(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167401
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/70 20140101AFI20231116BHJP
【FI】
B23K26/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078562
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】三浦 誠治
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD18
4E168CA06
4E168CA07
4E168CB07
4E168CB15
4E168CB23
4E168DA04
4E168DA24
4E168EA24
4E168JA12
4E168JA13
4E168KB02
(57)【要約】
【課題】光学部品への異物の付着を抑制することが可能なレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】被加工物を加工するレーザー加工装置であって、被加工物を保持する保持テーブルと、保持テーブルによって保持された被加工物に対してレーザービームを照射するレーザービーム照射ユニットと、を備え、レーザービーム照射ユニットは、レーザー発振器と、レーザー発振器から出射したレーザービームを集光する集光器と、レーザービームをレーザー発振器から集光器へと導く光学部品と、光学部品を収容する収容部と、収容部の内部に設けられ、収容部の内部に存在する異物を捕獲するイオナイザと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工するレーザー加工装置であって、
該被加工物を保持する保持テーブルと、
該保持テーブルによって保持された該被加工物に対してレーザービームを照射するレーザービーム照射ユニットと、を備え、
該レーザービーム照射ユニットは、
レーザー発振器と、
該レーザー発振器から出射した該レーザービームを集光する集光器と、
該レーザービームを該レーザー発振器から該集光器へと導く光学部品と、
該光学部品を収容する収容部と、
該収容部の内部に設けられ、該収容部の内部に存在する異物を捕獲するイオナイザと、を有することを特徴とする、レーザー加工装置。
【請求項2】
該イオナイザは無風タイプであることを特徴とする、請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
該イオナイザによって生成されたイオンの量に基づいて該収容部の内部の清浄度を判定する判定部を更に有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザービームの照射によって被加工物を加工するレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造プロセスでは、格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)によって区画された複数の領域にそれぞれデバイスが形成されたウェーハが用いられる。このウェーハをストリートに沿って分割して個片化することにより、デバイスを備えるデバイスチップが得られる。デバイスチップは、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の様々な電子機器に組み込まれる。
【0003】
ウェーハの分割には、環状の切削ブレードで被加工物を切削する切削装置が用いられる。また、近年では、ウェーハの分割にレーザー加工装置によるレーザー加工を用いるプロセスの開発も進められている。レーザー加工装置は、被加工物を保持する保持テーブルと、レーザービームを照射するレーザービーム照射ユニットとを備える。ウェーハを保持テーブルで保持し、レーザービーム照射ユニットからウェーハにレーザービームを照射することにより、ウェーハにレーザー加工が施される。
【0004】
例えば特許文献1には、ウェーハを切削ブレードで切削する前に、ウェーハに形成されている低誘電率絶縁膜をレーザービームの照射によってストリートに沿って除去する手法が開示されている。この手法を用いると、ウェーハに切削ブレードをストリートに沿って切り込ませる際、高速で回転する切削ブレードが低誘電率絶縁膜に接触することを回避でき、低誘電率絶縁膜の剥離が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザー加工装置に搭載されるレーザービーム照射ユニットは、レーザー発振器から出射したレーザービームを被加工物へと導く光学系を備えている。光学系は、レーザービームを所定の方向に反射させるミラー、レーザービームを集光させる集光器等の各種の光学部品を含んで構成される。
【0007】
光学系の光学部品にパーティクル(塵、ダスト等)のような異物が付着すると、レーザービームの形状の歪み、集光位置のずれ、出力の低下等、様々な不都合が生じるおそれがある。そのため、レーザービーム照射ユニットには光学系を収容する収容部が設けられ、光学部品は外部から隔離されるように収容部の内部に配置される。これにより、大気中のパーティクル等が光学部品に付着することを防止できる。
【0008】
しかしながら、収容部の内部には、光学系を構成する光学部品以外の部品も配置される。例えば、光学部品を保持するホルダや、光学部品の位置又は角度を制御するモータ等のアクチュエータが、光学部品とともに収容部に収容される。そのため、収容部の内部が隔離、密閉されていても、ホルダやアクチュエータから放出されるアウトガスが光学部品に付着して光学部品が汚染されることがある。また、レーザー加工装置のメンテナンス時には、光学部品の調節、交換、洗浄等を行うため、収容部を構成する容器が開けられる。その際、収容部内にパーティクルが侵入して滞留し、メンテナンス後の光学部品に付着することがある。したがって、レーザービーム照射ユニットの光学系を収容部に収容しても、光学部品への異物の付着を完全に防止することは難しい。
【0009】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、光学部品への異物の付着を抑制することが可能なレーザー加工装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、被加工物を加工するレーザー加工装置であって、該被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルによって保持された該被加工物に対してレーザービームを照射するレーザービーム照射ユニットと、を備え、該レーザービーム照射ユニットは、レーザー発振器と、該レーザー発振器から出射した該レーザービームを集光する集光器と、該レーザービームを該レーザー発振器から該集光器へと導く光学部品と、該光学部品を収容する収容部と、該収容部の内部に設けられ、該収容部の内部に存在する異物を捕獲するイオナイザと、を有するレーザー加工装置が提供される。
【0011】
なお、好ましくは、該イオナイザは無風タイプである。また、好ましくは、該レーザー加工装置は、該イオナイザによって生成されたイオンの量に基づいて該収容部の内部の清浄度を判定する判定部を更に有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係るレーザー加工装置は、レーザービーム照射ユニットの光学部品を収容する収容部を備え、収容部の内部に異物を捕獲するイオナイザが設置される。これにより、収容部の内部に存在する異物が光学部品に付着しにくくなり、レーザービームを適切な条件下で被加工物に照射することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】レーザー加工装置を示す一部断面側面図である。
【
図4】イオン生成の継続時間と生成されるイオンの量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係るレーザー加工装置の構成例について説明する。
図1は、レーザー加工装置2を示す斜視図である。なお、
図1において、X軸方向(加工送り方向、第1水平方向、左右方向)とY軸方向(割り出し送り方向、第2水平方向、前後方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(鉛直方向、高さ方向、上下方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。
【0015】
レーザー加工装置2は、レーザー加工装置2を構成する各構成要素を支持する基台4を備える。基台4の上面は水平面(XY平面)と概ね平行な平坦面であり、基台4の上面上には移動ユニット(移動機構)6が設けられている。移動ユニット6は、Y軸移動ユニット(割り出し送りユニット)8と、X軸移動ユニット(加工送りユニット)18と、Z軸移動ユニット32とを備える。
【0016】
Y軸移動ユニット8は、基台4の上面上にY軸方向に沿って配置された一対のY軸ガイドレール10を備える。一対のY軸ガイドレール10には、平板状のY軸移動テーブル12がY軸ガイドレール10に沿ってスライド可能に装着されている。
【0017】
Y軸移動テーブル12の裏面(下面)側には、ナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、一対のY軸ガイドレール10の間にY軸方向に沿って配置されたY軸ボールねじ14が螺合されている。また、Y軸ボールねじ14の端部には、Y軸ボールねじ14を回転させるY軸パルスモータ16が連結されている。Y軸パルスモータ16でY軸ボールねじ14を回転させると、Y軸移動テーブル12がY軸ガイドレール10に沿ってY軸方向に移動する。
【0018】
X軸移動ユニット18は、Y軸移動テーブル12の表面(上面)側にX軸方向に沿って配置された一対のX軸ガイドレール20を備える。一対のX軸ガイドレール20には、平板状のX軸移動テーブル22がX軸ガイドレール20に沿ってスライド可能に装着されている。
【0019】
X軸移動テーブル22の裏面(下面)側には、ナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、一対のX軸ガイドレール20の間にX軸方向に沿って配置されたX軸ボールねじ24が螺合されている。また、X軸ボールねじ24の端部には、X軸ボールねじ24を回転させるX軸パルスモータ26が連結されている。X軸パルスモータ26でX軸ボールねじ24を回転させると、X軸移動テーブル22がX軸ガイドレール20に沿ってX軸方向に移動する。
【0020】
Y軸移動ユニット8及びX軸移動ユニット18には、保持テーブル(チャックテーブル)28が連結されている。保持テーブル28は、レーザー加工装置2によるレーザー加工の対象物である被加工物11(
図2参照)を保持する。保持テーブル28は、X軸移動テーブル22の表面(上面)上に設置されている。また、保持テーブル28の周囲には、被加工物11を支持する環状のフレーム17(
図2参照)を把持して固定する複数のクランプ30が設けられている。
【0021】
図2は、被加工物11を示す斜視図である。例えば被加工物11は、単結晶シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハであり、互いに概ね平行な表面11a及び裏面11bを備える。被加工物11は、互いに交差するように格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)13によって、複数の矩形状の領域に区画されている。また、ストリート13によって区画された複数の領域の表面11a側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等のデバイス15が形成されている。
【0022】
ただし、被加工物11の種類、材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば被加工物11は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、サファイア、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等でなる基板(ウェーハ)であってもよい。また、デバイス15の種類、数、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はなく、被加工物11にはデバイス15が形成されていなくてもよい。
【0023】
被加工物11をレーザー加工装置2(
図1参照)で加工する際には、被加工物11の取り扱い(搬送、保持等)の便宜のため、被加工物11が環状のフレーム17によって支持される。フレーム17はSUS(ステンレス鋼)等の金属でなり、フレーム17の中央部にはフレーム17を厚さ方向に貫通する円形の開口17aが設けられている。なお、開口17aの直径は被加工物11の直径よりも大きい。
【0024】
被加工物11及びフレーム17には、円形のシート19が固定される。例えばシート19として、円形に形成されたフィルム状の基材と、基材上に設けられた粘着層(糊層)とを含むテープが用いられる。基材は、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂でなる。また、粘着層は、エポキシ系、アクリル系、又はゴム系の接着剤等でなる。なお、粘着層は紫外線硬化性樹脂であってもよい。
【0025】
被加工物11をフレーム17の開口17aの内側に配置した状態で、シート19の中央部を被加工物11の裏面11b側に貼付するとともに、シート19の外周部をフレーム17に貼付する。これにより、被加工物11がシート19を介してフレーム17によって支持される。
【0026】
図1に示すように、保持テーブル28の上面は、水平面(XY平面)と概ね平行な平坦面であり、被加工物11を保持する保持面28aを構成している。保持面28aは、保持テーブル28の内部に形成された流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0027】
Y軸移動テーブル12をY軸方向に沿って移動させると、保持テーブル28がY軸方向に沿って移動する。また、X軸移動テーブル22をX軸方向に沿って移動させると、保持テーブル28がX軸方向に沿って移動する。さらに、保持テーブル28には、保持テーブル28をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0028】
基台4の後端部(Y軸移動ユニット8、X軸移動ユニット18、保持テーブル28の後方)には、Z軸移動ユニット32が設けられている。Z軸移動ユニット32は、基台4の上面上に配置された支持構造34を備える。支持構造34は、基台4に固定された直方体状の基部34aと、基部34aの端部から上方に突出する柱状の支持部34bとを含む。支持部34b側面は、Z軸方向に沿って平面状に形成されている。
【0029】
支持部34bの側面には、一対のZ軸ガイドレール36がZ軸方向に沿って設けられている。一対のZ軸ガイドレール36には、平板状のZ軸移動プレート38がZ軸ガイドレール36に沿ってスライド可能に装着されている。
【0030】
Z軸移動プレート38の裏面側には、ナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、一対のZ軸ガイドレール36の間にZ軸方向に沿って配置されたZ軸ボールねじ(不図示)が螺合されている。Z軸ボールねじの端部には、Z軸ボールねじを回転させるZ軸パルスモータ40が連結されている。また、Z軸移動プレート38の表面側には、支持部材42が固定されている。Z軸パルスモータ40でZ軸ボールねじを回転させると、Z軸移動プレート38及び支持部材42がZ軸ガイドレール36に沿ってZ軸方向に移動する。
【0031】
また、レーザー加工装置2には、被加工物11(
図2参照)に対してレーザービームを照射するレーザービーム照射ユニット44が搭載されている。レーザービーム照射ユニット44は、支持部材42によって支持されたレーザー加工ヘッド46を備え、レーザー加工ヘッド46からレーザービーム48が照射される。保持テーブル28によって保持された被加工物11に対してレーザービーム48を照射することにより、被加工物11にレーザー加工が施される。
【0032】
レーザー加工ヘッド46に隣接する位置には、撮像ユニット50が設けられている。撮像ユニット50は、CCD(Charged-Coupled Devices)センサ、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)センサ等のイメージセンサを備え、保持テーブル28によって保持された被加工物11(
図2参照)等を撮像する。撮像ユニット50の種類に制限はなく、例えば可視光カメラや赤外線カメラが用いられる。撮像ユニット50で被加工物11を撮像することによって取得された画像に基づいて、被加工物11とレーザービーム48との位置合わせ等が行われる。
【0033】
Z軸移動プレート38をZ軸方向に沿って移動させると、レーザー加工ヘッド46及び撮像ユニット50がZ軸方向に沿って移動(昇降)する。これにより、レーザービーム48のZ軸方向における集光位置の調節や撮像ユニット50のピント合わせが行われる。
【0034】
また、レーザー加工装置2は、レーザー加工装置2に関する各種の情報を表示する表示ユニット(表示部、表示装置)52を備える。例えば、表示ユニット52としてタッチパネル式のディスプレイが用いられる。この場合、表示ユニット52にはレーザー加工装置2に情報を入力するための操作画面が表示され、オペレーターは表示ユニット52のタッチ操作によってレーザー加工装置2に情報を入力できる。すなわち、表示ユニット52は、レーザー加工装置2に各種の情報を入力するための入力ユニット(入力部、入力装置)としても機能し、ユーザーインターフェースとして用いられる。ただし、入力ユニットは、表示ユニット52とは別途独立して設けられたマウス、キーボード等の入力装置であってもよい。
【0035】
さらに、レーザー加工装置2は、レーザー加工装置2を制御する制御ユニット(制御部、制御装置)54を備える。制御ユニット54は、レーザー加工装置2を構成する各構成要素(移動ユニット6、保持テーブル28、クランプ30、レーザービーム照射ユニット44、撮像ユニット50、表示ユニット52等)に接続されている。制御ユニット54は、レーザー加工装置2の構成要素の動作を制御する制御信号を生成して出力することにより、レーザー加工装置2を稼働させる。
【0036】
例えば、制御ユニット54はコンピュータによって構成される。具体的には、制御ユニット54は、レーザー加工装置2の稼働に必要な各種の演算を行う演算部と、レーザー加工装置2の稼働に用いられる各種の情報(データ、プログラム等)を記憶する記憶部とを備える。演算部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成される。また、記憶物は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリを含んで構成される。
【0037】
図3は、レーザー加工装置2を示す一部断面側面図である。レーザービーム照射ユニット44は、YAGレーザー、YVO
4レーザー、YLFレーザー等のレーザー発振器60と、レーザー発振器60から出射したレーザービーム48を保持テーブル28によって保持された被加工物11へと導く光学系62とを備える。光学系62は、複数の光学部品を含んで構成され、被加工物11に照射されるレーザービーム48の進行方向、形状、集光位置等を制御する。
【0038】
具体的には、光学系62は、レーザー発振器60から出射したレーザービーム48の出力を調整する出力調整ユニット64と、レーザー発振器60から出射したレーザービーム48を集光させる集光器(光学部品)66とを備える。例えば、出力調整ユニット64としてアッテネータが用いられ、集光器66として凸レンズ等の集光レンズが用いられる。
【0039】
また、光学系62は、レーザービーム48をレーザー発振器60から集光器66へと導く1又は複数の光学部品68を備える。光学部品68は、レーザービーム48を成形又は集光するレンズ、レーザービーム48を反射させるミラー等に相当する。
図3には一例として、光学部品68がミラーである場合を示している。レーザー発振器60から出射したレーザービーム48は、出力調整ユニット64及び光学部品68を経由して集光器66に入射する。
【0040】
ただし、光学部品68の種類に制限はない。光学部品68の例としては、レンズ、ミラー、偏光ビームスプリッタ(PBS)、回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)、LCOS-SLM(Liquid Crystal On Silicon - Spatial Light Modulator)等が挙げられる。また、光学系62は異なる2種類以上の光学部品68を含んで構成されてもよい。
【0041】
また、レーザービーム照射ユニット44は、光学系62の構成要素(出力調整ユニット64、集光器66、光学部品68等)を収容する収容部70を備える。例えば収容部70は、直方体状の容器(箱)72と、筒状の遮光管74,76とを備える。遮光管74の一端側はレーザー発振器60に接続され、遮光管74の他端側は容器72の側壁に接続されている。また、遮光管76の一端側は容器72の底壁に接続され、遮光管76の他端側はレーザービーム48が透過する透明な保護カバーによって覆われている。なお、保護カバーを設置する代わりに、遮光管76の他端側を集光器66で覆ってもよい。
【0042】
容器72及び遮光管74,76は、レーザービーム48を遮光する材質でなり、レーザービーム48が収容部70の外部に漏れることを防止する。そして、容器72には出力調整ユニット64及び光学部品68が収容され、遮光管76には集光器66が収容される。ただし、集光器66は容器72に収容されてもよい。
【0043】
レーザー発振器60から出射したレーザービーム48は、遮光管74を介して容器72に進入し、出力調整ユニット64に入射する。これにより、レーザービーム48の出力が出力調整ユニット64によって調整される。また、出力調整ユニット64から出射したレーザービーム48は、1又は複数の光学部品68によって遮光管76に導かれる。そして、レーザービーム48は集光器66に入射して所定の位置で集光し、保持テーブル28によって保持された被加工物11に照射される。
【0044】
レーザー加工装置2で被加工物11を加工する際には、まず、被加工物11が保持テーブル28によって保持される。例えば被加工物11は、表面11a側が上方に露出し、裏面11b側(シート19側)が保持面28aに対面するように、保持テーブル28上に配置される。また、フレーム17が複数のクランプ30によって固定される。この状態で、保持面28aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、被加工物11がシート19を介して保持テーブル28によって吸引保持される。
【0045】
次に、レーザービーム照射ユニット44から被加工物11に向かってレーザービーム48が照射され、被加工物11にレーザー加工が施される。レーザービーム48の照射条件は、被加工物11に施されるレーザー加工の内容に応じて設定される。
【0046】
例えば、被加工物11にアブレーション加工を施す場合には、少なくともレーザービーム48の一部が被加工物11に吸収されるように、レーザービーム48の波長が設定される。すなわち、被加工物11に対して吸収性を有するレーザービーム48が用いられる。また、レーザービーム48の他の照射条件(平均出力、繰り返し周波数、加工送り速度等)も、被加工物11に適切なアブレーション加工が施されるように適宜設定される。例えば、被加工物11が単結晶シリコンウェーハであり、単結晶シリコンウェーハにアブレーション加工を施す場合には、レーザービーム48の照射条件は以下のように設定できる。
波長 :355nm
平均出力 :2W
繰り返し周波数:200kHz
加工送り速度 :400mm/s
【0047】
レーザービーム48を被加工物11の表面11a又は内部で集光させつつ、保持テーブル28を移動ユニット6(
図1)によって加工送り方向に沿って移動させると、保持テーブル28とレーザービーム48とが相対的に移動し、レーザービーム48が加工送り方向に沿って走査される。その結果、被加工物11にアブレーション加工が施され、被加工物11の表面11a側に線状のレーザー加工溝が形成される。
【0048】
例えば、全てのストリート13(
図2参照)に沿って被加工物11の表面11aから裏面11bに至るレーザー加工溝を形成することにより、被加工物11がストリート13に沿って分割される。また、全てのストリート13に沿って深さが被加工物11の厚さ未満のレーザー加工溝を被加工物11の表面11a側に形成した後、被加工物11の裏面11b側を研削砥石で研削してレーザー加工溝を被加工物11の裏面11bに露出させることにより、被加工物11をストリート13に沿って分割することもできる。その結果、デバイス15をそれぞれ備える複数のデバイスチップが製造される。
【0049】
なお、光学系62の構成要素(出力調整ユニット64、集光器66、光学部品68等)にパーティクル(塵、ダスト等)のような異物が付着すると、レーザービーム48の形状の歪み、集光位置のずれ、出力の低下等、様々な不都合が生じるおそれがある。そのため、光学系62の構成要素は外部から隔離されるように収容部70に収容される。これにより、大気中のパーティクル等が光学系62の構成要素に付着することを防止できる。
【0050】
しかしながら、収容部70の内部には、光学系62の構成要素以外の部品も配置される。例えば、光学部品68を保持するホルダや、光学部品68の位置又は角度を制御するモータ等のアクチュエータが、光学部品68とともに収容部70に収容される。そのため、収容部70の内部が隔離、密閉されていても、ホルダやアクチュエータから放出されたアウトガスが光学部品68に付着して光学部品68が汚染されることがある。また、レーザー加工装置2のメンテナンス時には、光学系62の構成要素の調節、交換、洗浄等を行うため、容器72が開けられる。その際、収容部70内にパーティクルが侵入して滞留し、メンテナンス後の光学系62の構成要素に付着することがある。
【0051】
そこで、本実施形態におけるレーザービーム照射ユニット44においては、収容部70の内部に存在するパーティクル等の異物を捕獲するイオナイザ78が、収容部70の内部に設けられる。これにより、収容部70の内部に存在する異物が浮遊して光学系62の構成要素に付着することを抑制でき、レーザービーム48を適切な条件下で被加工物11に照射することが可能になる。
【0052】
例えばイオナイザ78は、放電電極(放電針)、アース端子及び高電圧電源を備える。放電電極に高電圧を印加すると、放電電極とアース端子との間でコロナ放電が発生する。これにより、放電電極の周囲の空気が電離され、陽イオン及び陰イオンが生成される。例えば、バータイプのイオナイザ78が容器72の上壁に固定され、イオナイザ78によって生成されたイオンが容器72の内部で分散される。
【0053】
イオナイザ78によって生成されたイオンは、容器72の内部に存在するパーティクル等の異物に作用し、異物を帯電させる。そして、帯電した異物は、電圧が印加されているイオナイザ78の放電電極に付着する。これにより、容器72の内部の異物がイオナイザ78によって捕獲、回収され、出力調整ユニット64、集光器66、光学部品68等への異物の付着が防止される。
【0054】
なお、イオナイザ78の種類、数、設置場所等に制限はない。例えば、容器72の内部には複数のスポットタイプ(ノズルタイプ)のイオナイザ78が設置されてもよい。この場合には、容器72の内部の複数の地点で異物を捕獲できる。また、光学系62が複数の光学部品68を備える場合には、光学部品68ごとにイオナイザ78が設置されてもよい。この場合には、複数のイオナイザ78がそれぞれ対応する光学部品68から所定の範囲内に配置される。これにより、複数の光学部品68への異物の付着が個々のイオナイザ78によって防止される。さらに、イオナイザ78は、容器72の内部に加えて遮光管74,76の内部にも設置できる。特に、遮光管76の内部にイオナイザ78を設けることにより、集光器66への異物の付着が効果的に防止される。
【0055】
ただし、イオナイザ78を作動させた際に収容部70の内部で気流が発生すると、異物が気流に流されてイオナイザ78に付着しにくくなる。そのため、イオナイザ78は、エアブローを行わない無風タイプであることが好ましい。
【0056】
図4は、イオン生成の継続時間(イオナイザ78の作動時間)と生成されるイオンの量との関係を示すグラフである。イオナイザ78によるイオンの生成が継続されると、イオナイザ78の放電電極に異物が徐々に堆積し、放電電極の露出面積が減少する。その結果、イオナイザ78によって生成されるイオンの量が減少する。すなわち、イオナイザ78によって異物が捕獲されて収容部70の内部の清浄度が上がるほど、イオナイザ78によるイオンの生成量が減少する。そのため、イオナイザ78によって生成されるイオンの量と収容部70の清浄度との間には相関関係がある。
【0057】
そこで、レーザー加工装置2は、イオナイザ78によって生成されたイオンの量に基づいて、収容部70の内部の清浄度を判定してもよい。これにより、収容部70の清浄度を監視し、適切なタイミングで光学系62及びイオナイザ78のメンテナンスや部品交換を行うことが可能になる。
【0058】
具体的には、レーザービーム照射ユニット44は、イオナイザ78によって生成されたイオンの量に対応する情報(イオン量情報)を取得する検出器を備える。例えば、イオナイザ78には、イオナイザ78の内部に流れる電流を測定する電流計80が接続されている。なお、電流計80はイオナイザ78に内蔵されていてもよい。
【0059】
イオナイザ78及び電流計80は、制御ユニット54に接続されている。制御ユニット54は、イオナイザ78に制御信号を出力することによってイオナイザ78を作動させ、イオナイザ78にイオンを生成させる。また、イオナイザ78の作動中は、イオナイザ78に流れる電流が電流計80によって測定、監視される。
【0060】
イオナイザ78を一定時間作動させると、帯電した異物がイオナイザ78の放電電極に堆積してイオンの生成量が減少し(
図4参照)、イオナイザ78に流れる電流が変化する。そのため、電流計80によって測定される電流値は、イオナイザ78によって生成されたイオンの量に応じた値となる。そして、電流計80によって測定された電流値が、イオン量情報として制御ユニット54に入力される。
【0061】
制御ユニット54は、イオナイザ78によって生成されたイオンの量に基づいて収容部70の内部の清浄度を判定する判定部82と、判定部82による清浄度の判定に用いられる情報を記憶する参照情報記憶部84とを含む。判定部82は、電流計80から入力されたイオン量情報(電流値)と参照情報記憶部84に記憶されている参照情報とに基づいて、収容部70の清浄度を判定する。
【0062】
例えば、参照情報記憶部84には、電流計80によって測定されるイオン量情報の基準値(閾値)が記憶される。そして、判定部82は、電流計80から入力されたイオン量情報と参照情報記憶部84に記憶されている基準値とを比較することにより、収容部70の清浄度を判定する。具体的には、電流計80によって測定された電流値が基準値以上である場合(又は基準値を超える場合)には、判定部82は収容部70の清浄度が正常であると判定する。一方、電流計80によって測定された電流値が基準値未満(又は基準値以下)である場合には、判定部82は収容部70の清浄度が異常であると判定する。
【0063】
ただし、収容部70の清浄度の判定方法に制限はない。例えば、参照情報記憶部84には複数の基準値が記憶されてもよい。この場合、判定部82は、電流計80から入力されたイオン量情報と複数の基準値とを比較することにより、収容部70の清浄度を3段階以上のレベルで判定することができる。
【0064】
また、参照情報記憶部84には、電流計80によって測定されるイオン量情報と、収容部70の清浄度との対応関係を表す対応関係情報(グラフ、テーブル等)が記憶されてもよい。この場合、判定部82は、電流計80から入力されたイオン量情報を対応関係情報に当てはめることにより、イオン量情報に対応する清浄度を特定できる。
【0065】
判定部82によって収容部70の清浄度が判定されると、制御ユニット54は表示ユニット52(
図1参照)に制御信号を出力することにより、判定部82による判定の結果を表示ユニット52に表示させる。例えば表示ユニット52は、判定部82による判定の結果に対応する文字、図形、記号、数値等を表示する。これにより、収容部70の清浄度がオペレーターに通知される。
【0066】
なお、収容部70に複数のイオナイザ78が設けられている場合には、イオナイザ78それぞれに電流計80が接続され、清浄度の判定はイオナイザ78ごとに行われる。そして、表示ユニット52は、各判定部82によって判定された清浄度を、イオナイザ78が設置されている場所を示す情報とともに表示する。これにより、オペレーターは収容部70の内部における清浄度のばらつきを把握することができる。
【0067】
また、制御ユニット54は、判定部82によって判定された収容部70の清浄度の時間推移を表示ユニット52に表示させてもよい。例えば、イオナイザ78の作動時間(イオン生成の継続時間)と、判定部82によって判定された収容部70の清浄度との関係を示すグラフが表示ユニット52に表示される。これにより、オペレーターは収容部70の清浄度の時間推移を把握することができる。
【0068】
以上の通り、本実施形態に係るレーザー加工装置2は、レーザービーム照射ユニット44の光学系62を収容する収容部70を備え、収容部70の内部に異物を捕獲するイオナイザ78が設置される。これにより、収容部70の内部に存在する異物が光学系62の構成要素に付着しにくくなり、レーザービーム48を適切な条件下で被加工物11に照射することが可能になる。
【0069】
また、本実施形態に係るレーザー加工装置2は、イオナイザ78によって生成されたイオンの量に基づいて収容部70の内部の清浄度を判定する判定部82を備える。これにより、収容部70の内部の清浄度を監視し、光学系62及びイオナイザ78のメンテナンスや部品交換を適切なタイミングで実施することが可能になる。
【0070】
なお、上記ではイオン量情報が電流計80によって測定された電流値である場合について説明したが、イオン量情報を取得する検出器の種類に制限はない。例えば、レーザービーム照射ユニット44は、イオナイザ78によって生成されたイオンの量を測定するイオン測定器を備えていてもよい。
【0071】
イオン測定器は、イオナイザ78の近傍に配置されるように収容部70に収容される。なお、イオン測定器はイオナイザ78に内蔵されていてもよい。また、収容部70に複数のイオナイザ78が収容されている場合には、複数のイオン測定器がそれぞれイオナイザ78の近傍に設置されてもよい。
【0072】
イオナイザ78の作動中は、イオナイザ78によって生成されたイオンの量がイオン測定器によって測定される。また、イオン測定器によって測定されたイオンの量が、イオン量情報として制御ユニット54に入力される。そして、判定部82は、イオン測定器によって測定されたイオンの量と、参照情報記憶部84に記憶されている参照情報(基準値等)とに基づいて、収容部70の清浄度を判定する。
【0073】
また、
図1に示すレーザー加工装置2は、オペレーターに異常を知らせる報知ユニット(報知部、報知装置)を備えていてもよい。例えば、レーザー加工装置2の上部に表示灯(警告灯)が報知ユニットとして設置される。そして、判定部82によって判定された収容部70の清浄度が異常である場合には、制御ユニット54は表示灯を点灯又は点滅させることにより、オペレーターに清浄度の異常を通知する。なお、報知ユニットは、音又は音声で異常を知らせるスピーカーであってもよい。
【0074】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0075】
11 被加工物
11a 表面
11b 裏面
13 ストリート(分割予定ライン)
15 デバイス
17 フレーム
17a 開口
19 シート
2 レーザー加工装置
4 基台
6 移動ユニット(移動機構)
8 Y軸移動ユニット(割り出し送りユニット)
10 Y軸ガイドレール
12 Y軸移動テーブル
14 Y軸ボールねじ
16 Y軸パルスモータ
18 X軸移動ユニット(加工送りユニット)
20 X軸ガイドレール
22 X軸移動テーブル
24 X軸ボールねじ
26 X軸パルスモータ
28 保持テーブル(チャックテーブル)
28a 保持面
30 クランプ
32 Z軸移動ユニット(Z軸移動機構)
34 支持構造
34a 基部
34b 支持部
36 Z軸ガイドレール
38 Z軸移動プレート
40 Z軸パルスモータ
42 支持部材
44 レーザービーム照射ユニット
46 レーザー加工ヘッド
48 レーザービーム
50 撮像ユニット
52 表示ユニット(表示部、表示装置)
54 制御ユニット(制御部、制御装置)
60 レーザー発振器
62 光学系
64 出力調整ユニット
66 集光器(光学部品)
68 光学部品
70 収容部
72 容器(箱)
74,76 遮光管
78 イオナイザ
80 電流計
82 判定部
84 参照情報記憶部