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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168738
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231121BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20231121BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20231121BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
B23K26/53
B23K26/00 M
B23K26/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080022
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】山本 涼兵
【テーマコード(参考)】
4E168
5F057
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CA06
4E168CA07
4E168CB07
4E168CB22
4E168DA24
4E168DA43
4E168HA01
4E168JA12
4E168JA13
5F057AA14
5F057AA34
5F057BA01
5F057BB09
5F057CA02
5F057DA22
5F057DA31
5F057GA13
5F057GB02
5F057GB35
(57)【要約】
【課題】剥離帯の形成と剥離帯の検査とを並行して行う場合でも、高い生産性を実現できるレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】レーザー加工装置であって、X軸に沿う方向で集光点の一方側に位置する検査領域のクラックで反射した検査光を検出する第1受光素子を有する第1反射光検出ユニットと、X軸に沿う方向で集光点の他方側に位置する検査領域のクラックで反射した検査光を検出する第2受光素子を有する第2反射光検出ユニットと、を備え、X軸に沿う方向で被加工物の一方側に位置する外周縁から、X軸に沿う方向で被加工物の他方側に位置する外周縁までのレーザービームの照射予定領域に、レーザービームを照射して剥離帯を形成する際に、X軸に沿う方向で被加工物の一方側に位置する外周縁から、X軸に沿う方向で被加工物の他方側に位置する外周縁までの、剥離帯の形成予定領域の全体において、クラックで反射する検査光の情報を取得する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー加工装置であって、
被加工物を保持する保持面を有する保持ユニットと、
該被加工物を透過する波長のレーザービームを生成するレーザー発振器、及び該レーザー発振器で生成された該レーザービームを集光点に集光する集光器を有し、該保持ユニットにより保持された該被加工物の内部に該レーザービームを集光させるように照射することで該被加工物の内部に改質された改質部と該改質部から伸長するクラックとを含む剥離帯を形成するレーザービーム照射ユニットと、
該保持ユニットと該レーザービームの該集光点とをX軸及び該X軸と交差するY軸に沿って相対的に移動させる送り機構と、
該被加工物を透過する波長の検査光を生成する光源を有し、該被加工物に形成された該剥離帯を含む検査領域に該検査光を照射する検査光照射ユニットと、
該X軸に沿う方向で該集光点の一方側に位置する該検査領域の該クラックで反射した該検査光を検出する第1受光素子を有する第1反射光検出ユニットと、
該X軸に沿う方向で該集光点の他方側に位置する該検査領域の該クラックで反射した該検査光を検出する第2受光素子を有する第2反射光検出ユニットと、
処理装置及び記憶装置を有し、該記憶装置に記憶されているプログラムに従い各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、
該制御ユニットは、該プログラムに従い、
該X軸に沿う方向で該被加工物の一方側に位置する外周縁から、該X軸に沿う方向で該被加工物の他方側に位置する外周縁までの該レーザービームの照射予定領域に、該レーザービームを照射して該剥離帯を形成する際に、
該X軸に沿う方向で該被加工物の一方側に位置する外周縁より外側の第1領域から、該X軸に沿う方向で該被加工物の他方側に位置する外周縁より内側の第2領域までの第1検出範囲において、該クラックで反射する該検査光を該第1受光素子に検出させ、
該X軸に沿う方向で該被加工物の一方側に位置する外周縁より内側の第3領域から、該X軸に沿う方向で該被加工物の他方側に位置する外周縁より外側の第4領域までの第2検出範囲において、該クラックで反射する該検査光を該第2受光素子に検出させることにより、
該X軸に沿う方向で該被加工物の一方側に位置する外周縁から、該X軸に沿う方向で該被加工物の他方側に位置する外周縁までの、該剥離帯の形成予定領域の全体において、該クラックで反射する該検査光の情報を取得するレーザー加工装置。
【請求項2】
該制御ユニットは、該プログラムに従い、
取得された該情報を用いて、実際に該剥離帯が形成されたとみなされる領域の、該形成予定領域に対する比率を算出する請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
該制御ユニットは、該プログラムに従い、
該比率が閾値に達していない場合に、該比率が該閾値に達していない領域に該レーザービームを再び照射する請求項2に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
該制御ユニットは、該プログラムに従い、
該比率が閾値に達していない場合に、加工条件を調整する請求項2に記載のレーザー加工装置。
【請求項5】
該第1受光素子及び該第2受光素子は、
該Y軸に沿う方向で該集光点の一方側に位置する該クラックで反射した該検査光を検出できるように構成されている請求項1から請求項4のいずれかに記載のレーザー加工装置。
【請求項6】
該第1受光素子及び該第2受光素子は、
該クラックで反射した該検査光の強度を検出できるように構成されている請求項1から請求項4のいずれかに記載のレーザー加工装置。
【請求項7】
該第1受光素子及び該第2受光素子は、
該クラックを含む該検査領域で反射した該検査光を用いて該検査領域の画像を生成できるように構成されている請求項1から請求項4のいずれかに記載のレーザー加工装置。
【請求項8】
レーザー加工装置であって、
被加工物を保持する保持面を有する保持ユニットと、
該被加工物を透過する波長のレーザービームを生成するレーザー発振器、及び該レーザー発振器で生成された該レーザービームを集光点に集光する集光器を有し、該保持ユニットにより保持された該被加工物の内部に該レーザービームを集光させるように照射することで該被加工物の内部に改質された改質部と該改質部から伸長するクラックとを含む剥離帯を形成するレーザービーム照射ユニットと、
該保持ユニットと該レーザービームの該集光点とをX軸及び該X軸と交差するY軸に沿って相対的に移動させる送り機構と、
該被加工物を透過する波長の検査光を生成する光源を有し、該被加工物に形成された該剥離帯を含む検査領域に該検査光を照射する検査光照射ユニットと、
該Y軸に対して平行で該集光点を通る直線上の領域を含む該検査領域の該クラックで反射した該検査光を検出する受光素子を有する反射光検出ユニットと、
処理装置及び記憶装置を有し、該記憶装置に記憶されているプログラムに従い各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、
該制御ユニットは、該プログラムに従い、
該X軸に沿う方向で該被加工物の一方側に位置する外周縁から、該X軸に沿う方向で該被加工物の他方側に位置する外周縁までの該レーザービームの照射予定領域に、該レーザービームを照射して該剥離帯を形成する際に、
該X軸に沿う方向で該被加工物の一方側に位置する外周縁から、該X軸に沿う方向で該被加工物の他方側に位置する外周縁までの該剥離帯の形成予定領域の全体において、該クラックで反射する該検査光を該受光素子に検出させることにより、該クラックで反射する該検査光の情報を取得するレーザー加工装置。
【請求項9】
該制御ユニットは、該プログラムに従い、
取得された該情報を用いて、実際に該剥離帯が形成されたとみなされる領域の、該形成予定領域に対する比率を算出する請求項8に記載のレーザー加工装置。
【請求項10】
該制御ユニットは、該プログラムに従い、
該比率が閾値に達していない場合に、該比率が該閾値に達していない領域に該レーザービームを再び照射する請求項9に記載のレーザー加工装置。
【請求項11】
該制御ユニットは、該プログラムに従い、
該比率が閾値に達していない場合に、加工条件を調整する請求項9に記載のレーザー加工装置。
【請求項12】
該受光素子は、
該クラックで反射した該検査光の強度を検出できるように構成されている請求項8から請求項11のいずれかに記載のレーザー加工装置。
【請求項13】
該受光素子は、
該クラックを含む該検査領域で反射した該検査光を用いて該検査領域の画像を生成できるように構成されている請求項8から請求項11のいずれかに記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体インゴット等の被加工物を加工する際に使用されるレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造に使用される半導体ウェーハは、一般に、円柱状の半導体インゴットをワイヤーソーで薄く切断することにより得られる。この方法では、ワイヤーソーの加工精度に起因して、半導体ウェーハの表面(被切断面)に大きな凹凸が発生する。そこで、ワイヤーソーによる切断の後には、研削や研磨等の方法により、半導体ウェーハの表面が平坦化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、ワイヤーソーによる切断と、その後の平坦化と、の双方が実施される上述のような方法には、半導体インゴットの7割以上の部分が加工の際に廃棄されてしまうという経済性の面での課題がある。特に、硬度が高い炭化珪素(SiC)等の半導体でなる半導体インゴットから半導体ウェーハを製造する場合には、ワイヤーソーでの切断に長い時間を要することと相まって、半導体ウェーハの価格が高くなり易い。
【0004】
このような問題に対して、近年では、半導体インゴットの内部にレーザービームを集光させてクラック等を含む剥離帯を形成し、この剥離帯に沿って半導体インゴットから半導体ウェーハを剥離する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。当該技術によれば、半導体インゴットをワイヤーソーで切断する場合に必要な「切りしろ」が不要になるので、従来に比べて半導体インゴットの多くの部分が半導体ウェーハとして使用され、半導体ウェーハの製造にかかる経済性が改善される。
【0005】
一方で、炭化珪素等の半導体でなる半導体インゴットの結晶性は、この半導体インゴットの製造方法に起因して、半導体インゴットの高さ方向(円柱の高さ方向)に沿って不均一である可能性が高い。つまり、半導体ウェーハの剥離に適した剥離帯を半導体インゴットに形成するために必要なレーザービームの照射条件(加工条件)も、半導体インゴットの高さ方向において異なる可能性が高い。
【0006】
そこで、半導体インゴットを加工する際に、剥離帯のクラック等で反射する光を利用して、適切な剥離帯が形成されているか否かを検査できるレーザー加工装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。このレーザー加工装置は、剥離帯で反射する反射光の強度が所定の範囲内となるように半導体インゴットを加工することで、半導体インゴットの結晶性が不均一な場合にも、半導体ウェーハの剥離に適した剥離帯を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-94221号公報
【特許文献2】特開2016-111143号公報
【特許文献3】特開2021-68819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したレーザー加工装置では、剥離帯の形成と剥離帯の検査とを並行して行う場合に、高い生産性を実現できないことがあった。
【0009】
よって、本発明の目的は、剥離帯の形成と剥離帯の検査とを並行して行う場合でも、高い生産性を実現できるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によれば、レーザー加工装置であって、被加工物を保持する保持面を有する保持ユニットと、該被加工物を透過する波長のレーザービームを生成するレーザー発振器、及び該レーザー発振器で生成された該レーザービームを集光点に集光する集光器を有し、該保持ユニットにより保持された該被加工物の内部に該レーザービームを集光させるように照射することで該被加工物の内部に改質された改質部と該改質部から伸長するクラックとを含む剥離帯を形成するレーザービーム照射ユニットと、該保持ユニットと該レーザービームの該集光点とをX軸及び該X軸と交差するY軸に沿って相対的に移動させる送り機構と、該被加工物を透過する波長の検査光を生成する光源を有し、該被加工物に形成された該剥離帯を含む検査領域に該検査光を照射する検査光照射ユニットと、該X軸に沿う方向で該集光点の一方側に位置する該検査領域の該クラックで反射した該検査光を検出する第1受光素子を有する第1反射光検出ユニットと、該X軸に沿う方向で該集光点の他方側に位置する該検査領域の該クラックで反射した該検査光を検出する第2受光素子を有する第2反射光検出ユニットと、処理装置及び記憶装置を有し、該記憶装置に記憶されているプログラムに従い各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、該制御ユニットは、該プログラムに従い、該X軸に沿う方向で該被加工物の一方側に位置する外周縁から、該X軸に沿う方向で該被加工物の他方側に位置する外周縁までの該レーザービームの照射予定領域に、該レーザービームを照射して該剥離帯を形成する際に、該X軸に沿う方向で該被加工物の一方側に位置する外周縁より外側の第1領域から、該X軸に沿う方向で該被加工物の他方側に位置する外周縁より内側の第2領域までの第1検出範囲において、該クラックで反射する該検査光を該第1受光素子に検出させ、該X軸に沿う方向で該被加工物の一方側に位置する外周縁より内側の第3領域から、該X軸に沿う方向で該被加工物の他方側に位置する外周縁より外側の第4領域までの第2検出範囲において、該クラックで反射する該検査光を該第2受光素子に検出させることにより、該X軸に沿う方向で該被加工物の一方側に位置する外周縁から、該X軸に沿う方向で該被加工物の他方側に位置する外周縁までの、該剥離帯の形成予定領域の全体において、該クラックで反射する該検査光の情報を取得するレーザー加工装置が提供される。
【0011】
好ましくは、該制御ユニットは、該プログラムに従い、取得された該情報を用いて、実際に該剥離帯が形成されたとみなされる領域の、該形成予定領域に対する比率を算出する。また、好ましくは、該制御ユニットは、該プログラムに従い、該比率が閾値に達していない場合に、該比率が該閾値に達していない領域に該レーザービームを再び照射する。また、好ましくは、該制御ユニットは、該プログラムに従い、該比率が閾値に達していない場合に、加工条件を調整する。
【0012】
また、好ましくは、該第1受光素子及び該第2受光素子は、該Y軸に沿う方向で該集光点の一方側に位置する該クラックで反射した該検査光を検出できるように構成されている。また、好ましくは、該第1受光素子及び該第2受光素子は、該クラックで反射した該検査光の強度を検出できるように構成されている。また、好ましくは、該第1受光素子及び該第2受光素子は、該クラックを含む該検査領域で反射した該検査光を用いて該検査領域の画像を生成できるように構成されている。
【0013】
本発明の別の一側面によれば、レーザー加工装置であって、被加工物を保持する保持面を有する保持ユニットと、該被加工物を透過する波長のレーザービームを生成するレーザー発振器、及び該レーザー発振器で生成された該レーザービームを集光点に集光する集光器を有し、該保持ユニットにより保持された該被加工物の内部に該レーザービームを集光させるように照射することで該被加工物の内部に改質された改質部と該改質部から伸長するクラックとを含む剥離帯を形成するレーザービーム照射ユニットと、該保持ユニットと該レーザービームの該集光点とをX軸及び該X軸と交差するY軸に沿って相対的に移動させる送り機構と、該被加工物を透過する波長の検査光を生成する光源を有し、該被加工物に形成された該剥離帯を含む検査領域に該検査光を照射する検査光照射ユニットと、該Y軸に対して平行で該集光点を通る直線上の領域を含む該検査領域の該クラックで反射した該検査光を検出する受光素子を有する反射光検出ユニットと、処理装置及び記憶装置を有し、該記憶装置に記憶されているプログラムに従い各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、該制御ユニットは、該プログラムに従い、該X軸に沿う方向で該被加工物の一方側に位置する外周縁から、該X軸に沿う方向で該被加工物の他方側に位置する外周縁までの該レーザービームの照射予定領域に、該レーザービームを照射して該剥離帯を形成する際に、該X軸に沿う方向で該被加工物の一方側に位置する外周縁から、該X軸に沿う方向で該被加工物の他方側に位置する外周縁までの該剥離帯の形成予定領域の全体において、該クラックで反射する該検査光を該受光素子に検出させることにより、該クラックで反射する該検査光の情報を取得するレーザー加工装置が提供される。
【0014】
好ましくは、該制御ユニットは、該プログラムに従い、取得された該情報を用いて、実際に該剥離帯が形成されたとみなされる領域の、該形成予定領域に対する比率を算出する。また、好ましくは、該制御ユニットは、該プログラムに従い、該比率が閾値に達していない場合に、該比率が該閾値に達していない領域に該レーザービームを再び照射する。また、好ましくは、該制御ユニットは、該プログラムに従い、該比率が閾値に達していない場合に、加工条件を調整する。
【0015】
また、好ましくは、該受光素子は、該クラックで反射した該検査光の強度を検出できるように構成されている。また、好ましくは、該受光素子は、該クラックを含む該検査領域で反射した該検査光を用いて該検査領域の画像を生成できるように構成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面にかかるレーザー加工装置は、X軸に沿う方向で集光点の一方側に位置する検査領域のクラックで反射した検査光を検出する第1受光素子を有する第1反射光検出ユニットと、X軸に沿う方向で集光点の他方側に位置する検査領域のクラックで反射した検査光を検出する第2受光素子を有する第2反射光検出ユニットと、を備えるので、X軸に沿う方向で被加工物の一方側に位置する外周縁から、X軸に沿う方向で被加工物の他方側に位置する外周縁までのレーザービームの照射予定領域に、レーザービームを照射して剥離帯を形成する際に、X軸に沿う方向で被加工物の一方側に位置する外周縁より外側の第1領域から、X軸に沿う方向で被加工物の他方側に位置する外周縁より内側の第2領域までの第1検出範囲において、クラックで反射する検査光を第1受光素子に検出させ、X軸に沿う方向で被加工物の一方側に位置する外周縁より内側の第3領域から、X軸に沿う方向で被加工物の他方側に位置する外周縁より外側の第4領域までの第2検出範囲において、クラックで反射する検査光を第2受光素子に検出させることができる。
【0017】
また、本発明の別の一側面にかかるレーザー加工装置は、Y軸に対して平行で集光点を通る直線上の領域を含む検査領域のクラックで反射した検査光を検出する受光素子を有する反射光検出ユニットを備えるので、X軸に沿う方向で被加工物の一方側に位置する外周縁から、X軸に沿う方向で被加工物の他方側に位置する外周縁までのレーザービームの照射予定領域に、レーザービームを照射して剥離帯を形成する際に、X軸に沿う方向で被加工物の一方側に位置する外周縁から、X軸に沿う方向で被加工物の他方側に位置する外周縁までの剥離帯の形成予定領域の全体において、クラックで反射する検査光を受光素子に検出させることができる。
【0018】
従って、本発明の各側面にかかるレーザー加工装置によれば、被加工物に剥離帯を形成する際に、剥離帯の形成予定領域の全体において、クラックで反射する検査光の情報を取得することができる。つまり、本発明の各側面にかかるレーザー加工装置によれば、剥離帯の形成と剥離帯の検査とを並行して行う場合にも、高い生産性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、レーザー加工装置を示す斜視図である。
図2図2は、被加工物を示す斜視図である。
図3図3は、被加工物を示す側面図である。
図4図4は、レーザービーム照射ユニットの構造を示す図である。
図5図5は、被加工物に剥離帯が形成される様子を模式的に示す平面図である。
図6図6は、剥離帯が形成された被加工物の断面図である。
図7図7は、第1検査光照射ユニット等の構造や配置を示す図である。
図8図8は、制御ユニットの機能的な構造を模式的に示す機能ブロック図である。
図9図9は、剥離帯の検査を伴う被加工物の加工方法を示すフローチャートである。
図10図10は、剥離帯が検査される様子を模式的に示す平面図である。
図11図11は、変形例において剥離帯が検査される様子を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照ながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態のレーザー加工装置2を示す斜視図である。なお、図1では、レーザー加工装置2の一部の構成要素が機能ブロックで表現されている。また、以下の説明で用いられるX軸、Y軸、及びZ軸は、互いに垂直である。
【0021】
図1に示されるように、レーザー加工装置2は、各構成要素が搭載される基台4を備えている。基台4の上面の中央の領域には、送り機構(加工送り機構、割り出し送り機構)6が配置されている。送り機構6は、基台4の上面に固定され前後の方向(Y軸に沿う方向)に長い一対のY軸ガイドレール8を備えている。Y軸ガイドレール8には、Y軸移動プレート10がY軸に沿って前後にスライドできる態様で取り付けられている。
【0022】
Y軸移動プレート10の下面側には、ボールネジを構成するナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、Y軸ガイドレール8に対して概ね平行なネジ軸12が回転できる態様で連結されている。ネジ軸12の一端部には、Y軸パルスモーター14が接続されている。Y軸パルスモーター14でネジ軸12を回転させることにより、Y軸移動プレート10は、Y軸ガイドレール8に沿って前後に移動する。
【0023】
Y軸移動プレート10の上面には、左右の方向(X軸に沿う方向)に長い一対のX軸ガイドレール16が設けられている。X軸ガイドレール16には、X軸移動プレート18がX軸に沿って左右にスライドできる態様で取り付けられている。X軸移動プレート18の下面側には、ボールネジを構成するナット部(不図示)が設けられている。
【0024】
このナット部には、X軸ガイドレール16に対して概ね平行なネジ軸20が回転できる態様で連結されている。ネジ軸20の一端部には、X軸パルスモーター22が接続されている。X軸パルスモーター22でネジ軸20を回転させることにより、X軸移動プレート18は、X軸ガイドレール16に沿って左右に移動する。
【0025】
X軸移動プレート18の上面側には、被加工物11を保持できるように構成された円盤状のチャックテーブル(保持ユニット)24が配置されている。図2は、レーザー加工装置2で加工される被加工物11を示す斜視図であり、図3は、被加工物11を示す側面図である。
【0026】
本実施形態の被加工物11は、六方晶の単結晶炭化珪素(SiC)でなる円柱状の半導体インゴットであり、代表的には、昇華再結晶法で製造される。図2及び図3に示されるように、この被加工物11は、円形状の第1面11aと、第1面11aの反対側に位置し第1面11aに対して概ね平行な円形状の第2面11bと、を有している。
【0027】
被加工物11の第1面11aと第2面11bとを繋ぐ側面には、第1オリエンテーションフラット11cと、第2オリエンテーションフラット11dと、が設けられている。第1オリエンテーションフラット11c及び第2オリエンテーションフラット11dは、被加工物11を構成する単結晶炭化珪素の結晶方位に合わせて設けられており、いずれも、第1面11a及び第2面11bに対して垂直な方向から見ると直線状である。
【0028】
また、第1オリエンテーションフラット11cと、第2オリエンテーションフラット11dとは、互いに概ね垂直である。更に、第1面11a及び第2面11bに対して垂直な方向から見た第1オリエンテーションフラット11cの長さは、同じ方向から見た第2オリエンテーションフラット11dの長さよりも長い。
【0029】
結晶を成長させて被加工物11を製造する過程で、この被加工物11を構成する単結晶炭化珪素のc軸11eは、第1面11a及び第2面11bの垂線11fに対して、第2オリエンテーションフラット11dの方向にαの角度(オフ角等と呼ばれる)で傾斜する。つまり、c軸11eに対して垂直なc面11gも、第1面11a及び第2面11bに対してαの角度をなす。αは、代表的には、4°である。ただし、αは、1°~6°の範囲で自由に設定され得る。
【0030】
本実施形態のレーザー加工装置2は、このような被加工物11から半導体ウェーハを製造する際に用いられる。なお、本実施形態では、六方晶の単結晶炭化珪素でなる半導体インゴットが被加工物11として採用されるが、被加工物11は、シリコン(Si)や窒化ガリウム(GaN)等の他の半導体材料でなる半導体インゴットでもよい。被加工物11の高さ(第1面11a及び第2面11bに対して垂直な方向の大きさ)は、少なくとも、製造される半導体ウェーハの高さ(厚さ)よりも大きければよい。
【0031】
また、被加工物11の側面には、必ずしも第1オリエンテーションフラット11cや第2オリエンテーションフラット11dが形成されていなくてよい。更に、第1オリエンテーションフラット11cや第2オリエンテーションフラット11dに代えて、又は、これらとともに、結晶方位に応じた別のオリエンテーションフラットやノッチ(切り欠き)等が被加工物11に設けられてもよい。
【0032】
例えば、この被加工物11の第2面11b側が、上述したチャックテーブル24の上面(保持面)24aにより保持される。チャックテーブル24の上面24aは、例えば、多孔質状のセラミックス等によって、X軸及びY軸に対して概ね平行に形成されている。また、チャックテーブル24の上面24aは、チャックテーブル24の内部の吸引路(不図示)や、チャックテーブル24の外部のバルブ(不図示)等を介して、真空ポンプ等の吸引源(不図示)に接続される。
【0033】
チャックテーブル24の下部には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されている。この回転駆動源が発生する力によって、チャックテーブル24は、上下の方向(Z軸に沿う方向)に対して概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル24は、送り機構6のX軸パルスモーター22が発生する力により、X軸に沿う左右の方向に移動し(加工送り)、送り機構6のY軸パルスモーター14が発生する力により、Y軸に沿う前後の方向に移動する(割り出し送り)。
【0034】
チャックテーブル24の周囲には、被加工物11を支持する際に用いられる環状のフレーム(不図示)を四方から固定できる4個のクランプ26が設けられている。環状のフレームで被加工物11を支持する際には、例えば、被加工物11の第2面11b側に円形状のテープ(不図示)の中央部が貼付され、このテープの外縁部に環状のフレームが固定される。なお、被加工物11を支持する際に環状のフレームが使用されないようであれば、クランプ26は省略されてよい。
【0035】
基台4の上面の送り機構6の後方の位置には、上下の方向に所定の長さを持つ支持構造28が設けられている。支持構造28には、チャックテーブル24で保持される被加工物11に対してレーザービームを集光させるように照射できるレーザービーム照射ユニット30の一部が支持されている。
【0036】
図4は、レーザービーム照射ユニット30の構造を示す図である。なお、図4でも、一部の構成要素が機能ブロックで表現されている。図4に示されるように、レーザービーム照射ユニット30は、例えば、基台4や支持構造28に固定されたレーザー発振器32を含む。レーザー発振器32は、代表的には、レーザー発振に適したNd:YAG等のレーザー媒質を備え、被加工物11を透過する波長のパルス状のレーザービーム21を生成する。
【0037】
レーザービーム21が進行する方向に沿ってレーザー発振器32の下流側には、例えば、レーザー発振器32で生成されたレーザービーム21のパワーを調整できる調整器34が配置されている。この調整器34としては、アッテネーターや音響光学偏向素子等が使用される。ただし、レーザービーム21のパワーは、レーザー発振器32の内部で調整されてもよい。
【0038】
調整器34によってパワーが調整されたレーザービーム21は、例えば、支持構造28に支持されたハウジング36(図1)に入射する。ハウジング36の先端側の端部には、照射ヘッド38(図1)が設けられている。照射ヘッド38の上部には、例えば、ミラー40が配置されており、このミラー40により、レーザービーム21の進行する方向が下向きに変えられる。
【0039】
照射ヘッド38の下部には、下方の集光点23にレーザービーム21を集光させるレンズ等の集光器42が配置されており、ミラー40で反射されたレーザービーム21は、集光器42を通じて、チャックテーブル24で保持された被加工物11に照射される。被加工物11を透過する波長のレーザービーム21を被加工物11の内部に集光させるように照射することで、レーザービーム21により改質された改質部と、改質部から伸長するクラックと、を含む剥離帯が被加工物11の内部に形成される。
【0040】
図5は、被加工物11に剥離帯11hが形成される様子を示す模式的に示す平面図であり、図6は、剥離帯11hが形成された被加工物11の断面図である。被加工物11の内部に剥離帯11hを形成する際には、例えば、レーザービーム照射ユニット30が、照射ヘッド38から下方にレーザービーム21を照射している状態で、送り機構6が、被加工物11を保持した状態のチャックテーブル24をX軸に沿って移動させる。
【0041】
すなわち、レーザービーム21の集光点23とチャックテーブル24とが、送り機構6でX軸に沿って相対的に移動させられる。これにより、被加工物11のX軸に沿う直線状(帯状)の照射予定領域にレーザービーム21が照射され、この照射予定領域に、改質部11iと、改質部11iから伸長するクラック11jと、を含む剥離帯11hが形成される。なお、レーザービーム21の照射前には、X軸に対して第2オリエンテーションフラット11dが平行になるように、被加工物11の向きが調整される。
【0042】
例えば、第1照射予定領域11kにレーザービーム21が照射された後には、送り機構6が、被加工物11を保持した状態のチャックテーブル24をY軸に沿って移動させる。すなわち、レーザービーム21の集光点23とチャックテーブル24とが、送り機構6でY軸に沿って相対的に移動させられる。
【0043】
そして、レーザービーム照射ユニット30が、照射ヘッド38から下方にレーザービーム21を照射している状態で、送り機構6が、被加工物11を保持した状態のチャックテーブル24をX軸に沿って再び移動させる。これにより、上述した第1照射予定領域11kとは別の第2照射予定領域11lにレーザービーム21が照射され、この第2照射予定領域11lに剥離帯11hが形成される。レーザー加工装置2は、このような動作を繰り返すことにより、被加工物11の広い範囲に剥離帯11hを形成することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、レーザービーム照射ユニット30を構成するハウジング36が支持構造28により支持されているが、ハウジング36は、任意の移動機構により上下に移動できる態様で支持されてもよい。また、照射ヘッド38の内部の集光器42を独立して上下に移動させることができるように、照射ヘッド38にアクチュエーター等が設けられてもよい。
【0045】
図1に示されるように、X軸に沿う方向で照射ヘッド38の一方側の領域(例えば、右側の領域)には、ハウジング36に固定されたカメラ(撮像ユニット)44が配置されている。カメラ44は、例えば、可視光に感度を持つCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサやCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の2次元光センサを含んでおり、チャックテーブル24により保持された被加工物11等を撮像する際に使用される。
【0046】
また、例えば、照射ヘッド38とカメラ44との間の領域には、被加工物11に形成された剥離帯11hを含む検査領域に検査光を照射できる第1検査光照射ユニット46が配置されている。図7は、第1検査光照射ユニット46等の構造や配置を示す図である。第1検査光照射ユニット46は、被加工物11を透過する波長の検査光31を生成できるLED(Light Emitting Diode)等の第1光源48を含んでおり、X軸に沿う方向で集光点23の一方側に位置する検査領域に検査光31を照射する。
【0047】
図7に示されるように、検査領域において被加工物11の第1面11aに入射角θで入射した検査光31の一部は、剥離帯11hのクラック11jに到達する。クラック11jに到達した検査光31の一部は、このクラック11jによる劈開面で反射される。なお、クラック11jの劈開面で反射された検査光31(反射光)の向かう方向は、例えば、クラック11jの劈開面が第1面11aに対してなす角度と、検査光31の入射角θと、によって概ね決まる。
【0048】
ここで、クラック11jの劈開面が第1面11aに対してなす角度は、オフ角αと同程度である。つまり、クラック11jの劈開面で反射された検査光31の向かう方向は、オフ角αと、検査光31の入射角θと、によって概ね決まることになる。そして、クラック11jの劈開面で反射された検査光31の向かう先には、図7に示されるように、第1反射光検出ユニット50が配置されている。
【0049】
第1反射光検出ユニット50は、検査光31の波長に感度を持つフォトダイオード等の第1受光素子52を含んでおり、クラック11jの劈開面で反射された検査光31を受光して、その受光量に対応した所定の電気信号を生成する。このように、第1受光素子52によって、X軸に沿う方向で集光点23の一方側に位置する検査領域のクラック11jの劈開面で反射された検査光31の強度が検出される。
【0050】
また、X軸に沿う方向で照射ヘッド38の他方側の領域(例えば、左側の領域)には、被加工物11に形成された剥離帯11hを含む検査領域に検査光31を照射できる第2検査光照射ユニット54が配置されている。第2検査光照射ユニット54は、第1検査光照射ユニット46と同様に構成されている。
【0051】
すなわち、第2検査光照射ユニット54は、被加工物11を透過する波長の検査光31を生成できるLED(Light Emitting Diode)等の第2光源56を含んでおり、X軸に沿う方向で集光点23の他方側に位置する検査領域に検査光31を照射する。検査領域において被加工物11の第1面11aに入射角θで入射した検査光31の一部は、剥離帯11hのクラック11jに到達する。
【0052】
また、クラック11jに到達した検査光31の一部は、このクラック11jによる劈開面で反射される。クラック11jの劈開面で反射された検査光31の向かう先には、第2反射光検出ユニット58が配置されている。第2反射光検出ユニット58は、第1反射光検出ユニット50と同様に構成されている。
【0053】
すなわち、第2反射光検出ユニット58は、検査光31の波長に感度を持つフォトダイオード等の第2受光素子60を含んでおり、クラック11jの劈開面で反射された検査光31を受光して、その受光量に対応した所定の電気信号を生成する。このように、第2受光素子60によって、X軸に沿う方向で集光点23の他方側に位置する検査領域のクラック11jの劈開面で反射された検査光31の強度が検出される。
【0054】
更に、本実施形態では、第1検査光照射ユニット46及び第2検査光照射ユニット54により検査光31を照射される検査領域が、Y軸に沿う方向で集光点23の一方側に設定されている。すなわち、第1反射光検出ユニット50の第1受光素子52と第2反射光検出ユニット58の第2受光素子60とは、Y軸に沿う方向で集光点23の一方側に位置する剥離帯11hのクラック11jで反射した検査光31を検出できるように構成されている。
【0055】
これにより、レーザービーム21が照射された後の剥離帯11hの検査と並行して、剥離帯11hが形成されていない照射予定領域にレーザービーム21を照射して剥離帯11hを形成することが可能になる。つまり、剥離帯11hの形成と剥離帯11hの検査とを並行して行うことができるようになる。
【0056】
ただし、第1検査光照射ユニット46、第1反射光検出ユニット50、第2検査光照射ユニット54、及び第2反射光検出ユニット58の構造、配置等は、上述の態様に制限されない。例えば、第1検査光照射ユニット46や第2検査光照射ユニット54は、被加工物11を透過する波長のレーザービームを生成できるレーザー発振器等を第1光源48や第2光源56として含んでもよい。
【0057】
同様に、第1反射光検出ユニット50や第2反射光検出ユニット58は、検査光31の波長に感度を持つCMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等の2次元光センサを第1受光素子52や第2受光素子60として含んでもよい。この場合には、第1反射光検出ユニット50や第2反射光検出ユニット58が、剥離帯11h(クラック11j)を含む検査領域で反射した検査光31を用いて検査領域の画像を生成できるようになる。そして、カメラ44が第1反射光検出ユニット50として使用されてもよい。
【0058】
更に、第1検査光照射ユニット46、第1反射光検出ユニット50、第2検査光照射ユニット54、及び第2反射光検出ユニット58は、照射ヘッド38に対する位置を前後左右(X軸に沿う方向、及びY軸に沿う方向)に調整できるように構成されることが望ましい。これにより、検査領域の位置の調整が可能になる。
【0059】
送り機構6、レーザービーム照射ユニット30、カメラ44、第1検査光照射ユニット46、第1反射光検出ユニット50、第2検査光照射ユニット54、第2反射光検出ユニット58等の構成要素には、制御ユニット62が接続されている。制御ユニット62は、例えば、処理装置64と、記憶装置66と、を含むコンピュータによって構成され、被加工物11が適切に加工されるように、上述した各構成要素の動作等を制御する。
【0060】
処理装置64は、代表的には、CPU(Central Processing Unit)であり、上述した構成要素を制御するために必要な種々の処理を行う。記憶装置66は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含む。この制御ユニット62の機能は、例えば、記憶装置66に記憶されているプログラム等のソフトウェアに従い処理装置64が動作することによって実現される。
【0061】
例えば、基台4の上部は、各構成要素を収容できるカバー(不図示)によって覆われている。このカバーの側面には、ユーザーインターフェースとなるタッチスクリーン(入力装置、出力装置)68が配置されている。制御ユニット62は、タッチスクリーン68にも接続されており、例えば、被加工物11を加工する際に適用される種々の条件が、タッチスクリーン68を介してオペレーターから制御ユニット62に入力される。
【0062】
なお、入力装置として、キーボードや、マウス等が採用されてもよい。同様に、出力装置として、入力機能を持たない液晶ディスプレイ等の表示装置や、音声により情報を伝達できるスピーカー、光の色又は発光の状態(発光・点滅・消灯等)により情報を伝達できる表示灯等が採用されてもよい。
【0063】
このように構成されたレーザー加工装置2では、プログラムによって規定される所定の態様で、被加工物11にレーザービーム21が照射され、剥離帯11hが形成される。例えば、コンピュータ等による読み取りが可能な非一時的な記録媒体でもある記憶装置66の一部には、レーザービーム21の照射に必要な一連の処理を処理装置64に実行させるプログラムが記録されている。制御ユニット62(処理装置64)は、このプログラムに従って、被加工物11へのレーザービーム21の照射に必要な手順を遂行する。
【0064】
また、このレーザー加工装置2は、被加工物11へのレーザービーム21の照射(剥離帯11hの形成)と並行して、剥離帯11hが適切に形成されているか否かを検査することができる。記憶装置66の一部には、剥離帯11hの検査に必要な一連の処理を処理装置64に実行させるプログラムが記録されている。制御ユニット62(処理装置64)は、このプログラムに従って、剥離帯11hの検査に必要な手順を遂行する。
【0065】
図8は、本実施形態のプログラムにより実現される制御ユニット62の機能的な構造を模式的に示す機能ブロック図であり、図9は、剥離帯11hの検査を伴う被加工物11の加工方法を示すフローチャートである。なお、図8では、説明の便宜上、制御ユニット62に接続される送り機構6、レーザービーム照射ユニット30、第1反射光検出ユニット50、第2反射光検出ユニット58等が併せて示されている。
【0066】
図8に示されるように、制御ユニット62は、送り機構6の動作を制御する送り制御部62aと、レーザービーム照射ユニット30の動作を制御する照射制御部62bと、を含んでいる。例えば、図9に示される加工方法のフローに沿って被加工物11の加工(剥離帯11hの形成)が開始されると(ステップS11)、送り制御部62aが送り機構6の動作を制御するとともに、照射制御部62bがレーザービーム照射ユニット30の動作を制御して、被加工物11にレーザービーム21を照射する。
【0067】
例えば、送り制御部62aは、被加工物11の対象の照射予定領域のX軸に沿う延長線上に集光点23の位置が合うように、被加工物11を保持するチャックテーブル24と集光点23との位置の関係を送り機構6で調整する。その後、送り制御部62aは、対象の照射予定領域に沿って集光点23が移動するように、チャックテーブル24と集光点23とを送り機構6でX軸に沿って相対的に移動させる。
【0068】
チャックテーブル24と集光点23とのX軸に沿う相対的な移動が開始された後、例えば、集光点23が被加工物11の外周縁より内側に入るタイミングで、照射制御部62bは、レーザービーム照射ユニット30によるレーザービーム21の照射を開始する。その後、集光点23が被加工物11の外周縁より外側に出るタイミングで、照射制御部62bは、レーザービーム照射ユニット30によるレーザービーム21の照射を停止する。
【0069】
すなわち、レーザービーム21は、対象の照射予定領域と重なった状態で相対的に移動する集光点23に集光されるように、被加工物11に照射される。なお、被加工物11には、X軸に沿う方向に対して平行になるように、直線状(帯状)の複数の照射予定領域が設定されている。つまり、複数の照射予定領域は、Y軸に沿って並んでいる。また、各照射予定領域は、X軸に沿う方向で被加工物11の一方側に位置する外周縁から、X軸に沿う方向で被加工物11の他方側に位置する外周縁までを含むように設定されている。
【0070】
よって、レーザービーム21は、X軸に沿う方向で被加工物11の一方側に位置する外周縁から、X軸に沿う方向で被加工物11の他方側に位置する外周縁まで、X軸に沿って各照射予定領域に照射される。その結果、各照射予定領域には、X軸に沿って被加工物11を横断する剥離帯11hが形成される。
【0071】
例えば、第1照射予定領域11k及び第2照射予定領域11lにレーザービーム21が照射された後には、この第1照射予定領域11k及び第2照射予定領域11lに形成された剥離帯11hの検査が開始される(ステップS12)。図10は、剥離帯11hが検査される様子を模式的に示す平面図である。なお、本実施形態では、第1照射予定領域11k及び第2照射予定領域11lの剥離帯11hの検査が、第2照射予定領域11lの隣の第3照射予定領域11mへの剥離帯11hの形成と並行して行われる。
【0072】
具体的には、まず、送り制御部62aは、第3照射予定領域11mのX軸に沿った延長線上に集光点23の位置が合うように、チャックテーブル24と集光点23とを送り機構6でY軸に沿って相対的に移動させる。また、これにより、第1検査光照射ユニット46からの検査光31が照射される検査領域(第1検査領域)と、第2検査光照射ユニット54からの検査光31が照射される検査領域(第2検査領域)と、の位置は、第1照射予定領域11kと第2照射予定領域11lとの境界のX軸に沿った延長線上に合わせられる。
【0073】
すなわち、照射ヘッド38、第1検査光照射ユニット46、及び第2検査光照射ユニット54は、上述のような集光点23及び検査領域の位置の関係を実現できるように配置されている。その後、送り制御部62aは、第3照射予定領域11mに沿って集光点23が移動するように、チャックテーブル24と集光点23とを送り機構6でX軸に沿って相対的に移動させる。その結果、検査領域も、第1照射予定領域11kと第2照射予定領域11lとの境界に沿って移動する。
【0074】
チャックテーブル24と集光点23とのX軸に沿う相対的な移動が開始された後、例えば、X軸に沿う方向で被加工物11の一方側に位置する外周縁より内側に集光点23が入るタイミングで、照射制御部62bは、レーザービーム照射ユニット30によるレーザービーム21の照射を開始する。その後、X軸に沿う方向で被加工物11の他方側に位置する外周縁より外側に集光点23が出るタイミングで、照射制御部62bは、レーザービーム照射ユニット30によるレーザービーム21の照射を停止する。
【0075】
なお、X軸に沿う方向で被加工物11の一方側に位置する外周縁に集光点23が達すると、第1検査光照射ユニット46の検査領域は、X軸に沿う方向で被加工物11の一方側に位置する外周縁より外側の領域(第1領域)35aに位置づけられる。また、第2検査光照射ユニット54の検査領域は、X軸に沿う方向で被加工物11の一方側に位置する外周縁より内側の領域(第3領域)35cに位置づけられる。
【0076】
そして、X軸に沿う方向で被加工物11の他方側に位置する外周縁に集光点23が達すると、第1検査光照射ユニット46の検査領域は、X軸に沿う方向で被加工物11の他方側に位置する外周縁より内側の領域(第2領域)35bに位置づけられる。また、第2検査光照射ユニット54の検査領域は、X軸に沿う方向で被加工物11の他方側に位置する外周縁より外側の領域(第4領域)35dに位置づけられる。
【0077】
つまり、第1反射光検出ユニット50による検査が可能な第1検出範囲37aは、X軸に沿う方向で被加工物11の一方側に位置する外周縁より外側の領域(第1領域)35aから、X軸に沿う方向で被加工物11の他方側に位置する外周縁より内側の領域(第2領域)35bまでとなる。
【0078】
また、第2反射光検出ユニット58による検査が可能な第2検出範囲37bは、X軸に沿う方向で被加工物11の一方側に位置する外周縁より内側の領域(第3領域)35cから、X軸に沿う方向で被加工物11の他方側に位置する外周縁より外側の領域(第4領域)35dまでとなる。
【0079】
図8に示されるように、制御ユニット62は、第1反射光検出ユニット50の第1受光素子52が出力する電気信号に含まれる情報と、第2反射光検出ユニット58の第2受光素子60が出力する電気信号に含まれる情報と、を取得する検査部62cを含む。この検査部62cは、第1受光素子52からの情報と、第2受光素子60からの情報と、の双方を利用して、第1照射予定領域11kと第2照射予定領域11lとに適切な剥離帯11hが形成されているか否かを判定する。
【0080】
具体的には、検査部62cは、第1検出範囲37aにおいて剥離帯11hのクラック11jで反射され、第1反射光検出ユニット50の第1受光素子52が検出した検査光31の強度に関する情報を取得する。また、検査部62cは、第2検出範囲37bにおいて剥離帯11hのクラック11jで反射され、第2反射光検出ユニット58の第2受光素子60が検出した検査光31の強度に関する情報を取得する。
【0081】
ここで、領域35aから領域35cまでの範囲では、第1反射光検出ユニット50の第1受光素子52のみによって、クラック11Jで反射される検査光31の強度に関する情報が取得される。また、領域35bから領域35dまでの範囲では、第2反射光検出ユニット58の第2受光素子60のみによって、クラック11Jで反射される検査光31の強度に関する情報が取得される。
【0082】
一方で、領域35cから領域35bまでの範囲では、第1反射光検出ユニット50の第1受光素子52と第2反射光検出ユニット58の第2受光素子60との双方によって、クラック11Jで反射される検査光31の強度に関する情報が取得される。つまり、検査部62cは、領域35aから領域35dまでの範囲の全体において、剥離帯11hのクラック11jで反射された検査光31の強度に関する情報を取得できる。
【0083】
言い換えれば、検査部62cは、X軸に沿う方向で被加工物11の一方側に位置する外周縁から、X軸に沿う方向で被加工物11の他方側に位置する外周縁までの、第1照射予定領域11kと第2照射予定領域11lとの境界の全体(剥離帯11hが形成されるべき形成予定領域の全体)において、剥離帯11hのクラック11jで反射された検査光31の強度に関する情報を取得できる。
【0084】
なお、本実施形態では、検査部62cは、領域35cから領域35bまでの範囲で、第1反射光検出ユニット50により取得された情報と、第2反射光検出ユニット58により取得された情報と、を平均化している。このように、重複して得られる情報を平均化することで、検査の精度が高まる。もちろん、第1反射光検出ユニット50により取得された情報と、第2反射光検出ユニット58により取得された情報と、の一方のみが使用されてもよい。
【0085】
制御ユニット62は、上述のような手順を繰り返すことで、被加工物11に設定されている全ての照射予定領域にレーザービーム21を照射して剥離帯11hを形成し、また、全ての照射予定領域の境界において、剥離帯11hのクラック11jで反射された検査光31の強度に関する情報を取得する。各境界において、剥離帯11hのクラック11jで反射された検査光31の強度に関する情報が取得された後には、検査部62cは、対象の境界に適切な剥離帯11hが形成されているか否かを判定する。
【0086】
対象の境界に適切な剥離帯11hが形成されているか否かを判定する際には、検査部62cは、まず、剥離帯11hが形成されるべき形成予定領域(つまり、対象の境界)に対して、実際に適切な剥離帯11hが形成されたとみなされる領域が占める比率(割合)を算出する(ステップS13)。
【0087】
ここで、任意の検査領域に適切なクラック11jが存在している場合に第1反射光検出ユニット50又は第2反射光検出ユニット58で検出される光の強度は、任意の検査領域に適切なクラック11jが存在していない場合に第1反射光検出ユニット50又は第2反射光検出ユニット58で検出される光の強度に比べて大きくなる。
【0088】
よって、検査部62cは、形成予定領域(対象の境界)の長さ(又は、面積)に対する、検出された光の強度が基準値を超える領域の長さ(又は、面積)の比率(割合)を算出する。つまり、検出された光の強度が基準値を超える領域が、実際に適切な剥離帯11hが形成された領域と見なされる。
【0089】
なお、基準値としては、検査領域に適切なクラック11jが存在する場合に第1反射光検出ユニット50又は第2反射光検出ユニット58で検出される光の強度と、検査領域に適切なクラック11jが存在しない場合に第1反射光検出ユニット50又は第2反射光検出ユニット58で検出される光の強度と、の間の任意の値が採用される。
【0090】
次に、検査部62cは、対象の形成予定領域(境界)において算出した上述の比率を、所定の閾値と比較する(ステップS14)。例えば、被加工物11に存在する全ての照射予定領域にレーザービーム21が照射された後に、全ての形成予定領域(境界)で算出された比率がいずれも閾値に達している場合(ステップS14でYES)には、制御ユニット62は、そのまま被加工物11の加工を終了する。閾値は、80%以上、好ましくは、90%以上、代表的には、95%である。
【0091】
一方で、いずれかの形成予定領域(境界)で算出された比率が閾値に達していない場合(ステップS14でNO)には、制御ユニット62は、被加工物11に対して再びレーザービーム21を照射する再加工、及び/又は加工条件の調整を行う(ステップS15)。被加工物11の再加工は、代表的には、比率が閾値に達していない形成予定領域(境界)に隣接する照射予定領域に対してのみ行われる。もちろん、全ての照射予定領域が再加工されてもよい。なお、再加工の後には、再加工された照射予定領域に対応する形成予定領域(境界)の再検査が行われることが望ましい。
【0092】
調整される加工条件には、代表的には、レーザービーム21の出力等がある。比率が閾値に達していない場合に、レーザービーム21の出力を大きくすることで、適切な剥離帯11hが形成され易くなる。なお、レーザービーム21の繰り返し周波数、各照射予定領域へのレーザービーム21の照射回数(パス数)、X軸に沿う方向へのチャックテーブル24の送り速度等の他の加工条件が調整されてもよい。
【0093】
なお、この加工条件の調整は、比率に応じた態様で行われてもよい。例えば、比率が低い場合には、大きな調整量で加工条件が調整され、比率が高い場合には、小さな調整量で加工条件が調整される。比率と加工条件の調整量との関係を示すテーブル等が記憶装置66に記憶されることで、制御ユニット62は、このテーブル等を参酌して、比率に応じた適切な調整量で加工条件を調整できる。また、比率が著しく低い場合には、制御ユニット62は、その旨をレーザー加工装置2のオペレーターに報知してもよい。
【0094】
以上のように、本実施形態にかかるレーザー加工装置2は、X軸に沿う方向で集光点23の一方側に位置する検査領域のクラック11jで反射した検査光31を検出する第1受光素子52を有する第1反射光検出ユニット50と、X軸に沿う方向で集光点23の他方側に位置する検査領域のクラック11jで反射した検査光31を検出する第2受光素子60を有する第2反射光検出ユニット58と、を備えている。
【0095】
そのため、X軸に沿う方向で被加工物11の一方側に位置する外周縁から、X軸に沿う方向で被加工物11の他方側に位置する外周縁までのレーザービーム21の照射予定領域に、レーザービーム21を照射して剥離帯11hを形成する際に、X軸に沿う方向で被加工物11の一方側に位置する外周縁より外側の領域(第1領域)35aから、X軸に沿う方向で被加工物11の他方側に位置する外周縁より内側の領域(第2領域)35bまでの第1検出範囲37aにおいて、クラック11jで反射する検査光31を第1受光素子52に検出させ、X軸に沿う方向で被加工物11の一方側に位置する外周縁より内側の領域(第3領域)35cから、X軸に沿う方向で被加工物11の他方側に位置する外周縁より外側の領域(第4領域)35dまでの第2検出範囲37bにおいて、クラック11jで反射する検査光31を第2受光素子60に検出させることができる。
【0096】
例えば、X軸に沿う方向で集光点23の一方側に位置する検査領域を検査できる第1反射光検出ユニット50のみを備えた従来のレーザー加工装置では、チャックテーブル24と集光点23とのX軸に沿う方向への相対的な移動量が同じ条件でレーザービーム21の照射予定領域にレーザービーム21を照射しようとすると、被加工物11の一方側に位置する外周縁より外側の領域35aから、被加工物11の他方側に位置する外周縁より内側の領域35bまでの第1検出範囲37aだけで、クラック11jで反射する検査光31の情報が取得される。つまり、この場合には、剥離帯11hの形成予定領域の全体において、クラック11jで反射する検査光31の情報を取得するには、チャックテーブル24と集光点23とのX軸に沿う方向への相対的な移動量を増やす必要がある。
【0097】
これに対して、本実施形態にかかるレーザー加工装置2では、被加工物11に剥離帯11hを形成する際に、従来のレーザー加工装置のように、チャックテーブル24と集光点23とのX軸に沿う方向への相対的な移動量を増やすことなく、剥離帯11hの形成予定領域の全体において、クラック11jで反射する検査光31の情報を取得することができる。つまり、本実施形態にかかるレーザー加工装置2によれば、剥離帯11hの形成と剥離帯11hの検査とを並行して行う場合にも、高い生産性を実現できる。
【0098】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上述した実施形態では、第1検査光照射ユニット46と第2検査光照射ユニット54とで、2つの異なる検査領域に検査光31が照射されているが、1つの検査光照射ユニット(1つの光源)で生成される検査光31を分岐することで、2つの異なる検査領域に検査光31が照射されてもよい。
【0099】
また、上述した実施形態では、送り機構6により、チャックテーブル(保持ユニット)24のX軸に沿う方向への移動と、Y軸に沿う方向への移動と、が実現されているが、他の送り機構により、レーザービーム照射ユニット30の一部(又は全部)のX軸に沿う方向への移動と、Y軸に沿う方向への移動と、が実現されてもよい。また、送り機構6により、チャックテーブル24のX軸に沿う方向への移動(又は、Y軸に沿う方向への移動)が実現され、他の送り機構により、レーザービーム照射ユニット30の一部(又は全部)のY軸に沿う方向への移動(又は、X軸に沿う方向への移動)が実現されてもよい。
【0100】
また、レーザー加工装置2は、第1検査光照射ユニット46、第1反射光検出ユニット50、第2検査光照射ユニット54、及び第2反射光検出ユニット58の配置等が、被加工物11の加工条件等に合わせて自動で調整されるように構成されてもよい。例えば、レーザービーム21の照射予定領域のY軸に沿う方向の間隔が変更された場合に、この変更に合わせて、検査領域の位置が自動で調整されるようにしておけば、検査領域の位置を調整する作業が不要になる。
【0101】
また、第1反射光検出ユニット50や第2反射光検出ユニット58が、検査領域の画像を生成できるように構成されている場合には、制御ユニット62が得られた画像を処理して、剥離帯11hが形成されるべき形成予定領域に対して、実際に適切な剥離帯11hが形成されたとみなされる領域の占める比率(割合)を算出してもよい。
【0102】
また、上述した実施形態では、第1反射光検出ユニット50と第2反射光検出ユニット58とにより高い生産性が実現されているが、1つの反射光検出ユニット(及び1つの検査光照射ユニット)のみにより高い生産性を実現することも可能である。図11は、この変形例において剥離帯11hが検査される様子を模式的に示す平面図である。
【0103】
なお、変形例にかかるレーザー加工装置の構成は、検査光照射ユニットと反射光検出ユニットとがそれぞれ1つである点を除き、実施形態のレーザー加工装置2と同じである。よって、実施形態のレーザー加工装置2と同じ構成要素には同じ符号を付して、それらの詳細な説明を省略する。
【0104】
検査光照射ユニットは、検査光31を照射できる光源を有している。そして、この光源から検査光31が照射される検査領域は、Y軸に対して平行で集光点23を通る直線上の領域を含むように設定されている。また、反射光検出ユニットは、検査領域のクラック11jで反射した検査光31を検出できる受光素子を有している。
【0105】
このレーザー加工装置では、図11に示されるように、X軸に沿う方向で被加工物11の一方側に位置する外周縁に集光点23が位置づけられた状態で、検査光照射ユニットの検査領域が、X軸に沿う方向で被加工物11の一方側に位置する外周縁上の領域35eに位置づけられる。また、X軸に沿う方向で被加工物11の他方側に位置する外周縁に集光点23が位置づけられた状態で、検査光照射ユニットの検査領域が、X軸に沿う方向で被加工物11の他方側に位置する外周縁上の領域35fに位置づけられる。
【0106】
すなわち、変形例にかかるレーザー加工装置の反射光検出ユニットによって検査が可能な検出範囲37cは、X軸に沿う方向で被加工物11の一方側に位置する外周縁上の領域35eから、X軸に沿う方向で被加工物11の他方側に位置する外周縁上の領域35fまでとなる。
【0107】
このレーザー加工装置でも、制御ユニット62は、プログラムに従って、X軸に沿う方向で被加工物11の一方側に位置する外周縁から、X軸に沿う方向で被加工物11の他方側に位置する外周縁までのレーザービーム21の照射予定領域に、レーザービーム21を照射して剥離帯11hを形成する。この際に、X軸に沿う方向で被加工物11の一方側に位置する外周縁から、X軸に沿う方向で被加工物11の他方側に位置する外周縁までの剥離帯11hの形成予定領域の全体において、クラック11jで反射する検査光31が反射光検出ユニットの受光素子で検出される。これにより、制御ユニット62は、クラック11jで反射する検査光31の情報を取得できる。
【0108】
その他、上述した実施形態や変形例にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて変更して実施できる。
【符号の説明】
【0109】
2 :レーザー加工装置
4 :基台
6 :送り機構(加工送り機構、割り出し送り機構)
8 :Y軸ガイドレール
10 :Y軸移動プレート
12 :ネジ軸
14 :Y軸パルスモーター
16 :X軸ガイドレール
18 :X軸移動プレート
20 :ネジ軸
22 :X軸パルスモーター
24 :チャックテーブル
24a :上面(保持面)
26 :クランプ
28 :支持構造
30 :レーザービーム照射ユニット
32 :レーザー発振器
34 :調整器
36 :ハウジング
38 :照射ヘッド
40 :ミラー
42 :集光器
44 :カメラ(撮像ユニット)
46 :第1検査光照射ユニット
48 :第1光源
50 :第1反射光検出ユニット
52 :第1受光素子
54 :第2検査光照射ユニット
56 :第2光源
58 :第2反射光検出ユニット
60 :第2受光素子
62 :制御ユニット
62a :送り制御部
62b :照射制御部
62c :検査部
64 :処理装置
66 :記憶装置
68 :タッチスクリーン(入力装置、出力装置)
11 :被加工物
11J :クラック
11a :第1面
11b :第2面
11c :第1オリエンテーションフラット
11d :第2オリエンテーションフラット
11e :c軸
11f :垂線
11g :c面
11h :剥離帯
11i :改質部
11j :クラック
11k :第1照射予定領域
11l :第2照射予定領域
11m :第3照射予定領域
21 :レーザービーム
23 :集光点
31 :検査光
35a :領域(第1領域)
35b :領域(第2領域)
35c :領域(第3領域)
35d :領域(第4領域)
35e :領域
35f :領域
37a :第1検出範囲
37b :第2検出範囲
37c :検出範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11