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特開2023-167514末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体の製造方法、末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体の製造方法、末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体、及び末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167514
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体の製造方法、末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体の製造方法、末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体、及び末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/331 20060101AFI20231116BHJP
   C08G 65/336 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C08G65/331
C08G65/336
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078768
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井川 聖也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豊一
(72)【発明者】
【氏名】林 知弘
(72)【発明者】
【氏名】荒井 豪明
(72)【発明者】
【氏名】古海 正仁
(72)【発明者】
【氏名】石塚 圭
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA04
4J005BB00
4J005BD03
4J005BD08
(57)【要約】
【課題】反応性ケイ素基を高い導入率で導入できる末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体を、環境への負荷が低く、簡略化されたプロセスで得ることができる製造方法、該末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体から得られる、末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体の製造方法、該末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体、及び該末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体を提供する。
【解決手段】複合金属シアン化物錯体触媒の存在下、オキシアルキレン重合体(A)が有する水酸基と、脂環式エポキシ化合物(B)が有するエポキシ基とを反応させる、オキシアルキレン重合体(X)の製造方法であって、前記オキシアルキレン重合体(A)は、少なくとも1つの末端に前記水酸基を有し、前記脂環式エポキシ化合物(B)は、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)(ただし、アリル基は除く)を有し、前記オキシアルキレン重合体(X)は、末端に前記置換基(a)に由来する炭素-炭素不飽和基を有する、オキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合金属シアン化物錯体触媒の存在下、オキシアルキレン重合体(A)が有する水酸基と、脂環式エポキシ化合物(B)が有するエポキシ基とを反応させる、オキシアルキレン重合体(X)の製造方法であって、
前記オキシアルキレン重合体(A)は、少なくとも1つの末端に前記水酸基を有し、
前記脂環式エポキシ化合物(B)は、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)(ただし、アリル基は除く)を有し、
前記オキシアルキレン重合体(X)は、末端に前記置換基(a)に由来する炭素-炭素不飽和基を有する、オキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
【請求項2】
前記オキシアルキレン重合体(A)の数平均分子量が、2000~50000である、請求項1に記載のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
【請求項3】
前記オキシアルキレン重合体(A)1分子あたりの平均水酸基数が、1~8である、請求項1に記載のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
【請求項4】
前記オキシアルキレン重合体(A)は、プロピレンオキシドに由来する構成単位を含む、請求項1に記載のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
【請求項5】
前記オキシアルキレン重合体(A)は、さらにエチレンオキシドに由来する構成単位を含み、
前記オキシアルキレン重合体(A)を構成する全ての構成単位に対する前記エチレンオキシドに由来する構成単位の割合が、1~30質量%である、請求項4に記載のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
【請求項6】
前記脂環式エポキシ化合物(B)の脂環式骨格は、環形成炭素数が3~12の単環構造又は多環構造である、請求項1に記載のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
【請求項7】
前記脂環式エポキシ化合物(B)は、下記式(i)で表される化合物である、請求項1に記載のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
【化1】

(式(i)中、
~Rから選ばれる1つは、前記置換基(a)を表し、
前記置換基(a)ではないR~Rは、水素原子を表す。)
【請求項8】
前記R又はRが、前記置換基(a)である、請求項7に記載のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
【請求項9】
前記置換基(a)が、ビニル基、ビニルオキシ基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、及びプロパルギル基からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
【請求項10】
前記脂環式エポキシ化合物(B)が、1-ビニル-2,3-エポキシシクロヘキサン、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、及び3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の製造方法により得られたオキシアルキレン重合体(X)が末端に有する前記炭素-炭素不飽和基と、下記式(ii)で表される加水分解性基を有するヒドロシラン化合物(C)とを反応させる、オキシアルキレン重合体(Y)の製造方法であって、
前記オキシアルキレン重合体(Y)は、末端に反応性ケイ素基を有する、オキシアルキレン重合体(Y)の製造方法。
-SiX3-n (ii)
(式(ii)中、
Xは加水分解性基又は水酸基を表し、
Rは炭素数1~20の一価の有機基を表し、
nは1~3の整数であり、
nが1の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよく、
nが2又は3の場合、複数のXは、同一でも異なっていてもよい。
ただし、Rは加水分解性基を除く。)
【請求項12】
末端に下記式(1)で表される基を有する、末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体(X1)。
【化2】

(式(1)中、
~Rから選ばれる1つは、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)(ただし、アリル基は除く)を表し、
前記置換基(a)ではないR~Rは、水素原子を表し、
*aは、前記オキシアルキレン重合体(X1)が有するオキシアルキレン鎖への結合位置を表す。)
【請求項13】
末端に下記式(2)で表される基を有する、末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(Y1)。
【化3】

(式(2)中、
~Rから選ばれる1つは、下記式(iii)で表される基であり、
前記式(iii)で表される基ではないR~Rは、水素原子を表し、
*bは、前記オキシアルキレン重合体(Y1)が有するオキシアルキレン鎖への結合位置を表す。
-R-SiX3-n (iii)
(式(iii)中、
は、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)(ただし、アリル基は除く)に由来する2価の有機基を表し、
Xは加水分解性基又は水酸基を表し、
Rは炭素数1~20の一価の有機基を表し、
nは1~3の整数であり、
nが1の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよく、
nが2又は3の場合、複数のXは、同一でも異なっていてもよい。))
【請求項14】
請求項7に記載の製造方法により得られたオキシアルキレン重合体(X)が末端に有する下記式(1)で表される基の水酸基を、アルカリ金属アルコキシドにより金属アルコキシドに変換した後、末端に不飽和結合を有する有機ハロゲン化合物を反応させて、炭素-炭素不飽基を有する置換基(b)に変換したオキシアルキレン重合体(X2)を得て、
前記オキシアルキレン重合体(X2)における前記置換基(a)が有する炭素-炭素不飽和基、及び前記置換基(b)が有する炭素-炭素不飽和基と、下記式(ii)で表される加水分解性基を有するヒドロシラン化合物(C)を反応させる、オキシアルキレン重合体(Y2)の製造方法であって、
前記オキシアルキレン重合体(Y2)は末端に反応性ケイ素基を2個有する、オキシアルキレン重合体(Y2)の製造方法。
【化4】

(式(1)中、
~Rから選ばれる1つは、前記置換基(a)を表し、
前記置換基(a)ではないR~Rは、水素原子を表し、
*aは、前記オキシアルキレン重合体(X)が有するオキシアルキレン鎖への結合位置を表す。)
-SiX3-n (ii)
(式(ii)中、
Xは加水分解性基又は水酸基を表し、
Rは炭素数1~20の一価の有機基を表し、
nは1~3の整数であり、
nが1の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよく、
nが2又は3の場合、複数のXは、同一でも異なっていてもよい。
ただし、Rは加水分解性基を除く。)
【請求項15】
末端に下記式(3)で表される基を有する、末端に反応性ケイ素基を2個有するオキシアルキレン重合体(Y2)。
【化5】

(式(3)中、
~Rから選ばれる1つは、下記式(iii)で表される基であり、
前記式(iii)で表される基ではないR~Rは、水素原子を表し、
10は、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(b)に由来する2価の有機基を表し、
Xは加水分解性基又は水酸基を表し、
Rは炭素数1~20の一価の有機基を表し、
nは1~3の整数であり、
nが1の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよく、
nが2又は3の場合、複数のXは、同一でも異なっていてもよい。
ただし、Rは加水分解性基を除く。
*cは、前記オキシアルキレン重合体(Y2)が有するオキシアルキレン鎖への結合位置を表す。
-R-SiX3-n (iii)
(式(iii)中、
は、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)(ただし、アリル基は除く)に由来する2価の有機基を表し、
X、R及びnは式(3)で定義したとおりである。))
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体の製造方法、末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体の製造方法、末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体、及び末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オキシアルキレン重合体が有する末端の水酸基に、反応性の炭素-炭素不飽和基を導入する方法や、さらにその炭素-炭素不飽和基を反応性ケイ素基に変換して、末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体を得る方法について、種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、オキシアルキレン重合体が有する末端の水酸基を、金属アルコキシドに変換した後、アリルクロリド等のハロゲン化アリルを用いて末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体に変換し、さらにその炭素-炭素不飽和基を反応性ケイ素基に変換する方法が記載されている。
また、特許文献2には、オキシアルキレン重合体が有する末端の水酸基を、金属アルコキシドに変換した後、3-クロロ-2-メチル-1-プロペン等のハロゲン化メチルプロペンを用いて末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体に変換し、さらにその炭素-炭素不飽和基を反応性ケイ素基に変換する方法が記載されている。
また、特許文献3には、末端に水酸基を有するオキシアルキレン重合体に、アルカリ金属塩を作用させた後、炭素-炭素不飽和結合を有するエポキシ化合物を反応させ、次いで炭素-炭素不飽和結合を有するハロゲン化炭化水素化合物を反応させて、炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体に変換し、さらにその炭素-炭素不飽和基を反応性ケイ素基に変換する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-88148号公報
【特許文献2】特開2000-345023号公報
【特許文献3】国際公開第2013/180203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、引用文献1及び2の方法では、末端に金属アルコキシドが導入されたオキシアルキレン重合体とハロゲン化アリル又はハロゲン化メチルプロペンを反応させる際、後に行う反応性ケイ素基への変換を速やかに進行させるために、副生塩である金属ハロゲン化物を取り除く晶析工程が必要となる。この晶析工程は、大量の排水が発生するため、環境への負荷が高く、製造工程が煩雑になるという問題があった。
また、文献1及び文献3の方法では、炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体の末端に有するアリル基は、反応性ケイ素基に変換する際に、一定の割合で2重結合の転位が発生するため、これにより反応性ケイ素基の導入率が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するものであり、反応性ケイ素基を高い導入率で導入できる末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体を、環境への負荷が低く、簡略化されたプロセスで得ることができる製造方法、該末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体から得られる、末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体の製造方法、該末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体、及び該末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所定の脂環式エポキシ化合物(B)を用いて得られた末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体が、晶析工程を経ることなく製造でき、かつ反応性ケイ素基を高い導入率で導入できることを見出したことに基づく。
【0008】
本発明は、以下の手段を提供する。
[1] 複合金属シアン化物錯体触媒の存在下、オキシアルキレン重合体(A)が有する水酸基と、脂環式エポキシ化合物(B)が有するエポキシ基とを反応させる、オキシアルキレン重合体(X)の製造方法であって、
前記オキシアルキレン重合体(A)は、少なくとも1つの末端に前記水酸基を有し、
前記脂環式エポキシ化合物(B)は、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)(ただし、アリル基は除く)を有し、
前記オキシアルキレン重合体(X)は、末端に前記置換基(a)に由来する炭素-炭素不飽和基を有する、オキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
[2] 前記オキシアルキレン重合体(A)の数平均分子量が、2000~50000である、上記[1]に記載のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
[3] 前記オキシアルキレン重合体(A)1分子あたりの平均水酸基数が、1~8である、上記[1]又は[2]に記載のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
[4] 前記オキシアルキレン重合体(A)は、プロピレンオキシドに由来する構成単位を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
[5] 前記オキシアルキレン重合体(A)は、さらにエチレンオキシドに由来する構成単位を含み、
前記オキシアルキレン重合体(A)を構成する全ての構成単位に対する前記エチレンオキシドに由来する構成単位の割合が、1~30質量%である、上記[4]に記載のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
[6] 前記脂環式エポキシ化合物(B)の脂環式骨格は、環形成炭素数が3~12の単環構造又は多環構造である、上記[1]~[5]のいずれかに記載のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
[7] 前記脂環式エポキシ化合物(B)は、下記式(i)で表される化合物である、上記[1]~[6]のいずれかに記載のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
【化1】

(式(i)中、
~Rから選ばれる1つは、前記置換基(a)を表し、
前記置換基(a)ではないR~Rは、水素原子を表す。)
[8] 前記R又はRが、前記置換基(a)である、上記[7]に記載のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
[9] 前記置換基(a)が、ビニル基、ビニルオキシ基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、及びプロパルギル基からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]~[8]のいずれかに記載のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
[10] 前記脂環式エポキシ化合物(B)が、1-ビニル-2,3-エポキシシクロヘキサン、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、及び3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]~[9]のいずれかに記載のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法。
[11] 上記[1]~[10]のいずれかに記載の製造方法により得られたオキシアルキレン重合体(X)が末端に有する前記炭素-炭素不飽和基と、下記式(ii)で表される加水分解性基を有するヒドロシラン化合物(C)とを反応させるオキシアルキレン重合体(Y)の製造方法であって、
前記オキシアルキレン重合体(Y)は、末端に反応性ケイ素基を有する、オキシアルキレン重合体(Y)の製造方法。
-SiX3-n (ii)
(式(ii)中、
Xは加水分解性基又は水酸基を表し、
Rは炭素数1~20の一価の有機基を表し、
nは1~3の整数であり、
nが1の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよく、
nが2又は3の場合、複数のXは、同一でも異なっていてもよい。
ただし、Rは加水分解性基を除く。)
[12] 末端に下記式(1)で表される基を有する、末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体(X1)。
【化2】

(式(1)中、
~Rから選ばれる1つは、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)(ただし、アリル基は除く)を表し、
前記置換基(a)ではないR~Rは、水素原子を表し、
*aは、前記オキシアルキレン重合体(X1)が有するオキシアルキレン鎖への結合位置を表す。)
[13] 末端に下記式(2)で表される基を有する、末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(Y1)。
【化3】

(式(2)中、
~Rから選ばれる1つは、下記式(iii)で表される基であり、
前記式(iii)で表される基ではないR~Rは、水素原子を表し、
*bは、前記オキシアルキレン重合体(Y1)が有するオキシアルキレン鎖への結合位置を表す。
-R-SiX3-n (iii)
(式(iii)中、
は、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)(ただし、アリル基は除く)に由来するの2価の有機基を表し、
Xは加水分解性基又は水酸基を表し、
Rは炭素数1~20の一価の有機基を表し、
nは1~3の整数であり、
nが1の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよく、
nが2又は3の場合、複数のXは、同一でも異なっていてもよい。))
[14] 上記[7]又は[8]に記載の製造方法により得られたオキシアルキレン重合体(X)が末端に有する下記式(1)で表される基の水酸基を、アルカリ金属アルコキシドにより金属アルコキシドに変換した後、末端に不飽和結合を有する有機ハロゲン化合物を反応させて、炭素-炭素不飽基を有する置換基(b)に変換したオキシアルキレン重合体(X2)を得て、
前記オキシアルキレン重合体(X2)における前記置換基(a)が有する炭素-炭素不飽和基、及び前記置換基(b)が有する炭素-炭素不飽和基と、下記式(ii)で表される加水分解性基を有するヒドロシラン化合物(C)を反応させる、末端に反応性ケイ素基を2個有するオキシアルキレン重合体(Y2)の製造方法であって、
前記オキシアルキレン重合体(Y2)は、末端に反応性ケイ素基を2個有する、オキシアルキレン重合体(Y2)の製造方法。
【化4】

(式(1)中、
~Rから選ばれる1つは、前記置換基(a)を表し、
前記置換基(a)ではないR~Rは、水素原子を表し、
*aは、前記オキシアルキレン重合体(X)が有するオキシアルキレン鎖への結合位置を表す。)
-SiX3-n (ii)
(式(ii)中、
Xは加水分解性基又は水酸基を表し、
Rは炭素数1~20の一価の有機基を表し、
nは1~3の整数であり、
nが1の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよく、
nが2又は3の場合、複数のXは、同一でも異なっていてもよい。
ただし、Rは加水分解性基を除く。)
[15] 末端に下記式(3)で表される基を有する、末端に反応性ケイ素基を2個有するオキシアルキレン重合体(Y2)。
【化5】

(式(3)中、
~Rから選ばれる1つは、下記式(iii)で表される基であり、
前記式(iii)で表される基ではないR~Rは、水素原子を表し、
10は、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(b)に由来する2価の有機基を表し、
Xは加水分解性基又は水酸基を表し、
Rは炭素数1~20の一価の有機基を表し、
nは1~3の整数であり、
nが1の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよく、
nが2又は3の場合、複数のXは、同一でも異なっていてもよい。
ただし、Rは加水分解性基を除く。
*cは、前記オキシアルキレン重合体(Y2)が有するオキシアルキレン鎖への結合位置を表す。
-R-SiX3-n (iii)
(式(iii)中、
は、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)(ただし、アリル基は除く)に由来する2価の有機基を表し、
X、R及びnは式(3)で定義したとおりである。))
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、反応性ケイ素基を高い導入率で導入できる末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体を、環境への負荷が低く、簡略化されたプロセスで得ることができる。また、前記末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体から得られる、末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体の製造方法、該末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体、及び該末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体が提供される。また、末端に反応性ケイ素基を2個有するオキシアルキレン重合体の製造方法、該末端に反応性ケイ素基を2個有するオキシアルキレン重合体が提供される。
【0010】
本明細書における用語及び表記についての定義及び意義を以下に示す。
「水酸基価」は、JIS K1557-1:2007に準拠した測定により求められる。
「水酸基価換算分子量」は、56100/(水酸基価)×(開始剤の活性水素の数)の式から算出した値である。
「炭素-炭素不飽和基量」は、オキシアルキレン重合体が有する末端の水酸基に、炭素-炭素不飽和基を導入して得られた生成物中の炭素-炭素不飽和基量[mmol/g]を指し、H-NMRの内部標準法から求められる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により求められる。
【0011】
「反応性ケイ素基量」は、オキシアルキレン重合体(X)、オキシアルキレン重合体(X1)又はオキシアルキレン重合体(X2)が末端に有する炭素-炭素不飽和基と、加水分解性基を有するヒドロシラン化合物(C)とを反応させて得られ、脱揮により未反応のヒドロシラン化合物(C)を留去した生成物中の反応性ケイ素基量[mmol/g]を指し、H-NMRの内部標準法から求められる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により求められる。
「反応性ケイ素基導入率」は、オキシアルキレン重合体(X)の末端に有する炭素-炭素不飽和基が反応性ケイ素基に変換された割合であり、H-NMRの内部標準法から求めた値を用いて算出される。具体的には、後述する実施例に記載の方法により求められる。
「プロペニル基量」は、オキシアルキレン重合体(X)、オキシアルキレン重合体(X1)又はオキシアルキレン重合体(X2)が末端に有する炭素-炭素不飽和基と、加水分解性基を有するヒドロシラン化合物(C)とを反応させて得られ、脱揮により未反応のヒドロシラン化合物(C)を留去した生成物中のプロペニル基の量[mmol/g]を指し、H-NMRから求められる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により求められる。
「プロペニル基率」は、オキシアルキレン重合体(X)、オキシアルキレン重合体(X1)又はオキシアルキレン重合体(X2)と、加水分解性基を有するヒドロシラン化合物(C)とを反応させて得られ、脱揮により未反応のヒドロシラン化合物(C)を留去した生成物中に残存しているプロペニル基の割合(末端に有する炭素-炭素不飽和基の総数に対する、プロペニル基の数の割合)[mol%]を指し、H-NMRの内部標準法から求められる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により求められる。
【0012】
[オキシアルキレン重合体(X)の製造方法]
本発明のオキシアルキレン重合体(X)の製造方法は、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下、オキシアルキレン重合体(A)が有する水酸基と、脂環式エポキシ化合物(B)が有するエポキシ基とを反応させる製造方法であって、前記オキシアルキレン重合体(A)は、少なくとも1つの末端に前記水酸基を有し、前記脂環式エポキシ化合物(B)は、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)(ただし、アリル基は除く)を有し、前記オキシアルキレン重合体(X)は、末端に前記置換基(a)に由来する炭素-炭素不飽和基を有する。
【0013】
脂環式骨格を有するエポキシ化合物であり、かつアリル基を除く炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)を有する脂環式エポキシ化合物(B)を用いることにより、副生塩の生成がないため、晶析工程を経ることなく、末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体(X)を製造できる。すなわち、環境への負荷が低く、簡略化されたプロセスで、炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体(X)を製造できる。
また、本発明の脂環式エポキシ化合物(B)用いてオキシアルキレン重合体(X)を製造した場合、反応性ケイ素基に変換する際に、末端に存在する炭素-炭素不飽和基は、2重結合の転位が生じないため、従来の末端にアリル型の炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体に比べ、反応性ケイ素基を高い導入率で導入できる。
【0014】
オキシアルキレン重合体(A)が有する水酸基と、脂環式エポキシ化合物(B)が有するエポキシ基とを反応させる際の脂環式エポキシ化合物(B)の使用量は、反応性や末端に有する炭素-炭素不飽和基の導入量(不飽和基量)、製造コスト等に応じて適宜設定できるが、オキシアルキレン重合体(A)が有する水酸基1モルに対して、好ましくは0.50~1.50モル、より好ましくは0.80~1.40モル、さらに好ましくは0.95~1.30モルである。
【0015】
オキシアルキレン重合体(A)が有する水酸基と、脂環式エポキシ化合物(B)が有するエポキシ基とを反応させる際、窒素又は不活性ガス雰囲気下で、オキシアルキレン重合体(A)に脂環式エポキシ化合物(B)を逐次添加することが好ましい。脂環式エポキシ化合物(B)を逐次添加する際のオキシアルキレン重合体(A)の温度は、反応性に応じて適宜設定されるが、好ましくは100~200℃の範囲内、より好ましくは110~180℃の範囲内、さらに好ましくは120~160℃の範囲内である。
【0016】
脂環式エポキシ化合物(B)を逐次添加する時間は、反応性に応じて適宜設定されるが、好ましくは1~20時間、より好ましくは2~15時間、さらに好ましくは3~12時間である。
【0017】
脂環式エポキシ化合物(B)を逐次添加した後、オキシアルキレン重合体(A)が有する水酸基と、脂環式エポキシ化合物(B)が有するエポキシ基との反応を十分に進行させる観点から、脂環式エポキシ化合物(B)を逐次添加した溶液を、窒素又は不活性ガス雰囲気下で、さらに加熱することが好ましい。その温度は、好ましくは脂環式エポキシ化合物(B)を逐次添加する際のオキシアルキレン重合体(A)の温度と同様である。加熱時間は、好ましくは0.5~20時間、より好ましくは0.7~15時間、さらに好ましくは0.8~10時間である。
【0018】
末端に有する炭素-炭素不飽和基としては、例えば、ビニル基(-CH=CH)及びエチニル基(-C≡CH)が挙げられる。これらのうち、反応性ケイ素基を高い導入率で導入する観点から、ビニル基が好ましい。
末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体(X)は、末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体の前駆体として有用である。
【0019】
(オキシアルキレン重合体(A))
オキシアルキレン重合体(A)は、末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体(X)の原料であり、少なくとも1つの末端に前記水酸基を有する。
オキシアルキレン重合体(A)は、アリル基を有しないことが好ましい。
オキシアルキレン重合体(A)としては、活性水素含有基を有する開始剤に、触媒存在下、アルキレンオキシドを開環重合させることにより得られる化合物が好ましい。
【0020】
オキシアルキレン重合体(A)の1分子あたりの平均水酸基数は、通常、開始剤の活性水素の数に対応し、好ましくは1~8、より好ましくは1~7、さらに好ましくは1~6である。
上記範囲内の平均水酸基数であれば、本発明の製造方法により、効率よく炭素-炭素不飽和基に変換し易い。
【0021】
オキシアルキレン重合体(A)が有する水酸基を効率よく炭素-炭素不飽和基に変換する観点から、オキシアルキレン重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量は、好ましくは1000~80000、より好ましくは1500~60000、さらに好ましくは2000~50000である。
【0022】
オキシアルキレン重合体(A)が有する水酸基を効率よく炭素-炭素不飽和基に変換する観点から、オキシアルキレン重合体(A)の水酸基価換算分子量は、好ましくは1500~12000、より好ましくは2000~90000、さらに好ましくは3000~75000、よりさらに好ましくは4500~50000である。
【0023】
開始剤の活性水素含有基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、好ましくは水酸基、より好ましくはアルコール性水酸基である。
開始剤としては、例えば、アルコール、フェノール、カルボン酸、アミン等が挙げられ、好ましくは脂肪族アルコールである。また、オキシアルキレン重合体(A)よりも低分子量の水酸基を有するオキシアルキレン重合体を開始剤としてもよい。開始剤は、これらのうち、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
開始剤の脂肪族アルコールの炭素原子数は、好ましくは2~10、より好ましくは2~8、さらに好ましくは2~6である。
【0024】
開始剤の脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、2-エチルヘキサノール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデカノール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、アリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,2,6-ヘキサントリオール、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。これらのうち、入手容易性等の観点から、n-ブタノール、プロピレングリコール、及びソルビトールが好ましい。
【0025】
アルキレンオキシドの炭素原子数は、好ましくは2~4である。アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド等が挙げられ、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。これらのうち、入手容易性等の観点から、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドが好ましく、プロピレンオキシドがより好ましい。すなわち、オキシアルキレン重合体(A)は、プロピレンオキシドに由来する構成単位を含むことがより好ましい。
また、アルキレンオキシドは、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドを併用することも好ましい。すなわち、オキシアルキレン重合体(A)は、プロピレンオキシドに由来する構成単位を含み、さらにエチレンオキシドに由来する構成単位を含むことも好ましく、この場合、耐水性の観点から、オキシアルキレン重合体(A)を構成する全ての構成単位に対するエチレンオキシドに由来する構成単位の割合が、1~30質量%であることがより好ましい。
【0026】
アルキレンオキシドの開環重合に用いられる触媒としては、公知のものを適用できる。例えば、水酸化カリウム等のアルカリ触媒、有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られた錯体等の遷移金属化合物-ポルフィリン錯体触媒、複合金属シアン化物錯体触媒、ホスファゼン化合物からなる触媒等が挙げられ、これらのうち、分子量分布の均一化等の観点からは、複合金属シアン化物錯体触媒が好ましく、例えば、tert-ブタノールを配位子とする亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体が挙げられる。複合金属シアン化物錯体触媒を用いた、オキシアルキレン重合体(A)の製造方法は、公知の方法を適用でき、例えば、国際公開第2003/062301号、国際公開報第2004/067633号、特開2004-269776号公報、特開2005-15786号公報、国際公開第2013/065802号、特開2015-010162号公報等に開示されている製造方法を採用できる。
【0027】
(脂環式エポキシ化合物(B))
脂環式エポキシ化合物(B)は、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)を有する。ただし、前記末端に炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)には、アリル基は含まれない。また、本発明において、脂環式エポキシ化合物(B)とは、脂環式骨格を構成する隣接する2つの炭素原子及び1つの酸素原子で構成されるエポキシ基を有するものである。
【0028】
前記置換基(a)が有する炭素-炭素不飽和基としては、例えば、ビニル基(-CH=CH)及びエチニル基(-C≡CH)が挙げられる。これらのうち、反応性ケイ素基を高い導入率で導入する観点から、ビニル基が好ましい。
脂環式エポキシ化合物(B)が有する前記置換基(a)は、反応性ケイ素基を高い導入率で導入する観点から、好ましくはビニル基、ビニルオキシ基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、及びプロパルギル基であり、より好ましくはビニル基及び(メタ)アクリロイルオキシ基である。
【0029】
脂環式エポキシ化合物(B)は、前記置換基(a)以外に置換基を有してもよいが、置換基としてアリル基を有しないことが好ましく、置換基を有しないことがより好ましい。
【0030】
脂環式エポキシ化合物(B)の脂環式骨格は、反応性ケイ素基を高い導入率で導入する観点から、好ましくは環形成炭素数が3~12の単環構造又は多環構造である。
脂環式骨格における環形成炭素数は、入手容易性等の観点から、好ましくは4~10、より好ましくは5~8、さらに好ましくは6である。
脂環式骨格は、入手容易性等の観点から、単環構造であることが好ましい。
脂環式骨格は、飽和であっても不飽和であってもよいが、好ましくは飽和環である。
【0031】
脂環式骨格としては、例えば、シクロアルカン環、シクロアルケン環、ビシクロアルカン環、ビシクロアルケン環、及びトリシクロアルカン環等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはシクロアルカン環、より好ましくは炭素数5~8のシクロアルカン環、さらに好ましくはシクロヘキサン環である。
【0032】
脂環式エポキシ化合物(B)は、反応性ケイ素基を高い導入率で導入する観点から、好ましくは下記式(i)で表される化合物である。
【0033】
【化6】
【0034】
式(i)中、R~Rから選ばれる1つは、前記置換基(a)を表し、前記置換基(a)ではないR~Rは、水素原子を表す。
反応性ケイ素基を高い導入率で導入する観点から、R又はRが、前記置換基(a)であることが好ましい。
【0035】
前記置換基(a)が有する「炭素-炭素不飽和基」としては、例えば、ビニル基(-CH=CH)及びエチニル基(-C≡CH)が挙げられる。これらのうち、反応性ケイ素基を高い導入率で導入する観点から、ビニル基が好ましい。
前記置換基(a)は、反応性ケイ素基を高い導入率で導入する観点から、好ましくはビニル基、ビニルオキシ基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、及びプロパルギル基であり、より好ましくはビニル基及び(メタ)アクリロイルオキシ基である。
【0036】
脂環式エポキシ化合物(B)は、反応性ケイ素基を高い導入率で導入する観点から、1-ビニル-2,3-エポキシシクロヘキサン、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、及び3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサンであることがより好ましい。
【0037】
(複合金属シアン化物錯体触媒)
複合金属シアン化物錯体触媒は、上記アルキレンオキシドの開環重合に用いられる触媒と同様のものが挙げられる。複合金属シアン化物錯体触媒は、効率的に炭素-炭素不飽和基に変換する観点から、tert-ブタノールを配位子とする亜鉛のヘキサシアノコバルテート錯体が好ましい。
【0038】
[末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(Y)の製造方法]
本発明の末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(Y)の製造方法は、上記「末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体(X)の製造方法」により得られたオキシアルキレン重合体(X)が末端に有する前記炭素-炭素不飽和基と、下記式(ii)で表される加水分解性基を有するヒドロシラン化合物(C)を反応させる製造方法であって、前記オキシアルキレン重合体(Y)は、末端に反応性ケイ素基を有する。
-SiX3-n (ii)
式(ii)中、Xは加水分解性基又は水酸基を表し、Rは炭素数1~20の一価の有機基を表し、nは1~3の整数であり、nが1の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよく、nが2又は3の場合、複数のXは、同一でも異なっていてもよい。ただし、Rは加水分解性基を除く。
【0039】
ヒドロシラン化合物(C)を、オキシアルキレン重合体(X)が末端に有する前記炭素-炭素不飽和基に、ヒドロシリル化反応により付加させることにより、末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(Y)が得られる。
【0040】
Xの加水分解性基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基等の炭素原子数1~4のアルコキシ基;アセトキシ基等のアシルオキシ基;アセトキシメート基、ジメチルケトキシメート基等のケトキシメート基;N,N-ジメチルアミノ基等のアミノ基;N-メチルアセトアミド基等のアミド基等が挙げられる。これらのうち、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
【0041】
Rが表す一価の有機基としては、一価の炭化水素基及び一価のハロゲン化炭化水素基が好ましい。
Rの炭化水素基としては、アルキル基、アリール基が好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基がさらに好ましく炭素原子数1~3のアルキル基がよりさらに好ましい。
Rのハロゲン化炭化水素基としては、塩素原子又はフッ素原子を1個以上有するアルキル基が好ましく、該アルキル基の炭素原子数が、好ましくは1~12、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3である。
【0042】
nは1~3の整数であり、好ましくは1又は2であり、より好ましくは2である。
【0043】
ヒドロシラン化合物(C)の具体例としては、トリクロロシラン、ジクロロメチルシラン、クロロジメチルシラン、ジクロロフェニルシラン、(クロロメチル)ジクロロシラン、(ジクロロメチル)ジクロロシラン、ビス(クロロメチル)クロロシラン、メトキシメチルジクロロシラン、ジメトキシメチルジクロロシラン、ビス(メトキシメチル)クロロシラン等のハロゲン化シラン類;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメトキシフェニルシラン、エチルジメトキシシラン、メトキシジメチルシラン、エトキシジメチルシラン、(クロロメチル)メチルメトキシシラン、(クロロメチル)ジメトキシシラン、(クロロメチル)ジエトキシシラン、ビス(クロロメチル)メトキシシラン、(メトキシメチル)メチルメトキシシラン、(メトキシメチル)ジメトキシシラン、ビス(メトキシメチル)メトキシシラン、(メトキシメチル)ジエトキシシラン、(エトキシメチル)ジエトキシシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジメトキシシラン、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジエトキシシラン、[(クロロメチル)ジメトキシシリルオキシ]ジメチルシラン、[(クロロメチル)ジエトキシシリルオキシ]ジメチルシラン、[(メトキシメチル)ジメトキシシリルオキシ]ジメチルシラン、[(メトキシメチル)ジエメトキシシリルオキシ]ジメチルシラン、[(ジエチルアミノメチル)ジメトキシシリルオキシ]ジメチルシラン、[(3,3,3-トリフルオロプロピル)ジメトキシシリルオキシ]ジメチルシラン等のアルコキシシラン類;ジアセトキシメチルシラン、ジアセトキシフェニルシラン等のアシルオキシシラン類;ビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシラン等のケトキシメートシラン類;トリイソプロペニルオキシシラン、(クロロメチル)ジイソプロペニルオキシシラン、(メトキシメチル)ジイソプロペニルオキシシラン等のイソプロペニルオキシシラン類(脱アセトン型)等が挙げられる。これらのうち、活性が高く、硬化性組成物において良好な硬化性が得られる観点から、ジメトキシメチルシランが好ましい。
【0044】
ヒドロシラン化合物(C)の使用量は、反応性等に応じて適宜設定されるが、末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体(X)の炭素-炭素不飽和基1モルに対して、好ましくは0.05~10モル、より好ましくは0.1~5モル、さらに好ましくは0.5~3モルであり、よりさらに好ましくは1.0~2.0モルである。
【0045】
末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体(X)とヒドロシラン化合物(C)との反応は、ヒドロシリル化反応の促進のため、触媒存在下で行うことが好ましい。
触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、鉄、コバルト等の金属、これらの錯体等が挙げられる。これらのうち、反応効率等の観点から、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-ビニルシロキサン錯体が好ましく、塩化白金酸、白金-ビニルシロキサン錯体がより好ましい。
【0046】
末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体(X)とヒドロシラン化合物(C)との反応は、反応系の低粘度化及び反応促進の観点から、加熱下で行うことが好ましく、反応温度は、好ましくは50~150℃、より好ましくは60~130℃、さらに好ましくは70~120℃である。反応時間は、ヒドロシリル化反応を十分に進行させる観点から、好ましくは0.5~15時間、より好ましくは1~12時間、さらに好ましくは2~10時間である。
【0047】
[末端に反応性ケイ素基を2個有するオキシアルキレン重合体(Y2)の製造方法]
本発明の末端に反応性ケイ素基を2個有するオキシアルキレン重合体(Y2)の製造方法は、脂環式エポキシ化合物(B)として、上記式(i)で表される化合物を用い、上述の製造方法により得られた末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体(X)が末端に有する下記式(1)で表される基の水酸基を、アルカリ金属アルコキシドにより金属アルコキシドに変換した後、末端に不飽和結合を有する有機ハロゲン化合物を反応させて、炭素-炭素不飽基を有する置換基(b)に変換したオキシアルキレン重合体(X2)を得て、前記オキシアルキレン重合体(X2)における前記置換基(a)が有する炭素-炭素不飽和基、及び前記置換基(b)が有する炭素-炭素不飽和基と、下記式(ii)で表される加水分解性基を有するヒドロシラン化合物(C)を反応させる製造方法であって、前記オキシアルキレン重合体(Y2)は、末端に反応性ケイ素基を2個有する。
【0048】
【化7】
【0049】
式(1)中、R~Rから選ばれる1つは、前記置換基(a)を表し、前記置換基(a)ではないR~Rは、水素原子を表し、*aは、前記オキシアルキレン重合体(X)が有するオキシアルキレン鎖への結合位置を表す。
【0050】
-SiX3-n (ii)
式(ii)中、Xは加水分解性基又は水酸基を表し、Rは炭素数1~20の一価の有機基を表し、nは1~3の整数であり、nが1の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよく、nが2又は3の場合、複数のXは、同一でも異なっていてもよい。ただし、Rは加水分解性基を除く。
【0051】
アルカリ金属アルコキシドとしては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウム-tert-ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムプロポキシド、カリウムイソプロポキシド、カリウム-tert-ブトキシド等が挙げられる。これらのうち、入手容易性等の観点から、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドが好ましい。
【0052】
アルカリ金属アルコキシドの使用量は、金属アルコキシドへの変換を十分かつ効率的に促進する観点から、オキシアルキレン重合体(X)が末端に有する水酸基1モルあたり、アルコキシ基が1.0~5.0モルとなる量であることが好ましく、より好ましくは1.05~4.0モル、さらに好ましくは1.1~3.0モル、よりさらに好ましくは1.15~2.0モルである。
【0053】
アルカリ金属アルコキシドによる金属アルコキシドへの変換は、窒素又は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、反応温度及び反応時間は、例えば、100~150℃、0.5~24時間の範囲内であることが好ましい。
【0054】
前記金属アルコキシドと末端に不飽和結合を有する有機ハロゲン化合物との反応においては、金属アルコキシドからアルカリ金属を除いた残基と、有機ハロゲン化合物からハロゲン原子を除いた残基とがエーテル結合を形成して、オキシアルキレン重合体(X2)が得られる。この金属アルコキシドからアルカリ金属を除いた残基と、有機ハロゲン化合物からハロゲン原子を除いた残基でエーテル結合を形成した基が、置換基(b)である。
前記置換基(b)が有する「炭素-炭素不飽和基」の詳細は、前記置換基(a)が有する「炭素-炭素不飽和基」と同様であり、好ましい態様も同様である。
置換基(b)としては、例えば、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、1-ブテニルオキシ基、2-ブテニルオキシ基、3-ブテニルオキシ基、2-メチルアリルオキシ基、1-ペンテニルオキシ基、2-メチル-2-ブテニルオキシ基、1-ヘキセニルオキシ基、2-メチル-2-ペンテニルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、製造容易性の観点から、アリルオキシ基が好ましい。
【0055】
末端に不飽和結合を有する有機ハロゲン化合物としては、例えば、塩化ビニル、塩化アリル、塩化メタリル、塩化プロパルギル、臭化ビニル、臭化アリル、臭化メタリル、臭化プロパルギル、ヨウ化メタリル、1-ブロモ-2-ブチン、4-ブロモ-1-ブチン、1-ブロモ-2-オクチン、1-ブロモ-2-ペンチン、1,4-ジブロモ-2-ブチン、5-ブロモ―1-ペンチン、6-ブロモ-1-ヘキシン、ヨウ化ビニル、ヨウ化アリル等が挙げられる。これらのうち、取り扱い容易性等の観点から、塩化アリル、塩化メタリル、臭化プロパルギルが好ましく、塩化アリル、塩化メタリルがより好ましい。
【0056】
末端に不飽和結合を有する有機ハロゲン化合物の使用量は、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(b)への変換を十分かつ効率的に促進する観点から、末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体(X)が末端に有する水酸基1モルあたり、有機ハロゲン化合物過剰量となる量が好ましく、例えば、1.0~10.0モルである。
【0057】
炭素-炭素不飽和基を有する置換基(b)へ変換する際の反応温度及び反応時間は、例えば、100~150℃、0.5~24時間の範囲内であることが好ましい。
【0058】
炭素-炭素不飽和基を有する置換基(b)に変換することにより、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)と炭素-炭素不飽和基を有する置換基(b)を有する、すなわち炭素-炭素不飽和基を2個有するオキシアルキレン重合体(X2)が得られる。
【0059】
式(ii)におけるX、R、及びnの好ましい態様は、上記[末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(Y)の製造方法]と同様である。
【0060】
ヒドロシラン化合物(C)の具体例は、上記[末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(Y)の製造方法]に記載のとおりである。
【0061】
ヒドロシラン化合物(C)の使用量は、反応性等に応じて適宜設定されるが、置換基(a)が有する炭素-炭素不飽和基と置換基(b)が有する炭素-炭素不飽和基の合計1モルに対して、好ましくは0.05~10モル、より好ましくは0.1~5モル、さらに好ましくは0.5~3モルであり、よりさらに好ましくは1.0~2.0モルである。
【0062】
置換基(a)が有する炭素-炭素不飽和基、及び置換基(b)が有する炭素-炭素不飽和基と、ヒドロシラン化合物(C)との反応は、ヒドロシリル化反応の促進のため、触媒存在下で行うことが好ましい。
触媒としては、[オキシアルキレン重合体(Y)の製造方法]に記載のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0063】
置換基(a)が有する炭素-炭素不飽和基、及び置換基(b)が有する炭素-炭素不飽和基と、ヒドロシラン化合物(C)との反応に関する好ましい態様は、[末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(Y)の製造方法]と同様である。
【0064】
[末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体(X1)]
末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体(X1)は、末端に下記式(1)で表される基を有し、末端に炭素-炭素不飽和基を有するものである。そして、上述の製造方法により得られるものである。
【0065】
【化8】
【0066】
式(1)中、R~Rから選ばれる1つは、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)(ただし、アリル基は除く)を表し、前記炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)ではないR~Rは、水素原子を表し、*aは、前記末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体(X1)が有するオキシアルキレン鎖への結合位置を表す。
末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体(X1)に反応性ケイ素基を高い導入率で導入する観点から、R又はRが、前記炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)であることが好ましい。
【0067】
式(1)におけるR~Rから選ばれる1つが表す置換基(a)の好ましい態様は、上記(脂環式エポキシ化合物(B))に記載のR~Rから選ばれる1つが表す置換基(a)と同様である。
【0068】
本発明の末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体(X1)の代表的な例として、例えば、下記式(X1-a)で表される化合物が挙げられる。
【0069】
【化9】
【0070】
式(X1-a)中、kは所望の数平均分子量に応じて、適宜設定すればよい。
【0071】
本発明の末端に炭素-炭素不飽和基を有するオキシアルキレン重合体(X)及び(X1)は、反応性ケイ素基を高い導入率で導入する観点から、上記式(X1-a)で表される化合物であることが好ましい。
【0072】
[末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(Y1)]
末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(Y1)は、末端に下記式(2)で表される基を有し、末端に反応性ケイ素基を有するものである。そして、上述の製造方法により得られるものである。
【0073】
【化10】
【0074】
式(2)中、R~Rから選ばれる1つは、下記式(iii)で表される基であり、前記式(iii)で表される基ではないR~Rは、水素原子を表し、*bは、前記末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(Y1)が有するオキシアルキレン鎖への結合位置を表す。
-R-SiX3-n (iii)
式(iii)中、Rは、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)(ただし、アリル基は除く)に由来する2価の有機基を表し、Xは加水分解性基又は水酸基を表し、Rは炭素数1~20の一価の有機基を表し、nは1~3の整数であり、nが1の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよく、nが2又は3の場合、複数のXは、同一でも異なっていてもよい。
【0075】
は、置換基(a)に由来する2価の有機基を表し、好ましくはビニル基、ビニルオキシ基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、及びプロパルギル基からなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する2価の有機基であり、より好ましくはビニル基又は(メタ)アクリロイルオキシ基に由来する2価の有機基である。
【0076】
式(iii)における、X、R、及びnの好ましい態様は、上記[末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(Y)の製造方法]に記載のX、R、及びnの好ましい態様と同様である。
【0077】
本発明の反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(Y1)の代表的な例として、例えば、下記式(Y1-a)で表される化合物が挙げられる。
【0078】
【化11】
【0079】
式(Y1-a)中、kは所望の数平均分子量に応じて、適宜設定すればよい。
【0080】
本発明の反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(Y)及び(Y1)は、上記式(Y1-a)で表される化合物であることが好ましい。
【0081】
[末端に反応性ケイ素基を2個有するオキシアルキレン重合体(Y2)]
末端に反応性ケイ素基を2個有するオキシアルキレン重合体(Y2)は、末端に下記式(3)で表される基を有し、末端に反応性ケイ素基を2個有するものである。そして、上述の製造方法により得られるものである。
【化12】
【0082】
式(3)中、R~Rから選ばれる1つは、下記式(iii)で表される基であり、前記式(iii)で表される基ではないR~Rは、水素原子を表し、R10は、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(b)に由来する2価の有機基を表し、Xは加水分解性基又は水酸基を表し、Rは炭素数1~20の一価の有機基を表し、nは1~3の整数であり、nが1の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよく、nが2又は3の場合、複数のXは、同一でも異なっていてもよい。
ただし、Rは加水分解性基を除く。
*cは、前記末端に反応性ケイ素基を2個有するオキシアルキレン重合体が有するオキシアルキレン鎖への結合位置を表す。
-R-SiX3-n (iii)
式(iii)中、Rは、炭素-炭素不飽和基を有する置換基(a)(ただし、アリル基は除く)に由来する2価の有機基を表し、X、R及びnは式(3)で定義したとおりである。
【0083】
炭素-炭素不飽和基を有する置換基(b)の詳細は、上記[末端に反応性ケイ素基を2個有するオキシアルキレン重合体(Y2)の製造方法]に記載したとおりであり、好ましい態様も同様である。
【0084】
10が表す置換基(b)に由来する2価の有機基は、好ましくはアリルオキシ基に由来する2価の有機基である。
【0085】
式(3)及び式(iii)におけるX、R、及びnの好ましい態様は、上記[オキシアルキレン重合体(Y)の製造方法]と同様である。
式(iii)におけるRの好ましい態様は、上記[末端に反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(Y1)]と同様である。
【0086】
本発明の反応性ケイ素基を2個有するオキシアルキレン重合体(Y2)の代表的な例として、例えば、下記式(Y2-a)で表される化合物が挙げられる。
【0087】
【化13】
【0088】
式(Y2-a)中、lは所望の数平均分子量に応じて、適宜設定すればよい。
【0089】
本発明の反応性ケイ素基を2個有するオキシアルキレン重合体(Y2)は、上記式(Y2-a)で表される化合物であることが好ましい。
【実施例0090】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により限定されるものではない。
【0091】
[測定方法]
各例における各種物性値の測定方法は、以下のとおりである。
〔オキシアルキレン重合体(A)の水酸基価換算分子量〕
オキシアルキレン重合体(A)の水酸基価換算分子量(M)は、下記式(a)により算出した。
M=56100/(オキシアルキレン重合体(A)の水酸基価)×(開始剤の活性水素の数) (a)
式(a)において、水酸基価とはJIS K1557-1:2007のB法(電位差自動滴定法)に準拠して算出した値である。
【0092】
〔オキシアルキレン重合体(A)の数平均分子量〕
オキシアルキレン重合体(A)の数平均分子量は、特開2012-111813号公報の段落[0086]に記載された方法と同様の方法で測定した。
【0093】
〔オキシアルキレン重合体(A)の水分含有量〕
オキシアルキレン重合体(A)の水分含有量は、JIS K1557-2:2007のB法に準拠して測定した。
【0094】
〔炭素-炭素不飽和基量〕
下記例1~6で得られた生成物(オキシアルキレン重合体(X1-1)~(X1-4)、(X2-1)及び(X2-2)を含む生成物) 約900mg、p-ジニトロベンゼン 約25mg及び重クロロホルム約6gを撹拌混合した溶液試料のH-NMRを測定し、p-ジニトロベンゼンによる内部標準法により、炭素-炭素不飽和基量を算出した。
【0095】
〔反応性ケイ素基量〕
下記例7~12で得られた生成物(オキシアルキレン重合体(Y1-1)~(Y1-4)、(Y2-1)及び(Y2-2)を含む生成物) 約900mg、p-ジニトロベンゼン 約25mg及び重クロロホルム約6gを撹拌混合した溶液試料のH-NMRを測定し、p-ジニトロベンゼンによる内部標準法により、反応性ケイ素基量を算出した。
【0096】
〔反応性ケイ素基導入率〕
反応性ケイ素基導入率[%]は、下記式により算出した。
反応性ケイ素基導入率=(反応性ケイ素基量/炭素-炭素不飽和基量)×100 (b)
上記式(b)において、上記反応性ケイ素基量及び炭素-炭素不飽和基量は、〔反応性ケイ素基量〕及び〔炭素-炭素不飽和基量〕に記載の方法と同様の方法により得た。
【0097】
〔プロペニル基量〕
プロペニル基量[mmol/g]は、上記〔反応性ケイ素基量〕と同様の方法によりH-NMR測定を行い、p-ジニトロベンゼンによる内部標準法により算出した。
【0098】
〔プロペニル基率〕
プロペニル基率[mol%]は、上記炭素-炭素不飽和基量及びプロペニル基量から、下記式(c)により、算出した。
プロペニル基率=プロペニル基量÷炭素-炭素不飽和基量×100 (c)
【0099】
[例1]
反応器にポリオキシプロピレングリコール(オキシアルキレン重合体(A-1)、開始剤としてプロピレングリコール(1分子中の水酸基2)を使用し、配位子がt-ブタノールである亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体(以下、「TBA-DMC触媒」ともいう)の存在下、プロピレンオキシドを開環重合させて得られた重合体。水酸基価7.9mgKOH/g、水酸基価換算分子量14200、数平均分子量20400、TBA-DMC触媒含有量50質量ppm)を4000g仕込み、窒素置換した後、-0.1MPaGの減圧下、含有水分量が100質量ppm以下となるまで脱水処理した。
次いで、窒素を用いて、反応器内圧を常圧にした後、脂環式エポキシ化合物(B)として1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン(株式会社ダイセル製、商品名:セロキサイド2000)84.0 g(オキシアルキレン重合体(A-1)の水酸基1モルあたり1.20モル)を140℃で3.5時間かけて逐次添加した後、9時間反応させた後、140℃、-0.1MPaGで、1時間脱揮させ、未反応の脂環式エポキシ化合物を留去し、末端にビニル基を有するオキシアルキレン重合体(X1-1)を含む生成物を得た。
【0100】
[例2]
反応器にポリオキシプロピレンモノオール(オキシアルキレン重合体(A-2)、開始剤としてn-ブタノール(1分子中の水酸基1)を使用し、TBA-DMC触媒の存在下、プロピレンオキシドを開環重合させて得られた得られた重合体。水酸基価11.5mgKOH/g、水酸基価換算分子量4880、数平均分子量7731、TBA-DMC触媒含有量50質量ppm)を4000g仕込み、窒素置換した後、-0.1MPaGの減圧下、含有水分量が100質量ppm以下となるまで脱水処理した。
続いて、原料のオキシアルキレン重合体(A-1)に代えて、オキシアルキレン重合体(A-2)を用いたこと以外は、例1と同様にして、末端にビニル基を有するオキシアルキレン重合体(X1-2)を含む生成物を得た。
【0101】
[例3]
反応器にポリオキシプロピレングリコール(オキシアルキレン重合体(A-3)、開始剤としてソルビトール(1分子中の水酸基6)を使用し、TBA-DMC触媒の存在下、プロピレンオキシドを開環重合させて得られた得られた重合体。水酸基価8.2mgKOH/g、水酸基価換算分子量41050、数平均分子量34600、TBA-DMC触媒含有量100質量ppm)を4000g仕込み、窒素置換した後、-0.1MPaGの減圧下、含有水分量が100質量ppm以下となるまで脱水処理した。
続いて、原料のオキシアルキレン重合体(A-1)に代えてオキシアルキレン重合体(A-3)を用い、セロキサイド2000をポリオキシプロピレンポリオールの水酸基1モルあたり1.0モル、140℃で10時間かけて逐次添加し、その後1時間反応させた以外は、例1と同様にして、末端にビニル基を有するオキシアルキレン重合体(X1-3)を含む生成物を得た。
【0102】
[例4]
例1と同様にして、脱水処理したオキシアルキレン重合体(A-1)を得た。続いて、得られたオキシアルキレン重合体(A-1)を反応器に4000g仕込み、28質量%ナトリウムメトキシド(NaOMe)メタノール溶液を、オキシアルキレン重合体(A-1)の水酸基1モルあたり、NaOMeが1.05モルとなるように添加し、窒素雰囲気下、130℃で4時間反応させた後、減圧下、130℃で20時間脱揮して、メタノールを留去し、オキシアルキレン重合体(A-1)の水酸基を金属アルコキシドに変換した。
続いて、金属アルコキシドに変換した末端数に対して、過剰量の塩化アリルを添加し、85℃で4時間反応させ、末端がアリルオキシ基であるオキシアルキレン重合体(X1-4)の粗生成物を得た。その後、-0.1MPaGの減圧下、85℃で2時間脱揮し、未反応の塩化アリルを除去した
この粗生成物100質量部に、界面活性剤0.3質量部、及び水5質量部を加え、窒素雰囲気下、液温80℃で撹拌混合して、副生塩であるNaClを水で抽出した。続いて、液温80℃、窒素雰囲気下で、5時間保持して水分を蒸発させ、NaClの結晶を析出させた。析出したNaClの結晶を濾過し、得られた濾液を減圧条件下で脱水して、末端にアリルオキシ基を有するオキシアルキレン重合体(X1-4)を含む生成物を得た。
【0103】
[例5]
例1と同様にして、脱水処理したオキシアルキレン重合体(A-1)を得た。続いて、得られたオキシアルキレン重合体(A-1)を反応器に4000g仕込み、セロキサイド2000 72.6g(オキシアルキレン重合体(A-1)の水酸基1モルあたり1.03モル)を窒素雰囲気下、140℃で5.5時間かけて逐次添加した後、7時間反応させ、末端にビニル基を有するオキシアルキレン重合体(X1-5)を得た。
次いで、28質量%ナトリウムメトキシド(NaOMe)メタノール溶液を、オキシアルキレン重合体(A-1)の水酸基1モルあたり、NaOMeが1.05モルとなるように添加し、窒素雰囲気下、130℃で4時間反応させた後、-0.1MPaGの減圧下、130℃で20時間脱揮して、メタノールを留去し、オキシアルキレン重合体(X1-5)の水酸基を金属アルコキシドに変換した。
続いて、オキシアルキレン重合体(X1-5)の金属アルコキシドに変換された末端に対して、過剰量の塩化アリルを添加して85℃で12時間反応させ、-0.1MPaGの減圧下、85℃で2時間脱揮し、未反応の塩化アリルを除去した。
続いて、例4と同様にして、副生塩であるNaClを水で抽出及びろ過し、水酸基がアリルオキシ基に変換され、末端に炭素-炭素不飽和基を2個有するオキシアルキレン重合体(X2-1)を含む生成物を得た。
【0104】
[例6]
例1と同様にして、脱水処理したオキシアルキレン重合体(A-1)を得た。続いて、得られたオキシアルキレン重合体(A-1)を反応器に4000g仕込み、オキシアルキレン重合体(A-1)の水酸基1モルあたり1.15モルのNaOMeを添加し、窒素雰囲気下、130℃で4時間反応させた後、-0.1MPaGの減圧下、130℃で20時間脱揮して、メタノールを留去し、オキシアルキレン重合体(A-1)の水酸基を金属アルコキシドに変換した。
続いて、オキシアルキレン重合体(A-1)の金属アルコキシドに変換された末端1モルあたり1.05モルのアリルグリシジルエーテルを添加し、130℃で2時間反応させた。さらに、オキシアルキレン重合体(A-1)の金属アルコキシドに変換された末端1モルあたり0.28モルのナトリウムメトキシドを添加し、減圧下でメタノールを留去した。次いで、オキシアルキレン重合体(A-1)の金属アルコキシドに変換された末端に対して、過剰量の塩化アリルを添加して反応させ、末端がアリルオキシ基であるオキシアルキレン重合体(X2-2)の粗生成物を得た。その後、-0.1MPaGの減圧下、85℃で2時間脱揮し、未反応の塩化アリルを除去した。
続いて、例4と同様にして、副生塩であるNaClを水で抽出及びろ過し、末端に炭素-炭素不飽和基を2個有するオキシアルキレン重合体(X2-2)を含む生成物を得た。
【0105】
例1~6で得られたオキシアルキレン重合体(A-1)~(A-3)の平均水酸基数、水酸基価換算分子量、並びにオキシアルキレン重合体(X1-1)~(X1-4)、(X2-1)、及び(X2-2)製造時の脂肪族炭化水素環投入量(オキシアルキレン重合体(A-1)~(A-3)の水酸基1モルに対する脂環式エポキシ化合物(B)投入量を指す。)、及び炭素-炭素不飽和基量の測定結果を表1に示す。なお、例1~3、及び5は実施例であり、例4及び例6は比較例である。
また、表1における「平均水酸基数」には、オキシアルキレン重合体(A)の合成の際にそれぞれ用いた開始剤(プロピレングリコール、n-ブチルアルコール、ソルビトール)の水酸基数が記載されているが、これらの数値がそのままオキシアルキレン重合体(A)の平均水酸基数となる。
【0106】
【表1】
【0107】
[例7]
反応器に、例1で得られたオキシアルキレン重合体(X1-1) 300gを仕込み、塩化白金(IV)酸六水和物の存在下、ジメトキシメチルシラン10.6g(炭素-炭素不飽和基1モルあたり1.85モル)を添加し、85℃で5時間反応させた。その後、-0.1MPaGの減圧下、85℃で2時間脱揮して未反応のジメトキシメチルシランを留去し、前記ビニル基を-CHCH-Si(OCHCHに変換したオキシアルキレン重合体(Y1-1)を含む生成物を得た。
【0108】
[例8]
反応器に、例2で得られたオキシアルキレン重合体(X1-2) 300gを仕込み、塩化白金(IV)酸六水和物の存在下、ジメトキシメチルシラン11.5g(炭素-炭素不飽和基1モルあたり1.50モル)を添加し、85℃で5時間反応させた。その後、-0.1MPaGの減圧下、85℃で2時間脱揮して未反応のジメトキシメチルシランを留去し、前記ビニル基を-CHCH-Si(OCHCHに変換したオキシアルキレン重合体(Y1-2)を含む生成物を得た。
【0109】
[例9]
反応器に、例3で得られたオキシアルキレン重合体(X1-3) 300gを仕込み、塩化白金(IV)酸六水和物の存在下、ジメトキシメチルシラン7.6g(アリル基1モル当たり1.50モル)を添加し、85℃で5時間反応させた。その後、-0.1MPaGの減圧下、85℃で2時間脱揮して未反応のジメトキシメチルシランを留去し、前記ビニル基を-CHCH-Si(OCHCHに変換したオキシアルキレン重合体(Y1-3)を含む生成物を得た。
【0110】
[例10]
丸底フラスコに、例4で得られたオキシアルキレン重合体(X1-4) 300gを仕込み、塩化白金(IV)酸六水和物の存在下、ジメトキシメチルシラン8.8g(アリル基1モルあたり1.85モル)を添加し、85℃で5時間反応させた。その後、-0.1MPaGの減圧下、85℃で2時間脱揮して未反応のジメトキシメチルシランを留去し、前記アリルオキシ基を-O-CHCHCH-Si(OCHCHに変換したオキシアルキレン重合体(Y1-4)を含む生成物を得た。
【0111】
[例11]
反応器に、オキシアルキレン重合体(X2-1) 300gを仕込み、塩化白金(IV)酸六水和物の存在下、ジメトキシメチルシラン8.4g(炭素-炭素不飽和基1モルあたり1.00モル)を添加し、85℃で5時間反応させた。その後、-0.1MPaGの減圧下、85℃で2時間脱揮して未反応のジメトキシメチルシランを留去し、前記オキシアリル基を-O-CHCHCH-Si(OCHCHに変換した変換したオキシアルキレン重合体(Y2-1)を含む生成物を得た。
【0112】
[例12]
反応器に、オキシアルキレン重合体(X2-2) 300gを仕込み、塩化白金(IV)酸六水和物の存在下、ジメトキシメチルシラン8.4g(炭素-炭素不飽和基1モル当たり1.00モル)を添加し、85℃で5時間反応させた。その後、-0.1MPaGの減圧下、85℃で2時間脱揮して未反応のジメトキシメチルシランを留去し、前記オキシアリル基を-O-CHCHCH-Si(OCHCHに変換した変換したオキシアルキレン重合体(Y2-2)を含む生成物を得た。
【0113】
例7~12における、オキシアルキレン重合体(Y1-1)~(Y1-4)、(Y2-1)、及び(Y2-2)の反応性ケイ素基量、反応性ケイ素基導入率、プロペニル基量、及びプロペニル基率を表2に示す。なお、例7~9及び11は実施例であり、例10及び12は比較例である。
【0114】
【表2】
【0115】
表2に示すように、オキシアルキレン重合体(X1-1)~(X1-3)を用いて製造したオキシアルキレン重合体(Y1-1)~(Y1-3)は、オキシアルキレン重合体(X1-4)を用いて製造したオキシアルキレン重合体(Y1-4)に比べ、プロぺニル基率が低く、反応性ケイ素基が高い導入率で導入されていることが分かる。同様に、オキシアルキレン重合体(X2-1)を用いて製造したオキシアルキレン重合体(Y2-1)は、オキシアルキレン重合体(X2-2)を用いて製造したオキシアルキレン重合体(Y2-2)に比べ、プロぺニル基率が低く、反応性ケイ素基が高い導入率で導入されていることが分かる。
末端に有する炭素-炭素不飽和基としてアリルオキシ基を有するオキシアルキレン重合体(X1-4)及び(X2-2)を用いて製造したオキシアルキレン重合体(Y1-4)及び(Y2-2)では、アリル基の二重結合の一部が転移したため、プロぺニル基率が高くなり、反応性ケイ素基の導入率が低下したものと考えられる。