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特開2023-169276携帯電話ベースの眼底カメラのための広角瞳孔リレー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169276
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】携帯電話ベースの眼底カメラのための広角瞳孔リレー
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/14 20060101AFI20231121BHJP
   G02B 15/10 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
A61B3/14
G02B15/10
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148826
(22)【出願日】2023-09-13
(62)【分割の表示】P 2021198874の分割
【原出願日】2017-08-31
(31)【優先権主張番号】62/381,768
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/539,733
(32)【優先日】2017-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エム. ウィリアムソン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高コストの医療装置の代替品であって、視覚系の眼科検査の間に前記視覚系の表面(1又は複数)のデジタル画像を記録することを可能にする。
【解決手段】光学撮像システムは、移動体通信機器の本体内に収容された第1のレンズ系であって、前記第1のレンズ系は第1の光軸と、前記本体に関連付けられた基準平面内で空間内に固定された第1の入射瞳孔と、第1の焦点距離とを有する、第1のレンズ系と、最低でも486nm~最低でも656nmのスペクトル範囲内で回折限界結像を提供する光学望遠鏡とを含み、前記光学撮像システムは、前記光学望遠鏡が前記第1のレンズ系と眼の視覚系の入射瞳孔(EPE)との間に挿入されている場合に、前記EPEを前記第1の入射瞳孔上に実質的に等倍で結像し、且つその逆も行うように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学撮像システムであって、
モバイル通信装置の本体内に収容された第1のレンズ系であって、前記第1のレンズ系は第1の光軸と、前記本体に関連付けられた基準平面内で空間内に固定された第1の入射瞳孔と、第1の焦点距離とを有する、第1のレンズ系と、
486nm~656nmのスペクトル範囲内で回折限界結像を提供する光学望遠鏡と
を含み、前記光学撮像システムは、前記光学望遠鏡が前記第1のレンズ系と眼の視覚系の入射瞳孔(EPE)との間に挿入されている場合に、前記EPEを前記第1の入射瞳孔上に実質的に等倍で結像し、且つその逆も行うように構成されている、
光学撮像システム。
【請求項2】
前記モバイル通信装置の本体内に収容された第2のレンズ系であって、前記第2のレンズ系は第2の光軸と、前記基準平面内で空間内に固定された第2の入射瞳孔と、第2の焦点距離とを有し、前記第2の入射瞳孔は前記基準平面内で前記第1の入射瞳孔から横方向にオフセットされている、第2のレンズ系と、
前記光学望遠鏡を前記本体に接続するための手段であって、前記手段は、前記基準平面内に位置する線に沿った第1の位置から第2の位置までの、前記光学望遠鏡の移動を提供するように構成された、手段と、
をさらに含み、
前記第1の位置は、前記光学望遠鏡の光軸と前記第1の光軸とが実質的に一致する場合と定義され、
前記第2の位置は、前記光学望遠鏡の前記光軸と前記第2の光軸とが少なくとも部分的に一致する場合と定義された、
請求項1に記載の光学撮像システム。
【請求項3】
前記第1の光軸と前記第2の光軸とは実質的に互いに平行である、請求項2に記載の光学撮像システム。
【請求項4】
前記光学撮像システムは、前記光学望遠鏡が前記第2のレンズ系と前記EPEとの間に挿入されている場合に、前記EPEを前記第1の入射瞳孔上に実質的に等倍で結像し、且つその逆も行うように構成されている、請求項2に記載の光学撮像システム。
【請求項5】
前記第1のレンズ系は、光学ダブレットを形成するように正レンズ要素と接合された、負の光学パワーを有するメニスカスレンズ要素と、前記光学ダブレットから空間的に分離された正の光学パワーのレンズ要素とを含む、請求項1に記載の光学撮像システム。
【請求項6】
網膜を撮像するための方法であって、前記方法は、
通信装置内に構築された第1のレンズ系と眼との間に光学望遠鏡を位置付けて、眼の入射瞳孔(EPE)を前記第1のレンズ系の第1の入射瞳孔(EP)上に、(i)等倍、及び(ii)最低でも486nm~最低でも656nmのスペクトル範囲内での回折限界結像、を含む結像条件下で結像させること、
前記光学望遠鏡を通した前記眼の前記網膜の第1の像を、前記通信装置の第1のセンサーを用いて記録すること、
を含む、方法。
【請求項7】
前記光学望遠鏡と前記通信装置とを、前記第1のレンズ系の光軸に対する横断方向において、前記通信装置内に構築された第2のレンズ系の光軸が前記光学望遠鏡の光学系と実質的に一致するまで、互いに相対的に再位置付けすること、
前記光学望遠鏡を通した網膜表面の第2の像を、前記通信装置の第2のセンサーを用いて記録すること、
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
被検眼の瞳を外部光学系の瞳位置にリレーするリレー光学系であって、
正の第1レンズ群G1と、正の第2レンズ群G2とを備え、
前記正の第1レンズ群G1と前記正の第2レンズ群G2は、同一の光軸を有してアフォーカル系を形成し、且つ前記被検眼の瞳と前記外部光学系の瞳との間の共役関係を形成する、
リレー光学系。
【請求項9】
前記正のリレー光学系は、前記被検眼と前記外部光学系との間に配置された場合、前記正の第1レンズ群G1の前記被検眼側の焦点位置が、前記被検眼の瞳位置に一致し、且つ前記正の第2レンズ群G2の前記外部光学系側の焦点位置が、前記外部光学系の瞳位置に一致するように、構成される、
請求項8に記載のリレー光学系。
【請求項10】
前記正の第1レンズ群G1と前記正の第2レンズ群G2との間に、前記被検眼の眼底の像が形成される、請求項8に記載のリレー光学系。
【請求項11】
前記外部光学系は画像撮影レンズ系を備える、請求項8に記載のリレー光学系。
【請求項12】
前記外部光学系は携帯型カメラの画像撮影レンズを備える、請求項8に記載のリレー光学系。
【請求項13】
前記正の第1レンズ群G1は、前記被検眼側から順に、前記被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズと、正レンズとを含み、前記正の第2レンズ群G2は、前記被検眼側から順に、正レンズと、前記被検眼側に凸面を向けたメニスカスレンズとを含む、請求項8に記載のリレー光学系。
【請求項14】
前記正の第1レンズ群G1の前記正メニスカスレンズは、前記被検眼側に向く凸面を有する正メニスカスレンズ要素と、前記被検眼側に向く凸面を有するメニスカスレンズとで構成された正の複合メニスカスレンズとして形成される、請求項13に記載のリレー光学系。
【請求項15】
前記正の第2レンズ群G2の前記メニスカスレンズは、両凸正レンズと両凹レンズとの複合メニスカスレンズとして形成される、請求項13に記載のリレー光学系。
【請求項16】
前記正の第1レンズ群G1の焦点距離をf1、前記正の第2レンズ群G2の焦点距離をf2、 両レンズ群の主平面間隔をDとするとき、実質的に以下の条件を満たす、請求項8に記載のリレー光学系。
f1+f2=D
【請求項17】
前記正の第1レンズ群G1と前記正の第2レンズ群G2とは、実質的にアフォーカルリレー系を形成し、次の条件を満たす、請求項16に記載のリレー光学系。
0.9<f2/f1<2.2
【請求項18】
次の条件を満たす、請求項16に記載のリレー光学系。
30mm < f1 < 50mm 、
30mm < f2 < 60mm
【請求項19】
前記リレー光学系の前記正の第2レンズ群G2の前記外部光学系側の画角は、前記外部光学系側の画角を含み、
前記正の第1レンズ群G1の画角に対応する眼底の像は、前記正の第2レンズ群G2を介して前記外部光学系に転送される、
請求項8に記載のリレー光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、技術的に、2016年8月31日に出願された米国特許仮出願第62/381,768号、及び2017年8月1日に出願された米国特許仮出願第62/539,733号に関連している。これらの仮出願の開示は参照によって本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は一般に、眼診断撮像装置に関し、特に、高品質広視野眼底画像を撮影するように構成された携帯型ハンドヘルドのスマートフォンベースの網膜カメラに関する。携帯電話プラットフォームの使用により、眼底画像の取得、記憶、及び解析が可能な完全に組み込まれたシステムが作られ、前記眼底画像は遠隔評価のために前記電話から無線通信システムを介して直接送信されることが可能である。
【背景技術】
【0003】
眼底撮像は、多くの網膜疾患の診断、監視、及び管理において広範に使用されている。現在の撮像システムにおいて見出される1つの制限は、撮像機器のかさばった据え置き型の性質である。従来の眼底カメラは、扱いにくい卓上型装置であり、これらの装置の脆弱性、大きなサイズ、及び重い重量により、容易に移動可能ではない。実際には、そのような眼底カメラはまた、背筋を伸ばして座ることを患者に強要し、これは病気の患者及び入院患者にとって困難な場合がある。寸法の制約に加えて、眼底カメラは、照明と撮像画面とデータ処理ユニットとに電力を供給するための電源を必要とする。多くの場合、この電源は、中央の壁埋め込み型の電源プラグによって提供され、眼底カメラが適切に機能するためには継続的な電力が必要とされる。
【0004】
デジタル眼底カメラが考えられているが(これらのうちのいくつかはiPhone(登録商標)などの携帯電話又は同様の装置、一般にモバイル装置に基づく)、そのようなカメラは、(i)使用されるモバイル装置の光学系と撮像される視覚系との間の光学的共役の欠如、(ii)視覚系の選択された表面の撮像に関連する不十分な視野(FOV)、これは取得された画像の複数の計算「縫合」の必要性をもたらす、(iii)得られる画像を損なう著しい残存収差、及び(iv)上記の組み合わせ、のうちの任意のものによって引き起こされる実質的な動作制限を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、高コストの医療装置の代替品として機能するように構成された低コストのハンドヘルド装置であって、視覚系の眼科検査の間に前記視覚系の表面(1又は複数)のデジタル画像を記録することを可能にし、同時に、現在知られている撮像システムソリューションを特徴付ける動作上の欠点のない、ハンドヘルド装置に対する必要性が依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、移動体通信機器の本体内に収容された第1のレンズ系であって、前記第1のレンズ系は第1の光軸と、前記本体に関連付けられた基準平面内で空間内に固定された第1の入射瞳孔と、第1の焦点距離とを有する、第1のレンズ系と、最低でも486nm~最低でも656nmのスペクトル範囲内で回折限界結像を提供する光学望遠鏡とを含み、この光学システムは、前記光学望遠鏡が前記第1のレンズ系と眼の視覚系の入射瞳孔(EPE)との間に挿入されている場合に、前記EPEを前記第1の入射瞳孔上に実質的に等倍で結像し、且つその逆も行うように構成されている。
【0007】
特定の実施の形態についての以下の詳細な説明を、一定の縮尺率ではない図面と組み合わせて参照することにより、本発明はより十分に理解されるであろう
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】窓214W及び図示しない光学系(画像撮影レンズ系(カメラレンズ))を介して被検眼の眼底を撮影する画像撮影部(カメラセンサー)214を備えた携帯電話20と、携帯電話20に取り付けられるアタッチメント22とを示す図である。
図2】携帯型装置の出射瞳孔を補完し、携帯電話カメラ瞳の像を眼瞳孔上にリレーする、第1の実施の形態の光学列の概略図である。
図3】様々な視野高についての、図2の第1の実施の形態を用いた結像の回折限界品質を特徴付けるスポットダイアグラムを含む。
図4】本発明の考え方に従って構成されたアフォーカルリレーシステムを表し且つ人間の眼のナヴァロモデル(Navarro model)と組み合わせて示された、光学列500の第2の実施の形態を示す。
図5】様々な視野高についての、図4の第2の実施の形態のスポットダイアグラムを示す。
図6A】第1の実施の形態の眼底の画像撮影視野とイメージサンセとの間の大きさの関係を示す図である。
図6B】第2の実施の形態の眼底の画像撮影視野とイメージサンセとの間の大きさの関係を示す図である。
図7】第3の実施の形態のアタッチメント22の構成を示す概略図である。
図8】第4の実施の形態のアタッチメント22の構成を示す概略図である。
図9】第5の実施の形態のアタッチメント22の構成を示す概略図である。
図10】携帯電話20の電気的構成を示す図である。
図11】アタッチメント22と携帯電話20の使用方法を説明するフローチャートである。 一般に、図面内の要素のサイズ及び相対的なスケールは、図面の簡潔さ、明瞭性、及び理解を適切に促進するために、実際のものとは異なるように設定されている場合がある。同じ理由で、1つの図面内に存在する全ての要素が別の図面内に必ずしも示されているとは限らない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1には、窓214W及び図示しない光学系(画像撮影レンズ系(カメラレンズ))を介して被検眼の眼底を撮影する画像撮影部(カメラセンサー)214を備えた携帯電話20と、携帯電話20に取り付けられるアタッチメント22と、が示されている。
なお、本発明の説明において、携帯電話とは、移動体通信機器、モバイルフォン(携帯端末器)、無線通信システムとよばれる装置と同一であり、眼底カメラは、携帯用ハンドヘルドスマートフォンベースの網膜カメラ又は安価なハンドヘルド機器と呼ばれる装置と同一である。
【0010】
携帯電話のカメラレンズは、カメラセンサー上の結像レンズである。もちろん、携帯電話メーカーが既に提供している。
【0011】
本発明者は、携帯電話のカメラレンズの非常に有用な特性を利用する。これは、ほぼ回折限界であり、入射瞳孔は、レンズの前面にあり、携帯電話カメラの窓の内側にある。
【0012】
携帯電話が広角カメラと望遠カメラの両方を持っていれば、それらは同じ位置に瞳孔を持っている。つまり、機械的に携帯電話を横方向にシフトさせると、いずれかの携帯電話カメラを使うことができる。40度と80度との視野の眼底カメラの間の画素の数に対して、大きなロスなく簡単なズーミングが可能である。
【0013】
携帯電話用カメラレンズの他の有用な機能は、視野が眼底カメラに求められるものと似ている点である。そのため、瞳孔リレーは倍率が1xの倍率(1倍)に近くなる。つまり、倍率色収差と歪みは小さくなる。光学設計は比較的簡単である。
【0014】
粗い合焦は、異なる患者のジオプターの設定に対応するために、レンズ群G1と第2レンズ群G2との間の間隔の機械的な調整である。微細な合焦は、携帯電話のカメラの内蔵オートフォーカスシステムである。
【0015】
本発明の開示される実施の形態によれば、非臨床位置において眼(網膜など)の構造(1又は複数)を撮像するように構成された、光学要素及び照明要素に動作可能に結合された携帯電話(あるいはタブレット又は別のスマート装置)の撮像光学検出システム(カメラ)とプログラマブルプロセッサとを用いて補完されたハンドヘルド眼撮像装置のための、モジュール式機器とその使用方法が開示される。前記モジュール式機器は、複数機能(フルオレセイン撮像、蛍光、明視野、赤外線(IR)撮像、近赤外線(NIR)撮像)、及び眼の複数領域撮像(網膜、角膜、外部など)を、画像処理、記憶、並びに遠隔記憶及び評価のための無線データ伝送という追加機能と共に提供する。取得された眼画像はまた、前記装置から患者の電子医療記録に、中間のコンピュータシステムなしに直接送信されることが可能である。
【0016】
網膜の視野(FOV)は眼底撮像の技術仕様であり、これは眼底カメラの開発における重要な考慮事項である。FOVは、眼の瞳孔を通した角度であってその角度において網膜が撮像される、角度を表す。前記装置からの照明光は網膜に入り、前記網膜からの反射光は、前記装置のセンサーにおいて像を形成するために使用される。標準的な眼底カメラは約40度~45度のFOVを有する。
【0017】
例えば<peekvision.org/what-it-does>で開示されているデジタル撮像システム(本明細書中ではピークシステムと呼ばれる)においては、携帯電話カメラが、ユーザの眼のできるだけ近くに配置することによってユーザの網膜の写真を撮るために使用される。この状況において、携帯電話光学系の入射瞳孔(EP)(これは通常、その前部窓のすぐ内側の前部レンズ要素に位置している)は、ユーザの眼のEP又は虹彩(すなわち、検査される視覚系のEP)と光学的に共役ではない。(構成及び動作において同様に制限された装置が<www.d-eyecare.com>において開示されている。)結果として-当業者によって容易に理解されるように-採用される光学系によって形成される網膜の像は多くの収差を不可避的に含み、これにより、通常の補正されていない/対処されていない状況下では、撮像された網膜の条件/状態をユーザが意図したように正しく評価することは可能にならない。特に、ピークシステムを用いた網膜の撮像に関連するFOVは、したがって、視神経の周りの中心窩領域と黄斑領域との寸法に対する眼瞳孔寸法の比率によって実質的に制限され、画像品質は悪い。この解決法はいくつかの網膜病変のための有用な低コストの診断情報を提供するが、他のより微妙な網膜病変が観察され得るように、網膜のより大きな領域を、より高い分解能で撮像することが有利である。
【0018】
<bosch-eyecare.com/en/eyecare/products/fundus_imaging/fundus_imaging.html>に記載されているボッシュ(Bosch)の眼底カメラもまた、+/-40度以内のFOVの撮像に制限される。Jedmedは同様のシステムを記載している:<jedmed.com/products/portable-fundus-camera>。ボルクオプティカル(Volk Optical)によって提供されている解決法は、網膜表面の撮像に関して動作的に制限されたシステムのもう1つの例である(<veatchinstruments.com/Volk-Pictor-Plus-Portable-Reti
nal-Camera>を参照)。
【0019】
関連技術の既存の眼底カメラに関連する動作上の問題(低FOVを有し、これにより、網膜から取得された光学データの複数の計算「縫合」の必要性がもたらされること、及び実質的な残存収差を有し、これにより、得られる「縫合された」画像の全体的品質の有害な減少がもたらされること)は、1xに近い倍率レベルにおいて動作する色消しアフォーカルリレー(望遠鏡)として構成されたワイド80度(フルアングル)FOVを有するコンパクトな低コストの眼底カメラを提供して、モバイル装置の光学系の空間的に固定されたEP内への、直径2mmの(無散瞳)眼瞳孔の、回折限界分解能を有する結像を実現することによって解決される。
【0020】
本発明の実施の形態は、約75度~80度のフルアングルFOVであって収差もケラレも有さないと想定される(これは当業界で公知のそのような光学系の公称の回折限界性能を考慮すると妥当な想定である)フルアングルFOVと、直径約2mmのEPサイズ(空間内に固定されたモバイル装置のEP)とを有する、携帯電話(又は別のモバイル装置)の一般的な内蔵撮像光学系のパラメータを利用して、モバイル装置のEPへの、眼のEPの結像のための、約1xの光学リレー系を提供する。
【0021】
無散瞳眼のEPと一般的なモバイル装置の光学系のEPとの間で一般的に得られる寸法の一致を考慮して、本発明のアフォーカルリレーは、約1xの倍率を有する結像を提供するように構成されており、それにより約80度の眼の入口におけるフルアングルFOVが確実になる。これは関連技術の一般的な眼底カメラのFOVの約2倍であり、人間の眼の全水平視野の約半分である。したがって本発明のレンズを使用した単一の結像露光により、一般的な眼底カメラより実質的に大きな網膜の面積がカバーされる。その上、本発明のレンズ系を用いて獲得された網膜のいくつかの(例えば4つの)画像ショットの空間的縫合が試みられる場合、「縫合された」画像が全網膜をカバーするだけでなく、前記縫合は、縫合される個別視野の間のほぼ50%のオーバーラップを維持しながら得られる。当業者は、構成する個別画像のそのような空間的オーバーラップを、関連技術において記載されたシステムを使用して得ることは不可能であるということを容易に理解するであろう。既存のシステムは40度以下のはるかに小さな視野を有するため、全網膜(約160度)をカバーするためには、(既存のシステムを用いて取得される)はるかに多くの個別画像をオーバーラップしなければならず、あるいはより小さなオーバーラップを有さなければならない。しかし構成する画像の間のオーバーラップがより大きければ、アライメントに使用するためのより多くの特徴(網膜の撮像の場合は主として血管)が存在するため、得られる縫合された画像の品質はより良くなるということが当業界において認識されている。本実施の形態の利点は、各個別の構成する画像が網膜表面のより多くをカバーし、したがって、得られる縫合された画像を形成する場合に、構成する画像の間のオーバーラップの面積を増加させる余裕があり得るということである。
【0022】
図2は、第1の実施の形態-ここでは回転対称の屈折アフォーカルリレー(望遠鏡)として構成されている-のレンズ系の実装を通してのY-Z断面を示す。便宜上、図示されているように、光線は図2の右側の携帯電話カメラEPから、アタッチメント22内の光学系を通して、図2の左側のナヴァロモデルの眼まで追跡されている。携帯電話カメラの瞳孔に最も近いレンズ要素は、図2において要素1としてラベル付けされており、次のレンズ要素は要素2、及び以下同様であり、網膜表面は像平面(image plane)と呼ばれる。この設計は2つの接合されたダブレット(眼のEPの近くの320、及び携帯カメラレンズのEPの近くの310)を含み、単一の正両凸レンズ3が、本実施の形態の中に存在する光学要素のうちで最も高い集光パワーを有する。接合されたダブレットレンズ320は、眼側に対して凹状のメニスカスレンズ要素と接合され、眼側に対して凹状の正メニスカスレンズ要素6から構成されている。第1レンズ群G1は、接合されたダブ
レットレンズ320と、眼側に対して凹状の正メニスカスレンズ要素4とを含む。接合されたダブレットレンズ310は、両凸正レンズ要素2と接合された両凹負レンズ要素1から構成されている。第2レンズ群G2は、接合されたダブレットレンズ310と、正両凸レンズ要素3とを含む。
【0023】
1xの倍率に近い作動が望ましく且つ関連技術のシステムに勝る明確な動作上の利点を提供し、なぜならそのような光学構成は、関連技術のシステムとは全く対照的に、横色収差及び歪曲収差の補正を容易にするからである。図2の光学設計は、(ナヴァロモデルの)眼(2mmの眼瞳孔直径におけるもの、健康な人間の眼はほぼ回折限界である)の収差を補償するように、且つ80度のFOV全体にわたって回折限界分解能の近くを提供するように構成されている。この動作特徴の証拠は図3に示されており、この図は、3つの識別された波長643.85nm、546.1nm、及び479.99nmにおける、球状の網膜に局所的に接する平面内の光線収差(スポットダイアグラム)を示す。図3に示すように、且つ各波長についてエアリーディスク曲線内に入るスポットダイアグラムによって納得のいくよう立証されるように、収差は全可視スペクトルにわたって実質的に補正され、しかしスペクトルの赤端においてはさらに小さい(ここでは網膜からの後方散乱光が青におけるものより約5倍強く、これは網膜の結像の間、動作的に優先される)。可視スペクトル全体にわたるそのような回折限界性能は、提案される発明を関連技術におけるものから決定的に且つ有利に区別する。実際には、光学系の提案される設計は、平均的な眼に典型的な光学収差を、本発明の実施の形態の接眼レンズ部のものと均衡させることによって、網膜の回折限界結像が実現されるようなものである。
【0024】
本発明のシステムの実施の形態において利用される対物レンズに関するいくつかの注意事項がある。表1、表2、及び表3は、図2の第1の実施の形態のレンズ要素の光学列(シーケンス)を表すデータを提供し、表4、表5、及び表6は、図4の第2の実施の形態のレンズ要素の光学列(シーケンス)を表すデータを提供し、これらの光学列(シーケンス)は、本発明の考え方に従って構成されるレンズ系を形成する。実施の形態のための設計処方は、Code Vを用いて生成されたものであり、対応する図面を参照して説明される。これらの表では、光学要素、及び場合によっては、前記要素のうちのいくつかを分離している媒体は、(図4に示されている)オブジェクト/ターゲット平面に最も近いものから開始して眼の網膜表面に向かって、「後ろ向き」のやり方で番号付けされている。光学要素の番号付けへのこのアプローチにより、当業者によって理解されるように、光学設計のプロセス中にNAと、像空間内での-すなわち眼の空間内での-系の挙動を特徴付けるパラメータとを定義するのがより容易になる。オブジェクトに最も近いレンズ要素は、表4及び図4の両方において要素1としてラベル付けされており、次のレンズ要素は要素2、及び以下同様であり、網膜表面は像平面と呼ばれる。特に、人間の眼のナヴァロモデルとの組み合わせが選択されており、その一般的な光学特性及び幾何学的特徴が、系の適切な評価のために本発明のリレー系の設計内に含まれなければならない。
【0025】
所与の表面についての正の半径値は、この表面の曲率中心が前記表面の左側にあることを示し、負の半径値は、曲率中心が前記表面の右側にあることを示す。寸法はミリメートル単位で示されている。厚さは所与の表面から次の表面までの軸方向距離として定義されている。示される像径は近軸値であり、光線追跡値ではない。加えて、色収差-存在する場合-の記載に関して、単色設計と多色設計との間のストレール比における減少は、指定されたスペクトルバンド上での色収差からのコントラスト損失を表し、最良の個別焦点(best individual focus)における変化は、残存像面湾曲(residual field curvature)を示す。
【0026】
本開示及び添付の特許請求の範囲の目的のために、目下の値、要素、特性、又は特徴の記述子に関しての用語「実質的に」、「概ね」、「約」、及び同様の用語の使用は、言及
される値、要素、特性、又は特徴が、必ずしも正確に述べられた通りではないにしても、実際的な目的のために、当業者によって述べられたように考慮される、ということを強調することが意図される。これらの用語は、指定された特徴又は特質記述子に適用された場合、近似の言語を妥当に示すこと、及び指定された特徴又は記述子をその範囲が当業者によって理解されるように記載することなどのために、「大部分」、「主として」、「かなり」、「概して」、「本質的に」、「大きな又はかなりの程度まで」、「ほとんど同じだが必ずしも完全に同じではない」を意味する。数値に関して使用される場合、これらの用語は、指定された値を基準にしたプラスマイナス20%の範囲を表し、より好ましくはプラスマイナス10%、さらにより好ましくはプラスマイナス5%、及び最も好ましくは指定された値を基準にしたプラスマイナス2%の範囲を表す。
【0027】
選択された特徴又は概念の記載におけるこれらの用語の使用は、不確定さのための、及び指定された特徴又は記述子に対して数値限定を加えるための、いかなる基礎も意味するものではなく提供するものでもない。当業者によって理解されるように、そのような値、要素、又は特性の正確な値又は特徴の、述べられたものからの実際的な逸脱は、そのような目的のために当業界において許容されている測定方法を使用した場合の典型的な実験測定誤差によって規定される数値範囲内に入り、その中で変わり得る。本発明の範囲内にあるいくつかの特定の場合、用語「概ね」及び「約」は、数値に関して使用される場合、指定された値を基準にしたプラスマイナス20%の範囲を表し、より好ましくはプラスマイナス10%、さらにより好ましくはプラスマイナス5%、及び最も好ましくは指定された値を基準にしたプラスマイナス2%の範囲を表す。
【表1】



注-正の半径は、曲率中心が右側にあることを示す
負の半径は、曲率中心が左側にあることを示す
-寸法はミリメートル単位で示されている
-厚さは次の表面までの軸方向距離である
-ナヴァロ眼モデルは、J Opt Soc Am A.1985年8月、2(8)、1273~81ページ「非球面によるヒトの眼の順応依存モデル(Accommodation-dependent model of the human eye with aspherics.)」(ナヴァロ R.(Navarro R.)、サンタマリア J.(Santamaria J.)、ベスコス J.(Bescos J.)著)に記載されている
【表2】



【表3】



注-EFLは第1面から測定される
-BFLは最終面から測定される
【表4】



注-正の半径は、曲率中心が右側にあることを示す
負の半径は、曲率中心が左側にあることを示す
-寸法はミリメートル単位で示されている
-厚さは次の表面までの軸方向距離である
-ナヴァロ眼モデルは、J Opt Soc Am A.1985年8月、2(8)、1273~81ページ「非球面によるヒトの眼の順応依存モデル(Accommodation-dependent model of the human eye with aspherics.)」(ナヴァロ R.(Navarro R.)、サンタマリア J.(Santamaria J.)、ベスコス J.(Bescos J.)著)に記載されている

【表5】



【表6】


【0028】
上記の表4、表5、及び表6に記載されているように構成された本発明のリレー系の第2の実施の形態500は、図4に示されており、30.67mm(モジュラス値)の有効焦点距離を有し、これにより約10.6mmの(近軸)高を有する像の形成がもたらされ、横色収差(1又は複数)について良好に補正される。本発明の考え方によるレンズ系の実施の形態は、1つのみの単一の非球面表面A(1)を含み、これにより実際的な利点(減少したコストなど)が提供される。図4に示すように、第2の実施の形態は、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2とを含む。第1レンズ群G1はレンズ要素4及び5を含み、第2レンズ群G2はレンズ要素1、2、及び3を含む。眼のナヴァロモデルも、リレー系500と組み合わせて示されている。第2レンズ群G2は、負の屈折パワーを有し且つ両凸正レンズ要素2と光学的に接触した第1のメニスカスレンズ要素1と、正の光学パワー及び非球面表面A(1)を有し且つ要素1及び2の組み合わせから空間的に分離された要素3とを含む。第2レンズ群G2は全体として正の光学パワーを有し、要素1の負の光学パワーを無効にする。第1レンズ群G1は、正レンズ要素4と、眼側に対して凹状の第2のメニスカスレンズ要素5とを含み、全体として正の光学パワーを有する。第1レンズ群G1は、図4において眼のナヴァロモデルによって示されている検査される眼の近くに位置付けられている。
【0029】
図5は、本発明の第2の実施の形態500を用いて対象を結像する間の焦点はずれの影響を視野位置(度単位で表されている)の関数として表すスポットダイアグラムを含む。第2の実施の形態はまた、(ナヴァロモデルの)眼(2mmの眼瞳孔直径におけるもの、健康な人間の眼はほぼ回折限界である)の収差を補償すること、及び80度のFOV全体にわたって回折限界分解能の近くを提供することも示されている。各波長についてエアリーディスク曲線内に入るスポットダイアグラムによって納得のいくよう立証されるように、収差は全可視スペクトルにわたって実質的に補正され、しかしスペクトルの赤端においてはさらに小さい(ここでは網膜からの後方散乱光が青におけるものより約5倍強く、これは網膜の結像の間、動作的に優先される)。可視スペクトル全体にわたるそのような回折限界性能は、提案される発明を関連技術から決定的に且つ有利に区別する。実際には、光学系の提案される設計は、平均的な眼に典型的な光学収差を、本発明の実施の形態の接眼レンズ部のものと均衡させることによって、網膜の回折限界結像が実現されるようなものである。第1の実施の形態及び第2の実施の形態のそれぞれについて、第1レンズ群G1及び第2レンズ群G2の焦点距離に関する値を以下に示す。
実施の形態1
群1(接眼レンズ)の焦点距離:f1=32.3
群2(対物レンズ)の焦点距離:f2=34.4
近軸倍率:f2/f1=1.07
実施の形態2
群1(接眼レンズ)の焦点距離:f1=38.0
群2(対物レンズ)の焦点距離:f2=53.0
近軸倍率:f2/f1=1.4
広角の網膜像サイズとイメージセンサのサイズとの間の関係に関して、2つの場合が考えられる。場合1では、図6Aに示すように、眼に入射する80度の視野がカメラ上に結像して画面の対角線(すなわち、イメージセンサのサイズ)を満たすように倍率が選択される。これは、全てのカメラピクセルが使用されるという利点を有し、しかし80度の視野のうちのいくらかが上部、底部、及び側部において失われるという欠点も有する。場合2では、図6Bに示すように、眼に入射する80度の視野がカメラ画面(すなわち、イメージセンサのサイズ)上に結像して矩形画面の短寸法を満たすように倍率が選択される。これは、80度の視野全体が見られるという利点を有し、しかし全てのカメラピクセルが使用されるわけではないという欠点も有する。これはより一般的な眼底カメラ状況であり、しかしこれらの2つの場合は、1.0に近い倍率を1.0~2.0の範囲内で選択することによって本発明がいずれの状況にも適用可能であることを示している。
【0030】
本発明の特定の実装はまた、デュアルレンズ(又は一般に複数レンズ)携帯電話カメラを用いた眼底撮像を利用するように構成されていてもよい。例えば、携帯電話が、第2のカメラレンズであって異なる焦点距離(例えば携帯電話の第1のレンズの焦点距離の2倍)を有する第2のカメラレンズを有する場合-前記携帯電話が本発明のアフォーカルリレーを基準にして横方向又は横断方向にシフトされて、前記第2のレンズが前記アフォーカルリレーと光学的に(軸方向で)整列されたならば-網膜の中央の角度部分(前記携帯電話の別のレンズのFOVに比較してより小さいFOVを有する携帯電話レンズに対応するもの)がより高い分解能で撮像され得る。これは中心窩領域及び視神経をより詳しく調べるために有利であり、その上、短い焦点距離のカメラに切り換えることによって、網膜全体を撮影する機能は維持される。あるいはこの場合、80度以上の視野をより高い解像度でカバーするために、より長い焦点距離のレンズを用いた画像縫合が使用されてもよい。
【0031】
本発明の範囲は有利には、モバイル装置が、複数のレンズ(光学系)であって(例えば1D又は2Dアレイのレンズとして)互いに隣接して配置された、且つ異なる焦点距離を(したがって異なるFOVを)有する、複数のレンズを有する状況を含む。ここで、図1の実施の形態は、前記実施の形態と前記複数のレンズが配置された平面との間の作動(軸方向)距離を維持しながら、そのような複数のレンズの光軸に垂直な平面内で前記実施の形態を横方向で再位置付けするように構成された(機械的に駆動されるか又はさもなければ例えば電気モーターを使用して駆動される)仕掛け又はポジショナーを介して、モバイル装置の背面と統合されてもよい。前記実施の形態が携帯電話カメラの第1のレンズと同軸状に配置されるように平行移動された場合、眼のEPと第1のレンズのEPとの間の光学的共役が確立され、本発明の望遠鏡と第1のレンズとを使用した網膜の1x撮像が有利には可能にされる。次の動作工程において、前記実施の形態が携帯電話カメラの第2のレンズと同軸状に配置されるように平行移動された場合、眼のEPと第2のレンズのEPとの間の光学的共役が確立され、本発明の望遠鏡と第2のレンズとを使用した網膜の1x撮像が可能にされる。複数工程(例えば、N>1)の再位置付けの結果として、N位置ズーム撮像システム(N-position-zoom imaging system)が実際に実装される。網膜のそのように構成された撮像の間、より小さなFOVを有する携帯電話レンズがアフォーカルリレーの実施の形態と光学的及び機械的に協働された場合、より高い分解能を有する網膜の撮像が(縫合された画像の中央において)達成される、と
いうことが理解される。
【0032】
さらに、通常、写真が撮られる場合にユーザは眼鏡を装着していないため、ユーザの処方に基づいて眼-接眼レンズ-の最も近くにレンズを合焦することによって、+/-10のジオプター調整が提供され得る。カメラの合焦系は微細な合焦のために調整する。
【0033】
上記の実施の形態によれば、シンプルで小型の安価な眼底カメラが可能となる。また、アタッチメントレンズを使用する従来の眼底カメラと比較して、優れた眼底画像が、約2倍の広さの視野にわたってそして広い波長領域にわたって得られることは明らかである。また、マルチレンズ携帯電話カメラを使用すると、視野の自由度および解像度性能が向上する。
【0034】
開示された態様又はそれらの態様の部分は、上記に示されていない方法で組み合わされてもよい。したがって本発明は、開示される実施の形態に限定されるものと見なされるべきではない。
【0035】
次に、図7を参照して、第3の実施の形態を説明する。
図7に示すように、アタッチメント22は、被検眼150の瞳を携帯電話20の画像撮影部214の光学系の瞳位置にリレーするリレー光学系であり、正の第1レンズ群G1と、正の第2レンズ群G2とを備えている。正の第1レンズ群G1と正の第2レンズ群G2は、同一の光軸を有して実質的にアフォーカル系を形成する。正の第1レンズ群G1と、正の第2レンズ群G2とにより、被検眼150の瞳を、携帯電話20の画像撮影部214の光学系の瞳にリレーする。
【0036】
アフォーカルアタッチメントとしての本発明のアフォーカルリレーは、携帯電話のカメラレンズの前面にある。この場合、携帯電話カメラの瞳孔を患者の虹彩(瞳孔)にリレーする働きをする。
【0037】
正の第1レンズ群G1及び正の第2レンズ群G2が、被検眼150と携帯電話20の画像撮影部214の前側に配置された光学系との間に配置された場合(図7に示す位置)、第1レンズ群G1は、第1レンズ群G1の被検眼側焦点位置が被検眼150の瞳位置に一致して配置され且つ第2レンズ群G2の携帯電話20側の焦点位置が携帯電話20の画像撮影光学系の瞳位置に一致するように、構成される。上記構成によれば、正の第1レンズ群G1と正の第2レンズ群G2との組み合わせにより、被検眼の瞳と外部光学系の瞳との間に共役関係が形成される。
【0038】
第1レンズ群G1及び第2レンズ群G2を有するアタッチメント22が、図7に示すように、その光軸が携帯電話20の画像撮影光学系の光軸に一致する位置に配置された場合、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間に、被検眼150の眼底の像FIが形成される。
【0039】
第1レンズ群G1は、被検眼側から順に、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズ320と、正レンズ340とを有し、第2レンズ群G2は、被検眼側から順に、正レンズ330と、被検眼側に凸面を向けたメニスカスレンズ310とを有する。
【0040】
被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズ320は、図7に示す構成に限定されず、図2に示す構成でもよく、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズ6と、被検眼側に凹面を向けたメニスカス5との接合レンズでもよい。
【0041】
第2レンズ群G2の被検眼側に凸面を向けたメニスカスレンズ310は、図7に示すよ
うに、両凸正レンズ310Aと両凹レンズ310Bとの接合レンズでもよい。また、レンズ面の形状としては適宜非球面を採用することができ、第2実施例では、第2レンズ群G2の中の両凸正レンズの被検眼側の凸面に非球面を設けている。
【0042】
第1レンズ群G1の焦点距をf1、第2レンズ群G2の焦点距離をf2、両レンズ群G1、G2の主平面間隔をDとするとき、実質的に以下の条件を満たすことが好ましい。
f1+f2=D
【0043】
上記のように第1レンズ群G1と正の第2レンズ群G2は実質的にアフォーカル系を形成する場合には、次の条件を満たすことが好ましい。
0.9<f2/f1<2.2
また、実用上、1.0≦f2/f1<2.0の条件を満足することが好ましい。
【0044】
第1レンズ群G1の焦点距f1及び第2レンズ群G2の焦点距離f2は、次の条件を満たす。
30mm<f1<50mm、
30mm<f2<60mm
【0045】
携帯電話20の光学系側の第2レンズ群G2の画角は、携帯電話20の光学系の画角を含み、好ましくは一致する。第1レンズ群G1の画角に対応する被検眼眼底の画像撮影視野(FOV)の像は、第2レンズ群G2を介して携帯電話20の光学系に転送される。
【0046】
上記のすべての例では、アタッチメント22のリレー光学系(G1、G2)の1xの倍率は、収差補正に最適である。小さい倍率を導入することにより、携帯電話のカメラよりも大きな視野を実現し、また、設計は依然として良好な収差補正を達成することができる。より大きい視野は網膜の多くの病理が80°内に見られるという点で有益であり、網膜の中央の40°でより詳細に見るために携帯電話の望遠レンズカメラに切り替えることは可能である。
【0047】
また、アタッチメント22は、電源380と、電源380により電力が供給される光源362と、光源362から発光された光を、第2レンズ群G2側に反射し、第2レンズ群G2を介した被検眼150からの反射光を携帯電話20に透過するビームスプリッタ372とを備えている。
【0048】
後述する画像撮影モードでは、光源362から発光された光は、ビームスプリッタ372で、第2レンズ群G2側に反射し、第1レンズ群G1を介して、被検眼150の眼底に到達する。被検眼150の眼底に到達した光は、眼底で反射し、反射光は、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2を介してビームスプリッタ372に到達し、ビームスプリッタ372を透過し、携帯電話20に到達する。正の第1レンズ群G1と、正の第2レンズ群G2とにより、被検眼150の瞳を、携帯電話20の画像撮影部214の光学系の瞳にリレーする。
【0049】
次に、第4の実施の形態を説明する。図8に示す第4の実施の形態は第3の実施の形態と同様の部分があるので、同様の部分には、同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分を説明する。
図8に示すように、アタッチメント22は、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2の他に、光源362、そのための電源380を有する。光源362からの発散光は集光レンズ364により平行光となってディフューザー366に入射して発散光となり、リング状の開口部を有するリング絞り368を照明する。このリング状開口を通過して光は、ビームスプリッタ372にて反射されて第2レンズ群及び第1レンズ群G1を通って、被検眼1
50へ導かれる。そして、第2レンズ群G2及び第1レンズ群G1の作用によってリング絞り368のリング状開口の像が、被検眼の角膜上に形成され、被検眼の眼底部を照明する。
【0050】
次に、第5の実施の形態を説明する。図9に示す第5の実施の形態は第3の実施の形態と同様の部分があるので、同様の部分には、同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分を説明する。図9に示すように、アタッチメント22は、光源362に接続された接点382を備えている。携帯電話20は、携帯電話20の図示しないバッテリに接続された接点20Cを備えている。アタッチメント22が携帯電話20に取り付けられると、アタッチメント22の接点382と、携帯電話20の接点20Cとが接続される。上記のように、接点382は光源362に接続し、携帯電話20の接点20Cには、携帯電話20の図示しないバッテリが接続されているので、携帯電話20の図示しないバッテリからの電力は、接点20C及び接点382を介して光源362に供給される。
【0051】
なお、第4の実施の形態(図8参照)において、電源380を省略し、アタッチメント22に接点382を設け、且つ、携帯電話20に接点20Cを設け、アタッチメント22が携帯電話20に取り付けられると、アタッチメント22の接点382と、携帯電話20の接点20Cとが接続され、携帯電話20の図示しないバッテリからの電力が、接点20C及び接点382を介して、光源362に供給されるようにしてもよい。
【0052】
上記のすべての例では、ビームスプリッタ372を用いているが、光源362からの光の効率的な利用のため、ビームスプリッタ372に代えて偏光ビームスプリッタを設け、光源362と偏光ビームスプリッタとの間に偏光子を配置し、偏光ビームスプリッタと携帯電話20との間に検光器を設けてもよい。そして、第2レンズ群G2と偏光ビームスプリッタとの間に4分の一波長版(quarter wave plate)を挿入して、被検眼へ円偏向を供給する構成とすることも可能である。
【0053】
次に、図10を参照して、上記のすべての例の携帯電話20の電気的構成を説明する。図10に示すように、携帯電話20は、コンピュータ200を備えている。コンピュータ200は、CPU202、ROM204、RAM206、入出力(I/O)ポート208を備えている。CPU202、ROM204、RAM206、入出力(I/O)ポート208は、バス210を介して相互に接続されている。入出力(I/O)ポート208には、補助記憶装置212、画像撮影部214、スピーカ216、表示部218、通信部220、ホームボタン222、画像撮影ボタン224、及びオートフォーカス機構226が接続されている。
【0054】
次に、図11を参照して、アタッチメント22と携帯電話20の使用方法を説明する。
ステップ402で、ユーザは、アタッチメント22を携帯電話20に装着する。携帯電話20に電源のスイッチがオンされると、ステップ404で、眼底撮影アプリケーションが起動する。ステップ406で、ユーザは、画像撮影部214の画像撮影位置に目を保持する。
【0055】
ステップ408で携帯電話20のホームボタン222がオンされることで、CPU202は、画像撮影モードを開始する。画像撮影モードが開始されると、画像撮影部214は、アタッチメント22を介して、眼底画像を撮影する。
【0056】
ステップ410で、CPU202は、オートフォーカス機構226を調整して、ピントを自動調整し、ピントが自動調整されると、画像撮影部214の眼底の撮影範囲が適切か否かを判断する。具体的には、眼底画像の画像データの各画素値と、瞳の部分か周囲の部分かを区別するためのしきい値とから、画像撮影部214の眼底の撮影範囲の中での被検
眼150の瞳の位置を検出する。検出した瞳の位置が撮影範囲の中に入っているか否かを判断することにより、撮影範囲が適切か否かを判断する。
【0057】
ステップ410で、眼底の撮影範囲が適切でないと判断した場合には、ステップ412で、CPU202は、スピーカ216を介して携帯電話20の保持位置を変更するための音声指示を発する。例えば、瞳位置が、画像撮影部214の撮影範囲より上側に位置している場合には、スピーカ216を介して、「携帯電話を上げて下さい」と音声出力する。なお、「携帯電話を上げて下さい」との音声出力の代わりに又は当該音声出力と共に、表示部218に「携帯電話を上げて下さい」と表示してもよい。
【0058】
ユーザの眼底の位置が画像撮影部214の撮影範囲に適切に位置すると判断した場合には、ステップ414で、CPU202は、表示部218に、画像撮影指示を表示する。表示部218に表示された画像撮影指示を見たユーザは、画像撮影ボタン224をオンする。なお、画像撮影指示を表示部218に表示することに限定されず、当該表示に代え又は当該表示と共に、スピーカ216を介して画像撮影指示を音声出力してもよい。画像撮影ボタン224がオンされると、ステップ416で、CPU202は、画像撮影ボタン224がオンされたことを検知する。画像撮影ボタン224がオンされたことが検知されると、ステップ418で、画像撮影部214により撮影された眼底画像を補助記憶装置212に記録し、ステップ420で、通信部220を介して、眼底画像の画像信号を、眼底画像サーバ250に送信する。
【0059】
ステップ414、416の処理を省略し、CPU202は、ユーザの眼底の位置が画像撮影部214の撮影範囲に適切に位置すると判断した場合には、ステップ418で、画像撮影部214により撮影された眼底画像を補助記憶装置212に記録し、ステップ420で、通信部220を介して、眼底画像の画像信号を、眼底画像サーバ250に送信する。
【0060】
以上説明した全ての例では、携帯電話20は、1つの光学系(画像撮影レンズ系(カメラレンズ))を備えているが、本開示の技術はこれに限定されず、複数の画角に応じた複数の光学系を備えるようにしてもよい。例えば、眼底の中央部ばかりではなく、中央部の周辺の部分の周辺部をも撮影する場合に対処するため、携帯電話20は、広角用の第1の光学系と、広角より画角が小さい標準の画角用の第2の光学系とを備えるようにしてもよい。眼底の中央部及び周辺部を撮影する第1のモードでは、第1の光学系を介して眼底の中央部及び周辺部の画像を画像撮影部214に結像する。中央部のみを撮影する第2のモードでは、第2の光学系を介して眼底の中央部のみの画像を画像撮影部214に結像する。
【0061】
20 携帯電話
22 アタッチメント
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
320 メニスカスレンズ
320A メニスカスレンズ
320B メニスカスレンズ
340 正レンズ
330 正レンズ
310 メニスカスレンズ
310A 両凸正レンズ
310B 両凹レンズ
320 正メニスカスレンズ
320A 正メニスカスレンズ
320B メニスカスレンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11