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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166709
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
H01L21/78 S
H01L21/78 B
H01L21/78 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077407
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】小田中 健太郎
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA07
5F063AA15
5F063BA07
5F063BA13
5F063BB03
5F063CB06
5F063CB16
5F063CB27
5F063CC02
5F063CC13
5F063DD26
5F063DD37
5F063DD48
5F063DF06
5F063DF14
(57)【要約】
【課題】プラズマエッチングを利用して、基板と絶縁膜を介して基板の表面側に設けられている複数のデバイスとを有するウェーハを分割してチップを製造する際の加工精度を向上させることが可能なチップの製造方法を提供する。
【解決手段】プラズマエッチングによってウェーハを分割する際に利用されるマスクの形成(保護膜形成ステップ及び第2レーザービーム照射ステップ)に先立って、絶縁膜の表面側からレーザービームを複数のデバイスの境界に沿って照射することによって、絶縁膜を貫通する第1貫通路を形成する。この場合、絶縁膜の所望の部分を除去するためのレーザービームの照射条件と、マスクを形成するため、すなわち、保護膜の所望の部分を除去するためのレーザービームの照射条件とをそれぞれに好適なものにできる。その結果、ウェーハを分割してチップを製造する際の加工精度を向上させることが可能となる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と絶縁膜を介して該基板の表面側に設けられている複数のデバイスとを有するウェーハを該複数のデバイスの境界に沿って分割してチップを製造するチップの製造方法であって、
該絶縁膜の表面側から第1照射条件でレーザービームを該境界に沿って照射することによって、該絶縁膜を貫通して該基板を露出させる第1貫通路を形成する第1レーザービーム照射ステップと、
該第1レーザービーム照射ステップの後に、該複数のデバイスと該絶縁膜と該第1貫通路において露出する該基板とを覆うように保護膜を形成する保護膜形成ステップと、
該保護膜形成ステップの後に、該保護膜の表面側から該第1照射条件とは異なる第2照射条件で該レーザービームを該境界に沿って照射することによって、該第1貫通路に形成されている該保護膜を貫通して該基板を露出させる第2貫通路を形成する第2レーザービーム照射ステップと、
該第2レーザービーム照射ステップの後に、該基板が該境界に沿って分割されるまで該保護膜の表面側からプラズマエッチングを施す分割ステップと、
を備えるチップの製造方法。
【請求項2】
該絶縁膜は、該レーザービームが透過する材料からなる請求項1に記載のチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と絶縁膜を介して基板の表面側に設けられている複数のデバイスとを有するウェーハを複数のデバイスの境界に沿って分割してチップを製造するチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)等のデバイスのチップは、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の各種電子機器において不可欠の構成要素である。このようなチップは、例えば、複数のデバイスが形成されたウェーハを複数のデバイスの境界に沿って分割することで製造される。
【0003】
このようにウェーハを分割する方法として、当該境界が露出されるようにウェーハの表面にマスクを設けた後、このウェーハに対してプラズマエッチングを施すことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このマスクは、例えば、吸光剤を含む保護膜によってウェーハの表面を覆った後、保護膜の表面側からレーザービームを当該境界に沿って照射して保護膜の一部を除去することによって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-207737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チップの高品質化を目的として、半導体からなる基板と絶縁体からなる膜(絶縁膜)を介して基板の表面側に設けられている複数のデバイスとを有するウェーハ、いわゆる、SOI(Silicon on Insulator)ウェーハからチップが製造されることがある。そして、このSOIウェーハは、上述のようにプラズマエッチングを利用して分割されることがある。
【0006】
この場合、プラズマエッチング用のマスクを形成するために照射されるレーザービームによって、ウェーハの表面に設けられた保護膜の一部とともに絶縁膜の一部を除去することが多い。なお、この絶縁膜の一部は、一般的に、レーザービームの照射によって直接的に除去される訳ではない。
【0007】
具体的には、絶縁体は大きなバンドギャップエネルギーを有するため、このレーザービームは、一般的に、絶縁膜を透過する。他方、絶縁膜を透過したレーザービームは、基板を構成する半導体に吸収される。この場合、基板の表面近傍においてレーザーアブレーションが生じる。そして、このレーザーアブレーションに伴って、複数のデバイスの境界に位置する絶縁膜の一部が気化して除去される。
【0008】
ただし、絶縁膜が厚い場合及び/又は基板の表面の広範な領域においてレーザーアブレーションが生じる場合には、絶縁膜の所望の部分を除去することが困難になる又は絶縁膜の広範な部分が除去される、すなわち、膜剥がれが生じるおそれがある。
【0009】
この点に鑑み、本発明の目的は、プラズマエッチングを利用して、基板と絶縁膜を介して基板の表面側に設けられている複数のデバイスとを有するウェーハを分割してチップを製造する際の加工精度を向上させることが可能なチップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、基板と絶縁膜を介して該基板の表面側に設けられている複数のデバイスとを有するウェーハを該複数のデバイスの境界に沿って分割してチップを製造するチップの製造方法であって、該絶縁膜の表面側から第1照射条件でレーザービームを該境界に沿って照射することによって、該絶縁膜を貫通して該基板を露出させる第1貫通路を形成する第1レーザービーム照射ステップと、該第1レーザービーム照射ステップの後に、該複数のデバイスと該絶縁膜と該第1貫通路において露出する該基板とを覆うように保護膜を形成する保護膜形成ステップと、該保護膜形成ステップの後に、該保護膜の表面側から該第1照射条件とは異なる第2照射条件で該レーザービームを該境界に沿って照射することによって、該第1貫通路に形成されている該保護膜を貫通して該基板を露出させる第2貫通路を形成する第2レーザービーム照射ステップと、該第2レーザービーム照射ステップの後に、該基板が該境界に沿って分割されるまで該保護膜の表面側からプラズマエッチングを施す分割ステップと、を備えるチップの製造方法が提供される。
【0011】
好ましくは、該絶縁膜は、該レーザービームが透過する材料からなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、プラズマエッチングによってウェーハを分割する際に利用されるマスクの形成(保護膜形成ステップ及び第2レーザービーム照射ステップ)に先立って、絶縁膜の表面側からレーザービームを複数のデバイスの境界に沿って照射することによって、絶縁膜を貫通する第1貫通路を形成する。すなわち、本発明においては、マスクの形成に先立って、複数のデバイスの境界に位置する絶縁膜の一部が除去されている。
【0013】
この場合、絶縁膜の所望の部分を除去するためのレーザービームの照射条件と、マスクを形成するため、すなわち、保護膜の所望の部分を除去するためのレーザービームの照射条件とをそれぞれに好適なものにできる。その結果、本発明においては、ウェーハを分割してチップを製造する際の加工精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(A)は、ウェーハを含むフレームユニットの一例を模式的に示す斜視図であり、図1(B)は、図1(A)に示されるフレームユニットの断面を模式的に示す断面図である。
図2図2は、ウェーハを複数のデバイスの境界に沿って分割してチップを製造するチップの製造方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
図3図3(A)は、第1レーザービーム照射ステップの様子を模式的に示す一部断面側面図であり、図3(B)は、第1レーザービーム照射ステップ後のウェーハを模式的に示す部分拡大断面図である。
図4図4(A)は、保護膜形成ステップの様子を模式的に示す一部断面側面図であり、図4(B)は、保護膜形成ステップ後のウェーハを模式的に示す部分拡大断面図である。
図5図5は、第2レーザービーム照射ステップ後のウェーハを模式的に示す部分拡大断面図である。
図6図6は、分割ステップを実施するために利用されるプラズマ生成装置の一例を模式的に示す図である。
図7図7は、分割ステップにおいて分割されるウェーハから製造されるチップの一例を模式的に示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1(A)は、ウェーハを含むフレームユニットの一例を模式的に示す斜視図であり、図1(B)は、図1(A)に示されるフレームユニットの断面を模式的に示す断面図である。図1(A)及び図1(B)に示されるフレームユニット11は、チップの製造に利用されるウェーハ13を含む。
【0016】
このウェーハ13は、例えば、シリコン(Si)等の半導体からなる基板15を有する。この基板15の表面には、例えば、酸化シリコン(SiO)又は窒化シリコン(Si)等の絶縁体からなる絶縁膜17が設けられている。この絶縁膜17の厚さは、例えば、5μm~30μmである。
【0017】
さらに、ウェーハ13の表面側には、互いに独立した複数のデバイス19が設けられている。すなわち、複数のデバイス19は、絶縁膜17を介して基板15の表面側に設けられている。そして、複数のデバイス19は、絶縁膜17の表面においてマトリックス状に配列されている。すなわち、複数のデバイス19の境界は、格子状に延在する。
【0018】
また、ウェーハ13の裏面、すなわち、基板15の裏面には、基板15よりも直径が長い円板状のテープ21の中央領域が貼着されている。このテープ21は、例えば、可撓性を有するフィルム状の基材層と、基材層の一面(基板15側の面)に設けられた粘着層(糊層)とを有する。
【0019】
具体的には、この基材層は、ポリオレフィン(PO)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)又はポリスチレン(PS)等からなる。また、この粘着層は、紫外線硬化型のシリコーンゴム、アクリル系材料又はエポキシ系材料等からなる。
【0020】
また、テープ21の外周領域には、ウェーハ13よりも直径が長い円形の開口23aが形成されている環状のフレーム23が貼着されている。このフレーム23は、例えば、アルミニウム(Al)等の金属からなる。
【0021】
図2は、ウェーハ13を複数のデバイス19の境界に沿って分割してチップを製造するチップの製造方法の一例を模式的に示すフローチャートである。この方法においては、まず、絶縁膜17の表面側からレーザービームを照射することによって、絶縁膜17を貫通して基板15を露出させる第1貫通路を形成する(第1レーザービーム照射ステップ:S1)。
【0022】
図3(A)は、第1レーザービーム照射ステップ(S1)の様子を模式的に示す一部断面側面図であり、図3(B)は、第1レーザービーム照射ステップ(S1)後のウェーハ13を模式的に示す部分拡大断面図である。この第1レーザービーム照射ステップ(S1)は、例えば、図3(A)に示されるレーザー加工装置2を利用して実施される。
【0023】
このレーザー加工装置2は、保持テーブル4を有する。この保持テーブル4は、セラミックス等からなる円板状の枠体6を有する。この枠体6は、円板状の底壁6aと、この底壁6aの外縁部から立設する円筒状の側壁6bとを有する。すなわち、枠体6の上面側には、底壁6a及び側壁6bによって画定される円板状の凹部が形成されている。
【0024】
そして、枠体6の上面側に形成されている凹部には、この凹部の直径と概ね等しい直径を有する円板状のポーラス板8が固定されている。このポーラス板8は、例えば、多孔質セラミックスからなる。そして、フレームユニット11がレーザー加工装置2に搬入されると、保持テーブル4の上面にテープ21を介してウェーハ13が置かれる。
【0025】
また、保持テーブル4の周りには、複数のクランプ10が設けられている。複数のクランプ10は、保持テーブル4の周方向に沿って概ね等間隔に設けられている。そして、フレームユニット11がレーザー加工装置2に搬入されると、保持テーブル4の上面よりも低い位置において複数のクランプ10がフレーム23を把持する。
【0026】
また、保持テーブル4のポーラス板8は、枠体6の底壁6aに形成されている貫通孔を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)と連通する。そして、フレームユニット11がレーザー加工装置2に搬入された状態で吸引源を動作させると、テープ21を介してウェーハ13に吸引力が作用してウェーハ13が保持テーブル4に保持される。
【0027】
また、保持テーブル4及び複数のクランプ10は、水平方向移動機構(不図示)に連結されている。この水平方向移動機構は、例えば、ボールねじ及びモータ等を有する。そして、この水平方向移動機構を動作させると、保持テーブル4及び複数のクランプ10が水平方向(例えば、前後方向及び/又は左右方向)に沿って移動する。
【0028】
さらに、保持テーブル4の上方には、レーザー照射ユニットのヘッド12が設けられている。このレーザー照射ユニットは、絶縁膜17を透過し、かつ、基板15に吸収される波長(例えば、355nm)のパルス状のレーザービームLBを生成するレーザー発振器(不図示)を有する。このレーザー発振器は、例えば、レーザー媒質としてNd:YAG等を有する。
【0029】
また、ヘッド12は、集光レンズ及びミラー等の光学系を収容する。そして、レーザー発振器でレーザービームLBが生成されると、ヘッド12に収容された光学系を介して、レーザービームLBが保持テーブル4に向けて照射される。
【0030】
また、ヘッド12は、鉛直方向移動機構(不図示)に連結されている。この鉛直方向移動機構は、例えば、ボールねじ及びモータ等を有する。そして、この鉛直方向移動機構を動作させると、ヘッド12が鉛直方向に沿って移動する。
【0031】
そして、第1レーザービーム照射ステップ(S1)においては、ウェーハ13がテープ21を介して保持テーブル4に保持された状態で、複数のデバイス19の境界に沿ってレーザービームLBを照射する。
【0032】
具体的には、ヘッド12からウェーハ13に向けて照射されるレーザービームLBの集光点を基板15の表面近傍に位置付けながら、このレーザービームLBが複数のデバイス19の境界に沿ってウェーハ13に照射されるように保持テーブル4を移動させる(図3(A)参照)。
【0033】
ここで、第1レーザービーム照射ステップ(S1)においては、レーザービームLBの照射条件が絶縁膜17の所望の部分を除去するのに適したものに設定される。具体的には、この時のレーザービームLBは、パワーが、例えば、3W~5W、代表的には4Wとなり、また、周波数が、例えば、1500kHz~2500kHz、代表的には2000kHzとなるように設定される。
【0034】
さらに、レーザービームLBは、平面視において円状の集光点を形成し、この集光点の直径が、例えば、8μm以下、好ましくは、6μm以下になるように設定される。また、この時の保持テーブル4の移動速度は、例えば、300mm/s~500mm/s、代表的には400mm/sとなるように設定される。
【0035】
これにより、レーザービームLBが絶縁膜17を透過して基板15に吸収されて基板15の表面近傍においてレーザーアブレーションが生じる。そして、このレーザーアブレーションに伴って、複数のデバイス19の境界に位置する絶縁膜17の一部が気化して除去される。その結果、絶縁膜17を貫通して基板15の表面を露出させる第1貫通路25がウェーハ13に形成される(図3(B)参照)。
【0036】
第1レーザービーム照射ステップ(S1)の後には、複数のデバイス19と絶縁膜17と第1貫通路25において露出する基板15とを覆うように保護膜を形成する(保護膜形成ステップ:S2)。図4(A)は、保護膜形成ステップ(S2)の様子を模式的に示す一部断面側面図であり、図4(B)は、保護膜形成ステップ(S2)後のウェーハ13を模式的に示す部分拡大断面図である。
【0037】
この保護膜形成ステップ(S2)は、例えば、図4(A)に示される塗布装置14を利用して実施される。この塗布装置14は、上述した保持テーブル4と同様の構造を有する保持テーブル16と、上述した複数のクランプ10と同様の構造を有する複数のクランプ18とを有する。また、保持テーブル16は、上述した保持テーブル4と同様にエジェクタ等の吸引源(不図示)と連通する。
【0038】
また、保持テーブル16及び複数のクランプ18は、回転機構(不図示)に連結されている。この回転機構は、例えば、プーリ及びモータ等を有する。そして、この回転機構を動作させると、保持テーブル16の上面の中心を通り、かつ、鉛直方向に沿った直線を回転軸として保持テーブル16及び複数のクランプ18が回転する。
【0039】
さらに、保持テーブル16の上方には、保持テーブル16に保持されたフレームユニット11に含まれるウェーハ13の表面に液状樹脂Lを供給する樹脂供給ノズル20が設けられている。この液状樹脂Lは、例えば、ポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone)又はポリビニルアルコール(Polyvinyl Alcohol)等の水溶性樹脂と、プロピレングリコールモノメチルエーテル(Propylene Glycol Monomethyl Ether)等の有機溶剤とを含む溶液である。
【0040】
なお、水溶性樹脂は、液状樹脂Lを乾燥させることによって形成される保護膜の主成分となる。また、有機溶剤は、液状樹脂Lの表面張力を低下させ、液状樹脂Lをウェーハ13に塗布した際の塗りムラを低減させる。また、液状樹脂Lには、フェルラ酸(Ferulic Acid)等の光吸収剤が添加されていてもよい。この光吸収剤は、上述したレーザービームLBを吸収して保護膜においてレーザーアブレーションを生じさせる。
【0041】
そして、保護膜形成ステップ(S2)においては、いわゆるスピンコート法によって、テープ21を介して保持テーブル16に保持されたウェーハ13の表面に保護膜を形成する。具体的には、ウェーハ13の表面の中心近傍に樹脂供給ノズル20から所定量の液状樹脂Lを供給する(図4(A)参照)。そして、保持テーブル16を所定の速度(例えば、1500rpm以上3000rpm以下)で回転させる。
【0042】
これにより、ウェーハ13の表面の全域に液状樹脂Lが塗布される。具体的には、複数のデバイス19と絶縁膜17と該第1貫通路25において露出する基板15とを覆うように液状樹脂Lが塗布される。そして、保持テーブル16の回転を停止させてから、この液状樹脂Lを乾燥させる。その結果、ウェーハ13の表面を被覆する水溶性の保護膜27が形成される(図4(B)参照)。
【0043】
保護膜形成ステップ(S2)の後には、保護膜27の表面側からレーザービームLBを照射することによって、第1貫通路25に形成されている保護膜27を貫通して基板15を露出させる第2貫通路を形成する(第2レーザービーム照射ステップ:S3)。図5は、第2レーザービーム照射ステップ(S3)後のウェーハ13を模式的に示す部分拡大断面図である。
【0044】
この第2レーザービーム照射ステップ(S3)は、例えば、図3(A)に示されるレーザー加工装置2を利用して実施される。そして、第2レーザービーム照射ステップ(S3)においては、ウェーハ13がテープ21を介して保持テーブル4に保持された状態で、複数のデバイス19の境界に沿ってレーザービームLBを照射する。
【0045】
具体的には、ヘッド12からウェーハ13に向けて照射されるレーザービームLBの集光点を基板15の表面近傍に位置付けながら、このレーザービームLBが複数のデバイス19の境界に沿ってウェーハ13に照射されるように保持テーブル4を移動させる。
【0046】
ここで、第2レーザービーム照射ステップ(S3)においては、レーザービームLBの照射条件が保護膜27の所望の部分を除去するのに適したものに設定される。具体的には、この時のレーザービームLBは、パワーが、例えば、0.5W~3W、代表的には1Wとなり、また、周波数が、例えば、100kHz~1500kHz、代表的には500kHzとなるように設定される。
【0047】
さらに、レーザービームLBは、平面視において円状の集光点を形成し、この集光点の直径が、例えば、8μm以下、好ましくは、6μm以下になるように設定される。また、この時の保持テーブル4の移動速度は、例えば、100mm/s~300mm/s、代表的には200mm/sとなるように設定される。
【0048】
これにより、レーザービームLBが、例えば、保護膜27に含まれる吸光剤に吸収されて保護膜27においてレーザーアブレーションが生じる。その結果、第1貫通路25に形成されている保護膜27を貫通して基板15を露出させる第2貫通路29がウェーハ13に形成される(図5参照)。
【0049】
第2レーザービーム照射ステップ(S3)の後には、基板15が複数のデバイス19の境界に沿って分割されるまで保護膜27の表面側からプラズマエッチングを施す(分割ステップ:S4)。図6は、分割ステップ(S4)を実施するために利用されるプラズマ生成装置の一例を模式的に示す図である。
【0050】
図6に示されるプラズマ生成装置22は、導電性材料からなり、かつ、接地されているチャンバ24を有する。このチャンバ24には、その内側にフレームユニット11を搬入し、また、その内側からフレームユニット11を搬出するための搬入出口24aが形成されている。
【0051】
この搬入出口24aには、チャンバ24の内部空間と外部空間とを遮断し、又は、連通させることが可能なゲートバルブ26が設けられている。また、チャンバ24には、その内部空間を排気するための排気口24bが形成されている。
【0052】
この排気口24bは、配管28等を介して真空ポンプ等の排気装置30と連通している。また、チャンバ24の内面には支持部材32が設けられており、この支持部材32はテーブル34を支持する。
【0053】
そして、テーブル34の上部には、静電チャック(不図示)が設けられている。また、テーブル34の内部には、静電チャックの下方に位置する円板状の電極34aが設けられている。この電極34aは、整合器36を介して高周波電源38に接続されている。
【0054】
また、チャンバ24のテーブル34の上面と対向する位置には円板状の開口が形成されており、この開口には軸受け40を介してチャンバ24に支持されるガス噴出ヘッド42が設けられている。このガス噴出ヘッド42は、導電性材料からなり、また、整合器44を介して高周波電源46に接続されている。
【0055】
また、ガス噴出ヘッド42の内部には、空洞(ガス拡散空間)42aが形成されている。また、ガス噴出ヘッド42の内側の部分(例えば、下部)には、ガス拡散空間42aとチャンバ24の内部空間を連通する複数のガス吐出口42bが形成されている。また、ガス噴出ヘッド42の外側の部分(例えば、上部)には、ガス拡散空間42aに所定のガスを供給するための2つのガス供給口42c,42dが形成されている。
【0056】
さらに、ガス供給口42cは、配管48a等を介して、例えば、C等のフッ化炭素系ガス及び/又はSF等のフッ化硫黄系ガス等を供給するガス供給源50aと連通している。また、ガス供給口42dは、配管48b等を介して、例えば、Ar等の不活性ガス及びOガス等を供給するガス供給源50bと連通している。
【0057】
そして、分割ステップ(S4)においては、例えば、いわゆるボッシュプロセス(Bosch Process)によって複数のデバイス19の境界に沿って基板15を分割する。具体的には、まず、ゲートバルブ26がチャンバ24の内部空間と外部空間とを連通させた状態でテープ21が下になるようにフレームユニット11をテーブル34の上に搬入する。
【0058】
次いで、テーブル34の静電チャックによってテープ21を介してウェーハ13を保持する。次いで、排気装置30によってチャンバ24の内部空間を排気して真空状態とする。次いで、基板15が複数のデバイス19の境界に沿って分割されるまで、等方性のプラズマエッチングと、保護膜の形成と、異方性のプラズマエッチングとを繰り返し実施する。
【0059】
具体的には、この等方性のプラズマエッチングは、例えば、チャンバ24の内部空間にガス供給源50aからSFを含むガスを供給し、かつ、ガス供給源50bからArガスを供給した状態で、ガス噴出ヘッド42に高周波電源46から高周波電力を提供することによって実施される。これにより、チャンバ24の内部空間において生成されるF系ラジカル等によって、第2貫通路29において露出する基板15が等方的にエッチングされる。
【0060】
また、この保護膜の形成は、例えば、チャンバ24の内部空間にガス供給源50aからCを含むガスを供給し、かつ、ガス供給源50bからArを含むガスを供給した状態で、ガス噴出ヘッド42に高周波電源46から高周波電力を提供することによって実施される。これにより、第2貫通路29において露出する基板15の表面にCFラジカルが堆積してフッ化炭素を含む膜が形成される。
【0061】
あるいは、この保護膜の形成は、チャンバ24の内部空間にガス供給源50bからO及びArを含むガスを供給した状態で、ガス噴出ヘッド42に高周波電源46から高周波電力を提供することによって実施されてもよい。これにより、第2貫通路29において露出する基板15を構成する材料(例えば、シリコン)と酸素イオンとが反応して、この基板15の表面に酸化膜が形成される。
【0062】
また、この異方性のプラズマエッチングは、例えば、チャンバ24の内部空間にガス供給源50aからSFを含むガスを供給し、かつ、ガス供給源50bからArガスを供給した状態で、テーブル34の内部に設けられた電極34aに高周波電源38から高周波電力を提供し、かつ、ガス噴出ヘッド42に高周波電源46から高周波電力を提供することによって実施される。これにより、チャンバ24の内部空間において生成されるF系イオン等がテーブル34に向けて加速されることによって基板15が異方的にエッチングされる。
【0063】
図7は、分割ステップ(S4)において分割されるウェーハ13から製造されるチップの一例を模式的に示す部分拡大断面図である。ボッシュプロセスによって複数のデバイス19の境界に沿って基板15を分割すると、図7に示されるように、側面が凹凸形状を有するチップ31がウェーハ13から製造される。
【0064】
図2に示される方法においては、プラズマエッチングによってウェーハ13を分割する際に利用されるマスクの形成(保護膜形成ステップ(S2)及び第2レーザービーム照射ステップ(S3))に先立って、絶縁膜17の表面側からレーザービームLBを複数のデバイス19の境界に沿って照射することによって、絶縁膜17を貫通する第1貫通路25を形成する。すなわち、図2に示される方法においては、マスクの形成に先立って、複数のデバイス19の境界に位置する絶縁膜17の一部が除去されている。
【0065】
この場合、絶縁膜17の所望の部分を除去するためのレーザービームLBの照射条件と、マスクを形成するため、すなわち、保護膜27の所望の部分を除去するためのレーザービームLBの照射条件とをそれぞれに好適なものにできる。その結果、図2に示される方法においては、ウェーハ13を分割してチップ31を製造する際の加工精度を向上させることが可能となる。
【0066】
なお、上述した内容は本発明の一態様であって、本発明の内容は上述した内容に限定されない。例えば、上述した分割ステップ(S4)においては、等方性のプラズマエッチングと保護膜の形成とを実施することなく、異方性のプラズマエッチングのみを実施することによって、複数のデバイス19の境界に沿って基板15を分割してもよい。
【0067】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0068】
2 :レーザー加工装置
4 :保持テーブル
6 :枠体(6a:底壁、6b:側壁)
8 :ポーラス板
10:クランプ
11:フレームユニット
12:ヘッド
13:ウェーハ
14:塗布装置
15:基板
16:保持テーブル
17:絶縁膜
18:クランプ
19:デバイス
20:樹脂供給ノズル
21:テープ
22:プラズマ生成装置
23:フレーム
24:チャンバ(24a:搬入出口、24b:排気口)
25:第1貫通路
26:ゲートバルブ
27:保護膜
28:配管
29:第2貫通路
30:排気装置
31:チップ
32:支持部材
34:テーブル(32a:電極)
36:整合器
38:高周波電源
40:軸受け
42:ガス噴出ヘッド
(40a:ガス拡散空間、40b:ガス吐出口、40c,40d:ガス供給口)
44:整合器
46:高周波電源
48a,48b:配管
50a,50b:ガス供給源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7