(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167851
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】睡眠改善剤及び睡眠改善用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/67 20060101AFI20231116BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20231116BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20231116BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231116BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20231116BHJP
A23G 3/34 20060101ALN20231116BHJP
A23G 3/48 20060101ALN20231116BHJP
A23G 4/12 20060101ALN20231116BHJP
A23L 2/52 20060101ALN20231116BHJP
【FI】
A61K36/67
A61P25/20
A61K8/9789
A61Q19/00
A23L33/105
A23G3/34
A23G3/48
A23G4/12
A23L2/00 F
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079353
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南田 美佳
(72)【発明者】
【氏名】上迫 春乃
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4B117
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B014GB13
4B014GG18
4B018LB01
4B018LB08
4B018LE01
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4B117LC04
4B117LG24
4C083AA111
4C083CC03
4C088AB36
4C088AC04
4C088BA09
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA05
(57)【要約】
【課題】安全性が高く、摂取し易い睡眠改善剤及び睡眠改善用組成物を提供する。
【解決手段】ヒハツ抽出物を有効成分として含有する、睡眠改善剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒハツ抽出物を有効成分として含有する、睡眠改善剤。
【請求項2】
睡眠の質を改善する、請求項1記載の睡眠改善剤。
【請求項3】
寝つきを改善する、請求項1記載の睡眠改善剤。
【請求項4】
ヒハツ抽出物が、果穂の熱水抽出物である請求項1記載の睡眠改善剤。
【請求項5】
内服剤である、請求項1~4のいずれか1項記載の睡眠改善剤。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項記載の睡眠改善剤を含有する、睡眠改善用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠改善剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、社会生活の変化にともない、多くの人々が睡眠の問題を抱えている。睡眠の問題としては、寝つきが悪い、夜間に目が覚める、眠りが浅い、早く目が覚める、十分眠った感じがしない等の睡眠の質の低下が挙げられる。睡眠の質の低下は、重大な疾患に繋がるだけでなく、体の抵抗力を弱め、日中の眠気から作業能率を低下させる可能性がある。
【0003】
睡眠の問題を生じる原因としては、環境要因、生理的要因、心理的要因、器質的疾患要因、精神疾患要因等が考えられる。中でも、悩みや心配事、ストレスが要因となる心理的要因による不眠症が、近年増加している。睡眠改善剤としては、医薬で用いられる成分等も知られているが、安全性、環境性及び生産性に優れ、安全に摂取しやすいものが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-031371号公報
【特許文献2】特開2007-277207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、安全性に優れ、摂取し易い睡眠改善剤及び睡眠改善用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、ヒハツ抽出物が優れた睡眠改善効果を有することを知見し、本発明をなすに至ったものである。その優れた睡眠改善効果については、後で詳細に説明する。
【0007】
従って、本発明は下記、睡眠改善剤及び睡眠改善用組成物を提供する。
1.ヒハツ抽出物を有効成分として含有する、睡眠改善剤。
2.睡眠の質を改善する、1記載の睡眠改善剤。
3.寝つきを改善する、1記載の睡眠改善剤。
4.ヒハツ抽出物が、果穂の熱水抽出物である1記載の睡眠改善剤。
5.内服剤である、1~4のいずれかに記載の睡眠改善剤。
6.1~4のいずれかに記載の睡眠改善剤を含有する、睡眠改善用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の睡眠改善剤によれば、睡眠の質が改善される。
【0009】
本発明は、ヒハツ抽出物を有効成分として含有する睡眠改善剤である。
[ヒハツ抽出物]
抽出原料であるヒハツ(Piper longum又はPiper retrofractum)は、コショウ科コショウ属の蔓性の常緑木本であり、インドや東南アジアの地域から容易に入手可能である。ヒハツの果穂は、多肉質の円筒状であり、乾燥物は、香辛料として広く用いられている。
【0010】
抽出原料として使用し得るヒハツの構成部位は、特に限定されるものではなく、例えば、葉部、茎部、花部、果穂部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、これらのうち果穂部を用いるのが好ましい。
【0011】
上記植物の抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性抽出溶媒によって脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。本発明の「抽出物」には、植物を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物もしくは精製物のいずれもが含まれる。
【0012】
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用することが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0013】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0014】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等が挙げられる。
【0015】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を抽出溶媒として使用する場合には、水と低級脂肪族アルコールとの混合比が9:1~1:9(容量比)であることが好ましく、7:3~2:8(容量比)であることがさらに好ましい。また、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水と低級脂肪族ケトンとの混合比が9:1~2:8(容量比)であることが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場
合には、水と多価アルコールとの混合比が8:2~1:9(容量比)であることが好ましい。
【0016】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5~50倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。特に、本発明の効果の点から、熱水抽出物(エキス)が好ましい。
【0017】
ヒハツ抽出物には、ヒハツ抽出物に由来するピペリン類が含まれる。本発明のヒハツ抽出物においては、得られた抽出物から、ピペリン類を精製し、さらにその濃度を変えて、再度抽出物としてもよい。ヒハツからピペリン類を単離・精製する方法は、特に限定されるものではなく、常法により行うことができる。例えば、抽出物を溶媒に溶解し、シリカゲルやアルミナ等の多孔質物質、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体やポリメタクリレート等の多孔性樹脂等を用いた吸着クロマトグラフィーに付して、ピペリン類を含む画分を回収する方法等が挙げられる。この場合、溶媒は使用する固定相に応じて適宜選択すればよいが、例えば、固定相としてスチレン-ジビニルベンゼン共重合体を用いた吸着クロマトグラフィーにより抽出物を分離する場合、20容積%以下のエタノールに抽出物を溶解しチャージすることで固定相にピペリン類を吸着させ、80容積%以上のエタノールにてピペリン類を溶離させることができる。なお、ピペリン類の吸着と溶離との間に、60%以下のエタノール等を用い、ピペリン類以外の成分を溶出除去してもよい。さらに、吸着クロマトグラフィーにより得られたピペリン類を含む画分を、ODSを用いた逆相シリカゲルクロマトグラフィー、再結晶、液-液向流抽出、イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー等の任意の有機化合物精製手段を用いて精製してもよい。
【0018】
[睡眠改善効果]
ヒハツ抽出物の睡眠改善効果は、睡眠の質の改善をするものであるが、寝つきの良さ、眠りの深さ(深く眠れた、夜間目が覚めず睡眠が維持される)、寝覚めの良さ(すっきりとした目覚め)等で評価することができる。睡眠の質が改善されることで、体調を良好に保つことができ、良質な眠りをサポートし、起床時の眠気や疲労感を和らげ、軽減することができる。特に、寝つきの良さの効果が高いものである。
【0019】
[睡眠改善剤]
以上のようにして得られるヒハツ抽出物は優れた睡眠改善効果を有しているため、睡眠改善剤の有効成分として用いることができる。本実施形態の睡眠改善剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品、飲食品等の食品等の幅広い用途に使用することができる。剤型は特に限定されず、常法に従い、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、固形、液状、クリーム、ゲル、フォーム、スプレー等の任意の剤形に製剤化することができ、それぞれの剤型の任意成分を適量用いることができる。例えば、睡眠改善剤としては、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。
【0020】
本発明は、安全性が高く、摂取する対象は特に限定されない。中でも、通常から睡眠の質が悪い対象者に対して、優れた睡眠改善効果が得られる。
【0021】
本発明の睡眠改善剤は、内服剤でも外用剤でもよいが、内服剤の場合、ヒハツ抽出物(固形分として)の摂取量は、成人1日当たり約1~30mg(固形分)が好適であり、摂取対象により、摂取量も含め、投与方法、投与期間等を適宜選定することができる。ヒハツ抽出物の配合量は、製剤の形態により適宜選定されるが、通常、睡眠改善剤中0.001~50質量%から適宜選定することができ、0.01~20質量%が好ましい。また、顆粒、錠剤又はカプセル形態の場合は、0.01~100質量%が好ましく、5~100質量%がより好ましい。外用剤の場合は、外用剤中0.0001~10質量%が好ましい。
【0022】
摂取する時間等は特に限定されないが、効果をより発揮する観点から、睡眠の1~8時間前が好ましく、睡眠直前~3時間前がより好ましい。
【0023】
[睡眠改善用組成物]
上記睡眠改善剤は睡眠改善用組成物に配合することができる。睡眠改善用組成物としては、「食品」、「飲食品」等が含まれる。本発明における「食品」とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口または消化管投与により摂取されるものをいい、飲料も含むものである。行政区分上の食品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態における「飲食品」は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品,栄養機能食品、機能性表示食品)、医薬部外品及び医薬品等を幅広く含むものである。食品の形態や種類は特に限定されず、睡眠改善剤で例示したものと同様のものが挙げられ、菓子、パスタ、麺等、食品とされるものは全て含まれる。また、食品として通常配合される任意成分が適宜・適量配合される。
【0024】
睡眠改善用組成物中の睡眠改善剤の配合量は特に限定されないが、ヒハツ抽出物(固形分として)上記摂取量となるよう適宜選定される。例えば、睡眠改善用組成物中0.001~50質量%から適宜選定され、0.01~20質量%が好ましい。
【実施例0025】
以下、試験例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
[試験例]
ヒハツの果穂の乾燥物100gを1リットルの水に浸漬し、2時間還流下に加熱した。その後、濾過して残渣を再び1リットルの水で同様に処理した。上記2回の処理により得られた抽出液を合わせて減圧下に濃縮し、12.6gの熱水抽出エキスを得た。
上記で得られた熱水抽出エキスを用いて下記チュアブル錠剤を調製した。
組成 (質量%)
ヒハツ熱水抽出物 5.0
還元麦芽糖水飴 59.5
ソルビトール 30.0
ステアリン酸Ca 2.0
香料 2.5
色素 1.0
合計 100.0質量%
【0026】
上記で得られた錠剤を、睡眠の質に問題があると感じている20~50代のパネラー12名に、就寝30分前に1錠、4日間連続摂取してもらい、翌朝評価を行った。評価は下記評価項目及び評点で評価した。4日目の結果を下記に示す。
[評価項目]
寝つき:寝床についてから実際に寝るまで、時間がかかりましたか?
睡眠維持:夜間、睡眠の途中で目が覚めましたか?
熟眠感:眠りの深さはどうでしたか?
目覚め感:目覚めた時の気分はいかがでしたか?
睡眠の質:全体的な睡眠の質について、どう感じていますか?
[評点]
4:いつもより良い
3:いつもより少し良い
2:いつもと変わらない
1:いつもより少し悪い
0:いつもより悪い
【0027】
【0028】
結果が3又は4であると効果が確認される。上記結果から明らかであるように、全てのパネラーで何らかの項目の睡眠改善効果が確認された。特に、寝つきの良さを得る効果が高いものであった。
【0029】
下記組成の睡眠改善用組成物を得た。いずれも睡眠改善効果が確認された。
[実施例]
[実施例1]
ガムベース 25g
砂糖 50g
果糖 15g
水飴 9g
レモン香料 0.5g
ヒハツ熱水抽出物 0.5g
上記原料をチューインガム製造の常法により処理して、睡眠改善効果を有するチューインガムを製造した。
【0030】
[実施例2]
マルチトール 73g
デキストリン 6g
グリセリン脂肪酸エステル 4g
ヒハツ熱水抽出物 17g
上記原料を混合、打錠して、睡眠改善効果を有する錠菓を製造した。
【0031】
[実施例3]
果糖ブドウ糖液糖 12g
ビタミンC 0.5g
クエン酸 0.5g
レモン香料 0.1g
ヒハツ熱水抽出物 0.3g
水 100g
上記原料を水に溶解して、睡眠改善効果を有する飲料を製造した。