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特開2023-166903マイクロLED表示素子用アンダーフィル材、アンダーフィル膜、アンダーフィル膜の製造方法およびマイクロLED表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166903
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】マイクロLED表示素子用アンダーフィル材、アンダーフィル膜、アンダーフィル膜の製造方法およびマイクロLED表示素子
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20231115BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20231115BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20231115BHJP
   C08F 212/14 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
G03F7/023
G03F7/004 501
G03F7/004 504
H01L33/56
C08F212/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077758
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 耕平
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 歳幸
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 規生
【テーマコード(参考)】
2H225
4J100
5F142
【Fターム(参考)】
2H225AE06P
2H225AF05P
2H225AM22P
2H225AM23P
2H225AM25P
2H225AM38P
2H225AM39P
2H225AN38N
2H225BA22P
2H225CA21
2H225CB02
2H225CC03
2H225CC21
4J100AB07P
4J100AL03Q
4J100AL04Q
4J100AL05Q
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL08R
4J100AL09Q
4J100AL10Q
4J100AL11R
4J100AL16R
4J100AM21P
4J100AM49P
4J100BA02Q
4J100BA02R
4J100BA03P
4J100BA03Q
4J100BA04R
4J100BA05Q
4J100BA06Q
4J100BC43P
4J100BC43R
4J100BC49R
4J100BC53Q
4J100CA04
4J100CA05
4J100JA38
4J100JA44
5F142CG13
5F142CG42
(57)【要約】
【課題】感光性、フラックス性と接着性を有し、パターニングによりアレイ基板上の必要な箇所のみに膜を形成することで、LED素子のマストランスファと金属接合の効率化を可能とするアンダーフィル材を提供すること。
【解決手段】 下記(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を含有する熱硬化可能なポジ型感光性粘着組成物。
(A)成分:フェノール性水酸基を有し、該重合体のガラス転移温度(Tg)が60℃以下であるアルカリ可溶性樹脂。
(B)成分:架橋剤
(C)成分:キノンジアジドを有する感光剤
(D)成分:溶剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)溶剤を含有するポジ型感光性粘着組成物。
(A)成分:フェノール性水酸基を有し、該重合体のガラス転移温度(Tg)が60℃以下であるアルカリ可溶性樹脂
(B)成分:架橋剤
(C)成分:キノンジアジドを有する感光剤
(D)成分:溶剤
【請求項2】
前記(A)成分が、単独重合体のTgが0℃以下となるモノマー(A2)に由来する構成単位を含む重合体である請求項1に記載のポジ型感光性粘着組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、フェノール性水酸基と重合性不飽和基とを有するモノマー(A1)、及び単独重合体のTgが0℃以下となるモノマー(A2)に由来する構成単位を構成成分として含有するアクリル重合体である請求項2に記載のポジ型感光性粘着組成物。
【請求項4】
前記フェノール性水酸基と重合性不飽和基とを有するモノマー(A1)が、p-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、α-メチル-p-ヒドロキシスチレンおよび、下記式(1)で表される化合物からなる群から選ばれる、請求項3に記載のポジ型感光性粘着組成物。
【化1】
式(1)中、Pは(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、N-メチル(メタ)アクリルアミド基、またはマレイミド基を表し、bは単結合、または炭素数1~12の直鎖、分岐、もしくは環状、およびその組み合わせからなるアルキレン基を表し、cは単結合、-O-、-COO-、または-OCO-を表し、dは置換または非置換のヒドロキシフェニル基を表す。
【請求項5】
前記単独重合体のTgが0℃以下となるモノマー(A2)が、下記式(2)で表される化合物である請求項3~4のいずれか一項に記載のポジ型感光性粘着組成物。
【化2】
式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは酸素原子または硫黄原子を表し、bは炭素数2~20の直鎖、分岐、もしくは環状、およびその組み合わせからなるアルキレン基を表し、該アルキレン基中の-CH-は、互いに隣り合わないことを条件に、酸素原子に置き換えられても良い。cは単結合、-O-、-COO-、または-OCO-を表し、dは水素原子または水酸基を表す。
【請求項6】
前記(A)成分が、さらに下記式(3)で表される芳香族炭化水素基を含有するモノマー(A3)に由来する構成単位を構成成分として含有するアクリル重合体である請求項1~5のいずれか一項に記載のポジ型感光性粘着組成物。
【化3】
式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは酸素原子、硫黄原子、-NH-、または-N(CH)-を表し、bは単結合、または炭素数1~20の直鎖、分岐、もしくは環状、およびその組み合わせからなるアルキレン基を表し、該アルキレン基中の-CH-は、互いに隣り合わないことを条件に、酸素原子に置き換えられても良い。cは単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-NHCO-、-CONH-、-N(CH)CO-、または-CON(CH)-を表し、dは炭素数6~10の置換または非置換の芳香族炭化水素基を表す。
【請求項7】
(A)成分の100質量部に対して、(B)成分が5~60質量部である請求項1~6のいずれか一項に記載のポジ型感光性粘着組成物。
【請求項8】
(A)成分の100質量部に対して、(C)成分が10~100質量部である請求項1~7のいずれか一項に記載のポジ型感光性粘着組成物。
【請求項9】
(E)成分として、界面活性剤を更に(A)成分の100質量部に対して0.01~1.0質量部含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のポジ型感光性粘着組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポジ型感光性粘着組成物を硬化してなる硬化膜。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化膜をアンダーフィル材として有するLED表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロLED表示素子用アンダーフィル材、アンダーフィル膜、アンダーフィル膜の製造方法およびマイクロLED表示素子に関し、特に、マイクロLED表示素子に用いられるアンダーフィル材、アンダーフィル膜の製造方法、その製造方法によって得られるアンダーフィル膜およびそのアンダーフィル膜を使用したマイクロLED表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話、モニタやTVに使用されるフラットパネルディスプレイには液晶表示素子(LCD)や有機発光ダイオード表示素子(OLED)が主に用いられている。LCDは既に量産技術が十分に確立されており安価で大型化も可能な一方、表示にバックライトを使用する必要があることからフォームファクターやフレキシブル性に劣る。また、OLEDはフレキシブル性に優れるものの表示素子の輝度を高くすると寿命が短くなるといった課題がある。これら欠点を解決できる表示素子として、近年、無機発光ダイオードをアレイ基板の各画素上に並べて表示を行うマイクロLED表示素子が開発されている。マイクロLED表示素子はマイクロメートルサイズの無機発光ダイオードを発光源として用いるため、LCDやOLEDと比べて輝度を高くすることができ、色純度も高く寿命も長い。また、画素毎にLEDを配列させるため、各画素を独立させることが可能であり、フレキシブル性にも優れる。
【0003】
発光源のLED素子は、例えばサファイア基板上に半導体層をエピタキシャル成長させて電極を形成した後、ダイシングすることで小片として供給される。マイクロLED表示素子は、このようにして製造されたLED素子を、高精度でアレイ基板上に並べる必要がある。LED素子をアレイ基板上に並べる手法として、これまで、各LED素子を一つずつ設置するPick & Place方式が検討されてきた。しかしながら、本手法ではLEDの設置に膨大な時間が必要なため、大量生産には不向きであった。
【0004】
そこで、近年、接着性のある基材(スタンプ)で多量のLED素子をサファイア基板から一度に取り上げ、アレイ基板にマストランスファした後、ボンディングヘッドによりLED素子をアレイ基板の電極と熱圧着、またはレーザー加熱により金属接合するスタンプ方式が提案されている(非特許文献1、2)。この方式を用いると、一度に大量のLED素子をアレイ基板上に並べ、アレイ基板と接合出来るため、Pick & Place方式と比べてスループットの大幅な改善が見込まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Adv.Optical Mater.2015,3,1313-1335
【非特許文献2】SID 2017 DIGEST,257
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、スタンプを用いたマストランスファ方式はLED素子を一つずつアレイ基板上に並べるPick & Place方式と比べて大幅にスループットを改善出来る可能性を備えている。
しかしながら、本手法はアレイ基板とLED素子との接着性とスタンプとLED素子との接着性の差により、LED素子をサファイア基板からアレイ基板にマストランスファする方式であるため、アレイ基板上に接着性を有する膜が必要となる。一方で、マストランスファのためにアレイ基板上に膜を形成した場合、その後に配線が取り出し難いといった課題も浮上している。
【0007】
また、マストランスファされたLED素子を熱圧着やレーザー加熱によりアレイ基板と金属接合する際、アレイ基板やLED素子の電極部に酸化被膜が形成されていると金属接合できず導通不良が生じることが知られている。そのため、通常、LED素子を接合する際はボンディング前に金属の酸化被膜を除去するフラックス処理が必要となっていた。
【0008】
そこで、本発明は、感光性、フラックス性と接着性を有し、パターニングによりアレイ基板上の必要な箇所のみに膜を形成することで、LED素子のマストランスファと金属接合の効率化を可能とするアンダーフィル材の提供を目的とする。
【0009】
また、本発明は、そのアンダーフィル材を用いて、LED素子のマストランスファと金属接合の効率化を可能とする、アレイ基板上にパターニングされたアンダーフィル膜の提供を目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、そのアンダーフィル材を用いて、LED素子のマストランスファと金属接合の効率化を可能とするアンダーフィル膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
そして、本発明は、そのLED素子のマストランスファと金属接合の効率化を可能とするアンダーフィル膜を備えたマイクロLED表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、本発明を見出すに至った。すなわち、本発明は下記に関する。
1.下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)溶剤を含有するポジ型感光性粘着組成物。
(A)成分:フェノール性水酸基を有し、該重合体のガラス転移温度(Tg)が60℃以下であるアルカリ可溶性樹脂
(B)成分:架橋剤
(C)成分:キノンジアジドを有する感光剤
(D)成分:溶剤
2.前記(A)成分が、単独重合体のTgが0℃以下となるモノマー(A2)に由来する構成単位を含む重合体である1に記載のポジ型感光性粘着組成物。
3.前記(A)成分が、フェノール性水酸基と重合性不飽和基とを有するモノマー(A1)、及び単独重合体のTgが0℃以下となるモノマー(A2)に由来する構成単位を構成成分として含有するアクリル重合体である2に記載のポジ型感光性粘着組成物。
4.前記フェノール性水酸基と重合性不飽和基とを有するモノマー(A1)が、p-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、α-メチル-p-ヒドロキシスチレンおよび、下記式(1)で表される化合物からなる群から選ばれる、3に記載のポジ型感光性粘着組成物。
【化1】
式(1)中、Pは(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、N-メチル(メタ)アクリルアミド基、またはマレイミド基を表し、bは単結合、または炭素数1~12の直鎖、分岐、もしくは環状、およびその組み合わせからなるアルキレン基を表し、cは単結合、-O-、-COO-、または-OCO-を表し、dは置換または非置換のヒドロキシフェニル基を表す。
5.前記単独重合体のTgが0℃以下となるモノマー(A2)が、下記式(2)で表される化合物である3~4のいずれか一項に記載のポジ型感光性粘着組成物。
【化2】
式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは酸素原子または硫黄原子を表し、bは炭素数2~20の直鎖、分岐、もしくは環状、およびその組み合わせからなるアルキレン基を表し、該アルキレン基中の-CH-は、互いに隣り合わないことを条件に、酸素原子に置き換えられても良い。cは単結合、-O-、-COO-、または-OCO-を表し、dは水素原子または水酸基を表す。
6.前記(A)成分が、さらに下記式(3)で表される芳香族炭化水素基を含有するモノマー(A3)に由来する構成単位を構成成分として含有するアクリル重合体である1~5のいずれか一項に記載のポジ型感光性粘着組成物。
【化3】
式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは酸素原子、硫黄原子、-NH-、または-N(CH)-を表し、bは単結合、または炭素数1~20の直鎖、分岐、もしくは環状、およびその組み合わせからなるアルキレン基を表し、該アルキレン基中の-CH-は、互いに隣り合わないことを条件に、酸素原子に置き換えられても良い。cは単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-NHCO-、-CONH-、-N(CH)CO-、または-CON(CH)-を表し、dは炭素数6~10の置換または非置換の芳香族炭化水素基を表す。
7.(A)成分の100質量部に対して、(B)成分が5~60質量部である1~6のいずれか一項に記載のポジ型感光性粘着組成物。
8.(A)成分の100質量部に対して、(C)成分が10~100質量部である1~7のいずれか一項に記載のポジ型感光性粘着組成物。
9.(E)成分として、界面活性剤を更に(A)成分の100質量部に対して0.01~1.0質量部含有する、1~8のいずれか一項に記載のポジ型感光性粘着組成物。
10.1~9のいずれか一項に記載のポジ型感光性粘着組成物を硬化してなる硬化膜。
11.10に記載の硬化膜をアンダーフィル材として有するLED表示素子。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポジ型感光性粘着組成物は、感光性、フラックス性と接着性を有し、パターニングによりアレイ基板上の必要な箇所のみに膜を形成することで、LED素子のマストランスファと金属接合の効率化を可能とするアンダーフィル材を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のポジ型感光性粘着組成物は、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)溶剤を含有するポジ型感光性粘着組成物である。
(A)成分:フェノール性水酸基を有し、該重合体のガラス転移温度(Tg)が60℃以下であるアルカリ可溶性樹脂
(B)成分:架橋剤
(C)成分:キノンジアジドを有する感光剤
(D)成分:溶剤
以下、各成分の詳細を説明する。
【0015】
<(A)成分>
(A)成分は、フェノール性水酸基を有し、該重合体のガラス転移温度(Tg)が60℃以下であるアルカリ可溶性樹脂である。アルカリ可溶性樹脂は、好ましくはアクリル重合体である。
【0016】
本発明において、アクリル重合体とはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、マレイミド等の重合性不飽和基、すなわち、構造中に炭素-炭素二重結合を含む重合性基を有するモノマーを用いて得られる重合体を指す。
(A)成分のアルカリ可溶性樹脂は、アルカリ可溶性アクリル重合体が好ましく、上記アクリル重合体を構成する高分子の主鎖の骨格及び側鎖の種類などについて特に限定されない。
【0017】
(A)成分のアルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が20,000未満で過小なものであると、リソグラフィーのアルカリ現像工程でアルカリ耐性が低下し、所望のパターンが形成できない場合がある一方、重量平均分子量が150,000を超えて過大なものであると、現像時に残渣が残る場合がある。これらパターニング性の観点から、上記アルカリ可溶性樹脂の好ましい重量平均分子量は20,000~150,000の範囲であり、より好ましくは30,000~100,000の範囲にあるものである。
【0018】
(A)成分のアルカリ可溶樹脂の合成方法は、フェノール性水酸基と重合性不飽和基とを有するモノマー(A1)、及び単独重合体のTgが0℃以下となるモノマー(A2)を含むモノマー混合物を共重合する方法が簡便である。ここで単独重合体とは、(A2)モノマー単独の高分子を示し、所望により重合開始剤等を共存させた溶剤中において、50~110℃の温度下で重合反応させることにより、得られるか、(A2)モノマーと光ラジカル発生剤等を共存させた状態で、紫外線を照射し重合反応させることで得られる重量平均分子量が3000以上の高分子である。
【0019】
以下(A)成分の構成モノマーに関する詳細を述べる。
モノマー(A1)は、フェノール性水酸基と重合性不飽和基とを有するモノマーであり、好ましくはp-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、α-メチル-p-ヒドロキシスチレン、および下記式(1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種のモノマーである。
【化4】
式(1)中、Pは(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、N-メチル(メタ)アクリルアミド基、またはマレイミド基を表し、好ましくは(メタ)アクリル基である。bは単結合、または炭素数1~12の直鎖、分岐、もしくは環状、およびその組み合わせからなるアルキレン基を表し、好ましくは単結合、または炭素数1~6の直鎖状アルキレン基である。cは単結合、-O-、-COO-、または-OCO-を表し、好ましくは単結合または-O-である。dは置換または非置換のヒドロキシフェニル基を表し、好ましくはp-ヒドロキシフェニル基である。該ヒドロキシフェニル基への置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数2~3のアルケニル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフルオロアルキル基、炭素数2~3のフルオロアルケニル基、炭素数1~3のフルオロアルコキシ基、炭素数2~3のアルキルオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。これらヒドロキシフェニル基を有することにより、(A)成分がアルカリ可溶性となることに加え、フラックス性を発現する。
【0020】
モノマー(A1)としては、例えば、p-ヒドロキシスチレン、α-メチル-p-ヒドロキシスチレン、N-(p-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-(p-ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N-(p-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、p-ヒドロキシフェニルアクリレート、p-ヒドロキシフェニルメタクリレート等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。中でも、p-ヒドロキシフェニルアクリレートおよびp-ヒドロキシフェニルメタクリレートから選ばれるモノマーが好ましい。
【0021】
モノマー(A2)は、単独重合体のTgが0℃以下となるモノマーであり、好ましくは下記式(2)で表される化合物である。
【化5】
式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。aは酸素原子または硫黄原子を表し、好ましくは酸素原子である。炭素数2~20の直鎖、分岐、もしくは環状、およびその組み合わせからなるアルキレン基を表し、好ましくは炭素数2~12の直鎖、分岐、または環状、およびその組み合わせからなるアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2~12の直鎖または分岐のアルキレン基である。なお、bの該アルキレン基中の-CH-は、互いに隣り合わないことを条件に、酸素原子に置き換えられても良い。cは単結合、-O-、-COO-、または-OCO-を表し、好ましくは単結合または-O-を表す。dは水素原子または水酸基を表す。
【0022】
モノマー(A2)としては、具体的には、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、n-へプチルアクリレート、n-へプチルメタクリレート、n-オクチルアクリレート、n-オクチルメタクリレート、ノニルアクリレート、ノニルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソノニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、グリシジルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、3-メトキシブチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用できるが、これらに限られるわけではない。
【0023】
本発明の効果を好適に得る観点から、成分(A)中のモノマー(A1)に由来する構成単位は、モノマー(A1)に由来する構成単位およびモノマー(A2)に由来する構成単位の合計に対して10~50質量%含むことが好ましく、成分(A)中のモノマー(A2)に由来する構成単位は、モノマー(A1)に由来する構成単位およびモノマー(A2)に由来する構成単位の合計に対して50~90質量%含むことが好ましい。
【0024】
また、本発明においては、(A)成分のアクリル重合体を得る際に、下記式(3)で表される芳香族炭化水素基を含有するモノマー(A3)を含有するのが好ましい。
【化6】
式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。aは酸素原子、硫黄原子、-NH-、または-N(CH)-を表し、好ましくは酸素原子または-NH-であり、より好ましくは酸素原子である。bは単結合、または炭素数1~20の直鎖、分岐、もしくは環状、およびその組み合わせからなるアルキレン基であり、好ましくは炭素数2~12の直鎖、分岐、または環状、およびその組み合わせからなるアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2~8の直鎖状アルキレン基である。なお、bの該アルキレン基中の隣り合わない-CH-は、互いに隣り合わないことを条件に、酸素原子に置き換えられても良い。cは単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-NHCO-、-CONH-、-N(CH)CO-、または-CON(CH)-を表し、好ましくは単結合、-O-、-COO-、または-OCO-であり、より好ましくは単結合または-O-である。dは炭素数6~10の置換または非置換の芳香族炭化水素基を表し、好ましくは置換または非置換のフェニル基である。該芳香族炭化水素基への置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数2~3のアルケニル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフルオロアルキル基、炭素数2~3のフルオロアルケニル基、炭素数1~3のフルオロアルコキシ基、炭素数2~3のアルキルオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。式(3)に示す芳香族炭化水素基を有するモノマーに由来する構成単位を構成成分として成分(A)に含有すると、露光後の現像工程で未露光部のアルカリ耐性が向上し、パターニングした際のコントラスト比が改善できる。
【0025】
モノマー(A3)の具体例としては、2-フェノキシエチルアクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、4-メチルフェニルアクリレート、4-メチルフェニルメタクリレート、3-フェノキシプロピルアクリレート、3-フェノキシプロピルメタクリレート、4-フェノキシブチルアクリレート、4-フェノキシブチルメタクリレート、6-フェノキシヘキシルアクリレート、8-フェノキシオクチルアクリレート、2-フェノキシプロピル 2-メチル-2-プロぺノエート、2-(1-メチル-2-フェノキシエトキシ)エチル 2-メチル-2-プロペノエート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、4-エトキシベンジルメタクリレート、ナフチルアクリレート、ナフチルメタクリレート等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用できるが、これらに限られるわけではない。中でも、2-フェノキシエチルアクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、4-メチルフェニルアクリレート、3-フェノキシプロピルアクリレート、3-フェノキシプロピルメタクリレート、4-フェノキシブチルアクリレート、4-フェノキシブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレートが好ましい。
【0026】
成分(A)中にモノマー(A3)に由来する構成単位を含有する場合、本発明の効果を好適に得る観点から、成分(A)中のモノマー(A1)に由来する構成単位およびモノマー(A2)に由来する構成単位の合計は、モノマー(A1)に由来する構成単位、モノマー(A2)に由来する構成単位およびモノマー(A3)に由来する構成単位の合計に対して40~100質量%が好ましく、40~80質量%がより好ましく、50~70質量%がさらに好ましい。成分(A)中のモノマー(A3)に由来する構成単位は、モノマー(A1)に由来する構成単位、モノマー(A2)に由来する構成単位およびモノマー(A3)に由来する構成単位の合計に対して0~60質量%が好ましく、20~60質量%がより好ましく、30~50質量%がさらに好ましい。
【0027】
また、本発明においては、(A)成分のアクリル重合体を得る際に、上記モノマー(A1)~(A3)と共重合可能な、その他モノマーを併用することができる。上記その他モノマーの具体例としては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。以下、当該その他モノマーの具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
上記アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2-アミノエチルアクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルアクリレート、カプロラクトン2-(アクリロイルオキシ)エチルエステル、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート等が挙げられる。
【0029】
上記メタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート 、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-ペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2-アミノメチルメタクリレート、γ-ブチロラクトンメタクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルメタクリレート、カプロラクトン2-(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルメタクリレート等が挙げられる。
【0030】
上記アクリルアミド化合物としては、例えば、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0031】
上記ビニル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、アリルグリシジルエーテル、3-エテニル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、1,7-オクタジエンモノエポキサイド等が挙げられる。
【0032】
上記スチレン化合物としては、ヒドロキシ基を有しないスチレン、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
【0033】
本発明に用いるアルカリ可溶性樹脂を得る方法は特に限定されないが、例えば、モノマー(A1)並びにモノマー(A2)、所望によりモノマー(A3)並びに上記その他モノマー、及び所望により重合開始剤等を共存させた溶剤中において、50~110℃の温度下で重合反応させることにより、得られる。その際、用いられる溶剤は、アルカリ可溶性樹脂を構成するモノマー及びアルカリ可溶性樹脂を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、後述する(D)溶剤に記載する溶剤が挙げられる。
【0034】
このようにして得られるアルカリ可溶性樹脂(以下、特定共重合体ともいう)は、通常、溶剤に溶解した溶液の状態である。
【0035】
また、上記のようにして得られた特定共重合体の溶液を、ジエチルエーテルや水等の撹拌下に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過・洗浄した後、常圧又は減圧下で、常温あるいは加熱乾燥することで、特定共重合体の粉体とすることができる。このような操作により、特定共重合体と共存する重合開始剤や未反応モノマーを除去することができ、その結果、精製した特定共重合体の粉体を得られる。一度の操作で充分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解して、上記の操作を繰り返し行えば良い。
本発明においては、上記特定共重合体の粉体をそのまま用いても良く、あるいはその粉体を、たとえば後述する(D)溶剤に再溶解して溶液の状態として用いても良い。
また、本発明においては、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂は、複数種の特定共重合体の混合物であってもよい。
【0036】
<(B)成分>
(B)成分は架橋剤であり、より具体的には、(A)成分と熱反応により橋架け構造を形成しうる構造を有する化合物である。以下、具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。熱架橋剤は、例えば、(B1)後述する式(4)または式(5)で表される架橋性化合物、および(B2)イソシアヌレート骨格を有する架橋剤から選ばれるものが好ましい。これらの架橋剤は単独または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0037】
(B1)成分として、式(4)または式(5)で表される架橋性化合物を含有することができる。
【化7】
式(4)中、kは2~10の整数であり、mは0~4の整数であり、Xはk価の有機基を表す。複数個のmは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【化8】
式(5)中、kは2~10の整数であり、Xはk価の有機基を表す。
【0038】
(B1)成分は、式(4)で表されるシクロアルケンオキサイド構造を有する化合物や式(5)で表されるグリシジル構造を有する化合物であれば特に限定されない。その具体例としては、下記式E-2-1及びE-2-2や、以下に示す市販品等が挙げられる。
【化9】

【化10】
【0039】
市販品としては、エポリードGT-401、同GT-403、同GT-301、同GT-302、セロキサイド2021、セロキサイド3000((株)ダイセル製 商品名)、脂環式エポキシ樹脂であるデナコールEX-252(ナガセケムッテクス(株)製 商品名)、CY175、CY177、CY179(以上、CIBA-GEIGY A.G製 商品名)、アラルダイトCY-182、同CY-192、同CY-184(以上、CIBA-GEIGY A.G製 商品名)、エピクロン200、同400(以上、DIC(株)製 商品名)、エピコート(以上、油化シェルエポキシ(株)製 商品名)、ED-5661、ED-5662(以上、セラニーズコーティング(株)製 商品名)、エポカリックDE-102、DE-103(以上、ENEOS(株)製)、jER152、同871、同872(三菱ケミカル(株)製)、OGSOL-CG500(大阪ガスケミカル(株)製)等を挙げることができる。また、これらの架橋性化合物は、単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
これらのうち、耐熱性、耐溶剤性、耐長時間焼成耐性等の耐プロセス性、および透明性の観点からシクロヘキセンオキサイド構造を有する、上記式E-2-1及び式E-2-2で表される化合物、エポリードGT-401、同GT-403、同GT-301、同GT-302、セロキサイド2021、セロキサイド3000、エポカリックDE-102、同DE-103が好ましい。
【0041】
上記架橋剤として(B1)成分を選択した場合の含有量は、(A)成分の100質量部に対して10~60質量部、好ましくは10~50質量部、より好ましくは20~40質量部である。
【0042】
また本発明のポジ型感光性粘着組成物は、(B2)成分として、イソシアヌレート骨格とを有する化合物を含有することができる。イソシアヌレート骨格と2個以上の重合性不飽和二重結合とを有する化合物としては、例えば、トリメタリルイソシアヌレート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート骨格と2個以上の重合性不飽和二重結合とを有する化合物、トリグリシジルイソシアヌレート、TEPIC-FL、TEPIC-VL(以上、日産化学(株)製)等のイソシアヌレート骨格と2個以上のエポキシ部位を有する化合物が挙げられる。これらイソシアヌレート骨格を有する化合物を本発明のポジ型感光性粘着組成物に含有させると、マストランスファされたLEDチップの接着性が向上するため、マストランスファ工程における工程不良を低減できる可能性がある。
【0043】
これらの化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる
【0044】
本発明のポジ型感光性粘着組成物における(B2)成分の含有量は、(A)成分の100質量部に対して、好ましくは5~60質量部、より好ましくは10~50質量部である。
【0045】
<(C)成分>
(C)成分はキノンジアジドを有する感光剤であり、好ましくは1,2-ナフトキノンジアジドを有する感光剤である。キノンジアジド化合物としては、水酸基又はアミノ基のいずれか一方か、水酸基及びアミノ基の両方を有する化合物であって、これらの水酸基又はアミノ基(水酸基とアミノ基の両方を有する場合は、それらの合計量)のうち、好ましくは10~100モル%、特に好ましくは20~95モル%がキノンジアジドスルホン酸でエステル化、またはアミド化された化合物を用いることができる。
【0046】
上記水酸基を有する化合物としては例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ガリック酸メチル、ガリック酸エチル、1,3,3-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシフェニルスルホン、4,4-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェノール、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,4’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,5-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)ベンゼンなどのフェノール化合物、エタノール、2-プロパノール、4-ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メトキシプロパノール、2-ブトキシプロパノール、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの脂肪族アルコール類を挙げることができる。
【0047】
また、上記アミノ基を含有する化合物としては、アニリン、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジン、4-アミノジフェニルメタン、4-アミノジフェニル、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、などのアニリン類、アミノシクロヘキサンを挙げることができる。
【0048】
さらに、水酸基とアミノ基両方を含有する化合物としては、例えば、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、4-アミノレゾルシノール、2,3-ジアミノフェノール、2,4-ジアミノフェノール、4,4’-ジアミノ-4’’-ヒドロキシトリフェニルメタン、4-アミノ-4’,4’’-ジヒドロキシトリフェニルメタン、ビス(4-アミノ-3-カルボキシ-5-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-アミノ-3-カルボキシ-5-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-アミノ-3-カルボキシ-5-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-カルボキシ-5-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどのアミノフェノール類、2-アミノエタノール、3-アミノプロパノール、4-アミノシクロヘキサノールなどのアルカノールアミン類を挙げることができる。
【0049】
これらのキノンジアジド化合物は単独または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0050】
本発明のポジ型感光性粘着組成物における(C)成分の含有量は、(A)成分の100質量部に対して、好ましくは10~100質量部、より好ましくは15~50質量部、更に好ましくは20~40質量部である。10質量部未満の場合、ポジ型感光性粘着組成物の露光部と未露光部の現像液への溶解速度差が小さくなり、現像によるパターニングが困難である場合がある。また、100質量部を超えると、短時間での露光でキノンジアジド化合物が十分に分解されないため感度が低下する場合や、(C)成分が光を吸収してしまい硬化膜の透明性を低下させてしまう場合がある。
【0051】
<(D)溶剤>
本発明に用いる(D)溶剤は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を溶解し、且つ所望により添加される後述の(E)成分などを溶解するものであり、斯様な溶解能を有する溶剤であれば、その種類及び構造などは特に限定されるものでない。
【0052】
斯様な(D)溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ブタノン、3-メチル-2-ペンタノン、2-ペンタノン、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0053】
これらの溶剤は、一種単独で、または二種以上の組合せで使用することができる。
これら(D)溶剤の中、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-ヘプタノン、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル等が、塗膜性が良好で安全性が高いという観点より好ましい。これら溶剤は、一般にフォトレジスト材料のための溶剤として用いられている。
【0054】
<(E)成分>
(E)成分は、界面活性剤である。本発明のポジ型感光性粘着組成物にあっては、その塗布性を向上させるという目的で、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に界面活性剤を含有することができる。
【0055】
(E)成分の界面活性剤としては、特に制限されないが、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などが挙げられる。この種の界面活性剤としては、例えば、スリーエムジャパン(株)製、DIC(株)製或いはAGCセイミケミカル(株)製等の市販品を用いることができる。これら市販品は、容易に入手することができるので、好都合である。その具体的な例としては、ポリフォックスPF-136A、151、156A、154N、159、636、6320、656、6520(Omnova社製)、メガファックR30、R08、R40、R41、R43、F251、F477、F552、F553、F554、F555、F556、F557、F558、F559、F560、F561、F562、F563、F565、F567、F570(DIC(株)製)、FC4430、FC4432(スリーエムジャパン(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS-386、S-611、S-651、(AGCセイミケミカル(株)製)、フタージェントFTX-218、DFX-18、220P、251、212M、215M((株)ネオス製)等のフッ素系界面活性剤、BYK-300、302、306、307、310、313、315、320、322、323、325、330、331、333、342、345、346、347、348、349、370、377、378、3455(ビックケミージャパン(株)製)、SH3746、SH3749、SH3771、SH8400、SH8410、SH8700、SF8428(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、KF-351、KF-352、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-618、KF-6011、KF-6015(信越化学工業(株)製)等のシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
(E)成分の界面活性剤は、一種単独で、または二種以上の組合せで使用することができる。
【0056】
界面活性剤が使用される場合、その含有量は、(A)成分100質量部に基づいて通常0.01~1.0質量部であり、好ましくは0.02~0.8質量部である。
【0057】
<その他添加剤>
更に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、レオロジー調整剤、顔料、染料、保存安定剤、消泡剤、または多価フェノール、多価カルボン酸等の溶解促進剤等を含有することができる。また、本発明のポジ型感光性粘着組成物にあっては、(A)成分のフラックス効果を補助する目的で、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更にフラックス剤を含有することができる。フラックス剤としては、非共有電子対を有する含窒素化合物(イミダゾール類、アミン類等)、カルボン酸、フェノール類、アルコールなどが挙げられる。具体例としては、たとえば、8-キノリノール、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、セバシン酸等のカルボン酸類、エチレンジアミン、2メチルイミダゾール、2エチルイミダゾール、2フェニルイミダゾール、アルキルベンズイミダゾール(タフエースF2シリーズ:四国化成製)、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、トリエタノールアミン臭化水素酸塩、モノエタノールアミン臭化水素酸塩等が挙げられる。
【0058】
<ポジ型感光性粘着組成物>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)成分の(A1)~(A2)及び所望により(A3)を共重合させて得られる共重合体、(B)成分の架橋剤、(C)成分の1,2-キノンジアジド化合物が(D)溶剤に溶解したものであり、且つ、それぞれ所望により、(E)成分の界面活性剤、及びその他添加剤のうち一種以上を更に含有することができる組成物である。
【0059】
本発明のポジ型感光性粘着組成物における固形分の割合は、各成分が均一に溶剤に溶解している限り、特に限定されるものではないが、例えば1~80質量%であり、また例えば5~60質量%であり、または10~50質量%である。ここで、固形分とは、ポジ型感光性粘着組成物の全成分から(D)溶剤を除いたものをいう。
【0060】
本発明のポジ型感光性粘着組成物の調製方法は、特に限定されないが、その調製法としては、例えば、(A)成分(アルカリ可溶性樹脂)を(D)溶剤に溶解し、この溶液に(B)成分の架橋剤、(C)成分の1,2-キノンジアジド化合物を所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法、或いは、この調製法の適当な段階において、必要に応じて(E)成分(界面活性剤)及びその他添加剤を更に添加して混合する方法が挙げられる。
【0061】
本発明のポジ型感光性粘着組成物の調製にあたっては、(D)溶剤中における重合反応によって得られる共重合体の溶液をそのまま使用することができ、この場合、この(A)成分の溶液に上記と同様に(B)成分、(C)成分などを入れて均一な溶液とする際に、濃度調整を目的としてさらに(D)溶剤を追加投入してもよい。このとき、特定共重合体の形成過程で用いられる(D)溶剤と、ポジ型感光性粘着組成物の調製時に濃度調整のために用いられる(D)溶剤とは同一であってもよいし、異なってもよい。
【0062】
而して、調製されたポジ型感光性粘着組成物の溶液は、孔径が0.2~5.0μm程度のフィルタなどを用いて濾過した後、使用することが好ましい。
【0063】
<塗膜及び硬化膜>
本発明のポジ型感光性粘着組成物を半導体基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、金属例えばアルミニウム、モリブデン、クロムなどが被覆された基板、ガラス基板、石英基板、ITO基板等)の上に、回転塗布、流し塗布、ロール塗布、スリット塗布、スリットに続いた回転塗布、インクジェット塗布などによって塗布し、その後、ホットプレートまたはオーブン等で予備乾燥することにより、塗膜を形成することができる。その後、この塗膜を加熱処理することにより、ポジ型感光性粘着膜が形成される。
【0064】
この加熱処理の条件としては、例えば、温度70~160℃、時間0.3~60分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度及び加熱時間が採用される。加熱温度及び加熱時間は、好ましくは80℃~140℃、0.5~10分間である。
【0065】
また、ポジ型感光性粘着組成物から形成されるポジ型感光性粘着膜の膜厚は、例えば0.1~30μmであり、また例えば1.0~10μmであり、更に例えば2.0~8μmである。
【0066】
上記で得られた塗膜上に、所定のパターンを有するマスクを装着して紫外線等の光を照射し、アルカリ現像液で現像することで、露光部が洗い出されて端面のシャープなパターンが得られる。
【0067】
使用されうるアルカリ性現像液としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化第四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液が挙げられる。さらに、これらの現像液には、界面活性剤などを加えることもできる。
【0068】
上記の中、水酸化テトラエチルアンモニウム0.1~2.38質量%水溶液は、フォトレジストの現像液として一般に使用されており、本発明の感光性粘着組成物においても、このアルカリ性現像液を用いて、膨潤などの問題をひき起こすことなく良好に現像することができる。
【0069】
また、現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法など、いずれも用いることができる。その際の現像時間は、通常、15~180秒間である。
【0070】
現像後、ポジ型感光性粘着膜に対して流水による洗浄を例えば20~120秒間行い、続いて圧縮空気もしくは圧縮窒素を用いてまたはスピニングにより風乾することにより、基板上の水分が除去され、そしてパターン形成された膜が得られる。
【0071】
続いて、斯かるパターン形成膜に対して、熱硬化のためにポストベークを行うことにより、具体的にはホットプレート、オーブンなどを用いて加熱することにより、耐熱性、透明性、平坦化性、低吸水性、耐薬品性などに優れ、良好なパターンを有する膜が得られる。
【0072】
ポストベークとしては、一般に、温度140~270℃の範囲の中から選択された加熱温度にて、ホットプレート上の場合には5~30分間、オーブン中の場合には30~90分間処理するという方法が採られる。
【0073】
而して、斯かるポストべークにより、目的とする、良好なパターン形状を有する硬化膜を得ることができる。
【0074】
以上のように、本発明のポジ型感光性粘着組成物から得られる膜は、感光性、フラックス性と接着性を有し、パターニングによりアレイ基板上の必要な箇所のみに膜を形成することで、LED素子のマストランスファと金属接合の効率化を可能とするアンダーフィル材等の用途で好適に用いることができる。
【実施例0075】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらに限定して解釈されるものではない。使用した化合物の略号及び各物性の測定方法は、以下の通りである。
(モノマー)
HQMA:p-ヒドロキシフェニルメタクリレート
PEA:2-フェノキシエチルアクリレート
NOAA:n-オクチルアクリレート
2EHA:2-エチル-n-ヘキシルアクリレート
BA:n-ブチルアクリレート
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
MMA:メチルメタクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
NHPMA:N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド
CHMI:N-シクロヘキシルマレイミド
上記モノマーのうち、HQMA、PEA、及びNHPMAはモノマー(A1)に該当し、NOAA、2EHA、及びBAはモノマー(A2)に該当し、AA、MAA、MMA、HEMA、及びCHMIはその他モノマーに該当する。
(ラジカル重合開始剤)
AIBN:α,α’-アゾビスイソブチロニトリル
(感光剤)
QD:4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと6-ジアゾ-5,6-ジヒドロ-5-オキソ-1-ナフタレンスルホン酸とのエステル(東洋合成工業(株)製)
(架橋性化合物)
T1:エポリードGT-401(ブタンテトラカルボン酸 テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル) 修飾ε-カプロラクトン、(株)ダイセル製)
T2:エポカリックDE-102(ENEOS(株)製)
T3:TEPIC-FL(日産化学(株)製)
(溶剤)
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0076】
<分子量の測定>
重合体の分子量は、常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-101)(昭和電工社製)、カラム(KD-803,KD-805の直列)(昭和電工社製)を用いて、以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム一水和物(LiBr・HO)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10mL/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000及び30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000及び1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
【0077】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
合成例により得られたポリマーのTgは示差走査熱量測定(DSC)DSC1(METTLER TOREDO社製)を用いて以下の条件で測定した。
昇温速度:10℃/min
測定温度:-50℃~150℃
測定回数:2回。Tgは2回目の昇温結果から算出。
【0078】
<アクリル重合体の合成>
(合成例1)
アクリル重合体を構成するモノマー成分として、HQMA(6.0g)、PEA(6.0g)、およびNOAA(8.0g)を使用し、ラジカル重合開始剤としてAIBN(0.2g)を使用し、これらを溶剤PGME(16.8g)中において温度60℃で重合反応させることにより、Mn(数平均分子量):8,100、Mw(重量平均分子量):50,000であるアルカリ可溶性アクリル重合体成分(特定共重合体)の溶液P1(アクリル重合体濃度:30.0質量%)を得た。この特定重合体の溶液を水中で再沈殿させた後、50℃で真空乾燥することで粘性の樹脂を得た。得られたアクリル重合体のTgは-1℃であった。
【0079】
(合成例2)~(合成例6)
使用したアクリル重合体を構成するモノマー成分とラジカル重合開始剤の比率(質量比)を表1に記載のように変更した以外は合成例1と同様に重合反応させ、表1に記載の分子量およびTgのアクリル重合体の溶液P2~P6(アクリル重合体濃度:30.0質量%)を得た。
【0080】
(合成例7)
アクリル重合体を構成するモノマー成分として、NHPMA(4.0g)、HEMA(2.0g)、およびCHMI(4.0g)を使用し、ラジカル重合開始剤としてAIBN(0.2g)を使用し、これらを溶剤PGME(46.5g)中において温度90℃で重合反応させることにより、Mn(数平均分子量):5,600、Mw(重量平均分子量):9,300であるアルカリ可溶性アクリル重合体成分(特定共重合体)の溶液P7(アクリル重合体濃度:18.0質量%)を得た。得られたアクリル重合体は150℃までに明確なTgは確認できなかった。
【0081】
【表1】
【0082】
<ポジ型感光性粘着組成物の調製>
(実施例1-1)
樹脂溶液として、上記合成例1で得られたアクリル重合体溶液(P1)に、感光剤、架橋性化合物、および溶剤を加えた後、室温で2時間撹拌して表2に示す組成のポジ型感光性粘着組成物V1を調製した。
【0083】
(実施例1-2~1-5)および(比較例1-1~1-3)
樹脂溶液、感光剤、架橋性化合物、溶剤の種類及び量を表2のように変更して加えた後、室温で2時間撹拌して、表2に示す組成のポジ型感光性粘着組成物V2~V5およびRV1~RV3を調製した。
【0084】
【表2】
【0085】
(実施例2-1)
<接着力評価>
実施例1-1で調製したポジ型感光性粘着組成物V1を、5cm×5cmのITO基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度100℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚3μmのプリベーク膜を形成した。その後、Stable Micro Systems社製のテクスチャーアナライザーを用いて、プローブ(直径:25mm、材質:ポリプロピレン)、圧縮速度:1mm/s、引張速度:1mm/s、圧縮荷重:400g、圧縮保持時間:10sにより、室温(23℃)での塗膜表面の剥離強度を測定し、0.3g以上を〇、0.3g未満を×とした。結果を表3に記す。
【0086】
<パターニング評価>
実施例1-1で調製したポジ型感光性粘着組成物V1を、5cm×5cmのITO基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度100℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚3μmのプリベーク膜を形成した。このプリベーク膜に波長365nmにおける光強度が200mJ/cmの紫外線をマスクを介して照射し、30μm/30μmの間隔でライン/スペースを配置したパターンを作製した。その後2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHと称す)水溶液に60秒間浸漬することで現像を行った後、超純水で30秒間流水洗浄を行った。その後、ADVANTEC社製クリーンオーブンを用いて230℃で30分間ポストベークを行い、硬化膜を形成した。得られた硬化膜のパターン高さがプリベーク膜厚3μmの±10%未満であるものを良好(〇)、±10%以上であるものを不良(×)として評価した。また抜きパターン内の残渣評価として、残渣が30nm未満のものを優良(◎)、30nm以上60nm未満のものを良好(〇)、60nm以上のものを不良(×)として評価した。結果を表3に記す。
【0087】
(実施例2-2~2-5よび比較例2-1~2-3)
実施例1-2~1-5および比較例1-1~1-3で調製したポジ型感光性粘着組成物V2~V5およびRV1~RV3を用いて、実施例2-1と同様な方法で接着力とパターニング性を評価した。結果を表3に記す。
【0088】
【表3】
【0089】
表3に示したように、実施例のポジ型感光性粘着組成物は、いずれも良好な接着力とパターニング性を示した。これに対し、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上のアクリル重合体を用いたポジ型感光性粘着組成物は、接着力が不足していた(比較例2-1、2-3)。また、アクリル重合体中の酸性成分がカルボン酸であるものはアルカリ耐性が弱く、パターン形状が得られなかった(比較例2-1~2-2)。
【0090】
(実施例3-1)
<フリップチップボンディング試験>
実装サンプルとして、電極面積20μm×20μm、電極高さ5.5μm(SnAgハンダの高さが2.3μm、銅ポスト電極の高さが3.2μm)の電極を1700個有するTEG(Test Element Group)チップ(5.1mm×5.1mm×厚み700μm)と、TEGチップの電極とデイジーチェーンとなるように銅電極が配線されたTEG基板(15mm×15mm×厚み700μm)を準備した。TEG基板上に実施例1-1で調製したポジ型感光性粘着組成物V1をスピンコーターを用いて塗布した後、温度100℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚6μmのプリベーク膜を形成した。次いで、パナソニック(株)製フリップチップボンダーを用いて、このプリベーク膜を有するTEG基板に、ステージ温度60℃、ヘッド温度370℃60秒、ヘッド圧150NでTEGチップをフリップチップボンディングした。その後、230℃30分でポストベーク(後硬化)を行い、接合体を得た。得られた接合体について、TEGチップの剥離有無(剥離無し:〇、剥離有り:×)と導通抵抗値(100Ω未満:〇、100Ω以上:×)を評価した。結果を表4に記す。
【0091】
(実施例3-2~3-4、比較例3-1)
実施例1-2~1-4および比較例1-3で調製したポジ型感光性粘着組成物V2~V4およびRV3を用いて、実施例3-1と同様な方法でフリップチップボンディング試験を実施した。結果を表4に記す。
【0092】
(比較例3-2)
ポジ型感光性粘着組成物を使用する代わりに、フリップチップボンディング前にTEGチップおよびTEG基板を5質量%の硫酸水溶液で洗浄して表面酸化被膜を除去したこと以外は、実施例3-1と同様に接合体を形成し、TEGチップの剥離有無の確認と導通抵抗値を測定した。結果を表4に記す。
【0093】
【表4】
【0094】
表4に示したように、実施例のポジ型感光性粘着組成物を用いたTEG接合体は、TEGチップが剥離すること無く、導通抵抗値も良好であった(実施例3-1~3-4)。これに対し、比較例のポジ型感光性粘着組成物を用いたTEG接合体は、TEGチップは剥離しなかったものの導通抵抗値は不良であり、フリップチップボンディング時に電極間の樹脂組成物が十分に排斥されていないことが示唆された(比較例3-1)。またポジ型感光性粘着組成物を用いなかった場合は、TEGチップの剥離が大幅に増加し、再現良く抵抗値測定が出来なかった(比較例3-2)。