(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016701
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】マスクブランクス用基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/60 20120101AFI20230126BHJP
B24B 7/24 20060101ALI20230126BHJP
B24B 37/10 20120101ALI20230126BHJP
B24B 49/02 20060101ALI20230126BHJP
G03F 1/24 20120101ALN20230126BHJP
G03F 7/20 20060101ALN20230126BHJP
【FI】
G03F1/60
B24B7/24 C
B24B37/10
B24B49/02 Z
G03F1/24
G03F7/20 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097176
(22)【出願日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2021120239
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 朋陽
(72)【発明者】
【氏名】原田 大実
(72)【発明者】
【氏名】松井 晴信
(72)【発明者】
【氏名】鎗田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正樹
【テーマコード(参考)】
2H195
2H197
3C034
3C043
3C158
【Fターム(参考)】
2H195BC27
2H195BC28
2H195CA23
2H197BA11
2H197CA10
2H197CD44
2H197GA01
2H197HA03
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB93
3C034CA04
3C034CA22
3C034CB13
3C034DD08
3C034DD20
3C043BB05
3C043CC07
3C043DD01
3C043DD06
3C158AA07
3C158AC02
3C158BB09
3C158BC03
3C158CB01
3C158CB03
3C158CB10
3C158EA01
3C158EB01
(57)【要約】
【解決手段】152mm角の第一及び第二主表面の中央部を通り水平方向に延びる算出領域を設定し、第一領域面を切り出し、算出領域の中心軸の鉛直面である基準平面と、回転軸とを設定して、基板を180度回転させて、第二領域面を切り出し、第一及び第二領域面の各々において最小二乗平面を算出して、第一及び第二領域面を、各々の最小二乗平面上の各々の位置を基準とした第一及び第二領域面の高さマップに変換し、第二領域面の高さマップを対称移動させて反転高さマップとし、第一領域面の高さマップ及び第二領域面の反転高さマップの基準平面からの高さを足し合わせた算出高さのマップを算出面としたとき、算出面の平坦度(TIR)が100nm以下であるマスクブランクス用基板。
【効果】露光用マスクを用いた露光において、露光用マスクを露光機へ吸着により保持したときに、基板の主表面が、高平坦な形状となる露光用マスクを与えることができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
152mm×152mm角の第一主表面及び第二主表面の2つの主表面を有し、厚さが6.35mmであるマスクブランクス用基板であって、
(1)前記基板を、前記第一主表面及び第二主表面を略鉛直方向に沿って配置して、前記第一主表面及び第二主表面の中央部の、前記第一主表面及び第二主表面の四辺に沿った138mm×138mmの正方形の四辺を通り水平方向に延びる正四角筒状の算出領域を設定し、
(2)前記第一主表面に正対している状態で、前記第一主表面から前記算出領域内の部分を切り出して、第一領域面とし、
(3)前記算出領域の正四角筒の中心軸上の任意の1点である基準点を通り、前記中心軸に直交する鉛直面を基準平面として設定し、前記基準点を通り、前記算出領域の正四角筒と前記鉛直面との交線である正四角形の四辺のいずれか1辺に平行な回転軸を設定して、前記第一主表面に正対している状態から、前記回転軸に沿って、前記基板を180度回転させて、前記第二主表面に正対している状態で、前記第二主表面から前記算出領域内の部分を切り出して、第二領域面とし、
(4)前記第一領域面及び第二領域面の各々において最小二乗平面を算出し、
(5)前記第一領域面及び第二領域面を、前記第一領域面及び第二領域面の各々の最小二乗平面上の各々の位置を基準とした第一領域面の高さマップ及び第二領域面の高さマップに変換し、
(6)前記第二領域面の高さマップを、前記回転軸を通り、前記回転の90度方向に沿った垂直面を基準として対称移動させて第二領域面の反転高さマップとし、
(7)前記基準平面上の各々の位置(X座標、Y座標)において、前記第一領域面の高さマップの高さと、前記第二領域面の反転高さマップの高さとを足し合わせて算出高さ(Z座標)のマップを作成して、該算出高さのマップを算出面としたとき、
該算出面の平坦度(TIR)が100nm以下であることを特徴とするマスクブランクス用基板。
【請求項2】
前記(5)において、前記第二領域面の高さマップとして、ガウシアンフィルタ(20mm×20mm)にて処理して得られた高さマップが適用されることを特徴とする請求項1に記載のマスクブランクス用基板。
【請求項3】
前記(5)において、前記第二領域面の高さマップとして、ルジャンドル多項式の第15次までの項でフィッティングして得られた高さマップが適用されることを特徴とする請求項1に記載のマスクブランクス用基板。
【請求項4】
152mm×152mm角の第一主表面及び第二主表面の2つの主表面を有し、厚さが6.35mmであるマスクブランクス用基板を製造する方法であって、
前記第一主表面及び前記第二主表面の一方又は双方に対する局所加工工程と、該局所加工工程に続く仕上げ研磨工程とを含み、
前記局所加工工程が、
(A)第一主表面及び第二主表面の仕上げ研磨工程前後の表面の形状の変化を把握する工程と、
(B)第一主表面及び第二主表面の一方又は双方を局所加工する工程と、
(C)(B)工程後の第一主表面の形状及び第二主表面の形状を、仕上げ研磨工程前の表面の形状として測定する工程と、
(D)(C)工程で得られた仕上げ研磨工程前の表面の形状に対して、(A)工程で把握した表面の形状の変化を適用して、仕上げ研磨工程後の第一主表面及び第二主表面の形状を予測する工程と、
(E)(D)工程で予測された第一主表面及び第二主表面の形状が、所定の平坦度を満たす第一主表面及び第二主表面の形状か否かを評価する工程と
を含むことを特徴とするマスクブランクス用基板の製造方法。
【請求項5】
前記(E)工程における前記所定の平坦度を満たす前記第一主表面及び前記第二主表面の形状が、
(1)前記基板を、前記第一主表面及び第二主表面を略鉛直方向に沿って配置して、前記第一主表面及び第二主表面の中央部の、前記第一主表面及び第二主表面の四辺に沿った138mm×138mmの正方形の四辺を通り水平方向に延びる正四角筒状の算出領域を設定し、
(2)前記第一主表面に正対している状態で、前記第一主表面から前記算出領域内の部分を切り出して、第一領域面とし、
(3)前記算出領域の正四角筒の中心軸上の任意の1点である基準点を通り、前記中心軸に直交する鉛直面を基準平面として設定し、前記基準点を通り、前記算出領域の正四角筒と前記鉛直面との交線である正四角形の四辺のいずれか1辺に平行な回転軸を設定して、前記第一主表面に正対している状態から、前記回転軸に沿って、前記基板を180度回転させて、前記第二主表面に正対している状態で、前記第二主表面から前記算出領域内の部分を切り出して、第二領域面とし、
(4)前記第一領域面及び第二領域面の各々において最小二乗平面を算出し、
(5)前記第一領域面及び第二領域面を、前記第一領域面及び第二領域面の各々の最小二乗平面上の各々の位置を基準とした第一領域面の高さマップ及び第二領域面の高さマップに変換し、
(6)前記第二領域面の高さマップを、前記回転軸を通り、前記回転の90度方向に沿った垂直面を基準として対称移動させて第二領域面の反転高さマップとし、
(7)前記基準平面上の各々の位置(X座標、Y座標)において、前記第一領域面の高さマップの高さと、前記第二領域面の反転高さマップの高さとを足し合わせて算出高さ(Z座標)のマップを作成して、該算出高さのマップを算出面としたとき、
該算出面の平坦度(TIR)が100nm以下である形状であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記(5)において、前記第二領域面の高さマップとして、ガウシアンフィルタ(20mm×20mm)にて処理して得られた高さマップが適用されることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記(5)において、前記第二領域面の高さマップとして、ルジャンドル多項式の第15次までの項でフィッティングして得られた高さマップが適用されることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
(E)工程において(D)工程で予測された前記第一主表面及び前記第二主表面の形状が、前記所定の平坦度を満たす前記第一主表面及び前記第二主表面の形状でない場合、前記(A)工程から(E)工程を繰り返すことを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィに用いるマスクブランクス用基板及びその製造方法に関し、特に、露光光にEUV(Extreme Ultra Violet)光が用いられるフォトリソグラフィの転写用マスクを製造するために用いられるマスクブランクスに好適なマスクブランクス用基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、AIやIOTに関心が集まることで、膨大なデータの演算処理が必要となっており、それに伴い、演算処理の高速化や省電力化が求められている。この要求に応えるためには、ICチップの性能向上が必要であり、一般に、電気配線の微細化が、有効な手段として採用されている。配線の微細化には、主に、高NA化や露光光の短波長化などが採用されているが、近年は、EUV(極端紫外)光を用いたEUVリソグラフィー(EUVL)が実用化されつつある。
【0003】
EUVLにおいて、露光用マスクは重要な要素の一つであり、露光用マスクの原板(マスクブランクス)用のガラス基板の平坦度を向上させることは、正確な露光を実現するために極めて重要である。通常のガラス基板の製造方法としては、両面同時研磨が主流であるが、両面同時研磨だけでは、EUVLに使用できるほど良好な平坦度は得られない。高い平坦度を実現するためには、片面ずつの研磨により表面形状に合わせた平坦度の修正が必要であり、局所エッチングや局所加工などの局所加工技術が利用されている。これらは、相対的に凸な領域を除去することで、基板全体を平坦に近づける手法である。
【0004】
このようにして両面とも高平坦なガラス基板を得ることができても、露光時には露光用マスクのパターンのない面(裏面)を露光装置のマスクステージに吸着させて保持することになるため、裏面の表面形状に応じてパターンのある面(表面)の表面形状が変形し、結果として、パターンのある面(表面)の平坦度が変化してしまう。そのため、露光用マスクのガラス基板の表裏各面の露光時の吸着前の平坦度のみならず、露光用マスクのガラス基板の表面の露光時の吸着後の平坦度も重要である。
【0005】
露光用マスクを露光装置のマスクステージに吸着させて保持した状態での平坦度に関しては、例えば、国際公開第2016/098452号(特許文献1)には、表裏両主表面に対して従来の両面研磨と局所加工を施した基板を用いて作製された反射型マスクを、露光装置にチャックして露光転写を行ったときに高い転写精度を得るためには、静電チャックされているときの基板の表側主表面の形状を、露光装置の波面補正機能で補正可能なゼルニケ多項式で定義可能な形状(仮想表面形状)に近くすれば、基板が表側主表面の形状の変化に影響を与えるような板厚ばらつきを有していても、露光装置の波面補正機能で補正がしやすい傾向の板厚ばらつきとすることができ、そのような基板を有する転写用マスクが、転写パターンを転写対象物に対して高精度で露光転写することができることが記載されている。
【0006】
また、特開2003-050458号公報(特許文献2)には、露光装置のマスクステージにマスク基板をチャックした際、チャック後の平坦度が悪くなるものが、製品歩留まりの低下の大きな要因となることを示し、これを改善する方法として、複数のマスク基板の各々について、主面の表面形状を示す第1の情報と、露光装置のマスクステージにチャックする前後の前記主面の平坦度を示す第2の情報とを取得する工程と、前記各マスク基板とその前記第1の情報と前記第2の情報との対応関係を作成する工程と、作成した対応関係の中から、所望の平坦度を示す第2の情報を選択し、この選択した第2の情報と前記対応関係にある第1の情報が示す表面形状と同じ表面形状を有するマスク基板を、前記複数のマスク基板とは別に用意する工程と、この用意したマスク基板上に所望のパターンを形成する工程と、を有する露光マスクの製造方法が記載されており、これにより、平坦度の悪化に起因する製品歩留まりの低下を抑制できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2016/098452号
【特許文献2】特開2003-050458号公報
【特許文献3】特開2010-194705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
国際公開第2016/098452号記載の方法は、露光装置への吸着時の表側主表面と裏側主表面の合成平面を算出する過程と、これをゼルニケ多項式でフィッティングした形状から、光学補正後の表面形状を予想する過程で構成されている。しかし、この方法では、直径104mmの円形領域内の平坦度を規定しており、実際に露光に用いられる領域(132mm角)よりも狭く、不十分である。また、一般に、主表面の外周に向かうほど、平坦度が悪化しやすいことが知られており、その点から、この方法では、高品質なマスクブランクス用ガラス基板は得られない。更に、合成平面を算出する過程で算出される露光時の表面形状が、表側主表面と裏側主表面の単純な和であり、現実の表面形状と乖離する可能性が高く、光学補正後の表面形状を予想する過程で、高い予測精度が得られない。
【0009】
また、特開2003-050458号公報記載の方法では、基板のチャック位置によって平坦度に方向性をもった差が出ることが示されているが、現在、EUVLに要求されている技術水準においては、更に高度な平坦度の制御が必要であり、この平坦度の管理では不十分である。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、露光用マスクを用いた露光、特にEUVLによる露光において、露光用マスクを露光機へ吸着により保持したときに、光学補正をかけていない形状として、基板の主表面が高平坦な形状となる露光用マスクを与えるマスクブランクス用基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、マスクブランクス用基板の第一主表面及び第二主表面の2つの主表面に対して、所定の算出領域を設定し、算出領域内で第一領域面及び第二領域面を切り出し、第一領域面及び第二領域面の最小二乗平面を算出して、各々の最小二乗平面からの第一領域面及び第二領域面の高さマップに変換し、算出領域に基づき設定される基準平面上の各々の位置で、第一領域面の高さマップの高さと、第二領域面の高さマップを面対称移動させた反転高さマップの高さを足し合わせて得られる算出高さのマップを算出面としたとき、算出面の平坦度(TIR)が100nm以下であるマスクブランクス用基板が、露光用マスクを用いた露光、特に、EUVLによる露光において、露光用マスクを露光機へ吸着により保持したときに、基板の主表面が高平坦な形状となる露光用マスクを与えることを見出した。
【0012】
また、本発明者らは、このようなマスクブランクス用基板を、局所加工工程と、局所加工工程に続く仕上げ研磨工程とを含む製造方法において、局所加工工程後に、仕上げ研磨工程前の主表面の形状に対して、予め把握された主表面の形状の変化を適用して、仕上げ研磨工程後の主表面の形状を予測し、予測された主表面の形状が、所定の平坦度を満たす形状か否かを評価することにより、確実、かつ生産性よく製造することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0013】
従って、本発明は、以下のマスクブランクス用基板及びマスクブランクス用基板の製造方法を提供する。
1.152mm×152mm角の第一主表面及び第二主表面の2つの主表面を有し、厚さが6.35mmであるマスクブランクス用基板であって、
(1)前記基板を、前記第一主表面及び第二主表面を略鉛直方向に沿って配置して、前記第一主表面及び第二主表面の中央部の、前記第一主表面及び第二主表面の四辺に沿った138mm×138mmの正方形の四辺を通り水平方向に延びる正四角筒状の算出領域を設定し、
(2)前記第一主表面に正対している状態で、前記第一主表面から前記算出領域内の部分を切り出して、第一領域面とし、
(3)前記算出領域の正四角筒の中心軸上の任意の1点である基準点を通り、前記中心軸に直交する鉛直面を基準平面として設定し、前記基準点を通り、前記算出領域の正四角筒と前記鉛直面との交線である正四角形の四辺のいずれか1辺に平行な回転軸を設定して、前記第一主表面に正対している状態から、前記回転軸に沿って、前記基板を180度回転させて、前記第二主表面に正対している状態で、前記第二主表面から前記算出領域内の部分を切り出して、第二領域面とし、
(4)前記第一領域面及び第二領域面の各々において最小二乗平面を算出し、
(5)前記第一領域面及び第二領域面を、前記第一領域面及び第二領域面の各々の最小二乗平面上の各々の位置を基準とした第一領域面の高さマップ及び第二領域面の高さマップに変換し、
(6)前記第二領域面の高さマップを、前記回転軸を通り、前記回転の90度方向に沿った垂直面を基準として対称移動させて第二領域面の反転高さマップとし、
(7)前記基準平面上の各々の位置(X座標、Y座標)において、前記第一領域面の高さマップの高さと、前記第二領域面の反転高さマップの高さとを足し合わせて算出高さ(Z座標)のマップを作成して、該算出高さのマップを算出面としたとき、
該算出面の平坦度(TIR)が100nm以下であることを特徴とするマスクブランクス用基板。
2.前記(5)において、前記第二領域面の高さマップとして、ガウシアンフィルタ(20mm×20mm)にて処理して得られた高さマップが適用されることを特徴とする1に記載のマスクブランクス用基板。
3.前記(5)において、前記第二領域面の高さマップとして、ルジャンドル多項式の第15次までの項でフィッティングして得られた高さマップが適用されることを特徴とする1に記載のマスクブランクス用基板。
4.152mm×152mm角の第一主表面及び第二主表面の2つの主表面を有し、厚さが6.35mmであるマスクブランクス用基板を製造する方法であって、
前記第一主表面及び前記第二主表面の一方又は双方に対する局所加工工程と、該局所加工工程に続く仕上げ研磨工程とを含み、
前記局所加工工程が、
(A)第一主表面及び第二主表面の仕上げ研磨工程前後の表面の形状の変化を把握する工程と、
(B)第一主表面及び第二主表面の一方又は双方を局所加工する工程と、
(C)(B)工程後の第一主表面の形状及び第二主表面の形状を、仕上げ研磨工程前の表面の形状として測定する工程と、
(D)(C)工程で得られた仕上げ研磨工程前の表面の形状に対して、(A)工程で把握した表面の形状の変化を適用して、仕上げ研磨工程後の第一主表面及び第二主表面の形状を予測する工程と、
(E)(D)工程で予測された第一主表面及び第二主表面の形状が、所定の平坦度を満たす第一主表面及び第二主表面の形状か否かを評価する工程と
を含むことを特徴とするマスクブランクス用基板の製造方法。
5.前記(E)工程における前記所定の平坦度を満たす前記第一主表面及び前記第二主表面の形状が、
(1)前記基板を、前記第一主表面及び第二主表面を略鉛直方向に沿って配置して、前記第一主表面及び第二主表面の中央部の、前記第一主表面及び第二主表面の四辺に沿った138mm×138mmの正方形の四辺を通り水平方向に延びる正四角筒状の算出領域を設定し、
(2)前記第一主表面に正対している状態で、前記第一主表面から前記算出領域内の部分を切り出して、第一領域面とし、
(3)前記算出領域の正四角筒の中心軸上の任意の1点である基準点を通り、前記中心軸に直交する鉛直面を基準平面として設定し、前記基準点を通り、前記算出領域の正四角筒と前記鉛直面との交線である正四角形の四辺のいずれか1辺に平行な回転軸を設定して、前記第一主表面に正対している状態から、前記回転軸に沿って、前記基板を180度回転させて、前記第二主表面に正対している状態で、前記第二主表面から前記算出領域内の部分を切り出して、第二領域面とし、
(4)前記第一領域面及び第二領域面の各々において最小二乗平面を算出し、
(5)前記第一領域面及び第二領域面を、前記第一領域面及び第二領域面の各々の最小二乗平面上の各々の位置を基準とした第一領域面の高さマップ及び第二領域面の高さマップに変換し、
(6)前記第二領域面の高さマップを、前記回転軸を通り、前記回転の90度方向に沿った垂直面を基準として対称移動させて第二領域面の反転高さマップとし、
(7)前記基準平面上の各々の位置(X座標、Y座標)において、前記第一領域面の高さマップの高さと、前記第二領域面の反転高さマップの高さとを足し合わせて算出高さ(Z座標)のマップを作成して、該算出高さのマップを算出面としたとき、
該算出面の平坦度(TIR)が100nm以下である形状であることを特徴とする4に記載の製造方法。
6.前記(5)において、前記第二領域面の高さマップとして、ガウシアンフィルタ(20mm×20mm)にて処理して得られた高さマップが適用されることを特徴とする5に記載の製造方法。
7.前記(5)において、前記第二領域面の高さマップとして、ルジャンドル多項式の第15次までの項でフィッティングして得られた高さマップが適用されることを特徴とする5に記載の製造方法。
8.(E)工程において(D)工程で予測された前記第一主表面及び前記第二主表面の形状が、前記所定の平坦度を満たす前記第一主表面及び前記第二主表面の形状でない場合、前記(A)工程から(E)工程を繰り返すことを特徴とする4乃至7のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のマスクブランクス用基板は、露光用マスクを用いた露光、特に、EUVLによる露光において、露光用マスクを露光機へ吸着により保持したときに、基板の主表面が、高平坦な形状となる露光用マスクを与えることができる。また、本発明のマスクブランクス用基板の製造方法によれば、仕上げ研磨工程後の主表面の形状を予測して局所加工することにより、露光用マスクを用いた露光、特に、EUVLによる露光において、露光用マスクを露光機へ吸着により保持したときに、基板の主表面が、高平坦な形状となる露光用マスクを与えるマスクブランクス用基板を、確実、かつ生産性よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のマスクブランクス用基板の態様を説明するための図であり、(A)は、マスクブランクス用基板の第一主表面及び第二主表面を鉛直方向に沿って配置した状態の側面図、(B)は、(A)において右側に位置する第一主表面の正面図である。
【
図2】本発明のマスクブランクス用基板の態様を説明するための図であり、(A)は、180度回転後の、マスクブランクス用基板の側面図、(B)は、回転後の(A)において右側に位置する第二主表面の正面図である。
【
図3】本発明のマスクブランクス用基板の態様を説明するための図であり、(A)~(C)は、各々、第一領域面の高さマップ、第二領域面の高さマップ及び第二領域面の反転高さマップである。
【
図4】本発明のマスクブランクス用基板の態様を説明するための図であり、第一領域面の高さマップ及び第二領域面の反転高さマップから得られた算出面(算出高さのマップ)である。
【
図5】実施例1(基板1-1)における、2回目の局所加工後の第一主表面及び第二主表面の形状、把握された主表面の形状の変化を適用して予測した仕上げ研磨工程後の第一主表面及び第二主表面の形状、及び仕上げ研磨後の第一主表面及び第二主表面の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のマスクブランクス用基板は、152mm×152mm角の第一主表面及び第二主表面の2つの主表面を有し、厚さが6.35mmである。このサイズの基板は、いわゆる6025基板と称され、6インチ×6インチ角の第一主表面及び第二主表面の2つの主表面を有し、厚さが0.25インチの基板である。
【0017】
本発明のマスクブランクス用基板の材料は、従来用いられている材料を用いることができ、特に限定されるものではないが、微細パターンの描画には、高エネルギーの露光光に曝されるため、高温下での寸法安定性が非常に高い3~10質量%でTiO2を含有するTiO2ドープ石英ガラスが好適に用いられる。マスクブランクス用基板の原料基板は、常法に従って、合成、成型、加工されたものを用いることができる。
【0018】
マスクブランクス用基板には、高い平坦度が求められている。これは、平坦度が高いほど、狙いどおりの露光が達成しやすくなるためであり、平坦度がより高い基板が微細パターンの描画に適したマスクブランクス用基板といえる。
【0019】
マスクブランクス用基板には、露光用マスクとしたときに露光パターン(配線パターンなど)が形成される第一主表面と、露光パターンが形成されない第二主表面とがあり、第二主表面が、露光機に吸着され保持される。第二主表面は吸着面に沿うように変形するため、それに伴い露光に用いられる第一主表面の形状も変形する。以前の要求レベルでは、露光機の吸着による平坦度の悪化は、ある程度許容されており、第二主表面の平坦度が、第一主表面の平坦度より1桁程度大きくても問題ない場合が多かった。そのため、2つの主表面のうち一方の面の平坦度が大きくなってしまう両面同時研磨により、2つの主表面を研磨し、平坦度が大きい方を第二主表面とすることが主流であった。
【0020】
しかしながら、近年では、極微細なパターンを実現するために、2つの主表面の両面に対して、同じ程度の平坦度が必要となっており、そのため、2つの主表面の各々の面を別々に加工する局所加工技術が提案されている。更に、2つの主表面の両面が高平坦であっても、第二主表面の形状によっては、露光用マスクを露光機へ吸着により保持したときに、十分な平坦度が得られないことがわかっており、極微細なパターンを実現するための最先端品では、露光用マスクを露光機へ吸着により保持したときに、高い平坦度が得られることが重要となっている。
【0021】
マスクブランクス用基板からマスクブランクスを経て、露光用マスクとし、露光用マスクを露光機へ吸着により保持したときの主表面の形状の評価は、極めて重要であるが、一般に、これを直接測定するのは困難である。そのため、露光用マスクを露光機に吸着させて保持したときの主表面の形状を推定すること、例えば、一般的なレーザー干渉計で測定した主表面の形状から近似的に算出することがなされている。しかし、従来、露光に必要な領域において、露光機に吸着させて保持したときの平坦度を正確に把握することはできておらず、そのため、露光用マスクを露光機に吸着させて保持したときに、十分な平坦度を与えるマスクブランクス用基板は得られていなかった。
【0022】
本発明のマスクブランクス用基板は、基板の中心を基準とした138mm×138mmの正方形の内側であって、基板の厚さ方向に延びる正四角筒状の算出領域内に位置する2つの主表面の各表面形状を重ね合わせて得られる算出面の平坦度(TIR)が100nm以下である。具体的には、本発明のマスクブランクス用基板は、
(1)基板を、第一主表面及び第二主表面を略鉛直方向に沿って配置して、第一主表面及び第二主表面の中央部の、第一主表面及び第二主表面の四辺に沿った138mm×138mmの正方形の四辺を通り水平方向に延びる正四角筒状の算出領域を設定し、
(2)第一主表面に正対している状態で、第一主表面から算出領域内の部分を切り出して、第一領域面とし、
(3)算出領域の正四角筒の中心軸上の任意の1点である基準点を通り、中心軸に直交する鉛直面を基準平面として設定し、基準点を通り、算出領域の正四角筒と、鉛直面との交線である正四角形の四辺のいずれか1辺に平行な回転軸を設定して、第一主表面に正対している状態から、回転軸に沿って、基板を180度回転させて、第二主表面に正対している状態で、第二主表面から算出領域内の部分を切り出して、第二領域面とし、
(4)第一領域面及び第二領域面の各々において最小二乗平面を算出し、
(5)第一領域面及び第二領域面を、第一領域面及び第二領域面の各々の最小二乗平面上の各々の位置を基準とした第一領域面の高さマップ及び第二領域面の高さマップに変換し、
(6)第二領域面の高さマップを、(3)における回転軸を通り、(3)における回転の90度方向に沿った垂直面を基準として対称移動させて第二領域面の反転高さマップとし、
(7)基準平面上の各々の位置(X座標、Y座標)において、第一領域面の高さマップの高さと、第二領域面の反転高さマップの高さとを足し合わせて算出高さ(Z座標)のマップを作成して、算出高さのマップを算出面としたとき、
算出面の平坦度(TIR)が100nm以下となっている。
【0023】
上記(1)~(7)について、本発明のマスクブランクス用基板の態様を説明するための
図1~4を参照して具体的に説明する。まず、
図1中、(A)は、マスクブランクス用基板の第一主表面及び第二主表面を鉛直方向に沿って配置した状態の側面図、(B)は、(A)において右側に位置する第一主表面の正面図である。(1)では、
図1(A)に示されるように、基板500の152mm×152mm角の第一主表面1及び第二主表面2を略鉛直方向に沿って配置し、第一主表面1及び第二主表面2の中央部の、第一主表面1及び第二主表面2の四辺に沿った138mm×138mmの正方形の四辺を通り水平方向に延びる正四角筒状の算出領域Cを設定する。
【0024】
次に、(2)では、
図1(B)に示されるように、第一主表面1に正対している状態で、第一主表面1から算出領域C内の部分を切り出して、第一領域面11とする。ここで、便宜上、第一主表面1には、凸部分11aが存在し、また、第二主表面2にも、後述する
図2(B)に示されるように、凸部分21aが存在しているものとする。
【0025】
次に、(3)では、
図1(A)及び(B)に示されるように、算出領域Cの正四角筒の中心軸CA上の任意の1点である基準点Pを通り、中心軸CAに直交する鉛直面を基準平面S(ここで、基準平面Sは、図面の奥行方向に延びる面である。)として設定し、基準点Pを通り、算出領域Cの正四角筒と、鉛直面との交線である正四角形の四辺のいずれか1辺に平行な回転軸RAを設定する。そして、第一主表面1に正対している状態から、回転軸RAに沿って(回転軸RAを中心として)、基板500を180度回転させる。
【0026】
一方、
図2中、(A)は、180度回転後の、マスクブランクス用基板の側面図、(B)は、回転後の(A)において右側に位置する第二主表面の正面図である。基板500の回転後は、
図2(B)に示されるように、第二主表面2に正対している状態で、第二主表面2から算出領域C内の部分を切り出して、第二領域面21とする。
【0027】
次に、(4)では、第一領域面11及び第二領域面21の各々において最小二乗平面を算出し、(5)では、第一領域面11及び第二領域面21を、第一領域面11及び第二領域面21の各々の最小二乗平面上の各々の位置を基準とした、
図3(A)示されるような、第一領域面の高さマップ111、及び
図3(B)に示されるような、第二領域面の高さマップ211に変換する。また、(6)では、第二領域面の高さマップ211を、
図3(B)に示される、(3)における回転軸RAを通り、(3)における回転の90度方向に沿った垂直面V(ここで、垂直面Vは、図面の奥行方向に延びる面である。)を基準として対称移動させて、
図3(C)に示されるような、第二領域面の反転高さマップ211Rとする。なお、
図3(C)に示される、第二領域面の反転高さマップ211Rは、高さマップ211を対称移動させて得られるため、反転高さマップ211Rにおける21aRは、高さ方向には反転しておらず、21aと同様に凸部となっている。
【0028】
次に、(7)では、
図3(A)に示される第一領域面の高さマップ111と、
図3(C)に示される第二領域面の反転高さマップ211Rとを重ね合わせ、
図1(A)に示される基準平面S上の各々の位置(X座標、Y座標)において、第一領域面の高さマップ111の高さと、第二領域面の反転高さマップ211Rの高さとを足し合わせて算出高さ(Z座標)のマップを作成して、得られた算出高さのマップを、
図4に示されるような、算出面3とする。そして、この算出面3の平坦度を評価する。
【0029】
露光用マスクの基板(マスクブランクス用基板)が露光機に吸着されて保持されると、その吸着面の表面形状に従って主表面の平坦度が変化する。6025基板において、第二主表面の中央部の、第二主表面の四辺に沿った138mm×138mmの正方形の内側は、第二主表面のうち、露光機に実際に吸着される領域であり、第一主表面及び第二主表面の中央部の、第一主表面及び第二主表面の四辺に沿った138mm×138mmの正方形の四辺を通り水平方向に延びる正四角筒状の算出領域において第一主表面と第二主表面の形状の和、即ち、未吸着状態の第一主表面及び第二主表面における第一領域面と第二領域面との和をとることで、露光用マスクが、露光機に吸着されて保持された状態の第一主表面の形状を高い精度で把握することができる。
【0030】
フォトマスクブランクス用基板の主表面の形状の測定には、特に制限されるものではないが、例えばレーザー干渉計を使用することができる。レーザー干渉計で測定できる形状は、基板の主表面の高さマップの生データであり、この場合、その高さの基準は、測定時に基板を載置する台となる。本発明では、この基板の主表面の高さマップについて、当該主表面の最小二乗平面(面又は高さマップの最小二乗平面)を算出し、その最小二乗平面を基準とした高さマップに補正することで、基板を載置する台の形状の影響を除去する。このように補正した高さマップのうち、第二領域面の高さマップから、(3)における回転軸を通り、(3)における回転の90度方向に沿った面を基準として対称移動させて得られる第二領域面の反転高さマップでは、高さ方向の正負は変わらないが、(3)における回転軸と直交する方向の両側が反転する。また、平坦度(TIR)とは、対象面(第一領域面、第二領域面、算出面などの面)の最小二乗平面を算出し、最小二乗平面と対象面との差分を算出したときの、その差分の所定の領域内での最高値(最高高さ)と最低値(最低高さ)との差である。
【0031】
算出面の平坦度(TIR)は、100nm以下であり、50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましい。算出面の平坦度(TIR)が100nm以下の場合には、マスクブランクス用基板からマスクブランクスを経て得た露光用マスクを用いた露光において、転写精度が良好な露光を実現できる。一方、算出面の平坦度(TIR)が100nmよりも大きいと、良好な露光が実現できない。
【0032】
また、算出面を得る際に、第二主表面の形状のうち、第一主表面の形状に寄与する波長成分と寄与しない波長成分を分離することで、露光用マスクが露光機に吸着されて保持された状態の第一主表面の形状をより高い精度で把握することができる。
【0033】
第二主表面の形状のうち、短波長成分ほど、第一主表面の形状の変化への影響が小さいことから、例えば、上述した(5)において、第二領域面の高さマップとして、ガウシアンフィルタ(20mm×20mm)にて処理して得られた高さマップを適用することが好ましい。具体的には、ガウシアンフィルタで、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下、更に好ましくは10mm以下の波長成分を緩和して得られた高さマップを適用することが好ましい。
【0034】
ガウシアンフィルタとは、面の微小領域内の平滑化を面全体にわたって実施する平滑化処理である。Xmmのガウシアンフィルタとは、ある測定点の周囲Xmm×Xmmに着目し、ガウス分布関数を用いて遠くなるほど重みが小さくなるように、下記式
【数1】
に基づいて、レートを計算するフィルタである。本発明では、好ましくは20mm×20mm、より好ましくは15mm×15mm、更に好ましくは10mm×10mmのガウシアンフィルタを用いることで、露光用マスクが露光機に吸着されて保持された状態の第一主表面の形状への影響が小さい、第二主表面における数mmピッチの形状を減衰することができる。
【0035】
また、第二主表面の形状のうち、短波長成分ほど、第一主表面の形状の変化への影響が小さいことから、例えば、上述した(5)において、第二領域面の高さマップとして、ルジャンドル多項式の第15次までの項、より好ましくは第21次までの項、更に好ましくは第36次までの項でフィッティングして得られた高さマップを適用することが好ましい。ルジャンドル多項式は、マスクブランクス用基板の第二主表面の形状のうち、第一主表面の形状の変化への影響が大きい長波長成分を、良好にフィッティングすることができる多項式であり、少なくとも第15次までの項によるフィッティングを実施することにより、露光用マスクが露光機に吸着されて保持された状態の第一主表面の形状を十分に高い精度で把握することができる。
【0036】
一方、算出面を得る際に、第二主表面の形状のうち、第一主表面の形状に寄与する方向成分と寄与しない方向成分とを分離することでも、露光用マスクが露光機に吸着されて保持された状態の第一主表面の形状をより高い精度で把握することができる。第二主表面の形状のうち、露光機による吸着の保持領域の長軸に垂直な成分ほど、第一主表面の形状の変化への影響が小さいことから、例えば、上述した(5)において、第二領域面の高さマップを、第二領域面の高さマップのうち、露光機による吸着の保持領域の長軸に垂直な成分を除外した高さマップとすることが好ましい。
【0037】
次に、本発明のマスクブランクス用基板の製造工程を説明する。
本発明のマスクブランクス用基板の製造方法は、マスクブランクス用基板の第一主表面及び第二主表面の一方又は双方に対する局所加工工程と、局所加工工程に続く仕上げ研磨工程とを含む。
【0038】
マスクブランクス用基板の製造においては、局所加工工程の前に、ガラスインゴットからマスクブランクス用基板の形状に切り出し、次に、外形加工や端面、主表面を粗研磨する。これらの各工程の研磨は、数段階で構成されることが多く、特に制限されるものではないが、例えば10~100nmの酸化セリウムやシリカナノ粒子の水溶液が研磨剤として使用される。
【0039】
次に、主表面の形状を整える局所加工が実施されるが、局所加工工程では、マスクブランクス用基板の第一主表面及び第二主表面の一方又は双方に対して、相対的に凸な部分を選択的に除去する加工が施される。この工程においては、所定の形状が得られるまで、加工を繰り返すことができる。局所加工には、磁気粘弾性流体研磨(Magneto Rheological Finishing:MRF)などの方法を用いることができる。しかし、一般に、局所加工のみで得られる表面の欠陥レベルは、特に、最先端品向けのマスクブランクス用基板では、十分ではない場合があるため、局所加工工程に続いて、仕上げ研磨工程が実施される。
【0040】
本発明のマスクブランクス用基板の製造方法は、局所加工工程が、
(A)第一主表面及び第二主表面の仕上げ研磨工程前後の表面の形状の変化を把握する工程と、
(B)第一主表面及び第二主表面の一方又は双方を局所加工する工程と、
(C)(B)工程後の第一主表面の形状及び第二主表面の形状を、仕上げ研磨工程前の表面の形状として測定する工程と、
(D)(C)工程で得られた仕上げ研磨工程前の表面の形状に対して、(A)工程で把握した表面の形状の変化を適用して、仕上げ研磨工程後の第一主表面及び第二主表面の形状を予測する工程と、
(E)(D)工程で予測された第一主表面及び第二主表面の形状が、所定の平坦度を満たす第一主表面及び第二主表面の形状か否かを評価する工程と
を含むことを特徴とする。
【0041】
局所加工のみで得られる表面の形状は、平坦ではなく、通常、その後に実施される仕上げ研磨工程における表面の形状の変化を打ち消すような形状(一般に、中凸形状(主表面の中央部が突出した形状)や、中凹形状(主表面の中央部が窪んだ形状)など)をしており、局所加工のみで得られた表面の形状の平坦度(TIR)を評価しても、最終的に得られるマスクブランクス用基板の主表面の形状の評価結果とは乖離した評価にしかならない。局所加工工程の後に、所定の研磨条件で実施される仕上げ研磨工程で生じる主表面の形状の変化には再現性があり、所定の研磨条件での仕上げ研磨後の主表面の形状の変化を把握し、これを局所加工後の主表面の形状に適用して、所定の研磨条件で実施した仕上げ研磨工程後の表面の形状を予測することにより、仕上げ研磨の前に、局所加工の段階で、仕上げ研磨後に得られる表面の形状を評価して、仕上げ研磨により得られた主表面の形状の良否を評価することができる。そのため、本発明のマスクブランクス用基板の製造方法では、上記(A)~(E)工程を含む局所加工工程により、マスクブランクス用基板を製造することが好ましい。
【0042】
(A)工程において、第一主表面及び第二主表面の、局所加工工程後の表面に対する、仕上げ研磨工程後の表面の形状の変化を把握するが、この変化は、例えば、局所加工を実施したマスクブランクス用基板から、主表面が同様の形状を有する別のマスクブランクス用基板を選び、この別のマスクブランクス用基板に、所定の仕上げ研磨を実施して得られた主表面の形状から把握することができる。また、この形状の変化の把握は、シミュレーションにより推定することもできる。この場合、別のマスクブランクス用基板としては、主表面の形状が、局所加工工程における目標形状である中凹形状であるもの、主表面の平坦度(TIR)300nm未満であるものなどが好適である。なお、(A)工程は、(B)工程の後でも、(C)工程の後でもよい。
【0043】
(B)工程においては、第一主表面及び第二主表面の一方又は双方を局所加工するが、局所加工は、局所加工前後の第一主表面及び第二主表面の形状と、仕上げ研磨工程後の表面の形状の変化とを考慮して、第一主表面及び第二主表面が、所定の形状となるように局所加工における所定の加工条件を設定する。具体的には、例えば、第二主表面が凸状である場合、露光用マスクを露光機に吸着させて保持したときに、第一主表面が平坦となるには、第一主表面は凹状であることが好ましく、第二主表面が凹状である場合、露光用マスクを露光機に吸着させて保持したときに、第一主表面が平坦となるには、第一主表面は凸状であることが好ましい。一方、仕上げ研磨により、形状が凸となる変化をする場合、この変化を考慮して、第一主表面は、この変化を打ち消す形状(例えば、低い凸状や凹状)であることが好ましく、仕上げ研磨により、形状が凹となる変化をする場合、この変化を考慮して、第一主表面は、この変化を打ち消す形状(例えば、浅い凹状や凸状)であることが好ましい。
【0044】
(C)工程において、(B)工程後、即ち、実際に局所加工した後の第一主表面の形状及び第二主表面の形状を、仕上げ研磨工程前の表面の形状として測定するが、この測定には、特に制限されるものではないが、例えばレーザー干渉計を使用することができる。また、局所加工前にも、第一主表面の形状及び第二主表面の形状が、適宜測定されるが、この測定にも、特に制限されるものではないが、例えばレーザー干渉計を使用することができる。
【0045】
(D)工程では、(C)工程で得られた主表面の形状に対して、(A)工程で把握した主表面の形状の変化を適用して、仕上げ研磨工程後の第一主表面及び第二主表面の形状を予測するが、(A)工程で把握した主表面の形状の変化は、(C)工程で得られた局所加工後の主表面の形状に応じて、形状の変化が選択される。ここでは、例えば、第一主表面及び第二主表面の、局所加工工程後の主表面の形状を、各々S11a及びS11bとし、所定の仕上げ研磨を実施したときの第一主表面及び第二主表面の形状変化を測定して、各々、SΔa及びSΔbとしたとき、下記式(a)及び式(b)
S11a+SΔa=S12a (a)
S11b+SΔb=S12b (b)
により、仕上げ研磨工程後の第一主表面の形状(S12a)及び第二主表面の形状(S12b)を予測することができる。
【0046】
(E)工程では、(D)工程で予測された第一主表面及び第二主表面の形状が、所定の平坦度を満たす第一主表面及び第二主表面の形状か否かを評価する。この評価方法としては、主表面の形状の測定と、その数値解析で構成される手法を用いることができる。
【0047】
具体的には、例えば、(E)工程における所定の平坦度を満たす第一主表面及び第二主表面の形状を、
(1)基板を、第一主表面及び第二主表面を略鉛直方向に沿って配置して、第一主表面及び第二主表面の中央部の、第一主表面及び第二主表面の四辺に沿った138mm×138mmの正方形の四辺を通り水平方向に延びる正四角筒状の算出領域を設定し、
(2)第一主表面に正対している状態で、第一主表面から算出領域内の部分を切り出して、第一領域面とし、
(3)算出領域の正四角筒の中心軸上の任意の1点である基準点を通り、中心軸に直交する鉛直面を基準平面として設定し、基準点を通り、算出領域の正四角筒と、鉛直面との交線である正四角形の四辺のいずれか1辺に平行な回転軸を設定して、第一主表面に正対している状態から、回転軸に沿って、基板を180度回転させて、第二主表面に正対している状態で、第二主表面から算出領域内の部分を切り出して、第二領域面とし、
(4)第一領域面及び第二領域面の各々において最小二乗平面を算出し、
(5)第一領域面及び第二領域面を、第一領域面及び第二領域面の各々の最小二乗平面上の各々の位置を基準とした第一領域面の高さマップ及び第二領域面の高さマップに変換し、
(6)第二領域面の高さマップを、(3)における回転軸を通り、(3)における回転の90度方向に沿った垂直面を基準として対称移動させて第二領域面の反転高さマップとし、
(7)基準平面上の各々の位置(X座標、Y座標)において、第一領域面の高さマップの高さと、第二領域面の反転高さマップの高さとを足し合わせて算出高さ(Z座標)のマップを作成して、算出高さのマップを算出面としたとき、
算出面の平坦度(TIR)が100nm以下である形状として、評価することができる。このようにすれば、マスクブランクス用基板からマスクブランクスを経て得た露光用マスクを用いた露光時の露光用マスクの平坦性を、マスクブランクス用基板の段階で、極めて高い精度で予測することができ、また、露光用マスクを用いた露光時の露光用マスクの平坦度を予測することができる。
【0048】
この場合は、前述した第一主表面の形状(S12a)及び第二主表面の形状(S12b)から、上記(5)において、下記式(c)
S12a+S12b=S13 (c)
に示されるように、第一主表面の形状と第二主表面の形状とを積算することにより算出面(S13)を得ることができる。そして、得られた算出面の平坦度(TIR)から、仕上げ研磨後に最終的に得られるマスクブランクス用基板の平坦度(TIR)を予測することができる。
【0049】
(E)工程において(D)工程で予測された第一主表面及び第二主表面の形状が、所定の平坦度を満たす第一主表面及び第二主表面の形状である場合は、仕上げ研磨工程に移行することができる。一方、(E)工程において(D)工程で予測された第一主表面及び第二主表面の形状が、所定の平坦度を満たす第一主表面及び第二主表面の形状でない場合は、(A)工程から(E)工程を繰り返すことができる。
【0050】
仕上げ研磨後に最終的に得られたマスクブランクス用基板の第一主表面の形状及び第二主表面の形状も、適宜測定することができ、この測定にも、特に制限されるものではないが、例えばレーザー干渉計を使用することができる。更に、その結果から、仕上げ研磨後に最終的に得られたマスクブランクス用基板の平坦度(TIR)を評価することもできる。
【0051】
局所加工後のマスクブランクス用基板の表面は、欠陥や粗さの点で、表面状態が十分ではない場合が多く、それらを改善するため、局所加工後には、仕上げ研磨が実施される。仕上げ研磨は、例えば、やわらかめの研磨クロスと、微細なコロイダルシリカで構成された研磨スラリーとを用いて、例えば、両面同時研磨で実施することができる。仕上げ研磨の研磨条件については、常法に従って、適宜選択することができ、特に限定されるものではないが、例えば、スウェードタイプの軟質ポリシャと、平均粒径10~100nmのコロイダルシリカ砥粒の水溶液とを使用することができる。
【実施例0052】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0053】
[実施例1~3]
SiO2とTiO2(TiO2濃度約7質量%)で形成されたガラス基板(第一主表面及び第二主表面の大きさ152mm×152mm角、厚さ6.35mm)10枚を用意した。ガラス基板の端面(主表面でない4つの面)を面取加工及び研削加工し、更に酸化セリウム砥粒を含む研磨液で粗研磨処理及び精密研磨した。その後、実施例1では、ガラス基板10枚(基板1-1~基板1-10)、実施例2では、ガラス基板10枚(基板2-1~基板2-10)、実施例3では、ガラス基板10枚(基板3-1~基板3-10)を、スウェードタイプの軟質ポリシャを適用した両面研磨装置のキャリアにセットし、コロイダルシリカ砥粒の研磨液を用いて、第一主表面及び第二主表面を超精密研磨した。
【0054】
超精密研磨の後、KOHを含む洗浄液で洗浄してシリカナノ粒子を除去し、乾燥後、表面形状測定装置(UltraFlat、Tropel社製)にて、第一主表面及び第二主表面の形状を測定した。その後、得られた主表面の形状に基づき、次に実施する局所加工の加工条件を決定した。
【0055】
次に、決定した加工条件に基づいて、局所加工装置でガラス基板の両面を局所加工した。局所加工装置は、特開2010-194705号公報(特許文献3)に記載されている局所加工装置を用いた。この装置を用いた局所加工は、微細な研磨ツールの移動速度を制御しつつ、基板全面を研磨するもので、相対的に凸になっている部分で研磨ツールを遅く移動、相対的に凹になっている部分で研磨ツールを速く移動させることで、目標の形状を得ることができる。局所加工装置の加工ツールには、羊毛フェルトバフ、研磨スラリーにはシリカナノ粒子(AJ-3540、日産化学株式会社製)に、微量の消泡剤(信越シリコーンKS-537、信越化学工業株式会社製)を混和したものを用いた。局所加工後のガラス基板は、KOHを含む洗浄液で洗浄してシリカナノ粒子を除去し、乾燥後、表面形状測定装置(UltraFlat、Tropel社製)にて、第一主表面及び第二主表面の形状を測定した。
【0056】
ここで、局所加工後の表面に対する、仕上げ研磨後の主表面の形状の変化を把握するために、別のガラス基板を使用して、同様に局所加工まで実施し、更に、後述する仕上げ研磨と同様の仕上げ研磨を実施して、局所加工後の表面に対する、仕上げ研磨後の主表面の形状の変化を評価した。次に、ガラス基板について、局所加工後のガラス基板の主表面の形状に、把握された主表面の形状の変化を適用して、仕上げ研磨後の表面の形状を予測した。この例では、1回目の局所加工後の表面に対して、仕上げ研磨後の表面の形状を予測した後、ガラス基板10枚のいずれにおいても、2回目の局所加工を実施し、2回目の局所加工後の表面に対しても、仕上げ研磨工程後の表面の形状を予測した。
【0057】
次に、実測された局所研磨後の表面の形状と、予測された仕上げ研磨後の表面の形状とについて、ガラス基板の主表面の形状を、以下の方法で平坦度(TIR)として評価した。即ち、
(1)基板を、第一主表面及び第二主表面を略鉛直方向に沿って配置して、第一主表面及び第二主表面の中央部の、第一主表面及び第二主表面の四辺に沿った138mm×138mmの正方形の四辺を通り水平方向に延びる正四角筒状の算出領域を設定し、
(2)第一主表面に正対している状態で、第一主表面から算出領域内の部分を切り出して、第一領域面とし、
(3)算出領域の正四角筒の中心軸上の任意の1点である基準点を通り、中心軸に直交する鉛直面を基準平面として設定し、基準点を通り、算出領域の正四角筒と、鉛直面との交線である正四角形の四辺のいずれか1辺に平行な回転軸を設定して、第一主表面に正対している状態から、回転軸に沿って、基板を180度回転させて、第二主表面に正対している状態で、第二主表面から算出領域内の部分を切り出して、第二領域面とし、
(4)第一領域面及び第二領域面の各々において最小二乗平面を算出し、
(5)第一領域面及び第二領域面を、第一領域面及び第二領域面の各々の最小二乗平面上の各々の位置を基準とした第一領域面の高さマップ及び第二領域面の高さマップに変換し、
(6)第二領域面の高さマップを、(3)における回転軸を通り、(3)における回転の90度方向に沿った垂直面を基準として対称移動させて第二領域面の反転高さマップとし、
(7)基準平面上の各々の位置(X座標、Y座標)において、第一領域面の高さマップの高さと、第二領域面の反転高さマップの高さとを足し合わせて算出高さ(Z座標)のマップを作成して、算出高さのマップを算出面としたときの、算出面の平坦度(TIR)を求めた。実施例1では、第二領域の表面を切り出した面をそのまま第二領域面とし、実施例2では、(5)において、第二領域面の高さマップとして、ガウシアンフィルタ(20mm×20mm)にて処理して得られた高さマップを適用し、実施例3では、(5)において、第二領域面の高さマップとして、ルジャンドル多項式の第15次までの項でフィッティングして得られた高さマップを適用した。結果を表1に示す。
【0058】
また、基板1-1について、2回目の局所加工後の第一主表面及び第二主表面の形状(局所加工上がり形状)、及び把握された主表面の形状の変化を適用して予測した仕上げ研磨工程後の第一主表面及び第二主表面の形状(予想形状)を
図5に示す。この場合は、仕上げ研磨工程後の第一主表面の形状が、凸形状であることから、基板1-1では、第一主表面の形状が、局所加工後に凹状となるように局所加工することが好ましく、基板1-1では、そのように局所加工を実施した。
【0059】
なお、ガラス基板の主表面の形状の測定では、第一主表面及び第二主表面の形状は、いずれも、測定器を、第一主表面及び第二主表面に正対させて、ガラス基板の外方から測定される。
【0060】
【0061】
その結果、ガラス基板のいずれにおいても、2回目の局所加工後の表面に対する、予測された仕上げ研磨後の主表面の形状の平坦度(TIR)が100nm以下であったので、仕上げ研磨を実施した。
【0062】
仕上げ研磨は、2段階で実施した。まず、局所加工で発生したキズを除去するため、ガラス基板10枚を、スウェードタイプの軟質ポリシャを適用した両面研磨装置のキャリアにセットし、コロイダルシリカ砥粒の研磨液を用いて、第一主表面及び第二主表面を超精密研磨し、超精密研磨の後、KOHを含む洗浄液で洗浄してシリカナノ粒子を除去した。次に、ガラス基板10枚を、スウェードタイプの軟質ポリシャを適用した両面研磨装置のキャリアにセットし、コロイダルシリカ砥粒の研磨液を用いて、超精密研磨とは異なる条件で、第一主表面及び第二主表面を最終研磨した。最終研磨後のガラス基板は、KOHを含む洗浄液で洗浄してシリカナノ粒子を除去し、乾燥後、表面形状測定装置(UltraFlat、Tropel社製)にて、第一主表面及び第二主表面の形状を測定した。
【0063】
次に、仕上げ研磨後の表面の形状について、ガラス基板の主表面の形状を、上記の平坦度(TIR)として評価する方法と同様の方法で、平坦度(TIR)として評価した。結果を表2に示す。また、基板1-1について、仕上げ研磨後の第一主表面及び第二主表面の形状(仕上げ加工後形状)を
図5に示す。
【0064】
【0065】
以上の結果から、把握された主表面の形状の変化を適用して予測した仕上げ研磨工程後の第一主表面及び第二主表面の形状の平坦度(TIR)と、仕上げ研磨後の実際の第一主表面及び第二主表面の形状の平坦度(TIR)とに、大きな差はなく、局所加工後に予測した平坦度(TIR)を局所加工後の主表面の形状の可否の判定に適用できることがわかる。また、この例で得られたフォトマスクブランクス用基板は、仕上げ研磨後の平坦度(TIR)が、いずれも50nm前後であることから、露光用マスクを用いた露光、特に、EUVLによる露光において、露光機に吸着させて保持したときに基板の主表面が高平坦な形状となる露光用マスクを与えるマスクブランクス用基板として良好に用いることができる。