(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168909
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】歩行型作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 76/00 20060101AFI20231121BHJP
B60K 28/14 20060101ALI20231121BHJP
B60K 23/00 20060101ALI20231121BHJP
B60K 23/02 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
A01B76/00
B60K28/14
B60K23/00 Z
B60K23/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080293
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】冨田 宗樹
【テーマコード(参考)】
2B041
3D036
3D037
【Fターム(参考)】
2B041AA13
2B041AB04
2B041AC03
3D036AA04
3D036AA05
3D037FA19
3D037FB05
(57)【要約】
【課題】作業者が後方の障害物とハンドル杆との間に挟まれた場合であっても、作業者のハンドル杆に対する操作性を残しつつ作業者に加わる負荷(荷重)を低減することが可能な歩行型作業機を提供すること。
【解決手段】歩行型作業機500は、発動機14の動力を用いて走行する車輪13を有し、所定の作業を行う車体10と、車体10に一端が固定され、車体10の後方に延びる前部分31と、前部分31の他端に設けられ、作業者が把持する後部分32と、を有し、後部分32が前部分31に対して車体10の前方方向にスライド移動可能なハンドル杆30と、後部分32のスライド移動を許容しつつスライド移動に抗する力を後部分32に付与するガススプリング50と、後部分32のスライド移動に連動して、車輪13を停止させるクラッチワイヤ41及びスイッチ45と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部の動力を用いて走行する走行部を有し、所定の作業を行う車体と、
前記車体に一端が固定され、前記車体の後方に延びる第1部分と、前記第1部分の他端に設けられ、作業者が把持する第2部分と、を有し、前記第2部分が前記第1部分に対して前記車体の前方方向にスライド移動可能なハンドル杆と、
前記第2部分の前記スライド移動を許容しつつ前記スライド移動に抗する力を前記第2部分に付与する規制部と、
前記第2部分の前記スライド移動に連動して、前記走行部の走行を停止させる停止部と、を備える歩行型作業機。
【請求項2】
前記第2部分の前記スライド移動を阻止するためのロック操作部を備え、
前記ロック操作部は、前記車体の後進時に前記第2部分の前記スライド移動の阻止を解除する、請求項1に記載の歩行型作業機。
【請求項3】
前記ロック操作部は、前記規制部の伸縮を許可又は阻止するために前記規制部内に設けられたロック機構を操作することで、前記第2部分の前記スライド移動を阻止又は前記スライド移動の阻止を解除する、請求項2に記載の歩行型作業機。
【請求項4】
前記ロック操作部は、前記第2部分の前記スライド移動を阻止するために前記規制部の外部に設けられた阻止部材を動かすことで、前記第2部分の前記スライド移動を阻止又は前記スライド移動の阻止を解除する、請求項2に記載の歩行型作業機。
【請求項5】
前記車体の進行方向を前進又は後進に切替えるために前記作業者が操作する第1切替部を備え、
前記ロック操作部は、前記車体が後進するように前記作業者が前記第1切替部を操作することに連動して、前記第2部分の前記スライド移動の阻止を解除する、請求項2から4のいずれか一項に記載の歩行型作業機。
【請求項6】
前記車体の進行方向を前進又は後進に切替えるために前記作業者が操作する第1切替部と、
前記駆動部から前記走行部に前記動力が伝わる伝達状態と前記動力が遮断される遮断状態とを切替えるために前記作業者が操作する第2切替部を備え、
前記ロック操作部は、前記車体が後進するように前記作業者が前記第1切替部を操作しかつ前記伝達状態になるように前記作業者が前記第2切替部を操作することに連動して、前記第2部分の前記スライド移動の阻止を解除する、請求項2から4のいずれか一項に記載の歩行型作業機。
【請求項7】
前記第2部分の前記スライド移動を阻止するためのロック操作部を備え、
前記ロック操作部は、前記車体の後進時に、前記規制部の初期反力より大きな荷重が前記第2部分に加わった場合に前記第2部分の前記スライド移動の阻止を解除する、請求項1に記載の歩行型作業機。
【請求項8】
前記規制部は、ガススプリング又はショックアブソーバーである、請求項1から4のいずれか一項に記載の歩行型作業機。
【請求項9】
前記駆動部は、発動機であり、
前記停止部は、前記第2部分の前記スライド移動に連動して、前記発動機が有する点火プラグへの給電を停止する、請求項1から4のいずれか一項に記載の歩行型作業機。
【請求項10】
前記停止部は、前記第2部分の前記スライド移動に連動して、前記駆動部の動力を前記走行部に伝達するクラッチを切断する、請求項1から4のいずれか一項に記載の歩行型作業機。
【請求項11】
前記停止部は、前記作業者が前記クラッチを接続する操作を行っている場合であっても、前記第2部分の前記スライド移動に連動して、前記クラッチを切断する、請求項10に記載の歩行型作業機。
【請求項12】
前記駆動部は、発動機であり、
前記停止部は、前記第2部分の前記スライド移動に連動して、前記発動機が有する点火プラグへの給電を停止し且つ前記発動機の動力を前記走行部に伝達するクラッチを切断する、請求項1から4のいずれか一項に記載の歩行型作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
作業者が車体の後方に設けられたハンドル杆を把持した状態で随行しながら、車体に設けられた作業部により作業を実施する歩行型作業機が知られている。作業者が歩行型作業機の方向転換(挟所での旋回又は切り返し等)、畝合わせ、又は倉庫からの出し入れ等を行うために歩行型作業機を後進させるときがある。従来、歩行型作業機の後進時に、作業者が背後の障害物とハンドル杆との間に挟まれて圧迫されるのを抑制するための安全装置が知られている。
【0003】
安全装置として以下のような構成が知られている。例えば、ハンドル杆に摺動機構を設け、ハンドル杆に所定以上の荷重が付加されたときの摺動機構の摺動に連動してエンジンを停止させる構成が知られている(例えば特許文献1)。例えば、ハンドル杆の後端よりも後方へ突出させた挾圧杆と、デッドマンクラッチを「入」状態に保持する保持手段とを設けるとともに、挾圧杆を前後移動可能にすることで、挾圧杆の前方移動によって保持手段の保持を解除できる構成が知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09-109725号公報
【特許文献2】特開2005-88769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歩行型作業機の後進時に作業者が背後の障害物とハンドル杆との間に挟まれた場合、挟まれてから僅かな時間で作業者に最も大きな力が加わることを発明者は新たに見出した。特許文献1、2で開示された技術のように、ハンドル杆に所定以上の荷重が付加されたときにエンジンが停止したり、クラッチの切断を可能にしたりしても、作業者が障害物とハンドル杆との間に挟まれてから瞬時に後進が止まることは難しい。このため、作業者に大きな負荷(荷重)が加わる恐れがある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、作業者が背後の障害物とハンドル杆との間に挟まれた場合であっても、作業者のハンドル杆に対する操作性を残しつつ作業者に加わる負荷(荷重)を低減することが可能な歩行型作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の歩行型作業機は、駆動部の動力を用いて走行する走行部を有し、所定の作業を行う車体と、前記車体に一端が固定され、前記車体の後方に延びる第1部分と、前記第1部分の他端に設けられ、作業者が把持する第2部分と、を有し、前記第2部分が前記第1部分に対して前記車体の前方方向にスライド移動可能なハンドル杆と、前記第2部分の前記スライド移動を許容しつつ前記スライド移動に抗する力を前記第2部分に付与する規制部と、前記第2部分の前記スライド移動に連動して、前記走行部の走行を停止させる停止部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の歩行型作業機は、作業者が背後の障害物とハンドル杆との間に挟まれた場合であっても、作業者のハンドル杆に対する操作性を残しつつ作業者に加わる負荷(荷重)を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る歩行型作業機を+Y方向から見た状態を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る歩行型作業機を+Z方向から見た状態を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る歩行型作業機を斜め上方から見た状態を示す図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、第1の実施形態におけるガススプリングを示す断面図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、第1の実施形態におけるガススプリング近傍を示す図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、第1の実施形態における変速レバー近傍を示す図である。
【
図7】
図7は、変速レバーがN(ニュートラル)の位置にあり、クラッチ杆が握られていない状態のハンドル杆を斜め上方から見た状態を示す図である。
【
図8】
図8は、変速レバーがN(ニュートラル)の位置にあり、クラッチ杆が握られていない状態のハンドル杆を+Y方向から見た状態を示す図である。
【
図9】
図9は、変速レバーがR(リバース)に入れられ且つクラッチ杆が握られた状態のハンドル杆を斜め上方から見た状態を示す図である。
【
図10】
図10は、変速レバーがR(リバース)に入れられ且つクラッチ杆が握られた状態のハンドル杆を+Y方向から見た状態を示す図である。
【
図11】
図11は、歩行型作業機の後進時に作業者が背後の障害物とハンドル杆との間に挟まれた状態のハンドル杆を斜め上方から見た状態を示す図である。
【
図12】
図12は、歩行型作業機の後進時に作業者が背後の障害物とハンドル杆との間に挟まれた状態のハンドル杆を+Y方向から見た状態を示す図である。
【
図14】
図14は、歩行型作業機の後進時に作業者が背後の障害物とハンドル杆との間に挟まれ始めてから作業者に掛かる負荷(荷重)の推移を示すグラフである。
【
図15】
図15は、第2の実施形態に係る歩行型作業機を+Z方向から見た状態を示す図である。
【
図16】
図16(a)及び
図16(b)には、第2の実施形態における変速レバー近傍を示す図である。
【
図17】
図17(a)及び
図17(b)は、変速レバーがR(リバース)以外に設定されているときのロック切替機構を示す図である。
【
図18】
図18(a)及び
図18(b)は、変速レバーがR(リバース)に設定されているときのロック切替機構を示す図である。
【
図19】
図19は、ハンドル杆の後部分がスライド移動した後のロック切替機構を示す図である。
【
図20】
図20は、第3の実施形態に係る歩行型作業機を斜め上方から見た状態を示す図である。
【
図21】
図21(a)は、第4の実施形態において、変速レバーがR(リバース)以外に入れられている場合のロック操作部近傍を示す図、
図21(b)は、
図21(a)の領域Aの拡大図である。
【
図22】
図22(a)は、第4の実施形態において、変速レバーがR(リバース)に入れられた場合のロック操作部近傍を示す図、
図22(b)は、
図22(a)の領域Aの拡大図である。
【
図23】
図23(a)は、第4の実施形態において、作業者が背後の障害物とハンドル杆との間に挟まれて、ハンドル杆の後部分が前部分に対してスライド移動したときのロック操作部近傍を示す図、
図23(b)は、
図23(a)の領域Aの拡大図である。
【
図24】
図24(a)から
図24(c)は、第5の実施形態におけるロック操作部近傍を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《第1の実施形態》
以下、第1の実施形態に係る歩行型作業機500について、
図1~
図14に基づいて説明する。本第1の実施形態の歩行型作業機500は、例えば歩行型耕うん機(歩行型トラクター)であり、発動機から動力を得て自動走行し、自動走行中に耕うん作業を行うものである。なお、歩行型作業機500は、例えば歩行型除雪機又は歩行型田植機等、歩行型耕うん機以外の場合でもよい。また、本第1の実施形態の歩行型作業機500は、2つの車輪を有する1軸2輪型の歩行型作業機であるが、この場合に限られず、例えば4つの車輪を有する2軸4輪型の歩行型作業機やクローラ型の歩行型作業機等の場合でもよい。
【0011】
図1から
図3には、歩行型作業機500の構成が概略的に示されている。歩行型作業機500の前進方向を+X方向、後進方向を-X方向、X軸に水平面内で直交する方向(左右方向)のうち+X方向を向いたときの左方向を+Y方向、右方向を-Y方向、鉛直方向の上向きを+Z方向、下向きを-Z方向とする。
図1は、歩行型作業機500を+Y方向から見た状態を示し、
図2は、歩行型作業機500を+Z方向から見た状態を示し、
図3は、歩行型作業機500を斜め上方から見た状態を示している。
【0012】
歩行型作業機500は、
図1から
図3に示すように、車体10と、車体10の後方に設けられた作業部11と、車体10に設けられ、Y軸方向に延びる駆動軸としての車軸12と、車軸12の両端部に設けられた車輪13と、車体10に設けられた発動機14と、車体10に設けられた変速レバー15と、車体10の後方に設けられ、作業者が把持するハンドル杆30と、を備える。発動機14は、車輪13や、作業部11が有する耕うん爪16を回転させる駆動部である。なお、車体10は、発動機14のほか、燃料タンクやマフラー等、車輪13及び耕うん爪16を回転駆動させるために必要な装置も保持する。
【0013】
作業部11は、耕うん爪16を有するロータリ耕うん装置である。耕うん爪16は、発動機14からの動力を得て回転する。作業部11は、作業者がハンドル杆30を上下させることで、車輪13の転動により昇降する。作業者は、耕うん作業時は作業部11を下方に降下させて、耕うん爪16を土中に貫入させた状態で使用する。なお、歩行型作業機500においては、安全のため、後進時は耕うん爪16が動作しないようになっている。あるいは、耕うん爪16が動作しているときは、歩行型作業機500は後進できないようになっている。
【0014】
車輪13は、発動機14からクラッチ(不図示)を介して車軸12に供給される動力により回転する。車輪13は、車体10を走行させる走行部である。クラッチは、発動機14と車輪13の間に設けられ、発動機14から車輪13に動力を伝達したり遮断したりすることを機械的に行う。
【0015】
変速レバー15は、車輪13の回転方向や速度を切替える切替部であり、ハンドル杆30の近傍に設けられている。作業者は、表示板17に設けられた溝部18(
図6(a)及び
図6(b)参照)に沿って変速レバー15を操作することで動作モードを変更することができ、歩行型作業機500を前進又は後進させることができる。
【0016】
ハンドル杆30は、車体10に一端が固定され、車体10の後方に延びる前部分31と、前部分31の他端に取り付けられ、作業者が把持する後部分32と、を有する。前部分31のうち車体10の-X方向側に位置する箇所に、後部分32を前部分31に取り付けるための筒状の取付部材33が設けられている。取付部材33は、後部分32のY軸方向の中央部に対して対称に2つ設けられている。後部分32は、Y軸方向の中央部に対して対称に設けられた2つの突出状のガイド部34が筒状の取付部材33内に挿入されることで、前部分31に対してX軸方向にスライド移動可能となって前部分31に取り付けられている。
【0017】
ハンドル杆30には、クラッチ杆40及びガススプリング50が設けられている。なお、不図示ではあるが、ハンドル杆30には、エンジンスイッチも設けられている。
【0018】
クラッチ杆40は、ハンドル杆30の後部分32の上側に配置され、作業者がハンドル杆30の後部分32と共に把持できるようになっている。クラッチ杆40は、ハンドル杆30の後部分32の下側に設けられた回転軸を中心に回動可能となって、ハンドル杆30の後部分32に取り付けられている。
【0019】
クラッチ杆40にはクラッチワイヤ41のインナーワイヤ41a(アウターケーブル41bに被覆されているインナー部分)が接続されている。インナーワイヤ41aは、ハンドル杆30の後部分32の下側に設けられたクラッチ杆40の回転軸とはハンドル杆30の後部分32を挟んで反対側に位置してクラッチ杆40に接続されている。クラッチワイヤ41のアウターケーブル41bの端部は、作業者がクラッチ杆40を放した場合及び後述するようにハンドル杆30の後部分32が前部分31に対して+X方向にスライド移動した場合に、アウターケーブル41bの端部からインナーワイヤ41aのクラッチ杆40への取付位置までの距離が小さくなるような位置に取り付けられている。例えば、アウターケーブル41bの端部は、ハンドル杆30の前部分31に設けられた取付部材33に固定された固定部35(
図2参照)に取り付けられている。作業者がハンドル杆30の後部分32と共にクラッチ杆40を握ると、クラッチワイヤ41のインナーワイヤ41aが引っ張られてクラッチが接続され、発動機14から車軸12へ動力が伝達される(伝達状態となる)。一方、作業者がクラッチ杆40から手を放すと、インナーワイヤ41aが元の状態に戻ってクラッチが切断され、発動機14から車軸12への動力の伝達が遮断される(遮断状態となる)。このように、作業者は、クラッチ杆40を操作することによって歩行型作業機500の走行を制御することができる。
【0020】
ガススプリング50は、圧縮ガスの反力を使用したばねであり、伸縮できない状態(ロック状態)と、伸縮が可能な状態(ロック解除状態)と、を切り替えるロック機構を備える。
図4(a)及び
図4(b)には、第1の実施形態におけるガススプリング50の断面図が示されている。
図4(a)は、ガススプリング50がロック状態にあるときの断面図であり、
図4(b)は、ロック解除状態にあるときの断面図である。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、ガススプリング50は、シリンダ51の内部がフリーピストン52によって窒素ガスなどの圧縮ガスが充満した空間53とオイルが充満した空間54とに分けられている。オイルが充満した空間54には、ピストンロッド55に接続されたピストン56が設けられている。ピストン56には、オリフィス孔57と、オリフィス孔57をオイルが流れること及び流れないことの切り替えを行うバルブ58と、が設けられている。バルブ58は、ピストンロッド55の内部にピストンロッド55に対して移動可能に設けられたプッシュロッド59に接続されている。空間53内の圧縮ガスの圧力により、ピストン56はピストンロッド55側に向かって付勢されている。また、プッシュロッド59に外部からの力が加わっていない状態では、空間53内の圧縮ガスの圧力により、バルブ58がピストン56に接触した状態(
図4(a)の状態)が維持される。
【0021】
バルブ58がピストン56に接触した状態(
図4(a)の状態)では、オイルはオリフィス孔57を流れることができず、ピストン56は動くことができない。このため、ガススプリング50はロック状態となる。一方、バルブ58がピストン56から離れる方向に移動した状態(
図4(b)の状態)では、オイルはオリフィス孔57を流れることができ、ピストン56は動くことが可能となる。このため、ガススプリング50はロック解除状態となる。
【0022】
図5(a)及び
図5(b)は、第1の実施形態におけるガススプリング50近傍を示す図である。
図5(a)は、ロック状態にあるガススプリング50を示し、
図5(b)は、ロック解除状態にあるガススプリング50を示している。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、ガススプリング50の一端には、ロック状態とロック解除状態とを切り替えるロック操作部60が設けられている。
【0023】
ロック操作部60は、ガススプリング50のピストンロッド55の端部に取り付けられたフランジ部61と、フランジ部61に設けられた回転軸62を軸心として揺動可能にフランジ部61に取り付けられたアーム63と、アーム63よりもピストンロッド55側に位置してフランジ部61に取り付けられた固定部64と、を含む。アーム63にはロックワイヤ42のインナーワイヤ42aが接続されている。ロックワイヤ42のアウターケーブル42bの端部は固定部64に取り付けられている。
【0024】
ガススプリング50は、ロック操作部60のフランジ部61がハンドル杆30の後部分32に設けられた固定部36に取り付けられることで、その一端がハンドル杆30の後部分32に接続されている。固定部36は、ハンドル杆30の後部分32のY軸方向の中央部に+X方向に突出して設けられている。また、ガススプリング50は、シリンダ51がハンドル杆30の前部分31に設けられた取付部材33に固定された固定部37に取り付けられることで、ハンドル杆30の前部分31に接続されている。固定部37は、Y軸方向を長手方向とする板状部材であり、長手方向の中央部にガススプリング50のシリンダ51が固定されている。
【0025】
アーム63には、プッシュロッド59(不図示)の端部が接触した状態となっており、プッシュロッド59が
図4(a)の状態にあるときには、アーム63を、回転軸62を中心とした反時計回り方向に付勢する。これにより、インナーワイヤ42aが引っ張られない限り、アーム63は、
図5(a)に示すような状態(
図5(b)に対し、回転軸62を中心として反時計回りに回動した状態)に維持される。この状態では、バルブ58がピストン56に設けられたオリフィス孔57を閉鎖しているため、オイルはオリフィス孔57を流れることができず、ピストン56は動くことができない。よって、
図5(a)の状態では、ガススプリング50はロック状態となる。一方、
図5(b)の状態のようにアーム63がロックワイヤ42のインナーワイヤ42aにより引っ張られて回転軸62を中心として時計回り方向に回動すると、
図4(b)のようにプッシュロッド59がピストンロッド55に対して空間53側に押し込まれて、プッシュロッド59の端部に設けられたバルブ58はオリフィス孔57から離れる方向に移動する。これにより、オイルはオリフィス孔57を流れることができ、ピストン56は動くことが可能となる。よって、
図5(b)の状態では、ガススプリング50はロック解除状態となる。
【0026】
ガススプリング50がロック状態(伸縮できない状態)にあるときには、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動が阻止される。これに対し、ガススプリング50がロック解除状態(伸縮可能な状態)にあるときには、ハンドル杆30の後部分32に所定値以上の外力が加わったときに、ハンドル杆30の後部分32が前部分31に対して+X方向にスライド移動することが許容されるとともに、スライド移動に抗する所定の力が後部分32に付与される。すなわち、ガススプリング50が収縮する際の抗力が、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動に抗する力となる。ガススプリング50が収縮する際にオイルはオリフィス孔57を通過するが、オイルがオリフィス孔57を通過するときの抵抗および空間53内の圧縮ガスのガス圧によって、ガススプリング50が収縮する際の抗力が生じる。
【0027】
図6(a)及び
図6(b)には、第1の実施形態における変速レバー15近傍が示されている。
図6(a)は、変速レバー15がN(ニュートラル)の位置にある状態を示し、
図6(b)は、R(リバース)の位置にある状態を示している。
図6(a)及び
図6(b)に示すように、表示板17は、変速レバー15の下端部近傍に設けられている。変速レバー15は、表示板17に設けられた溝部18に沿って移動可能となっている。作業者は、変速レバー15の位置をN(ニュートラル)の位置にすることで、車輪13を回転させないモードにすることができ、R(リバース)の位置にすることで、車体10を後進させるモードにすることができる。R(リバース)の位置は溝部18の一方の端部に配置されている。変速レバー15の位置をL(ロー)の位置にすることで、車体10を低速で前進させるモードにすることができ、H(ハイ)の位置にすることで、車体10を高速で前進させるモードにすることができる。なお、
図6(a)及び
図6(b)に示すモード以外のモードがあってもよい。
【0028】
変速レバー15の近傍には、変速レバー15がR(リバース)とL(ロー)の間のN(ニュートラル)の位置からR(リバース)の位置に移動することに伴って動く移動部材19が設けられている。移動部材19は、変速レバー15がR(リバース)とL(ロー)の間のN(ニュートラル)の位置からR(リバース)の位置に移動するときに移動部材19の一部分19aが押されることで動く。移動部材19にはロックワイヤ42のインナーワイヤ42aが接続されている。ロックワイヤ42のアウターケーブル42bの端部は変速レバー15に対してR(リバース)とは反対側で表示板17に固定された固定部20に取り付けられている。
【0029】
変速レバー15がR(リバース)とL(ロー)の間のニュートラル(N)の位置からR(リバース)の位置に移動して移動部材19が動くことによりロックワイヤ42のインナーワイヤ42aが引っ張られる。変速レバー15がR(リバース)とL(ロー)の間のN(ニュートラル)の位置に戻ることで、移動部材19はインナーワイヤ42aに引っ張られて元の位置に戻る。
図6(a)の状態では、移動部材19の一部分19aが表示板17に固定されたストッパ21に当接しているため、移動部材19は、変速レバー15がR(リバース)とL(ロー)の間のN(ニュートラル)の位置からL(ロー)、L(ロー)とH(ハイ)の間のニュートラル(N)、又はH(ハイ)の位置に移動しても動かない。以下において、変速レバー15がN(ニュートラル)の位置にあるとは、R(リバース)とL(ロー)の間のN(ニュートラル)の位置にあることをいう。
【0030】
変速レバー15がN(ニュートラル)の位置からR(リバース)の位置に移動して移動部材19が動くことにより、ロックワイヤ42のインナーワイヤ42aの一端は移動部材19により引っ張られる。インナーワイヤ42aの他端はロック操作部60のアーム63に接続されていることから(
図5(a)及び
図5(b)参照)、インナーワイヤ42aの一端が移動部材19により引っ張られることでロック操作部60のアーム63が引っ張られる。
【0031】
ロックワイヤ42のインナーワイヤ42aがロック操作部60のアーム63を引っ張ることで、ロック操作部60は、
図5(a)の状態から
図5(b)の状態に遷移し、ガススプリング50のロックを解除する状態となる。このように、ガススプリング50は、作業者が変速レバー15をR(リバース)の位置に移動することに連動して、ピストン56の移動が制限されるロック状態からピストン56の移動が可能となるロック解除状態に切り替わる。
【0032】
図7には、変速レバー15がN(ニュートラル)の位置にあり、クラッチ杆40が握られていない状態のハンドル杆30を斜め上方から見た状態が示されている。
図8には、変速レバー15がN(ニュートラル)の位置にあり、クラッチ杆40が握られていない状態のハンドル杆30を+Y方向から見た状態が示されている。
【0033】
図7及び
図8に示すように、クラッチ杆40は作業者によって握られていない。この場合では、クラッチ杆40に接続するクラッチワイヤ41のインナーワイヤ41aはクラッチ杆40に引っ張られていない状態にある。インナーワイヤ41aがクラッチ杆40に引っ張られていないことで、クラッチは切断された状態になっている。変速レバー15がN(ニュートラル)の位置にあり、R(リバース)の位置にないことで、ロックワイヤ42のインナーワイヤ42aは移動部材19より引っ張られないため、ガススプリング50はロックされた状態にある。
【0034】
図9には、変速レバー15がR(リバース)に入れられ且つクラッチ杆40が握られた状態のハンドル杆30を斜め上方から見た状態が示されている。
図10には、変速レバー15がR(リバース)に入れられ且つクラッチ杆40が握られた状態のハンドル杆30を+Y方向から見た状態が示されている。
【0035】
図9及び
図10に示すように、変速レバー15がR(リバース)に入れられ且つクラッチ杆40が握られたときは、クラッチワイヤ41のインナーワイヤ41aがクラッチ杆40により引っ張られてクラッチが接続された状態になるため、歩行型作業機500は後進する。変速レバー15がR(リバース)に入れられていることで、
図6(b)に示したように、ロックワイヤ42のインナーワイヤ42aが移動部材19により引っ張られる。これにより、ロック操作部60のアーム63がガススプリング50のロックを解除する位置に遷移する。
【0036】
図11には、歩行型作業機500の後進時に作業者が背後の障害物とハンドル杆30との間に挟まれた状態のハンドル杆30を斜め上方から見た状態が示されている。
図12には、歩行型作業機500の後進時に作業者が背後の障害物とハンドル杆30との間に挟まれた状態のハンドル杆30を+Y方向から見た状態が示されている。
【0037】
歩行型作業機500が後進したときに、作業者が背後の障害物とハンドル杆30との間に挟まれると、
図11及び
図12に示すように、ハンドル杆30の後部分32が前部分31に対して+X方向にスライド移動する。この際、ガススプリング50は、変位に対して略一定の抗力を生じるため、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動を許容しつつ、スライド移動に抗する所定の大きさの力を後部分32に加える。したがって、ハンドル杆30の後部分32は、ガススプリング50が設けられていない場合と比べて、ゆっくりとスライド移動するようになる。
【0038】
ハンドル杆30の後部分32が前部分31に対して+X方向にスライド移動することで、クラッチ杆40とクラッチワイヤ41のアウターケーブル41bの端部との間の距離が短くなるため、クラッチワイヤ41のインナーワイヤ41aはクラッチ杆40により引っ張られた状態から引っ張られる前の状態に戻る。このため、クラッチが切断されて、発動機14から車軸12への動力の伝達が遮断される。これにより、車輪13の回転が停止して、歩行型作業機500は停止する。
【0039】
また、本第1の実施形態では、ハンドル杆30の後部分32がスライド移動することで、発動機14が有する点火プラグへの給電を停止する構成となっている。このことについて、
図13(a)及び
図13(b)を用いて説明する。
図13(a)には、
図10の領域Aが拡大されて示され、
図13(b)には、
図12の領域Aが拡大されて示されている。
図10及び
図13(a)に示すように、取付部材33のうち+X方向側に位置する箇所にスイッチ45が取り付けられている。スイッチ45は、スイッチング部46を有しており、スイッチング部46が押されていない状態から押された状態に遷移すると、点火プラグへの給電を停止する機能を有する。すなわち、スイッチ45は、発動機14の点火プラグへの給電を停止するキルスイッチである。
【0040】
ハンドル杆30の後部分32が前部分31に対してスライド移動していない状態では、
図10及び
図13(a)のように、スイッチング部46は押されていない。ハンドル杆30の後部分32が前部分31に対して+X方向にスライド移動することで、
図12及び
図13(b)のように、後部分32に設けられたガイド部34がスイッチング部46を押す。このように、ハンドル杆30の後部分32が前部分31に対してスライド移動し、スイッチング部46がガイド部34によって押されることで、発動機14は停止する。これによっても、車輪13の回転が停止し、歩行型作業機500は停止する。
【0041】
本第1の実施形態に係る歩行型作業機500による効果について
図14を用いて説明する。
図14は、歩行型作業機500の後進時に作業者が背後の障害物とハンドル杆30との間に挟まれ始めてから作業者に掛かる負荷(荷重)の推移を示すグラフである。
図14の横軸は時間で、縦軸は作業者に掛かる負荷(荷重)である。本第1の実施形態に係る歩行型作業機500の負荷(荷重)の推移を実線で示し、ハンドル杆の後部分が前部分に対してスライド移動しない比較の形態に係る歩行型作業機の負荷(荷重)の推移を破線で示している。時間軸のAは、挟まれ発生時刻を示している。時間軸のB~Eは、本第1の実施形態に係る歩行型作業機500における、B:ハンドル杆30の後部分32のスライド移動開始時刻、C:スイッチ45の作動時刻、D:クラッチの切断時刻、E:ハンドル杆30の後部分32のスライド移動終了時刻を示している。
【0042】
図14に示すように、ハンドル杆がスライド移動しない比較の形態に係る歩行型作業機では、作業者が背後の障害物とハンドル杆との間に挟まれ始めた時刻から僅かな時間(約1秒)で、作業者に最大負荷(荷重)が掛かる。これに対し、本第1の実施形態に係る歩行型作業機500では、ハンドル杆30に所定以上の負荷が発生した際(時刻B)に、ハンドル杆30の後部分32が前部分31に対してスライド移動すると共にガススプリング50がスライド移動に抗する力を後部分32に付与するため、ガススプリング50の抗力に応じた略一定の負荷(荷重)が作業者に掛かる。したがって、ハンドル杆がスライド移動しない比較の形態に係る歩行型作業機に比べ、本第1の実施形態に係る歩行型作業機500は、後進時に挟まれた状態での作業者に掛かる負荷(荷重)が低減される。作業者に掛かる負荷(荷重)が低く維持された状態で、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動に連動して、スイッチ45(キルスイッチ)の作動及びクラッチワイヤ41によるクラッチの切断が実行されるため、歩行型作業機500が停止する。
【0043】
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、ハンドル杆30は、車体10に一端が固定され、車体10の後方に延びる前部分31(第1部分)と、前部分31の他端に設けられ、作業者が把持する後部分32(第2部分)と、を有し、後部分32は前部分31に対して+X方向にスライド移動可能となっている。そして、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動を許容しつつスライド移動に抗する力を後部分32に付与するガススプリング50(規制部)と、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動に連動して、発動機14による車輪13(走行部)の回転を停止させるクラッチワイヤ41(停止部)及びスイッチ45(停止部)と、が設けられている。ガススプリング50が設けられていることで、歩行型作業機500の後進時に作業者が背後の障害物とハンドル杆30との間に挟まれた場合でも、作業者にはガススプリング50が収縮する際の抗力に応じた負荷が掛かるようになり、作業者のハンドル杆30に対する操作性を残しつつ作業者に掛かる負荷(荷重)を低減することができる。そして、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動に連動して発動機14による車輪13の回転が停止するため、作業者に掛かる負荷(荷重)が低減された状態で歩行型作業機500を停止させることができる。
【0044】
また、本第1の実施形態では、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動を阻止するためのロック操作部60が設けられている。ロック操作部60は、車体10の後進時にハンドル杆30の後部分32のスライド移動の阻止を解除する。これにより、車体10の前進時にハンドル杆30の後部分32が意図せずスライド移動してしまうことを抑制でき、ハンドル杆30の操作性を確保することができる。
【0045】
また、本第1の実施形態では、ロック操作部60は、ガススプリング50の伸縮を許可又は阻止するためにガススプリング50内に設けられたバルブ58(ロック機構)を操作することで、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動を阻止又はスライド移動の阻止を解除する。これにより、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動を阻止するための外部機構を別途設けなくて済むため、歩行型作業機500の構成が複雑になることを抑制できる。
【0046】
また、本第1の実施形態では、ロック操作部60は、車体10が後進するように作業者が変速レバー15(第1切替部)を操作することに連動して、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動の阻止を解除する。変速レバー15がR(リバース)の位置に操作されることで車体10は後進可能な状態となることから、このような変速レバー15の操作に連動してハンドル杆30の後部分32のスライド移動の阻止を解除することで、車体10の前進時にハンドル杆30の後部分32が意図せずスライド移動してしまうことを抑制できる。
【0047】
また、本第1の実施形態では、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動を許容しつつスライド移動に抗する力を後部分32に付与する規制部がガススプリング50である。これにより、
図14に示すように、歩行型作業機500の後進時に背後の障害物とハンドル杆30との間に作業者が挟まれた場合において、ガススプリング50の収縮の際の抗力に応じた略一定の負荷(荷重)が作業者に掛かるようになる。よって、作業者に掛かる負荷(荷重)がある一定値を超えない状態が持続され易くなり、その時間を利用して発動機14による車輪13の回転を停止させることができる。
【0048】
なお、上記第1の実施形態では、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動に抗する力を付与する規制部がガススプリング50である場合を例に示したが、ショックアブソーバーなど、その他の場合でもよい。規制部がショックアブソーバーである場合でも、ガススプリング50と同様にピストンが変位しても通常のばねに比べて略一定の抗力が生じやすいことから、作業者が背後の障害物とハンドル杆30とに挟まれたときに、作業者に掛かる負荷(荷重)が低減され且つある一定値を超えない状態が持続され易くなる。
【0049】
また、本第1の実施形態では、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動に連動して発動機14による車輪13の回転を停止させる停止部の1つとして、スイッチ45(キルスイッチ)を備える。スイッチ45(キルスイッチ)は、発動機14が有する点火プラグへの給電を停止する。スイッチ45(キルスイッチ)の動作は、機械的な動作だけで実現でき、追加の電気制御回路等を用いなくて済むため、歩行型作業機500に新たにバッテリ及び電池を搭載しなくても、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動に連動して車輪13の回転を停止させることができる。
【0050】
また、本第1の実施形態では、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動に連動して発動機14による車輪13の回転を停止させる停止部の1つとして、クラッチ杆40に繋がれたクラッチワイヤ41を備える。クラッチワイヤ41は、発動機14と車軸12との間のクラッチを切断する。これは、機械的な動作だけで実現でき、追加の電気制御回路等を用いなくて済むため、歩行型作業機500に新たにバッテリ及び電池を搭載しなくても、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動に連動して車輪13の回転を停止させることができる。
【0051】
また、本第1の実施形態では、作業者がクラッチ杆40を握ってクラッチを接続する操作を行っている場合であっても、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動に連動してクラッチを切断する。作業者が背後の障害物とハンドル杆30の後部分32との間に挟まれた場合、ハンドル杆30は、作業者の体に当たって水平方向に力を加えながら車軸12を中心に鉛直上向きに押し上がるように移動しようとする。このような場合では、作業者はハンドル杆30によって胸腹部近傍が押されることでクラッチ杆40を放す余裕がないことが生じ得る。しかしながら、作業者がクラッチ杆40を握ってクラッチが接続状態になっている場合であってもハンドル杆30の後部分32のスライド移動に連動してクラッチが切断されることで、クラッチ杆40を放す余裕がない場合でも、車輪13の回転を停止させることができる。また、作業者が背後の障害物とハンドル杆30との間に挟まれた場合、上述したように、ハンドル杆30が作業者の胸腹部付近を突き上げるため、作業者がハンドル杆30から手を放してもクラッチ杆40が下がった状態を維持し続けることがある。このような場合であっても、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動に連動して車輪13の回転を停止させることができる。
【0052】
また、本第1の実施形態では、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動に連動して、発動機14が有する点火プラグへの給電を停止すること及び発動機14と車軸12との間のクラッチを切断すること、の両方が行われる。これにより、作業者が後方の障害物とハンドル杆30との間に挟まれた場合において、車輪13の回転をより確実に停止させることができる。
【0053】
なお、上記第1の実施形態において、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動に連動して、発動機14が有する点火プラグへの給電を停止すること及び発動機14と車軸12との間のクラッチを切断すること、のいずれか一方が行われる場合でもよい。
【0054】
《第2の実施形態》
上記第1の実施形態では、ロック操作部60は、車体10が後進するように作業者が変速レバー15を操作することに連動して、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動の阻止を解除する場合を示した。本第2の実施形態では、ロック操作部60は、車体10が後進するように作業者が変速レバー15を操作し且つ発動機14から車軸12に動力が伝わる伝達状態になるように作業者がクラッチ杆40を操作することに連動して、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動の阻止を解除する場合について説明する。
【0055】
図15には、第2の実施形態に係る歩行型作業機600を+Z方向から見た状態が示されている。
図15に示すように、本第2の実施形態では、作業者による変速レバー15及びクラッチ杆40の操作に応じて、ロックワイヤ42のインナーワイヤ42aを引っ張らない又は少し引っ張った状態と、インナーワイヤ42aを大きく引っ張った状態と、の間で変更するロック切替機構70が設けられている。ロック切替機構70は、例えばハンドル杆30の前部分31のうち車体10の近くに取り付けられている。
【0056】
クラッチ杆40には、クラッチワイヤ41のインナーワイヤ41aに加えて、接続ワイヤ43のインナーワイヤ43aが接続されている。インナーワイヤ43aは、インナーワイヤ41aと同様に、ハンドル杆30の後部分32の下側に設けられたクラッチ杆40の回転軸とはハンドル杆30の後部分32を挟んで反対側に位置してクラッチ杆40に接続されている。接続ワイヤ43のアウターケーブル43bの端部は、クラッチワイヤ41のアウターケーブル41bと同様に、作業者がクラッチ杆40を放した場合及びハンドル杆30の後部分32が前部分31に対してスライド移動した場合に、アウターケーブル43bの端部からインナーワイヤ43aのクラッチ杆40への取付位置までの距離が小さくなるような位置に取り付けられている。例えば、アウターケーブル43bの端部は、ハンドル杆30の前部分31に設けられた取付部材33に固定された固定部35に取り付けられている。接続ワイヤ43のクラッチ杆40に接続された側とは反対側は、ロック切替機構70に接続されている。
【0057】
ロックワイヤ42のインナーワイヤ42aは上記第1の実施形態と同じくロック操作部60のアーム63に接続され、アウターケーブル42bの端部は上記第1の実施形態と同じくロック操作部60の固定部64に取り付けられている(
図5(a)及び
図5(b)参照)。ロックワイヤ42のロック操作部60に接続された側とは反対側は、ロック切替機構70に接続されている。また、変速レバー15の下端近傍に設けられた表示板17とロック切替機構70との間に接続ワイヤ44が接続されている。
【0058】
図16(a)及び
図16(b)には、第2の実施形態における変速レバー15近傍が示されている。
図16(a)は、変速レバー15がN(ニュートラル)の位置にある状態を示し、
図16(b)は、R(リバース)の位置にある状態を示している。
図16(a)及び
図16(b)に示すように、本第2の実施形態では、変速レバー15の近傍の設けられた移動部材19には接続ワイヤ44のインナーワイヤ44aが接続されている。接続ワイヤ44のアウターケーブル44bの端部は、表示板17に固定された固定部20に取り付けられている。変速レバー15がR(リバース)の位置に移動して移動部材19が動くことにより接続ワイヤ44のインナーワイヤ44aが引っ張られる。
【0059】
図17(a)及び
図17(b)には、変速レバー15がR(リバース)以外に設定されているときのロック切替機構70が示されている。
図18(a)及び
図18(b)には、変速レバー15がR(リバース)に設定されているときのロック切替機構70が示されている。ロック切替機構70には、ロックワイヤ42のアウターケーブル42bの端部と、接続ワイヤ43のアウターケーブル43bの端部と、接続ワイヤ44のアウターケーブル44bの端部と、が取り付けられている。
【0060】
ロックワイヤ42のアウターケーブル42bのロック切替機構70とは反対側の端部は、
図5(a)及び
図5(b)のように、ロック操作部60の固定部64に取り付けられている。接続ワイヤ43のアウターケーブル43bのロック切替機構70とは反対側の端部は、
図15のように、ハンドル杆30の前部分31に設けられた固定部35に取り付けられている。接続ワイヤ44のアウターケーブル44bのロック切替機構70とは反対側の端部は、
図16(a)及び
図16(b)のように、表示板17に固定された固定部20に取り付けられている。
【0061】
ロック切替機構70は、接続ワイヤ43と接続ワイヤ44の状態に応じてロックワイヤ42のインナーワイヤ42aの引っ張られ具合を異なるようにする。
図18(b)のように、ロック切替機構70によってロックワイヤ42のインナーワイヤ42aが大きく引っ張られることで、ロック操作部60のアーム63がインナーワイヤ42aによって引っ張られてガススプリング50のロックが解除される。以下に、ロック切替機構70について詳しく説明する。
【0062】
図17(a)は、変速レバー15がR(リバース)以外の位置(例えばN(ニュートラル)の位置)にあり且つクラッチ杆40が作業者によって握られていない状態を示している。
図17(b)は、変速レバー15がR(リバース)以外の位置(例えばL(ロー)又はH(ハイ)の位置)にあり且つクラッチ杆40が作業者によって握られた状態を示している。
図18(a)は、変速レバー15がR(リバース)の位置にあり且つクラッチ杆40が作業者によって握られていない状態を示している。
図18(b)は、変速レバー15がR(リバース)の位置にあり且つクラッチ杆40が作業者によって握られた状態を示している。
【0063】
ロック切替機構70は、
図17(a)に示すように、板状部材71と、板状部材71上に設けられた回動部材72、73と、ねじりコイルばね74、75と、を有する。また、板状部材71には、接続ワイヤ43、44のアウターケーブル43b、44bの端部が取り付けられている。板状部材71は、上方から見て略矩形状の形状を有し、四つの辺71a、71b、71c、71dを有する。辺71aと辺71bが対向し、辺71cと辺71dが対向する。接続ワイヤ43のアウターケーブル43bは辺71d側から板状部材71上に延び、その端部は辺71bと辺71dの間の角部近傍で板状部材71に取り付けられている。接続ワイヤ44のアウターケーブル44bは辺71c側から板状部材71上に延び、その端部は辺71aと辺71cの間の角部近傍で板状部材71に取り付けられている。回動部材72は、回動部材73と板状部材71の辺71cとの間に設けられ、回動部材73は、回動部材72と板状部材71の辺71dとの間に設けられている。回動部材72は、板状部材71に設けられた軸76を中心として回動可能となっている。回動部材73は、板状部材71に設けられた軸77を中心として回動可能となっている。軸76は辺71b近傍に位置し、軸77は辺71a近傍に位置する。
【0064】
回動部材72と回動部材73の間にはストッパとして機能する柱状部78が設けられている。ロックワイヤ42のアウターケーブル42bは板状部材71の辺71c側から板状部材71上に延び、その端部は辺71cに沿った方向において軸76と接続ワイヤ44のアウターケーブル44bの端部が板状部材71上に取り付けられた箇所との間の中央近傍で回動部材72に固定されている。ロックワイヤ42のインナーワイヤ42aの端は、辺71dに沿った方向において軸77と接続ワイヤ43のアウターケーブル43bの端部が板状部材71上に取り付けられた箇所との間の中央近傍で回動部材73に設けられた切り欠きに引っ掛けられている。このような構成とすることで、
図18(b)の状態になったときに、接続ワイヤ43のインナーワイヤ43aと接続ワイヤ44のインナーワイヤ44aとでロックワイヤ42のインナーワイヤ42aを略半分ずつ引っ張るようになる。
【0065】
移動部材19に接続(
図16(a)及び
図16(b)参照)された接続ワイヤ44のインナーワイヤ44aの移動部材19とは反対側の端は、回動部材72の軸76とは反対側の箇所に引っ掛けられている。
図16(b)に示すように、作業者が変速レバー15をR(リバース)の位置に移動すると移動部材19が動き、インナーワイヤ44aの一端が移動部材19により引っ張られることで、インナーワイヤ44aの他端は回動部材72を引っ張るようになる。これにより、
図18(a)及び
図18(b)に示すように、回動部材72は軸76を中心に時計回りに回動する。一方、作業者が、
図16(b)の状態から変速レバー15をN(ニュートラル)の位置に戻すと、軸76を中心に回動部材72を回動させて柱状部78に押し付ける力を回動部材72に与えているねじりコイルばね74の付勢力によって、
図17(a)及び
図17(b)に示すように、回動部材72は元の位置に戻る。これにより、回動部材72がインナーワイヤ44aを引っ張るため、移動部材19は
図16(a)に示す元の位置に戻るようになる。
【0066】
クラッチ杆40に接続(
図15参照)された接続ワイヤ43のインナーワイヤ43aのクラッチ杆40とは反対側の端は、回動部材73の軸77とは反対側に設けられた切り欠きに引っ掛けられている。作業者がハンドル杆30の後部分32と共にクラッチ杆40を握ることでインナーワイヤ43aの一端がクラッチ杆40により引っ張られる。これにより、インナーワイヤ43aの他端は回動部材73を引っ張るようになり、
図17(b)及び
図18(b)に示すように、回動部材73は軸77を中心に時計回りに回動する。一方、作業者がクラッチ杆40を放すと、軸77を中心に回動部材73を回動させて柱状部78に押し付ける力を回動部材73に与えているねじりコイルばね75の付勢力によって、
図17(a)及び
図18(a)に示すように、回動部材73は元の位置に戻る。
【0067】
図17(b)に示すように、回動部材72が回動せずに、回動部材73のみが時計回りに回動した場合、ロックワイヤ42のインナーワイヤ42aはわずかに引っ張られる。同様に、
図18(a)に示すように、回動部材72が時計回りに回動し、回動部材73が回動しない場合、ロックワイヤ42のインナーワイヤ42aはわずかに引っ張られる。その一方で、
図18(b)に示すように、回動部材72及び回動部材73が時計回りに回動した場合、ロックワイヤ42のインナーワイヤ42aが
図17(b)及び
図18(a)の場合よりも大きく引っ張られる。インナーワイヤ42aはロック操作部60のアーム63に接続されていることから(
図5(a)及び
図5(b)参照)、インナーワイヤ42aが大きく引っ張られることでロック操作部60のアーム63が引っ張られる。これにより、ロック操作部60は、
図5(a)の状態から
図5(b)の状態に遷移し、ガススプリング50のロックが解除された状態となる。このように、ガススプリング50は、作業者が変速レバー15をR(リバース)の位置に移動し且つクラッチ杆40を握ることに連動して、ピストン56の移動が制限されるロック状態からピストン56の移動が可能となるロック解除状態に切り替わる。なお、
図17(b)及び
図18(a)のようにインナーワイヤ42aがわずかに引っ張られる場合には、ガススプリング50のロックは解除されない。
【0068】
ハンドル杆30の後部分32が前部分31に対してスライド移動することで、クラッチワイヤ41のインナーワイヤ41aがクラッチ杆40により引っ張られた状態から引っ張られる前の状態に戻ることに加え、接続ワイヤ43のインナーワイヤ43aもクラッチ杆40により引っ張られた状態から引っ張られる前の状態に戻る。このため、ロック切替機構70は、
図18(b)の状態から
図19の状態へと遷移する。
図19は、ハンドル杆30の後部分32がスライド移動した後のロック切替機構70を示している。
図19の状態になることで、ロック操作部60のアーム63は
図5(b)の状態から
図5(a)の状態へと遷移してガススプリング50がロック状態になる位置に移動する。このとき、クラッチワイヤ41のインナーワイヤ41aが引っ張られなくなったことでクラッチが切断されて動力が遮断され、車輪13が停止した後に、ガススプリング50がロック状態となることが好ましい。このように、インナーワイヤ41aが引っ張られなくなって車輪13が停止した後にガススプリング50がロック状態になることで、ハンドル杆30の後部分32が固定された状態になるため、作業者はハンドル杆30の後部分32を押して歩行型作業機600を移動させたり、ハンドル杆30の後部分32を頼りにして挟まれた状態から脱出したりすることが可能となる。
【0069】
以上説明したように、本第2の実施形態によれば、ロック操作部60は、車体10が後進するように作業者が変速レバー15(第1切替部)を操作し且つ発動機14から車軸12に動力が伝わる伝達状態になるように作業者がクラッチ杆40(第2切替部)を操作することに連動して、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動の阻止を解除する。変速レバー15がR(リバース)の位置に操作され且つクラッチ杆40が握られることで車体10は後進を開始することから、変速レバー15及びクラッチ杆40の操作に連動してハンドル杆30の後部分32のスライド移動の阻止を解除することで、車体10の後進時にハンドル杆30の後部分32をスライド移動可能な状態とすることができる。
【0070】
なお、上記第2の実施形態において、作業者が後方の障害物とハンドル杆30との間に挟まれ、ハンドル杆30の後部分32が前部分31に対してスライド移動することで車輪13が停止したときに、ガススプリング50はロック状態に遷移せずにロック解除状態のままとなっていてもよい。この場合、ハンドル杆30の後部分32が動くことから、障害物とハンドル杆30との間に挟まれている作業者はハンドル杆30の後部分32を動かして脱出することが可能となる。
【0071】
なお、上記第2の実施形態において、
図17(a)から
図19に示したロック切替機構70の構造は一例であり、特許請求の範囲に記載の機能を実現することができれば、その他の構造をしていてもよい。
【0072】
《第3の実施形態》
図20には、第3の実施形態に係る歩行型作業機700を斜め上方から見た状態が示されている。歩行型作業機700では、
図20に示すように、車体10に設けられたハンドル杆30aは、車体10に一端が固定され、車体10の後方に延びる前部分31aと、前部分31aの他端に取り付けられ、作業者が把持する後部分32aと、を有する。後部分32aは、前部分31aに対してスライド移動回動可能となっている。前部分31aは上記第1の実施形態における前部分31と同じ構造をしているのに対し、後部分32aは作業者が握るグリップが左右に分かれたコの字型の2ハンドル構造をしている。左右のグリップのうちの一方にクラッチ杆40が設けられている。その他の構成は上記第1の実施形態の歩行型作業機500と同じであるため説明を省略する。
【0073】
上記第1の実施形態では、ハンドル杆30の後部分32は環状の形状をしていたが、本第3の実施形態のように、ハンドル杆30aの後部分32aはコの字型の形状をしている場合でもよい。
【0074】
《第4の実施形態》
上記第1の実施形態から第3の実施形態では、
図4(a)及び
図4(b)のように、ガススプリング50にロック機構が備わる場合について示したが、本第4の実施形態では、ロック機構が備わらないガススプリング50aを用いる場合について説明する。ガススプリング50a及びロック操作部60a以外は、上記第1の実施形態と同じであるため、ガススプリング50a及びロック操作部60aを中心に説明する。
【0075】
ガススプリング50aは、
図4(a)及び
図4(b)に示したガススプリング50と比べて、バルブ58及びプッシュロッド59が設けられていない点で異なる。したがって、オリフィス孔57を介してオイルの流通が常時可能となっている。
【0076】
図21(a)には、第4の実施形態において、変速レバー15がR(リバース)以外に入れられている場合のロック操作部60a近傍が示され、
図21(b)には、
図21(a)の領域Aが拡大して示されている。
図21(a)及び
図21(b)に示すように、ロック操作部60aは、逆移動阻止用部材80、81と、板状の歯車82と、板ばね83と、ねじりばね84と、を含む。逆移動阻止用部材80は、本体部80aと本体部80aの端部に設けられた爪部80bとを有する。同様に、逆移動阻止用部材81は、本体部81aと本体部81aの端部に設けられた爪部81bとを有する。逆移動阻止用部材80の本体部80aと逆移動阻止用部材81の本体部81aは、爪部80b、81bとは反対側の端部がジョイント86によって互いに回動可能に結合されている。また、逆移動阻止用部材80の本体部80aと逆移動阻止用部材81の本体部81aは、ジョイント85によって固定部38に回動可能に結合されている。固定部38は取付部材33に固定されている。
【0077】
逆移動阻止用部材80は逆移動阻止用部材81よりも-X方向に位置し、逆移動阻止用部材81は逆移動阻止用部材80よりも+X方向に位置して設けられている。爪部80b、81bは、ジョイント85側の面が順テーパ状に傾斜していて、ジョイント85とは反対側の面がほぼ垂直面または逆テーパ状に若干傾斜している。
【0078】
板ばね83は、逆移動阻止用部材80の本体部80aと逆移動阻止用部材81の本体部81aとにかけて設けられている。板ばね83は、逆移動阻止用部材80の本体部80aの爪部80bとは反対側の面のうちの爪部80b側の端部に固定されている。
【0079】
ねじりばね84は、ジョイント85に巻回されるとともに、一端が逆移動阻止用部材80の本体部80aに設けられた突起87に当接され、本体部80aを爪部80b側に付勢している。ねじりばね84の他端は、固定部38に固定されている。
【0080】
逆移動阻止用部材80の本体部80aにおいて、爪部80b側の側面に本体部80aを挟む一対の固定部88が設けられている。一対の固定部88の一方から他方に延び、固定部88に対して回動可能なジョイント89が設けられている。ジョイント89にはロックワイヤ42のインナーワイヤ42aが接続されている。ロックワイヤ42のアウターケーブル42bは、ジョイント89の上方で固定部38に取り付けられている。
【0081】
板状の歯車82は、ガイド部34に逆移動阻止用部材80、81に対向して設けられている。変速レバー15がR(リバース)以外に入れられている場合では、ロックワイヤ42のインナーワイヤ42aは移動部材19に引っ張られていないため(
図6(a)参照)、逆移動阻止用部材80は、ねじりばね84の付勢力によって本体部80aが爪部80b側に付勢され、爪部80bが歯車82に嵌っている。この状態では、ハンドル杆30の後部分32が前部分31に対して-X方向にスライド移動することはできるが、+X方向にスライド移動することはできない状態となっている。したがって、ガススプリング50aは収縮することができないロック状態となっている。
【0082】
図22(a)には、第4の実施形態において、変速レバー15がR(リバース)に入れられた場合のロック操作部60a近傍が示され、
図22(b)には、
図22(a)の領域Aが拡大して示されている。
図22(a)及び
図22(b)に示すように、変速レバー15がR(リバース)に入れられた場合では、ロックワイヤ42のインナーワイヤ42aは移動部材19により引っ張られる(
図6(b)参照)。これにより、逆移動阻止用部材80がインナーワイヤ42aにより引っ張られる。逆移動阻止用部材80がインナーワイヤ42aにより引っ張られることで、逆移動阻止用部材80と逆移動阻止用部材81はジョイント85を中心に反時計回りに回動し、逆移動阻止用部材81の爪部81bが歯車82に嵌る。これにより、ハンドル杆30の後部分32が前部分31に対して+X方向にスライド移動することはできるが、-X方向にスライド移動することはできない状態となっている。したがって、ガススプリング50aは収縮することができるロック解除状態となっている。
【0083】
図23(a)には、第4の実施形態において、作業者が背後の障害物とハンドル杆30との間に挟まれて、ハンドル杆30の後部分32が前部分31に対してスライド移動したときのロック操作部60a近傍が示され、
図23(b)には、
図23(a)の領域Aが拡大して示されている。
図23(a)及び
図23(b)に示すように、ハンドル杆30の後部分32が前部分31に対して+X方向にスライド移動可能となっているため、作業者が背後の障害物とハンドル杆30との間に挟まれると、ハンドル杆30の後部分32は前部分31に対して+X方向にスライド移動する。このスライド移動において、ガススプリング50aは、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動を許容しつつ、スライド移動に抗する所定の力を後部分32に加えるようになる。よって、作業者が背後の障害物とハンドル杆30との間に挟まれた場合に、作業者にはガススプリング50aが収縮する際の抗力に応じた負荷が掛かるようになり、作業者のハンドル杆30に対する操作性を残しつつ作業者に掛かる負荷(荷重)を低減することができる。
【0084】
また、逆移動阻止用部材81は板ばね83の付勢力により歯車82に向かって付勢され、これにより、爪部81bが歯車82の凹部に嵌っている。爪部81bが歯車82の隣の凹部に移動するには、板ばね83が逆移動阻止用部材81を付勢する力よりも大きな力で逆移動阻止用部材81が板ばね83を押す必要がある。すなわち、板ばね83が逆移動阻止用部材81を付勢する力よりも大きな力がハンドル杆30の後部分32に加わったときに、爪部81bが歯車82の凹部間を移動してハンドル杆30の後部分32がスライド移動するようになる。このように、ハンドル杆30の後部分32がスライド移動を開始するために必要な力は、板ばね83の付勢力により調整することができる。
【0085】
例えば、ガススプリング50aの初期反力より大きな荷重がハンドル杆30の後部分32に加わったときにガススプリング50aが収縮を開始する場合、ガススプリング50aの初期反力は、作業者が背後の障害物とハンドル杆30との間に挟まれても負傷し難く且つ後進時のハンドル杆30の操作性を犠牲にしないような大きさに設定される。しかしながら、この場合では、ガススプリング50aの初期反力がある程度大きくなる。ガススプリング50aの収縮中の反力は初期反力よりも大きくなることから、背後の障害物とハンドル杆30との間に挟まれた作業者への負荷が大きくなる恐れがある。これに対し、ハンドル杆30の後部分32がスライド移動を開始するために必要な力が板ばね83の付勢力により調整できることで、ガススプリング50aの初期反力を自由に設定することができる。よって、ガススプリング50aの初期反力を低めに設定して、ガススプリング50aの収縮中の反力が高くなることを抑制することで、作業者に掛かる負荷が大きくなることを抑制できる。また、板ばね83の付勢力を調整することで、ガススプリング50aの初期反力を低めに設定しても、ハンドル杆30の操作性が悪くなることを抑制できる。
【0086】
例えば、ロック操作部60aは、ハンドル杆30の後部分32にガススプリング50aの初期反力の1.5倍以上の力が加わったときに後部分32のスライド移動の阻止を解除するようにしてもよいし、2倍以上の力が加わったときに後部分32のスライド移動の阻止を解除するようにしてもよいし、2.5倍以上の力が加わったときの後部分32のスライド移動の阻止を解除するようにしてもよい。
【0087】
以上のように、本第4の実施形態によれば、ロック操作部60aは、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動を阻止するためにガススプリング50aの外部に設けられた逆移動阻止用部材80、81(阻止部材)を動かすことで、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動を阻止又はスライド移動の阻止を解除する。これにより、ロック機構が備わらないガススプリング50aを用いることができる。
【0088】
また、本第4の実施形態では、ロック操作部60aは、車体10の後進時に、ガススプリング50aの初期反力より大きな荷重がハンドル杆30の後部分32に加わった場合に後部分32のスライド移動の阻止を解除する。これにより、ガススプリング50aの初期反力を自由に設定でき、例えば低めに設定して収縮中の反力が高くなることを抑制できるため、作業者が障害物とハンドル杆30の間に挟まれたときに掛かる負荷が大きくなることを抑制できる。
【0089】
《第5の実施形態》
本第5の実施形態においても、上記第4の実施形態と同じく、ロック機構が備わらないガススプリング50aを用いる場合について説明する。
図24(a)から
図24(c)には、第5の実施形態におけるロック操作部60b近傍が示されている。
図24(a)は、変速レバー15がR(リバース)以外に入れられているときのロック操作部60b近傍を示している。
図24(b)は、変速レバー15がR(リバース)に入れられたときのロック操作部60b近傍を示している。
図24(c)は、作業者が背後の障害物とハンドル杆30に挟まれたときのロック操作部60b近傍を示している。
【0090】
図24(a)に示すように、ロック操作部60bは、リンク機構90と阻止部101を含む。リンク機構90は、取付部材33に取り付けられている。阻止部101は、取付部材33とハンドル杆30の後部分32との間にガイド部34に並んで設けられている。リンク機構90は、リンク91とリンク92とリンク93を含む。リンク91は、一端がジョイント94によって取付部材33に設けられた突起部33aに回動可能に結合され、他端がジョイント95によってリンク92の一端に回動可能に結合されている。リンク91の中央部には、ジョイント96によってロックワイヤ42のインナーワイヤ42aが接続されている。ロックワイヤ42のアウターケーブル42bは、リンク91の下方において取付部材33に取り付けられている。
【0091】
リンク92は、中央部がジョイント97によって取付部材33に設けられた突起部33bに回動可能に結合され、他端がジョイント98によって阻止部101に設けられた突起部101aに回動可能に結合されている。リンク93は、リンク92の中央部から他端にかけての部分と並行に設けられ、一端がジョイント99によって取付部材33の突起部33bに回動可能に結合され、他端がジョイント100によって阻止部101の突起部101aに回動可能に結合されている。
【0092】
図24(a)に示すように、変速レバー15がR(リバース)以外に入れられている場合では、ロックワイヤ42のインナーワイヤ42aは移動部材19に引っ張られていないため(
図6(a)参照)、リンク91はインナーワイヤ42aにより引っ張られていない。この場合、阻止部101は取付部材33とハンドル杆30の後部分32との間に位置し、ハンドル杆30の後部分32は前部分31に対して+X方向にスライド移動できない状態となっている。したがって、ガススプリング(不図示)は収縮することができないロック状態となっている。
【0093】
図24(b)に示すように、変速レバー15がR(リバース)に入れられた場合では、ロックワイヤ42のインナーワイヤ42aは移動部材19により引っ張られ(
図6(b)参照)、これにより、リンク91の中央部がインナーワイヤ42aにより引っ張られる。リンク91の中央部分がインナーワイヤ42aにより引っ張られることで、リンク92はジョイント97を中心に反時計周りに回動する。この結果、阻止部101は、リンク92により持ち上げられて、取付部材33とハンドル杆30の後部分32との間から上方に移動する。よって、ハンドル杆30の後部分32は前部分31に対して+X方向にスライド移動できる状態となる。したがって、ガススプリング(不図示)は収縮することができるロック解除状態となる。
【0094】
図24(c)に示すように、作業者が背後の障害物とハンドル杆30との間に挟まれると、ハンドル杆30の後部分32が前部分31に対して+X方向にスライド移動可能となっているため、ハンドル杆30の後部分32は前部分31に対してスライド移動する。このスライド移動において、ガススプリング(不図示)は、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動を許容しつつ、スライド移動に抗する所定の力を後部分32に加えるようになる。よって、作業者が背後の障害物とハンドル杆30との間に挟まれた場合、作業者にはガススプリングが収縮する際の抗力に応じた負荷が掛かるようになり、作業者のハンドル杆30に対する操作性を残しつつ作業者に掛かる負荷(荷重)を低減することができる。
【0095】
以上のように、本第5の実施形態によれば、ロック操作部60bは、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動を阻止するためにガススプリング50aの外部に設けられた阻止部101(阻止部材)を動かすことで、ハンドル杆30の後部分32のスライド移動を阻止又はスライド移動の阻止を解除する。これにより、ロック機構が備わらないガススプリング50aを用いることができる。
【0096】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
10 車体
11 作業部
12 車軸(駆動軸)
13 車輪(走行部)
14 発動機(駆動部)
15 変速レバー(第1切替部)
16 耕うん爪
17 表示板
18 溝部
19 移動部材
19a 移動部材の一部分
20 固定部
21 ストッパ
30、30a ハンドル杆
31、31a ハンドル杆の前部分(第1部分)
32、32a ハンドル杆の後部分(第2部分)
33 取付部材
33a、33b 突起部
34 ガイド部
35、36、37、38 固定部
40 クラッチ杆
41 クラッチワイヤ
41a クラッチワイヤのインナーワイヤ
41b クラッチワイヤのアウターケーブル
42 ロックワイヤ
42a ロックワイヤのインナーワイヤ
42b ロックワイヤのアウターケーブル
43 接続ワイヤ
43a 接続ワイヤのインナーワイヤ
43b 接続ワイヤのアウターケーブル
44 接続ワイヤ
44a 接続ワイヤのインナーワイヤ
44b 接続ワイヤのアウターケーブル
45 スイッチ
46 スイッチング部
50、50a ガススプリング
51 シリンダ
52 フリーピストン
53、54 空間
55 ピストンロッド
56 ピストン
57 オリフィス孔
58 バルブ
59 プッシュロッド
60、60a、60b ロック操作部
61 フランジ部
62 回転軸
63 アーム
64 固定部
70 ロック切替機構
71 板状部材
71a、71b、71c、71d 板状部材の辺
72、73 回動部材
74、75 ねじりコイルばね
76、77 軸
78 柱状部
80、81 逆移動阻止用部材
80a、81a 本体部
80b、81b 爪部
82 歯車
83 板ばね
84 ねじりばね
85、86 ジョイント
87 突起
88 固定部
89 ジョイント
90 リンク機構
91、92、93 リンク
94、95、96、97、98、99、100 ジョイント
101 阻止部
101a 突起部
500、600、700 歩行型作業機