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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168050
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び電子部品装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20231116BHJP
   C08K 3/24 20060101ALI20231116BHJP
   C08K 5/057 20060101ALI20231116BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20231116BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20231116BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231116BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20231116BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/24
C08K5/057
C08K5/54
C08K3/22
C08L63/00 C
C08G59/40
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079670
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 亜裕美
(72)【発明者】
【氏名】山浦 格
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
4M109
【Fターム(参考)】
4J002AA021
4J002CD051
4J002CD061
4J002DE147
4J002DE186
4J002EC079
4J002EE049
4J002EM009
4J002EX078
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD208
4J002FD209
4J002GQ05
4J036AD07
4J036AF07
4J036DB09
4J036DB23
4J036DD07
4J036JA07
4M109AA01
4M109EA03
4M109EA10
4M109EA11
4M109EB02
4M109EB06
4M109EB12
4M109EC07
(57)【要約】
【課題】高い比誘電率と低い誘電正接を両立でき、かつ曲げ強度に優れる硬化物が得られる樹脂組成物、及びこの樹脂組成物を用いて得られる電子部品装置の提供。
【解決手段】硬化性樹脂と、無機充填材と、カップリング剤と、を含み、前記無機充填材はチタン酸カルシウム粒子を含み、前記カップリング剤はシランカップリング剤とアルミネートカップリング剤とを含む、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と、無機充填材と、カップリング剤と、を含み、
前記無機充填材はチタン酸カルシウム粒子を含み、
前記カップリング剤はシランカップリング剤とアルミネートカップリング剤とを含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記シランカップリング剤と前記アルミネートカップリング剤とのモル比(シランカップリング剤:アルミネートカップリング剤)は75:25~35:65である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機充填材はアルミナ粒子をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化性樹脂はエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
活性エステル化合物をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
支持部材と、
前記支持部材上に配置された電子部品と、
前記電子部品を封止している請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物と、
を備える電子部品装置。
【請求項7】
前記電子部品がアンテナを含む、請求項6に記載の電子部品装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子部品装置を用いた無線通信分野においては、チャンネル数の増加と伝送される情報量の増加にともなって使用する電波の高周波化が進行している。無線通信に用いる電気信号の伝送損失のうち、電子部品装置に含まれる封止材等の絶縁体が関与する損失(誘電損失)の量は、電波の周波数、絶縁体の誘電率の平方根(√εr)、及び絶縁体の誘電正接の積に比例して増大する。つまり、電波の周波数が増大する局面にあっては絶縁体の比誘電率又は誘電正接の低減が電気信号の伝送損失の抑制の観点から重要性を増している。
一方、絶縁体中では電波の波長が1/√εrに短縮される。このため、電子部品装置の小型化の観点からは絶縁体の比誘電率は大きいほど有利である。
したがって、電子部品装置の高周波数化と小型化の両立の観点から、絶縁体の誘電正接を低く抑えながら比誘電率を高める方策が望まれている。
【0003】
絶縁体の比誘電率を高める方策として、例えば、特許文献1~3には比誘電率の高いチタン酸化合物を無機充填材として含むエポキシ樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-036410号公報
【特許文献2】特開2017-057268号公報
【特許文献3】特開2018-141052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討の結果、特許文献1~3に記載されているような無機充填材としてチタン酸化合物を含むエポキシ樹脂組成物は、硬化物としたときの誘電正接と物理的な強度に改善の余地があることがわかった。
本開示は上記事情を鑑みてなされたものであり、高い比誘電率と低い誘電正接を両立でき、かつ曲げ強度に優れる硬化物が得られる樹脂組成物、及びこの樹脂組成物を用いて得られる電子部品装置を提供することを課題とする
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1>硬化性樹脂と、無機充填材と、カップリング剤と、を含み、
前記無機充填材はチタン酸カルシウム粒子を含み、
前記カップリング剤はシランカップリング剤とアルミネートカップリング剤とを含む、樹脂組成物。
<2>前記シランカップリング剤と前記アルミネートカップリング剤とのモル比(シランカップリング剤:アルミネートカップリング剤)は75:25~35:65である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記無機充填材はアルミナ粒子をさらに含む、<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記硬化性樹脂はエポキシ樹脂を含む、<1>~<3>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<5>活性エステル化合物をさらに含む、<1>~<4>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<6>支持部材と、
前記支持部材上に配置された電子部品と、
前記電子部品を封止している<1>~<5>のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物と、
を備える電子部品装置。
<7>前記電子部品がアンテナを含む、<6>に記載の電子部品装置。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、高い比誘電率と低い誘電正接を両立でき、かつ曲げ強度に優れる硬化物が得られる樹脂組成物、及びこの樹脂組成物を用いて得られる電子部品装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0009】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0010】
<樹脂組成物>
本開示の一実施形態に係る樹脂組成物は、
硬化性樹脂と、無機充填材と、カップリング剤と、を含み、
前記無機充填材はチタン酸カルシウム粒子を含み、
前記カップリング剤はシランカップリング剤とアルミネートカップリング剤とを含む。
【0011】
本開示の一実施形態に係る樹脂組成物は、無機充填材としてチタン酸カルシウム粒子を含む。
本発明者らの検討の結果、無機充填材としてチタン酸カルシウム粒子を含む樹脂組成物の硬化物は、チタン酸バリウム粒子のような他のチタン酸化合物粒子を含む樹脂組成物の硬化物に比べて誘電正接が低いことが分かった。
すなわち、本開示の一実施形態に係る樹脂組成物は無機充填材としてチタン酸カルシウム粒子を含むために硬化物の誘電率が高い一方で誘電正接の上昇が低く抑えられている。
【0012】
本開示の一実施形態に係る樹脂組成物は、カップリング剤としてシランカップリング剤とアルミネートカップリング剤とを含む。
本発明者らの検討の結果、樹脂組成物がカップリング剤としてシランカップリング剤とアルミネートカップリング剤とを含む場合はカップリング剤としてシランカップリング剤又はアルミネートカップリング剤のいずれか一方のみを含む場合に比べて硬化物の曲げ強度が向上することがわかった。
その理由は必ずしも明らかではないが、下記のように考えられる。
シランカップリング剤とアルミネートカップリング剤とを含む樹脂組成物の硬化物の曲げ強度がシランカップリング剤のみを含む樹脂組成物に比べて向上する理由としては、樹脂組成物中においてアルミネートカップリング剤が無機充填材により近づきやすく、無機充填材の樹脂成分に対する濡れ性の向上に寄与することが考えられる。
シランカップリング剤とアルミネートカップリング剤とを含む樹脂組成物の硬化物の曲げ強度がアルミネートカップリング剤のみを含む樹脂組成物に比べて向上する理由としては、樹脂との界面における接着性により優れるシランカップリング剤が無機充填材と樹脂成分との接着性の向上に寄与することが考えられる。
【0013】
(硬化性樹脂)
本実施形態における樹脂組成物は、硬化性樹脂を含む。
硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂のいずれであってもよく、量産性の観点からは、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂等のポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂は、成形性及び電気特性の観点から、エポキシ樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、エポキシ樹脂及びビスマレイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、エポキシ樹脂であることがさらに好ましい。
樹脂組成物は、硬化性樹脂を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。
以下、硬化性樹脂の一例として、エポキシ樹脂について説明する。
【0014】
-エポキシ樹脂-
樹脂組成物は、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
樹脂組成物が硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含む場合、硬化性樹脂全体に対するエポキシ樹脂の含有率は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
エポキシ樹脂は、分子中にエポキシ基を有するものであればその種類は特に制限されない。
【0015】
エポキシ樹脂として具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものであるノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等);上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂;上記フェノール化合物及びナフトール化合物と、アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものである共重合型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のジグリシジルエーテルであるジフェニルメタン型エポキシ樹脂;アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン系フェノール化合物のジグリシジルエーテルであるスチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールS等のジグリシジルエーテルである硫黄原子含有エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸化合物のグリシジルエステルであるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したものであるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール化合物の共縮合樹脂をエポキシ化したものであるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合をエポキシ化したものであるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるパラキシリレン変性エポキシ樹脂;メタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるメタキシリレン変性エポキシ樹脂;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるテルペン変性エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルである多環芳香環変性エポキシ樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるナフタレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるアラルキル型エポキシ樹脂;などが挙げられる。さらにはアクリル樹脂のエポキシ化物等もエポキシ樹脂として挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
エポキシ樹脂のエポキシ当量(分子量/エポキシ基数)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100g/eq~1000g/eqであることが好ましく、150g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236:2009に準じた方法で測定される値とする。
【0017】
エポキシ樹脂が固体である場合、エポキシ樹脂の軟化点又は融点は特に制限されない。エポキシ樹脂の軟化点又は融点は、成形性と耐リフロー性の観点からは40℃~180℃であることが好ましく、樹脂組成物の調製の際の取扱い性の観点からは50℃~130℃であることがより好ましい。
エポキシ樹脂の融点又は軟化点は、示差走査熱量測定(DSC)又はJIS K 7234:1986に準じた方法(環球法)で測定される値とする。
【0018】
樹脂組成物が硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含む場合、樹脂組成物の全量に占めるエポキシ樹脂の質量割合は、強度、流動性、耐熱性、成形性等の観点から0.5質量%~30質量%であることが好ましく、2質量%~20質量%であることがより好ましく、3.5質量%~13質量%であることがさらに好ましい。
【0019】
-硬化剤-
樹脂組成物が硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含む場合、樹脂組成物はさらに硬化剤を含んでもよい。
【0020】
硬化物の誘電正接を低減する観点からは、樹脂組成物は硬化剤として活性エステル化合物を含むことが好ましい。活性エステル化合物は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。ここで、活性エステル化合物とは、エポキシ基と反応するエステル基を1分子中に1個以上有し、エポキシ樹脂の硬化作用を有する化合物をいう。なお、硬化剤が活性エステル化合物を含む場合、硬化剤は活性エステル化合物以外の硬化剤を含有していてもよく、活性エステル化合物以外の硬化剤を含有していなくてもよい。
【0021】
硬化剤として活性エステル化合物を用いると、他の硬化剤(例えば、フェノール硬化剤)を用いた場合に比べ、硬化物の誘電正接を低く抑えることができる。その理由は以下のように推測される。
エポキシ樹脂とフェノール硬化剤との反応においては、2級水酸基が発生する。これに対して、エポキシ樹脂と活性エステル化合物との反応においては、2級水酸基のかわりにエステル基が生じる。エステル基は、2級水酸基に比べて極性が低い故、硬化剤として活性エステル化合物を含有する樹脂組成物は、硬化剤として2級水酸基を発生させる硬化剤のみを含有する樹脂組成物に比べて、硬化物の誘電正接を低く抑えることができる。
また、硬化物中の極性基は硬化物の吸水性を高めるところ、硬化剤として活性エステル化合物を用いることによって硬化物の極性基濃度を抑えることができ、硬化物の吸水性を抑制することができる。そして、硬化物の吸水性を抑制すること、つまりは極性分子であるHOの含有量を抑制することにより、硬化物の誘電正接をさらに低く抑えることができる。
【0022】
活性エステル化合物は、エポキシ基と反応するエステル基を分子中に1個以上有する化合物であればその種類は特に制限されない。活性エステル化合物としては、フェノールエステル化合物、チオフェノールエステル化合物、N-ヒドロキシアミンエステル化合物、複素環ヒドロキシ化合物のエステル化物等が挙げられる。
【0023】
活性エステル化合物としては、例えば、脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸の少なくとも1種と脂肪族ヒドロキシ化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物の少なくとも1種とから得られるエステル化合物が挙げられる。脂肪族化合物を重縮合の成分とするエステル化合物は、脂肪族鎖を有することによりエポキシ樹脂との相溶性に優れる傾向にある。芳香族化合物を重縮合の成分とするエステル化合物は、芳香環を有することにより耐熱性に優れる傾向にある。
【0024】
活性エステル化合物の具体例としては、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる芳香族エステルが挙げられる。中でも、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルプロパン、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン酸等の芳香環の水素原子の2~4個をカルボキシ基で置換した芳香族カルボン酸成分と、前記した芳香環の水素原子の1個を水酸基で置換した1価フェノールと、前記した芳香環の水素原子の2~4個を水酸基で置換した多価フェノールと、の混合物を原材料として、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる芳香族エステルが好ましい。すなわち、上記芳香族カルボン酸成分由来の構造単位と上記1価フェノール由来の構造単位と上記多価フェノール由来の構造単位とを有する芳香族エステルが好ましい。
【0025】
活性エステル化合物の具体例としては、特開2012-246367号公報に記載されている、脂肪族環状炭化水素基を介してフェノール化合物が結節された分子構造を有するフェノール樹脂と、芳香族ジカルボン酸又はそのハライドと、芳香族モノヒドロキシ化合物と、を反応させて得られる構造を有する活性エステル樹脂が挙げられる。当該活性エステル樹脂としては、下記の構造式(1)で表される化合物が好ましい。
【0026】
【化1】
【0027】
構造式(1)中、Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、Xは非置換のベンゼン環、非置換のナフタレン環、炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゼン環若しくはナフタレン環、又はビフェニル基であり、Yはベンゼン環、ナフタレン環、又は炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゼン環若しくはナフタレン環であり、kは0又は1であり、nは繰り返し数の平均を表し0.25~1.5である。
【0028】
構造式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例示化合物(1-1)~(1-10)が挙げられる。構造式中のt-Buは、tert-ブチル基である。
【0029】
【化2】
【0030】
【化3】
【0031】
活性エステル化合物の別の具体例としては、特開2014-114352号公報に記載されている、下記の構造式(2)で表される化合物及び下記の構造式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0032】
【化4】
【0033】
構造式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、Zは非置換のベンゾイル基、非置換のナフトイル基、炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゾイル基又はナフトイル基、及び炭素数2~6のアシル基からなる群から選ばれるエステル形成構造部位(z1)、又は水素原子(z2)であり、Zのうち少なくとも1個はエステル形成構造部位(z1)である。
【0034】
構造式(3)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、Zは非置換のベンゾイル基、非置換のナフトイル基、炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゾイル基又はナフトイル基、及び炭素数2~6のアシル基からなる群から選ばれるエステル形成構造部位(z1)、又は水素原子(z2)であり、Zのうち少なくとも1個はエステル形成構造部位(z1)である。
【0035】
構造式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例示化合物(2-1)~(2-6)が挙げられる。
【0036】
【化5】
【0037】
構造式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例示化合物(3-1)~(3-6)が挙げられる。
【0038】
【化6】
【0039】
活性エステル化合物としては、市販品を用いてもよい。活性エステル化合物の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」(DIC株式会社製);芳香族構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」、「EXB-8」、「EXB-9425」(DIC株式会社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル株式会社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル株式会社製);等が挙げられる。
【0040】
活性エステル化合物のエステル当量(分子量/エステル基数)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、150g/eq~400g/eqが好ましく、170g/eq~300g/eqがより好ましく、200g/eq~250g/eqがさらに好ましい。
活性エステル化合物のエステル当量は、JIS K 0070:1992に準じた方法により測定される値とする。
【0041】
硬化剤は、活性エステル化合物以外のその他の硬化剤を含んでもよい。その他の硬化剤の種類は特に制限されず、樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。その他の硬化剤としては、フェノール硬化剤、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。
【0042】
フェノール硬化剤として具体的には、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の多価フェノール化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル等と、から合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂、メタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジシクロペンタジエンと、から共重合により合成されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂及びジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂;これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂などが挙げられる。これらのフェノール硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
その他の硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、その他の硬化剤の官能基当量は70g/eq~1000g/eqであることが好ましく、80g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
その他の硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量)は、JIS K 0070:1992に準じた方法により測定される値とする。
【0044】
硬化剤の軟化点又は融点は、特に制限されない。硬化剤の軟化点又は融点は、成形性と耐リフロー性の観点からは、40℃~180℃であることが好ましく、樹脂組成物の製造時における取扱い性の観点からは、50℃~130℃であることがより好ましい。
硬化剤の融点又は軟化点は、エポキシ樹脂の融点又は軟化点と同様にして測定される値とする。
【0045】
エポキシ樹脂と硬化剤(硬化剤を複数種用いた場合はすべての硬化剤)との当量比、すなわちエポキシ樹脂中の官能基数に対する硬化剤中の官能基数の比(硬化剤中の官能基数/エポキシ樹脂中の官能基数)は、特に制限されない。それぞれの未反応分を少なく抑える観点からは、0.5~2.0の範囲に設定されることが好ましく、0.6~1.3の範囲に設定されることがより好ましい。成形性と耐リフロー性の観点からは、0.8~1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0046】
硬化剤が活性エステル化合物及びその他の硬化剤を含む場合、活性エステル化合物及びその他の硬化剤の合計量に占める活性エステル化合物の質量割合は、硬化物の誘電正接を低く抑える観点から、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
【0047】
(無機充填材)
樹脂組成物は、無機充填材としてチタン酸カルシウム粒子を含む。
樹脂組成物が無機充填材としてチタン酸カルシウム粒子を含むことで、硬化物の比誘電率が高まる。また、他のチタン酸化合物を含む場合に比べて硬化物の誘電正接が低く抑えられる。
【0048】
樹脂組成物に含まれるチタン酸カルシウム粒子の含有率は、無機充填材全体に対して10質量%~80質量%であることが好ましく、20質量%~70質量%であることがより好ましく、30質量%~60質量%であることがさらに好ましい。
【0049】
樹脂組成物は、無機充填材としてアルミナ粒子をさらに含むことが好ましい。
樹脂組成物が無機充填材としてアルミナ粒子を含むことで、硬化物の熱伝導率が高まり放熱性が向上する。
【0050】
樹脂組成物に含まれるアルミナ粒子の含有率は、無機充填材全体に対して10質量%~80質量%であることが好ましく、20質量%~70質量%であることがより好ましく、30質量%~60質量%であることがさらに好ましい。
【0051】
樹脂組成物は、無機充填材としてチタン酸カルシウム粒子及びアルミナ粒子以外の無機充填材をさらに含んでもよい。
チタン酸カルシウム粒子及びアルミナ粒子以外の無機充填材として具体的には、結晶シリカ、溶融シリカ、チタン酸バリウム、ガラス、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の無機材料が挙げられる。
樹脂組成物は、難燃効果を有する無機充填材を含んでもよい。難燃効果を有する無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。
チタン酸カルシウム粒子及びアルミナ粒子以外の無機充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物がチタン酸カルシウム粒子及びアルミナ粒子以外の無機充填材を含む場合、その含有率は、無機充填材全体に対して400質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0052】
無機充填材の体積平均粒径は、0.1m~100μmであることが好ましく、0.2μm~80μmであることがより好ましく、0.5μm~30μmであることがさらに好ましい。
樹脂組成物は、体積平均粒子径の異なる複数種の無機充填材を含んでもよい。
【0053】
無機充填材の体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式により得られる粒度分布における積算値50%(体積基準)での粒径とする。粒度分布は、例えば、以下のようにして測定される。
まず、分散媒(水)に、無機充填材を0.01質量%~0.1質量%の範囲で添加し、バス式の超音波洗浄機で5分間分散する。次いで、得られた分散液5mlをセルに注入し、25℃で、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所、LA920)にて粒度分布を測定する。
【0054】
無機充填材の含有率は、樹脂組成物全体に対し、40体積%~90体積%であることが好ましく、45体積%~85体積%であることがより好ましく、50体積%~80体積%であることがさらに好ましい。
【0055】
樹脂組成物における無機充填材の含有率(体積%)は、樹脂組成物の組成が既知である場合には、樹脂組成物に含まれる各材料の質量及び密度から計算により求めることができる。樹脂組成物の組成が既知でない場合には、無機充填材の含有率(体積%)は下記の方法により求めることができる。
樹脂組成物の硬化物の薄片試料を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮像する。SEM画像において任意の面積Sを特定し、面積Sに含まれる無機充填材の総面積Aを求める。無機充填材の総面積Aを面積Sで除算した値を百分率(%)に換算し、この値を樹脂組成物に占める無機充填材の含有率(体積%)とする。
面積Sは、無機充填材の大きさに対して十分大きい面積とする。例えば、無機充填材が100個以上含まれる大きさとする。面積Sは、複数個の切断面の合計でもよい。
無機充填材は、樹脂組成物の硬化時の重力方向において存在割合に偏りが生じることがある。その場合、SEMにて撮像する際、硬化物の重力方向全体を撮像し、硬化物の重力方向全体が含まれる面積Sを特定する。
【0056】
(カップリング剤)
樹脂組成物は、カップリング剤としてシランカップリング剤とアルミネートカップリング剤とを含む。
【0057】
シランカップリング剤として具体的には、
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチルー3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等のアミノ基を有するシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するシラン化合物;
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するシラン化合物;
p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基を有するシラン化合物;
3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロイル基を有するシラン化合物;
3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロイル基を有するシラン化合物;
3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン等のウレイド基を有するシラン化合物;
3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するシラン化合物;
3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシラン化合物;などが挙げられる。
【0058】
上記シラン化合物の中でも、無機材料と樹脂との界面における接着性の観点からはアミノ基を有するシラン化合物が好ましい。
樹脂組成物に含まれるシランカップリング剤は、1種のみでも2種以上であってもよい。
【0059】
アルミネートカップリング剤として具体的には、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルコキシド基を有するアルミネート化合物、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等のアセチルアセトネート基を有するアルミネート化合物などが挙げられる。
【0060】
樹脂組成物に含まれるアルミネートカップリング剤は、1種のみでも2種以上であってもよい。
【0061】
樹脂組成物に含まれるシランカップリング剤とアルミネートカップリング剤とのモル比(シランカップリング剤:アルミネートカップリング剤)は75:25~35:65であることが好ましい。
シランカップリング剤とアルミネートカップリング剤とのモル比が上記範囲内であると、樹脂組成物の硬化物の曲げ強度が効果的に向上する。
上記モル比は70:30~40:60であることがより好ましく、60:40~40:60であることがさらに好ましい。
【0062】
樹脂組成物は、シランカップリング剤及びアルミネートカップリング剤以外のカップリング剤を含んでいてもよい。
シランカップリング剤及びアルミネートカップリング剤以外のカップリング剤として具体的には、チタン系化合物、アルミニウムキレート系化合物、アルミニウム/ジルコニウム系化合物などが挙げられる。
樹脂組成物がシランカップリング剤及びアルミネートカップリング剤以外のカップリング剤を含む場合、カップリング剤全体に占めるシランカップリング剤及びアルミネートカップリング剤の割合は70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0063】
樹脂組成物に含まれるカップリング剤の量は、無機充填材100質量部に対して0.05質量部~5質量部であることが好ましく、0.1質量部~2.5質量部であることがより好ましい。
【0064】
[各種添加剤]
樹脂組成物は、上述の成分に加えて、以下に例示する硬化促進剤、着色剤、イオン交換体、離型剤、難燃剤、応力緩和剤、流動性付与剤等の各種添加剤を含んでもよい。樹脂組成物は、以下に例示する添加剤以外にも必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を含んでもよい。
【0065】
(硬化促進剤)
樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤の種類は特に制限されず、硬化性樹脂の種類、樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。
【0066】
硬化性樹脂としてエポキシ樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂組成物に用いる硬化促進剤としては、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)等のジアザビシクロアルケン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等の環状アミジン化合物;前記環状アミジン化合物の誘導体;前記環状アミジン化合物又はその誘導体のフェノールノボラック塩;これらの化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;DBUのテトラフェニルボレート塩、DBNのテトラフェニルボレート塩、2-エチル-4-メチルイミダゾールのテトラフェニルボレート塩、N-メチルモルホリンのテトラフェニルボレート塩等の環状アミジニウム化合物;ピリジン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物;前記三級アミン化合物の誘導体;酢酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、リン酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、酢酸テトラエチルアンモニウム、安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム等のアンモニウム塩化合物;エチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン、ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の三級ホスフィンなどの、有機ホスフィン;前記有機ホスフィンと有機ボロン類との錯体等のホスフィン化合物;前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物に、無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン、アントラキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と4-ブロモフェノール、3-ブロモフェノール、2-ブロモフェノール、4-クロロフェノール、3-クロロフェノール、2-クロロフェノール、4-ヨウ化フェノール、3-ヨウ化フェノール、2-ヨウ化フェノール、4-ブロモ-2-メチルフェノール、4-ブロモ-3-メチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェノール、4-ブロモ-3,5-ジメチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-クロロ-1-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトール、6-ブロモ-2-ナフトール、4-ブロモ-4’-ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物とを反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる、分子内分極を有する化合物;テトラフェニルホスホニウム等のテトラ置換ホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート等のテトラ置換ホスホニウムのテトラフェニルボレート塩、テトラ置換ホスホニウムとフェノール化合物との塩などの、テトラ置換ホスホニウム化合物;テトラアルキルホスホニウムと芳香族カルボン酸無水物の部分加水分解物との塩;ホスホベタイン化合物;ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物;などが挙げられる。
硬化促進剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
硬化促進剤は、これらの中でも、有機ホスフィンを含有する硬化促進剤であることが好ましい。有機ホスフィンを含有する硬化促進剤としては、前記有機ホスフィン、前記有機ホスフィンと有機ボロン類との錯体等のホスフィン化合物、前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物にπ結合をもつ化合物を付加して成る分子内分極を有する化合物などが挙げられる。
これらの中でも、特に好適な硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンとキノン化合物との付加物、トリブチルホスフィンとキノン化合物との付加物、トリ-p-トリルホスフィンとキノン化合物との付加物等が挙げられる。
【0068】
樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、その量は、樹脂成分(硬化性樹脂と必要に応じて含まれる硬化剤の合計量、以下同様)100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.1質量部以上であると、短時間で良好に硬化する傾向にある。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して30質量部以下であると、硬化速度が速すぎず良好な成形品が得られる傾向にある。
【0069】
(着色剤)
本実施形態における成形用樹脂組成物は、着色剤を含んでもよい。着色剤としては、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を挙げることができる。着色剤の含有量は、目的等に応じて適宜選択できる。着色剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
樹脂組成物が着色剤を含む場合、着色剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~10質量部であることがより好ましい。
【0071】
(イオン交換体)
樹脂組成物は、イオン交換体を含んでもよい。イオン交換体は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハイドロタルサイト化合物、並びにマグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の含水酸化物等が挙げられる。イオン交換体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、下記一般式(A)で表されるハイドロタルサイトが好ましい。
【0072】
Mg(1-X)Al(OH)(COX/2・mHO ……(A)
(0<X≦0.5、mは正の数)
【0073】
樹脂組成物がイオン交換体を含む場合、イオン交換体の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~10質量部であることがより好ましい。
【0074】
(離型剤)
樹脂組成物は、離型剤を含んでもよい。離型剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。離型剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
樹脂組成物が離型剤を含む場合、その量は樹脂成分100質量部に対して0.01質量部~10質量部が好ましく、0.1質量部~5質量部がより好ましい。
【0076】
(難燃剤)
樹脂組成物は、難燃剤を含んでもよい。難燃剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む有機又は無機の化合物、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
樹脂組成物が難燃剤を含む場合、難燃剤の量は、樹脂成分100質量部に対して1質量部~30質量部であることが好ましく、2質量部~20質量部であることがより好ましい。
【0078】
(応力緩和剤)
樹脂組成物は、応力緩和剤を含んでもよい。樹脂組成物が応力緩和剤を含むことにより、パッケージの反り変形及びパッケージクラックの発生をより低減させることができる。応力緩和剤としては、一般に使用されている公知の応力緩和剤(可とう剤)が挙げられる。具体的には、シリコーン系、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンパウダー等のゴム粒子、メタクリル酸メチル-スチレン-ブタジエン共重合体(MBS)、メタクリル酸メチル-シリコーン共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル共重合体等のコア-シェル構造を有するゴム粒子などが挙げられる。応力緩和剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
応力緩和剤の中でも、シリコーン系応力緩和剤が好ましい。シリコーン系応力緩和剤としては、エポキシ基を有するもの、アミノ基を有するもの、これらをポリエーテル変性したもの等が挙げられ、エポキシ基を有するシリコーン化合物、ポリエーテル系シリコーン化合物等のシリコーン化合物がより好ましい。
【0079】
樹脂組成物が応力緩和剤を含有する場合、応力緩和剤の量は、例えば、樹脂成分100質量部に対して1質量部~30質量部であることが好ましく、2質量部~20質量部であることがより好ましい。
【0080】
(流動性付与剤)
樹脂組成物は、流動性付与剤を含んでもよい。流動性付与剤として具体的には、インデンクマロン樹脂、トリフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0081】
樹脂組成物が流動性付与剤を含有する場合、流動性付与剤の量は、例えば、樹脂成分100質量部に対して1質量部~30質量部であることが好ましく、2質量部~20質量部であることがより好ましい。
【0082】
樹脂組成物は、常温常圧下(例えば、25℃、大気圧下)において固体であることが好ましい。樹脂組成物が固体である場合の形状は特に制限されず、粉状、粒状、タブレット状等が挙げられる。樹脂組成物がタブレット状である場合の寸法及び質量は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び質量となるようにすることが取り扱い性の観点から好ましい。
【0083】
(樹脂組成物の諸物性)
樹脂組成物を、圧縮成形により、金型温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間600秒の条件で成形することで得られる硬化物の10GHzでの比誘電率としては、例えば9~40が挙げられる。硬化物の10GHzでの比誘電率は、電子部品装置の小型化の観点から10以上であることが好ましく、13以上であることがより好ましい。伝送損失量の低減の観点からは、硬化物の10GHzでの比誘電率は35以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。
比誘電率は、実施例に記載した方法で測定される。
【0084】
樹脂組成物を、圧縮成形により、金型温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間600秒の条件で成形することで得られる硬化物の10GHzでの誘電正接としては、例えば0.020以下が挙げられる。硬化物の10GHzでの誘電正接は、伝送損失量の低減の観点からは、0.018以下であることが好ましく、0.015以下であることがより好ましく、0.010以下であることがさらに好ましい。硬化物の10GHzでの誘電正接の下限値は、特に限定されず、例えば0.004が挙げられる。
誘電正接は、実施例に記載した方法で測定される。
【0085】
EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、樹脂組成物を金型温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で成形したときの流動距離は、60cm以上であることが好ましく、70cm以上であることがより好ましく、80cm以上であることがさらに好ましい。以下、上記流動距離を「スパイラルフロー」ともいう。スパイラルフローの上限値は特に限定されず、例えば200cmが挙げられる。
スパイラルフローは、実施例に記載した方法で測定される。
【0086】
樹脂組成物の175℃におけるゲルタイムは、30秒以上~100秒であることが好ましく、40秒~70秒であることがより好ましい。
樹脂組成物の175℃におけるゲルタイムの測定は、以下のようにして行う。具体的には、樹脂組成物の試料3gに対し、JSRトレーディング株式会社のキュラストメータを用いた測定を温度175℃で実施し、トルク曲線の立ち上がりまでの時間をゲルタイム(sec)とする。
ゲルタイムは、実施例に記載した方法で測定される。
【0087】
(樹脂組成物の用途)
本実施形態における樹脂組成物によれば、比誘電率が高く、かつ誘電正接が低く抑えられた硬化物が得られる。そのため、本実施形態における樹脂組成物は、高周波数の電波を通信に使用する電子部品装置の封止材として好適である。
【0088】
高周波数の電波を通信に使用する電子部品装置として、アンテナ機能を有するパッケージであるアンテナ・イン・パッケージ(AiP、Antenna in Package)の開発も進められている。AiPでは、情報の多様化に伴うチャンネル数増加等に対応するため、通信に使用される電波が高周波化されるようになっており、封止材において、高い比誘電率と低い誘電正接との両立が求められている。
したがって、本実施形態における樹脂組成物は、AiP型の電子部品装置の封止材としても好適である。
【0089】
<電子部品装置>
本開示の一実施形態である電子部品装置は、支持部材と、前記支持部材上に配置された電子部品と、前記電子部品を封止している前述の樹脂組成物の硬化物と、を備える。
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ、有機基板等の支持部材に、電子部品(半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子、アンテナなど)を搭載して得られた電子部品領域を樹脂組成物で封止したもの(例えば高周波デバイス)が挙げられる。
【0090】
上記支持部材の種類は特に制限されず、電子部品装置の製造に一般的に用いられる支持部材を使用できる。
上記電子部品は、アンテナを含んでもよく、アンテナ及びアンテナ以外の素子を含んでもよい。上記アンテナは、アンテナの役割を果たすものであれば限定されるものではなく、アンテナ素子であってもよく、配線であってもよい。
【0091】
また、本実施形態の電子部品装置では、必要に応じて、支持部材上における上記電子部品が配置された面と反対側の面に、他の電子部品が配置されていてもよい。他の電子部品は、前述の樹脂組成物により封止されていてもよく、他の樹脂組成物により封止されていてもよく、封止されていなくてもよい。
【0092】
(電子部品装置の製造方法)
本実施形態に係る電子部品装置の製造方法は、電子部品を支持部材上に配置する工程と、前記電子部品を前述の樹脂組成物で封止する工程と、を含む。
上記各工程を実施する方法は特に制限されず、一般的な手法により行うことができる。また、電子部品装置の製造に使用する支持部材及び電子部品の種類は特に制限されず、電子部品装置の製造に一般的に用いられる支持部材及び電子部品を使用できる。
【0093】
前述の樹脂組成物を用いて電子部品を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法、インジェクション成形法、圧縮成形法等が挙げられる。これらの中では、低圧トランスファ成形法が一般的である。
【実施例0094】
以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0095】
<樹脂組成物の調製>
下記に示す成分を表1に示す配合割合(質量部)で混合し、実施例と比較例の樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物は、常温常圧下において固体であった。
なお、表1中、空欄はその成分を含まないことを意味する。
【0096】
・エポキシ樹脂1:オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量200g/eq(DIC株式会社、品名「N500P-2」)
・エポキシ樹脂2:ビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシ当量192g/eq(三菱ケミカル株式会社、品名「YX―4000」)
・硬化剤1:活性エステル化合物、DIC株式会社、品名「EXB-8」
【0097】
・硬化促進剤:トリフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加物
・カップリング剤1:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(分子量:255、信越化学工業社、品名「KBM-573」)
・カップリング材2:アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(分子量:496、味の素ファインテクノ株式会社、品名「プレンアクトAL-M」
・離型剤:モンタン酸エステルワックス(クラリアントジャパン株式会社、品名「HW-E」)
・着色剤:カーボンブラック
【0098】
・無機充填材1:チタン酸カルシウム粒子、体積平均粒子径:0.2μm
・無機充填材2:チタン酸カルシウム粒子、体積平均粒子径:6μm
・無機充填材3:アルミナ粒子、体積平均粒子径:7μm
・無機充填材4:チタン酸バリウム粒子、体積平均粒子径:6.6μm
【0099】
(流動性)
EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、樹脂組成物を金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で成形し、流動距離SF(cm)を求めた。結果を表1に示す。
【0100】
(ゲルタイム)
樹脂組成物3gに対し、JSRトレーディング株式会社のキュラストメータを用いた測定を温度175℃で実施し、トルク曲線の立ち上がりまでの時間をゲルタイムGT(秒)とした。結果を表1に示す。
【0101】
(比誘電率及び誘電正接)
樹脂組成物を真空ハンドプレス機に仕込み、金型温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間600秒の条件で成形し、後硬化を175℃で6時間行い、板状の硬化物(縦12.5mm、横25mm、厚さ0.2mm)を得た。この板状の硬化物を試験片として、誘電率測定装置(アジレント・テクノロジー社、品名「ネットワークアナライザN5227A」)を用いて、温度25±3℃下、10GHzでの比誘電率Dkと誘電正接Dfを測定した。結果を表1に示す。
【0102】
(曲げ強度)
各実施例及び各比較例で得られた樹脂組成物を、トランスファ成形機により、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒で4.0mm×10.0mm×80mmの直方体に成形し、180℃で5時間の後硬化を行って、曲げ強度評価用の試験片を作製した。この試験片を用いて、テンシロン万能材料試験機(インストロン5948、インストロン社)で支点間距離64mm、クロスヘッド速度10mm/min、温度25℃の条件で曲げ試験を行った。測定した結果を用いて、式(A)から曲げ応力-変位カーブを作成し、その最大応力を曲げ強度(MPa)とした。結果を表1に示す。
【0103】
σ=3FL/2bh ・・・ 式(A)
σ:曲げ応力(MPa)
F:曲げ荷重(N)
L:支点間距離(mm)
b:試験片幅(mm)
h:試験片厚さ(mm)

【0104】
【表1】

【0105】
表1に示す「モル比」はシランカップリング剤とアルミネートカップリング剤とのモル比(シランカップリング剤:アルミネートカップリング剤)である。
【0106】
表1に示すように、シランカップリング剤とアルミネートカップリング剤の両方を含む実施例の樹脂組成物は、シランカップリング剤とアルミネートカップリング剤のいずれか一方のみを含む比較例の樹脂組成物に比べて硬化物の曲げ強度が大きい。この結果は、シランカップリング剤とアルミネートカップリング剤を併用することが硬化物の曲げ強度の向上に有効であることを示している。
【0107】
表1に示すように、チタン酸バリウム粒子に代えてチタン酸カルシウム粒子を含むこと以外は比較例3と条件が同じである比較例1の樹脂組成物は、比較例3の樹脂組成物に比べて硬化物の誘電正接Dfが小さい。この結果は、無機充填材としてチタン酸カルシウム粒子を用いることが硬化物の誘電正接Dfの低減に有効であることを示している。