IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人大阪大学の特許一覧

<>
  • 特開-流体圧バルブ制御システム 図1
  • 特開-流体圧バルブ制御システム 図2
  • 特開-流体圧バルブ制御システム 図3
  • 特開-流体圧バルブ制御システム 図4
  • 特開-流体圧バルブ制御システム 図5
  • 特開-流体圧バルブ制御システム 図6
  • 特開-流体圧バルブ制御システム 図7
  • 特開-流体圧バルブ制御システム 図8
  • 特開-流体圧バルブ制御システム 図9
  • 特開-流体圧バルブ制御システム 図10
  • 特開-流体圧バルブ制御システム 図11
  • 特開-流体圧バルブ制御システム 図12
  • 特開-流体圧バルブ制御システム 図13
  • 特開-流体圧バルブ制御システム 図14
  • 特開-流体圧バルブ制御システム 図15
  • 特開-流体圧バルブ制御システム 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169056
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】流体圧バルブ制御システム
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/02 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
F15B11/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080509
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(72)【発明者】
【氏名】川合 健太郎
【テーマコード(参考)】
3H089
【Fターム(参考)】
3H089AA74
3H089BB27
3H089CC11
3H089DA02
3H089DA03
3H089DB45
3H089DB46
3H089DB47
3H089DB48
3H089DB49
3H089DB68
3H089DB75
3H089EE12
3H089GG02
3H089GG03
3H089HH04
3H089JJ01
3H089JJ06
3H089JJ11
3H089JJ12
(57)【要約】
【課題】少数の電磁バルブで多数の流体圧アクチュエータを個別に作動させて、十分に小型化が図られて、効率的な運用が可能な流体圧バルブ制御システムを提供する。
【解決手段】特定のアクチュエータの動作を指示する信号を入力する配線をドライブライン、ドライブラインに入力された信号状態を保持する配線をゲートラインとし、ゲートラインの全てが閉じた初期状態をスタートとして、ドライブラインに特定のアクチュエータの動作を指示する流体圧信号を入力する第1ステップと、ドライブラインに入力された流体圧信号を特定のアクチュエータに対応した方向制御弁へ入力する第2ステップと、特定のアクチュエータの状態を保持する第3ステップとを、全てのゲートラインに対し個別または一定の組み合わせで行うことにより、特定のアクチュエータの動作を制御する流体圧バルブ制御システム。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧機械または水圧機械に設けられて電磁バルブによって開閉する複数本の油圧バルブまたは水圧バルブを用いて、複数の流体圧アクチュエータから特定の流体圧アクチュエータを選択してその動作を制御する流体圧バルブ制御システムであって、
前記複数本の油圧バルブまたは水圧バルブの内、前記特定の流体圧アクチュエータの動作を指示する信号を入力する流体圧配線をドライブライン、前記ドライブラインに入力された信号状態を保持するゲートバルブの開閉を行う流体圧配線をゲートラインとしたとき、
前記ゲートラインの全てが閉じた初期状態をスタートとして、
前記ドライブラインに設けられた電磁バルブを開閉することにより、前記ドライブラインに前記特定の流体圧アクチュエータの動作を指示する流体圧信号を入力する第1ステップと、
前記ゲートラインに設けられた電磁バルブを開状態とすることにより、前記ゲートバルブを開放して、前記ドライブラインに入力された流体圧信号を、前記ドライブラインから前記特定の流体圧アクチュエータに対応した方向制御弁へ入力する第2ステップと、
前記ゲートラインに設けられた電磁バルブを閉状態とすることにより、前記ゲートバルブを閉じて、前記特定の流体圧アクチュエータの動作を制御する方向制御弁の状態を保持する第3ステップとを備えており、
前記第1ステップから前記第3ステップを、全てのゲートラインに対し個別または一定の組み合わせで行うことにより、前記特定の流体圧アクチュエータの動作を制御するように構成されていることを特徴とする流体圧バルブ制御システム。
【請求項2】
1本以上の前記ドライブラインと、1本以上の前記ゲートラインとを立体的に交差させた箇所に、1対1で対応した前記流体圧アクチュエータが、固有のアドレスが割り付けられた状態で配置されており、
前記第1ステップから前記第3ステップを行うに際して、
前記特定の流体圧アクチュエータに対応したアドレスに割り当てられたゲートラインを指定し、
前記特定の流体圧アクチュエータへの流体圧信号、ならびに、同じゲートライン上に連なるゲートバルブと対応したその他の流体圧アクチュエータの前回状態の流体圧信号を前記ドライブラインから入力した状態で、ゲートバルブの開閉を行うことにより、前記特定の流体圧アクチュエータの動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の流体圧バルブ制御システム。
【請求項3】
前記ゲートラインにスプールが配置されて、前記スプールの移動により、前記流体圧アクチュエータの動作を制御するように構成されており、
前記ゲートラインを前記ドライブラインと組み合わせて流体圧回路を形成することにより、
前記特定の流体圧アクチュエータの動作を制御することを特徴とする請求項2に記載の流体圧バルブ制御システム。
【請求項4】
前記ゲートラインにポペットが配置されて、前記ポペットの開閉により、前記流体圧アクチュエータの動作を制御するように構成されており、
前記ゲートラインは、前記ゲートラインに連なるゲートバルブの開閉動作が、前記ゲートラインを制御する流体圧信号によるポペットの開閉によって制御されるように構成されており、
前記ゲートラインを前記ドライブラインと組み合わせて流体圧回路を形成することにより、
前記特定の流体圧アクチュエータの動作を制御することを特徴とする請求項2に記載の流体圧バルブ制御システム。
【請求項5】
前記ポペットが、ロジック弁であることを特徴とする請求項4に記載の流体圧バルブ制御システム。
【請求項6】
前記ゲートラインに、導通路が1つ以上形成された1本以上のシリンダを備えており、
前記第1ステップから前記第3ステップを行うに際して、
前記第1ステップと同時に、前記シリンダの回転によって導通路の内から前記特定のゲートバルブに導通する導通路を選択して、前記ドライブラインと連通させることにより、前記特定の流体圧アクチュエータに対応した方向制御弁を制御する信号を入力することを特徴とする請求項2に記載の流体圧バルブ制御システム。
【請求項7】
スライドさせることにより、n×m個(いずれか一方が1以上で、他方が2以上)の導通流路を形成する平板を1枚以上備えており、
前記第1ステップから前記第3ステップを行うに際して、
前記第1ステップと同時に、前記1枚以上の平板をスライドさせて、前記特定の流体圧アクチュエータに対応したゲートバルブへの導通流路を選択して、前記ドライブラインと連通させるすることにより、前記特定の流体圧アクチュエータを選択する信号を入力することを特徴とする請求項2に記載の流体圧バルブ制御システム。
【請求項8】
1本の前記ドライブラインと、1本の前記ゲートラインに加えて、前記特定の流体圧アクチュエータに対応したゲートバルブを選択する信号を入力する1本以上のセレクトライン配線を備えており、
前記第1ステップから前記第3ステップを行うに際して、
前記第1ステップにおいて、追加で前記セレクトラインに設けられた電磁バルブを開閉することにより、前記セレクトラインに前記特定の流体圧アクチュエータと対応したゲートバルブへの導通流路を選択する信号を入力することを、
全てのセレクトラインの前記電磁バルブの切り替えによって、個別または特定の組み合わせで行うことを特徴とする請求項1に記載の流体圧バルブ制御システム。
【請求項9】
前記ゲートラインに、セレクトラインとして働くスプールが配置されて、前記スプールの移動により、前記セレクトラインの電磁バルブを切り替え、前記ゲートバルブへの導通流路を選択するように構成されており、
前記ゲートラインを前記ドライブラインと組み合わせて流体圧回路を形成することにより、
前記特定の流体圧アクチュエータの動作を制御することを特徴とする請求項8に記載の流体圧バルブ制御システム。
【請求項10】
前記ゲートラインに、セレクトラインとして働くポペットが配置されて、前記セレクトラインの電磁バルブを切り替えることで開閉する前記ポペットにより、前記ゲートバルブへの導通流路を選択するように構成されており、
前記ゲートラインを前記ドライブラインと組み合わせて流体圧回路を形成することにより、
前記特定の油圧アクチュエータの動作を制御することを特徴とする請求項8に記載の流体圧バルブ制御システム。
【請求項11】
前記ゲートラインに、セレクトラインとして働く導通流路が1つ以上形成された1本以上のシリンダを備えており、
前記第1ステップから前記第3ステップを行うに際して、
前記第1ステップと同時に、前記回転シリンダの回転によって導通流路の内から前記特定のゲートバルブに導通する導通流路を選択して、前記ドライブラインと連動させることにより、前記特定の流体圧アクチュエータに対応した方向制御弁を制御する信号を入力することを特徴とする請求項8に記載の流体圧バルブ制御システム。
【請求項12】
スライドさせることにより、セレクトラインとして働くn×m個(いずれか一方が1以上で、他方が2以上)の導通路を形成する平板を1枚以上備えており、
前記第1ステップから前記第3ステップを行うに際して、
前記第1ステップと同時に、前記1枚以上の平板をスライドさせて、前記特定の流体圧アクチュエータに対応したゲートバルブへ導通する導通路を選択して、前記ドライブラインと連通させることにより、前記特定の流体圧アクチュエータを選択する信号を入力することを特徴とする請求項8に記載の流体圧バルブ制御システム。
【請求項13】
空気を流体として用い、流体圧によって開閉する複数本のバルブから特定のバルブを選択してその動作を制御する流体圧バルブ制御システムであって、
前記複数本のバルブの内、前記特定のバルブの動作を指示する信号を入力する流体圧配線をドライブライン、前記ドライブラインに入力された信号状態を保持するゲートバルブを開閉する流体圧配線をゲートラインとしたとき、
前記ゲートラインは、下記(1)~(4)のいずれかによって前記ゲートラインに連なるゲートバルブを開閉動作させて、前記バルブの開閉駆動を制御するように構成されており、
前記ゲートラインを前記ドライブラインと組み合わせて流体圧回路を形成することにより、
前記特定のバルブの動作を制御する方向制御弁を操作することを特徴とする流体圧バルブ制御システム。
(1)前記ゲートラインに配置されたスプールの移動
(2)前記ゲートラインに配置されたポペットの開閉
(3)前記ゲートラインに配置された導通路が1つ以上形成されたシリンダの回転
(4)n×m個(いずれか一方が1以上で、他方が2以上)の導通路を形成する1枚
以上の平板スライド
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧バルブ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場の設備やプラント、建設機械などの重機、ロボット、航空機や船舶、自動車などの輸送機器においては、油圧により駆動される油圧機械が多く用いられている(例えば、特許文献1~4)。
【0003】
このような油圧機械においては、一般的に、油圧配管の電磁バルブ(油圧用方向制御弁)の開閉に合わせて流入、排出されるオイルによって油圧アクチュエータ等を作動させる油圧バルブ制御システムを備えている。
【0004】
従来の油圧バルブ制御システムでは、油圧アクチュエータの各所を個別に操作したい場合、1対1で対応する制御用の電磁バルブ(方向制御弁)が必要となる。このとき、多数の油圧アクチュエータを任意の組み合わせと順番で協調しながら作動させる場合、油圧アクチュエータと1対1で対応して設けられた多数の電磁バルブから、作動対象となる1個または数個、特定の電磁バルブを選択して、一定のタイミングで作動させる必要があるが、その他の電磁バルブはその作動には関与せず、ただ存在しているだけである。
【0005】
このため、油圧アクチュエータの数に合わせて電磁バルブを設けて、それぞれが使用される機会を待つことは、部品数、重量、体積、配線や配管、消費電力等の観点で効率的とは言えない。
【0006】
一方、シーケンス弁を用いて油圧配管によりシーケンス回路を構成することで、少数の電磁バルブによって多数の油圧アクチュエータを一定の組み合わせと一定の順番で協調しながら作動させることはできる。しかしながら、この方式を適用した場合には、作動する油圧アクチュエータの組み合わせと順番は配管の構成で決定されてしまうため、任意の組み合わせと任意の順番で油圧アクチュエータを作動させることができない。
【0007】
このため、多数の電磁バルブ(方向制御弁)の各々を用いて各油圧アクチュエータを作動させるのではなく、少数の電磁バルブで多数の油圧アクチュエータから選択された油圧アクチュエータを個別に作動させることにより、十分に小型化が図られて、効率的な運用が可能な油圧バルブ制御システムが強く望まれていた。
【0008】
上記では、油圧機械の油圧バルブ制御システムを例に挙げて説明したが、水圧機械の水圧バルブ制御システム、空圧機械の空圧バルブ制御システムにおいても同様であり、流体圧を用いて運転される流体圧機械の流体圧バルブ制御システム全般に亘って、十分に小型化が図られて、効率的な運用が可能な流体圧バルブ制御システムが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-132449号公報
【特許文献2】特開2014-211217号公報
【特許文献3】特開2015-148229号公報
【特許文献4】特開2019-168107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑み、各種流体圧機械において、多数の電磁バルブの各々を用いて各流体圧アクチュエータを作動させるのではなく、少数の電磁バルブで多数の流体圧アクチュエータを個別に作動させて、十分に小型化が図られて、効率的な運用が可能な流体圧バルブ制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題の解決について鋭意検討を行い、以下に記載する発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
請求項1に記載の発明は、
油圧機械または水圧機械に設けられて電磁バルブによって開閉する複数本の油圧バルブまたは水圧バルブを用いて、複数の流体圧アクチュエータから特定の流体圧アクチュエータを選択してその動作を制御する流体圧バルブ制御システムであって、
前記複数本の油圧バルブまたは水圧バルブの内、前記特定の流体圧アクチュエータの動作を指示する信号を入力する流体圧配線をドライブライン、前記ドライブラインに入力された信号状態を保持するゲートバルブの開閉を行う流体圧配線をゲートラインとしたとき、
前記ゲートラインの全てが閉じた初期状態をスタートとして、
前記ドライブラインに設けられた電磁バルブを開閉することにより、前記ドライブラインに前記特定の流体圧アクチュエータの動作を指示する流体圧信号を入力する第1ステップと、
前記ゲートラインに設けられた電磁バルブを開状態とすることにより、前記ゲートバルブを開放して、前記ドライブラインに入力された流体圧信号を、前記ドライブラインから前記特定の流体圧アクチュエータに対応した方向制御弁へ入力する第2ステップと、
前記ゲートラインに設けられた電磁バルブを閉状態とすることにより、前記ゲートバルブを閉じて、前記特定の流体圧アクチュエータの動作を制御する方向制御弁の状態を保持する第3ステップとを備えており、
前記第1ステップから前記第3ステップを、全てのゲートラインに対し個別または一定の組み合わせで行うことにより、前記特定の流体圧アクチュエータの動作を制御するように構成されていることを特徴とする流体圧バルブ制御システムである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、
1本以上の前記ドライブラインと、1本以上の前記ゲートラインとを立体的に交差させた箇所に、1対1で対応した前記流体圧アクチュエータが、固有のアドレスが割り付けられた状態で配置されており、
前記第1ステップから前記第3ステップを行うに際して、
前記特定の流体圧アクチュエータに対応したアドレスに割り当てられたゲートラインを指定し、
前記特定の流体圧アクチュエータへの流体圧信号、ならびに、同じゲートライン上に連なるゲートバルブと対応したその他の流体圧アクチュエータの前回状態の流体圧信号を前記ドライブラインから入力した状態で、ゲートバルブの開閉を行うことにより、前記特定の流体圧アクチュエータの動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の流体圧バルブ制御システムである。
【0014】
請求項3に記載の発明は、
前記ゲートラインにスプールが配置されて、前記スプールの移動により、前記流体圧アクチュエータの動作を制御するように構成されており、
前記ゲートラインを前記ドライブラインと組み合わせて流体圧回路を形成することにより、
前記特定の流体圧アクチュエータの動作を制御することを特徴とする請求項2に記載の流体圧バルブ制御システムである。
【0015】
請求項4に記載の発明は、
前記ゲートラインにポペットが配置されて、前記ポペットの開閉により、前記流体圧アクチュエータの動作を制御するように構成されており、
前記ゲートラインは、前記ゲートラインに連なるゲートバルブの開閉動作が、前記ゲートラインを制御する流体圧信号によるポペットの開閉によって制御されるように構成されており、
前記ゲートラインを前記ドライブラインと組み合わせて流体圧回路を形成することにより、
前記特定の流体圧アクチュエータの動作を制御することを特徴とする請求項2に記載の流体圧バルブ制御システムである。
【0016】
請求項5に記載の発明は、
前記ポペットが、ロジック弁であることを特徴とする請求項4に記載の流体圧バルブ制御システムである。
【0017】
請求項6に記載の発明は、
前記ゲートラインに、導通路が1つ以上形成された1本以上のシリンダを備えており、
前記第1ステップから前記第3ステップを行うに際して、
前記第1ステップと同時に、前記シリンダの回転によって導通路の内から前記特定のゲートバルブに導通する導通路を選択して、前記ドライブラインと連通させることにより、前記特定の流体圧アクチュエータに対応した方向制御弁を制御する信号を入力することを特徴とする請求項2に記載の流体圧バルブ制御システムである。
【0018】
請求項7に記載の発明は、
スライドさせることにより、n×m個(いずれか一方が1以上で、他方が2以上)の導通流路を形成する平板を1枚以上備えており、
前記第1ステップから前記第3ステップを行うに際して、
前記第1ステップと同時に、前記1枚以上の平板をスライドさせて、前記特定の流体圧アクチュエータに対応したゲートバルブへの導通流路を選択して、前記ドライブラインと連通させるすることにより、前記特定の流体圧アクチュエータを選択する信号を入力することを特徴とする請求項2に記載の流体圧バルブ制御システムである。
【0019】
請求項8に記載の発明は、
1本の前記ドライブラインと、1本の前記ゲートラインに加えて、前記特定の流体圧アクチュエータに対応したゲートバルブを選択する信号を入力する1本以上のセレクトライン配線を備えており、
前記第1ステップから前記第3ステップを行うに際して、
前記第1ステップにおいて、追加で前記セレクトラインに設けられた電磁バルブを開閉することにより、前記セレクトラインに前記特定の流体圧アクチュエータと対応したゲートバルブへの導通流路を選択する信号を入力することを、
全てのセレクトラインの前記電磁バルブの切り替えによって、個別または特定の組み合わせで行うことを特徴とする請求項1に記載の流体圧バルブ制御システムである。
【0020】
請求項9に記載の発明は、
前記ゲートラインに、セレクトラインとして働くスプールが配置されて、前記スプールの移動により、前記セレクトラインの電磁バルブを切り替え、前記ゲートバルブへの導通流路を選択するように構成されており、
前記ゲートラインを前記ドライブラインと組み合わせて流体圧回路を形成することにより、
前記特定の流体圧アクチュエータの動作を制御することを特徴とする請求項8に記載の流体圧バルブ制御システムである。
【0021】
請求項10に記載の発明は、
前記ゲートラインに、セレクトラインとして働くポペットが配置されて、前記セレクトラインの電磁バルブを切り替えることで開閉する前記ポペットにより、前記ゲートバルブへの導通流路を選択するように構成されており、
前記ゲートラインを前記ドライブラインと組み合わせて流体圧回路を形成することにより、
前記特定の油圧アクチュエータの動作を制御することを特徴とする請求項8に記載の流体圧バルブ制御システムである。
【0022】
請求項11に記載の発明は、
前記ゲートラインに、セレクトラインとして働く導通流路が1つ以上形成された1本以上のシリンダを備えており、
前記第1ステップから前記第3ステップを行うに際して、
前記第1ステップと同時に、前記回転シリンダの回転によって導通流路の内から前記特定のゲートバルブに導通する導通流路を選択して、前記ドライブラインと連動させることにより、前記特定の流体圧アクチュエータに対応した方向制御弁を制御する信号を入力することを特徴とする請求項8に記載の流体圧バルブ制御システムである。
【0023】
請求項12に記載の発明は、
スライドさせることにより、セレクトラインとして働くn×m個(いずれか一方が1以上で、他方が2以上)の導通路を形成する平板を1枚以上備えており、
前記第1ステップから前記第3ステップを行うに際して、
前記第1ステップと同時に、前記1枚以上の平板をスライドさせて、前記特定の流体圧アクチュエータに対応したゲートバルブへ導通する導通路を選択して、前記ドライブラインと連通させることにより、前記特定の流体圧アクチュエータを選択する信号を入力することを特徴とする請求項8に記載の流体圧バルブ制御システムである。
【0024】
請求項13に記載の発明は、
空気を流体として用い、流体圧によって開閉する複数本のバルブから特定のバルブを選択してその動作を制御する流体圧バルブ制御システムであって、
前記複数本のバルブの内、前記特定のバルブの動作を指示する信号を入力する流体圧配線をドライブライン、前記ドライブラインに入力された信号状態を保持するゲートバルブを開閉する流体圧配線をゲートラインとしたとき、
前記ゲートラインは、下記(1)~(4)のいずれかによって前記ゲートラインに連なるゲートバルブを開閉動作させて、前記バルブの開閉駆動を制御するように構成されており、
前記ゲートラインを前記ドライブラインと組み合わせて流体圧回路を形成することにより、
前記特定のバルブの動作を制御する方向制御弁を操作することを特徴とする流体圧バルブ制御システムである。
(1)前記ゲートラインに配置されたスプールの移動
(2)前記ゲートラインに配置されたポペットの開閉
(3)前記ゲートラインに配置された導通路が1つ以上形成されたシリンダの回転
(4)n×m個(いずれか一方が1以上で、他方が2以上)の導通路を形成する1枚
以上の平板スライド
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、少数の電磁バルブで多数の流体圧アクチュエータを個別に作動させて、十分に小型化が図られて、効率的な運用が可能な流体圧バルブ制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】従来型空気圧マイクロバルブ制御システム、マトリクス型構成の空気圧マイクロバルブ制御システム、デマルチプレクサ型構成の空気圧マイクロバルブ制御システムにおいて、4-20個までの電磁バルブで個別制御可能な最大バルブ数を示す図である。
図2】マトリクス型構成の油圧バルブ制御システムのブロック構造の一例を説明する模式断面図である。
図3】スプールの動作を説明する図である。
図4】ポペットの動作を説明する図である。
図5】マトリクス型構成の油圧バルブ制御システムのブロック構造における制御の初期状態を説明する図である。
図6】マトリクス型構成の油圧バルブ制御システムのブロック構造における制御の第1ステップにおける状態を説明する図である。
図7】マトリクス型構成の油圧バルブ制御システムのブロック構造における制御の第2ステップにおける状態を説明する図である。
図8】マトリクス型構成の油圧バルブ制御システムのブロック構造における制御の第3ステップにおける状態を説明する図である。
図9】回転シリンダによる油圧バルブ制御を説明する図である。
図10】2枚のスライド平板による油圧バルブ制御の一例を説明する図である。
図11】2枚のスライド平板による油圧バルブ制御の他の一例を説明する図である。
図12】デマルチプレクサ型構成の油圧バルブ制御システムのブロック構造の一例を説明する模式断面図である。
図13】デマルチプレクサ型構成の油圧バルブ制御システムのブロック構造における制御の初期状態を説明する図である。
図14】デマルチプレクサ型構成の油圧バルブ制御システムのブロック構造における制御の第1ステップにおける状態を説明する図である。
図15】デマルチプレクサ型構成の油圧バルブ制御システムのブロック構造における制御の第2ステップにおける状態を説明する図である。
図16】デマルチプレクサ型構成の油圧バルブ制御システムのブロック構造における制御の第3ステップにおける状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[1]本発明に至る経緯
最初に、本発明の完成に至る経緯について説明する。
【0028】
本発明者は、先に、マイクロ流体システムにおける空気圧マイクロバルブ制御システムについて、以下に示す提案を行っている。
【0029】
1つは、「Stand-alone micro fluidic system using partly disposable PDMS microwell array for high throughput cell analysis」(K.Miyamoto et al./Sensors and Actuators A 188(2012)133-140)に記載した提案である。
【0030】
具体的には、m本のゲートラインとn本のドライブラインを制御ラインとして設け、その交差する箇所に1個ずつオンチップバルブを配置して各オンチップバルブに固有のアドレスをマトリクス状に割り付け、ゲートラインおよびドライブラインの選択によって特定のアドレスに配置されたオンチップバルブの作動を制御する(「マトリクス型構成」あるいは「アドレス型構成」)。これにより、(m+n)本の制御ラインで、(m×n)個のオンチップバルブの作動を制御することができる。
【0031】
他の1つは、「Microfluidic valve array control system integrating a fluid demultiplexer circuit」(K.Kawai et al.,Journal of Micromechanics and Microengineering,25(6)(2015))に記載した提案である。
【0032】
具体的には、1本のゲートライン、1本のドライブラインおよび、2本1組でS組のセレクトラインを制御ラインとして設け、セレクトラインの選択によって特定のオンチップバルブの作動を制御する(「デマルチプレクサ型構成」)。これにより、(1+1+S)本の制御ラインで、2個のオンチップバルブの作動を制御することができる。
【0033】
図1に、制御ライン数とバルブ数が1:1で対応した空気圧マイクロバルブ制御システム(従来型空気圧マイクロバルブ制御システム)、マトリクス型構成の空気圧マイクロバルブ制御システム、デマルチプレクサ型構成の空気圧マイクロバルブ制御システムにおいて、4-20個までの電磁バルブで個別制御可能な最大バルブ数を示す。なお、図1において、横軸は電磁バルブの必要個数、縦軸は個別制御可能な最大バルブ数である。
【0034】
図1に示すように、マトリクス型構成、デマルチプレクサ型構成、いずれの空気圧マイクロバルブ制御システムにおいても、電磁バルブの数に比べて多い数のバルブを対象として、その作動を制御することができる。
【0035】
しかしながら、上記した空気圧マイクロバルブ制御システムはマイクロ流体システムを対象とするものであり、全く異なる分野と位置付けられる通常の油圧機械や水圧機械のバルブ制御には適用することはできないと一般的に考えられていた。
【0036】
このような状況下、本発明者は、マイクロ流体システムとは全く異なる分野の通常の油圧機械や水圧機械のバルブ制御において、マトリクス型構成やデマルチプレクサ型構成のバルブ制御システムを構築することができれば、上記した空気圧マイクロバルブ制御システムと同様に、少数の電磁バルブによって油圧バルブや水圧バルブの各々を駆動させる各アクチュエータの作動を制御することが可能となり、油圧機械や水圧機械の十分な小型化を図れると共に、効率的な運用が可能になると考え、マトリクス型構成やデマルチプレクサ型構成のバルブ制御システムの通常の油圧機械や水圧機械への適用につき、鋭意検討を行った。
【0037】
しかしながら、上記したマトリクス型構成やデマルチプレクサ型構成の空気圧マイクロバルブ制御システムは、油圧機械や水圧機械のバルブ制御システムへ単純には適用できないことが分かった。
【0038】
即ち、油圧機械や水圧機械と、マイクロ流体システムとでは、その構造が全く異なっている。また、通常の空気圧機械であっても、空気圧バルブ制御に際して、通常は、コンプレッサにより圧力を得ているため、得られる圧力は1MPa程度が上限である。これに対して、油圧バルブ制御や水圧バルブ制御の場合には、ポンプにより圧力を得るのが一般的であり、得られる圧力も、数MPa~数十MPaと、空気圧バルブ制御における圧力に比べて遥かに大きい。また、油や水は、空気と異なり、非圧縮性である。
【0039】
このため、上記した空気圧マイクロバルブ制御システムと同様に、シリコンやシリコーンゴム、ガラスを材料とし、ゲートバルブにメンブレンバルブ(ダイヤフラムバルブ)を使用して油圧バルブ制御システムや水圧バルブ制御システムを構成させたとしても、大きな圧力の衝撃で材料が破断してしまう。また、前記した高圧により、ゴムが大きく膨張してしまう。また、メンブレンバルブでは、十分な遮断を行うことができない。
【0040】
そこで、本発明者は、メンブレンバルブ(ダイヤフラムバルブ)に替えて、大きな圧力であっても、油圧アクチュエータや水圧アクチュエータの作動を適切に制御することが可能な制御弁について、鋭意検討を行った。
【0041】
その結果、後述するスプールやポペットなどを、ドライブラインやゲートラインに設けた場合、マトリクス型構成やデマルチプレクサ型構成の油圧バルブ制御システムや水圧バルブ制御システムを適切に構成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0042】
このように、本発明は、本発明者自身が提案した空気圧マイクロバルブ制御システムの、まったくの別分野と考えられていた通常の油圧バルブ制御や水圧バルブ制御への適用につき検討した結果、世界に先駆けて提案した流体圧バルブ制御システムであり、油圧機械や水圧機械において、バルブの各々を駆動させる各アクチュエータの作動を、少数の電磁バルブによって制御することが可能となるため、油圧機械や水圧機械の十分な小型化を図れると共に、効率的な運用が可能になり、各種産業に対し大きく寄与することが期待される。
【0043】
[2]本発明の基本的な構成
次に、本発明の基本的な構成、即ち、マトリクス型構成やデマルチプレクサ型構成の油圧バルブ制御システムや水圧バルブ制御システムにおける基本的な制御の仕組みについて説明する。なお、以下では、油圧バルブ制御システムを挙げて説明するが、水圧バルブ制御システムについても同様に考えることができる。
【0044】
本発明においては、油圧機械に設けられた複数本の油圧バルブの経路(油圧配線)を集積化させて、マトリクス型構成やデマルチプレクサ型構成のような流体回路を形成させることにより、3つのステップだけで複数の油圧アクチュエータの内から特定の油圧アクチュエータを選択して、その動作を制御することができる。
【0045】
具体的には、まず、油圧機械に設けられた複数本の油圧バルブの内、特定の油圧アクチュエータの動作を指示する信号を入力する油圧配線をドライブライン、ドライブラインに入力された信号状態を保持する一連の油圧ゲートバルブを操作する配線をゲートラインとする。なお、ここで「信号」とは、油圧バルブにおけるオイルの流入または排出が生じるような圧力の印加を、油圧アクチュエータの動作を指示する信号として扱うことを示している。
【0046】
そして、ゲートバルブの全てが閉じた初期状態をスタートとして、
(1)ドライブラインに設けられた電磁バルブを操作することにより、ドライブラインに特定の油圧アクチュエータの動作を指示する油圧信号を入力する第1ステップ、
(2)ゲートラインに設けられた電磁バルブを開状態とすることにより、ゲートラインに連なるゲートバルブを開放して、ドライブラインに入力された油圧信号を、ドライブラインから特定の油圧アクチュエータの動作を操作する方向制御弁へ入力する第2ステップ、
(3)ゲートラインに設けられた電磁バルブを閉状態とすることにより、ゲートラインに連なるゲートバルブを閉じて特定の油圧アクチュエータの作動状態を保持する第3ステップ、
以上3つのステップを、ドライブラインやゲートラインに設けられたスプールやポペットなどを方向制御弁に用いて、全てのゲートラインに対し個別または一定の組み合わせで行うことにより、特定の油圧アクチュエータに対する方向制御弁の切り替えを操作することができる。
【0047】
[3]具体的な実施の形態
次に、上記3つのステップを行う油圧バルブ制御システムについて、マトリクス型構成の油圧バルブ制御システムとデマルチプレクサ型構成の油圧バルブ制御システムに分けて説明する。
【0048】
1.マトリクス型構成の油圧バルブ制御システム
マトリクス型構成の油圧バルブ制御システムは、D(D≧1)本のドライブライン配線と、G本(G≧1)のゲートライン配線とを交差可能な配管構成で組み合わせることによりマトリクス構造を形成させ、その交点となり得る箇所に割り付けられた(D×G)個の固有のアドレスに、1つずつ、油圧アクチュエータの動作を制御する方向制御弁(スプールやポペットなど)が配置されるように構成されている(アドレス割り付けの面から「アドレス型構成」とも言われる)。
【0049】
そして、前記した第1ステップから第3ステップを行うに際して、スプールやポペットなどを用いて、特定の油圧アクチュエータの動作を制御するゲートラインを指定し、特定の油圧アクチュエータの動作信号、ならびに、同じゲートライン上に位置するその他の油圧アクチュエータの前回状態の動作信号を入力した状態で、ゲートラインの開閉を行うことにより、ドライブライン配線とゲートライン配線の選択によって指定されたアドレスにある特定の油圧アクチュエータの作動を制御するように構成されており、(D+G)本の油圧配線で(D×G)本の油圧アクチュエータの動作状態を制御することができる。
【0050】
本実施の形態において、上記したマトリクス型構成の油圧バルブ制御システムは、油圧配線をマニホールドとして一体成型して、ブロックモジュール化することにより、装置全体の小型化を図ることができる。
【0051】
図2は、マトリクス型構成の油圧バルブ制御システムのブロック構造の一例を説明する模式断面図であり、このブロック構造のそれぞれ4つを積層して重ねることにより、D1~D4のドライブラインDおよびG1~G4のゲートラインGより構成された4×4のマトリクス構造とすることができる。
【0052】
図2に示すように、本実施の形態において、マトリクス型構成の油圧バルブ制御システムは、以下に示す(イ)~(ハ)の3つの層から構成されている。なお、図2において、30は、スプールSの移動を制御する電磁バルブである(ソレノイドアクチュエータでもよい)。また、各配線(配管)において、グレー色はオイルが流入されていることを示し、白色はオイルが排出されていることを示している(以降の図においても同様)。
【0053】
(イ)特定の油圧アクチュエータの動作を指示する信号を、オイルのin/outによって入力するドライブラインD(図2では、4本のドライブラインD1~D4の内、D1だけを記載している)が設けられ、さらに、ドライブラインD(D1)と直交する方向にゲートラインG(図2では、4本のゲートラインG1~G4)が設けられた第1層
【0054】
(ロ)オイルの流入、排出を制御するスプールSの紙面上左右への移動によって、ゲートラインG(図2では、4本のゲートラインG1~G4の内、G1だけを記載している。)におけるオイルのin/outを制御して、各ドライブラインD1~D4に入力された信号状態を保持する第2層(なお、第2層においてD1~D4が2本1組として示されているのは、油圧バルブの場合、配管が2本1組で構成されるためである。)
【0055】
(ハ)ドライブラインD(D1)からのオイルのin/outによって、各アドレス(図2では、(D1,G1)、(D2,G1)、(D3,G1)、(D4,G1)の4本)の油圧アクチュエータ70の駆動を制御する第3層
【0056】
図3に示すように、スプールSは、小径の軸10および大径のランド12から構成された串型形状の弁体である。絞り部14が設けられた円筒状の穴16に内接して、穴内を軸方向(紙面左右方向)に移動できるようにスプールSを配置することにより、オイル流入口Qから絞り部14へのオイルの供給を制御することができる。
【0057】
具体的には、図3(a)に示すように、スプールSが移動して絞り部14が開状態となったときには、オイル流入口Qと絞り部14との間で流路が形成されるため、絞り部14へオイルを供給することができる。一方、図3(b)に示すように、スプールSが移動して、絞り部14がランド12によって塞がれ、閉状態となったときには、オイル流入口Qと絞り部14との間には流路が形成されないため、絞り部14へオイルを供給することができない。
【0058】
そして、ドライブラインDの数に対応した複数のスプールSを、図2の第2層に示すように、連結配置してゲートラインG(G1)を構成することにより、ゲートラインG(G1)に繋がる複数の箇所で、ドライブラインD(D1~D4)からのオイルの流入、排出を切り替えて、油圧アクチュエータ70の開閉駆動を制御することができる。
【0059】
なお、油圧アクチュエータの開閉駆動を制御する部材としては、スプールSに替えて、ポペットPを使用してもよい。図4に示すように、ポペットPは、円錐形状に形成された弁体であり、弁座面から垂直方向に移動することにより、絞り部14が形成されて、オイル流入口Qからのオイルの供給を制御することができる。
【0060】
具体的には、図4(a)に示すように、ポペットPが紙面垂直方向に上昇して、絞り部14が形成されて開状態となったときには、オイル流入口Qから絞り部14への流路が形成されるため、オイルを供給することができる。一方、図4(b)に示すように、ポペットPが紙面垂直方向に下降して閉状態となったときには、絞り部14が形成されないためオイルを供給することができない。
【0061】
そして、図2と同様に、ドライブラインDの数に対応した複数のポペットPを配置してゲートラインG(G1)を構成することにより、スプールと同様に、ゲートラインG(G1)に繋がる複数の箇所で、ドライブラインD(D1~D4)からのオイルの流入、排出を切り替えて、油圧アクチュエータ70の開閉駆動を制御することができる。なお、このポペットは、ロジック弁に組み込んで使用することが好ましい。
【0062】
次に、上記のようにブロックモジュール化されたマトリクス型構成の油圧バルブ制御システムの3つのステップにおける油圧アクチュエータ70の状態の変更について説明する。
【0063】
図5図8は、初期状態および各ステップにおける油圧アクチュエータの状態の変更を説明する図であり、図5は初期状態、図6は第1ステップ、図7は第2ステップ、図8は第3ステップを示している。なお、図5図8において、第1層、第2層、第3層は、図2と対応している。なお、前記したように、各配線(配管)において、グレー色はオイルが流入されていることを示し、白色はオイルが排出されていることを示している。
【0064】
(1)初期状態
初期状態においては、図5に示すように、第1層のドライブラインD(D1~D4)は全てが閉状態となっているため、第2層のゲートラインG(G1)および第3層の各油圧アクチュエータ70にはオイルが流入されず、油圧アクチュエータの初期状態(閉状態)が保持されている。
【0065】
(2)第1ステップ
第1ステップにおいては、図6に示すように、2本のドライブラインD1、D3を開状態にしてオイルを流入させる。しかし、ゲートラインG(G1)のスプールSは閉状態となっているため、スプールSの先にはオイルが流入されず、全ての油圧アクチュエータ70も初期状態(閉状態)がそのまま保持されている。
【0066】
(3)第2ステップ
次に、第2ステップとして、図7に示すように、各ドライブラインDの状態(D1、D3は開状態、D2,D4は閉状態)を維持する一方で、電磁バルブ30の駆動によってスプールSを移動させて開状態にする。これにより、ゲートラインG(G1)にオイルの流路を形成されるため、ドライブラインD1、D3に流入したオイルが、(D1、G1)および(D3、G1)の油圧アクチュエータ70に向けて流入され、(D1、G1)および(D3、G1)の油圧アクチュエータ70が閉状態から開状態へと変更される。なお、(D2、G1)および(D4、G1)の油圧アクチュエータは、スプールSが開状態となっても、ドライブラインD2、D4にはオイルが流入されていないため、初期状態(閉状態)がそのまま保持される。
【0067】
(4)第3ステップ
最後に、第3ステップとして、図8に示すように、各ドライブラインDの状態(D1、D3は開状態、D2,D4は閉状態)を維持する一方で、電磁バルブ30の駆動によってスプールSを移動させて閉状態にする。これにより、ゲートラインG(G1)に形成されていたオイルの流路が閉鎖されるため、(D1、G1)および(D3、G1)の油圧アクチュエータ70に向けて流入されたオイルがそのまま保持されて、(D1、G1)および(D3、G1)の油圧アクチュエータ70の開状態を保持することができる。
【0068】
この考えの下、金属ブロックで油圧ラインを作成し、この油圧ラインと、スプールやポペットとによって流体回路を構成し、全体を1パーツとしてユニット化することにより、マトリクス型構成の油圧バルブ制御システムをブロックモジュール化して、装置全体の小型化を図ることができる。
【0069】
そして、本発明者が、さらに検討を進めたところ、スプールやポペット以外にも、ボールバルブが連結されたシリンダを用いて、その回転角度によって導通を一意に決定できるようにしたり、n×m個(いずれか一方が1以上で、他方が2以上)の導通路を形成する1枚以上のスライド平板(リニアアクチュエータ)を用いて、そのスライドによって導通を一意に決定できるようにすることにより、同様の制御が可能であることが分かった。
【0070】
図9は、回転シリンダによる油圧バルブ制御を説明する図であり、ゲートラインGには、モーター40に連結された回転シリンダ42が、スプールに替えて配置されている。
【0071】
回転シリンダ42には、円周方向を8分割して、45°ごとに位置をずらして直線状に、2個1組(前述したように、油圧バルブの場合、配管が2本1組で構成される)で4組の穴44、45、46、47が設けられて、回転シリンダ42の回転に合わせて、ゲートラインG(G1~G4)のいずれかと導通されるようになっている(図9では、1組の穴44とゲートラインG1が導通されている)。このように、穴とゲートラインとの導通を、適宜、選択することにより、所望するゲートラインにオイルを流入させて、油圧アクチュエータの動作を制御することができる。
【0072】
図10図11は、2枚のスライド平板による油圧バルブ制御を説明する図であり、スプールに替えて2枚のスライド平板(リニアアクチュエータ)が配置されている。なお、図10では、縦方向に4つの穴が設けられて横方向にスライド可能なリニアアクチュエータP1と、横方向に4つの穴が設けられて縦方向にスライド可能なリニアアクチュエータP2とが組み合わされて、互いの穴が重なり合うことにより、導通路が形成されるようになっている。一方、図11では、縦方向に4つの穴が設けられて横方向にスライド可能なリニアアクチュエータP3と、斜め方向に4つの穴が設けられて横方向にスライド可能なリニアアクチュエータP4とが組み合わされて、互いの穴が重なり合うことにより、導通路が形成されるようになっている。
【0073】
2個のリニアアクチュエータを重ねて、図10では縦方向、横方向のそれぞれにスライド、図11では同方向にスライドさせることにより、互いの穴が重なり導通路が形成されるパターンとして4×4の16通りが可能となるため、4行4列のマトリクス型構成(16個の油圧アクチュエータ)の油圧バルブ制御が可能となる。
【0074】
2.デマルチプレクサ型構成の油圧バルブ制御システム
デマルチプレクサ型構成の油圧バルブ制御システムは、1本のゲートライン、1本のドライブラインに加えて、特定の油圧アクチュエータに対応したゲートバルブを選択する信号を入力する1本以上のセレクトライン配管(または流路)を備えており、前記した第1ステップから第3ステップを行う際の第1ステップにおいて、セレクトラインに設けられた電磁バルブを開閉することにより、セレクトラインに特定の油圧アクチュエータと対応したゲートバルブを選択する信号を入力することを、全てのセレクトラインの電磁バルブの切り替えによって、個別または特定の組み合わせで行うように構成されており、S組のセレクトラインで2個の油圧アクチュエータの動作状態を制御することができる。
【0075】
本実施の形態において、デマルチプレクサ型構成の油圧バルブ制御システムは、マトリクス型構成の油圧バルブ制御システムの場合と同様に、油圧配線をマニホールドとして一体成型して、ブロックモジュール化することにより、装置全体の小型化を図ることができる。
【0076】
図12は、デマルチプレクサ型構成の油圧バルブ制御システムのブロック構造におけるゲートラインの構成の一例を説明する模式断面図である。図12に示すように、ゲートラインGには、セレクトライン50として働く2本のスプール52、54が2層に配置されており、各スプール52、54における流路の形成の有無によって、ゲートラインG(G1~G4)のゲートバルブの開閉が制御され、油圧アクチュエータの開閉駆動が制御されるようになっている。
【0077】
次に、上記のようにブロックモジュール化されたデマルチプレクサ型構成の油圧バルブ制御システムの3つのステップにおける油圧アクチュエータの状態の変更について説明する。
【0078】
図13図16は、初期状態および各ステップにおける油圧アクチュエータの状態の変更を説明する図であり、図13は初期状態、図14は第1ステップ、図15は第2ステップ、図16は第3ステップを示している。なお、図13図16では、図12と同様に、セレクトラインを、2本のスプール52、54を用いて構成させている。
【0079】
(1)初期状態
初期状態においては、図13に示すように、ドライブラインD、ゲートラインG、ゲートバルブGVのいずれにもオイルが流入されておらず、油圧アクチュエータ70は初期状態(閉状態)が保持されている。なお、図13において、「00」、「01」、「10、「11」は、2本のスプール52、54の移動により選択される油圧アクチュエータ70に対応している。
【0080】
(2)第1ステップ
第1ステップにおいては、図14に示すように、ドライブラインDにオイルを流入させる。しかし、ゲートバルブGVは、ゲートラインGからのオイルの流入がないため、ゲートバルブGVに配置されたスプール60は移動せず、全ての油圧アクチュエータ70は初期状態(閉状態)を保持している。なお、図14において、「×」印は、電磁バルブ30の駆動に合わせて移動した2本のスプール52、54のそれぞれによって流路が塞がれていることを示している。
【0081】
(3)第2ステップ
次に、第2ステップとして、図15に示すように、ドライブラインDの状態を維持する一方で、ゲートラインGを開状態にして、オイルを流入させる。ゲートラインGに流入したオイルは、その後、スプールの流路を経由してゲートバルブGVへ流入しようとするが、スプール52、54の双方に流路が形成されているゲートバルブGV(油圧アクチュエータ01につながるゲートバルブ)にしかオイルは流入できない。そして、オイルは、ゲートバルブGVのスプール60の流路を経由して紙面左側の隙間に入り込んだ後、その先の油圧アクチュエータ01へと流入するため、油圧アクチュエータ01だけが閉状態から開状態へと変更される。
【0082】
(4)第3ステップ
最後に、第3ステップとして、図16に示すように、ドライブラインDの状態を維持する一方で、ゲートラインGを閉状態にする。これにより、ゲートラインGからオイルが排出されるが、このとき、スプール60の流路を塞ぐように、ゲートバルブGVのスプール60の紙面右側の隙間にオイルを流入させることにより、各油圧アクチュエータ70の状態をそのまま保持することができる。
【0083】
なお、本実施の形態においても、前記したマトリクス型構成の油圧バルブ制御システムと同様に、スプールに替えて、ポペット、回転シリンダ、2枚のスライド平板(リニアアクチュエータ)を用いてもよい。
【0084】
そして、さらに検討を進めたところ、上記したスプールやポペットなどを用いたマトリクス型構成やデマルチプレクサ型構成のバルブ制御システムは、空圧機械における空気を流体としたバルブの制御(空気圧バルブ制御システム)にも、好ましく適用できることも分かった。
【0085】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、少数の電磁弁(電磁バルブ)で多数のアクチュエータの各々を個別に作動させることができる流体圧バルブ制御システムを提供して、流体圧バルブ制御システムの小型化を図ることができるため、軽量化、省エネルギー化に大きく寄与することができる。
【0087】
また、小型化された流体圧バルブ制御システムは、工場の設備やプラント、建設機械などの重機、ロボット、船舶、航空機や自動車などの輸送機器など、種々の流体圧機械に適用することが可能であり、これら流体圧機械の製造コスト、搬送コスト、設置コストの低減に対して、大きく寄与することができる。
【符号の説明】
【0088】
10 軸
12 ランド
14 絞り部
16、44~47 穴
30 電磁バルブ(ソレノイドアクチュエータ)
40 モーター
42 回転シリンダ
50 セレクトライン
52、54、60、S スプール
70 油圧アクチュエータ
D、D1~D4 ドライブライン
G、G1~G4 ゲートライン
GV ゲートバルブ
P ポペット
P1、P2、P3、P4 スライド平板(リニアアクチュエータ)
Q オイル流入口
(D1,G1)~(D4,G1) 油圧アクチュエータのアドレス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16