(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168018
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ユニット固定構造、定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/16 20060101AFI20231116BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20231116BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G03G21/16 147
G03G15/00 550
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079614
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 有信
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 良州
(72)【発明者】
【氏名】今田 高広
(72)【発明者】
【氏名】高木 啓正
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 卓弥
【テーマコード(参考)】
2H033
2H171
【Fターム(参考)】
2H033BA02
2H033BA03
2H033BA25
2H033BE03
2H171FA01
2H171FA03
2H171FA07
2H171FA19
2H171GA11
2H171GA12
2H171GA13
2H171GA15
2H171HA22
2H171HA23
2H171HA37
2H171JA12
2H171KA02
2H171KA03
2H171KA05
2H171KA09
2H171KA16
2H171KA22
2H171KA23
2H171KA27
2H171PA12
2H171QA04
2H171QA08
2H171QA24
2H171QB03
2H171QB15
2H171QB32
2H171QC03
2H171QC22
2H171QC37
2H171SA11
2H171SA13
2H171SA18
2H171SA22
2H171SA26
2H171WA11
2H171WA17
2H171WA21
(57)【要約】
【課題】ユニット固定構造を簡略化して省スペース化する。
【解決手段】本発明のユニット固定構造は、装置本体に対してユニット100aを着脱可能に固定するユニット固定構造であって、装置本体に配設された突起部70をユニット100aの位置決め孔69に挿入することでユニット100aを位置決めし、当該位置決め状態でユニット100aを締結部材(ネジB1、B2)によって装置本体1aに固定するユニット固定構造において、締結部材を挿入するための挿通孔67、68がユニット100aに形成され、当該挿通孔67、68の下方に位置決め孔69が形成され、当該位置決め孔69から突出した突起部70に、締結部材の受止部70aが形成されていることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に対してユニットを着脱可能に固定するユニット固定構造であって、前記装置本体に配設された突起部を前記ユニットの位置決め孔に挿入することで前記ユニットを位置決めし、当該位置決め状態で前記ユニットを締結部材によって前記装置本体に固定するユニット固定構造において、
前記締結部材を挿入するための挿通孔が前記ユニットに形成され、当該挿通孔の下方に前記位置決め孔が形成され、当該位置決め孔から突出した前記突起部に、前記締結部材の受止部が形成されていることを特徴とするユニット固定構造。
【請求項2】
前記受止部が、上方に開口した断面U字状であることを特徴とする請求項1の固定構造。
【請求項3】
前記受止部が、上方に開口した断面L字状であることを特徴とする請求項1の固定構造。
【請求項4】
前記ユニットの前記装置本体と反対側がカバー部材で覆われ、当該カバー部材の内面に形成された凸部と前記受止部によって、上方に開口した断面U字状が形成されることを特徴とする請求項3の固定構造。
【請求項5】
前記突起部、位置決め孔及び挿通孔が少なくとも2個所に形成され、前記突起部と前記位置決め孔の一組で前記ユニットの水平方向と垂直方向が位置決めされ、前記突起部と前記位置決め孔の他の一組で前記ユニットの垂直方向が位置決めされることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項の固定構造。
【請求項6】
請求項5の固定構造によって前記装置本体に固定可能に構成されていることを特徴とする前記ユニットとしての定着装置。
【請求項7】
請求項6の定着装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体に対してユニットを着脱可能に固定するユニット固定構造と、当該固定構造を有する定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の定着ユニットは、一般的に、故障時のユニット交換やメンテナンス等のため、マシン本体に対して着脱可能に固定される。定着ユニットの固定は、マシン本体に対する定着ユニットの位置決めと締結(ネジ止め)で行われる。
【0003】
この位置決めと締結を同一部材で行うと部材の構造が複雑化・大型化する。そこで、位置決めと締結は別部材で行う場合が多い。
【0004】
すなわち、マシン本体に配設された突起部(位置決めピン)を定着ユニットの位置決め孔に挿入することで定着ユニットを位置決めする。また、定着ユニットの挿通孔にネジを差込み、ネジ先端をマシン本体のネジ孔に締付けることで定着ユニットを締結する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
定着ユニットをネジでマシン本体に締結する際、誤ってネジを脱落することがある。定着ユニットの周囲は部品が密集して狭い隙間が多い。このような狭い隙間にネジが脱落すると、ネジの回収に時間がかかる。
【0006】
従来、例えば特許文献1(特開2011‐107334号公報)のように、ネジの脱落防止用にネジ受け凹部を形成したものがある。すなわち、ネジの通し孔の上側にネジ受け凹部を形成し、下側に位置決め凹部を形成している。しかしながら、位置決め凹部とネジ受け凹部を別々に形成すると、構造的に複雑化してスペースも取る。
【0007】
そこで本発明は、ユニット固定構造を簡略化して省スペース化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明のユニット固定構造は、装置本体に対してユニットを着脱可能に固定するユニット固定構造であって、前記装置本体に配設された突起部を前記ユニットの位置決め孔に挿入することで前記ユニットを位置決めし、当該位置決め状態で前記ユニットを締結部材によって前記装置本体に固定するユニット固定構造において、前記締結部材を挿入するための挿通孔が前記ユニットに形成され、当該挿通孔の下方に前記位置決め孔が形成され、当該位置決め孔から突出した前記突起部に、前記締結部材の受止部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユニット固定構造を簡略化して省スペース化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】画像形成装置の一実施形態であるカラープリンタの概略構成図である。
【
図2】ユニット固定構造を示す(a)従来の斜視図、(b)従来の拡大図、(c)本実施形態の斜視図、(d)本実施形態の断面図である。
【
図3】本実施形態のユニット固定構造を示す側面図である。
【
図4】樹脂カバーを有するユニットの固定構造を示す(a)斜視図、(b)垂直断面側面図、(c)水平断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。なお、各図面において同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0012】
(●画像形成装置)
図1は、画像形成装置1の一実施形態であるカラープリンタの断面を示す概略構成図である。本カラープリンタは、複数の色画像を形成する作像部がベルトの展張方向に沿って並置されたタンデム方式であるが、本実施形態はこの方式に限らない。また、プリンタだけではなく複写機やファクシミリ装置などを対象とすることも可能である。
【0013】
図1に示すように、画像形成装置1の中心部には、像担持体である感光体20Y、20C、20M、20Bkが並設されている。各感光体20Y、20C、20M、20Bkは、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)に対応する画像を形成可能である。なお、これら画像形成手段は現像剤(トナー)色の違い以外はそれぞれ同一の構成であるため、以下の説明では参照符号におけるY、C、M及びBkの添え字を適宜省略して説明する。
【0014】
各感光体20の周りに、帯電部材30、現像装置40及びクリーニング手段50が設けられている。この感光体20は時計回りに回転駆動し、感光体20の表面には帯電部材30が圧接されていて、この帯電部材30は、感光体20の回転駆動に伴い従動回転する。
【0015】
また、この帯電部材30には、高圧電源により所定のバイアス電圧が印加され、回転駆動する感光体20の表面を一様に帯電できる。なお、これら感光体20、帯電部材30、現像装置40及びクリーニング手段50は、各々画像形成装置1から着脱自在に配置されている。
【0016】
4つの感光体20の斜め下方には、これらに平行して露光装置8が設けられている。この露光装置8は、光源、ポリゴンミラー、f-θレンズ、反射ミラーなどの構成部材を有する。
【0017】
露光装置8は、各色トナーの画像データに応じて形成された画像情報に基づいて、帯電部材30により帯電させられた各感光体20を露光し、それぞれの感光体20上に静電潜像を作り出す。この露光装置8を用いて感光体20上に形成された静電潜像は、感光体20の回転により現像装置40を通るときに各色トナーが付与されることで現像され、顕像化される。
【0018】
なお、画像形成装置1の内部の上方には、イエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの各色トナーが充填されたトナーボトル9Y、9C、9M及び9Bkが配置されている。これらトナーボトル9Y、9C、9M及び9Bkから図示しない搬送経路を介して、所定の補給量のトナーがそれぞれ各色の現像装置40Y、40C、40M及び40Bkに補給される。
【0019】
さらに、各画像形成手段の感光体20に対向して、中間転写体として構成された無端ベルト状の中間転写ベルト11が配置され、この中間転写ベルト11の表面には各感光体20が当接している。中間転写ベルト11は、複数の支持ローラ(例えば、支持ローラ72,73など)に巻き掛けられて構成されている。
【0020】
図示した例では、支持ローラ73が、図示しない駆動源としての駆動モータと連結されており、この駆動モータの駆動によって中間転写ベルト11は図中反時計回りに回転移動し、これに伴って従動回転可能な支持ローラ73も回転する。また、中間転写ベルト11の内側には、ベルトを挟んで感光体20に対向して位置する一次転写ローラ12が配置されている。
【0021】
この一次転写ローラ12に高圧電源から一次転写バイアスが印加され、現像装置40により顕像化されたトナー像が中間転写ベルト11に一次転写される。なお、一次転写されずに感光体20上に残された一次転写残トナーは、感光体20による次の画像形成動作に備えるためにクリーニング手段50により除去され、感光体20上におけるトナーは完全に除去される。
【0022】
さらに、中間転写ベルト11の駆動方向下流側に、二次転写装置としての二次転写ローラ5が設けられている。この二次転写ローラ5は、中間転写ベルト11を挟んで支持ローラ72と対向しており、二次転写ローラ5と支持ローラ72とで中間転写ベルト11を介して二次転写ニップ部を形成している。
【0023】
また、画像形成装置1は、記録材である用紙Sの積載部としてのシート給紙装置61、給送ローラ3に加え、レジストローラ対4などを備える。さらに、二次転写ローラ5から見て用紙Sの搬送方向下流側には、定着装置100及び排紙ローラ対7が設けられている。
【0024】
続いて、画像形成動作について説明する。まず、感光体20が駆動源により時計回りに回転駆動され、このとき感光体20表面に図示しない除電装置からの光が照射されて表面電位が初期化される。
【0025】
次に、感光体20の表面は、帯電部材30によって所定の極性に一様に帯電される。次いで、感光体20表面には露光装置8からのレーザ光が照射され、これによって感光体20表面に静電潜像が形成される。
【0026】
このとき各感光体20に露光される画像情報は、所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの各トナー色情報に分解した単色の画像情報である。そして、感光体20上に形成された静電潜像は、現像装置40を通る際に現像装置40からの各色トナー(現像剤)が付与され、顕像化されたトナー像として可視化される。
【0027】
また、中間転写ベルト11は、図中反時計回りに走行駆動させられる一方、一次転写ローラ12には、感光体20上に形成されたトナー像のトナー帯電極性と逆極性の一次転写電圧が印加される。これにより、感光体20と中間転写ベルト11との間に転写電界が形成され、感光体20上のトナー像が、その感光体20と同期して回転駆動される中間転写ベルト11上に静電的に一次転写される。このようにして、一次転写される各色トナー像は、中間転写ベルト11の搬送方向上流側から逐次タイミングを併せて中間転写ベルト11上に重ね合わされ、所望のフルカラー画像が形成される。
【0028】
一方、画像形成される用紙Sは、シート給紙装置61に積載された用紙束から給送ローラ3などの搬送部材によってレジストローラ対4まで一枚ごとに分離されて給送される。その際、搬送された用紙Sの先端は、回転駆動を開始していないレジストローラ対4のニップ部に突き当たり、ループを形成し、用紙Sのレジストレーションが行われる。その後、中間転写ベルト11上に担持されたフルカラートナー像とのタイミングを図って、レジストローラ対4の回転駆動が開始され、支持ローラ72と二次転写ローラ5で構成される二次転写ニップ部に向けて用紙Sが送出される。
【0029】
本実施形態では、二次転写ローラ5に中間転写ベルト11表面におけるトナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加され、これにより中間転写ベルト11表面に形成されたフルカラートナー像が用紙S上に一括して転写される。次に、トナー像を転写された用紙Sは定着装置100まで搬送され、定着装置100を通過するときに熱と圧力を加えられ、永久画像としてトナー像が用紙Sに定着される。
【0030】
そして、用紙Sは、排紙ローラ対7を介して排紙トレイ17などの用紙排出部に排出され、画像形成動作が完了する。なお、二次転写ニップ部で転写されずに中間転写ベルト11上に残留した残留トナーは、中間転写ベルトクリーニング手段13により取り除かれ回収される。
【0031】
以上の説明は、用紙S上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、感光体20のいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2色又は3色の画像を形成したりすることもできる。また、本実施形態のプリンタを用いてモノクロ印刷をする場合には、感光体20Bk上にのみ静電潜像を形成して同手段によって現像して用紙Sに転写し、定着装置100で定着すればよい。
【0032】
(●ユニット固定構造)
図2は、
図1の定着装置100をユニット化した定着ユニット100aを、画像形成装置1の本体1aに対して着脱可能に固定するユニット固定構造を示すものである。
図2(a)(b)が従来のユニット固定構造を示す図であり、(c)(d)が本実施形態のユニット固定構造を示す図である。
【0033】
図2の定着ユニット100aはユニットの一部のみを示すもので、図示例は定着ユニット100aの長手方向両端にあるブラケット部を図示している。このユニット固定構造では、画像形成装置1の本体1aに対して、定着装置100のユニット100aが着脱可能に固定される。
【0034】
従来、本体1aの側面には円柱状の2つの突起部60、61が左右に離れて配設されている。これら突起部60、61によってユニット100aの位置決めを行う。
【0035】
本体1aの側面には、さらに、突起部60、61の近傍に2つのネジ孔62、63が形成されている。このネジ孔62、63に、後述する締結部材としての2本のネジB1、B2をネジ込むことで、ユニット100aを本体1aの側面に締結・固定する。
【0036】
一方、ユニット100aには、前記2つの突起部60、61を挿入可能な位置決め孔64、65が形成されている。突起部60、61を位置決め孔64、65にそれぞれ挿入(嵌合)することで、本体1aに対してユニット100aを位置決めすることができる。一方(右側)の位置決め孔64は突起部60の外径に対応した円形であるが、他方(左側)の位置決め孔65は横長楕円状に形成されている。これは、横長楕円状によって、位置決め孔65に挿入される突起部61の左右方向の位置誤差を許容するためである。
【0037】
位置決め孔64、65の近傍に、2本のネジB1、B2を挿通するための挿通孔67、68が形成されている。これら挿通孔67、68は、ネジB1、B2の外径に対応した丸穴であり、ネジ径との干渉を回避するためネジ径より1~2mm程度大きめに形成するのがよい。
【0038】
図2(a)(b)の従来のユニット固定構造では、ネジB1、B2を挿通孔67、68に挿通する際に脱落すると、ネジが機内に入り込み、その回収に手間が掛かっていた。ネジを回収せずに放置すると、他部品を傷付けて異常画像、シート搬送不良、部品破損などの問題を引き起こすことがある。
【0039】
そこで本実施形態では、
図2(c)(d)に示すように、位置決め用の突起部70にネジの受止部70aを形成している。すなわち、ネジB1、B2を挿通する挿通孔67、68の下方において突起部70を外側(
図2(c)の手前側)に突出させると共に、当該突起部70を上方に開口した断面U字状に形成している。ここでいう「U字状」は、中央部が周辺部よりも低い形状を意味する。したがって、深さが浅い所謂皿状もU字状に含まれる。
【0040】
突起部70を挿入(貫通)するための位置決め孔69も、
図2(d)に示すように上方に開口したU字状に形成されている。突起部70を断面U字状に形成したり、位置決め孔69をU字状に形成したりすることは、加工上、比較的容易である。したがって、ユニット100aの位置決め精度も出しやすい。
【0041】
突起部70のU字状の幅、高さ及び突起部70の軸線方向長さは、ネジB1、B2の大きさや視認性、周辺部品との位置関係に応じて適宜最適化することが好ましい。また、ユニット100aのフレーム材料として、加工容易な板金を採用することも可能である。このように、設計レイアウト上の自由度を高めることができる。
【0042】
ネジB1、B2の落下防止部材を専用部品として追加した場合、部品点数アップによるコストアップや組立性の悪化を招く。これに対して本実施形態は、ユニット100aの位置決めに不可欠な突起部70を利用してネジB1、B2の受止部70aを構成しているので、部品点数アップやコストアップ等の問題は生じない。また、挿通孔67、68と位置決め孔69を別々にしたことで、ユニット100aの小型化が可能である。
【0043】
図2(d)に示すように、右側の位置決め孔69の右側の横幅W1は、ユニット100aが左右方向にガタつかない程度に、突起部70の右側の横幅W2よりも僅かに広く形成されている(W2<W1)。また、位置決め孔69の水平部分の高さH1も、ユニット100aが上下方向にガタつかない程度に、突起部70の水平部分の高さH2よりも僅かに広く形成されている(H2<H1)。このように、位置決め孔69の右側角部における嵌め合い公差を小さくすることで、ユニット100aの上下・左右方向のガタつきを防止することができる。
【0044】
これに対して、右側の位置決め孔69の左側の横幅など他の部分は、突起部70を位置決め孔69に挿入する際の寸法のばらつきによる干渉を回避するために、突起部70の左側の横幅よりも余裕をもたせて広く形成されている。これにより、突起部70を位置決め孔69に挿入し易くなる。
【0045】
一方、
図2(d)の左側の位置決め孔69の左右の横幅W1’は、突起部70を位置決め孔69に挿入する際の寸法のばらつきによる干渉を回避するために、突起部70の左右の横幅W2’よりも余裕をもたせて広く形成されている。また、位置決め孔69の水平部分の高さH1’は、ユニット100aが上下方向にガタつかない程度に、突起部70の水平部分の高さH2’よりも僅かに広く形成されている(H2’<H1’)。
【0046】
図2(d)は右側の位置決め孔69と突起部70を基準にしてユニット100aを位置決めする場合であるが、左側の位置決め孔69を基準にしてユニット100aを位置決めすることも可能である。その場合は、左右いずれかの横幅W1’を突起部70の横幅W2’よりも僅かに広く形成する(W2’<W1’)。また、
図2(d)は突起部70の右側の横幅W1を基準にした場合であるが、突起部70の左側の横幅を基準にすることも可能である。
【0047】
図3は、
図2(d)の突起部70を実際の形状にして示すものである。突起部70と位置決め孔69の右側の一組で、
図2(d)のようにユニット100aの水平方向と垂直方向を位置決めすることができる。また、突起部70と位置決め孔69の左側の他の一組で、ユニット100aの垂直方向の位置決めをすることができる。
【0048】
挿通孔67、68の下側に、ユニット100aの位置決め孔(
図2(d)の位置決め孔69)から外側に突出した突起部70が位置している。突起部70は上方に開口した断面U字状に形成されている。
【0049】
突起部70のU字状の内側に凹状の受止部70aが形成される。当該受止部70aに、挿通孔67、68から脱落したネジB1、B2を受止めて収容することができる。
【0050】
(●樹脂カバー)
図4は、ユニット100aの装置本体1aとは反対側の外側面に、カバー部材としての耐熱性の樹脂カバー100bを取付けたものである。定着装置としてのユニット100aは、後述のように熱源82(ハロゲンヒータ)を有する。このため、板金でユニットフレームを構成した場合、当該フレームが熱伝導率の高さから高温となる場合がある。その対応として、火傷しないようにユニット100aのフレーム外側面に耐熱性の樹脂カバーを一体に設けるのが一般的に行われている。
【0051】
一方、前述したように位置決め孔69をU字状にした場合、位置決め孔69を大きくするほどフレームの剛性は低下する。そこで、本実施形態は
図4のように、フレームの剛性を担保するために、突起部70と位置決め孔69をL字状にした。L字状であればU字状よりもフレーム剛性を高めることができるので、位置決め孔69の大きさ等の設計上の自由度を高めることができる。
【0052】
突起部70を単にL字状にした場合、突起部70の横方向が開いているのでネジが脱落する可能性がある。そこで、樹脂カバー100bの内面に、上下方向に延びたI字状の凸部71を形成することにした。
【0053】
I字状の凸部71とL字状の突起部70によって、全体として上方に開口したU字状の受止部70aを形成することができる。凸部71と突起部70の内側に形成された受止部70aに、挿通孔67から落下したネジB1を収容することができる。
図4は一方のネジB1のための受止部70aを示しているが、反対側のネジB2の受止部70aも同様に構成することができる。本実施形態により、ネジの脱落を防止しつつ、小型化や板金の選択を可能にするなど、設計レイアウトの自由度を高めることができる。
【0054】
樹脂カバー100bの凸部71をI字状からU字状に変更して当該U字状の凸部のみでネジの受止部を構成することも可能である。しかし、そうすると樹脂カバー100bの樹脂材料の使用量アップによるコストアップを招く。また、受止部を有しない突起部70を別の位置に配設しなければならなくなるので、ユニット100aの小型化が困難になる。
【0055】
(●定着装置)
以下、
図1の定着装置100の構成を
図5と
図6を参照して説明する。
図5は、本実施形態の一実施形態に係る定着装置を示す概略構成図、
図6はニップ形成部材の分解斜視図である。定着装置100は、回転可能な無端状の定着ベルト81と、定着ベルト81を加熱する熱源82(ハロゲンヒータ)と、定着ベルト81の外周面に当接する加圧部材である加圧ローラ83とを備える。
【0056】
定着ベルト81内には、定着ベルト81の内面と摺動シートを介して間接的に摺動するニップ形成部材86が設けられている。このニップ形成部材86は、定着ベルト81を介して対向する加圧ローラ83とともにニップ部Nを形成する。
【0057】
図5ではニップ部Nが平坦形状であるが、凹形状やその他の形状であってもよい。ニップ部Nが凹形状である場合、記録材先端の排出方向が加圧ローラ83寄りになり、分離性が向上するのでジャムの発生が抑制される。
【0058】
定着ベルト81は、ニッケルやSUSなどの金属ベルトやポリイミドなどの樹脂材料を用いた無端ベルト、又はフィルムを用いることができる。定着ベルト81の表層は、PFA又はPTFE層などの離型層を有し、トナーが付着しないように離型性を持たせている。
【0059】
定着ベルト81の基材とPFA又はPTFE層の間には、シリコーンゴム層などで形成された弾性層があることが望ましい。シリコーンゴム層がない場合、熱容量が小さくなり、定着性が向上する。
【0060】
しかし、未定着画像を押し潰して定着させる際、ベルト表面の微小な凹凸が画像に転写され、画像のベタ部にユズ肌状の光沢ムラ(ユズ肌画像)が残るおそれがある。これを改善するにはシリコーンゴム層を100μm以上設ければよく、シリコーンゴム層の変形により、微小な凹凸が吸収されユズ肌画像を改善できる。
【0061】
また、定着ベルト81の内部には、ニップ部Nを支持するための支持部材87(ステー)が設けられている。これにより、加圧ローラ83の圧力によるニップ形成部材86の撓みが防止され、軸方向で均一なニップ幅が得られる。
【0062】
この支持部材87は、両端部で保持部材88(フランジ)に保持固定され、位置決めされている。さらに、熱源82と支持部材87の間に反射部材89が設けられており、熱源82からの輻射熱により支持部材87が加熱されることによる無駄なエネルギー消費を抑制している。
【0063】
反射部材89を設ける代わりに、支持部材87の表面に断熱処理又は鏡面処理を行っても同様の効果を得ることができる。なお、熱源82は、図示したハロゲンヒータでもよいが、IH、抵抗発熱体、又はカーボンヒータなどであってもよい。
【0064】
加圧ローラ83は、芯金84と弾性ゴム層85とを有し、離型性を得るために表面に離型層(PFA又はPTFE層)が設けてある。加圧ローラ83は、画像形成装置1に設けられたモータなどの駆動源からギヤを介して駆動力が伝達され回転する。
【0065】
また、加圧ローラ83はスプリングなどにより定着ベルト81側に押し付けられ、弾性ゴム層85が押し潰されて変形することにより、所定のニップ幅を有する。加圧ローラ83は中空のローラであってもよく、加圧ローラ83の内部にハロゲンヒータなどの加熱源を有してもよい。
【0066】
弾性ゴム層85はソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ83内部に加熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト81の熱が奪われにくくなるので、より望ましい。
【0067】
加圧ローラ83が駆動源により回転すると、ニップ部Nで定着ベルト81に駆動力が伝達されることにより、定着ベルト81が連れ回り回転する。定着ベルト81は、ニップ部Nで挟み込まれて回転し、ニップ部N以外では両端部で保持部材88(フランジ)にガイドされ、走行する。上記のような構成により、安価で、ウォームアップの速い定着装置を実現することができる。
【0068】
(●ニップ形成部材)
図6は、本実施形態の一実施形態に係るニップ形成部材の分解斜視図である。本構成は上記の非通紙領域の過昇温を低減することを目的とし、熱源の削減(ハロゲンヒータを2本に削減)と、遮光部材90の代用機能を有する。そのため、遮光部材90及びそれを駆動させる駆動部が不要となり、大幅なコスト削減ができる。
【0069】
ニップ形成部材86は、
図6に示すように、第1の熱移動手段としての均熱部材66と、この均熱部材66に備わる摺動シート67とを備える。そして、定着ベルト81が回転する際、この摺動シート67に対し定着ベルト81が摺動することで、定着ベルト81に生じる駆動トルクが低減され、定着ベルト81への摩擦力による負荷が軽減される。
【0070】
均熱部材66は、熱伝導率の高い材料、例えば銅からなり、定着ベルト81の長手方向に亘って形成される。そして、定着ベルト81の非通紙部に過剰に蓄積する熱を吸熱し、長手方向へ熱を移動させることができる。
【0071】
図6に示すように、ニップ形成部材86は、第1断熱部材77aと、第2断熱部材77bと、第1吸熱部材76と、第2吸熱部材75とを有する。第1断熱部材77aは、均熱部材66より熱伝導率の低い、例えば樹脂からなり、定着ベルト81の長手方向に部分的に延在し、均熱部材66と第2吸熱部材75の間で、第1吸熱部材76が存しない位置に配置されている。
【0072】
第1断熱部材77aを有することで、定着ベルト81の熱を過剰に吸収することを回避する。その結果、通紙部での温度落ち込みを防げる。また、ウォームアップ時間の短縮や消費電力の削減を図れる。
【0073】
第2断熱部材77bは、均熱部材66より熱伝導率の低い、例えば樹脂からなり、均熱部材66と第1吸熱部材76の間に設けられる。第2断熱部材77bを設けることにより、均熱部材66から第1吸熱部材76を介する第2吸熱部材75への熱移動量を減らすことができる。
【0074】
なお、第2断熱部材77bは、厚くしすぎると、定着ベルト81に蓄積された熱が第2吸熱部材75に移動しなくなるため、非通紙部温度上昇が発生し易くなる。そのため、第2断熱部材77bの厚みや長さは、発生する非通紙部温度上昇の大きさに応じて最適化する必要があるが、その厚みは第1断熱部材77aの厚みより小さい。
【0075】
第2吸熱部材75は、第1断熱部材77a及び第2断熱部材77bよりも熱伝導率の大きい材料で構成されている。第2吸熱部材75は定着ベルト81の長手方向に延在し、第1断熱部材77a及び第1吸熱部材76に当接して配置されている。
【0076】
第1吸熱部材76も、第1断熱部材77a及び第2断熱部材77bよりも熱伝導率の大きい材料から成り、定着ベルト81の長手方向に部分的に延在し、第2断熱部材77bと第2吸熱部材75の間に配置されている。特に、第1吸熱部材76は、定着ベルト81の中央領域以外に対応する位置、すなわち、定着ベルト81の非通紙部温度上昇の発生位置に対応して設けられる。
【0077】
なお、本実施形態では、第1吸熱部材76は、非通紙領域に対応して設けられているが、この態様に限定されない。例えば、第1吸熱部材76の長手方向で通紙領域に対応する位置まで、第1吸熱部材76を延伸して設けてもよい。
【0078】
均熱部材66は、その長手方向への熱移動を促進して、定着ベルト81を均熱化し、非通紙部温度上昇を抑える機能を有する。これに対し、第1吸熱部材76,第2吸熱部材75は、厚み方向への熱移動を促進し、熱を吸収する役割を有する。
【0079】
すなわち、第1吸熱部材76,第2吸熱部材75は、均熱部材66の熱容量不足を補うものである。したがって、特に第2吸熱部材75は大きい熱容量を有するか、又は放熱量を高めるために大きい表面積を有することが望ましい。
【0080】
これら吸熱部材、断熱部材、及び曲げ部66b,66cとで、摺動シート67の摺動方向で端部領域を挟持し、摺動シート67をより強固に固定できる。また、通紙部での温度落ち込みを防げる。さらに、ウォームアップ時間の短縮や消費電力の削減を図れる。
【0081】
続いて、本実施形態の特徴的な構成について説明する。一般的に、摺動シート67は定着ベルト81の耐久性を向上させるため、低摩擦特性の材料で構成するとともに、潤滑剤を塗布することが多い。潤滑剤は低粘度の材料が使用されるが、流動性が高いため定着ベルト81から流れ出やすく、摺動負荷(トルク)が増加する問題がある。
【0082】
また、摺動シート67に塗布された潤滑剤は、長手方向のニップ偏差や摺動シート67の織り目方向などにより、一方向に流れる傾向がある。ここでニップ偏差とは、加圧時の静的荷重偏差や片側駆動方式による駆動時の動的荷重偏差によって生じる圧の偏りである。
【0083】
潤滑剤が摺動シート67の長手方向で部分的に枯渇すると、長手方向における定着ベルト81の線速変動(定着ベルト81と摺動シート67の摩擦変動)が生じ、記録材にシワといった搬送不良が生じる。さらに、定着ベルト81の寄り速度も増加するので、定着ベルト81の端面への負荷が増大し、寿命が低下するという問題もある。
【0084】
以上、実施形態を用いて本実施形態を詳細に説明した。この実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して使用できる。例えば、本発明の固定構造を適用するユニットは、定着ユニット100aに限定されるものではない。本発明の固定構造は、装置本体に固定されるあらゆる種類のユニットに適用可能である。また締結部材はネジに限られない。例えばネジに代えてボルトを使用してもよい。
【0085】
また、定着装置100及び画像形成装置1としては、本実施形態を適用可能であれば任意な構成を採用可能である。画像形成装置1としては複写機あるいはプリンタに限らず、ファクシミリや複数の機能を備える複合機であってもよい。
【符号の説明】
【0086】
1:画像形成装置 1a:装置本体
3:給送ローラ 4:レジストローラ対
5:二次転写ローラ 7:排紙ローラ対
8:露光装置 9Y、9M、9C、9Bk:トナーボトル
11:中間転写ベルト 12Y、12M、12C、12Bk:一次転写ローラ
13:中間転写ベルトクリーニング手段 17:排紙トレイ
20Y、20M、20C、20Bk:感光体 30Y、30M、30C、30Bk:帯電部材
40Y、40M、40C、40Bk:現像装置 50Y、50M、50C、50Bk:クリーニング手段
61:シート給紙装置 62、63:ネジ孔
64、65:位置決め孔 66:均熱部材
66a:当接部 66b、66c:曲げ部
66d:保持部 67:摺動シート
67a:開口部 68:凸部
70:突起部 70a:受止部
71:凸部 72、73:支持ローラ
74:摺動シート 75:第2吸熱部材
76:第1吸熱部材 77a:第1断熱部材
77b:第2断熱部材 81:定着ベルト
82:熱源 83:加圧ローラ
84:芯金 85:弾性ゴム層
86:ニップ形成部材 87:支持部材
88:保持部材 89:反射部材
90:遮光部材 100:定着装置
100a:定着ユニット 100b:樹脂カバー
B1、B2:ネジ N:ニップ部
S:用紙(記録材) t:織り目
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】