センサ401,401を用いて第1~第3反応器1~3の重量変化を監視することで、液体金属Mの残量を確認することができる。したがって、第1反応容器1への液体金属Mの補給の適切なタイミングを把握することが可能となる。
【0064】
なお、上述した第3形態の残量確認機構400では、複数の重量センサ401,401を備える場合を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、大型の重量センサを1つだけ備える構成としてもよい。
【0065】
また、上述した第3形態の残量確認機構400によれば、複数の重量センサ401,401が、収納容器13の内側の空間に配置する構成を一例として説明したが、これに限定されない。1以上の重量センサを収納容器13の外側(例えば、フランジ部材12の下方)に配置する構成としてもよい。
【0066】
(第4形態)
図7に示すように、本実施形態の半導体材料ガス供給装置100に適用可能な第4形態の残量確認機構500は、光学式レベルセンサ501と、窓部502,503と、トンネル部504と、を有する。
すなわち、本形態の残量確認機構500は、光学式レベルセンサ501を用いる。
【0067】
光学式レベルセンサ501は、光を測定対象に照射し、測定対象から反射する光を検知して、照射光と反射光とから測定対象までの距離を測定する。光学式レベルセンサ501としては、特に限定されないが、例えば、レーザ式レベルセンサが挙げられる。
光学式レベルセンサ501は、フランジ部材11の上方に位置する。
【0068】
窓部502は、光学式レベルセンサ501の鉛直方向下方に位置し、フランジ部材11を貫通する貫通孔を閉塞する部材である。
また、窓部503は、光学式レベルセンサ501及び窓部502の鉛直方向下方に位置し、第1反応容器1の蓋部1Aを貫通する貫通孔を閉塞する部材である。
窓部502,503は、光学式レベルセンサ501からの照射光を透過するとともに、半導体材料ガスによって腐食しない材質であることが好ましい。このような材質としては、特に限定されないが、例えば、石英が挙げられる。
【0069】
トンネル部504は、光学式レベルセンサ501、及び窓部502,503の鉛直方向下方に位置し、第1反応容器1の底部1Bを貫通する貫通孔である。具体的には、トンネル部504は、第1反応容器1の底部1Bから鉛直方向上方に所要の高さまで立設された柱状部と、柱状部の中央部分を鉛直方向上下に貫通する貫通孔と、を有する。トンネル部504により、第1反応容器1の内部空間1zと第2反応容器2の内部空間2zとが連通する。なお、トンネル部504は、第1反応容器1の底部1Bと同じ材質とすることが好ましい。
【0070】
本形態の残量確認機構500によれば、光学式レベルセンサ501、窓部502,503、及びトンネル部504を用いることで、反応容器のうち、上から2段目の第2反応容器2に収容される液体金属Mの液面高を確認できる。このように、第2反応容器2に収容される液体金属Mの液面高を監視することで、液体金属Mの残量を確認することができる。
【0071】
また、本形態の残量確認機構500によれば、トンネル部504が、第1反応容器1の底部1Bから鉛直方向上方に所要の高さまで立設された柱状部を有するため、第1反応容器1に収容される液体金属Mの液面高を規制することができる。これにより、第1反応容器1に液体金属Mを供給する際、液体金属Mの液面高が一定となる。
【0072】
また、本形態の残量確認機構500によれば、トンネル部504が、柱状部の中央部分を鉛直方向上下に貫通する貫通孔を有するため、ガス流路または液体金属Mの1段目から2段目への流入口と兼用することができる。
【0073】
なお、上述した第4形態の残量確認機構500では、トンネル部504を備え、第2反応容器2に収容される液体金属Mの液面高を監視する構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、トンネル部504を省略して、第1反応容器1に収容される液体金属Mの液面高を監視する構成としてもよい。
【0074】
本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 第1反応容器
1A 蓋部
1B 底部
1C 側壁
1z 内部空間
2 第2反応容器
2z 内部空間
100 半導体材料ガス供給装置
200,210,300,400,500 残量確認機構
201,202 電極
203 検電回路
206,207 導線
301,302 導線
303 抵抗測定回路
401 重量センサ
501 光学式レベルセンサ
502,503 窓部
504 トンネル部
M 液体金属
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7