(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168008
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】固形薬剤収容体及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
B01F 21/00 20220101AFI20231116BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20231116BHJP
B01F 23/50 20220101ALI20231116BHJP
B01F 35/53 20220101ALI20231116BHJP
【FI】
B01F21/00 102
C02F1/00 K
B01F23/50
B01F35/53
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079601
(22)【出願日】2022-05-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】今泉 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】居安 隆志
(72)【発明者】
【氏名】飯村 晶
(72)【発明者】
【氏名】山田 聡
【テーマコード(参考)】
4G035
4G037
【Fターム(参考)】
4G035AA25
4G037DA30
4G037EA10
(57)【要約】
【課題】固形薬剤がブリッジを形成することを抑制し、固形薬剤の全量が徐々に溶解するよう構成された固形薬剤収容体と、この固形薬剤収容体を用いた水処理方法を提供する。
【解決手段】複数の水溶性固形薬剤を収容可能な収容空間13と、該収容空間13に水を流入させる流入口と、該収容空間13から水を流出させる流出口を有する収納容器10の該収容空間13に、水溶性固形薬剤の錠剤Tを積層させて配置した固形薬剤収容体において、該錠剤Tの層同士の間に水不溶性フィルムFを介在させた固形薬剤収容体。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の水溶性固形薬剤を収容可能な収容空間と、該収容空間に水を流入させる流入口と、該収容空間から水を流出させる流出口を有する収納容器の該収容空間に、水溶性固形薬剤を積層させて配置した固形薬剤収容体において、
該固形薬剤の層同士の間に水不溶性フィルムを介在させたことを特徴とする固形薬剤収容体。
【請求項2】
前記収納容器は、上部部材と下部部材とを嵌合してなる容器本体と、
該容器本体の内部を該収容空間と非収容空間とに区画する区画壁と、
該収容空間と該非収容空間を連通して該収容空間と該非収容空間との間を水が流通可能とし、前記流入口及び流出口として機能する区画壁連通路と、
該収納容器の内と外を連通して該容器本体の外部と該非収容空間との間を水が流通可能とする容器連通路を有している、
請求項1に記載の固形薬剤収容体。
【請求項3】
前記水不溶性フィルムが合成樹脂フィルムである、請求項1に記載の固形薬剤収容体。
【請求項4】
前記合成樹脂がポリエチレン又はポリ塩化ビニルである請求項3に記載の固形薬剤収容体。
【請求項5】
前記フィルムの面積が前記収容空間の水平断面積の1/2以上である請求項1に記載の固形薬剤収容体。
【請求項6】
前記フィルムの面積が前記収容空間の水平断面積の80%以上である請求項1に記載の固形薬剤収容体。
【請求項7】
前記水溶性固形薬剤は錠剤である、請求項1に記載の固形薬剤収容体。
【請求項8】
被処理水に固形薬剤を溶解させて添加する水処理方法において、請求項1~7のいずれかの固形薬剤収容体と該被処理水とを接触させることにより固形薬剤を溶解させて被処理水に添加することを特徴とする水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性固形薬剤を収容した固形薬剤収容体に関し、具体的には、被処理水との接触によって水溶性固形薬剤を除々に溶解させて被処理水中に放出する機能を有する固形薬剤収容体に関する。また、本発明は、この固形薬剤収容体を用いて水処理を行う水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理水に対し、水溶性固形薬剤を除々に溶解させる固形薬剤収容体として、特許文献1に、複数の水溶性固形薬剤を収容可能な収容空間と、該収容空間に被処理水を流入させる流入口と、該収容空間から被処理水を流出させる流出口を有し、該収容空間に、水溶性固形薬剤を、水溶性フィルムを介して垂直方向に積層し、該水溶性フィルムの少なくとも一部を、該流入口及び該流出口よりも上方に配置した、固形薬剤収容体が記載されている。
【0003】
この固形薬剤収容体によれば、収納容器に収納した複数の水溶性固形薬剤のうち、収納容器の流入口と流出口の間に形成される被処理水の流路に晒されない薬剤は、その直下の薬剤が溶解しつつある最中でも、水溶性フィルムの存在によって濡れが低減され、水溶性フィルムの存在以外は同じ条件で使用した場合と比べて、水溶性固形薬剤の含水率を低減し、薬剤の有効成分の残存率を高めることができる。
【0004】
ところが、この特許文献1の固形薬剤収容体にあっては、水分(水蒸気、水滴、毛細管現象による上昇水など)で水溶性フィルムが溶解し、フィルムの上側の固形薬剤が水分を吸収して膨潤し、ブリッジを形成することがあった。
【0005】
固形薬剤のブリッジ防止方法として、特許文献2には、容器内に充填した固形薬剤の最上部に錘(落し蓋)を置くことにより、錘の重さで固形薬剤を押し下げてブリッジを防止することが記載されている。特許文献3には連続的かつ自動的に溶出させるための装置として、有孔傾斜面を有する固形薬剤溶出器を備えた固形薬剤連続自動溶出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-167239号公報
【特許文献2】特開2013-240778号公報
【特許文献3】特開2000-117263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術では、水溶性フィルムが湿気によって溶解し、フィルム上側に位置する水溶性固形薬剤が膨潤してブリッジを形成するおそれがあった。
【0008】
ブリッジを防止するために、容器内に錘を設置する場合、錘の体積分のスペースが必要となり、固形薬剤の充填量を減らさざるを得ない。また、有孔傾斜面を有する固形薬剤溶出器を用いる場合、固形薬剤充填筒の他に複雑な形状、構造の部品が必要となる。
【0009】
本発明は、固形薬剤がブリッジを形成することを抑制し、固形薬剤の全量が徐々に溶解するよう構成された固形薬剤収容体と、この固形薬剤収容体を用いた水処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の固形薬剤収容体は、複数の水溶性固形薬剤を収容可能な収容空間と、該収容空間に水を流入させる流入口と、該収容空間から水を流出させる流出口を有する収納容器の該収容空間に、水溶性固形薬剤を積層させて配置した固形薬剤収容体において、該固形薬剤の層同士の間に水不溶性フィルムを介在させたことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様では、前記収納容器は、上部部材と下部部材とを嵌合してなる容器本体と、該容器本体の内部を該収容空間と非収容空間とに区画する区画壁と、該収容空間と該非収容空間を連通して該収容空間と該非収容空間との間を水が流通可能とし、前記流入口及び流出口として機能する区画壁連通路と、該収納容器の内と外を連通して該容器本体の外部と該非収容空間との間を水が流通可能とする容器連通路を有している。
【0012】
本発明の一態様では、前記水不溶性フィルムが合成樹脂フィルムである。
【0013】
本発明の一態様では、前記合成樹脂がポリエチレン又はポリ塩化ビニルである。
【0014】
本発明の一態様では、前記フィルムの面積が前記収容空間の水平断面積の1/2以上、特に好ましくは80%以上である。
【0015】
本発明の水処理方法は、被処理水に固形薬剤を溶解させて添加する水処理方法において、本発明の固形薬剤収容体と該被処理水とを接触させることにより固形薬剤を溶解させて被処理水に添加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の固形薬剤収容体では、固形薬剤の層間に水不溶性のフィルムを介在させたことにより、フィルム上側の固形薬剤に対し湿気(水蒸気、水滴、毛細管現象による上昇水など)が伝わることが抑制され、固形薬剤の膨潤が抑制される。この結果、固形薬剤がブリッジを形成することが抑制される。このため、本発明の固形薬剤収容体及びこの固形薬剤収容体を用いた水処理方法によると、固形薬剤の成分を長期にわたって持続的に被処理水に溶解させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】固形薬剤収容体の一の実施形態に係る収納容器の概略を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した固形薬剤収容体の縦断面図である。
【
図3】固形薬剤収容体への固形薬剤の充填状態の概略説明図である。
【
図4】固形薬剤収容体の固形薬剤の溶解状況の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。本実施形態では、被処理水が冷却塔の冷却水である場合について説明するが、被処理水は、スイミングプールの循環水など、その他の水であってもよい。
【0019】
[収納容器]
本発明の固形薬剤収容体の収納容器は、被処理水を容器内に流入させる流入口と、容器内に流入した被処理水を容器外に流出させる流出口を有する。例えば、収納容器は、筒状部と、筒状部の両端を封止する上面部及び下面部と、該筒状部及び/又は該下面部に設けられた流入口と、該筒状部及び/又は該下面部に設けられた流出口とを有するものである。なお、流入口は流出口を兼ねてもよい。
【0020】
図1は、収納容器の一例を示す斜視図、
図2はその縦断面図である。この収納容器10は、略円筒状の容器本体11を有する。
図2に示すように、容器本体11の内部は、円筒状の区画壁12によって、水溶性固形薬剤を収容する収容空間13と、水溶性固形薬剤を収容しない非収容空間14とに区画されている。
【0021】
<容器本体11>
容器本体11は、上部部材11aと下部部材11bとから構成されている。上部部材11aは、天部11tと、天部11tの外周縁から垂下する円筒形の垂下壁11rと、天部11tから垂下する、円筒形の区画壁12とを有する。垂下壁11rと区画壁12とは、同軸状に設けられている。下部部材11bは、底面11fと、側周面11sとを有する。
【0022】
なお、垂下壁11r、区画壁12、及び側周面11sは円筒形以外の形状であってもよく、例えば、楕円筒形や、四角又は五角以上の多角筒形などであってもよい。
【0023】
上部部材11aと下部部材11bとは、分離可能であり、かつ、容易に一体化しやすい構造(例えば、嵌め合わせ構造)であることが好ましい。この実施の形態では、上部部材11aの垂下壁11rと、下部部材11bの側周面11sの上部とが着脱可能に嵌合している。
【0024】
上部部材11aの天部11tには、水が流通可能な容器連通路としての孔15aが設けられている。孔15aは、天部11tのうち、区画壁12と垂下壁11rとの間に配置されている。複数個の孔15aが周方向に略等間隔に配置されている。この孔15aによって、非収容空間14は収納容器10の上方の外部と連通している。
【0025】
下部部材11bの側周面11sと底面11fとの交差部付近には、水が流通可能な容器連通路としての孔15bが設けられている。複数個の孔15bが周方向に略等間隔に配置されている。
【0026】
下部部材11bの底面11fには、水が流通可能な容器連通路としての孔15cが設けられている。複数個の孔15cは、底面11fの全体に略均等に配置されている。
【0027】
<区画壁12>
区画壁12は、上部部材11aの天部11tから垂設されている。区画壁12の内側が収容空間13である。区画壁12の直径(内径)は20~200mm特に50~70mm程度が好ましい。区画壁12が非円筒形の場合、収容空間13の水平断面積は、300~30000mm2特に2000~4000mm2程度が好ましい。
【0028】
区画壁12の外径は、側周面11sの内径よりも小さく、区画壁12と側周面11sとの間が非収容空間14となっている。
【0029】
区画壁12の下端と、これと対向する下部部材11bの底面11fとの間の間隙が、収容空間13と非収容空間14とを連通する区画壁連通路16となっている。この実施の形態では、区画壁12の下端と底面11fとの間隔(区画壁連通路16の上下幅)は、好ましくは1~50mm、特に好ましくは3~10mmである。
【0030】
本実施形態では、この区画壁連通路16が「流入口」及び「流出口」として機能し、孔(容器連通路)15b及び15cが「流出口」として機能する。
【0031】
なお、区画壁連通路16は、水が流通可能であれば、その形状や大きさ、配置、数は特に限定されるものではなく、冷却水の所望の流通量に応じて、適宜定めることができる。区画壁の下端と、これと対向する容器本体の底面とが接しており、該区画壁と該容器本体の底面との間の一部に水の流通孔が設けられているような態様で区画壁連通路が形成されていてもよい。
【0032】
本実施形態の収納容器10は、透明又は半透明のポリプロピレン等の合成樹脂製であり、 容器内部の水溶性固形薬剤の状態を容器外側から簡便に目視観察できるようになっている。この合成樹脂は、耐水性及び耐薬品性を有することが好ましい。
【0033】
[水溶性固形薬剤]
水溶性固形薬剤は特に限定されないが、例えば、冷却塔の冷却水の水処理剤として用いることができる固形薬剤などが例示される。
【0034】
冷却塔の冷却水の水処理剤として用いることができる水溶性固形薬剤は、ホスホン酸、アゾール系銅用防食剤及び水酸化カルシウム等を含んだ冷却水マルチ薬品が好適であるが、次亜塩素酸カルシウム、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸、亜塩素酸、ブロモクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン(BCDMH)などの固形塩素系酸化剤や、その他の薬剤であってもよい。
【0035】
水溶性固形薬剤の形態は、円形盤状の錠剤であることが好ましい。
【0036】
錠剤は、直径が5~100mm特に10~30mm、厚さが1~50mm特に10~20mmであることが好ましい。
【0037】
容器内に配置する錠剤の層の数は、2~10特に5~6程度であることが好ましい。
【0038】
[水不溶性フィルム]
水不溶性フィルムとしては、水不溶性で水不透過性の合成樹脂よりなるフィルムが好適であるが、金属、セラミックスなどであってもよい。合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどが好適である。
【0039】
合成樹脂製水不溶性フィルムの厚さは1000μm以下、例えば10~100μm程度であることが好ましい。水不溶性フィルムの形状は特に限定されるものではなく、適宜定めることができる。
【0040】
本発明では、水不溶性フィルムの面積が収容空間13の水平断面積(固形薬剤収容体を、区画壁の軸心線方向が鉛直方向となるように設置した状態における水平断面積)の1/2以上であってよく、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、88%以上が特に好ましい。なお、このフィルムが過度に大きいと、収容空間13内にフィルムを配置するときにフィルムの周縁部が区画壁12の内周面に重なってしまい、作業性が良くない。また、固形薬剤が溶解した後にフィルムが容器底面に重なったときに、フィルム周縁部が容器底面の孔15cを塞ぐおそれがある。水不溶性フィルムの面積は、例えば、収容空間13の水平断面積の150%以下、120%以下、または100%以下であってよい。フィルムの大きさは収容空間13の水平断面の大きさ以下であることが特に好ましい。
【0041】
[固形薬剤の充填方法]
錠剤よりなる固形薬剤を収容空間13に充填するには、次のようにするのが好ましい。 即ち、まず上部部材11aと下部部材11bとを分離し、上部部材11aを上下反転させ、区隔壁12が天部11tから立ち上がる状態とする。そして、天部11tに複数個の錠剤を敷き並べる。錠剤は互いに重ならないように、かつ錠剤の側周面を突き合わせるか又は近接させるようにしてなるべく多く敷き並べる。
【0042】
次に、敷き並べた錠剤の層(第1層)を覆うように1枚のフィルム(第1フィルム)を配置する。
【0043】
この第1フィルムの上に、錠剤を上記と同様に敷き並べて第2層を形成し、その上にフィルム(第2フィルム)を重ね、以下これを繰り返す。最終層の錠剤を敷き並べた後は、最終層の錠剤層にフィルムを重ねることなく、上部部材11aと下部部材11bとを嵌合させて結合する。次いで、上部部材11aが下部部材11bの上側となるように上下反転させることにより、
図3に示した固形薬剤収容体が構成される。
図3のTは錠剤を示し、Fは水不溶性フィルムを示す。
【0044】
[固形薬剤収容体の固形薬剤の溶解形態]
上記のように構成された固形薬剤収容体が、水の落下領域に配置された場合、
図3のように、孔15aから水が収納容器10の非収容空間14に流入し、収納容器10内の底部に溜まる。この溜まった水Wが最下層の錠剤Tに接触し、最下層の錠剤Tが徐々に溶解し、固形薬剤含有水が孔15b,15cから下方に流出する。
【0045】
最下層の錠剤Tの溶解が進行し、最下層の錠剤層の厚さが小さくなってくるにつれて、それよりも上側のすべての錠剤層が徐々に下方に移動する。
【0046】
最下層の錠剤Tが溶解し終わると、下から1枚目のフィルムFが下部部材11bの底面11fに重なり、その後は、新品時に下から2番目に位置していた錠剤層の錠剤Tが溶解する。
【0047】
以下、同様にして最上位の錠剤層まで順次に溶解する。
図4は、6段の錠剤層のうち3段目まで溶解し、残り3段となった状況を示している。
【0048】
この実施の形態では、各錠剤層同士の間に水不溶性フィルムFを介在させており、且つ好ましくは水不溶性フィルムFの面積を収容空間13の水平断面積の1/2以上とすることにより、容器内の水Wからの湿気(水蒸気、水滴、毛細管現象による上昇水など)がフィルムFよりも上側の錠剤Tに接することが抑制される。このため、フィルムFよりも上側の錠剤が膨潤することが抑制され、固形薬剤収容体内における固形薬剤のブリッジが抑制される。この結果、被処理水に対し継続して薬剤が添加される。
【実施例0049】
[実施例1]
図1に示す固形薬剤収容体を開放循環式冷却水系の冷却塔内に3週間配置し、ブリッジ発生の有無を観察した。主な条件は以下の通りである
<容器本体10>
側周面11sの直径(内径):83.85mm
側周面11sと区画壁12との間隔:8.55mm
区画壁12の内径:60.78mm
区画壁12の高さ:61.0mm
区画壁12の下端と底面11fとの間隔:4.4mm
孔15aの直径及び数:4.6mm、16個
孔15bの直径及び数:3.0mm、16個
孔15cの直径及び数:10.0mm、10個
<固形薬剤>
種類:ホスホン酸、アゾール系銅用防食剤
錠剤の直径:21.7mm
錠剤の厚さ:10.7mm
<水不溶性フィルム>
樹脂:ポリエチレン
厚さ:0.04mm(40μm)
直径:区画壁12の内径の70%、80%、85%、90%、92%、95%、100%、110%又は120%(水不溶性フィルムFの面積の収容空間13の水平断面積に対する比率(以下、「フィルム面積比」ということがある。)としては、49%、64%、72%、81%、88%、94%、100%、121%、144%)
【0050】
<実験方法>
上部部材11aを下部部材11bから取り外し、天部11t上に、固形薬剤Tを5錠重ならないように並べ、その上にポリエチレン製フィルムFを1枚載せた。これを一層として、合計5層になるまで繰り返した。次いで、上部部材11aと下部部材11bとを結合して固形薬剤収容体を構成した。
【0051】
この固形薬剤収容体について、水温30℃の開放循環冷却水系にて固形薬剤の溶解性の評価を実施した。すなわち、冷凍能力30USRT、24h/day稼働の向流型(丸型)開放式冷却塔内の充填材の上に、上記の固形薬剤収容体を設置し、散水される循環水により固形薬剤を溶解させた。
【0052】
3週間後に固形薬剤収容体を取り出し、ブリッジの有無を判断した。
【0053】
<結果・考察>
ブリッジ発生状況の観察結果を表1に示す。
【0054】
【0055】
表1の通り、本発明によるとブリッジ発生を抑制することができ、特にフィルム面積比88%以上とすることによりブリッジ発生を十分に防ぐことができた。
【0056】
なお、フィルム面積比が121%以上では、ブリッジは発生しなかったものの、容器への充填時に折りたたむ等の作業が必要であり、作業性が悪かった。また、容器底部に溜まったポリエチレン製フィルムが、錠剤と水との接触を阻害した。従って、フィルムの大きさは収容空間13の水平断面の大きさ以下であることが好ましいことが認められた。
【0057】
[比較例1]
フィルムとして厚さ0.05mmのポリビニルアルコール系水溶性フィルム(直径は区画壁12の内径の100%、フィルム面積比100%)を用いたこと以外は実施例1と同一条件にて実験を行った。その結果、3週間後には固形薬剤収容体内にブリッジが発生していた。比較例1のフリッジ発生有無の評価結果は表1に記載の△であり、ブリッジ発生は少なかったが、実施例1のうちフィルム面積比が比較例1と同じ100%の場合(評価結果◎:ブリッジ発生せず)と比べて、比較例1はブリッジ抑制効果が劣っていた。
【0058】
[比較例2]
フィルムを用いないこと以外は実施例1と同一条件にて実験を行った。その結果、3週間後にブリッジが顕著に発生していた。実施例1の全ての場合(フィルム面積比49~144%)と比べて、比較例2はブリッジ抑制効果が劣っていた。
複数の水溶性固形薬剤を収容可能な収容空間と、該収容空間に水を流入させる流入口と、該収容空間から水を流出させる流出口を有する収納容器の該収容空間に、水溶性固形薬剤を積層させて配置した固形薬剤収容体において、
該固形薬剤の層同士の間に水不溶性フィルムを介在させた固形薬剤収容体であって、
前記水不溶性フィルムの面積が前記収容空間の水平断面積の85~100%であり、
前記水溶性固形薬剤は、錠剤であり、前記層の各々に複数の該錠剤が互いに重ならないように配置されている固形薬剤収容体。