(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168086
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20231116BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231116BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20231116BHJP
【FI】
H01L21/306 B
H01L21/304 611Z
H01L21/304 622P
H01L21/304 631
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079730
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】早川 晋
【テーマコード(参考)】
4E168
5F043
5F057
【Fターム(参考)】
4E168AE01
5F043AA02
5F043BB01
5F043DD01
5F043DD13
5F043DD30
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE35
5F043EE36
5F043EE40
5F043GG10
5F057AA02
5F057AA12
5F057AA19
5F057BA01
5F057BA11
5F057BA12
5F057BB03
5F057CA02
5F057CA14
5F057CA18
5F057CA25
5F057DA01
5F057DA05
5F057DA11
5F057DA15
5F057DA19
5F057DA22
5F057DA29
5F057DA31
5F057DA38
5F057DA39
5F057EB24
5F057FA13
5F057FA32
5F057FA34
5F057FA37
(57)【要約】
【課題】基板のエッチング処理に係る生産性を向上させる。
【解決手段】基板を処理する基板処理方法であって、前記基板を薄化することと、薄化後の前記基板の厚みを複数の測定点で測定して、前記基板の測定厚みを取得することと、前記基板の測定厚みと前記基板の目標厚みとの差分値に基づいて、前記基板のエッチング条件を決定することと、決定された前記エッチング条件で前記基板の一面をエッチングして、前記差分値の半分量を除去することと、前記一面と同様の前記エッチング条件で前記基板の他面をエッチングして、前記差分値の半分量を除去することと、を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理方法であって、
前記基板を薄化することと、
薄化後の前記基板の厚みを複数の測定点で測定して、前記基板の測定厚みを取得することと、
前記基板の測定厚みと前記基板の目標厚みとの差分値に基づいて、前記基板のエッチング条件を決定することと、
決定された前記エッチング条件で前記基板の一面をエッチングして、前記差分値の半分量を除去することと、
前記一面と同様の前記エッチング条件で前記基板の他面をエッチングして、前記差分値の半分量を除去することと、を含む、基板処理方法。
【請求項2】
複数の前記測定点の各々において前記測定厚みと前記目標厚みとの差分値を算出し、
前記一面及び前記他面の前記エッチングによる除去量を、複数の前記測定点の各々における前記差分値に基づいて決定する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記基板のエッチングに際しては、エッチング液供給部からのエッチング液の吐出を継続しながら、当該エッチング液供給部を前記基板の回転中心の上方で往復移動させ、
前記基板の前記エッチング条件は、前記基板を回転させる際の回転速度、前記エッチング液供給部を往復移動させる際のスキャン速度、及び前記エッチング液供給部を往復移動させる際のスキャン幅の少なくともいずれかを含む、請求項1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記基板を薄化することは、
前記基板の前記一面を研削することと、
前記基板の前記他面を研削することと、を含む、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記基板を薄化することは、
前記基板の内部に改質層を形成することと、
前記改質層を基点に前記基板を一面側と他面側とに分離することと、を含む、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項6】
基板を処理する基板処理システムであって、
前記基板を薄化する薄化装置と、
前記基板の厚みを測定する厚み測定装置と、
前記基板を回転させるとともに、エッチング液供給部を前記基板の中心部を通る径方向に往復移動させながら、前記エッチング液供給部からエッチング液を供給して前記基板をエッチングするエッチング装置と、
制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
前記基板を薄化する制御を行うことと、
薄化後の前記基板の厚みを複数の測定点で測定して、前記基板の測定厚みを取得する制御行うことと、
前記基板の測定厚みと前記基板の目標厚みとの差分値に基づいて、前記基板のエッチング条件を決定する制御を行うことと、
決定された前記エッチング条件で前記基板の一面をエッチングして、前記差分値の半分量を除去する制御を行うことと、
前記一面と同様の前記エッチング条件で前記基板の他面をエッチングして、前記差分値の半分量を除去する制御を行うことと、を実行する、基板処理システム。
【請求項7】
前記制御装置は、
複数の前記測定点の各々において前記測定厚みと前記目標厚みとの差分値を算出する制御と、
前記一面及び前記他面の前記エッチングによる除去量を、複数の前記測定点の各々における前記差分値に基づいて決定する制御と、を実行する、請求項6に記載の基板処理システム。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記基板の前記エッチング条件として、前記基板を回転させる際の回転速度、前記エッチング液供給部を往復移動させる際のスキャン速度、及び前記エッチング液供給部を往復移動させる際のスキャン幅の少なくともいずれかを用いて、前記エッチング装置における前記基板のエッチング処理を制御する、請求項6又は7に記載の基板処理システム。
【請求項9】
前記薄化装置は、
前記基板の前記一面を研削する第1研削部と、
前記基板の前記他面を研削する第2研削部と、を備える、請求項8に記載の基板処理システム。
【請求項10】
前記薄化装置は、
前記基板の内部に改質層を形成するレーザ照射部と、
前記改質層を基点に前記基板を一面側と他面側とに分離する分離部と、を備える、請求項8に記載の基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法及び基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体インゴットをスライスして得られたウェハを平坦研削する工程と、平面研削後のウェハの表裏面をスピンエッチングによりエッチングする工程と、を含む半導体ウェハの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板のエッチング処理に係る生産性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板を処理する基板処理方法であって、前記基板を薄化することと、薄化後の前記基板の厚みを複数の測定点で測定して、前記基板の測定厚みを取得することと、前記基板の測定厚みと前記基板の目標厚みとの差分値に基づいて、前記基板のエッチング条件を決定することと、決定された前記エッチング条件で前記基板の一面をエッチングして、前記差分値の半分量を除去することと、前記一面と同様の前記エッチング条件で前記基板の他面をエッチングして、前記差分値の半分量を除去することと、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、研基板のエッチング処理に係る生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ウェハ処理システムの構成の概略を示す平面図である。
【
図2】エッチング装置の構成の概略を示す側面図である。
【
図3】ノズルが径方向に移動する様子を示す説明図である。
【
図4】研削ユニットの構成の概略を示す側面図である。
【
図5】ウェハ処理の主な工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造工程では、単結晶シリコンインゴットからワイヤーソー等により切り出して得られた円盤状のシリコンウェハ(以下、単に「ウェハ」という。)の切断面を平坦化、平滑化してウェハの厚みを均一化することが行われている。切断面の平坦化は、例えば平面研削やラッピングにより行われる。切断面の平滑化は、例えばウェハを回転させながら当該ウェハの切断面上方からエッチング液を供給するスピンエッチングにより行われる。
【0009】
上述した特許文献1には、半導体インゴットをスライスして得られたウェハの少なくともおもて面を平面研削により平坦化した後、当該おもて面をスピンエッチングによりエッチングすることが開示されている。
【0010】
特許文献1に開示されるように、半導体インゴットをスライスして得られたウェハは、平面研削及びエッチング処理が順次施されることで厚みが均一化される。しかしながら、特にウェハの表裏面のそれぞれに平面研削及びエッチング処理を施す場合であって、表裏面のそれぞれに施すエッチング処理の条件が異なる場合、表裏面のそれぞれに対する処理時間に差が生じて生産性が低下するおそれがあった。すなわち、一のウェハに対する表面のエッチング処理と、他のウェハに対する裏面のエッチング処理とがシステムで同時に行われた場合、それぞれのウェハに対するエッチング処理の終了タイミングが揃わず、これにより生産性が低下する場合があった。
【0011】
本開示にかかる技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基板のエッチング処理に係る生産性を向上させる。以下、本実施形態にかかる基板処理システムとしてのウェハ処理システム、及び基板処理方法としてのウェハ処理方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
本実施形態にかかるウェハ処理システム1では、インゴットから切り出して得られた基板としてのウェハWに対し、厚みの面内均一性を向上させるための処理を行う。以下、ウェハWの切り出し面を一面としての第1の面Wa、及び他面としての第2の面Wbという。第1の面Waは第2の面Wbの反対側の面である。また、第1の面Waと第2の面Wbを総称してウェハWの表面という場合がある。
【0013】
図1に示すようにウェハ処理システム1は、搬入出ステーション10と処理ステーション11を一体に接続した構成を有している。搬入出ステーション10は、例えば外部との間で複数のウェハWを収容可能なカセットCが搬入出される。処理ステーション11は、ウェハWに対して所望の処理を施す各種処理装置を備えている。
【0014】
搬入出ステーション10には、カセット載置台20が設けられている。図示の例では、カセット載置台20は、複数、例えば2つのカセットCをY軸方向に一列に載置可能に構成されている。
【0015】
処理ステーション11には、例えば3つの処理ブロックG1~G3が設けられている。第1の処理ブロックG1、第2の処理ブロックG2及び第3の処理ブロックG3は、X軸負方向側(搬入出ステーション10側)から正方向側にこの順で並べて配置されている。
【0016】
第1の処理ブロックG1には、反転装置30、31、厚み測定装置40、エッチング装置50、51、及びウェハ搬送装置60が設けられている。反転装置30とエッチング装置50はX軸負方向側から正方向側にこの順に並べて配置されている。反転装置30、31及び厚み測定装置40は、例えば鉛直方向に下段からこの順で積層して設けられている。エッチング装置50、51は、例えば鉛直方向に下段からこの順で積層して設けられている。ウェハ搬送装置60は、エッチング装置50、51のY軸正方向側に配置されている。なお、反転装置30、31、厚み測定装置40、エッチング装置50、51、及びウェハ搬送装置60の数や配置はこれに限定されない。
【0017】
反転装置30、31は、ウェハWの第1の面Waと第2の面Wbを上下方向に反転(表裏面を反転)させる。反転装置30、31の構成は任意である。
【0018】
厚み測定装置40は、一例において測定部(図示せず)と算出部(図示せず)を備える。測定部は、研削後又はエッチング後のウェハWの厚みを複数点で測定するセンサを備える。算出部は、測定部による測定結果(ウェハWの厚み)からウェハWの厚み分布を取得し、更にウェハWの平坦度(TTV:Total Thickness Variation)を算出する。なお、かかるウェハWの厚み分布及び平坦度の算出は、当該算出部に代えて、後述の制御装置140で行われてもよい。換言すれば、後述の制御装置140内に算出部(図示せず)が設けられてもよい。なお、厚み測定装置40の構成はこれに限定されず、任意に構成できる。
【0019】
エッチング装置50、51は、後述の加工装置110における研削後の第1の面Wa又は研削後の第2の面Wbのシリコン(Si)をエッチングする。
【0020】
図2に示すようにエッチング装置50、51は、ウェハ保持部52と、回転機構53と、エッチング液供給部としてのノズル54とを有している。ウェハ保持部52は、ウェハWの外縁部を複数点、本実施形態においては3点で保持する。なお、ウェハ保持部52の構成は図示の例には限定されず、例えばウェハ保持部52は、ウェハWを下方から吸着保持するチャックを備えていてもよい。回転機構53は、ウェハ保持部52に保持されたウェハWを鉛直な回転中心線52aを中心に回転させる。
【0021】
ノズル54は、ウェハ保持部52に保持されたウェハWの第1の面Wa又は第2の面Wbにエッチング液Eを供給する。ノズル54は、当該ノズル54にエッチング液Eを供給するエッチング液供給源(図示せず)に接続されている。ノズル54は、ウェハ保持部52の上方に設けられ、移動機構55によって水平方向及び鉛直方向に移動可能に構成されている。一例においてノズル54は、ウェハ保持部52の回転中心線52aを通って、すなわち、
図3に示すようにウェハWの中心部上方を通って往復移動(スキャン移動)可能に構成される。
【0022】
エッチング液Eには、エッチング対象となり得るウェハWのシリコンを適切にエッチングするため、少なくともフッ酸又は硝酸が含まれている。また、エッチング液Eには、リン酸又は硫酸が含まれていてもよい。
【0023】
図1に示すようにウェハ搬送装置60は、ウェハWを保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム61を有している。各搬送アーム61は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸回りに移動自在に構成されている。そして、ウェハ搬送装置60は、カセット載置台20のカセットC、反転装置30、31、厚み測定装置40、エッチング装置50、51、後述するバッファ装置70、後述する洗浄装置80、及び後述する反転装置90に対して、ウェハWを搬送可能に構成されている。
【0024】
第2の処理ブロックG2には、バッファ装置70、洗浄装置80、反転装置90、及びウェハ搬送装置100が設けられている。バッファ装置70、洗浄装置80、及び反転装置90は、例えば鉛直方向に下段からこの順で積層して設けられている。ウェハ搬送装置100は、バッファ装置70、洗浄装置80、及び反転装置90のY軸負方向側に配置されている。なお、バッファ装置70、洗浄装置80、反転装置90、及びウェハ搬送装置100の数や配置はこれに限定されない。
【0025】
バッファ装置70は、第1の処理ブロックG1から第2の処理ブロックG2に受け渡される処理前のウェハWを一時的に保持する。バッファ装置70の構成は任意である。
【0026】
洗浄装置80は、後述する加工装置110による研削後の第1の面Wa又は第2の面Wbを洗浄する。例えば第1の面Wa又は第2の面Wbにブラシを当接させて、当該第1の面Wa又は第2の面Wbを洗浄する。なお、第1の面Wa又は第2の面Wbの洗浄には、加圧された洗浄液を用いてもよい。また、洗浄装置80は、ウェハWを洗浄する際、第1の面Waと第2の面Wbを同時に洗浄可能に構成されていてもよい。
【0027】
反転装置90は、反転装置30、31と同様に、ウェハWの第1の面Waと第2の面Wbを上下方向に反転させる。反転装置90の構成は任意である。
【0028】
ウェハ搬送装置100は、ウェハWを保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム101を有している。各搬送アーム101は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸回りに移動自在に構成されている。そして、ウェハ搬送装置100は、エッチング装置50、51、バッファ装置70、洗浄装置80、反転装置90、及び後述する加工装置110に対して、ウェハWを搬送可能に構成されている。
【0029】
第3の処理ブロックG3には、加工装置110が設けられている。なお、加工装置110の数や配置はこれに限定されない。
【0030】
加工装置110は、回転テーブル111を有している。回転テーブル111は、回転機構(図示せず)によって、鉛直な回転中心線112を中心に回転自在に構成されている。回転テーブル111上には、ウェハWを吸着保持する、チャック113が4つ設けられている。4つのチャック113のうち、2つの第1のチャック113aは第1の加工位置B1で研削に用いられるチャックである。これら2つの第1のチャック113aは、回転中心線112を挟んで点対称の位置に配置されている。残りの2つの第2のチャック113bは第2の加工位置B2で研削に用いられるチャックである。これら2つの第2のチャック113bも、回転中心線112を挟んで点対称の位置に配置されている。すなわち、第1のチャック113aと第2のチャック113bは、周方向に交互に配置されている。
【0031】
チャック113には例えばポーラスチャックが用いられる。チャック113の表面、すなわちウェハWの保持面は、側面視において中央部が端部に比べて突出した凸形状を有している。なお、この中央部の突出は微小であるが、
図4においては、説明の明瞭化のためチャック113の中央部の突出を大きく図示している。
【0032】
図4に示すように、チャック113はチャックベース114に保持されている。チャックベース114には、後述する各研削ユニット120、130が備える研削砥石121、131とチャック113の相対的な傾きを調整する傾き調整部115が設けられている。傾き調整部115は、チャックベース114の下面に設けられた固定軸116と複数、例えば2本の昇降軸117を有している。各昇降軸117は伸縮自在に構成され、チャックベース114を昇降させる。この傾き調整部115によって、チャックベース114の外周部の一端部(固定軸116に対応する位置)を基点に、他端部を昇降軸117によって鉛直方向に昇降させることで、チャック113及びチャックベース114を傾斜させることができる。そしてこれにより、後述する加工位置B1~B2の各研削ユニット120、130が備える研削砥石121、131の表面とチャック113の表面との相対的な傾きを調整することができる。
【0033】
図1に示すように4つのチャック113は、回転テーブル111が回転することにより、受渡位置A1~A2及び加工位置B1~B2に移動可能になっている。また、4つのチャック113はそれぞれ、回転機構(図示せず)によって鉛直軸回りに回転可能に構成されている。
【0034】
第1の受渡位置A1は回転テーブル111のX軸負方向側且つY軸正方向側の位置であり、第1の面Waを研削する際に第1のチャック113aに対するウェハWの受け渡しが行われる。第2の受渡位置A2は回転テーブル111のX軸負方向側且つY軸負方向側の位置であり、第2の面Wbを研削する際に第2のチャック113bに対するウェハWの受け渡しが行われる。
【0035】
第1の加工位置B1は回転テーブル111のX軸正方向側且つY軸負方向側の位置であり、第1の研削ユニット120が配置される。第1の研削ユニット120は、第1のチャック113aに保持されたウェハWの第1の面Wa又は第2の面Wbを研削する。第2の加工位置B2は回転テーブル111のX軸正方向側且つY軸正方向側の位置であり、第2の研削ユニット130が配置される。第2の研削ユニット130は、第2のチャック113bに保持されたウェハWの第2の面Wb又は第1の面Waを研削する。
【0036】
なお、受渡位置A1、A2又は加工位置B1、B2には、研削後のウェハWの厚みを測定する厚み測定装置(図示せず)が設けられていてもよい。
【0037】
図4に示すように、第1の研削ユニット120は、下面に環状の研削砥石121を備える研削ホイール122と、研削ホイール122を支持するマウント123と、マウント123を介して研削ホイール122を回転させるスピンドル124と、例えばモータ(図示せず)を内蔵する駆動部125とを有している。また第1の研削ユニット120は、
図1に示す支柱126に沿って鉛直方向に移動可能に構成されている。
【0038】
第2の研削ユニット130は、第1の研削ユニット120と同様の構成を有している。すなわち、第2の研削ユニット130は、環状の研削砥石131を備える研削ホイール132、マウント133、スピンドル134、駆動部135、及び支柱136を有している。
【0039】
以上のウェハ処理システム1には、
図1に示すように制御装置140が設けられている。制御装置140は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理システム1におけるウェハWの処理を制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御装置140にインストールされたものであってもよい。また、上記記憶媒体Hは、一時的なものであっても非一時的なものであってもよい。
【0040】
次に、以上のように構成されたウェハ処理システム1を用いて行われるウェハ処理について説明する。本実施形態では、インゴットからワイヤーソー等により切り出され、ラッピングされたウェハWに対し、厚みの面内均一性を向上させるための処理を行う。
【0041】
先ず、複数のウェハWを収納したカセットCが、搬入出ステーション10のカセット載置台20に載置される。カセットCにおいてウェハWは、第1の面Waが上側、第2の面Wbが下側を向いた状態で収納されている。次に、ウェハ搬送装置60によりカセットC内のウェハWが取り出され、バッファ装置70に搬送される。
【0042】
次に、ウェハWはウェハ搬送装置100により加工装置110に搬送され、第1の受渡位置A1の第1のチャック113aに受け渡される。第1のチャック113aでは、ウェハWの第2の面Wbが吸着保持される。
【0043】
次に、回転テーブル111を回転させて、ウェハWを第1の加工位置B1に移動させる。そして、第1の研削ユニット120によって、ウェハWの第1の面Waが研削される(
図5のステップS1)。ステップS1における第1の面Waの研削条件は特に限定されるものではないが、後述のステップS4における第2の面Wbの研削後のウェハWが、研削処理前のウェハWと比較して、少なくとも平坦度が改善され、面内厚みを均一にできる研削条件に決定されることが望ましい。
【0044】
次に、回転テーブル111を回転させて、ウェハWを第1の受渡位置A1に移動させる。第1の受渡位置A1では、洗浄部(図示せず)によって研削後のウェハWの第1の面Waを洗浄してもよい。
【0045】
次に、ウェハWはウェハ搬送装置100により洗浄装置80に搬送される。洗浄装置80では、ウェハWの第1の面Wa及び第2の面Wbが洗浄される(
図5のステップS2)。
【0046】
次に、ウェハWはウェハ搬送装置100により反転装置90に搬送される。反転装置90では、ウェハWの第1の面Waと第2の面Wbを上下方向に反転させる(
図5のステップS3)。すなわち、第1の面Waが下側、第2の面Wbが上側を向いた状態にウェハWが反転される。
【0047】
次に、ウェハWはウェハ搬送装置100により加工装置110に搬送され、第2の受渡位置A2の第2のチャック113bに受け渡される。第2のチャック113bでは、ウェハWの第1の面Waが吸着保持される。
【0048】
次に、回転テーブル111を回転させて、ウェハWを第2の加工位置B2に移動させる。そして、第2の研削ユニット130によって、ウェハWの第2の面Wbが研削される(
図5のステップS4)。
【0049】
次に、回転テーブル111を回転させて、ウェハWを第2の受渡位置A2に移動させる。第2の受渡位置A2では、洗浄部(図示せず)によって研削後のウェハWの第2の面Wbを洗浄してもよい。
【0050】
次に、ウェハWはウェハ搬送装置100により洗浄装置80に搬送される。洗浄装置80では、ウェハWの第2の面Wb及び第1の面Waが洗浄される(
図5のステップS5)。
【0051】
次に、ウェハWはウェハ搬送装置60により厚み測定装置40に搬送される。厚み測定装置40では、第1の面Waと第2の面Wbの両面を研削後のウェハWの厚みを、ウェハWの面内における複数の測定点で測定する(
図5のステップS6)。なお、加工装置110に厚み測定装置が設けられている場合、研削後のウェハWの厚みは、当該加工装置110の厚み測定装置で測定してもよい。
【0052】
ステップS6において厚み測定装置40では、両面研削後のウェハWの厚みを複数点で測定することで研削後のウェハWの厚み分布を取得し、更にウェハWの平坦度を算出する。算出されたウェハWの厚み分布及び平坦度は、例えば制御装置140に出力される。
なお、算出されたウェハWの厚み分布及び平坦度は、ウェハ処理システム1において次に処理が施される他のウェハWに対する研削処理に対してフィードバックされてもよい。すなわち、算出されたウェハWの厚み分布及び平坦度に基づいて、厚みの大きい部分においては他のウェハWに対する研削量が大きくなるように、厚みの小さい部分においては、他のウェハWに対する研削量が小さくなるように、他のウェハWに対する研削条件の補正が行われてもよい。
【0053】
また制御装置140では、出力されたウェハWの厚み分布及び平坦度から、後続の第1の面Wa及び第2の面Wbのエッチング処理におけるウェハWのエッチング量分布を決定する(
図5のステップS7)。なお、実施の形態においてウェハWの「エッチング量」とは、後段のエッチング処理により除去されるウェハWの厚みであって除去量とも言う。
【0054】
具体的には、先ず、
図6(a)に示すように、ステップS6で算出された厚み測定装置40によるウェハWの厚みの実測値T(n)と、目標とするエッチング後のウェハWの厚み(最終仕上げ厚みであって、以下、「目標厚みTg」という。)の差分値[T(n)―Tg]を上記した複数の測定点で算出する。算出されるウェハWの厚みの実測値と目標値の差分値は、後続のエッチング処理により除去される厚みの総量である。
【0055】
次に、
図6(b)に示すように、算出された差分値を2等分した値[(T(n)―Tg)/2]を、後続のエッチング処理における第1の面Waと第2の面Wbのそれぞれにおけるエッチング量として決定する。換言すれば、第1の面Waと第2の面Wbのそれぞれにおけるエッチング量を、エッチング処理により除去する厚み総量の半分の値に決定する。これにより後続のエッチング処理においては、第1の面Wa側のエッチング量と第2の面Wb側のエッチング量が[(T(n)―Tg)/2]で等しくなり、第1の面Wa側のエッチングと第2の面Wb側のエッチングを同一条件、同一処理時間で実行できる。
【0056】
続いて制御装置140では、ステップSt7で決定されたエッチング量分布に基づいてウェハWのエッチング条件を決定する(
図5のステップS8)。
図3で示したように、後続のウェハWのエッチング処理に際しては、ノズル54からのエッチング液Eの吐出を継続しながら、ノズル54をウェハWの回転中心の上方、すなわち回転中心線52aを通るように、当該回転中心線52aを中間点として往復移動(スキャン)させる。以下、このようなエッチングを「スキャンエッチング」という場合がある。
【0057】
そこでステップS8において決定されるウェハWのエッチング条件は、かかるスキャンエッチングに際してのウェハWの回転速度、ノズル54のスキャン速度、ノズル54スキャン幅、又はノズル54のスキャンアウト位置等を含む。
ここで、ノズル54のスキャン速度とは、エッチング処理に際してノズル54を往復移動させる際の水平方向への移動速度である。
また、ノズル54スキャン幅とは、エッチング処理に際してのノズル54の往復移動の一の折り返し部と反対側の折り返し部との間の距離(
図3の符号Lを参照)である。
また、ノズル54のスキャンアウト位置とは、ノズル54からのエッチング液Eの吐出を終了する径方向位置である。
【0058】
ウェハWのエッチング条件が決定されると、次に、ウェハWはウェハ搬送装置60によりエッチング装置51に搬送される。エッチング装置51では、
図6(c)に示すように、ステップS7で決定されたエッチング量[(T(n)―Tg)/2]で、及びステップS8で決定されたエッチング条件で、ウェハWの第2の面Wbがエッチング液Eによりエッチングされる(
図5のステップS9)。
【0059】
ステップS9では、先ず、ウェハ保持部52にウェハWが第2の面Wbを上側(ノズル54側)に向けて保持される。続いて、ウェハ保持部52(ウェハW)を鉛直な回転中心線52aを中心に回転させるとともに、ノズル54からのエッチング液Eの吐出を開始し、第2の面Wbのエッチングを開始する。
【0060】
第2の面Wbのエッチングに際しては、上記したように、ノズル54からのエッチング液Eの吐出を継続しながら、ノズル54をウェハWの回転中心の上方、すなわち回転中心線52aを通るように、当該回転中心線52aを中間点として往復移動(スキャン)させることで、ウェハWをスキャンエッチングする。
【0061】
ステップS8で決定されたエッチング条件でのエッチング処理が終了すると、ノズル54からのエッチング液Eの供給を停止し、ウェハWの第2の面Wbを純水でリンスした後、振り切り乾燥させる。その後、ウェハ保持部52(ウェハW)の回転を停止し、ウェハWのエッチングを終了する。
【0062】
次に、ウェハWはウェハ搬送装置60により反転装置31に搬送される。反転装置31では、ウェハWの第1の面Waと第2の面Wbを上下方向に反転させる(
図5のステップS10)。すなわち、第1の面Waが上側、第2の面Wbが下側を向いた状態にウェハWが反転される。
【0063】
次に、ウェハWはウェハ搬送装置60によりエッチング装置50に搬送される。エッチング装置50では、
図6(d)に示すように、ステップS7で決定されたエッチング量[(T(n)―Tg)/2]で、及びステップS8で決定されたエッチング条件で、ウェハWの第1の面Waがエッチング液Eによりエッチングされる(
図5のステップS11)。
【0064】
ステップS11では、ステップS9における第2の面Wbと同様に、第1の面Waがエッチングされる。すなわち、先ず、ウェハ保持部52にウェハWが第1の面Waを上側に向けて保持される。続いて、ウェハ保持部52(ウェハW)を回転させるとともに、ノズル54からのエッチング液Eの吐出を開始し、第1の面Waのエッチングを開始する。その後、ノズル54からのエッチング液Eの吐出を継続しながら、
図3に示したようにノズル54を、回転中心線52aを中間点として往復移動(スキャン)させ、第1の面Waをエッチングする。
【0065】
また、このステップS11では、ステップS9での第2の面Wbのエッチングと同様の条件により、またステップS9での第2の面Wbのエッチングと同様のエッチング量で、第1の面Waをエッチングする。これにより、第1の面Waのエッチング処理に要する時間と第2の面Wbのエッチング処理に要する時間を統一することができ、ウェハ処理システム1における生産性を大幅に向上できる。より具体的に、例えば一のウェハWの第1の面Waのエッチング処理と他のウェハWの第2の面Wbのエッチング処理を同時に行う際に、ウェハ処理システム1内において装置内外でのウェハWの待機時間がなくなり、エッチング処理に係るスループットを向上できる。また、第1の面Waのエッチング処理と第2の面Wbのエッチング処理の間でエッチング条件を変更させる必要がなく、エッチング処理に係る制御が容易である。
【0066】
次に、ウェハWはウェハ搬送装置60により厚み測定装置40に搬送される。厚み測定装置40では、第1の面Waと第2の面Wbの両面をエッチング後のウェハWの厚みを測定する(
図5のステップS12)。
【0067】
ステップS12において厚み測定装置40では、両面エッチング後のウェハWの厚みを複数の測定点で測定することでウェハWのエッチング後の厚み分布を取得し、更にウェハWの平坦度を算出する。算出されたウェハWの厚み分布及び平坦度は、例えば制御装置140に出力される。一例として、次にウェハ処理システム1で処理される他のウェハWの処理に用いられても良い。
【0068】
その後、全ての処理が施されたウェハWは、ウェハ搬送装置60によりカセット載置台20のカセットCに搬送される。こうして、ウェハ処理システム1における一連のウェハ処理が終了する。なお、ウェハ処理システム1で処理が施されたウェハWには、ウェハ処理システム1の外部においてポリッシングが行われてもよい。
【0069】
以上の実施形態によれば、表裏面の研削処理後のウェハWの厚み分布を測定することで、後続のエッチング処理により除去されるウェハWの厚みの総量(厚みの測定値と目標値の差分)を算出し、当該総量を等分した厚みを、第1の面Wa、第2の面Wbのエッチング処理時におけるエッチング量(除去量)としてそれぞれ決定する。換言すれば、第1の面Waのエッチング処理時におけるウェハWの除去量(除去厚み)と、第2の面Wbのエッチング処理時におけるウェハWの除去量(除去厚み)とが等しくなるように、エッチング条件を決定する。これにより、第1の面Waのエッチング処理時間と第2の面Wbのエッチング処理時間とを等しく揃えることができ、ウェハ処理システム1における生産性を向上できる。
【0070】
また、ステップS6における両面研削後のウェハWの厚み分布及び平坦度から、後続の第1の面Wa及び第2の面Wbのエッチング処理におけるエッチング条件を決定するので、エッチング量の面内分布を最適化できる。
【0071】
また、1枚毎のウェハWに対して上記した一連のウェハ処理を行うので、エッチング後のウェハWの表面形状を枚葉で制御できる。
【0072】
なお、以上の実施形態においては、
図6でも示したように、ウェハWのエッチング量分布をステップS6で測定された複数点でのウェハWの厚みの実測値T(n)の各々に基づいて算出、すなわち複数の測定点の各々におけるエッチング量が異なる場合を例に説明を行ったが、ウェハWのエッチング量分布の決定方法はこれに限定されない。
【0073】
また、以上の実施形態においてはインゴットからワイヤーソー等により切り出され、ラッピングされたウェハWに各種処理を施す場合を例に説明を行ったが、ウェハWの表裏面のそれぞれにエッチング処理を施す場合であれば、本開示の技術を適用できる。
【0074】
また、以上の実施形態においてはウェハWを研削処理により薄化したが、ウェハWの薄化方法も特に限定されるものではない。例えば、処理対象のウェハWの内部にレーザ加工により改質層(図示せず)を形成し、当該改質層を基点として分離によりウェハWを薄化してもよい。この場合、ウェハ処理システム1には、加工装置110に代えて、改質層(図示せず)の形成用のレーザ処理装置(図示せず)と、改質層を基点としたウェハWの分離用の分離装置(図示せず)が設けられる。レーザ処理装置(図示せず)と分離装置(図示せず)は、独立して構成されてもよいし、一体に構成されてもよい。
【0075】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 ウェハ処理システム
40 厚み測定装置
50、51 エッチング装置
110 加工装置
140 制御装置
Tg 目標厚み
T(n) 測定厚み
W ウェハ