IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特開-加工装置 図1
  • 特開-加工装置 図2
  • 特開-加工装置 図3
  • 特開-加工装置 図4
  • 特開-加工装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167564
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231116BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20231116BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20231116BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H01L21/304 631
B24B7/04 A
B24B55/06
B23Q11/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078844
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大
【テーマコード(参考)】
3C011
3C043
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C011BB11
3C043BA04
3C043BA09
3C043BA16
3C043CC04
3C043CC11
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
3C043DD14
3C047FF04
3C047FF19
3C047HH15
5F057AA21
5F057CA14
5F057DA11
5F057DA38
5F057FA36
(57)【要約】
【課題】洗浄排水を利用して加工室の内壁を洗浄することによって節水と節電を図ること。
【解決手段】保持面10aでウェーハWを保持するチャックテーブル10と、保持面10aに保持されたウェーハWを回転する砥石(加工具)25b,35bで加工する研削ユニット(加工手段)20,30と、チャックテーブル10と砥石25b,35bを収容する加工室S1,S2と、砥石25b,35bに研削水(加工液)を供給する研削水供給手段(加工液供給手段)40と、洗浄水でウェーハWまたはチャックテーブル10の保持面10aを洗浄する洗浄ユニット60,80とを備える研削装置(加工装置)1において、洗浄ユニット60,80でウェーハWまたはチャックテーブル10の保持面10aを洗浄した後の洗浄排水を吸水して加工室S1,S2の内壁を洗浄する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面でウェーハを保持するチャックテーブルと、該保持面に保持されたウェーハを回転する加工具で加工する加工手段と、該チャックテーブルと該加工具を収容する加工室と、該加工具に加工液を供給する加工液供給手段と、洗浄水でウェーハまたは該チャックテーブルの保持面を洗浄する洗浄ユニットと、を備える加工装置であって、
該洗浄ユニットでウェーハまたは該チャックテーブルの該保持面を洗浄した後の洗浄排水を吸水して該加工室の内壁を洗浄する、加工装置。
【請求項2】
該洗浄ユニットは、洗浄水でウェーハを洗浄するウェーハ洗浄機構または洗浄水で該保持面を洗浄する保持面洗浄機構と、洗浄排水を溜める貯留部と、該貯留部の洗浄排水を吸水して該加工室の内壁に噴射する噴射機構と、該噴射機構を制御する制御部と、を備え、
該噴射機構は、エア供給源と、該エア供給源からのエアを流す流路と、該流路に一端を合流させる吸水路と、を備え、
該吸水路は、一端が該貯留部に吸水口として開口し、
該流路は、一端がエア供給源に連通し、他端の噴射口が該加工室に連通し、該吸水路の他端が合流する部分にベルヌーイ効果によって負圧を発生させる負圧発生部を備え、
該制御部は、該流路へのエアの流れを制御し、
該流路を流れるエアの流速によって該負圧発生部に負圧を発生させ、この負圧によって該吸水口から該貯留部の洗浄排水を吸引し、該噴射口から洗浄排水とエアとの二流体を該加工室の内壁に噴射して該内壁を洗浄する、請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
該ウェーハ洗浄機構は、該加工室の外でウェーハの上面に洗浄水を供給するウェーハ洗浄水供給部と、ウェーハの上面を洗浄するウェーハ洗浄具とを備える請求項2記載の加工装置。
【請求項4】
該保持面洗浄機構は、該加工室の外で該チャックテーブルの該保持面に洗浄水を供給する保持面洗浄水供給部と、該保持面を洗浄する保持面洗浄具とを備える請求項2記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルに保持されたウェーハなどの被加工物を加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子機器に用いられるICやLSIなどの半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイスの小型化と軽量化のために、ウェーハの裏面が研削装置によって研削されて該ウェーハが所定の厚みまで薄肉化されている。特に、近年は電子機器の薄型化や小型化などの要求に応えるため、半導体デバイスを薄く形成することが求められている。
【0003】
ここで、ウェーハの研削装置は、保持面でウェーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルの保持面に保持されたウェーハを加工具である砥石によって研削加工する研削ユニットと、チャックテーブルと砥石を収容する加工室と、砥石に加工液である研削水を供給する研削水供給手段と、洗浄水でウェーハまたはチャックテーブルの保持面を洗浄する洗浄ユニットを備えている。このような研削装置においては、チャックテーブルの保持面に保持されたウェーハの上面に回転する砥石を当接させることによって、該ウェーハの上面が砥石によって研削されるが、例えば、特許文献1には、チャックテーブルの吸引経路を介してエアと水との二流体を保持面から噴出させて該保持面を内側から洗浄する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-034609号公報
【特許文献2】特開2015-036162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ウェーハの研削装置においては、チャックテーブルと砥石は加工室内に収容されており、研削加工中の加工室内は、研削水の供給を受けながら回転する砥石によるウェーハの研削によって、研削屑を含む研削水の噴霧が飛散している。このため、研削屑を含む研削水の噴霧が加工室の内壁(特に、側板と上板の内壁)に付着する。
【0006】
また、加工室内には、砥石の回転によって気流が形成され、加工室の内壁に付着した噴霧の水分が気流によって乾燥し、加工室の内壁に研削屑が固着する。そして、ウェーハを連続的に研削することによって、固着した研削屑が次第に大きくなり、研削加工によって加工室が振動すると、大きくなった研削屑がウェーハの上面に落下することがある。
【0007】
上述のように加工室の内壁に固着していた研削屑がウェーハの上面に落下すると、この落下した研削屑がウェーハと砥石との間に入り込み、ウェーハの上面に深い傷を形成することがある。そして、この深い傷のために、所定の厚みに研削されたウェーハの上面には、砥石による研削模様とは異なる傷が形成され、この傷がデバイスに悪影響を及ぼすという問題がある。
【0008】
そこで、加工室の内壁を洗浄するために、例えば、特許文献2には、スピンドルの上部からスピンドル内を通過して砥石に洗浄水を供給する洗浄水供給部を設け、この洗浄水供給部から供給される洗浄水を砥石の回転による遠心力によって加工室内壁に向かって洗浄水を飛散させるようにしている。
【0009】
しかしながら、上述のように加工室の内壁を洗浄するために洗浄水を飛散させると、洗浄水が無駄に消費される。また、加工室内壁に向かって洗浄水を飛散させるために砥石を回転させる必要があるために無駄な電力を消費するという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、洗浄排水を利用して加工室の内壁を洗浄することによって節水と節電を図ることができる加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、保持面でウェーハを保持するチャックテーブルと、該保持面に保持されたウェーハを回転する加工具で加工する加工手段と、該チャックテーブルと該加工具を収容する加工室と、該加工具に加工液を供給する加工液供給手段と、洗浄水でウェーハまたは該チャックテーブルの保持面を洗浄する洗浄ユニットと、を備える加工装置であって、該洗浄ユニットでウェーハまたは該チャックテーブルの保持面を洗浄した後の洗浄排水を吸水して該加工室の内壁を洗浄することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、洗浄ユニットにおいてウェーハの洗浄またはチャックテーブルの保持面の洗浄に供された後の洗浄排水を吸引して加工室へと供給し、この洗浄排水によって加工室の内壁を洗浄するようにしたため、加工室の内壁を洗浄するためだけの洗浄水を用いることなく、洗浄排水を有効に利用することによって節水を図ることができる。また、加工室の内壁を洗浄する際には、チャックテーブルを回転させる必要がないために不要な電力の消費がなくなり、節電も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る加工装置(研削装置)の一部を破断して示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る加工装置(研削装置)の第2洗浄ユニットの破断側面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る加工装置(研削装置)の一部を破断して示す斜視図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る加工装置(研削装置)の第1洗浄ユニットの斜視図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る加工装置(研削装置)の各チャックテーブルの保持面への洗浄水の供給経路を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係る加工装置の一形態としてのウェーハの研削装置の構成を図1に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、図1に示す矢印方向をそれぞれX軸方向(左右方向)、Y軸方向(前後方向)、Z軸方向(上下方向)とする。
【0015】
[研削装置の構成]
図1に示す研削装置1は、被研削物である円板状のウェーハW(図2参照)を研削加工する装置であって、回転可能な円盤状のターンテーブル2上に配置された3つのチャックテーブル10と、チャックテーブル10上に保持されたウェーハWを研削する加工手段である粗研削ユニット20及び仕上げ研削ユニット30と、粗研削領域R2と仕上げ研削領域R3に位置するチャックテーブル10と砥石25b,35bなどをそれぞれ収容する加工室S1,S2と、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30の各砥石25b,35bに加工液である研削水をそれぞれ供給する研削水供給手段(加工液供給手段)40と、研削加工中のウェーハWの厚みを測定するウェーハ厚み測定器50,51と、ウェーハ搬出入領域R1に位置するチャックテーブル10の保持面10aと研削加工前のウェーハWを洗浄する第1洗浄ユニット60と、仕上げ研削後のウェーハWの上面(被研磨面)を洗浄する第2洗浄ユニット80と、ウェーハWを搬送する搬送ユニット100を主要な構成要素として備えている。
【0016】
ここで、ウェーハWは、薄い円板状の部材であって、単結晶のシリコン母材で構成されており、図2に示す状態において下方を向いている表面には、複数の不図示のデバイスが形成されている。なお、これらのデバイスは、ウェーハWの表面に貼着された保護テープT(図2参照)によって保護されている。そして、ウェーハWは、その表面が保護テープTを介してチャックテーブル10に吸引保持されており、その裏面(図2においては上面)が当該研削装置1によって研削される。
【0017】
次に、研削装置1の主要な構成要素であるチャックテーブル10、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30、加工室S1,S2、研削水供給手段40、ウェーハ厚み測定器50,51、第1洗浄ユニット60、第2洗浄ユニット80及び搬送ユニット100の構成についてそれぞれ説明する。
【0018】
(チャックテーブル)
3つのチャックテーブル10は、円板状の部材であって、Z軸方向に垂直な中心軸回りに間欠的に回転するターンテーブル2上に周方向に等角度ピッチ(120°ピッチ)で配置されている。そして、これらのチャックテーブル10は、ターンテーブル2の間欠的な回転によって該ターンテーブル2のZ軸方向に垂直な軸中心回りに角度120度ずつ公転してウェーハ搬出入領域R1と粗研削領域R2及び仕上げ研削領域R3の間を順次移動するとともに、不図示の回転駆動機構によってZ軸方向の垂直な軸中心回りに所定の速度で自転する。
【0019】
また、各チャックテーブル10は、多孔質のセラミックなどで構成された円板状のポーラス部材10Aが中央部にそれぞれ組み込まれており、各ポーラス部材10Aの上面は、円板状のウェーハWを吸引保持する保持面10aを構成している。
【0020】
(粗研削ユニット及び仕上げ研削ユニット)
粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30は、Y軸方向(前後方向)に長い矩形ボックス状のベース200の+Y軸方向端部(後端部)にX軸方向(左右方向)に沿って垂直に配置されている。ここで、粗研削ユニット20は、粗研削領域R2に位置するチャックテーブル10の保持面10aに保持されたウェーハWの上面(被研削面)を粗研削するユニットであり、仕上げ研削ユニット30は、仕上げ研削領域R3に位置するチャックテーブル10の保持面10aに保持されたウェーハWの上面(被研削面)を仕上げ研削するユニットであって、両者の基本構成は同じである。
【0021】
すなわち、粗研削ユニット20は、ホルダ21に固定されたスピンドルモータ22と、該スピンドルモータ22によって回転駆動される垂直なスピンドル23と、該スピンドル23の下端に取り付けられた円板状のマウント24と、該マウント24の下面に着脱可能に装着された研削ホイール25とを備えている。ここで、研削ホイール25は、円板状の基台25aと、該基台25aの下面に円環状に取り付けられた加工具である複数の砥石25bによって構成されている。
【0022】
また、仕上げ研削ユニット30も粗研削ユニット20と同様に、ホルダ31に固定されたスピンドルモータ32と、該スピンドルモータ32によって回転駆動される垂直なスピンドル33と、該スピンドル33の下端に取り付けられた円板状のマウント34と、該マウント34の下面に着脱可能に装着された研削ホイール35とを備えている。ここで、研削ホイール35は、円板状の基台35aと、該基台35aの下面に円環状に取り付けられた加工具である複数の砥石35bによって構成されているが、これらの砥石35bは、粗研削ユニット20の砥石25bよりも細かい砥粒によって構成されている。
【0023】
ところで、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30は、ベース200の+Y軸方向端部(後端部)にX軸方向(左右方向)に沿って垂直に立設された一対のブロック状のコラム201の各-Y軸方向端面(前面)にそれぞれ設けられた昇降機構3によって昇降可能に支持されている。ここで、両昇降機構3の構成は同じであるため、以下、対応する構成要素には同一符号を付して説明する。
【0024】
各昇降機構3は、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30をそれぞれZ軸方向(上下方向)に沿って昇降動させるものであって、矩形プレート状の昇降板4と、該昇降板4の昇降動をガイドするための左右一対のガイドレール5をそれぞれ備えている。ここで、各昇降板4には、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30がそれぞれ取り付けられている。また、左右一対のガイドレール5は、コラム201の前面に垂直且つ互いに平行に配設されている。
【0025】
そして、左右一対のガイドレール5の間には、回転可能なボールネジ軸6がZ軸方向(上下方向)に沿って垂直に立設されており、該ボールネジ軸6の上端は、駆動源である正逆転可能な電動モータ7に連結されている。また、ボールネジ軸6の下端は、不図示の軸受によってコラム201に回転可能に支持されており、このボールネジ軸6には、昇降板4の背面に後方(+Y軸方向)に向かって水平に突設された不図示のナット部材が螺合している。
【0026】
したがって、以上のように構成された各昇降機構3の電動モータ7を起動して各ボールネジ軸6を正逆転させると、各ボールネジ軸6に螺合する不図示のナット部材が突設された各昇降板4が左右一対のガイドレール5に沿って昇降するため、該昇降板4に取り付けられた粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30もそれぞれZ軸方向(上下方向)に沿って互いに独立して昇降動する。
【0027】
(加工室)
粗研削領域R2に位置するチャックテーブル10とこれに保持されたウェーハW及び該ウェーハWを研削する砥石25b(研削ホイール25)を収容する一方の加工室S1は、矩形ボックス状のカバー8によって画成されており、カバー8の側板の一部には、ターンテーブル2とチャックテーブル10が通過する矩形の開口部8aが形成されている。また、カバー8の上板には、研削ホイール25が上方から貫通するための円孔8bが形成されている。
【0028】
同様に、仕上げ研削領域R3に位置するチャックテーブル10とこれに保持されたウェーハW及び該ウェーハWを研削する砥石35b(研削ホイール35)を収容する他方の加工室S2は、矩形ボックス状のカバー9によって画成されており、カバー9の側板の一部には、ターンテーブル2とチャックテーブル10が通過する矩形の開口部9aが形成されている。また、カバー9の上板には、研削ホイール35が上方から貫通するための円孔9bが形成されている。
【0029】
(研削水供給手段)
研削水供給手段40は、研削加工中に粗研削ユニット20の砥石25bと仕上げ研削ユニット30の砥石35bに加工液である研削水をそれぞれ供給するものである。この研削水供給手段40は、研削水供給源41から研削水を粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30の各スピンドルモータ22,32と各スピンドル23,33の軸中心を通って各研削ホイール25,35の各砥石25b,35bにそれぞれ供給する。すると、各研削砥石25b,35bと各ウェーハWとの接触面が研削水によってそれぞれ冷却される。なお、研削水には、純水が好適に用いられる。
【0030】
(ウェーハ厚み測定器)
一方のウェーハ厚み測定器50は、粗研削加工中のウェーハWの厚みを測定するものであり、他方のウェーハ厚み測定器51は、仕上げ研削中のウェーハWの厚みを測定するものである。すなわち、一方の厚み測定器50は、ウェーハWの上面高さからチャックテーブル10の上面高さを差し引くことによって粗研削中のウェーハWの厚みを求め、他方の厚み測定器51は、ウェーハWの上面高さからチャックテーブル10の上面高さを差し引くことによって仕上げ研削中のウェーハWの厚みを求める。
【0031】
(第1洗浄ユニット)
第1洗浄ユニット60は、ウェーハ搬出入領域R1に位置するチャックテーブル10の保持面10aに保持された研削加工前のウェーハWと、研削加工後のウェーハWが取り外されたチャックテーブル10の保持面10aを洗浄するユニットであるが、これについては本発明の第2実施形態において図4に基づいて後述するため、ここでの説明は省略する。
【0032】
(第2洗浄ユニット)
第2洗浄ユニット80は、仕上げ研削ユニット30によって仕上げ研削されたウェーハWを洗浄してその被研削面(上面)に付着した研削屑などを除去するものであって、仕上げ研削加工後のウェーハWを保持して回転するスピンナテーブル81と、ウェーハWの被研削面に向けて洗浄水(純水)を噴射するノズル82を含んで構成されている。
【0033】
ここで、第2洗浄ユニット80の構成の詳細を図2に基づいて説明する。
【0034】
図2に示すように、第2洗浄ユニット80には、スピンナテーブル81をその垂直な中心軸回りに所定の速度で回転させる電動モータ83と、スピンナテーブル81(ウェーハW)の上方に配置されたノズル82をウェーハWの上方で該ウェーハWの径方向(図2の左右方向)に移動させるノズル移動手段84と、該ノズル移動手段84などの動作を制御する制御部85を主要な構成要素として備えている。なお、スピンナテーブル81とノズル82及びノズル移動手段84の一部は、上方が開口する有底多角筒状のケース86内に収容されている。
【0035】
スピンナテーブル81は、円板状の部材であって、その中央部には、多孔質のセラミックなどで構成された円板状のポーラス部材81Aが組み込まれている。そして、ポーラス部材81Aは、その上面が保護テープTを介してウェーハWを吸引保持する保持面81aを構成している。
【0036】
ここで、ポーラス部材81Aには、真空ポンプなどの吸引源87とエアコンプレッサなどのエア供給源88がそれぞれ接続されている。具体的には、スピンナテーブル81の軸中心には連通路11が垂直に形成されており、この連通路11からは複数(図2には、2つのみ図示)の水平な連通路12が径方向外方に向かって放射状に延びている。そして、各連通路12の外端部からは連通路13が上方に向かってそれぞれ垂直に延びており、各連通路13は、ポーラス部材81Aの下面にそれぞれ開口している。
【0037】
また、スピンナテーブル81の回転軸89とロータリジョイント90の各軸中心には連通路14が垂直に形成されており、この連通路14の上端は、連通路11に連通している。そして、連通路14の下端は、ロータリジョイント90に径方向に沿って水平に形成された連通路15に接続されており、連通路15には、配管16が接続されている。
【0038】
上記配管16からは、2本の分岐管16a,16bがそれぞれ分岐しており、一方の分岐管16aには流量調整用の可変オリフィス17と電磁開閉弁V1を介して前記吸引源87が接続されている。また、他方の分岐管16bには、流量調整用の可変オリフィス18と電磁開閉弁V2を介して前記エア供給源88が接続されている。そして、電磁開閉弁V1,V2は、制御部85にそれぞれ電気的に接続されており、その開閉動作が制御部85によって制御される。なお、配管16の両分岐管16a,16bの間には、圧力計19が接続されている。
【0039】
ところで、スピンナテーブル81は、その下方に設けられた電動モータ83によってその垂直な中心軸回りに所定の速度(本実施の形態では、800rpm)で回転駆動されるが、電動モータ83からロータリジョイント90を経て垂直上方に延びる回転軸89は、ケース86の底部を貫通して該ケース86内に臨んでおり、その上端にスピンナテーブル81が水平に取り付けられている。
【0040】
また、電動モータ83の下部には、該電動モータ83の回転速度や回転角、回転方向などを検出するエンコーダ91が設けられており、このエンコーダ91と電動モータ83は、制御部85に電気的に接続されている。ここで、エンコーダ91からの検出信号は、制御部85へと送信され、制御部85は、エンコーダ91からの検出信号を受信して電動モータ83の駆動を制御する。
【0041】
そして、スピンナテーブル81に保持されたウェーハWの上方には、ウェーハWの上面(裏面)に向かって洗浄水を噴出する前記ノズル82が設けられており、このノズル82には、ウォータポンプなどの水源92が接続されている。
【0042】
前記ノズル移動手段84は、ノズル82をウェーハWの上方で該ウェーハWの径方向(図2の左右方向)に沿って水平(スピンナテーブル81の保持面81aに対して平行)に移動させる機構であって、これには回転駆動源である電動モータ93が備えられている。この電動モータ93から垂直上方に向かって延びる出力軸(モータ軸)93aに連結された回転軸94は、ケース86の底部を貫通して該ケース86内に臨んでおり、その上端には、水平に配置された旋回アーム95の軸方向一端が取り付けられている。そして、旋回アーム95の軸方向他端(先端)には、ノズル82がその噴射口が垂直下方を向くように取り付けられている。
【0043】
ここで、ケース86の底部には、回転軸89,94が貫通する円孔状の貫通孔86a,86bがそれぞれ形成されており、各貫通孔86a,86bの周縁には円筒状の凸部86A,86Bがそれぞれ上方に向かって突設されている。また、各回転軸89,94の外周には、各凸部86A,86Bを外周側から覆う有底円筒状(逆皿状)のシール部材96,97がそれぞれ嵌着されており、これらのシール部材96,97と凸部86A,86Bは、ラビリンスシール構造を構成してケース86の底部の回転軸89,94が貫通する部分のシール性を高めている。
【0044】
また、電動モータ93の下部には、該電動モータ93の回転速度や回転角、回転方向などを検出するエンコーダ98が設けられており、このエンコーダ98と電動モータ93は、制御部85に電気的に接続されている。ここで、エンコーダ98からの検出信号は、制御部85へと送信され、制御部85は、エンコーダ98からの検出信号を受信して電動モータ93の駆動を制御する。
【0045】
以上のように構成されたノズル移動手段84において、電動モータ93が起動されて回転軸94が所定角度だけ回動すると、この回転軸94の上端に取り付けられた旋回アーム95が水平旋回し、該旋回アーム95の先端に取り付けられたノズル82がウェーハWの上方を水平旋回し、ウェーハWの中心から外周部へと円弧を描きながらウェーハWの径方向に移動する。
【0046】
ところで、本実施の形態に係る研削装置1においては、ノズル82から噴射されてウェーハWの洗浄に供された後の洗浄排水を吸水して図1に示す加工室S1,S2の各内壁を該洗浄排水によってそれぞれ洗浄する方式が採用されており、これを実現するために以下に説明する構成が採用されている。
【0047】
すなわち、図2に示すように、第2洗浄ユニット80のケース86の底部には、ウェーハWの洗浄に供された後の洗浄排水を溜める貯留部42と、該貯留部42に貯留された洗浄排水を吸水して図1に示す加工室S1,S2の各内壁にそれぞれ噴射する噴射機構43と、該噴射機構43を制御する前記制御部85が設けられている。なお、貯留部42の底部には排水口42aが形成されており、この排水口42aは、通常は着脱可能な栓42Aによって閉じられている。
【0048】
上記噴射機構43は、エアコンプレッサなどのエア供給源44と、該エア供給源44から供給されるエアの流れによって負圧を発生させるエジェクタ45を備えている。ここで、エジェクタ45に形成された流路46の一端に開口する吸入口46aは、エア配管47によってエア供給源44に接続されており、エア配管47には、電磁開閉弁V3が設けられている。なお、エア供給源44と電磁開閉弁V3は、制御部85にそれぞれ電気的に接続されており、その動作が制御部85によって制御される。
【0049】
また、エジェクタ45の流路46の他端に開口する噴射口46bは、二流体配管48を経て加工室S1,S2内にそれぞれ設けられた不図示のノズルに接続されている。そして、流路46のエア流れ方向中間部には、エアの流れを絞るスロート部(絞り部)46Aが形成されており、このスロート部46Aは、ベルヌーイ効果によって負圧を発生させる負圧発生部を構成している。
【0050】
さらに、エジェクタ45の流路46に形成されたスロート部46Aには、ケース86の貯留部42から延びる吸水路49の一端が開口しており、吸水路49の他端は、ケース86の貯留部42に吸水口49aとして開口している。
【0051】
(搬送ユニット)
本実施の形態に係る研削装置1においては、図1に示すように、ベース200の前端側(-Y軸方向端部)には、研削加工前の複数のウェーハWを収納するカセット101と、研削加工後のウェーハWを収納するカセット102が配置されている。ここで、搬送ユニット100は、カセット101に対してウェーハWを出し入れするとともに、カセット101から取り出したウェーハWを位置合わせテーブル103へと搬送する搬出入手段104と、位置合わせテーブル103において位置決めされたウェーハWをウェーハ搬出入領域R1に位置するチャックテーブル10へと搬送する第1搬送手段105と、仕上げ研削ユニット30によって仕上げ研削されたウェーハWを仕上げ研削領域R3に位置するチャックテーブル10から取り出して第2洗浄ユニット80へと搬送する第2搬送手段106を備えている。
【0052】
[研削装置の作用]
次に、以上のように構成された研削装置1によるウェーハWの研削加工について説明する。
【0053】
ウェーハWを研削加工する際には、図1に示す搬出入手段104によってカセット101から加工前の1枚のウェーハWが取り出され、取り出されたウェーハWが位置合わせテーブル103へと移送される。位置合わせテーブル103においては、ウェーハWが位置合わせされ、位置合わせされたウェーハWは、第1搬送手段105によってウェーハ搬出入領域R1に位置するチャックテーブル10へと移送されて該チャックテーブル10上に吸引保持される。
【0054】
すると、ターンテーブル2がその垂直な軸中心回りに矢印方向(反時計方向)に角度120°だけ回転してウェーハWと共に粗研削領域R2へと移動する。この粗研削領域R2においては、チャックテーブル10の保持面10aに保持されたウェーハWの裏面(上面)が粗研削ユニット20によって粗研削される。
【0055】
すなわち、不図示の回転駆動機構によってチャックテーブル10が所定の回転速度(例えば、300rpm)で回転駆動されるとともに、粗研削ユニット20のスピンドルモータ22が起動されて砥石25bが所定の速度(例えば、1000rpm)で回転駆動される。
【0056】
上述のように、チャックテーブル10とこれに保持されたウェーハW及び砥石25bがそれぞれ回転している状態で、昇降機構3を駆動して砥石25bを-Z軸方向に下降させる。すなわち、電動モータ7が駆動されてボールネジ軸6が回転すると、このボールネジ軸6に螺合する不図示のナット部材が設けられた昇降板4が粗研削ユニット20と共に-Z軸方向に下降する。すると、砥石25bの下面(研削面)がウェーハWの上面(裏面)に接触する。このとき、研削水供給手段40の研削水供給源41から研削水が砥石25bとウェーハWとの接触面に供給されている。すると、この研削水の供給を受けながら、ウェーハWの上面(裏面)が回転する砥石25bによって研削され、その厚みが厚み測定器50によって測定される。
【0057】
そして、上述のように粗研削ユニット20によってウェーハWが所定厚みに粗研削されると、昇降機構3によって粗研削ユニット20が+Z軸方向に上昇して砥石25bがウェーハWの上面から離間する。すると、ターンテーブル2がその垂直な軸中心回りに角度120°だけ回転し、粗研削領域R2において粗研削されたウェーハWとこれを保持するチャックテーブル10が仕上げ研削領域R3へと移動し、この仕上げ研削領域R3においてウェーハWの上面(裏面)が仕上げ研削ユニット30によって仕上げ研削される。なお、仕上げ研削ユニット30によるウェーハWの仕上げ研削は、粗研削ユニット20によるウェーハWの粗研削と同様になされため、この仕上げ研削についての説明は省略する。
【0058】
なお、ウェーハWの仕上げ研削中においては、研削水供給手段40から研削水が砥石35bとウェーハWとの接触面に供給されている。また、仕上げ研削中のウェーハWの厚みは、厚み測定器51によって測定される。
【0059】
そして、仕上げ研削ユニット30によってウェーハWが所定厚みに仕上げ研削されると、昇降機構3によって仕上げ研削ユニット30が+Z軸方向に上昇して砥石35bがウェーハWの上面から離間する。すると、ターンテーブル2がその垂直な軸中心回りに角度120°だけ回転し、仕上げ研削領域R3において仕上げ研削されたウェーハWとこれを保持するチャックテーブル10がウェーハ搬出入領域R1へと移動し、このウェーハ搬出入領域R1においてウェーハWが第2搬送手段106によってチャックテーブル10から取り外されて第2洗浄ユニット80へと移送されるとともに、ウェーハWが取り外されたチャックテーブル10の保持面10aが第1洗浄ユニット60によって洗浄される。なお、ウェーハ搬出入領域R1においては、チャックテーブル10の保持面10aと研削加工前のウェーハWが第1洗浄ユニット60によって洗浄されるが、これらの洗浄については、本発明の第2実施形態において後述するため、ここでの説明は省略する。
【0060】
以下、第2洗浄ユニット80によるウェーハWの洗浄について図2を参照しながら説明する。
【0061】
仕上げ研削ユニット30によって前述のように仕上げ研削されたウェーハWは、第2搬送手段106によって第2洗浄ユニット80へと搬送されてスピンナテーブル81の保持面81a上に保護テープTを下にして載置される。この状態から制御部85が一方の電磁開閉弁V1を開くと、ポーラス部材81A内のエアが各連通路13,12,11,14,15と配管16及び分岐管16aを順次経て吸引源87に吸引されるため、ポーラス部材81Aに負圧が発生し、この負圧に引かれてウェーハWが保護テープTと共にスピンナテーブル81の保持面81aに吸引保持される。なお、このとき、他方の電磁開閉弁V2は、閉じられている。
【0062】
次に、電動モータ83を起動し、保持面81aにウェーハWを保持したスピンナテーブル81を垂直な中心軸回りに所定の速度(本実施の形態では、800rpm)で回転させ、ウェーハWの中心に向かって洗浄水を噴射するノズル82をノズル移動手段84によってウェーハWの径方向(図2の矢印方向)に所定の速度で移動させることによってウェーハWの上面を洗浄水によって洗浄する。すなわち、ノズル移動手段84の電動モータ93が起動されて回転軸94が所定の速度で所定角度だけ回転すると、旋回アーム95とその先端に取り付けられたノズル82が回転軸94を中心として水平旋回する。このため、ノズル82は、ウェーハWの中心の上方位置から該ウェーハWの外周部に向かって円弧を描きながら径方向に移動する。
【0063】
上述のように、回転するウェーハWの上面が径方向に移動するノズル82から噴射される洗浄水によって洗浄されると、制御部85は、一方の電磁開閉弁V1を閉じて他方の電磁開閉弁V2を開く。すると、エア供給源88から圧縮エアが分岐管16b、配管16、連通路15,14,11,12,13を順次経てポーラス部材81Aへと供給され、この圧縮エアがポーラス部材81Aの保持面81aから噴出するため、ウェーハWの吸引力が消滅して該ウェーハWを保護テープTと共に保持面81aから容易に取り外すことができる。
【0064】
すると、図1に示す搬出入手段104によってウェーハWがスピンナテーブル81から取り外されてカセット102へと収納され、ウェーハWに対する一連の研削加工と洗浄が終了する。
【0065】
ところで、以上のように粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30によってウェーハWを粗研削及び仕上げ研削する研削装置1においては、研削加工中の加工室S1,S2内は、研削水の供給を受けながら回転する砥石25b,35bによるウェーハWの研削によって、研削屑を含む研削水の噴霧が飛散して加工室S1,S2の内壁(特に、側板と上板の内壁)に付着している。
【0066】
そこで、本実施の形態では、第2洗浄ユニット80におけるウェーハWの洗浄に供されてケース86の貯留部42に貯留されている洗浄排水を図2に示す噴射機構43によって吸引し、この洗浄排水を各加工室S1,S2にそれぞれ供給して各加工室S1,S2内に噴射することによって、各加工室S1,S2の内壁に付着している研削屑を含む研削水の噴霧を除去するようにして、噴霧の乾燥によって研削屑が内壁に固着するのを防止している。
【0067】
具体的には、制御部85がエア供給源44を駆動して電磁開閉弁V3を開くと、圧縮エアが噴射機構43のエジェクタ45の流路46を図2の矢印方向に流れる。このようにエジェクタ45の流路46をエアが流れると、このエアは、流路46のスロート部46Aにおいて絞られてその流速が高められる(増速される)ため、ベルヌーイ効果(動圧の増加分だけ静圧が減少する効果)によってスロート部46Aには負圧が発生する。
【0068】
上述のようにエジェクタ45の流路46のスロート部46Aに負圧が発生すると、この負圧に引かれてケース86の底部に形成された貯留部42に貯留されている洗浄排水が吸水路49の吸水口49aから該吸水路49に吸い込まれてエジェクタ45のスロート部46Aに向かって流れ、この洗浄排水がエジェクタ45のスロート部46Aを流れる高速のエアとミキシングされてエアと洗浄排水との二流体が形成される。そして、このようにして形成されたエアと洗浄排水との二流体は、エジェクタ45の流路46の噴射口46bから二流体配管48を経て各加工室S1,S2へと供給されて各加工室S1,S2内にそれぞれ噴射される。このため、各加工室S1,S2の内壁に付着している研削屑を含む噴霧や水分の乾燥によって固着している研削屑が洗浄排水による洗浄によって効果的に除去される。
【0069】
なお、噴射機構43は、ウォータポンプを用いてもよい。貯留部42に貯留された洗浄排水をウォータポンプで吸水して噴射口46bから各加工室S1,S2へと供給して各加工室S1,S2内にそれぞれ噴射するようにしてもよい。また、各加工室S1,S2内への洗浄排水の噴射は、各加工室S1,S2においてウェーハWの粗研削と仕上げ研削が行われていないとき、つまり、各チャックテーブル10と各研削ホイール25,35が回転していないときに行われる。
【0070】
また、各加工室S1,S2内への洗浄排水の噴射は、各チャックテーブル10と各研削ホイール25,35が回転しているときに行ってもよい。例えば、洗浄排水を回転するホイール25,35に噴射して、ホイール25,35の回転によって洗浄排水を加工室内S1,S2内で飛散させてもよい。また、洗浄排水をホイール25,35に噴射することによって、砥石25b,35bを洗浄してもよい。
【0071】
以上のように、本実施の形態においては、第2洗浄ユニット80においてウェーハWの洗浄に供された後の洗浄排水を噴射機構43によって吸引して各加工室S1,S2へとそれぞれ供給し、この洗浄排水によって各加工室S1,S2の内壁をそれぞれ洗浄するようにしたため、各加工室S1,S2の内壁を洗浄するためだけの洗浄水を用いることなく、洗浄排水を有効に利用することによって各加工室S1,S2の内壁に付着している噴霧や研削屑を効果的に除去することができ、結果的に節水を図ることができる。また、各加工室S1,S2の各内壁を洗浄する際には、各加工室S1,S2内においてチャックテーブル10を回転させる必要がないため、これらのチャックテーブル10を回転させるための電力が不要となり、結果的に節電も図ることができる。
【0072】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る研削装置1Aを図3図5に基づいて以下に説明する。
【0073】
本実施の形態に係る研削装置1Aの基本構成は、前記第1実施形態に係る研削装置1の基本構成と同じであるため、図3図5においては、同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0074】
本実施の形態は、第1洗浄ユニット60において研削加工前のウェーハWの洗浄に供された後の洗浄排水とチャックテーブル10の保持面10aの洗浄に供された後の洗浄排水を前記第1実施形態と同様に噴射機構43によって各加工室S1,S2にそれぞれ供給し、各加工室S1,S2に洗浄排水をそれぞれ噴射することによって各加工室S1,S2の内壁をそれぞれ洗浄するようにしたことを特徴としている。このため、図3に示すように、ベース200の上部には、洗浄排水を貯留するための貯留部42が形成されており、この貯留部42には、前記第1実施形態と同様の噴射機構43とこれを制御する制御部85が設けられている。
【0075】
ここで、第1洗浄ユニット60の構成を図4及び図5に基づいて以下に説明する。
【0076】
第1洗浄ユニット60は、ウェーハ搬出入領域R1(図3参照)に位置するチャックテーブル10に保持された研削加工前のウェーハWを洗浄するウェーハ洗浄機構61と、研削加工後のウェーハWが取り除かれた後のチャックテーブル10の保持面10aを洗浄する保持面洗浄機構71とを備えるものであって、ウェーハ洗浄機構61と保持面洗浄機構71は、図4に示すように、ベース200(図3参照)上に立設された門型の支持フレーム202にX軸方向(左右方向)に移動可能に支持されている。
【0077】
すなわち、支持フレーム202の左右の垂直な支柱部202aには、X軸方向(左右方向)に延びる上下一対のガイドレール53が互いに平行に架設されており、これらのガイドレール53には、矩形プレート状の左右一対のスライダ54,55が該ガイドレール53に沿ってX軸方向(左右方向)に摺動可能に支持されている。そして、各スライダ54,55には、ウェーハ洗浄機構61と保持面洗浄機構71がそれぞれ取り付けられている。
【0078】
ここで、ウェーハ洗浄機構61は、電動モータ62によって回転駆動される洗浄ブラシ63と、これらの電動モータ62と洗浄ブラシ63をZ軸方向(上下方向)に昇降させる昇降機構64を含んで構成されている。また、保持面洗浄機構71は、電動モータ72によって回転駆動される洗浄砥石73と、これらの電動モータ72と洗浄砥石73をZ軸方向(上下方向)に昇降させる昇降機構74を含んで構成されている。
【0079】
また、図4に示すように、上下一対のガイドレール53の間には、X軸方向(左右方向)に延びる上下一対の回転可能なボールネジ軸56が互いに平行に配置されており、上側のボールネジ軸56の軸方向一端(左端)は、駆動源である不図示の電動モータに連結され、同ボールネジ軸56の軸方向他端(右端)は、軸受57によって支持フレーム202に回転可能に支持されている。同様に、下側のボールネジ軸56の軸方向一端(右端)は、駆動源である電動モータ58に連結され、同ボールネジ軸56の軸方向他端(左端)は、不図示の軸受によって支持フレーム202に回転可能に支持されている。
【0080】
そして、上側のボールネジ軸56には、一方のスライダ54に一体に突設されたブロック状のナット部54aが螺合しており、下側のボールネジ軸56には、他方のスライダ55に一体に突設されたブロック状のナット部55aが螺合している。したがって、不図示の電動モータによって上側のボールネジ軸56を正逆転させれば、このボールネジ軸56に螺合するナット部54aが突設された一方のスライダ54がウェーハ洗浄機構61と共にガイドレール53に沿ってX軸方向(左右方向)に往復移動する。同様に、電動モータ58によって下側のボールネジ軸56を正逆転させれば、このボールネジ軸56に螺合するナット部55aが突設された他方のスライダ55が保持面洗浄機構71と共にガイドレール53に沿ってX軸方向(左右方向)に往復移動する。このようにウェーハ洗浄機構61と保持面洗浄機構71は、ガイドレール53に沿ってX軸方向(左右方向)に互いに独立して往復移動することができる。
【0081】
ところで、本実施の形態では、ターンテーブル2に配置された3つのチャックテーブル10の保持面10a(図3参照)には、図5に示す水供給源75とエア供給源76から洗浄水と圧縮エアが選択的に供給される。また、図5に示すように、3つのチャックテーブル10の各ポーラス部材10Aは、吸引源77によって選択的に真空引きされる。
【0082】
具体的には、水供給源75から延びる分岐管78aとエア供給源76から延びる分岐管78bは配管79に合流しており、この配管79からは3本の分岐管79a,79b,79cが分岐している。なお、分岐管78a,78bの途中には、流量調整用の可変オリフィス26,27と電磁開閉弁V4,V5がそれぞれ設けられている。そして、3本の分岐管79a,79b,79cは、各チャックテーブル10のポーラス部材10Aにそれぞれ開口しており、その途中には、電磁開閉弁V7がそれぞれ設けられている。ここで、電磁開閉弁V4,V5と3つの電磁開閉弁V7は、制御部85にそれぞれ電気的に接続されており、その開閉動作が制御部85によって制御される。
【0083】
また、吸引源77から延びる分岐管78cは、配管78に合流しており、配管78からは3本の分岐管78d,78e,78fが分岐している。そして、各分岐管78d,78e,78fは、各チャックテーブル10のポーラス部材10Aの下面に開口している。ここで、各分岐管78cには、流量調整用の可変オリフィス28と電磁開閉弁V6が設けられている。また、各分岐管78d,78e,78fには、電磁開閉弁Vがそれぞれ設けられている。そして、各電磁開閉弁V6と各電磁開閉弁Vは、制御部85にそれぞれ電気的に接続されており、その開閉動作が制御部85によって制御される。なお、ウェーハ洗浄機構61によって加工前のウェーハWを洗浄する際には、ターンテーブル2の中心に設置されたノズル36から洗浄水がウェーハWに向けて噴射される。
【0084】
以上のように構成された第1洗浄ユニット60のウェーハ洗浄機構61によって加工前のウェーハWが洗浄されるとともに、加工後のウェーハWが取り外されたチャックテーブル10の保持面10aが保持面洗浄機構71によって次のように洗浄される。
【0085】
すなわち、図3に示すウェーハ搬出入領域R1に位置するチャックテーブル10に保持された研削加工前のウェーハWの上方に図4に示すウェーハ洗浄機構61の洗浄ブラシ63が移動し、この状態でチャックテーブル10とこれに保持されたウェーハWが所定の速度で回転駆動されるとともに、洗浄ブラシ63も電動モータ62によって所定の速度で回転駆動される。そして、ノズル36から洗浄水がウェーハWの上面に向けて供給されながら、ウェーハ洗浄機構61の昇降機構64によって洗浄ブラシ63が-Z軸方向に下降してウェーハWの上面に接触しながら回転することによって、ウェーハWの上面が洗浄ブラシ63によって洗浄される。このようにして研削加工前のウェーハWの上面が洗浄されると、ウェーハ洗浄機構61の昇降機構64によって洗浄ブラシ63が+Z軸方向に上昇してウェーハWの上面から離間する。
なお、ウェーハ洗浄機構61は、洗浄ブラシ63に代わってウェーハWの上面に二流体を噴射するウェーハ洗浄ノズルであってもよい。昇降機構64によって、ウェーハ洗浄ノズルを保持面10aに保持されているウェーハWの上方に下降させる。そして、ウェーハ洗浄ノズルから二流体をウェーハWの上面10aに噴射してウェーハの上面を洗浄する。
【0086】
また、ウェーハ搬出入領域R1に位置するチャックテーブル10から研削加工後のウェーハWが取り外された後の該チャックテーブル10の保持面10aは、保持面洗浄機構71によって以下のように洗浄される。
【0087】
すなわち、制御部85は、図5に示す電磁開閉弁V4を開くとともに、ウェーハ搬出入領域R1にある1つのチャックテーブル10に接続された分岐管79a(79b,79c)に設けられた1つの電磁開閉弁V7を開く。すると、水供給源75から洗浄水が分岐管78aから配管79と分岐管79a(79b,79c)を経てウェーハ搬出入領域R1に位置する1つのチャックテーブル10のポーラス部材10Aの保持面10aから噴出する。
【0088】
また、同時に図4に示す保持面洗浄機構71の洗浄砥石73をウェーハ搬出入領域R1に位置する1つのチャックテーブル10の上方へと移動させ、チャックテーブル10と洗浄砥石73をそれぞれ所定の速度で回転させながら、保持面洗浄機構71の昇降機構74によって洗浄砥石73を-Z軸方向に下降させる。すると、この洗浄砥石73がチャックテーブル10の保持面10aに接触しながら回転することによって、チャックテーブル10の洗浄水が噴出する保持面10aが洗浄砥石73によって洗浄される。このようにしてチャックテーブル10の保持面10aが洗浄されると、保持面洗浄機構71の昇降機構74によって洗浄砥石73が+Z軸方向に上昇してチャックテーブル10の保持面10aから離間する。なお、保持面洗浄機構71は、洗浄砥石73に代わって保持面10aに二流体を噴射する保持面洗浄ノズルであってもよい。昇降機構74によって、保持面洗浄ノズルを保持面10aの上方に下降させる。そして、保持面洗浄ノズルから二流体を保持面10aに噴射して洗浄する。
【0089】
以上のように、ウェーハ搬出入領域R1において、研削加工前のウェーハWと、研削加工後のウェーハWが取り外された後のチャックテーブル10の保持面10aが洗浄されると、これらの洗浄に供された後の洗浄排水が図3に示すベース200に形成された貯留部42に貯留される。そして、貯留部42に貯留された洗浄排水は、前記第1実施形態と同様に、噴射機構43のエジェクタ45のスロート部46Aに発生する負圧に引かれて該スロート部46Aに向かって流れ、この洗浄排水がエジェクタ45のスロート部46Aを流れる高速のエアとミキシングされてエアと洗浄排水との二流体が形成される。そして、このようにして形成されたエアと洗浄排水との二流体は、エジェクタ45の流路46の噴射口46bから二流体配管48を経て各加工室S1,S2へと供給されて各加工室S1,S2内にそれぞれ噴射される。このため、各加工室S1,S2の内壁に付着している研削屑を含む噴霧や水分の乾燥によって固着している研削屑が洗浄排水による洗浄によって効果的に除去される。なお、噴射機構43は、ウォータポンプを用いてもよい。貯留部42に貯留された洗浄排水をウォータポンプで吸水して噴射口46bから各加工室S1,S2へと供給し、各加工室S1,S2内にそれぞれ噴射するようにしてもよい。
【0090】
なお、本実施の形態においても、各加工室S1,S2内への洗浄排水の噴射は、各加工室S1,S2においてウェーハWの粗研削と仕上げ研削が行われていないとき、つまり、各チャックテーブル10と各研削ホイール25,35が回転していないときに行われる。また、各加工室S1,S2内への洗浄排水の噴射は、各チャックテーブル10と各研削ホイール25,35が回転しているときに行ってもよい。例えば、洗浄排水を回転するホイール25,35に噴射して、ホイール25,35の回転によって洗浄排水を加工室内S1,S2内で飛散させてもよい。また、洗浄排水をホイール25,35に噴射することによって、砥石25b,35bを洗浄してもよい。
【0091】
以上のように、本実施の形態では、ウェーハ搬出入領域R1においてウェーハWの洗浄とチャックテーブル10の保持面10aの洗浄に供された後の洗浄排水を噴射機構43によって吸引して各加工室S1,S2へとそれぞれ供給し、この洗浄排水によって各加工室S1,S2の内壁をそれぞれ洗浄するようにしたため、各加工室S1,S2の内壁を洗浄するためだけの洗浄水を用いることなく、洗浄排水を有効に利用することによって節水を図ることができる。また、各加工室S1,S2の内壁を洗浄する際には、各加工室S1,S2内においてチャックテーブル10を回転させる必要がないため、これらのチャックテーブル10を回転させるための電力が不要となり、これによって節電も図ることができる。
【0092】
なお、以上は本発明に係る加工装置としてウェーハの研削装置を例として説明したが、本発明は、ウェーハ以外の他の任意の被加工物の研削装置の他、研削装置以外の他の任意の加工装置、例えば、研磨装置や切削装置などもその適用対象に含む。
【0093】
また、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0094】
1,1A:研削装置(加工装置)、2:ターンテーブル、3:昇降機構、4:昇降板、
5:ガイドレール、6:ボールネジ軸、7:電動モータ、8,9:カバー、
8a,9a:カバーの開口部、8b,9b:カバーの円孔、10:チャックテーブル、
10A:ポーラス部材、10a:保持面、11~15:連通路、16:配管、
16a,16b:分岐管、17,18:可変オリフィス、19:圧力計、
20:粗研削ユニット(加工手段)、21:ホルダ、22:スピンドルモータ、
23:スピンドル、24:マウント、25:研削ホイール、25a:基台、
25b:砥石(加工具)、30:仕上げ研削ユニット(加工手段)、31:ホルダ、
32:スピンドルモータ、33:スピンドル、34:マウント、35:研削ホイール、
35a:基台、35b:砥石(加工具)、36:ノズル、
40:研削水供給手段(加工液供給手段)、41:研削水供給源、
42:貯留部、42A:栓、42a:排水口、43:噴射機構、44:エア供給源、
45:エジェクタ、46:流路、46A:スロート部(負圧発生部)、
46a:吸入口、 46b:噴射口、47:エア配管、48:二流体配管、
49:吸水路、49a:吸水口、50,51:ウェーハ厚み測定器、
53:ガイドレール、54,55:スライダ、54a,55a:ナット部、
56:ボールネジ軸、57:軸受、58:電動モータ、
60:第1洗浄ユニット(洗浄ユニット)、61:ウェーハ洗浄機構、
62:電動モータ、63:洗浄ブラシ、64:昇降機構、71:保持面洗浄機構、
72:電動モータ、73:洗浄砥石、74:昇降機構、75:水供給源、
76:エア供給源、77:吸引源、78:配管、78a~78f:分岐管、
79:配管、79a,79b,79c:分岐管、
80:第2洗浄ユニット(洗浄ユニット)、81:スピンナテーブル、
81A:ポーラス部材、81a:保持面、82:ノズル、83:電動モータ、
84:ノズル移動手段、85:制御部、86:ケース、86A,86B:凸部、
86a,86b:貫通孔、87:吸引源、88:エア供給源、89:回転軸、
90:ロータリジョイント、91:エンコーダ、92:水源、 93:電動モータ、
93a:出力軸、94:回転軸、95:旋回アーム、96,97:シール部材、
98:エンコーダ、100:搬送ユニット、101,102:カセット、
103:位置合わせテーブル、104:搬出入手段、105:第1搬送手段、
106:第2搬送手段、200:ベース、201:コラム、 202:支持フレーム、 202a:支柱部、R1:ウェーハ搬出入領域、
R2:粗研削領域、R3:仕上げ研削領域、S1,S2:加工室、T:保護テープ、
V,V1~V7:電磁開閉弁、W:ウェーハ
図1
図2
図3
図4
図5