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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167555
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】被加工物の切削方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078831
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲野 力
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA05
5F063BA11
5F063BA33
5F063BA34
5F063BA43
5F063BA45
5F063BA47
5F063CA04
5F063CB05
5F063CB25
5F063CC31
5F063CC43
5F063DD01
5F063DE01
5F063DF06
5F063DF12
5F063EE07
5F063EE09
5F063EE21
5F063FF01
5F063FF05
(57)【要約】
【課題】切削溝を形成した際にデバイスチップ側にチッピングが発生する事を抑制することができる被加工物の切削方法を提供すること。
【解決手段】被加工物の切削方法は、デバイスチップの一端を切削する一端切削ステップ1001と、デバイスチップの他端側の分割予定ラインにおいて、デバイスチップの他端となる位置より離れた位置に、犠牲ラインとなる切削溝を形成する犠牲ライン切削ステップ1002と、犠牲ライン切削ステップの実施後に、デバイスチップの他端を切削する他端切削ステップ1003と、を備え、犠牲ラインと、デバイスチップの他端との間に形成された短冊の幅は、デバイスチップの幅よりも小さく、他端切削ステップ1003において発生するチッピングを、デバイスチップ側ではなく、短冊側に偏って発生させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数のデバイスと、該デバイスを区画する複数の分割予定ラインが形成された被加工物を、切削ブレードで該分割予定ラインに沿って切削し、複数のデバイスチップを生成する被加工物の切削方法であって、
該デバイスチップの一端を切削する一端切削ステップと、
該デバイスチップの他端側の該分割予定ラインにおいて、該デバイスチップの他端となる位置より離れた位置に、犠牲ラインとなる切削溝を形成する犠牲ライン切削ステップと、
該犠牲ライン切削ステップの実施後に、該デバイスチップの他端を切削する他端切削ステップと、を備え、
該犠牲ラインと、該デバイスチップの該他端との間に形成された短冊の幅は、該デバイスチップの幅よりも小さく、
該他端切削ステップにおいて発生するチッピングを、該デバイスチップ側ではなく、該短冊側に偏って発生させることを特徴とする被加工物の切削方法。
【請求項2】
被加工物は、膨張係数の異なる素材が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の被加工物の切削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を切削する被加工物の切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物を複数のデバイスチップに分割する加工方法として、被加工物を切削ブレードで切削する方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-181906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被加工物を複数のデバイスチップに分割する加工方法において、切削ブレードで切削すると被加工物の内部応力が開放され、切削溝の周辺にチッピングがするという問題があった。
【0005】
その際、チッピングが分割予定ライン側ではなくデバイスチップ側に発生してしまうとデバイスチップの品質が悪くなるという問題があった。
【0006】
特に、被加工物が、異なる素材が積層されて形成された積層ワークである場合、素材の違いにより熱などの外的刺激による収縮率や膨張係数が異なり、内部応力が発生し易いため、この問題が顕著であった。
【0007】
本発明の目的は、切削溝を形成した際にデバイスチップ側にチッピングが発生する事を抑制することができる被加工物の切削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の被加工物の切削方法は、表面に複数のデバイスと、該デバイスを区画する複数の分割予定ラインが形成された被加工物を、切削ブレードで該分割予定ラインに沿って切削し、複数のデバイスチップを生成する被加工物の切削方法であって、該デバイスチップの一端を切削する一端切削ステップと、該デバイスチップの他端側の該分割予定ラインにおいて、該デバイスチップの他端となる位置より離れた位置に、犠牲ラインとなる切削溝を形成する犠牲ライン切削ステップと、該犠牲ライン切削ステップの実施後に、該デバイスチップの他端を切削する他端切削ステップと、を備え、該犠牲ラインと、該デバイスチップの該他端との間に形成された短冊の幅は、該デバイスチップの幅よりも小さく、該他端切削ステップにおいて発生するチッピングを、該デバイスチップ側ではなく、該短冊側に偏って発生させることを特徴とする。
【0009】
前記被加工物の切削方法では、被加工物は、膨張係数の異なる素材が積層されても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、切削溝を形成した際にデバイスチップ側にチッピングが発生する事を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る被加工物の切削方法の加工対象の被加工物を模式的に示す平面図である。
図2図2は、図1に示された被加工物の要部を模式的に示す断面図である。
図3図3は、実施形態1に係る被加工物の切削方法の概要を一部断面で模式的に示す側面図である。
図4図4は、従来の被加工物の切削方法の一部を模式的に示す平面図である。
図5図5は、従来の被加工物の切削方法の他の一部を模式的に示す平面図である。
図6図6は、実施形態1に係る被加工物の切削方法の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、図6に示す被加工物の切削方法の1度目の一端切削ステップ後の被加工物を模式的に示す平面図である。
図8図8は、図6に示す被加工物の切削方法の1度目の犠牲ライン切削ステップ後の被加工物を模式的に示す平面図である。
図9図9は、図6に示す被加工物の切削方法の1度目の他端切削ステップ後の被加工物を模式的に示す平面図である。
図10図10は、図9中のX部を拡大して示す平面図である。
図11図11は、図6に示す被加工物の切削方法の2度目の一端切削ステップ後の被加工物を模式的に示す平面図である。
図12図12は、図6に示す被加工物の切削方法の2度目の犠牲ライン切削ステップ後の被加工物を模式的に示す平面図である。
図13図13は、図6に示す被加工物の切削方法の2度目の他端切削ステップ後の被加工物を模式的に示す平面図である。
図14図14は、実施形態2に係る被加工物の切削方法の流れを示すフローチャートである。
図15図15は、図14に示す被加工物の切削方法の一端切削ステップ後の被加工物を模式的に示す平面図である。
図16図16は、図14に示す被加工物の切削方法の犠牲ライン切削ステップ後の被加工物を模式的に示す平面図である。
図17図17は、図14に示す被加工物の切削方法の他端切削ステップ後の被加工物を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る被加工物の切削方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る被加工物の切削方法の加工対象の被加工物を模式的に示す平面図である。図2は、図1に示された被加工物の要部を模式的に示す断面図である。図3は、実施形態1に係る被加工物の切削方法の概要を一部断面で模式的に示す側面図である。図4は、従来の被加工物の切削方法の一部を模式的に示す平面図である。図5は、従来の被加工物の切削方法の他の一部を模式的に示す平面図である。図6は、実施形態1に係る被加工物の切削方法の流れを示すフローチャートである。
【0014】
実施形態1に係る被加工物の切削方法は、図1に示す被加工物1を切削する方法である。実施形態1に係る被加工物の切削方法の加工対象の被加工物1は、円板状の基板を有する半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハである。被加工物1は、表面2の格子状に形成された複数の分割予定ライン3によって区画された各領域にそれぞれデバイス4が形成されている。実施形態1では、被加工物1は、デバイス4の幅14が、分割予定ライン3の幅よりも狭い。
【0015】
デバイス4は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、LED(Light Emitting Diode)又はメモリ(半導体記憶装置)等である。
【0016】
実施形態1において、被加工物1は、図2に示すように、円板状の第1部材5に円板状の第2部材6が接着層7により積層されて構成されている。第1部材5は、例えば、シリコン(Si)、サファイヤ、ガリウムヒ素、SiC(炭化ケイ素)、又は窒化ガリウム等からなる。第2部材6は、第1部材5と膨張係数(熱膨張率、又は熱膨張係数ともいう)の異なる樹脂、金属膜からなる。本発明において、第1部材5と第2部材6との素材はそれぞれこれに限らないが、第2部材6が樹脂や金属であり、第1部材5が半導体材料である場合、特に膨張係数が大きく異なるため、切削溝形成時のチッピングが発生し易く、本発明が特に効果的である。
【0017】
このように、実施形態1において、被加工物1は、互いに膨張係数の異なる第1部材(素材に相当)5と第2部材(素材に相当)6とが積層されて構成されている。被加工物1は、互いに膨張係数の異なる第1部材5と第2部材6とが積層されて構成されている内部応力を生じしている。また、本発明では、第1部材5が、複数の基板が積層されて構成されても良い。
【0018】
また、実施形態1では、分割予定ライン3は、複数の互いに平行な第1分割予定ライン8と、第1分割予定ライン8に対して交差(実施形態1では、交差)する複数の互いに平行な第2分割予定ライン9とを備える。このように、被加工物1は、表面2に複数のデバイス4と、デバイス4を区画する複数の分割予定ライン8,9とが形成されている。なお、本明細書は、第1分割予定ライン8と平行な方向をX軸方向と記載し、第2分割予定ライン9と平行な方向をY軸方向と記載する。
【0019】
実施形態において、被加工物1は、図1に示すように、表面2の裏側の裏面が円板状の粘着テープ10の中央に貼着され、粘着テープ10の外縁部に環状のフレーム11が貼着されて、フレーム11の開口に粘着テープ10を介して支持される。実施形態1では、フレーム11は、環状に形成され、内径が被加工物1の外径よりも大きく形成されている。実施形態1では、粘着テープ10は、外径が被加工物1の外径及び開口の内径よりも大きく、かつフレーム11の外径よりも小さく形成されている。
【0020】
また、実施形態1では、粘着テープ10は、可撓性と非粘着性を有する基材層と、基材層に積層されかつ可撓性と粘着性を有する粘着層とを有する粘着テープでも良く、粘着層を有しない熱可塑性の樹脂で構成されたシートでも良い。粘着性を有さないシートの場合、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリスチレン等の熱可塑性樹脂で構成されるのが好ましく、フレーム11や被加工物1には熱圧着で貼着される。またシートはシートの材料となる粉体や液体を被加工物1の一方の面に供給し、熱圧着や押圧、スピンコートにより被加工物1の一方の面を覆うシート状に成形しても良い。
【0021】
また、実施形態1では、被加工物1は、分割予定ライン8,9に切削が施されて、個々のデバイスチップ12に分割される。なお、デバイスチップ12は、デバイス4と、第1部材5と、第2部材6とを含んでいる。
【0022】
(被加工物の切削方法)
実施形態1に係る被加工物の切削方法は、図3に示すように、切削装置100が被加工物1をチャックテーブル101の保持面102に吸引保持し、チャックテーブル101の周囲に設けられたクランプ部103でフレーム11をクランプした状態で、切削ブレード104を分割予定ライン8,9に粘着テープ10に到達するまで切り込ませる方法である。実施形態1に係る被加工物の切削方法は、被加工物1を切削ブレード104で分割予定ライン8,9に沿って切削し、複数のデバイスチップ12を生成する方法である。即ち、実施形態1では、被加工物の切削方法は、被加工物1を分割予定ライン8,9に沿って所謂フルカットする方法であるが、本発明では、これに限定されることなく、切削ブレード104を被加工物1の厚みの半分よりも深い深さまで切り込ませて、フルカットしない即ち所謂ハーフカットしても良い。
【0023】
実施形態1に係る被加工物の切削方法の発明者は、図4に示すように、X軸方向に沿って並ぶ複数のデバイス4即ちデバイスチップ12のY軸方向の一端121(被加工物1の一端15寄りの端)を切削して、切削溝200を形成すると、切削溝200の内面に生じるチッピング201(欠けともいう)が、切削溝200により分割された被加工物1の短冊1-1,1-2のうちY軸方向の幅が狭い短冊1-1に偏って生じることを発見した。なお、図4は、被加工物1のデバイス4即ちデバイスチップ12のうち被加工物1のY軸方向の最も一端15側のデバイス4即ちデバイスチップ12の一端121を切削した例を記載している。また、実施形態1に係る被加工物の切削方法の発明者は、図4に示すように、複数のデバイス4即ちデバイスチップ12のY軸方向の一端121に切削溝200を形成した後に、図5に示すように、一端121に切削溝200が形成された複数のデバイス4即ちデバイスチップ12のY軸方向の他端122(被加工物1の他端16寄りの端)を切削して、切削溝200を形成すると、切削溝200の内面に生じるチッピング201が、切削溝200により分割された被加工物1の短冊1-3,1-4のうちY軸方向の幅が狭い短冊1-3に偏って生じることを発見した。
【0024】
このように、実施形態1に係る被加工物の切削方法は、本発明の発明者が切削溝200により分割された被加工物1の短冊1-1,1-2,1-3,1-4のうちY軸方向の幅が狭い短冊1-1,1-3に偏ってチッピング201が生じることを発見することにより創作された発明である。なお、切削溝200により分割された被加工物1の短冊1-1,1-2,1-3,1-4のうちY軸方向の幅が狭い短冊1-1,1-3に偏ってチッピング201が生じるのは、膨張係数の違いなどにより発生する被加工物1の内部応力が切削溝200の形成時に開放され、切削溝200により隔てられたそれぞれの短冊1-1,1-2,1-3,1-4がはじかれるが、この際に幅の狭い短冊1-1,1-3の方が、幅の広い方の短冊1-2よりも衝撃を受けて移動しやすいことが原因と推測される。
【0025】
実施形態1に係る被加工物の切削方法は、図3に示す切削装置100により実施される方法である。実施形態1に係る被加工物の切削方法は、切削装置100が、チャックテーブル101に被加工物1を粘着テープ10を介して吸引保持し、クランプ部103でフレーム11をクランプし、第1分割予定ライン8を加工送り方向と平行に位置付け、切削ブレード104と第1分割予定ライン8とを位置合わせするアライメントを遂行した後に実施される。なお、加工送り方向とは、切削装置100が、切削ブレード104を被加工物1に切り込ませて、被加工物1を切削する際に、切削ブレード104をチャックテーブル101に対して相対的に移動させる方向である。
【0026】
実施形態1に係る被加工物の切削方法は、図6に示すように、一端切削ステップ1001と、犠牲ライン切削ステップ1002と、他端切削ステップ1003等を備える。図7は、図6に示す被加工物の切削方法の1度目の一端切削ステップ後の被加工物を模式的に示す平面図である。図8は、図6に示す被加工物の切削方法の1度目の犠牲ライン切削ステップ後の被加工物を模式的に示す平面図である。図9は、図6に示す被加工物の切削方法の1度目の他端切削ステップ後の被加工物を模式的に示す平面図である。図10は、図9中のX部を拡大して示す平面図である。図11は、図6に示す被加工物の切削方法の2度目の一端切削ステップ後の被加工物を模式的に示す平面図である。図12は、図6に示す被加工物の切削方法の2度目の犠牲ライン切削ステップ後の被加工物を模式的に示す平面図である。図13は、図6に示す被加工物の切削方法の2度目の他端切削ステップ後の被加工物を模式的に示す平面図である。
【0027】
一端切削ステップ1001は、デバイス4即ちデバイスチップ12の一端121を切削するステップである。実施形態1において、1度目の一端切削ステップ1001では、切削装置100が複数の第1分割予定ライン8のうちY軸方向の最も被加工物1の一端15側の第1分割予定ライン8(以下、符号8-1と記す)に切削を施す。即ち、実施形態1において、一端切削ステップ1001では、複数の第1分割予定ライン8のうち1本の第1分割予定ライン8-1に切削を施す。なお、図においてはデバイス4の縁とデバイスチップ12の縁とが一致しているが、デバイス4の縁から所定の間隔を空けたところをデバイスチップの縁としても良い。
【0028】
実施形態1において、1度目の一端切削ステップ1001では、Y軸方向の最も一端15側の第1分割予定ライン8-1のX軸方向に沿って並ぶ複数のデバイス4即ちデバイスチップ12のY軸方向の一端121を切削して、切削溝200(以下、符号200-1で示す)を形成する。1度目の一端切削ステップ1001では、図7に示すように、切削溝200-1の内面のうちY軸方向の一端15側にチッピング201が形成される。1度目の一端切削ステップ1001後、1度目の犠牲ライン切削ステップ1002に進む。
【0029】
犠牲ライン切削ステップ1002は、一端切削ステップ1001において一端121に切削溝200-1が形成されたデバイス4即ちデバイスチップ12の他端122側の第1分割予定ライン8において、デバイスチップ12の他端122となる位置より離れた位置に、犠牲ラインとなる切削溝200を形成するステップである。実施形態1において、1度目の犠牲ライン切削ステップ1002では、1度目(即ち、直前)の一端切削ステップ1001においてY軸方向の一端121に切削溝200-1が形成されたデバイス4即ちデバイスチップ12のY軸方向の他端122側の第1分割予定ライン8(以下、符号8-2)に切削を施す。即ち、実施形態1において、犠牲ライン切削ステップ1002では、複数の第1分割予定ライン8のうち1本の第1分割予定ライン8-2に切削を施す。
【0030】
実施形態1において、1度目の犠牲ライン切削ステップ1002では、1度目(即ち、直前)の一端切削ステップ1001においてY軸方向の一端121に切削溝200-1が形成されたデバイス4即ちデバイスチップ12のY軸方向の他端122側の第1分割予定ライン8-2の幅方向の中央を切削して、犠牲ラインとなる切削溝200(以下、符号200-2と記す)を形成する。1度目の犠牲ライン切削ステップ1002では、図8に示すように、1度目の犠牲ライン切削ステップ1002において形成した切削溝200-2の内面のうちY軸方向の一端15側にチッピング201が形成される。1度目の犠牲ライン切削ステップ1002後、1度目の他端切削ステップ1003に進む。
【0031】
他端切削ステップ1003は、犠牲ライン切削ステップ1002の実施後に、一端切削ステップ1001において一端121に切削溝200-1が形成されたデバイス4即ちデバイスチップ12の他端122を切削するステップである。実施形態1において、1度目の他端切削ステップ1003では、1度目(即ち、直前)の一端切削ステップ1001においてY軸方向の一端121に切削溝200-1が形成されたデバイス4即ちデバイスチップ12のY軸方向の他端122側で、かつ1度目(即ち、直前)の犠牲ライン切削ステップ1002において犠牲ラインとなる切削溝200-2が形成された第1分割予定ライン8-2に切削を施す。即ち、実施形態1において、他端切削ステップ1003では、複数の第1分割予定ライン8のうち1本の第1分割予定ライン8-2に切削を施す。
【0032】
実施形態1において、1度目の他端切削ステップ1003では、1度目の一端切削ステップ1001においてY軸方向の一端121に切削溝200-1が形成されたデバイス4即ちデバイスチップ12のY軸方向の他端122を切削して、切削溝200(以下、符号200-3と記す)を形成する。このとき、図9及び図10に示す1度目の犠牲ライン切削ステップ1002において形成された犠牲ラインとなる切削溝200-2と、1度目の他端切削ステップ1003において形成された切削溝200-3との間に形成された短冊13の幅131は、デバイス4即ちデバイスチップ12の幅14よりも小さい。
【0033】
このように、本発明において、犠牲ライン切削ステップ1002において第1分割予定ライン8-2を切削する位置は、犠牲ライン切削ステップ1002において形成された犠牲ラインとなる切削溝200-2と、直後の他端切削ステップ1003において形成された切削溝200-3との間に形成された短冊13の幅131がデバイス4即ちデバイスチップ12の幅14よりも小さくなる位置である。このために、1度目の他端切削ステップ1003では、図9及び図10に示すように、1度目の他端切削ステップ1003において形成した切削溝200-3の内面のうち1度目(即ち、直前)の犠牲ライン切削ステップ1002において形成された犠牲ラインとなる切削溝200-2側にチッピング201が形成される。
【0034】
1度目の他端切削ステップ1003後、切削装置100の制御ユニットが、全ての第1分割予定ライン8に切削を施して、被加工物1の全てのデバイス4即ちデバイスチップ12のY軸方向の両端121,122を切削したか否かを判定する(ステップ1004)。切削装置100の制御ユニットが、全ての第1分割予定ライン8に切削を施していなく、被加工物1の全てのデバイス4即ちデバイスチップ12のY軸方向の両端121,122を切削していないと判定する(ステップ1004:No)と、一端切削ステップ1001に戻る。
【0035】
実施形態1において、2度目の一端切削ステップ1001では、1度目(即ち、前回)の他端切削ステップ1003において切削された第1分割予定ライン8-2に切削を施す。実施形態1において、2度目の一端切削ステップ1001では、1度目(即ち、前回)の他端切削ステップ1003において切削された第1分割予定ライン8-2のX軸方向に沿って並ぶ複数のデバイス4即ちデバイスチップ12のY軸方向の一端121を切削して、切削溝200-1を形成する。2度目の一端切削ステップ1001では、図11に示すように、2度目の一端切削ステップ1001において形成された切削溝200-1の内面のうちY軸方向の一端15側にチッピング201が形成される。2度目の一端切削ステップ1001後、2度目の犠牲ライン切削ステップ1002に進む。
【0036】
実施形態1において、2度目の犠牲ライン切削ステップ1002では、2度目(即ち、直前)の一端切削ステップ1001においてY軸方向の一端121に切削溝200-1が形成されたデバイス4即ちデバイスチップ12の他端122側の第1分割予定ライン8(以下、符号8-3と記す)に切削を施す。実施形態1において、2度目の犠牲ライン切削ステップ1002では、2度目(即ち、直前)の一端切削ステップ1001においてY軸方向の一端121に切削溝200-1が形成されたデバイス4即ちデバイスチップ12の他端122側の第1分割予定ライン8-3の幅方向の中央を切削して、切削溝200-2を形成する。2度目の犠牲ライン切削ステップ1002では、図12に示すように、2度目の犠牲ライン切削ステップ1002において形成した切削溝200-2の内面のうちY軸方向の一端15側にチッピング201が形成される。
【0037】
2度目の犠牲ライン切削ステップ1002後、2度目の他端切削ステップ1003に進む。なお、2度目の犠牲ライン切削ステップ1002において形成する切削溝200-2の位置は、1度目の犠牲ライン切削ステップ1002と同様に、犠牲ライン切削ステップ1002において形成された犠牲ラインとなる切削溝200-2と、直後の他端切削ステップ1003において形成された切削溝200-3との間に形成された短冊13の幅131がデバイス4即ちデバイスチップ12の幅14よりも小さくなる位置である。
【0038】
実施形態1において、2度目の他端切削ステップ1003では、2度目(即ち、直前)の犠牲ライン切削ステップ1002において犠牲ラインとなる切削溝200-2が形成された第1分割予定ライン8-3に切削を施す。実施形態1において、2度目の他端切削ステップ1003では、2度目(即ち、直前)の一端切削ステップ1001においてY軸方向の一端121に切削溝200-1が形成されたデバイス4即ちデバイスチップ12の他端122側の第1分割予定ライン8-3に切削を施す。
【0039】
実施形態1において、2度目の他端切削ステップ1003では、2度目の一端切削ステップ1001においてY軸方向の一端121に切削溝200-1が形成されたデバイス4即ちデバイスチップ12の他端122を切削して、切削溝200-3を形成する。2度目の他端切削ステップ1003では、図13に示すように、2度目の他端切削ステップ1003において形成した切削溝200-3の内面のうち2度目(即ち、直前)の犠牲ライン切削ステップ1002において形成された犠牲ラインとなる切削溝200-2側にチッピング201が形成される。こうして、実施形態1に係る被加工物の切削方法は、他端切削ステップ1003において発生するチッピング201を、デバイスチップ12側の内面ではなく、即ちデバイスチップ12側の内面に発生することを抑制しながらも短冊13側に偏って発生させる。
【0040】
他端切削ステップ1003後、切削装置100の制御ユニットが、全ての第1分割予定ライン8に切削を施して、被加工物1の全てのデバイス4即ちデバイスチップ12のY軸方向の両端121,122を切削したと判定する(ステップ1004:Yes)と、回転ステップ1005に進む。このように、実施形態1に係る被加工物の切削方法は、全てのデバイス4即ちデバイスチップ12のY軸方向の両端121,122に切削溝200-1,200-3を形成するまで、一端切削ステップ1001と、犠牲ライン切削ステップ1002と、他端切削ステップ1003とを繰り返す。また、実施形態1に係る被加工物の切削方法は、Y軸方向の最も一端15側の第1分割予定ライン8-1に一端切削ステップ1001を実施した後、被加工物1のY軸方向の一端15側から他端16側の第1分割予定ライン8に順に、犠牲ライン切削ステップ1002、他端切削ステップ1003及び一端切削ステップ1001を順に施して、被加工物1のY軸方向の一端15側から他端16側に向けて順に、全てのデバイス4即ちデバイスチップ12のY軸方向の一端121に切削溝200-1を形成し、分割予定ライン8の中央に切削溝200-2を形成した後、全てのデバイス4即ちデバイスチップ12のY軸方向の他端122に切削溝200-3を形成する。このように、実施形態1に係る被加工物の切削方法は、X軸方向に並ぶ複数のデバイス4即ちデバイスチップ12のY軸方向の一端121、第1分割予定ライン8の中央、他端122を、被加工物1のY軸方向の一端15側から他端16側に向けて順に切削する。
【0041】
回転ステップ1005は、被加工物1を吸引保持したチャックテーブル101と、切削ブレード104とをチャックテーブル101の保持面102の軸心回りに相対的に90度回転するステップである。実施形態1において、回転ステップ1005では、切削装置100が、チャックテーブル101を軸心回りに90度回転する。回転ステップ1005後、第2分割予定ライン切削ステップ1006に進む。
【0042】
第2分割予定ライン切削ステップ1006は、第2分割予定ライン9を切削するステップである。実施形態1において、第2分割予定ライン切削ステップ1006では、Y軸方向に並ぶ複数のデバイス4即ちデバイスチップ12のX軸方向の両端を、被加工物1のX軸方向の一端側から他端側に向けて順に切削して、被加工物1を個々のデバイス4即ちデバイスチップ12に分割して、複数のデバイスチップ12を生成する。
【0043】
本発明の発明者は、切削溝200により分割された被加工物1の短冊1-1,1-2,1-3,1-4のうち切削溝200に対して直交する方向の幅が狭い短冊1-1,1-3に偏ってチッピング201が生じることを発見することを発見した。
【0044】
従いまして、以上説明した実施形態1に係る被加工物の切削方法は、デバイスチップ12の一端121を切削した後、デバイスチップ12の他端122を切削する前に、他端122側の第1分割予定ライン8内に、犠牲ラインとなる切削溝200-2を先に形成し、デバイスチップ12の幅14より犠牲ラインとなる切削溝200-2と他端122との間の短冊13の幅131を小さくする。これにより、実施形態1に係る被加工物の切削方法は、デバイスチップ12ではなく短冊13にチッピング201を発生させる事ができる。その結果、実施形態1に係る被加工物の切削方法は、切削溝200-1,200-3を形成した際にデバイス4即ちデバイスチップ12側の内面にチッピング201が発生する事を抑制することができるという効果を奏する。このように、実施形態1に係る被加工物の切削方法は、デバイスチップ12の一端121を切削した後、デバイスチップ12の他端122を切削する前に、他端122側の第1分割予定ライン8内にデバイスチップ12の幅14よりも幅131が狭い短冊13を形成することで、切削溝200-3のデバイスチップ12側の内面にチッピング201を発生することを抑制した発明である。
【0045】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る被加工物の切削方法を図面に基づいて説明する。図14は、実施形態2に係る被加工物の切削方法の流れを示すフローチャートである。図15は、図14に示す被加工物の切削方法の一端切削ステップ後の被加工物を模式的に示す平面図である。図16は、図14に示す被加工物の切削方法の犠牲ライン切削ステップ後の被加工物を模式的に示す平面図である。図17は、図14に示す被加工物の切削方法の他端切削ステップ後の被加工物を模式的に示す平面図である。なお、図14図15図16及び図17において、実施形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
実施形態2に係る被加工物の切削方法は、図14に示すように、一端切削ステップ1001-2と、犠牲ライン切削ステップ1002-2と、他端切削ステップ1003-2と、回転ステップ1005と、第2分割予定ライン切削ステップ1006とを備える。実施形態2に係る被加工物の切削方法は、一端切削ステップ1001-2、犠牲ライン切削ステップ1002-2及び他端切削ステップ1003-2が異なり、ステップ1004を実施しない事以外、実施形態1と同じである。
【0047】
実施形態2において、一端切削ステップ1001-2では、X軸方向に並ぶ複数のデバイス4即ちデバイスチップ12のうちY軸方向の最も一端15側のデバイス4即ちデバイスチップ12の一端121を切削した後、Y軸方向の一端15側から他端16側に向けて順に、デバイス4即ちデバイスチップ12の一端121を切削する。実施形態2において、一端切削ステップ1001-2では、Y軸方向の一端15側から他端16側に向けて順に、デバイス4即ちデバイスチップ12の一端121を切削して、図15に示すように、全てのデバイス4即ちデバイスチップ12のY軸方向の一端121を切削し、切削溝200-1を形成する。一端切削ステップ1001-2後の被加工物1は、実施形態1と同様に、切削溝200-1の内面の一端15側にチッピング201が形成される。
【0048】
実施形態2において、犠牲ライン切削ステップ1002-2では、デバイスチップ12のうちY軸方向の最も一端15側の第1分割予定ライン8-1を除いて、Y軸方向の一端15側から他端16側に向けて順に、第1分割予定ライン8の幅方向の中央を切削する。実施形態2において、犠牲ライン切削ステップ1002-2では、最もY軸方向の一端15側の第1分割予定ライン8-1を除いて、Y軸方向の一端15側から他端16側に向けて順に第1分割予定ライン8の幅方向の中央を切削して、図16に示すように、最もY軸方向の一端15側の第1分割予定ライン8-1を除いた全ての第1分割予定ライン8の幅方向の中央に切削溝200-2する。なお、実施形態2において、犠牲ライン切削ステップ1002-2において形成する切削溝200-2の位置は、実施形態1と同様に、犠牲ライン切削ステップ1002-2において形成された犠牲ラインとなる切削溝200-2と、他端切削ステップ1003-2において形成された切削溝200-3のうち最も近接する切削溝200-3との間に形成された短冊13の幅131がデバイス4即ちデバイスチップ12の幅14よりも小さくなる位置である。犠牲ライン切削ステップ1002-2後の被加工物1は、実施形態1と同様に、切削溝200-2の内面の一端15側にチッピング201が形成される。
【0049】
実施形態2において、他端切削ステップ1003-2では、X軸方向に並ぶ複数のデバイス4即ちデバイスチップ12のうちY軸方向の最も一端15側のデバイス4即ちデバイスチップ12の他端122を切削した後、Y軸方向の一端15側から他端16側に向けて順に、デバイス4即ちデバイスチップ12の他端122を切削する。実施形態2において、他端切削ステップ1003では、Y軸方向の一端15側から他端16側に向けて順に、デバイス4即ちデバイスチップ12の他端122を切削して、図17に示すように、全てのデバイス4即ちデバイスチップ12のY軸方向の他端122を切削し、切削溝200-3を形成する。他端切削ステップ1003-2後の被加工物1は、実施形態1と同様に、切削溝200-3の内面の最も近接する切削溝200-2側にチッピング201が形成される。こうして、実施形態2に係る被加工物の切削方法は、他端切削ステップ1003-2において発生するチッピング201を、デバイスチップ12側の内面ではなく、即ちデバイスチップ12側の内面に発生することを抑制しながらも短冊13側に偏って発生させる。
【0050】
実施形態2に係る被加工物の切削方法は、デバイスチップ12の一端121を切削した後、デバイスチップ12の他端122を切削する前に、他端122側の第1分割予定ライン8内に犠牲ラインとなる切削溝200-2を先に形成し、デバイスチップ12の幅14より犠牲ラインとなる切削溝200-2と他端122との間の短冊13の幅131を小さくするので、実施形態1と同様に、切削溝200-1,200-3を形成した際にデバイス4即ちデバイスチップ12側の内面にチッピング201が発生する事を抑制することができるという効果を奏する。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。なお、前述した実施形態1及び実施形態2では、第2分割予定ライン切削ステップ1006においてY軸方向に並ぶ複数のデバイス4即ちデバイスチップ12のX軸方向の両端121,122を切削したが、本発明では、第2分割予定ライン切削ステップ1006において、実施形態1又は実施形態2に記載された一端切削ステップ1001,1001-2、犠牲ライン切削ステップ1002,1002-2及び他端切削ステップ1003,1003-2を実施してもよい。即ち、本発明では、第2分割予定ライン切削ステップ1006において、Y軸方向に並ぶ複数のデバイス4即ちデバイスチップ12のX軸方向の一端、第2分割予定ライン9の中央、他端を、被加工物1のX軸方向の一端側から他端側に向けて順に切削して、被加工物1を個々のデバイス4即ちデバイスチップ12に分割して、複数のデバイスチップ12を生成しても良い。また実施形態1,2において、犠牲ライン切削ステップ1002,1002-2は分割予定ライン8,9の中央を切削したが、犠牲ラインとなる切削溝200-2と他端122との幅がデバイスチップ12の幅14よりも小さくなれば、犠牲ラインとなる切削溝200-2の位置は分割予定ライン8,9の幅の範囲内でどこに形成しても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 被加工物
2 表面
3 分割予定ライン
4 デバイス
5 第1部材(素材)
6 第2部材(素材)
8 第1分割予定ライン(分割予定ライン)
9 第2分割予定ライン(分割予定ライン)
12 デバイスチップ
13 短冊
14 幅
121 一端
122 他端
131 幅
200-2 切削溝
201 チッピング
1001,1001-2 一端切削ステップ
1002,1002-2 犠牲ライン切削ステップ
1003,1003-2 他端切削ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図17