(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167983
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】反射型フォトマスクブランク、及び反射型フォトマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/24 20120101AFI20231116BHJP
【FI】
G03F1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079563
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 敬佑
(72)【発明者】
【氏名】三村 祥平
(72)【発明者】
【氏名】石井 丈士
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BC24
2H195CA22
(57)【要約】
【解決手段】基板と、極端紫外線領域光である露光光を反射する多層反射膜と、多層反射膜を保護するための保護膜と、露光光を吸収する光吸収膜と、光吸収膜に接して形成されたハードマスク膜とを備え、ハードマスク膜が、塩素系ドライエッチングに対して耐性を有し、フッ素系ドライエッチングで除去可能な材料で形成された第1層と、フッ素系ドライエッチングに対して耐性を有し、塩素系ドライエッチングで除去可能な材料で形成された第2層を含む多層であり、光吸収膜と第1層を同条件でフッ素系ドライエッチングしたときのエッチングクリアタイムが、光吸収膜の方が長い反射型フォトマスクブランク。
【効果】レジスト膜の厚さを薄くすることができ、レジストパターンの縦横比(アスペクト比)を低くして、線幅が30nm程度のアシストパターンを良好に形成することができ、反射型フォトマスクの転写パターンにおいて、高い解像性が得られる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に形成され、極端紫外線領域光である露光光を反射する多層反射膜と、
該多層反射膜上に形成された、前記多層反射膜を保護するための保護膜と、
該保護膜上に形成され、前記露光光を吸収する光吸収膜と、
該光吸収膜上に、該光吸収膜に接して形成され、該光吸収膜をドライエッチングによってパターン形成する際のハードマスクとして機能するハードマスク膜と
を備える反射型フォトマスクブランクであって、
前記ハードマスク膜が、前記基板から最も離間する側に設けられた第1層と、第2層とを含む多層で構成され、
前記第1層が、塩素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつフッ素系ドライエッチングで除去可能な材料で形成され、
前記第2層が、フッ素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつ塩素系ドライエッチングで除去可能な材料で形成され、
前記光吸収膜を一の条件でフッ素系ドライエッチングしたときのエッチングクリアタイムが、前記ハードマスク膜の第1層を同条件でフッ素系ドライエッチングしたときのエッチングクリアタイムより長いことを特徴とする反射型フォトマスクブランク。
【請求項2】
前記光吸収膜及び前記ハードマスク膜の第1層を前記一の条件でフッ素系ドライエッチングしたときの、前記ハードマスク膜の第1層のエッチングレートに対する前記光吸収膜のエッチングレートの比率が0.4以上2以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射型フォトマスクブランク。
【請求項3】
前記第1層が、ケイ素を含有し、クロムを含有しない材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の反射型フォトマスクブランク。
【請求項4】
前記第2層が、クロムを含有し、ケイ素を含有しない材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の反射型フォトマスクブランク。
【請求項5】
前記第1層の厚さが、2nm以上14nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射型フォトマスクブランク。
【請求項6】
前記第1層の厚さと、前記光吸収膜の厚さとの差が、30nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の反射型フォトマスクブランク。
【請求項7】
前記第1層の厚さと、前記第2層の厚さとの差が、10nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射型フォトマスクブランク。
【請求項8】
前記光吸収膜が、タンタルを含有する材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の反射型フォトマスクブランク。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の反射型フォトマスクブランクから、前記光吸収膜のパターンを備える反射型フォトマスクを製造する方法であって、
(A)前記ハードマスク膜の前記基板から離間する側に接して、レジスト膜を形成する工程と、
(B)該レジスト膜をパターニングして、レジストパターンを形成する工程と、
(C)該レジストパターンをエッチングマスクとして、前記第1層を、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによりパターニングして、第1層のパターンを形成する工程と、
(D)前記レジストパターンを除去する工程と、
(E)前記第1層のパターンをエッチングマスクとして、前記第2層を、塩素系ガスを用いたドライエッチングによりパターニングして、第2層のパターンを形成する工程と、
(F)前記第2層のパターンをエッチングマスクとして、前記光吸収膜を、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによりパターニングして、光吸収膜のパターンを形成すると同時に、前記第1層のパターンを除去する工程と、
(G)前記第2層のパターンを、塩素系ガスを用いたドライエッチングにより除去する工程と
を含むことを特徴とする反射型フォトマスクの製造方法。
【請求項10】
前記レジスト膜の厚さが、80nm以下であることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記光吸収膜のパターンが、幅が25nm以下のラインパターンを含むことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスなどの製造において使用される反射型フォトマスクの製造方法、及び反射型フォトマスクの素材として、その製造に用いられる反射型フォトマスクブランクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化に伴い、特に、大規模集積回路の高集積化により、投影露光に、高いパターン解像性が求められている。そこで、フォトマスクにおいては、転写パターンの解像性を向上させる手法として、位相シフトマスクが開発された。位相シフト法の原理は、フォトマスクの位相シフト膜の開口部を通過した透過光の位相が、開口部に隣接する位相シフト膜の部分を通過した透過光の位相に対して約180度反転するように調整することによって、開口部と開口部に隣接する部分との境界部で、透過光が干渉して光強度が低下し、その結果として、転写パターンの解像性及び焦点深度が向上するものであり、この原理を用いたフォトマスクは、総じて位相シフトマスクと呼ばれる。
【0003】
位相シフトマスクの製造に使用される、位相シフトマスクの素材としての位相シフトマスクブランクは、ガラス基板などの透明基板上に、位相シフト膜が積層され、位相シフト膜上にクロム(Cr)を含有する材料で形成された膜が積層された構造のものが、最も一般的である。位相シフト膜は、通常、露光光に対して、位相差が175~185度、透過率が6~30%程度であり、ケイ素(Si)を含有する膜、特に、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)とを含有する材料で形成されたものが主流である。また、クロムを含有する材料で形成された膜は、位相シフト膜と合わせて所望の光学濃度となる厚さに調整され、クロムを含有する材料で形成された膜を、遮光膜とすると共に、位相シフト膜をエッチングする際のハードマスク膜とするのが一般的である。
【0004】
透明基板上に、ケイ素を含む材料で形成された位相シフト膜と、クロムを含む材料で形成された遮光膜とが、この順に形成された位相シフトマスクブランクから、位相シフト膜をパターニングして、位相シフトマスクを製造する方法として、具体的には、以下のような方法が一般的である。まず、位相シフトマスクブランクのクロムを含有する材料で形成された遮光膜上にレジスト膜を形成し、このレジスト膜に、光又は電子線によりパターンを描画し、現像して、レジストパターンを形成する。次に、レジストパターンをエッチングマスクとして、クロムを含有する材料で形成された遮光膜を、塩素系ガスを用いてエッチングして、遮光膜のパターンを形成する。更に、遮光膜のパターンをエッチングマスクとして、ケイ素を含有する材料で形成された位相シフト膜を、フッ素系ガスを用いてエッチングして、位相シフト膜のパターンを形成し、その後、レジストパターンを除去し、遮光膜のパターンを、塩素系ガスを用いてエッチングして除去する。
【0005】
この場合、位相シフト膜のパターン(回路パターン)が形成されている部分より外側に遮光膜を残存させて、位相シフトマスクの外周縁部を、位相シフト膜と遮光膜とを合わせた光学濃度が3以上の遮光部(遮光パターン)とすることが行われる。これは、ウエハ露光装置を用いて回路パターンを、ウエハに転写する際、位相シフトマスクの外周縁部から露光光が漏れて、回路パターンより外側に位置する部分から、ウエハの隣接するチップ上のレジスト膜に照射されることを防ぐためである。このような遮光パターンを形成する方法としては、位相シフト膜のパターンを形成し、レジストパターンを除去した後、レジスト膜を新たに形成し、パターン描画、現像によって、位相シフトマスクの外周縁部にレジスト膜が残ったレジストパターンを形成し、このレジストパターンをエッチングマスクとして、クロムを含有する材料で形成された膜をエッチングして、位相シフトマスクの外周縁部の遮光膜を残す方法が一般的である。
【0006】
高精度なパターン形成が要求される位相シフトマスクでは、エッチングは、ガスプラズマを用いたドライエッチングが主流である。クロムを含有する材料で形成された膜のドライエッチングには、塩素系ガスを用いたドライエッチング(塩素系ドライエッチング)、ケイ素を含有する膜や、モリブデンとケイ素とを含有する膜のドライエッチングには、フッ素系ガスを用いたドライエッチング(フッ素系ドライエッチング)が用いられる。特に、クロムを含有する材料で形成された膜のドライエッチングでは、エッチングガスを、塩素ガス(Cl2ガス)に対して10~25体積%の酸素ガス(O2ガス)を混合したエッチングガスとすることで、化学的な反応性が高くなり、エッチング速度が向上することが知られている。
【0007】
回路パターンの微細化に伴い、位相シフトマスクの回路パターンにも、微細に形成する技術が求められている。特に、位相シフトマスクのメインパターンの解像性を補助する、ラインパターンのアシストパターンは、ウエハ露光装置を用いて回路パターンをウエハに転写する際、ウエハに転写されないように、メインパターンよりも小さく形成する必要がある。ウエハ上での回路のラインアンドスペースパターンのハーフピッチが10nmの世代の位相シフトマスクにおいては、位相シフトマスク上の回路のラインパターンのアシストパターンの線幅は、40nm程度が求められる。
【0008】
微細なパターンを形成することができる化学増幅型レジストは、ベース樹脂、酸発生剤、界面活性剤などからなっており、露光により発生した酸が触媒として作用する多くの反応が適用できることから、高感度化が可能であり、化学増幅型レジストを用いることで、線幅が0.1μm以下の微細な位相シフト膜のパターンなどのマスクパターンの形成を可能にしている。レジストはレジスト塗布機で、スピンコートによってフォトマスクブランク上に塗布される。
【0009】
先端品の位相シフトマスクブランクに使われるレジスト膜の厚さは、100~150nmである。位相シフトマスクに、より微細なアシストパターンを形成することが困難な理由は、クロムを含有する材料で形成された遮光膜上に形成された、アシストパターンを形成するためのレジストパターンの縦横比(アスペクト比)が高いために、レジストパターン形成の現像工程において、現像液による衝撃、又はリンスプロセス時の純水による衝撃により倒れてしまうからである。
【0010】
そこで、現像液による衝撃、又は純水による衝撃の影響を小さくするためにレジストパターンの縦横比(アスペクト比)を低くすることが考えられた。その場合、レジスト膜を薄くすることになる。しかし、レジスト膜を薄くした場合、クロムを含有する材料で形成された遮光膜のドライエッチング中にレジスト膜が消失してしまうと、クロムを含有する材料で形成された遮光膜に、ピンホール欠陥が形成されることになり、クロムを含有する材料で形成された遮光膜をエッチングマスクとして位相シフト膜をドライエッチングする際に、位相シフト膜のエッチング時のプラズマが、ピンホールを通して位相シフト膜に到達し、位相シフト膜にもピンホール欠陥が形成されてしまうことになり、正常な位相シフトマスクを製造することができない。
【0011】
そこで、この問題を解決するために、クロムを含有する材料で形成された遮光膜上に、更に、ケイ素を含む材料で形成されたハードマスク膜を設けるようになった。この場合、ケイ素を含む材料で形成されたハードマスク膜は、厚さが5~15nmの薄膜であり、ハードマスク膜上に形成されるレジスト膜の厚さは、80~110nmと、薄くなった。
【0012】
クロムを含有する材料で形成された遮光膜を、塩素系ガスを用いてドライエッチングする際には、クロムを含有する材料で形成された遮光膜が消失するクリアタイムに加えて、クリアタイムの100~300%のオーバーエッチングを行う必要がある。これは、塩素系ドライエッチングは、化学的成分が支配的な等方性エッチングであり、クロムを含有する材料で形成された遮光膜のパターンが、位相シフト膜との境界部において、エッチングが不十分となって、裾引き形状となり、所望のパターン幅が安定して形成されないためである。
【0013】
また、化学的成分が支配的な等方性エッチングであるため、塩素系プラズマは、基板に対して垂直方向と水平方向に移動し、クロムを含有する材料で形成された遮光膜のパターンにサイドエッチングをもたらし、パターン線幅であるCD(Critical dimension)を、マスク全面で均一にするためには、マスク全面で、同等のサイドエッチング量を得る必要がある。そのためには、サイドエッチング量が、サチュレーションを引き起こして安定するまでの長時間のドライエッチングが必要である。
【0014】
一方、ケイ素を含有する材料で形成された位相シフト膜を、フッ素系ガスを用いてドライエッチングする際には、ケイ素を含有する材料で形成された位相シフト膜が消失するクリアタイムに追加して、クリアタイムの最大20%程度のオーバーエッチング(例えば、1~6秒の短いオーバーエッチング)を行い、ドライエッチングにより、位相シフト膜に接する透明基板も若干エッチングして、位相差を、露光光に対して175~185度に調整する。この場合、ケイ素を含有する材料で形成された位相シフト膜は、初期の位相差を175~179度に設定され、オーバーエッチングで、透明基板を掘り込むことで、所望の位相差、即ち、175~185度とする方法が一般的である。
【0015】
フッ素系ドライエッチングで、オーバーエッチングが短時間でよいのは、フッ素系ドライエッチングは、物理的成分が支配的な異方性エッチングであり、ケイ素を含有する材料で形成された位相シフト膜のパターンが、基板との境界部において、裾引き形状となることはなく、また、フッ素系プラズマは、基板面に対して垂直方向に移動し、エッチングマスクとして機能するクロムを含有する材料で形成された遮光膜のCDが、忠実に再現されることから、長時間のオーバーエッチングを必要としないためである。
【0016】
フッ素系ドライエッチングは、物理的成分が支配的な異方性エッチングであるから、レジストの消失量は、一般的に、塩素系ドライエッチングよりも多い。そのため、ケイ素を含む材料で形成されたハードマスク膜のパターンを形成するためのレジスト膜には、相応の厚さが必要である。しかし、ケイ素を含む材料で形成されたハードマスク膜は、クロムを含有する材料で形成された遮光膜を、塩素系ガスを用いてドライエッチングする際のエッチングマスクとして働き、塩素系ガスに対して十分なエッチング耐性があるため、ケイ素を含む材料で形成されたハードマスク膜を薄くすることが可能であり、ケイ素を含む材料で形成されたハードマスク膜が薄ければ、ハードマスク膜に対するフッ素系ドライエッチングの時間は短くなり、その結果、ケイ素を含む材料で形成されたハードマスク膜のパターンを形成するために必要なレジスト膜も薄くできる。このような理由から、ケイ素を含む材料で形成されたハードマスク膜を用いることにより、ハードマスク膜のエッチングに用いられるレジスト膜、即ち、位相シフトマスクブランクに最初に用いられるレジスト膜を薄膜化することが可能となる。そして、レジスト膜を薄膜化することにより、レジストパターンの縦横比(アスペクト比)が低くなるから、レジストパターン形成の現像工程における、現像液による衝撃、又はリンスプロセス時の純水による衝撃の影響が小さくなり、良好なアシストパターンを形成でき、転写パターンの高い解像性を実現することが可能となる。
【0017】
透明基板上に、ケイ素を含む材料で形成された位相シフト膜と、クロムを含む材料で形成された遮光膜と、ケイ素を含む材料で形成されたハードマスク膜とが、この順に形成された位相シフトマスクブランクから、位相シフト膜をパターニングして、位相シフトマスクを製造する方法として、具体的には、以下のような方法が一般的である。まず、ハードマスク膜上にレジスト膜を形成し、このレジスト膜に、光又は電子線によりパターンを描画し、現像して、レジストパターンを形成する。次に、レジストパターンをエッチングマスクとして、ケイ素を含有する材料で形成されたハードマスク膜を、フッ素系ガスを用いてドライエッチングして、ハードマスク膜のパターンを形成し、その後、レジストパターンを除去する。次に、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、クロムを含有する材料で形成された遮光膜を、塩素系ガスを用いてドライエッチングし、遮光膜のパターンを形成する。更に、遮光膜のパターンをエッチングマスクとして、ケイ素を含む材料で形成された位相シフト膜を、フッ素系ガスを用いてドライエッチングして、位相シフト膜パターンを形成すると同時に、ハードマスク膜のパターンを除去し、その後、遮光膜のパターンを、塩素系ガスを用いてエッチングして除去する。
【0018】
更に、投影露光に近年求められている更に高いパターン解像性は、位相シフトマスクであっても、所望のパターン解像性が得られなくなってきている。そこで、露光光に極端紫外線領域光を用いたEUVリソグラフィが用いられるようになった。
【0019】
極端紫外線領域光は、あらゆる物質に対して吸収されやすく、従来のArFエキシマレーザ光を用いたフォトリソグラフィのような透過型リソグラフィを使用できない。そのため、EUVリソグラフィでは、反射光学系を用いる。EUVリソグラフィで用いられる極端紫外線領域光の波長は、13~14nmであり、従来のArFエキシマレーザ光の波長は193nmであるから、従来のArFエキシマレーザ光を用いたフォトリソグラフィと比べて、露光波長が短く、フォトマスク上のより微細なパターンを転写させることが可能である。
【0020】
EUVリソグラフィで用いられるフォトマスクは、一般に、ガラス基板などの基板上に極端紫外線領域光を反射する反射膜と、反射膜を保護するための保護膜と、極端紫外線領域光を吸収する光吸収膜とが、この順に形成された構造を有している。反射膜としては、低屈折率層と高屈折率層とを交互に積層することで、極端紫外線領域光が反射膜の表面に照射された際の反射率が高められている多層反射膜が使用される。通常、多層反射膜の低屈折率層としては、モリブデン(Mo)層が、高屈折率層としては、ケイ素(Si)層が、各々、使用される。保護膜としては、ルテニウム(Ru)膜が通常使用される。一方、光吸収膜には、EUV光に対する吸収係数の高い材料、具体的には、例えば、クロム(Cr)やタンタル(Ta)を主成分として含有する材料が用いられる。
【0021】
基板上に、極端紫外線領域光を反射する反射膜と、反射膜を保護するための保護膜と、極端紫外線領域光を吸収する光吸収膜とが、この順に形成された反射型フォトマスクブランクから、光吸収膜をパターニングして、反射型フォトマスクを製造する方法として、具体的には、以下のような方法が一般的である。まず、光吸収膜上にレジスト膜を形成し、このレジスト膜に、光又は電子線によりパターンを描画し、現像してレジストパターンを形成する。次に、光吸収膜のパターンを形成し、その後、レジストパターンを除去する。
【0022】
EUVリソグラフィで必要とされる反射型フォトマスクでは、メインパターンの解像性を補助する、ラインパターンのアシストパターンは、メインパターンの微細化に伴い、更に小さくなり、アシストパターンの線幅は、30nm程度、特に25nm程度まで低減することが必要とされる。そのため、位相シフトマスクブランクと比べて、反射型フォトマスクブランクでは、更なるレジスト膜の薄膜化が必要となる。
【0023】
反射型フォトマスクにおいてラインパターンのアシストパターンを30nm程度、特に25nm程度に形成するためには、レジスト膜の厚さを、80nm以下にする必要がある。例えば、タンタルを主成分として含有する光吸収膜から、レジストパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングで光吸収膜のパターン(回路パターン)を形成する場合、フッ素系ドライエッチングは、物理的成分が支配的な異方性エッチングであり、レジストパターンに対するエッチングレートが比較的速いため、レジストパターンが薄すぎると、光吸収膜に対するドライエッチング中に、レジストパターンが消失して、光吸収膜にピンホール欠陥が形成されてしまうことになり、正常な反射型フォトマスクを製造することができない。
【0024】
このピンホール欠陥を防ぐためには、レジスト膜を厚くする必要がある。しかし、レジスト膜が厚いほど、より微細なアシストパターンを形成するためのレジストパターンの縦横比(アスペクト比)が高くなるため、レジストパターン形成の現像工程において、現像液による衝撃、又はリンスプロセス時の純水による衝撃により倒れてしまい、所望の解像性が得られなくなってしまう。
【0025】
例えば、国際公開第2012/105508号(特許文献1)には、基板上に、EUV光を反射する層と、EUV光を吸収する吸収層と、ハードマスク層とが、この順に形成されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクが記載されている。この場合、吸収層を、タンタル(Ta)及びパラジウム(Pd)のうち少なくとも一方を主成分とする層、ハードマスク層を、クロム(Cr)と、窒素(N)又は酸素(O)と、水素(H)とを含有し、Cr及びN又はCr及びOの合計含有率が85~99.9at%、Hの含有率が0.1~15at%である層とすることにより、ハードマスク層の表面粗さが小さく、吸収層のエッチング条件におけるエッチング選択比が十分高く、かつ結晶状態がアモルファスとなり、表面粗さを十分小さくできること、これにより、ハードマスク層のパターン、更にはハードマスク層のパターンを用いて形成される吸収層のパターンのラインエッジラフネスが大きくなることがなく、高解像度のパターンを得ることができることが記載されている。
【0026】
また、国際公開第2012/105508号(特許文献1)には、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランクにパターン形成する手順について、以下のように記載されている。まず、EUVマスクブランクのハードマスク層上にレジスト膜を形成し、電子線描画機を用いて、レジスト膜にパターン形成する。次に、パターン形成されたレジスト膜をマスクとして、塩素系ガスプロセスによるエッチングを実施して、ハードマスク層にパターン形成する。次に、パターン形成されたハードマスク層をマスクとして、フッ素系ガスプロセスによるエッチングを実施して、吸収層にパターン形成する。次に、塩素系ガスプロセスによるエッチングを実施して、ハードマスク層を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
国際公開第2012/105508号(特許文献1)に記載されている方法では、例えば、CrNH膜又はCrOH膜をハードマスク層、タンタルを含有する膜を吸収層として、フッ素系ドライエッチングにより吸収層をパターニングする。この場合、クロムを含有する材料で形成された膜(CrNH膜及びCrOH膜)は、フッ素系ドライエッチングに対する耐性が高いためエッチングレートが遅く、タンタルを主成分として含有する膜は、フッ素系ドライエッチングに対する耐性が低いためエッチングレートが速いので、ハードマスク層を薄くすることができる。一方、タンタルを含有する膜は、塩素系ドライエッチングによりパターニングするが、ハードマスク層が薄くなれば、ドライエッチング中のレジスト膜の減少量も少なくなるので、ハードマスク層上に形成するレジスト膜を薄くすることができる。その結果、レジストパターンの縦横比(アスペクト比)が低くなり、レジストパターン形成の現像工程における、現像液による衝撃、又はリンスプロセス時の純水による衝撃の影響が小さくなることから、ハードマスク層により、良好なアシストパターンを形成することができる。
【0029】
しかし、前述したとおり、クロムを含有する材料で形成されたハードマスク層を、塩素系ガスを用いてドライエッチングする際には、クロムを含有する材料で形成されたハードマスク層が消失するクリアタイムに加えて、クリアタイムの100~300%のオーバーエッチングを行う必要があり、その場合、レジスト膜の厚さを80nm以下にすることができない。
【0030】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、基板上に、極端紫外線領域光である露光光を反射する多層反射膜と、多層反射膜を保護するための保護膜と、露光光を吸収する光吸収膜とを備える反射型フォトマスクブランクから反射型フォトマスクを製造する際に、線幅が30nm程度、特に25nm程度のアシストパターンを良好に形成することができる反射型フォトマスクブランク、具体的には、レジスト膜が薄くても、例えば、厚さが80nm以下のレジスト膜でも、線幅が30nm程度、特に25nm程度のアシストパターンを良好に形成することができる反射型フォトマスクブランクを提供することを第1の目的とする。更に、本発明は、このような反射型フォトマスクブランクから反射型フォトマスクを製造する方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
前述したように、従来の反射型フォトマスクブランクでは、厚さが80nm以下のレジスト膜では、ドライエッチング後にレジスト膜が残らず、微細なアシストパターンを良好に形成することができないという問題があった。
【0032】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、極端紫外線領域光である露光光を反射する多層反射膜と、多層反射膜を保護するための保護膜と、露光光を吸収する光吸収膜とを備える反射型フォトマスクブランクの光吸収膜上に、光吸収膜に接して、光吸収膜をドライエッチングによってパターン形成する際のハードマスクとして機能するハードマスク膜を設け、このハードマスク膜を、基板から最も離間する側に設けられた、塩素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつフッ素系ドライエッチングで除去可能な材料で形成されている第1層と、フッ素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつ塩素系ドライエッチングで除去可能な材料で形成されている第2層とを含む多層とし、光吸収膜を一の条件でフッ素系ドライエッチングしたときのエッチングクリアタイムを、ハードマスク膜の第1層を同じ条件でフッ素系ドライエッチングしたときのエッチングクリアタイムより長くなるようにすることにより、前述した課題を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0033】
従って、本発明は、以下の反射型フォトマスクブランク、及び反射型フォトマスクの製造方法を提供する。
1.基板と、
該基板上に形成され、極端紫外線領域光である露光光を反射する多層反射膜と、
該多層反射膜上に形成された、前記多層反射膜を保護するための保護膜と、
該保護膜上に形成され、前記露光光を吸収する光吸収膜と、
該光吸収膜上に、該光吸収膜に接して形成され、該光吸収膜をドライエッチングによってパターン形成する際のハードマスクとして機能するハードマスク膜と
を備える反射型フォトマスクブランクであって、
前記ハードマスク膜が、前記基板から最も離間する側に設けられた第1層と、第2層とを含む多層で構成され、
前記第1層が、塩素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつフッ素系ドライエッチングで除去可能な材料で形成され、
前記第2層が、フッ素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつ塩素系ドライエッチングで除去可能な材料で形成され、
前記光吸収膜を一の条件でフッ素系ドライエッチングしたときのエッチングクリアタイムが、前記ハードマスク膜の第1層を同条件でフッ素系ドライエッチングしたときのエッチングクリアタイムより長いことを特徴とする反射型フォトマスクブランク。
2.前記光吸収膜及び前記ハードマスク膜の第1層を前記一の条件でフッ素系ドライエッチングしたときの、前記ハードマスク膜の第1層のエッチングレートに対する前記光吸収膜のエッチングレートの比率が0.4以上2以下であることを特徴とする1に記載の反射型フォトマスクブランク。
3.前記第1層が、ケイ素を含有し、クロムを含有しない材料で形成されていることを特徴とする1に記載の反射型フォトマスクブランク。
4.前記第2層が、クロムを含有し、ケイ素を含有しない材料で形成されていることを特徴とする1に記載の反射型フォトマスクブランク。
5.前記第1層の厚さが、2nm以上14nm以下であることを特徴とする1に記載の反射型フォトマスクブランク。
6.前記第1層の厚さと、前記光吸収膜の厚さとの差が、30nm以上であることを特徴とする1に記載の反射型フォトマスクブランク。
7.前記第1層の厚さと、前記第2層の厚さとの差が、10nm以下であることを特徴とする1に記載の反射型フォトマスクブランク。
8.前記光吸収膜が、タンタルを含有する材料で形成されていることを特徴とする1に記載の反射型フォトマスクブランク。
9.1乃至8のいずれか1項に記載の反射型フォトマスクブランクから、前記光吸収膜のパターンを備える反射型フォトマスクを製造する方法であって、
(A)前記ハードマスク膜の前記基板から離間する側に接して、レジスト膜を形成する工程と、
(B)該レジスト膜をパターニングして、レジストパターンを形成する工程と、
(C)該レジストパターンをエッチングマスクとして、前記第1層を、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによりパターニングして、第1層のパターンを形成する工程と、
(D)前記レジストパターンを除去する工程と、
(E)前記第1層のパターンをエッチングマスクとして、前記第2層を、塩素系ガスを用いたドライエッチングによりパターニングして、第2層のパターンを形成する工程と、
(F)前記第2層のパターンをエッチングマスクとして、前記光吸収膜を、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによりパターニングして、光吸収膜のパターンを形成すると同時に、前記第1層のパターンを除去する工程と、
(G)前記第2層のパターンを、塩素系ガスを用いたドライエッチングにより除去する工程と
を含むことを特徴とする反射型フォトマスクの製造方法。
10.前記レジスト膜の厚さが、80nm以下であることを特徴とする9に記載の製造方法。
11.前記光吸収膜のパターンが、幅が25nm以下のラインパターンを含むことを特徴とする9に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、レジスト膜の厚さを薄くすることができ、レジストパターンの縦横比(アスペクト比)を低くして、線幅が30nm程度、特に25nm程度のアシストパターンを良好に形成することができる。そのため、反射型フォトマスクブランクから製造した反射型フォトマスクの転写パターンにおいて、高い解像性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の反射型フォトマスクブランクの第1の態様の一例を示す断面図である。
【
図2】本発明の反射型フォトマスクブランクの第2の態様の一例を示す断面図である。
【
図3】本発明の反射型フォトマスクの一例を示す断面図である。
【
図4】(A)~(G)は、本発明の反射型フォトマスクブランクから反射型フォトマスクを製造する工程を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の第1の態様の反射型フォトマスクブランクは、基板と、基板上に形成され、極端紫外線領域光である露光光を反射する多層反射膜と、多層反射膜上に形成された、多層反射膜を保護するための保護膜と、保護膜上に形成され、極端紫外線領域光である露光光を吸収する光吸収膜と、光吸収膜上に、光吸収膜に接して形成され、光吸収膜をドライエッチングによってパターン形成する際のハードマスクとして機能するハードマスク膜とを備える。このハードマスク膜は、基板から最も離間する側に設けられた第1層と、第2層とを含む多層で構成されている膜(積層膜)である。
【0037】
本発明の反射型フォトマスクブランクは、更に、レジスト膜を備えていてもよい。本発明の第2の態様の反射型フォトマスクブランクは、基板と、基板上に形成され、極端紫外線領域光である露光光を反射する多層反射膜と、多層反射膜上に形成された、多層反射膜を保護するための保護膜と、保護膜上に形成され、極端紫外線領域光である露光光を吸収する光吸収膜と、光吸収膜上に、光吸収膜に接して形成され、光吸収膜をドライエッチングによってパターン形成する際のハードマスクとして機能するハードマスク膜と、ハードマスク膜上に、ハードマスク膜に接して形成された、レジスト膜とを備える。このハードマスク膜は、基板から最も離間する側に設けられた第1層と、第2層とを含む多層で構成されている膜(積層膜)である。
【0038】
第1及び第2の態様の反射型フォトマスクブランクからは、例えば、基板と、基板上に形成され、極端紫外線領域光である露光光を反射する多層反射膜と、多層反射膜上に形成され、多層反射膜を保護するための保護膜と、保護膜上に形成され、極端紫外線領域光である露光光を吸収する光吸収膜のパターン(回路パターン又はフォトマスクパターン)とを備える反射型フォトマスクを得ることができる。
【0039】
以下、本発明の反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクの構造について、図面を参照して説明する。図面の説明において、同一の構成要素については、同一の参照符号を付して、説明を省略する場合がある。また、図面は、便宜上、拡張して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは、実際とは必ずしも同じではない。
【0040】
図1は、本発明の反射型フォトマスクブランクの第1の態様の一例を示す断面図である。この反射型フォトマスクブランク101は、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている、極端紫外線領域光である露光光を反射する多層反射膜2と、多層反射膜2上に、多層反射膜2に接して形成されている、多層反射膜2を保護するための保護膜3と、保護膜3上に、保護膜3に接して形成されている、露光光を吸収する光吸収膜4と、光吸収膜4上に、光吸収膜4に接して形成されている、光吸収膜4をドライエッチングによってパターン形成する際のハードマスクとして機能するハードマスク膜5とを備える。この場合、ハードマスク膜5は、基板から最も離間する側に設けられた第1層51と、第1層51の基板1側に設けられた第2層52とからなる2層で構成されている。言い換えれば、この反射型フォトマスクブランク101には、基板1側から、多層反射膜2、保護膜3、光吸収膜4、ハードマスク膜5の第2層52、及びハードマスク膜5の第1層51が、この順に積層されている。
【0041】
図2は、本発明の反射型フォトマスクブランクの第2の態様の一例を示す断面図である。この反射型フォトマスクブランク102は、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている、極端紫外線領域光である露光光を反射する多層反射膜2と、多層反射膜2上に、多層反射膜2に接して形成されている、多層反射膜2を保護するための保護膜3と、保護膜3上に、保護膜3に接して形成されている、露光光を吸収する光吸収膜4と、光吸収膜4上に、光吸収膜4に接して形成されている、光吸収膜4をドライエッチングによってパターン形成する際のハードマスクとして機能するハードマスク膜5と、ハードマスク5膜上に、ハードマスク5膜に接して形成されている、レジスト膜6とを備える。この場合、ハードマスク膜5は、基板から最も離間する側に設けられた第1層51と、第1層51の基板1側に設けられた第2層52とからなる2層で構成されている。言い換えれば、この反射型フォトマスクブランク102には、基板1側から、多層反射膜2、保護膜3、光吸収膜4、ハードマスク膜5の第2層52、ハードマスク膜5の第1層51、及びレジスト膜6が、この順に積層されている。
【0042】
図3は、本発明の反射型フォトマスク200の一例を示す断面図である。この反射型フォトマスクは、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている、極端紫外線領域光である露光光を反射する多層反射膜2と、多層反射膜2上に、多層反射膜2に接して形成されている、多層反射膜を保護するための保護膜3と、保護膜3上に、保護膜3に接して形成されている、露光光を吸収する光吸収膜のパターン(回路パターン又はフォトマスクパターン)4aとを備える。言い換えれば、この反射型フォトマスク200には、基板1側から、多層反射膜2、保護膜3、及び光吸収膜のパターン4aが、この順に積層されている。
【0043】
[基板]
基板の種類やサイズに特に制限はなく、反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクの基板は、露光波長において、透明であっても、透明でなくてもよい。基板には、例えば、石英基板などのガラス基板を用いることができる。また、基板には、例えば、SEMI規格において規定されている、6インチ角、厚さ0.25インチの6025基板と呼ばれる基板が好適である。6025基板は、SI単位系を用いた場合、通常、152mm角、厚さ6.35mmの基板と表記される。
【0044】
[多層反射膜]
多層反射膜は、極端紫外線領域光である露光光を反射する膜である。多層反射膜は、好ましくは基板に接して形成される。この極端紫外線領域光は、EUV光と呼ばれ、EUV光の波長は13~14nmであり、EUV光は、通常、波長が13.5nm程度の光である。多層反射膜を構成する材料は、塩素系ガス(例えば、Cl2ガスのみ、又はCl2ガスとO2ガスとの混合ガス)を用いたドライエッチング(塩素系ドライエッチング)に対して耐性を有し、かつフッ素系ガス(例えば、CF4ガス又はSF6ガス)を用いたドライエッチング(フッ素系ドライエッチング)で除去可能な材料であることが好ましい。多層反射膜を構成する材料として具体的には、例えば、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)などが挙げられる。多層反射膜としては、一般に、モリブデン(Mo)層とケイ素(Si)層とが交互に20~60層程度積層された積層膜(Si/Mo積層膜)が用いられる。多層反射膜の厚さは、200nm以上、特に220nm以上であることが好ましく、340nm以下、特に280nm以下であることが好ましい。
【0045】
[保護膜]
保護膜は、光吸収膜の多層反射膜を保護するための膜である。保護膜は、好ましくは多層反射膜に接して形成される。保護膜は、例えば、反射型フォトマスクへの加工における洗浄や、反射型フォトマスクの修正などにおいて、多層反射膜を保護するために設けられる。また、保護膜には、光吸収膜をエッチングによりパターニングするときの多層反射膜の保護や、多層反射膜の酸化を防止する機能を有するものが好ましい。保護膜を構成する材料は、光吸収膜とはエッチング特性が異なる材料であることが好ましく、具体的には、塩素系ドライエッチングに対して耐性を有する材料であることが好ましい。保護膜を構成する材料として具体的には、例えば、ルテニウム(Ru)を含有する材料が挙げられる。保護膜は、単層膜であっても、多層膜(例えば、2~4層で構成された膜)であってもよく、また、傾斜組成を有する膜であってもよい。保護膜の厚さは、1nm以上であることが好ましく、また、20nm以下であることが好ましい。
【0046】
[光吸収膜]
光吸収膜は、極端紫外線領域光である露光光を吸収する膜である。光吸収膜は、好ましくは保護膜に接して形成される。光吸収膜は、塩素系ドライエッチングに対して耐性を有し、フッ素系ドライエッチングで除去可能な材料であることが好ましい。光吸収膜は、タンタル(Ta)を含有する材料で形成されていることが好ましい。タンタルを含有する材料として具体的には、例えば、タンタル単体(Ta)、タンタル(Ta)と、酸素(O)、窒素(N)、ホウ素(B)などから選ばれる1種以上とを含有するタンタル化合物が挙げられる。このようなものとしては、例えば、タンタルからなる材料(Ta)、タンタルと酸素とからなる材料(TaO)、タンタルと窒素とからなる材料(TaN)、タンタルとホウ素とからなる材料(TaB)、タンタルと酸素と窒素とからなる材料(TaON)、タンタルと酸素とホウ素とからなる材料(TaOB)、タンタルと窒素とホウ素とからなる材料(TaNB)、タンタルと酸素と窒素とホウ素とからなる材料(TaONB)が挙げられる。光吸収膜は、単層膜であっても、多層膜(例えば、2~4層で構成された膜)であってもよく、また、傾斜組成を有する膜であってもよい。光吸収膜の厚さは、30nm以上、特に40nm以上、とりわけ50nm以上であることが好ましく、100nm以下、特に80nm以下、とりわけ74nm以下であることが好ましい。
【0047】
[ハードマスク膜]
本発明のハードマスク膜は、基板から最も離間する側に設けられた第1層と、基板から最も離間する側以外に設けられた第2層とを含む多層で構成されている。ハードマスク膜は、2層で構成されているものに限られず、3層以上で構成されていてもよく、例えば、3層、4層又は5層で構成されているものであってもよい。第2層は、基板に最も近い側に設けられていることが好ましい。
【0048】
ハードマスク膜の第1層は、塩素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつフッ素系ドライエッチングで除去可能な材料で形成されている。このようなエッチング特性により、第1層は、第2層のエッチングにおけるエッチングマスクとして機能する。第1層の材料としては、ケイ素(Si)を含有し、クロム(Cr)を含有しない材料が好適である。
【0049】
一方、ハードマスク膜の第2層は、フッ素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつ塩素系ドライエッチングで除去可能な材料で形成されている。このようなエッチング特性により、第2層は、光吸収膜のエッチングにおけるエッチングマスクとして機能する。第2層の材料としては、クロム(Cr)を含有し、ケイ素(Si)を含有しない材料が好適である。
【0050】
[ハードマスク膜の第1層]
第1層は、レジスト膜と接触する層である。また、第1層は、第2層のエッチングにおけるエッチングマスク(ハードマスク)として機能する層である。
【0051】
第1層の材料は、ケイ素以外に、酸素(O)、窒素(N)及び炭素(C)から選ばれる1種以上を含有していてもよく、特に、ケイ素と、酸素、窒素及び炭素から選ばれる1種以上とからなる材料が好ましい。第1層の材料がケイ素以外の元素を含む場合、ケイ素含有率は100原子%未満であるが、80原子%以下、特に60原子%以下であることが好ましい。ケイ素含有率が低い方が、第1層のフッ素系ドライエッチングにおけるエッチングレート(エッチング速度)が高くなる。一方、ケイ素含有率の下限は、通常、20原子%以上であり、30原子%以上であることが好ましい。
【0052】
第1層の材料は、窒素を含有していることが好ましく、特にケイ素と窒素からなる窒化ケイ素(SiN)が好適である。第1層の材料が窒素を含有している場合、ケイ素含有率は、20原子%以上、特に30原子%以上であることが好ましく、また、80原子%以下、特に60原子%以下であることが好ましい。一方、窒素含有率は、60原子%以下、特に55原子%以下であることが好ましい。窒素含有率の下限は、特に限定されるものではないが、1原子%以上、特に2原子%以上であることが好ましい。
【0053】
第1層の材料は、酸素を含有していることが好ましく、特にケイ素と酸素とからなる酸化ケイ素(SiO)が好適である。第1層の材料が酸素を含有している場合、ケイ素含有率は、20原子%以上、特に30原子%以上であることが好ましく、また、80原子%以下、特に60原子%以下であることが好ましい。一方、酸素含有率は、20原子%以上、特に25原子%以上であることが好ましく、また、70原子%以下、特に68原子%以下であることが好ましい。
【0054】
第1層の材料は、酸素と共に、窒素を含有していることが好ましく、特にケイ素と酸素と窒素とからなる窒化酸化ケイ素(SiON)が好適である。第1層の材料が酸素と窒素を含有している場合のケイ素含有率、窒素含有率及び酸素含有率は前述した範囲であることが好ましい。
【0055】
第1層は、第1層に接して形成されたレジストパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングによってパターニングされるが、薄いほどエッチング時間が短くなるので、第1層の厚さは、14nm以下、特に13nm以下、とりわけ12nm以下であることが好ましい。一方、薄すぎると、第2層のエッチングにおけるエッチングマスクとしての機能が失われ、また、ハードマスク膜の欠陥検査の感度が低下するため、第1層の厚さは、2nm以上、特に4nm以上であることが好ましい。
【0056】
ケイ素を含有し、クロムを含有しない材料は、第2層の塩素系ドライエッチングに対して耐性を有しており、第1層のパターンは、第2層のエッチングにおけるエッチングマスクとして機能する。更に、長時間のオーバーエッチングを必要としないフッ素系ドライエッチングでエッチングできるため、第1層のエッチングに用いるレジスト膜の厚さを薄くすることができる。特に、ケイ素と共に酸素を含有し、クロムを含有しない材料、好ましくは、各々の元素を前述した含有率で含有する材料、より好ましくは、酸素含有率が比較的高い組成である材料は、レジスト膜との密着性が高く、また、クロムを含有する材料と比べて、硫酸と過酸化水素水との混合液や、アンモニア添加水などで溶解し難く、欠陥検査などに必要な光学特性を安定して保つことが可能である。このような理由から、エッチングマスク膜の基板から最も離間する側を、このような第1層とすることで、微細なアシストパターンなどのラインパターンであっても、レジストパターン形成の現像工程における、現像液による衝撃、又はリンスプロセス時の純水による衝撃によって倒れ難く、良好なレジストパターンを形成することができ、高い解像性を得ることができる。
【0057】
なお、第1層の材料は、フッ素系ドライエッチングで除去可能な材料であることから、第1層のパターンは、光吸収膜のパターンを形成する際の、フッ素系ドライエッチングにおいて、光吸収膜のパターンの形成と同時に除去することができる。特に、光吸収膜のパターンを形成する際の、フッ素系ドライエッチングにおいて、光吸収膜のパターンの形成と同時に、第1層のパターンの厚さ方向全体を除去するためには、光吸収膜を一の条件でフッ素系ドライエッチングしたときのエッチングクリアタイムが、ハードマスク膜の第1層を同条件(光吸収膜のフッ素系ドライエッチングと同じ条件)でフッ素系ドライエッチングしたときのエッチングクリアタイムより長いことが必要である。
【0058】
また、光吸収膜及びハードマスク膜の第1層を一の条件でフッ素系ドライエッチングしたときの、ハードマスク膜の第1層のエッチングレート(nm/秒)に対する光吸収膜のエッチングレート(nm/秒)の比率は、0.4以上、特に0.7以上であることが好ましく、また、2以下、特に1.2以下であることが好ましい。更に、第1層の厚さと、光吸収膜の厚さとの差は、30nm以上、特に40nm以上、とりわけ44nm以上であることが好ましい。
【0059】
[ハードマスク膜の第2層]
第2層は、光吸収膜のエッチングにおけるエッチングマスク(ハードマスク)として機能する層である。
【0060】
第2層の材料は、クロム以外に、酸素(O)、窒素(N)及び炭素(C)から選ばれる1種以上を含有していてもよく、特に、クロムと、酸素、窒素及び炭素から選ばれる1種以上とからなる材料が好ましい。第2層の材料がクロム以外の元素を含む場合、クロムの含有率は100原子%未満であるが、98原子%以下、特に95原子%以下であることが好ましい。クロム含有率が低い方が、第2層の塩素系ドライエッチングにおけるエッチングレートが高くなる。一方、クロム含有率の下限は、通常、2原子%以上であり、5原子%以上であることが好ましい。
【0061】
第2層の材料は、窒素を含有していることが好ましく、特にクロムと窒素とからなる窒化クロム(CrN)が好適である。第2層の材料が窒素を含有している場合、クロム含有率は、5原子%以上、特に40原子%以上であることが好ましく、また、98原子%以下、特に96原子%以下であることが好ましい。一方、窒素含有率は、3原子%以上、特に5原子%以上であることが好ましく、また、60原子%以下、特に52原子%以下、とりわけ50原子%以下であることが好ましい。
【0062】
第2層は、第2層に接して形成された第1層のパターンをエッチングマスクとして、塩素系ドライエッチングによってパターニングされるが、第1層も塩素系ドライエッチングに曝されて徐々に薄くなり、第1層が消失してしまうと、第2層に、ピンホール欠陥が形成されることになり、第2層をエッチングマスクとして、光吸収膜をドライエッチングする際に、光吸収膜のエッチング時のプラズマが、ピンホール欠陥を通して、光吸収膜に到達してしまい、光吸収膜にピンホール欠陥が生じてしまうことになる。そのため、第2層は、エッチング時間が短くなる薄い方が好ましく、第2層の厚さは、16nm以下、特に10nm以下であることが好ましい。一方、薄すぎると、光吸収膜のエッチングにおけるエッチングマスクとしての機能が失われ、また、ハードマスク膜の欠陥検査の感度が低下するため、第2層の厚さは、2nm以上、特に4nm以上であることが好ましい。特に、第1層の厚さと、第2層の厚さとの差は、10nm以下、特に4nm以下であることが好ましい。
【0063】
クロムを含有し、ケイ素を含有しない材料は、光吸収膜のフッ素系ドライエッチングに対して耐性を有しており、第2層のパターンは、光吸収膜のエッチングにおけるエッチングマスクとして機能する。特に、クロムと共に、窒素を含有し、ケイ素を含有しない材料、好ましくは、各々の元素を前述した含有率で含有する材料は、エッチングレートが高く、エッチング時間が短くなる。このような理由から、エッチングマスク膜に、第1層と共に第2層を設けることで、高い解像性を得ることができる。
【0064】
なお、第2層の材料は、塩素系ドライエッチングで除去可能な材料であることから、光吸収膜が塩素系ドライエッチングに対して耐性を有する材料で形成されていれば、第2層のパターンは、光吸収膜のパターンを形成した後に、塩素系ドライエッチングで、光吸収膜のパターンを残して、除去することができる。
【0065】
[レジスト膜]
レジスト膜は、電子線で描画する電子線レジストでも、光で描画するフォトレジストでもよいが、化学増幅型レジストが好ましい。化学増幅型レジストは、ポジ型でもネガ型でもよく、例えば、ヒドロキシスチレン系の樹脂、(メタ)アクリル酸系樹脂などのベース樹脂と、酸発生剤とを含有し、必要に応じて、架橋剤、クエンチャー、界面活性剤などを添加したものが挙げられる。
【0066】
本発明のハードマスク膜は、基板から最も離間する側に第1層が設けられており、この第1層に形成するレジスト膜の厚さは、前述したように薄くすることができる。レジスト膜の厚さは、レジストパターン形成の現像工程において、微細なアシストパターンを形成するためのレジストパターンを、現像液による衝撃、又はリンスプロセス時の純水による衝撃に対して、倒れ難くする観点から、100nm以下であることが好ましく、また、幅が30nm程度、特に25nm程度のアシストパターンなどのラインパターンを良好に形成する観点からは、80nm以下、特に60nm以下であることが好ましい。レジスト膜の厚さの下限は、第1層のエッチングにおけるエッチングマスクとして機能する厚さであって、エッチング後に、第1層のパターン上の全体にレジストパターンが残っている厚さであればよく、特に限定されるものではないが、30nm以上、特に40nm以上であることが好ましい。
【0067】
本発明の多層反射膜、保護膜、光吸収膜、並びに第1層及び第2層を含むハードマスク膜の形成は、特に限定されるものではないが、制御性がよく、所定の特性を有する膜を形成しやすいことから、スパッタリング法による形成が好ましい。スパッタリング方式は、DCスパッタリング、RFスパッタリングなどが適用でき、特に制限はない。
【0068】
多層反射膜として、モリブデン層とケイ素層との積層膜を形成する場合、スパッタターゲットとしては、モリブデンターゲットとケイ素ターゲットを用いることができる。保護膜として、ルテニウムを含有する材料で形成された膜を形成する場合、スパッタターゲットとしては、ルテニウムターゲットを用いることができる。光吸収膜として、タンタルを含有する材料で形成された膜を形成する場合、スパッタターゲットとしては、タンタルターゲットを用いることができる。ハードマスク膜の、ケイ素を含有し、クロムを含有しない材料で形成された第1層、クロムを含有し、ケイ素を含有しない材料で形成された第2層を形成する場合、スパッタターゲットとしては、ケイ素ターゲット及びクロムターゲットを、各々、用いることができる。
【0069】
スパッタターゲットに投入する電力はスパッタターゲットの大きさ、冷却効率、膜形成のコントロールのし易さなどによって適宜設定すればよく、通常、スパッタターゲットのスパッタ面の面積当たりの電力として、50~3000W/cm2とすればよい。また、スパッタガスとしては、ヘリウムガス(Heガス)、ネオンガス(Neガス)、アルゴンガス(Arガス)などの希ガスが用いられ、各々の膜及び膜に含まれる層を。ターゲットの元素のみで形成する場合は、スパッタガスとして希ガスのみを用いればよい。
【0070】
各々の膜及び膜に含まれる層を、酸素、窒素又は炭素を含む材料で形成する場合、スパッタリングは、反応性スパッタリングが好ましい。反応性スパッタリングのスパッタガスとしては、ヘリウムガス(Heガス)、ネオンガス(Neガス)、アルゴンガス(Arガス)などの希ガスと、反応性ガスとが用いられる。例えば、酸素を含む材料で形成する場合は、反応性ガスとして酸素ガス(O2ガス)、窒素を含む材料の膜を形成する場合は、反応性ガスとして窒素ガス(N2ガス)を用いればよい。窒素と酸素の双方を含む材料で形成する場合は、反応性ガスとして、酸素ガス(O2ガス)、窒素ガス(N2ガス)、及び一酸化窒素ガス(NOガス)、二酸化窒素ガス(NO2ガス)、亜酸化窒素ガス(N2Oガス)などの酸化窒素ガスから適宜選択して用いればよい。炭素を含む材料で形成する場合は、反応性ガスとして、メタンガス(CH4)、一酸化炭素ガス(COガス)、二酸化炭素ガス(CO2ガス)などの炭素を含むガスを用いればよく、酸素と窒素と炭素を含む材料で形成する場合は、反応性ガスとして、例えば、酸素ガス(O2ガス)と窒素ガス(N2ガス)と二酸化炭素ガス(CO2)を同時に用いればよい。
【0071】
各々の膜及び膜に含まれる層の形成時の圧力は、膜応力、耐薬品性、洗浄耐性などを考慮して適宜設定すればよく、通常、0.01Pa以上、特に0.03Pa以上で、1Pa以下、特に0.3Pa以下とすることで、耐薬品性が向上する。また、各ガス流量は、所望の組成となるように適宜設定すればよく、通常0.1~100sccmとすればよい。
【0072】
反射型フォトマスクブランクの製造過程において、レジスト膜を形成する前に、基板又は基板及び基板上に形成した膜に、熱処理を施してもよい。熱処理の方法は、赤外線加熱、抵抗加熱などが適用でき、処理の条件も、特に制限はない。熱処理は、例えば、酸素を含むガス雰囲気で実施することができる。酸素を含むガスの濃度は、特に制限はなく、例えば、酸素ガス(O2ガス)の場合、1~100体積%とすることができる。熱処理の温度は、200℃以上、特に400℃以上とすることが好ましい。
【0073】
また、反射型フォトマスクブランクの製造過程において、レジスト膜を形成する前に、基板上に形成した膜、特に、ハードマスク膜に、オゾン処理やプラズマ処理などを施してもよく、処理の条件も、特に制限はない。いずれの処理も、膜の表面部の酸素濃度を増加させる目的で実施することができ、その場合、所定の酸素濃度となるように、処理条件を適宜調整すればよい。なお、膜をスパッタリングで形成する場合は、スパッタガス中の希ガスと、酸素ガス(O2ガス)、一酸化炭素ガス(COガス)、二酸化炭素ガス(CO2ガス)などの酸素を含むガス(酸化性ガス)との比率を調整することにより、膜の表面部の酸素濃度を増加させることも可能である。
【0074】
更に、反射型フォトマスクブランクの製造過程において、レジスト膜を形成する前に、基板又は基板上に形成した膜の表面上に存在する欠陥を除去するために、洗浄処理を実施してもよい。洗浄は、超純水、及びオゾンガス、水素ガスなどを含む超純水である機能水の一方又は双方を用いて実施することができる。また、界面活性剤を含む超純水で洗浄した後、超純水及び機能水の一方又は双方を用いて更に洗浄してもよい。洗浄は、必要に応じて超音波を照射しながら実施することができ、更に、UV光照射を組み合わせることもできる。
【0075】
レジスト膜の形成(レジストの塗布)の方法は、特に限定されず、公知の手法が適用できる。
【0076】
次に、本発明の反射型フォトマスクブランクから反射型フォトマスクを製造する方法について、図面を参照して説明する。本発明の反射型フォトマスクブランクから反射型フォトマスクを製造する場合、レジスト膜からレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、その下の膜又は層に、膜又は層を形成している材料に応じて、フッ素系ガスを用いたドライエッチング(フッ素系ドライエッチング)、又は塩素系ガスを用いたドライエッチング(塩素系ドライエッチング)を適用して、そのパターンを形成し、適時、パターンを除去する方法が適用できる。また、反射型フォトマスクの製造において、レジスト膜及びレジストパターンは、硫酸過水で除去することができる。
【0077】
図4は、本発明の反射型フォトマスクブランクから反射型フォトマスクを製造する工程を説明するための断面図である。まず、
図4(A)に示されるように、第1の態様の反射型フォトマスクブランク101のハードマスク膜5の基板1から離間する側に接して(即ち、第1層51に接して)、レジスト膜6を形成する(工程(A))。
【0078】
次に、
図4(B)に示されるように、レジスト膜6をパターニングして、レジストパターン6aを形成する(工程(B))。
【0079】
次に、
図4(C)に示されるように、レジストパターン6aをエッチングマスクとして、第1層51を、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによりパターニングして、第1層のパターン51aを形成する(工程(C))。
【0080】
次に、
図4(D)に示されるように、レジストパターン6aを除去する(工程(D))。
【0081】
次に、
図4(E)に示されるように、第1層のパターン51aをエッチングマスクとして、第2層52を、塩素系ガスを用いたドライエッチングによりパターニングして、第2層のパターン52aを形成する(工程(E))。これにより、第1層のパターン51aと、第2層のパターン52aとを含むハードマスク膜のパターン5aが形成される。
【0082】
次に、
図4(F)に示されるように、第2層のパターン52aをエッチングマスクとして、光吸収膜4を、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによりパターニングして、光吸収膜のパターン4aを形成すると同時に、第1層のパターン51aを除去する(工程(F))。ここで、ケイ素を含有し、クロムを含有しない材料で形成された第1層のパターン51aは、フッ素系ドライエッチングで除去されるが、クロムを含有し、ケイ素を含有しない材料で形成された第2層のパターン52aは、フッ素系ドライエッチングに対して耐性があるので、エッチングマスクとして機能し、ドライエッチング後も光吸収膜のパターン4a上に残る。
【0083】
次に、
図4(G)に示されるように、第2層のパターン52aを、塩素系ガスを用いたドライエッチングにより除去する(工程(G))。
【0084】
本発明の第2の態様の反射型フォトマスクブランクから反射型フォトマスクを製造する場合は、既にレジスト膜が形成されているので、工程(A)は省略することができ、工程(B)から工程(G)を実施すればよい。
【0085】
このような方法により、反射型フォトマスクブランクにレジスト膜を薄く、例えば80nm以下の厚さで形成して、又は厚さが例えば80nm以下の薄いレジスト膜が形成された反射型フォトマスクブランクから、光吸収膜をパターニングして、線幅が30nm以下(30nm又は30nm未満)、特に25nm以下(25nm又は25nm未満)であっても良好なアシストパターンなどのラインパターンを含む光吸収膜のパターンが形成された反射型フォトマスクを得ることができる。なお、本発明において、反射型フォトマスクの光吸収膜のパターンに形成されている、アシストパターンなどのラインパターンの幅の下限は、通常、10nm以上である。
【実施例0086】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0087】
[実施例1]
152mm角、厚さ約6mmの石英基板上に、多層反射膜と、保護膜と、光吸収膜と、第1層及び第2層からなるハードマスク膜とを、順に積層して、
図1に示されるような、反射型フォトマスクブランク(第1の態様の反射型フォトマスクブランク)を製造した。
【0088】
まず、ターゲットとして、モリブデンターゲットとシリコンターゲットを用い、スパッタガスとして、アルゴンガスを用いて、ターゲットへの印加電力を調整すると共に、スパッタガスの流量を調整し、モリブデンターゲットによるスパッタリングと、シリコンターゲットによるスパッタリングとを交互に行って、石英基板上に、波長13.5nmの光に対する反射率が67%であるモリブデン(Mo)とケイ素(Si)層とが交互に積層された積層膜(厚さ280nm)である多層反射膜を形成した。
【0089】
次に、ターゲットとして、ルテニウムを用い、スパッタガスとして、アルゴンガスを用いて、ターゲットへの印加電力を調整すると共に、スパッタガスの流量を調整してスパッタリングを行って、多層反射膜上に、ルテニウムを含有する材料で形成された保護膜として、ルテニウム(Ru)膜(厚さ4nm)を形成した。
【0090】
次に、ターゲットとして、タンタルターゲットを用い、スパッタガスとして、アルゴンガスと窒素ガスを用い、ターゲットへの印加電力を調整すると共に、スパッタガスの流量を調整してスパッタリングを行って、保護膜上に、タンタルを含有する材料で形成された光吸収膜として、窒化タンタル(TaN)膜(厚さ64nm)を形成した。
【0091】
次に、ターゲットとして、クロムターゲットを用い、スパッタガスとして、アルゴンガスと窒素ガスを用い、ターゲットへの印加電力を調整すると共に、スパッタガスの流量を調整してスパッタリングを行って、光吸収膜上に、ハードマスク膜の、クロムを含有し、ケイ素を含有しない材料で形成された第2層として、窒化クロム(CrN)層を形成した。
【0092】
更に、ターゲットとして、ケイ素ターゲットを用い、スパッタガスとして、アルゴンガスと窒素ガスを用い、ターゲットへの印加電力を調整すると共に、スパッタガスの流量を調整してスパッタリングを行って、第2層上に、ハードマスク膜の、ケイ素を含有し、クロムを含有しない材料で形成された第1層として、窒化ケイ素(SiN)層を形成して、反射型フォトマスクブランクを得た。第1層及び第2層の組成、第1層及び第2層の厚さを表1に示す。なお、組成は、X線光電子分光分析装置を用いて測定し、厚さは、X線回折装置を用いて測定した(以下同じ)。
【0093】
[実施例2]
第1層の形成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして、反射型フォトマスクブランクを得た。第1層は、ターゲットとして、ケイ素ターゲットを用い、スパッタガスとして、アルゴンガスと酸素ガスを用い、ターゲットへの印加電力を調整すると共に、スパッタガスの流量を調整してスパッタリングを行って、第2層上に、ハードマスク膜の、ケイ素を含有し、クロムを含有しない材料で形成された第1層として、酸化ケイ素(SiO)層を形成した。第1層及び第2層の組成、第1層及び第2層の厚さを表1に示す。
【0094】
[実施例3]
第1層の形成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして、反射型フォトマスクブランクを得た。第1層は、ターゲットとして、ケイ素ターゲットを用い、スパッタガスとして、アルゴンガスと窒素ガスと酸素ガスを用い、ターゲットへの印加電力を調整すると共に、スパッタガスの流量を調整してスパッタリングを行って、第2層上に、ハードマスク膜の、ケイ素を含有し、クロムを含有しない材料で形成された第1層として、窒化酸化ケイ素(SiNO)層を形成した。第1層及び第2層の組成、第1層及び第2層の厚さを表1に示す。
【0095】
[実施例4]
第1層のケイ素と酸素と窒素の比率を変更した以外は、実施例3と同様にして、反射型フォトマスクブランクを得た。第1層及び第2層の組成、第1層及び第2層の厚さを表1に示す。
【0096】
[比較例1]
クロムを含有し、ケイ素を含有しない材料で形成された層のみからなるハードマスク膜(第2層のみからなるハードマスク膜に相当)を、光吸収膜上に形成した以外は、実施例1と同様にして、反射型フォトマスクブランクを得た。ハードマスク膜の組成及び厚さを表1に示す。
【0097】
[比較例2]
ハードマスク膜のクロムと窒素の比率を変更した以外は、比較例1と同様にして、反射型フォトマスクブランクを得た。第1層及び第2層の組成、ハードマスク膜の組成及び厚さを表1に示す。
【0098】
【0099】
[第1層のフッ素系ドライエッチングのクリアタイム]
実施例1~4で得られた反射型フォトマスクブランクを用いて、フッ素系ドライエッチングにより、第1層が消失するまでの時間(クリアタイム)を測定した。フッ素系ドライエッチングのクリアタイムは、第1層に対して下記条件(条件1)でドライエッチングを行い、終点検出までの時間(エンドポイントまでの時間)とした。結果を表2に示す。
【0100】
<第1層のフッ素系ドライエッチングの条件(条件1)>
装置:ICP(Inductively Coupled Plasma(誘導結合プラズマ))方式
ガス:SF6ガス+Heガス
ガス圧力:4.0mTorr(0.53Pa)
ICP電力:400W
【0101】
[第2層の塩素系ドライエッチングのクリアタイム]
実施例1~4及び比較例1、2で得られた反射型フォトマスクブランクについて、第1層のフッ素系ドライエッチングのクリアタイムの測定後に、塩素系ドライエッチングにより、第2層が消失するまでの時間(クリアタイム)を測定した。塩素系ドライエッチングのクリアタイムは、第2層に対して下記条件(条件2)でドライエッチングを行い、終点検出までの時間(エンドポイントまでの時間)とした。結果を表2に示す。
【0102】
<第2層の塩素系ドライエッチングの条件(条件2)>
装置:ICP(Inductively Coupled Plasma(誘導結合プラズマ))方式
ガス:Cl2ガス+O2ガス
ガス圧力:3.0mTorr(0.40Pa)
ICP電力:350W
【0103】
[光吸収膜のフッ素系ドライエッチングのクリアタイム]
実施例1~4及び比較例1、2で得られた反射型フォトマスクブランクについて、第1層のフッ素系ドライエッチングのクリアタイムの測定、及び第2層の塩素系ドライエッチングのクリアタイムの測定後に、光吸収膜が消失するまでの時間(クリアタイム)を測定した。フッ素系ドライエッチングのクリアタイムは、光吸収膜に対して、上記条件1と同じ下記条件(条件3)でドライエッチングを行い、終点検出までの時間(エンドポイントまでの時間)とした。結果を表2に示す。
【0104】
<光吸収膜のフッ素系ドライエッチングの条件(条件3)>
装置:ICP(Inductively Coupled Plasma(誘導結合プラズマ))方式
ガス:SF6ガス+Heガス
ガス圧力:4.0mTorr(0.53Pa)
ICP電力:400W
【0105】
【0106】
[第1層のフッ素系ドライエッチングにおけるレジスト膜の減少量]
実施例1~4で得られた反射型フォトマスクブランクを用いて、フッ素系ドライエッチングにより、第1層が消失するまでに、レジスト膜が減少する量(厚さ)を測定した。まず、第1層上に、ポジ型化学増幅型電子線レジストをスピンコートして、厚さ60nmのレジスト膜を形成した。次に、電子線描画装置を用いて、ドーズ量100μC/cm2で、長辺100,000nm、短辺60nmの孤立ラインパターンを計20本描画した。次に、熱処理装置を用いて、115℃で14分間熱処理(PEB:Post Exposure Bake)を行った。次に、パドル現像で、42秒間現像処理を行い、レジストパターンを形成した。次に、レジストパターンをエッチングマスクとして、第1層に対してフッ素系ドライエッチングを、前述した条件1で、20%のオーバーエッチングで行い、第1層のパターンを形成した。その後、第1層のパターン上に残存したレジストパターンの厚さを測定し、減少した厚さを算出した。結果を表3に示す。レジストパターンの厚さは、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いて測定し、測定範囲は200nm×200nmの正方形領域とした(以下同じ)。
【0107】
また、得られた減少量から、第1層のフッ素系ドライエッチングとして、20%のオーバーエッチングをした後に、レジストパターンが20nmの厚さで残存するのに必要なレジスト膜の厚さを算出した。結果を表3に示す。この厚さは、後述する、実施例1~4の反射型フォトマスクブランクを用いた反射型フォトマスクの製造において、最小限必要なレジスト膜の厚さである。エッチング後に残存するレジストパターンの厚さが薄すぎると、フッ素系プラズマが第1層に到達して、ピンホール欠陥が形成されてしまうため、ここでは、ドライエッチング後に残存するレジストパターンの厚さを20nmに設定した。結果を表3に示す。
【0108】
[第2層の塩素系ドライエッチングにおけるレジスト膜の減少量]
比較例1、2で得られた反射型フォトマスクブランクを用いて、塩素系ドライエッチングにより、第2層が消失するまでに、レジスト膜が減少する量(厚さ)を測定した。まず、第2層上に、ポジ型化学増幅型電子線レジストをスピンコートして、厚さ60nmのレジスト膜を形成した。次に、電子線描画装置を用いて、ドーズ量100μC/cm2で、長辺100,000nm、短辺60nmの孤立ラインパターンを計20本描画した。次に、熱処理装置を用いて、115℃で14分間熱処理(PEB:Post Exposure Bake)を行った。次に、パドル現像で、42秒間現像処理を行い、レジストパターンを形成した。次に、レジストパターンをエッチングマスクとして、第2層に対して塩素系ドライエッチングを、前述した条件2で、300%のオーバーエッチングで行い、第2層のパターンを形成した。その後、第2層のパターン上に残存したレジストパターンの厚さを測定し、減少した厚さを算出した。結果を表3に示す。
【0109】
また、得られた減少量から、第2層の塩素系ドライエッチングとして、300%のオーバーエッチングをした後に、レジストパターンが20nmの厚さで残存するのに必要なレジスト膜の厚さを算出した。結果を表3に示す。この厚さは、後述する、比較例1、2の反射型フォトマスクブランクを用いた反射型フォトマスクの製造において、最小限必要なレジスト膜の厚さである。エッチング後に残存するレジストパターンの厚さが薄すぎると、塩素系プラズマが第2層に到達して、ピンホール欠陥が形成されてしまうため、ここでは、ドライエッチング後に残存するレジストパターンの厚さを20nmに設定した。
【0110】
【0111】
[実施例5~8]
実施例1~4で得られた反射型フォトマスクブランクのハードマスク膜(第1層)上に、ポジ型化学増幅型電子線レジストをスピンコートしてレジスト膜を形成して、
図2に示されるような、レジスト膜を有する反射型フォトマスクブランク(第2の態様の反射型フォトマスクブランク)を得た。このレジスト膜の厚さは、前述した、フッ素系ドライエッチング後に、厚さ20nmのレジストパターンが残存する厚さであり、かつ、用いたレジスト材料で、レジスト膜を安定した厚さで形成できる厚さの下限である40nm以上の厚さとした。レジスト膜の厚さを表4に示す。
【0112】
孤立ラインパターンのアシストパターンに相当する微細パターンの解像限界を評価するため、得られたレジスト膜を有する反射型フォトマスクブランクを用いて、反射型フォトマスクを製造した。まず、電子線描画装置を用いて、ドーズ量100μC/cm2で、ラインパターンのアシストパターンに相当するテストパターンとして、長辺寸法が80nmで、短辺寸法を20nmから60nmまで1nmずつ変更した、短辺寸法が異なる孤立パターンを、合計20万本描画した。次に、熱処理装置を用いて、110℃で14分間熱処理(PEB:Post Exposure Bake)を行った。次に、パドル現像で、45秒間現像処理を行い、レジストパターンを形成した。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、第1層に対してフッ素系ドライエッチングを、前述した条件1で、20%のオーバーエッチングで行い、第1層のパターンを形成した。次に、残存しているレジストパターンを、硫酸過水(硫酸と過酸化水素水(硫酸:過酸化水素水=3:1の混合液))による洗浄によって除去した。次に、第1層のパターンをエッチングマスクとして、第2層に対して塩素系ドライエッチングを、前述した条件2で、300%のオーバーエッチングで行い、第2層のパターンを形成した。
【0113】
次に、第2層のパターンをエッチングマスクとして、光吸収膜に対して前述した条件3で、フッ素系ドライエッチングを行い、光吸収膜のパターンを形成すると同時に、第1層のパターンを除去した。
【0114】
次に、第2層のパターンに対して塩素系ドライエッチングを、前述した条件2で、50%のオーバーエッチングで行い、第2層のパターンを除去して、反射型フォトマスクを得た。
【0115】
次に、外観検査装置を用いて、得られたフォトマスクのテストパターンの解像限界を評価した。全ての孤立パターンについて、パターン消失、パターン倒れ及びパターン形状不良を評価し、外観検査装置が、パターン消失、パターン倒れ及びパターン形状不良のいずれかを検出した孤立パターンを欠陥とし、欠陥が検出された孤立パターンがない最小の短辺寸法を解像限界とした。結果を表4に示す。
【0116】
[比較例3、4]
比較例1、2で得られた反射型フォトマスクブランクのハードマスク膜上に、ポジ型化学増幅型電子線レジストをスピンコートしてレジスト膜を形成して反射型フォトマスクブランクを得た。このレジスト膜の厚さは、前述した、塩素系ドライエッチング後に、厚さ20nmのレジストパターンが残存する厚さであり、かつ、用いたレジスト材料で、レジスト膜を安定した厚さで形成できる厚さの下限である40nm以上の厚さとした。レジスト膜の厚さを表4に示す。
【0117】
孤立ラインパターンのアシストパターンに相当する微細パターンの解像限界を評価するため、得られたレジスト膜を有する反射型フォトマスクブランクを用いて、反射型フォトマスクを製造した。まず、実施例と同様の方法で、レジストパターンを形成した。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、ハードマスク膜に対して塩素系ドライエッチングを、前述した条件2で、300%のオーバーエッチングで行い、ハードマスク膜のパターンを形成した。次に、残存しているレジストパターンを、硫酸過水(硫酸と過酸化水素水(硫酸:過酸化水素水=3:1の混合液))による洗浄によって除去した。
【0118】
次に、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、光吸収膜に対して、前述した条件3で、フッ素系ドライエッチングを行い、光吸収膜のパターンを形成した。
【0119】
次に、ハードマスク膜のパターンに対して塩素系ドライエッチングを、前述した条件2で、50%のオーバーエッチングで行い、ハードマスク膜のパターンを除去して、反射型フォトマスクを得、外観検査装置を用いて、実施例と同様の方法で、テストパターンの解像限界を評価した。結果を表4に示す。
【0120】
【0121】
表4に示されるように、実施例1~4の反射型フォトマスクブランクのハードマスク膜は、基板から最も離間する側が、塩素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつフッ素系ドライエッチングで除去可能な材料で形成された第1層となっており、実施例1~4の反射型フォトマスクブランクでは、比較例1、2の反射型フォトマスクブランクと比べて、レジスト膜を薄くすることができ、特に良好な解像限界が得られていることがわかる。これは、レジスト膜が薄いため、線幅が狭いパターンでも、レジストパターン形成の現像工程における、現像液による衝撃、又はリンスプロセス時の純水による衝撃により、レジストパターンが倒れることが軽減されているためと考えられる。
【0122】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。前記実施形態は、一例であり、本発明の技術的思想と同一又は実質的に同一の構成を有し、同一又は同様の作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
スパッタターゲットに投入する電力はスパッタターゲットの大きさ、冷却効率、膜形成のコントロールのし易さなどによって適宜設定すればよく、通常、スパッタターゲットのスパッタ面の面積当たりの電力として、50~3000W/cm2とすればよい。また、スパッタガスとしては、ヘリウムガス(Heガス)、ネオンガス(Neガス)、アルゴンガス(Arガス)などの希ガスが用いられ、各々の膜及び膜に含まれる層を、ターゲットの元素のみで形成する場合は、スパッタガスとして希ガスのみを用いればよい。
また、得られた減少量から、第1層のフッ素系ドライエッチングとして、20%のオーバーエッチングをした後に、レジストパターンが20nmの厚さで残存するのに必要なレジスト膜の厚さを算出した。結果を表3に示す。この厚さは、後述する、実施例1~4の反射型フォトマスクブランクを用いた反射型フォトマスクの製造において、最小限必要なレジスト膜の厚さである。エッチング後に残存するレジストパターンの厚さが薄すぎると、フッ素系プラズマが第1層に到達して、ピンホール欠陥が形成されてしまうため、ここでは、ドライエッチング後に残存するレジストパターンの厚さを20nmに設定した。