(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167358
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物及び熱伝導性シリコーン接着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 183/04 20060101AFI20231116BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20231116BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231116BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20231116BHJP
C09J 183/07 20060101ALI20231116BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20231116BHJP
【FI】
C09J183/04
C09J11/04
C09J11/06
C09J183/05
C09J183/07
C09J7/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078489
(22)【出願日】2022-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 崇則
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 晃洋
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA11
4J004AB05
4J004BA02
4J004DA02
4J004DB01
4J004FA05
4J040EK031
4J040EK042
4J040GA01
4J040HA066
4J040HB41
4J040HD33
4J040JA02
4J040JA09
4J040JB02
4J040MA10
4J040MB05
4J040MB09
4J040NA19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】取り扱い性が良好で十分な接着強度が得られ、かつ高い熱性能を有する熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】下記(a)~(e)を含有する熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物。
(a)1分子中に2個以上のアルケニル基を有する直鎖または分岐状オルガノポリシロキサン:100質量部、(b)銀フィラー:3,000~7,500質量部、(c)下記式(1)で表される(c-1)成分および下記式(2)で表される(c-2)成分を含む三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:150~450質量部、(d)下記式(3)で表される有機ケイ素化合物:1~30質量部、(e)有機過酸化物:5~40質量部。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物であって、
前記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、下記(a)~(e)成分を含有するものであることを特徴とする熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物。
(a)1分子中に2個以上のアルケニル基を有する直鎖または分岐状オルガノポリシロキサン:100質量部
(b)銀フィラー:3,000~7,500質量部
(c)下記(c-1)成分および(c-2)成分を含む三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:150~450質量部
(c-1):下記平均組成式(1)で表され、分子中のアルケニル基量が0.05~0.15mol/100gである三次元網状オルガノポリシロキサンレジン
【化1】
(式(1)中、R
1は独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、及び炭素数7~10のアラルキル基から選ばれる基であり、R
2は炭素数2~8のアルケニル基である。0<a1≦100であり、0<b1≦100であり、0≦c1≦100であり、0≦d1≦100であり、0≦e1≦100である。ただし、0.5≦a1/(d1+e1)≦2.0の範囲を満たすものとする。)
(c-2):下記平均組成式(2)で表される三次元網状オルガノポリシロキサンレジン
【化2】
(式(2)中、R
1は前記式(1)と同じであり、0<a2≦100であり、0≦c2≦100であり、0≦d2≦100であり、0<e2≦100である。ただし、0.7≦a2/e2≦2.5の範囲を満たすものとする。)
(d)下記一般式(3)で表される有機ケイ素化合物:1~30質量部
【化3】
(nは1~20の整数である。)
(e)有機過酸化物:5~40質量部
【請求項2】
前記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、さらに(f)成分として、1分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを1~30質量部含むものであることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物。
【請求項3】
前記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、前記(c)三次元網状オルガノポリシロキサンレジンの総量に対する前記(c-1)成分の割合が10~60質量%のものであることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物。
【請求項4】
前記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、さらに(g)成分として、下記(g-1)成分及び(g-2)成分から選ばれる1種以上を1~20質量部含むものであることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物。
(g-1)下記平均組成式(4)で表されるアルコキシシラン化合物
【化4】
(式(4)中、R
3は、炭素原子数6~15のアルキル基であり、R
4は、炭素原子数1~5のアルキル基であり、R
5は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、mは1~3の整数であり、nは0~2の整数である。但しm+nは1~3の整数である。)
(g-2)下記一般式(5)で表されるジメチルポリシロキサン
【化5】
(式(5)中、R
5は、前記式(4)と同じであり、pは5~100の整数である。)
【請求項5】
前記(b)銀フィラーは、平均粒径が0.1~50μmであることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物。
【請求項6】
前記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、その硬化物の熱伝導率が15.0W/mK以上となるものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物。
【請求項7】
熱伝導性接着層の片面または両面に基材を有する熱伝導性シリコーン接着テープであって、
前記熱伝導性接着層は請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物からなるものであることを特徴とする熱伝導性シリコーン接着テープ。
【請求項8】
前記基材は片面または両面にフッ素変性シリコーンの硬化皮膜を有することを特徴とする請求項7に記載の熱伝導性シリコーン接着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物及び熱伝導性シリコーン接着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子部品パッケージやパワーモジュールなどの分野では、冷却部材と半導体を固定する場合、ビスやクリップなどを用いるケースがある。しかし、ビスやクリップによる固定方法は、多くの部品や工程が必要なため、製造効率が非常に悪い。また、この方法では電子機器自体の小型化や薄型化が阻まれてしまい、製品設計上でも非常に不利である。そこで近年は、冷却部材と半導体との間に介在させる放熱材料に粘着・接着機能を付与し、筐体と半導体素子を固定する方法が知られている。
【0003】
具体的には、冷却部材と半導体との間に介在させる熱伝導性シートに粘着性を付与し、筐体と半導体素子を固定する方法が考えられる。例えば熱伝導性シートの両面に粘着剤を塗布して熱伝導性粘着シートにする方法がある。この方法は、作業性の改善やボイド混入リスクの低減はできるが、粘着剤自体には熱伝導性がないため、シートの熱伝導性が著しく悪くなる。そこで、例えば特許文献1、及び2に記載されるような、粘着剤に熱伝導性充填材を用いた熱伝導性粘着テープが知られている。また、特許文献3には、シリコーンをベースポリマーとした熱伝導性シリコーン粘着テープが記載され、耐熱性、耐寒性、及び耐久性に優れることが知られている。
【0004】
しかし、従来の粘着テープでは、リワークに有利だが、接着強度に乏しく、その信頼性の面で課題があった。また、液状・ペースト状組成物と比べ、接触熱抵抗が大きいため、高熱伝導化の面で改善の余地があった。
【0005】
一方、加熱硬化型放熱接着剤の種類によっては放熱部材に対する密着性が高く、高い接着強度や放熱性能が得られるものがある。しかし、塗布工程が頻雑になるなど、シートタイプよりも作業性に劣り、ボイドの混入するリスクもあるなどの課題があった。
【0006】
さらに近年創出された新しいアプリケーションへ対応するため、放熱材料にも高熱伝導化と信頼性の要求がより高まっている。そうした要求を満足させる熱伝導性充填材として、銀フィラーが注目されている。銀は、それ単体の熱伝導率が非常に高く、かつ加熱硬化時にフィラー同士が部分的に焼結することで効率的に熱伝導路を形成する。そのため、銀フィラーを添加した放熱材料は、熱性能の大幅な改善が見込める。
【0007】
一方で、銀フィラーを使用した付加硬化型のシリコーン組成物については、硬化性が低下することが知られている。したがって、例えば、前述の付加硬化型接着剤に使用した場合、硬化が不十分な状態で電子部品パッケージやパワーモジュールに実装されるため、信頼性を両立させる事が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014-34652号公報
【特許文献2】特開2014-62220号公報
【特許文献3】特開2008-260798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、取り扱い性が良好で十分な接着強度が得られ、かつ高い熱性能を有する熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物、及び取り扱い性が良好であり、放熱部材に対して容易に実装できる熱伝導性シリコーン接着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、
熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物であって、
前記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、下記(a)~(e)成分を含有するものである熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物を提供する。
(a)1分子中に2個以上のアルケニル基を有する直鎖または分岐状オルガノポリシロキサン:100質量部
(b)銀フィラー:3,000~7,500質量部
(c)下記(c-1)成分および(c-2)成分を含む三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:150~450質量部
(c-1):下記平均組成式(1)で表され、分子中のアルケニル基量が0.05~0.15mol/100gである三次元網状オルガノポリシロキサンレジン
【化1】
(式(1)中、R
1は独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、及び炭素数7~10のアラルキル基から選ばれる基であり、R
2は炭素数2~8のアルケニル基である。0<a1≦100であり、0<b1≦100であり、0≦c1≦100であり、0≦d1≦100であり、0≦e1≦100である。ただし、0.5≦a1/(d1+e1)≦2.0の範囲を満たすものとする。)
(c-2):下記平均組成式(2)で表される三次元網状オルガノポリシロキサンレジン
【化2】
(式(2)中、R
1は前記式(1)と同じであり、0<a2≦100であり、0≦c2≦100であり、0≦d2≦100であり、0<e2≦100である。ただし、0.7≦a2/e2≦2.5の範囲を満たすものとする。)
(d)下記一般式(3)で表される有機ケイ素化合物:1~30質量部
【化3】
(nは1~20の整数である。)
(e)有機過酸化物:5~40質量部
【0011】
このような熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物であれば、取り扱い性が良好で十分な接着強度が得られ、かつ高い熱性能を有する熱伝導性シリコーン接着テープを得ることができる。
【0012】
また、前記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、さらに(f)成分として、1分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを1~30質量部含むものであることが好ましい。
【0013】
このような熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物であれば、被着体界面と良好な濡れ性を発現させ、接着力を高めることができる。
【0014】
また、前記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、前記(c)三次元網状オルガノポリシロキサンレジンの総量に対する前記(c-1)成分の割合が10~60質量%のものであることが好ましい。
【0015】
このような熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物であれば、特に良好な接着強度を得ることができる。
【0016】
また、前記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、さらに(g)成分として、下記(g-1)成分及び(g-2)成分から選ばれる1種以上を1~20質量部含むものであることが好ましい。
(g-1)下記平均組成式(4)で表されるアルコキシシラン化合物
【化4】
(式(4)中、R
3は、炭素原子数6~15のアルキル基であり、R
4は、炭素原子数1~5のアルキル基であり、R
5は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、mは1~3の整数であり、nは0~2の整数である。但しm+nは1~3の整数である。)
(g-2)下記一般式(5)で表されるジメチルポリシロキサン
【化5】
(式(5)中、R
5は、前記式(4)と同じであり、pは5~100の整数である。)
【0017】
このような熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物であれば、(b)成分が(a)成分のマトリックス中に均一に分散された組成物を得ることができる。
【0018】
また、前記(b)銀フィラーは、平均粒径が0.1~50μmであることが好ましい。
【0019】
このような熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物であれば、良好な熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物を得ることができる。
【0020】
また、前記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、その硬化物の熱伝導率が15.0W/mK以上となるものであることが好ましい。
【0021】
このような熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物であれば、記熱伝導性が良好な熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物を得ることができる。
【0022】
また、本発明は、熱伝導性接着層の片面または両面に基材を有する熱伝導性シリコーン接着テープであって、前記熱伝導性接着層は前記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物からなるものである熱伝導性シリコーン接着テープを提供する。
【0023】
このような熱伝導性シリコーン接着テープであれば、取り扱い性に優れるため好ましい。
【0024】
また、前記基材は片面または両面にフッ素変性シリコーンの硬化皮膜を有することが好ましい。
【0025】
このような熱伝導性シリコーン接着テープであれば、特に取り扱い性に優れるため好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、発熱素子と放熱部材の間に非常に良好な熱伝導性を与え、且つ、付加加硫系で見られるような硬化阻害もなく、好ましい接着強度を発現することで、部材間の強固な固定が可能となり信頼性に優れる。また、本発明の熱伝導性シリコーン接着テープは、取り扱い性が良好であり、放熱部材に対して容易に実装できる。
【0027】
よって、本発明の熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、発熱性素子と放熱部材との間に介在して発熱性素子から発生する熱を放熱部材に伝え、かつ固定を行う熱伝導部材として非常に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上述のように、取り扱い性が良好で十分な接着強度が得られ、かつ高い熱性能を有する熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物の開発が求められていた。
【0029】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、過酸化物加硫系の熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物中のシリコーン樹脂の組成及び銀フィラーの配合量を特定することにより、取り扱い性が良好であり、放熱部材と良好な接着強度を有し、熱伝導性に優れる熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物及び熱伝導性シリコーン接着テープを与えることを見出し、本発明を成すに至った。
【0030】
即ち、本発明は、
熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物であって、
前記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、下記(a)~(e)成分を含有するものである熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物である。
(a)1分子中に2個以上のアルケニル基を有する直鎖または分岐状オルガノポリシロキサン:100質量部
(b)銀フィラー:3,000~7,500質量部
(c)下記(c-1)成分および(c-2)成分を含む三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:150~450質量部
(c-1):下記平均組成式(1)で表され、分子中のアルケニル基量が0.05~0.15mol/100gである三次元網状オルガノポリシロキサンレジン
【化6】
(式(1)中、R
1は独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、及び炭素数7~10のアラルキル基から選ばれる基であり、R
2は炭素数2~8のアルケニル基である。0<a1≦100であり、0<b1≦100であり、0≦c1≦100であり、0≦d1≦100であり、0≦e1≦100である。ただし、0.5≦a1/(d1+e1)≦2.0の範囲を満たすものとする。)
(c-2):下記平均組成式(2)で表される三次元網状オルガノポリシロキサンレジン
【化7】
(式(2)中、R
1は前記式(1)と同じであり、0<a2≦100であり、0≦c2≦100であり、0≦d2≦100であり、0<e2≦100である。ただし、0.7≦a2/e2≦2.5の範囲を満たすものとする。)
(d)下記一般式(3)で表される有機ケイ素化合物:1~30質量部
【化8】
(nは1~20の整数である。)
(e)有機過酸化物:5~40質量部
【0031】
以下、各成分について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
(a)1分子中に2個以上のアルケニル基を有する直鎖または分岐状オルガノポリシロキサン
(a)成分は1分子中に2個以上のアルケニル基を有する直鎖または分岐状のオルガノポリシロキサンであり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。(a)成分として具体例には、下記式(6)~(8)で表されるものが挙げられる。
【化9】
(式中、R
6は独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、及び炭素数7~10のアラルキル基から選ばれる基であり、Xは炭素数2~8のアルケニル基である。d及びeはそれぞれ0又は1以上の正数、fは1以上の正数、gは2以上の正数である。なお、d~gで括られたシロキサン単位の結合順序は、ブロックであってもランダムであってもよい。)
【0033】
前記R6としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等の炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5~10、好ましくは5~7のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等の炭素数6~10、好ましくは6~8のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等の炭素数7~10、好ましくは7~9のアラルキル基が挙げられる。なお、これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部が、ハロゲン原子で置換されたものを用いてもよい。これらの中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、及びフェニル基である。
【0034】
また、R6は全てが同一であっても異なっていてもよい。R6には耐溶剤性等の特殊な特性を要求されない限り、コスト、その入手のし易さ、化学的安定性、環境負荷等の点から、全てメチル基が選ばれることが好ましい。
【0035】
Xのアルケニル基としては、炭素数2~8のアルケニル基が好ましく、炭素数2~6がより好ましい。例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられ、中でもビニル基、アリル基等の低級アルケニル基が好ましく、ビニル基がより好ましい。
【0036】
dは0又は1以上の正数であるが、10≦d≦10,000の正数であることが好ましく、より好ましくは50≦d≦2,000の正数であり、さらに好ましくは100≦d≦1,000の正数である。
【0037】
eは0又は1以上の正数であるが、0≦e/(d+e)≦0.5が好ましく、0≦e/(d+e)≦0.1がより好ましい。
【0038】
fは1以上の正数であるが、0<f/(d+f)≦0.5が好ましく、0<f/(d+f)≦0.1がより好ましい。
【0039】
gは2以上の正数であるが、0<g/(d+g)≦0.5が好ましく、0<g/(d+g)≦0.1がより好ましい。
【0040】
(a)成分は、オイル状であってもガム状であってもよく、また1種単独で使用しても、複数の異なる粘度のものを併用してもかまわない。その平均重合度は10~5,000が好ましく、100~2,000がさらに好ましい。
【0041】
なお、重合度は、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)等を展開溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算値として求めた数平均重合度を指すものとする(以下、同じ)。
【0042】
(b)銀フィラー
(b)成分は、熱伝導性充填材となる銀フィラーである。銀フィラーの製造方法は特に限定されるものではないが、例えば電解法、熱処理法、アトマイズ法、還元法等が挙げられる。また、その形状は、フレーク状、球状、粒状、不定形状、針状等、特に限定されるものではない。
【0043】
(b)成分は、平均粒径0.1~50μm、好ましくは0.5~40μm、より好ましくは1~30μmを有するのがよい。該熱伝導性充填材は、1種単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。また、平均粒径の異なる粒子を2種以上用いてもよい。なお、本発明において、平均粒径は体積平均粒径であり、マイクロトラック粒度分布測定装置MT3300EX(日機装株式会社)による測定値である。
【0044】
(b)成分は、公知である種々の表面処理が施されてもよい。具体的には、例えば、シラン系、チタネート系などのカップリング剤処理およびプラズマ処理等が挙げられる。
【0045】
(b)成分の配合量は、前記(a)成分100質量部に対して、3,000~7,500質量部であり、好ましくは、3,500~6,500質量部であり、さらに好ましくは、4,000~6,000質量部である。
【0046】
(b)成分の配合量が7,500質量部より多いと熱伝導性接着層が脆くなり、作業性が低下する。一方、3,000質量部より少ないと、所望の熱伝導性を得ることができない。
(b)成分は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用する事ができる。
【0047】
(c)三次元網状オルガノポリシロキサンレジン
(c)成分である三次元網状オルガノポリシロキサンレジンは、熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物に凝集力を発現させ作業性を付与するとともに、硬化後の接着層において良好な接着強度を得るために機能する。
【0048】
該(c)成分は、下記(c-1)成分および(c-2)成分を含む三次元網状オルガノポリシロキサンレジンで構成される。
(c-1):下記平均組成式(1)で表され、分子中のアルケニル基量が0.05~0.15mol/100gである三次元網状オルガノポリシロキサンレジン
【化10】
(式(1)中、R
1は独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、及び炭素数7~10のアラルキル基から選ばれる基であり、R
2は炭素数2~8のアルケニル基である。0<a1≦100であり、0<b1≦100であり、0≦c1≦100であり、0≦d1≦100であり、0≦e1≦100である。ただし、0.5≦a1/(d1+e1)≦2.0の範囲を満たすものとする。)
(c-2):下記平均組成式(2)で表される三次元網状オルガノポリシロキサンレジン
【化11】
(式(2)中、R
1は前記式(1)と同じであり、0<a2≦100であり、0≦c2≦100であり、0≦d2≦100であり、0<e2≦100である。ただし、0.7≦a2/e2≦2.5の範囲を満たすものとする。)
【0049】
(c-1)成分
(c-1)成分は、下記平均組成式(1)で表され、分子中のアルケニル基が0.05~0.15mol/100gである三次元網状オルガノポリシロキサンレジンである。
【化12】
【0050】
前記式中、R1は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基から選ばれる基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基クロロメチル基、3―クロロプロピル基、3,3,3―トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、特に、メチル基であることが好ましい。
【0051】
R2は炭素数2~8のアルケニル基であり、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ヘプテニル基等などが挙げられ、特に、ビニル基であることが好ましい。
【0052】
前記式中、0<a1≦100であり、好ましくは、1≦a1≦50である。また、0<b1≦100であり、好ましくは、1≦b1≦50である。また、0≦c1≦100であり、好ましくは、0≦c1≦50である。また、0≦d1≦100であり、好ましくは、0≦d1≦50である。そして、0≦e1≦100であり、好ましくは、1≦e1≦50である。ただし、0.5≦a1/(d1+e1)≦2.0の範囲を満たすものとし、好ましくは0.6≦a1/(d1+e1)≦1.8の範囲であり、より好ましくは、0.7≦a1/(d1+e1)≦1.5の範囲である。
【0053】
上記比率が0.5未満の場合、(b)成分である銀フィラーを高充填することが困難となり、熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物の熱伝導率が低下する。あるいは上記比率が2.0を超える場合、熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物の凝集力が低下し、作業性が低下する。
【0054】
また、(c-1)成分は、分子中のアルケニル基が0.05~0.15mol/100gであり、好ましくは0.06~0.14mol/100gであり、より好ましくは0.07~0.12mol/100gである。分子中のアルケニル基が0.05mol/100gより少ないと、十分な接着強度が得られにくくなるため好ましくなく、0.15mol/100gより多いと熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物が硬く脆くなり、作業性が低下するため好ましくない。
【0055】
(c-2)成分
(c-2)成分は、下記平均組成式(2)で表される三次元網状オルガノポリシロキサンレジンである。
【化13】
【0056】
式中、R1は前記式(1)と同じであり、0<a2≦100であり、好ましくは、1≦a2≦50である。また、0≦c2≦100であり、好ましくは、0≦c2≦50である。また、0≦d2≦100であり、好ましくは、0≦d2≦50である。そして、0<e2≦100であり、好ましくは、1≦e2≦50である。ただし、0.7≦a2/e2≦2.5の範囲を満たすものとし、好ましくは0.8≦a2/e2≦2.2の範囲であり、より好ましくは、0.9≦a2/e2≦2.0の範囲である。
【0057】
上記a2/e2の比率が0.7未満の場合は、(b)成分である銀フィラーを高充填することが困難となり、熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物の熱伝導率が低下する。あるいは上記比率が2.5を超える場合、熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物の凝集力が低下し、所望の接着強度が得られなくなる。
【0058】
なお、R1は、耐溶剤性などの特殊な特性を要求されない限り、コスト、その入手のし易さ、化学的安定性、環境負荷などの理由により、全てメチル基であることが好ましい。
【0059】
上記(c)成分である三次元網状オルガノポリシロキサンレジンは、固体の場合、50~70質量%のトルエン溶液として用いることができる。その場合の動粘度は、10~500mm2/s、好ましくは100~250mm2/sであればよい。なお、動粘度はJIS Z8803:2011記載のキャノンフェンスケ粘度計により測定した25℃における値である。
【0060】
M単位、T単位、及びQ単位の比の測定方法
本発明における三次元網状(樹脂状)構造のオルガノポリシロキサンレジンの3官能性のR1SiO3/2単位(T単位)と4官能性のSiO4/2単位(Q単位)のいずれかもしくは両方の分岐鎖状シロキサン単位と単官能性のR1
3SiO1/2単位(M単位)との比、すなわち前記(c-1)成分におけるa1/(d1+e1)の値、及び前記(c-2)成分におけるa2/e2の値は、29Si-NMRから求めることができる。
【0061】
29Si-NMRのサンプルの調製方法は特に制限されないが、例えば、オルガノポリシロキサンレジン1質量部を重クロロホルム3質量部に溶解させることで測定することができる。
【0062】
(c)成分三次元網状オルガノポリシロキサンレジンの量は、前記(a)成分100質量部に対して、150~450質量部であり、好ましくは、200~350質量部、更に好ましくは250~300質量部である。(c)成分の添加量が150質量部未満である場合、熱伝導性接着層が所望の接着強度を得ることができない。また450質量部を超える場合は、熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物が脆く柔軟性に乏しくなるため、作業性に難がある。
【0063】
尚、(c)成分そのものは室温で固体又は粘稠な液体であり、溶剤に溶解した状態で使用することも可能である。その場合、熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物への添加量は、溶剤分を除いた樹脂分量が上記範囲を満たすように調整されればよい。
【0064】
本発明の(c)成分である三次元網状オルガノポリシロキサンレジンは、上記(c-1)成分と上記(c-2)成分を組み合わせて構成されることが特徴である。
その際に、(c-1)成分の量が、(c)成分総量に対して、10~60質量%であることが好ましく、さらに好ましくは、15~50質量%である。(c-1)成分の割合がこの範囲である場合、特に良好な接着強度を得ることができる。
【0065】
(d)有機ケイ素化合物
(d)成分は下記一般式(3)で表される有機ケイ素化合物であり、接着成分として被着体との濡れ性向上に寄与する。
【化14】
(nは1~20の整数である。)
【0066】
また本発明での鋭意検討の結果、(d)成分は、過酸化物加硫系において銀の焼結を補助し、効果的に熱伝導率を向上させる効果もある事を見出した。
【0067】
(d)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。(d)成分は、本発明の硬化物が、良好な熱伝導性と接着性を有するために添加される。接着性と熱伝導性の点から、nは1~20の整数であり、4~15が好ましい。
【0068】
(d)成分の配合量は、前記(a)成分100質量部に対して1~30質量部であり、2~25質量部が好ましく、5~20質量部がより好ましい。(d)成分の添加量が、この範囲外の場合、所望の接着性と熱伝導性が得られなくなる。
【0069】
(e)有機過酸化物
(e)成分は、特定の条件下で分解して遊離ラジカルを生じる有機過酸化物であり、高温下で熱伝導性接着層の硬化を促進し、接着強度を高めるために機能する。有機過酸化物は従来公知のものでよく、特に制限されるものでなく、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジスクシン酸パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネートが挙げられる。特には、分解温度が比較的高いパーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステルの使用が、取扱い性や保存性の観点から好ましい。またこれらの有機過酸化物は、任意の有機溶剤や炭化水素、流動パラフィンや不活性固体等で希釈されたものを用いてもよい。
【0070】
(e)成分の配合量は、前記(a)成分100質量部に対して、5~40質量部であり、10~35質量部が好ましい。(e)成分の量が5質量部未満であると、放熱部材に固定後、硬化処理させた際に、熱伝導性接着層の硬化が不十分となり、接着強度が低下する。また40質量部を超えると、同じく硬化処理した際に、分解残渣の影響が大きく、接着強度が低下する。
【0071】
本発明は、前記(a)~(e)成分を必須とする熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物であるが、任意で以下に示す成分をこの組成物に添加してもよい。
【0072】
(f)一分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
上記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、さらに(f)一分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含んでも良い。
【0073】
(f)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(すなわちヒドロシリル基)を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、被着体界面との良好な濡れ性を発現させ、接着力を高めるために機能する。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは公知の化合物であればよいが、分子中にケイ素原子に結合した水酸基(すなわち、シラノール基)を実質的に含有しないものであるのがよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0074】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(9)で表すことができる。
【化15】
上記式(9)中、R
6は炭素原子数1~10、好ましくは炭素原子数1~8の1価炭化水素基である。但し、アルケニル基等の脂肪族不飽和基は含まない。1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、及びフェニルプロピル基等のアラルキル基等が挙げられる。中でも、アルキル基又はアリール基が好ましく、より好ましくはメチル基である。また、rは0.7~2.1の正数であり、好ましくは、1.0~2.0の正数である。sは0.001~1.0の正数であり、好ましくは、0.01~1.0の正数である。かつ、r+sが0.8~3.0の範囲を満たす数であり、好ましくは、1.5~2.5の範囲を満たす数である。
【0075】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に2~200個、好ましくは3~100個、より好ましくは4~50個のヒドロシリル基を有する。該ヒドロシリル基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐鎖状、及び三次元網状構造のいずれであってもよい。1分子中のケイ素原子の数(重合度)は、通常2~300個、好ましくは3~150個、より好ましくは4~100個である。なお、重合度は、例えば、トルエンを展開溶媒としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(数平均分子量)として求めることができる。
【0076】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、及び、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン、上記各化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基で置換されたもの、式:R7
3SiO1/2(式中のR7はアルケニル基以外の1価炭化水素基であり、前記R1と同様の基である。)で示されるシロキサン単位と式:R7
2HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R7
2HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R7HSiO2/2で示されるシロキサン単位と式:R7SiO3/2で示されるシロキサン単位もしくは式:HSiO3/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体が挙げられる。これらのオルガノハイドロジェンポリシロキサンは2種以上を併用してもよい。
【0077】
(f)成分の配合量は、前記(a)成分100質量部に対して、1~30質量部であり、5~20質量部が好ましい。(f)成分の量が1質量部以上であると、被着体に対する濡れ性が向上し、接着強度を増加させることができる。また、30質量部以下であれば、接着層が脆弱にならず接着強度も良好となる。
【0078】
(g)表面処理剤
上記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物はさらに(g)表面処理剤を含んでも良い。該(g)成分は組成物調製の際に、(b)銀フィラーを(a)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンから成るマトリックス中に均一に分散させるために機能する。該(g)成分は、下記(g-1)成分で表されるアルコキシシラン化合物及び(g-2)成分で表される分子鎖片末端トリアルコキシ基含有ジメチルポリシロキサンから選ばれる1種以上である。すなわち、(g-1)成分と(g-2)成分はいずれか一方でも併用であってもよい。
【0079】
(g-1)下記平均組成式(4)で表されるアルコキシシラン化合物
【化16】
(式(4)中、R
3は、炭素原子数6~15のアルキル基であり、R
4は、炭素原子数1~5のアルキル基であり、R
5は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、mは1~3の整数であり、nは0~2の整数である。但しm+nは1~3の整数である。)
(g-2)下記一般式(5)で表されるジメチルポリシロキサン
【化17】
(式(5)中、R
5は、前記式(4)と同じであり、pは5~100の整数である。)
【0080】
上記式(4)において、R3で表されるアルキル基としては、例えばヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、及びテトラデシル基等が挙げられる。R3で表されるアルキル基の炭素原子数が6~15の範囲を満たすと、上述した(b)成分である銀フィラーの濡れ性が十分向上し、取り扱い性がよく、熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物の特性が良好なものとなる。
【0081】
R4は、炭素数1~5のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1~3であり、特に好ましくはメチル基である。
【0082】
R5は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、好ましくは炭素数1~4のアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等が挙げられる。より好ましくは、メチル基である。
【0083】
(g)成分の量は、前記(a)成分100質量部に対して、1~20質量部であり、5~15質量部が好ましい。
【0084】
(g)成分の添加量が1質量部以上であれば、(b)成分を(a)成分に均一に充填することができ、20質量部以下であれば、熱伝導性接着層の接着強度が低下することもない。
【0085】
[その他の添加剤]
これら任意成分の他に、着色のための顔料・染料、難燃性付与剤、その他機能を向上させるための様々な添加剤を添加することが可能である。
【0086】
[熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物]
上記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、上記した(a)~(e)成分及び任意で(f)、(g)成分、並びにその他の成分を均一に混合することで調製することができる。混合方法は従来公知の方法に従えばよい。好ましくは、(a)、(b)及び(c)成分、並びに任意の(g)成分を混合した後に、(d)成分及び(e)成分及び、任意の(f)成分を混合するのがよい。
【0087】
[熱伝導性シリコーン接着テープ]
該熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物を、後述する基材の上に薄膜テープ状に塗工、成形し、乾燥させることにより、本発明の熱伝導性シリコーン接着テープを得ることができる。乾燥条件は、60~100℃で5~20分間、好ましくは、70℃~90℃で5~15分間である。乾燥条件が上記範囲内であれば、溶剤の残留により熱伝導性が低下せず、また、熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物の硬化反応が進行せず、乾燥後の熱伝導性接着層を放熱部材に密着させることができる。本発明の熱伝導性接着層は未硬化状態の熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物からなり、放熱部材と発熱部材の間に実装される際に、加熱硬化処理されることで、両者を強固に接合できる。
【0088】
本発明の熱伝導性接着層の厚さは、好ましくは50~300μmであり、より好ましくは75~250μmである。接着層の厚さが50μm以上であれば、テープの取り扱い性が良く、かつ接着力が低下しない。一方、接着層の厚さが300μm以下であれば、所望の熱伝導性が得られる。また、塗工成形する際には、粘度調整のためにトルエンやキシレン等の溶剤を熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物に添加することも可能である。
【0089】
本発明の熱伝導性シリコーン接着テープは、離型剤で表面処理された基材をセパレーターフィルムとして有することができる。すなわち、熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物からなる熱伝導性接着層の片面又は両面が離型処理フィルムで保護されていても良い。接着面上にセパレーターフィルムを貼り合せることで、輸送、定尺カット等の取り扱いを容易にすることができる。この際、離型剤の処理量や種類、フィルムの材質を変えて、セパレーターフィルムの剥離力の軽重をつけることも可能である。
【0090】
該セパレーターフィルムとしては、ポリエチレンラミネート紙やPETフィルムにパーフロロアルキル基や、パーフロロポリエーテル基等を含むフッ素置換基が主鎖に結合しているフッ素変性シリコーンの硬化皮膜で片面または両面に離型処理を施したものが好ましい。上記パーフロロポリエーテル基は、下記式(10)~(12)で表すことができる。
【化18】
(pは1~5であり、qは3~10である)
【0091】
該フッ素変性シリコーンの市販品として、例えば、信越化学工業(株)製のX-70-201、X-70-258、X-41-3035などを使用することができる。基材上への成形方法は、バーコーター、ナイフコーター、コンマコーター、スピンコーターなどを用いて基材上に液状の材料を塗布すること等が挙げられるが、上記記載方法に限定されるものではない。
【0092】
本発明の熱伝導性シリコーン接着テープは、薄いテープ又はシート状であるにもかかわらず容易に所望の箇所に配置することができ、加熱硬化処理後、優れた熱伝導特性を発揮する。また、前述したセパレーターフィルムを有することにより、一方のセパレーターフィルムを剥離した後、発熱性電子部品又は放熱部材に貼り付け、その後、残りのセパレーターフィルムを剥離して冷却部材等に貼り合せることにより、冷却部材と発熱性電子部品又は放熱部材との間に介在させることができる。
【0093】
さらには、実装後に加熱処理を施すことにより、熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物の硬化及び銀フィラーの部分的な焼結が進行し、部材間に良好な熱伝導性と接着性をもたらし、強固な固定が可能となる。実装後の加熱処理については、130℃~190℃で20分間~90分間、好ましくは150℃~170℃で30分間~60分間であり、加熱時における加圧は、特に限定されるものではないが、銀フィラーの焼結を促すために、20~200psiが好ましく、さらに好ましくは、40~150psiである。熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物を上記のように硬化させた硬化物の熱伝導率は、15.0W/mK以上、好ましくは30.0W/mK以上、より好ましくは40.0W/mK以上であることが好ましい。
【実施例0094】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0095】
下記実施例および比較例に用いられた熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物を構成する(a)~(g)成分は以下である。
【0096】
(a)成分:
平均重合度450を有し、両末端にビニル基を含むジメチルポリシロキサンオイル
【0097】
(b)成分:
(b-1)体積平均粒径:1μmを有する球状銀フィラー
(b-2)体積平均粒径:3μmを有するフレーク状銀フィラー
(b-3)体積平均粒径:10μmを有するフレーク状銀フィラー
【0098】
(c)成分:
(c-1)成分
0.08mol/100gのアルケニル基がD単位のみに結合し、T単位とQ単位に対するM単位の比が0.9であり、前記平均組成式(1)のR1=メチル基、R2=ビニル基であり、a1=1.8、b1=1.0、c1=0、d1=1.0、e1=1.0に相当するシリコーンレジンのトルエン溶液(50質量%、動粘度10mm2/s)
(c-2)成分
M/Q(モル比)=1.2であり、M単位のケイ素原子に結合する置換基は全てメチル基であり、前記平均組成式(2)のR1=メチル基であり、a2=1.2、c2=0、d2=0、e2=1.0に相当するシリコーンレジンのトルエン溶液(60質量%、動粘度8mm2/s)
【0099】
(d)成分:オクテニルトリメトキシシラン
【0100】
(e)成分:2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン
【0101】
(f)成分:下記式で表される、オルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化19】
(前記平均組成式(9)のR
6=メチル基、r=1.4、s=0.8に相当)
【0102】
(g-1)成分:デシルトリメトキシシラン
(g-2)成分:下記式で表される、片末端にトリメトキシシリル基を有するジメチルポリシロキサン
【化20】
【0103】
上記(a)、(b)、(c)、及び(g)成分を下記表1及び表2に記載の配合量にて品川式万能撹拌機に仕込み、60分間混合した。次いで、(d)、(e)及び(f)成分を下記表1及び表2に記載の配合量にて添加し、均一に混合することで均一な熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物を得た。
【0104】
[熱伝導性シリコーン接着テープの成型]
上記で得た熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物に対して、トルエンを適量添加した。該トルエン溶液をフッ素処理PETフィルム(セパレーターフィルム)上に塗工し、80℃×15分間でトルエンを揮発させ、サイズが200×300mm、厚さ150μmを有する熱伝導性シリコーン接着テープを形成した。尚、この厚さは、熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物のみの厚さであり、セパレーターフィルムの厚さは含まない。尚、フッ素処理PETフィルム(セパレーターフィルム)の表面処理は、付加硬化型フッ素変性シリコーン系離型剤(商品名:X-41-3035、信越化学工業株式会社製)を用いた。
【0105】
[評価方法]
(1)取り扱い性:放熱部材(アルミヒートシンク)に対して、熱伝導性シリコーン接着テープの接着層面を貼り付けた際に、所望の密着性が得られるかを評価した。
【0106】
片面のセパレーターフィルムを剥がし、接着層面をアルミヒートシンクに貼り付けた後に、もう片側のセパレーターフィルムを剥がす際に、貼り付けた接着層または複合体がヒートシンクからずれずに固定されるか否かで評価をした。ずれずに固定できていたものを○、ずれが生じたものを×として、表中に記載した。なお、取り扱い性×の評価のものについては、以下の評価を行わなかった。
【0107】
(2)熱伝導率:両面のセパレーターフィルムを剥がした熱伝導性シリコーン接着テープをアルミプレートに挟み込み、均一に圧着後、乾燥機を用いて150℃/100psi×1hrの条件で加熱硬化させ、レーザーフラッシュ法で熱抵抗を測定した。厚さと熱抵抗の関係から実効の熱伝導率を下記式により算出した。
熱伝導率(W/m・K)=厚さ(μm)/熱抵抗(mm2・K/W)
【0108】
(3)対アルミせん断接着強度(接着力):熱伝導性接着層または熱伝導性複合体を10×10mm角のアルミプレートに挟み込み、均一に圧着後、乾燥機で150℃/100psi×1hrの条件で加熱硬化させた。得られた試験片に対して、Nordson社製 4000Plusボンドテスターを使用し、室温下での剥離せん断応力を測定した。
【0109】
【0110】
【0111】
実施例1~11では、転写性と取扱い性に優れ、かつ加熱圧着後の熱伝導率と接着強度においても優れた特性のものが得られた。
【0112】
比較例1では、(b)成分である銀フィラーが、(a)成分100質量部に対して3,000質量部未満であるため、所望の熱伝導率を得ることができなかった。
【0113】
比較例2では、(b)成分である銀フィラーが、(a)成分100質量部に対して7,500質量部より多いために、熱伝導性接着層が脆くなり転写が困難であった。
【0114】
比較例3では、(c)成分であるシリコーンレジンが(a)成分100質量部に対して150質量部よりも少ないため、所望の接着力を得ることができなかった。
【0115】
比較例4では、(c)成分であるシリコーンレジンが(a)成分100質量部に対して450質量部よりも多いため、熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物の柔軟性に乏しく、転写性が低下した。
【0116】
比較例5と6では、(d)成分であるオルガノシロキサンが、1~30質量部の範囲にないため、所望の接着力および熱伝導性を得ることができなかった。
【0117】
比較例7と8では、(e)成分である過酸化物が、5~40質量部の範囲にないため、所望の接着力および熱伝導性を得る事ができなかった。
【0118】
以上の通り、本発明は取り扱い性が容易であり、部材への転写性にも優れ、良好な接着強度および熱伝導性を有する熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物を与えることが示された。
【0119】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]:熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物であって、前記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、下記(a)~(e)成分を含有するものである熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物。
(a)1分子中に2個以上のアルケニル基を有する直鎖または分岐状オルガノポリシロキサン:100質量部
(b)銀フィラー:3,000~7,500質量部
(c)下記(c-1)成分および(c-2)成分を含む三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:150~450質量部
(c-1):下記平均組成式(1)で表され、分子中のアルケニル基量が0.05~0.15mol/100gである三次元網状オルガノポリシロキサンレジン
【化21】
(式(1)中、R
1は独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、及び炭素数7~10のアラルキル基から選ばれる基であり、R
2は炭素数2~8のアルケニル基である。0<a1≦100であり、0<b1≦100であり、0≦c1≦100であり、0≦d1≦100であり、0≦e1≦100である。ただし、0.5≦a1/(d1+e1)≦2.0の範囲を満たすものとする。)
(c-2):下記平均組成式(2)で表される三次元網状オルガノポリシロキサンレジン
【化22】
(式(2)中、R
1は前記式(1)と同じであり、0<a2≦100であり、0≦c2≦100であり、0≦d2≦100であり、0<e2≦100である。ただし、0.7≦a2/e2≦2.5の範囲を満たすものとする。)
(d)下記一般式(3)で表される有機ケイ素化合物:1~30質量部
【化23】
(nは1~20の整数である。)
(e)有機過酸化物:5~40質量部
[2]:前記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、さらに(f)成分として、1分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを1~30質量部含むものである上記[1]の熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物。
[3]:前記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、前記(c)三次元網状オルガノポリシロキサンレジンの総量に対する前記(c-1)成分の割合が10~60質量%のものである上記[1]又は上記[2]の熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物。
[4]:前記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、さらに(g)成分として、下記(g-1)成分及び(g-2)成分から選ばれる1種以上を1~20質量部含むものである上記[1]、上記[2]又は上記[3]の熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物。
(g-1)下記平均組成式(4)で表されるアルコキシシラン化合物
【化24】
(式(4)中、R
3は、炭素原子数6~15のアルキル基であり、R
4は、炭素原子数1~5のアルキル基であり、R
5は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、mは1~3の整数であり、nは0~2の整数である。但しm+nは1~3の整数である。)
(g-2)下記一般式(5)で表されるジメチルポリシロキサン
【化25】
(式(5)中、R
5は、前記式(4)と同じであり、pは5~100の整数である。)
[5]:前記(b)銀フィラーは、平均粒径が0.1~50μmである上記[1]、上記[2]、上記[3]、又は上記[4]の熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物。
[6]:前記熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物は、その硬化物の熱伝導率が15.0W/mK以上となるものである上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]又は上記[5]の熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物。
[7]:熱伝導性接着層の片面または両面に基材を有する熱伝導性シリコーン接着テープであって、前記熱伝導性接着層は上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]、上記[5]又は上記[6]の熱伝導性シリコーン接着テープ用組成物からなるものである熱伝導性シリコーン接着テープ。
[8]:前記基材は片面または両面にフッ素変性シリコーンの硬化皮膜を有する上記[7]の熱伝導性シリコーン接着テープ。
【0120】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。