(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167454
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】試験装置の調整方法、及び、試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/20 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
G01N3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078644
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】小林 真
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA07
2G061AB03
2G061BA04
2G061CA05
2G061CB01
2G061CC11
2G061DA01
2G061EA01
2G061EB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】4点曲げ試験に関し、試験片の支持部に対する圧子の正確な位置調整を実現可能とする新規な技術を提案する。
【解決手段】所定の間隔を有して配設され試験片の下面を支持する一対の支持部8bと、支持部8bで支持された試験片に当接し押圧する一対の当接部39aを有した圧子39と、試験片に対して圧子39を相対的に近接移動させる圧子移動ユニットと、圧子39が試験片を押圧する荷重を計測する荷重計測ユニットと、を備えた試験装置の調整方法であって、一対の当接部39aと一対の支持部8bを撮像し撮像画像を形成して表示する撮像画像形成ステップと、撮像画像から一対の支持部8bの各先端位置と、当接部39aの各先端位置と、を検出する検出ステップと、検出された各先端位置に基づいて、一対の当接部8bと一対の支持部39aとが水平方向において平行になるように圧子39の角度調整を行う。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を有して配設され試験片の下面を支持する一対の支持部と、
該支持部より上方且つ一対の該支持部の間に配置され該支持部で支持された試験片に当接し押圧する一対の当接部を有した圧子と、
一対の該支持部で支持された試験片に対して該圧子を相対的に近接移動させる圧子移動ユニットと、
該圧子が一対の該支持部で支持された試験片を押圧する荷重を計測する荷重計測ユニットと、
を備えた試験装置の調整方法であって、
該圧子の一対の該当接部と一対の該支持部を撮像し撮像画像を形成する撮像画像形成ステップと、
該撮像画像から一対の該支持部の各先端位置と、該圧子の一対の該当接部の各先端位置と、を検出する検出ステップと、
検出された各先端位置に基づいて、一対の該当接部と一対の該支持部とが水平方向において平行になるように該圧子の角度調整を行う第1調整ステップと、
を備えた試験装置の調整方法。
【請求項2】
該検出ステップと第1調整ステップの間において、
検出された一対の該支持部の各先端位置を結ぶ補助線と、
検出された一対の該当接部の各先端位置を結ぶ補助線と、を表示する第1補助線表示ステップを備えたことを特徴とする請求項1に記載の試験装置の調整方法。
【請求項3】
該第1調整ステップの後に、
一対の該支持部の各先端位置の間の中心である第1中心と、該当接部の各先端位置の間の中心である第2中心と、を検出するとともに、
該第1中心と該第2中心の位置にそれぞれ垂直方向の補助線を表示する第2補助線表示ステップと、
水平方向において該第1中心と該第2中心を一致させるための第2調整ステップと、
を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の試験装置の調整方法。
【請求項4】
試験装置であって、
所定の間隔を有して配設され試験片の下面を支持する一対の支持部と、
該支持部より上方且つ一対の該支持部の間に配置され該支持部で支持された試験片に当接し押圧する一対の当接部を有した圧子と、
一対の該支持部で支持された試験片に対して該圧子を相対的に近接移動させる圧子移動ユニットと、
該圧子が一対の該支持部で支持された試験片を押圧する荷重を計測する荷重計測ユニットと、
該圧子と該支持部とを撮像する撮像ユニットと、
該撮像ユニットの撮像画像を表示する表示モニタと、
少なくとも該圧子移動ユニットを制御するコントローラと、を備え、
該コントローラは、
該圧子の一対の該当接部と一対の該支持部を撮像して形成した撮像画像から一対の該支持部の各先端位置と、該圧子の一対の該当接部の各先端位置と、を検出し、一対の該当接部の先端位置と一対の該支持部の先端位置とをそれぞれ結んだ補助線を該表示モニタ上に表示する、試験装置。
【請求項5】
一対の該支持部の各先端位置の間の中心である第1中心と、一対の該当接部の各先端位置の間の中心である第2中心と、を検出し、該第1中心と該第2中心の位置にそれぞれ垂直方向の補助線を該表示モニタ上に表示する、
ことを特徴とする請求項4に記載の試験装置。
【請求項6】
該一対の当接部は、一つの圧子の先端に形成される、
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップなどの試験片の強度を測定するための試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されるように、半導体チップの破壊試験を行い、半導体チップの強度を測定する試験装置が知られている。この種の試験装置では、一般的にSEMI規格G86-0303で既定される3点曲げ試験や4点曲げ試験が広く利用されている。
【0003】
半導体チップを形成する過程において、半導体ウェーハの裏面研削に伴ってウェーハ裏面には研削歪みが生成される。更に、裏面研削後の切削ブレードによるダイシングに伴い、半導体チップの側面には切削歪みが生成される。これら研削歪みや切削歪みは、半導体チップの強度に影響するものであり、半導体チップの強度の測定は製品の品質を保証する上で重要であることから、より正確に測定可能とすることが求められている。
【0004】
3点曲げ試験では、所定の間隔を有して配置された一対の支持部で試験片を支持し、圧子を一対の支持部の中央に位置付けた状態で、圧子で試験片を押圧し試験片を破壊する。そして、試験片が破壊した時の圧子の荷重を測定し、試験片破損時の荷重と支持部の支点間距離、試験片厚み及び試験片の幅をもとに、以下の計算式にて抗折強度が算出される。
抗折強度σ=3LW/2bh2 (式1)
(L:支点間距離mm、W:圧子荷重値N、b:試験片幅mm、h:試験片厚みmm)
【0005】
以上のように、一対の支持部で支持した試験片の中央に荷重を加える3点曲げに対し、4点曲げ試験では、一対の支持部から等しい距離に一対の圧子の先端を位置づけるとともに、同じ大きさの2点の荷重を加えて試験片を押圧し破壊することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
4点曲げ試験において、2点の圧子の先端が同じ高さではなく、試験片を押圧するタイミングが変わってしまうと正確な測定ができないことになる。
【0008】
このため、試験装置の移設や圧子の交換等を行った際には、圧子の精密な位置調整が要求されることになるが、従来は、作業者が支持部上に定規等を載置した状態で圧子を近づけるとともに、目視で定規の目盛りを確認しながら圧子の位置調整を行っていた。
【0009】
このような作業者による手作業、及び、目視による圧子の位置調整は、作業者によってばらつきが生じやすく、正確な強度測定を実現するために改善が切望されていた。
【0010】
以上に鑑み、本願発明は、4点曲げ試験に関し、試験片の支持部に対する圧子の正確な位置調整を実現可能とする新規な技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
本発明の一態様によれば、所定の間隔を有して配設され試験片の下面を支持する一対の支持部と、該支持部より上方且つ一対の該支持部の間に配置され該支持部で支持された試験片に当接し押圧する一対の当接部を有した圧子と、一対の該支持部で支持された試験片に対して該圧子を相対的に近接移動させる圧子移動ユニットと、該圧子が一対の該支持部で支持された試験片を押圧する荷重を計測する荷重計測ユニットと、を備えた試験装置の調整方法であって、該圧子の一対の該当接部と一対の該支持部を撮像し撮像画像を形成する撮像画像形成ステップと、該撮像画像から一対の該支持部の各先端位置と、該圧子の一対の該当接部の各先端位置と、を検出する検出ステップと、検出された各先端位置に基づいて、一対の該当接部と一対の該支持部とが水平方向において平行になるように該圧子の角度調整を行う第1調整ステップと、を備えた試験装置の調整方法とする。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、該検出ステップと第1調整ステップの間において、検出された一対の該支持部の各先端位置を結ぶ補助線と、検出された一対の該当接部の各先端位置を結ぶ補助線と、を表示する第1補助線表示ステップを備えることとする。
【0014】
また、本発明の一態様によれば、該第1調整ステップの後に、一対の該支持部の各先端位置の間の中心である第1中心と、該当接部の各先端位置の間の中心である第2中心と、を検出するとともに、該第1中心と該第2中心の位置にそれぞれ垂直方向の補助線を表示する第2補助線表示ステップと、水平方向において該第1中心と該第2中心を一致させるための第2調整ステップと、を備えることとする。
【0015】
また、本発明の一態様によれば、試験装置であって、所定の間隔を有して配設され試験片の下面を支持する一対の支持部と、該支持部より上方且つ一対の該支持部の間に配置され該支持部で支持された試験片に当接し押圧する一対の当接部を有した圧子と、一対の該支持部で支持された試験片に対して該圧子を相対的に近接移動させる圧子移動ユニットと、該圧子が一対の該支持部で支持された試験片を押圧する荷重を計測する荷重計測ユニットと、該圧子と該支持部とを撮像する撮像ユニットと、該撮像ユニットの撮像画像を表示する表示モニタと、少なくとも該圧子移動ユニットを制御するコントローラと、を備え、該コントローラは、該圧子の一対の該当接部と一対の該支持部を撮像して形成した撮像画像から一対の該支持部の各先端位置と、該圧子の一対の該当接部の各先端位置と、を検出し、一対の該当接部の先端位置と一対の該支持部の先端位置とをそれぞれ結んだ補助線を該表示モニタ上に表示する、試験装置とする。
【0016】
また、本発明の一態様によれば、一対の該支持部の各先端位置の間の中心である第1中心と、一対の該当接部の各先端位置の間の中心である第2中心と、を検出し、該第1中心と該第2中心の位置にそれぞれ垂直方向の補助線を該表示モニタ上に表示する、こととする。
【0017】
また、本発明の一態様によれば、該一対の当接部は、一つの圧子の先端に形成されることとする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明の一態様によれば、4点曲げ試験において、撮像画像をもとに圧子の先端位置や試験片の支持部の先端位置が検出をすることで、圧子の位置調整をより高精度、かつ、容易に行うことが可能となる。
【0019】
また、本発明の一態様によれば、一対の当接部は、一つの圧子の先端に形成されるため、一対の当接部の各先端位置を個別ではなく一体として調整することが可能となり、圧子全体としての調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】支持ユニットと圧子の構成について説明する図である。
【
図4】コントローラの構成例について示す図である。
【
図5】(A)は試験片がセットされた状態について説明する図である。(B)は圧子が試験片に接触した状態を示す図である。(C)は試験片が破壊された状態を示す図である。
【
図6】圧子の位置調整を行う際のフローチャートである。
【
図8】第1調整ステップ後の撮像画像の例について示す図である。
【
図9】第2調整ステップについて説明する図である。
【
図10】第2調整ステップ後の撮像画像の例について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る試験装置2は、直方体状に形成された箱型の下部容器4を備える。下部容器4には、下部容器4の上面4a側で上方に向かって開口する直方体状の開口部4bが形成されている。この開口部4bの内部には、試験装置2によって強度が測定される試験片を支持する支持ユニット6が設けられている。
【0022】
図2は、支持ユニット6を示す斜視図である。支持ユニット6は、試験片を支持する一対の支持台8を備える。一対の支持台8はそれぞれ直方体状に形成され、一対の支持台8の間に隙間10が設けられるように互いに離隔された状態で配置されている。また、一対の支持台8は、その上面8aの長手方向が第1水平方向(Y軸方向、前後方向)に沿うように配置されている。この一対の支持台8上に、強度が測定される試験片(チップ)が配置される。
【0023】
一対の支持台8の上面8a側には、それぞれ、上面8aから上方に突出する凸条を形成する支持部8bが形成されている。支持部8bは、例えばステンレス鋼材等の金属でなり、その長さ方向がY軸方向に沿うように隙間10に隣接して配置されている。一対の支持部8bは、隙間10を挟んで互いに離隔した状態で配置されており、試験片の下面側を支持する。なお、
図2では、上面が曲面状に形成された支持部8bを示している。
【0024】
また、一対の支持台8の上面8aには、支持部8bよりも柔軟な材質(ゴムスポンジ等)でなる板状の接触部材12がそれぞれ設けられている。一対の接触部材12は、平面視で矩形状に形成され、一対の支持部8bの両側に設けられている。すなわち、接触部材12はそれぞれ支持部8bの隙間10とは反対側に配置されており、一対の支持部8bは一対の接触部材12の間に配置されている。
【0025】
接触部材12の上面は、試験片と接触して試験片を支持する接触面12aを構成する。なお、接触部材12は、その接触面12aが支持部8bの上端よりも上方(例えば、支持部8bの上端から1mm程度上方)に配置されるように設けられている。そのため、試験片を一対の支持台8上に配置すると、試験片の下面側は支持部8bとは接触せず、接触部材12の接触面12aと接触する。
【0026】
一対の支持台8の後方側には、一対の支持台8をそれぞれ第1水平方向と垂直な第2水平方向(X軸方向、左右方向)に沿って移動させる支持部移動機構14が設けられている。支持部移動機構14は、直方体状の支持構造16を備え、支持構造16の前面側(表面側)には一対のガイドレール18がX軸方向に沿って所定の間隔で固定されている。
【0027】
一対のガイドレール18の間には、一対のガイドレール18と概ね平行に配置された一対のボールネジ20が設けられている。一対のボールネジ20の一端部にはそれぞれ、ボールネジ20を回転させるパルスモータ22が連結されている。
【0028】
さらに、支持部移動機構14は、一対の支持台8の後面側にそれぞれ固定される一対の移動プレート24を備える。移動プレート24はそれぞれ、支持構造16の前面側に設けられた一対のガイドレール18にスライド可能に装着されている。
【0029】
また、一対の移動プレート24の後面側(裏面側)にはそれぞれ、ナット部(不図示)が設けられている。一対の移動プレート24の一方に設けられたナット部は一対のボールネジ20の一方に螺合され、一対の移動プレート24の他方に設けられたナット部は一対のボールネジ20の他方に螺合されている。
【0030】
パルスモータ22によってボールネジ20を回転させると、ボールネジ20に螺合された移動プレート24がガイドレール18に沿ってX軸方向に移動する。これにより、一対の支持台8それぞれのX軸方向における位置と、隙間10の幅とが制御される。
【0031】
図1に示すように、下部容器4の上方には、押圧ユニット26が設けられている。押圧ユニット26は、支持ユニット6によって支持された試験片を押圧するとともに、試験片の押圧時に押圧ユニット26にかかる荷重を測定する。
【0032】
押圧ユニット26は、圧子移動ユニット40に接続された上下移動ユニット28を備える。上下移動ユニット28の下面側には、上下移動ユニット28の下面から下方に向かって配置された円筒状の第1支持部材30が接続されており、第1支持部材30の下端側には、ロードセル等でなる荷重計測ユニット32が固定されている。
【0033】
荷重計測ユニット32の下側には、第2支持部材34を介して第3支持部材36が接続されている。第3支持部材36の下部には、圧子固定部材37が固定され、圧子固定部材37には圧子39が固定される。
【0034】
図3に示すように、圧子39の先端(下端)には一対の当接部39a,39aが設けられ、略V字形状となるように構成される。圧子39の上端は圧子固定部材37に固定される。圧子39は紙面垂直方向に伸長する部材であり、
図2に示す支持台8と同様に、
図2のY軸方向において幅を有する部材で構成される。なお、圧子39は一対の当接部39a,39aを有する一つの部材にて構成する他、当接部を有する2つの部材を圧子固定部材37に固定することで一つの圧子が構成されるのであってもよい。
【0035】
図1に示すように、押圧ユニット26の後方側(裏面側)には、押圧ユニット26を鉛直方向(Z軸方向、上下方向)に沿って移動させる圧子移動ユニット40が設けられている。圧子移動ユニット40は、直方体状の支持構造42を備え、支持構造42の前面側(表面側)には一対のガイドレール44がZ軸方向に沿って所定の間隔で固定されている。
【0036】
一対のガイドレール44の間には、一対のガイドレール44と概ね平行に配置されたボールネジ46が設けられている。ボールネジ46の一端部には、ボールネジ46を回転させるパルスモータ48が連結されている。
【0037】
押圧ユニット26の上下移動ユニット28の後面側(裏面側)は、一対のガイドレール44にスライド可能に装着される。また、上下移動ユニット28の後面側にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部はボールネジ46に螺合される。
【0038】
パルスモータ48によってボールネジ46を回転させると、上下移動ユニット28がガイドレール44に沿ってZ軸方向に移動する。これにより、押圧ユニット26のZ軸方向における位置が制御される。そして、圧子移動ユニット40によって押圧ユニット26をZ軸方向に沿って移動させることにより、圧子39が支持ユニット6に対して相対的に接近及び離隔する。
【0039】
また、上下移動ユニット28の両側面には、板状に形成された一対の接続部材50が固定されている。接続部材50は、上下移動ユニット28の側面から下方に向かって設けられ、接続部材50の下端は第3支持部材36の下端よりも下方に配置されている。
【0040】
一対の接続部材50の下端部には、圧子39側に向かって突出する一対の上部容器支持部50aが形成されている。この一対の上部容器支持部50aの間には、圧子39の先端を覆う直方体状の上部容器52(カバー)が固定されている。上部容器52は、下部容器4の上方に配置されており、両側面が一対の上部容器支持部50aによって支持されている。
【0041】
図3に示すように、上部容器52は、例えば透明な材質(ガラス、プラスチック等)でなり、箱型に形成されている。上部容器52には、上部容器52の下面52a(
図1)側で下方に向かって開口する直方体状の開口部52bが形成されている。また、上部容器52の上面52c側には圧子挿入穴52dが形成されており、この圧子挿入穴52dには圧子39の先端が挿入され、圧子39の先端は上部容器52内に配置される。なお、
図1では、上部容器52内に挿入された圧子39の一部を破線で表している。
【0042】
図1に示すように、上部容器52は、下部容器4の開口部4b(
図1)に挿入可能な大きさに形成されており、平面視で下部容器4の開口部4b(
図1)の内側に配置される。また、上部容器52の開口部52b(
図3)は、支持ユニット6を収容可能な大きさに形成されている。そのため、圧子移動ユニット40によって押圧ユニット26を下方に移動させると、上部容器52が下部容器4の開口部4b(
図1)に挿入され、支持ユニット6の上側が上部容器52によって覆われる。
【0043】
図1に示すように、上部容器52の側壁52eには、気体供給管挿入穴52fが設けられている。
図3に示すように、この気体供給管挿入穴52fには、圧子39の側面、及び、周囲に気体噴射してエアブローを行うための供給するための気体供給管56が挿通される。気体供給管56は可撓性のある樹脂製のチューブにて構成することができ、気体供給ユニット54のバルブ58を介して気体供給源60と接続される。
【0044】
図1に示すように、下部容器4の底部には、下部容器4の開口部4bの底から下部容器4の下面(底面)4cに貫通する破片排出口4dが形成されている。この破片排出口4dには、下部容器4の内部に存在する試験片の破片を排出する破片排出ユニット62が接続されている。
【0045】
図1に示すように、破片排出ユニット62は、試験片の破片を排出するための経路を構成する破片排出路64を備える。破片排出路64の一端側は破片排出口4dに接続され、破片排出路64の他端側はバルブ66を介して吸引源68に接続されている。
【0046】
図1に示すように、破片排出路64中には、試験片の破片を回収する破片回収部70が設けられている。破片回収部70は、フィルター等によって構成されており、破片排出路64を通過する試験片の破片を捕獲する。バルブ66を開くと、下部容器4の開口部4bの内部に散乱する試験片の破片が破片排出口4dから吸引され、破片回収部70で回収される。
【0047】
図1に示すように、下部容器4の後方側には撮像ユニット(カメラ)72が設けられており、下部容器4の前方側には撮像ユニット72に向かって光を照射する光源74が設けられている。撮像ユニット72及び光源74の位置は、支持ユニット6によって支持された試験片や圧子39の先端等を撮像ユニット72によって撮像可能となるように調整される。
【0048】
光源74から光を照射しつつ撮像ユニット72で圧子39の先端を撮影することにより、試験片が圧子39で押圧されている様子や、圧子39の先端の状態(異物の付着の有無、欠けの有無等)を観察できる。ただし、撮像ユニット72による撮像が十分に明るい環境下で行われる場合には、光源74を省略してもよい。
【0049】
図1に示すように、また、試験装置2を構成する各構成要素は、試験装置2の動作を制御するコントローラ200と接続されている。このコントローラ200により、支持部移動機構14、荷重計測ユニット32、圧子移動ユニット40、気体供給ユニット54、破片排出ユニット62、撮像ユニット72、光源74等の動作が制御される。
【0050】
図4はコントローラ200の構成例を示すものであり、コントローラ200は、
図1に示される圧子39の2つの先端位置、及び、一対の支持部8bの先端位置を検出するための位置検出部201、圧子39の2つの先端位置、及び、各支持部8bの各先端位置に基づいてそれぞれ補助線を表示させるための補助線作成部202、補助線同士が平行であるかを判定するための平行判定部203、圧子39の2つの先端位置、及び、一対の支持部8bの先端位置の水平方向における中心をそれぞれ算出する中心位置算出部204、各中心の水平方向の位置が一致するかを判定するための水平位置判定部205、スピーカー301から発生させる音声の調子を設定する音調設定部206、スピーカー301の音量等を制御するスピーカー制御部207、を有する。
【0051】
図4に示すように、コントローラ200は、圧子39(
図1)を上下に移動させる圧子移動ユニット40(
図1)の動作制御をする圧子移動制御部208、一対の支持部8b(
図2)を左右に移動させる支持部移動機構14(
図2)の移動制御をする支持部移動制御部209、撮像ユニット72による圧子と支持部の撮像を制御する撮像制御部210、を有する。
【0052】
図4に示すように、コントローラ200には、音声を作業者に聞かせるためのスピーカー301と、各種情報が表示されとともに作業者に入力操作を可能とする表示モニタ302と、撮像ユニット72が接続される。表示モニタ302は、例えば、
図1に示すように、タッチパネルにより構成することすることができる。なお、入力操作を行うための操作部が表示モニタと独立して設けられ、表示モニタには表示のみが行われることとしてもよい。
【0053】
次に、以上の構成による強度の測定について説明する。
図5(A)に示すように、試験片11が一対の支持台8を跨ぐように接触部材12の上面にセットされる。試験片11は、例えば、矩形の半導体チップであるが、特に限定されるものではない。
【0054】
図5(A)(B)に示すように、圧子39を下降させ、一対の当接部39aを試験片11の上面に当接させる。この際に圧子39にかかる荷重(Z軸方向の力)が、荷重計測ユニット32(
図1)によって測定される。
【0055】
図5(B)に示すように、圧子39が更に下降すると、試験片11が圧子39によって更に押圧され、試験片11を支持する接触部材12が圧縮するとともに試験片11が撓む。その結果、試験片11の下面側が支持台8の支持部8bと接触する。試験片11が支持部8bと接触すると、試験片11が一対の支持部8bによって支持され、試験片11を押圧する圧子39にかかる荷重が増大する。
【0056】
図5(C)に示すように、圧子39が更に下降すると、試験片11がさらに撓んで試験片11が破壊される。試験片11が破壊されると、荷重計測ユニット32(
図3)によって測定される荷重が最大値からゼロに減少する。そのため、荷重計測ユニット32によって測定された荷重の値の変化から、試験片11が破壊されたタイミングを検出できる。また、荷重計測ユニット32によって測定された荷重の最大値が、試験片11の強度として測定される。
【0057】
次に、圧子の位置調整を行う方法について、
図6に示すフローチャートの順に説明する。
<撮像画像形成ステップS1>
図7に示すように、圧子39の一対の当接部39aと一対の支持部8bを撮像し撮像画像80を形成して表示するステップである。
【0058】
具体的には、圧子39を下降させて当接部39aを支持台8の近傍に位置づけるとともに、撮像制御部210(
図4)にて撮像ユニット72(
図1)を起動し、圧子39の先端の一対の当接部39aと、一対の支持部8bを含む領域を撮像して撮像画像80を取得する。この撮像画像80は、表示モニタ302に表示されるものであり、静止画像とするほか、撮像エリアの様子がリアルタイムで更新される動画としてもよい。
【0059】
<検出ステップS2>
図7に示すように、撮像画像80から一対の支持部8bの各先端位置8cと、圧子39の一対の当接部39aの各先端位置39cと、を検出するステップである。
【0060】
具体的には、位置検出部201(
図4)が撮像された撮像画像80を解析し、各支持部8bの各先端位置8cや、各当接部39aの各先端位置39cを検出する。各支持部8bの各先端位置8cの位置は、例えば各支持部8bの最も高い箇所を特定することで検出できる。当接部39aの各先端位置39cの位置は、例えば各当接部39aの最も低い箇所を特定することで検出できる。
【0061】
<第1補助線表示ステップS3>
図7に示すように、補助線作成部202(
図4)により、検出された一対の支持部8bの各先端位置8cを結ぶ補助線8hと、検出された一対の当接部39aの各先端位置39cを結ぶ補助線39hと、を表示するステップである。
【0062】
なお、補助線8h,39hに加え、両補助線8h,39hの角度や角度のズレ量の数値が表示されることとしてもよい。これにより、作業者が補助線8h,39hの傾きのズレを認識することができる。
【0063】
<第1調整ステップS4>
図7に示すように、検出された各先端位置8c,39cに基づいて、一対の当接部39aと一対の支持部8bとが水平方向において平行になるように圧子39の角度調整を行うステップである。
【0064】
具体的には、
図7に示すように、一対の支持部8bについての補助線8hに対し、一対の当接部39aについての補助線39hが水平方向において平行となるように、圧子39の角度を調整する。
図7では、当接部39aについての補助線39hが、支持部8bについての補助線8hに対して平行でなく、傾いていることを示している。
【0065】
圧子39の角度調整は、作業者が表示モニタ302を見ながら圧子39(
図3)の固定角度を調整することで行うことができる。固定角度の調整は、例えば第3支持部材36(
図3)に対する圧子固定部材37の角度調整等により行われる。この他、例えば、第3支持部材36の角度を調整する電動式の自動調整機構を設け、作業者の表示モニタ302の操作によって自動で圧子39の角度調整を完了させることとしてもよい。
【0066】
図8に示すように、補助線作成部202(
図4)は、圧子39の角度調整に応じて補助線39hを更新し、平行判定部203(
図4)は、補助線39hが補助線8hと平行であるか否かを判定する。平行と判定された場合には、例えば、表示モニタ302に平行となったことの表示304がされるとともに、スピーカー301(
図1)から音声が出力される。これにより、作業者は両補助線39h,8hが平行になったことを認識することができる。
【0067】
なお、平行判定部203(
図4)は、第1補助線表示ステップS3が終わった時点で、補助線39hが補助線8hと平行であるか否かの判定を行い、平行である場合には、上記と同様に表示304(
図8)や音声出力を行うことで、作業者に両補助線39h,8hが平行であることを認識させることができる。
【0068】
また、第1調整ステップS4においては、圧子39の角度調整が必要となるが、
図3に示すように、本実施例では、一対の当接部39a,39aは、一つの圧子39の先端に形成され、圧子固定部材37に固定される。このため、一対の当接部39a,39aの各先端位置39c,39cを個別ではなく一体として調整することが可能となり、圧子39全体としての調整を容易に行うことができる。
【0069】
<第2補助線表示ステップS5>
図8に示すように、第1調整ステップの後に、中心位置算出部204(
図4)により、一対の支持部8bの各先端位置8cの間の中心である第1中心8Mと、当接部39aの先端位置39cの間の中心である第2中心39Mと、を検出し、補助線作成部202(
図4)により、第1中心8Mと第2中心39Mの座標の位置に、それぞれ垂直方向の補助線8k,39kを表示するステップである。
【0070】
なお、補助線8k,39kに加え、補助線8k,39kの水平方向のズレ量Dの数値が表示されることとしてもよい。これにより、作業者が第1中心8Mと第2中心39Mの水平方向のズレを認識することができる。
【0071】
<第2調整ステップS6>
水平方向において第1中心8Mと第2中心39Mを一致させるステップである。
具体的には、
図8及び
図9に示すように、水平方向において第1中心8Mと第2中心39Mを一致させる。本実施例では、支持部移動制御部209(
図5)は、
図9に示すように、支持部移動機構14(パルスモータ22)を駆動して、支持部8b,8bの支点間距離Lを保ったまま支持台8を水平移動させ、両支持部8bの先端位置8cの中心となる第1中心8Mを2つの当接部39aの中心となる第2中心39Mに一致させる位置調整を行う。
【0072】
図8、
図9の例では、第1中心8Mと第2中心39Mの間において、ズレ量Dが存在しており、このズレ量Dがゼロになるように、支持台8が図において左方向に移動されるものである。
【0073】
なお、
図9に示すように、各支持部8bの間の距離である支点間距離Lは、試験片の種別によって予め規定されるものであり、この支点間距離Lを維持したままで両支持台8がX軸方向に移動される。
【0074】
この第2調整ステップS6は、作業者の表示モニタ302の操作に基づき、支持部移動制御部209が支持部移動機構14の駆動と停止を自動的に行うことで、自動で位置調整を完了させることができる。この他、作業者が表示モニタ302の撮像画像80を見ながら表示モニタ302をマニュアル操作し、支持部移動機構14の駆動と停止を行うことで位置調整を行ってもよい。また、支持部移動機構14(パルスモータ22)を設けない構成とし、作業者が手作業で支持台8の位置調整がされる構成としてもよい。
【0075】
図10に示すように、水平位置判定部205(
図4)は、第1中心8Mと第2中心39Mの水平方向の座標が一致する否かを判定し、一致すると判定された場合には、例えば、表示モニタ302に中心が一致したことの表示305がされるとともに、スピーカー301(
図1)から音声が出力される。これにより、作業者は第1中心8Mと第2中心39Mが一致したことを認識することができる。
【0076】
なお、水平位置判定部205(
図4)は、第1調整ステップS4や第2補助線表示ステップS5が終わった時点で、第1中心8Mと第2中心39Mが一致するか否かの判定を行い、一致する場合には、上記と同様に表示305(
図10)や音声出力を行うことで、作業者に第1中心8Mと第2中心39Mが一致することを認識させることができる。
【0077】
また、以上の実施例において、第2調整ステップS6では、一対の支持台8(支持部8b)をX軸方向(水平方向)に移動させることよって、圧子39と支持台8(支持部8b)のX軸方向(水平方向)の相対位置を調整することとしたが、この他、圧子39をX軸方向(水平方向)に移動させることで一対の支持台8(支持部8b)に対する相対位置が調整される構成としてもよい。
【0078】
以上のようにして本発明によれば、4点曲げ試験において、撮像画像をもとに圧子の先端位置や試験片の支持部の先端位置が検出をすることで、圧子の位置調整をより高精度、かつ、容易に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0079】
2 試験装置
6 支持ユニット
8 支持台
8M 第1中心
8b 支持部
8c 先端位置
8h 補助線
8k 補助線
11 試験片
37 圧子固定部材
39 圧子
39M 第2中心
39a 当接部
39c 先端位置
39h 補助線
39k 補助線
72 撮像ユニット
74 光源
80 撮像画像
200 コントローラ
201 位置検出部
202 補助線作成部
203 平行判定部
204 中心位置算出部
205 水平位置判定部
206 音調設定部
207 スピーカー制御部
208 圧子移動制御部
209 支持部移動制御部
210 撮像制御部
301 スピーカー
302 表示モニタ