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特開2023-166824毛髪変形用基剤、毛髪変形用処理剤、および毛髪変形処理方法
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  • 特開-毛髪変形用基剤、毛髪変形用処理剤、および毛髪変形処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166824
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】毛髪変形用基剤、毛髪変形用処理剤、および毛髪変形処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20231115BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20231115BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20231115BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20231115BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/365
A61K8/46
A61K8/33
A61Q5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077630
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】595082283
【氏名又は名称】株式会社アリミノ
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平坂 高一
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC391
4C083AC392
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC691
4C083AC692
4C083AC771
4C083AC772
4C083AC781
4C083AC782
4C083AC841
4C083AC842
4C083AD042
4C083AD131
4C083AD132
4C083BB04
4C083CC34
4C083DD23
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE25
(57)【要約】
【課題】本発明は、還元剤を含む毛髪変形剤と、毛髪変形用基剤とを用時調製し毛髪に塗布した際に、pHの変動を抑えることができ、剤の安定性にも優れる毛髪変形用基剤および毛髪変形用処理剤を提供すること、並びに、仕上がりの毛髪のつやおよび指通りを向上させ、かつ、クセの伸びおよびカール形成力にも優れる毛髪変形用処理剤を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の毛髪変形用基剤は、毛髪変形剤100質量%中に、還元剤(D1)を22~70質量%含む毛髪変形剤と混合して使用する、毛髪変形用基剤であって、毛髪変形用基剤100質量%中に、クエン酸ナトリウム(A)を1.5~10質量%と、クエン酸(B)を0.14~8.4質量%と、ノニオン界面活性剤(C)を0.1~5質量%と、高級アルコール(J)を3~11質量%とを含み、25℃におけるpHが3.6~6.4である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪変形剤100質量%中に、還元剤(D1)を22~70質量%含む毛髪変形剤と混合して使用する、毛髪変形用基剤であって、
毛髪変形用基剤100質量%中に、クエン酸ナトリウム(A)を1.5~10質量%と、クエン酸(B)を0.14~8.4質量%と、ノニオン界面活性剤(C)を0.1~5質量%と、高級アルコール(J)を3~11質量%とを含み、
25℃におけるpHが3.6~6.4である、毛髪変形用基剤。
【請求項2】
システアミン、L-システイン、チオグリコール酸、チオ乳酸、およびチオグリセリンからなる群より選択される少なくとも1種の還元剤(D2)を含む、請求項1に記載の毛髪変形用基剤。
【請求項3】
カチオン界面活性剤(K)を1~10質量%含む、請求項1または2に記載の毛髪変形用基剤。
【請求項4】
25℃で液状の油脂(L)を1~3.5質量%含む、請求項1または2に記載の毛髪変形用基剤。
【請求項5】
多価アルコール(M)を1~4質量%含む、請求項1または2に記載の毛髪変形用基剤。
【請求項6】
毛髪変形剤と、毛髪変形用基剤とを有する、毛髪変形用処理剤であって、
前記毛髪変形剤100質量%中に、グリセリルモノチオグリコレートを42~70質量%と、溶剤(G)とを含み、
前記毛髪変形用基剤100質量%中に、クエン酸ナトリウム(A)を1.5~10質量%と、クエン酸(B)を0.14~8.4質量%と、ノニオン界面活性剤(C)を0.1~5質量%と、高級アルコール(J)を3~11質量%とを含み、
前記毛髪変形用基剤の25℃におけるpHが3.6~6.4である、
毛髪変形用処理剤。
【請求項7】
毛髪変形剤と、毛髪変形用基剤とを有する、毛髪変形用処理剤であって、
前記毛髪変形剤100質量%中に、ブチロラクトンチオールを22~66質量%と、溶剤(G)とを含み、
前記毛髪変形用基剤100質量%中に、クエン酸ナトリウム(A)を1.5~10質量%と、クエン酸(B)を0.14~8.4質量%と、ノニオン界面活性剤(C)を0.1~5質量%と、高級アルコール(J)を3~11質量%とを含み、
前記毛髪変形用基剤の25℃におけるpHが3.6~6.4である、
毛髪変形用処理剤。
【請求項8】
前記毛髪変形剤が、炭酸エチレン(E)を21~54.6質量%含む、請求項6または7に記載の毛髪変形用処理剤。
【請求項9】
前記毛髪変形剤が、炭酸プロピレン(F)を3.5~23.4質量%含む、請求項6または7に記載の毛髪変形用処理剤。
【請求項10】
前記溶剤(G)が、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、コハク酸ビスエトキシジグリコール、PEG-8、およびN-メチルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項6または7に記載の毛髪変形用処理剤。
【請求項11】
毛髪変形剤100質量%中に、グリセリルモノチオグリコレートを42~70質量%、および溶剤(G)を含む、毛髪変形剤と、
請求項1または2に記載の毛髪変形用基剤とを、
前記毛髪変形剤:前記毛髪変形用基剤=1:10の質量比で混合し、混合液を調製する混合工程(I)、および、
前記混合工程(I)の後、得られた混合液を毛髪に塗布する、塗布工程(II)を有する、毛髪変形処理方法。
【請求項12】
毛髪変形剤100質量%中に、ブチロラクトンチオールを22~66質量%、および溶剤(G)を含む、毛髪変形剤と、
請求項1または2に記載の毛髪変形用基剤とを、
前記毛髪変形剤:前記毛髪変形用基剤=1:10の質量比で混合し、混合液を調製する混合工程(I)、および、
前記混合工程(I)の後、得られた混合液を毛髪に塗布する、塗布工程(II)を有する、毛髪変形処理方法。
【請求項13】
前記塗布工程(II)の後、20~25℃で20~30分放置する放置工程(III)、
前記放置工程(III)の後、放置された毛髪を水洗する水洗工程(IV)、および、
前記水洗工程(IV)の後、水洗した毛髪を加熱する工程(V)を有する、請求項11に記載の毛髪変形処理方法。
【請求項14】
前記塗布工程(II)の後、20~25℃で20~30分放置する放置工程(III)、
前記放置工程(III)の後、放置された毛髪を水洗する水洗工程(IV)、および、
前記水洗工程(IV)の後、水洗した毛髪を加熱する工程(V)を有する、請求項12に記載の毛髪変形処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪変形用基剤、毛髪変形用処理剤、および毛髪変形処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、縮毛矯正、カーリング処理、またはパーマネントウェーブ処理などの毛髪変形処理では、毛髪中のシスチン結合を還元剤で還元し、所望の形状にした後、再度酸化剤等で固定する処理を行っている。
【0003】
毛髪変形処理を酸性領域で行う場合には、還元剤としてブチロラクトンチオールやグリセリルモノチオグリコレートなどが使用されている。これらの還元剤を含む毛髪変形剤は、毛髪変形処理を行うときに基剤と混合され、用時調製されて使用されることが一般的である。すなわち、還元剤を含む毛髪変形剤と、毛髪変形用基剤とを用時調製して、毛髪変形用処理剤としてから毛髪に塗布している。
【0004】
例えば、特許文献1では、毛髪の傷みを十分に抑制し、かつ、良好なウェーブを発現できる、酸性pHの条件下で使用可能な毛髪処理剤組成物が開示されている。また、特許文献2では、毛髪変形効果に優れるpH7.0以下の毛髪変形用第1剤の後に用いた場合に毛髪変形効果を長期間維持させることが可能な毛髪変形用第2剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-204282号公報
【特許文献2】特開2018-30782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の技術では、クセの伸びおよびカール形成力が充分ではなかった。
また、特許文献1および特許文献2の技術では、毛髪変形用処理剤を毛髪に塗布すると、毛髪からタンパク質が流出する影響で、毛髪上でのpHが変動してしまうことがわかった。剤のpHが変動してしまうと、狙ったpHでは毛髪変形処理ができないため、所望の形状に毛髪を変形しにくく、問題があった。
【0007】
本発明者は、用時調製した剤のpHの変動を抑えるために、毛髪変形用基剤にバッファー機能を持たせることが有効と考えた。本発明者は、毛髪変形用基剤にバッファー機能を持たせる検討を行うなかで、クエン酸ナトリウム等のバッファー作用を持つ成分を多く配合すると、毛髪変形用基剤がクリームである場合には、分離しやすくなってしまうという問題にも直面した。つまり、毛髪変形用基剤のバッファー機能を高めることと、安定性を高めることとの両立が困難であった。
【0008】
また、別の問題として、毛髪のつやの向上が常に求められており、更に毛髪のつやを向上することも問題となっていた。
このようなことから、本発明は、還元剤を含む毛髪変形剤と、毛髪変形用基剤とを用時調製し毛髪に塗布した際に、pHの変動を抑えることができ、剤の安定性にも優れる毛髪変形用基剤および毛髪変形用処理剤を提供すること、並びに、仕上がりの毛髪のつやおよび指通りを向上させ、かつ、クセの伸びおよびカール形成力にも優れる毛髪変形用処理剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する毛髪変形用基剤、毛髪変形用処理剤、および毛髪変形処理方法は上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、例えば以下の[1]~[14]である。
[1]毛髪変形剤100質量%中に、還元剤(D1)を22~70質量%含む毛髪変形剤と混合して使用する、毛髪変形用基剤であって、毛髪変形用基剤100質量%中に、クエン酸ナトリウム(A)を1.5~10質量%と、クエン酸(B)を0.14~8.4質量%と、ノニオン界面活性剤(C)を0.1~5質量%と、高級アルコール(J)を3~11質量%とを含み、25℃におけるpHが3.6~6.4である、毛髪変形用基剤。
【0011】
[2]システアミン、L-システイン、チオグリコール酸、チオ乳酸、およびチオグリセリンからなる群より選択される少なくとも1種の還元剤(D2)を含む、[1]に記載の毛髪変形用基剤。
【0012】
[3]カチオン界面活性剤(K)を1~10質量%含む、[1]または[2]に記載の毛髪変形用基剤。
【0013】
[4]25℃で液状の油脂(L)を1~3.5質量%含む、[1]~[3]のいずれかに記載の毛髪変形用基剤。
【0014】
[5]多価アルコール(M)を1~4質量%含む、[1]~[4]のいずれかに記載の毛髪変形用基剤。
【0015】
[6]毛髪変形剤と、毛髪変形用基剤とを有する、毛髪変形用処理剤であって、前記毛髪変形剤100質量%中に、グリセリルモノチオグリコレートを42~70質量%と、溶剤(G)とを含み、前記毛髪変形用基剤100質量%中に、クエン酸ナトリウム(A)を1.5~10質量%と、クエン酸(B)を0.14~8.4質量%と、ノニオン界面活性剤(C)を0.1~5質量%と、高級アルコール(J)を3~11質量%とを含み、前記毛髪変形用基剤の25℃におけるpHが3.6~6.4である、毛髪変形用処理剤。
【0016】
[7]毛髪変形剤と、毛髪変形用基剤とを有する、毛髪変形用処理剤であって、前記毛髪変形剤100質量%中に、ブチロラクトンチオールを22~66質量%と、溶剤(G)とを含み、前記毛髪変形用基剤100質量%中に、クエン酸ナトリウム(A)を1.5~10質量%と、クエン酸(B)を0.14~8.4質量%と、ノニオン界面活性剤(C)を0.1~5質量%と、高級アルコール(J)を3~11質量%とを含み、前記毛髪変形用基剤の25℃におけるpHが3.6~6.4である、毛髪変形用処理剤。
【0017】
[8]前記毛髪変形剤が、炭酸エチレン(E)を21~54.6質量%含む、[6]または[7]に記載の毛髪変形用処理剤。
【0018】
[9]前記毛髪変形剤が、炭酸プロピレン(F)を3.5~23.4質量%含む、[6]~[8]のいずれかに記載の毛髪変形用処理剤。
【0019】
[10]前記溶剤(G)が、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、コハク酸ビスエトキシジグリコール、PEG-8、およびN-メチルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種である、[6]~[9]のいずれかに記載の毛髪変形用処理剤。
【0020】
[11]毛髪変形剤100質量%中に、グリセリルモノチオグリコレートを42~70質量%、および溶剤(G)を含む、毛髪変形剤と、[1]~[5]のいずれかに記載の毛髪変形用基剤とを、前記毛髪変形剤:前記毛髪変形用基剤=1:10の質量比で混合し、混合液を調製する混合工程(I)、および、前記混合工程(I)の後、得られた混合液を毛髪に塗布する、塗布工程(II)を有する、毛髪変形処理方法。
【0021】
[12]毛髪変形剤100質量%中に、ブチロラクトンチオールを22~66質量%、および溶剤(G)を含む、毛髪変形剤と、[1]~[5]のいずれかに記載の毛髪変形用基剤とを、前記毛髪変形剤:前記毛髪変形用基剤=1:10の質量比で混合し、混合液を調製する混合工程(I)、および、前記混合工程(I)の後、得られた混合液を毛髪に塗布する、塗布工程(II)を有する、毛髪変形処理方法。
【0022】
[13]前記塗布工程(II)の後、20~25℃で20~30分放置する放置工程(III)、前記放置工程(III)の後、放置された毛髪を水洗する水洗工程(IV)、および、前記水洗工程(IV)の後、水洗した毛髪を加熱する工程(V)を有する、[11]に記載の毛髪変形処理方法。
【0023】
[14]前記塗布工程(II)の後、20~25℃で20~30分放置する放置工程(III)、前記放置工程(III)の後、放置された毛髪を水洗する水洗工程(IV)、および、前記水洗工程(IV)の後、水洗した毛髪を加熱する工程(V)を有する、[12]に記載の毛髪変形処理方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、還元剤を含む毛髪変形剤と、毛髪変形用基剤とを用時調製し毛髪に塗布した際に、pHの変動を抑えることができ、剤の安定性にも優れる毛髪変形用基剤および毛髪変形用処理剤を提供でき、並びに、仕上がりの毛髪のつやおよび指通りを向上させ、かつ、クセの伸びおよびカール形成力にも優れる毛髪変形用処理剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施例で使用した毛束1を示したものである。毛束1は、サロンで入手した、化学処理をしていない波状のくせ毛の毛束2.5gをブリーチ処理して得た。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明の毛髪変形用基剤、毛髪変形用処理剤、および毛髪変形処理方法について具体的に説明する。なお、本発明において、毛髪変形剤と、毛髪変形用基剤とを使用する直前に混合することを用時調製とも称す。
【0027】
<毛髪変形用基剤>
本発明の毛髪変形用基剤は、毛髪変形剤100質量%中に、還元剤(D1)を22~70質量%含む毛髪変形剤と混合して使用する。
【0028】
本発明の毛髪変形用基剤は、毛髪変形用基剤100質量%中に、クエン酸ナトリウム(A)を1.5~10質量%と、クエン酸(B)を0.14~8.4質量%と、ノニオン界面活性剤(C)を0.1~5質量%と、高級アルコール(J)を3~11質量%とを含み、25℃におけるpHが3.6~6.4である。
【0029】
〔クエン酸ナトリウム(A)〕
本発明の毛髪変形用基剤は、クエン酸ナトリウム(A)を1.5~10質量%、好ましくは4~10質量%、より好ましくは4~7%質量含む。
クエン酸ナトリウム(A)が前記下限量より少ないと、毛髪変形用基剤の乳化が不良であり、撹拌で消失しない凝集物が生成してしまう場合がある。クエン酸ナトリウム(A)が、前記上限量より多いと、用時調製の際に混合しにくく、毛髪に塗布した際に、pHの変動を抑えにくい場合がある。
【0030】
本発明者は、毛髪変形用基剤にクエン酸ナトリウム(A)と、後述するクエン酸(B)とを特定量配合し、さらに、ノニオン界面活性剤(C)および高級アルコール(J)を配合することで、還元剤を含む毛髪変形剤と毛髪変形用基剤とを用時調製して毛髪に塗布した際に、pHの変動を抑えることができることを見出した。
【0031】
本発明者は、毛髪変形用基剤にリン酸や水酸化ナトリウムなどの緩衝作用を示す成分を配合しても、毛髪に塗布した際に、pHの変動を抑えることができなかったことから、クエン酸ナトリウム(A)と、後述するクエン酸(B)とを特定量配合することで、毛髪から流出するタンパク質等の成分の影響を抑えpHの変動を抑制できると考えている。
【0032】
〔クエン酸(B)〕
本発明の毛髪変形用基剤は、クエン酸(B)を0.14~8.4質量%、好ましくは0.2~0.4質量%含む。
クエン酸(B)が前記下限量より少ないと、毛髪変形用基剤のpHが規定値から外れてしまい、還元剤の還元力が低下する場合がある。クエン酸ナトリウム(A)が、前記上限量より多いと、仕上がりの毛髪の指通りが悪くなってしまう場合がある。
【0033】
本発明の毛髪変形用基剤は、クエン酸(B)を0.2~0,4質量%含むと、上述したクエン酸ナトリウム(A)の量との関係で25℃におけるpHを6付近に調製しやすく、混合して使用する毛髪変形剤の還元剤(D1)の還元力が強くなるため、特に好ましい。
【0034】
〔ノニオン界面活性剤(C)〕
本発明の毛髪変形用基剤は、ノニオン界面活性剤(C)を0.1~5質量%、好ましくは0.2~5.0質量%、より好ましくは0.2~2.5質量%含む。
ノニオン界面活性剤(C)が前記下限量より少ないと、毛髪変形用基剤の乳化が不良であり、撹拌で消失しない凝集物が生成してしまう場合がある。ノニオン界面活性剤(C)が、前記上限量より多いと、仕上がりの毛髪の指通りが悪くなってしまう場合がある。
【0035】
ノニオン界面活性剤(C)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、およびアルキルグリコシドが好ましい。これらの中でも、乳化安定性に優れることからポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましい。
【0036】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ステアレス-2、ステアレス-11、およびセテス-150が指通りの良さおよび乳化安定性に優れることからさらに好ましく、これらを併用することが特に好ましい。
【0037】
ノニオン界面活性剤(C)としてステアレス-2、ステアレス-11、およびセテス-150を併用する場合には、ステアレス-2が0.05~1.6質量%、ステアレス-11が0.05~3.2質量%、セテス-150が0.01~0.2質量%であると、指通りの良さに特に優れ、乳化安定性にも優れることから特に好ましい。
ノニオン界面活性剤(C)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0038】
〔高級アルコール(J)〕
本発明の毛髪変形用基剤は、高級アルコール(J)を3~11質量%、好ましくは5~7.24質量%含む。
高級アルコール(J)が前記下限量より少ないと酸性領域でのストレート処理をした際に毛髪のなめらかさ、滑り性、しっとり感が足りない場合がある。前記上限量より多いと、毛髪のなめらかさ、滑り性が劣る場合がある。
【0039】
高級アルコール(J)は、炭素数14~22のアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数14~18のアルキル基を有するものがさらに好ましく、16~18のアルキル基を有するものが最も好ましい。アルキル基は、直鎖アルキル基であることが好ましい。
【0040】
高級アルコール(J)として、具体的には、ミリスチルアルコール、セタノール、セテアリルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、およびオレイルアルコールが挙げられる。これらの中でも、酸性領域でのストレート処理をした際に仕上がりの毛髪の柔軟性、滑り性、しっとり感に優れることから、高級アルコール(J)としては、ミリスチルアルコール、セタノール、セテアリルアルコール、およびベヘニルアルコールがより好ましく、柔軟性、滑り性、しっとり感にさらに優れることから、ミリスチルアルコール、セタノール、およびセテアリルアルコールがさらに好ましく、柔軟性、滑り性、しっとり感に特に優れることから、セタノール、およびセテアリルアルコールが特に好ましい。
【0041】
高級アルコール(J)として、セタノールおよびセテアリルアルコールを併用する場合には、セタノールが2.5~10.76質量%、およびセテアリルアルコールが0.2~0.3質量%であると、毛髪の柔軟性、滑り性、しっとり感に優れることから特に好ましい。
高級アルコール(J)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0042】
〔pH〕
本発明の毛髪変形用基剤は、25℃におけるpHが3.6~6.4、好ましくは4.8~6.4質量%、より好ましくは5.6~6.4である。
本発明の毛髪変形用基剤は、25℃におけるpHが5.6~6.4であると、混合して使用する毛髪変形剤に還元剤(D1)としてブチロラクトンチオールやグリセリルモノチオグリコレートが配合されている場合に、還元力が強く、所望の形状に毛髪を変形しやすいため特に好ましい。
【0043】
本発明者は、毛髪変形用基剤にクエン酸ナトリウム(A)と、クエン酸(B)とを特定量配合することで、25℃におけるpHを3.6~6.4にでき、毛髪上でのpHの変動を抑えられると考えている。
【0044】
〔還元剤(D2)〕
本発明の毛髪変形用基剤は、システアミン、L-システイン、チオグリコール酸、チオ乳酸、およびチオグリセリンからなる群より選択される少なくとも1種の還元剤(D2)を含むことが好ましい。
本発明の毛髪変形用基剤は、還元剤(D2)を好ましくは0.1~2質量%含む。
還元剤(D2)が、前記範囲内にあると、毛髪の伸び、ハリ、およびコシに優れるため好ましい。
【0045】
還元剤(D2)は、システアミン、L-システイン、およびチオグリコール酸がより好ましく、酸性領域でのストレート処理をした際に、仕上がりの毛髪のハリやコシに特に優れることから、チオグリコール酸が特に好ましい。
【0046】
チオグリコール酸としては、例えば、チオグリコール酸およびその塩類が挙げられる。具体的には、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸モノエタノールアミンが挙げられ、これらの中でも、毛髪のハリおよびコシに優れるため、チオグリコール酸アンモニウムが好ましい。
還元剤(D2)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0047】
〔カチオン界面活性剤(K)〕
本発明の毛髪変形用基剤は、カチオン界面活性剤(K)を好ましくは1~10質量%、より好ましくは1~6質量%、さらに好ましくは1.4~5質量%含む。
カチオン界面活性剤(K)が前記範囲内にあると、毛髪変形用基剤の乳化安定性に優れ、毛髪の柔軟性にも優れるため好ましい。
【0048】
カチオン界面活性剤(K)としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、およびアルキルトリモニウムサルフェートが好ましく、具体的には、毛髪変形用基剤の乳化安定性、毛髪のなめらかさ、柔軟性に優れる観点から、セトリモニウムクロリド、ステアルトリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムメトサルフェート、セトリモニウムメトサルフェート、ベヘントリモニウムサルフェート、クオタニウム-87、およびクオタニウム-91が好ましい。
【0049】
カチオン界面活性剤(K)として、ベヘントリモニウムサルフェート、ステアルトリモニウムクロリド、セトリモニウムクロリド、およびクオタニウムー87を併用する場合には、ベヘントリモニウムサルフェートが0.3~2.3質量%、ステアルトリモニウムクロリドが0.4~5質量%、セトリモニウムクロリドが0.1~1.3質量%、およびクオタニウムー87が0.1~1.7質量%であると、酸性領域でのストレート処理をした際に毛髪の柔軟性、滑り性、しっとり感により優れることから特に好ましい。
カチオン界面活性剤(K)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0050】
〔25℃で液状の油脂(L)〕
本発明の毛髪変形用基剤は、25℃で液状の油脂(L)を好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは1~5質量%含む。
25℃で液状の油脂(L)が前記範囲内にあると、毛髪のなめらかさ、滑り性、しっとり感に優れるため好ましい。
【0051】
25℃で液状の油脂(L)であれば特に制限なく用いることができるが、ミネラルオイル、アジピン酸ジイソプロピル、イソノナン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソノナン酸イソノニル、コハク酸ジエチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、ジリノール酸ジイソプロピル、ホホバ種子油、スクワラン、およびアルガニアスピノサ核油が好ましく、ミネラルオイル、アジピン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエチルヘキシル、およびミリスチン酸イソプロピルから選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0052】
これらの中でも、酸性領域でのストレート処理をした際に毛髪の柔軟性、滑り性、しっとり感に特に優れることから、25℃で液状の油脂(L)が、ミネラルオイルおよびアジピン酸ジイソプロピルから選択される少なくとも1種であることがさらに好ましい。
25℃で液状の油脂(L)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0053】
〔多価アルコール(M)〕
本発明の毛髪変形用基剤は、多価アルコール(M)を好ましくは1~4質量%、より好ましくは3~4質量%含む。
多価アルコール(M)が前記範囲内にあると、毛髪のなめらかさ、滑り性、しっとり感に優れるため好ましい。
【0054】
多価アルコール(M)であれば特に制限なく用いることができるが、酸性領域でのストレート処理をした際に毛髪の柔軟性、滑り性、しっとり感に特に優れることから、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、およびグリセリンが好ましい。
多価アルコール(M)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0055】
<毛髪変形剤>
本発明の毛髪変形剤は、毛髪変形剤100質量%中に、還元剤(D1)を22~70質量%含む。毛髪変形剤は、毛髪変形用基剤と混合して使用する。
【0056】
〔還元剤(D1)〕
本発明の毛髪変形剤は、還元剤(D1)を22~70質量%、好ましくは30~70質量%、より好ましくは42~70質量%含む。
還元剤(D1)が前記範囲内にあると、毛髪のクセの伸び、つや、毛髪変形用基剤との混ざりやすさに優れ、毛髪へのダメージも抑えられるため好ましい。
【0057】
還元剤(D1)としては、酸性領域での還元力に優れることから、ブチロラクトンチオール、およびグリセリルモノチオグリコレートが好ましく、酸性領域での還元力と仕上がりの毛髪のツヤに特に優れることから、ブチロラクトンチオールがより好ましい。
【0058】
本発明の毛髪変形剤は、ブチロラクトンチオールを用いる場合には、22~66質量%含むことが好ましく、30~55質量%がより好ましい。グリセリルモノチオグリコレートを用いる場合には、42~70質量%含むことが好ましい。
還元剤(D1)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0059】
〔溶剤(G)〕
本発明の毛髪変形剤は、溶剤(G)を好ましくは11~78質量%、より好ましくは11~70質量%含む。
溶剤(G)が前記範囲内にあると、毛髪のツヤおよび指通りに優れるため好ましい。
【0060】
溶剤(G)は、上述の還元剤(D1)を溶解できれば特に制限されないが、溶剤(G)が、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、コハク酸ビスエトキシジグリコール、PEG-8、およびN-メチルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、毛髪の柔軟性、滑り性、および毛髪変形用基剤との混ざりやすさに優れることから、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリンがさらに好ましい。
溶剤(G)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0061】
〔炭酸エチレン(E)〕
本発明の毛髪変形剤は、炭酸エチレン(E)を好ましくは21~54.6質量%、より好ましくは21~49質量%含む。
炭酸エチレン(E)が前記範囲内にあると、毛髪のツヤおよび指通りに優れるため好ましい。
【0062】
〔炭酸プロピレン(F)〕
本発明の毛髪変形剤は、炭酸プロピレン(F)を好ましくは3.5~23.4質量%、より好ましくは3.5~21質量%含む。
炭酸プロピレン(F)が前記範囲内にあると、毛髪のツヤおよび指通りに優れるため好ましい。
【0063】
本発明の毛髪変形剤は、炭酸エチレン(E)および炭酸プロピレン(F)の質量の合計と、溶剤(G)の質量との質量比(炭酸エチレン(E)+炭酸プロピレン(F):溶剤(G))が好ましくは9:1~1:1、より好ましくは9:1~7:3である。質量比が範囲内にあると、毛髪のツヤおよび毛髪変形用基剤との混ざりやすさに優れるため好ましい。
【0064】
本発明の毛髪変形剤は、炭酸エチレン(E)および炭酸プロピレン(F)の質量の合計と、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリンの質量との質量比が、9:1~7:3であることが毛髪の柔軟性、滑り性、および毛髪変形用基剤との混ざりやすさに優れるため特に好ましい。
【0065】
<毛髪変形用処理剤>
本発明において、毛髪変形用処理剤とは、毛髪変形剤と、毛髪変形用基剤とを混合して得られたものを意味する。通常、毛髪変形剤と、毛髪変形用基剤とを使用する直前に混合し毛髪変形用処理剤を得てから、毛髪変形用処理剤を毛髪に塗布して用いる。
本発明の毛髪変形用処理剤は、毛髪変形剤と、毛髪変形用基剤とを有する。
【0066】
本発明の毛髪変形用処理剤は、毛髪変形剤100質量%中に、グリセリルモノチオグリコレートを42~70質量%と、溶剤(G)とを含み、前記毛髪変形用基剤100質量%中に、クエン酸ナトリウム(A)を1.5~10質量%と、クエン酸(B)を0.14~8.4質量%と、ノニオン界面活性剤(C)を0.1~5質量%と、高級アルコール(J)を3~11質量%とを含み、前記毛髪変形用基剤の25℃におけるpHが3.6~6.4である。
【0067】
本発明の毛髪変形用処理剤は、毛髪変形剤100質量%中に、ブチロラクトンチオールを22~66質量%と、溶剤(G)とを含み、前記毛髪変形用基剤100質量%中に、クエン酸ナトリウム(A)を1.5~10質量%と、クエン酸(B)を0.14~8.4質量%と、ノニオン界面活性剤(C)を0.1~5質量%と、高級アルコール(J)を3~11質量%とを含み、前記毛髪変形用基剤の25℃におけるpHが3.6~6.4である。
【0068】
本発明の毛髪変形用処理剤は、仕上がりの毛髪のツヤに優れることから、毛髪変形剤にブチロラクトンチオールが含まれることが好ましい。
本発明の毛髪変形用処理剤は、毛髪変形剤100質量%中に、ブチロラクトンチオールおよびグリセリルモノチオグリコレートからなる群より選択される少なくとも1種の還元剤(D1)を22~70質量%含んでいてもよい。
【0069】
本発明の毛髪変形用処理剤は、毛髪に塗布した際に、pHの変動を抑えることができ、剤の安定性にも優れる。また、仕上がりの毛髪のつやおよび指通りを向上させ、かつ、クセの伸びおよびカール形成力にも優れる。
【0070】
本発明の毛髪変形用処理剤は、ストレート処理、ホット系パーマ処理、およびコールドパーマ処理に用いることができるが、毛髪へのダメージの少なさ、および毛髪のクセの伸びに優れることからストレート処理に用いることが好ましい。
【0071】
<毛髪変形処理方法>
本発明の毛髪変形処理方法は、毛髪変形剤100質量%中に、グリセリルモノチオグリコレートを42~70質量%、および溶剤(G)を含む、毛髪変形剤と、上述した本発明の毛髪変形用基剤とを、前記毛髪変形剤:前記毛髪変形用基剤=1:10の質量比で混合し、混合液を調製する混合工程(I)、および前記混合工程(I)の後、得られた混合液を毛髪に塗布する、塗布工程(II)を有する。
【0072】
本発明の毛髪変形処理方法は、毛髪変形剤100質量%中に、ブチロラクトンチオールを22~66質量%、および溶剤(G)を含む、毛髪変形剤と、上述した本発明の毛髪変形用基剤とを、前記毛髪変形剤:前記毛髪変形用基剤=1:10の質量比で混合し、混合液を調製する混合工程(I)、および前記混合工程(I)の後、得られた混合液を毛髪に塗布する、塗布工程(II)を有する。
【0073】
本発明の毛髪変形処理方法は、仕上がりの毛髪のツヤに優れることから、毛髪変形剤にブチロラクトンチオールが含まれることが好ましい。
本発明の毛髪変形処理方法は、毛髪変形剤100質量%中に、ブチロラクトンチオールおよびグリセリルモノチオグリコレートからなる群より選択される少なくとも1種の還元剤(D1)を22~70質量%を含んでいてもよい。
【0074】
本発明の毛髪変形処理方法は、前記塗布工程(II)の後、20~25℃で20~30分放置する放置工程(III)、前記放置工程(III)の後、放置された毛髪を水洗する水洗工程(IV)、および前記水洗工程(IV)の後、水洗した毛髪を加熱する工程(V)を有することが好ましい。
【0075】
毛髪を加熱する工程(V)は、ストレート処理を行う場合には、ヘアアイロンを用いて毛髪を加熱することが好ましい。なお、ヘアアイロンの温度は、好ましくは170~210℃、より好ましくは178~182℃である。ヘアアイロンとしては、例えば、ADST Premium DS2(株式会社ハッコー)を用いることができる。
【0076】
毛髪を加熱する工程(V)において、毛髪を加熱する方法としては、例えば、乾いた毛束の根元から毛先に向かって、ヘアアイロンを2~15秒接触させることが好ましく、接触させる回数は、好ましくは1~10回、より好ましくは2~4回である。
【0077】
<その他成分>
本発明の毛髪変形用基剤は、通常は水を含む。水の含有量は特に限定されず、使用する目的に応じて、適宜調整して用いることができる。水として、具体的には、水道水、イオン交換水、蒸留水、精製水および天然水が挙げられ、殺菌済みのものが好ましい。
本発明の毛髪変形用基剤において、水を好ましくは50~80質量%、より好ましくは60~75質量%含み、イオン交換水であることが好ましい。
【0078】
本発明の毛髪変形剤および毛髪変形用基剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記成分以外に任意の成分を含有することができる。任意の成分としては、例えば、乳化剤、可溶化剤、浸潤剤、水溶性ポリマー、糖、植物抽出物、安定化剤、保湿剤、生薬類、金属封鎖剤(キレート剤)、防腐剤、酸化防止剤、清涼剤、帯電防止剤、ビタミン類、タンパク質、香料、色素、溶剤が挙げられる。
【0079】
<製造方法>
本発明の毛髪変形剤、毛髪変形用基剤は、上述した各成分を上述の量で使用する以外は、例えば公知の方法で、撹拌、混合、加熱、溶解、分散等することによって製造することができ、製造方法は特に限定されない。製造方法としては各成分を均一に混合するために、加熱条件下で行ってもよい。加熱条件下で製造する場合の温度としては、例えば75~85℃が挙げられる。
【0080】
本発明の毛髪変形用処理剤は、例えば、市販のヘアカラー用カップ(アジアンカラーカップ M レッド:株式会社アリミノ製)に、毛髪変形剤と毛髪変形用基剤とを、所望の量、好ましくは毛髪変形剤:毛髪変形用基剤=1:10の質量比で測りとり、市販のヘアカラー用マドラー等で混ぜ、用時調製して得ることができる。
【0081】
<剤形>
本発明の毛髪変形剤は、透明な液状であることが好ましい。
本発明の毛髪変形用基剤は、クリーム状であることが好ましい。
本発明の毛髪変形剤は、水様の液状であることが、毛髪変形用基剤と均一に混合しやすい観点から、より好ましい。
【実施例0082】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0083】
<実施例1~81、比較例1~13>
実施例、および比較例では、表1に記載の市販品を使用した。
実施例1~実施例58、および比較例1~3の処方の数値は、毛髪変形剤を100質量%とした場合の、各成分の質量%を表しており、純分換算した値を示す。
【0084】
実施例59~実施例81、および比較例4~13の処方の数値は、毛髪変形用基剤を100質量%とした場合の、各成分の質量%を表しており、純分換算した値を示す。
表2~表9に記載の処方で、毛髪変形用基剤および毛髪変形剤を製造し、物性評価および官能評価の試料とした。
【0085】
【表1】
【0086】
(1)、(2)の評価項目では、物性評価を行った。
(3)の評価項目では、用時調製して毛髪変形用処理剤を得た後、官能評価を行った。
(4)~(7)の評価項目では、後述の条件で前処理した毛束1をストレート処理し、評価基準に従って官能評価を行った。
(8)~(9)の評価項目では、後述の条件で前処理した毛束2をホット系パーマ処理し、評価基準に従って官能評価を行った。
(10)の評価項目では、後述の条件で前処理した毛束2をコールドパーマ処理し、評価基準に従って官能評価を行った。
【0087】
実施例1~58、比較例1~3では、試料の毛髪変形剤と、実施例68と同じ処方の毛髪変形用基剤とを、毛髪変形剤:毛髪変形用基剤=1:10で用時調製した。
実施例59~81、比較例4~13では、実施例24と同じ処方の毛髪変形剤と試料の毛髪変形用基剤とを、毛髪変形剤:毛髪変形用基剤=1:10で用時調製した。
【0088】
〔毛束の前処理:毛束1〕
サロンで入手した、化学処理をしていない波状のくせ毛2.5gを脱色剤(アリミノ120ブリーチ:株式会社アリミノ製)を用いて、45℃で15分ブリーチ処理し、ダメージを与えた。その後、流水ですすぎ、シャンプー(シェルパ デザインサプリD-2シャンプー:株式会社アリミノ製)1gで洗浄後、流水ですすぎ、ドライヤーで乾燥させた。当該前処理で得られた波状のくせ毛(図1)を毛束1とした。
【0089】
〔毛束の前処理:毛束2〕
30cmの人毛黒髪毛束(BS-B3A、ビューラックス社製)2.5gを脱色剤(アリミノ120ブリーチ:株式会社アリミノ製)を用いて45℃で15分ブリーチ処理し、ダメージを与えた。その後、流水ですすぎ、シャンプー(シェルパ デザインサプリD-2シャンプー:株式会社アリミノ製)1gで洗浄後、流水ですすぎ、ドライヤーで乾燥させた。当該前処理で得られた直毛を毛束2とした。
【0090】
〔ストレート処理〕
試料の毛髪変形剤と毛髪変形用基剤とを、毛髪変形剤:毛髪変形用基剤=1:10で用時調製し、毛髪変形用処理剤を得た。
得られた毛髪変形用処理剤を30g測りとり、あらかじめ水で濡らしておいた毛束1に刷毛で均一に塗布し、25℃で30分放置後、水洗しドライヤーで乾燥させた。
次いで、ヘアアイロン(株式会社ハッコー、ADST Premium DS2、180℃)を用いてアイロンスルー処理(毛束の根元から毛先まで約12秒の速さ)を3回行った。
【0091】
その後、酸化剤を含むヘアトリートメント(アリミノクオラインアフタークリーム:株式会社アリミノ製)30gを均一に塗布し、25℃で15分放置後、水洗し、ドライヤーで乾燥させた。この仕上がりの毛束について、(4)つや、(5)指通り、(6)くせの伸び(7)くせの伸びの持続の評価を行った。
【0092】
〔ホット系パーマ処理〕
試料の毛髪変形剤と、毛髪変形用基剤とを毛髪変形剤:毛髪変形用基剤=1:10で用時調製し、毛髪変形用処理剤を得た。
得られた毛髪変形用処理剤を30g測りとり、あらかじめ水で濡らしておいた毛束2に刷毛で均一に塗布し、25℃で30分放置後、水洗した。
次いで、ホット系パーマの機械(ORDIS EX:株式会社大広製作所)のロッドに毛束を巻き、設定温度を80℃にして、10分間毛束を加熱した。
【0093】
その後、酸化剤を含むヘアトリートメント(アリミノクオラインアフターローション:株式会社アリミノ製)30gを均一に塗布し、25℃で10分放置後、水洗し、ドライヤーで乾燥させた。この仕上がりの毛束について、(8)カール形成力、(9)カールの持続力の評価を行った。
【0094】
〔コールドパーマ処理〕
試料の毛髪変形剤と、毛髪変形用基剤とを毛髪変形剤:毛髪変形用基剤=1:10で用時調製し、毛髪変形用処理剤を得た。
毛束2についてコールドパーマ処理をし、キルビー法に従ってウェーブ効率を測定した。具体的には以下のプロセスで行った。
常法の通りに、キルビー法用ロッドに毛束2を巻き、上記の毛髪変形用処理剤30gに浸漬し、25℃で30分放置後、水洗した。
【0095】
その後、酸化剤を含むヘアトリートメント(アリミノクオラインアフターローション:株式会社アリミノ製)30gに浸漬し、25℃で10分放置後、水洗し、ドライヤーで乾燥させた。この仕上がりの毛束について、キルビー法によるウェーブ効率を算出し、(10)カール形成力の評価を行った。なお、各試料につき、3つの毛束を計測し、平均値で評価した。
【0096】
(キルビー法によるウェーブ効率の算出)
仕上がりの毛束をキルビー法用ロッドから外し、グラフ用紙の上に置き、テープで毛束上部を固定した。固定した毛束に対し、以下のa~cを測定した。a~cの測定値をキルビー法の公式(下記数1)に当てはめ、ウェーブ効率(%)を評価した。
【0097】
a:器具の棒の1番目から5番目までの距離(mm)
b:形成されたウェーブの連続した5つの山における1つめの山の頂点(b1)と5つめの山の頂点(b2)との間の距離(mm)
c:bのウェーブをまっすぐに伸ばした時のb1とb2との間の距離(mm)
【0098】
【数1】
【0099】
《官能評価》
(3)~(5)の評価項目については、専門パネラー(美容師)10名が1人ずつ官能評価を行った。評価は各項目に記載した下記の評価基準による10名の平均点を算出し、平均点に基づいて以下のとおり評価した。
◎◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が4.5点以上である。
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が3.5点以上4.5点未満である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点未満である。
【0100】
(6)~(9)の評価項目については、専門パネラー(美容師)10名が1人ずつ官能評価を行った。評価は各項目に記載した下記の評価基準による10名の平均点を算出し、平均点に基づいて以下のとおり評価した。
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が3.5点以上である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点未満である。
【0101】
《評価項目および評価基準》
(1)毛髪変形用基剤の乳化安定性
試料の毛髪変形用基剤0.5gをプレパラートにのせ、刷毛で縦2cm、横5cmに広げて、乳化の状態を目視で評価した。
◎:乳化が非常に良好であり、凝集物も沈殿物も油脂の分離も見られない。
○:乳化が良好であり、わずかに凝集物が見られるが撹拌により消失する。
△:乳化が不良であり、撹拌で消失しない凝集物が生成している。
×:乳化が極めて不良であり、油脂の分離が生じている。
【0102】
(2)毛髪変形用処理剤のpHの変動評価
実施例59~81、比較例5~14では、試料の毛髪変形用基剤のpHをあらかじめ測定しておいた。
実施例24と同じ処方の毛髪変形剤と、試料の毛髪変形用基剤とを用時調製し、得た毛髪変形用処理剤を30g毛髪に塗布した。塗布後30分経過時の毛髪上のpHの値と、あらかじめ測定しておいた試料の毛髪変形用基剤のpHの値とを比較し、差を絶対値として評価した。
pHは、pH測定器(株式会社堀場製作所製、商品名:F-1)により25℃で測定した。
◎:pHの差が0.1未満である。
○:pHの差が0.1~0.4未満である。
△:pHの差が0.4~1.0未満である。
×:pHの差が1.0以上である。
【0103】
(3)用時調製の混ざりやすさ
市販のコールドパーマ用のカップに、毛髪変形剤と毛髪変形用基剤とを、毛髪変形剤:毛髪変形用基剤=1:10の質量比で全量30gを測りとった。市販のコールドパーマ用のマドラーで混ぜ、用時調製の際の混ざりやすさについて、目視で評価した。
5点:さらに非常に混ざりやすい。
4点:非常に混ざりやすい。
3点:混ざりやすい。
2点:やや混ざりやすい。
1点:混ざりにくい。
【0104】
(4)つや
毛束1をストレート処理し、仕上がりの毛束について、つやを目視で評価した。
5点:さらに非常にツヤがある。
4点:非常につやがある。
3点:つやがある。
2点:ややつやがある。
1点:つやがない。
【0105】
(5)指通り
毛束1をストレート処理し、仕上がりの毛束について、毛束に指を通した時の指通りを触感で評価した。
5点:さらに非常になめらかである。
4点:非常になめらかである。
3点:なめらかである。
2点:なめらかでない。
1点:ひっかかる。
【0106】
(6)仕上がりの毛髪のくせの伸び
毛束1をストレート処理し、仕上がりの毛束について、くせの伸びを目視で評価した。
4点:非常にしっかりとくせが伸びている。
3点:しっかりとくせが伸びている。
2点:少ししかくせが伸びていない。
1点:くせが伸びていない。
【0107】
(7)仕上がりの毛髪のくせの伸びの持続
毛束1をストレート処理し、仕上がりの毛束について、シャンプー1g(シェルパデザインサプリシャンプーD-1:株式会社アリミノ製)で1分洗浄後、水洗した。このシャンプーで洗浄後、水洗する施術を14回繰り返した後、風乾し、得られた毛束のくせの伸びについて、施術後一度も洗浄していない毛束のくせの伸びと比較した。
4点:非常にしっかりとくせの伸びが持続している。
3点:しっかりとくせの伸びが持続している。
2点:少ししかくせの伸びが持続していない。
1点:くせの伸びが持続していない。
【0108】
(8)カール形成力
毛束2をホット系パーマ処理し、仕上がりの毛束について、カール形成力を目視で評価した。
4点:非常にしっかりとカールが形成されている。
3点:しっかりとカールが形成されている。
2点:少ししかカールが形成されていない。
1点:カールが形成されていない。
【0109】
(9)カールの持続力
毛束2をホット系パーマ処理し、仕上がりの毛束について、シャンプー1g(シェルパデザインサプリシャンプーD-1:株式会社アリミノ製)で1分洗浄後、水洗した。このシャンプーで洗浄後、水洗する施術を14回繰り返した後、風乾し、得られた毛束のカールの持続力について、施術後一度も洗浄していない毛束のカールと比較し評価した。
4点:非常にしっかりとカールが持続している。
3点:しっかりとカールが持続している。
2点:少ししかカールが持続していない。
1点:カールが持続していない。
【0110】
(10)ウェーブ効率
毛束2をコールドパーマ処理し、上述のキルビー法に従ってウェーブ効率(%)を測定し評価した。
◎:ウェーブ効率が35%以上
〇:ウェーブ効率が30~35%未満
△:ウェーブ効率が25~30%未満
×:ウェーブ効率が25%未満
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
【表4】
【0114】
【表5】
【0115】
【表6】
【0116】
【表7】
【0117】
【表8】
【0118】
【表9】
【0119】
実施例1~81で製造した毛髪変形剤、毛髪変形用基剤、および毛髪変形用処理剤は、(1)~(10)の評価において良好な結果となった。
比較例1で製造した毛髪変形用処理剤は、毛髪変形剤に含まれるブチロラクトンチオールが規定値より少ないため、つや、指通り、仕上がりの毛髪のクセの伸び、仕上がりの毛髪のクセの伸びの持続、カール形成力、カールの持続力およびウェーブ効率が悪かった。
【0120】
比較例2で製造した毛髪変形用処理剤は、毛髪変形剤に含まれるブチロラクトンチオールが規定値より多いため、混ざりにくく、指通りも悪かった。
比較例3で製造した毛髪変形用処理剤は、毛髪変形剤に含まれるグリセリルモノチオグリコレートが規定値より多いため、混ざりにくく、つやおよび指通りも悪かった。
【0121】
比較例4で製造した毛髪変形用処理剤は、毛髪変形用基剤に含まれるクエン酸ナトリウム(A)が規定値より多いため、毛髪変形用基剤の乳化安定性が悪く、混ざりにくかった。
【0122】
比較例5で製造した毛髪変形用処理剤は、毛髪変形用基剤に含まれるクエン酸ナトリウム(A)が規定値より少ないため、pHの変動を抑えることができなかった。毛髪から流出したタンパク質等の影響により、毛髪上でpH6.0を維持できず、毛髪の等電点であるpH5付近に向かってpHが低下してしまったと考えられた。pHの低下により、pH6.0において期待された還元力が発揮されなかった。
【0123】
比較例6で製造した毛髪変形用処理剤は、毛髪変形用基剤に含まれるクエン酸(B)が規定値より少ないため、pHの変動を抑えることができなかった。毛髪から流出したタンパク質等の影響により、毛髪上でpH6.0を維持できず、毛髪の等電点であるpH5付近に向かってpHが低下してしまったと考えられた。pHの低下により、pH6.0において期待された還元力が発揮されなかった。
【0124】
比較例7で製造した毛髪変形用処理剤は、毛髪変形用基剤に含まれるクエン酸(B)が規定値より多いため、指通りが悪かった。
比較例8で製造した毛髪変形用処理剤は、毛髪変形用基剤に含まれるノニオン界面活性剤(C)が規定値より少ないため、毛髪変形用基剤の乳化安定性が悪く、混ざりにくかった。また、指通りも悪かった。
【0125】
比較例9で製造した毛髪変形用処理剤は、毛髪変形用基剤に含まれるノニオン界面活性剤(C)が規定値より多いため、指通りが悪かった。
比較例10で製造した毛髪変形用処理剤は、毛髪変形用基剤に含まれる高級アルコール(J)が規定値より少ないため、毛髪変形用基剤の乳化安定性が悪く、混ざりにくかった。また、指通りも悪かった。
【0126】
比較例11で製造した毛髪変形用処理剤は、毛髪変形用基剤に含まれる高級アルコール(J)が規定値より多いため、混ざりにくく、指通りも悪かった。
比較例12および13で製造した毛髪変形用処理剤は、毛髪変形用基剤にクエン酸ナトリウム(A)およびクエン酸(B)を配合せず、リン酸および水酸化ナトリウムを配合したものである。
【0127】
比較例12は、pHの変動を抑えることができなかった。毛髪から流出したタンパク質等の影響により、毛髪上でpH6.0を維持できず、毛髪の等電点であるpH5付近に向かってpHが低下してしまったと考えられた。pHの低下により、pH6.0において期待された還元力が発揮されなかった。また、リン酸が配合されているため、指通りがなめらかではなかった。
【0128】
比較例13は、リン酸が多く配合されているため、指通りが悪く、ひっかかるものであった。
図1