IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特開-保護膜形成方法 図1
  • 特開-保護膜形成方法 図2
  • 特開-保護膜形成方法 図3
  • 特開-保護膜形成方法 図4
  • 特開-保護膜形成方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168739
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】保護膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
H01L21/78 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080023
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】小林 寛昌
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA15
5F063AA36
5F063BA32
5F063BA33
5F063BA43
5F063BA44
5F063BA45
5F063BA47
5F063BA48
5F063DF06
5F063DF30
(57)【要約】
【課題】保護膜形成の効率を向上させることが可能な保護膜形成方法を提供する。
【解決手段】被加工物に保護膜を形成する保護膜形成方法であって、保持テーブルで被加工物を保持し、被加工物の表面に液状の保護膜剤を塗布し、保持テーブルを第1の回転速度で回転させることにより、被加工物の表面を保護膜剤で被覆する被覆工程と、保持テーブルを第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度で回転させ、又は、保持テーブルを回転させずに、保護膜剤に振動を付与しながら保護膜剤を乾燥させる乾燥工程と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に保護膜を形成する保護膜形成方法であって、
保持テーブルで該被加工物を保持し、該被加工物の表面に液状の保護膜剤を塗布し、該保持テーブルを第1の回転速度で回転させることにより、該被加工物の表面を該保護膜剤で被覆する被覆工程と、
該保持テーブルを該第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度で回転させ、又は、該保持テーブルを回転させずに、該保護膜剤に振動を付与しながら該保護膜剤を乾燥させる乾燥工程と、を含むことを特徴とする保護膜形成方法。
【請求項2】
該振動は、該被加工物を介して該保護膜剤に付与されることを特徴とする、請求項1記載の保護膜形成方法。
【請求項3】
該振動は、振動数が変化する振動であることを特徴とする、請求項1記載の保護膜形成方法。
【請求項4】
該振動は、超音波帯域に属する振動数の振動であることを特徴とする、請求項1記載の保護膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ等の被加工物に保護膜を形成する保護膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造プロセスでは、互いに交差する複数のストリート(分割予定ライン)によって区画された複数の領域にそれぞれデバイスが形成されたウェーハが用いられる。このウェーハをストリートに沿って分割することにより、デバイスをそれぞれ備える複数のデバイスチップが得られる。デバイスチップは、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の様々な電子機器に組み込まれる。
【0003】
ウェーハの分割には、環状の切削ブレードで被加工物を切削する切削装置が用いられる。また、近年では、レーザー加工によってウェーハを分割するプロセスの開発も進められている。例えば、ウェーハにレーザービームを照射してアブレーション加工を施すことにより、ウェーハの表面から裏面に至るレーザー加工溝がストリートに沿って形成され、ウェーハが複数のデバイスチップに分割される。
【0004】
ウェーハにレーザー加工を施すと、レーザービームが照射された領域で発生した溶融物(デブリ)が飛散し、ウェーハやデバイスがデブリによって汚染されるおそれがある。そこで、ウェーハに保護膜を形成し、保護膜を介してウェーハにレーザービームを照射する手法が提案されている(特許文献1、2参照)。この手法を用いると、ウェーハやデバイスへのデブリの付着が保護膜によって回避される。これにより、ウェーハ又はデバイスの汚染によるデバイスチップの品質低下が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-188475号公報
【特許文献2】特開2004-322168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウェーハ等の被加工物を被覆する保護膜は、被加工物の表面に液状の保護膜剤を塗布した後、保護膜剤を乾燥、硬化させることによって形成される。しかしながら、保護膜剤を十分に乾燥、硬化させるには時間がかかるため、保護膜剤の乾燥工程が保護膜形成の効率を低下させる要因となっている。特に、保護膜剤が厚く形成される場合には、乾燥時間が大幅に延長されるため、生産性の低下がより深刻になる。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、保護膜形成の効率を向上させることが可能な保護膜形成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、被加工物に保護膜を形成する保護膜形成方法であって、保持テーブルで該被加工物を保持し、該被加工物の表面に液状の保護膜剤を塗布し、該保持テーブルを第1の回転速度で回転させることにより、該被加工物の表面を該保護膜剤で被覆する被覆工程と、該保持テーブルを該第1の回転速度よりも遅い第2の回転速度で回転させ、又は、該保持テーブルを回転させずに、該保護膜剤に振動を付与しながら該保護膜剤を乾燥させる乾燥工程と、を含む保護膜形成方法が提供される。
【0009】
なお、好ましくは、該振動は、該被加工物を介して該保護膜剤に付与される。また、好ましくは、該振動は、振動数が変化する振動である。また、好ましくは、該振動は、超音波帯域に属する振動数の振動である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る保護膜形成方法では、被加工物の表面を保護膜剤で被覆した後、保護膜剤に振動を付与しながら保護膜剤を乾燥させる。これにより、保護膜剤の乾燥が促進されて乾燥時間が短縮され、保護膜形成の効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】被加工物を示す斜視図である。
図2】保護膜形成方法を示すフローチャートである。
図3図3(A)は被覆工程における被加工物を示す一部断面正面図であり、図3(B)は乾燥工程における被加工物を示す一部断面正面図である。
図4】振動付与ユニットを示す正面図である。
図5】乾燥促進処理が施される被加工物を示す一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る保護膜形成方法によって保護膜が形成される対象物の構成例について説明する。図1は、被加工物(対象物)11を示す斜視図である。
【0013】
例えば被加工物11は、単結晶シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハであり、互いに概ね平行な第1面11a及び第2面11bを備える。被加工物11は、互いに交差するように格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)13によって、複数の矩形状の領域に区画されている。また、ストリート13によって区画された複数の領域の第1面11a側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等のデバイス15が形成されている。
【0014】
ただし、被加工物11の種類、材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば被加工物11は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、サファイア、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等でなる基板(ウェーハ)であってもよい。また、デバイス15の種類、数、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はなく、被加工物11にはデバイス15が形成されていなくてもよい。
【0015】
被加工物11に各種の処理(保護膜の形成、レーザー加工等)を施す際には、被加工物11の取り扱い(搬送、保持等)の便宜のため、被加工物11が環状のフレーム17によって支持される。フレーム17はSUS(ステンレス鋼)等の金属でなり、フレーム17の中央部にはフレーム17を厚さ方向に貫通する円形の開口17aが設けられている。なお、開口17aの直径は被加工物11の直径よりも大きい。
【0016】
被加工物11及びフレーム17には、円形のシート19が固定される。例えばシート19として、円形に形成されたフィルム状の基材と、基材上に設けられた粘着層(糊層)とを含むテープが用いられる。基材は、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂でなる。また、粘着層は、エポキシ系、アクリル系、又はゴム系の接着剤等でなる。なお、粘着層は紫外線硬化性樹脂であってもよい。
【0017】
被加工物11がフレーム17の開口17aの内側に配置された状態で、シート19の中央部が被加工物11の第2面11b側に貼付され、シート19の外周部がフレーム17に貼付される。これにより、被加工物11がシート19を介してフレーム17によって支持される。
【0018】
被加工物11を加工装置で加工してストリート13に沿って分割することにより、デバイス15をそれぞれ備える複数のデバイスチップが製造される。被加工物11の分割には、例えばレーザー加工装置が用いられる。
【0019】
レーザー加工装置は、被加工物11を保持する保持面を有する保持テーブル(チャックテーブル)と、被加工物11にレーザービームを照射するレーザー照射ユニットとを備える。レーザー照射ユニットは、レーザー発振器と、レーザー発振器から出射したレーザービームを被加工物11へと導く光学系とを備え、光学系は複数の光学素子(集光レンズ、ミラー等)を含んで構成される。被加工物11を保持テーブルの保持面で保持し、レーザー照射ユニットから被加工物11にレーザービームを照射することにより、被加工物11に所定のレーザー加工が施される。
【0020】
例えば、レーザービームの照射条件は、被加工物11にアブレーション加工が施されるように設定される。そして、被加工物11にレーザービームがストリート13に沿って照射され、被加工物11のうちレーザービームが照射された領域がアブレーション加工によって除去される。これにより、被加工物11の第1面11aから第2面11bに至るレーザー加工溝がストリート13に沿って形成され、被加工物11がストリート13に沿って分割される。
【0021】
ただし、被加工物11を分割するためのレーザー加工の内容に制限はない。例えば、被加工物11の第1面11a側に、深さが被加工物11の厚さ未満であるレーザー加工溝をストリート13に沿って形成してもよい。この場合には、被加工物11の第2面11b側を研削砥石で研削し、レーザー加工溝を被加工物11の第2面11bで露出させることにより、被加工物11をストリート13に沿って分割できる。
【0022】
被加工物11にレーザー加工を施すと、レーザービームが照射された領域で発生する溶融物(デブリ)が飛散して被加工物11に付着し、被加工物11が汚染されるおそれがある。そこで、被加工物11にレーザー加工を施す際には、あらかじめ被加工物11に保護膜が形成され、レーザービームは保護膜を介して被加工物11に照射される。これにより、被加工物11へのデブリの付着が防止される。
【0023】
次に、被加工物11に保護膜を形成する方法の具体例について説明する。図2は、保護膜形成方法を示すフローチャートである。本実施形態では、被覆工程S1及び乾燥工程S2を実施することにより、被加工物11の表面(第1面11a又は第2面11b)に保護膜を形成する。なお、以下では一例として被加工物11の第1面11a側に保護膜を形成する例について説明するが、同様の方法で被加工物11の第2面11b側に保護膜を形成することもできる。
【0024】
まず、被加工物11の表面を保護膜剤で被覆する(被覆工程S1)。図3(A)は、被覆工程S1における被加工物11を示す一部断面正面図である。本実施形態では、保護膜形成ユニット2によって被加工物11に保護膜が形成される。保護膜形成ユニット2は、例えばスピンコーターであり、被加工物11を保持する保持テーブル(スピンナテーブル)4と、保護膜の原料である保護膜剤を供給する保護膜剤供給ユニット6とを備える。
【0025】
保持テーブル4の上面は、水平面と概ね平行な平坦面であり、被加工物11を保持する円形の保持面4aを構成している。保持面4aは、保持テーブル4の内部に形成された流路(不図示)、バルブ等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。また、保持テーブル4には、保持テーブル4を鉛直方向(高さ方向、上下方向)と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0026】
保持テーブル4の上方には、保護膜剤供給ユニット6が設けられている。保護膜剤供給ユニット6は、保持テーブル4で保持された被加工物11に液状の保護膜剤10を供給するノズル8を備える。例えば、ノズル8はアーム(不図示)の先端部に固定され、アームの基端部にはアームを旋回させるモータ等の回転駆動源(不図示)が接続されている。回転駆動源でアームを旋回させることにより、ノズル8を保持面4aに重なる位置(供給位置)と保持面4aに重ならない位置(退避位置)とに位置付けることができる。
【0027】
保護膜剤10は、溶媒に溶質を溶解させることによって生成される。例えば、溶媒として水等が用いられ、溶質として水溶性の樹脂等が用いられる。水溶性の樹脂の具体例としては、PVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、PEG(ポリエチレングリコール)、PEO(酸化ポリエチレン)等が挙げられる。
【0028】
被覆工程S1では、まず、被加工物11が保持テーブル4で保持される。具体的には、被加工物11は、第1面11a側が上方に露出して第2面11b側(シート19側)が保持面4aに対面するように、保持テーブル4上に配置される。この状態で保持面4aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、被加工物11がシート19を介して保持テーブル4によって吸引保持される。なお、保持テーブル4の周囲には、フレーム17を把持して固定する複数のクランプ(不図示)が設けられていてもよい。
【0029】
次に、ノズル8を保持テーブル4の回転軸及び被加工物11の中心と重なる位置に配置する。そして、保持テーブル4を回転させつつ、ノズル8から被加工物11に保護膜剤10を滴下する。これにより、被加工物11の中央部の第1面11a側に保護膜剤10が塗布される。そして、被加工物11の中央部に供給された保護膜剤10は、回転する保持テーブル4及び被加工物11の遠心力によって、被加工物11の外周縁に向かって放射状に流動する。その結果、保護膜剤10が被加工物11の第1面11aの全体に均一に広がり、被加工物11の第1面11a側が保護膜剤10によって被覆される。
【0030】
保持テーブル4の回転速度や保護膜剤10の供給量は、被加工物11のサイズ、被加工物11を被覆する保護膜剤10の厚さ、保護膜剤10の粘性等に応じて適宜設定される。例えば、被覆工程S1における保持テーブル4の回転速度(第1の回転速度)は、1500rpm以上6000rpm以下に設定される。また、保護膜剤10の供給量は、例えば5ml以上30ml以下に設定される。
【0031】
なお、被覆工程S1における保持テーブル4の回転及び保護膜剤10の供給のタイミングに制限はない。具体的には、保持テーブル4を回転させた状態で被加工物11に保護膜剤10を供給してもよいし、被加工物11の中央部に所定の量の保護膜剤10を供給した後に保持テーブル4の回転を開始してもよい。
【0032】
次に、被加工物11を被覆している保護膜剤10を乾燥させる(乾燥工程S2)。図3(B)は、乾燥工程S2における被加工物11を示す一部断面正面図である。
【0033】
乾燥工程S2では、保護膜剤供給ユニット6から被加工物11への保護膜剤10の供給を停止し、保持テーブル4を回転させたまま被加工物11を一定時間放置する。これにより、保護膜剤10が乾燥して硬化し、水溶性の樹脂でなる保護膜12となる。なお、乾燥時間は、保護膜剤10の材料や厚さに応じて適宜設定される。このようにして、被加工物11の第1面11a側を被覆する保護膜12が形成される。
【0034】
なお、乾燥工程S2における保持テーブル4の回転速度(第2の回転速度)は、被覆工程S1における保持テーブル4の回転速度(第1の回転速度)よりも遅いことが好ましい。具体的には、第2の回転速度は第1の回転速度の85%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。これにより、被加工物11の遠心力による保護膜剤10の飛散が抑制され、保護膜12が意図せず薄くなることを防止できる。例えば、第2の回転速度は1000rpm以上5000rpm以下に設定される。また、保護膜剤10の飛散がより生じにくくなるように、乾燥工程S2では保持テーブル4を回転させずに停止させた状態で被加工物11を一定時間放置してもよい。
【0035】
ここで、保護膜剤10を十分に乾燥、硬化させるためには、被加工物11が保持テーブル4上に置かれた状態を長時間維持する必要があり、これが保護膜12の形成工程を長引かせる原因となる。特に、保護膜剤10が厚く形成される場合には、乾燥時間が大幅に延長されるため、生産性の低下がより深刻になる。
【0036】
具体的には、被加工物11に保護膜剤10が塗布された状態においては、被加工物11に接触していない保護膜剤10の露出面側(図3(B)では保護膜剤10の上面側)で溶媒の離脱が生じやすい。そのため、被加工物11を静止させた状態で放置すると、保護膜剤10の露出面側が優先的に乾燥し、保護膜剤10の露出面側に溶質の薄膜が形成される(皮張り)。その結果、保護膜剤10の内部の溶媒が溶質の薄膜によって覆われた状態となり、保護膜剤10の内部から溶媒が離脱しにくくなる。このような状態が、保護膜剤10の全体を乾燥、硬化させるために必要な時間が長くなる要因の一つになっていると推察される。
【0037】
そこで、本実施形態においては、保護膜剤10に振動を付与しながら保護膜剤10を乾燥させる。これにより、保護膜剤10の露出面側における薄膜の形成(皮張り)が抑制され、保護膜剤10の全体から溶媒が離脱しやすくなる。その結果、保護膜剤10の乾燥時間が短縮される。
【0038】
図4は、振動付与ユニット20を示す正面図である。例えば、保護膜剤10に振動を付与する振動付与ユニット20が保持テーブル4に連結される。振動付与ユニット20は、保持テーブル4及び被加工物11を介して保護膜剤10に振動を付与する。
【0039】
具体的には、振動付与ユニット20は、モータ等の回転駆動源22を備える。回転駆動源22の出力軸には、鉛直方向に沿って配置された円柱状のスピンドル24が接続されている。スピンドル24の上端部には振動子26が固定されており、振動子26は保持テーブル4の下面側の中央部に接続されている。
【0040】
例えば、振動子26としてランジュバン型振動子が用いられる。この場合、振動子26に所定の交流電圧を印加することによって、振動子26が所定の振動数で振動し、保持テーブル4に振動が付与される。例えば、振動子26は超音波帯域に属する振動数で振動し、超音波帯域に属する振動数の振動(超音波振動)を保持テーブル4に付与する。
【0041】
保護膜剤10の乾燥中(図3(B)参照)に振動子26を作動させると、振動子26から保持テーブル4に付与された超音波振動が、シート19及び被加工物11を介して保護膜剤10に伝達される。そして、保護膜剤10に超音波振動が付与されると、乾燥中の保護膜剤10が攪拌されて溶質が均一に分散され、保護膜剤10の露出面側における皮張りが抑制される。これにより、保護膜剤10の内部から溶媒が離脱しやすくなり、保護膜剤10の乾燥及び硬化が促進される。
【0042】
なお、保護膜剤10に振動を一定の振動数で付与し続けると、保護膜剤10の表面にうねりが生じ、乾燥後の保護膜剤10(保護膜12)に厚さのばらつきが生じやすくなる。そのため、保護膜剤10の乾燥中は、振動数が変化する振動を保護膜剤10に付与してもよい。具体的には、振動子26に印加される交流電圧を制御することにより、振動子26から保持テーブル4、シート19及び被加工物11を介して保護膜剤10に付与される振動の振動数を増減させる。これにより、保護膜剤10の表面のうねりが抑制され、保護膜12の厚さばらつきが低減される。
【0043】
保護膜剤10に付与される振動の振動数は、保護膜剤10の材質、厚さ等に応じて適宜設定できる。例えば、保護膜剤10の皮張りを抑制可能であれば、超音波振動よりも振動数が小さい振動が保護膜剤10に付与されてもよい。また、振動数を変動させる場合には、振動数の上限値と下限値がともに超音波帯域に属していてもよいし、振動数の上限値と下限値の一方又は両方が超音波帯域から外れていてもよい。
【0044】
また、保護膜剤10に振動を付与する方法にも制限はない。例えば、保護膜形成ユニット2は、振動付与ユニット20に代えて、保護膜剤10に直接振動を付与する振動付与ユニットを備えていてもよい。
【0045】
上記のように被加工物11の第1面11a側に保護膜12が形成された後、被加工物11に所定の加工が施される。例えば、保護膜形成ユニット2はレーザー加工装置に搭載される。そして、レーザー加工装置は、保護膜形成ユニット2で被加工物11に保護膜12を形成した後、被加工物11にレーザービームを照射してレーザー加工を施す。
【0046】
例えば、被加工物11に対して吸収性を有する波長のレーザービームが、保護膜12を介して被加工物11の第1面11a側に照射される。これにより、被加工物11にアブレーション加工が施される。このとき、レーザービームが照射された領域でデブリが発生するが、被加工物11の第1面11a側には保護膜12が形成されているため、被加工物11へのデブリの付着が保護膜12によって防止される。
【0047】
レーザー加工が完了すると、被加工物11から保護膜12が除去される。このとき、保護膜12に付着しているデブリも保護膜12とともに除去される。なお、保護膜12が水溶性の樹脂でなる場合には、被加工物11に純水等の洗浄液を供給するのみで保護膜12を容易に除去できる。これにより、保護膜12の除去工程が簡略化される。
【0048】
以上の通り、本実施形態に係る保護膜形成方法では、被加工物11の表面を保護膜剤10で被覆した後、保護膜剤10に振動を付与しながら保護膜剤10を乾燥させる。これにより、保護膜剤10の乾燥が促進されて乾燥時間が短縮され、保護膜形成の効率が向上する。
【0049】
なお、乾燥工程S2では、保護膜剤10への振動の付与に加えて、保護膜剤10に乾燥を促進させる処理(乾燥促進処理)を施してもよい。例えば、保護膜剤10に温風、マイクロ波、赤外線等を当てることにより、保護膜剤10を加熱しながら乾燥させてもよい。
【0050】
図5は、乾燥促進処理が施される被加工物11を示す一部断面正面図である。保護膜形成ユニット2は、保護膜剤10の乾燥を促進させる乾燥促進ユニット30を備えていてもよい。例えば乾燥促進ユニット30は、ヒートガンによって構成され、温風34を噴射するノズル32を備える。ヒートガンは、電熱線等の熱源(発熱機構)と、ファン等の送風機構とを備え、空気を加熱してノズル32から噴射する。保護膜剤10の乾燥中に温風34を保護膜剤10に向かって噴射することにより、保護膜剤10の乾燥が促進され、保護膜剤10の乾燥に要する時間が短縮される。
【0051】
ただし、乾燥促進ユニット30の構成に制限はない。例えば乾燥促進ユニット30は、保護膜剤10にマイクロ波を照射するマイクロ波照射ユニットや、保護膜剤10に赤外線を照射する赤外線ランプを備えていてもよい。保護膜剤10の乾燥中に、マイクロ波又は赤外線を保護膜剤10に向かって照射することにより、保護膜剤10の乾燥が促進される。
【0052】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0053】
11 被加工物(対象物)
11a 第1面
11b 第2面
13 ストリート(分割予定ライン)
15 デバイス
17 フレーム
17a 開口
19 シート
2 保護膜形成ユニット
4 保持テーブル(スピンナテーブル)
4a 保持面
6 保護膜剤供給ユニット
8 ノズル
10 保護膜剤
12 保護膜
20 振動付与ユニット
22 回転駆動源
24 スピンドル
26 振動子
30 乾燥促進ユニット
32 ノズル
34 温風
図1
図2
図3
図4
図5