(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167070
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】エッチング処理装置、エッチング処理システム、解析装置、エッチング処理方法及び解析プログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077950
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】伊五澤 涼
(72)【発明者】
【氏名】笹川 大成
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004CA08
5F004EA37
(57)【要約】
【課題】エッチング処理装置ごとに設定データを生成または調整する仕組みを提供する。
【解決手段】エッチング処理装置は、エッチング処理の特定のステップを実行した際の効果の違いに応じて、前記特定のステップの実行時に取得された各処理条件が、複数のグループに分類され、グループごとに学習処理が行われた場合において、各学習処理により生成された各グループの学習済みモデルを格納する格納部と、テスト用のウェハに対して、特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて前記特定のステップを実行させた場合の効果が、前記特定のグループに対応する効果と等価でない場合に、前記特定のグループの学習済みモデルを更新する更新部と、テスト用のウェハに対して、前記特定のステップを実行させた場合に、前記特定のグループに対応する効果が得られる設定データを、更新された前記学習済みモデルを用いて探索する探索部とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング処理の特定のステップを実行した際の効果の違いに応じて、前記特定のステップの実行時に取得された各処理条件が、複数のグループに分類され、グループごとに学習処理が行われた場合において、各学習処理により生成された各グループの学習済みモデルを格納する格納部と、
テスト用のウェハに対して、特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて前記特定のステップを実行させた場合の効果が、前記特定のグループに対応する効果と等価でない場合に、前記特定のグループの学習済みモデルを更新する更新部と、
テスト用のウェハに対して、前記特定のステップを実行させた場合に、前記特定のグループに対応する効果が得られる設定データを、更新された前記学習済みモデルを用いて探索する探索部と、
処理用のウェハに対して、前記特定のステップを実行する際、探索された設定データを設定する設定部と
を有するエッチング処理装置。
【請求項2】
前記学習済みモデルは、前記特定のステップを実行する前のウェハの断面形状データと、前記特定のグループに対応する処理条件とを入力した場合の出力データが、前記特定のステップを実行した後のウェハの断面形状データに近づくように学習されている、請求項1に記載のエッチング処理装置。
【請求項3】
前記更新部は、前記特定のグループに対応する効果と、テスト用のウェハに対して、特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて前記特定のステップを実行させた場合の効果とが等価となるように、前記特定のグループの学習済みモデルのモデルパラメータを更新する、請求項2に記載のエッチング処理装置。
【請求項4】
前記テスト用のウェハに対して、前記特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて前記特定のステップを実行させる前の前記テスト用のウェハの断面形状データと、実行させた後の前記テスト用のウェハの断面形状データとを測定する測定器を更に有し、
前記テスト用のウェハに対して、特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて前記特定のステップを実行させた場合の効果は、前記特定のステップを実行させる前の前記テスト用のウェハの断面形状データと、実行させた後の前記テスト用のウェハの断面形状データとに基づいて算出される、請求項3に記載のエッチング処理装置。
【請求項5】
前記探索部は、前記テスト用のウェハの処理前の断面形状データを、更新された前記学習済みモデルに入力した場合の前記テスト用のウェハの処理後の断面形状データの予測値と、前記テスト用のウェハの処理前の断面形状データとに基づいて算出される効果が、前記特定のグループに対応付けられた効果に近づくように設定データを探索する、請求項1に記載のエッチング処理装置。
【請求項6】
前記テスト用のウェハは、エッチング処理する対象膜の元素組成、膜密度、膜構造が、前記処理用のウェハと略等しい、請求項1に記載のエッチング処理装置。
【請求項7】
エッチング処理の特定のステップを実行した際の効果の違いに応じて、前記特定のステップの実行時に取得された各処理条件が、複数のグループに分類され、グループごとに学習処理が行われた場合において、各学習処理により生成された各グループの学習済みモデルを格納する格納部と、
テスト用のウェハに対して、特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて前記特定のステップを実行させた場合の効果が、前記特定のグループに対応する効果と等価でない場合に、前記特定のグループの学習済みモデルを更新する更新部と、
テスト用のウェハに対して、前記特定のステップを実行させた場合に、前記特定のグループに対応する効果が得られる設定データを、更新された前記学習済みモデルを用いて探索する探索部と、
処理用のウェハに対して、前記特定のステップを実行する際、探索された設定データを設定する設定部と
を有するエッチング処理システム。
【請求項8】
エッチング処理の特定のステップを実行した際の効果の違いに応じて、前記特定のステップの実行時に取得された各処理条件が、複数のグループに分類され、グループごとに学習処理が行われた場合において、各学習処理により生成された各グループの学習済みモデルを格納する格納部と、
テスト用のウェハに対して、特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて前記特定のステップを実行させた場合の効果が、前記特定のグループに対応する効果と等価でない場合に、前記特定のグループの学習済みモデルを更新する更新部と、
テスト用のウェハに対して、前記特定のステップを実行させた場合に、前記特定のグループに対応する効果が得られる設定データを、更新された前記学習済みモデルを用いて探索する探索部と
を有する解析装置。
【請求項9】
エッチング処理の特定のステップを実行した際の効果の違いに応じて、前記特定のステップの実行時に取得された各処理条件が、複数のグループに分類され、グループごとに学習処理が行われた場合において、各学習処理により生成された各グループの学習済みモデルを格納する格納工程と、
テスト用のウェハに対して、特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて前記特定のステップを実行させた場合の効果が、前記特定のグループに対応する効果と等価でない場合に、前記特定のグループの学習済みモデルを更新する更新工程と、
テスト用のウェハに対して、前記特定のステップを実行させた場合に、前記特定のグループに対応する効果が得られる設定データを、更新された前記学習済みモデルを用いて探索する探索工程と、
処理用のウェハに対して、前記特定のステップを実行する際、探索された設定データを設定する設定工程と
を有するエッチング処理方法。
【請求項10】
エッチング処理の特定のステップを実行した際の効果の違いに応じて、前記特定のステップの実行時に取得された各処理条件が、複数のグループに分類され、グループごとに学習処理が行われた場合において、各学習処理により生成された各グループの学習済みモデルを格納する格納部を有する解析装置のコンピュータに、
テスト用のウェハに対して、特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて前記特定のステップを実行させた場合の効果が、前記特定のグループに対応する効果と等価でない場合に、前記特定のグループの学習済みモデルを更新する更新工程と、
テスト用のウェハに対して、前記特定のステップを実行させた場合に、前記特定のグループに対応する効果が得られる設定データを、更新された前記学習済みモデルを用いて探索する探索工程と、
を実行させるための解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エッチング処理装置、エッチング処理システム、解析装置、エッチング処理方法及び解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハを所定の処理条件のもとでエッチング処理した場合の、処理後のウェハの断面形状について、処理前のウェハの断面形状、及び、当該所定の処理条件を用いて予測する予測モデル(学習済みモデル)の開発が進められている。
【0003】
一方で、エッチング処理装置の処理空間(チャンバ)の仕様は様々であり、また、同一の仕様であっても、装置間には機差があり、装置間で内部状態が異なっている場合がある。更に、処理前のウェハの成膜時の成膜条件は様々であり、同一種膜であっても、元素組成、膜密度、膜構造などが異なっている場合もある。このため、複数のエッチング処理装置に跨り、かつ、同一種膜のあらゆる元素組成、膜密度、膜構造の処理前のウェハに対して普遍的な予測モデルを構築することは容易ではない。このようなことから、例えば、当該予測モデルを用いて探索した設定データ等を適用するにあたっては、適用先のエッチング処理装置及び処理前のウェハに合わせて、設定データ等を適宜調整することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、エッチング処理装置ごとに設定データを生成または調整する仕組みを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によるエッチング処理装置は、例えば、以下のような構成を有する。即ち、
エッチング処理の特定のステップを実行した際の効果の違いに応じて、前記特定のステップの実行時に取得された各処理条件が、複数のグループに分類され、グループごとに学習処理が行われた場合において、各学習処理により生成された各グループの学習済みモデルを格納する格納部と、
テスト用のウェハに対して、特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて前記特定のステップを実行させた場合の効果が、前記特定のグループに対応する効果と等価でない場合に、前記特定のグループの学習済みモデルを更新する更新部と、
テスト用のウェハに対して、前記特定のステップを実行させた場合に、前記特定のグループに対応する効果が得られる設定データを、更新された前記学習済みモデルを用いて探索する探索部と、
処理用のウェハに対して、前記特定のステップを実行する際、探索された設定データを設定する設定部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、エッチング処理装置ごとに設定データを生成または調整する仕組みを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】エッチング処理システムの各フェーズにおけるシステム構成及び処理の概要を説明するための図である。
【
図2】解析装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】収集された解析対象のデータ群の具体例を示す図である。
【
図4】解析結果データの概要を説明するための図である。
【
図6】データ格納部に格納された複数のデータ群の具体例を示す図である。
【
図8】Proxelの生成処理の具体例を示す図である。
【
図9】予測モデル生成処理の具体例を示す図である。
【
図10】テスト用ウェハの断面形状データの収集処理の具体例を示す図である。
【
図11】予測モデル更新処理の具体例を示す図である。
【
図12】設定データの探索処理の具体例を示す図である。
【
図13】設定データの設定処理の具体例を示す図である。
【
図14】解析処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0010】
[第1の実施形態]
<エッチング処理システムのシステム構成及び処理の概要>
はじめに、第1の実施形態に係るエッチング処理システムの各フェーズにおけるシステム構成及び各フェーズにおける処理の概要について説明する。
図1は、エッチング処理システムの各フェーズにおけるシステム構成及び処理の概要を説明するための図である。
【0011】
図1に示すように、「生成フェーズ」において、エッチング処理システム100は、複数のエッチング処理装置110と、1または複数の形状測定装置120と、解析装置130とを有する。
【0012】
複数のエッチング処理装置110は、それぞれ、ウェハのエッチング処理を行う装置であり、例えば、複数の事業所に配された複数のエッチング処理装置であってもよいし、同一の事業所に配された複数のエッチング処理装置であってもよい。また、複数のエッチング処理装置110は、処理空間(チャンバ)の仕様が異なるエッチング処理装置であってもよいし、仕様が同一のエッチング処理装置であってもよい。
【0013】
形状測定装置120は、複数のエッチング処理装置110それぞれにおいて、エッチング処理が行われる際の、処理前のウェハの断面形状及び処理後のウェハの断面形状を測定する装置である。なお、形状測定装置120により測定された処理前ウェハの断面形状データ及び処理後ウェハの断面形状データは、エッチング処理時に取得されたデータ群と対応付けて、解析対象のデータ群として解析装置130のデータ格納部133に格納される。
【0014】
解析装置130には、生成プログラムがインストールされており、生成フェーズにおいて当該プログラムが実行されることで、解析装置130は、収集部131、生成部132として機能する。
【0015】
解析装置130の収集部131は、複数のエッチング処理装置110及び形状測定装置120より、エッチング処理時に取得されたデータ群と、対応する処理前ウェハの断面形状データ及び処理後ウェハの断面形状データとを、解析対象のデータ群として収集する。また、解析装置130の収集部131は、収集した解析対象のデータ群をデータ格納部133に格納する。
【0016】
また、解析装置130の収集部131は、データ格納部133に格納された、解析対象のデータ群を解析する。
【0017】
具体的には、解析装置130の収集部131は、解析対象のデータ群のうち、エッチング処理における同じステップの複数のデータ群を解析し、同様の効果が得られるデータ群同士をグルーピングすることで、Proxelを生成する。つまり、解析装置130の収集部131は、エッチング処理における効果を算出する"効果算出処理"と、データ群をグルーピングする"分類処理"と、Proxelを生成する"Proxelの生成処理"とを実行する。また、解析装置130の収集部131は、生成したProxelをデータ格納部133に格納する。
【0018】
なお、本実施形態において、Proxelとは、処理前後の断面形状の変化において、同じ効果が得られる処理条件のグループであり、エッチング処理での微細加工における最小のデータ単位を表す概念である。ただし、ここでいう"同じ効果"とは、断面形状の変化が完全に同じである必要はなく、断面形状の変化が同程度のもの(所定の範囲内のもの)も含まれるものとする。
【0019】
解析装置130の生成部132は、生成されたProxelごとに、処理前ウェハの断面形状データ及び処理条件と、処理後ウェハの断面形状データとを用いて学習処理を行い、予測モデル(学習済みモデル)を生成する。つまり、解析装置130の生成部132は、"予測モデルの生成処理"を実行する。
【0020】
また、
図1に示すように、「更新フェーズ」において、エッチング処理システム100は、エッチング処理装置140と、解析装置150とを有する。
【0021】
エッチング処理装置140は、予測モデルの生成に用いられた設定データを適用してエッチング処理を行う装置である。本実施形態において、設定データを適用するにあたっては、
・複数のエッチング処理装置110との処理空間の仕様の違い、
・装置の機差、
・処理空間の内部状態の違い、
・エッチング処理する対象膜の元素組成、膜密度、膜構造の違い、
等を考慮して、設定データが適宜調整される。
【0022】
なお、設定データを調整するにあたり、エッチング処理装置140内には、インライン測定器141が配され、テスト用のウェハのエッチング処理前の断面形状及びエッチング処理後の断面形状を測定する。また、インライン測定器141により測定されたテスト用の処理前ウェハの断面形状データ及びテスト用の処理後ウェハの断面形状データは、解析装置150により処理される。なお、テスト用の処理前ウェハには、エッチング処理装置140においてエッチング処理される処理用のウェハに応じたウェハ(エッチング処理する対象膜の元素組成、膜密度、膜構造が略等しいウェハ)が用いられる。
【0023】
解析装置150には、解析プログラムがインストールされており、更新フェーズにおいて当該プログラムが実行されることで、解析装置150は、更新部151、探索部152として機能する。
【0024】
解析装置150の更新部151は、テスト用の処理前ウェハの断面形状データと、テスト用の処理後ウェハの断面形状データとを収集し、予測モデルのモデルパラメータを更新する。つまり、解析装置150の更新部151は、テスト用ウェハの断面形状データを収集する"テスト用ウェハの断面形状データの収集処理"と、予測モデルを更新する"予測モデルの更新処理"とを実行する。
【0025】
解析装置150の探索部152は、モデルパラメータが更新された更新後の予測モデルを用いて、対応する効果を得るための設定データを探索することで、更新前の予測モデルの生成に用いられた設定データを調整する。つまり、解析装置150の探索部152は、最適な設定データを探索する"設定データの探索処理"を実行する。
【0026】
また、
図1に示すように、「処理フェーズ」において、エッチング処理システム100は、エッチング処理装置140と、解析装置150とを有する。
【0027】
エッチング処理装置140は、モデルパラメータが更新された更新後の予測モデルを用いて調整された設定データのもとで、処理前ウェハのエッチング処理を行う。なお、処理フェーズにおけるエッチング処理装置140は、更新フェーズにおけるエッチング処理装置140と同一の個体であるが、インライン測定器141は取り外されている。
【0028】
処理フェーズにおいて、解析装置150は、設定部154として機能する。解析装置150の設定部154は、モデルパラメータが更新された更新後の予測モデルを用いて調整された設定データを、エッチング処理装置140に設定する。つまり、解析装置150の設定部154は、調整された設定データを設定する"設定データの設定処理"を実行する。
【0029】
このように、エッチング処理システム100によれば、エッチング処理装置ごとに更新した予測モデルを用いて設定データを調整し、調整した設定データのもとでエッチング処理を行うことが可能になる。
【0030】
つまり、エッチング処理システム100によれば、エッチング処理装置の個体ごとに設定データを調整する仕組みを提供することができる。
【0031】
<解析装置のハードウェア構成>
次に、解析装置130、150のハードウェア構成について説明する。
図2は、解析装置のハードウェア構成の一例を示す図である。なお、解析装置130と解析装置150とは同じハードウェア構成を有するため、ここでは、解析装置150のハードウェア構成について説明する。
【0032】
図2に示すように、解析装置150は、プロセッサ201、メモリ202、補助記憶装置203、ユーザインタフェース装置204、接続装置205、通信装置206、ドライブ装置207を有する。なお、解析装置150の各ハードウェアは、バス208を介して相互に接続されている。
【0033】
プロセッサ201は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の各種演算デバイスを有する。プロセッサ201は、各種プログラム(例えば、解析プログラム等)をメモリ202上に読み出して実行する。
【0034】
メモリ202は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶デバイスを有する。プロセッサ201とメモリ202とは、いわゆるコンピュータを形成し、プロセッサ201が、メモリ202上に読み出した各種プログラムを実行することで、当該コンピュータは各種機能を実現する。
【0035】
補助記憶装置203は、各種プログラムや、各種プログラムがプロセッサ201によって実行される際に用いられる各種データを格納する。
【0036】
ユーザインタフェース装置204は、例えば、解析装置150のユーザが各種コマンドの入力操作等を行う際に用いるキーボードまたはタッチパネル、解析装置150の処理内容を表示するためのディスプレイ等を含む。
【0037】
接続装置205は、エッチング処理システム100内の他の装置(エッチング処理装置140等)と接続する接続デバイスである。通信装置206は、ネットワークを介して不図示の外部装置と通信するための通信デバイスである。
【0038】
ドライブ装置207は記録媒体210をセットするためのデバイスである。ここでいう記録媒体210には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記録媒体210には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0039】
なお、補助記憶装置203にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記録媒体210がドライブ装置207にセットされ、該記録媒体210に記録された各種プログラムがドライブ装置207により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置203にインストールされる各種プログラムは、通信装置206を介してネットワークからダウンロードされることで、インストールされてもよい。
【0040】
<生成フェーズにおける処理の具体例>
次に、生成フェーズにおけるエッチング処理システム100の処理の具体例について説明する。
【0041】
(1)収集される解析対象のデータ群の具体例
はじめに、生成フェーズにおいて収集部131により収集され、データ格納部133に格納される解析対象のデータ群の具体例について説明する。
図3は、収集された解析対象のデータ群の具体例を示す図である。
図3に示すように、複数のエッチング処理装置110がそれぞれ行うエッチング処理には、複数のステップ(ステップ名=ステップ1~N)が含まれる。なお、ここでいう「ステップ」とは、エッチング処理において、状態(ウェハの属性、エッチング処理装置の状態、処理空間内の雰囲気等)を変化させる最小の処理単位を指すものとする。
【0042】
図3において、データ群301_1は、収集された解析対象のデータ群のうち、
・複数のエッチング処理装置110のうちの、所定のエッチング処理装置によるエッチング処理であって、
・当該エッチング処理に含まれる複数のステップのうちの、ステップ名="STEP1"のステップ、
と対応付けられたデータ群である。
【0043】
図3に示すように、データ群301_1は、情報の項目として、"処理前ウェハの断面形状データ(I)"、"設定データ(R)"、"出力データ(E)"、"測定データ(Pl)"、"実験データ(Pr)"、"処理後ウェハの断面形状データ(Pf)"を含む。
【0044】
"処理前ウェハの断面形状データ(I)"には、
・Initial CD(critical dimensions)(限界寸法)
・Material(材料)
・Thickness(厚さ)
・Aspect ratio(アスペクト比)
・Mask coverage(マスク被覆性)
等が含まれる。
【0045】
"設定データ(R)"には、
・Pressure(チャンバ内の圧力)
・Power(高周波電源の電力)
・Gas(ガス流量)
・Temperature(チャンバ内の温度またはウェハ表面の温度)
等が含まれる。
【0046】
"出力データ(E)"には、
・Vpp(電位差)
・Vdc(直流自己バイアス電圧)
・OES(発光分光分析による発光強度)
・Reflect(反射波電力)
・Top DCS current(ドップラ流速計による検出値)
等が含まれる。
【0047】
"測定データ(Pl)"には、
・Plasma density(プラズマ密度)
・Ion energy(イオンエネルギ)
・Ion flux(イオン流量)
等が含まれる。
【0048】
"実験データ(Pr)"には、
・Etching rate(エッチング速度)
・Deposition rate(成膜速度)
・XY position(XY座標)
・Film type(薄膜の種類)
・Vertical/Lateral(縦型/横型の区分)
等が含まれる。
【0049】
"処理後ウェハの断面形状データ(Pf)"には、
・CD(限界寸法)
・Depth(深さ)
・Taper(テーパ角)
・Tilting(チルト角)
・Bowing(ボーイング)
等が含まれる。
【0050】
なお、
図3に示すデータ群301_1は一例であり、各情報の項目に含まれるデータの種類は、図示したものに限定されない。また、収集された解析対象のデータ群は、ステップごとに異なる情報の項目、異なる種類のデータを含んでいてもよい。
【0051】
(2)解析結果データの概要
次に、データ格納部133に格納された解析対象のデータ群を収集部131が解析することで得られる解析結果データの概要について説明する。
図4は、解析結果データの概要を説明するための図である。
【0052】
図4において、データ群301は、エッチング処理のステップ名="STEP1"のステップのデータ群であり、複数のエッチング処理装置110それぞれから収集された複数のデータ群(データ群301_1、301_2、・・・)を含む。
【0053】
上述したように、収集部131では、同じステップの複数のデータ群を解析し、同様の効果が得られるデータ群同士をグルーピングする。エッチング処理装置の場合、同じステップを実行する場合であっても、データ群に含まれるデータが異なることで、異なる結果物が得られる場合があるからである。したがって、収集部131では、同様の効果が得られるデータ群同士をグルーピングし、各グループにより特定される処理条件を算出することで、同様の効果を得るために許容される、各グループのデータ範囲を算出する。
【0054】
図4において、グループ311~314は、データ群301のうち、同様の効果が得られるデータ群同士をグルーピングすることで得られたグループである。エッチング処理の同じステップにおいて、同様の効果が得られるグループにより特定される処理条件(データ範囲)とは、エッチング処理において、ウェハの"状態"に同様の変化を与える最小のデータ単位ということができる。つまり、当該グループにより特定される処理条件(データ範囲)は、エッチング処理での微細加工における最小のデータ単位ということができる。
【0055】
なお、上述したように、エッチング処理での微細加工における最小のデータ単位(Process Element)を、本実施形態では、"Proxel"と称する。
【0056】
解析装置130の収集部131では、収集した解析対象のデータ群を解析することで"Proxel"を生成し、解析結果データとして、データ格納部133に格納する。
【0057】
(3)効果算出処理の具体例
次に、収集部131が、データ格納部133に格納された解析対象のデータ群を解析し、解析結果データとしてProxelを生成する際の効果算出処理について説明する。
図5は、効果算出処理の具体例を示す図である。
【0058】
図5に示すように、エッチング処理の所定のステップ(ステップ名="STEP1")とデータ群301との関係は、点線500のように模式的に表すことができる。
【0059】
すなわち、設定データが設定された所定のエッチング処理装置が、エッチング処理の所定のステップを実行すると、実行前の状態(実行前のウェハの属性、所定のエッチング処理装置の状態、処理空間内の雰囲気のいずれか)が、実行後に変化する。そして、このときのエッチング処理の処理条件は、出力データ、測定データ、実験データにより特定することができる。
【0060】
つまり、設定データ、出力データ、測定データ、実験データにより特定される処理条件のもとでは、エッチング処理の所定のステップでの効果は、
・実行前の状態を示すデータ(本実施形態では、処理前ウェハの断面形状データ)と、
・実行後の状態を示すデータ(本実施形態では、処理後ウェハの断面形状データ)と、
の差分により表すことができる。
【0061】
そこで、収集部131では、ステップごとのデータ群それぞれに対応する、処理前ウェハの断面形状データと処理後ウェハの断面形状データとの差分を算出することで、当該ステップにおけるそれぞれの処理条件での効果を算出する。また、収集部131では、算出した効果を、設定データ、出力データ、測定データ、実験データと対応付けて、複数のデータ群(算出した効果を含む)としてデータ格納部133に格納する。
【0062】
図6は、データ格納部に格納された複数のデータ群の具体例を示す図であり、エッチング処理のステップ名="STEP1"のステップについて、収集部131によりデータ格納部133に格納された複数のデータ群(算出した効果を含む)の一例である。
【0063】
図6に示すように、データ格納部133に格納される複数のデータ群(算出した効果を含む)には、情報の項目として、"データ群識別子"、"設定データ(R)"、"出力データ(E)"、"測定データ(Pl)"、"実験データ(Pr)"、"効果"が含まれる。
【0064】
"データ群識別子"は、それぞれのデータ群を識別するための識別子である。
図6において、データ群識別子="データ001"は、例えば、所定のエッチング処理装置より収集した、エッチング処理の所定のステップ(ステップ名="STEP1")のデータ群と効果とを含むデータ群である。また、データ群識別子="データ002"は、例えば、他のエッチング処理装置より収集した、エッチング処理の所定のステップ(ステップ名="STEP1")のデータ群と効果とを含むデータ群である。
【0065】
"設定データ(R)"から"実験データ(Pr)"までの各情報の項目には、解析対象のデータ群(
図3参照)のうち、処理前ウェハの断面形状データ(I)と処理後ウェハの断面形状データ(Pf)とを除くデータ群が格納される。
【0066】
"効果"には、算出された効果が格納される。
図6の例によれば、エッチング処理のステップ名="STEP1"のステップの場合、データ群識別子="データ001"に対応付けられた設定データ等により特定される処理条件のもとでは、"効果<1>"が得られる。同様に、エッチング処理のステップ名="STEP1"のステップの場合、データ群識別子="データ002"に対応付けられた設定データ等により特定される処理条件のもとでは、"効果<2>"が得られる。
【0067】
(4)分類処理の具体例
次に、収集部131が、データ格納部133に格納した複数のデータ群(算出した効果を含む)を分類する処理について説明する。
図7は、分類処理の具体例を示す図である。
【0068】
図7に示すように、データ格納部133に格納された複数のデータ群(算出した効果を含む)は、特徴空間700にプロットされる。
図7において、数字が記載された実線丸印は、読み出した複数のデータ群(算出した効果を含む)のうちの1つを示しており、実線丸印内に記載された数字は、当該データ群のデータ群識別子を表している。
【0069】
なお、
図7の例では、説明を簡略化するために、特徴空間700を2次元としている(つまり、データ群に含まれる2種類のデータ(データの種類p、データの種類q)をプロットした様子を示している)。
【0070】
図7において、実線丸印の外側を囲む点線丸印は、同様の効果が得られるデータ群同士をグルーピングした様子を示している。つまり、点線丸印内部に含まれる実線丸印内に記載されたデータ群識別子により識別されるデータ群は、いずれも、エッチング処理のステップ名="STEP1"のステップにおいて、同様の効果を有するデータ群である。
【0071】
例えば、点線丸印701には、データ群識別子="データ001"、"データ004"、"データ010"が含まれる。これらのデータ群識別子が記載された各実線丸印は、特徴空間700において互いに近い位置に分布しているが、完全に重なっているわけではない。つまり、それぞれのデータ群識別子により識別されるデータ群は、互いに似ているが、完全に一致しているわけではない。
【0072】
一方で、これらのデータ群は、エッチング処理のステップ名="STEP1"のステップにおいて、いずれも効果<1>が得られるデータ群である。換言すると、特徴空間700において点線丸印701によりグルーピングされた複数のデータ群は、いずれのデータ群のもとでエッチング処理のSTEP1を実行しても、効果<1>が得られるデータ群である。
【0073】
また、
図7において、点線丸印702には、データ群識別子="データ005"、"データ006"、"データ007"が含まれ、点線丸印703には、データ群識別子="データ002"が含まれる。点線丸印702に含まれる各データ群と、点線丸印703に含まれるデータ群とは、互いに離れた位置に分布している。
【0074】
一方で、点線丸印702に含まれる各実線丸印内に記載されたデータ群識別子により識別されるデータ群は、それぞれのデータ群のもとでエッチング処理のSTEP1を実行した場合に、いずれも効果<2>が得られるデータ群である。同様に、点線丸印703に含まれる実線丸印内に記載されたデータ群識別子により識別されるデータ群は、当該データ群のもとでエッチング処理のSTEP1を実行した場合に、効果<2>が得られるデータ群である。
【0075】
ここで、点線丸印702と点線丸印703とを、1つの点線丸印でグルーピングしようとすると、他の点線丸印701と重なることになる。このため、本実施形態では、同じ効果が得られる場合であっても、別々にグルーピングする(つまり、特徴空間を分割した際に、異なる効果が対応付けられたデータ群が同じ領域内に混在することがないようにグルーピングする)。
【0076】
図7において、符号710は、グルーピングされた各グループを、Proxel名を付して模式的に示したものである。
【0077】
(5)Proxelの生成処理の具体例
次に、収集部131によるProxelの生成処理の具体例について説明する。
図8は、Proxelの生成処理の具体例を示す図である。
【0078】
図8に示すように、同じグループにグルーピングされたデータ群それぞれに含まれる各データについて、最小値と最大値を算出することで、特徴空間における各領域の各データ範囲を算出する。
【0079】
図8の例は、効果<1>と同様の効果が得られるデータ群が、グループ名="グループGr1"のグループにグルーピングされたことを示している。また、
図8の例は、グループ名="グループGr1"のグループにグルーピングされたデータ群に含まれる各データのうち、設定データの"Pressure"については、
・最小値="Pressure_1"
・最大値="Pressure_4"
であったことを示している。
【0080】
グループ名="グループGr1"のグループにグルーピングされたデータ群が分布する特徴空間の領域の各データ範囲は、具体的には、点線800により表すことができる。なお、点線800により表される各データ範囲は、
図3において説明したProxel(グループ311により特定される処理条件、"ProxelA"と称す)に他ならない。
【0081】
このように、収集部131によれば、解析対象のデータ群を解析することで、解析結果データとして、Proxelを生成することができる。
【0082】
(6)予測モデルの生成処理の具体例
次に、解析結果データとして生成されたProxelにより特定される処理条件を用いて、生成部132が行う予測モデルの生成処理の具体例について説明する。
図9は、予測モデル生成処理の具体例を示す図である。
【0083】
生成部132は、データ格納部133より、
・処理前ウェハの断面形状データと、
・対応するProxelにより特定される処理条件(
図9の例では、"ProxelA"により特定される処理条件)と、
・処理後ウェハの断面形状データと、
を読み出す。
【0084】
また、生成部132は、読み出した処理前ウェハの断面形状データ、及び、"ProxelA"により特定される処理条件を、入力データとして、予測モデル910(モデル名=モデルα)に入力する。また、生成部132は、予測モデル910より出力される出力データが、正解データである処理後ウェハの断面形状データに近づくように、予測モデル910のモデルパラメータを更新する学習処理を行う。更に、生成部132は、学習処理を行うことで生成された学習済みモデル(予測モデル910)またはモデルパラメータを、データ格納部133に格納する。
【0085】
なお、生成部132による学習処理が完了した状態で、予測モデル910に対して、
・学習処理に用いられていない処理前ウェハの断面形状データと、
・"ProxelA"により特定される処理条件と、
を入力することで、予測モデル910により推論される、処理後ウェハの断面形状データと、入力した処理前ウェハの断面形状データとを比較すると、両者の差分は、効果<1>と等しくなる。
【0086】
なお、解析装置130の生成部132により算出された効果<1>は、データ格納部133に格納される。
【0087】
<更新フェーズにおける処理の具体例>
次に、更新フェーズにおけるエッチング処理システム100の処理の具体例について説明する。
【0088】
(1)テスト用ウェハの断面形状データの収集処理の具体例
はじめに、解析装置150の更新部151によるテスト用ウェハの断面形状データの収集処理の具体例について説明する。
図10は、テスト用ウェハの断面形状データの収集処理の具体例を示す図である。上述したように、更新フェーズにおいて、エッチング処理装置140内には、インライン測定器141が配される。
【0089】
インライン測定器141は、エッチング処理装置140によりエッチング処理が行われる前のテスト用の処理前ウェハの断面形状を測定し、テスト用の処理前ウェハの断面形状データを出力する。
【0090】
また、インライン測定器141は、"ProxelA"により特定される処理条件に含まれる設定データのもとでエッチング処理装置140によりエッチング処理が行われた後のテスト用の処理後ウェハの断面形状を測定する。また、インライン測定器141は、測定したテスト用の処理後ウェハの断面形状データを出力する。
【0091】
なお、インライン測定器141より出力された、
・テスト用の処理前ウェハの断面形状データと、
・テスト用の処理後ウェハの断面形状データと、
は、解析装置150の更新部151により収集され、両者の差分に基づいて、効果<1>'が算出される。このとき、解析装置150の更新部151が算出する効果が、効果<1>と等しくならないのは、
・エッチング処理装置140と、
・予測モデル910の学習処理に用いられた複数のエッチング処理装置110と、
の処理空間(チャンバ)の仕様の違い、装置の機差、処理空間の内部状態の違い、並びに、エッチング処理する対象膜の元素組成、膜密度、膜構造の違い等に起因する。
【0092】
なお、解析装置150の更新部151により算出された効果<1>'は、データ格納部153に格納される。
【0093】
(2)予測モデルの更新処理の具体例
次に、解析装置150の更新部151による予測モデル910の更新処理の具体例について説明する。
図11は、予測モデル更新処理の具体例を示す図である。
【0094】
解析装置150の更新部151は、
・生成フェーズにおいて、予測モデル910の学習処理が完了した状態で算出され、データ格納部133に格納された効果<1>と、
・更新フェーズにおいて、テスト用の処理前ウェハがエッチング処理されることで算出され、データ格納部153に格納された効果<1>'と、
を取得する。また、解析装置150の更新部151は、データ格納部133に格納された予測モデル910または予測モデル910のモデルパラメータを読み出す。更に、解析装置150の更新部151は、取得した効果<1>と効果<1>'との差分に基づいて、読み出した予測モデル910のモデルパラメータを更新し、予測モデル1010を生成する。
【0095】
(3)設定データの探索処理の具体例
次に、解析装置150の探索部152による設定データの探索処理の具体例について説明する。
図12は、設定データの探索処理の具体例を示す図である。
【0096】
図12に示すように、解析装置150の探索部152は、生成された予測モデル1010を有する。また、解析装置150の探索部152は、
・テスト用の処理前ウェハの断面形状データと、
・"ProxelA"により特定される処理条件と、
を予測モデル1010に入力することで、予測モデル1010より出力された、テスト用の処理後ウェハの断面形状データの予測値を取得する。
【0097】
また、解析装置150の探索部152は、テスト用の処理前ウェハの断面形状データと、テスト用の処理後ウェハの断面形状データの予測値との差分を算出することで、効果<x>を算出する。
【0098】
また、解析装置150の探索部152は、算出した効果<x>が効果<1>に近づくように、予測モデル1010に入力する処理条件に含まれる設定データを調整する。これにより、探索部152は、算出した効果<x>が効果<1>に一致する、最適な設定データを得ることができる。
【0099】
<処理フェーズにおける処理の具体例>
次に、処理フェーズにおけるエッチング処理システム100の処理の具体例について説明する。
【0100】
(1)設定データの設定処理の具体例
次に、解析装置150の設定部154による設定データの設定処理の具体例について説明する。
図13は、設定データの設定処理の具体例を示す図である。
図13に示すように、設定部154は、探索部152により調整されることで最適な設定データを読み出し、エッチング処理装置140に設定する。
【0101】
この結果、エッチング処理装置140では、
・複数のエッチング処理装置110との処理空間の仕様の違い、
・装置の機差、
・処理空間の内部状態の違い、
・エッチング処理する対象膜の元素組成、膜密度、膜構造の違い、
が適切に修正された設定データのもとでエッチング処理を行い、効果<1>を得る。
【0102】
<解析処理の流れ>
次に、エッチング処理システム100による解析処理の流れについて説明する。
図14は、解析処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【0103】
図14に示すように、生成フェーズのステップS1401において、解析装置130は、予測モデルを生成するための解析対象のデータ群を収集する。
【0104】
ステップS1402において、解析装置130は、収集した解析対象のデータ群に基づいて、Proxelを生成し、処理条件を特定する。
【0105】
ステップS1403において、解析装置130は、処理前ウェハの断面形状データ及び処理条件と、処理後ウェハの断面形状データとを用いて学習処理を行い、予測モデルを生成する。また、解析装置130は、生成した予測モデルを用いて、効果<1>を算出する。
【0106】
続いて、更新フェーズのステップS1404において、エッチング処理装置140は、生成した処理条件に含まれる設定データのもとで、テスト用の処理前ウェハに対してエッチング処理を行う。
【0107】
ステップS1405において、解析装置150は、エッチング処理が行われた際に、インライン測定器141により測定された、テスト用の処理前ウェハの断面形状データと、テスト用の処理後ウェハの断面形状データとを取得し、効果<1>'を算出する。
【0108】
ステップS1406において、解析装置150は、算出した効果<1>と効果<1>'との差分に基づいて、予測モデルのモデルパラメータを更新する。
【0109】
ステップS1407において、解析装置150は、モデルパラメータを更新した更新後の予測モデルに基づいて設定データを調整することで、最適な設定データを探索する。
【0110】
処理フェーズのステップS1408において、解析装置150は、最適な設定データをエッチング処理装置140に設定する。これにより、エッチング処理装置140は、最適な設定データのもとで、エッチング処理を行い、効果<1>を得る。
【0111】
<まとめ>
以上の説明から明らかなように、第1の実施形態に係るエッチング処理システム100は、
・エッチング処理の特定のステップを実行した際の効果の違いに応じて、当該特定のステップの実行時に取得した各処理条件を、複数のグループに分類し、グループごとに学習処理を行うことで、各グループの予測モデル(学習済みモデル)を生成する。
・エッチング処理装置においてエッチング処理される処理用のウェハに応じたウェハ(エッチング処理する対象膜の元素組成、膜密度、膜構造が略等しいウェハ)をテスト用の処理前ウェハとして用いる。
・テスト用の処理前ウェハに対して、特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて特定のステップを実行させた場合の効果が、当該特定のグループに対応する効果と等価でない場合に、当該特定のグループの予測モデルを更新する。
・テスト用の処理前ウェハに対して、特定のステップを実行させた場合に、特定のグループに対応する効果が得られる設定データを、更新した予測モデルを用いて探索する。
・処理用のウェハに対して、特定のステップを実行する際、探索した設定データを設定する。
【0112】
このように、第1の実施形態に係るエッチング処理システム100によれば、エッチング処理装置ごとに更新した予測モデルを用いて設定データを調整し、調整した設定データのもとでエッチング処理を行うことが可能になる。
【0113】
つまり、第1の実施形態に係るエッチング処理システム100によれば、エッチング処理装置ごとに設定データを調整する仕組みを提供することができる。
【0114】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、更新後の予測モデルを用いて設定データを探索する際、初期値として、"ProxelA"により特定される処理条件を予測モデルに入力することで、設定データを調整する場合について説明した。
【0115】
しかしながら、設定データを探索する方法はこれに限定されず、"ProxelA"により特定される処理条件以外の処理条件を初期値として入力することで、設定データを1から探索するようにしてもよい。
【0116】
つまり、第2の実施形態に係るエッチング処理システム100によれば、エッチング処理装置ごとに設定データを生成する仕組みを提供することができる。
【0117】
[第3の実施形態]
上記第1及び第2の実施形態では、エッチング処理の特定のステップ(ステップ名="STEP1")について、Proxelを生成する場合について説明したが、エッチング処理の他のステップについても同様の手法によりProxelが生成されるものとする。
【0118】
また、上記第1及び第2の実施形態では、特定のProxel("ProxelA")について、テスト用ウェハの断面形状データの収集処理、及び、予測モデルの更新処理を実行したが、生成した全てのProxelについて同様に実行するものとする。
【0119】
また、上記第1及び第2の実施形態では、更新部151及び探索部152を、解析装置150において実現する場合について説明したが、解析装置150の一部の機能は、エッチング処理装置140において実現されてもよい。
【0120】
また、上記第1及び第2の実施形態では、エッチング処理装置140と、解析装置150とを別体として構成したが、エッチング処理装置140と解析装置150とは、一体として構成されてもよい。
【0121】
また、上記第1及び第2の実施形態では、エッチング処理装置140の構成について言及しなかったが、エッチング処理装置140は、複数の構成要素(処理空間のほか、搬送機構等の付帯機構)により構成されてもよい。また、エッチング処理装置140が複数の構成要素により構成される場合にあっては、解析装置150の一部の機能は、エッチング処理装置140内のいずれの構成要素において実現されてもよい。
【0122】
また、上記第1及び第2の実施形態では、解析装置130と解析装置150とを別体として構成したが、解析装置130と解析装置150とは、一体として構成されてもよい。この場合、生成プログラムは解析プログラムに含まれ、解析プログラムの一部として実行されるものとする。
【0123】
また、上記第1及び第2の実施形態では、解析装置150が単体で、解析プログラムを実行するものとして説明した。しかしながら、解析装置150は、例えば、複数台のコンピュータにより構成されてもよく、それぞれに解析プログラムをインストールすることで、解析プログラムが、分散コンピューティングの形態で実行されてもよい。
【0124】
また、上記第1及び第2の実施形態では、解析装置150の補助記憶装置203への解析プログラムのインストール方法の一例として、ネットワークを介してダウンロードして、インストールする方法について言及した。このとき、ダウンロード元については特に言及しなかったが、かかる方法によりインストールする場合、ダウンロード元は、例えば、解析プログラムをアクセス可能に格納したサーバ装置であってもよい。また、当該サーバ装置は、ネットワークを介して解析装置150のアクセスを受け付け、課金を条件に解析プログラムをダウンロードするクラウド上の装置であってもよい。つまり、当該サーバ装置は、解析プログラムの提供サービスを行うクラウド上の装置であってもよい。
【0125】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせ等、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0126】
例えば、本開示の実施形態は、以下の態様を含む。
【0127】
(付記1)
エッチング処理の特定のステップを実行した際の効果の違いに応じて、前記特定のステップの実行時に取得された各処理条件が、複数のグループに分類され、グループごとに学習処理が行われた場合において、各学習処理により生成された各グループの学習済みモデルを格納する格納部と、
テスト用のウェハに対して、特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて前記特定のステップを実行させた場合の効果が、前記特定のグループに対応する効果と等価でない場合に、前記特定のグループの学習済みモデルを更新する更新部と、
テスト用のウェハに対して、前記特定のステップを実行させた場合に、前記特定のグループに対応する効果が得られる設定データを、更新された前記学習済みモデルを用いて探索する探索部と、
処理用のウェハに対して、前記特定のステップを実行する際、探索された設定データを設定する設定部と
を有するエッチング処理装置。
【0128】
(付記2)
前記学習済みモデルは、前記特定のステップを実行する前のウェハの断面形状データと、前記特定のグループに対応する処理条件とを入力した場合の出力データが、前記特定のステップを実行した後のウェハの断面形状データに近づくように学習されている、付記1に記載のエッチング処理装置。
【0129】
(付記3)
前記更新部は、前記特定のグループに対応する効果と、テスト用のウェハに対して、特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて前記特定のステップを実行させた場合の効果とが等価となるように、前記特定のグループの学習済みモデルのモデルパラメータを更新する、付記1又は付記2に記載のエッチング処理装置。
【0130】
(付記4)
前記テスト用のウェハに対して、前記特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて前記特定のステップを実行させる前の前記テスト用のウェハの断面形状データと、実行させた後の前記テスト用のウェハの断面形状データとを測定する測定器を更に有し、
前記テスト用のウェハに対して、特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて前記特定のステップを実行させた場合の効果は、前記特定のステップを実行させる前の前記テスト用のウェハの断面形状データと、実行させた後の前記テスト用のウェハの断面形状データとに基づいて算出される、付記1から付記3のいずれかの付記に記載のエッチング処理装置。
【0131】
(付記5)
前記探索部は、前記テスト用のウェハの処理前の断面形状データを、更新された前記学習済みモデルに入力した場合の前記テスト用のウェハの処理後の断面形状データの予測値と、前記テスト用のウェハの処理前の断面形状データとに基づいて算出される効果が、前記特定のグループに対応付けられた効果に近づくように設定データを探索する、付記1から付記4のいずれかの付記に記載のエッチング処理装置。
【0132】
(付記6)
前記テスト用のウェハは、エッチング処理する対象膜の元素組成、膜密度、膜構造が、前記処理用のウェハと略等しい、付記1から付記5のいずれかの付記に記載のエッチング処理装置。
【0133】
(付記7)
エッチング処理の特定のステップを実行した際の効果の違いに応じて、前記特定のステップの実行時に取得された各処理条件が、複数のグループに分類され、グループごとに学習処理が行われた場合において、各学習処理により生成された各グループの学習済みモデルを格納する格納部と、
テスト用のウェハに対して、特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて前記特定のステップを実行させた場合の効果が、前記特定のグループに対応する効果と等価でない場合に、前記特定のグループの学習済みモデルを更新する更新部と、
テスト用のウェハに対して、前記特定のステップを実行させた場合に、前記特定のグループに対応する効果が得られる設定データを、更新された前記学習済みモデルを用いて探索する探索部と、
処理用のウェハに対して、前記特定のステップを実行する際、探索された設定データを設定する設定部と
を有するエッチング処理システム。
【0134】
(付記8)
エッチング処理の特定のステップを実行した際の効果の違いに応じて、前記特定のステップの実行時に取得された各処理条件が、複数のグループに分類され、グループごとに学習処理が行われた場合において、各学習処理により生成された各グループの学習済みモデルを格納する格納部と、
テスト用のウェハに対して、特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて前記特定のステップを実行させた場合の効果が、前記特定のグループに対応する効果と等価でない場合に、前記特定のグループの学習済みモデルを更新する更新部と、
テスト用のウェハに対して、前記特定のステップを実行させた場合に、前記特定のグループに対応する効果が得られる設定データを、更新された前記学習済みモデルを用いて探索する探索部と
を有する解析装置。
【0135】
(付記9)
エッチング処理の特定のステップを実行した際の効果の違いに応じて、前記特定のステップの実行時に取得された各処理条件が、複数のグループに分類され、グループごとに学習処理が行われた場合において、各学習処理により生成された各グループの学習済みモデルを格納する格納工程と、
テスト用のウェハに対して、特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて前記特定のステップを実行させた場合の効果が、前記特定のグループに対応する効果と等価でない場合に、前記特定のグループの学習済みモデルを更新する更新工程と、
テスト用のウェハに対して、前記特定のステップを実行させた場合に、前記特定のグループに対応する効果が得られる設定データを、更新された前記学習済みモデルを用いて探索する探索工程と、
処理用のウェハに対して、前記特定のステップを実行する際、探索された設定データを設定する設定工程と
を有するエッチング処理方法。
【0136】
(付記10)
エッチング処理の特定のステップを実行した際の効果の違いに応じて、前記特定のステップの実行時に取得された各処理条件が、複数のグループに分類され、グループごとに学習処理が行われた場合において、各学習処理により生成された各グループの学習済みモデルを格納する格納部を有する解析装置のコンピュータに、
テスト用のウェハに対して、特定のグループに対応する処理条件に含まれる設定データを用いて前記特定のステップを実行させた場合の効果が、前記特定のグループに対応する効果と等価でない場合に、前記特定のグループの学習済みモデルを更新する更新工程と、
テスト用のウェハに対して、前記特定のステップを実行させた場合に、前記特定のグループに対応する効果が得られる設定データを、更新された前記学習済みモデルを用いて探索する探索工程と、
を実行させるための解析プログラム。
【符号の説明】
【0137】
100 :エッチング処理システム
110 :複数のエッチング処理装置
120 :形状測定装置
130 :解析装置
131 :収集部
132 :生成部
140 :エッチング処理装置
150 :解析装置
151 :更新部
152 :探索部
154 :設定部
910 :予測モデル
1010 :予測モデル