(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167474
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】熱化学電池のゲル電解質
(51)【国際特許分類】
H10N 10/856 20230101AFI20231116BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20231116BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20231116BHJP
H10N 10/857 20230101ALI20231116BHJP
C08F 20/06 20060101ALI20231116BHJP
C08F 8/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H01L35/24
B01J20/26 D
H01B1/06 A
H01L35/26
C08F20/06
C08F8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078683
(22)【出願日】2022-05-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム/体温でIoTデバイスを駆動する熱化学電池の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高松 雄輝
(72)【発明者】
【氏名】郷田 隼
(72)【発明者】
【氏名】小野 博信
(72)【発明者】
【氏名】鴻巣 修
(72)【発明者】
【氏名】平田 和久
(72)【発明者】
【氏名】池内 博之
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 康久
(72)【発明者】
【氏名】桐原 和大
(72)【発明者】
【氏名】衛 慶碩
(72)【発明者】
【氏名】向田 雅一
【テーマコード(参考)】
4G066
4J100
5G301
【Fターム(参考)】
4G066AA13D
4G066AA47D
4G066AB05D
4G066AB06D
4G066AB07A
4G066AB07D
4G066AB09D
4G066AB12D
4G066AB13D
4G066AB21D
4G066AC17B
4G066BA09
4G066BA13
4G066BA20
4G066BA38
4G066CA43
4J100AJ02P
4J100AL63Q
4J100CA04
4J100CA23
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4J100EA03
4J100EA09
4J100FA03
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4J100HC08
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4J100HC64
4J100HE13
4J100JA43
5G301CA30
5G301CD01
(57)【要約】
【課題】本発明は、電解質の漏液を抑制でき、且つ電池出力の調整が可能なゲル電解質の提供を目的とする。
【解決手段】本発明のゲル電解質は、表面架橋剤で表面架橋された水膨潤性水不溶性樹脂を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面架橋剤で表面架橋された水膨潤性水不溶性樹脂を含む、熱化学電池のゲル電解質。
【請求項2】
前記水膨潤性水不溶性樹脂が、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩を単量体として用いたポリ(メタ)アクリル酸(塩)系樹脂である請求項1に記載のゲル電解質。
【請求項3】
前記水膨潤性水不溶性樹脂の、EDANA法(WSP242.3(10))に準拠して測定された荷重2.06kPaでの加圧下吸収倍率(AAP)が、5g/g以上である請求項1又は2に記載のゲル電解質。
【請求項4】
前記加圧下吸収倍率が20g/g以上である請求項3に記載のゲル電解質。
【請求項5】
前記表面架橋剤が、多価アルコール化合物、多価アミン化合物、ハロエポキシ化合物、多価アミン化合物とハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、オキサゾリジノン化合物、アルキレンカーボネート化合物、多価グリシジル化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物、及び環状尿素化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載のゲル電解質。
【請求項6】
前記水膨潤性水不溶性樹脂の質量平均粒子径(D50)が200~600μmである請求項1又は2に記載のゲル電解質。
【請求項7】
前記水膨潤性水不溶性樹脂において、粒子径150μm以下の粒子の割合が30質量%以下であり、粒子径850μm超の粒子の割合が5質量%以下である請求項1又は2に記載のゲル電解質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面架橋剤で表面架橋された水膨潤性水不溶性樹脂を含む熱化学電池のゲル電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoTデバイスの発達に伴い、体温や排熱を利用した熱化学電池が注目されている。たとえば非特許文献1では、フェリシアン/フェロシアン水溶液中にグアニジニウム及び尿素を添加した電解質を用いることにより、高いゼーベック効果が得られ、低い温度勾配であっても効率的に熱エネルギーを変換できることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Duan, J. et al. Aqueous thermogalvanic cells with a high Seebeck coefficient for low-grade heat harvest. Nature communications, 2018, 9, 5146.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に開示されるような液体の電解質を使用する場合、製品容器からの漏液が懸念される。そこで本発明は、電解質の漏液を抑制でき、且つ電池出力の調整が可能なゲル電解質の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、このような観点から前記課題を解決するために鋭意研究を重ねる中、表面架橋剤で表面架橋された水膨潤性水不溶性樹脂をゲル化することにより、電解質の漏液を抑制でき、且つ電池出力の調整ができることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明は、以下の通りである。
[1] 表面架橋剤で表面架橋された水膨潤性水不溶性樹脂を含む、熱化学電池のゲル電解質。
[2] 前記水膨潤性水不溶性樹脂が、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩を単量体として用いたポリ(メタ)アクリル酸(塩)系樹脂である[1]に記載のゲル電解質。
[3] 前記水膨潤性水不溶性樹脂の、EDANA法(WSP242.3(10))に準拠して測定された荷重2.06kPaでの加圧下吸収倍率(AAP)が、5g/g以上である[1]又は[2]に記載のゲル電解質。
[4] 前記加圧下吸収倍率が20g/g以上である[3]に記載のゲル電解質。
[5] 前記表面架橋剤が、多価アルコール化合物、多価アミン化合物、ハロエポキシ化合物、多価アミン化合物とハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、オキサゾリジノン化合物、アルキレンカーボネート化合物、多価グリシジル化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物、及び環状尿素化合物から選ばれる少なくとも1種である[1]~[4]のいずれかに記載のゲル電解質。
[6] 前記水膨潤性水不溶性樹脂の質量平均粒子径(D50)が200~600μmである[1]~[5]のいずれかに記載のゲル電解質。
[7] 前記水膨潤性水不溶性樹脂において、粒子径150μm以下の粒子の割合が30質量%以下であり、粒子径850μm超の粒子の割合が5質量%以下である[1]~[6]のいずれかに記載のゲル電解質。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電解質の漏液を抑制でき、且つ電池出力の調整が可能なゲル電解質を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のゲル電解質に関して詳しく説明するが、本発明の範囲はこれら説明に拘束されることなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更、実施し得る。具体的には、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0009】
[1]用語の定義
[1-1]「EDANA」及び「WSP」
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称である。また「WSP」は、Worldwide Strategic Partnersの略称であり、EDANAが提供する、水膨潤性水不溶性樹脂の世界標準の測定法を示すものである。本発明では、特に断りのない限り、WSP原本(2010年改定)に準拠して、水膨潤性水不溶性樹脂の特性を測定する。
【0010】
[1-2]CRC(WSP241.3(10))
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacityの略称であり、水膨潤性水不溶性樹脂の無加圧下での吸収倍率を意味する。具体的には、水膨潤性水不溶性樹脂0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して水膨潤性水不溶性樹脂を自由膨潤させ、その後、遠心分離機(遠心力:250G)を用いて脱水した後の吸収倍率(単位:g/g)のことである。
【0011】
[1-3]Ext(WSP270.3(10))
「Ext」は、Extractablesの略称であり、水膨潤性水不溶性樹脂の水可溶分、すなわち、水可溶成分量を意味する。具体的には、水膨潤性水不溶性樹脂1.0gを0.9質量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、250rpmで1時間又は16時間攪拌した後の溶解ポリマー量(単位:質量%)のことをいう。溶解ポリマー量の測定は、pH滴定を用いて行う。攪拌時間は結果の報告時に記載される。
【0012】
[1-4] 「AAP」(WSP242.3(10))
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、水膨潤性水不溶性樹脂の加圧下吸収倍率を意味する。具体的には、水膨潤性水不溶性樹脂0.9gを大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液に対して、1時間、2.06kPa(21g/cm2、0.3psi)荷重下で膨潤させた後の吸収倍率(単位;g/g)のことをいう。
【0013】
[1-5] その他
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上、Y以下」を意味する。また、「~酸(塩)」は「~酸および/またはその塩」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。
【0014】
[2] 水膨潤性水不溶性樹脂
本発明のゲル電解質は、表面架橋剤で表面架橋された水膨潤性水不溶性樹脂を含む。「水膨潤性」とは、WSP241.3(10)で規定される無加圧下吸収倍率(以下、「CRC」と表記する場合がある。)が5g/g以上であることを、「水不溶性」とは、WSP270.3(10)で規定される可溶分(以下、「Ext」と表記する場合がある。)が50質量%以下であることを、それぞれ意味する。すなわち、本発明のゲル電解質に含まれる水膨潤性水不溶性樹脂は、CRCが5g/g以上であり、且つExtが50質量%以下である樹脂である。
【0015】
本発明において、「表面架橋剤で表面架橋された水膨潤性水不溶性樹脂」は、水の存在下でゲル化し得る樹脂であればよく、例えば、乾燥樹脂粒子であってもよい。表面架橋とは、樹脂粒子の表面が架橋されていることを意味する。すなわち本発明は、表面架橋剤で表面架橋された水膨潤性水不溶性樹脂粒子のゲル化物を含む、熱化学電池のゲル電解質に関する発明であるとも言える。以下、ゲル電解質を構成する前の、すなわちゲル化前の樹脂粒子を「膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子」という場合がある。また本明細書において、「本発明の水膨潤性水不溶性樹脂」は、膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子及び/又は膨潤(ゲル化)後の水膨潤性水不溶性樹脂を表す。
【0016】
本発明の水膨潤性水不溶性樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系樹脂、ポリスルホン酸(塩)系樹脂、無水マレイン酸(塩)系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリアスパラギン酸(塩)系樹脂、ポリグルタミン酸(塩)系樹脂、ポリアルギン酸(塩)系樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂等を挙げることができ、これらの1種を用いてもよく、2種以上を併用することもできる。これらの中でも好ましくはカルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた、親水性架橋重合体であり、より好ましくはポリ(メタ)アクリル酸(塩)系樹脂である。
【0017】
前記ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系樹脂とは、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩(以下、「(メタ)アクリル酸(塩)」と表記する。)を原料とする吸水性樹脂を意味する。つまり、「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系樹脂」とは、(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位を有する重合体であり、任意成分としてグラフト成分を有する重合体である。
【0018】
具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系樹脂は、重合反応に関与する単量体由来の構成単位のうち内部架橋剤由来の構成単位を除いた部分に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であって、好ましくは100モル%以下、より好ましくは実質100モル%の(メタ)アクリル酸(塩)由来の構成単位を含む重合体である。なお、各構成単位の含有割合は、重合体合成時の単量体の仕込み量から求められる。
【0019】
また、前記(メタ)アクリル酸塩とは、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩であることが好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸のナトリウム塩である。前記(メタ)アクリル酸塩は、(メタ)アクリル酸を中和して得ることができ、その中和率は、重合反応に関与する単量体の酸基に対して、好ましくは10~90モル%、より好ましくは50~80モル%、さらに好ましくは60~75モル%である。
【0020】
ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系樹脂は、(メタ)アクリル酸(塩)以外の他の単量体由来の構成単位を含んでいてもよい。他の単量体としては、水溶性又は疎水性の不飽和単量体が挙げられ、具体的には、米国特許出願公開第2005/0215734に記載された化合物(但し、(メタ)アクリル酸(塩)は除く)が挙げられる。
【0021】
(内部架橋)
本発明の水膨潤性水不溶性樹脂は、内部架橋剤による内部架橋が施された水膨潤性水不溶性樹脂であることが好ましい。内部架橋剤による内部架橋が施された水膨潤性水不溶性樹脂は、内部架橋剤由来の構成単位を、重合反応に関与する単量体(内部架橋剤を除く)由来の構成単位100モル%に対して、好ましくは0.0001~10モル%、より好ましくは0.001~5モル%、さらに好ましくは0.01~1モル%含む。
【0022】
内部架橋剤としては、アリル基、(メタ)アクリレート基等の重合性不飽和基を1分子中に2つ以上有する内部架橋剤であることが好ましく、具体的に、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート;グリセリントリ(メタ)アクリレート;グリセリンアクリレートメタクリレート;エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールトリ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール構造を有し且つ重合性不飽和基を1分子中に2つ以上有する化合物;等が挙げられる。上記(ポリ)アルキレングリコール構造単位としては、ポリエチレングリコールが好ましく、n数として好ましくは1~100、より好ましくは6~50である。前記内部架橋剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用して用いてもよい。
【0023】
内部架橋剤としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及び(ポリ)エチレングリコール構造を有し且つ(メタ)アクリレート基を1分子中に2つ以上有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び(ポリ)エチレングリコールトリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0024】
(表面架橋)
本発明の水膨潤性水不溶性樹脂は、表面架橋剤による表面架橋が施されており、すなわち、膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子は、表面の架橋密度が内部の架橋密度に対して相対的に高い粒子である。なお、本発明のゲル電解質においては、膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子の表面の位置に対応して架橋密度が相対的に高い部分が存在する。本発明のゲル電解質が表面架橋剤で表面架橋された水膨潤性水不溶性樹脂を含むことにより、後述する水膨潤性水不溶性樹脂の特性の調整(好ましくは加圧下吸収倍率(AAP)、質量平均粒子径(D50)、及び150μm以下の粒子の割合からなる群から選択される少なくとも1つの特性の調整であり、より好ましくは加圧下吸収倍率(AAP)の調整)によって、電池出力の制御が可能となる。前記表面架橋剤で表面架橋されている樹脂は、公知の方法で作製することができ、例えば、混合装置内で表面架橋剤を含む溶液と表面架橋前の水膨潤性水不溶性樹脂とを混合することで得ることができる。
【0025】
前記表面架橋剤としては、共有結合によって架橋を形成する表面架橋剤であることが好ましく、多価金属以外の表面架橋剤であることがより好ましく、具体的には米国特許第7183456号に記載された表面架橋剤が挙げられる。これら表面架橋剤の中から、反応性等を考慮して少なくとも1種類の表面架橋剤が選択される。また、表面架橋剤の取り扱い性や水膨潤性水不溶性樹脂の吸水性能等の観点から、好ましくはカルボキシル基と反応する官能基を二つ以上有する表面架橋剤であって、共有結合が形成される有機化合物が選択される。前記表面架橋剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用して用いてもよい。
【0026】
前記表面架橋剤として、より具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の多価アルコール化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等の多価アミン化合物;ハロエポキシ化合物;多価アミン化合物とハロエポキシ化合物との縮合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;オキサゾリジノン化合物;1,3-ジオキソラン-2-オン(エチレンカーボネート)、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン、1,3-ジオキソパン-2-オン等のアルキレンカーボネート化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシド-ル等の多価グリシジル化合物;オキセタン化合物;ビニルエーテル化合物;環状尿素化合物;等が挙げられる。
【0027】
中でも多価アルコール化合物、アルキレンカーボネート化合物、及び多価グリシジル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、多価アルコール化合物と、アルキレンカーボネート化合物及び多価グリシジル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種とを組み合わせて用いることが好ましい。多価アルコール化合物と、アルキレンカーボネート化合物及び多価グリシジル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種とを組み合わせて用いる場合、多価アルコール化合物100質量部に対して、アルキレンカーボネート化合物の使用量は好ましくは10~300質量部、より好ましくは30~100質量部であり、多価グリシジル化合物の使用量は好ましくは0.1~50質量部、より好ましくは1~20質量部である。
【0028】
前記表面架橋剤の使用量は、表面架橋前の水膨潤性水不溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であって、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。表面架橋剤の使用量を当該範囲内とすることで、表面架橋前の水膨潤性水不溶性樹脂の表面層に最適な架橋構造を形成することができる。
【0029】
(表面改質剤)
膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子は、従来の水膨潤性水不溶性樹脂に施される表面改質が施されていてもよい。なお、膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子に表面改質が施されている場合、本発明のゲル電解質においては、膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子の表面の位置に対応して表面改質された部分が存在する。膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子の表面改質を行う場合、公知の方法で行うことができ、例えば、表面改質剤を、水膨潤性水不溶性樹脂の重合工程以降(好ましくは表面架橋工程以降)に添加することで水膨潤性水不溶性樹脂に表面改質を施すことができる。前記表面改質剤は、水膨潤性水不溶性樹脂の粒子表面を改質する目的で添加される添加剤であって、水膨潤性水不溶性樹脂における共有結合による架橋を形成しない添加剤であり、好ましくは多価金属塩、親水性高分子化合物、無機微粒子から選ばれる少なくとも1種類の化合物である。前記表面改質剤の添加量は、選択される化合物に応じて、適宜設定される。
【0030】
多価金属塩を使用する場合、多価金属塩の多価金属カチオンは、2価以上、好ましくは2価以上、4価以下、より好ましくは3価又は4価である。また、使用できる多価金属としては、アルミニウム、ジルコニウム等が挙げられる。従って、表面改質剤として使用することができる多価金属塩としては、乳酸アルミニウム、乳酸ジルコニウム、硫酸アルミニウム、硫酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0031】
前記多価金属塩の添加量としては、膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子1gに対して、好ましくは3.6×10-5モル未満、より好ましくは1.0×10-5モル未満であって、特に好ましくは0モル、すなわち膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子は多価金属塩による表面改質が施されていないことが特に好ましい。本発明の水膨潤性水不溶性樹脂における多価金属の含有量は、質量基準で、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。
【0032】
前記親水性高分子化合物とは、25℃の水100gに1g以上溶解する高分子化合物である。そして、一般に知られている高分子よりも分子量が小さい、いわゆるオリゴマーと呼ばれる繰返し単位数が100以下程度の化合物を含み、更に分子内に繰返し単位を有する基を有している化合物も含まれる、一定以上の分子量を有する化合物群の総称である。
前記分子量は、下限値が200以上であることが好ましく、300以上がより好ましく、400以上が更に好ましく、上限値は10000以下であることが好ましく、5000以下が好ましく、1000以下が更に好ましい。該分子量の範囲内であれば、前記繰返し単位数は特に問わない。
【0033】
さらに、前記親水性高分子化合物の構造は、直鎖でも分岐鎖を有してもよいが、直鎖の構造がより好ましく、繰返し単位としてエトキシル基(-CH2-CH2-O-)による繰り返し構造を有するとさらに好ましく、該繰返し構造が主鎖を形成している構造がより好ましく、該繰返し構造が前記親水性高分子化合物において70質量%以上であると特に好ましい。該構造を有することで、良好な吸水性能と粉塵発生量の低減とが図れる。
【0034】
また、前記親水性高分子化合物は一定値以下の融点を有している化合物が好ましく、該融点は100℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、50℃以下が更に好ましく、30℃以下が特に好ましい。該範囲の融点であれば、前記親水性高分子化合物の取使いが容易となるため好ましい。
【0035】
前記親水性高分子化合物としてはカチオン性、アニオン性、ノニオン性のいずれでもよく、ノニオン性の化合物が好ましい。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、デンプン等を挙げることができる。中でも、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0036】
前記親水性高分子化合物は必要により変性、例えば、アルキル変性、エーテル変性、カルボキシルアルキル変性などがなされてもよいが、無変性の上記親水性高分子化合物がより好ましい。例えば、ポリエチレングリコールとしてはメトキシポリエチレングリコールなどの誘導体でもよいが、無変性のポリエチレングリコールがより好ましい。
【0037】
前記親水性高分子化合物の添加量は、膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子100質量部に対して5.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下が更に好ましく、2.5質量部以下がより更に好ましく、0質量部、すなわち膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子は親水性高分子化合物による表面改質が施されていないことが特に好ましい。
【0038】
多価金属塩や親水性高分子化合物の含有量が少ない、若しくは、多価金属塩や親水性高分子化合物による表面改質が施されていないことにより、熱化学電池とした際の電池出力がより向上する。
【0039】
無機微粒子を使用する場合、無機微粒子としては、米国特許第7638570号に記載されている物質が挙げられ、好ましくは親水性微粒子であり、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)や酸化チタン等の金属酸化物、亜鉛と珪素、または、亜鉛とアルミニウムとを含む複合含水酸化物(例えば、国際公開第2005/010102号に例示)、天然ゼオライトや合成ゼオライト等の珪酸(塩)、カオリン、タルク、クレー、ベントナイト、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、珪酸(塩)、粘土、珪藻土、シリカゲル、ゼオライト、ベントナイト、ヒドロキシアパタイト、ハイドロタルサイト、バーミュキュライト、パーライト、イソライト、活性白土、ケイ砂、ケイ石、ストロンチウム鉱石、蛍石、ボーキサイト等が挙げられる。また、このうち二酸化ケイ素、及びハイドロタルサイトからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、二酸化ケイ素がさらに好ましい。
【0040】
前記無機微粒子は、比表面積が100m2/g未満である場合、膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0質量部以上3.0質量部未満、より好ましくは0質量部以上2.0質量部未満、さらに好ましくは0質量部以上1.0質量部未満となるように添加すればよい。また、比表面積が100m2/g以上である場合、膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0質量部以上2.0質量部未満、より好ましくは0質量部以上1.5質量部未満、さらに好ましくは0質量部以上1.0質量部未満となるように添加すればよい。
【0041】
(その他添加剤)
本発明の水膨潤性水不溶性樹脂は、樹脂成分のみを指す場合もあるが、上記CRCやExtなどの性能を満たす範囲内でキレート剤、還元剤、ヒドロキシカルボン酸化合物、界面活性剤、リン原子を有する化合物、酸化剤、金属石鹸等の有機粉末、消臭剤、抗菌剤、パルプや熱可塑性繊維、テルペン系芳香性化合物、フェノール系芳香性化合物等の芳香性物質等の通常の水膨潤性水不溶性樹脂に含まれるその他添加剤が含有されていてもよい。これらは1つ又は2つ以上を使用できる。中でも、キレート剤及び/又はヒドロキシカルボン酸化合物が含有されていることが好ましく、少なくともキレート剤が含有されていることがより好ましい。
【0042】
キレート剤としては、アミノ多価カルボン酸又はアミノ多価燐酸が好ましく、より好ましくはエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等のエチレンジアミン四酢酸の金属塩、ジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウム等のジエチレントリアミン五酢酸の金属塩、及びエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸五ナトリウム等のエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸の金属塩からなる群から選択される少なくとも1種である。前記金属塩を構成する金属としては、アルカリ金属が好ましく、ナトリウムがより好ましい。キレート剤としては、特開平11-060975号公報、国際公開第2007/004529号パンフレット、国際公開第2011/126079号パンフレット、国際公開第2012/023433号パンフレット、特表2009-509722号公報、特開2005-097519号公報、特開2011-074401号公報、特開2013-076073号公報、特開2013-213083号公報、特開昭59-105448号公報、特開昭60-158861号公報、特開平11-241030号公報、特開平2-41155号公報等に記載のキレート剤を用いてもよい。キレート剤は、膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂に対して、好ましくは0.001質量%以上、1質量%以下の範囲で含有される。
【0043】
ヒドロキシカルボン酸化合物としては、α-ヒドロキシカルボン酸(塩)が好ましく、リンゴ酸(塩)、乳酸(塩)がより好ましい。ヒドロキシカルボン酸化合物は、膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂に対して、好ましくは0.001質量%以上、1質量%以下の範囲で含有される。
【0044】
その他の添加剤は、膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂に対して、好ましくは0.001質量%以上、1質量%以下の範囲で含有される。
【0045】
前記膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂は、従来公知の方法で作製できる。
【0046】
[3]水膨潤性水不溶性樹脂の特性
本発明の水膨潤性水不溶性樹脂は、以下の特性(a)~(e)の少なくとも1つを備えているのが好ましく、少なくとも下記特性(a)、(b)または(e)を備えているのがより好ましく、少なくとも下記特性(e)を備えているのがさらに好ましい。また上記特性(a)~(e)のうち、何れか2以上を組み合わせて備えていてもよく、少なくとも(a)と(b)、(a)と(e)、または(b)と(e)を備えることが好ましく、少なくとも(a)、(b)及び(e)を備えることがより好ましく、(a)~(e)の全てを備えていることが特に好ましい。
【0047】
(a)質量平均粒子径(D50)
膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子の質量平均粒子径(D50)は、好ましくは200μm以上であり、より好ましくは280μm以上、さらに好ましくは320μm以上であって、好ましくは600μm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは430μm以下である。膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子のD50を上記範囲に調整することにより、熱化学電池とした際の電池出力がより向上する。
【0048】
(b)粒子径150μm以下の水膨潤性水不溶性樹脂粒子の割合
膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子において、目開き150μmの篩(JIS標準篩)を通過する微細な水膨潤性水不溶性樹脂粒子の割合、すなわち粒子径150μm以下の水膨潤性水不溶性樹脂粒子の割合は、水膨潤性水不溶性樹脂粒子全体に対して、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは3質量%以下であって、0質量%であってもよく、0.1質量%以上であってもよい。粒子径150μm以下の水膨潤性水不溶性樹脂の割合を上記範囲に調整することにより、熱化学電池とした際の電池出力がより向上する。
【0049】
(c)粒子径850μm超の水膨潤性水不溶性樹脂粒子の割合
膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子において、目開き850μmの篩(JIS標準篩)を通過しない巨大な水膨潤性水不溶性樹脂粒子の割合、すなわち粒子径850μm超の水膨潤性水不溶性樹脂粒子の割合は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下であって、0質量%であってもよく、0.05質量%以上であってもよい。
【0050】
なお、上記粒度(D50、粒子径150μm以下の水膨潤性水不溶性樹脂粒子の割合、及び粒子径850μm超の水膨潤性水不溶性樹脂粒子の割合)は、欧州特許第0349240号明細書7頁25~43行に記載された「(1) Average Particle Diameter and Distribution of Particle Diameter」と同様の方法で測定できる。なお、粒度測定で使用する標準篩(目開き)は、対象物の粒度によって適宜追加してもよい。例えば、目開きが710μm、600μm等の標準篩を追加し、目的の平均粒子径が得られるよう篩い分けを行うことが望ましい。
【0051】
(d)無加圧下吸収倍率(CRC)
本発明の水膨潤性水不溶性樹脂のCRCは、好ましくは10g/g以上、より好ましくは20g/g以上であって、好ましくは60g/g以下、より好ましくは55g/g以下、更に好ましくは45g/g以下である。
【0052】
(e)加圧下吸収倍率(AAP)
本発明の水膨潤性水不溶性樹脂のAAPは、好ましくは5g/g以上、より好ましくは15g/g以上、更に好ましくは20g/g以上、特に好ましくは25g/g以上である。本発明のゲル電解質において、使用する水膨潤性水不溶性樹脂のAAPが大きいほど、電池出力がより向上する。すなわち、本発明のゲル電解質は、熱化学電池とした際の電池出力を容易に調整することが可能となり得る。また、AAPを上記範囲に調整することにより、ゲル電解質に圧力が加わったときの電解液の漏れを防ぐことができる。水膨潤性水不溶性樹脂のAAPの上限は特に限定されないが、他の特性とのバランスの観点から、好ましくは60g/g以下、より好ましくは50g/g以下、更に好ましくは40g/g以下である。
【0053】
本発明の水膨潤性水不溶性樹脂は、上記特性(a)~(e)のうち、好適な範囲を適宜組み合わせたものであってもよく、
D50が200~600μmであり、粒子径150μm以下の粒子の割合が15質量%以下であり、粒子径850μm超の粒子の割合が5質量%以下であり、CRCが10~60g/gであり、AAPが5g/g以上であることが好ましく、
D50が280~500μmであり、粒子径150μm以下の粒子の割合が3質量%以下であり、粒子径850μm超の粒子の割合が1質量%以下であり、CRCが20~60g/gであり、AAPが20g/g以上であることがより好ましい。
【0054】
[4]電解液
本発明のゲル電解質は、上記水膨潤性水不溶性樹脂と電解液を含むゲル電解質であることが好ましく、すなわち、電解液を吸液した水膨潤性水不溶性樹脂を含むゲル電解質であることが好ましい。電解液の含有量(吸液量)は、水膨潤性水不溶性樹脂1質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、よりさらに好ましくは10質量部以上であって、また好ましくは50質量部以下であり、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、よりさらに好ましくは20質量部以下である。電解液の量を所定値以上とすることで、電池性能をより向上させることができる。また電解液の量を所定値以下とすることで、得られるゲル電解質の強度が大きくなる。
【0055】
[4-1] 酸化還元対
前記電解液は、酸化還元対を含むことが好ましい。使用される酸化還元対としては特に限定されないが、化学安定性や電池性能の観点から、金属元素又はハロゲン元素を含むことが好ましく、鉄(II)イオン/鉄(III)イオン、コバルト(II)イオン/コバルト(III)イオン、及びヨウ化物イオン/三ヨウ化物イオンからなる群から選択された少なくとも1対を含有することが好ましく、ヨウ化物イオンと三ヨウ化物イオン、フェロシアン化物イオンとフェリシアン化物イオン、フェロセンとフェロセニウムイオン、及びコバルトトリスビピリジン(II)とコバルトトリスビピリジン(III)からなる群から選択された少なくとも1対を含有することがより好ましく、フェロシアン化物イオンとフェリシアン化物イオンからなる対を含有することが特に好ましい。
【0056】
電解液に含まれる酸化還元対の濃度は、好ましくは0.1mol/L以上、より好ましくは0.2mol/L以上であって、また好ましくは1.0mol/L以下、より好ましくは0.7mol/L以下である。酸化還元対の濃度を上記範囲に調整することで、電池性能がより向上する。
【0057】
[4-2] 溶媒
電解液に含まれる溶媒は、特に限定されないが、水、有機溶媒、又は水と有機溶媒の混合溶媒等が使用できる。有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;n-ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、エチルセロソルブなどのアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなどのカーボネート系溶剤;ジメチルホルムアミドなどが挙げられ、1種類又は2種類以上併用して用いることができる。酸化還元対の溶解性の観点から、少なくとも水が含まれていることが好ましい。前記水の含有量は、溶媒中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であって、100質量%であってもよい。
【0058】
[4-3] カオトロピック剤
電解液はカオトロピック剤を含むことが好ましい。電解液がカオトロピック剤を含むことにより、電池性能をより向上させることができる。カオトロピック剤としては、チオシアン酸グアニジニウム、イソチオシアン酸グアニジニウム、塩化グアニジニウム(塩酸グアニジニウム)等のグアニジニウムを含む化合物、ベタイン、塩酸アミノグアニジン、塩酸メトホルミン等が挙げられ、1種類又は2種類以上併用して用いることができる。中でもグアニジニウムを含む化合物であることが好ましく、塩化グアニジニウムがより好ましい。
【0059】
電解液に含まれるカオトロピック剤の濃度は、好ましくは0.1mol/L以上、より好ましくは0.5mol/L以上、更に好ましくは0.8mol/L以上であって、また好ましくは5.0mol/L以下、より好ましくは4.0mol/L以下である。カオトロピック剤の濃度を上記範囲に調整することで、電池性能がより向上する。
【0060】
[4-4] アミド化合物
電解液は、-CO-NH-で表されるアミド結合を分子中に有するアミド化合物を含有していてもよい。アミド化合物としては、ホルムアミド;アセトアミド、プロパンアミド、ブチルアミド、イソブチルアミド、マロンアミド等の飽和アルキルアミド;(メタ)アクリルアミド、ブテンアミド等の不飽和アルキルアミド;尿素、チオ尿素、ヒドロキシ尿素、ビウレット等の尿素系化合物;等が挙げられ、1種類又は2種類以上併用して用いることができる。中でも、-CO-NH2で表されるアミド基を分子中に有する化合物であることが好ましく、尿素、(メタ)アクリルアミド、プロパンアミド、及びホルムアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0061】
電解液に含まれるアミド化合物の濃度は、電池性能向上の観点から、好ましくは0.1mol/L以上、より好ましくは1mol/L以上、更に好ましくは10mol/L以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは50mol/L以下、より好ましくは40mol/L以下、更に好ましくは30mol/L以下である。
【0062】
[5] その他添加剤
本発明のゲル電解質は、さらにアルカリ金属塩化物等の添加剤を含んでいてもよい。前記アルカリ金属塩化物としては、KCl、NaCl、LiCl等が挙げられる。
【0063】
[6] ゲル電解質の作製
本発明のゲル電解質は、膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子に電解液を吸液させ、水膨潤性水不溶性樹脂粒子をゲル化させることで作製することができる。ゲル電解質は、膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子及び吸液させる電解液に比べて、その見かけの体積が増加していても変化していなくてもよい。ただし、ゲル電解質の見かけの体積が増加することで、粒子間の隙間が埋まりやすく界面の抵抗率を下げることができるため、見かけの体積は増加することが好ましい。例えば、ゲル電解質の体積は、膨潤前の水膨潤性水不溶性樹脂粒子の体積と吸液させる電解液の体積の合計体積に対して、1.01~1.5倍となることが好ましく、1.05~1.3倍となることがより好ましい。また水膨潤性水不溶性樹脂粒子が表面架橋剤で架橋されている限り、この表面架橋された水膨潤性水不溶性樹脂粒子から得られるゲル状樹脂と電解液とからゲル電解質を作製してもよい。
【0064】
上述の通り、本発明のゲル電解質の作製においては、樹脂粒子(好ましくは乾燥樹脂粒子)を用いる。ゲル電解質の作製において樹脂粒子(好ましくは乾燥樹脂粒子)を用いることにより、ハンドリング性が良好になり、またゲル電解質作製前の樹脂粒子の一時貯留が可能となるため、電解質の製造プロセス上好ましい。さらに、用いる樹脂粒子(好ましくは乾燥樹脂粒子)の加圧下吸収倍率(AAP)、質量平均粒子径(D50)、及び150μm以下の粒子の割合からなる群から選択される少なくとも1つの要件を上述の範囲に制御することにより、熱化学電池とした際の電池特性(特に電池出力)を高めることができる点においても、本発明は有用である。
【0065】
[7] 熱化学電池
本発明のゲル電解質は、熱電変換型電池である熱化学電池に好適に使用することができる。前記熱化学電池は、上記ゲル電解質と1対の電極とを有する。より具体的には、本発明のゲル電解質を少なくとも1対の電極に挟持されて構成されている。電極は、公知の電極を適宜選択して使用することができ、例えば、白金、金、銅、銀などの金属電極;カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイトなどの炭素電極;ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロールなどの導電性高分子電極;などが挙げられ、1種類又は2種類以上併用して用いることができる。これらの電極は、単独で形成されていてもよく、また、プラスチックフィルム等の基材上に形成されていてもよい。また、電極と本発明のゲル電解質の間に、イオン透過膜やその他電解質組成物が積層されていてもよい。
【0066】
本発明のゲル電解質を、熱化学電池の電解質として用いた場合、電池出力は、好ましくは5.0μW以上であり、より好ましくは10.0μW以上、更に好ましくは12.0μW以上である。上限は特に限定されない。
【実施例0067】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、各実施例に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施例も本発明の範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0068】
[水膨潤性水不溶性樹脂の特性]
(無加圧下吸収倍率(CRC))
水膨潤性水不溶性樹脂の無加圧下吸収倍率(CRC)は、EDANA法WSP241.3(10)に準拠して測定した。
【0069】
(可溶分(Ext))
水膨潤性水不溶性樹脂の可溶分(Ext)は、EDANA法WSP270.3(10)に準拠して測定した。なお、撹拌時間は16時間とした。
【0070】
(加圧下吸収倍率(AAP))
水膨潤性水不溶性樹脂の加圧下吸収倍率(AAP)は、EDANA法WSP242.3(10)に準拠して測定した。
【0071】
(質量平均粒子径(D50)、150μm以下の粒子の割合、850μm超の粒子の割合)
質量平均粒子径(D50)は、特開2000-302876号公報、国際公開第2011/126079号パンフレットを参考にして、欧州特許第0349240号に記載された測定方法に準じて行った。
150μm以下の粒子の割合は、目開き150μmのJIS標準篩を通過する粒子の質量割合を求めることにより算出し、850μm超の粒子の割合は、目開き850μmのJIS標準篩を通過しなかった粒子の質量割合を求めることにより算出した。
【0072】
[水膨潤性水不溶性樹脂の準備]
(製造例1)
容量2Lのポリプロピレン製の容器に、アクリル酸442質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液182.0質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート0.5質量部、10質量%エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム水溶液0.2質量部および脱イオン水369.3質量部を投入し、混合することで水溶液を作製した。尚、脱イオン水は40℃に予め加温しておいた。
続いて、前記水溶液を攪拌しながら、48質量%水酸化ナトリウム水溶液187.0質量部を大気開放状態で、約30秒間かけて当該水溶液に投入し、混合することで単量体水溶液を調製した。尚、前記混合の過程で発生した中和熱および溶解熱によって、当該単量体水溶液の温度は約80℃まで上昇していた。
その後、前記単量体水溶液の温度が78℃となった時点で、重合開始剤として4質量%過硫酸ナトリウム水溶液19.5質量部を加えて、約5秒間攪拌し、反応液とした。
前記開始剤の攪拌後、速やかに前記反応液をステンレス製のバット型容器に、大気開放状態で流し込んだ。当該バット型容器は、底面の大きさが200mm×260mm、上面の大きさが460mm×560mm、高さが140mmであり、中心部分の断面が台形状であり、内面にシリコーンシートを貼付した。また、当該バット型容器は、反応液を流し込む前に、50℃に加熱されたホットプレート上に載置し、プレヒートしておいた。
前記反応液を前記バット型容器に流し込んだ後、1分間以内に重合反応が開始した。当該重合反応によって反応液は、水蒸気を発生しながら上方に向かって四方八方に膨張、発泡しながら重合反応を進行した後、バット型容器の底面より若干大きいサイズにまで収縮した。当該重合反応は、約1分間以内に終了した。当該重合反応によって、シート状の含水ゲル状重合体を得た。得られた前記シート状の含水ゲル状重合体は、適切な大きさに切断した後に、スクリュー押出機に供給してゲル粉砕し、質量平均粒子径(D50)が約700μmの粒子状含水ゲル状重合体とした。
次に、得られた含水ゲル状重合体を目開き300μmの金網上に広げ、温度190℃で30分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと150μmの篩で分級することにより質量平均粒径(D50)が420μmで、粒径が150μm以下の粒子の割合が0.5質量%の不定型破砕状の樹脂(ベースポリマー(1))を得た。
次に、前記のベースポリマー(1)100質量部に対し、エチレンカーボネート0.19質量部、プロピレングリコール0.32質量部、水1.3質量部からなる表面架橋剤含有溶液を投入し、攪拌混合機で混合した。その後、前記の混合物を190℃で40分間加熱処理することにより、表面架橋された吸水性樹脂(1)を得た。
得られた吸水性樹脂(1)に対し、多価金属塩としての硫酸アルミニウム50質量%水溶液0.66質量部を添加して均一に混合したのち、親水性高分子化合物としての濃度10質量%のポリエチレングリコール400水溶液0.2質量部をさらに添加して均一に混合・造粒した。その後、無風条件下、60℃で45分間加熱処理した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、造粒された水膨潤性水不溶性樹脂粒子(1)を得た。得られた水膨潤性水不溶性樹脂粒子(1)の特性を表1に示す。
【0073】
(製造例2)
容量2Lのポリプロピレン製の容器に、アクリル酸442質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液182.0質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=8)0.3質量部、20質量%エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸5ナトリウム水溶液2.7質量部および脱イオン水367.0質量部を投入し、混合することで水溶液を作製した。尚、脱イオン水は40℃に予め加温しておいた。
続いて、前記水溶液を攪拌しながら、48質量%水酸化ナトリウム水溶液187.0質量部を大気開放状態で、約30秒間掛けて当該水溶液に投入し、混合することで単量体水溶液を調製した。尚、前記混合の過程で発生した中和熱および溶解熱によって、当該単量体水溶液の温度は約80℃まで上昇していた。
その後、前記単量体水溶液の温度が78℃となった時点で、重合開始剤として4質量%過硫酸ナトリウム水溶液19.5質量部を加えて、約5秒間攪拌し、反応液とした。
前記開始剤の攪拌後、速やかに前記反応液をステンレス製のバット型容器に、大気開放状態で流し込んだ。当該バット型容器は、底面の大きさが200mm×260mm、上面の大きさが460mm×560mm、高さが140mmであり、中心部分の断面が台形状であり、内面にシリコーンシートを貼付した。また、当該バット型容器は、反応液を流し込む前に、50℃に加熱されたホットプレート上に載置し、プレヒートしておいた。
前記反応液を前記バット型容器に流し込んだ後、1分間以内に重合反応が開始した。当該重合反応によって反応液は、水蒸気を発生しながら上方に向かって四方八方に膨張、発泡しながら重合反応を進行した後、バット型容器の底面より若干大きいサイズにまで収縮した。当該重合反応は、約1分間以内に終了した。当該重合反応によって、シート状の含水ゲル状重合体を得た。得られた前記シート状の含水ゲル状重合体は、適切な大きさに切断した後に、スクリュー押出機に供給してゲル粉砕を行った。そして、質量平均粒子径(D50)が約700μmの粒子状含水ゲル状重合体を得た。
次に、得られた含水ゲル状重合体を目開き300μmの金網上に広げ、温度190℃で30分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと150μmの篩で分級することにより質量平均粒径(D50)が380μmで、粒径が150μm以下の粒子の割合が0.5質量%の不定型破砕状の樹脂(ベースポリマー(2))を得た。
次に、前記のベースポリマー(2)100質量部に対し、エチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名デナコールEX-810、ナガセケムテックス社製)0.025質量部、プロピレングリコール1.35質量部、水3.15質量部からなる表面架橋剤含有溶液を投入し、攪拌混合機で混合した。その後、前記の混合物を100℃で40分間加熱処理することにより、表面架橋された吸水性樹脂(2)を得た。
得られた吸水性樹脂(2)に対し、脱イオン水(イオン交換水)2.0質量部を添加して均一に混合して造粒した。その後、無風条件下、60℃で45分間加熱処理した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、造粒された吸水性樹脂粒子(2)を得た。
上記造粒された吸水性樹脂粒子(2)100質量部にハイドロタルサイト(製品名:DHT-6、協和化学工業株式会社製、Mg6Al2(OH)16CO3/4H2O、比表面積:16m2/g)0.3質量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶にハイドロタルサイトと共に入れ、ペイントシェーカー(東洋精機製)の振動によって3分間混合し、水膨潤性水性不溶性樹脂粒子(2)を得た。得られた水膨潤性水不溶性樹脂粒子(2)の特性を表1に示す。
【0074】
(製造例3)
容量2Lのポリプロピレン製の容器に、アクリル酸422質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液173.9質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=8)1.3質量部、50質量%D,L-リンゴ酸水溶液(D,L―リンゴ酸、扶桑化学工業株式会社製、食品添加物グレード)4.3質量部、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液2.6質量部および脱イオン水398.6質量部を投入し、混合することで水溶液を作製した。尚、脱イオン水は40℃に予め加温しておいた。
続いて、前記水溶液を攪拌しながら、48質量%水酸化ナトリウム水溶液178.7質量部を大気開放状態で、約30秒間掛けて当該水溶液に投入し、混合することで単量体水溶液を調製した。尚、前記混合の過程で発生した中和熱および溶解熱によって、当該単量体水溶液の温度は約80℃まで上昇していた。
その後、前記単量体水溶液の温度が78℃となった時点で、重合開始剤として4質量%過硫酸ナトリウム水溶液18.6質量部を加えて、約5秒間攪拌し、反応液とした。
前記開始剤の攪拌後、速やかに前記反応液をステンレス製のバット型容器に、大気開放状態で流し込んだ。当該バット型容器は、底面の大きさが200mm×260mm、上面の大きさが460mm×560mm、高さが140mmであり、中心部分の断面が台形状であり、内面にシリコーンシートを貼付した。また、当該バット型容器は、反応液を流し込む前に、50℃に加熱されたホットプレート上に載置し、プレヒートしておいた。
前記反応液を前記バット型容器に流し込んだ後、1分間以内に重合反応が開始した。当該重合反応によって反応液は、水蒸気を発生しながら上方に向かって四方八方に膨張、発泡しながら重合反応を進行した後、バット型容器の底面より若干大きいサイズにまで収縮した。当該重合反応は、約1分間以内に終了した。当該重合反応によって、シート状の含水ゲル状重合体を得た。得られた前記シート状の含水ゲル状重合体は、適切な大きさに切断した後に、スクリュー押出機に供給してゲル粉砕し、質量平均粒子径(D50)が約700μmの粒子状含水ゲル状重合体とした。
次に、得られた含水ゲル状重合体を目開き300μmの金網上に広げ、温度190℃で30分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと150μmの篩で分級することにより質量平均粒径(D50)が380μmで、粒径が150μm以下の粒子の割合が0.5質量%の不定型破砕状の樹脂(ベースポリマー(3))を得た。
次に、前記のベースポリマー(3)100質量部に対し、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名デナコールEX-810、ナガセケムテックス社製)0.025質量部、エチレンカーボネート0.35質量部、プロピレングリコール0.58質量部、水2.0質量部からなる表面架橋剤含有溶液を投入し、攪拌混合機で混合した。その後、前記の混合物を190℃で50分間加熱処理することにより、表面架橋された吸水性樹脂(3)を得た。
得られた吸水性樹脂(3)に対し、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム0.01質量部、脱イオン水(イオン交換水)1.0質量部からなる水溶液を添加して均一に混合して造粒した。その後、無風条件下、60℃で45分間加熱処理した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、造粒された吸水性樹脂粒子(3)を得た。
上記造粒された吸水性樹脂粒子(3)100質量部にシリカ(製品名:レオロシールQS-20、株式会社トクヤマ製、比表面積:200m2/g)0.3質量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶にシリカと共に入れ、ペイントシェーカー(東洋精機製)の振動によって3分間混合し、水膨潤性水不溶性樹脂粒子(3)を得た。得られた水膨潤性水不溶性樹脂粒子(3)の特性を表1に示す。
【0075】
(製造例4)
単量体成分としてのアクリル酸ナトリウム(中和率75モル%)の37質量%水溶液5500質量部に、内部架橋剤としてのトリメチロールプロパントリアクリレート1.2質量部を溶解させて反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で、30分間脱気した。
次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双碗型ニーダーに蓋を付けた反応器に前記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら前記反応器内を窒素ガス置換した。続いて、反応液を攪拌しながら過硫酸ナトリウム2.4質量部、及びL-アスコルビン酸0.12質量部をそれぞれ水溶液にして添加したところ、凡そ1分後に重合が開始した。重合開始後、約20分でピーク温度約80℃となり、その後も攪拌を続けながら、重合を開始して60分後に粒子状の含水ゲル状重合体を取り出した。当該粒子状含水ゲル状重合体の質量平均粒子径(D50)を、国際公開公報「国際公開第2011/126079号パンフレット」記載の方法で測定したところ、約1800μmであった。
得られた含水ゲル状重合体を目開き300μmの金網上に広げ、170℃で70分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmと150μmの篩で分級することにより平均粒径が350μmで、粒径が150μm以下の粒子の割合が0.5質量%の不定型破砕状の樹脂(ベースポリマー(4))を得た。
次いで、前記のベースポリマー(4)100質量部に対し、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.02質量部、エチレンカーボネート0.13質量部、プロピレングリコール0.23質量部、水0.91質量部からなる表面架橋剤含有溶液を投入し、攪拌混合機で混合した。その後、前記の混合物を160℃で50分間加熱処理することにより、表面架橋された吸水性樹脂(4)を得た。
得られた吸水性樹脂(4)に対し、脱イオン水(イオン交換水)1.0質量部を添加して均一に混合して造粒した。その後、無風条件下、60℃で45分間加熱処理した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、造粒された吸水性樹脂粒子(4)を得た。
上記造粒された吸水性樹脂粒子(4)100質量部にシリカ(製品名:レオロシールQS-20、株式会社トクヤマ製、比表面積:200m2/g)0.35質量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶にシリカと共に入れ、ペイントシェーカー(東洋精機製)の振動によって3分間混合し、水膨潤性水不溶性樹脂粒子(4)を得た。得られた水膨潤性水不溶性樹脂粒子(4)の特性を表1に示す。
【0076】
(製造例5)
単量体成分としてのアクリル酸ナトリウム(中和率75モル%)の37質量%水溶液5500質量部に、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(n=8)7.5質量部を溶解させて反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で、30分間脱気した。
次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双碗型ニーダーに蓋を付けた反応器に前記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら前記反応器内を窒素ガス置換した。続いて、反応液を攪拌しながら過硫酸ナトリウム2.9質量部、及びL-アスコルビン酸0.04質量部をそれぞれ水溶液にして添加したところ、凡そ1分後に重合が開始した。重合開始後、約20分でピーク温度約80℃となり、その後も攪拌を続けながら、重合を開始して60分後に粒子状の含水ゲル状重合体を取り出した。当該粒子状含水ゲル状重合体の質量平均粒子径(D50)を、国際公開公報「国際公開第2011/126079号パンフレット」記載の方法で測定したところ、約1800μmであった。
得られた含水ゲル状重合体を目開き300μmの金網上に広げ、180℃で45分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmと150μmの篩で分級することにより平均粒径が300μmで、粒径が150μm以下の粒子の割合が10質量%の不定型破砕状の樹脂(ベースポリマー(5))を得た。
次いで、前記のベースポリマー(5)100質量部に対し、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、1,4-ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部および水2.5質量部からなる表面架橋剤含有溶液を投入し、攪拌混合機で混合した。その後、前記の混合物を175℃で40分間加熱処理することにより、表面架橋された吸水性樹脂(5)を得た。
得られた吸水性樹脂(5)に対し、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.13質量部、脱イオン水(イオン交換水)1.0質量部を添加して均一に混合して造粒した。その後、無風条件下、60℃で45分間加熱処理した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、造粒された吸水性樹脂粒子(5)を得た。
上記造粒された吸水性樹脂粒子(5)100質量部にシリカ(製品名:ヒュームドシリカAEROSIL200、日本アエロジル社製、比表面積:200m2/g)0.4質量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶にシリカと共に入れ、ペイントシェーカー(東洋精機製)の振動によって3分間混合し、水膨潤性水不溶性樹脂粒子(5)を得た。得られた水膨潤性水不溶性樹脂粒子(5)の特性を表1に示す。
【0077】
【0078】
[実施例1]
中央部分がΦ1.5cmの大きさでくり抜かれた厚さ1cmのポリエーテルエーテルケトン(PEEK)板の型枠内にあらかじめ調製した電解液(0.4M K3Fe(CN)6/0.4M K4Fe(CN)6/1M GdmClからなる水溶液)2mLを入れた。その後、0.2gの水膨潤性水不溶性樹脂(1)を投入し、電解液を吸液させ、ゲル電解質を作製した。
【0079】
[実施例2~5]
水膨潤性水不溶性樹脂粒子(1)を、下記樹脂粒子に変更する以外は、実施例1と同様にゲル電解質を作製した。
実施例2:水膨潤性水不溶性樹脂粒子(2)
実施例3:水膨潤性水不溶性樹脂粒子(3)
実施例4:水膨潤性水不溶性樹脂粒子(4)
実施例5:水膨潤性水不溶性樹脂粒子(5)
【0080】
[熱化学電池の作製]
2枚の厚さ50μmの白金電極で型枠内のゲル電解質を挟み、熱化学電池を作製した。その際、密閉するために白金電極とPEEK板をシリコーングリースで接着した。
【0081】
[電池出力の測定]
2つの電極の温度は、ペルチェモジュールを搭載した2台のUNI-THERMOコントローラ(Ampere UTC-200A)で制御した。温度を測定するために電極の中央にK型熱電対を挿入し、2枚の電極温度をそれぞれ35℃と25℃に調整した。セルの電気特性は,半導体パラメータアナライザ(KEITHLEY 2450)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0082】
【0083】
上記結果により、表面架橋剤による表面架橋が施されている水膨潤性水不溶性樹脂を用いた場合、加圧下吸収倍率(AAP)が大きくなるほど電池出力が高くなることが分かる。また、多価金属塩や親水性高分子化合物による表面改質が施されている実施例1は、比較的電池出力が低い傾向にあることが分かる。さらに、加圧下吸収倍率(AAP)が大きいものの、150μm以下の粒子の割合が多くD50の小さい実施例5は、比較的電池出力が低い傾向にあることが分かる。