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特開2023-167394基板処理装置および液受け容器の洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167394
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】基板処理装置および液受け容器の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
H01L21/304 643Z
H01L21/304 643A
H01L21/304 648G
H01L21/304 651M
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078550
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 陽
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA16
5F157AB02
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB48
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157BB23
5F157BB24
5F157BB45
5F157BH18
5F157CC11
5F157CE07
5F157CE25
5F157CE32
5F157CF14
5F157CF40
5F157CF42
5F157CF44
5F157CF60
5F157CF99
5F157DB18
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】液受け容器を広範囲にわたって洗浄すること。
【解決手段】基板処理装置は、保持部と、加熱機構と、洗浄液供給部と、液受け容器と、制御部とを備える。保持部は、基板を回転可能に保持する。加熱機構は、保持部に保持された基板を加熱する。洗浄液供給部は、基板に洗浄液を供給する。液受け容器は、保持部の周囲に配置されている。制御部は、各部を制御する。制御部は、加熱処理と、第1洗浄処理とを実行する。加熱処理は、保持部に保持された基板を加熱機構を用いて加熱する。第1洗浄処理は、洗浄液供給部から回転する基板に洗浄液を供給して、基板の周縁部に反りを発生させるとともに、周縁部から飛散する洗浄液により液受け容器の第1領域を洗浄する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を回転可能に保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記基板を加熱する加熱機構と、
前記基板に洗浄液を供給する洗浄液供給部と、
前記保持部の周囲に配置された液受け容器と、
各部を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記保持部に保持された前記基板を前記加熱機構を用いて加熱する加熱処理と、
前記洗浄液供給部から回転する前記基板に前記洗浄液を供給して、前記基板の周縁部に反りを発生させるとともに、前記周縁部から飛散する前記洗浄液により前記液受け容器の第1領域を洗浄する第1洗浄処理と
を実行する、基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1洗浄処理において、前記洗浄液供給部から前記基板の中央部よりも前記基板の周縁部側に近い位置に前記洗浄液を供給して、前記基板の周縁部に前記反りを発生させる、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1洗浄処理において、前記加熱機構の設定温度、前記洗浄液の供給位置、前記洗浄液の供給流量および前記基板の回転数の少なくとも1つを変化させることにより、前記反りの反り量を調節する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記洗浄液供給部から回転する前記基板に前記洗浄液を供給して、前記基板の周縁部に前記反りを発生させることなく、前記洗浄液により前記第1領域よりも高さが低い前記液受け容器の第2領域を洗浄する第2洗浄処理をさらに実行する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記洗浄液供給部は、前記基板に前記洗浄液を供給するノズルと、前記ノズルを移動させる移動機構とを含み、
前記制御部は、
前記第1洗浄処理において、前記洗浄液の供給位置を前記基板の中央部よりも前記基板の周縁部側に近い位置に移動させ、前記第2洗浄処理において、前記洗浄液の供給位置を前記基板の中央部に対応する位置に移動させる、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1洗浄処理において、前記加熱機構の設定温度を第1温度に設定し、前記第2洗浄処理において、前記加熱機構の設定温度を前記第1温度よりも低い第2温度に設定する、請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第1洗浄処理において、前記洗浄液の供給流量を第1流量に設定し、前記第2洗浄処理において、前記洗浄液の供給流量を前記第1流量よりも多い第2流量に設定する、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第1洗浄処理において、前記基板を第1回転数で回転させ、前記第2洗浄処理において、前記基板を前記第1回転数よりも低い第2回転数で回転させる、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記加熱機構は、流体を吐出可能な複数の吐出口と、前記流体を加熱するヒータとを含み、前記複数の吐出口から前記基板に対して加熱された前記流体を供給することにより、前記基板を加熱する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記液受け容器の前記第1領域および前記第2領域の清浄度をモニタする第1モニタ部をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1モニタ部によるモニタ結果に基づき、前記第1洗浄処理および前記第2洗浄処理のうち実行すべき一方または両方の処理を判定する第1判定処理をさらに実行する、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記基板の表面の親水度をモニタする第2モニタ部をさらに備え、
前記制御部は、
前記第2モニタ部によるモニタ結果に基づき、前記基板の表面を親水化する処理を実行するか否かを判定する第2判定処理をさらに実行する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項12】
少なくとも第1洗浄液供給部および第2洗浄液供給部を含む複数の前記洗浄液供給部を備え、
前記第1洗浄液供給部は、前記基板に洗浄液を供給する第1ノズルを有し、
前記第2洗浄液供給部は、前記基板に洗浄液を供給する第2ノズルを有し、
前記制御部は、
前記第1洗浄処理において、前記第1ノズルから回転する前記基板に前記洗浄液を供給して、前記基板の周縁部に反りを発生させるとともに、前記周縁部から飛散する前記洗浄液により前記第1領域とともに前記第2ノズルを洗浄する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項13】
基板を回転可能に保持する保持部を用いて前記基板を保持することと、
保持された前記基板を加熱機構を用いて加熱することと、
前記基板に洗浄液を供給する洗浄液供給部から回転する前記基板に前記洗浄液を供給して、前記基板の周縁部に反りを発生させるとともに、前記周縁部から飛散する前記洗浄液により前記保持部の周囲に配置された液受け容器の第1領域を洗浄することと
を含む、液受け容器の洗浄方法。
【請求項14】
前記第1領域を洗浄することは、
前記洗浄液供給部から前記基板の中心位置よりも前記基板の径方向外側に前記洗浄液を供給して、前記基板の周縁部に前記反りを発生させる、請求項13に記載の液受け容器の洗浄方法。
【請求項15】
前記第1領域を洗浄することは、
前記加熱機構の設定温度、前記洗浄液の供給位置、前記洗浄液の供給流量および前記基板の回転数の少なくとも1つを変化させることにより、前記反りの反り量を調節する、請求項13に記載の液受け容器の洗浄方法。
【請求項16】
前記洗浄液供給部から回転する前記基板に前記洗浄液を供給して、前記基板の周縁部に前記反りを発生させることなく、前記洗浄液により前記第1領域よりも高さが低い前記液受け容器の第2領域を洗浄すること
をさらに含む、請求項13に記載の液受け容器の洗浄方法。
【請求項17】
前記洗浄液供給部は、前記基板に前記洗浄液を吐出するノズルと、前記ノズルを移動させる移動機構とを含み、
前記第1領域を洗浄することは、
前記加熱機構の設定温度を第1温度に設定し、かつ前記洗浄液の供給位置を前記基板の中心位置よりも前記基板の径方向外側に移動させ、
前記第2領域を洗浄することは、
前記洗浄液の供給位置を前記基板の中心位置に移動させる、請求項16に記載の液受け容器の洗浄方法。
【請求項18】
前記第2領域を洗浄することは、
前記加熱機構の設定温度を前記第1温度よりも低い第2温度に設定する、請求項17に記載の液受け容器の洗浄方法。
【請求項19】
前記第1領域を洗浄することは、
前記洗浄液の供給流量を第1流量に設定し、
前記第2領域を洗浄することは、
前記洗浄液の供給流量を前記第1流量よりも多い第2流量に設定する、請求項16に記載の液受け容器の洗浄方法。
【請求項20】
前記第1領域を洗浄することは、
前記基板を第1回転数で回転させ、
前記第2領域を洗浄することは、
前記基板を前記第1回転数よりも低い第2回転数で回転させる、請求項16に記載の液受け容器の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置および液受け容器の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハやガラス基板などの基板に対して処理液を供給して各種処理を行う基板処理装置において、基板の周囲を囲むように設けられた液受け容器を洗浄する技術が知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、処理対象の基板とは形状が異なる特殊な洗浄用基板を回転可能な保持部を用いて保持し、回転する洗浄用基板に洗浄液を供給して、洗浄用基板の周縁部から飛散する洗浄液により液受け容器を洗浄する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-315671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、液受け容器を広範囲にわたって洗浄することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による基板処理装置は、保持部と、加熱機構と、洗浄液供給部と、液受け容器と、制御部とを備える。保持部は、基板を回転可能に保持する。加熱機構は、保持部に保持された基板を加熱する。洗浄液供給部は、基板に洗浄液を供給する。液受け容器は、保持部の周囲に配置されている。制御部は、各部を制御する。制御部は、加熱処理と、第1洗浄処理とを実行する。加熱処理は、保持部に保持された基板を加熱機構を用いて加熱する。第1洗浄処理は、洗浄液供給部から回転する基板に洗浄液を供給して、基板の周縁部に反りを発生させるとともに、周縁部から飛散する洗浄液により液受け容器の第1領域を洗浄する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、液受け容器を広範囲にわたって洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る処理ユニットの構成を示す模式的な平面図である。
図3図3は、実施形態に係る処理ユニットの構成を示す模式的な断面図である。
図4図4は、実施形態に係る処理ユニットが実行する一連の処理手順を示すフローチャートである。
図5図5は、実施形態に係る第1洗浄処理および第2洗浄処理における各部の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図6図6は、実施形態に係る第1洗浄処理および第2洗浄処理における第1供給部および第3供給部の動作例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る第1洗浄処理および第2洗浄処理における第1供給部および第3供給部の動作例を示す図である。
図8図8は、ヒータ温度による熱反りの反り量の調節例について説明するための図である。
図9図9は、リンス液の供給位置による熱反りの反り量の調節例について説明するための図である。
図10図10は、ウエハの回転数による熱反りの反り量の調節例について説明するための図である。
図11図11は、実施形態の変形例1に係る処理ユニットの構成を示す模式図である。
図12図12は、実施形態の変形例1に係る処理ユニットが実行する洗浄内容判定処理の手順を示すフローチャートである。
図13図13は、実施形態の変形例2に係る処理ユニットの構成を示す模式図である。
図14図14は、実施形態の変形例2に係る処理ユニットが実行する親水化処理の手順を示すフローチャートである。
図15図15は、実施形態の変形例3に係る第1洗浄処理における第1供給部、第2供給部および第3供給部の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示による基板処理装置および液受け容器の洗浄方法を実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0010】
また、以下に示す実施形態では、「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、例えば製造精度、設置精度などのずれを許容するものとする。
【0011】
また、以下参照する各図面では、説明を分かりやすくするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする直交座標系を示す場合がある。また、鉛直軸を回転中心とする回転方向をθ方向と呼ぶ場合がある。
【0012】
処理対象の基板とは形状が異なる特殊な洗浄用基板を回転可能な保持部を用いて保持し、回転する洗浄用基板に洗浄液を供給して、洗浄用基板の周縁部から飛散する洗浄液により液受け容器を洗浄する技術がある。
【0013】
ところで、上記の技術のように特殊な形状の洗浄用基板を用いる洗浄方法では、処理対象の基板を洗浄用基板に交換する工程が追加されることから、処理が複雑化するという問題があった。
【0014】
そこで、特殊な形状の洗浄用基板を用いることなく、液受け容器を広範囲にわたって洗浄することができる技術が期待されている。
【0015】
図1は、実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0016】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の基板、実施形態では半導体ウエハ(以下ウエハW)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0017】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウエハWの搬送を行う。
【0018】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16(基板処理装置の一例)とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。なお、基板処理システム1が備える処理ユニット16の数は、図示の例に限定されない。
【0019】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウエハWの搬送を行う。
【0020】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウエハWに対して所定の基板処理を行う。また、処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウエハWを用いて、後述する外方カップ80(図2および図3参照)に対する洗浄処理を行う。
【0021】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と、記憶部19とを備える。記憶部19は、たとえば、RAM、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現され、処理ユニット16において実行される各種の処理を制御するプログラムを記憶する。制御部18は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含み、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって処理ユニット16の動作を制御する。
【0022】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0023】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウエハWを取り出し、取り出したウエハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウエハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0024】
処理ユニット16へ搬入されたウエハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウエハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0025】
次に、実施形態に係る処理ユニット16の構成について図2および図3を参照して説明する。図2は、実施形態に係る処理ユニット16の構成を示す模式的な平面図である。また、図3は、実施形態に係る処理ユニット16の構成を示す模式的な断面図である。なお、図3は、図2に示すIII-III線矢視における断面を模式的に示している。
【0026】
図2および図3に示すように、処理ユニット16は、処理容器10と、保持部20と、加熱機構30とを備える。また、処理ユニット16は、第1供給部40(洗浄液供給部および第1洗浄液供給部の一例)と、第2供給部50(洗浄液供給部および第2洗浄液供給部の一例)と、第3供給部60(洗浄液供給部の一例)と、下方カップ70と、外方カップ80とを備える。
【0027】
処理容器10は、保持部20、加熱機構30、第1供給部40、第2供給部50、第3供給部60、下方カップ70および外方カップ80を収容する。
【0028】
保持部20は、ウエハWを回転可能に保持する。具体的には、保持部20は、バキュームチャック21と、軸部22と、駆動部23とを備える。バキュームチャック21は、ウエハWを真空引きにより吸着保持する。バキュームチャック21は、ウエハWよりも小径であり、ウエハWの裏面中央部を吸着保持する。軸部22は、先端部においてバキュームチャック21を水平に支持する。駆動部23は、軸部22の基端部に接続され、軸部22を鉛直軸まわりに回転させる。ウエハWは、かかる保持部20に対しておもて面を上方に向けた状態で水平に保持される。
【0029】
加熱機構30は、ウエハWの下方かつ保持部20の外方に配置される。具体的には、加熱機構30は、保持部20と下方カップ70との間に配置される。
【0030】
加熱機構30は、保持部20に保持されたウエハWの裏面に対し、加熱された流体を供給することによりウエハWを加熱する。具体的には、加熱機構30は、ウエハWの周方向に並べて配置され、流体を吐出可能な複数の吐出口35bと、流体を加熱するヒータ(不図示)とを備えており、これら複数の吐出口35bからウエハWの裏面に対して加熱された流体を供給する。加熱された流体は、たとえば、加熱されたNガスであってもよい。
【0031】
なお、加熱機構30が有する複数の吐出口35bは、処理ユニット16を平面視した場合に、ウエハWの周縁部よりもウエハWの径方向内方に位置している。一例として、ウエハWの周縁部は、ウエハWの端面を最外周とする幅1mm~25mm程度の環状の領域である。複数の吐出口35bは、かかるウエハWの周縁部よりもウエハWの径方向内方におけるウエハWの裏面に対して加熱された流体を供給する。また、加熱機構30が有する複数の吐出口35bは、処理ユニット16を平面視した場合に、ウエハWの中心を中心とする同心円状に配置されてもよい。
【0032】
第1供給部40は、ウエハWのおもて面側の周縁部またはウエハWのおもて面側の中央部に処理液を供給する。第1供給部40は、第1ノズル41と、アーム42と、移動機構43とを備える。
【0033】
第1ノズル41は、ウエハWよりも上方において吐出口を下向きにした状態で配置される。第1ノズル41は、ウエハWのおもて面側の周縁部またはウエハWのおもて面側の中央部に薬液やリンス液(洗浄液の一例)等の処理液を吐出する。薬液は、たとえば、ウエハWのおもて面に形成された膜をエッチング除去する薬液である。薬液としては、たとえば、フッ酸(HF)、希フッ酸(DHF)、フッ硝酸等を用いることができる。フッ硝酸とは、フッ酸(HF)と硝酸(HNO)との混合液である。また、リンス液としては、たとえば、DIW(脱イオン水)を用いることができる。
【0034】
第1ノズル41から吐出される処理液の温度は、加熱機構30によって加熱されたウエハWの温度よりも低い。たとえば、加熱機構30によって加熱されたウエハWの温度は、100℃程度である。一方、第1ノズル41から吐出される処理液の温度は、常温(20℃~25℃程度)である。
【0035】
アーム42は、水平方向(ここでは、Y軸方向)に延在し、先端部において第1ノズル41を支持する。移動機構43は、アーム42の基端部に接続され、アーム42をたとえば水平方向(ここでは、X軸方向)に沿って移動させるとともに、アーム42を旋回および昇降させる。移動機構43により、アーム42は、ウエハWの周縁部の上方における第1処理位置、ウエハWの中央部の上方における第2処理位置およびウエハWの外方における退避位置の間で第1ノズル41を移動させることができる。
【0036】
第2供給部50は、ウエハWのおもて面側の周縁部に処理液を供給する。第2供給部50は、第2ノズル51と、アーム52と、移動機構53とを備える。
【0037】
第2ノズル51は、ウエハWよりも上方において吐出口を下向きにした状態で配置される。第2ノズル51は、ウエハWのおもて面側の周縁部に処理液を吐出する。
【0038】
第2ノズル51から吐出される処理液の温度は、加熱機構30によって加熱されたウエハWの温度よりも低い。たとえば、第2ノズル51から吐出される処理液の温度は、常温である。
【0039】
アーム52は、水平方向(ここでは、Y軸方向)に延在し、先端部において第2ノズル51を支持する。移動機構53は、アーム52の基端部に接続され、アーム52をたとえば水平方向(ここでは、X軸方向)に沿って移動させる。移動機構53により、アーム52は、ウエハWの周縁部の上方における第3処理位置およびウエハWの外方における退避位置の間で第2ノズル51を移動させることができる。
【0040】
第3供給部60は、ウエハWの裏面周縁部に対して処理液を供給する。図3に示すように、第3供給部60は、裏面ノズル61と、配管62と、バルブ63と、流量調整器64と、処理液供給源65とを備える。
【0041】
裏面ノズル61は、ウエハWの下方に配置され、ウエハWの裏面周縁部に向けて処理液を吐出する。
【0042】
なお、ウエハWの裏面における処理液の供給位置は、ウエハWのおもて面における処理液の供給位置よりも径方向内方であってもよい。一例として、ウエハWのおもて面における処理液の供給位置は、ウエハWの端面からウエハWの径方向内方に1mmの位置であってもよい。また、ウエハWの裏面における処理液の供給位置は、ウエハWの端面からウエハWの径方向内方に3mmの位置であってもよい。
【0043】
ここでは図示を省略するが、第3供給部60は、裏面ノズル61を水平方向に移動させる移動機構を備えていてもよい。この場合、第3供給部60は、ウエハWの周縁部の下方における第4処理位置とウエハWの外方における退避位置との間で裏面ノズル61を移動させることができる。
【0044】
配管62は、裏面ノズル61と処理液供給源65とを接続する。バルブ63は、配管62の中途部に設けられ、配管62を開閉する。流量調整器64は、配管62の中途部に設けられ、配管62を流れる処理液の流量を調整する。処理液供給源65は、たとえばタンクであり、処理液を貯留する。
【0045】
下方カップ70は、ウエハWの下方において加熱機構30の外方に配置される円環状の部材である。下方カップ70は、たとえばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)等のフッ素樹脂等の耐薬品性の高い部材で形成される。
【0046】
外方カップ80は、ウエハWを取り囲むように設けられた環状の部材であり、ウエハWから飛散した液体を受け止める。外方カップ80の底部には、排液口81が形成されている。外方カップ80によって受け止められた薬液やリンス液等は、外方カップ80と下方カップ70とによって形成される空間に貯留された後、排液口81から処理ユニット16の外部に排出される。
【0047】
次に、実施形態に係る処理ユニット16が実行する一連の処理手順について図4を参照して説明する。図4は、実施形態に係る処理ユニット16が実行する一連の処理手順を示すフローチャートである。図4に示す各処理手順は、制御部18による制御に従って実行される。
【0048】
図4に示すように、処理ユニット16では、まず、搬入処理が行われる(ステップS101)。搬入処理では、基板搬送装置17(図1参照)によって処理ユニット16の処理容器10にウエハWが搬入される。搬入されたウエハWは、処理ユニット16の保持部20によって保持される。
【0049】
つづいて、処理ユニット16は、ウエハWの回転および加熱を開始する(ステップS102)。ウエハWの回転は、保持部20の駆動部23を用いてバキュームチャック21を回転させることによって行われる。ウエハWの加熱は、加熱機構30を用いて行われる。ウエハWの回転は、ステップS104の処理が終了するまで継続する。また、ウエハWの加熱は、少なくともステップS103の処理が終了するまで継続する。
【0050】
つづいて、処理ユニット16では、第1洗浄処理が行われる(ステップS103)。第1洗浄処理において、処理ユニット16は、第1供給部40および第3供給部60から回転するウエハWにリンス液を供給する。具体的には、処理ユニット16は、第1ノズル41を第1処理位置に移動させかつ裏面ノズル61を第4処理位置に移動させた後、第1供給部40および第3供給部60からウエハWの中央部よりもウエハWの周縁部側に近い位置にリンス液を供給する。ウエハWよりも低温のリンス液がウエハWの周縁部に供給されると、ウエハWの周縁部の熱が奪われることで、ウエハWには、周縁部とそれ以外の領域(たとえばウエハWの中央部)との間に温度差が生じる。この温度差は、ウエハWの周縁部に反りを発生させる。以下、ウエハWの周縁部とそれ以外の領域との温度差によってウエハWの周縁部に発生する反りを「熱反り」と記載する。
【0051】
熱反りは、ウエハWの中央部に対するウエハWの周縁部の高さがウエハWの径方向外側に向かって徐々に高くなるように、発生する。仮に、ウエハWの周縁部に熱反りが発生していない状態で、すなわち、ウエハWの周縁部の高さが中央部の高さとほぼ同一である状態で、第1供給部40および第3供給部60がウエハWにリンス液を供給すると、リンス液はウエハWの周縁部から略水平に飛散する。ウエハWの周縁部から略水平に飛散するリンス液は、外方カップ80の内面のうちウエハWよりも低い領域(以下、「下領域」と記載する、第2領域の一例)に着液することから、ウエハWよりも高い領域(以下、「上領域」と記載する、第1領域の一例)を洗浄することが困難である。すなわち、外方カップ80を広範囲にわたって洗浄することが困難である。
【0052】
そこで、実施形態に係る処理ユニット16では、第1供給部40および第3供給部60から回転するウエハWにリンス液を供給して、ウエハWの周縁部に熱反りを発生させるとともに、周縁部から飛散するリンス液により外方カップ80の上領域を洗浄する。
【0053】
このように、第1洗浄処理では、ウエハWの周縁部に熱反りを発生させながら第1供給部40および第3供給部60からウエハWにリンス液を供給することで、ウエハWの周縁部から斜め上方にリンス液を飛散させることができる。ウエハWの周縁部から斜め上方に飛散するリンス液は、外方カップ80の上領域に着液することから、外方カップ80の上領域を洗浄することができる。その結果、実施形態に係る処理ユニット16によれば、特殊な形状の洗浄用基板を用いることなく、外方カップ80を外方カップ80の上領域を含む広範囲にわたって洗浄することができる。
【0054】
つづいて、処理ユニット16では、第2洗浄処理が行われる(ステップS104)。処理ユニット16では、第1供給部40から回転するウエハWにリンス液を供給する処理が行われる。具体的には、処理ユニット16は、第1ノズル41を第1処理位置から第2処理位置に移動させた後、第1供給部40からウエハWの中央部に対応する位置にリンス液を供給する。リンス液がウエハWの中央部に供給されると、ウエハWの周縁部の熱が奪われ難いので、ウエハWの周縁部とそれ以外の領域との間の温度差が低減されてウエハWの周縁部に熱反りが発生しない。ウエハWの周縁部に熱反りが発生していない状態で、すなわち、ウエハWの周縁部の高さが中央部の高さとほぼ同一である状態で、第1供給部40がウエハWにリンス液を供給すると、リンス液はウエハWの周縁部から略水平に飛散する。
【0055】
このように、第2洗浄処理では、ウエハWの周縁部に熱反りを発生させることなく、第1供給部40からウエハWにリンス液を供給することで、ウエハWの周縁部から略水平にリンス液を飛散させることができる。ウエハWの周縁部から略水平に飛散するリンス液は、外方カップ80の下領域に着液することから、外方カップ80の下領域を洗浄することができる。その結果、実施形態に係る処理ユニット16によれば、外方カップ80を外方カップ80の下領域を含む広範囲にわたって洗浄することができる。
【0056】
つづいて、処理ユニット16では、乾燥処理が行われる(ステップS105)。乾燥処理において、処理ユニット16は、ウエハWの回転数を増加させる。これにより、ウエハWに残存する液体が遠心力によって振り切られてウエハWが乾燥する。
【0057】
つづいて、処理ユニット16では、搬出処理が行われる(ステップS106)。搬出処理では、基板搬送装置17(図1参照)によってウエハWが処理容器10から搬出される。処理容器10から搬出されたウエハWは、その後、基板搬送装置13によってキャリアCに収容される。
【0058】
なお、上記の第1洗浄処理(ステップS103)および第2洗浄処理(ステップS104)の一方は、省略されてもよい。
【0059】
また、上記の第1洗浄処理(ステップS103)と第2洗浄処理(ステップS104)の順序は入れ替え可能である。すなわち、外方カップ80の下領域が洗浄された後に、外方カップ80の上領域が洗浄されてもよい。
【0060】
次に、第1洗浄処理および第2洗浄処理の具体例について説明する。ここでは、第2洗浄処理を実行した後に第1洗浄処理を実行する場合の例について図5図7を参照して説明する。図5は、実施形態に係る第1洗浄処理および第2洗浄処理における各部の動作の一例を示すタイミングチャートである。図6および図7は、実施形態に係る第1洗浄処理および第2洗浄処理における第1供給部40および第3供給部60の動作例を示す図である。
【0061】
図5には、加熱流体流量、リンス液流量(周縁部)、リンス液流量(中央部)およびウエハ回転数の各タイミングチャートがあわせて示されている。加熱流体流量は、加熱機構30からウエハWの裏面に対して供給される、加熱された流体の流量を示している。リンス液流量(周縁部)は、第1供給部40および第3供給部60からウエハWの周縁部に供給されるリンス液の流量を示している。リンス液流量(中央部)は、第1供給部40からウエハWの中央部に供給されるリンス液の流量を示している。ウエハ回転数は、保持部20によって回転されるウエハWの回転数を示している。
【0062】
図5に示すように、処理ユニット16は、まず、時間t1において、保持部20によってウエハWを回転数R1で回転させる。また、処理ユニット16は、加熱機構30によって供給される、加熱された流体の流量を流量H1に設定する。第2洗浄処理における、加熱された流体の流量H1は、第1洗浄処理における、加熱された流体の流量H2よりも少ない。
【0063】
また、処理ユニット16は、第1供給部40の第1ノズル41を退避位置から第2処理位置に移動させる。これにより、処理ユニット16は、ウエハWに対するリンス液の供給位置をウエハWの中央部に対応する位置に移動させることができる。処理ユニット16は、時間0において第1ノズル41からのリンス液の供給を開始する。処理ユニット16は、時間0から時間t1にかけてリンス液の供給流量を0から流量F1に増加させる。これにより、処理ユニット16は、第2洗浄処理において、ウエハWの中央部に供給されるリンス液の流量を第1洗浄処理における流量F2(第1流量の一例)よりも多い流量F1(第2流量の一例)に設定することができる。
【0064】
つづいて、処理ユニット16は、時間t2において、ウエハWの回転数を回転数R1から回転数R2に増加させる。つづいて、処理ユニット16は、時間t3において、ウエハWの回転数を回転数R2から回転数R3に増加させる。第2洗浄処理におけるウエハWの回転数R1~R3は、第1洗浄処理におけるウエハWの回転数R4よりも低い。すなわち、処理ユニット16は、第2洗浄処理において、ウエハWを回転数R4(第1回転数の一例)よりも低い回転数R1~R3(第2回転数の一例)で回転させる。
【0065】
このように、処理ユニット16は、第2洗浄処理において、第1供給部40の第1ノズル41から回転するウエハWの中央部にリンス液を供給する(図6参照)。リンス液がウエハWの中央部に供給されると、ウエハWの周縁部の熱が奪われ難くなることから、ウエハWの周縁部とそれ以外の領域との間の温度差が低減されてウエハWの周縁部に熱反りが発生しない。ウエハWの周縁部に熱反りが発生していない状態で、すなわち、ウエハWの周縁部の高さが中央部の高さとほぼ同一である状態で、第1供給部40がウエハWにリンス液を供給すると、リンス液はウエハWの周縁部から略水平に飛散する。ウエハWの周縁部から略水平に飛散するリンス液は、外方カップ80の下領域80bに着液することから、外方カップ80の下領域80bを洗浄することができる。
【0066】
また、処理ユニット16は、ウエハWの回転数を回転数R1~R3に徐々に増加させることで、外方カップ80の下領域80bの下方から上方にわたる広い範囲を洗浄することができる。
【0067】
つづいて、処理ユニット16は、時間t4において、ウエハWの回転数を回転数R3から回転数R4に増加させる。すなわち、処理ユニット16は、第1洗浄処理において、ウエハWを回転数R4で回転させる。また、処理ユニット16は、加熱機構30によって供給される、加熱された流体の流量を流量H1から流量H2に増加させる。これにより、加熱機構30によって加熱されたウエハWの温度が上昇する。また、処理ユニット16は、時間t4において、第1ノズル41からのリンス液の供給を終了する。
【0068】
つづいて、処理ユニット16は、時間t4から時間t5までの期間において、第1供給部40の第1ノズル41を第2処理位置から第1処理位置に移動させ、第3供給部60の裏面ノズル61を退避位置から第4処理位置に移動させる。これにより、処理ユニット16は、ウエハWに対するリンス液の供給位置をウエハWの中央部よりもウエハWの周縁部側に近い位置に移動させることができる。処理ユニット16は、時間t5において第1ノズル41および裏面ノズル61からのリンス液の供給を開始する。処理ユニット16は、時間t5から時間t6にかけてリンス液の供給流量を0から流量F2に増加させる。これにより、処理ユニット16は、第1洗浄処理において、ウエハWの周縁部に供給されるリンス液の流量を流量F2に設定することができる。
【0069】
このように、処理ユニット16は、第1洗浄処理において、第1供給部40の第1ノズル41および第3供給部60の裏面ノズル61から回転するウエハWの中央部よりもウエハWの周縁部側に近い位置にリンス液を供給する(図7参照)。ウエハWよりも低温のリンス液がウエハWの周縁部に供給されると、ウエハWの周縁部の熱が奪われることで、ウエハWには、周縁部とそれ以外の領域(たとえばウエハWの中央部)との間に温度差が生じて熱反りが発生する。処理ユニット16は、ウエハWの周縁部に熱反りを発生させながら第1供給部40および第3供給部60からウエハWにリンス液を供給することで、ウエハWの周縁部から斜め上方にリンス液を飛散させることができる。ウエハWの周縁部から斜め上方に飛散するリンス液は、外方カップ80の上領域80aに着液することから、外方カップ80の上領域80aを洗浄することができる。これにより、外方カップ80を上領域80aを含む広範囲にわたって洗浄することができる。なお、ウエハWの温度と同じ温度のリンス液がウエハWの周縁部に供給される場合にも、ウエハWの周縁部においてリンス液の気化熱による熱反りが発生する。
【0070】
本例において、処理ユニット16は、第1洗浄処理において、加熱機構30の設定温度を第1温度に設定し、第2洗浄処理において、加熱機構30の設定温度を第1温度よりも低い第2温度に設定してもよい。言い換えれば、第1洗浄処理における加熱機構30の設定温度を第2洗浄処理における加熱機構30の設定温度よりも高くしてもよい。これにより、第1洗浄処理において、加熱機構30によって加熱されたウエハWの温度がより上昇することから、ウエハWの周縁部とそれ以外の領域との温度差を増大させて熱反りを発生させ易くすることができる。
【0071】
また、処理ユニット16は、第1洗浄処理において、加熱機構30の設定温度、リンス液の供給位置、リンス液の供給流量およびウエハWの回転数の少なくとも1つを変化させることにより、熱反りの反り量を調節してもよい。これにより、外方カップ80の上領域80aの下方から上方にわたる広い範囲を洗浄することができる。
【0072】
ここで、熱反りの反り量の調節について図8図10を参照して説明する。本願発明者は、鋭意研究の結果、加熱機構30の設定温度、リンス液の供給位置、リンス液の供給流量およびウエハWの回転数の少なくとも1つを変化させることにより、熱反りの反り量を調節できることを見出した。
【0073】
図8は、ヒータ温度による熱反りの反り量の調節例について説明するための図である。図8において、横軸は、ヒータ温度(つまり、加熱機構30の設定温度)を示し、縦軸は、ウエハWの周縁部の熱反りの反り量を示す。熱反りの反り量は、ウエハWの中央部に対するウエハWのエッジの高さにより表される。図8の評価では、ヒータ温度以外の評価条件としては、ウエハWの回転数:2400rpm、リンス液の供給位置:ウエハWの端面から5mmが用いられた。
【0074】
図8に示すように、熱反りの反り量は、加熱機構30の設定温度が高くなるにつれて増加した。これは、加熱機構30の設定温度を高くすることでウエハWの温度が上昇して、ウエハWの周縁部とそれ以外の領域との間の温度差が増大したためであると考えられる。
【0075】
図9は、リンス液の供給位置による熱反りの反り量の調節例について説明するための図である。図9において、横軸は、第1供給部40および第3供給部60からウエハWに対して供給されるリンス液の供給位置を示し、縦軸は、ウエハWの周縁部の熱反りの反り量を示す。ウエハWに対するリンス液の供給位置は、ウエハWの半径方向に沿ったウエハWの端面からの距離で表される。図9の評価では、リンス液の供給位置以外の評価条件としては、ウエハWの回転数:2400rpm、ヒータ温度:T1またはT2(<T1)が用いられた。
【0076】
図9に示すように、熱反りの反り量は、リンス液の供給位置がウエハWの端面から離れるにつれて増加した。これは、リンス液の供給位置をウエハWの端面から離すことでウエハWの周縁部を覆う液膜の面積が増加するとともにウエハWの周縁部から奪われる熱量が増加して、ウエハWの周縁部とそれ以外の領域との間の温度差が増大したためであると考えられる。
【0077】
図10は、ウエハWの回転数による熱反りの反り量の調節例について説明するための図である。図10において、横軸は、ウエハWの回転数を示し、縦軸は、ウエハWの周縁部の熱反りの反り量を示す。図10の評価では、ウエハWの回転数以外の評価条件としては、リンス液の供給位置:ウエハWの端面から5mm、ヒータ温度:T1またはT2(<T1)が用いられた。
【0078】
図10に示すように、熱反りの反り量は、ウエハWの回転数が所定の回転数に近づくにつれて増加した。これは、ウエハWの回転数が所定の回転数付近である場合、ウエハWの周縁部が液膜によって適度に覆われてウエハWの周縁部から熱が奪われることで、ウエハWの周縁部とそれ以外の領域との間の温度差が生じたためであると考えられる。また、熱反りの反り量は、ウエハWの回転数が所定の回転数から増加するにつれて減少した。これは、ウエハWの回転数が所定の回転数を上回ると、ウエハWに作用する遠心力が増大してウエハWが水平方向に引き延ばされたためであると考えられる。
【0079】
このように、加熱機構30の設定温度、リンス液の供給位置およびウエハWの回転数の少なくとも1つを変化させることにより、熱反りの反り量を調節することができる。
【0080】
なお、本願発明者は、リンス液の供給流量を変化させた場合の熱反りの反り量の測定も行った。その結果、熱反りの反り量は、リンス液の供給流量が変化することにより、変化することが分かった。したがって、リンス液の供給流量を変化させることにより、熱反りの反り量を調節することができる。リンス液の供給流量の変化は、たとえば第1供給部40の第1ノズル41および第3供給部60の裏面ノズル61から供給されるリンス液の供給流量を個別に変化させることで、実現される。また、リンス液の供給流量の変化は、ウエハWの周縁部へのリンス液の供給に使用するノズルの数を変化させることでも、実現される。たとえば、第1供給部40の第1ノズル41および第3供給部60の裏面ノズル61に加えて第2供給部50の第2ノズル51(図2参照)からウエハWの周縁部にリンス液を供給することで、リンス液の供給流量を増加させることができる。
【0081】
また、本願発明者は、加熱機構30からウエハWの裏面に対して供給される、加熱された流体の流量を変化させた場合の熱反りの反り量の測定も行った。その結果、熱反りの反り量は、加熱された流体の流量が変化することにより、変化することが分かった。したがって、加熱された流体の流量を変化させることにより、熱反りの反り量を調節することができる。
【0082】
また、本願発明者は、加熱機構30からウエハWの裏面に対して供給される、加熱された流体の供給位置を変化させた場合の熱反りの反り量の測定も行った。その結果、熱反りの反り量は、加熱された流体の供給位置が変化することにより、変化することが分かった。したがって、加熱された流体の供給位置を変化させることにより、熱反りの反り量を調節することができる。加熱された流体の供給位置の変化は、たとえば加熱機構30が同心円状に配置された複数の吐出口を有する場合、内側の吐出口からの流体の吐出と外側の吐出口からの流体の吐出とを切り替えることで、実現される。
【0083】
(実施形態の変形例1)
図11は、実施形態の変形例1に係る処理ユニット16の構成を示す模式図である。図11に示すように、処理ユニット16は、第1モニタ部90を備えていてもよい。第1モニタ部90は、外方カップ80の上領域および下領域の清浄度をモニタする。清浄度のモニタは、たとえば、処理ユニット16を平面視した場合の外方カップ80とウエハWとの隙間において外方カップ80に付着した付着物が占める面積の割合や、外方カップ80の内面のコントラストを測定することで、実現される。
【0084】
第1モニタ部90は、たとえば、外方カップ80の上領域および下領域を撮像する撮像部であってもよい。撮像部は、たとえば、CCD(Charge Coupled Device)カメラである。撮像部としての第1モニタ部90によって撮像された外方カップ80の上領域および下領域の画像は、モニタ結果として制御部18に出力される。
【0085】
制御部18は、第1モニタ部90から取得した画像に基づいて、外方カップ80の上領域および下領域の各々の清浄度と閾値とを比較することで、第1洗浄処理および第2洗浄処理のうち実行すべき一方または両方の処理を判定することができる。
【0086】
図12は、実施形態の変形例1に係る処理ユニット16が実行する洗浄内容判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0087】
図12に示すように、制御部18は、外方カップ80の上領域および下領域の各々の清浄度のモニタ結果を第1モニタ部90から取得する(ステップS201)。
【0088】
つづいて、制御部18は、外方カップ80の上領域および下領域の各々の清浄度と閾値とを比較する。比較の結果、外方カップ80の上領域および下領域の各々の清浄度が閾値を下回る場合(ステップS202;Yes、ステップS203;Yes)、制御部18は、第1洗浄処理および第2洗浄処理の両方の実行を決定する(ステップS204)。
【0089】
また、比較の結果、外方カップ80の上領域の清浄度のみが閾値を下回る場合(ステップS202;Yes、ステップS203;No)、制御部18は、第1洗浄処理のみの実行を決定する(ステップS205)。
【0090】
また、比較の結果、外方カップ80の下領域の清浄度のみが閾値を下回る場合(ステップS202;No、ステップS206;Yes)、制御部18は、第2洗浄処理のみの実行を決定する(ステップS207)。
【0091】
また、比較の結果、外方カップ80の上領域および下領域の各々の清浄度が閾値を下回らない場合(ステップS202;No、ステップS206;No)、制御部18は、第1洗浄処理および第2洗浄処理のいずれも実行しないことを決定して、処理を終了する。
【0092】
(実施形態の変形例2)
図13は、実施形態の変形例2に係る処理ユニット16の構成を示す模式図である。図13に示すように、処理ユニット16は、第2モニタ部100を備えていてもよい。第2モニタ部100は、ウエハWの表面の親水度(酸化度)をモニタする。親水度(酸化度)のモニタは、たとえば、ウエハWの周縁部にリンス液が供給される場合にウエハWの周縁部から飛散するリンス液の飛沫のサイズを測定することで、実現される。
【0093】
第2モニタ部100は、たとえば、ウエハWの周縁部から飛散するリンス液の飛沫を撮像する撮像部であってもよい。撮像部は、たとえば、CCDカメラである。撮像部としての第2モニタ部100によって撮像されたリンス液の飛沫の画像は、モニタ結果として制御部18に出力される。
【0094】
ところで、ウエハWの表面の親水度(酸化度)が低下すると、ウエハWの周縁部にリンス液が供給される場合に、ウエハWの周縁部がリンス液の液膜によって覆われ難くなる。これにより、ウエハWの周縁部の熱が奪われ難くなり、ウエハWの周縁部とそれ以外の領域との間の温度差が低減されてウエハWの周縁部に熱反りが発生し難くなる。その結果、熱反りを用いた第1洗浄処理を実行することが困難となる。
【0095】
そこで、変形例2における制御部18は、第2モニタ部100から取得した画像に基づいて、ウエハWの表面の親水度と閾値とを比較することで、ウエハWの表面を親水化する処理を実行するか否かを判定することとした。
【0096】
図14は、実施形態の変形例2に係る処理ユニット16が実行する親水化処理の手順を示すフローチャートである。
【0097】
図14に示すように、制御部18は、ウエハWの表面の親水度(酸化度)のモニタ結果を第2モニタ部100から取得する(ステップS301)。
【0098】
つづいて、制御部18は、ウエハWの表面の親水度(酸化度)が閾値を下回るか否かを判定する(ステップS302)。この処理において、ウエハWの表面の親水度(酸化度)が閾値を下回ると判定した場合(ステップS302;Yes)、制御部18は、ウエハWの表面を親水化する処理(以下、「親水化処理」と記載する。)を実行することを決定する。そして、制御部18は、親水化処理を実行する(ステップS303)。
【0099】
たとえば、制御部18は、第1供給部40から回転するウエハWに酸化剤を含む薬液を供給することにより、ウエハWの表面を親水化(酸化)する。酸化剤を含む薬液は、たとえば、ウエハWの表面に形成された膜およびウエハW自体を溶解しない液体であってもよい。このような薬液としては、SPM(硫酸と過酸化水素と水との混合液)、SC1(アンモニアと過酸化水素と水との混合液)、SC2(塩酸と過酸化水素と水との混合液)および過酸化水素水から選択される少なくとも1つの液体であってもよい。
【0100】
一方、ステップS302においてウエハWの表面の親水度(酸化度)が閾値を下回っていない場合(ステップS302;No)、制御部18は、親水化処理を実行しないことを決定する。
【0101】
なお、図14のステップS303において、制御部18が、酸化剤を含む薬液を用いてウエハWの表面を親水化(酸化)する場合を例に示したが、親水化処理は別の手法により実行されてもよい。たとえば、制御部18は、酸素雰囲気の下でウエハWを加熱することで、ウエハWの表面を親水化(酸化)してもよい。
【0102】
(実施形態の変形例3)
ところで、ノズルから吐出される薬液を用いてウエハWに対する一連の処理が行われる場合、ウエハWからの液跳ねによりノズル自体が汚染されることがある。そこで、実施形態の変形例3に係る処理ユニット16では、第1洗浄処理において、外方カップ80の上領域80aとともにノズルを洗浄することとした。
【0103】
図15は、実施形態の変形例3に係る第1洗浄処理における第1供給部40、第2供給部50および第3供給部60の動作例を示す図である。
【0104】
変形例3における制御部18は、図15に示すように、第1供給部40の第1ノズル41および第3供給部60の裏面ノズル61から回転するウエハWの中央部よりもウエハWの周縁部側に近い位置にリンス液を供給する。ウエハWよりも低温のリンス液がウエハWの周縁部に供給されると、ウエハWの周縁部の熱が奪われることで、ウエハWには、周縁部とそれ以外の領域(たとえばウエハWの中央部)との間に温度差が生して熱反りが発生する。処理ユニット16は、ウエハWの周縁部に熱反りを発生させながら第1供給部40および第3供給部60からウエハWにリンス液を供給することで、ウエハWの周縁部から斜め上方にリンス液を飛散させることができる。ウエハWの周縁部から斜め上方に飛散するリンス液は、外方カップ80の上領域80aに着液するとともに、たとえば退避位置に位置する第2供給部50の第2ノズル51に着液することから、上領域80aおよび第2ノズル51を洗浄することができる。これにより、外方カップ80を上領域80aを含む広範囲にわたって洗浄するとともに第2ノズル51を洗浄することができる。
【0105】
上述してきたように、実施形態に係る基板処理装置(たとえば、処理ユニット16)は、保持部(たとえば、保持部20)と、加熱機構(たとえば、加熱機構30)と、洗浄液供給部(たとえば、第1供給部40、第2供給部50および第3供給部60)と、液受け容器(たとえば、外方カップ80)と、制御部(たとえば、制御部18)とを備える。保持部は、基板(たとえば、ウエハW)を回転可能に保持する。加熱機構は、保持部に保持された基板を加熱する。洗浄液供給部は、基板に洗浄液(たとえば、リンス液)を供給する。液受け容器は、保持部の周囲に配置されている。制御部は、各部を制御する。制御部は、加熱処理と、第1洗浄処理とを実行する。加熱処理は、保持部に保持された基板を加熱機構を用いて加熱する。第1洗浄処理は、洗浄液供給部から回転する基板に洗浄液を供給して、基板の周縁部に反りを発生させるとともに、周縁部から飛散する洗浄液により液受け容器の第1領域(たとえば、上領域80a)を洗浄する。
【0106】
これにより、実施形態に係る基板処理装置によれば、液受け容器を広範囲にわたって洗浄することができる。
【0107】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0108】
1 基板処理システム
4 制御装置
16 処理ユニット
17 基板搬送装置
18 制御部
19 記憶部
20 保持部
21 バキュームチャック
22 軸部
23 駆動部
30 加熱機構
35b 吐出口
40 第1供給部
41 第1ノズル
42 アーム
43 移動機構
50 第2供給部
51 第2ノズル
52 アーム
53 移動機構
60 第3供給部
61 裏面ノズル
80 外方カップ
80a 上領域
80b 下領域
81 排液口
90 第1モニタ部
100 第2モニタ部
W ウエハ
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