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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166746
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】加熱装置及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20231115BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20231115BHJP
   H01L 21/324 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/31 C
H01L21/324 Q
H01L21/324 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077487
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】津田 栄之輔
【テーマコード(参考)】
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
5F045AA08
5F045BB02
5F045DP03
5F045EF05
5F045EF08
5F045EH14
5F045EH20
5F045EK07
5F045EM02
5F045EM05
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA12
5F131BA19
5F131BA24
5F131CA03
5F131EA03
5F131EA04
5F131EA05
5F131EB11
5F131EB81
(57)【要約】
【課題】載置される基板を加熱する加熱装置を厚くせずに、当該加熱装置による基板の加熱の面内均一性を改善する。
【解決手段】直接的または他の部材を介して間接的に載置される基板を加熱する加熱装置であって、線状のヒータと、前記基板側とは反対側から前記基板側に向けて凹み、内部に前記ヒータが固定される溝を有する基材と、を有し、前記溝は、前記ヒータと接触する接触部を手前側に有し、前記ヒータと接触しない非接触部を奥側に有する、加熱装置である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接的または他の部材を介して間接的に載置される基板を加熱する加熱装置であって、
線状のヒータと、
前記基板側とは反対側から前記基板側に向けて凹み、内部に前記ヒータが固定される溝を有する基材と、を有し、
前記溝は、前記ヒータと接触する接触部を手前側に有し、前記ヒータと接触しない非接触部を奥側に有する、加熱装置。
【請求項2】
前記非接触部は、手前側が開放された空間を形成する、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記溝の延在方向の断面視断面視において、前記空間の手前側の開放部分の幅は、前記ヒータの太さの75%以上である、請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記空間は、前記溝の延在方向の断面視において矩形状である、請求項2または3に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記空間は、前記溝の延在方向の断面視において奥側に向けて幅が拡がるように形成されている、請求項2または3に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記基材は、前記空間に連通する排気路を有する、請求項2または3に記載の加熱装置。
【請求項7】
請求項1に記載の加熱装置と、当該加熱装置が内部に設置される処理容器と、を備える、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱装置及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、処理装置が有する処理容器内の底部には載置台構造が設けられている。載置台構造は、半導体ウェハを載置して支持するための載置台を備える。載置台は、肉厚で透明な石英よりなる載置台本体と、載置台本体の上面側に設けられて載置台本体とは異なる不透明な誘電体よりなる熱拡散板とにより構成されている。載置台本体内には、加熱手段が埋め込むようにして設けられている。加熱手段は、カーボン線よりなるヒータ素線を有しており、載置台本体の略全面に亘って所定のパターン形状に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-54838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、載置される基板を加熱する加熱装置を厚くせずに、当該加熱装置による基板の加熱の面内均一性を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、直接的または他の部材を介して間接的に載置される基板を加熱する加熱装置であって、線状のヒータと、前記基板側とは反対側から前記基板側に向けて凹み、内部に前記ヒータが固定される溝を有する基材と、を有し、前記溝は、前記ヒータと接触する接触部を手前側に有し、前記ヒータと接触しない非接触部を奥側に有する、加熱装置である。
【発明の効果】
【0006】
本開示にかかる技術によれば、載置される基板を加熱する加熱装置を厚くせずに、当該加熱装置による基板の加熱の面内均一性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態にかかる基板処理装置としての成膜装置の構成の概略を模式的に示す説明図である。
図2図1の載置台の部分拡大断面図である。
図3】基材の部分拡大断面図である。
図4】基材の寸法を説明するための図である。
図5】載置台の変形例1を示す部分拡大断面図である。
図6】載置台の変形例2を示す部分拡大断面図である。
図7】溝の変形例1を示す部分拡大断面図である。
図8】溝の変形例2を示す部分拡大断面図である。
図9】載置台の変形例3を示す断面図である。
図10】載置台の内部のヒータでウェハに対する載置面を加熱したときの当該載置面の温度について行ったシミュレーションの結果を示す図である。
図11】載置台の内部のヒータでウェハに対する載置面を加熱したときの当該載置面の温度について行ったシミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイス等の製造プロセスでは、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)等の基板に対して、所定の膜を形成する成膜処理等の各種基板処理が行われる。この基板処理は、減圧された処理容器内の載置台の載置面に基板が載置された状態で行われる。
【0009】
また、基板処理は、基板を加熱した状態で行われる場合がある。この場合、基板の加熱は加熱装置により行われる。加熱装置は、板状に形成された基材と、線状に形成され基材内に配置されるヒータとを有し、ヒータにより基材を加熱することにより、載置面である基材の上面に載置された基板を加熱し、または、載置面を有すると共に基材上に配設された他の部材を介して基板を加熱する。
【0010】
しかし、この加熱装置により加熱する場合、基板におけるヒータの直上の部分が周囲より高温となってしまうことがある。すなわち、ヒータの配設パターンと同形状の温度分布が基板に生じてしまうことがある。そして、その結果、ヒータの配設パターンが、基板の処理結果に転写されてしまうことがある。
ヒータが内部に配置される基材を厚くすること等により、加熱装置による基板の加熱の面内均一性の改善を図ることはできるが、ヒータによる基板の加熱の応答性等の面で上述のような厚型化は好ましくない。
【0011】
そこで、本開示にかかる技術は、載置される基板を加熱する加熱装置を厚くせずに、当該加熱装置による基板の加熱の面内均一性を改善する。
【0012】
以下、本実施形態にかかる加熱装置及び基板処理装置について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
<成膜装置>
図1は、本実施形態にかかる基板処理装置としての成膜装置の構成の概略を模式的に示す説明図であり、成膜装置の一部を断面で示している。
【0014】
図1の成膜装置1は、基板としてのウェハWを処理し(具体的には成膜処理し)、当該ウェハW上に所定の膜を形成するように構成されている。
【0015】
成膜装置1は、処理容器10と、加熱装置としての載置台30とを有する。
処理容器10は、その内部に載置台30が設置されるものであり、減圧可能に構成されている。この処理容器10は、例えば有底の円筒状に形成された容器本体10aを有する。
【0016】
容器本体10aは例えば金属材料を用いて形成される。容器本体10aの側壁11には、ウェハWの搬入出口11aが設けられており、この搬入出口11aには、当該搬入出口11aを開閉するゲートバルブ12が設けられている。
【0017】
容器本体10aの底壁13には、排気口13aが形成されている。また、排気口13aには、排気管20の一端が接続されている。排気管20の他端は、真空ポンプ等を有する排気機構21に接続されている。
【0018】
載置台30は、基材31と、ヒータ32と、蓋部材33とを有する。
基材31は、板状(具体的には円板状)に形成されており、本例において、その上面が、ウェハWが載置される載置面31aを構成する。基材31は、熱伝導率が高い金属材料(例えばアルミニウム)から形成されている。
【0019】
ヒータ32は、線状に形成されたシースヒータである。ヒータ32は、基材31の内部(具体的には後述の溝31bの内部)に、基材31の板面に沿って1本または複数本配設されている。ヒータ32は、1本の場合、例えば複数本が平面視渦巻き状に配置され、複数本の場合、それぞれ環状且つ同心となるように配置される。これによりヒータ32が基材31の縦断面視において等間隔で並ぶようになっている。ヒータ32はヒータ電源40に接続されている。ヒータ電源40は後述の制御部Uに制御される。
【0020】
蓋部材33は、板状(具体的には円板状)に形成されており、基材31の後述の溝31bの開口を塞ぐ。蓋部材33は、例えば金属材料(例えばアルミニウムから形成されている)。
【0021】
また、載置台30には、バイアス用の高周波電力を供給するための高周波電源50が接続されている。高周波電源50は具体的には例えば載置台30の蓋部材33に接続されている。
【0022】
さらに、載置台30には、上下方向に貫通する貫通孔30aが複数形成されている。各貫通孔30aには後述のリフトピン60が挿通される。
載置台30のより詳細な構造は後述する。
【0023】
載置台30は、例えば、処理容器10の底部中央に立設された支持部材35により支持されている。
また、載置台30に対して、上述の貫通孔30aに挿通されるリフトピン60が受けられている。リフトピン60は、処理容器10の外部から当該処理容器10内に挿入されるウェハ搬送装置(図示せず)と載置台30との間でウェハWを受け渡すためのものである。このリフトピン60は、載置台30の載置面31aから貫通孔30aを介して突出可能に構成されている。
【0024】
また、処理容器10は、容器本体10aの上部開口を塞ぐ天壁部材10bを有する。天壁部材10bは、電気的絶縁性を有する絶縁部材10cを介して容器本体10aの上端に接続されている。
【0025】
天壁部材10bは、例えば金属材料を用いて形成され、処理空間Sに処理ガスを噴射するシャワーヘッド70を有する。シャワーヘッド70内には例えばガス拡散室71a、71bが設けられている。ガス拡散室70a、70bに導入された処理ガスは、当該ガス拡散室70a、70b内で水平方向に拡散された後、当該ガス拡散室70a、70bにそれぞれ連通された噴射孔72a、72bを介して、処理空間Sに噴射される。噴射孔72a、72bはそれぞれ複数設けられている。ガス拡散室70a、70bはそれぞれ、成膜ガスの供給源等を有する供給機構(図示せず)が一端に接続された供給管(図示せず)の他端に接続されている。
【0026】
天壁部材10bと絶縁部材10cとの間には、気密性を維持するため、Oリング等のシール部材10dが設けられている。
さらに、天壁部材10bには、プラズマ生成用の高周波電力を供給するための高周波電源51がマッチング回路52を介して接続されている。
【0027】
さらに、成膜装置1では、リフトピン60に対し、支持部材80と、移動機構81とが設けられている。支持部材80は、リフトピン60を支持する。支持部材80は例えば平面視円環状に形成されている。移動機構81は、支持部材80を昇降させることによりリフトピン60を昇降させる。移動機構81は、支持部材80を昇降させるための駆動力を発生するモータ等の駆動源(図示せず)を有する。
【0028】
以上のように構成される成膜装置1には、制御部Uが設けられている。制御部Uは、例えばCPU等のプロセッサやメモリを備えたコンピュータにより構成され、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、成膜装置1によるウェハWの処理を実現するためのプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部Uにインストールされたものであってもよい。また、上記記憶媒体は、一時的なものであっても、非一時的なものであってもよい。
【0029】
<載置台30>
続いて、載置台30の構造の詳細について説明する。図2は、載置台30の部分拡大断面図である。図3は、基材31の部分拡大断面図である。図4は、基材31の寸法を説明するための図である。
【0030】
前述のように、載置台30は、基材31と、ヒータ32と、蓋部材33とを有する。
基材31は、図2及び図3に示すように、内部にヒータ32が固定される溝31bを有する。
【0031】
溝31bは、断面視において、基材31におけるウェハW側とは反対側からウェハW側に向けて凹むように、すなわち、基材31の載置面31aと対向する下面31cから上方に凹むように形成されている。なお、溝31bの平面視における形状は、図示は省略するが、ヒータ32の配設パターンに対応した形状であり、例えば基材31の中心を中心とした渦巻き状または環状(具体的には円環状)である。
この溝31bは、ヒータ32と接触する接触部100を手前側すなわち下側に有し、ヒータ32と接触しない非接触部110を奥側すなわち上側に有する。
【0032】
接触部100は例えばその大部分がヒータ32と接触するように形成されている。この接触部100は、手前側及び奥側すなわち下側及び上側が開放されヒータ32の少なくとも半分が収容される空間S1を形成する。ヒータ32は、接触部100の奥側端部すなわち上端部により、基材31の内部において上下方向に関し位置決めされる。
【0033】
非接触部110はその全体がヒータ32と全く接触しないように形成されている。この非接触部110は、手前側すなわち下側が開放された空間S2を形成する。空間S2は具体的には空間S1に向けて開放されている。
【0034】
言い換えると、非接触部110は、基材31の下面から凹む接触部100の奥端部すなわち上端部からさらに凹むように形成されている。
【0035】
また、非接触部110が形成する空間S2は、溝31bの延在方向の断面視(すなわち縦断面視)において、例えば、矩形状である。なお、接触部100が形成する空間S1は、縦断面視において、例えば、矩形の上端に半円を接続したような形状である。
【0036】
蓋部材33は、図2に示すように、溝31bの下側の開口を塞ぎ且つ接触部100と当該蓋部材33の間でヒータ32を圧し潰すような状態で、基材31に固定される。基材31と蓋部材33との固定は例えばロウ付けにより行われる。
ヒータ32は、図3に示すように、蓋部材33等による圧し潰すような外圧が作用していない状態において、例えば断面視円形状である。なお、以下において、「縦断面視におけるヒータ32の直径」とは、上述の外圧が作用していない状態での縦断面視におけるヒータ32の直径を意味する
【0037】
続いて、縦断面視における基材31及びヒータ32の寸法の例について説明する。
縦断面視におけるヒータ32の直径R(図4参照)は、例えば5mm~10mmである。また、縦断面視において、隣り合うヒータ32間の距離Lは、例えばヒータ32の直径Rの1.5倍以上である。
【0038】
縦断面視において、基材31の溝31bの接触部100が形成する空間S1の幅H1は、ヒータ32の直径Rに略等しい。
また、縦断面視において、接触部100の深さD1は、溝31bにヒータ32が収まっている状態且つ溝31bの開口が蓋部材33に塞がれていない状態で、ヒータ32の一部が基材31の下面31cから突出するような深さである。
【0039】
一方、縦断面視において、非接触部110が形成する空間S2の、手前側すなわち下側の開放部分の幅H2は、例えばヒータ32の直径(すなわち太さ)Rの15%以上、より好ましくは75%以上である。ただし、基材31内におけるヒータ32の上下方向の位置決めのため、上記幅H2は、ヒータ32の直径の90%以下であることが好ましい。
また、縦断面視において、非接触部110の深さD2は、例えば、ヒータ32の直径Rの20~100%である。
【0040】
さらに、縦断面視において、非接触部110の上端からウェハW側の面すなわち載置面31aまでの距離L2は、例えば、ヒータ32の直径Rの15%~60%であり、より具体的には、1mm~4mmである。上記距離L2を4mm以下とすることにより載置台30の厚さを抑えることができる。
【0041】
<ウェハWの処理>
続いて、成膜装置1によるウェハWの処理の一例を説明する。なお、このウェハWの処理は、制御部Uの制御の下、行われる。
【0042】
(ステップS1:載置)
まず、載置台30の載置面31aにウェハWが載置される。
具体的には、例えば、処理容器10のウェハWの搬入出口11aに設けられたゲートバルブ12が開かれ、処理容器10に隣接する真空雰囲気の搬送室(図示せず)から、搬入出口11aを介して、ウェハWを保持した搬送機構(図示せず)が真空雰囲気の処理容器10内に挿入される。そして、ウェハWが、載置台30の上方に搬送される。次いで上昇したリフトピンの上にウェハWが受け渡され、その後、上記搬送機構は処理容器10から抜き出され、ゲートバルブ12が閉じられる。それと共に、リフトピン60の下降が行われ、ヒータ32により所定の温度に調整された載置台30の載置面31a上にウェハWが載置される。
【0043】
上述のように、ヒータ32は溝31b内に設けられており、基材31のウェハW側の面すなわち載置面31aとヒータ32との間には非接触部110が存在する。言い換えると、載置面31aに近いヒータ32の上部は基材31と接触しない。そのため、ヒータ32の上部からの熱は載置面31aにほとんど伝わらない。
また、ヒータ32のうち、基材31と接触するのは、上部以外の部分である。ヒータ32の上部以外の部分は、載置面31aから遠いため、当該部分からの熱は水平方向に拡散されてから載置面31aに伝わりやすい。
【0044】
したがって、非接触部110が存在せずヒータ32の上部と基材31とが接触する比較の形態に比べて、ヒータ32により載置面31aがより面内均一に加熱され、載置面31aに載置されたウェハWもより面内均一に加熱される。
【0045】
(ステップS2:膜形成)
その後、ウェハW上に所定の膜が形成される。
具体的には、例えば、シャワーヘッド70からの成膜ガスを含む処理ガスの供給、高周波電源50からのバイアス用の高周波電力、高周波電源51からのプラズマ生成用の高周波電力の供給が行われる。これにより、処理ガスのプラズマによってウェハWが処理され、当該ウェハW上に所定の膜が形成される。
【0046】
所定の膜の形成が完了すると、シャワーヘッド70からの処理ガスの供給、高周波電源50からのバイアス用の高周波電力、高周波電源51からのプラズマ生成用の高周波電力の供給が停止される。
【0047】
(ステップS3:搬出)
【0048】
そして、ステップS1と逆の手順で、ウェハWが処理容器10から搬出される。
【0049】
(本実施形態の主な効果)
以上のように、本実施形態によれば、載置台30に載置されたウェハWの当該載置台30による加熱の面内均一性を改善することができる。すなわち、ヒータ32の配設パターンが、載置台30により加熱されたウェハWの温度分布やウェハWの成膜結果に転写されるのを抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、載置台30を厚くせずに、上述の加熱の面内均一性を改善することができる。したがって、載置台30の厚型化によって生じる、
・ヒータ32によるウェハWの加熱の応答性の低下、
・載置台30の取り扱い性の悪化、
・載置台30の高コスト化、
・エネルギー消費量の増加、
等を抑制することができる。また、載置台30の厚型化を抑制できるため、載置台30が設置される処理容器10の内部の空間を有効利用することができる。
【0051】
(載置台の変形例1)
図5は、載置台の変形例1を示す部分拡大断面図である。
以上の例では、載置台30が本開示にかかる加熱装置そのものであり、載置台30の基材31の上面がウェハWに対する載置面31aとなっており、載置台30すなわち加熱装置に直接ウェハWが載置されていた。
【0052】
それに対し、図5の載置台30Aは、基材31とヒータ32と蓋部材33とを有する加熱装置200と、ウェハWが載置される載置面211を有する他の部材の一例である静電チャック210とを有し、加熱装置200のウェハW側の面すなわち基材31の上面201に静電チャック210が固定されている。つまり、加熱装置200には、静電チャック210を介して間接的にウェハWが載置される。そして、この加熱装置200は、当該加熱装置200に間接的に載置されたウェハWを加熱する。
【0053】
ところで、静電チャック210は、載置面211に載置されたウェハWを静電力により吸着保持する部材であり、具体的には、誘電体材料から形成された板状部材すなわち熱伝導性の低い板状部材の内部に静電吸着用の電極が埋め込まれた部材である。そのため、静電チャック210の載置面211の温度分布がヒータ32の配設パターンと同形状となり、載置面211に載置されたウェハWの温度が面内不均一になる場合がある。それに対し、本例では、加熱装置200が基材31に上述の溝31bを有するため、加熱装置200に間接的に載置されたウェハWの当該加熱装置200による加熱の面内均一性を改善することができる。
【0054】
(載置台の変形例2)
図6は、載置台の変形例2を示す部分拡大断面図である。
図6の載置台30Bは、基材31Bに排気路300が形成されている。排気路300の一端部は、溝31bの非接触部110により形成される空間S2に連通しており、排気路300の他端部は、排気管310を介して真空ポンプ等を有する排気機構311に接続されている。これにより、空間S2内を排気することができる。そのため、ヒータ32の上部と、溝31bの非接触部110とを真空断熱することができる。したがって、基材31Bにおけるヒータ32の上部の直上が局所的に加熱されるのをさらに抑制することができる。よって、本例によれば、載置台30Bに載置されたウェハWの当該載置台30Bによる加熱の面内均一性をさらに改善することができる。
【0055】
なお、空間S2を排気する場合において、溝31bの最奥部からヒータ32までの距離L3が1mm以上であれば、ヒータ32の上部から基材31Bへの伝熱を抑制することができることを本発明者らはシミュレーションで確認している。
【0056】
(溝の変形例)
図7及び図8はそれぞれ、内部にヒータ32が固定される溝の変形例1及び変形例2を示す部分拡大断面図である。
以上の例では、溝31bの非接触部110により形成される空間S2は、縦断面視における水平方向の幅が、下側の開放部分と、それより上側の部分とで同じであった。
【0057】
それに対して、図7に示すように、基材31Cの溝400の非接触部401により形成される空間S2は、縦断面視における水平方向の幅が、下側の開放部分より、上記上側の部分が大きくてもよい。これにより、ヒータ32からの熱をより水平方向に拡散させてから載置面31aに伝えることができ、加熱の面内均一性をさらに改善することができる。
この場合、縦断面視において、空間S2の上記上側の部分の幅H3は、隣り合う空間S2間の距離L3がヒータ32の直径より大きくなる幅であり、また、ヒータ32の直径Rの120%以下であることが好ましい。これにより、平面視における空間S2の形成パターンが、溝400を有する載置台により加熱されたウェハWの温度分布等に転写されるのを抑制することができる。
【0058】
また、図8に示すように、基材31Dの溝500の非接触部501により形成される空間S2は、縦断面視において、水平方向の幅が奥側すなわち上側に向けて拡がるように形成されていてもよい。この例でも、ヒータ32からの熱をより水平方向に拡散させてから載置面31aに伝えることができ、加熱の面内均一性をさらに改善することができる。
【0059】
この場合、縦断面視において、空間S2の上端の幅H4は、隣り合う空間S2間の距離L3がヒータ32の直径より大きくなる幅であり、また、ヒータ32の直径Rの120%以下であることが好ましい。これにより、平面視における空間S2の形成パターンが、溝500を有する載置台により加熱されたウェハWの温度分布等に転写されるのを抑制することができる。
【0060】
(載置台の変形例3)
図9は、載置台の変形例3を示す断面図である。
以上の例では、ヒータ32がシースヒータであったが、本例ではヒータ32Eは線状に形成されたカートリッジヒータである。
本例の載置台30Cは、カートリッジヒータであるヒータ32Eを1本と、支持部材600と、基材31Eと、を有する。
【0061】
支持部材600は、処理容器10の底部中央に立設され、基材31Eを支持する。
ヒータ32Eは、その下部が支持部材600内で固定され、その上部が基材31E内で固定される。
【0062】
基材31Eは、ヒータ32Eの上部が内部に固定される溝610を有する。溝610は、ヒータ32Eと接触する接触部611を下側に有し、ヒータ32Eの上部と接触しない非接触部612を上側に有する。
【0063】
本例のようにヒータ32Eを設けると、載置面31aの中央部のみ局所的に高温となる場合がある。ただし、本例では、ヒータ32Eが内部に固定される溝610の上側に非接触部612を有する。そのため、ヒータ32Eの上端面中央からの熱は載置面31aにほとんど伝わらない。したがって、本例によれば、載置面31aの中央部のみ局所的に高温となるのを抑制することができる。
【0064】
(試験例)
本発明者らは、載置台の内部のヒータでウェハに対する載置面を加熱したときの当該載置面の温度についてシミュレーションを行った。図10及び図11はそれぞれ、上記シミュレーションの結果を示す図であり、図10は試験例1の結果を示し、図11は試験例2の結果を示している。また、図10及び図11は、載置面の温度を濃淡で示しており、温度が高いほど濃く示し、低いほど薄く示している。
【0065】
試験例1及び試験例2とでは、載置台の溝の構造のみが異なる。試験例2における載置台は、図4の溝31bを有するのに対し、試験例1における載置台は、溝が非接触部110を有さず当該溝の全体にヒータが接触し、ヒータの上部も溝に接触していた。なお、以下では、説明の便宜上、試験例1における載置台についても、試験例2における載置台30と同じ符号を用いて説明する。
【0066】
溝31bの構造以外の主なシミュレーション条件は以下の通りである。
・載置台30の基材31の材料:アルミニウム
・ヒータ32の種類:シースヒータ
・載置台30の載置面31aからヒータ32の上端までの距離:3.5mm
・ヒータ32の断面形状:円形状
・ヒータ32の直径:6.5mm
・ヒータ32の配設パターン:載置面31aの中心を中心とした円環状に1本
・試験例2における空間S2の幅H2:5mm
・試験例2における非接触部110の上端から載置面31aまでの距離L2:1.5mm
・試験例2における溝31bの最奥部からヒータ32の上端までの距離L3:2mm
【0067】
図10に示すように、ヒータ32が内部に固定される溝31bが非接触部110を有していない試験例1では、載置面31aに、温度が高い部分が、当該載置面31aと同心の円環状に生じた。
それに対し、試験例2では、図11に示すように、試験例1に比べて、全体的に載置面31aの温度が均一になっていた。この結果からも、ヒータ32が内部に固定される溝31bに、非接触部110を形成することにより、載置台30によるウェハWの加熱の面内均一性を改善することができることが分かる。
【0068】
(参考の実施形態)
以上の実施形態では、直接的または他の部材を介して間接的に載置される基板を加熱する加熱装置に本開示にかかる技術が適用されていた。
本開示にかかる技術は、直接的または他の部材を介して間接的に接触する加熱対象体を加熱する加熱装置にも適用することができる。
【0069】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
30、30A、30B、30C 載置台
31、31B、31C、31D、31E 基材
31b、400、500、610 溝
32、32E ヒータ
100、611 接触部
110、401、501、612 非接触部
200 加熱装置
W ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11