(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167167
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】顔料分散組成物、感光性着色組成物及びカラーフィルター
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20231116BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20231116BHJP
G03F 7/033 20060101ALI20231116BHJP
C08F 290/12 20060101ALI20231116BHJP
C09B 67/46 20060101ALI20231116BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20231116BHJP
C09K 23/18 20220101ALI20231116BHJP
C09B 47/10 20060101ALN20231116BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G03F7/004 505
G03F7/004 504
G03F7/004 501
G03F7/033
C08F290/12
C09B67/46 B
C09B67/20 L
C09K23/18
C09B47/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078131
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100137017
【弁理士】
【氏名又は名称】眞島 竜一郎
(72)【発明者】
【氏名】西村 真之介
(72)【発明者】
【氏名】青木 優介
(72)【発明者】
【氏名】大竹 健太
(72)【発明者】
【氏名】木下 健宏
【テーマコード(参考)】
2H148
2H225
4J127
【Fターム(参考)】
2H148BE03
2H148BE09
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2H148BE15
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2H148BH28
2H225AC36
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2H225AD06
2H225AE13P
2H225AM11P
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2H225AN39P
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2H225BA35P
2H225CA17
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2H225CC13
4J127AA03
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4J127FA17
(57)【要約】
【課題】顔料分散性や保存安定性が良好な顔料分散組成物を提供し、それを感光性着色組成物に用いることにより、現像性が良好であると共に、低温で硬化が進行し、優れた耐溶剤性を有する硬化物を提供する。
【解決手段】本発明の顔料分散組成物は、バインダー樹脂(A-1)と、高分子分散剤(B)と、顔料(C)と、溶剤(D-1)と、を含有する。前記バインダー樹脂(A-1)が、第1バインダー樹脂(A-1a)を含有する。前記第1バインダー樹脂(A-1a)が、エポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)と、エポキシ基と反応性を有する官能基を有するエチレン性不飽和基含有化合物(a-1)との付加反応物である。前記高分子分散剤(B)が、エチレン性不飽和基および炭素-炭素三重結合を有する基からなる群から選択される一種以上を有する4級アンモニウムカチオン基(g-1)を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂(A-1)と、
高分子分散剤(B)と、
顔料(C)と、
溶剤(D-1)と、
を含有する顔料分散組成物であって、
前記バインダー樹脂(A-1)が、第1バインダー樹脂(A-1a)及び第2バインダー樹脂(A-1aa)から選択される少なくとも1種を含有し、
前記第1バインダー樹脂(A-1a)が、エポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)と、エポキシ基と反応性を有する官能基を有するエチレン性不飽和基含有化合物(a-1)との付加反応物であり、
前記第2バインダー樹脂(A-1aa)が、前記第1バインダー樹脂(A-1a)と、多塩基酸及び多塩基酸無水物から選択される一種以上の化合物(a-2)との付加反応物であり、
前記エポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)が、エポキシ基含有(メタ)アクリレート(m-1)を含有する重合性モノマー(M)の共重合体であり、
前記高分子分散剤(B)が、エチレン性不飽和基および炭素-炭素三重結合を有する基からなる群から選択される一種以上を有する4級アンモニウムカチオン基(g-1)を有することを特徴とする顔料分散組成物。
【請求項2】
前記第1バインダー樹脂(A-1a)及び前記第2バインダー樹脂(A-1aa)のエチレン性不飽和基量が、1600~8000μmol/gである請求項1に記載の顔料分散組成物。
【請求項3】
前記高分子分散剤(B)のエチレン性不飽和基及び炭素-炭素三重結合の合計量が、50~1600μmol/gである請求項1に記載の顔料分散組成物。
【請求項4】
前記重合性モノマー(M)において、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレート(m-1)の含有量が、40~100モル%である請求項1~3のいずれか一項に記載の顔料分散組成物。
【請求項5】
前記重合性モノマー(M)が、さらに炭素数7~20の橋かけ環式炭化水素基を有する重合性モノマー(m-2)を含み、
前記重合性モノマー(M)において、前記炭素数7~20の橋かけ環式炭化水素基を有する重合性モノマー(m-2)を0.5~25モル%含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の顔料分散組成物。
【請求項6】
前記第1バインダー樹脂(A-1a)において、前記エポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)の有するエポキシ基100モル%に対して、前記エポキシ基と反応性を有する官能基を有するエチレン性不飽和基含有化合物(a-1)の付加率が10~100モル%である請求項1~3のいずれか一項に記載の顔料分散組成物。
【請求項7】
前記バインダー樹脂(A-1)が、前記第2バインダー樹脂(A-1aa)を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の顔料分散組成物。
【請求項8】
前記高分子分散剤(B)に含まれる前記4級アンモニウムカチオン基(g-1)が、下記式(4)、下記式(5)、下記式(6)、および下記式(7)で示される基からなる群から選択される一種以上を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の顔料分散組成物。
-(CH2)m-O-(CO)-(NH)-(CH2)n-O-(CO)-CR1=CH2 (4)
-(CH2)m-O-(CO)-CR1=CH2 (5)
-(CH2)m-CR1=CH2 (6)
-(CH2)m-C≡CH (7)
(式(4)~(7)中、mおよびnは、それぞれ独立して、1~20の整数であり、R1は水素原子またはメチル基を示す。)
【請求項9】
前記高分子分散剤(B)が、アミノ基をさらに有する請求項1~3のいずれか一項に記載の顔料分散組成物。
【請求項10】
前記バインダー樹脂(A-1)が、第3バインダー樹脂(A-1b)をさらに含有し、
前記第3バインダー樹脂(A-1b)が、カルボキシ基含有樹脂前駆体(PA-1b)と、カルボキシ基と反応性を有する官能基を有するエチレン性不飽和基含有化合物(a-3)との付加反応物であり、
前記第3バインダー樹脂(A-1b)の酸価が、前記第1バインダー樹脂(A-1a)及び前記第2バインダー樹脂(A-1aa)よりも大きい請求項1~3のいずれか一項に記載の顔料分散組成物。
【請求項11】
前記顔料(C)が、ハロゲン化フタロシアニン骨格を有する顔料を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の顔料分散組成物。
【請求項12】
前記顔料(C)100質量部に対して、
前記バインダー樹脂(A-1)を10~80質量部を含有し、
前記高分子分散剤(B)を5~80質量部を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の顔料分散組成物。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか一項に記載の顔料分散組成物と、
バインダー樹脂(A-2)と、
反応性希釈剤(E)と、
光重合開始剤(F)と
を含有することを特徴とする感光性着色組成物。
【請求項14】
前記顔料(C)100質量部に対して、
前記バインダー樹脂(A-1)と前記バインダー樹脂(A-2)との合計を30~280質量部含有し、
前記高分子分散剤(B)を5~80質量部を含有し、
前記反応性希釈剤(E)を20~200質量部含有し、
前記光重合開始剤(F)を0.1~20質量部含有する請求項13に記載の感光性着色組成物。
【請求項15】
請求項13に記載の感光性着色組成物を硬化させてなる樹脂硬化膜。
【請求項16】
請求項13に記載の感光性着色組成物の硬化物を有するカラーフィルター。
【請求項17】
請求項16に記載のカラーフィルターを具備する画像表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散組成物、感光性着色組成物及びカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、省資源および省エネルギーの観点から、各種コーティング、印刷、塗料、接着剤などの分野において、紫外線、電子線などの活性エネルギー線により硬化可能な感光性樹脂組成物が広く使用されている。感光性樹脂組成物は、電子材料の分野において、プリント配線基板などのソルダーレジスト、液晶や有機EL等のディスプレイのカラーフィルター用レジストなどに使用されている。
【0003】
カラーフィルターは、一般に、ガラス基板などの透明基板と、透明基板上に形成された赤、緑及び青の画素と、画素の境界に形成されるブラックマトリックスと、画素及びブラックマトリックス上に形成される保護膜とから構成される。このような構成を有するカラーフィルターは、通常、透明基板上にブラックマトリックスや画素といった着色パターンや、保護膜といったパターンを順次形成することによって製造される。各種パターンの形成方法としては、様々な方法が提案されている。その中で、顔料/染料が分散された感光性樹脂組成物をレジストとして用い、塗布、露光、現像及びベーキングを繰り返すフォトリソグラフィ工法で作製されたカラーフィルターは、耐久性に優れ、ピンホールなどの欠陥が少ない着色パターンを与えるため、現在の主流となっている。
【0004】
一般に、フォトリソグラフィ工法に用いられる感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性のあるバインダー樹脂、反応性希釈剤、光重合開始剤、顔料/染料(着色剤ともいう)及び溶剤を含有する。この感光性樹脂組成物を用いたカラーフィルターを作製する方法では、ブラックマトリックス、赤、緑、青のパターンを繰り返し形成することから、感光性樹脂組成物の硬化物には、製造工程中に曝される各種溶剤に対する耐性が求められる。
加えて、有機ELの発光層は、熱に弱い部材を使用していることが多く、低い硬化温度で硬化するカラーフィルターが求められるようになっている。
【0005】
近年、液晶や有機EL等のディスプレイには高画質化、高精細化が求められており、カラーフィルターに対しても高輝度化、および色再現範囲の拡大を達成する設計が求められている。高輝度化や色再現範囲拡大を実現するため、着色剤として染料のみを用いる例も見られるが、染料は顔料に比べ耐熱性や溶剤耐性が劣り、使用割合や種類が限定されるため、多くの場合は色材に顔料を含有している。顔料を用いてカラーフィルターを形成する場合、顔料の均一な微細化が不可欠である。顔料を微細化することにより、カラーフィルターを透過する光の顔料粒子による散乱が低減され、透過率への寄与が高く、高輝度化が達成される。
しかし、微細化された顔料粒子は凝集しやすく、顔料の分散性や顔料分散組成物の保存安定性が低下しやすい問題があった。顔料分散組成物において微細化された顔料の分散性を向上する方法として、顔料と分散剤を併用することが有効である。
【0006】
さらに、色再現範囲を拡大するために、着色剤を高濃度配合する取組も行われている。着色剤の高濃度化に伴い、分散剤の濃度や他の組成物の濃度が相対的に低減するため、より少量の分散剤であっても、顔料分散性や顔料分散組成物の保存安定性、耐熱性、耐溶剤性、パターン密着性等の各種レジスト特性を発現することが求められる。
【0007】
一般的に分散剤は、顔料に吸着する部位と、溶剤や他の樹脂組成物と親和性の高い部位とを持ち合わせている。顔料に吸着する部位は、顔料の表面状態に合わせて最適構造が変化する。例えば、酸性に偏った表面を有する顔料には、塩基性の吸着部位を有する分散剤が用いられ、多くの場合、特許文献1のように塩基性の吸着部位にはアミノ基が用いられる。
また、近年では、特許文献1~3ように、分散剤に感光性基であるエチレン性不飽和基を導入し、硬化機能を付与し、よりよく光硬化する耐溶剤性に優れた分散剤も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2008-542523号公報
【特許文献2】国際公開第2006/075754号
【特許文献3】国際公開第2013/175978号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1~3に開示される分散剤を使用した場合、耐溶剤性が良好な硬化物が得られるが、顔料分散性が不十分で単独での使用が困難である場合や、顔料分散組成物の保存安定性も改善が必要であった。また、硬化性基であるエチレン性不飽和基の付加反応による架橋を進行するためには、高い硬化温度や強い紫外線照射が必要となるが、近年需要が拡大している有機ELなど熱に弱い材料を使用する場合、限られた温度条件(90~130℃程度)下で硬化物を作製しなければならず、本条件下では耐溶剤性が不十分な硬化物となり、改善が求められていた。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、顔料分散性や保存安定性が良好な顔料分散組成物を提供することを目的とし、本顔料分散組成物を使用した場合、現像性が良好であると共に、低温でも十分に硬化し、優れた耐溶剤性を有する硬化物が得られる感光性着色組成物、その硬化物を有するカラーフィルター、これを具備する画像表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の態様を含む。
[1] バインダー樹脂(A-1)と、
高分子分散剤(B)と、
顔料(C)と、
溶剤(D-1)と、
を含有する顔料分散組成物であって、
前記バインダー樹脂(A-1)が、第1バインダー樹脂(A-1a)及び第2バインダー樹脂(A-1aa)から選択される少なくとも1種を含有し、
前記第1バインダー樹脂(A-1a)が、エポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)と、エポキシ基と反応性を有する官能基を有するエチレン性不飽和基含有化合物(a-1)との付加反応物であり、
前記第2バインダー樹脂(A-1aa)が、前記第1バインダー樹脂(A-1a)と、多塩基酸及び多塩基酸無水物から選択される一種以上の化合物(a-2)との付加反応物であり、
前記エポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)が、エポキシ基含有(メタ)アクリレート(m-1)を含有する重合性モノマー(M)の共重合体であり、
前記高分子分散剤(B)が、エチレン性不飽和基および炭素-炭素三重結合を有する基からなる群から選択される一種以上を有する4級アンモニウムカチオン基(g-1)を有することを特徴とする顔料分散組成物。
[2] 前記第1バインダー樹脂(A-1a)及び第2バインダー樹脂(A-1aa)のエチレン性不飽和基量が、1600~8000μmol/gである[1]に記載の顔料分散組成物。
[3] 前記高分子分散剤(B)のエチレン性不飽和基量が、50~1600μmol/gである[1]又は[2]に記載の顔料分散組成物。
[4] 前記重合性モノマー(M)において、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレート(m-1)の含有量が、40~100モル%である[1]~[3]のいずれかに記載の顔料分散組成物。
[5] 前記重合性モノマー(M)が、さらに炭素数7~20の橋かけ環式炭化水素基を有する重合性モノマー(m-2)を含み、
前記重合性モノマー(M)において、前記炭素数7~20の橋かけ環式炭化水素基を有する重合性モノマー(m-2)を0.5~25モル%含有する[1]~[4]のいずれかに記載の顔料分散組成物。
[6] 前記第1バインダー樹脂(A-1a)において、前記エポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)の有するエポキシ基100モル%に対して、前記エポキシ基と反応性を有する官能基を有するエチレン性不飽和基含有化合物(a-1)の付加率が10~100モル%である[1]~[5]のいずれかに記載の顔料分散組成物。
[7] 前記バインダー樹脂(A-1)が、前記第2バインダー樹脂(A-1aa)を含有する[1]~[6]のいずれかに記載の顔料分散組成物。
[8] 前記高分子分散剤(B)に含まれる前記4級アンモニウムカチオン基(g-1)が、下記式(4)、下記式(5)、下記式(6)、および下記式(7)で示される基からなる群から選択される一種以上を有する[1]~[7]のいずれかに記載の顔料分散組成物。
-(CH2)m-O-(CO)-(NH)-(CH2)n-O-(CO)-CR1=CH2 (4)
-(CH2)m-O-(CO)-CR1=CH2 (5)
-(CH2)m-CR1=CH2 (6)
-(CH2)m-C≡CH (7)
(式(4)~(7)中、mおよびnは、それぞれ独立して、1~20の整数であり、R1は水素原子またはメチル基を示す。)
[9] 前記高分子分散剤(B)が、アミノ基をさらに有する[1]~[8]のいずれかに記載の顔料分散組成物。
[10] 前記バインダー樹脂(A-1)が、第3バインダー樹脂(A-1b)をさらに含有し、
前記第3バインダー樹脂(A-1b)が、カルボキシ基含有樹脂前駆体(PA-1b)と、カルボキシ基と反応性を有する官能基を有するエチレン性不飽和基含有化合物(a-3)との付加反応物であり、
前記第3バインダー樹脂(A-1b)の酸価が、前記第1バインダー樹脂(A-1a)及び前記第2バインダー樹脂(A-1aa)よりも大きい[1]~[9]のいずれかに記載の顔料分散組成物。
[11] 前記顔料(C)が、ハロゲン化フタロシアニン骨格を有する顔料を含む[1]~[10]のいずれかに記載の顔料分散組成物。
[12] 前記顔料(C)100質量部に対して、
前記バインダー樹脂(A-1)を10~80質量部を含有し、
前記高分子分散剤(B)を5~80質量部を含有する[1]~[11]のいずれかに記載の顔料分散組成物。
[13] [1]~[12]のいずれかに記載の顔料分散組成物と、
バインダー樹脂(A-2)と、
反応性希釈剤(E)と、
光重合開始剤(F)と
を含有することを特徴とする感光性着色組成物。
[14] 前記顔料(C)100質量部に対して、
前記バインダー樹脂(A-1)と前記バインダー樹脂(A-2)との合計を30~280質量部含有し、
前記高分子分散剤(B)を5~80質量部を含有し、
前記反応性希釈剤(E)を20~200質量部含有し、
前記光重合開始剤(F)を0.1~20質量部含有する[13]に記載の感光性着色組成物。
[15] [13]又は[14]に記載の感光性着色組成物を硬化させてなる樹脂硬化膜。
[16] [13]又は[14]に記載の感光性着色組成物の硬化物を有するカラーフィルター。
[17] [16]に記載のカラーフィルターを具備する画像表示素子。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、顔料分散性や保存安定性が良好な顔料分散組成物を提供することができる。また、当該顔料分散組成物を感光性着色組成物に用いることにより、現像性が良好であると共に、低温で硬化が進行し、優れた耐溶剤性を有する硬化物が得られる。さらに、当該感光性着色組成物の硬化物を有するカラーフィルター、これを具備する画像表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、メタクリロイルオキシ基およびアクリロイルオキシ基から選択される一種以上を表す。「(メタ)アクリル酸」「(メタ)アクリレート」も同様である。
【0014】
<顔料分散組成物>
本発明の一実施形態の顔料分散組成物(「本実施形態の顔料分散組成物」ということがある。)は、バインダー樹脂(A-1)と、高分子分散剤(B)と、顔料(C)と、溶剤(D-1)とを含有する。
【0015】
[バインダー樹脂(A-1)]
本実施形態に係るバインダー樹脂(A-1)は、第1バインダー樹脂(A-1a)及び第2バインダー樹脂(A-1aa)から選択される少なくとも1種を含有する。バインダー樹脂(A-1)は、必要に応じて、さらに第3バインダー樹脂(A-1b)を含有しても良い。
【0016】
<第1バインダー樹脂(A-1a)>
本実施形態に係る第1バインダー樹脂(A-1a)は、エポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)と、エポキシ基と反応性を有する官能基を有するエチレン性不飽和基含有化合物(a-1)(以下、単に「化合物(a-1)」とも言う)との付加反応物である。
本実施形態の顔料分散組成物が、第1バインダー樹脂(A-1a)を含有することにより、後述の高分子分散剤(B)や顔料(C)との親和性を発揮し、顔料分散性や保存安定性に優れた顔料分散組成物を得ることができる。また、第1バインダー樹脂(A-1a)の合成手法においては、硬化性基であるエチレン性不飽和基の導入過程において副反応の進行が少ない。したがって、樹脂の酸価や分子量といった基礎物性の制御が容易なためゲル化などの反応暴走の恐れが少なく、従来の樹脂では困難であった高い導入量のエチレン性不飽和基を有するバインダー樹脂を提供できる。すなわち、感光性着色組成物を硬化させて樹脂硬化膜を得る過程において、制限された熱硬化のための温度条件下においても、第1バインダー樹脂(A-1a)を含有することにより、優れた耐溶剤性を有する硬化物を提供できる。
【0017】
本実施形態に係る第1バインダー樹脂(A-1a)のエチレン性不飽和基量は、1600~8000μmol/gであることが好ましく、3100~7000μmol/gであることがより好ましく、3800~6000μmol/gであることがさらに好ましい。エチレン性不飽和基量が、1600μmol/g以上であると、十分な低温硬化性が得られ、低温で硬化させた樹脂硬化膜が十分な耐溶剤性を発揮する。エチレン性不飽和基量が、8000μmol/g以下であると、顔料分散組成物の保存安定性が良好である。
【0018】
本実施形態に係る第1バインダー樹脂(A-1a)の酸価は、200mgKOH/g以下であることが好ましく、160mgKOH/g以下であることがより好ましく、120mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。酸価が200mgKOH/g以下であると、顔料分散組成物の保存安定性が良好である。
【0019】
本実施形態に係る第1バインダー樹脂(A-1a)の重量平均分子量は、3000~50000が好ましく、5000~30000がより好ましく、7000~20000がさらに好ましい。重量平均分子量が3000以上、50000以下であると、顔料分散液にした際に特に良好な分散安定性が得られる。
【0020】
本実施形態に係る第1バインダー樹脂(A-1a)の含有量は、バインダー樹脂(A-1)中、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。第1バインダー樹脂(A-1a)の含有量が10質量%以上であることによって第1バインダー樹脂(A-1a)に豊富に含まれるエチレン性不飽和基の架橋に伴う強固な塗膜の形成が期待でき、良好な低温硬化性と低温硬化させた樹脂硬化膜の耐溶剤性が期待できる。一方、場合によっては、後述する第2バインダー樹脂(A-1aa)、第3バインダー樹脂(A-1b)などのより酸価の高いバインダー樹脂を併用することによって、感光性着色組成物として十分な低温硬化性を発現しながら、アルカリ現像速度の調節が可能となる。このような観点から、第1バインダー樹脂(A-1a)の含有量は、100質量%以下であっても良いし、90質量%以下、70質量%以下、50質量%以下であっても良い。
【0021】
本実施形態に係るエポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)は、エポキシ基含有(メタ)アクリレート(m-1)を含有する重合性モノマー(M)の共重合体である。エポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)を得るための重合性モノマー(M)として、必要に応じて、炭素数7~20の橋かけ環式炭化水素基を有する重合性モノマー(m-2)(以下、単に「重合性モノマー(m-2)」とも言う。)、その他モノマー(m-3)を併用することができる。
第1バインダー樹脂(A-1a)の製造にエポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)を用いることにより、後の過程で共重合体にエチレン性不飽和基を導入する際、高い選択性と反応率で付加反応が進行することが期待できる。したがって、未反応モノマーの残存の可能性が小さく高品質なバインダー樹脂(A-1)が得られる。
【0022】
本実施形態に係るエポキシ基含有(メタ)アクリレート(m-1)は、エポキシ基および(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であれば、特に限定されない。具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、入手容易性や、後述する化合物(a-1)をさらに付加する観点から、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0023】
本実施形態に係るエポキシ基含有(メタ)アクリレート(m-1)の含有量は、重合性モノマー(M)100モル%に対して、40~100モル%であることが好ましく、50~98モル%であることがより好ましく、80~96モル%であることがさらに好ましい。40モル%以上であることによって、後述の化合物(a-1)に対し十分な反応点ひいては反応性を提供できる。
【0024】
本実施形態に係る重合性モノマー(m-2)は、エポキシ基を有さず、炭素数7~20の橋掛け環式炭化水素基と、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性モノマーである。重合性モノマー(m-2)を含むことで、高い表面硬度を持ち、顔料(C)のブリードアウトを抑えられるカラーフィルターを提供できる。それと同時に、高い耐熱分解性及び高い耐熱黄変性を持ち、ベーク後のカラーフィルターの色変化を小さくすることができる。
具体的には、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート、ノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン)、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、ジシクロペンタジエン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3-エン、トリシクロ[6.2.1.01,8]ウンデカ-9-エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10.01,6]ドデカ-3-エン、8-エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,12]ドデカ-3-エン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ-4-エン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
特に、表面硬度の観点から、炭素数7~20の橋掛け環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0026】
重合性モノマー(m-2)の含有量は、重合性モノマー(M)100モル%に対して、0.5~25モル%であることが好ましく、1~20モル%であることがより好ましく、2~15モル%であることがさらに好ましい。0.5モル%以上であることによって、重合性モノマー(m-2)が有する高い耐熱分解性及び高い耐熱黄変性をバインダー樹脂(A-1)に付与することができる。一方、含有量を25モル%以下にすることによって、バインダー樹脂(A-1)のガラス転移温度の過度な増加を防ぎ、感光性着色組成物の紫外線露光時のエチレン性不飽和基による架橋反応の進行を妨げず、高い表面硬度を有するカラーフィルターを提供できる。
【0027】
本実施形態に係るその他モノマー(m-3)は、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレート(m-1)、重合性モノマー(m-2)以外の重合性モノマーである。すなわち、エポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)は、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレート(m-1)、重合性モノマー(m-2)以外に共重合可能なその他重合性モノマーを含有しても良い。その他モノマー(m-3)は、一般にエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物であり、エポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)におけるエポキシ基含有(メタ)アクリレート(m-1)、重合性モノマー(m-2)由来の所望の特性を妨げない範囲であれば、次に示す具体例を含む重合性モノマーを1種類以上構成単位として含んでもよい。
その他モノマー(m-3)の具体例としては、ブタジエン等のジエン類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソ-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、イソ-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;
2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、3-イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、2-イソシアナト-1-メチルエチル(メタ)アクリレート、2-イソシアナト-1,1-ジメチルエチル(メタ)アクリレート、4-イソシアナトシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアナト基含有(メタ)アクリル酸エステル類、前記イソシアナト基含有(メタ)アクリル酸エステルのイソシアナト基を、ブロック剤を用いてブロック化したブロックイソシアナト基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジプロピルアミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジ-イソ-プロピルアミド、(メタ)アクリル酸アントラセニルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド;
(メタ)アクリル酸アニリド、(メタ)アクリロイルニトリル、アクロレイン;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N-ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニル、ビニルトルエン等のビニル化合物;
N-シクロヘキシルマレイミド、N-ラウリルマレイミド等のマレイミド類;シトラコン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等の不飽和ジカルボン酸ジエステル等が挙げられる。
これらは、必要に応じて、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その他モノマー(m-3)の中でも、エポキシ基含有(メタ)アクリレート(m-1)、重合性モノマー(m-2)以外であって、芳香環を含む重合性モノマーは好ましい。具体例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トリフェニルメチル(メタ)アクリレート、クミル(メタ)アクリレート、ロジン(メタ)アクリレート、ナフタレン(メタ)アクリレート、アントラセン(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、スチレン、スチレンのα-、o-、m-、p-アルキル、ニトロ、シアノ、アミド誘導体、N-フェニルマレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド等が挙げられる。モノマー(m-3)が具体例に示したような芳香環を含む重合性モノマーである場合、バインダー樹脂(A-1)の顔料(C)との親和性が向上し、顔料分散性や保存安定性に優れた顔料分散組成物が得られる。それに伴い、顔料の高濃度化により、高分子分散剤(B)やバインダー樹脂(A-1)の濃度が低減した場合においても、十分な顔料分散性や保存安定性が得られる顔料分散組成物を提供することができる。
【0028】
本実施形態に係るその他モノマー(m-3)の含有量は、重合性モノマー(M)100モル%に対して、0.5~40モル%が好ましく、1~30モル%がより好ましく、2~20モル%がさらに好ましい。
【0029】
本実施形態に係るエポキシ基と反応性を有する官能基を有するエチレン性不飽和基含有化合物(a-1)は、エポキシ基との反応性を有する官能基、及びエチレン性不飽和基を有していれば特に限定されない。エポキシ基との反応性を有する官能基としては、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基などが挙げられるが、入手容易性や反応性の観点からカルボキシ基が好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0030】
本実施形態に係る化合物(a-1)の付加率は、前記エポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)の有するエポキシ基100モル%に対して、10~100モル%であることが好ましく、50~100モル%であることがより好ましく、60~100モル%であることがさらに好ましく、80~100モル%であることが特に好ましい。10%以上の付加率であることによって、顔料分散組成物の感光性が発現し、50%以上であることによって、残存するエポキシ基数を減らし不要な架橋反応などの副反応の可能性を低減することができる。また、60モル%以上であることによって、良好な保存安定性を有しつつ従来の顔料分散液を大きく凌駕する耐溶剤性を有する感光性着色組成物を提供できる。
【0031】
<第2バインダー樹脂(A-1aa)>
本実施形態に係る第2バインダー樹脂(A-1aa)は、前記第1バインダー樹脂(A-1a)と、多塩基酸及び多塩基酸無水物から選択される一種以上の化合物(a-2)(以下、単に「化合物(a-2)」とも言う)との付加反応物である。
本実施形態に係る化合物(a-2)は、多塩基酸構造を有する化合物、あるいは多塩基酸構造を有する化合物の酸無水物であれば特に限定されない。前記第1バインダー樹脂(A-1a)が有するヒドロキシ基の一部に対し、化合物(a-2)を付加することによって、前記第1バインダー樹脂(A-1a)にカルボキシ基が導入される。前記第1バインダー樹脂(A-1a)の前記ヒドロキシ基とは、前記エポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)のエポキシ基含有(メタ)アクリレート(m-1)由来のエポキシ基と化合物(a-1)との開環付加反応時に生じたものである。
【0032】
本実施形態に係る第2バインダー樹脂(A-1aa)のエチレン性不飽和基量は、1600~8000μmol/gであることが好ましく、3100~7000μmol/gであることがより好ましく、3800~6000μmol/gであることがさらに好ましい。エチレン性不飽和基量が、1600μmol/g以上であると、十分な低温硬化性が得られ、低温で硬化させた樹脂硬化膜が十分な耐溶剤性を発揮する。エチレン性不飽和基量が、8000μmol/g以下であると、顔料分散組成物の保存安定性が良好である。
【0033】
本実施形態に係る第2バインダー樹脂(A-1aa)の酸価は、1~200mgKOH/gであることが好ましく、5~160mgKOH/gであることがより好ましく、10~120mgKOH/gであることがさらに好ましい。酸価が200mgKOH/g以下であると、顔料分散組成物の保存安定性が良好である。
【0034】
本実施形態に係る第2バインダー樹脂(A-1aa)の重量平均分子量は、3000~50000が好ましく、5000~30000がより好ましく、7000~20000がさらに好ましい。重量平均分子量が3000以上、50000以下であると、顔料分散液にした際に特に良好な分散安定性が得られる。
【0035】
本実施形態に係る第2バインダー樹脂(A-1aa)の含有量は、バインダー樹脂(A-1)中、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。第2バインダー樹脂(A-1aa)の含有量が10質量%以上であることによって第2バインダー樹脂(A-1aa)に豊富に含まれるエチレン性不飽和基の架橋に伴う強固な塗膜の形成が期待でき、良好な低温硬化性と低温硬化させた樹脂硬化膜の耐溶剤性が期待できる。一方、場合によっては、後述する第3バインダー樹脂(A-1b)などのより酸価の高いバインダー樹脂を併用することによって、感光性着色組成物として十分な低温硬化性を発現しながら、アルカリ現像速度の調節が可能となる。このような観点から、第2バインダー樹脂(A-1aa)の含有量は、100質量%以下であっても良いし、90質量%以下、70質量%以下、50質量%以下であっても良い。
【0036】
本実施形態に係る化合物(a-2)として、具体的には、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、無水コハク酸、オクテニルコハク酸無水物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いても良い。
【0037】
本実施形態に係る化合物(a-2)の付加率は、前記第1バインダー樹脂(A-1a)が有するヒドロキシ基100モル%に対して、0.5~50モル%であることが好ましく、3~45モル%がより好ましく、7~35モル%がさらに好ましい。化合物(a-2)の付加率を上記の範囲内に収めることによって、第1バインダー樹脂(A-1a)に対しカルボキシ基の導入による現像性の向上効果を付与しつつ、未反応モノマーの残存も低減できる。
【0038】
<第3バインダー樹脂(A-1b)>
本実施形態に係る第3バインダー樹脂(A-1b)は、カルボキシ基含有樹脂前駆体(PA-1b)と、カルボキシ基と反応性を有する官能基を有するエチレン性不飽和基含有化合物(a-3)(以下、単に「化合物(a-3)」とも言う)との付加反応物であり、前記第1バインダー樹脂(A-1a)及び前記第2バインダー樹脂(A-1aa)よりも高い酸価を有する樹脂である。また、必要に応じて前記化合物(a-2)を任意の割合でさらに付加してもよい。第3バインダー樹脂(A-1b)を用いることにより、感光性着色組成物としての現像性を向上させることができる。
【0039】
本実施形態に係る第3バインダー樹脂(A-1b)のエチレン性不飽和基量は、500~6000μmol/gであることが好ましく、700~5000μmol/gであることがより好ましく、900~4000μmol/gであることがさらに好ましい。エチレン性不飽和基量が500μmol/g以上であれと感光性着色組成物としての低温硬化性が良好である。エチレン性不飽和基量が6000μmol/g以下であると、第3バインダー樹脂(A-1b)として十分量の酸価を確保でき、感光性着色組成物としての現像性が良好である。
【0040】
本実施形態に係る第3バインダー樹脂(A-1b)の酸価は、10~300mgKOH/gであることが好ましく、20~250mgKOH/gであることがより好ましく、50~230mgKOH/gであることがさらに好ましい。第3バインダー樹脂(A-1b)の酸価を上記範囲とすることにより、感光性着色組成物としての現像性を向上させることができ、顔料分散組成物の保存安定性が良好である。
【0041】
本実施形態に係る第3バインダー樹脂(A-1b)の重量平均分子量は、3000~50000が好ましく、5000~30000がより好ましい。
【0042】
カルボキシ基含有樹脂前駆体(PA-1b)は、カルボキシ基含有モノマー(m-4)を含有する重合性モノマー(M’)の共重合体である。カルボキシ基含有樹脂前駆体(PA-1b)を得るための重合性モノマー(M’)として、必要に応じて、前記重合性モノマー(m-2)、前記その他モノマー(m-3)を併用することができる。
カルボキシ基含有モノマー(m-4)は、カルボキシ基とエチレン性不飽和基とを有するモノマーであれば特に限定されない。具体的には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸のα位ハロアルキル、アルコキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ置換体等の不飽和一塩基酸が挙げられる。中でも、カルボキシ基含有樹脂前駆体(PA-1b)を得るための反応性の観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。
本実施形態に係るカルボキシ基と反応性を有する官能基を有するエチレン性不飽和基含有化合物(a-3)は、カルボキシ基との反応性を有する官能基とエチレン性不飽和基を共に有する化合物であれば特に限定されない。カルボキシ基との反応性を有する官能基としては、ヒドロキシ基、メルカプト基、ブロックイソシアナト基、エポキシ基などが挙げられる。その中でも、カルボキシ基との反応性の観点から、エポキシ基を有する化合物が好ましく、その意味で前記エポキシ基含有(メタ)アクリレート(m-1)と同様の化合物が特に好ましい。さらに入手容易性の観点から、グリシジル(メタ)アクリレートが極めて好ましい。
【0043】
本実施形態に係る第3バインダー樹脂(A-1b)の含有量は、バインダー樹脂(A-1)中、90質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。90質量%以下にすることによって第1バインダー樹脂(A-1a)又は第2バインダー樹脂(A-1aa)の優れた低温硬化性の発現が期待できる。一方、前記範囲において第1バインダー樹脂(A-1a)及び第2バインダー樹脂(A-1aa)より高い酸価を有する第3バインダー樹脂(A-1b)を配合することにより、感光性着色組成物としてのアルカリ現像速度を自由に調節することが可能となる。
【0044】
本実施形態の顔料分散組成物中において、バインダー樹脂(A-1)の含有量は、前記顔料(C)100質量部に対して、10~80質量部であることが好ましく、15~75質量部がより好ましく、20~65質量部がさらに好ましい。バインダー樹脂(A-1)の含有量が10質量部以上であると、現像性が良好な感光性着色組成物が得られるとともに、耐熱性、耐溶剤性、パターン密着性に優れた樹脂硬化膜を得ることができる。バインダー樹脂(A-1)の含有量が80質量部以下であると、顔料(C)の含有量を十分に確保することができ、色再現性に優れた樹脂硬化膜を得ることができる。
【0045】
<高分子分散剤(B)>
本実施形態に係る高分子分散剤(B)は、エチレン性不飽和基および炭素-炭素三重結合を有する基からなる群から選択される一種以上を有する4級アンモニウムカチオン基(g-1)(以下、単に「4級アンモニウムカチオン基(g-1)」とも言う)を有するものであれば、特に限定されない。高分子分散剤(B)は、エチレン性不飽和基および炭素-炭素三重結合を有する基からなる群から選択される一種以上を有することにより、バインダー樹脂(A-1)及び後述の反応性希釈剤(E)が有するエチレン性不飽和基と反応して架橋することができる。従って、感光性着色組成物を低温で加熱処理(90~130℃)させた場合でも、耐溶剤性に優れた樹脂硬化膜が得られる。
本明細書において、4級アンモニウムカチオン基とは、窒素原子に4つの炭素原子が結合している基を指し、アミド結合やウレア結合は含まれない。
【0046】
また、高分子分散剤(B)は、4級アンモニウムカチオン基(g-1)の他にアミノ基を有しても良い。
本実施形態に係る高分子分散剤(B)が有していても良いアミノ基としては、1級、2級、3級のアミノ基が挙げられる。それぞれ、1級アミノ基は窒素原子に1つの炭素原子が結合している基、2級アミノ基は窒素原子に2つの炭素原子が結合している基、3級アミノ基は窒素原子に3つの炭素原子が結合している基を指す。特に高分子分散剤(B)が3級アミノ基及び4級アンモニウムカチオン基(g-1)を有する場合には、顔料分散組成物中の顔料の分散性を有するとともに、保存安定性が良好であり、感光性着色組成物とした際の現像性が良好である。
【0047】
前記高分子分散剤(B)に含まれる4級アンモニウムカチオン基(g-1)は、後述する顔料(B)との親和性を有する観点から、下記式(1)、下記式(2)、および下記式(3)で示される基からなる群から選択される一種が有するエチレン性不飽和基或いは炭素-炭素三重結合を有する基であることが好ましい。すなわち、前記高分子分散剤(B)に含まれる4級アンモニウムカチオン基(g-1)が、下記式(1)、下記式(2)、および下記式(3)で示される基からなる群から選択される一種以上を有することが好ましい。
【0048】
-(CH2)m-O-X-(CO)-CR1=CH2 (1)
-(CH2)m-X-CR1=CH2 (2)
-(CH2)m-X-C≡CH (3)
【0049】
(式(1)~(3)中、mは1~20の整数であり、Xは単結合または炭素数1~20の2価の連結基であり、R1は水素原子またはメチル基を示す。)
式(1)~(3)中、mは1~20であり、1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。Xが示す2価の連結基は、炭素数1~20であり、炭素数1~10であることが好ましく、炭素数1~6であることがより好ましい。Xが示す2価の連結基は、エーテル結合、エステル結合、アミド結合等を含んでも良い。具体的には、メチレン基、エチレン基等のアルキレン基、メチレンオキサイド、エチレンオキサイド、ジエチレンオキサイド等の(ポリ)アルキレンオキサイド、等が挙げられる。
【0050】
前記エチレン性不飽和基および前記炭素-炭素三重結合を有する基は、高分子分散剤(B)の合成容易性や原材料の入手容易性、もしくは後述する顔料(C)との親和性を大きく損なわない観点から、下記式(4)、下記式(5)、下記式(6)、および下記式(7)で示される基からなる群から選択される一種が有するエチレン性不飽和基あるいは炭素-炭素三重結合を有する基であることがより好ましい。すなわち、前記高分子分散剤(B)に含まれる4級アンモニウムカチオン基(g-1)が、下記式(4)、下記式(5)、下記式(6)、および下記式(7)で示される基からなる群から選択される一種以上を有することがより好ましい。
【0051】
-(CH2)m-O-(CO)-(NH)-(CH2)n-O-(CO)-CR1=CH2 (4)
-(CH2)m-O-(CO)-CR1=CH2 (5)
-(CH2)m-CR1=CH2 (6)
-(CH2)m-C≡CH (7)
【0052】
(式(4)~(7)中、mおよびnは、それぞれ独立して、1~20の整数であり、R1は水素原子またはメチル基を示す。)
式(4)~(7)中、m及びR1の定義や好適範囲は式(1)~(3)に示すものと同様である。nは、1~19であり、1~9であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。
【0053】
本実施形態に係る高分子分散剤(B)としては、3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)と官能基含有ハロゲン化合物(b-1)の付加反応物と、該官能基との反応性を有する基とエチレン性不飽和基および炭素-炭素三重結合を有する基からなる群から選択される一種以上とを有する化合物(b-2)(以下、単に「化合物(b-2)」とも言う)との付加反応物、あるいは3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)とエチレン性不飽和基および炭素-炭素三重結合を有する基からなる群から選択される一種以上を含有するハロゲン化合物(b-3)(以下、単に「ハロゲン化合物(b-3)」とも言う)との付加反応物であることが好ましい。ハロゲン化合物とは、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子が結合している有機化学物質を意味する。
3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)と、前記官能基含有ハロゲン化合物(b-1)とが反応する際、前記官能基含有ハロゲン化合物(b-1)のハロゲン原子が外れた残基が3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)の3級アミノ基に配位し、4級アンモニウムカチオン基となる。次いで、前記官能基含有ハロゲン化合物(b-1)由来の官能基に化合物(b-2)が反応することにより、4級アンモニウムカチオンにエチレン性不飽和基および炭素-炭素三重結合を有する基からなる群から選択される一種以上が導入され、4級アンモニウムカチオン基(g-1)となる。あるいは、3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)と、ハロゲン化合物(b-3)とを反応させれば、3級アミノ基の4級アンモニウムカチオン基化と、エチレン性不飽和基および炭素-炭素三重結合を有する基からなる群から選択される一種以上の導入を同時に行うことができ、一度の反応で3級アミノ基から4級アンモニウムカチオン基(g-1)を得ることができる。
【0054】
<3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)>
本実施形態に係る3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)としては、例えば、3級アミノ基とエチレン性不飽和基を有するモノマーを単独重合又は他のエチレン性不飽和基を有するモノマーと共重合させたポリアミンが挙げられる。このような高分子化合物としては、例えば、ビニル3級アミンの重合体もしくはアリル3級アミンの重合体であるポリ3級アミン;またはビニル3級アミンもしくはアリル3級アミンと、他のエチレン性不飽和基を有するモノマーと共重合させたポリ3級アミン;1-置換アジリジン類や2-オキサゾリン等を開環重合させたポリマー;エチレンジアミンやヘキサメチレンジアミン等の多官能アミン化合物とハロアルカン等を重縮合させたポリアルキレンイミン等が挙げられる。前記3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)は、3級アミノ基の他にも、効果を損なわない範囲で1級アミノ基、2級アミノ基、不飽和基を有さない4級アンモニウムカチオン基、アミド、イミド、ウレア、ウレタン等が含まれていても良く、これらに対しても官能基含有ハロゲン化合物(b-1)が付加することを妨げない。上述したように、顔料分散性に大きく寄与するのはアミン構造であるため、アミド、イミド、ウレア、ウレタン結合は実質的に含まない方が好ましい。中でも3級アミノ基とエチレン性不飽和基を有するモノマーと他のエチレン性不飽和基を有するモノマーとをブロック重合させたポリ3級アミンが好ましい。ブロック重合させたポリ3級アミンを用いることで、片末端領域に3級アミノ基が偏在し、これを4級アンモニウムカチオン基(g-1)に変換して高分子分散剤(B)としたときに、顔料(C)との親和性が向上する。また、もう一方の片末端領域は、他の顔料分散組成物、具体的にはバインダー樹脂(A-1)や後述する溶剤(D-1)との親和性が高まることで、顔料分散性や顔料分散組成物の保存安定性を飛躍的に向上することができる。
【0055】
3級アミノ基とエチレン性不飽和基を有するモノマーの具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、又はアクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。これらのモノマーは単独で用いても良いし、2種以上を用いても良い。中でも、顔料分散組成物の分散性向上や保存安定性向上に大きく寄与することから、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0056】
他のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、一例として、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、(ポリ)オキシアルキレン骨格等を有する(メタ)アクリレートが挙げられるが、他の顔料分散組成物と親和性を損なうものでなければ特に制限は無い。具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、又はエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、スチレン又はα-メチルスチレン等のスチレン類、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、又はイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、又はプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類等が挙げられる。これらのモノマーは単独で用いても良いし、2種以上を用いても良い。
【0057】
本実施形態に係る3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)は、市販品を用いても良いし、自ら準備しても良い。市販品を利用する場合、好適な3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)の一例として、ビックケミー社製のDISPERBYKシリーズ、ルーブリゾール社製のソルスパーズシリーズ、BASF社製のEFKA-PXシリーズ等が挙げられる。自ら準備する場合は、公知の重合体製造方法を利用する。これらの3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)は、必要に応じて、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
<官能基含有ハロゲン化合物(b-1)>
本実施形態に係る官能基含有ハロゲン化合物(b-1)としては、官能基を有するモノハロゲン化合物であれば特に限定されず、官能基の数も特に限定されない。例えば、ブロックイソシアナト基、アルキルエステル基、エポキシ基、オキセタニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、およびカルボキシ基からなる群から選択される1種以上を有する化合物の臭素化物、塩素化物、ヨウ素化物等が挙げられる。具体的には、2-ブロモエタノール、エピブロモヒドリン等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても良いし、2種以上を用いても良い。中でも、反応性の観点から、臭素化物が好ましい。
【0059】
<官能基との反応性を有する基とエチレン性不飽和基および炭素-炭素三重結合を有する基からなる群から選択される一種以上とを有する化合物(b-2)>
本実施形態に係る化合物(b-2)としては、前記官能基含有ハロゲン化合物(b-1)が有する官能基との反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを分子内にともに有する化合物であれば特に限定しない。官能基含有ハロゲン化合物(b-1)の官能基に対応する反応性を有する官能基としては、ブロックイソシアナト基、アルキルエステル基、エポキシ基、オキセタニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基などが挙げられる。具体的には、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても良いし2種以上を用いても良い。中でも、反応性の観点から、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートが好ましい。
【0060】
<エチレン性不飽和基および炭素-炭素三重結合を有する基からなる群から選択される一種以上を含有するハロゲン化合物(b-3)>
本実施形態に係る化合物(b-3)としては、エチレン性不飽和基及び/または炭素-炭素三重結合を有するモノハロゲン化合物であれば特に限定されず、一分子あたりに含まれる不飽和基の数も特に限定されない。ハロゲン化合物として、臭素化物、塩素化物、ヨウ素化物等が挙げられるが、中でも、反応性の観点から臭素化物が好ましい。具体的には、3-ブロモ-1-プロペン、4-ブロモ-1-ブテン、5-ブロモ-1-ペンテン、6-ブロモ-1-ヘキセン、7-ブロモ-1-ヘプテン、8-ブロモ-1-オクテン、9-ブロモ-1-ノネン、10-ブロモ-1-デケン、5-ブロモ-1-ペンチン、3-ブロモ-1-プロピン、4-ブロモ-1-ブチン、5-ブロモ-1-ペンチン、6-ブロモ-1-ヘキシン、7-ブロモ-1-ヘプチン、8-ブロモ-1-オクチン、9-ブロモ-1-ノニン、10-ブロモ-1-デキンなどが挙げられる。中でも、ハロゲン原子の活性の上昇に伴う反応性の向上の観点から、3-ブロモ-1-プロペン、3-ブロモ-1-プロピンが好ましい。
【0061】
本実施形態に係る3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)が有するアミノ基の総量に対する、官能基含有ハロゲン化合物(b-1)の付加率は、5~95%であることが好ましく、10~90%であることがより好ましく、30~80%であることがさらに好ましい。官能基含有ハロゲン化合物(b-1)、ひいては化合物(b-2)の付加率が5%以上であると、高分子分散剤(B)にエチレン性不飽和基が十分量導入されるため、バインダー樹脂(A-1)及び後述の反応性希釈剤(E)が有するエチレン性不飽和基との架橋量を十分に確保でき、感光性着色組成物としての低温硬化性が良好で、優れた耐溶剤性を有する樹脂硬化膜が得られる。官能基含有ハロゲン化合物(b-1)の付加率が95%以下であると、高分子分散剤(B)の合成時にゲル化することなく容易に製造することができ、顔料分散組成物の作製時に顔料分散性を損なわず、保存安定性が十分なものとなる。
【0062】
本実施形態に係る高分子分散剤(B)のアミノ基(1級アミン、2級アミン、3級アミン)および4級アンモニウムカチオン基(g-1)の含有量は、アミン価(JIS K7237等に示す規格に沿って測定された値)を測定することにより、その量を定量的に判断することができる。本実施形態の3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)のアミン含有量は特に限定されないが、好ましくは10mgKOH/g~400mgKOH/g、より好ましくは15mgKOH/g~300mgKOH/g、さらに好ましくは25mgKOH/g~200mgKOH/gである。アミン価が10mgKOH/g以上であると、顔料分散組成物の十分な分散性や保存安定性が得られる。
【0063】
本実施形態に係る高分子分散剤(B)が有する4級アンモニウムカチオン基(g-1)の割合は、アミノ基と4級アンモニウムカチオン基(g-1)の総量に対し、5~95モル%であることが好ましく、10~90モル%であることがより好ましく、30~80モル%であることがさらに好ましい。5モル%以上であれば、エチレン性不飽和基又は炭素-炭素三重結合の導入量を十分に確保でき、感光性着色組成物としての耐溶剤性が向上する。95モル%以下であれば、十分なアミノ基量の確保により、顔料分散組成物の十分な分散性や保存安定性が得られる。
本実施形態に係る高分子分散剤(B)がアミノ基を有する場合、顔料分散組成物の分散性や保存安定性の向上に対し、中でも3級アミノ基の寄与率が大きい。従って、高分子分散剤(B)の3級アミン含有量を十分に確保することが好ましい。そのような観点から、高分子分散剤(B)の3級アミン価は、好ましくは10mgKOH/g~400mgKOH/g、より好ましくは15mgKOH/g~300mgKOH/g、さらに好ましくは25mgKOH/g~200mgKOH/gである。3級アミン価は、アミン価V0(JIS K7237等に示す規格に沿って測定された値)をベースにアミノ基含有モノマーと官能基含有ハロゲン化合物(b-1)の使用量に基づいて算出した値である。
【0064】
本実施形態に係る高分子分散剤(B)1g中に含まれるエチレン性不飽和基及び炭素-炭素三重結合の合計量は、50~1600μmol/gであることが好ましく、150~1500μmol/gであることがより好ましく、400~1400μmol/gであることがさらに好ましい。前記不飽和基群の合計量が50μmol/g以上であると、バインダー樹脂(A-1)及び後述の反応性希釈剤(E)が有するエチレン性不飽和基との架橋による耐溶剤性の上昇が見られ、前記不飽和基群の合計量が1600μmol/g以下であると顔料分散組成物とした際に良好な分散安定性が得られる。
【0065】
本実施形態に係る高分子分散剤(B)の重量平均分子量は、好ましくは1000~40000、より好ましくは1000~30000である。さらに、高分子分散剤(B)の分子量分布(ポリスチレン換算の重量平均分子量を数平均分子量で除した値)は、好ましくは1.0~3.0、より好ましくは1.0~2.0の範囲内である。高分子分散剤(B)の分子量や分子量分布が上記範囲内にあると、顔料分散組成物の粘度を適切な範囲に制御することができ、十分な顔料分散性や顔料分散組成物の保存安定性が得られると共に、優れた耐熱性、耐溶剤性、パターン密着性、現像性等を確保することができる。
【0066】
本実施形態に係る高分子分散剤(B)の含有量は、顔料(C)100質量部に対して、5~80質量部であることが好ましく、10~60質量部であることがより好ましく、15~40質量部であることがさらに好ましい。高分子分散剤(B)の含有量が5質量部以上であれば、良好な顔料分散性が得られる。高分子分散剤(B)の含有量が80質量部以下であれば、顔料(C)の含有量を十分に確保し、色特性が良好な硬化膜が得られると共に、低温硬化性の良好な感光性着色組成物が得られる。
【0067】
<顔料(C)>
本実施形態に係る顔料(C)は、他の組成物と均一に分散しカラーフィルターの画素を形成することができれば、特に限定されない。赤、緑、青といった光の三原色の顔料をはじめ、補色として利用できる黄、橙、紫等の顔料、及びブラックマトリックスで利用される黒、茶等の顔料等、各色の顔料を使用することができる。また、顔料(C)の化学構造としては、イソインドリノン、イソインドリン、アゾメチン、アントラキノン、アントロン、キサンテン、ジケトピロロピロール、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、インジゴイド、ジオキサジン、インジゴイド、フタロシアニン、アントシアニン、アゾ系等のあらゆる有機顔料や、カーボンブラックやチタンブラック、二酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。
【0068】
中でも、本実施形態に係る顔料(C)は、下記式(8)で示されるハロゲン化フタロシアニン骨格を有する緑色顔料を含むことが好ましい。
【0069】
【0070】
式(8)中、Mは2価または4価の金属原子を表す。色再現性の観点から亜鉛又は銅が好ましく、特に亜鉛が好ましい。Xは水素原子、塩素原子、臭素原子のいずれか1種を表し、塩素原子又は臭素原子を少なくとも1以上含む。輝度や色再現性に応じて塩素原子と臭素原子の付加割合が変わり、塩素原子が多く臭素原子が少ないほど高輝度となり、反対に臭素原子が多く塩素原子が少ないほど色再現性が良い傾向がある。塩素原子は1以上10以下が好ましく、1.5以上8以下がより好ましい。臭素原子は5以上15以下が好ましく、7以上14以下がより好ましい。
【0071】
ハロゲン化フタロシアニン骨格を有する緑色顔料と前記高分子分散剤(B)を用いることで、十分な顔料分散性や顔料分散組成物の保存安定性が得られ、高輝度かつ色再現範囲の広いカラーフィルターを提供することができると共に、着色パターンの耐熱性、耐溶剤性、パターン密着性を付与することができる。
【0072】
ハロゲン化フタロシアニン顔料としては、市販品を用いても良いし、自ら準備しても良い。市販品の一例としては、C.I.ピグメントグリーン7、36、58、59等が挙げられ、中でも高輝度化や色再現性の高さからC.I.ピグメントグリーン58、59の使用が好ましい。
自ら準備する場合は、公知の製造方法を利用する。例えば、芳香環の水素原子の一部又は全てがハロゲン原子に置換されたフタロ酸やフタロニトリル等を出発原料とし、モリブデン酸アンモニウム等の触媒下フタロシアニン骨格を形成する方法や、フタロシアニンを塩素ガスや臭素ガスでハロゲン化する方法が挙げられる。これらの方法で得られた粗顔料をボールミル、振動ミル等の粉砕機内で乾式摩砕し、公知のソルベントソルトミリング法等で処理することで、所望の緑色顔料を得ることができる。
【0073】
本実施形態に係る顔料(C)について、ハロゲン化フタロシアニン骨格を有する緑色顔料は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、ハロゲン化フタロシアニン骨格を有する緑色顔料ではない他の顔料を併用しても良い。
他の顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、15、16、17、20、24、31、53、83、86、93、94、109、110、117、125、128、137、138、139、147、148、150、153、154、166、173、194、214等の黄色顔料;C.I.ピグメントオレンジ13、31、36、38、40、42、43、51、55、59、61、64、65、71、73等の橙色顔料;C.I.ピグメントレッド9、97、105、122、123、144、149、166、168、176、177、180、192、209、215、216、224、242、254、255、264、265等の赤色顔料;C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、60等の青色顔料;C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、29、32、36、38等の紫色顔料;C.I.ピグメントブラウン23、25等の茶色顔料;C.I.ピグメントブラック1、7、カーボンブラック、チタンブラック、酸化鉄等の黒色顔料等が挙げられる。これらの顔料は、目的とする画素の色に応じて、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
さらに、本実施形態に係る顔料(C)について、顔料だけではなく染料を併用しても良い。染料を併用する場合、顔料を用いる場合と比べ高輝度化、色再現範囲の拡大、良好な現像性の発現が期待できる。一方、顔料を併用する場合、染料と比べ耐熱性に優れ、着色パターン形成後の色変化が少ない。求められる性能や目的とする画素の色に応じて、染料と顔料を併用してもよい。
【0075】
本実施形態に係る染料としては、溶剤(D-1)やアルカリ現像液に対する溶解性、樹脂組成物中の他の成分との相互作用、耐熱性等の観点から、カルボキシ基等の酸性基を有する酸性染料、酸性染料の窒素化合物との塩、酸性染料のスルホンアミド体等を用いることが好ましい。このような染料の具体例としては、acid alizarin violet N;acid black1、2、24、48;acid blue1、7、9、25、29、40、45、62、70、74、80、83、90、92、112、113、120、129、147;acid chrome violet K;acid Fuchsin;acid green1、3、5、25、27、50;acid orange6、7、8、10、12、50、51、52、56、63、74、95;acid red1、4、8、14、17、18、26、27、29、31、34、35、37、42、44、50、51、52、57、69、73、80、87、88、91、92、94、97、103、111、114、129、133、134、138、143、145、150、151、158、176、183、198、211、215、216、217、249、252、257、260、266、274;acid violet 6B、7、9、17、19;acid yellow1、3、9、11、17、23、25、29、34、36、42、54、72、73、76、79、98、99、111、112、114、116; food yellow 3及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらの中でも、アゾ系、キサンテン系、アントラキノン系又はフタロシアニン系の酸性染料が好ましい。これらの染料は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いても良い。染料を用いる場合、顔料(C)100質量部に対して20~80質量部が好ましい。
【0076】
<溶剤(D-1)>
本実施形態に係る溶剤(D-1)は、本実施形態に係る顔料分散組成物、または感光性着色組成物に含まれる各成分と反応せず、かつこれらを溶解または分散可能な溶剤であれば特に限定されない。溶剤(D-1)としては、バインダー樹脂(A-1)や高分子分散剤(B)を製造する際に用いた溶剤と同じものを用いることができ、反応後に含まれている溶剤をそのまま用いることもでき、更に加えることもできる。また、その他の成分を加える際に、そこに共存しているものでもよい。
【0077】
本実施形態に係る溶剤(D-1)の具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの中でも、カラーフィルターを製造する際に好ましく使用されるプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系溶剤が好ましい。
【0078】
<第1バインダー樹脂(A-1a)の製造方法>
第1バインダー樹脂(A-1a)の前駆体であるエポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)は、当該技術分野における公知のラジカル重合方法に従って共重合反応を行うことによって得られる。例えば、共重合に用いるモノマーを溶剤に溶解した後、その溶液に重合開始剤を添加し、50~130℃で1~20時間反応させればよい。また、50~130℃に調整した溶剤に、共重合に用いるモノマーと重合開始剤を滴下しながら反応させてもよい。
【0079】
この共重合反応に用いることが可能な溶剤としては、ラジカル重合に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、通常用いられている有機溶剤を使用することができる。具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、これらの中ではグリコールエーテル系溶剤の利用が好ましい。
【0080】
この共重合反応に用いる溶剤の使用量は、特に限定されないが、共重合に用いるモノマーの合計を100質量部とした場合に、一般に30~1000質量部、好ましくは50~800質量部である。特に、溶剤の使用量を1000質量部以下とすることで、連鎖移動作用によってエポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)の分子量の低下を抑制し、且つエポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)の粘度を適切な範囲に制御することができる。また、溶剤の使用量を30質量部以上とすることで、異常な重合反応を防止し、重合反応を安定して行うことができると共に、エポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)の着色やゲル化を防止することもできる。
【0081】
この共重合反応に用いることが可能な重合開始剤としては、ラジカル重合を開始できるものであれば特に限定されるものではなく、通常用いられている有機過酸化物触媒やアゾ化合物を使用することができる。具体的には、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、重合温度に応じて適当な半減期のラジカル重合開始剤を選択することが望ましい。
【0082】
この共重合反応に用いる重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、共重合に用いるモノマーの合計を100質量部とした場合に、一般に0.5~20質量部、好ましくは1.0~10質量部である。
【0083】
前記エポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)のエポキシ基の一部に化合物(a-1)を付加する方法としては、公知の付加反応を用いることができる。例えば、前記エポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)溶液に重合禁止剤及び触媒を添加した後、化合物(a-1)を添加し、室温~150℃、好ましくは50~120℃の条件下で付加反応や脱水反応させる。ここで、重合禁止剤は、導入した不飽和基の副反応を防ぐために添加される。重合禁止剤の具体例としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。また、触媒の具体例としては、トリエチルアミン等の第3級アミノ基、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、クロムやスズ等の有機金属化合物等が挙げられる。
【0084】
<第2バインダー樹脂(A-1aa)の製造方法>
本実施形態に係る第1バインダー樹脂(A-1a)の製造に際して、前記エポキシ基含有樹脂前駆体(PA-1a)のエポキシ基の一部に、化合物(a-1)が有するカルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基等の官能基を開環付加させ、複数のヒドロキシ基が生じる。前記第1バインダー樹脂(A-1a)の前記複数のヒドロキシ基の一部にさらに化合物(a-2)を付加させる場合、付加反応の方法としては、前記第1バインダー樹脂(A-1a)を製造する際の前述の化合物(a-1)の付加反応に続けて、化合物(a-2)を添加すれば良く、必要に応じて、反応温度を調節したり、前記触媒を追加したりしても良い。
【0085】
<第3バインダー樹脂(A-1b)の製造方法>
本実施形態に係る第1バインダー樹脂(A-1a)の製造方法は、使用する重合性モノマー(M)の種類及び使用量を変更することによって、第3バインダー樹脂(A-1b)の製造にも適用することができる。第3バインダー樹脂(A-1b)の製造に際しては、必要に応じて、反応温度を調節したり、触媒を変更したりしても良い。
【0086】
<高分子分散剤(B)の製造方法>
本実施形態に係る高分子分散剤(B)は、例えば以下の方法で製造することができる。すなわち、3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)のアミノ基に、官能基含有ハロゲン化合物(b-1)を付加し、化合物(b-2)を付加反応することにより製造することができる。あるいは、3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)のアミノ基に、ハロゲン化合物(b-3)を付加することによっても製造することができる。前記3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)のアミノ基に、前記官能基含有ハロゲン化合物(b-1)を付加する方法としては、ブロモ塩化反応を利用することが好ましい。具体的には、3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)、官能基含有ハロゲン化合物(b-1)、そして任意の割合で溶剤を加えて混合し、室温~150℃、好ましくは30℃~130℃の条件下で反応させることで、3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)と前記官能基含有ハロゲン化合物(b-1)との付加反応物を得る。さらに化合物(b-2)を加え、室温~150℃、好ましくは30℃~130℃の条件を継続し反応させることによって、高分子分散剤(B)を得る。
【0087】
<顔料分散組成物の製造方法>
本実施形態の顔料分散組成物は、第1バインダー樹脂(A-1a)及び第2バインダー樹脂(A-1aa)から選択される少なくとも1種、高分子分散剤(B)、顔料(C)、溶剤(D-1)、及び必要に応じて第3バインダー樹脂(A-1b)を所定量秤量し、公知の分散処理工程を用いて顔料(C)を微細化し分散する。この分散処理工程において、ペイントシェイカー、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ストーンミル、ジェットミル、ホモジナイザー、プラネタリミキサー、自転公転ミキサー等の装置が多用される。また、この分散処理工程において、直径0.01~10mmのビーズを用いると、顔料(C)の均一な微細化を効率良く行うことができる。ビーズの材質に制限は無いが、硬さや顔料分散組成物へのコンタミ等を踏まえると、ガラスビーズやジルコニアビーズの使用が好ましい。分散処理の好適な時間、温度、ビーズの直径、使用量に関しては、顔料分散組成物の組成や装置の大きさ等により適正な条件が異なるため、適宜調整すればよい。
最後に、顔料分散組成物に微細なゴミ、ならびに顔料(C)の粗粒や凝集物を除去する目的で、顔料分散組成物をガラスフィルター等でろ過処理することが好ましい。
【0088】
<感光性着色組成物>
本実施形態の感光性着色組成物は、上記顔料分散組成物と、バインダー樹脂(A-2)と、反応性希釈剤(E)と、光重合開始剤(F)と、を含有する。本実施形態の感光性着色組成物は溶剤(D-2)を含んでもよい。本実施形態の感光性着色組成物において、顔料(C)100質量部に対して、前記バインダー樹脂(A-1)とバインダー樹脂(A-2)との合計バインダー樹脂(A)を30~280質量部、前記反応性希釈剤(E)を20~200質量部、および前記光重合開始剤(F)を0.1~20質量部含有すると好ましい。
溶剤(D-2)は、上記顔料分散組成物に含まれている溶剤(D-1)と共通のものを使用してもよく、異なるものを追添しても良い。
【0089】
<バインダー樹脂(A-2)>
本実施形態の感光性着色組成物に使われるバインダー樹脂(A-2)としては、特に限定されないが、ネガ型レジストに一般的に用いられる(メタ)アクリル樹脂、エポキシ(メタ)アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂といった樹脂が好ましく、具体的な骨格として、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和二重結合と、カルボン酸やリン酸、スルホン酸等のアルカリ可溶性に寄与する置換基とを含む樹脂が好ましい。これらの樹脂を用いることで、優れたパターン密着性や現像性を有する感光性着色組成物を提供することができる。
【0090】
これらの樹脂の中でも、特に幅広い特性の樹脂を容易に提供できる観点から、(メタ)アクリロイルオキシ基及びカルボキシ基を有する(メタ)アクリル樹脂の利用が好ましい。この樹脂は市販品を用いても良いし、自ら準備しても良い。自ら準備する場合は、バインダー樹脂(A-1)と同様のものを用いることができる。なお、合成中に分子量を適切に制御するため、また合成後の粘度を適切に調整するために、溶剤(D-2)を添加しても良い。
【0091】
バインダー樹脂(A-2)の物性については特に制限は無いが、感光性着色組成物の製造のし易さや、他の組成物との相溶性の観点から、重量平均分子量:1000~50000、酸価:10~200mgKOH/mg、二重結合当量:100~3000g/mol、バインダー樹脂(A-2)溶液の粘度:0.1~1000dPa・sの範囲内にあることが好ましい。
【0092】
前記バインダー樹脂(A-1)とバインダー樹脂(A-2)との合計バインダー樹脂(A)の含有量は、顔料(B)100質量部に対して、30~280質量部であることが好ましく、40~200質量部であることがより好ましく、50~130質量部であることがさらに好ましい。
【0093】
<反応性希釈剤(E)>
本実施形態に係る反応性希釈剤(E)は、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のエチレン性不飽和二重結合を含む低分子化合物であれば特に限定されない。反応性希釈剤(E)の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、α-クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の芳香族ビニル系モノマー類;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のポリカルボン酸モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、β-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系モノマー;トリアリルシアヌレート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、(メタ)アクリロイルオキシ基を複数有する化合物が好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシ基を3個以上有する化合物がより好ましい。
【0094】
本実施形態に係る反応性希釈剤(E)の含有量は、顔料(C)100質量部に対して、20~200質量部であることが好ましく、30~150質量部であることがより好ましく、40~100質量部であることがさらに好ましい。
【0095】
<光重合開始剤(F)>
本実施形態に係る光重合開始剤(F)は光ラジカル発生剤が好ましく、その具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、4-(1-t-ブチルジオキシ-1-メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4-(1-t-ブチルジオキシ-1-メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラキス(t-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1;アシルホスフィンオキサイド類;及びキサントン類等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
本実施形態に係る光重合開始剤(F)の含有量は、顔料(C)100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~15質量部であることがより好ましく、2~10質量部であることがさらに好ましい。
【0097】
本実施形態の感光性着色組成物は、上記の成分に加えて、所定の特性を付与するために光酸発生剤、光塩基発生剤、カップリング剤、レベリング剤等の公知の添加剤、フィラー等を配合してもよい。これらの成分の配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されない。
【0098】
<感光性着色組成物の製造方法>
本実施形態の感光性着色組成物は、公知の混合装置を用い、上記の各成分を混合することによって製造することができる。例えば、先に顔料分散組成物を調整した後、バインダー樹脂(A-2)、反応性希釈剤(E)、光重合開始剤(F)等を順番に混合することで製造することができる。また、必要に応じて、顔料分散組成物に含まれている溶剤(D-1)以外に、溶剤(D-2)を添加してもよい。なお、溶剤(D-2)は、溶剤(D-1)と共通のものを使用してもよく、異なるものでもよい。
【0099】
<カラーフィルター>
次に、本実施形態に係る感光性着色組成物の硬化物からなる着色パターンを有するカラーフィルターについて説明する。本実施形態に係るカラーフィルターは、上記の感光性着色組成物を用いて形成される着色パターンを有する。カラーフィルターは、通常、基板と、その上に形成されるRGBの画素、それぞれの画素の境界に形成されるブラックマトリックス及び画素とブラックマトリックスの上に形成される保護膜とから構成される。この構成において、画素及びブラックマトリックス(着色パターン)が上記の感光性着色組成物を用いて形成されることを除けば、その他の構成は公知のものを採用することができる。
【0100】
次に、カラーフィルターの製造方法の一実施形態について説明する。まず、基板上に着色パターンを形成する。具体的には、基板上に、ブラックマトリックス及びRGBの画素を順次形成する。基板の材質は、特に限定されるものではなく、ガラス基板、シリコン基板、ポリカーボネート基板、ポリエステル基板、ポリアミド基板、ポリアミドイミド基板、ポリイミド基板、アルミニウム基板、プリント配線基板、アレイ基板などを適宜用いることができる。
【0101】
着色パターンは、フォトリソグラフィ法により形成することができる。具体的には、上記の感光性着色組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成した後、所定のパターンのフォトマスクを介して塗布膜を露光して露光部分を光硬化させる。そして、未露光部分をアルカリ水溶液で現像した後、ベーキングすることにより、所定の着色パターンを形成することができる。
【0102】
本実施形態の感光性着色組成物の塗布方法としては、特に限定されないが、スクリーン印刷法、ロールコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、スピンコート法などを用いることができる。また、感光性着色組成物の塗布後、必要に応じて、循環式オーブン、赤外線ヒーター、ホットプレートなどの加熱手段を用いて加熱することにより溶剤(D-1)或いは溶剤(D-2)を揮発させてもよい。加熱条件は、特に限定されず、使用する感光性着色組成物の種類に応じて適宜設定すればよい。一般には、50℃~120℃の温度で30秒~30分加熱すればよい。
【0103】
次いで、形成された塗膜にネガ型のマスクを介して紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射して部分的に露光する。照射するエネルギー線量は、感光性着色組成物の組成に応じて適宜選択すればよく、例えば、30~2000mJ/cm2であることが好ましい。露光に用いられる光源としては、特に限定されないが、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプなどを用いることができる。
【0104】
現像に用いられるアルカリ水溶液としては、特に限定されないが、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水溶液;エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジメチルエタノールアミノ基などのアミノ基系化合物の水溶液;テトラメチルアンモニウム、3-メチル-4-アミノ-N,N-ジエチルアニリン、3-メチル-4-アミノ-N-エチル-N-β-ヒドロキシエチルアニリン、3-メチル-4-アミノ-N-エチル-N-β-メタンスルホンアミドエチルアニリン、3-メチル-4-アミノ-N-エチル-N-β-メトキシエチルアニリン及びこれらの硫酸塩、塩酸塩又はp-トルエンスルホン酸塩などのp-フェニレンジアミノ基系化合物の水溶液などを用いることができる。なお、これらの水溶液には、必要に応じて消泡剤や界面活性剤を添加してもよい。また、上記のアルカリ水溶液による現像の後、水洗して乾燥させることが好ましい。
【0105】
また、ベーキングの条件は、特に限定されず、使用する感光性着色組成物の種類に応じて加熱処理を行えばよい。一般には、130~250℃で10~60分間加熱すればよい。ただし、近年需要が拡大している有機ELの発光層などは熱に弱い部材を使用していることが多く、そのような場合は90~130℃で10~50分間の加熱によって処理されることがある。
【0106】
上記のような塗布、露光、現像及びベーキングを、ブラックマトリックス用の感光性着色組成物、及び赤色、緑色、青色の画素用感光性着色組成物を用いて順次繰り返すことにより、所望の着色パターンを形成することができる。その後、着色パターン(RGBの各画素及びブラックマトリックス)上に保護膜を形成するが、保護膜としては、特に限定されず、公知のものを用いて形成すればよい。
【0107】
このようにして製造されるカラーフィルターは、顔料の均一な微細化を実現することで顔料分散性が優れ、高輝度化を達成し、優れた耐熱性、耐溶剤性、密着性、現像性といった各種レジスト特性を有し、高精細である。
【0108】
<画像表示素子>
本実施形態の画像表示素子は、上記のカラーフィルターを備えた画像表示素子であり、その具体例として、液晶表示素子、有機EL表示素子、CCD素子やCMOS素子などの固体撮像素子などが挙げられる。本実施形態の画像表示素子の製造は、上記のカラーフィルターを使用すること以外、常法に従って行えばよい。例えば、液晶表示素子を製造する場合には、基板上に、上記カラーフィルターを形成し、次いで、電極、スペーサー等を順次形成する。そして、もう一枚の基板上に電極等を形成し、両者を張り合わせて所定量の液晶を注入、封止すればよい。
【実施例0109】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、この実施例において、部及びパーセントとあるのは特に断らない限り、全て質量基準である。
【0110】
<バインダー樹脂(A)が有するエチレン性不飽和基の含有量>
第1バインダー樹脂(A-1a)、第2バインダー樹脂(A-1aa)、第3バインダー樹脂(A-1b)、又はバインダー樹脂(A-2)の質量当たりのエチレン性不飽和基のモル数であり、原料モノマーの使用量に基づいて算出した計算値である。
【0111】
<重量平均分子量、数平均分子量の測定法>
重量平均分子量、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記条件にて測定した標準ポリスチレン換算重量平均分子量、数平均分子量を意味する。
カラム:ショウデックス(登録商標) LF-804+LF-804(昭和電工株式会社製)
カラム温度:40℃
試料:測定対象物の0.2%テトラヒドロフラン溶液
展開溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:示差屈折計(ショウデックス RI-71S)(昭和電工株式会社製)
流速:1mL/min
【0112】
<バインダー樹脂(A)の酸価>
第1バインダー樹脂(A-1a)、第2バインダー樹脂(A-1aa)、第3バインダー樹脂(A-1b)、又はバインダー樹脂(A-2)の酸価は、JIS K6901 5.3に従ってブロモチモールブルーとフェノールレッドとの混合指示薬を用いて測定した。
【0113】
<高分子分散剤(B)のアミン価>
高分子分散剤(B)のアミン価は、前述の方法(JIS K7237)に基づき測定した。4級アンモニウムカチオンを含めた総アミン価は、各合成例及び比較合成例における3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)、官能基含有ハロゲン化合物(b-1)、化合物(b-2)及びハロゲン化合物(b-3)の使用量に基づいて算出した計算値である。
【0114】
<高分子分散剤(B)のエチレン性不飽和基又は炭素-炭素三重結合量>
高分子分散剤(B)の質量あたりの、エチレン性不飽和基又は炭素-炭素三重結合のモル数であり、各合成例及び比較合成例における3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)、官能基含有ハロゲン化合物(b-1)、化合物(b-2)及びハロゲン化合物(b-3)の使用量に基づいて算出した計算値である。
【0115】
第1バインダー樹脂(A-1a)の製造例を以下に示す。
【0116】
<樹脂合成例a1>
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、158.67gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを入れた後、窒素ガスで置換しながら撹拌し、120℃に昇温した。次に、4.40gのジシクロペンタニルメタクリレート、3.12gのスチレン及び134.90gのメタクリル酸グリシジルからなるモノマー混合物に、重合開始剤として6.41gのt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートを添加したものを滴下ロートから前記フラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で2時間攪拌して共重合反応を行った。
次に、前記フラスコ内をドライエアーに置換した後、68.40gのアクリル酸、触媒として0.632gのトリフェニルホスフィン及び重合禁止剤として0.632gのジブチルヒドロキシトルエンを加え、120℃で5時間付加反応を行った。バインダー樹脂No.A1を得た。
樹脂合成例a2~a4、a7~a9に関しても表1-1及び表1-2に記載のモノマーを使用し、モノマー比率以外は樹脂合成例a1と同様の方法に従って合成した。それぞれ、バインダー樹脂No.A2~A4、A7~A9を得た。
【0117】
第2バインダー樹脂(A-1aa)の製造例を以下に示す。
【0118】
<樹脂合成例a5、a6、a10>
上記の方法で得られたフラスコ内に、各合成例の比率に応じた重量の1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物あるいは無水マレイン酸を加え、115℃で2時間付加反応を行うことによってバインダー樹脂No.A5、A6及びA10を得た。
【0119】
<比較合成例ca1、ca2、ca3>
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、54.49gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを入れた後、窒素ガスで置換しながら撹拌し、120℃に昇温した。次に、3.96gのジシクロペンタニルメタクリレート、4.75gのスチレン及び61.52gのアクリル酸からなるモノマー混合物に、重合開始剤として7.02gのt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートを添加したものを滴下ロートから前記フラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で2時間攪拌して共重合反応を行った。
次に、前記フラスコ内をドライエアーに置換した後、121.34gのメタクリル酸グリシジル、触媒として0.570gのトリフェニルホスフィン及び重合禁止剤として0.570gのメチルハイドロキノンを加え、120℃で5時間付加反応を行った。比較合成例ca1、ca2、ca3に関しても表1-1及び表1-2に記載のモノマーを使用し、モノマー比率以外は樹脂合成例a1と同様の方法に従って合成した。バインダー樹脂No.cA3を得た。ただし、バインダー樹脂No.cA1、cA2に関しては、付加反応中に副反応による架橋が進行し、分子量が著しく増大したためゲル化してしまった。
【0120】
【0121】
【0122】
第3バインダー樹脂(A-1b)の製造例を以下に示す。
【0123】
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、257.17gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを入れた後、窒素ガスで置換しながら撹拌し、120℃に昇温した。次に、22.0gのジシクロペンタニルメタクリレート、46.8gのスチレン及び38.7gのメタクリル酸からなるモノマー混合物に、重合開始剤として1.96gのt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートを添加したものを滴下ロートから前記フラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で2時間攪拌して共重合反応を行った。
次に、前記フラスコ内をドライエアーに置換した後、21.3gのメタクリル酸グリシジル、触媒として0.48gのトリフェニルホスフィン及び重合禁止剤として0.48gのジブチルヒドロキシトルエンを加え、120℃で5時間付加反応を行うことによって試料(分子量22000、酸価119mgKOH/g、エチレン性不飽和基当量1100μmol/g)を得た。
【0124】
高分子分散剤(B)の製造例を以下に示す。
【0125】
<サンプル分散剤1の合成>
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計およびガス導入管を備えたフラスコに、133.0gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、55.0gのイソボルニルメタクリレート及び触媒として13.2gのテトラメチルエチレンジアミンを入れ、フラスコ内を窒素に置換しながら50℃で1時間攪拌した。その後、触媒として9.3gのブロモイソ酪酸エチル及び5.6gの塩化第一銅を入れ、フラスコを110℃に昇温した後4時間重合反応を行った。反応後、溶液をサンプリングし不揮発分を測定し、不揮発分から換算し重合転化率が98%以上であることを確認した後、61gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及び3級アミノ基を有するモノマーとして45.0gのジメチルアミノエチルメタクリレートを加え、さらに110℃で2時間反応を行った。反応後、再度溶液をサンプリングし不揮発分を測定し、不揮発分から換算し重合転化率が98%以上であることを確認した後、溶液を冷却した。最後に、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを溶剤を除く成分の合計が40.0%となるように添加し、3級アミノ基を含有するサンプル分散剤1(アミン価160mgKOH/g、重量平均分子量5500)を得た。
【0126】
<合成例b1>
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計およびガス導入管を備えたフラスコに、3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)としてサンプル分散剤1を35g(溶剤を除く成分の合計)、官能基含有ハロゲン化合物(b-1)としてエチレンブロモヒドリンを6.27g(3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)のアミノ基の総量に対して50モル%)、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを理論不揮発分が30%となるように加え、フラスコ内を窒素ガスで置換しながら攪拌し、室温から100℃まで昇温した。NMRスペクトルによりエチレンブロモヒドリンのピークシフトを確認するまで攪拌した後、室温まで降温した。2-アクリロイルオキシエチルイソシアナート7.07gを加え、60℃まで昇温し、2時間付加反応することによって高分子分散剤No.B1を得た。
【0127】
合成例b2~b7、比較合成例cb1~cb7に関しても、表2-1及び表2-2に記載の化合物を使用し、化合物の添加比率以外は分散剤合成例b1と同様の方法に従って合成した。それぞれ、高分子分散剤No.B2~B7、高分子分散剤No.cB1~cB7を得た。
3級アミノ基含有高分子化合物(b-0)については以下の化合物を使用した。
・EFKA-PX4300:BASF社製、3級アミノ基含有、1級と2級アミノ基非含有、固形分80%、アミン価57mgKOH/g、重量平均分子量25000
・ポリメントNK-100PM:日本触媒社製、固形分49%、アミン価143mgKOH/g、重量平均分子量20000、1級及び2級アミノ基含有、3級アミノ基非含有分散剤
【0128】
【0129】
【0130】
顔料分散組成物の製造例を以下に示す。
【0131】
<顔料分散組成物実施例a1~a17>
直径0.1mmのジルコニアビーズ(ニッカトー製YTZボール)200gを充填したSUS容器(内径50mm×高さ100mm)に、顔料(C)としてC.I.ピグメントグリーン58(DIC製Fastogen Green A110)を7.5g(100質量部)、第1バインダー樹脂(A-1a)又は第2バインダー樹脂(A-1aa)として樹脂合成例a1~a10で得られた試料のいずれかと、高分子分散剤(B)として分散剤合成例b1~b7で得られた試料のいずれか、さらに実施例a17のみさらに第3バインダー樹脂(A-1b)を加え、表3-1~表3-2に示す組成で混合し、溶剤(D-1)としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え溶剤を除いた成分合計が24質量%となるように調製し、ペイントシェイカー(Red Devil Equipment製Red Devil 5400)で室温下、2時間混合して分散させた後、内容物をガラスフィルターで吸引ろ過することにより、顔料分散組成物No.E1~E17を得た。なお、表3-1~表3-2に示す値は、顔料(C)を100質量部としたとき、各成分の溶剤を除いた成分の質量部数である。
【0132】
<顔料分散組成物比較例ca1~ca8>
直径0.1mmのジルコニアビーズ(ニッカトー製YTZボール)200gを充填したSUS容器(内径50mm×高さ100mm)に、顔料(C)としてC.I.ピグメントグリーン58(DIC製Fastogen Green A110)を7.5g(100質量部)、第1バインダー樹脂(A-1a)又は第2バインダー樹脂(A-1aa)として樹脂合成例a9または樹脂比較合成例ca3で得られた試料のいずれかと、高分子分散剤(B)として分散剤合成例b1または分散剤比較合成例cb1~cb7で得られた試料のいずれかを加え、表3-3に示す組成で混合し、溶剤(D-1)としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え溶剤を除いた成分合計が24質量%となるように調製し、ペイントシェイカー(Red Devil Equipment製Red Devil 5400)で室温下、2時間混合して分散させた後、内容物をガラスフィルターで吸引ろ過することにより、顔料分散組成物No.cE1~cE8を得た。なお、表3-3に示す値は、顔料(C)を100質量部としたとき、各成分の溶剤を除いた成分の質量部数である。
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
<顔料分散性の評価>
調製した直後の顔料分散組成物の粘度をE型粘度計(東機産業株式会社製RE-80L、コーンサイズ4.8cm、回転数20rpm、測定温度25℃)で測定することで評価した。また、粘度の測定結果より、顔料分散性を下記基準により◎、○、△、×の4段階で評価し、○以上を合格とした。評価結果を前記表3-1~表3-3に示した。
「◎」:6.0mPa・s未満
「〇」:6.0mPa・s以上10.0mPa・s未満
「△」:10.0mPa・s以上15.0mPa・s未満
「×」:10.0mPa・s以上
【0137】
<顔料分散組成物の保存安定性の評価>
調製した顔料分散組成物を室温で保管した後の顔料分散組成物の粘度を、E型粘度計(東機産業株式会社製RE-80L、測定温度25℃)で測定することにより評価した。1週間、あるいは2週間保管した後の顔料分散組成物の粘度をそれぞれ測定し、その粘度上昇率((保管後粘度-調整後粘度)×100/調整後粘度」)を下記基準により○、△、×の3段階で評価し、○以上を合格とした。評価結果を前記表3-1~表3-3に示した。
「〇」:10%未満、10%未満(それぞれ1週間後、2週間後)
「△」:10%未満、10%以上
「×」:10%以上、10%以上
【0138】
感光性着色組成物(CR)の製造例を以下に示す。
【0139】
<感光着色組成物実施例b1~b17、比較例cb1~cb8>
前記実施例で得られた顔料分散組成物No.E1~E17、及び前記比較例で得られた顔料分散組成物No.cE1~cE8の顔料(C)を100質量部としたときに、バインダー樹脂(A-2)として樹脂比較合成例で得られたca3を溶剤以外の成分の総量として28.8質量部、反応性希釈剤(E)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを56質量部、光重合開始剤(F)として1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル-]-,-1-(O-アセチルオキシム)を6.4質量部混合し、溶剤(D-2)としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え溶剤を除く成分の割合が30%となるように混合することで、感光性着色組成物No.F1~F17、および感光性着色組成物No.cF1~cF8を調製した。表4-1~表4-3に実施例b1~b17、比較例cb1~cb8で使用した各種材料の組み合わせと使用部数を示す。
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
<耐溶剤試験用緑色レジスト(1)の作製>
得られた感光性着色組成物No.F1~F17、感光性着色組成物No.cF1~cF8を、5cm角ガラス基板(無アルカリガラス基板)上に、最終の硬化塗膜の平均厚さが1.5μmとなるようにスピンコートした後、100℃で3分間加熱し溶剤を揮発させた。次に塗膜の全面を露光(ランプとして、ウシオ電機株式会社製USH-250BYを使用、露光量40mJ/cm2)させた後、さらに100℃で30分間ベーキングすることで硬化塗膜である緑色レジスト(1)を得た。
【0144】
<現像性試験用緑色レジスト(2)の作製>
得られた感光性着色組成物No.F1~F17、感光性着色組成物No.cF1~cF8を、5cm角ガラス基板(無アルカリガラス基板)上に、最終の硬化塗膜の平均厚さが1.5μmとなるようにスピンコートした後、100℃で3分間加熱し溶剤を揮発させた。次に、基板上にラインアンドスペースやドットパターンのフォトマスクを設置して塗膜を露光(ランプとして、ウシオ電機株式会社製USH-250BYを使用、露光量40mJ/cm2)し、光硬化させた後、0.2質量%の水酸化カリウム水溶液で現像し、さらに100℃で30分間ベーキングすることで硬化塗膜である緑色カラーレジスト(2)を得た。
【0145】
<透過率試験>
上記緑色レジスト(1)の525nmにおける透過率を、(株)島津製作所製 分光光度計UV-1650PCを用いて測定した。測定結果より、感光性着色組成物の透過率を下記基準により3段階で評価し、〇を合格とした。評価結果を前記表4-1~表4-3に示した。
「〇」:透過率95%以上
「△」:透過率90%以上95%未満
「×」:透過率90%未満
【0146】
<耐溶剤性試験>
上記緑色レジスト全面を25℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに15分間浸漬させた。その後、緑色レジストを取り出し、空気乾燥させた。緑色レジストの残膜率を確認することで、感光性着色組成物の耐溶剤性を評価した。測定結果より、感光性着色組成物の耐溶剤性を下記基準により1~5の5段階で評価し、3以上を合格とした。評価結果を前記表4-1~表4-3に示した。
「5」:残膜率93%以上
「4」:残膜率85%以上93%未満
「3」:残膜率80%以上85%未満
「2」:残膜率80%未満
「1」:塗膜に肉眼で見える剥がれが発生
【0147】
<現像性試験>
現像性試験は、現像速度を評価した。現像速度については、上記緑色カラーレジスト(2)の現像工程において、0.2質量%の水酸化カリウム水溶液での現像中、パターンが見え終わるまでに掛かる時間を測定し、下記基準により1~5の5段階で評価し、3以上を合格とした。評価結果を前記表4-1~表4-3に示した。
「5」:40秒未満
「4」:40秒以上50秒未満
「3」:50秒以上65秒未満
「2」:65秒以上80秒未満
「1」:80秒以上
【0148】
表3-1~表3-3の結果からわかるように、顔料分散組成物実施例a1~a17では、顔料分散組成物の優れた顔料分散性および保存安定性が得られた。また、表4-1~表4-3の結果から、感光着色組成物実施例b1~b17において、透過率、現像性、耐溶剤性も同時に達成した。これは、本発明において、バインダー樹脂(A-1)と高分子分散剤(B)を組み合わせることにより架橋点となるエチレン性不飽和基及び/または炭素-炭素三重結合を豊富に提供できるため、100℃の限られた硬化条件でも架橋密度が増加したためである。
対して、顔料分散組成物比較例ca2~ca8では、十分な耐溶剤性が得られなかった。これは、分散剤No.cB1~cB7が本発明の実施例群に比べ含有するエチレン性不飽和基量が少なく、限られた露光量や低温条件下では十分な架橋反応が進行しなかったためであると考えられる。また、バインダー樹脂ca3を用いた比較例ca2では、使用可能な耐溶剤性が得られたものの保存安定性が良好でなかった。これは、本発明のようにエポキシ基含有重合性モノマーを共重合後に不飽和基を有するカルボン酸を付加する場合と比較し、バインダー樹脂ca3では不飽和基含有カルボン酸を共重合後にエポキシ基含有モノマーを付加しており、十分な付加反応点を得るために多量のカルボン酸が必要となる。しかし、過剰に高い酸価は顔料分散液の安定性を損ねるため、表4-1~表4-3のように保存安定性が低くなったと考えられる。
【0149】
以上より、本発明により、顔料分散性や保存安定性が優れた顔料分散組成物、及びその顔料分散組成物を含む低温硬化性に優れた感光性着色組成物、及びその感光性着色組成物を含み、耐溶剤性、現像性に優れ、分散剤や顔料の溶出やブリードアウトの抑制が期待されるカラーフィルターを提供することができる。
本発明によれば、顔料分散性や保存安定性が良好な顔料分散組成物を提供することができる。また、当該顔料分散組成物を用いることにより、優れた耐溶剤性、現像性を有する硬化物が得られる感光性着色組成物を提供することができる。さらに、当該感光性着色組成物の硬化物を有するカラーフィルター、これを具備する画像表示素子を提供することができる。