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特開2023-167027紫外線硬化型の液状樹脂の硬化判断方法及び保護部材形成装置
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  • 特開-紫外線硬化型の液状樹脂の硬化判断方法及び保護部材形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167027
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】紫外線硬化型の液状樹脂の硬化判断方法及び保護部材形成装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231116BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20231116BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
B24B41/06 L
B24B49/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077831
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】右山 芳国
(72)【発明者】
【氏名】生島 充
(72)【発明者】
【氏名】谷山 優太
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 良典
【テーマコード(参考)】
3C034
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA07
3C034BB71
3C034BB75
3C034BB93
3C034CA22
3C034CA30
3C034DD10
5F057AA12
5F057AA20
5F057CA11
5F057DA11
5F057EC17
5F057FA13
5F057GA12
5F057GB02
5F057GB20
(57)【要約】
【課題】紫外線硬化型の液状樹脂が硬化したことを確実に判断できる紫外線硬化型の液状樹脂の硬化判断方法を提供する。
【解決手段】ウェーハ(W)の一方の面(Wb)の全面に押し広げた紫外線硬化型の液状樹脂(31)に紫外線(UV)を照射して、液状樹脂が硬化したと判断する紫外線硬化型の液状樹脂の硬化判断方法であって、液状樹脂に紫外線を照射して硬化させる際に、液状樹脂で紫外線が反射した蛍光(SL)の波長が予め設定した閾値を超えたら液状樹脂が硬化したと判断するようにした。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの一方の面全面に押し広げた紫外線硬化型の液状樹脂に紫外線を照射して、該液状樹脂が硬化したと判断する紫外線硬化型の液状樹脂の硬化判断方法であって、
該液状樹脂に紫外線を照射して該液状樹脂を硬化させる際に、該液状樹脂で該紫外線が反射した蛍光の波長が予め設定した閾値を超えたら該液状樹脂が硬化したと判断する紫外線硬化型の液状樹脂の硬化判断方法。
【請求項2】
ウェーハの一方の面よりも大きい面積のシートとウェーハとの間で紫外線硬化型の液状樹脂をウェーハの一方の面全面に押し広げた後、紫外線を照射して硬化させた樹脂と該シートとからなる保護部材を形成する保護部材形成装置であって、
該シート側から該液状樹脂に紫外線を照射する紫外線照射部と、該液状樹脂で紫外線が反射した蛍光を受光する受光部と、該受光部が受光した波長が予め設定した閾値を超えたら該液状樹脂が硬化したと判断する判断部と、を備える保護部材形成装置。
【請求項3】
該受光部は、カメラであって、
該判断部は、該カメラが撮像した撮像画のRGB値のうちのG値が予め設定した閾値を超えたら該液状樹脂が硬化したと判断する請求項2記載の保護部材形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型の液状樹脂の硬化判断方法、及び保護部材形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハに研削加工等を行う際に、ウェーハの一方の面全面を保護する保護部材を形成する。保護部材を形成する保護部材形成装置は、テーブルに載置したシートの上に液状樹脂を供給し、テーブルの上方でウェーハを保持した保持部を下降させ、保持部が保持したウェーハで液状樹脂を押し広げた後、液状樹脂を硬化させて、ウェーハの一方の面全面に樹脂とシートとからなる保護部材を形成している。
【0003】
保護部材を形成する液状樹脂として、紫外線硬化型樹脂が知られている。ウェーハの一方の面とシートとの間で紫外線硬化型樹脂を押し広げた状態で、予め設定した時間にて紫外線を照射することにより、紫外線硬化型樹脂を硬化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-061333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外線硬化型の液状樹脂を用いてウェーハの一方の面に保護部材を形成する場合、シート上に供給される液状樹脂の量等に基づいて、液状樹脂の硬化に必要な紫外線の照射時間を予め設定し、設定された所定の照射時間で紫外線を照射するように管理する。しかし、紫外線を照射する紫外線照射部の劣化や、液状樹脂のロット違いによって、硬化の進行度合いにばらつきが生じ、紫外線を所定時間照射しても液状樹脂が十分に硬化されていない部分が存在するという問題があった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、紫外線硬化型の液状樹脂が硬化したことを確実に判断できる紫外線硬化型の液状樹脂の硬化判断方法及び保護部材形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ウェーハの一方の面全面に押し広げた紫外線硬化型の液状樹脂に紫外線を照射して、該液状樹脂が硬化したと判断する紫外線硬化型の液状樹脂の硬化判断方法であって、該液状樹脂に紫外線を照射して該液状樹脂を硬化させる際に、該液状樹脂で該紫外線が反射した蛍光の波長が予め設定した閾値を超えたら該液状樹脂が硬化したと判断する。
【0008】
本発明の一態様は、ウェーハの一方の面よりも大きい面積のシートとウェーハとの間で紫外線硬化型の液状樹脂をウェーハの一方の面全面に押し広げた後、紫外線を照射して硬化させた樹脂と該シートとからなる保護部材を形成する保護部材形成装置であって、該シート側から該液状樹脂に紫外線を照射する紫外線照射部と、該液状樹脂で紫外線が反射した蛍光を受光する受光部と、該受光部が受光した波長が予め設定した閾値を超えたら該液状樹脂が硬化したと判断する判断部と、を備える。
【0009】
該受光部は、カメラであって、該判断部は、該カメラが撮像した撮像画のRGB値のうちのG値が予め設定した閾値を超えたら該液状樹脂が硬化したと判断してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の紫外線硬化型の液状樹脂の硬化判断方法及び保護部材形成装置によれば、紫外線硬化型の液状樹脂で反射した蛍光に基づいて硬化の判断を行うので、液状樹脂が硬化したことを確実に判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の保護部材形成装置を示す斜視図である。
図2】保護部材形成装置の一部の断面図である。
図3】保護部材形成装置におけるシート搬入工程を示す説明図である。
図4】保護部材形成装置における液状樹脂供給工程を示す説明図である。
図5】保護部材形成装置におけるウェーハ保持工程を示す説明図である。
図6】保護部材形成装置における押し広げ工程を示す説明図である。
図7】保護部材形成装置における硬化工程を示す説明図である。
図8】ウェーハにおいて液状樹脂の硬化を判断する領域を示す平面図である。
図9】保護部材形成装置における硬化工程の変形例を示す説明図である。
図10】硬化工程の変形例における液状樹脂の硬化判断方法を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本実施形態に係る紫外線硬化型の液状樹脂の硬化判断方法及び保護部材形成装置について説明する。図1及び図2は、本実施形態に係る保護部材形成装置の全体と一部を示している。図3から図7は、保護部材形成装置で行う各工程を説明する図である。図8は、ウェーハにおいて液状樹脂の硬化を判断する領域を示す図である。図9は、保護部材形成装置における硬化工程の変形例を示す図である。図10は、硬化工程の変形例における液状樹脂の硬化判断方法を説明するグラフである。
【0013】
各図に示すX軸方向、Y軸方向、Z軸方向は互いに垂直な関係にある。X軸方向とY軸方向は略水平な方向であり、Z軸方向は上下方向(垂直方向)である。各図において、X軸方向を示す両矢線のうち、Xの文字が付されている側を左方とし、Xの文字が付されていない側を右方とする。Y軸方向を示す両矢線のうち、Yの文字が付されている側を前方とし、Yの文字が付されていない側を後方とする。Z軸方向を示す両矢線のうち、Zの文字が付されている側を上方とし、Zの文字が付されていない側を下方とする。
【0014】
図1に示す保護部材形成装置1は、ウェーハWの一方の面の全面に押し広げられた液状樹脂31(図6参照)に外的刺激を付与して硬化させることによって保護部材を形成する装置の一例である。液状樹脂31は紫外線硬化型の樹脂であり、液状樹脂31を硬化させる外的刺激は紫外線の照射である。図1においては、保護部材形成装置1の外部筐体10を破線で示し、外部筐体10の内側の構成要素を透視した状態で表している。ウェーハWのうち、保護部材形成装置1での処理時に上側を向く面を上面Waとし、下側を向く面を下面Wbとする。
【0015】
詳細は後述するが、保護部材形成装置1では、保護部材形成ステージ16に載置したシート30上に液状樹脂31を供給して(図2図4図5参照)、ウェーハ保持部20に保持したウェーハWを、保護部材形成ステージ16の上方から液状樹脂31に押し付けるように動作する。シート30に向けてウェーハWの下面Wbが押し付けられることで、ウェーハWとシート30の間で液状樹脂31が押し広げられる(図6参照)。この状態で液状樹脂31に紫外線を照射して硬化させて、硬化した樹脂とシート30とによって保護部材32が形成される(図7参照)。
【0016】
このような一連の動作は、保護部材形成装置1を統括制御する制御部40(図1)による制御の下で行われる。以下に説明する各部の動作について、制御の主体が明記されていない場合は、制御部40から送られる制御信号によって動作が制御されているものとする。
【0017】
ウェーハWは、例えば、円柱状のシリコン等のインゴットから切り出した円板状のアズスライスウェーハである。なお、ウェーハWは、デバイス形成前のアズスライスウェーハに限らず、デバイス形成後のデバイスウェーハ等でもよい。
【0018】
保護部材形成装置1は、外部筐体10のX軸方向の一端側(左側の端部)に、カセット収容部11を備えている。カセット収容部11には上下2段の収容スペース111、112が形成されている。上段の収容スペース111には、保護部材32が形成される前の複数枚のウェーハWを収容する搬入側のカセットC1が載置される。下段の収容スペース112には、保護部材32を形成した後のウェーハWを収容する搬出側のカセットC2が載置される。カセットC1とカセットC2にはそれぞれ複数枚のウェーハWを収容可能である。
【0019】
カセット収容部11のX軸方向の右側の位置には、仮置きテーブル13とシートカットテーブル14が設けられている。上側に仮置きテーブル13が位置し、下側にシートカットテーブル14が位置する。仮置きテーブル13には、保護部材32が形成される前のウェーハWの中心位置及び向きを検出するウェーハ検出部131が設けられている。シートカットテーブル14には、ウェーハWに貼着されたシート30をウェーハWの外形に沿って切断するシートカッター141が設けられている。
【0020】
仮置きテーブル13及びシートカットテーブル14に対してY軸方向の前方側に、各カセットC1、C2に対してウェーハWの搬入及び搬出を行う第1搬送機構12が設けられている。第1搬送機構12は、台座121上に支持されるロボットハンド122を備え、Y軸方向に延びる一対のガイドレール123に沿って台座121が移動可能に支持されている。台座121は、Y軸方向に延びるボールネジ124に対して螺合する螺合部(図示略)を備える。モータの駆動力によってボールネジ124を回転させると、台座121がY軸方向に移動する。
【0021】
第1搬送機構12は、Y軸方向への台座121の移動と、ロボットハンド122の動作とによって、カセット収容部11と仮置きテーブル13及びシートカットテーブル14との間でのウェーハWの搬送を行う。より詳しくは、第1搬送機構12は、保護部材32が形成される前のウェーハWを、収容スペース111内のカセットC1から搬出して仮置きテーブル13に載せることができる。また、第1搬送機構12は、保護部材32が形成された後のウェーハWを、シートカットテーブル14から搬出して、収容スペース112内のカセットC2に搬入することができる。
【0022】
保護部材形成装置1は、仮置きテーブル13及びシートカットテーブル14対してX軸方向の右側に基台15を備えている。基台15には、保護部材形成ステージ16が設けられている。保護部材形成ステージ16は、石英ガラス等の透光性材料からなり、円板状に形成されている。保護部材形成ステージ16の上面は、シート30を載置するための平坦なシート支持面161になっている。
【0023】
保護部材形成ステージ16のシート支持面161上にシート30を搬送して載置するシート搬送機構17を備える。シート搬送機構17は、ロール状に巻かれたシート30が支持されるシート供給部171と、X軸方向に移動可能なアーム172と、アーム172の側面に取り付けられたクランプ部173と、を備えている。シート搬送機構17では、シート供給部171に支持されたロール状のシート30をクランプ部173によって保持し、アーム172をX軸方向に移動させてシート30を引っ張ることによって、保護部材形成ステージ16のシート支持面161上にシート30を載置する。
【0024】
シート30は透光性材料からなる。シート30として、例えば、ポリエチレンテレフタレート等で形成されたフィルム等を用いることができる。なお、これ以外の材質からなるシート30を用いてもよい。
【0025】
保護部材形成ステージ16のシート支持面161には、複数の吸引孔(図示略)が形成されている。吸引孔は吸引源162(図2参照)に接続している。吸引源162を動作させて吸引孔に吸引力を作用させることにより、シート支持面161上に載置されたシート30がシート支持面161に吸引保持される。
【0026】
保護部材形成ステージ16の近傍には、シート支持面161上のシート30の上面に所定量の液状樹脂31を供給する樹脂供給機構18が設けられている。樹脂供給機構18は、基台15内に設けられたタンク184に接続するディスペンサ181と、ディスペンサ181から延びる接続管182が接続する樹脂供給ノズル183とを備える。樹脂供給ノズル183はZ軸方向に向く軸を中心として旋回可能であり、保護部材形成ステージ16の上方に樹脂供給ノズル183を位置付ける状態と、保護部材形成ステージ16の上方から樹脂供給ノズル183を退避させる状態とにさせることができる。
【0027】
タンク184に貯留された液状樹脂31がディスペンサ181によって接続管182を経由して送られ、樹脂供給ノズル183から下方に向けて液状樹脂31が滴下される。樹脂供給ノズル183からの液状樹脂31の供給量は、ディスペンサ181によって調整可能である。
【0028】
保護部材形成ステージ16に対してX軸方向の左側の位置に、基台15から上方へ突出するコラム19が設けられている。コラム19には、ウェーハ保持部20をZ軸方向へ移動させて、保護部材形成ステージ16に対して接近及び離間させる昇降機構21が設けられている。昇降機構21は、Z軸方向に延びる一対のガイドレール211と、一対のガイドレール211に対してZ軸方向に移動可能に支持された昇降テーブル212と、Z軸方向に延びて昇降テーブル212の螺合部215(図2参照)に螺合するボールネジ213(図2参照)と、を備えている。モータ214の駆動力によってボールネジ213を回転させると、一対のガイドレール211に沿って昇降テーブル212がZ軸方向に移動する。ボールネジ213を第1の方向へ回転させると昇降テーブル212が下方へ移動し、ボールネジ213を第2の方向へ回転させると昇降テーブル212が上方へ移動する。
【0029】
ウェーハ保持部20は昇降テーブル212により支持されており、昇降テーブル212に伴ってウェーハ保持部20がZ軸方向へ移動される。ウェーハ保持部20は円板状の保持テーブル201を備えている。図2図5から図7に示すように、保持テーブル201の下面側には、円板状の多孔質部材202が設けられている。多孔質部材202の下面は、保護部材形成ステージ16の上方に位置するウェーハ保持面203である。ウェーハ保持面203は、保護部材形成ステージ16のシート支持面161と略並行な面である。
【0030】
図2に示すように、多孔質部材202は吸引路204を介して吸引源205に連通している。吸引源205を動作させて多孔質部材202に吸引力を付与することにより、ウェーハ保持面203でウェーハWの上面Waを吸引保持することができる。
【0031】
ウェーハ保持部20のウェーハ保持面203にウェーハWの上面Waを吸引保持した状態(図2)で、昇降機構21によってウェーハ保持部20を下降させると、シート30上に供給された液状樹脂31にウェーハWの下面Wbが接触して、ウェーハWを下降させる力によって液状樹脂31が押し広げられる。
【0032】
図5から図7に示すように、ウェーハ保持部20は荷重検知部22を備えている。保持テーブル201の上面側に位置を異ならせて複数の荷重センサ221が設けられており、これらの荷重センサ221によって荷重検知部22が構成される。荷重検知部22は、複数の荷重センサ221の出力によって、ウェーハWの下面Wbに加わる垂直方向(Z軸方向)の荷重を検知することができる。
【0033】
複数の荷重センサ221は、ウェーハWの下面Wbに加わる荷重を適切に検知することが可能な任意の位置に設けられる。例えば、保持テーブル201の中心を通ってZ軸方向へ延びる仮想の中心軸を囲むように、3つの荷重センサ221が設けられる。
【0034】
保護部材形成ステージ16の下部には、シート支持面161上のシート30に滴下された液状樹脂31に紫外線を照射して硬化させる紫外線照射部23が設けられている。紫外線照射部23は、紫外線UV(図7)を発することが可能な複数の紫外線光源231を備えており、透光性を有する保護部材形成ステージ16及びシート30を通じて液状樹脂31に紫外線UVを照射して硬化させる。硬化の進行する液状樹脂31が紫外線UVの照射を受けると、紫外線UVを反射して蛍光SLを発する。
【0035】
また、保護部材形成ステージ16の下部には、受光部24が設けられている。受光部24は、液状樹脂31から発した蛍光SLを受光することができる。受光部24は、受光した光の波長(色)を識別可能な測色センサ等で構成される。受光部24は、保護部材形成ステージ16の径方向の中央の下部に位置している。
【0036】
図1に示すように、基台15に対してY軸方向の前方側に、第2搬送機構25が設けられている。第2搬送機構25は、台座251上に支持されるロボットハンド252を備え、X軸方向に延びる一対のガイドレール253に沿って台座251が移動可能に支持されている。台座251は、X軸方向に延びるボールネジ254に対して螺合する螺合部(図示略)を備える。モータの駆動力によってボールネジ254を回転させると、台座251がX軸方向に移動する。
【0037】
第2搬送機構25は、X軸方向への台座251の移動と、ロボットハンド252の動作とによって、仮置きテーブル13及びシートカットテーブル14とウェーハ保持部20との間でのウェーハWの搬送を行う。より詳しくは、第2搬送機構25は、保護部材32が形成される前のウェーハWを仮置きテーブル13から受け取って搬送し、ウェーハ保持部20の保持テーブル201に受け渡すことができる。また、第2搬送機構25は、保護部材32が形成された後のウェーハWをウェーハ保持部20の保持テーブル201から回収して、シートカットテーブル14へ搬送することができる。
【0038】
保護部材形成装置1は、制御部40(図1)によって統括的に制御される。制御部40は、各種処理を実行するプロセッサと、各種パラメータやプログラム等を記憶する記憶部(メモリ)と、によって構成されている。制御部40の記憶部には、保護部材形成装置1の制御プログラムの一部として、後述する紫外線硬化型の液状樹脂の硬化判断方法を実行するためのプログラムが記憶されている。
【0039】
制御部40の機能ブロックの1つとして判断部41が含まれる。紫外線照射部23から照射した紫外線UVを受けた液状樹脂31が発した蛍光SLを受光部24が受光する。判断部41は、受光部24で受光した蛍光SLに基づいて、後述する液状樹脂の硬化判断を行う。なお、判断部41の機能は、制御部40を構成するプロセッサやメモリ等の動作によって実現されるものであり、判断部41が独立した電子部品で構成されていることを意味しているのではない。また、図1では、判断部41と受光部24との間の接続関係のみを模式的に示しているが、制御部40は、受光部24以外の保護部材形成装置1の各部に対しても、信号の送受が可能に接続されている。
【0040】
以上のように構成された保護部材形成装置1による保護部材の形成について説明する。
【0041】
図3は、シート搬入工程を示している。シート搬入工程では、シート搬送機構17において、クランプ部173でシート30の端部をクランプしてアーム172をX軸方向へ移動させ、シート供給部171からシート30を引き出して保護部材形成ステージ16側へ搬送する。引き出されたシート30は所定の長さでカットされる。シート30を保護部材形成ステージ16のシート支持面161上に載置して、吸引源162の動作によってシート支持面161の吸引孔(図示略)に吸引力を作用させてシート30を吸引保持する。これにより、シート30はシート支持面161に密着する。この段階でのシート支持面161上のシート30の面積は、ウェーハWの下面Wbの面積よりも大きい。
【0042】
図4は、液状樹脂供給工程を示している。液状樹脂供給工程では、先のシート搬入工程によってシート支持面161上に載置されたシート30の上方に、樹脂供給機構18の樹脂供給ノズル183を位置付ける。そして、ディスペンサ181を制御して樹脂供給ノズル183に液状樹脂31を送出し、樹脂供給ノズル183からシート30に向けて液状樹脂31を滴下させる。樹脂供給ノズル183は保護部材形成ステージ16の中央付近の上方に位置付けられており、樹脂供給ノズル183から滴下された液状樹脂31は、ウェーハWの面積よりも狭い範囲でシート30の上面の中央付近に溜まった状態になる。
【0043】
制御部40は、ウェーハWの大きさ等の情報に基づいて、ウェーハWの下面Wbの全面に行き渡る量(所定量)の液状樹脂31を、樹脂供給機構18によってシート30へ供給させる。所定量の液状樹脂31の供給が完了したら、樹脂供給ノズル183を旋回動作させて保護部材形成ステージ16の上方から離脱させ、液状樹脂供給工程を完了する。
【0044】
図5は、ウェーハ保持工程によってウェーハ保持部20にウェーハWを保持させた状態を示している。ウェーハ保持工程では、第1搬送機構12によって、保護部材32を形成する前のウェーハWが、収容スペース111内のカセットC1から取り出されて、仮置きテーブル13に搬送される。仮置きテーブル13では、ウェーハ検出部131によって、ウェーハWの向きや中心が検出される。ウェーハWの向きや中心が検出されると、第2搬送機構25によって、ウェーハWがウェーハ保持部20まで搬送される。ウェーハ保持部20では、吸引源205を動作させて多孔質部材202に吸引力を作用させ、ウェーハ保持面203にウェーハWの上面Waを吸引して保持する。
【0045】
なお、ウェーハ保持工程の少なくとも一部を、シート搬入工程及び液状樹脂供給工程と並行して(同時に)行ってもよい。
【0046】
ウェーハ保持部20に保持されたウェーハWが、シート30上の液状樹脂31の上方に対向して位置する状態(図5)になったら、図6に示す押し広げ工程に進む。押し広げ工程では、昇降機構21でモータ214を動作させて昇降テーブル212及びウェーハ保持部20を所定の送り速度で下降させる。
【0047】
ウェーハ保持部20の下降によって、ウェーハWの下面Wbが保護部材形成ステージ16に接近して液状樹脂31に接触する。そして、ウェーハWの下面Wbによって液状樹脂31が押圧されて、液状樹脂31がウェーハWの径方向に押し広げられる。ウェーハWの下面Wbが接触する前の液状樹脂31はシート30の中央付近にまとまって位置しており(図5参照)、ウェーハWから押圧されることにより、液状樹脂31はウェーハWの外縁側に向けて広がる(図6参照)。
【0048】
ウェーハ保持部20を下降させてウェーハWの下面Wbによって液状樹脂31を押し広げるのに伴って、ウェーハWの下面Wbに加わるZ軸方向(垂直方向)の荷重(ウェーハWから液状樹脂31への押圧力の値)が増加する。液状樹脂31がウェーハWの下面Wbの全体まで行き渡って、ウェーハWの外縁から外側に液状樹脂31がはみ出る状態になると、上記の荷重が低下し始める。このような荷重の変化が、荷重検知部22における荷重センサ221を用いて検知される。
【0049】
荷重検知部22による検知結果(各荷重センサ221からの出力信号)は制御部40に入力される。制御部40は、荷重検知部22の検知結果を参照して、Z軸方向(垂直方向)の荷重の変化に応じて昇降機構21のモータ214の駆動を制御することで、ウェーハWの下面Wbの全体に(ウェーハWの外縁に達するまで)液状樹脂31を押し広げた状態にさせる。
【0050】
押し広げ工程が完了して、ウェーハWの下面Wbの全体を液状樹脂31が覆う状態になったら、図7に示す硬化工程に進む。硬化工程では、液状樹脂31を硬化させる強度の紫外線UVを、紫外線照射部23の紫外線光源231からシート支持面161に向けて照射する。紫外線光源231から発した紫外線UVは、透光性を有する保護部材形成ステージ16及びシート30を透過して液状樹脂31に達し、紫外線硬化型樹脂である液状樹脂31を硬化させる。液状樹脂31が十分に硬化したと判断される状態になったら、紫外線照射部23からの紫外線UVの照射を終了する。
【0051】
液状樹脂31の硬化を判断する方法について説明する。紫外線照射部23を構成する複数の紫外線光源231はLED等であり、波長356nmの紫外線UVを発する。紫外線照射部23から照射された紫外線UVを液状樹脂31に当てると、液状樹脂31が蛍光SLを発する。蛍光SLは、シート30及びシート支持面161を通って保護部材形成ステージ16内を下方に進み、受光部24に入射する。
【0052】
液状樹脂31は、硬化前は透明度が高く、硬化が進むにつれて透明度、色、反射率等が変化する。そして、液状樹脂31の硬化の進行程度の違いによって、液状樹脂31が発する蛍光SLの色や強度が変化する。すなわち、液状樹脂31の硬化状態に応じて、蛍光SLの波長(色)や、蛍光SLの特定の波長での強度(色の階調)が変化する。
【0053】
硬化が完了した液状樹脂31に波長356nmの紫外線UVを当てた場合の蛍光SLの波長を示す閾値が予め設定されており、制御部40の記憶部に当該閾値が記憶されている。
【0054】
硬化工程において、受光部24は蛍光SLを継続的に受光する。そして、受光部24で受光した蛍光SLの波長が、予め記憶されている閾値を超えると、判断部41は、液状樹脂31の硬化が完了したと判断する。
【0055】
紫外線硬化型の液状樹脂には複数の種類があり、同じ波長の紫外線UVを照射した場合に、液状樹脂の種類によって、硬化状態で発する蛍光SLの波長が異なる。例えば、第1の種類の液状樹脂31では、硬化が完了した状態で波長356nmの紫外線UVを当てると、波長430nmの蛍光SLを発する。第2の種類の液状樹脂31では、硬化が完了した状態で波長356nmの紫外線UVを当てると、波長450nmの蛍光SLを発する。
【0056】
第1の種類の液状樹脂31を用いる場合には、波長430nmを閾値として設定する。そして、硬化工程において受光部24で受光した蛍光SLについて、閾値である波長430nmを超えると、判断部41は液状樹脂31の硬化が完了したと判断する。第2の種類の液状樹脂31を用いる場合には、波長450nmを閾値として設定する。そして、硬化工程において受光部24で受光した蛍光SLについて、閾値である波長450nmを超えると、判断部41は液状樹脂31の硬化が完了したと判断する。以上の硬化完了の判断が判断部41によって行われると、制御部40は、紫外線照射部23からの紫外線UVの照射を終了させる。
【0057】
制御部40は、蛍光SLの波長が閾値を超えたら直ちに紫外線UVの照射を終了させてもよいし、蛍光SLの波長が閾値を超えてから所定の時間を経過した後で紫外線UVの照射を終了させてもよい。
【0058】
なお、上記の閾値(波長430nm、波長450nm)は一例であり、液状樹脂31の種類やロット等の違いによって、適した波長の閾値を設定する。
【0059】
図8は、ウェーハWにおいて、液状樹脂31の硬化を判断する領域を示す平面図である。押し広げ工程で押し広げられた液状樹脂31の外周縁311は、ウェーハWの外周縁Wcよりも外側に広がっている。紫外線照射部23は、円板状のウェーハWのうち半分の領域に紫外線UVを照射する第1紫外線照射ユニット232と、ウェーハWのうち残り半分の領域に紫外線UVを照射する第2紫外線照射ユニット233と、によって構成されている。第1紫外線照射ユニット232と第2紫外線照射ユニット233はそれぞれ、平面的に分散配置した複数個の紫外線光源231を含んでいる。
【0060】
第1紫外線照射ユニット232で紫外線UVを照射する範囲内に第1判断領域50を設定し、第2紫外線照射ユニット233で紫外線UVを照射する範囲内に第2判断領域51を設定する。第1判断領域50と第2判断領域51の位置、大きさ、形状は、受光部24で受光可能な範囲に対応して適宜設定される。本実施形態では、第1判断領域50と第2判断領域51はそれぞれ矩形の領域であり、ウェーハWの中心に関して第1判断領域50と第2判断領域51が略対称の位置に設定されている。
【0061】
第1判断領域50と第2判断領域51は、ウェーハWの径方向でやや中心寄りに位置している。これにより、保護部材形成ステージ16の径方向の中央の下部に設けた受光部24で、第1判断領域50と第2判断領域51からの蛍光SLを受光することができる。
【0062】
第1判断領域50で液状樹脂31が発した蛍光SLと、第2判断領域51で液状樹脂31が発した蛍光SLは、受光部24で受光される。そして、判断部41による上記の硬化判断を、各判断領域50、51について行う。制御部40は、各判断領域50、51のうち、判断部41により硬化が完了したと判断される判断領域に対応する紫外線照射ユニットからの紫外線UVの照射を停止させる。
【0063】
液状樹脂31の硬化がウェーハWの下面Wb全面で均等に進行した場合には、第1判断領域50からの蛍光SLと、第2判断領域51からの蛍光SLとが、同時期に上記の波長の閾値を超える。よって、第1紫外線照射ユニット232からの紫外線UVの照射と、第2紫外線照射ユニット233からの紫外線UVの照射が、同じタイミングで停止される。
【0064】
第1紫外線照射ユニット232からの紫外線照射を受ける部分と、第2紫外線照射ユニット233からの紫外線照射を受ける部分とで、液状樹脂31の硬化の進行の程度が異なる場合には、第1判断領域50からの蛍光SLが上記の波長の閾値を超えるタイミングと、第2判断領域51からの蛍光SLが上記の波長の閾値を超えるタイミングとが異なる。制御部40は、判断部41の判断結果に基づいて、第1紫外線照射ユニット232からの紫外線照射と、第2紫外線照射ユニット233からの紫外線照射を、それぞれに適したタイミングで停止させる。
【0065】
例えば、第1判断領域50が先に硬化完了したと判断部41が判断した場合に、制御部40は、第1紫外線照射ユニット232からの紫外線UVの照射を停止させ、第2紫外線照射ユニット233からの紫外線UVの照射を継続させる。その後、第2判断領域51が硬化完了したと判断部41が判断した段階で、制御部40は、第2紫外線照射ユニット233からの紫外線UVの照射を停止させる。
【0066】
複数の判断領域50、51を設定して、各判断領域50、51で個別に液状樹脂31の硬化判断を行うことにより、硬化判断の精度を高めて、硬化工程を最適化することができる。例えば、第1紫外線照射ユニット232と第2紫外線照射ユニット233のいずれかが劣化して紫外線UVの照射性能が低下した場合に、劣化した紫外線照射ユニットでは通常よりも紫外線照射時間を長くして液状樹脂31を確実に硬化させ、劣化していない紫外線照射ユニットでは通常の紫外線照射時間にして無駄な電力消費を防ぐことができる。
【0067】
また、複数の判断領域50、51に分けて判断することで、ウェーハWの下面Wbの面積の範囲内での液状樹脂31の硬化進捗の偏り等の情報を得ることができる。
【0068】
なお、図8の例では、矩形の第1判断領域50と矩形の第2判断領域51という2つの領域を設定しているが、判断領域の数、位置、形状は適宜選択可能である。
【0069】
例えば、ウェーハWを4分割した範囲に対して4つの紫外線照射ユニットによって紫外線照射を行うタイプの装置において、液状樹脂31の硬化判断を行う判断領域を4つに設定してもよい。逆に、複数の判断領域に分けずに1つの判断領域のみで液状樹脂31の硬化判断を行うことも可能である。
【0070】
また、判断領域を矩形以外の形状にすることも可能である。例えば、判断領域を円形等にしてもよい。
【0071】
本実施形態では、第1判断領域50からの蛍光SLと第2判断領域51からの蛍光SLを1つの受光部24で受光している。受光部24の数が少ない構成の場合、紫外線照射部23における紫外線光源231の配置に影響を及ぼしにくいという利点がある。しかし、複数の判断領域に対応して複数の受光部を設ける構成を排除するものではない。例えば、第1判断領域50からの蛍光SLを受光する第1受光部と、第2判断領域51からの蛍光SLを受光する第2受光部とを備えてもよい。
【0072】
図9は、保護部材形成装置1における硬化工程の変形例を示している。この変形例では、保護部材形成ステージ16の下部に設ける受光部として、シート支持面161の方向を撮像するカメラ26を備えている。カメラ26はレンズと撮像素子を備えており、レンズに入射した光を撮像素子で受光する。カメラ26のレンズは超広角レンズであり、シート支持面161上のシート30に押し広げられた液状樹脂31の外周縁311(図8参照)までの範囲や、ウェーハWの下面Wbの全体を、シート支持面161の下方側から撮像可能である。カメラ26の撮像素子は受光面を構成する多数の画素を有しており、光の三原色である青色(B)、緑色(G)、赤色(R)の3つの色成分を画素毎に検出する。
【0073】
カメラ26の撮像素子の各画素で受光した光が光電変換されて各色の階調を表す信号が生成され、受光面全体の撮像画を表す画像データが撮像画記憶部27に記憶される。カメラ26の撮像素子で検出されるR、G、Bの3つの色成分は、それぞれが0から255までの256階調で出力及び処理される。つまり、R、G、Bの各チャンネルがそれぞれ8ビット(256階調)を持つ24ビットのフルカラー画像として画像データが生成されて、撮像画記憶部27に記憶される。判断部41は、撮像画記憶部27に記憶された画像データに基づいて、液状樹脂31の硬化判断を行う。
【0074】
図10は、蛍光SLを受光したカメラ26で撮像して撮像画記憶部27に記憶された撮像画のRGB値のうちのG値の変化を示したグラフである。このグラフの横軸は時間経過を示し、縦軸はG値の階調(255が最大)を示している。縦軸の所定位置に、液状樹脂31の硬化完了の判断基準となる閾値TGを設定している。本実施形態では閾値TGを「212」に設定している。
【0075】
図9に示す硬化工程に先立って、硬化が完了した液状樹脂31が波長356nmの紫外線UVを受けて発する蛍光SL(撮像画)のG値が予め測定されており、当該測定値が閾値TGとして制御部40の記憶部に記憶されている。
【0076】
硬化工程において、紫外線UVの照射時間の経過に伴って液状樹脂31の硬化が進行し、液状樹脂31の硬化の進行に伴って蛍光SLの色が変化する。蛍光SLの色変化によって、撮像画のG値が図10のグラフのように変化する。そして、撮像画のG値が閾値TGを超えると(硬化判断ポイントVG)、判断部41は、液状樹脂31の硬化が完了したと判断する。
【0077】
液状樹脂31の硬化の判断基準としてG値を用いている理由を説明する。硬化工程において、図10の横軸方向で所定の時間経過毎に設定した4つの検出ポイントPa、Pb、Pc、Pdで、カメラ26による撮像画のRGBデータを取得したところ、RGBの階調の値は次のようになった。
(1)第1検出ポイントPa
R値:120、G値:187、B値:237
(2)第2検出ポイントPb
R値:122、G値:196、B値:229
(3)第3検出ポイントPc
R値:129、G値:236、B値:255
(4)第4検出ポイントPd
R値:138、G値:241、B値:255
【0078】
これらの数値から、蛍光SLは、青色と緑色の割合が多く、青色と緑色を加法混色したシアン系統の色の光であることが分かる。そして、G値に比べてB値の方が高いことから、蛍光SLの色は青味が強い。B値は、G値よりも早いタイミングで最大階調(255)に達しており、硬化工程の進行途中(第2検出ポイントPbと第3検出ポイントPcの間)で階調の変化が検出されなくなる。R値は、G値に比べて階調の変化幅が小さく、全般に低い階調の値で推移しているので、階調変化を高い精度で検出しにくい。一方、G値は、第1検出ポイントPaから第4検出ポイントPdにかけて、最大階調(255)に達することなく階調が適度に変化しており、その変化幅も大きい。従って、RGBの3色のうちG値の変化が最も精密に検知しやすく、硬化判断の精度や信頼性の点で有利である。
【0079】
硬化工程において、カメラ26で撮像した撮像画を撮像画記憶部27に継続的に記憶させ、判断部41は撮像画のG値の変化を監視する。このG値の変化を表したものが、図10のグラフである。判断部41は、G値が閾値TGを超えたか否かを判断し、G値が閾値TGを超えた硬化判断ポイントVGで、液状樹脂31の硬化が完了したと判断する。判断部41の当該判断を受けて、制御部40は、紫外線照射部23からの紫外線UVの照射を終了させる。
【0080】
制御部40は、撮像画のG値が閾値TGを超えたら直ちに紫外線UVの照射を終了させてもよいし、G値が閾値TGを超えてから所定の時間を経過した後で紫外線UVの照射を終了させてもよい。
【0081】
なお、液状樹脂31の種類やロット等の違いによって、硬化完了状態での蛍光SLの色味が異なる場合があるので、液状樹脂31の違いに応じて適した閾値TGを設定する。上記の閾値TGの値(212)はあくまでも一例である。
【0082】
また、蛍光SLの色味によっては、撮像画のG値ではなく、B値あるいはR値を基準として硬化判断を行うことが適している場合もある。つまり、液状樹脂31の硬化が進行するにつれて、階調の変化を最も検出しやすい色を判断基準として用いればよい。従って、撮像画のG値以外を硬化の判断基準とすることを排除するものではない。
【0083】
カメラ26で撮像した撮像画に基づいて液状樹脂31の硬化判断を行う形態においても、図8のように複数の判断領域50、51に分けて硬化判断を行うことができる。カメラ26はウェーハWの下面Wb全面を撮影可能であるため、カメラ26で撮影可能な範囲の一部として第1判断領域50や第2判断領域51を設定できる。
【0084】
また、カメラ26による撮影範囲の広さと領域選択の自由度の高さを活かして、第1判断領域50や第2判断領域51以外の判断領域を設定することもできる。一例として、ウェーハWの中央領域、外周近くの領域、中央と外周の中間領域、の3つの領域を判断領域にしてもよい。
【0085】
あるいは、複数の判断領域に分けずに、カメラ26による撮影範囲に含まれる1つの判断領域のみで硬化判断を行うことも可能である。この場合、ウェーハWの下面Wbのうち特定の一部だけを判断領域としてもよいし、ウェーハWの下面Wb全面を判断領域に含めてもよい。
【0086】
以上のようにして、図7又は図8に示す硬化工程において、判断部41によって液状樹脂31における硬化判断を行う。液状樹脂31が硬化すると、硬化した状態の樹脂(元の液状樹脂31)とシート30とによって、ウェーハWの下面Wbを覆う保護部材32が形成される。保護部材32の形成が完了したら、吸引源162の動作を停止させて、保護部材形成ステージ16のシート支持面161へのシート30の吸引保持を解除する。
【0087】
続いて、昇降機構21でモータ214を動作させて昇降テーブル212及びウェーハ保持部20を上昇させ、保護部材32を形成済みのウェーハWを、ウェーハ保持部20から第2搬送機構25のロボットハンド252に受け渡す。この受け渡しの際に、ウェーハ保持部20におけるウェーハ保持面203と吸引源205の連通を遮断して、ウェーハ保持部20によるウェーハWの吸引保持を解除する。具体的には、吸引路204に設けた開閉バルブ(図示略)を閉じたり、吸引源205の動作を停止したりすることで、ウェーハ保持面203に吸引力が作用しなくなる。ウェーハ保持部20側の吸引保持が解除されると、ウェーハ保持部20の下方に位置させたロボットハンド252へのウェーハWの受け渡しが可能になる。
【0088】
第2搬送機構25は、ウェーハ保持部20から受け渡されたウェーハWをシートカットテーブル14へ搬送する。シートカッター141を用いて、シートカットテーブル14に載置されたウェーハWの外形に沿って余分なシート30が切断される。
【0089】
続いて、第1搬送機構12によって、ウェーハWがシートカットテーブル14からカセット収容部11に搬送されて、収容スペース112内のカセットC2に収容される。
【0090】
以上のようにして、保護部材形成装置1でのウェーハWに対する保護部材32の形成が完了する。保護部材32が形成されたウェーハWは、保護部材形成装置1とは別の加工装置へ搬送されて加工される。
【0091】
例えば、ウェーハWは研削装置へ搬送されて、保護部材32とは反対側の面(上面Wa)が研削加工される。研削装置での研削加工の際に、保護部材32は研削装置の保持テーブルに押し付けられる。所定量の厚みを有して硬化されている保護部材32によって、押し付けに耐えてウェーハWを安定して研削加工させることができる。
【0092】
以上に説明した通り、本実施形態における紫外線硬化型の液状樹脂の硬化判断方法及び保護部材形成装置では、液状樹脂31が硬化する際に、透明度や色等の光学的特性が変化することに着目して、紫外線UVを照射された液状樹脂31が発する蛍光SLを受光する受光部24やカメラ26を備え、蛍光SLの波長や撮像画のG値が予め設定した閾値を超えたら、液状樹脂31が硬化したと判断するようにした。
【0093】
このように、紫外線照射部23による紫外線UVの照射時間の管理だけに依存せずに、実際の液状樹脂31の硬化状況に基づいた蛍光SLの波長や撮像画の階調の変化を根拠として硬化の判断が行われるので、液状樹脂31の硬化不良(硬化不足)等を防いで、高い精度で確実に保護部材32を形成することができる。
【0094】
例えば、紫外線照射部23における第1紫外線照射ユニット232や第2紫外線照射ユニット233、あるいは個々の紫外線光源231が劣化した場合には、予め設定した時間で紫外線の照射を行っても、液状樹脂31の硬化が不十分になる可能性があるが、本実施形態によれば、判断部41による硬化判断が成立するまで紫外線の照射を継続(延長)させるように制御できる。
【0095】
また、液状樹脂31のロット違いによる硬化進行のばらつきがあっても、判断部41による硬化判断の成立を基準として硬化を行うことにより、このようなばらつきに対応して適切に硬化させることができる。例えば、実際には液状樹脂31が硬化しているにも関わらず、さらに紫外線UVの照射を行うと、タイムロスやエネルギーロスが生じてしまうが、本実施形態によれば、液状樹脂31の硬化後の無駄な紫外線UVの照射を防ぐことができ、液状樹脂31へ行う紫外線照射を最適化できる。つまり、硬化工程の作業効率が向上する。
【0096】
また、紫外線UVの照射開始から予め設定した時間を経過しても判断部41による硬化判断が完了しない(硬化を検知できない)場合には、紫外線照射部23の故障、液状樹脂31の不良や間違い(例えば、紫外線硬化型樹脂と熱硬化型樹脂の取り違え)、その他のセッティングエラー等が発生していると判断することも可能である。例えば、硬化工程で紫外線UVの照射開始からタイムカウントを行い、所定の時間を経過しても上記の閾値への到達が検知されない場合に、制御部40は、保護部材形成装置1が備えているディスプレイやスピーカーやランプ等の報知部を用いて、液状樹脂31の硬化工程において何らかのエラーが発生していることを作業者に報知させてもよい。
【0097】
なお、本発明の実施の形態は上記の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上説明したように、本発明の紫外線硬化型の液状樹脂の硬化判断方法及び保護部材形成装置は、紫外線硬化型の液状樹脂が硬化したことを確実に判断できるという効果を有し、ウェーハの一方の面に保護部材を形成する工程を含む半導体等の製造分野において特に有用である。
【符号の説明】
【0099】
1 :保護部材形成装置
13 :仮置きテーブル
14 :シートカットテーブル
16 :保護部材形成ステージ
17 :シート搬送機構
18 :樹脂供給機構
20 :ウェーハ保持部
21 :昇降機構
23 :紫外線照射部
24 :受光部
26 :カメラ(受光部)
27 :撮像画記憶部
30 :シート
31 :液状樹脂(紫外線硬化型の液状樹脂)
32 :保護部材
40 :制御部
41 :判断部
50 :第1判断領域
51 :第2判断領域
231 :紫外線光源
232 :第1紫外線照射ユニット
233 :第2紫外線照射ユニット
SL :蛍光
TG :閾値
UV :紫外線
VG :硬化判断ポイント
W :ウェーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10