(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166843
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】圧力制御装置及び圧力制御方法
(51)【国際特許分類】
B65D 88/12 20060101AFI20231115BHJP
B65D 88/70 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
B65D88/12 X
B65D88/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077661
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安池 慎治
【テーマコード(参考)】
3E170
【Fターム(参考)】
3E170AA22
3E170AB11
3E170BA04
3E170BA05
3E170CA10
3E170CB03
3E170CB10
3E170CC01
3E170DA20
3E170FA04
3E170FB02
3E170GA06
3E170GA09
3E170MA10
3E170RA02
3E170VA03
3E170VA16
(57)【要約】
【課題】粉粒体収容容器からの粉粒体の回収を適切に行う圧力制御装置及び圧力制御方法を提供する。
【解決手段】送風装置23は、収縮防止用の接続紐によりドライコンテナ1内に固定されたバルクライナー100の内部に送風を行う。情報取得部21は、粉粒体を格納したバルクライナー100から吸引装置3を用いて粉粒体を吸引する場合に、バルクライナー100の内部の圧力に応じた情報を取得する。送風制御部22は、情報取得部21により取得されたバルクライナー100の内部の圧力に応じた情報を基に、送風装置23からの送風量を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収縮防止用の接続紐によりコンテナ内に固定された粉粒体収容容器の内部に送風を行う送風装置と、
粉粒体を格納した前記粉粒体収容容器から吸引装置を用いて粉粒体を吸引する場合に、前記粉粒体収容容器の内部の圧力に応じた情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部により取得された前記粉粒体収容容器の内部の圧力に応じた情報を基に、前記送風装置からの送風量を制御する送風制御部と
を備えたことを特徴とする圧力制御装置。
【請求項2】
前記接続紐の張力を測定する張力計をさらに備え、
前記情報取得部は、前記張力計により測定された前記接続紐の張力を前記粉粒体収容容器の内部の負圧に応じた情報として取得し、
前記送風制御部は、前記接続紐の張力を基に前記送風装置からの送風量を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力制御装置。
【請求項3】
前記送風制御部は、前記粉粒体収容容器の内部の負圧の大きさが送風開始閾値以上の場合に、前記送風装置に送風を行わせることを特徴とする請求項1に記載の圧力制御装置。
【請求項4】
前記送風制御部は、前記粉粒体収容容器の内部の負圧の大きさが送風停止閾値以下の場合に、前記送風装置の送風を停止することを特徴とする請求項3に記載の圧力制御装置。
【請求項5】
前記送風制御部は、前記粉粒体収容容器の内部の圧力に比例して前記送風量を制御することを特徴とする請求項1に記載の圧力制御装置。
【請求項6】
前記粉粒体収容容器の内部の圧力を測定する圧力センサをさらに備え、
前記情報取得部は、前記圧力センサにより測定された前記粉粒体収容容器の内部の圧力を前記粉粒体収容容器の内部の圧力に応じた情報として取得し、
前記送風制御部は、前記粉粒体収容容器の内部の圧力を基に前記送風装置からの送風量を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力制御装置。
【請求項7】
収縮防止用の接続紐によりコンテナ内に固定された粉粒体収容容器から吸引装置を用いて粉粒体を吸引し
前記粉粒体収容容器の内部の圧力に応じた情報を取得し、
取得した前記粉粒体収容容器の内部の圧力に応じた情報を基に、送風装置の送風量を制御して粉粒体収容容器の内部に送風を行う
ことを特徴とする圧力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力制御装置及び圧力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭を燃料として用いる火力発電所では、燃焼時に大量の石炭灰が生成される。石炭灰には、主にフライアッシュ(飛灰)とクリンカアッシュの2つの種類があり、フライアッシュは球状の極小さな微粒子が主成分であり、石炭灰発生量の85~95%を占める。フライアッシュは、コンクリートに配合すると耐久性や施工性、流動性を向上させることができることやセメントの量を減らせるなどの理由から、JIS(Japanese Industrial Standards)規格(JIS A 6201)によりコンクリート用フライアッシュの規格が定められており、これに適合したフライアッシュは有価物としてセメント混合材やコンクリート混和材として用いられている。
【0003】
ただし、日本国内ではセメントの需要が経年的に減少していることから、今後、国内での石炭灰の有効利用量を増やすことは困難である。そこで、海外の旺盛なセメント需要が着目され、コンクリート用フライアッシュの日本から海外への輸出が検討されている。フライアッシュの輸出では、ドライコンテナ内に設置された樹脂シート製の袋であるバルクライナーにフライアッシュが格納され相手国へと海上輸送 される輸送方法の活用が想定される。そして、相手国への到着後、フライアッシュは、コンクリートを製造する工場や工事現場において、バルクライナーから回収されて、現地の貯蔵サイロ等の保管設備に移し替えられた後、生コンクリート製造のバッチャープラント等で使用される。
【0004】
フライアッシュをドライコンテナ内のバルクライナーから回収する場合、ドライコンテナを傾けて下方に落として排出させる方法が考えられる。この方法の場合、ドライコンテナを傾け下端よりも低い位置にフライアッシュを受ける設備を配置することになり、適切な場所を確保できるとはかぎらない。また、フライアッシュは粒径の細かい粉粒体であるため、傾けただけでは全てのドライコンテナ内のスライアッシュを全て回収することは難しい。
【0005】
ここで、一般的な粉粒体の回収用機器として、真空ポンプを用いて粉粒体を吸引ホースで吸引して車載タンク内に収容し、その後車載タンクの中身を別のサイロ等の貯蔵設備に車載コンプレッサーで排出して移し替える粉粒体吸引・圧送車が提案されている。また、コンテナに設置したバルクライナーからの吸引装置として、バルクライナーに吸引ホースを接続してバルクライナーに格納されたバルク部材を吸引する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Australian bulk handling review. January/February 2014. pp. 32-33.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、バルクライナーに粉粒体吸引・圧送車の吸引ホースを接続して、真空ポンプなどで吸引を行う場合、バルクライナーに空気取り入れ用の開口部が有った場合においても吸引力によりバルクライナーが収縮する。バルクライナーに残っている粉粒体の量が多い場合には収縮はそれほど大きくないが、空気容積が大きい場合にはバルクライナーの収縮が特に大きくなる。バルクライナーは、ドライコンテナ内部に収縮防止用の紐で固定される。紐で固定されることで、吸引された場合にもバルクライナーの収縮が抑えられる。ただし、バルクライナーが収縮すると、取り付けられた紐に加わる力が大きくなる。通常は、ドライコンテナに取り付けられた紐にはバルクライナーの重さ程度の小さな力しか加わらないが、バルクライナーの収縮により大きな力が加わることで、バルクライナーの破損が発生するおそれがある。バルクライナーの破損が発生すると、バルクライナーに格納された粉粒体の回収が困難となる。
【0009】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、粉粒体収容容器からの粉粒体の回収を適切に行う圧力制御装置及び圧力制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の開示する圧力制御装置及び圧力制御方法の一つの態様において、送風装置は、収縮防止用の接続紐によりコンテナ内に固定された粉粒体収容容器の内部に送風を行う。情報取得部は、粉粒体を格納した前記粉粒体収容容器から吸引装置を用いて粉粒体を吸引する場合に、前記粉粒体収容容器の内部の圧力に応じた情報を取得する。送風制御部は、前記情報取得部により取得された前記粉粒体収容容器の内部の圧力に応じた情報を基に、前記送風装置からの送風量を制御する。
【発明の効果】
【0011】
1つの側面では、本発明は、バルクライナー内部の粉粒体の回収を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図2は、ドライコンテナの中に配置されたバルクライナーを示す構造図である。
【
図3】
図3は、実施例1に係る圧力制御装置のブロック図である。
【
図4】
図4は、バルクライナーからのフライアッシュの排出試験の概要を示す図である。
【
図5】
図5は、排出試験の試験結果を表す図である。
【
図6】
図6は、実施例1に係る圧力制御装置を用いたフライアッシュの回収処理のフローチャートである。
【
図7】
図7は、インバーターへの制御用信号と送風機風量の関係を示す図である。
【
図8】
図8は、実施例2に係る圧力制御装置を用いたフライアッシュの回収処理のフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施例3に係る圧力制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願の開示する圧力制御装置及び圧力制御方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例により本願の開示する圧力制御装置及び圧力制御方法が限定されるものではない。
【実施例0014】
図1は、ドライコンテナの斜視図である。
図2は、ドライコンテナの中に配置されたバルクライナーを示す構造図である。
図2は、
図1におけるドライコンテナの中に設置されたバルクライナー100を明示するため、壁及び支柱の一部を除いて表現している。
【0015】
図1に示すように、ドライコンテナ1は、扉が設けられた直方体形状を有する。海上輸送に用いられるISO(International Organization for Standardization)規格のドライコンテナ1は、通常は後部扉1カ所のみ開閉可能であり、ドライコンテナ1の扉を空けることで、内部に格納されたバルクライナー100にアクセスすることができる。ドライコンテナ1は、直方体の形状の長手方向に延びる4つの面のうち1つの面を地面側にして配置される。以下の説明では、ドライコンテナ1が配置された状態での地面側の面を底面と呼び、底面と対向する面を上面と呼ぶ。また、ドライコンテナ1の扉は、長手方向の一方の端面に配置される。
【0016】
図2に示すように、バルクライナー100は、ドライコンテナ1のフレーム11の内側に配置される。バルクライナー100は、内部の空間を最大にした状態でドライコンテナ1の内壁に密着する直方体の形状を有する。
【0017】
バルクライナー100は、荷積み用チューブ101、通気用チューブ102及び荷降ろし用チューブ103を長手方向の一方の端面に有する。バルクライナー100は、荷積み用チューブ101、通気用チューブ102及び荷降ろし用チューブ103が配置された面がドライコンテナ1の扉側に位置するように配置される。すなわち、ドライコンテナ1の扉が開けられた状態で、荷積み用チューブ101、通気用チューブ102及び荷降ろし用チューブ103は外部からのアクセスが可能である。
【0018】
さらに、バルクライナー100は、ドライコンテナ1の上面側に荷積み用チューブ101及び通気用チューブ102が位置し、ドライコンテナ1の底面側に荷降ろし用チューブ103が位置するように配置される。
【0019】
荷積み用チューブ101は、フライアッシュをバルクライナー100の内部に取り込む場合に使用されるチューブである。フライアッシュは、荷積み用チューブ101を介してバルクライナー100の内部に向けて圧送され蓄積される。
【0020】
荷降ろし用チューブ103は、フライアッシュをバルクライナー100の内部から回収する場合に使用されるチューブである。フライアッシュは、荷降ろし用チューブ103を介してバルクライナー100の内部から吸い出されて回収される。
【0021】
通気用チューブ102は、バルクライナー100の内部と外部とを連通させて、バルクライナー100に対して空気の吸排気を行う。通気用チューブ102は、荷積み用チューブ101を用いてフライアッシュをバルクライナー100に取り込む場合に開放されて、バルクライナー100の内部の空気を外に排出する。また、通気用チューブ102は、ドライコンテナ1を傾けて下方に落として排出させる方法を採用する場合には開放されて、ドライコンテナ1内に空気を供給する。通気用チューブ102は、荷降ろし用チューブ103を用いてフライアッシュをバルクライナー100から吸い出す場合に、バルクライナー100の内部に空気を送り込む経路となる。
【0022】
ただし、荷降ろし用チューブ103を用いてフライアッシュをバルクライナー100から吸い出す場合、通気用チューブ102を単に外部に開放した状態では、荷降ろし用チューブ103から吸い出される容量が、通気用チューブ102から取りこまれる空気量よりも大きくなり、バルクライナー100が収縮する。そこで、バルクライナー100の形状を保つため、本実施例では、後述するように所定の条件の下で通気用チューブ102から強制的に空気が送り込まれる。逆に、送り込まれる空気の量が多い場合、バルクライナー100が膨張して、破裂あるいはドライコンテナ1の変形などのおそれがある。
【0023】
また、バルクライナー100は、取付具104をドライコンテナ1の上面の内側の面である天井と対向する面に有する。
図2におけるバルクライナー100は、ドライコンテナ1の天井と対向する面の各頂点付近に2つずつ取付具104が設けられる。取付具104は、ドライコンテナ1のフレーム11にバルクライナー100の収縮を防止するための接続紐150により固定されて支持され、バルクライナー100の形状を保つ。
【0024】
取付具104は、バルクライナー100にフライアッシュが少量しか入っておらず内部に大きな空間を有する場合にもバルクライナー100が潰れないように天井側に接続紐150により引かれる。すなわち、バルクライナー100の内部の圧力が下がると、取付具104はドライコンテナ1の内壁から離れる方向に移動するため、接続紐140から取付具104に対して加わる力が大きくなる。接続紐150により取付具104が引かれる力が大きくなった場合、バルクライナー100の取付具104の部分が破損するおそれがある。
【0025】
図3は、実施例1に係る圧力制御装置のブロック図である。
図3は、バルクライナー100の内部からフライアッシュを回収する状態を示す。
図3に示すように、フライアッシュの回収時には、バルクライナー100の荷降ろし用チューブ103に吸引装置3が接続される。また、バルクライナー100の通気用チューブ102には、圧力制御装置2の送風装置23が接続される。
【0026】
吸引装置3は、真空ポンプなどにより、バルクライナー100の内部に格納されたフライアッシュを吸引して、バルクライナー100の内部からフライアッシュを取り出す。吸引装置3によるフライアッシュの吸引により、バルクライナー100の内部の圧力が低下する。吸引装置3による吸気の吸引量は、吸引するフライアッシュと空気の比率によって異なり、吸引中に変化する。
【0027】
圧力制御装置2は、フライアッシュをバルクライナー100の内部から回収する際に、バルクライナー100の内部に通気用チューブ102を介して空気を送り込んでバルクライナー100の内部の圧力を調整する。圧力が低い場合に空気を送り込むことで、圧力制御装置2は、バルクライナー100の内部の圧力が減って取付具104が接続紐150に引かれることによるバルクライナー100の破損を回避する。また、圧力が高くなった場合に、送り込む空気を停止することで、バルクライナー100の過膨張を回避する。以下に、圧力制御装置2の詳細について説明する。
【0028】
圧力制御装置2は、
図3に示すように、情報取得部21、送風制御部22、送風装置23及び張力計200を有する。
【0029】
送風装置23は、ブロアやコンプレッサーや電動送風機などである。送風装置23は、例えば、最大風速50m3/minのルーツブロアなどを使用することができる。
【0030】
張力計200は、ドライコンテナ1とバルクライナー100とを繋ぐ接続紐150のそれぞれに設置される。張力計200は、接続紐150がドライコンテナ1と取付具104とにより引かれるテンションを計測する。すなわち、張力計200は、バルクライナー100の内部の負圧の大きさ(絶対値)を計測する。ここでは、1本の接続紐150に掛かるテンションをバルクライナー100の内部の負圧の大きさとする。張力計200は、例えば、測定範囲が0~20kgの引張型ロードセルである。張力計200は、0~20kgの範囲の計測値を接続紐150のテンションとして出力する。
【0031】
情報取得部21は、例えば、通信装置及びロードセル変換器などにより実現される。情報取得部21は、通信装置により各張力計200に接続される。そして、情報取得部21は、各張力計200が計測した接続紐150のテンションの情報を収集する。そして、情報取得部21は、収集した接続紐150のテンションの情報を、ロードセル変換器などにより例えば4~20mAの範囲の電流信号に変換して送風制御部22へ出力する。
【0032】
送風制御部22は、送風装置23が通気用チューブ102を介してバルクライナー100の内部へ送り込む空気の量を制御する。送風制御部22は、例えば、リミッターアラームなどにより実現される。送風制御部22は、バルクライナー100の内部圧力を調整するための閾値を予め有する。本実施例では、送風制御部22は、取付具104が接続紐150に引かれることによるバルクライナー100の破損の危険の有無を判定するための接続紐150のテンションの閾値を有する。例えば、送風制御部22は、送風開始閾値として加重2.5kg=6mA、送風停止閾値として加重0.5kg=4.4mAを有する。
【0033】
送風制御部22は、吸引装置3による吸引開始時には送風装置23をオフにして、バルクライナー100への送風を停止しておく。送風制御部22は、フライアッシュのバルクライナー100からの吸引時に、各接続紐150のテンションを表す電流信号の入力を情報取得部21から受ける。そして、送風制御部22は、リミッターアラームを用いて電流信号が送風開始閾値以上か否かにより、いずれかの接続紐150に掛かるテンションが送風開始閾値以上か否かを判定する。テンションが送風開始閾値以上でない場合、送風制御部22は、送風装置23からの送風を停止した状態を維持する。
【0034】
これに対して、テンションが送風開始閾値以上となった場合、送風制御部22は、送風装置23をオンにして、バルクライナー100への送風を開始させる。すなわち、送風制御部22は、バルクライナー100の内部の負圧の大きさが送風開始閾値以上になった場合に、送風装置23をオンにして、バルクライナー100への送風を開始させる。その後、送風制御部22は、リミッターアラームを用いて電流信号が送風停止閾値以下か否かを判定することで、全ての接続紐150に掛かるテンションが送風停止閾値以下となったか否かを判定する。全てのテンションが送風停止閾値以下となった場合、送風制御部22は、送風装置23をオフにして、バルクライナー100への送風を停止させる。
【0035】
送風制御部22は、吸引装置3によるフライアッシュの吸引中は、上述した接続紐150に掛かるテンションによる、送風装置23のオンオフの制御を繰り返す。そして、送風制御部22は、操作者からの停止時などを受けて吸引装置3によるフライアッシュの吸引の完了を確認すると、送風装置23のオンオフの制御を停止する。
【0036】
ここで、本実施例では、各接続紐150のそれぞれのテンションを監視して吸引装置3の制御を行ったが、最もテンションが掛ると考えられる接続紐150もしくはそれを含むいくつかの接続紐150に限定してテンションを監視して吸引装置3の制御を行ってもよい。
【0037】
次に、バルクライナー100からのフライアッシュの排出試験の試験結果について説明する。
図4は、バルクライナーからのフライアッシュの排出試験の概要を示す図である。この試験では、ドライコンテナ1を傾けて荷降ろし用チューブ103がわにフライアッシュが集まるようにした。排出試験におけるバルクライナー100内のフライアッシュは19tである。
【0038】
排出試験では、粉粒体吸引・圧送車30を用いた。粉粒体吸引・圧送車30は、バルクライナー100から吸引したフライアッシュを移動サイロに対して圧送させた。粉粒体吸引・圧送車30の性能は、ダンプ角度が45度であり、吸引風量が80m3/min(-13kPa時)であり、静圧が-93kPaであり、圧送風量が8.0m3/minである。また、粉粒体吸引・圧送車30は、吸引装置3として乾式自冷式ロータリーブロアを有する。
【0039】
また、送風装置23は、風量が74m3/minであり、モーター出力が2.2kwである電動送風機を用いた。この場合、送風装置23は、粉粒体吸引・圧送車30の吸引風量とほぼ同等の空気が供給可能である。
【0040】
図5は、排出試験の試験結果を表す図である。
図5の縦軸は、紙面に向かって左側がドライアッシュの残量を示し、紙面に向かって右側がドライコンテナ1の傾斜角度を示す。また、
図5の横軸は時間経過を表す。グラフ301は、フライアッシュの残量の変化を表す。また、グラフ302は、ドライコンテナ1の傾斜角度の変化を示す。
【0041】
排出試験において、
図5に示すように、排出所要時間は2時間30分程度であった。ただし、時間311及び312は、粉粒体吸引・圧送車30の車載タンクが満量になったことに伴う外部圧送作業の時間である。時間311及び312を除くと、粉粒体吸引・圧送車30が吸引を行っていた時間は約2時間である。粉粒体吸引・圧送車30による吸引中に接続紐150のテンションに応じて送風装置23のオンオフを行うことで、
図5に示すように、粉粒体吸引・圧送車30による吸引量を落とすことなくバルクライナー100内の全てのフライアッシュの回収が完了した。
【0042】
図6は、実施例1に係る圧力制御装置を用いたフライアッシュの回収処理のフローチャートである。次に、
図6を参照して、実施例1に係る圧力制御装置2を用いたドライコンテナ1に搭載されたバルクライナー100からのフライアッシュの回収処理の流れを説明する。
【0043】
吸引装置3は、荷降ろし用チューブ103を介してバルクライナー100からフライアッシュを吸引する(ステップS1)。
【0044】
情報取得部21は、張力計200による接続紐150のテンションの計測結果を取得する(ステップS2)。
【0045】
送風制御部22は、接続紐150のテンションの計測結果の入力を情報取得部21から受ける。そして、送風制御部22は、接続紐150のテンションが送風開始閾値以上か否かを判定する(ステップS3)。
【0046】
接続紐150のテンションが送風開始閾値以上の場合(ステップS3:肯定)、送風制御部22は、送風装置23をオンにして通気用チューブ102を介したバルクライナー100への送風を行わせる(ステップS4)。
【0047】
これに対して、接続紐150のテンションが送風開始閾値未満の場合(ステップS3:否定)、送風制御部22は、ステップS5に進む。
【0048】
次に、接続紐150のテンションが送風停止閾値以下か否かを判定する(ステップS5)。接続紐150のテンションが送風停止閾値より大きい場合(ステップS5:否定)、送風制御部22は、ステップS7に進む。
【0049】
接続紐150のテンションが送風停止閾値以下の場合(ステップS5:肯定)、送風制御部22は、送風装置23をオフにして通気用チューブ102を介したバルクライナー100への送風を停止させる(ステップS6)。
【0050】
その後、送風制御部22は、操作者からの停止指示の有無などにより、フライアッシュの回収が終了したか否かを判定する(ステップS7)。フライアッシュの回収が終了していない場合(ステップS7:否定)、回収処理はステップS1へ戻る。
【0051】
これに対して、フライアッシュの回収が終了した場合(ステップS7:肯定)、圧力制御装置2は、バルクライナー100の内部の圧力制御を終了する。
【0052】
以上に説明したように、本実施例に係る圧力制御装置は、フライアッシュの吸引時にバルクライナーをドライコンテナに固定する接続紐のテンションが送風開始閾値以上の場合には、バルクライナーの内部の圧力内部圧力が低いと判定する。そして、圧力制御装置は、バルクライナー内部の圧力が低くなるとバルクライナーへの送風を行う。また、圧力制御装置は、フライアッシュの吸引時にバルクライナーをドライコンテナに固定する接続紐のテンションが送風停止閾値以下の場合には、バルクライナーの内部の圧力内部圧力が低くない判定して、バルクライナーへの送風を停止する。これにより、圧力制御装置は、フライアッシュの吸引によるバルクライナー内部の圧力低下を抑えて、バルクライナーの破損を抑制し、且つ、過剰な送風によるバルクライナーの過膨張を抑制する。したがって、バルクライナー内部の粉粒体の回収を適切に行うことが可能となる。
送風制御部22は、送風装置23の送風量の1ステップ毎の増減量を予め記憶する。例えば、送風制御部22は、送風装置23の最大風量の2割を1ステップ毎の増減量とする。そして、送風制御部22は、張力計200により計測された接続紐150のテンションの情報を情報取得部21から取得する。
そして、送風制御部22は、接続紐150のテンションに応じて、送風装置23の送風量を算出する。具体的には、送風制御部22は、接続紐150のテンションに比例して大きくなるように、送風装置23の送風量を算出する。そして、送風制御部22は、算出した送風量で送風装置23に通気用チューブ102を介したバルクライナー100への送風を行わせる。例えば、送風制御部22は、以下のように送風装置23の送風量を制御する。
ここで、本実施例では、送風制御部22は、接続紐150のテンションと送風量との関係を表す関数を用いて送風量を算出したが、送風量の算出方法はこれに限らない。例えば、送風制御部22は、送風停止から最大風量までをいくつかの区分に分割し、区分毎に接続紐150のテンションが登録されたテーブルを用いて、接続紐150のテンションに応じた送風量を算出してもよい。また、例えば、送風制御部22は、1ステップ毎の増減量を用いて送風量を算出してもよい。
例えば、送風制御部22は、以下のようにステップ毎に送風装置23の風量を変化させてもよい。接続紐150のテンションが閾値以上の場合、送風制御部22は、送風装置23の送風量を1ステップ分増加させる。すなわち、接続紐150のテンションが閾値以上となることが繰り返されると、送風制御部22は、最大風量を限界として徐々に送風装置23の送風量を増加させる。また、接続紐150のテンションが閾値未満の場合、送風制御部22は、送風装置23の送風量を1ステップ分減少させる。すなわち、接続紐150のテンションが閾値未満となることが繰り返されると、送風制御部22は、送風停止を限界として徐々に送風装置23の送風量を減少させる。
送風制御部22は、接続紐150のテンションの計測結果の入力を情報取得部21から受ける。そして、送風制御部22は、接続紐150のテンションに応じた送風量を算出する(ステップS13)。
その後、送風制御部22は、操作者からの停止指示の有無などにより、フライアッシュの回収が終了したか否かを判定する(ステップS15)。フライアッシュの回収が終了していない場合(ステップS15:否定)、回収処理はステップS11へ戻る。
以上に説明したように、本実施例に係る圧力制御装置は、張力計の出力に応じて徐々に送風装置の送風量を変化させる。これにより、バルクライナーの内部の圧力をより適切に管理することができ、バルクライナーの破損や過膨張を抑えて、バルクライナー内部の粉粒体の回収を適切に行うことが可能となる。