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特開2023-168312多層粘着フィルム、それを含む光学部材およびそれを含む光学表示装置
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  • 特開-多層粘着フィルム、それを含む光学部材およびそれを含む光学表示装置 図1
  • 特開-多層粘着フィルム、それを含む光学部材およびそれを含む光学表示装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168312
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】多層粘着フィルム、それを含む光学部材およびそれを含む光学表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20231116BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20231116BHJP
   H10K 50/85 20230101ALI20231116BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20231116BHJP
   C09J 201/00 20060101ALN20231116BHJP
   C09J 133/04 20060101ALN20231116BHJP
【FI】
C09J7/38
G02B1/111
H10K50/85
H10K59/10
C09J201/00
C09J133/04
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079119
(22)【出願日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】10-2022-0058328
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 昇 勳
(72)【発明者】
【氏名】金 源
(72)【発明者】
【氏名】金 成 漢
(72)【発明者】
【氏名】趙 成 ▲きん▼
(72)【発明者】
【氏名】ナム イリナ
(72)【発明者】
【氏名】崔 柱 烈
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智子
(72)【発明者】
【氏名】韓 在 鉉
(72)【発明者】
【氏名】金 一 鎭
【テーマコード(参考)】
2K009
3K107
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2K009AA02
2K009AA05
2K009CC21
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC05
3K107EE21
3K107FF02
3K107FF05
3K107FF06
3K107FF14
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA03
4J004FA05
4J040DG011
4J040HC16
4J040KA13
4J040KA16
4J040LA08
4J040LA10
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】高屈折率であり、かつ低温におけるホールド性に優れた多層粘着フィルムを提供する。
【解決手段】屈折率が1.55以上である第1粘着フィルムおよび前記第1粘着フィルムの一面に積層された第2粘着フィルムを含む多層粘着フィルムであって、前記多層粘着フィルムは-20℃におけるリカバリー率が80%以上であり、-20℃における貯蔵弾性率モジュラスが0.1MPa~0.3MPaであり、60℃における貯蔵弾性率が0.01MPa~0.1MPaである、多層粘着フィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率が1.55以上である第1粘着フィルムおよび前記第1粘着フィルムの一方の面に積層された第2粘着フィルムを含む多層粘着フィルムであって、
前記多層粘着フィルムは、-20℃におけるリカバリー率が80%以上であり、
-20℃における貯蔵弾性率が0.1MPa~0.3MPaであり、
60℃における貯蔵弾性率が0.01MPa~0.1MPaである、多層粘着フィルム。
【請求項2】
前記多層粘着フィルムは、60℃における貯蔵弾性率と-20℃における貯蔵弾性率との比(60℃における貯蔵弾性率:-20℃における貯蔵弾性率)が1:2~1:10である、請求項1に記載の多層粘着フィルム。
【請求項3】
前記第2粘着フィルムは、前記第1粘着フィルムよりも屈折率が低く、かつガラス転移温度が低い、請求項1に記載の多層粘着フィルム。
【請求項4】
前記第1粘着フィルムと前記第2粘着フィルムとの間の屈折率の差は0.5以下であり、前記第1粘着フィルムと前記第2粘着フィルムとの間のガラス転移温度の差は20℃以上である、請求項1に記載の多層粘着フィルム。
【請求項5】
前記第1粘着フィルムの厚さと前記第2粘着フィルムの厚さとの比(第1粘着フィルムの厚さ:第2粘着フィルムの厚さ)は、1:1.05~1:5である、請求項1に記載の多層粘着フィルム。
【請求項6】
前記第1粘着フィルムは、ガラス転移温度が-20℃~-5℃であり、
前記第2粘着フィルムは、ガラス転移温度が-20℃未満である、請求項1に記載の多層粘着フィルム。
【請求項7】
前記第1粘着フィルムは、芳香族基含有(メタ)アクリル系重合物、硬化剤、および光開始剤を含む第1粘着フィルム用組成物の硬化物を含む、請求項1に記載の多層粘着フィルム。
【請求項8】
前記芳香族基含有(メタ)アクリル系重合物は、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体、および水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体を含む、請求項7に記載の多層粘着フィルム。
【請求項9】
前記芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、下記化学式1で表される化合物および下記化学式2で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項8に記載の多層粘着フィルム:
【化1】

前記化学式1中、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、単結合、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数1~10のモノアルキレンオキシ基、または炭素数2~10のポリアルキレンオキシ基であり、
は、単結合、酸素原子(O)、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数1~10のモノアルキレンオキシ基、または炭素数2~10のポリアルキレンオキシ基であり、
Arは、置換または非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、
Arは、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基である:
【化2】

前記化学式2中、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、単結合、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数1~10のモノアルキレンオキシ基、または炭素数2~10のポリアルキレンオキシ基であり、
Arは、置換または非置換の炭素数10~30の芳香族縮合環基である。
【請求項10】
前記芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニリルメチル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェニリル(メタ)アクリレート、およびナフチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項9に記載の多層粘着フィルム。
【請求項11】
前記単量体混合物は、アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体および共単量体からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項8に記載の多層粘着フィルム。
【請求項12】
前記共単量体は、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル系単量体を含む、請求項11に記載の多層粘着フィルム。
【請求項13】
前記単量体混合物の全質量に対して、前記芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体の含有量が70質量%~95質量%であり、前記水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量が5質量%~30質量%である、請求項8に記載の多層粘着フィルム。
【請求項14】
前記単量体混合物の全質量に対して、前記芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体の含有量が70質量%~95質量%であり、前記水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量が5質量%~30質量%であり、アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量が0質量%~25質量%であり、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量が0質量%~25質量%である、請求項8に記載の多層粘着フィルム。
【請求項15】
前記第1粘着フィルム用組成物は、
前記芳香族基含有(メタ)アクリル系重合物 100質量部、
前記硬化剤 0.01質量部~5質量部、および
前記光開始剤 0.01質量部~0.1質量部を含む、請求項7に記載の多層粘着フィルム。
【請求項16】
前記第2粘着フィルムは、(メタ)アクリル系共重合体および硬化剤を含む第2粘着フィルム用組成物の硬化物を含む、請求項1に記載の多層粘着フィルム。
【請求項17】
前記(メタ)アクリル系共重合体は、アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体および架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体を含む、請求項16に記載の多層粘着フィルム。
【請求項18】
前記第2粘着フィルム用組成物は、
前記(メタ)アクリル系共重合体 100質量部、および
前記硬化剤 0.01質量部~0.1質量部を含む、請求項16に記載の多層粘着フィルム。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の多層粘着フィルムを含む、光学部材。
【請求項20】
請求項1~18のいずれか1項に記載の多層粘着フィルムを含む、光学表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層粘着フィルム、それを含む光学部材およびそれを含む光学表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光表示装置内にパターンを有する光学素子を含んで、光効率を改善する方法が考慮されている。光効率の改善は、目的とする輝度を具現するための電力消費量を下げることにより、有機発光素子の寿命を延ばすことができる。例えば、有機発光素子を備えるパネル上に、無機層、低屈折率有機層、および高屈折率有機層が順に形成され、無機層および高屈折率有機層は層構造になっているのに対し、低屈折率有機層はパターン化されている構造が提案されている。無機層は、窒化ケイ素(シリコンナイトライド)、酸窒化ケイ素(シリコンオキシナイトライド)、酸化ケイ素(シリコンオキサイド)、酸化チタン(チタニウムオキサイド)、酸化アルミニウム(アルミニウムオキサイド)等の無機粒子で形成されるため高屈折率を表すことができる。高屈折率有機層は、無機層と接するため、無機層とうまく貼り合わせなければならないだけでなく、高屈折率、例えば、屈折率1.55以上を有さなければ、視認性の改善および光効率を改善させることができない。高屈折率有機層としては、屈折率1.55以上を有する高屈折率粘着層が適しているのではないかと考えられる。
【0003】
高屈折率の粘着層は、高屈折率の無機粒子、例えば、ジルコニアを含むことにより、高屈折率を達成することができる。しかし、高屈折率を達成するためには、粘着層内に所定の含有量以上の無機粒子を含まなければならない。この場合、粘着層は低温におけるホールド性が良くないという問題が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1189698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高屈折率であり、かつ低温におけるホールド性に優れた多層粘着フィルムを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、粘着信頼性に優れ、発光効率が著しく向上した、多層粘着フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点は、多層粘着フィルムである。
【0008】
1.本発明の多層粘着フィルムは、屈折率が1.55以上である第1粘着フィルム;および前記第1粘着フィルムの少なくとも一方の面に積層された第2粘着フィルムを含み、前記多層粘着フィルムは-20℃におけるリカバリー率が80%以上であり、-20℃における貯蔵モジュラスが0.1MPa~0.3MPaであり、60℃における貯蔵モジュラスが0.01MPa~0.1MPaである。
【0009】
2.上記1.において、前記多層粘着フィルムは、60℃における貯蔵弾性率と-20℃における貯蔵弾性率との比(60℃における貯蔵弾性率:-20℃における貯蔵弾性率)が1:2~1:10であり得る。
【0010】
3.上記1.~2.において、前記第2粘着フィルムは、前記第1粘着フィルムよりも屈折率が低く、かつガラス転移温度が低くなり得る。
【0011】
4.上記1.~3.において、前記第1粘着フィルムの屈折率と前記第2粘着フィルムの屈折率との差は0.5以下であり、前記第1粘着フィルムのガラス転移温度と前記第2粘着フィルムのガラス転移温度との差は20℃以上であり得る。
【0012】
5.上記1.~4.において、前記第1粘着フィルムの厚さと前記第2粘着フィルムの厚さとの比(第1粘着フィルムの厚さ:第2粘着フィルムの厚さ)は、1:1.05~1:5であり得る。
【0013】
6.上記1.~5.において、前記第1粘着フィルムは、ガラス転移温度が-20℃~-5℃であり、前記第2粘着フィルムは、ガラス転移温度が-20℃未満であり得る。
【0014】
7.上記1.~6.において、前記第1粘着フィルムは、芳香族基含有(メタ)アクリル系重合物、硬化剤、および光開始剤を含む第1粘着フィルム用組成物の硬化物を含み得る。
【0015】
8.上記7.において、前記芳香族基含有(メタ)アクリル系重合物は、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体、および水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体を含み得る。
【0016】
9.上記8.において、前記芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、下記化学式1で表される化合物および下記化学式2で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含み得る:
【0017】
【化1】
【0018】
前記化学式1中、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、単結合、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数1~10のモノアルキレンオキシ基、または炭素数2~10のポリアルキレンオキシ基であり、
は、単結合、酸素原子(O)、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数1~10のモノアルキレンオキシ基、または炭素数2~10のポリアルキレンオキシ基であり、
Arは、置換または非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、
Arは、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基である:
【0019】
【化2】
【0020】
前記化学式2中、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、単結合、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数1~10のモノアルキレンオキシ基、または炭素数2~10のポリアルキレンオキシ基であり、
Arは、置換または非置換の炭素数10~30の芳香族縮合環基である。
【0021】
10.上記9.において、前記芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニリルメチル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェニリル(メタ)アクリレート、およびナフチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。
【0022】
11.上記8.~10.において、前記単量体混合物は、アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体および共単量体からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含み得る。
【0023】
12.上記11.において、前記共単量体は、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル系単量体を含み得る。
【0024】
13.上記8.において、前記単量体混合物の全質量に対して、前記芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体の含有量が70質量%~95質量%であり、前記水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量が5質量%~30質量%であり得る。
【0025】
14.上記12.において、前記単量体混合物の全質量に対して、前記芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体の含有量が70質量%~95質量%であり、前記水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量が5質量%~30質量%であり、アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量が0質量%~25質量%であり、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量が0質量%~25質量%であり得る。
【0026】
15.上記7.~14.において、前記第1粘着フィルム用組成物は、前記芳香族基含有(メタ)アクリル系重合物 100質量部、前記硬化剤 0.01質量部~5質量部、および前記光開始剤 0.01質量部~0.1質量部を含み得る。
【0027】
16.上記1.~15.において、前記第2粘着フィルムは、(メタ)アクリル系共重合体および硬化剤を含む第2粘着フィルム用組成物の硬化物を含み得る。
【0028】
17.上記16.において、前記(メタ)アクリル系共重合体は、アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体および架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体を含み得る。
【0029】
18.上記16.において、前記第2粘着フィルム用組成物は、前記(メタ)アクリル系共重合体 100質量部、および前記硬化剤 0.01質量部~0.1質量部を含み得る。
【0030】
本発明の別の観点は、光学部材である。
【0031】
光学部材は、本発明の多層粘着フィルムを含む。
【0032】
本発明の別の観点は、光学表示装置である。
【0033】
光学表示装置は、本発明の多層粘着フィルムを含む。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、高屈折率であり、かつ低温におけるホールド性に優れた、多層粘着フィルムを提供する。
【0035】
また、本発明によれば、粘着信頼性に優れ、発光効率が著しく向上した、多層粘着フィルムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施形態に係る多層粘着フィルムの断面概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る光学表示装置の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
添付の図面および実施例を参考して、実施例に対して本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は、様々な相違する形態に具現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0038】
図面で本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、明細書全体を通じて同一または類似する構成要素については、同じ図面符号を付けた。 本明細書で使用される用語は、例示的な実施形態を説明するためにのみ使用されており、本発明を限定することを意図していない。単数の表現は、文脈上明らかに他に意味がない限り、複数の表現を含む。
【0039】
本明細書において、「上部」および「下部」は、図面を基準に定義したものであり、見る角度によって「上部」が「下部」に、「下部」が「上部」に変わる場合もある。また、「の上(on)」または「上(on)」と称されるものは、真上だけでなく、中間に別の構造を介する場合も含まれる。一方、「直上(directly on)」、「真上」、「直接的に形成」、または「直接的に接して形成」と称されるものは、中間に別の構造を介さないことを意味する。
【0040】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタアクリルを意味する。
【0041】
本明細書において、「屈折率」は、可視光線領域、具体的には波長633nmの光で測定された値である。
【0042】
本明細書において「リカバリー率(recovery rate)」は、多層粘着フィルムを複数個積層させて厚さ800μm、直径8mmの円形の試験片を製造し、この試験片に対してDHRレオメーター(rheometer、TA Instruments社製)を使用して測定することができる。具体的には、リカバリー率は、リカバリー率測定温度である-20℃で試験片に応力(300% ひずみ)を加えた状態で600秒間保った後(このとき、下記Aを測定する)、応力を取り除き(試験片に加えられる応力が0Nになる)、600秒間保った後(このとき、下記Bを測定する)、計算された変化率であり得る。変化率は、下記数式1によって計算され得る:
【0043】
【数1】
【0044】
上記数式1中、
Aは試験片に応力(300%ひずみ)を加えた状態で600秒間維持した後、すぐに測定された試験片の変位(単位:mm)であり、
Bは試験片に加えられた応力を取り除き、600秒後の試験片のプラトー領域における変位(単位:mm)である。
【0045】
リカバリー率の測定のための全測定時間は1200秒である。上記「変位」は、「測定時点の試験片の長さ-試験片の最初の長さ」を意味する。
【0046】
本明細書において「粘着力」は、被着体であるガラス板(例:無アルカリガラス板)に対して粘着フィルムを貼り合わせ、JIS C2107:2011に基づいて測定された値である。
【0047】
本明細書において、数値範囲記載時の「X~Y」は、「X以上Y以下」(X≦、および≦Y)を意味する。
【0048】
本発明は、高屈折率である第1粘着フィルムを備え、低温でホールド性に優れた多層粘着フィルムに関するものである。
【0049】
本発明に係る多層粘着フィルムは、高屈折率である第1粘着フィルムを備える。よって、多層粘着フィルムは、高屈折率でありながらパターン化されている無機層を有するパターン化された光学素子の、パターン化された無機層表面に適用される。これにより、パターン化された光学素子から出射される光の光取出効率を高めることができ、相対的に少ない電力消費量でも高い輝度を具現することができるため、発光素子の寿命を向上させることができる。上記のパターン化された光学素子は、下記の図2で詳しく説明している。
【0050】
本発明に係る多層粘着フィルムは、高屈折率である第1粘着フィルムを備えるにもかかわらず、低温(例:-20℃)で優れたホールド性を提供できるため、折りたたみ可能な光学表示装置に適用され得る。本明細書において「優れたホールド性」とは、多層粘着フィルムを含む試験片に対して、低温でホールド性を評価した際に、クラック、気泡、および/または浮きが発生する最初のホールド回数が10万回以上であることを意味する。
【0051】
本発明者らは、屈折率を高めるために使用されていた屈折率1.5以上の無機粒子を第1粘着フィルムにおいて含まない代わりに、下記で説明する第2粘着フィルムをさらに含んでなる多層粘着フィルムを考案した。そして、多層粘着フィルムの-20℃におけるリカバリー率が80%以上、-20℃における貯蔵弾性率が0.1MPa~0.3MPa、および60℃における貯蔵弾性率が0.01MPa~0.1MPaになるようにすることにより、低温で優れたホールド性が得られることを知見した。
【0052】
以下、本発明の一実施形態に係る多層粘着フィルムを説明する。
【0053】
多層粘着フィルムは、第1粘着フィルム、および第1粘着フィルムの少なくとも一方の面に積層された第2粘着フィルムを含む。本発明に係る多層粘着フィルムは、-20℃におけるリカバリー率が80%以上であり、-20℃における貯蔵弾性率が0.1MPa~0.3MPaであり、60℃における貯蔵弾性率が0.01MPa~0.1MPaであることにより、低温でのホールド性が優れたものになり得る。
【0054】
一具体例において、本発明に係る多層粘着フィルムは、-20℃におけるリカバリー率が、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、例えば80%~95%であり得る。
【0055】
一具体例において、本発明に係る多層粘着フィルムは、-20℃における貯蔵弾性率が、例えば、0.1MPa、0.11MPa、0.12MPa、0.13MPa、0.14MPa、0.15MPa、0.16MPa、0.17MPa、0.18MPa、0.19MPa、0.2MPa、0.21MPa、0.22MPa、0.23MPa、0.24MPa、0.25MPa、0.26MPa、0.27MPa、0.28MPa、0.29MPa、0.3MPaMPa、例えば0.11MPa~0.3MPa、0.11MPa~0.25MPaであり得る。また、本発明に係る多層粘着フィルムは、60℃における貯蔵弾性率が、例えば、0.01MPa、0.02MPa、0.03MPa、0.04MPa、0.05MPa、0.06MPa、0.07MPa、0.08MPa、0.09MPa、0.1MPa、例えば0.01MPa~0.05MPa、0.01MPa~0.03MPaであり得る。なお、本明細書において、貯蔵弾性率は、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0056】
一具体例において、本発明に係る多層粘着フィルムは、60℃における貯蔵弾性率と-20℃における貯蔵弾性率との比(60℃における貯蔵弾性率:-20℃における貯蔵弾性率)が、1:2~1:10、例えば、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、好ましくは1:3~1:8、より好ましくは1:5~1:8であり得る。60℃における貯蔵弾性率と-20℃における貯蔵弾性率との比が上記範囲内であれば、広範囲の温度で粘着フィルムの粘弾性が均一になり信頼性が優れたものになり得る。
【0057】
本発明に係る多層粘着フィルムの-20℃におけるリカバリー率、ならびに-20℃および60℃における貯蔵弾性率は、それぞれ第1粘着フィルムおよび第2粘着フィルムの組成等を調節することによって具現できるが、これに制限されるものではない。多層粘着フィルムにおいて、第1粘着フィルムおよび第2粘着フィルムは、それぞれ(メタ)アクリル系粘着フィルムであり得る。この場合、第1粘着フィルムと第2粘着フィルムと間の物性の調節が容易になり得る。
【0058】
本発明に係る多層粘着フィルムは、ヘーズが1%以下、例えば、0%、0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、0.99%、1%、好ましくは0.1%~0.99%であり得る。多層粘着フィルムのヘーズが上記範囲内であれば、光の出射に影響を与えず、光学表示装置に適用することができる。
【0059】
本発明に係る多層粘着フィルムは、光学的に透明なため、光学表示装置に使用することができる。一具体例において、多層粘着フィルムは、光透過率が90%以上、例えば、90%~100%であり得る。多層粘着フィルムの光透過率が上記範囲内であれば、光の出射に影響を与えず、光学表示装置に適用することができる。
【0060】
本発明に係る多層粘着フィルムは、厚さが100μm以下、例えば、0μm超、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、好ましくは5μm~100μm、10μm~90μmであり得る。多層粘着フィルムの厚さが上記範囲内であれば、光学表示装置に使用することができる。
【0061】
多層粘着フィルムのうち第2粘着フィルムは、第1粘着フィルムに比べて屈折率が低く、ガラス転移温度も低くなり得る。多層粘着フィルムが上記のパターン化された光学素子の、パターン化された無機層表面に積層されるとき、無機層表面から第1粘着フィルム、第2粘着フィルムの順に積層されることが好ましい。よって、本発明に係る多層粘着フィルムは、高屈折率の効果を提供すると同時に、低温における優れたホールド性の効果の提供も容易になり得る。
【0062】
一具体例において、第1粘着フィルムの屈折率と第2粘着フィルムの屈折率との差は、0.5以下、例えば、0超、0.01、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、好ましくは0超0.3以下、より好ましくは0.05~0.2であり得る。第1粘着フィルムの屈折率と第2粘着フィルムの屈折率との差が上記範囲内であれば、第1粘着フィルムと第2粘着フィルムとの屈折率の差による界面におけるヘーズの上昇等の問題がなくなり得る。
【0063】
一具体例において、第1粘着フィルムのガラス転移温度と第2粘着フィルムのガラス転移温度との差は20℃以上、例えば、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、好ましくは20℃~35℃、より好ましくは20℃~25℃であり得る。第1粘着フィルムのガラス転移温度と第2粘着フィルムのガラス転移温度との差が上記範囲内であれば、多層粘着フィルムの-20℃におけるリカバリー率80%以上の確保が容易になり、低温でのホールド性に優れ得る。
【0064】
多層粘着フィルム中、第1粘着フィルムと第2粘着フィルムのそれぞれの厚さは同一であるかまたは互いに異なり得る。好ましくは、第2粘着フィルムは、第1粘着フィルムに比べて厚くなり得る。第2粘着フィルムは、第1粘着フィルムに比べてガラス転移温度が低いため、第2粘着フィルムの厚さをより厚くすることが好ましい。一具体例において、第1粘着フィルムの厚さと第2粘着フィルムの厚さとの比(第1粘着フィルムの厚さ:第2粘着フィルムの厚さ)は、1:1.05~1:5、例えば、1:1.05、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、1:5、好ましくは1:1.1~1:3であり得る。第1粘着フィルムの厚さと第2粘着フィルムの厚さとの比が上記範囲内であれば、第1粘着フィルムと第2粘着フィルムとの間の物性が適合して、本発明の効果の具現が容易になり得る。
【0065】
多層粘着フィルムは、第1粘着フィルムの少なくとも一方の面に第2粘着フィルムが積層された構造を有するものであれば、1つ以上の第1粘着フィルム、および1つ以上の第2粘着フィルムが互いに順序に関係なく積層されたものであってもよい。このとき、第1粘着フィルムおよび第2粘着フィルムがそれぞれ複数個含まれる場合、それぞれの物性は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0066】
好ましくは、多層粘着フィルムは、図1に示したように、第1粘着フィルム10および第2粘着フィルム20で構成される2層の粘着フィルムであり得る。
【0067】
以下、第1粘着フィルムおよび第2粘着フィルムについて詳しく説明する。
【0068】
(第1粘着フィルム)
第1粘着フィルムは、屈折率が1.55以上である。屈折率がこの範囲内であれば、パターン化された光学素子の光出射面に積層する際、発光素子から出射される光の光取出効率を高くすることができる。例えば、第1粘着フィルムは、屈折率が1.55~1.65、また1.58~1.65であり得る。
【0069】
第1粘着フィルムは、ガラス転移温度が-20℃~-5℃、例えば、-20℃、-19℃、-18℃、-17℃、-16℃、-15℃、-14℃、-13℃、-12℃、-11℃、-10℃、-9℃、-8℃、-7℃、-6℃、-5℃、好ましくは-20℃超-10℃以下、より好ましくは-20℃超-16℃未満であり得る。ガラス転移温度が上記範囲内であれば、低温で優れたホールド特性を有する多層粘着フィルムが容易に提供され得る。
【0070】
第1粘着フィルムは、ガラス板に対する粘着力が300gf/inch(115.8mN/mm)以上、例えば、300gf/inch(115.8mN/mm)、350gf/inch(135.1mN/mm)、400gf/inch(154.4mN/mm)、450gf/inch(173.7mN/mm)、500gf/inch(193.0mN/mm)、550gf/inch(212.3mN/mm)、600gf/inch(231.6mN/mm)、650gf/inch(250.9mN/mm)、700gf/inch(270.2mN/mm)、750gf/inch(289.5mN/mm)、800gf/inch(308.8mN/mm)、850gf/inch(328.1mN/mm)、900gf/inch(347.4mN/mm)、950gf/inch(366.7mN/mm)、1,000gf/inch(386.0mN/mm)、具体的には400gf/inch(154.4mN/mm)~1,000gf/inch(386.0mN/mm)であり得る。第1粘着フィルムの粘着力が上記範囲内であれば、パターン化された光学素子に高い信頼性で粘着され得る。なお、1gf/inch=0.386mN/mm=0.386kg/sである。
【0071】
第1粘着フィルムは、-20℃における貯蔵弾性率が1MPa以下、好ましくは0.1MPa~1MPa、より好ましくは0.1MPa~0.5MPaであり得る。-20℃における貯蔵弾性率が上記範囲内であれば、低温で優れたホールド特性を有する多層粘着フィルムが容易に提供され得る。
【0072】
第1粘着フィルムは、25℃における貯蔵弾性率が0.1MPa以下、例えば、0.01MPa、0.02MPa、0.03MPa、0.04MPa、0.05MPa、0.06MPa、0.07MPa、0.08MPa、0.09MPa、0.1MPa、好ましくは0.01MPa~0.1MPa、より好ましくは0.02MPa~0.05MPaであり得る。25℃における貯蔵弾性率が上記範囲内であれば、粘着フィルムの段差追従性および濡れ性に優れ得る。
【0073】
第1粘着フィルムは、60℃における貯蔵弾性率が0.1MPa以下、例えば、0.001MPa、0.005MPa、0.01MPa、0.02MPa、0.03MPa、0.04MPa、0.05MPa、0.06MPa、0.07MPa、0.08MPa、0.09MPa、0.1MPa、好ましくは0.005MPa~0.1MPa、例えば0.005MPa~0.05MPaであり得る。60℃における貯蔵弾性率が上記範囲内であれば、高温で優れたホールド特性を容易に提供することができる。
【0074】
第1粘着フィルムは、ヘーズが1%以下、例えば0.1%~0.99%であり得る。ヘーズが上記範囲内であれば、光出射に影響を与えず、光学表示装置に適用することができる。
【0075】
第1粘着フィルムは、光学的に透明なため、光学表示装置に使用することができる。一具体例において、第1粘着フィルムは、光透過率が90%以上、例えば、90%~100%であり得る。
【0076】
第1粘着フィルムは、厚さが0μm超30μm以下、例えば、0μm超、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、好ましくは5μm~25μmであり得る。第1粘着フィルムの厚さが上記範囲内であれば、光学表示装置に使用することができる。
【0077】
第1粘着フィルムは、感圧粘着フィルム(pressure sensitive adhesive)であり得る。例えば、第1粘着フィルムは、下記で説明する第1粘着フィルム用組成物を離型フィルムの少なくとも一方の面に、所定の厚さで塗布して形成された塗膜を、熱硬化および光硬化の1種以上によって硬化させて製造することができる。硬化後には、熟成工程をさらに行うこともできる。熱硬化は、塗膜を80℃~150℃の温度で、3分~10分熱処理する工程を含むことができる。光硬化は、UV照射用ランプ、例えば金属ハライドランプを使用して100mW/cm~2,000mW/cmおよび200mJ/cm~1,000mJ/cmのUVを照射する工程を含むことができる。熟成は、35℃~50℃の温度で、1時間~48時間放置する工程を含むことができる。
【0078】
一具体例において、第1粘着フィルムは、芳香族基含有(メタ)アクリル系重合物、硬化剤、および光開始剤を含む第1粘着フィルム用組成物の硬化物を含むことができる。
【0079】
以下、第1粘着フィルム用組成物について説明する。
【0080】
第1粘着フィルム用組成物は、芳香族基含有(メタ)アクリル系重合物、硬化剤、および光開始剤を含む。第1粘着フィルム用組成物は、屈折率1.5以上の無機粒子(例えば、ジルコニアまたはチタニア等)および屈折率1.5以上の有機粒子を含有しない。代わりに、芳香族基含有(メタ)アクリル系重合物によって、第1粘着フィルムの屈折率1.55以上を達成する。
【0081】
芳香族基含有(メタ)アクリル系重合物は、第1粘着フィルムの屈折率を高めて、屈折率1.55以上に容易に到達するようにすることができる。一具体例において、芳香族基含有(メタ)アクリル系重合物は、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体の少なくとも1種を含有する単量体混合物の重合体かまたは共重合体を含むことができる。
【0082】
単量体混合物は、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体および水酸基(-OH)を有する(メタ)アクリル系単量体を含むことができる。
【0083】
芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、第1粘着フィルムの屈折率を高めることができる。一具体例において、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、ホモポリマーの屈折率が1.5以上、例えば、1.5、1.55、1.6、1.65、1.7、好ましくは1.55~1.7であり得る。芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体のホモポリマーの屈折率が上記範囲内であれば、本発明の屈折率の範囲に容易に到達することができる。
【0084】
芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、ホモポリマーのガラス転移温度が-20℃~60℃、例えば、-20℃、-15℃、-10℃、-5℃、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、好ましくは-20℃~55℃,-10℃~45℃であり得る。ホモポリマーのガラス転移温度が上記範囲内であれば、第1粘着フィルムが固くなり過ぎないため、パターン化された光学素子にうまく貼り合わせることができる。なお、「ホモポリマーのガラス転移温度」は、製品のカタログを参照したり、または当業者に知られている通常の方法で測定したりすることができる。
【0085】
芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、芳香環が1個でもよいが、芳香環を2個以上有することが好ましい。芳香環が2個以上の(メタ)アクリル系単量体は、芳香環が1個の(メタ)アクリル系単量体に比べて、同一の含有量で使用しても、第1粘着フィルムの屈折率を容易に高めることができる。一具体例において、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、芳香環を2個~5個有することができる。芳香族基が2個以上の(メタ)アクリル系単量体は、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体の全質量に対して、80質量%以上、例えば、80質量%、81質量%、82質量%、83質量%、84質量%、85質量%、86質量%、87質量%、88質量%、89質量%、90質量%、91質量%、92質量%、93質量%、94質量%、95質量%、96質量%、97質量%、98質量%、99質量%、100質量%、好ましくは95質量%~100質量%、より好ましくは100質量%で含まれ得る。芳香環が2個以上の(メタ)アクリル系単量体の含有量が上記範囲内であれば、本発明の効果の具現が容易になり得る。
【0086】
なお、上記の芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体には、2個以上の芳香族単環が結合および/または縮合した多環式基を有する(メタ)アクリル系単量体も含まれる。
【0087】
芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する、1官能の(メタ)アクリレートであり得る。これを用いることにより、重合物の製造時に、単量体が重合され過ぎることによって第1粘着フィルムが固くなり、パターン化された光学素子に対する貼り合わせ不良が発生する問題を最小化することができる。芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物中に少なくとも1種含有され得る。
【0088】
一具体例において、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、下記化学式1で表される化合物および下記化学式2で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる:
【0089】
【化3】
【0090】
上記化学式1中、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、単結合、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数1~10のモノアルキレンオキシ基、または炭素数2~10のポリアルキレンオキシ基であり、
は、単結合、酸素原子(O)、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数1~10のモノアルキレンオキシ基、または炭素数2~10のポリアルキレンオキシ基であり、
Arは、置換または非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、
Arは、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基である:
【0091】
【化4】
【0092】
上記化学式2中、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、単結合、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数1~10のモノアルキレンオキシ基、または炭素数2~10のポリアルキレンオキシ基であり、
Arは、置換または非置換の炭素数10~30の芳香族縮合環基である。
【0093】
上記化学式1および化学式2中、アルキレンオキシ基は、「-R-O-」(この際、Rは炭素数1~10のアルキレン基である)を意味する。
【0094】
なお、本明細書において、「置換または非置換の」における「置換の」とは、該当の官能基中の1個以上の水素原子が、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアリールアルキル基、または炭素数1~5のアルキル基等で置換されたことを意味する。
【0095】
例えば、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、4-ビフェニリルメチル(メタ)アクリレート等を含むビフェニリルメチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチルアクリレート等を含むフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-ビフェニリル(メタ)アクリレート等を含むビフェニリル(メタ)アクリレート、およびナフチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種、好ましくは2種以上を含むことができる。好ましくは、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニリルメチル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェニリル(メタ)アクリレート、およびナフチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0096】
芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、上記単量体混合物の全質量に対して70質量%~95質量%、例えば、70質量%、71質量%、72質量%、73質量%、74質量%、75質量%、76質量%、77質量%、78質量%、79質量%、80質量%、81質量%、82質量%、83質量%、84質量%、85質量%、86質量%、87質量%、88質量%、89質量%、90質量%、91質量%、92質量%、93質量%、94質量%、95質量%、好ましくは70質量%~90質量%の含有量で含まれ得る。芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体の含有量が上記範囲内であれば、第1粘着フィルムの高屈折率を確保することができ、第1粘着フィルムの粘着力が低くなるという問題がほとんどなくなり得る。
【0097】
水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体のホモポリマーのガラス転移温度は、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体のホモポリマーのガラス転移温度に比べて低くなり得る。これにより、第1粘着フィルムの粘着力を高め、パターン化された光学素子にうまく貼合するようにし、粘着力も発揮されるようにすることができる。例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体は、ホモポリマーのガラス転移温度が-10℃以下、例えば、-50℃、-45℃、-40℃、-35℃、-30℃、-25℃、-20℃、-15℃、-10℃、具体的には-50℃~-10℃であり得る。
【0098】
一具体例において、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体は、エステル部位に1つ以上の水酸基を有する炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリレートであり得る。具体的には、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、および1-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。当該単量体は、単量体混合物中に、1種単独でまたは2種以上を混合して含まれ得る。
【0099】
水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物の全質量に対して、5質量%~30質量%、例えば、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、11質量%、12質量%、13質量%、14質量%、15質量%、16質量%、17質量%、18質量%、19質量%、20質量%、21質量%、22質量%、23質量%、24質量%、25質量%、26質量%、27質量%、28質量%、29質量%、30質量%、好ましくは10質量%~25質量%、より好ましくは10質量%~20質量%の含有量で含まれ得る。水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量が上記範囲内であれば、本発明の効果を容易に達成できる。
【0100】
一具体例において、芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体および水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体の合計の含有量は、単量体混合物の全質量に対して、85質量%以上、例えば、85質量%、86質量%、87質量%、88質量%、89質量%、90質量%、91質量%、92質量%、93質量%、94質量%、95質量%、96質量%、97質量%、98質量%、99質量%、100質量%,好ましくは85質量%~100質量%であり得る。芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体および水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体の合計の含有量が上記範囲内であれば、屈折率および粘着力の確保が容易になり得る。
【0101】
単量体混合物は、アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体をさらに含むことができる。
【0102】
アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体は、非置換形態として、エステル部位に直鎖状または分枝鎖状の炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリレートであり得る。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、およびドデシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。
【0103】
アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体は、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体単独の含有量、または芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体および水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体の合計の含有量に比べて低い含有量で単量体混合物に含むことができる。これにより、第1粘着フィルムの屈折率が低くなることを防止することができる。
【0104】
アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量は、単量体混合物の全質量に対して、0質量%~40質量%、例えば、0質量%、0質量%超、1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、11質量%、12質量%、13質量%、14質量%、15質量%、16質量%、17質量%、18質量%、19質量%、20質量%、21質量%、22質量%、23質量%、24質量%、25質量%、26質量%、27質量%、28質量%、29質量%、30質量%、31質量%、32質量%、33質量%、34質量%、35質量%、36質量%、37質量%、38質量%、39質量%、40質量%、具体的には0質量%~25質量%、0質量%超25質量%以下、5質量%~25質量%、または5質量%~20質量%であり得る。アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量が上記範囲であれば、第1粘着フィルムの屈折率が低くなることを防止することができる。
【0105】
一具体例において、芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体、およびアルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体の合計の含有量は、単量体混合物の全質量に対して、85質量%以上、例えば、85質量%、86質量%、87質量%、88質量%、89質量%、90質量%、91質量%、92質量%、93質量%、94質量%、95質量%、96質量%、97質量%、98質量%、99質量%、100質量%、具体的には85質量%~100質量%であり得る。当該合計の含有量が上記範囲内であれば、第1粘着フィルムの屈折率および粘着力の確保が容易になり得る。
【0106】
単量体混合物は、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体およびアルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体とは異なる、共単量体をさらに含むことができる。
【0107】
共単量体は、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体およびアルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体の1種以上と共重合が可能であるが、芳香族基または水酸基を有していないか、あるいは芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体、およびアルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体に比べて、ホモポリマーのガラス転移温度がより低い単量体であり得る。共単量体は、第1粘着フィルムのガラス転移温度を下げることにより、粘着フィルムのホールド性の改善の助けになり得る。
【0108】
共単量体は、ホモポリマーのガラス転移温度が-100℃~50℃、例えば、-100℃、-95℃、-90℃、-85℃、-80℃、-75℃、-70℃、-65℃、-60℃、-55℃、-50℃、-45℃、-40℃、-35℃、-30℃、-25℃、-20℃、-15℃、-10℃、-5℃、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、具体的には-90℃~0℃、あるいは-90℃~-40℃であり得る。共単量体のホモポリマーのガラス転移温度が上記範囲内であれば、広い温度範囲で優れた粘着力と信頼性とを有する第1粘着フィルムを得ることができる。
【0109】
一具体例において、共単量体は、アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル系単量体を含むことができる。アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル系単量体は、ホモポリマーのガラス転移温度が-90℃~-55℃、例えば、-90℃、-85℃、-80℃、-75℃、-70℃、-65℃、-60℃、-55℃、好ましくは-90℃~-60℃、より好ましくは-75℃~-60℃であり得る。アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル系単量体のホモポリマーのガラス転移温度が上記範囲内であれば、第1粘着フィルムの弾性率を下げ、多層粘着フィルムのホールド性をより良くすることができる。アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル系単量体は、エチレンオキサイド基(-CHCHO-)またはトリメチレンオキサイド基(-CHCHCHO-)を有することが好ましく、エチレンオキサイド基を有する1官能の(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0110】
アルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル系単量体は、例えばエチレングリコールを1モル以上、例えば2モル~20モル含有するエーテル系(メタ)アクリレートであり得る。具体的には、エチレングリコール基含有(メタ)アクリレートは、エチレングリコールを6モル~13モル含有するポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールを2モル~10モル含有するポリ(エチレングリコール)エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、およびエチレングリコールを2モル~20モル含有するポリ(エチレングリコール)オクチルエーテル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。好ましくは、アルキレングリコール基含有(メタ)アクリレートは、ジエチレングリコール2-エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール2-エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、およびジエチレングリコールオクチルエーテル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。
【0111】
共単量体は、単量体混合物の全質量に対して、0質量%~45質量%、例えば、0質量%、0質量%超、1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、11質量%、12質量%、13質量%、14質量%、15質量%、16質量%、17質量%、18質量%、19質量%、20質量%、21質量%、22質量%、23質量%、24質量%、25質量%、26質量%、27質量%、28質量%、29質量%、30質量%、31質量%、32質量%、33質量%、34質量%、35質量%、36質量%、37質量%、38質量%、39質量%、40質量%、41質量%、42質量%、43質量%、44質量%、45質量%、好ましくは0質量%~25質量%、0質量%超25質量%以下、0.5質量%~20質量%、5質量%~20質量%の含有量で含まれ得る。共単量体の含有量が上記範囲内であれば、多層粘着フィルムのホールド性をより良くすることができる。
【0112】
一具体例において、芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体、およびアルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル系単量体の合計の含有量は、単量体混合物の全質量に対して、85質量%以上、例えば、85質量%、86質量%、87質量%、88質量%、89質量%、90質量%、91質量%、92質量%、93質量%、94質量%、95質量%、96質量%、97質量%、98質量%、99質量%、100質量%、具体的には85質量%~100質量%であり得る。芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体、およびアルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル系単量体の合計の含有量が上記範囲内であれば、本発明の屈折率および粘着力の確保が容易になり得る。
【0113】
一具体例において、芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体、アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体、およびアルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル系単量体の合計の含有量は、単量体混合物の全質量に対して、85質量%以上、例えば、85質量%、86質量%、87質量%、88質量%、89質量%、90質量%、91質量%、92質量%、93質量%、94質量%、95質量%、96質量%、97質量%、98質量%、99質量%、100質量%、具体的には85質量%~100質量%であり得る。芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体、アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体、およびアルキレングリコール基を有する(メタ)アクリル系単量体の合計の含有量が上記範囲内であれば、本発明の屈折率および粘着力の確保が容易になり得る。
【0114】
芳香族基含有(メタ)アクリル系重合物、好ましくは芳香族基含有(メタ)アクリル系共重合体は、重量平均分子量(Mw)が通常10万g/mol~500万g/mol、例えば10万g/mol~300万g/mol、10万g/mol~100万g/molであり得る。重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であれば、第1粘着フィルムの耐久信頼性の確保が容易になり得る。なお、「重量平均分子量」は、当業者に知られている通常の方法で測定できる。例えば、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーを用い、標準試料ポリスチレンを使用して測定された値である。
【0115】
芳香族基含有(メタ)アクリル系重合物は、単量体混合物に開始剤を添加した後、重合して製造することができる。開始剤は、熱開始剤を含み得る。熱開始剤は、当業者に知られている通常の種類の化合物を使用することができる。例えば、開始剤は、熱開始剤として、アゾ系重合開始剤および/または過酸化ベンゾイルもしくは過酸化アセチルのような過酸化物等を含む通常のものを使用することができる。開始剤は、単量体混合物100質量部に対して、通常0.01質量部~0.5質量部、好ましくは0.01質量部~0.1質量部、より好ましくは0.03質量部~0.08質量部の含有量で含まれ得る。開始剤の含有量が上記範囲内であれば、重合物の製造が容易になり得る。重合は、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の当業者に知られている通常の重合方法を含み得る。重合温度は例えば60℃~80℃であり、重合時間は例えば4時間~8時間であり得る。
【0116】
硬化剤は、芳香族基を有する(メタ)アクリル系重合物を熱硬化させて、第1粘着フィルムの粘着力をより高める効果を有し得る。
【0117】
硬化剤は、熱硬化剤として、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、金属キレート系硬化剤、およびアジリジン系硬化剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができ、好ましくはイソシアネート系硬化剤を使用することができる。
【0118】
イソシアネート系硬化剤は、ヘキサメチレンジイソシアネート;2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート等を含むトルエンジイソシアネート;4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート;1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート等を含むキシリレンジイソシアネート;水素化トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビスイソシアネートメチルシクロヘキサン,テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン/トルエンジイソシアネートの3量体付加物を含むトリメチロールプロパントルエンジイソシアネートアダクト、トリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビストリイソシアネート等のイソシアネート系硬化剤のアダクト等を含むことができる。
【0119】
硬化剤の含有量、例えば、イソシアネート系硬化剤の含有量は、芳香族基を有する(メタ)アクリル系重合物、例えば、芳香族基を有する(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.01質量部~5質量部、例えば、0.01質量部、0.02質量部、0.03質量部、0.04質量部、0.05質量部、0.06質量部、0.07質量部、0.08質量部、0.09質量部、0.1質量部、0.11質量部、0.12質量部、0.13質量部、0.14質量部、0.15質量部、0.16質量部、0.17質量部、0.18質量部、0.19質量部、0.2質量部、0.25質量部、0.3質量部、0.35質量部、0.4質量部、0.45質量部、0.5質量部、具体的には0.05質量部~0.5質量部、または0.05質量部~0.2質量部で含まれ得る。イソシアネート系硬化剤の含有量が上記範囲内であれば、第1粘着フィルムの粘着力が確保され得る。
【0120】
光開始剤は、第1粘着フィルム用組成物の熱硬化後に形成された塗膜を光硬化させることができる。光開始剤としては、光ラジカル開始剤を使用できる。
【0121】
光ラジカル開始剤は、光硬化反応を行える通常の化合物を制限なく含むことができる。例えば、光ラジカル開始剤は、トリアジン系、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、リン系、ヒドロキシケトン系、オキシム系、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0122】
光開始剤の含有量は、芳香族基を有する(メタ)アクリル系重合物、例えば、芳香族基を有する(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01質量部~5質量部、例えば、0.01質量部、0.02質量部、0.03質量部、0.04質量部、0.05質量部、0.06質量部、0.07質量部、0.08質量部、0.09質量部、0.1質量部、0.15質量部、0.2質量部、0.25質量部、0.3質量部、0.35質量部、0.4質量部、0.45質量部、0.5質量部、0.55質量部、0.6質量部、0.65質量部、0.7質量部、0.75質量部、0.8質量部、0.85質量部、0.9質量部、0.95質量部、1質量部、2質量部、3質量部、4質量部、5質量部、好ましくは0.01質量部~0.1質量部であり得る。より好ましくは、光開始剤の含有量は、0.01質量部~0.02質量部であり得る。光開始剤の含有量が上記範囲内であれば、第1粘着フィルムの-20℃における貯蔵弾性率の範囲に容易に到達して、多層粘着フィルムの-20℃におけるリカバリー率に容易に到達することができる。
【0123】
第1粘着フィルム用組成物は、多官能光硬化性化合物をさらに含むことができる。
【0124】
多官能光硬化性化合物は、光硬化性多官能(メタ)アクリレートのうち少なくとも1種を含むことができる。例えば、多官能光硬化性化合物は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能性アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能型アクリレート;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレートまたはペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型アクリレート;ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型アクリレート;およびジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能型アクリレート等を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
【0125】
多官能光硬化性化合物は、芳香族基を有する(メタ)アクリル系重合物100質量部に対して、0質量部~15質量部、例えば、0質量部、0質量超、1質量部、2質量部、3質量部、4質量部、5質量部、6質量部、7質量部、8質量部、9質量部、10質量部、11質量部、12質量部、13質量部、14質量部、15質量部、具体的には0.1質量部~15質量部、1質量部~15質量部の含有量で含むことができる。多官能光硬化性化合物の含有量が上記範囲内であれば、粘着力を容易に達成することができる。
【0126】
第1粘着フィルム用組成物は、シランカップリング剤をさらに含むことができる。シランカップリング剤は、第1粘着フィルムの粘着力を高め、信頼性を高めることができる。シランカップリング剤は、当業者に知られている通常の種類を採用することができ、例えば、アセチルアセトネート系、アセトアセテート系、エポキシ系シランカップリング剤の1種以上を含むことができる。シランカップリング剤は、芳香族基を有する(メタ)アクリル系重合物100質量部に対して、0.1質量部~1質量部、具体的には0.1質量部~0.5質量部の含有量で含まれ得る。シランカップリング剤の含有量が上記範囲内であれば、第1粘着フィルムの粘着力がより改善され得る。
【0127】
第1粘着フィルム用組成物は、硬化触媒、添加剤等をさらに含むことができる。
【0128】
硬化触媒は、例えば、金属触媒として、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート等のスズ系触媒、トリス(アセチルアセトネート)鉄、トリス(ヘキサン-2,4-ジオネート)鉄、トリス(ヘプタン-2,4-ジオネート)鉄等の鉄系触媒等を含むことができる。硬化触媒は、重合物100質量部に対して、0.0001質量部~0.01質量部、具体的には0.0003質量部~0.01質量部の含有量で含まれ得る。硬化触媒の含有量が上記範囲内であれば、本発明の効果の具現がより容易になり得る。
【0129】
添加剤は、当業者に知られている通常の添加剤として、例えば、レベリング剤、帯電防止剤、粒子、充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、界面活性剤等を含むことができる。添加剤は、芳香族基を有する(メタ)アクリル系重合物100質量部に対して、0.001質量部~5質量部、具体的には0.01質量部~1質量部の含有量で含まれ得る。添加剤の含有量が上記範囲内であれば、第1粘着フィルムの物性に影響を与えずに、添加剤の効果を得ることができる。
【0130】
第1粘着フィルム用組成物は、無溶剤型であり得る。または、第1粘着フィルム用組成物は、溶剤をさらに含むことができる。第1粘着フィルム用組成物が溶剤を含む場合、粘着フィルムを薄型にすることができ、塗布性を良くすることができる。溶剤は、当業者に知られている通常の溶剤を使用することができる。例えば、溶剤は、メチルエチルケトン、酢酸エチル、およびトルエンのうちの1種以上を含むことができる。
【0131】
(第2粘着フィルム)
第2粘着フィルムは、第1粘着フィルムの一方の面に積層されて、多層粘着フィルムが低温で優れたホールド性を有する助けになり得る。第2粘着フィルムは、多層粘着フィルムが、本発明で規定するリカバリー率および貯蔵弾性率の範囲に到達することを助け得る。
【0132】
第2粘着フィルムは、屈折率が1.5以下、例えば、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、または1.5であり得る。第2粘着フィルムの屈折率が上記範囲内であれば、上記の屈折率の差に容易に到達し得る。
【0133】
第2粘着フィルムは、ガラス転移温度が-20℃未満、例えば、-50℃、-49℃、-48℃、-47℃、-46℃、-45℃、-44℃、-43℃、-42℃、-41℃、-40℃、-39℃、-38℃、-37℃、-36℃、-35℃、-34℃、-33℃、-32℃、-31℃、-30℃、-29℃、-28℃、-27℃、-26℃、-25℃、-24℃、-23℃、-22℃、-21℃、好ましくは-50℃~-30℃、より好ましくは-50℃~-37℃であり得る。第2粘着フィルムのガラス転移温度が上記範囲であれば、上記のガラス転移温度の差に容易に到達し、第1粘着フィルムに容易に貼付することができ、ホールドされても剥離がほとんど起きなくなり得る。
【0134】
第2粘着フィルムは、-20℃における貯蔵弾性率が0.5MPa以下、例えば、0.001MPa、0.005MPa、0.01MPa、0.02MPa、0.03MPa、0.04MPa、0.05MPa、0.06MPa、0.07MPa、0.08MPa、0.09MPa、0.1MPa、0.11MPa、0.12MPa、0.13MPa、0.14MPa、0.15MPa、0.16MPa、0.17MPa、0.18MPa、0.19MPa、0.2MPa、0.3MPa、0.4MPa、0.5MPa、好ましくは0.001MPa~0.5MPa、より好ましくは0.005MPa~0.2MPaであり得る。-20℃における貯蔵弾性率が上記範囲内であれば、低温で優れたホールド性を有する第2粘着フィルムを容易に得ることができる。
【0135】
第2粘着フィルムは、25℃における貯蔵弾性率が0.1MPa以下、例えば、0.01MPa、0.02MPa、0.03MPa、0.04MPa、0.05MPa、0.06MPa、0.07MPa、0.08MPa、0.09MPa、0.1MPa、好ましくは0.01MPa~0.1MPa,0.02MPa~0.08MPaであり得る。第2粘着フィルムの25℃における貯蔵弾性率が上記範囲内であれば、粘着フィルムの信頼性を高めることができる。
【0136】
第2粘着フィルムは、60℃における貯蔵弾性率が0.1MPa以下、例えば、0.001MPa、0.005MPa、0.01MPa、0.02MPa、0.03MPa、0.04MPa、0.05MPa、0.06MPa、0.07MPa、0.08MPa、0.09MPa、0.1MPa、好ましくは0.005MPa~0.1MPa,より好ましくは0.005MPa~0.05MPaであり得る。第2粘着フィルムの60℃における貯蔵弾性率が上記範囲内であれば、高温で優れたホールド性を容易に提供することができる。
【0137】
第2粘着フィルムは、ヘーズが1%以下、例えば0.1%~0.99%であり得る。ヘーズが上記範囲内であれば、光の出射に影響を与えず、光学表示装置に適用することができる。
【0138】
第2粘着フィルムは、光学的に透明で光学表示装置に使用することができる。一具体例において、第2粘着フィルムは、光透過率が90%以上、例えば90%~100%であり得る。
【0139】
第2粘着フィルムは、厚さが0μm超100μm以下、例えば10μm~50μmであり得る。このような範囲内であれば、光学表示装置に使用することができる。
【0140】
第2粘着フィルムは、感圧粘着フィルム(pressure sensitive adhesive)であり得る。例えば、第2粘着フィルムは、下記で説明する第2粘着フィルム用組成物を、離型フィルムの一方の面に所定の厚さで塗布して形成された塗膜を熱硬化させて製造できる。熱硬化後には、熟成の工程がさらに行われてもよい。
【0141】
一具体例において、第2粘着フィルムは、(メタ)アクリル系共重合体および硬化剤を含む第2粘着フィルム用組成物の硬化物を含むことができる。
【0142】
以下、第2粘着フィルム用組成物について説明する。
【0143】
第2粘着フィルム用組成物は、(メタ)アクリル系共重合体および硬化剤を含む。
【0144】
(メタ)アクリル系共重合体は、第2粘着フィルムのマトリックスを形成し、粘着力を提供し、第1粘着フィルムと貼り合わせた後、ホールドさせても剥離が起きないようにすることができる。
【0145】
一具体例において、(メタ)アクリル系共重合体は、芳香族基を有しない非芳香族系(メタ)アクリル系共重合体であり得る。
【0146】
(メタ)アクリル系共重合体は、アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体および架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物共重合体を含むことができる。
【0147】
アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体は、上記で説明したアルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体を使用することができる。
【0148】
架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体は、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体およびカルボン酸基を有する(メタ)アクリル系単量体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。好ましくは、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体として水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体を含み、これにより、硬化剤との反応によって粘着力を高めることができる。
【0149】
水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体は、上記で説明した水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体を使用することができる。
【0150】
単量体混合物の全質量に対して、アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量は、例えば、60質量%~95質量%、例えば、60質量%、61質量%、62質量%、63質量%、64質量%、65質量%、66質量%、67質量%、68質量%、69質量%、70質量%、71質量%、72質量%、73質量%、74質量%、75質量%、76質量%、77質量%、78質量%、79質量%、80質量%、81質量%、82質量%、83質量%、84質量%、85質量%、86質量%、87質量%、88質量%、89質量%、90質量%、91質量%、92質量%、93質量%、94質量%、95質量%、好ましくは80質量%~95質量%であり得る。単量体混合物の全質量に対して、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量は、例えば、5質量%~40質量%、例えば、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、11質量%、12質量%、13質量%、14質量%、15質量%、16質量%、17質量%、18質量%、19質量%、20質量%、21質量%、22質量%、23質量%、24質量%、25質量%、26質量%、27質量%、28質量%、29質量%、30質量%、31質量%、32質量%、33質量%、34質量%、35質量%、36質量%、37質量%、38質量%、39質量%、40質量%、好ましくは5質量%~20質量%であり得る。アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量および架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量が上記範囲内であれば、本発明の効果の具現が容易になり得る。
【0151】
アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体および架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体の合計の含有量は、単量体混合物の全質量に対して、90質量%以上、例えば、90質量%、91質量%、92質量%、93質量%、94質量%、95質量%、96質量%、97質量%、98質量%、99質量%、100質量%、好ましくは95質量%~100質量%、より好ましくは100質量%であり得る。アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体および架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体の合計の含有量が上記範囲内であれば、本発明の効果の具現が容易になり得る。
【0152】
(メタ)アクリル系共重合体は、当業者に知られている通常の方法を用いて製造することができる。
【0153】
硬化剤は、第1粘着フィルム用組成物の項で説明した硬化剤を制限なく使用できる。例えば、硬化剤はイソシアネート系硬化剤を使用することができる。
【0154】
硬化剤の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01質量部~0.1質量部、例えば、0.01質量部、0.02質量部、0.03質量部、0.04質量部、0.05質量部、0.06質量部、0.07質量部、0.08質量部、0.09質量部、0.1質量部、好ましくは0.02質量部~0.06質量部であり得る。硬化剤の含有量が上記範囲内であれば、多層粘着フィルムのリカバリー率および貯蔵弾性率を容易に達成することができる。
【0155】
第2粘着フィルム用組成物は、シランカップリング剤をさらに含んでもよい。シランカップリング剤は、上記で説明したシランカップリング剤を制限なく使用することができる。
【0156】
第2粘着フィルムは、第2粘着フィルム用組成物を使用して当業者にとって通常の方法で製造することができる。
【0157】
本発明の光学部材は、本発明の多層粘着フィルムを含む。
【0158】
以下、本発明の一実施形態に係る光学部材を説明する。
【0159】
光学部材は、多層粘着フィルム、および多層粘着フィルムの少なくとも一方の面に積層された光学素子を含むことができる。光学素子は、光学表示装置で使用できる任意の光学素子であり得る。例えば、光学素子は、発光素子含有パネル、または偏光子、偏光板、タッチセンサー、ウィンドウフィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、ガラス飛散防止フィルム、表面保護フィルム、透明導電性フィルム等を備えるフィルム含有光学素子等であり得る。
【0160】
一具体例において、光学部材は、第1粘着フィルム、第1粘着フィルムの下部面に積層された発光素子含有パネル、第1粘着フィルムに直接接するように形成された第2粘着フィルム、および第2粘着フィルムの上部面に積層されたフィルム含有光学素子を備えることができる。
【0161】
以下、本発明の一実施形態に係る光学表示装置を、図2を参照して説明する。
【0162】
図2を参照すると、光学表示装置は、有機発光素子100、有機発光素子100の上部面に積層された、パターン化された光学素子および高屈折率有機層400を含み、パターン化された光学素子は、有機発光素子100から順に積層された無機層200および低屈折率有機層300を含み、高屈折率有機層400は、本発明の多層粘着フィルムを含み得る。
【0163】
無機層200は、窒化ケイ素(シリコンナイトライド)、酸窒化ケイ素(シリコンオキシナイトライド)、酸化ケイ素(シリコンオキサイド)、酸化チタン(チタニウムオキサイド)、酸化アルミニウム(アルミニウムオキサイド)等の無機粒子で形成されて高屈折率を示すことができる。
【0164】
低屈折率有機層300は、無機層200の上に配置され、所定の断面形状を有する突出したパターンになり得る。このようなパターン化された光学素子は、工程安定性を確保することができる。低屈折率有機層300は、所定の断面を有するパターン複数個が互いに離隔されているものであり、パターン間の間隔は10μm~1000μmであり、パターンの高さ、つまり段差の高さは1μm~100μmであるパターン面を備え得る。低屈折率有機層300は、特に制限されないが、アクリル系物質で形成され得る。
【実施例0165】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて、本発明の構成および作用をより詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示するものであり、如何なる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈してはならない。
【0166】
下記の実施例および比較例で使用された成分は、次の通りである:
(1)硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤(CK-164、NCI社製)
(2)光開始剤:Omnirad(登録商標)127(IGM Resins B.V.社製)
(3)添加剤:レベリング剤としてBYK(登録商標)-SILCLEAN3700(水酸基含有シリコン変性体、BYK社製)
(4)ジルコニア粒子含有分散液:ZP-158(株式会社日本触媒製、ジルコニアの平均粒径(D50):20nm、ジルコニアの屈折率:1.75)。
【0167】
(実施例1)
(1)第1粘着フィルム用組成物の製造
窒素ガスが還流し、温度調節を容易に行えるように冷却装置が設けられた1Lの反応器を準備した。この反応器に、4-ビフェニリルメチルアクリレート(BPMA、ホモポリマーのTg:6℃)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)、およびジエチレングリコール2-エチルヘキシルエーテルアクリレート(EHDG、ホモポリマーのTg:-72℃)を下記表1における含有量(単位:質量部)で含む単量体混合物30質量部を投入し、酢酸エチル(またはメチルエチルケトンとトルエン)50質量部を添加した。単量体混合物から酸素を取り除くために、窒素ガスを30分間投入して、反応器を窒素置換させた後、反応器の内部温度を70℃に保った。
【0168】
単量体混合物を均一に攪拌した後、熱開始剤であるジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(V-601、富士フイルム和光純薬株式会社製)0.06質量部を投入し、4時間攪拌した。その後、反応器内の温度を80℃まで上げて、上記の熱開始剤 0.05質量部をさらに添加した。80℃で2時間攪拌した後、(メタ)アクリル系共重合体を含む溶液を製造し、酢酸エチルを添加して、固形分35質量%の(メタ)アクリル系共重合体含有溶液を製造した。
【0169】
固形分基準で、上記で製造した(メタ)アクリル系共重合体 100質量部に対して、硬化剤、光開始剤、およびレベリング剤を下記表1の含有量で添加し、配合固形分が30質量%となるようにメチルエチルケトンを添加して、20分間攪拌した。その後、30分間脱気処理して、第1粘着フィルム用組成物を製造した。
【0170】
(2)第2粘着フィルム用組成物の製造
窒素ガスが還流し、温度調節を容易に行えるように冷却装置が設けられた1Lの反応器を準備した。この反応器に、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)および4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)を含む単量体混合物 30質量部を投入し、酢酸エチル(またはメチルエチルケトンとトルエン)50質量部を添加した。単量体混合物から酸素を取り除くために窒素ガスを30分間投入して反応器を窒素置換した後、反応器の内部温度を70℃に保った。単量体混合物を均一に攪拌した後、熱開始剤であるジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(V-601、富士フイルム和光純薬株式会社製)0.06質量部を投入し、4時間攪拌した。その後、反応器内の温度を80℃まで上げて、上記の熱開始剤 0.05質量部をさらに添加した。80℃で2時間攪拌した後、(メタ)アクリル系共重合体を含む溶液を製造し、酢酸エチルを添加して、固形分35質量%の(メタ)アクリル系共重合体含有溶液を製造した。
【0171】
固形分基準で、上記で製造した(メタ)アクリル系共重合体 100質量部に対して、硬化剤を下記表1に示すの含有量で添加した。その後、配合固形分 30質量%になるようにメチルエチルケトンを添加して20分間攪拌し、30分間脱気処理して、第2粘着フィルム用組成物を製造した。
【0172】
(3)多層粘着フィルムの製造
製造された第1粘着フィルム用組成物を第1離型フィルム(PETフィルム、RPK501、東レ株式会社製)に所定の厚さで塗布し、120℃で4分間乾燥させて、硬化剤で1次硬化させた。その後、第2離型フィルム(PETフィルム、RPK201、東レ株式会社製)を積層し、酸素を遮断し、金属ハライドランプで400mW/cmおよび200mJ/cmのUVを照射して開始剤で2次硬化させることにより、第1離型フィルム-第1粘着フィルム-第2離型フィルムが順に積層された第1粘着シートを製造した。
【0173】
製造された第2粘着フィルム用組成物を、第1離型フィルム(PETフィルム、RPK501、東レ株式会社製)に所定の厚さで塗布し、120℃で4分間乾燥させた後、35℃の温度および45%RHの相対湿度で4日間熟成させて、第1離型フィルム-第2粘着フィルムが積層された第2粘着シートを製造した。
【0174】
第1粘着シート中の第2離型フィルムを剥離し、第2粘着シート中の第2粘着フィルムを剥離し、第1粘着フィルムと第2粘着フィルムを貼り合わせて、第1離型フィルム-第1粘着フィルム-第2粘着フィルム-第1離型フィルムが順に積層された粘着シートを製造した。
【0175】
(実施例2~実施例4)
第1粘着フィルム用組成物および第2粘着フィルム用組成物の各成分の含有量を下記表1のように変更したことを除いては、実施例1と同様の方法によって、多層粘着フィルムを製造した。なお、下記表1において、「-」は、該当成分が含まれないことを意味する。また、下記表1において、「2-EHA」は、2-エチルヘキシルアクリレートを意味する。
【0176】
(比較例1)
窒素ガスが還流し、温度調節を容易に行えるように冷却装置が設けられた1Lの反応器を準備した。この反応器に、4-ビフェニリルメチルアクリレート(BPMA、ホモポリマーのTg:6℃)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)、およびジエチレングリコール2-エチルヘキシルエーテルアクリレート(EHDG、ホモポリマーのTg:-72℃)を、下記表1に示す含有量(単位:質量部)で含む単量体混合物 30質量部を投入し、実施例1と同様の方法により、(メタ)アクリル系共重合体を製造した。
【0177】
固形分基準で、上記で製造した(メタ)アクリル系共重合体 100質量部に対して、硬化剤、開始剤、レベリング剤、およびジルコニアを下記表1に示す含有量で混合した後、固形分が30質量%になるようにメチルエチルケトンを添加して20分間攪拌し、30分間脱気処理して第1粘着フィルム用組成物を製造した。
【0178】
実施例1と同様の方法により、第1粘着シートを製造した。
【0179】
(比較例2~比較例4)
第1粘着フィルム用組成物および第2粘着フィルム用組成物中の各成分の含有量を下記表1のように変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で、多層粘着フィルムを製造した。
【0180】
(比較例5)
実施例1と同様の方法で第1粘着シートを製造して、単層の粘着フィルムを得た。
【0181】
実施例および比較例で製造された第1粘着フィルム、第2粘着フィルム、および多層粘着フィルムを用いて下記の物性を評価し、その結果を下記表1に示した。
【0182】
(1)屈折率:実施例および比較例で得られた第1粘着フィルムおよび第2粘着フィルムのそれぞれに対して、プリズムカプラー(Metricon社製、model 2010/M)を用いて、波長633nmで、粘着フィルムを0.1μmの空隙を残してプリズムカプラー内のルチルプリズム基部に接触させて、有効屈折率RIを測定した。
【0183】
(2)ガラス転移温度(Tg、単位:℃):第1粘着フィルムおよび第2粘着フィルムのそれぞれ15mg(on 6mm Al Pan)のサンプルを、実施例と同様に作製した。サンプルを、窒素雰囲気下(窒素流量:50mL/min)で20℃/minの昇温速度で100℃まで昇温し、-80℃まで冷却させた後、10℃/minの昇温速度で100℃まで昇温しながらDiscovery DSC(TA Instruments社製)を使用して、粘着フィルムのガラス転移温度を測定した。
【0184】
(3)粘着力(単位:gf/inch、mN/mm):第1粘着フィルムとガラス板(無アルカリガラス板)との間の180°粘着力で、JIS C2107:2011に準じて測定した。粘着シートを、縦×横が25mm×100mmの大きさに切断し、第1粘着フィルム側の第1離型フィルムを剥離して50μmの両面粘着剤(SF-123N、三星SDI社製)と合わせ、両面粘着剤面にコロナ処理されたPETフィルム(Nitto tape)に貼り合わせた。第2粘着フィルムから第1離型フィルムを剥離し、剥離された第2粘着フィルムにガラス板を貼り合わせて試験片を製造した。30kgfのロードセル(load cell)で、試験片中のガラス板と第1粘着フィルムとをそれぞれ引張試験測定機(Texture analyzer、TA instrument)の上部ジグと下部ジグとにそれぞれ連結し、引張速度300mm/min、引張角度180°、引張温度25℃で、ガラス板から第1粘着フィルムを剥離させた時の荷重(粘着力)を測定した。なお、下記表1には、単位:mN/mmの場合の粘着力の値も示している。
【0185】
(4)リカバリー率(@-20℃、単位:%):多層粘着フィルムを複数個積層させて厚さ800μm、かつ直径が8mmの円形の試験片を製造し、この試験片に対して、DHRレオメーター(rheometer、TA Instruments社製)を使用して測定することができる。具体的には、リカバリー率は、リカバリー率測定温度(-20℃)で、試験片に応力(300%ひずみ)を加えた状態で600秒間保った後、応力を取り除き(こうすると試験片に加えられる応力が0Nになる)、600秒間保った後に計算された変化率である。変化率は、[(A-B)/A]×100(%)(ただし、A:試験片に応力(300%ひずみ)を加えた状態で600秒間保った後、直ぐに測定された試験片の変位(単位:mm)、B:試験片に加えられた応力を取り除き、600秒後の試験片のプラトー領域における変位(単位:mm))で表される式によって計算することができる。リカバリー率の測定のための全体測定時間は、1200秒である。上記の「変位」は、(測定時点の試験片の長さ-試験片の最初の長さ)を意味する。
【0186】
(5)貯蔵弾性率(単位:MPa):多層粘着フィルム(比較例1は第1粘着フィルム)に対して測定を行った。動的粘弾性測定装置 ARES(Anton Paar社製、型番MCR-501)を使用して、温度スウィープ(temperature sweep)条件で弾性率を評価した。実施例および比較例で製造した多層粘着フィルムを複数個積層させて、600μmの厚さでサンプルを作製した。円形で直径が8mmの穿孔機で積層物を穿孔して、試験片として使用した。8mmのジグを用いて、当該試験片にノーマルフォース3.0Nで力を加えた状態で、frequency:1Hz、strain:1%、-40℃~120℃の温度まで10℃/minの温度上昇速度で温度を上昇させながら測定を行い、-20℃および60℃における貯蔵弾性率を求めた。
【0187】
(6)粘着信頼性(耐湿熱信頼性、耐熱信頼性):多層粘着フィルムの第2粘着フィルム側の第1離型フィルムを剥離して、コロナ処理されたPETフィルムに貼付した。第1離型フィルムを剥離し、剥離した第1粘着フィルムに90mm×140mmの大きさのガラス基板を貼り合わせた後、4~5kg/cmの圧力を加えて試験片を製造した。試験片の粘着信頼性を把握するために、試験片を60℃および相対湿度95%RHの条件下に250時間放置して、耐湿熱信頼性を評価した。また、試験片を85℃の温度で250時間放置して、耐熱信頼性を評価した。肉眼で観察した際、粘着フィルム、粘着フィルムとガラス基板との間、または粘着フィルムとPETフィルムとの間に気泡や剥離がなければ○、気泡や剥離が多少あれば△、気泡や剥離が多ければ×と評価した。
【0188】
(7)発光効率:Photoresearch社製の型番PR-650の装置を使用して、電界発光(EL)特性を測定した。2500cd/m基準の輝度で、mcscience社製の寿命測定装置を使用して、輝度が5%低下するまでの時間(T(95)寿命)を測定して比較した。比較対象は、有機発光素子パネルに屈折率1.5以下の粘着フィルム(比較例3における第2粘着フィルム)、および偏光板を順に積層したものである。有機発光素子パネルに、実施例または比較例の多層粘着フィルム、屈折率1.5以下の粘着フィルム(比較例3における第2粘着フィルム)、および偏光板を順に積層させた。比較対象に比べて、T(95)寿命および発光効率(cd/A)の両方が増加した場合を○、2つのうち1つでも増加しなかった場合は×と評価した。
【0189】
(8)ホールド性:実施例および比較例で製造した粘着シートを、縦25mm×横100mmの大きさに切断した。その後、-20℃で、屈曲半径1mmで10万回の折り曲げ試験を行った後、浮きまたはクラック不良が発生したかを確認し、不良が生じなかった場合を○、不良が生じた場合を×と表示した。
【0190】
【表1】
【0191】
上記表1から明らかなように、本発明の多層粘着フィルムは、高屈折率で、低温でのホールド特性に優れ、かつ粘着信頼性に優れ、発光効率がより向上した。
【0192】
一方、単層の粘着フィルムであって、高屈折率粒子であるジルコニアを含有する比較例1の粘着フィルムは、低温で優れたホールド性を提供できなかった。多層の粘着フィルムである比較例2~比較例4もまた、低温で優れたホールド性を提供できなかった。また、比較例2~比較例4の一部は、粘着信頼性および発光効率も良くなかった。また、実施例1中の第1粘着フィルムのみからなる比較例5の粘着フィルムは、単層粘着フィルムとして本発明の効果を全て達成できなかった。
【0193】
本発明の単純な変形あるいは変更は、本分野の通常の知識を有する者によって容易に実施することができ、このような変形や変更は、全て本発明の領域に含まれると見なすことができる。
【符号の説明】
【0194】
10 第1粘着フィルム、
20 第2粘着フィルム、
100 有機発光素子、
200 無機層、
300 低屈折率有機層、
400 高屈折率有機層。
図1
図2