(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168087
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ドライフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20231116BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G03F7/004 512
H05K3/28 F
H05K3/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079733
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】大野 義弘
(72)【発明者】
【氏名】秋山 学
【テーマコード(参考)】
2H225
5E314
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AC54
2H225AD02
2H225AD06
2H225AD15
2H225AE06P
2H225AE15P
2H225AM62N
2H225AN47P
2H225AN94P
2H225AN95P
2H225AP09P
2H225BA16P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225CA13
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
5E314AA27
5E314AA34
5E314AA36
5E314AA42
5E314CC15
5E314DD07
5E314EE03
5E314FF02
5E314FF03
5E314FF05
5E314GG24
5E314GG26
(57)【要約】
【課題】粗面化された第一のフィルム(支持フィルム)上に感光性樹脂層を形成する場合であっても、レベリング性の良好な感光性樹脂層を形成することができるドライフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】第一のフィルムと前記第一のフィルムの一方の面に設けられた感光性樹脂層とを備えたドライフィルムを製造する方法であって、第一主面および第二主面を有し、第一表面の算術平均粗さRaが0.1~1μmである第一のフィルムを準備する工程、および前記第一のフィルムの第一主面の表面に、感光性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成する工程、を含み、前記感光性樹脂組成物を塗布する前に、前記第一のフィルムの第一主面の静電気量が0.7kV以下となるように除電する工程をさらに含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のフィルムと前記第一のフィルムの一方の面に設けられた感光性樹脂層とを備えたドライフィルムを製造する方法であって、
第一主面および第二主面を有し、第一表面の算術平均粗さRaが0.1~1μmである第一のフィルムを準備する工程、および
前記第一のフィルムの第一主面の表面に、感光性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成する工程、
を含み、
前記感光性樹脂組成物を塗布する前に、前記第一のフィルムの第一主面の静電気量が0.7kV以下となるように除電する工程をさらに含む、
ドライフィルムの製造方法。
【請求項2】
除電する前の第一のフィルムの第一主面の静電気量が4kV以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記感光性樹脂組成物を、乾燥後の膜厚が1μm以上となるように塗布する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記感光性樹脂組成物の表面張力が、20~50mN/mである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第一のフィルムの厚さが10~150μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第一のフィルムがポリエステルフィルムからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ドライフィルムが電子部材用絶縁膜の形成に使用される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライフィルムの製造方法に関し、より詳細には、例えばプリント配線基板等の表面に設けられる絶縁膜等の形成に好適に使用されるドライフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導体回路の保護やはんだ付けが必要な箇所以外へはんだが付着するのを防止して絶縁するために、プリント配線用基板の表面にはソルダーレジスト膜とも呼ばれる絶縁膜を形成することが行われている。絶縁膜を形成するための方法として、回路基材上に感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させた後に露光、現像し、回路基板表面の所望部分にのみ絶縁膜を形成する手法や、いわゆるドライフィルムと呼ばれる感光性樹脂層を備えたフィルムを回路基板に貼り合わせ、露光、現像により回路基板表面の所望部分にのみ絶縁膜を形成する手法が主流となっている。
【0003】
上記したような回路基板において、絶縁膜の表面を粗面化することによりはんだフロー時の耐はんだ付着性や配線隠蔽性が向上することが知られている。また、粗面化された絶縁膜は光沢度が適度に抑制されるため、良好な意匠性が得られる。さらには、光沢のある表面よりも粗面化した表面の方が傷が見えづらくなるため、品質管理上も良好である。近年では、ICパッケージ用基板等において、ダイアタッチの密着性を改善するために、絶縁膜を粗面化することも行われている。例えば、特許文献1には、感光性樹脂層の表面に、単位あたり所定の数の窪みを設けることが提案されている。また、特許文献2には、特定の凹凸平均間隔を有する面を備えた感光性樹脂層であれば、パターン淵崩れが生じ難く、外観検査の歩留まりも改善できることが提案されている。
【0004】
上記したような感光性樹脂層の表面が粗面化されたドライフィルムとして、例えば、特許文献3には、感光性樹脂層と接する面が所定の表面粗さの支持フィルムを使用することで、ソルダーレジスト層を粗面化できることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-124452号公報
【特許文献2】特開2018-116255号公報
【特許文献3】国際公開第2015-163455号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3のように凹凸形状を有する表面を備えた支持フィルムの表面に感光性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成しようとすると、表面が平滑な支持フィルムを使用した場合と比較して、感光性樹脂組成物の塗布膜のレベリング不良が生じ易い。また、表面を粗面化したフィルムは、表面が平滑なフィルムと比べて、塗布装置に搬送する際の搬送ローラーとの摩擦によって静電気が生じ易い。そのため、支持フィルムの塗布面に異物が付着し易く、感光性樹脂層に異物が混入したり、レベリング性の良好な感光性樹脂層を形成しにくいといった問題があった。また、表面の静電気量が高い状態で支持フィルムに感光性樹脂組成物を塗布すると、塗工むら、スジ、ヌケといった塗工不良が生じ易くなる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、粗面化された第一のフィルム(支持フィルム)上に感光性樹脂層を形成する場合であっても、レベリング性の良好な感光性樹脂層を形成することができるドライフィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、帯電したフィルムを除電する場合に、凹凸の表面形状を有するフィルムは表面が平滑なフィルムよりも除電しにくいことが分かった。そして、粗面化されたフィルムであっても表面の静電気量が一定値以下であれば、表面に感光性樹脂組成物を塗布した場合に、レベリング性の良好な感光性樹脂層を形成することができるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。即ち、本発明の要旨は下記の通りである。
【0009】
[1] 第一のフィルムと前記第一のフィルムの一方の面に設けられた感光性樹脂層とを備えたドライフィルムを製造する方法であって、
第一主面および第二主面を有し、第一表面の算術平均粗さRaが0.1~1μmである第一のフィルムを準備する工程、および
前記第一のフィルムの第一主面の表面に、感光性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成する工程、
を含み、
前記感光性樹脂組成物を塗布する前に、前記第一のフィルムの第一主面の静電気量が0.7kV以下となるように除電する工程をさらに含む、
ドライフィルムの製造方法。
[2] 除電する前の第一のフィルムの第一主面の静電気量が4kV以上である、[1]に記載の方法。
[3] 前記感光性樹脂組成物を、乾燥後の膜厚が1μm以上となるように塗布する、[1]に記載の方法。
[4] 前記感光性樹脂組成物の表面張力が、20~50mN/mである、[1]に記載の方法。
[5] 前記第一のフィルムの厚さが10~150μmである、[1]に記載の方法。
[6] 前記第一のフィルムがポリエステルフィルムからなる、[1]に記載の方法。
[7] 前記ドライフィルムが電子部材用絶縁膜の形成に使用される、[1]に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、感光性樹脂組成物を塗布する前に、第一のフィルムを除電して所定値以下の静電気量とすることにより、粗面化された第一のフィルム上に感光性樹脂層を形成する場合であっても、レベリング性の良好な感光性樹脂層を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によるドライフィルムの製造方法は、第一のフィルムと第一のフィルムの一方の面に設けられた感光性樹脂層とを備えたドライフィルムを製造する方法である。なお、本発明における「ドライフィルム」とは、第一のフィルムと感光性樹脂層とを少なくとも備えるものをいい、他の層が含まれるものを排除するものではない。例えば、第一のフィルムと樹脂層との間に中間層等が設けられてもよいし、感光性樹脂層の表面に塵等が付着するのを防止するとともに、ドライフィルムの取扱性を考慮して、感光性樹脂層の第一のフィルムと接する面とは反対の面側に、さらに第二のフィルムが設けられていてもよい。以下、本発明のドライフィルムの製造方法における各工程について詳述する。
【0012】
<第一のフィルムの準備工程>
本発明における第一のフィルムとは、基板等の基材上に、ドライフィルム上に形成された感光性樹脂組成物からなる層(感光性樹脂層)側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際には少なくとも感光性樹脂層に接着しているものをいう。
【0013】
ドライフィルムに使用される第一のフィルムは、第一主面および第二主面を有し、第一表面の算術平均粗さRaが0.1~1μmである。第一のフィルムは、後記する感光性樹脂層を支持するとともに、感光性樹脂層の露光、現像時に、第一のフィルムの第一主面の凹凸形態が感光性樹脂層に賦型する役割を有する。第一主面のRaは上記の範囲内において、ドライフィルムを使用して得られる硬化物に要求に応じて適宜調整することができるが、0.15~0.50μmであることが好ましく、0.15~0.30μmであることがより好ましい。なお、本明細書において、算術表面粗さRaとは、JIS B0601-2001に準拠した測定装置にて測定された算術平均表面粗さを意味する。
【0014】
第一主面が上記のような算術表面粗さを有する第一のフィルムは、例えば、第一のフィルムに使用するフィルムを成膜する際の樹脂中にフィラーを添加(練り込み処理)したり、マットコーティング(コーティング処理)したり、フィルム表面をサンドブラスト処理のようなブラスト処理をしたり、あるいはヘアライン加工、またはケミカルエッチング等の処理を施したものであってもよい。これらのなかでも、コーティング処理したものを好適に使用することができる。例えば、第一のフィルム上に粒子を含有する中間層を備えた第一のフィルムを使用することができる。粒子を含有する中間層は、単層に限られず、2層以上の複数層として積層されていてもよい。
【0015】
第一のフィルムを構成する支持フィルムとしては、公知慣用のフィルムを特に制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを好適に使用することができるが、これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムを好適に使用することができる。
【0016】
また、上記したような熱可塑性樹脂フィルムは、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムを使用することが好ましい。
【0017】
中間層に含まれる粒子としては、無機粒子、有機粒子が挙げられ、公知慣用のものを使用できる。無機粒子としては、例えば、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化ケイ素、硫酸バリウム、タルク、カオリン、酸化クロム、硫化カドニウム、ゲーサイト、アルミナ等が挙げられ、有機粒子としては、アセチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、熱可塑型ポリエステル、ボリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール樹脂粉末等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、トリアジン系樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、アクロレイン系樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。これら粒子は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
粒子の平均一次粒径は0.1~10μmが好ましい。上記範囲とすることにより、傷の視認性の抑制と解像性の向上とをより一層高いレベルで実現することができる。また、最大粒径は中間層の膜厚を上限とすることが好ましい。なお、本明細書において、平均一次粒径とは、中間層に含まれる粒子を、超音波により溶剤中に分散させ、凝集を解き、乾燥させて溶剤を除いた後、走査型電子顕微鏡画像から、無作為に選んだ10個の粒子の粒子径を測定し、算術平均した値をいうものとする。
【0019】
上記したような粒子を含む中間層にはメラミンおよびメラミン化合物の少なくともいずれか1種が含まれることが好ましい。中間層にメラミンおよびメラミン化合物の少なくとも1種を含む第一のフィルムに、感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させて得られたドライフィルムを使用することにより、ドライフィルムがラミネートされた基板等を重ね合わせた際の強い衝撃や押圧によっても、ドライフィルム表面への影響を抑制することができる点で好ましい。さらに、第一のフィルムの中間層に含まれるメラミンおよびメラミン化合物は、感光性樹脂組成物の塗布膜(すなわち、感光性樹脂層)と接する側に多く含まれることが好ましい。
【0020】
メラミンおよびメラミン化合物は、公知慣用のものを使用することができる。また本発明において、メラミン化合物にはメラミン化合物と他の物質との混合物も含むものとする。なお、本発明において「メラミン」とは、メラミン(2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン)とホルムアルデヒドの付加縮合により硬化された樹脂をいうが、かかるメラミンとホルムアルデヒドとの初期反応物であるメチロールメラミンおよびそのアルキル化物であるアルキル化メチロールメラミンも含む概念である。メラミンとしては、メチル化メチロールメラミン、プロピル化メチロールメラミン、ブチル化メチロールメラミン、イソブチル化メチロールメラミン等の変性メラミンも含まれる。また、メラミン(メタ)アクリレートのようなメラミン変性物も含まれる。
【0021】
メラミン化合物とは、上記したメラミンと、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂等の他の樹脂との混合物であり、例えば、アクリルメラミン、アルキドメラミン、ポリエステルメラミン、エポキシメラミン等が挙げられる。これらのなかでも、より優れた耐衝撃性が得られることよりアクリルメラミン、エポキシメラミンが好ましく、アクリルメラミンがより好ましい。なお、ここでのアクリルメラミンとは、アクリル樹脂とメラミン樹脂との混合物であり、アクリル樹脂をメラミン樹脂で硬化させるタイプものをいう。アクリルメラミンの具体例としては、DIC株式会社製アクリディック54-172-60、A-322、A-405、A-452等が挙げられる。
【0022】
粒子を含む中間層は、上記したメラミンおよびメラミン化合物を適当な溶剤に溶解し、粒子を配合して塗工液とし、支持フィルム上に塗布、乾燥することにより形成することができる。粒子の配合量は、メラミンおよびメラミン化合物100質量部に対して10~200量部であることが好ましく、20~190質量部であることがより好ましい。
【0023】
第一のフィルムの感光性樹脂組成物を塗布する面には、離型処理が施されていてもよい。例えば、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン系樹脂等の離型剤を適当な溶剤に溶解または分散して調製した塗工液を、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の手段により、第一のフィルム表面に塗布、乾燥することにより、離型処理を施すことができる。また、これら離型剤は、上記した粒子を含む中間層に含まれていてもよい。
【0024】
第一のフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが概ね10~150μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。
【0025】
<第一のフィルムの除電工程>
上記したような第一主面のRaが0.1~1μmであるような表面凹凸を有するフィルムは、表面が平滑なフィルムと比較して、搬送時の搬送ローラーとの接触により静電気を発生し易いことが知られている。また、表面凹凸を有するフィルムは、帯電した静電気を除電しにくいといった性質を有している。そのため、本発明においては、第一フィルムの感光性樹脂組成物を塗布する前に、塗布面(即ち、第一主面)の静電気量が0.7kV以下となるように除電するものである。第一主面に帯電した静電気量が0.7kV以下となるまで除電することにより、粗面化された第一のフィルム上に感光性樹脂層を形成する場合であっても、レベリング性の良好な感光性樹脂層を形成することができる。好ましい静電気量は0.5kV以下である。
【0026】
除電は、イオン供給式除電装置、ローラー式除電装置、除電ブラシ装置、除電布装置等の公知の除電装置を用いることができる。これらのなかでも、イオン供給式除電装置を用いるのが好ましい。前記イオン供給式除電装置としては、特に限定されるものではないが、例えばコロナ放電式除電装置、軟X線式除電装置、電圧印加によりイオンを生成する除電電極を備えた除電装置等が挙げられる。
【0027】
上記したような除電装置を使用して第一のフィルムの第一主面の除電を行う場合、逐次的に除電してもよいが、ドライフィルムの生産効率を考慮すると、第一のフィルムを塗布装置に連続的に搬送する際に、走行中の第一のフィルムを除電することが好ましい。走行中の第一のフィルムは、通常は搬送ローラー等と接しているため静電気が帯電しやすく、通常は、第一のフィルムの第一主面の静電気量が4kV以上となっている。この場合、走行方向に直交する方向(第一のフィルムの幅方向)に拡がる面を有する一対の除電電極を第一のフィルムを挟んで対向配置する。パワーユニットから交流高電圧を発生させて高電圧ケーブルから除電電極に電圧を供給する。高電圧が印加された放電電極の鋭利な先端部のまわりに不平等電界が発生してコロナ放電が起こり、電極先端近傍の空気の分子(実際は、酸素、窒素、水蒸気等)がプラスイオンとマイナスイオンとに電離する(以下、略して「空気分子のイオン化」ともいう)。反対極性の電荷は引き合う性質があり、帯電物の帯電電荷は反対極性のイオンをその帯電が中和するまで引き付ける。このようにして、走行中の第一フィルムの第一主面側の帯電した静電気量を0.7kV以下とすることができる。なお、上記したような除電装置(静電気除去装置)は、一般的には、放電電極と接地電極とを備える除電電極、高電圧ケーブル、およびパワーユニットから構成される。
【0028】
第一のフィルムの除電は、帯電した静電気量を低減しやすくするために、相対湿度が45~65%の環境下で行うことが好ましい。
【0029】
<感光性樹脂層の形成工程>
上記のようにして第一のフィルムの第一主面側の静電気量を0.7kV以下となるように除電した後、第一主面の表面に感光性樹脂組成物を塗布して、感光性樹脂層を形成する。感光性樹脂層は、ドライフィルムの使用時に露光、現像することによってパターニングされ、回路基板等の電子部材上に設けられた絶縁膜(ソルダーレジスト層)となる。このような感光性樹脂層の形成には、例えば、従来公知のソルダーレジストインキ等を制限なく使用できるが、以下、本発明によるドライフィルムの感光性樹脂組層の形成に好ましく使用できる感光性樹脂組成物の一例を説明する。
【0030】
アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ可溶される樹脂であれば何れでもよく、公知慣用のものが使用される。アルカリ可溶性樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例示としては、カルボキシル基含有樹脂や、フェノール性水酸基含有樹脂のような水溶性樹脂等が挙げられる。なかでも現像性に優れることより、カルボキシル基含有樹脂やフェノール性水酸基含有樹脂が好ましく、カルボキシル基含有樹脂がより好ましい。アルカリ可溶性樹脂が、カルボキシル基を含むことにより、アルカリ現像性とすることができる。また、感光性の観点から、カルボキシル基の他に、分子内にエチレン性不飽和二重結合を有することが好ましいが、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを使用してもよい。エチレン性不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの誘導体由来であることが好ましい。エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いる場合、組成物を光硬化性とするためには、後述する分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する化合物、即ち光重合性モノマーを併用する必要がある。カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で他の類似の表現についても同様である。
【0031】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0032】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキサイド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0033】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物との反応物の部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0034】
(4)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0035】
(5)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0036】
(6)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0037】
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0038】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0039】
(9)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0040】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0041】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0042】
(12)前記(1)~(11)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0043】
本発明に使用できるアルカリ可溶性樹脂は、上記列挙したものに限られない。また。上記列挙したアルカリ可溶性樹脂は1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0044】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000の範囲であり、5,000~100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000以上のアルカリ可溶性樹脂を用いることにより、解像性やタックフリー性能を向上させることができる。また、重量平均分子量が150,000以下のアルカリ可溶性樹脂を用いることにより現像性や貯蔵安定性を向上させることができる。
【0045】
感光性樹脂組成物中のアルカリ可溶性樹脂の配合量は、固形分換算で、感光性樹脂組成物全体に対して20~60質量%であることが好ましく、より好ましくは、25~50質量%である。20質量%以上とすることにより塗膜強度を向上させることができる。また60質量%以下とすることで粘性が適当となり加工性が向上する。
【0046】
感光性樹脂組成物に含まれる光重合性モノマーは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーである。このような光重合性モノマーとしては、例えば、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体的には、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε-カプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および前記アクリレートに対応する各メタクリレート類のいずれか少なくとも1種から適宜選択して用いることができる。このような光重合性モノマーは、反応性希釈剤としても用いることができる。
【0047】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などを光重合性モノマーとして用いてもよい。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
【0048】
光重合性モノマーの配合量は、固形分換算で、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.2~60質量部、より好ましくは0.5~50質量部である。光重合性モノマーの配合量を0.2質量部以上とすることにより、感光性樹脂組成物の光硬化性が向上する。また、配合量を60質量部以下とすることにより、硬化塗膜硬度を向上させることができる。
【0049】
感光性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤は、上記したアルカリ可溶性樹脂や光重合性モノマーを露光により反応させるためのものである。光重合開始剤としては、公知のものをいずれも用いることができる。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
光重合開始剤としては、具体的には例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィン酸エチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。
【0051】
α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤の市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad 907、369、369E、379等が挙げられる。また、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad 819等が挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤の市販品としては、BASFジャパン株式会社製のIrgacure OXE01、OXE02、株式会社ADEKA製N-1919、アデカアークルズ NCI-831、NCI-831E、常州強力電子新材料社製TR-PBG-304などが挙げられる。
【0052】
その他、特開2004-359639号公報、特開2005-097141号公報、特開2005-220097号公報、特開2006-160634号公報、特開2008-094770号公報、特表2008-509967号公報、特表2009-040762号公報、特開2011-80036号公報記載のカルバゾールオキシムエステル化合物等を挙げることができる。
【0053】
光重合開始剤の配合量は、固形分換算で、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、0.5~18質量部であることがより好ましく、1~15質量部がさらに好ましい。0.01質量部以上の場合、感光性樹脂組成物の光硬化性が良好となり、耐薬品性等の被膜特性も良好となる。また、20質量部以下の場合、レジスト膜(硬化被膜)表面での光吸収が良好となり、深部硬化性が低下しにくい。
【0054】
上記した光重合開始剤と併用して、光開始助剤または増感剤を用いてもよい。光開始助剤または増感剤としては、ベンゾイン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物などを挙げることができる。特に、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物を用いることが好ましい。チオキサントン化合物が含まれることにより、深部硬化性を向上させることができる。これらの化合物は、光重合開始剤として用いることができる場合もあるが、光重合開始剤と併用して用いることが好ましい。また、光開始助剤または増感剤は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
なお、これら光重合開始剤、光開始助剤、および増感剤は、特定の波長を吸収するため、場合によっては感度が低くなり、紫外線吸収剤として機能することがある。しかしながら、これらは感光性樹脂組成物の感度を向上させることだけの目的に用いられるものではない。必要に応じて特定の波長の光を吸収させて、表面の光反応性を高め、レジストパターンのライン形状および開口を垂直、テーパー状、逆テーパー状に変化させるとともに、ライン幅や開口径の精度を向上させることができる。
【0056】
本発明において、感光性樹脂組成物には、上記した成分に加えて熱硬化性成分が含まれていてもよい。感光性樹脂組成物に熱硬化性成分が含まれることにより、硬化被膜の耐熱性を向上させることができる。熱硬化性成分としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、ビスマレイミド、カルボジイミド樹脂等の公知の熱硬化性成分を使用できる。特に好ましいのは、分子中に複数の環状エーテル基または環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略す)を有する熱硬化性成分である。熱硬化性成分は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
上記の分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4または5員環の環状(チオ)エーテル基を複数有する化合物であり、例えば、分子内に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子内に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子内に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0058】
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0059】
市販されるエポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のjER 828、806、807、YX8000、YX8034、834、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のYD-128、YDF-170、ZX-1059、ST-3000、DIC株式会社製のEPICLON 830、835、840、850、N-730A、N-695、および日本化薬株式会社製のRE-306等が挙げられる。
【0060】
多官能オキセタン化合物としては、例えば、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂とのエーテル化物等が挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等も挙げられる。
【0061】
分子中に複数の環状チオエーテル基を有する化合物としては、ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂等が挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0062】
メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂としては、メチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物等が挙げられる。
【0063】
イソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物を配合することができる。ポリイソシアネート化合物としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネートおよび2,4-トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;並びに先に挙げたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体およびイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0064】
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物を用いることができる。イソシアネートブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、例えば、上述のポリイソシアネート化合物等が挙げられる。イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール系ブロック剤;ラクタム系ブロック剤;活性メチレン系ブロック剤;アルコール系ブロック剤;オキシム系ブロック剤;メルカプタン系ブロック剤;酸アミド系ブロック剤;イミド系ブロック剤;アミン系ブロック剤;イミダゾール系ブロック剤;イミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0065】
熱硬化性成分の配合量は、固形分換算で、アルカリ可溶性樹脂に含有されるカルボキシル基1molあたりに対し、反応する熱硬化性成分の官能基数が0.5~2.5molが好ましく、より好ましくは0.8~2.0molである。
【0066】
また、感光性樹脂組成物には、上記した熱硬化性成分に加えて熱硬化触媒を配合することができる。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業株式会社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT 3513N(ジメチルアミン系化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CAT SA 102(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基およびオキセタニル基の少なくとも何れか1種とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独でまたは2種以上を混合して使用してもかまわない。
【0067】
さらに、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用する。熱硬化触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
熱硬化触媒としては、上記した以外のものをさらに含んでもよく、例えば、フェノール樹脂、ポリカルボン酸およびその酸無水物、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂等が挙げられる。
【0069】
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、クレゾール/ナフトール樹脂、ポリビニルフェノール類、フェノール/ナフトール樹脂、α-ナフトール骨格含有フェノール樹脂、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂等の従来公知のものを、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
ポリカルボン酸およびその酸無水物は、一分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物およびその酸無水物であり、例えば、(メタ)アクリル酸の共重合物、無水マレイン酸の共重合物、二塩基酸の縮合物等の他、カルボン酸末端イミド樹脂等のカルボン酸末端を有する樹脂が挙げられる。
【0071】
シアネートエステル樹脂は、一分子中に2個以上のシアネートエステル基(-OCN)を有する化合物である。シアネートエステル樹脂は、従来公知のものをいずれも使用することができる。シアネートエステル樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、アルキルフェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂が挙げられる。また、一部がトリアジン化したプレポリマーであってもよい。
【0072】
活性エステル樹脂は、一分子中に2個以上の活性エステル基を有する樹脂である。活性エステル樹脂は、一般に、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物との縮合反応によって得ることができる。中でも、ヒドロキ化合物としてフェノール化合物またはナフトール化合物を用いて得られる活性エステル化合物が好ましい。フェノール化合物またはナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。
【0073】
また、熱硬化触媒として、脂環式オレフィン重合体を用いてもよい。脂環式オレフィン重合体の製造方法の具体例としては、(1)カルボキシル基およびカルボン酸無水物基の少なくともいずれか1種(以下、「カルボキシル基等」と称する)を有する脂環式オレフィンを、必要に応じて他の単量体と共に重合する方法、(2)カルボキシル基等を有する芳香族オレフィンを、必要に応じて他の単量体と共に重合して得られる(共)重合体の芳香環部分を水素化する方法、(3)カルボキシル基等を有しない脂環式オレフィンと、カルボキシル基等を有する単量体とを共重合する方法、(4)カルボキシル基等を有しない芳香族オレフィンと、カルボキシル基等を有する単量体とを共重合して得られる共重合体の芳香環部分を水素化する方法、(5)カルボキシル基等を有しない脂環式オレフィン重合体にカルボキシル基等を有する化合物を変性反応により導入する方法、もしくは、(6)前記(1)~(5)のようにして得られるカルボン酸エステル基を有する脂環式オレフィン重合体のカルボン酸エステル基を、例えば加水分解等によりカルボキシル基に変換する方法等が挙げられる。
【0074】
熱硬化触媒の中でも、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネートエステル樹脂が好ましい。
【0075】
上記熱硬化触媒は、熱硬化性樹脂のエポキシ基等の熱硬化反応が可能な官能基と、その官能基と反応する熱硬化触媒中の官能基との比率が、固形分換算で、熱硬化触媒の官能基/熱硬化反応が可能な官能基(当量比)=0.2~2.0となるような割合で配合することが好ましい。熱硬化触媒の官能基/熱硬化反応が可能な官能基(当量比)を上記範囲内とすることで、デスミア工程における硬化膜表面の粗化を防止することができる。より好ましくは、熱硬化触媒の官能基/熱硬化反応が可能な官能基(当量比)=0.3~1.0である。
【0076】
熱硬化触媒の配合量は、固形分換算で、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~25質量部であり、より好ましくは0.1~20質量部である。0.1質量部以上の場合、耐熱性をより向上させることができる。25質量部以下の場合、経時安定性がより向上する。
【0077】
本発明においては、ドライフィルムを用いて形成される樹脂硬化膜の物理的強度を向上させたり表面のマット感を調整する観点から、感光性樹脂組成物には必要に応じてフィラーを配合することができる。フィラーとしては、公知の無機または有機フィラーが使用できるが、特に、硫酸バリウム、球状シリカ、ハイドロタルサイトおよびタルクが好ましく用いられる。また、難燃性を得るために金属酸化物や水酸化アルミ等の金属水酸化物を体質顔料フィラーとして使用することができる。
【0078】
フィラーの配合量は特に限定されるものではないが、粘度、塗布性、成形性等の観点から、固形分換算で、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して400質量部以下が好ましい。より好ましくは50~300質量部である。
【0079】
また、上記したフィラーは、感光性樹脂組成物中での分散性を高めるために表面処理されたものであってもよい。表面処理がされているフィラーを使用することで、凝集を抑制することができる。表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよいが、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等で無機フィラーの表面を処理することが好ましい。
【0080】
カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコアルミネート系等のカップリング剤が使用できる。中でもシラン系カップリング剤が好ましい。かかるシラン系カップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(2-アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらは単独で、あるいは併用して使用することができる。これらのシラン系カップリング剤は、あらかじめフィラーの表面に吸着あるいは反応により固定化されていることが好ましい。ここで、球状シリカ100質量部に対するカップリング剤の処理量は、0.5~10質量部であることが好ましい。
【0081】
感光性樹脂組成物は、必要に応じて着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、赤、青、緑、黄等の公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよいが、環境負荷の低減や人体への影響が少ない観点からハロゲンを含有しない着色剤であることが好ましい。
【0082】
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系等があり、具体的には以下のようなカラ-インデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyersand Colourists)発行)番号が付されているものが挙げられる。
【0083】
モノアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 1,2,3,4,5,6,8,9,12,14,15,16,17,21,22,23,31,32,112,114,146,147,151,170,184,187,188,193,210,245,253,258,266,267,268,269等が挙げられる。また、ジスアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 37,38,41等が挙げられる。また、モノアゾレーキ系赤色着色剤としては、Pigment Red 48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,53:2,57:1,58:4,63:1,63:2,64:1,68等が挙げられる。また、ベンズイミダゾロン系赤色着色剤としては、Pigment Red 171,175,176、185、208等が挙げられる。また、ぺリレン系赤色着色剤としては、Solvent Red 135,179,Pigment Red 123,149,166,178,179,190,194,224等が挙げられる。また、ジケトピロロピロール系赤色着色剤としては、Pigment Red 254,255,264,270,272等が挙げられる。また、縮合アゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 220,144,166,214,220,221,242等が挙げられる。また、アントラキノン系赤色着色剤としては、Pigment Red 168,177,216、Solvent Red 149,150,52,207等が挙げられる。また、キナクリドン系赤色着色剤としては、Pigment Red 122,202,206,207,209等が挙げられる。
【0084】
青色着色剤としてはフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物が挙げられ、例えば、Pigment Blue 15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,60。染料系としては、Solvent Blue 35,63,68,70,83,87,94,97,122,136,67,70等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0085】
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等が挙げられ、例えば、アントラキノン系黄色着色剤としては、Solvent Yellow 163,Pigment Yellow 24,108,193,147,199,202等が挙げられる。イソインドリノン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 110,109,139,179,185等が挙げられる。縮合アゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow
93,94,95,128,155,166,180等が挙げられる。ベンズイミダゾロン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 120,151,154,156,175,181等が挙げられる。また、モノアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,9,10,12,61,62,62:1,65,73,74,75,97,100,104,105,111,116,167,168,169,182,183等が挙げられる。また、ジスアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 12,13,14,16,17,55,63,81,83,87,126,127,152,170,172,174,176,188,198等が挙げられる。
【0086】
その他、紫、オレンジ、茶色、黒、白等の着色剤を加えてもよい。具体的には、Pigment Black 1,6,7,8,9,10,11,12,13,18,20,25,26,28,29,30,31,32、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet13,36、C.I.Pigment Orange 1,5,13,14,16,17,24,34,36,38,40,43,46,49,51,61,63,64,71,73、PigmentBrown 23,25,カーボンブラック、酸化チタン等が挙げられる。
【0087】
感光性樹脂組成物中の着色剤の配合量は特に限定されるものではないが、固形分換算で、感光性樹脂組成物全体に対して0.1~5質量%であることが好ましい。
【0088】
感光性樹脂組成物には、感光性樹脂層を形成する際の調製のし易さや塗布性の観点から有機溶剤を配合してもよい。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0089】
感光性樹脂組成物には、さらに必要に応じてエラストマー、メルカプト化合物、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、ブロック共重合体、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくともいずれか1種、フォスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。
【0090】
感光性樹脂組成物は、表面張力が20~50mN/mであることが好ましく、30~40mN/mであることがより好ましい。静電気量が0.7kV以下となるように除電した第一のフィルムの第一主面に、表面張力が上記範囲にある感光性樹脂組成物を塗布することで、より一層、レベリング性が向上する。なお、表面張力は、JIS K6768に準拠してダイノメーターを用いて測定することができる。感光性樹脂組成物の表面張力は、上記した各成分やそれらの配合割合、レベリング剤等の添加によって調整することができる。
【0091】
感光性樹脂層は、上記した感光性樹脂組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、第一のフィルムの表面に、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で第一のフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、通常は1~250μm、好ましくは3~200μmの範囲で適宜選択される。感光性樹脂組成物の塗布量が少なすぎると、レベリング性が低下する場合がある。
【0092】
また、塗布する際の感光性樹脂組成物は、25℃における粘度が50~10000mPa・sであることが好ましく、形成しようとする感光性樹脂層の厚さに応じて、塗布する感光性樹脂組成物の粘度を調整してもよい。例えば、感光性樹脂層の厚さが小さい場合(5μm程度)は、塗布する際の感光性樹脂組成物は、25℃における粘度が30~400mPa・sの範囲であることが好ましく、より好ましくは50~300mPa・sである。また、感光性樹脂層の厚さが大きい場合(200μm程度)は、塗布する際の感光性樹脂組成物は、25℃における粘度が1000~10000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは4000~8000mPa・sである。
【0093】
感光性樹脂組成物が有機溶剤を含む場合、第一のフィルムの第一主面に感光性樹脂組成物を塗布した後、揮発乾燥を行うことが好ましい。揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより第一のフィルムに吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0094】
乾燥時間は、特に制限されるものではなく、樹脂層中の溶剤の残存量が5%以下となるまで実施することが好ましく、樹脂組成物中に含まれる溶剤の割合、塗布膜の厚さ、乾燥温度等を考慮して適宜調整することができる。生産性等を考慮すると概ね10秒~20分間であり、好ましくは10秒~2分間程度である。
【0095】
<第二のフィルムの貼合工程>
上記したように、感光性樹脂層の表面に塵等が付着するのを防止するとともに、ドライフィルムの取扱性を考慮して、感光性樹脂層の第一のフィルムと接する面とは反対の面側に、さらに第二のフィルムを設けてもよい。なお、本明細書における第二のフィルムとは、回路基材等の被着体にドライフィルムをラミネートして一体成形する際、ラミネート前に樹脂層から剥離するものをいう。
【0096】
第二のフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができるが、第二のフィルムと感光性樹脂層との接着力が、第一のフィルムと感光性樹脂層との接着力よりも小さくなるような材料を選定することが好ましい。また、ドライフィルムの使用時に、第二のフィルムを剥離し易くするため、第二のフィルムの感光性樹脂層と接する面に上記したような離型処理を施してもよい。
【0097】
第二のフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが概ね10~150μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。
【0098】
[ドライフィルムの用途]
上記したドライフィルムを用いて電子部材用絶縁膜を形成することができる。電子部材用絶縁膜の形成方法および回路パターンが形成された基板上に上記硬化物(電子部材用絶縁膜)を備えた電子部材を製造する方法を説明する。ドライフィルムが感光性である場合の使用例として、第二のフィルムを備えたドライフィルムを用いて電子部材を製造する方法を説明する。
【0099】
i)まず、上記したドライフィルムから第二のフィルムを剥離して、感光性樹脂層を露出させ、
ii)次いで、回路パターンが形成された電子部材上に、前記ドライフィルムの感光性樹脂層を貼合し、
iii)前記ドライフィルムの第一のフィルム上から露光を行い、
iv)前記ドライフィルムから第一のフィルムを剥離して現像を行うことにより前記基板上にパターニングされた感光性樹脂層を形成し、
v)前記パターニングされた感光性樹脂層を光照射ないし熱により硬化させて、絶縁膜を形成する、
ことにより、絶縁膜を備えた電子部材を製造することができる。なお、第二のフィルムが設けられていないドライフィルムを使用する場合は、第二のフィルムの剥離工程(i工程)が不要であることは言うまでもない。以下、各工程について説明する。
【0100】
まず、ドライフィルムから第二のフィルムを剥離して感光性樹脂層を露出させ、電子部材にドライフィルムの感光性樹脂層を貼合する。電子部材としては、回路パターンが形成された基板上等を例示できる。回路パターンが形成された基板としては、予め回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR-4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウェハ板等を挙げることができる。
【0101】
ドライフィルムの感光性樹脂層を電子部材上に貼合するには、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で貼合することが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、感光性樹脂層が電子部材に密着するため、気泡の混入がなく、また、電子部材表面への穴埋め性も向上する。加圧条件は、0.1~2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40~120℃であることが好ましい。
【0102】
次に、ドライフィルムの第一のフィルム上から露光(活性エネルギー線の照射)を行う。この工程により、露光された感光性樹脂層のみが硬化する。露光工程は特に限定されるものではなく、例えば、接触式(または非接触方式)により、所望のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光してもよいが、直接描画装置により所望パターンを活性エネルギー線により露光してもよい。
【0103】
活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、LED等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のレーザー光源としては、最大波長が350~410nmの範囲にあるレーザー光を用いていればガスレーザー、固体レーザーどちらでもよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20~800mJ/cm2、好ましくは20~600mJ/cm2の範囲内とすることができる。また、露光は散乱光であっても平行光であってもよい。
【0104】
露光後、感光性樹脂層から第一のフィルムを剥離して現像を行うことにより、電子部材上にパターニングされた感光性樹脂層を形成する。パターニングされていない箇所の感光性樹脂層において、第一のフィルムを介した露光によって、感光性樹脂層の表面は凹凸状に形成される。なお、特性を損なわなければ、電子部材上に貼合後、感光性樹脂層から第一のフィルムを剥離した後に露光を行っても良い。
【0105】
なお、後述する感光性樹脂組成物を用いた絶縁膜の形成方法で説明するフォトマスクを用いても良い。かかる場合、第一のフィルムは前述した模様が施されていないものを用いることが好ましく、また第一のフィルムは特性を損なわない範囲で、露光前にドライフィルムから第一のフィルムを剥離して露光および現像を行っても良い。
【0106】
現像工程は特に限定されるものではなく、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法などを用いることができる。また、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類、水酸化テトラメチルアンモニウム等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0107】
次いで、パターニングされた感光性樹脂層を、活性エネルギー線(光)照射ないし熱により硬化させて、電子部材用絶縁膜を形成することもできる。この工程は本硬化または追加硬化と呼ばれるものであり、露光された感光性樹脂層中の未反応モノマーの重合を促進させ、さらには、カルボキシル基含有感光性樹脂とエポキシ樹脂とを熱硬化させて、残存するカルボキシル基の量を低減することができる。活性エネルギー線照射は、上記した露光と同様にして行うことができるが、露光時の照射エネルギーよりも強い条件で行うことが好ましい。例えば、500~3000mJ/cm2とすることができる。また、熱硬化は、100~200℃で20~90分間程度の加熱条件で行うことができる。なお、本硬化は、光硬化させた後に熱硬化を行うことが好ましい。光硬化を先に行うことで加熱硬化時においても樹脂の流動が抑制され、賦型された表面が維持されることがある。
【0108】
上述した電子部材用絶縁膜の製造方法は、感光性樹脂組成物として光硬化性および熱硬化性の樹脂組成物から形成したドライフィルムを使用したものである。光硬化性の樹脂組成物または熱硬化性の樹脂組成物から形成された各ドライフィルムを用いて電子部材用絶縁膜を製造する方法についても、以下説明する。
【0109】
光硬化のみによって絶縁膜を形成する場合、例えば、電子部材上に前記ドライフィルムの感光性樹脂層を貼合した後、感光性樹脂層を活性エネルギー線照射(例えば、1,000~2,000mJ/cm2)により硬化させることにより、電子部材用絶縁膜を形成してもよい。
また、熱硬化のみによって絶縁膜を形成する場合、例えば、電子部材上前記ドライフィルムの感光性樹脂層を貼合した後、感光性樹脂層を加熱(例えば、100~220℃の温度で30~90分間)して硬化させることにより、電子部材用絶縁膜を形成してもよい。
【0110】
第一のフィルムは硬化の前後のいずれかにおいて剥離するが、感光性樹脂組成物の硬化後に剥離するのが好ましい。また、上記した方法の他にも、感光性樹脂組成物の乾燥塗膜の表面に、所定の表面形態となるように転写ローラー等を使用して特定の形状を賦型したり、あるいは表面が予め特定の形状に加工された第一のフィルムに感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させたドライフィルムを使用したりすることによりできるが、これに限られるものではない。
【0111】
[電子部材]
本発明による絶縁膜を設ける電子部材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキサイド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、ウェハ基板、金属基板、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウェハ板等を挙げることができる。このなかでも、特に銅張積層板が好ましい。
【0112】
本発明による電子部材用絶縁膜は、ソルダーレジストやカバーレイ、層間絶縁層等のプリント配線板の永久被膜として有用であり、特にソルダーレジスト硬化被膜として有用である。とりわけ、マット調の絶縁膜が要求されている用途に好適に使用することができる。また、パターニングされた絶縁膜を必要とする用途だけでなく、パターニングを必要としない用途、例えばモールド用途(封止用途)にも用いることができる。またICパッケージ用のソルダーレジスト層形成としても好適に使用できる。
【実施例0113】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0114】
<第一のフィルム1~4の準備>
[第一のフィルム1]
iso-ブチル化メラミン樹脂(アミディアL-125-60、固形分60%、DIC株式会社製)、およびメラミン焼き付け用アクリル樹脂(アクリディックA-405、固形分50%、DIC株式会社製)を、配合割合が質量基準で25:75(固形分換算)となるように配合し、撹拌機にて予備撹拌し、アクリルメラミン樹脂を得た。
次いで、得られたアクリルメラミン樹脂をメチルエチルケトンで希釈し固形分濃度35質量%の樹脂溶液を調製した。この樹脂溶液に、さらに塗膜の厚みに応じて適当な固形分濃度となるようにメチルエチルケトンを加えた後、シリコーン系樹脂(サイマックUS-270、東亜合成株式会社製)と最大粒径が2μmとなるように調整したフィラー(J-4P、アクリルビーズ、根上工業株式会社製)とを、アクリルメラミン樹脂とシリコーン系樹脂とフィラーとの配合割合が、質量基準で59.7:0.3:108(固形分換算)となるように添加し、室温で十分に撹拌し、均一な塗工液を得た。
得られた塗工液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーT60、東レ株式会社製)に塗布し、130℃で、20秒間乾燥させることにより中間層を含む第一のフィルム1を作製した。第一のフィルム1の全体の厚みは40μmであった。また、中間層を設けた側の算術表面粗さRaを、JIS B 0601:2001に準拠してレーザーマイクロスコープ(VX―100、株式会社キーエンス製)を用いて形状測定モードにより測定した具体的には、レーザーマイクロスコープの形状測定モードにおいて、観察アプリケーション(VK-H1XV)を立ち上げ、X-Yステージ上に測定する試料を静置し、形状測定モードにおいて50倍の対物レンズで、オートフォーカスにてピントを合わせた。必要に応じてZ軸をコントロールし、フォーカスを最適な位置に調整した。自動測定モードまたは手動測定モードにて、観察画像の取り込みを行った。次いで、解析アプリケーション(VK-H1XA)を立ち上げ、Raの測定を開始した。測定の結果、第一のフィルム1の中間層を設けた側の面(即ち、第一主面)の算術表面粗さRaは0.180μmであった。
【0115】
[第一のフィルム2]
フィラーを球状シリカ(SO-C2、株式会社アドマテックス製)に変更し、アクリルメラミン樹脂とシリコーン系樹脂とフィラーとの配合割合を、質量基準で59.7:0.3:12.0(固形分換算)に変更した以外は、第一のフィルム1と同様にして中間層を含む第一のフィルム2を作製した。第一のフィルム2の全体の厚みは43μmであった。また、中間層を設けた側の面(即ち、第一主面)の算術表面粗さRaは0.196μmであった。
【0116】
[第一のフィルム3]
アクリルメラミン樹脂とシリコーン系樹脂とフィラーとの配合割合を、質量基準で59.7:0.3:21.0(固形分換算)に変更した以外は、第一のフィルム2と同様にして中間層を含む第一のフィルム3を作製した。第一のフィルム3の全体の厚みは43μmであった。また、中間層を設けた側の面(即ち、第一主面)の算術表面粗さRaは0.248μmであった。
【0117】
[第一のフィルム4]
アクリルメラミン樹脂とシリコーン系樹脂とフィラーとの配合割合を59.7:0. 3:48.0に変更した以外は、第一のフィルム2と同様にして中間層を含む第一のフィルム4を作製した。第一のフィルム4の全体の厚みは43μmであった。また、中間層を設けた側の面(即ち、第一主面)の算術表面粗さRaは0.412μmであった。
【0118】
[感光性樹脂組成物の調製]
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON N-695、エポキシ当量:220)220gを撹拌機および還流冷却器の付いた四つ口フラスコに入れ、カルビトールアセテート214gを加え、加熱溶解した。次に、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1gと、反応触媒としてジメチルベンジルアミン2.0gを加えた。この混合物を95~105℃に加熱し、アクリル酸72gを徐々に滴下し、16時反応させた。この反応生成物を80~90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物106gを加え、8時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたアルカリ可溶性樹脂の樹脂ワニスは、固形分65%、固形分の酸価100mgKOH/g、重量平均分子量Mw約3,500であった。
【0119】
上記のようにして得られたアルカリ可溶性樹脂ワニスを100質量部(固形分換算)、光重合性モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、DPHA)を30質量部、光重合開始剤として2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン(IGM Resins株式会社製、Omnirad907)を10質量部、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(BASFジャパン株式会社製、Irgacure OXE02)を0.5質量部、増感剤として2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬株式会社製、KAYACURE DETX-S)を0.5質量部、熱硬化性成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON 840-S)を20質量部、1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(高融点タイプ、日産化学株式会社製、TEPIC-HP)を10質量部、フィラーとして硫酸バリウム(堺化学工業株式会社製、B-30)を90質量部、および着色剤として青色着色剤(C.I.Pigment Blue 15:3)を0.8質量部、黄色着色剤(C.I.Pigment Yellow 147)を0.3質量部、赤色着色剤(BASFジャパン株式会社製、Paliogen Red K3580)を1.2質量部、それぞれ配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練して、感光性樹脂組成物を調製した。
【0120】
上記のようにして得られた感光性樹脂組成物にメチルエチルケトン300gを加えて希釈し、攪拌機で15分間撹拌して塗工液1を得た。この塗工液を、コーンプレート型粘度計(東機産業株式会社製、TVH-33)を用いて、25℃での粘度(5rpm)を測定したところ、250mPa・sであった。また、JIS K6768に準拠してダイノメーター(BYK-GARDNER社製)を用いて塗工液1の表面張力を測定したところ、32mN/mであった。
また、上記のようにして得られた感光性樹脂組成物にメチルエチルケトン200gを加えて希釈し、攪拌機で15分間撹拌して塗工液2を得た。この塗工液を、コーンプレート型粘度計(東機産業株式会社製、TVH-33)を用いて、25℃での粘度(5rpm)を測定したところ、6000mPa・sであった。また、JIS K6768に準拠してダイノメーター(BYK-GARDNER社製)を用いて塗工液2の表面張力を測定したところ、34mN/mであった。
【0121】
<感光性樹脂層の形成>
上記のようにして得られた各第一のフィルムの中間層を設けた側の面(第一主面)に塗工液を塗布する前に、搬送ローラー上を搬送速度5m/分の搬送速度にて第一のフィルムを走行させながら、走行方向と直交する方向に除電バー(Blue Bar R50、シムコジャパン株式会社製)を設置して除電を行った。なお、走行方向において、除電バーを設けた位置の前後における第一フィルムの第一主面側の静電気量を静電気測定器(静電気測定器 FMX-003、シムコジャパン株式会社製)を用いて測定した。なお、静電気量は、任意の箇所で5回測定しその平均値とした。除電前後での静電気量は、下記表1に示すとおりであった。
【0122】
上記のように除電を行った後、各第一フィルムの第一主面に塗工液1を塗布し、90℃の温度で15分間乾燥し、乾燥後の厚み25μmの感光性樹脂層を形成した。また、第一のフィルム2については、塗工量を変えて、乾燥後の厚みが25μm、5μmおよび3μmの厚さの異なる3種の感光性樹脂層を形成した。さらに、第一のフィルム2について、塗工液1に代えて塗工液2を用いて、乾燥後の厚み200μmの感光性樹脂層を形成した。
【0123】
上記のようにして感光性樹脂層を形成した後、感光性樹脂層上に、第二のフィルムとして厚み18μmのポリプロピレンフィルム(フタムラ株式会社製、OPP-FOA)を貼り合わせて、各ドライフィルムを作製した。
【0124】
<感光性樹脂層のレベリング性評価>
各ドライフィルムの感光性樹脂層表面の任意の箇所の100mm×100mmの範囲を目視にて観察し、塗工むら、スジ、ヌケ、および異物の付着の有無を確認した。レベリング性の評価基準は以下のとおりとした。
○:塗工むら、スジ、ヌケ、および異物の付着が0個
△:塗工むら、スジ、ヌケ、および異物の付着が1~5個
×:塗工むら、スジ、ヌケ、および異物の付着が6個以上
評価結果は表1に示すとおりであった。
【0125】
<ドライフィルムを用いて得られた硬化物の表面状態>
銅張積層基板(95mm×150mm×1.6mmt)表面を化学研磨し、上記のようにして得られたドライフィルムから第二のフィルムを剥離して感光性樹脂層を露出させ、当該基板の表面研磨された側の面に、ドライフィルムの感光性樹脂層を貼り合わせ、続いて、真空ラミネーター(株式会社日本製鋼所 MVLP-500)を用いて加圧度:0.8Mpa、70℃、1分、真空度:133.3Paの条件で加熱ラミネートして、基板と感光性樹脂層とを密着させた。続いて、150℃で60分加熱して感光性樹脂層を完全硬化させて絶縁膜(硬化物)を形成した。
上記のようにして得られた絶縁膜を蛍光灯で照らし、絶縁膜表面に映る蛍光灯の状態を目視にて観察し、下記の評価基準により絶縁層のマット感の評価を行った。
〇:蛍光灯の像がぼやけている
×:蛍光灯の像がはっきりと映っている
評価結果は表1に示すとおりであった。
【0126】
【0127】
表1の評価結果からも明らかなように、感光性樹脂組成物を塗布する前に第一のフィルムの第一主面(塗布面)の除電を行ったドライフィルム(実施例1~7)は、除電せずに感光性樹脂層を塗布したドライフィルム(比較例1)と比べて、形成された感光性樹脂層のレベリング性が良好であることがわかる。