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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166818
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】一重項酸素及び蛍光を発生させる方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/06 20060101AFI20231115BHJP
   C09B 57/02 20060101ALI20231115BHJP
   G01N 21/78 20060101ALN20231115BHJP
【FI】
C09K11/06
C09B57/02 A
G01N21/78 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077623
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】ビジュ ヴァスデヴァン ピライ
(72)【発明者】
【氏名】サシクマール デビカ
(72)【発明者】
【氏名】高野 勇太
(72)【発明者】
【氏名】超 韓俊
(72)【発明者】
【氏名】小原 怜子
(72)【発明者】
【氏名】小堀 康博
(72)【発明者】
【氏名】濱田 守彦
【テーマコード(参考)】
2G054
【Fターム(参考)】
2G054AA02
2G054CA08
2G054CB10
2G054CE02
2G054EA03
2G054EB01
2G054EB03
2G054GA02
2G054GA03
2G054GA04
2G054GB02
2G054JA01
(57)【要約】
【課題】一重項酸素の発生を容易に制御でき、一重項酸素の発生量をリアルタイムでモニターできる方法を提供すること。
【解決手段】特定の化合物に一重項酸素を捕捉させるステップと、一重項酸素を捕捉した特定の化合物を一光子励起又は二光子励起することにより、一重項酸素及び蛍光を発生させるステップと、を備える方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する化合物に一重項酸素を捕捉させるステップと、
【化1】

[式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中、nは1~4の整数を表し、Xは、紫外光を吸収し、蛍光を発する基を表す。]
前記一重項酸素を捕捉した前記式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する化合物を一光子励起又は二光子励起することにより、前記一重項酸素及び蛍光を発生させるステップと、を備える方法。
【請求項2】
前記蛍光をモニターするステップを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する化合物が、前記式(1B)で表される構造を有する化合物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記Xが、下記式(X1)で表される基である、請求項1又は2に記載の方法。
【化2】

[式(X1)中、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸アルキル基、リン酸アルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R13は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、下記式(13-1)で表される基、又は、下記式(13-2)で表される基を表す。]
【化3】

[式(13-1)中、R131は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表す。]
【請求項5】
前記式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する化合物が、下記式(1B-X1)で表される構造を有する化合物である、請求項4に記載の方法。
【化4】

[式(1B-X1)中、nは1~4の整数を表し、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸アルキル基、リン酸アルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R13は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、前記式(13-1)で表される基、又は、前記式(13-2)で表される基を表す。]
【請求項6】
前記式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する化合物が、下記式(1B’-X1-1)で表される化合物である、請求項4に記載の方法。
【化5】

[式(1B’-X1-1)中、nは1~4の整数を表し、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸アルキル基、リン酸アルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R13は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、前記式(13-1)で表される基、又は、前記式(13-2)で表される基を表し、R14は水素原子又はアルキル基を表し、R15は水素原子を表す。]
【請求項7】
前記R12が、水素原子である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記R13が、水素原子である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記R11が、アルキル基である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項10】
前記式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する化合物が、下記式(2)で表される化合物である、請求項1に記載の方法。
【化6】

[式(2)中、R22は、水素原子又はエチル基を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一重項酸素及び蛍光を発生させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一重項酸素は重要な活性酸素種であり、様々な化学反応及び生物学的反応に利用される。望まない物質の分解や酸化ストレスに誘発される疾患の進行を防ぎ、一重項酸素を有効に利用するために、制御された状態で、かつ局所的に一重項酸素を発生させる方法が求められている。このような方法の開発は、特に光線力学的療法(PDT)において、重要な課題となっている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、エンドペルオキシドで修飾された金ナノロッドを用い、当該金ナノロッドを加熱することにより一重項酸素を発生させる方法が開示されている。また、非特許文献2には、ジピリジルアントラセンエンドペルオキシドから、化学反応によって一重項酸素を発生させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kolemen, S., Ozdemir, T., Lee,D., Kim, G. M., Karatas, T., Yoon, J., Akkaya, E. U., Remote-Controlled Releaseof Singlet Oxygen by the Plasmonic Heating ofEndoperoxide-Modifi ed GoldNanorods: Towards a Paradigm Change inPhotodynamic Therapy. Angew. Chem. 2016,128, 11, 3670-3674.
【非特許文献2】Werner, F., Linker, T., Releaseof Singlet Oxygen from Aromatic Endoperoxides by Chemical Triggers. Angew.Chem. Int. Ed. 57, 39, 12971-12975.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に開示されている熱を利用する方法では、制御が難しく、熱安定性が低いという課題がある。非特許文献2に開示されている方法では、化学反応の制御が容易でないという課題がある。また、これらのいずれの方法によっても、一重項酸素の発生量をリアルタイムでモニターすることはできない。
【0006】
本発明は、一重項酸素の発生を容易に制御でき、一重項酸素の発生量をリアルタイムでモニターできる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、特定の化合物が一重項酸素を捕捉すること、捕捉された一重項酸素は、上記化合物が励起されるような特定の光刺激により放出されること、及び、一重項酸素の放出と同時に蛍光発光も生じることを見出した。したがって、一重項酸素が捕捉された上記化合物に特定の光刺激を与えることによって一重項酸素の発生を容易に制御でき、また、蛍光強度を測定することで一重項酸素の発生量をリアルタイムでモニターできる。本発明は、いくつかの側面において、下記の[1]~[10]を提供する。
[1]下記式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する化合物に一重項酸素を捕捉させるステップと、
【化1】

[式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中、nは1~4の整数を表し、Xは、紫外光を吸収し、蛍光を発する基を表す。]
一重項酸素を捕捉した前記式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する化合物を一光子励起又は二光子励起することにより、一重項酸素及び蛍光を発生させるステップと、を備える方法。
[2]蛍光をモニターするステップを更に備える、[1]に記載の方法。
[3]式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する化合物が、前記式(1B)で表される構造を有する化合物である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]Xが、下記式(X1)で表される基である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
【化2】

[式(X1)中、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸アルキル基、リン酸アルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R13は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、下記式(13-1)で表される基、又は、下記式(13-2)で表される基を表す。]
【化3】

[式(13-1)中、R131は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表す。]
[5]式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する化合物が、下記式(1B-X1)で表される構造を有する化合物である、[4]に記載の方法。
【化4】

[式(1B-X1)中、nは1~4の整数を表し、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸アルキル基、リン酸アルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R13は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、式(13-1)で表される基、又は、式(13-2)で表される基を表す。]
[6]式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する化合物が、下記式(1B’-X1-1)で表される化合物である、[4]又は[5]に記載の方法。
【化5】

[式(1B’-X1-1)中、nは1~4の整数を表し、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸アルキル基、リン酸アルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R13は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、式(13-1)で表される基、又は、式(13-2)で表される基を表し、R14は水素原子又はアルキル基を表し、R15は水素原子を表す。]
[7]R12が、水素原子である、[4]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]R13が、水素原子である、[4]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]R11が、アルキル基である、[4]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する化合物が、下記式(2)で表される化合物である、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
【化6】

[式(2)中、R22は、水素原子又はエチル基を表す。]
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一重項酸素の発生を容易に制御でき、一重項酸素の発生量をリアルタイムでモニターできる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(A)式(i)で表される化合物及びRBの混合物、並びに(B)単離された式(i-O)で表される化合物のH-NMRスペクトルである。
図2】単離された式(i-O)で表される化合物の2D H-H NOESYスペクトルである。
図3】(A)式(i-O)で表される化合物に対しUV光を照射して得られた反応粗生成物、及び(B)アントラキノンのH-NMRスペクトルである。
図4】式(i)で表される化合物に一重項酸素を捕捉させた後、一光子励起した場合の吸収スペクトルである。
図5】式(i)で表される化合物に一重項酸素を捕捉させた後、一光子励起した場合の(A)蛍光スペクトル及び(B)該スペクトルの極大波長における蛍光強度の経時変化を示す図である。
図6】式(ii)で表される化合物に一重項酸素を捕捉させた後、一光子励起した場合の(A)蛍光スペクトル及び(B)吸収スペクトルである。
図7】式(i)で表される化合物に一重項酸素を捕捉させた後、一光子励起する前(左)後(右)におけるEPRスペクトルである。
図8】コントロール実験において、UV光照射する前(左)後(右)におけるEPRスペクトルである。
図9】式(i)で表される化合物に一重項酸素を捕捉させた後、二光子励起した場合の(A)蛍光スペクトル及び(B)該スペクトルの極大波長における蛍光強度の経時変化を示す図である。
図10】(A)及び(B)式(i-O)で表される化合物を暗所で保管後、UV光を照射した場合の蛍光スペクトルの極大波長における蛍光強度の変化を示す図である。
図11】式(i-O)で表される化合物を加熱後、UV光を照射した場合の蛍光スペクトルの極大波長における蛍光強度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0011】
本発明の一実施形態に係る方法は、特定の化合物に一重項酸素を捕捉させるステップ(以下、「第1のステップ」ともいう。)と、一重項酸素を捕捉した特定の化合物を一光子励起又は二光子励起することにより、一重項酸素及び蛍光を発生させるステップ(以下、「第2のステップ」ともいう。)と、を備える、一重項酸素及び蛍光を発生させる方法である。
【0012】
特定の化合物とは、下記式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する化合物である。
【化7】
【0013】
式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中、nは1~4の整数を表す。nは、1~3又は1~2の整数であってもよく、1であってもよい。
【0014】
式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中、Xは、紫外光を吸収し、蛍光を発する基を表す。
【0015】
は、下記式(X1)で表される基であってよい。
【化8】
【0016】
式(X1)中、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸アルキル基、リン酸アルキル基、又はアミノアルキル基を表す。R11は、好ましくはアルキル基である。
【0017】
11としてのアルキル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。R11としてのアルキル基の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、1~3、又は1(すなわちR11がメチル基)であってよい。
【0018】
11としてのアルケニル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。R11としてのアルケニル基の炭素数は、2~18、2~15、2~12、2~10、2~5、2~3又は2であってよい。
【0019】
11としてのカルボキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R11としてのヒドロキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R11としてのスルホン酸アルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R11としてのリン酸アルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R11としてのアミノアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。これらの基におけるアルキレン鎖は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。
【0020】
式(X1)中、R12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表す。R12は、好ましくは水素原子である。
【0021】
12としてのアルキル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。R12としてのアルキル基の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、1~3、又は1(すなわちR12がメチル基)であってよい。
【0022】
12としてのアルケニル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。R12としてのアルケニル基の炭素数は、2~18、2~15、2~12、2~10、2~5、2~3又は2であってよい。
【0023】
12としてのカルボキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R12としてのヒドロキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R12としてのアミノアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。これらの基におけるアルキレン鎖は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。
【0024】
式(X1)中、R13は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、下記式(13-1)で表される基、又は、下記式(13-2)で表される基を表す。R13は、好ましくは水素原子である。
【化9】

式(13-1)中、R131は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表す。
【0025】
13としてのアルキル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。R13としてのアルキル基の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、1~3、又は1(すなわちR13がメチル基)であってよい。
【0026】
13としてのアルケニル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。R13としてのアルケニル基の炭素数は、2~18、2~15、2~12、2~10、2~5、2~3又は2であってよい。
【0027】
13としてのカルボキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R13としてのヒドロキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R13としてのアミノアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。これらの基におけるアルキレン鎖は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。
【0028】
131としてのアルキル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。R131としてのアルキル基の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は1~3、1(すなわちR13がメチル基)であってよい。
【0029】
131としてのアルケニル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。R131としてのアルケニル基の炭素数は、2~18、2~15、2~12、2~10、2~5、2~3又は2であってよい。
【0030】
131としてのカルボキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R131としてのヒドロキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R131としてのアミノアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。これらの基におけるアルキレン鎖は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。
【0031】
特定の化合物は、下記式(1B-X1)で表される構造を有する化合物であってもよい。
【化10】

式(1B-X1)中のnは、上記式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中のnと同義であり、式(1B-X1)中のR11、R12、及びR13は、上記式(X1)中のR11、R12、及びR13と同義である。
【0032】
は、下記式(X2)で表される構造を有する基であってよい。
【化11】
【0033】
は、下記式(X3)で表される基であってもよい。
【化12】

式(X3)中、R16は、上記式(X1)中のR13と同義である。
【0034】
は、下記式(X4)~(X10)で表される基であってもよい。
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】
【0035】
は、下記式(X11)~(X16)で表される基であってもよい。
【化17】
【0036】
は、下記式(X17)又は(X18)で表される基であってもよい。
【化18】

式(X17)中、Arは4-エトキシフェニル基を表す。また、式(X18)中、Arは4-シアノフェニル基又は4-フルオロフェニル基を表す。
【0037】
特定の化合物は、下記式(1A’)、(1B’)、(1C’)又は(1D’)で表される化合物であってもよい。
【化19】

式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)中のn及びXは、式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中の、n及びXと同義である。
【0038】
式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)中、R14は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸アルキル基、リン酸アルキル基、アミノアルキル基、フェニル基、カルボキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、アミノフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、ジカルボキシフェニル基、トリヒドロキシフェニル基、又はトリカルボキシフェニル基であってよい。R14は、好ましくは、水素原子又はアルキル基である。
【0039】
14としてのアルキル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。また、R14としてのアルキル基は、Xと結合していてもよい。R14としてのアルキル基の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、1~3、1~2、又は2(すなわちR12がエチル基)であってよい。Xが上記式(X3)~(X18)で表される基である場合、R14は、好ましくは炭素数4のアルキル基(すなわちブチル基)である。
【0040】
14としてのアルケニル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。R14としてのアルケニル基の炭素数は、2~18、2~15、2~12、2~10、2~5、2~3又は2であってよい。
【0041】
14としてのカルボキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R14としてのヒドロキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R14としてのスルホン酸アルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R14としてのリン酸アルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R14としてのアミノアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。これらの基におけるアルキレン鎖は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。
【0042】
14としてのカルボキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、アミノフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、ジカルボキシフェニル基、トリヒドロキシフェニル基、及びトリカルボキシフェニル基における置換基(カルボキシ基又はヒドロキシ基)の置換位置は特に制限されない。トリカルボキシフェニル基は、例えば、2,3,4-トリカルボキシフェニル基、又は2,4,5-トリカルボキシフェニル基であってもよい。トリヒドロキシフェニル基は、例えば、2,3,4-トリヒドロキシフェニル基、又は2,4,6-トリヒドロキシフェニル基であってよい。
【0043】
式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)中、R14は、末端にヒドロキシ基若しくはメトキシ基を有するポリオキシアルキレン基又は末端にアミノ基を有するポリアミノアルキレン基であってよい。
【0044】
14としてのポリオキシアルキレン基は、末端にヒドロキシ基又はメトキシ基を有する。R14としてのポリオキシアルキレン基は、下記式(14-1)で表される基であってもよい。
-(-O-C2a-)-R141 (14-1)
式(14-1)中、aは2~4の整数を表し、bは1以上の整数を表し、R141は水素原子、メトキシ基、又はアミノ基を表す。
【0045】
14としてのポリオキシアルキレン基において、アルキレン鎖は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。当該アルキレン鎖の炭素数(式(14-1)中のa)は、例えば、2であってよい。このとき、R14は、ポリオキシエチレン基であってよい。
【0046】
14としてのポリオキシアルキレン基において、オキシアルキレン基の数(式(14-1)中のb)は、1以上、2以上、又は3以上であってよく、10000以下であってよい。
【0047】
14としてのポリアミノアルキレン基は、末端にアミノ基を有する。R14としてのポリアミノアルキレン基は、下記式(14-2)で表される基であってもよい。
-(-NH-C2d-)-NH (14-2)
式(14-2)中、dは2~4の整数を表し、eは1以上の整数を表す。
【0048】
14としてのポリアミノアルキレン基において、アルキレン鎖は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。当該アルキレン鎖の炭素数(式(14-2)中のd)は、例えば、2であってよい。このとき、R14は、ポリアミノエチレン基であってよい。
【0049】
14としてのポリアミノアルキレン基において、アミノアルキレン基の数(式(14-2)中のe)は、1以上、2以上、又は3以上であってよく、10000以下であってよい。
【0050】
式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)中、R14は、下記式(14-3)又は式(14-4)で表される基であってもよい。
-(-C-O-)-C2g-R143 (14-3)
-(-O-C-)-C2i-R144 (14-4)
式(14-3)中のf及びg並びに式(14-4)中のh及びiは、1~12の整数を表し、式(14-3)中のR143及び式(14-4)中のR144は水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はアミノ基を表す。
【0051】
式(14-3)及び式(14-4)において、オキシアルキレン基の数(式(14-3)中のf及び式(14-4)中のh)は、2以上、又は3以上であってよく、10以下、7以下、又は5以下であってよい。
【0052】
式(14-3)及び式(14-4)におけるアルキレン鎖の炭素数(式(14-3)中のg及び式(14-4)中のi)は、1~10、1~5、又は1~3であってよい。当該アルキレン鎖は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。
【0053】
式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)中、R14は、下記式(14-5)で表される基であってよい。
-(-C-NH-)-C2k-R145 (14-5)
式(14-5)中、j及びkは1~12以上の整数を表しR145は水素原子、又はカルボキシ基を表す。
【0054】
式(14-5)において、アミノアルキレン基の数(式(14-5)中のj)は、1以上、2以上、又は3以上であってよく、12以下、10以下、7以下、又は5以下であってよい。
【0055】
式(14-5)におけるアルキレン鎖の炭素数(式(14-5)中のk)は、1~10、1~5、又は1~3であってよい。当該アルキレン鎖は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。
【0056】
式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)中、R14は、末端にデンドリマーが結合したアルキレン基であってもよい。当該アルキレン基の炭素数は、2~4であってもよい。デンドリマーの例としては、エチレンジアミンデンドリマー、ピロガロールデンドリマー、フロログルシノールデンドリマー、ヘミメリット酸デンドリマー、及びトリメリト酸デンドリマーが挙げられる。
【0057】
式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)中のR15としては、上記R14として挙げたものを特に制限なく用いることができる。また、式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)で表される化合物は、R15を介して他の化合物に結合していてもよい。この場合、R15は、他の化合物と結合する基であってもよい。
【0058】
特定の化合物は、下記式(1B’-X1-1)又は式(1B’-X1-2)で表される構造を有する化合物であってもよい。
【化20】

式(1B’-X1-1)及び式(1B’-X1-2)中のnは、上記式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中のnと同義であり、式(1B’-X1-1)及び式(1B’-X1-2)中のR11、R12、及びR13は、上記式(X1)中のR11、R12、及びR13と同義であり、式(1B’-X1-1)及び式(1B’-X1-2)中のR14及び式(1B’-X1-1)中のR15は、上記式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)のR14及びR15と同義である。
【0059】
式(1B’-X1-1)で表される化合物において、R14が水素原子又はアルキル基であり、R15が水素原子であることが好ましい。この場合、R11は、好ましくはアルキル基であり、R12は、好ましくは水素原子であり、R13は、好ましくは水素原子である。
【0060】
式(1B’-X1-2)中のR17及びR18としては、上記式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)中のR14として挙げたものを特に制限なく用いることができる。
【0061】
また、特定の化合物は、下記式(1B’-X2-1)、(1B’-X2-2)、(1B’-X2-3)、又は(1B’-X2-4)で表される化合物であってもよい。
【化21】

【化22】

式(1B’-X2-1)、(1B’-X2-2)、(1B’-X2-3)、及び(1B’-X2-4)中のnは、上記式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中のnと同義であり、式(1B’-X2-1)、(1B’-X2-2)、(1B’-X2-3)、及び(1B’-X2-4)中のR15は、上記式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)中のR15と同義である。
【0062】
特定の化合物は、下記式(2)で表される化合物であってよい。
【化23】

式(2)中、R22は、水素原子又はエチル基を表す。
【0063】
式(2)で表される化合物の例としては、下記式(i)で表される化合物、及び下記式(ii)で表される化合物が挙げられる。
【化24】
【0064】
第1のステップにおいては、任意の方法で一重項酸素を発生させ、その一重項酸素を上記特定の化合物に捕捉させる。一重項酸素を発生させる方法は、例えば、光増感剤を用いる方法であってよい。第1のステップでは、上記特定の化合物及び光増感剤を共に溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF))に溶解させる等の方法により、上記特定の化合物と光増感剤とを共存させた状態で、一重項酸素を発生させてもよい。光増感剤を光により励起して三重項状態とし、三重項状態の光増感剤から基底状態の酸素にエネルギー移動させることにより、一重項酸素を発生させることができる。
【0065】
光増感剤の例としては、ローズベンガル(RB)、ポルフィリン、及びメチレンブルーが挙げられる。
【0066】
光増感剤を励起するために用いる光は、特に制限されず、用いる光増感剤の吸収波長等を考慮して適宜選択することができる。上記特定の化合物の存在下で光増感剤を励起する場合には、上記特定の化合物の分解を防ぐ観点から、特に、可視光を用いることが好ましい。光増感剤を励起するために用いる光の波長は、例えば、450nm以上であってよく、800nm以下であってよい。
【0067】
第1のステップにおいて、上記特定の化合物に一重項酸素を捕捉させる方法の例としては、上記特定の化合物と一重項酸素とを共存させる方法が挙げられる。上記特定の化合物は、その芳香族炭化水素部分において、一重項酸素を捕捉することができる。式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造は、一重項酸素を捕捉すると、エンドペルオキシドを形成し、それぞれ、式(1A-O)、(1B-O)、(1C-O)又は(1D-O)で表される構造を生成する。
【化25】

式(1A-O)、(1B-O)、(1C-O)及び(1D-O)中、n及びXは上記式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)中のn及びXと同義である。
【0068】
例えば、上記特定の化合物として式(i)で表される化合物を用い、一重項酸素()と共存させた場合、式(i)で表される化合物が一重項酸素を捕捉してエンドペルオキシドを形成し、下記式(i-O)で表される化合物が生成する。
【化26】
【0069】
一重項酸素を捕捉した上記特定の化合物(例えば、式(i-O)で表される化合物)は、後続の第2のステップにおいて光刺激を受ける(一光子励起又は二光子励起される)まで、安定に一重項酸素を捕捉することができ、また、蛍光を発することもない。したがって、上記特定の化合物を用いることにより、一重項酸素の発生を容易に制御でき、一重項酸素の発生量をリアルタイムでモニターできる。
【0070】
第2のステップにおいて、一重項酸素を捕捉した上記特定の化合物を一光子励起する方法は、一重項酸素を捕捉し上記特定の化合物に対して紫外(UV)光を照射する方法であってよい。UV光の波長は、例えば、100nm以上であってよく、430nm以下であってよい。
【0071】
第2のステップにおいて、一重項酸素を捕捉した上記特定の化合物を二光子励起する方法は、一重項酸素を捕捉した上記特定の化合物に対してパルス光を照射する方法であってよい。パルス光の波長は、例えば、600nm以上であってよく、860nm以下であってよい。
【0072】
第2のステップにおいて、一重項酸素を捕捉した上記特定の化合物を一光子励起又は二光子励起すると、一重項酸素が発生すると共に、Xで表される基を有する化合物に基づく蛍光が発生する。また、副生成物として、上記式(1A-O)、(1B-O)、(1C-O)又は(1D-O)で表される構造中のエンドペルオキシドに由来する化合物も生成する。代表的に、式(1B-X1-O)で表される構造を有する化合物を一光子励起又は二光子励起した場合の反応スキームを以下に示す。
【化27】

式(1B-X1-O)中のnは、上記式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中のnと同義であり、式(1B-X1-O)及び式(X1-c)中のR11、R12、及びR13は、上記式(X1)中のR11、R12、及びR13と同義である。また、式(X1-c)中、Rは任意の一価の基を表す。Rは、例えば、メチル基、メトキシ基、アルデヒド基、又はカルボキシ基であってよい。
【0073】
例えば、本発明者らの検討によれば、一重項酸素を捕捉した式(i)で表される化合物(すなわち、下記式(i-O)で表される化合物)を、一光子励起又は二光子励起すると、下記スキームのとおり、一重項酸素が発生すると共に、下記式(i-c)で表されるクマリン由来の化合物に基づく蛍光が生じる。
【化28】

式(i-c)中、Rは任意の一価の基を表す。Rは、例えば、メチル基、メトキシ基、アルデヒド基、又はカルボキシ基であってよい。
【0074】
一実施形態に係る方法では、第2のステップにおいて、一重項酸素が発生すると共に蛍光が生じる。そのため、本実施形態に係る方法によれば、第2のステップにて生じる蛍光の強度に基づいて、一重項酸素の発生量をリアルタイムでモニターすることができる。
【0075】
一実施形態に係る方法は、第2のステップにおいて生じた蛍光をモニターするステップ(第3の)を更に備えていてもよい。蛍光をモニターする方法は、例えば、一定の時間間隔で蛍光スペクトルを測定し、蛍光強度(例えば、蛍光のピーク波長における蛍光強度)を記録する方法であってもよい。蛍光スペクトルの測定には、例えば、分光蛍光光度計を用いることができる。
【0076】
一実施形態に係る方法は、ファインケミカル合成、環境浄化機器等における一重項酸素のセンシングにも有用である。一実施形態に係る方法において、第2のステップでは、第1のステップにおいて捕捉された一重項酸素が、蛍光と共に放出される。そのため、本実施形態に係る方法によれば、第2のステップにて生じる蛍光の強度に基づいて、第1のステップにおける一重項酸素の捕捉量も把握することができる。この方法では、上記特定の化合物が一重項酸素を捕捉すると直ちに蛍光が生じるのではなく、一重項酸素を捕捉した上記特定の化合物が、一光子励起又は二光子励起されることによって初めて蛍光が生じるので、一重項酸素と蛍光物質とが共存する系で一重項酸素をセンシングする場合であっても、第1のステップで一重項酸素を捕捉した後、蛍光物質等の他成分と分離してから、第2のステップにて一重項酸素の捕捉量を求めることができるという利点がある。
【0077】
また、一実施形態に係る方法では、第2のステップにおいて、NIR光をトリガーとして一重項酸素及び蛍光を発生させることができる。細胞および生体組織はNIR光に対して透過性であるため、本実施形態に係る方法は、特にPDT等への利用に好適である。
【0078】
さらに、一重項酸素を捕捉した上記特定の化合物は、室温(25℃)の暗所での保管、及び100℃までの加熱に対して安定であり、保管後及び加熱後であっても一重項酸素及び蛍光の放出をすることができる。そのため、一実施形態に係る方法は、一重項酸素の捕捉後一重項酸素放出までに一定時間の保管が必要な場合であっても、また、加熱環境下での利用が必要な場合であっても、好適に使用することができる。
【実施例0079】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例で用いた溶媒は、特筆する場合を除き、富士フイルム和光純薬(株)製の試薬グレードのものである。また、NMR測定には、Unity INOVA 500(Agilent社製)又はECX-400(日本電子(株)製)を用いた。
【0080】
1.合成
[式(i)で表される化合物の合成]
7-アミノ-4-メチルクマリン(東京化成工業(株)製)0.088g(0.50mmol)及び9-クロロメチルアントラセン(東京化成工業(株)製)0.16g(0.73mmol)を10mLのDMFに溶解した。この溶液に対し、KCO(富士フイルム和光純薬(株)製)47mg(2.9mmol)及びKI(富士フイルム和光純薬(株)製)5mg(0.03mmol)を加え、得られた反応混合物を85℃で5時間攪拌した。その後反応混合物を室温(25℃)まで冷却し、過剰量の水を加えることにより黄色の不溶物を生成させた。HCl(富士フイルム和光純薬(株)製)水溶液を用いて溶液のpHを6~7に調整し、不溶物をろ過により回収して乾燥させた。得られた黄色粉末を加熱THFに溶解し、過剰量のトルエンを加えることにより再沈殿させ、沈殿物をろ過により回収し、トルエンに続いてアセトンで洗浄し、淡黄色の粉末として式(i)で表される化合物を得た。
1HNMR(400MHz, CDCl3) δ=8.50(1H), 8.21(2H), 8.05(2 H), 7.57-7.40(m,5H), 6.74(1H), 6.58(1H), 6.02(s, 1H), 5.21(2H), 4.30(1H), 2.40(3H).
1HNMR(400MHz, DMSO-d6) δ=8.68(s, 1H), 8.30(d, J=8.6Hz, 2H),8.11-8.21(dd, J=8.6Hz, 1.6Hz, 2H), 7.53-7.66(m, 4H), 7.51(d, J=9.1Hz, 1H),6.99(t, J=4.1Hz, 1H), 6.81(d, J=9.1Hz, 1H), 6.80(s, 1H), 5.97(s, 1H), 5.21(d,J=4.1Hz, 2H), 2.36(s, 3H).
【0081】
[式(ii)で表される化合物の合成]
7-(エチルアミノ)-4-メチルクマリン(東京化成工業(株)製)0.10g(0.49mmol)及び9-クロロメチルアントラセン(東京化成工業(株)製)0.16g(0.73mmol)を10mLのDMFに溶解した。この溶液に対し、KCO(富士フイルム和光純薬(株)製)47mg(2.9mmol)及びKI(富士フイルム和光純薬(株)製)5mg(0.03mmol)を加え、得られた反応混合物を85℃で5時間攪拌した。その後反応混合物を室温(25℃)まで冷却し、過剰量の水を加えることにより黄色の不溶物を生成させた。HCl(富士フイルム和光純薬(株)製)水溶液を用いて溶液のpHを6~7に調整し、不溶物をろ過により回収して乾燥させた。得られた黄色粉末を加熱THFに溶解し、過剰量のトルエンを加えることにより再沈殿させ、沈殿物をろ過により回収し、トルエンに続いてアセトンで洗浄し、淡黄色の粉末として式(ii)で表される化合物を得た。
1HNMR(500MHz, CDCl3) δ=8.52(s, 1H; Ar-H), 8.14-8.16(d, 2H; Ar-H),8.05-8.07(d, 2H; Ar-H), 7.55-7.48(m, 5H; Ar-H), 6.95-6.98(dd, 1H; Ar-H),6.91-6.92(d, 1H; Ar-H), 6.05(s, 1H; allylic), 5.37(s, 2H; N-CH2),3.06-3.10(q, 2H; N-CH2), 2.42(s, 3H; CH3), 0.77-0.80(t,3H; CH3).
【0082】
2.一重項酸素を捕捉し、光刺激により一重項酸素及び蛍光を発生させる方法
以下の実験において、光照射には、DPSS 532nm緑色レーザー(Shanghai Dream Laser Technology社製)、Xe/Hgランプ(浜松ホトニクス(株)製)、又は800nmフェムト秒レーザー(Coherent社製「Mira 900」、パルス幅140fs)を用いた。
【0083】
[式(i)で表される化合物と一重項酸素との反応]
式(i)で表される化合物及び光増感剤としてのRB(東京化成工業(株)製。以下同じ。)を含む溶液に対し、第1のステップとして、532nm(50mW)の連続波レーザー光を照射した。その後、第2のステップとして、溶液にUV光(365nm、1.0mWcm-2)を照射した。上記ステップ1及びステップ2において、式(i)で表される化合物と一重項酸素とは、下記のスキームのとおり反応する。すなわち、第1のステップにおいて、光増感により一重項酸素が発生すると、式(i)で表される化合物が一重項酸素を捕捉し、式(i-O)で表される化合物が生成する。さらに第2のステップにおいて、式(i-O)で表される化合物にUV光が照射されると、一重項酸素、蛍光を発する式(i-c)で表される化合物、及びアントラキノンが、他の副生成物と共に生成する。なお、式(i-c)中、Rは、任意の一価の基を表す。Rは、-CH、-CHOH、-CHO、又は-COOHであると考えられる。
【化29】
【0084】
第1のステップにおいて式(i-O)で表される化合物が生成することは、NMR測定により確認された。まず、式(i)で表される化合物(2.0mM)及びRB(1.0mM)をDMF(HPLCグレード)800μLに加えて混合し、緑色レーザー(532nm、50mW)を10分間照射した。得られた反応液を、下記の条件でHPLCにかけ、ピーク保持時間が2.8分であったフラクションを回収し、真空の暗所で溶媒を除去した。DMSO-dを加え、H-NMR測定を行った。結果を図1(B)に示す。また、原料である式(i)で表される化合物及びRBの混合物について同様に測定した結果を図1(A)に示す。
<HPLC条件>
HPLCシステム:Agilent 1220(アジレント・テクノロジー(株)製)
カラム:C18-MS-IIカラム(ナカライテスク(株)製、4.6mmI.D.×250mm。)
溶離液:DMF、1.0mL/分
サンプルループ:100μL
注入量:10μL
検出波長:325nm
カラム温度:30℃
【0085】
図1(A)、(B)のとおり、第1のステップにおいて生成した化合物では、クマリン部分のシグナルのシフトは観測されなかったが、アントラセニル部分に対応するシグナルの高磁場シフトが観測された。この結果から、エンドペルオキシドが形成されて大きなπ共役が破壊され、式(i-O)で表される化合物が生成したことが示唆された。
1HNMR(400MHz, DMSO-d6) δ=7.53-7.56(m, 4H), 7.49(s, 1H), 7.31-7.33(m,4H), 6.98(d, J=9.1Hz, 1H), 6.92(s, 1H), 6.86(t, J=4.1Hz, 1H), 6.47(s, 1H),5.98(s, 1H), 4.50 (d, J=4.1Hz, 2H), 2.35(s, 3H).
【0086】
図1(B)のスペクトルを得たものと同様に作製したサンプルについて、2D H-H NOESYスペクトルを測定した(溶媒:DMSO-d、400MHz)。結果を図2に示す。図2において観測された4.50ppmと6.86ppm及び7.53-7.56ppmとの相関ピーク、及び、6.47ppmと7.53-7.56ppmとの相関ピークによっても、上記の帰属が支持され、式(i-O)で表される化合物が生成したことが示唆された。
【0087】
さらに、DMFを溶媒として、式(i)で表される化合物及び一重項酸素から式(i-O)で表される化合物が生成するときの相対自由エネルギーを、Gaussian(登録商標) 16を用いて、自己無撞着反応場(SCRF)法によりUB3LYP/6-311++G**レベルで算出した。その結果、相対自由エネルギーは-0.66kcal/molで負の値であり、この結果からも式(i-O)で表される化合物の生成が示唆された。
【0088】
また、式(i-O)で表される化合物に対してUV光(365nm、1mWcm―2)を10分間照射した後の反応粗生成物及びアントラキノンについても同様の条件でH-NMR測定を行った。結果を順に図3(A)及び(B)に示す。
【0089】
図3(A)及び(B)のとおり、反応粗生成物中にアントラキノンのピークが観測され、第2のステップにおいてアントラキノンが生成したことが示唆された。また、反応粗生成物中には、クマリン部分に特徴的なピーク(2.33ppm及び5.97ppm)も観測された。ただし芳香族領域のシグナルは複合的であり、クマリン由来の種々の化合物が生成したと考えられた。
【0090】
[吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの変化]
式(i)で表される化合物(10μM)及び光増感剤としてのRB(東京化成工業(株)製)(5.0μM)をDMFに溶解し、サンプル溶液を作製した。第1のステップとして、サンプル溶液に対し、532nm(50mW)の連続波レーザー光照射を30分間行った。その後、第2のステップとして、サンプル溶液にUV光(365nm、1.0mWcm-2)を10分間照射した。このときの吸収スペクトル及び蛍光スペクトル(λex=340nm)の変化を調べた。吸収スペクトル測定にはEvolution(登録商標) 220紫外可視分光光度計(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を、蛍光スペクトル測定には日立 F-4500((株)日立ハイテクサイエンス製)を用いた。以下の測定でも同様の機器を用いた。
【0091】
図4は、第1のステップにおける光照射前(S1)、第1のステップにおける30分間の光照射後(S2)、及び第2のステップにおける3分間の光照射後(S3)に測定した吸収スペクトルである。図4のとおり、第1のステップでは、一重項酸素を媒体として、式(i)で表される化合物中のアントラセニル基部分が酸化され、390nm及び370nmにみられるアントラセンの振動バンドの吸収が減少した。第2のステップにおけるUV光の照射後は、290nm付近の吸収が明らかに増大していた。エンドペルオキシドが290nm付近の吸収を示すことが知られているため(Fidder, H., Lauer, A., Freyer, W., Koeppe, B., Heyne, K.Photochemistry of Anthracene-9,10-endoperoxide. J. Phys. Chem. A 113, 6289-6296(2009).)、この結果からも、式(i-O)で表されるエンドペルオキシドの生成が示唆された。
【0092】
図5(A)は、第1のステップにおける光照射開始3分後(S4)、第1のステップにおける30分間の光照射後(S5)、及び第2のステップにおける3分間の光照射後(S6)に測定した蛍光スペクトル(λex=340nm)である。図5(B)は、第1のステップにおける光照射開始後3分ごと、及び第2のステップにおける光照射開始後30秒ごとに測定した蛍光スペクトル(λex=340nm)の極大波長:420nmにおける蛍光強度(I/I)の経時プロットである。図5(B)の横軸「Time」は、第1のステップにおける光照射開始時を0としたときの経過時間を示し、縦軸「I/I」は、第1のステップにおける光照射開始前の蛍光強度Iに対する各測定時点での蛍光強度Iの大きさを示す。経過時間0~30分の間は第1のステップにおける532nmの光照射が行われ、それ以降は第2のステップにおける365nmの光照射が行われた。
【0093】
図5(A)及び(B)のとおり、第1のステップにおける可視光照射開始後、蛍光強度が徐々に増大し、30分間の光照射後には、蛍光強度が出発物質である式(i)で表される化合物の5倍となった。第2のステップでは、短時間のUV光照射によって蛍光強度が著しく増大した。より具体的には、3分間のUV照射により、蛍光強度は出発物質である式(i)で表される化合物の45倍にまで増大した。
【0094】
式(ii)で表される化合物を用いた場合の蛍光及び吸収スペクトルの変化も調べた。式(ii)で表される化合物(10μM)及びRBのDMF溶液(式(ii)で表される化合物:RBのモル比2:1)に対し、第1のステップとして、532nm(50mW)の連続波レーザー光照射による光増感を30分間行った後、第2のステップとして、UV光(365nm、1.0mWcm-2)を3分間照射した。この間に測定した蛍光スペクトル(λex=340nm)及び吸収スペクトルを順に図6(A)及び(B)に示す。図6(A)は、第1のステップにおける光照射前(S7)、第1のステップにおける30分間の光照射後(S8)、及び第2のステップにおける3分間の光照射後(S9)に測定した蛍光スペクトルである。また、図6(B)は、第1のステップにおける光照射前(S10)、第1のステップにおける30分間の光照射後(S11)、及び第2のステップにおける3分間の光照射後(S12)に測定した吸収スペクトルである。
【0095】
図6(A)及び(B)のとおり、式(ii)で表される化合物を用いた場合にも、式(i)で表される化合物を用いた場合と同様の吸収及び蛍光スペクトルの変化が見られた。
【0096】
[一重項酸素の捕捉及び放出]
電子常磁性共鳴(EPR)により、第1のステップにおける一重項酸素の捕捉及び第2のステップにおける一重項酸素の放出の挙動を調べた。まず、式(i)で表される化合物(10μM)及びRB(5μM)を含むDMF溶液を作製した。該溶液に対し、>480nmロングパスフィルターを取り付けたキセノンランプ(50mW、532nm)を30分間照射した。その後、溶液に2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン(TEMP,シグマアルドリッチ社製)(5mM)を添加し、得られた溶液に対しUV光(2mWcm-2、365nm)を10分間照射して、UV光照射前後の溶液のEPRスペクトルを測定した。EPRスペクトルの測定は、EMXplus(登録商標)(ブルカー社製)により、1mWcm―2の出力でのXバンド域のマイクロ波(9.79GHz)を用いて行った。結果を図7に示す。なお、TEMPはスピンプローブであり、一重項酸素により酸化され、EPR活性の2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-1-オキシル(TEMPO)を生成する。
【0097】
図7のとおり、UV光の照射によって、EPRシグナル強度の著しい増大が観測され、TEMPOの生成が示唆された。反応スキームは以下のとおりである。なお、UV光照射前に見られるトリプレットシグナルは、TEMP中に含まれるTEMPOの残留シグナルに相当する。
【化30】
【0098】
コントロール実験として、式(i)で表される化合物(10μM)、RB(5μM)、及びTEMP(5mM)を含むDMF溶液に対してUV光(2mWcm-2、365nm)のみを10分間照射して、上記と同様にEPRスペクトルを測定した。コントロール実験の結果を図8に示す。
【0099】
図8のとおり、第1のステップを省略した場合には、UV光を照射しても、EPRシグナル強度の増大は観測されなかった。反応スキームは以下の通りである。なお、式(i)で表される化合物とTEMPを含むDMF溶液、並びにRB及びTEMPを含むDMF溶液に対して、同様にUV光のみを照射する実験も行ったが、いずれにおいてもEPRシグナルの増大は観測されなかった。
【化31】
【0100】
以上の結果から、第2のステップにおけるUV光の照射によって、一重項酸素が放出されることが示された。また、この結果と、上記のH-NMR、吸収及び蛍光スペクトルの結果から、第1のステップでは、光照射により発生した一重項酸素が捕捉され、第2のステップでは、UV光照射によって蛍光性物質が生成して強い蛍光が放出されると共に、一重項酸素が放出されることが示された。
【0101】
[二光子励起による一重項酸素の放出]
第2のステップにおける一重項酸素の放出は、NIR光による二光子励起によっても可能であることを確認した。式(i)で表される化合物(10μM)及びRB(10μM)を含むDMF溶液を作製し、該サンプル溶液250μLをパス長5mmのキュベットに入れた。サンプル溶液に対し、第1のステップとして、30分間の光増感(λ=532nm、50mW)を行った後、第2のステップとして、Mira 900(Coherent社製)を用いてNIR光(800nmパルスレーザー、540mW、ピークパワー:7.42×1015W)の照射を40分間行った。図9(A)は、第1のステップにおける光増感の前(S13)及び30分間の光増感後(S14)、並びに、第2のステップにおける40分間の光照射後(S15)に、測定した蛍光スペクトルである。また、図9(B)は、第2のステップにおける蛍光強度(発光波長:420nm)の経時プロット(正方形)と、第2のステップにおいて、NIR光を照射せず暗所に保管した場合の同様のプロット(円形)である。なお、図9(B)の縦軸「I/I」は、第1のステップにおける光照射開始前の蛍光強度Iに対する各測定時点での蛍光強度Iの大きさを示す。
【0102】
図9(A)、(B)のとおり、第2のステップにおけるNIR光の照射によって蛍光強度が上昇した。NIR光を40分間照射した後には、7-アミノ-4-メチルクマリンをリファレンスとして算出した相対蛍光量子収率が、NIR光の照射前と比べて3倍に上昇していた。この結果から、式(i-O)で表される化合物が二光子吸収によって光活性化され、一重項酸素が放出されたことが示唆された。
【0103】
[式(i-O)で表される化合物の安定性]
式(i)で表される化合物(10μM)及びRBのDMF溶液(式(i)で表される化合物:RBのモル比2:1)に対し、532nm(50mW)の連続波レーザー光の照射を30分間行い、式(i-O)で表される化合物を生成させた後、室温(25℃)の暗所で30分間~24時間保管し、その後UV光(365nm、1.0mWcm-2)を照射して、溶液の420nmにおける蛍光強度(λex=340nm)の変化を調べた。結果を図10(A)及び(B)に示す。図10(A)及び(B)中の各系列は、矢印で示した時間保管した後にUV光の照射を開始した場合の、溶液の蛍光強度をプロットしたものである。図10(A)及び(B)のとおり、UV光照射前に(i-O)で表される化合物を最大で24時間暗所で保管した場合でも、保管せず直ちにUV光照射を開始した場合と同様に、UV光照射による著しい蛍光強度の増大が観測された。この結果から、式(i-O)で表される化合物の安定性が示された。
【0104】
また、式(i)で表される化合物(10μM)及びRBのDMF溶液(式(i)で表される化合物:RBのモル比2:1)に対し、532nm(50mW)の連続波レーザー光の照射を30分間行った後、溶液を100℃まで加熱し、その後UV光(365nm、1.0mWcm-2)を照射した際の420nmにおける蛍光強度(λex=340nm)の変化を調べた。結果を図11に示す。図11には、100℃まで加熱後にUV光を照射した際の蛍光強度の経時プロット(正方形)及び加熱せず室温(25℃)で同様の操作を行った際のプロット(円形)を示す。図11のとおり、100℃まで加熱された場合でも、プロットはほとんど変化せず、式(i-O)で表される化合物の熱安定性が示された。
図1
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