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特開2023-168017駆動制御装置、ヘッドユニット、液体吐出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168017
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】駆動制御装置、ヘッドユニット、液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20231116BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20231116BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/015 101
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079612
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】紀伊國 敬
(72)【発明者】
【氏名】塚本 竜児
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EC08
2C056EC18
2C056EC37
2C056EC38
2C056EC42
2C056FA02
2C056FA04
2C056HA19
2C056KA01
2C056KA08
2C057AF30
2C057AG01
2C057AG44
2C057AM15
2C057AM16
2C057AM17
2C057AM18
2C057BA08
2C057BA10
2C057BA15
2C057BF04
(57)【要約】
【課題】液体吐出速度の変動を抑制する。
【解決手段】液体吐出ヘッドの吐出口14を開閉する開閉弁17の駆動を制御する駆動制御装置であって、開閉弁17を駆動させる駆動体に印加する印加電圧の駆動パルスを生成する駆動パルス生成部を備え、駆動パルス生成部は、開閉弁17の開放時間と開閉弁17の駆動速度とが異なる複数の駆動パルスを生成可能であり、開閉弁17の開放時間に応じて、開閉弁17の閉鎖動作時の駆動速度を変更する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドの吐出口を開閉する開閉弁の駆動を制御する駆動制御装置であって、
前記開閉弁を駆動させる駆動体に印加する印加電圧の駆動パルスを生成する駆動パルス生成部を備え、
前記駆動パルス生成部は、前記開閉弁の開放時間と前記開閉弁の駆動速度とが異なる複数の駆動パルスを生成可能であり、
前記開閉弁の開放時間に応じて、前記開閉弁の閉鎖動作時の駆動速度を変更することを特徴とする駆動制御装置。
【請求項2】
前記開閉弁の開放時間が長い場合は、前記開放時間が短い場合に比べて、前記開閉弁の閉鎖動作時の駆動速度を速くする請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項3】
前記開閉弁の開放時間に応じて、前記開閉弁の開放動作時と閉鎖動作時のそれぞれの駆動速度を個別に制御する請求項1又は2に記載の駆動制御装置。
【請求項4】
液体吐出ヘッドの吐出口を開閉する開閉弁の駆動を制御する駆動制御装置であって、
前記開閉弁を駆動させる駆動体に印加する印加電圧の駆動パルスを生成する駆動パルス生成部を備え、
前記駆動パルス生成部は、前記開閉弁を開放状態で維持する印加電圧の保持時間と前記開閉弁を駆動させるときの印加電圧のスルーレートとが異なる複数の駆動パルスを生成可能であり、
前記開閉弁を開放状態で維持する印加電圧の保持時間に応じて、前記開閉弁を閉鎖動作時に駆動させるときの印加電圧のスルーレートを変更することを特徴とする駆動制御装置。
【請求項5】
前記開閉弁を開放状態で維持する印加電圧の保持時間が長い場合は、前記保持時間が短い場合に比べて、前記開閉弁を閉鎖動作時に駆動させるときの印加電圧のスルーレートを大きくする請求項4に記載の駆動制御装置。
【請求項6】
前記開閉弁を開放状態で維持する印加電圧の保持時間に応じて、前記開閉弁の開放動作時と閉鎖動作時のそれぞれの印加電圧のスルーレートを個別に制御する請求項4又は5に記載の駆動制御装置。
【請求項7】
液体を吐出する吐出口を開閉する開閉弁を有する液体吐出ヘッドと、
前記開閉弁の駆動を制御する駆動制御装置とを備えるヘッドユニットであって、
前記駆動制御装置は、第1駆動パルスによって前記開閉弁を駆動させて液体を吐出する動作と、前記開閉弁を開放状態で保持する開放時間が前記第1駆動パルスよりも長く、前記開閉弁の閉鎖動作時の駆動速度が前記第1駆動パルスよりも速くなるような第2駆動パルスによって前記開閉弁を駆動させて液体を吐出する動作とを選択的に実行することを特徴とするヘッドユニット。
【請求項8】
前記第2駆動パルスは、前記開閉弁を開放状態で保持する開放時間が前記第1駆動パルスよりも長く、前記開閉弁の開放動作時と閉鎖動作時のそれぞれの駆動速度が前記第1駆動パルスよりも速くなるパルスである請求項7に記載のヘッドユニット。
【請求項9】
液体を吐出する吐出口を開閉する開閉弁を有する液体吐出ヘッドと、
前記開閉弁の駆動を制御する駆動制御装置とを備えるヘッドユニットであって、
前記駆動制御装置は、第1駆動パルスによって前記開閉弁を駆動させて液体を吐出する動作と、前記開閉弁の開放状態を維持する印加電圧の保持時間が前記第1駆動パルスよりも長く、前記開閉弁の閉鎖動作時の印加電圧のスルーレートが前記第1駆動パルスよりも大きい第2駆動パルスによって前記開閉弁を駆動させて液体を吐出する動作とを選択的に実行することを特徴とするヘッドユニット。
【請求項10】
前記第2駆動パルスは、前記開閉弁の開放状態を維持する印加電圧の保持時間が前記第1駆動パルスよりも長く、前記開閉弁の開放動作時と閉鎖動作時のそれぞれの印加電圧のスルーレートが前記第1駆動パルスよりも大きいパルスである請求項9に記載のヘッドユニット。
【請求項11】
請求項1又は4に記載の駆動制御装置と、
前記液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドに加圧した液体を供給する液体供給手段と、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項12】
請求項7又は9に記載のヘッドユニットと、
前記液体吐出ヘッドに加圧した液体を供給する液体供給手段と、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動制御装置、ヘッドユニット及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置として、液体が吐出される吐出口を開閉弁によって開閉する弁型ノズルタイプと称されるものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2009-12188号公報)においては、液体の吐出動作を制御する駆動波形のパルス幅を、環境条件などに応じて最適な値に変更することにより、環境変動などにより液体吐出量が変動する問題を改善する方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の方法を弁型ノズルタイプの液体吐出装置に適用すると、開閉弁を駆動させる駆動波形のパルス幅を変更した場合に、液体の吐出速度も変化してしまうため、液体が対象物に着弾する位置がずれ、所望の位置に液体を付着させることができなくなる問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明においては、液体吐出速度の変動を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、液体吐出ヘッドの吐出口を開閉する開閉弁の駆動を制御する駆動制御装置であって、前記開閉弁を駆動させる駆動体に印加する印加電圧の駆動パルスを生成する駆動パルス生成部を備え、前記駆動パルス生成部は、前記開閉弁の開放時間と前記開閉弁の駆動速度とが異なる複数の駆動パルスを生成可能であり、前記開閉弁の開放時間に応じて、前記開閉弁の閉鎖動作時の駆動速度を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体吐出速度の変動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るヘッドユニットを示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る液体吐出モジュールを示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る液体供給手段の一例を示す概略構成図である。
図5】(a)~(c)はニードル弁の開閉動作によるインクの吐出を示す図、(d)はその時の駆動パルスを示す図である。
図6】(a)~(g)はニードル弁の開放時間が短い場合のニードル弁の動作を示す図、(h)はその時のニードル弁の変位量の変化を示す図、(i)はその時の印加電圧の変化を示す図である。
図7】(a)~(g)はニードル弁の開放時間が長い場合のニードル弁の動作を示す図、(h)はその時のニードル弁の変位量の変化を示す図、(i)はその時の印加電圧の変化を示す図である。
図8】本発明の他の実施形態に係るニードル弁の制御を示す図である。
図9】液体吐出装置の斜視図である。
図10】従来の液体吐出ヘッドにおけるニードル弁の制御を示す図である。
図11】従来の液体吐出ヘッドにおけるニードル弁の制御を示す図である。
図12】駆動パルス幅とインク吐出速度と関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明においては、本発明の一実施形態に係る駆動制御装置として、液体吐出ヘッドに設けられた開閉弁の駆動を制御する駆動制御装置を説明する。また、この液体吐出ヘッドは、液体としてのインクを吐出する。
【0010】
図1は、液体吐出ヘッドの全体斜視図である。
【0011】
液体吐出ヘッド10は、ハウジング11を備える。ハウジング11は、金属又は樹脂から成る。また、ハウジング11は、その上部に電気信号の通信のためのコネクタ29を備える。また、ハウジング11の左右には、インクをヘッド内に供給するための供給ポート12と、インクをヘッドから排出するための回収ポート13が設けられている。
【0012】
図2は、ヘッドユニットを示す図で、液体吐出ヘッドの図1のA-A矢視断面を示す図でもある。
【0013】
ヘッドユニット60は、液体吐出ヘッド10と駆動制御装置40とを有する。
【0014】
液体吐出ヘッド10は、ノズル板15を有する。ノズル板15は、ハウジング11に接合されている。ノズル板15は、インクを吐出するノズル14を備える。ハウジング11は、流路16を備えている。流路16は、供給ポート12側からのインクを、ノズル板15上を経て回収ポート13側へ送る経路である。インクは、流路16上を図2中の矢印a1~a3で示される方向へ送られる。
【0015】
供給ポート12と回収ポート13との間には、液体吐出モジュール30が配置されている。液体吐出モジュール30は、流路16内のインクをノズル14から吐出する。液体吐出モジュール30の数はノズル14の数に対応しており、本例においては、1列に並べた8個のノズル14に対応する8個の液体吐出モジュール30を備える構成が示されている。なお、ノズル14及び液体吐出モジュール30の数及び配列は、上記に限るものではない。例えば、ノズル14及び液体吐出モジュール30の数は、複数ではなく1個であってもよい。また、ノズル14及び液体吐出モジュール30の配列は、1列ではなく複数列であってもよい。
【0016】
上記の構成により、供給ポート12は加圧した状態のインクを外部から取り込み、インクを矢印a1方向へ送り、インクを流路16に供給する。流路16は、供給ポート12からのインクを矢印a2方向へ送る。そして、回収ポート13は、流路16に沿って配置したノズル14から吐出しなかったインクを矢印a3方向へ排出する。
【0017】
液体吐出モジュール30は、ノズル14を開閉するニードル弁17と、ニードル弁17を駆動する圧電素子18とを備える。
【0018】
ハウジング11は、圧電素子18の上端部と対向する位置に規制部材19を備えている。この規制部材19は、圧電素子18の上端部に当接しており、圧電素子18の固定点をなしている。
【0019】
ここで、ノズル14は吐出口の一例で、ノズル板15は吐出口形成部材の一例で、ニードル弁17は開閉弁の一例で、圧電素子18は駆動体の一例である。
【0020】
圧電素子18を作動してニードル弁17を上方向へ動かした場合は、ニードル弁17によって閉じていたノズル14が開いた状態になり、ノズル14からインクを吐出する。また、圧電素子18を作動してニードル弁17を下方向へ動かした場合は、ニードル弁17の先端部がノズル14に当接してノズル14が閉じた状態になり、ノズル14からインクは吐出しなくなる。なお、ノズル14からのインクの吐出効率が低下しないようにするため、液体の吐出対象物に対してインクを吐出している期間は、回収ポート13からのインクの排出を一時的に行わないようにしてもよい。
【0021】
図3は、液体吐出ヘッドを構成する液体吐出モジュール単体の説明図である。図3(a)は、液体吐出モジュールの全体断面図、図3(b)は、図3(a)のB部の拡大図である。
【0022】
流路16は、ハウジング11に設けられる複数の液体吐出モジュール30に共通の流路である。
【0023】
ニードル弁17は、その先端に弾性部材17aを備えている。ニードル弁17の先端をノズル板15に押し付けた際に、弾性部材17aが圧縮されることにより、ニードル弁17がノズル14を閉鎖する。また、ニードル弁17とハウジング11との間には、軸受部21が設けられている。また、軸受部21とニードル弁17との間には、Oリングなどのシール部材22が設けられている。
【0024】
ハウジング11の内側の空間内には、圧電素子18が収容されている。保持部材23は、中央空間23a内に圧電素子18を保持している。圧電素子18とニードル弁17とは同軸上に保持部材23の先端部23bを介して連結されている。保持部材23の先端部23b側はニードル弁17に連結され、保持部材23の後端部23c側はハウジング11に取り付けられた規制部材19によって固定されている。
【0025】
駆動制御装置40によって圧電素子18に電圧が印加されることで、圧電素子18が収縮し、圧電素子18が保持部材23を介してニードル弁17を引っ張る。これにより、ニードル弁17がノズル14から離間してノズル14を開放する。これにより、流路16に加圧供給したインクがノズル14から吐出される。また、圧電素子18に電圧を印加していないときは、ニードル弁17がノズル14を閉鎖している。この状態では、流路16にインクが加圧供給されていても、ノズル14からインクが吐出することはない。
【0026】
駆動制御装置40は、駆動パルス生成部である波形発生回路41と増幅回路42とを有する。波形発生回路41が後述する駆動パルス波形を生成し、増幅回路42が必要な値まで電圧値を増幅する。そして、増幅された電圧が圧電素子18に印加される。この電圧の印加により、駆動制御装置40は、ニードル弁17の開閉を制御し、液体吐出ヘッドからのインクの吐出を制御する。ただし、波形発生回路41が十分な値の電圧を印加できる場合には増幅回路42は省略してもよい。
【0027】
波形発生回路41は、圧電素子18に印加する電圧の時間経過に伴う波形である駆動パルスを生成する。波形発生回路41は、外部のPC又は装置内部のマイコンから印刷データが入力され、この入力データに基づいて駆動パルスを生成する。波形発生回路41は、圧電素子18に印加する電圧を変更でき、複数の駆動パルスを生成できる。前述のように、波形発生回路41が駆動パルスを生成することにより、圧電素子18が駆動パルスに従って伸縮し、ニードル弁17を開閉移動させる。
【0028】
図4は、液体供給手段の一例を示す概略構成図である。
【0029】
液体吐出装置は、各液体吐出ヘッド10a~10dから吐出されるインク90a~90dを収容する密閉容器としてのタンク31a~31dを備えている。なお、以下の説明において、これら各インクを総称する場合はインク90と記す。また、各タンクを総称する場合は、タンク31と記す。
【0030】
タンク31と液体吐出ヘッド10の注入口(図1図2に示される供給ポート12)は、それぞれチューブ32を介して接続されている。また、タンク31は、エアーレギュレータ33を含むパイプ34を介してコンプレッサ35に接続されている。コンプレッサ35は、タンク31に加圧空気を供給する。これにより、液体吐出ヘッド10内のインク90は加圧状態になり、前述のニードル弁を開けばノズル14からインク90が吐出する。ここで、コンプレッサ35、エアーレギュレータ33を含むパイプ34、タンク31、及びチューブ32は、液体吐出ヘッド10に対してインク90を加圧供給する液体供給手段の一例である。
【0031】
次に、駆動制御装置40が圧電素子18に電圧を印加してニードル弁17を駆動させる様子について図5を用いて説明する。図5(a)~(c)は、ニードル弁17の開閉の様子を示す図で、図5(d)は、その際のニードル弁17の変位量を示すもので、横軸に時間t[s]、縦軸にニードル弁の変位量C[mm]を示している。ここで言うニードル弁の変位量とは、図5(a)のニードル弁17がノズル板15に接触し、ニードル弁17がノズル14を閉じた位置を0として、そこからニードル弁17が図5(a)の上方向である開き方向へ移動した量を示すものである。
【0032】
なお、駆動制御装置40は、圧電素子18に対して電圧のパルスである駆動パルスを印加して圧電素子18を伸縮させ、開閉弁を駆動させる。この駆動パルスは、ニードル弁の変位量と比例関係にある。つまり、駆動制御装置40が形成する時間tに対する駆動パルスは、図5(d)の時刻tの変化に対するニードル弁の変位量の推移と同様の形状の波形をなす。このため、以降の説明では、図5(d)などに示す変位量Cの波形が駆動パルスの波形である(駆動パルスの波形と等しい)ものとして説明する。
【0033】
圧電素子18への印加電圧を0Vにした状態においては、図5(a)に示すように、圧電素子18が伸張してニードル弁17がノズル板15に当接する。これにより、ニードル弁17がノズル14を閉じる。図5(d)および以降の図では、ニードル弁17がノズル14を閉じた状態をニードル弁17の変位量0とし、この位置からのニードル弁17の変位量として変位量Cを示している。また本実施例では、ノズル14を閉じるときは電圧を0Vとしているが、後述の所定電圧よりも小さな電圧であれば0V以外としてもよい。
【0034】
また圧電素子18に電圧を印加することにより、圧電素子18が収縮する。これにより、図5(b)に示さえるように、ニードル弁17が図5(b)の上方向へ移動し、ニードル弁17とノズル板15との間に隙間領域50が形成される。そして、圧電素子18に対する電圧の印加をやめることにより、あるいは印加する電圧を小さくすることにより、図5(c)に示すように、再びニードル弁17がノズル板15に接触してノズル14を閉じる。
【0035】
以上のニードル弁17による開閉動作の区間として、図5(d)に示すように、ニードル弁17の変位量が大きくなっていく上り区間D1と、ニードル弁17の変位量が最大変位量Cmax*0.6~最大変位量Cmaxの範囲で保持される保持区間D2と、ニードル弁17の変位量が小さくなっていく下り区間D3との三つの区間に分けられる。
【0036】
液体吐出ヘッドのハウジング11内のインク90は、コンプレッサ35(図4参照)により加圧されているため、図5(b)に示されるように、ニードル弁17が上方へ移動してノズル14が開放されると、ニードル弁17とノズル板15との間の隙間領域50にインク90が進入する。そして、ニードル弁17の変位量が大きくなる上記上り区間D1と、その後の上記保持区間D2において、インク90に付与される液圧によりノズル14からインク90が吐出され始める。その後、ニードル弁17が下方へ移動し始めると、上記下り区間D3において、隙間領域50のインク90が、コンプレッサ35による液圧のほか、移動するニードル弁17の加圧力を受けることにより、ノズル14からさらに押し出されて吐出される。
【0037】
上記のように、ニードル弁17の駆動によりノズル14を開閉する構成においては、インク90に付与される液圧のほか、ニードル弁17の閉鎖動作に伴う加圧力が、インク吐出に寄与する。
【0038】
ここで、インク吐出に対する液圧の寄与率とニードル弁加圧力の寄与率は、ノズル14を開放するニードル弁17の開放時間に応じて異なる。
【0039】
具体的に、小さい液滴を吐出する場合は、ニードル弁17の時間が短く設定されるため、インク吐出に対する寄与率は、液圧よりも、ニードル弁加圧力の方が支配的である。すなわち、ノズル14が短時間開放される場合は、開放後すぐにノズル14が閉鎖されるので、液室(図5(b)に示されるニードル弁17とノズル板15との間の隙間領域50)内のインク90に対して液圧が伝播する前に、インク90がニードル弁17の閉鎖動作に伴う加圧力によって押し出される。従って、この場合は、主に、高速駆動するニードル弁17によってインクが押し出されるので、インク90の吐出速度が速くなる。
【0040】
これに対して、大きい液滴を吐出する場合は、ニードル弁17の開放時間が長く設定されるため、小さい液滴が形成される場合とは異なり、インク吐出に対する寄与率は、ニードル弁加圧力よりも、液圧の方が支配的である。すなわち、この場合は、ノズル14が長い時間開放されるので、液室内のインク90に対して液圧が十分に伝播し、伝播した液圧によりインク90が押し出される。なお、この場合も、液室内のインク90は、ニードル弁17の閉鎖動作に伴う加圧力を受けるが、ニードル弁17の加圧力を受けてインク90が押し出されるよりも先に液圧によってインク90が押し出されるため、液圧による吐出動作が支配的になり、結果的にインク90の吐出速度は遅くなる。
【0041】
図10図11に、従来の液体吐出ヘッドにおけるニードル弁の開閉動作の一例を示す。図10は、開放時間が短い場合のニードル弁の開閉動作を示す図であり、(a)~(g)はニードル弁の動作、(h)はニードル弁の変位量の変化、(i)は圧電素子に印加される印加電圧の変化を示す。一方、図11は、開放時間が長い場合のニードル弁の開閉動作を示す図であり、(a)~(g)はニードル弁の動作、(h)はニードル弁の変位量の変化、(i)は圧電素子に印加される印加電圧の変化を示す。また、各図の(h)及び(i)における(a)~(g)のタイミングは、ニードル弁の各動作(a)~(g)に対応している。
【0042】
まず、開放時間が短い場合について説明する。この場合、ニードル弁17によってノズル14が閉鎖された状態(図10(a))から圧電素子に電圧が印加されると、ニードル弁17が開放動作を開始する(図10(b))。これにより、ニードル弁17とノズル14との間に隙間領域50が形成され、その隙間領域50にインク90が進入する(図10(b)、(c))。そして、隙間領域50内のインク90に液圧が伝播し始めるが、開放時間が短い場合は、すぐにニードル弁17の閉鎖動作が開始される(図10(d))。すなわち、ニードル弁17の変位量が最大となってから、すぐに印加電圧を下げることによりニードル弁17の閉鎖動作が開始されるので、隙間領域50のインク90に液圧が伝播しきる前に、高速移動するニードル弁17の閉鎖動作によってインク90に加圧力が付与される(図10(d)、(e))。このため、インク90の吐出量が速くなる。
【0043】
これに対して、開放時間が長い場合は、ニードル弁17が開放状態となってからニードル弁17の閉鎖動作が開始されるまでの時間が長いので(図11(c)、(d))、液室内のインク90に対して液圧が十分に伝播する。従って、この場合は、主に伝播された液圧によってインク90がノズル14から押し出されるので(図11(d)、(e)、(f))、インク90の吐出速度が遅くなる。
【0044】
このように、ニードル弁の開放時間が長い場合は、開放時間が短い場合に比べて、インク吐出速度が遅くなる傾向にある。また、ニードル弁の開放時間は、ニードル弁を駆動させる圧電素子(駆動体)への印加電圧の駆動パルス幅に対応するので、駆動パルス幅を変化させるとインク吐出速度も変化する。
【0045】
図12は、駆動パルス幅とインク吐出速度との関係を示す図である。図12に示される3つのグラフのうち、●にてプロットされたものは最も大きい駆動パルス幅のグラフ、▲にてプロットされたものは中程度の駆動パルス幅のグラフ、■にてプロットされたグラフは最も小さい駆動パルス幅のグラフである。
【0046】
図12に示されるように、駆動パルス幅が大きくなると(図12中の下側のグラフほど)、インク吐出速度は遅くなり、反対に、駆動パルス幅が小さくなると(図12中の上側のグラフほど)、インク吐出量が速くなる傾向にある。
【0047】
このように、従来の液体吐出ヘッドにおいては、液滴のサイズに応じてニードル弁の開放時間又は駆動パルス幅を変化させると、インクの吐出速度も変化してしまう。このため、液滴の大きさに応じてインクが対象物に着弾する位置がずれ、所望の位置にインクを付着させることができなくなる問題がある。
【0048】
そこで、本発明においては、上記のようなインクの吐出速度の変動を抑制するため、下記のような開閉弁(ニードル弁)の制御方法を採用している。以下、本発明に係る開閉弁の制御方法について、上記実施形態に係る液体吐出ヘッドを例に説明する。
【0049】
上述のように、インクの吐出速度には、液圧のほか、ニードル弁の閉鎖動作が影響する。従って、ニードル弁の閉鎖動作時の駆動速度を変更すれば、インクの吐出速度を変更でき、吐出速度の変動を抑制することが可能である。斯かる点に着目し、本発明においては、開閉弁(ニードル弁)の開放時間に応じて、開閉弁の駆動速度を変更するようにしている。
【0050】
そのため、上記本発明の実施形態においては、ニードル弁17の駆動を制御する駆動制御装置40(図3参照)が、複数の駆動パルスを生成可能な波形発生回路41(駆動パルス生成部)を有している。波形発生回路41は、ニードル弁17の開放時間とニードル弁17の駆動速度とを異ならせる複数の駆動パルスを生成可能である。
【0051】
図6図7に、駆動制御装置40(波形発生回路41)によって制御されるニードル弁の動作(a)~(g)、ニードル弁の変位量の変化(h)、及び、ニードル弁を駆動させる圧電素子に印加される印加電圧の変化(i)を示す。図6が、開放時間が短い場合の制御を示す図であり、図7が、開放時間が長い場合の制御を示す図である。また、各図の(h)及び(i)における(a)~(g)のタイミングは、ニードル弁の各動作(a)~(g)に対応している。
【0052】
図6に示される開放時間が短い場合と、図7に示される開放時間が長い場合とでは、ニードル弁を開放状態で維持する開放時間が異なっているため、ニードル弁を開放状態で維持する印加電圧の保持時間も異なっている(図6及び図7のD2又はE2に示される区間参照)。なお、本実施形態におけるニードル弁の「開放状態」及び「開放時間」とは、ニードル弁17の変位量が最大変位量Cmax*0.6~最大変位量Cmaxの範囲で保持される状態及びその状態が維持される保持区間D2の時間(図6(h)及び図7(h)参照)、あるいは、圧電素子に印加される印加電圧が最大電圧Vmax*0.6~最大電圧Vmaxの範囲で保持される状態及びその状態が維持される保持区間E2の時間(図6(i)及び図7(i)参照)を意味する。
【0053】
また、図6及び図7に示されるように、本実施形態においては、開放時間に応じて、閉鎖動作時のニードル弁の駆動速度及び印加電圧のスルーレートを異ならせている( 図6及び図7のD3又はE3に示される区間参照)。なお、ここでいう閉鎖動作時のニードル弁の「駆動速度」及び「印加電圧のスルーレート」とは、ニードル弁17の変位量が最大変位量Cmax*0.6よりも下回った場合(区間D3)における駆動速度(単位時間当たりのニードル弁変位量)、及び、 圧電素子に印加される印加電圧が最大電圧Vmax*0.6よりも下回った場合(区間E3)における印加電圧のスルーレート(単位時間当たりの印加電圧変化量)のことである。
【0054】
図6(h)及び図7(h)に示される閉鎖動作時のニードル弁の変位量は、区間D3において駆動速度が一定である(時間に対して比例する)例であるが、区間D3において駆動速度を変化させてもよい。その場合、区間D3におけるニードル弁の変位量を区間D3の時間で除した値を閉鎖動作時の駆動速度としてもよい。また、図6(i)及び図7(i)に示される閉鎖動作時の印加電圧は、区間E3において、単位時間あたりの印加電圧の変化量が時間に応じて低下する例である。このような場合、印加電圧のスルーレートは、区間E3における印加電圧の変化量を区間E3の時間で除した値を閉鎖動作時のスルーレートとしてもよい(区間E3におけるスルーレートの平均値としてもよい)。
【0055】
具体的に、本実施形態においては、図7に示される開放時間が長い場合に、図6に示される開放時間が短い場合に比べて、閉鎖動作時の印加電圧のスルーレートを大きくし、ニードル弁の閉鎖動作時の駆動速度を速くしている。そのため、本実施形態においては、駆動制御装置40の波形発生回路41が、ニードル弁の開放時間が相対的に短い場合(図6の場合)にニードル弁を駆動させる第1駆動パルスと、この第1駆動パルスよりもニードル弁の開放時間が長く、かつ、ニードル弁の閉鎖動作時の駆動速度が速くなるような第2駆動パルス(図7の場合)とを選択的に生成可能に構成されている。また、言い換えれば、波形発生回路41は、上記第1駆動パルス(図6の場合)と、第1駆動パルスに比べてニードル弁を開放状態で維持する印加電圧の保持時間が長く、かつ、ニードル弁の閉鎖動作時の印加電圧のスルーレートが大きくなるような第2駆動パルス(図7の場合)とを選択的に生成可能に構成されている。
【0056】
このように、本実施形態においては、開放時間が長い場合におけるニードル弁の駆動速度(閉鎖速度)を速くすることにより、ニードル弁によって押し出されるインクの速度も速くなるので、ノズル14から吐出されるインクの吐出速度を速めることができる。これにより、開放時間が長い場合のインク吐出速度の低下を抑制でき、ニードル弁の開放時間の変化に伴うインクの吐出速度の変動を抑制できる。従って、本実施形態に係る制御方法によれば、対象物に対するインク着弾位置のばらつきを低減できるようになる。また、ニードル弁の閉鎖動作時における印加電圧のスルーレートを大きくすることにより、開放時間が長い場合の印加電圧の制御周期(駆動パルス幅)を短くでき、ニードル弁の開閉動作を短周期で制御できるようになる。
【0057】
続いて、上記実施形態(第1実施形態)とは異なる他の実施形態(第2実施形態)について説明する。以下、主に上記実施形態とは異なる部分について説明し、同じ部分については適宜説明を省略する。
【0058】
図8は、本発明の他の実施形態における、ニードル弁の動作、ニードル弁の変位量の変化、及び、圧電素子に印加される印加電圧の変化を示す図である。また、図8は、開放時間が長い場合の制御を示し、開放時間が短い場合の制御は、上記実施形態(第2実施形態)の制御(図6に示される制御)と同じであるので図示省略する。
【0059】
図8に示される本発明の他の実施形態においては、開放時間が短い場合(図6の場合)に比べて、開放時間が長い場合(図8の場合)に、閉鎖動作時のニードル弁の駆動速度を速くするほか、開放動作時のニードル弁の駆動速度も速くしている。すなわち、本実施形態においては、波形発生回路41が、ニードル弁の開放時間が相対的に短い場合(図6の場合)にニードル弁を駆動させる第1駆動パルスと、この第1駆動パルスよりもニードル弁の開放時間が長く、かつ、ニードル弁の開放動作時と閉鎖動作時の両方における駆動速度が速くなるような第2駆動パルス(図8の場合)とを選択的に生成可能に構成されている。言い換えれば、波形発生回路41は、上記第1駆動パルスと、第1駆動パルスに比べてニードル弁を開放状態で維持する印加電圧の保持時間が長く、かつ、ニードル弁の開放動作と閉鎖動作時の両方における印加電圧のスルーレートが大きくなるような第2駆動パルス(図8の場合)とを選択的に生成可能に構成されている。なお、ここでいう開放動作時のニードル弁の「駆動速度」及び「印加電圧のスルーレート」は、ニードル弁17の変位量が最大変位量Cmax*0.6に達する前(区間D1)における駆動速度(単位時間当たりのニードル弁変位量)、及び、 圧電素子に印加される印加電圧が最大電圧Vmax*0.6に達する前(区間E1)における印加電圧のスルーレート(単位時間当たりの印加電圧変化量)のことである。
【0060】
図8(h)に示される開放動作時のニードル弁の変位量は、区間D1において駆動速度が一定である(時間に対して比例する)例であるが、区間D1において駆動速度を変化させてもよい。その場合、区間D1におけるニードル弁の変位量を区間D1の時間で除した値を開放動作時の駆動速度としてもよい。また、図8(i)に示される開放動作時の印加電圧は、区間E1において、単位時間あたりの印加電圧の変化量が時間に応じて低下する例である。このような場合、印加電圧のスルーレートは、区間E1における印加電圧の変化量を区間E1の時間で除した値を開放動作時のスルーレートとしてもよい(区間E1におけるスルーレートの平均値としてもよい)。
【0061】
このように、図8に示される実施形態においては、閉鎖動作時のニードル弁の駆動速度に加えて、開放動作時のニードル弁の駆動速度を速くすることにより、開放時間が長い場合における印加電圧の制御周期(駆動パルス幅)をさらに短くできる。このため、より一層短い周期でニードル弁の開閉動作を制御できるようになる。また、ニードル弁の開放時間(ニードル弁を開放状態で維持する印加電圧の保持時間)に応じて、ニードル弁の開放動作時と閉鎖動作時のそれぞれの駆動速度(印加電圧のスルーレート)を個別に制御できるようにしてもよい。なお、ニードル弁の駆動速度を速くすると、ニードル弁を駆動させる圧電素子などの駆動体の発熱量が多くなるため、その熱がインクに伝達されるとインクの粘度が増してインクの吐出特性が変化する可能性がある。そのため、駆動体を放熱する放熱手段あるいは駆動体を冷却する冷却手段を設けることが好ましい。
【0062】
次に、以上の駆動制御装置を有するヘッドユニットを備えた液体吐出装置について、図9を用いて説明する。
【0063】
図9に示される液体吐出装置100は、対象物の一例である液体の吐出対象物200に対向して設置されている。液体吐出装置100は、X軸レール101と、このX軸レール101と交差するY軸レール102と、X軸レール101及びY軸レール102と交差するZ軸レール103を備える。
【0064】
Y軸レール102は、X軸レール101がY方向に移動可能なように、X軸レール101を保持する。また、X軸レール101は、Z軸レール103がX方向に移動可能なように、Z軸レール103を保持する。そして、Z軸レール103は、キャリッジ1がZ方向に移動可能なように、キャリッジ1を保持する。ここで、キャリッジ1は、ヘッドユニットの一例であり、前述の駆動制御装置と液体吐出ヘッドを備えている。
【0065】
液体吐出装置100は、キャリッジ1をZ軸レール103に沿ってZ方向に動かす第1のZ方向駆動部92と、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX方向に動かすX方向駆動部72を備える。また、液体吐出装置100は、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY方向に動かすY方向駆動部82を備える。さらに、液体吐出装置100は、キャリッジ1に対してヘッド保持体70をZ方向に動かす第2のZ方向駆動部93を備える。
【0066】
キャリッジ1は、ヘッド保持体70を備えている。ヘッド保持体70は、保持体の一例である。また、キャリッジ1は、図9に示される第1のZ方向駆動部92からの動力によりZ軸レール103に沿ってZ方向へ移動可能である。ヘッド保持体70は、図9に示される第2のZ方向駆動部93からの動力によりキャリッジ1に対してZ方向へ移動可能である。
【0067】
上記構成の液体吐出装置100は、キャリッジ1をX軸、Y軸及びZ軸の方向に動かしながら、ヘッド保持体70に設けられるヘッドから液体の一例であるインクを吐出し、液体の吐出対象物200に描画を行う。ここで、キャリッジ1及びヘッド保持体70のZ方向への移動は、Z方向と平行である必要はなく、少なくともZ方向の成分を含んでいれば斜めの移動であってもよい。
【0068】
なお、図9において液体の吐出対象物200の表面形状は平面として示されているが、液体の吐出対象物200の表面形状は、車、トラックの車体、航空機の機体などのように鉛直に近い面、もしくは曲率半径の大きい面でもよい。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0070】
「液体」にはインクだけでなく塗料を含む。
【0071】
以上の説明では、駆動制御装置が圧電素子などの駆動体に電圧を印加して開閉弁を開閉する実施例ついて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、空圧又は油圧により開閉弁を開閉してもよい。この場合、駆動制御装置が生成する駆動パルスは、空圧又は油圧による加圧機構により設定される圧力で駆動させるための駆動波形である。
【0072】
本願において、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッド又はヘッドユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体吐出装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中又は液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0073】
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0074】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出する立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0075】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形などの有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターンなどを形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0076】
上記「液体が付着可能なもの」とは、前述した液体の吐出対象物のことであり、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0077】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0078】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0079】
また、「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0080】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印刷、造形などはいずれも同義語とする。
【0081】
以上説明した本発明の態様をまとめると、本発明には、少なくとも下記の構成を備える加熱装置、定着装置、画像形成装置が含まれる。
【0082】
[第1の構成]
第1の構成は、液体吐出ヘッドの吐出口を開閉する開閉弁の駆動を制御する駆動制御装置であって、前記開閉弁を駆動させる駆動体に印加する印加電圧の駆動パルスを生成する駆動パルス生成部を備え、前記駆動パルス生成部は、前記開閉弁の開放時間と前記開閉弁の駆動速度とが異なる複数の駆動パルスを生成可能であり、前記開閉弁の開放時間に応じて、前記開閉弁の閉鎖動作時の駆動速度を変更する駆動制御装置である。
【0083】
[第2の構成]
第2の構成は、前記第1の構成において、前記開閉弁の開放時間が長い場合は、前記開放時間が短い場合に比べて、前記開閉弁の閉鎖動作時の駆動速度を速くする駆動制御装置である。
【0084】
[第3の構成]
第3の構成は、前記第1の構成又は第2の構成において、前記開閉弁の開放時間に応じて、前記開閉弁の開放動作時と閉鎖動作時のそれぞれの駆動速度を個別に制御する駆動制御装置である。
【0085】
[第4の構成]
第4の構成は、液体吐出ヘッドの吐出口を開閉する開閉弁の駆動を制御する駆動制御装置であって、前記開閉弁を駆動させる駆動体に印加する印加電圧の駆動パルスを生成する駆動パルス生成部を備え、前記駆動パルス生成部は、前記開閉弁を開放状態で維持する印加電圧の保持時間と前記開閉弁を駆動させるときの印加電圧のスルーレートとが異なる複数の駆動パルスを生成可能であり、前記開閉弁を開放状態で維持する印加電圧の保持時間に応じて、前記開閉弁を閉鎖動作時に駆動させるときの印加電圧のスルーレートを変更する駆動制御装置である。
【0086】
[第5の構成]
第5の構成は、前記第4の構成において、前記開閉弁を開放状態で維持する印加電圧の保持時間が長い場合は、前記保持時間が短い場合に比べて、前記開閉弁を閉鎖動作時に駆動させるときの印加電圧のスルーレートを大きくする駆動制御装置である。
【0087】
[第6の構成]
第6の構成は、前記第4又は第5の構成において、前記開閉弁を開放状態で維持する印加電圧の保持時間に応じて、前記開閉弁の開放動作時と閉鎖動作時のそれぞれの印加電圧のスルーレートを個別に制御する駆動制御装置である。
【0088】
[第7の構成]
第7の構成は、液体を吐出する吐出口を開閉する開閉弁を有する液体吐出ヘッドと、前記開閉弁の駆動を制御する駆動制御装置とを備えるヘッドユニットであって、前記駆動制御装置は、第1駆動パルスによって前記開閉弁を駆動させて液体を吐出する動作と、前記開閉弁を開放状態で保持する開放時間が前記第1駆動パルスよりも長く、前記開閉弁の閉鎖動作時の駆動速度が前記第1駆動パルスよりも速くなるような第2駆動パルスによって前記開閉弁を駆動させて液体を吐出する動作とを選択的に実行するヘッドユニットである。
【0089】
[第8の構成]
第8の構成は、前記第7の構成において、前記第2駆動パルスは、前記開閉弁を開放状態で保持する開放時間が前記第1駆動パルスよりも長く、前記開閉弁の開放動作時と閉鎖動作時のそれぞれの駆動速度が前記第1駆動パルスよりも速くなるパルスのヘッドユニットである。
【0090】
[第9の構成]
第9の構成は、液体を吐出する吐出口を開閉する開閉弁を有する液体吐出ヘッドと、前記開閉弁の駆動を制御する駆動制御装置とを備えるヘッドユニットであって、前記駆動制御装置は、第1駆動パルスによって前記開閉弁を駆動させて液体を吐出する動作と、前記開閉弁の開放状態を維持する印加電圧の保持時間が前記第1駆動パルスよりも長く、前記開閉弁の閉鎖動作時の印加電圧のスルーレートが前記第1駆動パルスよりも大きい第2駆動パルスによって前記開閉弁を駆動させて液体を吐出する動作とを選択的に実行するヘッドユニットである。
【0091】
[第10の構成]
第10の構成は、前記第9の構成において、前記第2駆動パルスは、前記開閉弁の開放状態を維持する印加電圧の保持時間が前記第1駆動パルスよりも長く、前記開閉弁の開放動作時と閉鎖動作時のそれぞれの印加電圧のスルーレートが前記第1駆動パルスよりも大きいパルスのヘッドユニットである。
【0092】
[第11の構成]
第11の構成は、前記第1から第6のいずれか1つの構成の駆動制御装置と、前記液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに加圧した液体を供給する液体供給手段と、を備える液体吐出装置である。
【0093】
[第12の構成]
第12の構成は、前記第7から第10のいずれか1つの構成のヘッドユニットと、前記液体吐出ヘッドに加圧した液体を供給する液体供給手段と、を備える液体吐出装置である。
【符号の説明】
【0094】
10 液体吐出ヘッド
14 ノズル(吐出口)
17 ニードル弁(開閉弁)
18 圧電素子(駆動体)
40 駆動制御装置
41 波形発生回路(駆動パルス生成部)
60 ヘッドユニット
100 液体吐出装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】
【特許文献1】特開2009-12188号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12