(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168928
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】過電流保護回路
(51)【国際特許分類】
H03K 17/08 20060101AFI20231121BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H03K17/08 C
H03K17/687 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080320
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 光浩
(72)【発明者】
【氏名】宮島 一之
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055AX21
5J055AX34
5J055AX55
5J055AX64
5J055BX16
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5J055DX13
5J055EX26
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5J055FX13
5J055FX24
5J055FX32
5J055GX01
(57)【要約】
【課題】起動時に誤動作を抑制した過電流保護回路を提供する。
【解決手段】オン駆動回路4が、定電流I1を供給する電流源42を有し、定電流I1をトランジスタMSWのゲートに供給することにより、トランジスタMSWをオンさせる。過電流制御回路5は、負荷電流が第1の参照電流を超えた場合、トランジスタMSWのゲートに供給される電流から負荷電流と第1の参照電流との差分に応じた電流分をシンクして、負荷電流が第1の参照電流で一定となるようにトランジスタMSWを制御する。遅延回路6が、過電流制御回路5によるトランジスタMSWの制御が一定時間継続した場合、トランジスタM4をオンして、トランジスタMSWを強制的にオフする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷と電源との間に接続された第1のトランジスタを制御して、前記負荷を過電流から保護する過電流保護回路において、
第1の定電流を供給する第1の電流源を有し、前記第1の定電流を前記第1のトランジスタのゲート又はベースに供給することにより、前記第1のトランジスタをオンさせるオン駆動回路と、
前記負荷に流れる負荷電流が第1の参照電流を超えた場合、前記第1のトランジスタの前記ゲート又は前記ベースに供給される電流から前記負荷電流と前記第1の参照電流との差分に応じた電流分をシンクして、前記負荷電流が前記第1の参照電流で一定となるように前記第1のトランジスタを制御する過電流制御回路と、
前記第1のトランジスタの前記ゲート又は前記ベースとグランドとの間に接続された第2のトランジスタを有し、前記過電流制御回路による前記第1のトランジスタの制御が一定時間継続した場合、前記第2のトランジスタをオンして、前記第1のトランジスタを強制的にオフする遅延回路と、を備えた、
過電流保護回路。
【請求項2】
請求項1に記載の過電流保護回路において、
前記過電流制御回路は、前記負荷電流を検出するためのセンス抵抗と、前記センス抵抗の両端電圧と前記第1の参照電流に応じた第1の参照電圧との電位差に応じた電圧を出力する差動増幅器と、前記第1のトランジスタの前記ゲート又は前記ベースとグランドとの間に接続された第3のトランジスタと、を有し、
前記第3のトランジスタの前記ゲート又は前記ベースに前記差動増幅器の出力である前記電位差に応じた電圧を供給する、
過電流保護回路。
【請求項3】
請求項1に記載の過電流保護回路において、
前記遅延回路は、第2の定電流を供給する第2の電流源と、前記過電流制御回路による前記第1のトランジスタの制御中に前記第2の定電流が供給される第1のキャパシタと、前記第1のキャパシタの両端電圧と第2の参照電圧を比較して、比較結果を出力する第1の比較器と、を有し、
前記第1の比較器の出力に応じて前記第2のトランジスタがオンオフ制御される、
過電流保護回路。
【請求項4】
請求項1に記載の過電流保護回路において、
前記遅延回路は、前記負荷に並列接続された容量性負荷が充電中となる起動中か、前記容量性負荷への充電が終了した起動終了後かを判定する判定回路を有し、前記起動中であると判定された場合、前記過電流制御回路による前記第1のトランジスタの制御が一定時間継続するのを待って前記第2のトランジスタをオンし、前記起動終了後であると判定された場合、前記負荷電流が前記第1の参照電流を超えると直ちに前記第2のトランジスタをオンする、
過電流保護回路。
【請求項5】
請求項4に記載の過電流保護回路において、
前記判定回路は、前記第1のトランジスタの前記ゲート又は前記ベースの電圧と第3の参照電圧とを比較し、その比較結果を判定結果として出力する第2の比較器を有する、
過電流保護回路。
【請求項6】
請求項1に記載の過電流保護回路において、
前記遅延回路は、前記第1のトランジスタのゲート・ソース間電圧又はベース・エミッタ間電圧のスルーレートが一定値以上になったことを検出するスルーレート検出回路を有し、前記スルーレートが一定値以上になったことが検出されると、前記第2のトランジスタをオンする、
過電流保護回路。
【請求項7】
請求項6に記載の過電流保護回路において、
前記スルーレート検出回路は、前記第1のトランジスタのゲートとソースとの間、又は、ベースとエミッタとの間に直列接続された検出抵抗と、第2のキャパシタと、前記検出抵抗の両端電圧と第4の参照電圧との比較結果を検出結果として出力する第3の比較器とを有する、
過電流保護回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電流保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
過電流保護回路としては、負荷と電源との間にトランジスタを設けて、負荷に過電流が流れたときにトランジスタをオフして、過電流から負荷などを保護するものが知られている。しかしながら、負荷には並列に容量性負荷が接続されている。容量性負荷の容量が大きい場合、起動時に容量性負荷が充電されるため、負荷にラッシュ電流が流れる。従来の過電流保護回路は、このラッシュ電流を過電流として誤検出し、トランジスタがオフする誤動作が発生する恐れがあった。
【0003】
そこで、トランジスタのゲートに容量を追加するなどして、ゲートが立ち上がる際のスルーレートを抑制してラッシュ電流を抑制することが考えられるが、容量を追加した分、トランジスタの起動時間が遅くなる、という課題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-50865号公報
【特許文献1】特開昭61-247223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、起動時の誤動作を抑制した過電流保護回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る過電流保護回路は、下記[1]~[7]を特徴としている。
[1]
負荷と電源との間に接続された第1のトランジスタを制御して、前記負荷を過電流から保護する過電流保護回路において、
第1の定電流を供給する第1の電流源を有し、前記第1の定電流を前記第1のトランジスタのゲート又はベースに供給することにより、前記第1のトランジスタをオンさせるオン駆動回路と、
前記負荷に流れる負荷電流が第1の参照電流を超えた場合、前記第1のトランジスタの前記ゲート又は前記ベースに供給される電流から前記負荷電流と前記第1の参照電流との差分に応じた電流分をシンクして、前記負荷電流が前記第1の参照電流で一定となるように前記第1のトランジスタを制御する過電流制御回路と、
前記第1のトランジスタの前記ゲート又は前記ベースとグランドとの間に接続された第2のトランジスタを有し、前記過電流制御回路による前記第1のトランジスタの制御が一定時間継続した場合、前記第2のトランジスタをオンして、前記第1のトランジスタを強制的にオフする遅延回路と、を備えた、
過電流保護回路であること。
[2]
[1]に記載の過電流保護回路において、
前記過電流制御回路は、前記負荷電流を検出するためのセンス抵抗と、前記センス抵抗の両端電圧と前記第1の参照電流に応じた第1の参照電圧との電位差に応じた電圧を出力する差動増幅器と、前記第1のトランジスタの前記ゲート又は前記ベースとグランドとの間に接続された第3のトランジスタと、を有し、
前記第3のトランジスタの前記ゲート又は前記ベースに前記差動増幅器の出力である前記電位差に応じた電圧を供給する、
過電流保護回路であること。
[3]
[1]に記載の過電流保護回路において、
前記遅延回路は、第2の定電流を供給する第2の電流源と、前記過電流制御回路による前記第1のトランジスタの制御中に前記第2の定電流が供給される第1のキャパシタと、前記第1のキャパシタの両端電圧と第2の参照電圧を比較して、比較結果を出力する第1の比較器と、を有し、
前記第1の比較器の出力に応じて前記第2のトランジスタがオンオフ制御される、
過電流保護回路であること。
[4]
[1]に記載の過電流保護回路において、
前記遅延回路は、前記負荷に並列接続された容量性負荷が充電中となる起動中か、前記容量性負荷への充電が終了した起動終了後かを判定する判定回路を有し、前記起動中であると判定された場合、前記過電流制御回路による前記第1のトランジスタの制御が一定時間継続するのを待って前記第2のトランジスタをオンし、前記起動終了後であると判定された場合、前記負荷電流が前記第1の参照電流を超えると直ちに前記第2のトランジスタをオンする、
過電流保護回路であること。
[5]
[4]に記載の過電流保護回路において、
前記判定回路は、前記第1のトランジスタの前記ゲート又は前記ベースの電圧と第3の参照電圧とを比較し、その比較結果を判定結果として出力する第2の比較器を有する、
過電流保護回路であること。
[6]
[1]に記載の過電流保護回路において、
前記遅延回路は、前記第1のトランジスタのゲート・ソース間電圧又はベース・エミッタ間電圧のスルーレートが一定値以上になったことを検出するスルーレート検出回路を有し、前記スルーレートが一定値以上になったことが検出されると、前記第2のトランジスタをオンする、
過電流保護回路であること。
[7]
[6]に記載の過電流保護回路において、
前記スルーレート検出回路は、前記第1のトランジスタのゲートとソースとの間、又は、ベースとエミッタとの間に直列接続された検出抵抗と、第2のキャパシタと、前記検出抵抗の両端電圧と第4の参照電圧との比較結果を検出結果として出力する第3の比較器とを有する、
過電流保護回路であること。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、起動時に誤動作することを抑制した過電流保護回路を提供することができる。
【0008】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態における本発明の過電流保護回路を組み込んだ電源装置を示す回路図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す定電流I1、トランジスタMSWのソース電位、トランジスタMSWのゲート・ソース間電圧、センス抵抗Rsの両端電圧、キャパシタCTの両端電圧を示すタイムチャートである。
【
図3】
図3は、第2実施形態における本発明の過電流保護回路を組み込んだ電源装置を示す回路図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す定電流I1、トランジスタMSWのソース電位、トランジスタMSWのゲート・ソース間電圧、センス抵抗Rsの両端電圧、キャパシタCTの両端電圧を示すタイムチャートである。
【
図5】
図5は、第3実施形態における本発明の過電流保護回路を組み込んだ電源装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
本発明に関する第1実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態における本発明の過電流保護回路3を組み込んだ電源装置1を示す回路図である。同図に示すように、電源装置1は、電源2から出力される直流電圧V1を負荷RLに供給する装置である。負荷RLには、容量性負荷CL1が並列に接続されている。電源装置1は、電源2と負荷RL、容量性負荷CL1との間に接続されたトランジスタMSW(第1のトランジスタ)と、トランジスタMSWのオンオフを制御して、過電流から電源2や負荷RLを保護する過電流保護回路3とを備えている。
【0012】
トランジスタMSWは、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタMSWは、負荷RL、容量性負荷CL1よりも電源2の正極側に接続されている。トランジスタMSWは、ソースが負荷RL、容量性負荷CL1に接続され、ドレインが後述するセンス抵抗Rsを介して電源2の正極に接続されている。
【0013】
過電流保護回路3は、オン駆動回路4と、過電流制御回路5と、遅延回路6とを有している。オン駆動回路4は、定電流I1(第1の定電流)を供給する電流源42(第1の電流源)を有し、定電流I1をトランジスタMSWのゲートに供給することにより、トランジスタMSWをオンさせる回路である。
【0014】
過電流制御回路5は、負荷RLに流れる負荷電流が第1の参照電流を越えた場合、トランジスタMSWのゲートに供給される電流から負荷電流と第1の参照電流との差分に応じた電流分をシンクして(吸い出して)、負荷電流が第1の参照電流で一定となるようにトランジスタMSWを制御する回路である。遅延回路6は、過電流制御回路5による制御が一定時間継続した場合、トランジスタM4(第2のトランジスタ)をオンして、トランジスタMSWを強制的にオフする回路である。
【0015】
次に、オン駆動回路4の詳細について説明する。オン駆動回路4は、チャージポンプ回路41と、電流源42と、抵抗RGと、ツェナーダイオードDZ1とを有している。チャージポンプ回路41は、直流電圧V1を昇圧して、電流源42に供給する回路である。電流源42は、チャージポンプ回路41からの電源供給を受けて定電流I1を出力する回路である。この定電流I1によりトランジスタMSWのゲート容量が充電され、トランジスタMSWをオンすることができる。抵抗RGは、トランジスタMSWのゲート・ソース間に接続され、定電流I1がゲート容量に供給されないときに、ゲート容量の電荷を放電する。抵抗RGによってゲート容量が放電されると、トランジスタMSWはオフする。
【0016】
ツェナーダイオードDZ1は、カソードがトランジスタMSWのゲートに接続され、アノードがトランジスタMSWのソースに接続されている。ツェナーダイオードDZ1により、トランジスタMSWのゲート・ソース間電圧をツェナー電圧にクランプすることができる。
【0017】
次に、過電流制御回路5の詳細について説明する。過電流制御回路5は、センス抵抗Rsと、差動増幅器51と、トランジスタM1(第3のトランジスタ)と、抵抗R1とを有している。センス抵抗Rsは、負荷電流を検出するために設けられている。センス抵抗Rsは、その一端が電源2の正極に接続され、他端がトランジスタMSWのドレインに接続されている。センス抵抗Rsの両端電圧は、トランジスタMSWのドレイン電流(=負荷電流)に応じた電圧となる。
【0018】
差動増幅器51は、反転入力にセンス抵抗RsとトランジスタMSWのドレインとの接続点が接続され、非反転入力に基準電源52の負極が接続されている。基準電源52は、参照電圧Vref1(第1の参照電圧)を出力し、正極が電源2の正極に接続されている。参照電圧Vref1は、センス抵抗Rsに第1の参照電流が流れているときのセンス抵抗Rsの両端電圧に設定されている。差動増幅器51は、センス抵抗Rsの両端電圧と参照電圧Vref1との電位差に応じた電圧を出力する。
【0019】
トランジスタM1は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成され、ドレインがトランジスタMSWのゲートに接続され、ソースが抵抗R1に接続され、ゲートが差動増幅器51の出力に接続されている。抵抗R1は、トランジスタM1とグランドとの間に接続されている。差動増幅器51は、センス抵抗Rsの両端電圧が参照電圧Vref1を超えると、センス抵抗Rsの両端電圧と参照電圧Vref1との電位差に応じた電圧をトランジスタM1のゲートに出力する。
【0020】
これにより、トランジスタM1は、トランジスタMSWのゲートに供給される電流からセンス抵抗Rsの両端電圧と参照電圧Vref1との電位差(=負荷電流と第1の参照電流との差分)に応じた電流分をシンクする。トランジスタM1によりシンクされた電流分、電流源42からトランジスタMSWのゲートに供給される電流が減少する。トランジスタM1によるシンク電流が定電流I1以上となるとトランジスタMSWのゲート・ソース間電圧が下がり、負荷電流を引き下げる。この負帰還動作により、過電流制御回路5は、負荷電流を第1の参照電流で一定となるように制御できる。
【0021】
次に、遅延回路6について説明する。遅延回路6は、電源601を有している。電源601は、直流電圧V2を出力する。また、遅延回路6は、一定時間をカウントするための電流源602(第2の定電流源)と、キャパシタCT(第1のキャパシタ)と、比較器603(第1の比較器)とを備えている。電流源602は、電源601からの直流電圧V2の供給を受けて定電流I2(第2の定電流)を出力する。電流源602とキャパシタCTとは直列接続され、電流源602はキャパシタCTを定電流I2で充電する。
【0022】
比較器603は、非反転入力に電流源602とキャパシタCTの接続点が接続され、反転入力に基準電源604の正極が接続される。基準電源604は、参照電圧Vref2(第2の参照電圧)を出力し、負極がグランドに接続される。比較器603は、キャパシタCTの両端電圧と参照電圧Vref2とを比較し、その比較結果をAND回路605に入力する。即ち、比較器603は、キャパシタCTの両端電圧が参照電圧Vref2以下の場合、Lレベルを出力する。また、比較器603は、キャパシタCTの充電を開始してから一定時間が経過して、キャパシタCTの両端電圧が参照電圧Vref2を超えると、出力がLレベルからHレベルに反転する。
【0023】
遅延回路6は、過電流制御回路5による制御を検出してキャパシタCTの充電を開始させるための抵抗R2と、トランジスタM2と、トランジスタM3とを有している。抵抗R2は、一端が電源601の正極に接続されている。トランジスタM2は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成され、ドレインが抵抗R2の他端に接続され、ソースがグランドに接続されている。トランジスタM2のゲートは、差動増幅器51の出力に接続されている。トランジスタM3は、ドレインがキャパシタCTの一端に接続され、ソースがキャパシタCTの他端に接続されている。トランジスタM3のゲートは、抵抗R2とトランジスタM2のドレインとの接続点に接続されている。
【0024】
センス抵抗Rsの両端電圧が参照電圧Vref1以下であり、差動増幅器51からLレベルが出力されている間は、トランジスタM1、M2がオフする。トランジスタM2がオフすると、トランジスタM2のドレイン電圧がHレベル(直流電圧V2)となり、トランジスタM3がオンする。トランジスタM3がオンすると、キャパシタCTの両端が短絡されて、キャパシタCTには電流源602による充電が行われない。
【0025】
一方、センス抵抗Rsの両端電圧が参照電圧Vref1を超えると、差動増幅器51からはセンス抵抗Rsの両端電圧と参照電圧Vref1との電位差に応じた電圧が出力され、トランジスタM1、M2がオンする。トランジスタM2がオンすると、トランジスタM2のドレイン電圧がLレベル(グランド電位)となり、トランジスタM3がオフする。トランジスタM3がオフすると、電流源602からキャパシタCTへの充電が開始される。
【0026】
遅延回路6は、さらにAND回路605と、インバータ回路606と、フリップフロップ回路607と、トランジスタM4、M5とを有している。AND回路605は、比較器603の出力と、インバータ回路606の出力とが入力され、出力がフリップフロップ回路607のS入力に接続される。インバータ回路606は、トランジスタM2のドレイン電圧が入力され、出力がAND回路605の入力に接続されている。フリップフロップ回路607は、Q出力がトランジスタM4、M5のゲートに接続される。
【0027】
トランジスタM4(第2のトランジスタ)は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成され、ドレインがトランジスタMSWのゲート、ソースがグランドに接続される。トランジスタM5は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成され、ドレインがキャパシタCTの一端に接続され、ソースがキャパシタCTの他端に接続される。
【0028】
センス抵抗Rsの両端電圧が参照電圧Vref1以下であり、トランジスタM2がオフの間は、トランジスタM2のドレイン電圧はHレベルとなり、インバータ回路606はLレベルを出力する。このとき、キャパシタCTも充電されないため、比較器603の出力もLレベルとなり、AND回路605からはLレベルが出力される。AND回路605からLレベルが出力されると、フリップフロップ回路607のQ出力からは、Lレベルが出力され、トランジスタM4、M5がオフされる。
【0029】
一方、センス抵抗Rsの両端電圧が参照電圧Vref1を超えると、トランジスタM2がオンして、トランジスタM2のドレイン電圧はLレベルとなり、インバータ回路606はHレベルを出力する。また、キャパシタCTの充電が開始され、一定時間が経過して比較器603の出力がHレベルとなると、AND回路605の出力はLレベルからHレベルに反転する。AND回路605からHレベルが出力されると、フリップフロップ回路607のQ出力からは、Hレベルが出力され、トランジスタM4、M5がオンされる。
【0030】
トランジスタM4がオンされると、トランジスタMSWがオフされる。トランジスタMSWがオフされると、差動増幅器51の出力がLレベルとなり、トランジスタM2がオフされ、インバータ回路606の出力はLレベルに反転する。また、トランジスタM5がオンされると、キャパシタCTの両端が短絡され、キャパシタCTに蓄積された電荷が放電される。これにより、キャパシタCTの両端電圧が参照電圧Vref2を下回り、比較器603の出力がLレベルに反転する。
【0031】
インバータ回路606の出力、比較器603の出力がLレベルに反転すると、AND回路605の出力はLレベルに反転するが、フリップフロップ回路607によりQ出力は、R入力にリセット信号が入力されるまでHレベルが保持されるため、トランジスタM4、M5のオンを維持することができる。
【0032】
上述した構成の電源装置1の動作について
図2に示すタイムチャートを参照して以下説明する。
図2は、電流源42が定電流I1を流し始め、トランジスタMSWのゲート電圧が次第に上昇していく際の各部の電圧を表している。
図2においては、動作説明のため、ゲート電圧が立ち上がる際に過電流制御回路5が動作するには十分な容量性負荷CL1の容量を設定しているとする。
【0033】
起動時に電流源42が定電流I1を流し始めると、トランジスタMSWのゲート・ソース間電圧が増加し、トランジスタMSWがオンする。トランジスタMSWがオンすると、ソース電位が上昇する。また、トランジスタMSWがオンすると、負荷RL、容量性負荷CL1に対して電流が供給され、容量性負荷CL1への充電が開始される。
【0034】
容量性負荷CL1への充電が開始されると、ラッシュ電流が流れ、センス抵抗Rsの両端電圧が増加し、参照電圧Vref1を超える。参照電圧Vref1を超えると、過電流制御回路5の制御によりトランジスタMSWに流れる電流が第1の参照電流で一定となり、センス抵抗Rsの両端電圧が参照電圧Vref1で一定となる。過電流制御回路5が、制御を開始すると遅延回路6がキャパシタCTへの充電を開始する。
【0035】
この例において、キャパシタCTの両端電圧が参照電圧Vref2に達する前に、容量性負荷CL1の充電が終了して、トランジスタMSWのソース電圧がチャージポンプ回路41の出力電圧まで上がる。このため、センス抵抗Rsの両端電圧が参照電圧Vref1を下回り、キャパシタCTの充電は停止される。その後、短絡などによる過電流が発生すると、まず過電流制御回路5による電流制御により負荷電流は一定電流に抑えられる。これにより、キャパシタCTの充電が開始され、キャパシタCTの両端電圧が上昇する。過電流が解消されず、一定時間経過すると、キャパシタCTの両端電圧が参照電圧Vref2を超えて、遅延回路6がトランジスタM4、M5をオンして、トランジスタMSWをオフにする。
【0036】
上述した実施形態によれば、過電流制御回路5が、負荷電流が第1の参照電流で一定となるようにトランジスタMSWを制御し、遅延回路6が、過電流制御回路5によるトランジスタMSWの制御が一定時間継続した場合、トランジスタM4をオンして、トランジスタMSWを強制的にオフする。これにより、容量性負荷CL1の容量が大きい場合でも、起動時にラッシュ電流を抑えて一定にでき、ラッシュ電流によりトランジスタMSWがオフとなる誤動作を抑制することができる。
【0037】
また、トランジスタMSWのゲートに容量を追加する必要もないため、より早い起動時間に設定することができる。また、キャパシタCTの容量を変更することで、トランジスタMSWのゲート容量や許容損失に合わせて定電流で動作する時間を設定することができる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の電源装置1Bについて
図3を参照して以下説明する。なお、
図3において、上述した第1実施形態で説明した
図1に示す電源装置1と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0039】
第1実施形態と第2実施形態とで大きく異なる点は、遅延回路6Bの構成である。第2実施形態の遅延回路6Bは、第1実施形態で説明した部品に加えて、判定回路として機能する比較器608(第2の比較器)と、基準電源609と、を有している。比較器608は、反転入力に電源2の正極が接続され、非反転入力に基準電源609の負極が接続されている。基準電源609は、参照電圧Vref3を出力し、正極がトランジスタMSWのゲートに接続されている。
【0040】
これにより、比較器608は、トランジスタMSWのゲート電圧と、電源2が出力する直流電圧V1と参照電圧Vref3を加算した電圧(V1+Vref3)(第3の参照電圧)とを比較し、その比較結果をフリップフロップ回路610のS入力に出力する。即ち、比較器608は、起動中(容量性負荷CL1が充電中となる状態)であり、トランジスタMSWのゲート電圧が低い間(電圧(V1+Vref3)以下)はLレベルを出力する。比較器608は、起動が終了し(容量性負荷CL1の充電が終了した状態)、トランジスタMSWのゲート電圧が高くなると(即ち、電圧(V1+Vref3)を超えると)Hレベルを出力する。
【0041】
遅延回路6Bは、さらにフリップフロップ回路610と、OR回路611とをさらに有している。フリップフロップ回路610は、Q出力がOR回路611の入力に接続されている。OR回路611の入力には、さらに比較器603の出力が接続されている。OR回路611の出力は、AND回路605の入力に接続されている。
【0042】
上述した構成の電源装置1Bの動作について
図4に示すタイムチャートを参照して以下説明する。起動時の動作は、トランジスタMSWのゲート電圧は低いため、比較器608の出力がLレベルとなり、フリップフロップ回路610のQ出力はLレベルとなる。このため、OR回路611の出力は、比較器603の出力がHレベルならHレベルとなり、比較器603の出力がLレベルならLレベルとなる。このため、電源装置1Bは、起動時は第1実施形態と同様に動作する。
【0043】
起動が終了して、トランジスタMSWのゲート電圧が高くなると、比較器608の出力がHレベルとなり、フリップフロップ回路610のQ出力はHレベルに反転する。フリップフロップ回路610のQ出力がHレベルとなると、OR回路611の出力がHレベルとなる。
【0044】
よって、起動が終了した後は、AND回路605は、インバータ回路606の出力に応じた出力となる。このため、過電流が流れてセンス抵抗Rsの両端電圧が参照電圧Vref1を超えると、キャパシタCTの両端電圧が参照電圧Vref2を超えるのを待たずにすぐにトランジスタM4、M5をオフして、トランジスタMSWをオフすることができる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の電源装置1Cについて
図5を参照して以下説明する。なお、
図5において、上述した第2実施形態で説明した
図3に示す電源装置1と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0046】
また、第2実施形態と第3実施形態とで大きく異なる点は、遅延回路6Cの構成である。第3実施形態の遅延回路6Cは、第2実施形態で説明した部品に加えて、スルーレート検出回路として機能する抵抗RDET(検出抵抗)と、キャパシタC1(第2のキャパシタ)と、比較器613(第3の比較器)と、基準電源614とを有している。抵抗RDET及びキャパシタC1は直列に接続され、トランジスタMSWのゲート・ソース間に接続されている。抵抗RDETは、後述するトランジスタMSWのドレイン・ゲート間の寄生容量Cgdに流れる電流を電圧に変換し、検出電圧として比較器613の反転入力に入力する。キャパシタC1は、寄生容量Cgdに流れる電流により充電され、検出電圧を保持する。
【0047】
比較器613は、反転入力に抵抗RDETとキャパシタC1の接続点が接続され、非反転入力に基準電源614の負極が接続され、出力はOR回路611の入力に接続される。基準電源614は、参照電圧Vref4を出力し、正極がトランジスタMSWのゲートに接続されている。
【0048】
第1実施形態及び第2実施形態では、起動中に負荷RLの短絡が発生した場合、トランジスタMSWの電流は定電流に制御されるが、その状態が一定時間以上継続してキャパシタCTの両端電圧が参照電圧Vref2を超えないとトランジスタMSWをオフできなかった。第3実施形態は、この点を改善し、起動中に負荷RLの短絡が発生した場合、直ちにトランジスタMSWをオフできる構成としている。
【0049】
起動中にある程度、トランジスタMSWのゲート電圧、ソース電圧が上がった状態で負荷RLが短絡状態となるとゲート電圧、ソース電圧は急激に引き下げられる。この時、トランジスタMSWのドレイン・ゲート間の電位差が急激に増加するため、寄生容量Cgdを通して電流がトランジスタMSWのゲートに流れ、ゲート・ソース間電圧は電流源42で引き上げられる場合に比較して急激に増加する。増加した電流により、キャパシタC1へ充電されると共に抵抗RDETの両端電圧が増加する。抵抗RDETの両端電圧が参照電圧Vref4を超えると比較器613の出力がLレベルからHレベルに切り替わり、キャパシタCTの両端電圧が参照電圧Vref2以下であってもフリップフロップ回路607のQ出力がHレベルになり、即座にトランジスタMSWをオフにすることができる。
【0050】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0051】
上述した実施形態では、トランジスタMSW、M1~M5は、電界効果トランジスタから構成されていたが、これに限ったものではない。トランジスタMSWとしては、バイポーラトランジスタから構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
2 電源
3 過電流保護回路
4 オン駆動回路
5 過電流制御回路
6 遅延回路
42 電流源(第1の電流源)
51 差動増幅器(第1の差動増幅器)
602 電流源(第2の電流源)
603 比較器(第1の比較器)
608 比較器(第2の比較器、判定回路)
609 基準電源(判定回路)
613 比較器(第3の比較器、スルーレート検出回路)
614 基準電源(スルーレート検出回路)
I1 定電流(第1の定電流)
I2 定電流(第2の定電流)
C1 キャパシタ(第2のキャパシタ、スルーレート検出回路)
CL1 容量性負荷
CT キャパシタ(第1のキャパシタ)
M1 トランジスタ(第3のトランジスタ)
M4 トランジスタ(第2のトランジスタ)
MSW トランジスタ(第1のトランジスタ)
RDET 抵抗(検出抵抗、スルーレート検出回路)
RL 負荷
Rs センス抵抗
Vref1 参照電圧(第1の参照電圧)
Vref2 参照電圧(第2の参照電圧)
V1+Vref3 電圧(第3の参照電圧)
Vref4 参照電圧(第4の参照電圧)