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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167051
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】大豆飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/00 20210101AFI20231116BHJP
   A23C 11/10 20210101ALI20231116BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20231116BHJP
【FI】
A23L11/00 Z
A23C11/10
A23L2/38 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077914
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】植西 洋平
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】柑本 雅司
【テーマコード(参考)】
4B001
4B020
4B117
【Fターム(参考)】
4B001AC03
4B001AC20
4B001EC99
4B020LB18
4B020LC04
4B020LG01
4B020LK05
4B117LC02
4B117LG11
4B117LK13
(57)【要約】
【課題】糊料感がなく濃厚感が付与された、大豆飲料を提供すること。
【解決手段】大豆粉末を5~20質量%、及び増粘多糖類を含有し、20℃の粘度が200~1200mPa・sである大豆飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆粉末を5~20質量%、及び増粘多糖類を含有し、20℃の粘度が200~1200mPa・sである大豆飲料。
【請求項2】
固形分が5~25質量%である、請求項1に記載の大豆飲料。
【請求項3】
蛋白を1~10質量%含有する、請求項1又は2に記載の大豆飲料。
【請求項4】
前記増粘多糖類を0.05~0.25質量%含有する、請求項2に記載の大豆飲料。
【請求項5】
前記増粘多糖類がキサンタンガムを含有する、請求項4に記載の大豆飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆飲料に関する。より詳しくは、特定量の大豆粉末と、増粘多糖類とを含有し、特定の粘度を有する、濃厚感が付与された大豆飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
牛乳や豆乳は、蛋白質を豊富に含み、他の栄養素も摂れることから、日常的に良く飲まれている食品である。最近では消費者の嗜好の多様化に合わせて、牛乳や豆乳をベースに、フレーバーによる味付けや、特定の栄養素を強化した飲料も販売されている。また、近年の食のサステナビリティへの関心の高まりから、環境負荷を抑える選択肢として、豆乳などの大豆飲料に注目が集まっている。
これらの飲料は、濃厚感(コク味)を付与するために、固形分を増やすことや、増粘多糖類を添加して粘度を付けることも行われている。しかし、牛乳や豆乳に濃厚感を付与する場合、固形分を増やすと舌触りが悪くなったり、蛋白質の凝集が発生することや、増粘多糖類を添加しても粘度が付きにくく、添加量を増やすと多糖類特有の糊料感が発生し、風味が悪くなる問題があった。
【0003】
これまで、特定の粘度力価を有するネイティブジェランガムを配合し、適度な粘度で濃厚感が付与された飲料(特許文献1)等が報告されているが、豆乳などは粘度が付きにくく、糊料感が発生しやすい問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-291163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を鑑み、糊料感がなく濃厚感が付与された、大豆飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定量の大豆粉末を含有する大豆飲料について、増粘多糖類を含有させて特定の粘度を付与することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。具体的に、本発明は以下を提供する。
【0007】
(1)大豆粉末を5~20質量%、及び増粘多糖類を含有し、20℃の粘度が200~1200mPa・sである大豆飲料。
(2)固形分が5~25質量%である、(1)に記載の大豆飲料。
(3)蛋白を1~10質量%含有する、(1)又は(2)に記載の大豆飲料。
(4)前記増粘多糖類を0.05~0.25質量%含有する、(2)に記載の大豆飲料。
(5)前記増粘多糖類がキサンタンガムを含有する、(4)に記載の大豆飲料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、濃厚感に優れた大豆飲料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[大豆飲料]
本発明の大豆飲料は、大豆粉末を5~20質量%、及び増粘多糖類を含有し、20℃の粘度が200~1200mPa・sである流動性を有する液状物である。また、本発明の大豆飲料は、日本農林規格(JAS)の「豆乳」の区分からは除外される。本発明の大豆飲料は、瓶、紙パック、ペットボトル等の容器入り飲料だけでなく、粉末飲料や飲料サーバーで喫食直前に調製し、摂取される飲料も包含する。
【0010】
本発明の大豆飲料は、品温20℃における粘度が300~1100mPa・sが好ましく、400~1000mPa・sがより好ましく、500~1000mPa・sが最も好ましい。粘度が上記の範囲にあると、本発明の大豆飲料は、摂取時の濃厚感により優れる。ここで、本発明における「濃厚感」とは、本発明の大豆飲料を摂取した際に、本発明の大豆飲料と同様の配合で、20℃における粘度が200mPa・s未満のものと比べて、口腔内で大豆特有の風味が持続する感覚を指す。
なお、上記粘度が1200mPa・sよりも大きくなると、口腔内で付着感が発生し、濃厚感が弱くなる。本発明の大豆飲料の粘度は、品温20℃の該飲料について、B型粘度計を用いて、ローターNo.2、回転数20rpm、測定開始時から30秒後の値から求めることができる。
【0011】
[大豆粉末]
本発明に使用する大豆粉末は、大豆を脱皮し、繊維質(いわゆるオカラ)を除去することなく加熱乾燥し粉砕したものや、脱脂後に粉砕したものである。前記大豆粉末としては、市販品を使用することができ、加熱処理をした大豆粉末であっても、加熱処理をしていない大豆粉末であっても使用することができる。また、例えば、原料としてリポキシゲナーゼ欠失大豆のような特殊な大豆品種を使用した大豆粉末も使用することができる。また、脱脂大豆を使用することもできる。市販品として、例えば、日清オイリオグループ(株)製の商品「アルファプラスHS-600」や「ソーヤフラワーNSA」等が挙げられる。
【0012】
本発明の大豆飲料中の前記大豆粉末の含有量は、好ましくは6~18質量%、より好ましくは7~17質量%、最も好ましくは10~15質量%である。大豆粉末の含有量が上記の範囲にあると、摂取時の濃厚感により優れる。
【0013】
[固形分]
本発明の大豆飲料中の固形分は、好ましくは5~25質量%、より好ましくは6~22質量%、さらにより好ましくは7~20質量%、最も好ましくは9~17質量%である。固形分が上記の範囲にあると、所望の粘度を得やすい。本発明の大豆飲料中の固形分は、常法(乾燥減量法等)で求めることができる。
【0014】
[蛋白含量]
本発明の大豆飲料は、大豆粉末に由来する蛋白を含有する。本発明の大豆飲料中の前記蛋白の含有量は、好ましくは1~10質量%、より好ましくは1.5~9質量%、さらにより好ましくは2~8質量%、最も好ましくは3~7質量%である。蛋白の含有量が上記の範囲にあると、摂取した際の濃厚感により優れる。なお、上記蛋白の含有量が10質量%よりも多くなると、大豆飲料中の成分の沈殿や凝集が起こりやすくなる。前記蛋白含量は、ケルダール法により測定することができる。
本発明の大豆飲料は、蛋白の含有量が上記の範囲であれば、本発明の効果を損なわない限り、他の蛋白を含有しても良く、例えば、分離大豆蛋白、乳蛋白、コラーゲンペプチド等を含有してもよい。
【0015】
[増粘多糖類]
本発明に使用する増粘多糖類は、本発明の大豆飲料を所望の粘度に調整できるものであれば、種類、配合量は特に制限されない。例えば、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、脱アシルジェランガム、ネイティブジェランガム、グルコマンナン、キサンタンガム、アルギン酸塩等が挙げられ、これらを複数併用して用いてもよい。本発明に使用する増粘多糖類は、酢を配合したような酸性飲料でも粘度が付与しやすいキサンタンガムを含有することが好ましい。
【0016】
本発明の大豆飲料中の前記増粘多糖類の含有量は、好ましくは0.05~0.25質量%、より好ましくは0.08~0.24質量%、さらにより好ましくは0.09~0.22質量%、最も好ましくは0.1~0.2質量%である。増粘多糖類の含有量が上記の範囲にあると、摂取した際の濃厚感により優れる。また、前記増粘多糖類がキサンタンガムを含有する場合、飲料中のキサンタンガムの含有量は、好ましくは0.05~0.25質量%、より好ましくは0.08~0.24質量%、さらにより好ましくは0.09~0.22質量%、最も好ましくは0.1~0.2質量%である。なお、上記増粘多糖類又はキサンタンガムの含有量が0.25質量%よりも多くなると、摂取時に糊料感が発生する。
【0017】
[水]
本発明に使用する水は、特に限定されず、水道水、井水、精製水、イオン交換水等を用いることができる。 本発明の大豆飲料中の前記水の含有量は、好ましくは75~95質量%、より好ましくは78~94質量%、さらにより好ましくは80~93質量%、最も好ましくは83~91質量%である。ここで、前記の水は液体原料に含まれる水分を全て併せたものである。本発明の大豆飲料中の水の含有量は常法(乾燥減量法等)で求めることができる。
【0018】
[その他の原料]
本発明の大豆飲料は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記原料以外にも他の原料を配合してもよい。例えば、糖類、酸味料、ビタミン類、アミノ酸、ミネラル、果汁、香料、色素等が挙げられる。
【0019】
[大豆飲料の製造方法]
本発明の大豆飲料の製造方法は、大豆粉末を水に投入後、ホモジナイザー等で均一に溶解し、次に、粘度が所望の粘度となるように増粘多糖類の配合量を調整して、均一な溶液とする方法である。
【実施例0020】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0021】
[飲料の製造]
表1及び2に示す配合の飲料を製造した。具体的には、大豆粉末をホモジナイザーで溶解した後、キサンタンガムを溶解して飲料を得た(実施例1~3、比較例1)。また、無調製豆乳にキサンタンガムを溶解して飲料を得た(比較例2、3)。
なお、表中の各種原料は以下のものを使用した。
・大豆粉末:全脂大豆粉(商品名:アルファプラスHS―600、日清オイリオグループ(株)製、蛋白含量42.7質量%)
・豆乳:無調整豆乳(商品名:おいしい無調整豆乳、キッコーマンソイフーズ(株)製、蛋白含量4.1質量%)
・増粘多糖類:キサンタンガム(商品名:GRINDSTED Xanthan Clear80、ダニスコジャパン(株)製)
【0022】
[粘度の測定]
各飲料を、1時間、20℃の温度で保温し、B型粘度計を使用し、ローターNo.2を用いて、回転数20rpmで、測定開始時から30秒後の値を粘度とした。測定結果を表1及び2に示した。
【0023】
[目視評価]
上記で製造した各飲料を5℃、24時間静置した後、5名の専門パネルが目視により外観の変化を下記の評価基準に従って評価した。なお、評価は5人の専門パネルの合議により決めた。結果を表1及び2に示した。
(評価基準)
○:沈殿や凝集が認められず均一である。
×:沈殿や凝集が認められる。
【0024】
[官能評価]
上記で製造した各飲料を5℃、24時間静置した後、5名の専門パネルが各飲料を試飲した際の濃厚感と糊料感について、下記の採点基準で採点し、次に、5名の採点の平均点を算出し、下記の評価基準で評価した。なお、対照は、大豆粉飲料及び豆乳について、それぞれ増粘多糖類を含有しないものを使用した。結果を表1及び2に示した。
(濃厚感の採点基準)
2点:1点よりも濃厚感を感じ、より好ましい。(実施例3を2点とする)
1点:対照と比べ、濃厚感を感じる。
0点:対照と同等であり、濃厚感を感じない。又は、粘度が付きすぎて、濃厚感を感じない。
(糊料感の採点基準)
2点:対照と同等であり、糊料感を感じない。(実施例2を2点とする)
1点:対照と比べ、若干の糊料感を感じるが、許容できる。
0点:対照と比べ、糊料感を感じ、好ましくない。
(評価基準)
◎:1.6~2
○:1.0~1.4
×:0~0.8
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
表1及び2の結果より、大豆粉末を5~15質量%、及び増粘多糖類を含有し、20℃の粘度が280~956mPa・sである大豆飲料(実施例1~3)は、均一な外観で、糊料感がなく、対照と比べて濃厚感に優れたものであった。
他方、20℃の粘度が1370mPa・sである大豆飲料(比較例1)は、糊料感があり飲料として不適であった。
また、豆乳については、20℃の粘度が156mPa・sで低粘度のもの(比較例2)は、糊料感がないが、濃厚感もないものであった。また、20℃の粘度が491mPa・sのもの(比較例3)は、糊料感があり飲料として不適であった。
以上より、特定量の大豆粉末を含有する大豆飲料は、増粘多糖類を含有し、特定の粘度を有することで、糊料感を感じることなく、濃厚感が付与されることが明らかになった。